(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001594
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】調光装置を用いた退席喚起システムを備えた公共トイレ
(51)【国際特許分類】
A47K 17/00 20060101AFI20231227BHJP
E03D 9/00 20060101ALI20231227BHJP
G08B 21/24 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
A47K17/00
E03D9/00 Z
G08B21/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100342
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 宗嗣
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
5C086
【Fターム(参考)】
2D037EA00
2D038GA02
2D038KA01
2D038ZA00
5C086AA22
5C086BA04
5C086CA01
5C086FA11
5C086FA16
5C086GA07
(57)【要約】
【課題】従来の公共トイレは施錠有無を示す表示窓によって使用中または空席を示しているが、どれくらい長く使用しているのかわからない状態である。また近年ではトイレ内でのスマートフォン使用など本来のトイレ用途以外での長時間に亘る占有や混雑時に退席を喚起するものがなく、待機者が行列を作ってしまう事が問題となっている。
【解決手段】トイレドアの一部に印加電圧に応じて光透過率が変わる調光装置を備え、施錠することで調光装置が作動し、使用時間がある一定の時間を超えた場合や、待機者がいる場合に調光装置の全体もしくは一部の透過率を変えることで、使用者に早期退席を喚起することを特徴としている。
また、トイレドアの下側に設置した調光装置の高さ方向の長さは、プライバシーを維持しつつ使用者から待機者の足の一部が視界に入ることが出来る長さであることを特徴としている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレの個室に設置するドアの一部に印加電圧に応じて光透過率が変わる調光装置を備え、前記ドアを施錠することで前記調光装置が作動し、
前記個室の使用時間が事前に決められた閾値以上となった場合や、前記個室前にいる待機者を検知した場合に、前記調光装置の少なくとも一部における光透過率を変える、公共トイレ。
【請求項2】
前記調光装置は前記ドアの上側及び下側に設置され、
上側に設置された前記調光装置の高さ方向の長さが、プライバシーを維持しつつ外部からは覗き見ることができない長さであり、
下側に設置された前記調光装置の高さ方向の長さが、使用者から待機者の足の一部が視界に入ることが出来る長さであることを特徴とした、請求項1記載の公共トイレ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の公共トイレにおける退席喚起システムであって、
前記調光装置と、
前記個室の使用時間を計測する計測部と、
前記待機者を検知する検知部を備えることを特徴とする公共トイレの退席喚起システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間使用時や待機者がいる場合に、使用者への退席を喚起する、調光装置を用いた退席喚起システムを備えた公共トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレは目的上、密室性を維持してプライバシーを確保する必要があるため、外部から室内を見通せない構造となっており、また使用者も外の様子を伺い知ることができない。
【0003】
通気や掃除のしやすさのために扉の上下に隙間(開口)を設けていることも多いが、通常では当然外部から覗けるような開口位置や開口長さではない。
【0004】
従ってトイレ使用者は、待機者がいても気づかず、更にはスマートフォン等を使用する事によって長居をしてしまうことがあった。
【0005】
従来の公共トイレでは
図1に示すような表示窓2(使用中を示す黒表示)、表示窓3(空席を示す白表示)の様な施錠による在籍有無を示す表示窓によって使用中または空席を示すことが多いが、いつから使用を始めたのか、どれくらい長く使用しているのかわからない状態であった。
【0006】
特に近年ではトイレ内でのスマートフォン使用など本来のトイレ用途以外での長時間に亘る占有や混雑時に退席を喚起するものがなく、待機者が行列を作ってしまう事が問題となっている。
【0007】
特許文献1によれば、天井に設置したセンサーにより使用者有無を判定し、長居した場合に注意喚起音または音声による警告を発し、長居抑止装置が開示されている。
【0008】
しかし、使用者がイヤホンをしていると警告音に気づかなかったり、待機者がいなくても警告音が鳴って退室を促されたりするため、警告音だけでは状況にそぐわない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、公共トイレ使用者が長時間使用している場合や待機者がいる場合に、使用者に対して視覚的に退席喚起し、また同時に、待機者にもトイレ使用状況を把握できる退席喚起システムを備えた公共トイレを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明の公共トイレは、トイレの個室に設置するドアの一部に印加電圧に応じて光透過率が変わる調光装置を備え、前記ドアを施錠することで前記調光装置が作動し、前記個室の使用時間が事前に決められた閾値以上となった場合や、前記個室前にいる待機者を検知した場合に、前記調光装置の少なくとも一部における光透過率を変えることのできる調光装置を備えることを特徴としている。
【0012】
また、前記調光装置は前記ドアの上側及び下側に設置され、上側に設置された前記調光装置の高さ方向の長さが、プライバシーを維持しつつ外部からは覗き見ることができない長さであり、下側に設置された前記調光装置の高さ方向の長さが、使用者から待機者の足の一部が視界に入ることが出来る長さであることを特徴としている。
【0013】
更には、前記調光装置と、前記個室の使用時間を計測する計測部と、前記待機者を検知する検知部を備える公共トイレの退席喚起システムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、公共トイレの使用者が長時間使用している場合や待機者がいる場合に、扉に設置された調光装置の光透過率が変化することで使用者に対し早期退席を促すことができ、待機者にとってはどのトイレが次に使用できるかを知ることが可能となる。
【0015】
また使用者に対しては、ドアの下から待機者の足の一部を視認できるため、不要な長時間占有をしないように意識づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明における、扉に調光装置が設置された公共トイレの俯瞰図である。
【
図3】実施例における、個室Aを使用した直後の調光装置状態を示した図である。
【
図4】実施例における、個室Aが長時間使用されている場合の調光装置状態を示した図である。
【
図5】実施例における、全室使用中で長時間経過しておらず待機者がいる場合の調光装置状態を示した図である。
【
図6】実施例における、全室使用中で待機者がおり更に個室Aが長時間使用している場合の調光装置状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を用いて説明するが、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
【0018】
【0019】
個室A~Cには施錠によって色が変わる表示窓2、3があり、表示窓2、3を確認することで使用中(黒表示)か空席(白表示)かを知ることができる。扉上下には隙間があるが、プライバシーが侵されることないような大きさや位置であり、使用中の内部をうかがい知ることは不可能である。
【0020】
図2は本発明における、扉に調光装置が設置された公共トイレの俯瞰図である。
【0021】
個室A~Cは空席であり、表示窓は空席を示す一例である白表示となっている。
【0022】
扉の上下に設置された調光装置A1、A2、B1、B2、C1、C2は、空席状態のときは調光装置の可視光における設定透過率が90%以上の透明状態となっており、空席で
あることがより一層わかりやすくなっている。
【0023】
調光装置A1、B1、C1は外部から個室内の上側が少しだけ見えるような高さL1となっており、待機者の目線からは決して個室内の使用者を見ることができないような高さとなっている。
【0024】
調光装置A2、B2、C2は外部から個室内の下側が少しだけ見えるような高さL2となっており、個室の大きさや便器設置位置によってプライバシーの侵害にならないような高さとなっている。
【0025】
L1,L2を取り付ける位置や高さ方向の長さについては、公共トイレに使用されるドアの横幅や縦長さによって適宜決められる。
【0026】
扉の鍵は調光装置作動のスイッチを兼用しており、使用者が施錠することで調光装置が作動する。
【0027】
本発明に用いる調光装置は、既に商品として市販されているものを用いることができる。
【0028】
例えば、商品名「LC-MAGIC」(凸版印刷株式会社)などの調光フィルムを透明基板(ガラスや透明アクリル板)に貼り付けて調光装置としたものが好適に用いられる。
【0029】
調光フィルムは、ノーマルモードとリバースモードのいずれであってもよい。
【0030】
ノーマルモードの液晶層は、電圧印加(ON)により透明状態となり、電圧除去(OFF)により不透明状態となる。
【0031】
リバースモードの液晶層は、電圧除去(OFF)により透明状態となり、電圧印加(ON)により不透明状態となる。
【0032】
本発明においては、空席(施錠していないスイッチOFF状態)の時に電力使用の少ない透明状態となるリバースモードが特に適している。
【0033】
調光装置は別途スイッチに連動した調光装置の動作回路が設けられている。
【0034】
回路についての説明は省くが、時間経過によって調光装置の透過率が変化したり、もしくは不透明状態と、透過率を制御した透明状態の交互点滅を行なったり、意匠性を持たせたパターンの点灯または点滅を行なっても良い。また、動作回路は上述した扉の鍵における調光装置作動のスイッチに接続されている。
【実施例0035】
図3は、「個室Aを使用した直後の調光装置状態」を示した図である。
【0036】
実施例において、扉の鍵を施錠しスイッチONになると、調光装置が作動する。具体的には、調光装置A1,A2は調光装置上の設定透過率が10%以下の不透明状態となり、外部から使用中であることがわかる様になる。
【0037】
また表示窓2は使用中を示す黒表示となる。
【0038】
図4は、「個室Aが長時間使用されている場合の調光装置状態」を示した図である。
【0039】
実施例において、個室Aを長時間に亘り使用した場合、調光装置A1が透過率50%に変化する。もしくは調光装置A1が透明状態と不透明状態とが断続的に切り替わることで点滅を繰り返してもよい。このとき、調光装置A2は不透明を維持したままの状態となる。
【0040】
このように上側調光装置の透過率変化により、使用者は長時間経過したことがわかり、退席喚起につながる。
【0041】
長時間についての一般的な定義は特になく、公共トイレの設置場所や個室の個数、使用時間帯等々に合わせて事前に閾値設定を行う。換言すると、本開示の公共トイレの退席喚起システムは利用者の使用時間を測る計測部を備えていてもよい。
【0042】
図5は、「全室使用中で長時間経過しておらず、待機者がいる場合の調光装置状態」を示した図である。
【0043】
長時間経過していないため、
図4の状態とは異なり、調光装置A1~C1は作動せず不透明状態のままとなる。
【0044】
しかし、待機者がいる場合、使用者への退席を促すため、調光装置A2~C2の透過率が50%に変化する。もしくは透明状態と不透明状態とが断続的に切り替わることで点滅を繰り返す。
【0045】
このように長時間使用していない場合においても待機者がいる場合、使用者へは下側調光装置の透過率変化で退席喚起することができる。また、待機者の足の一部が視認出来る様になるため、不要な長時間占有をしないように意識づけることができる。
【0046】
更には待機者においては退席喚起されていることがわかり、待つことへの焦りや不安を取り除けることができる。
【0047】
なお、詳細については記載しないが、待機者の有無については公共トイレ内に設置した人感センサーや監視カメラ等の画像データ処理を行なう検知部を備え、検知部の検知結果により待ち人の有無を判別することができる。さらに検知結果と調光装置とを連動させるとよい。
【0048】
図6は、「待機者がいて、更に個室Aが長時間使用している場合の調光装置状態」を示した図である。
【0049】
このように長時間使用しており更に待機者がいる場合、上側の調光装置A1~C1および下側の調光装置A2~C2が作動し透過率が50%に変化する。もしくは透明状態と不透明状態とが断続的に切り替わることで点滅を繰り返してもよい。こうすることで、使用者に対してはより一層退席喚起を行なうことができ、待機者にとっては待つ時間が少なくて済むことを認識できるようになる。
【0050】
以上、実施例においては透過率変化する調光装置の透過率を50%として説明したが、特に限定するものではなく、トイレ室内の明るさなどの影響を加味して調光装置の透過率変化がわかりやすい透過率設定とすることがよく、更には時間経過や待機者の人数によって透過率を段階的に変化させて認識性を上げる工夫もよい。その場合、透明状態および不透明状態における透過率との差が30%以上離れていれば、中間調としての上記機能を行うには好適である。また、長時間経過や待機者がいる場合の調光装置作動は上下どちらを
設定してもよく、わかりやすいように扉等に貼り紙表示してもよく、調光装置に文字パターンを表示するようにしてもよい。