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特開2024-159414車両用監視装置及び車両用監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159414
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両用監視装置及び車両用監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241031BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20241031BHJP
   B60R 25/10 20130101ALI20241031BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 V
B60R25/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023166447
(22)【出願日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2023072475
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】和泉 一輝
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA06
5H181AA14
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL09
5H181MB01
5H181MB06
5H181MB09
(57)【要約】
【課題】ドライバが搭乗していない場合でも、自車両に接近する注意者への対応が可能な車両用監視装置等の提供。
【解決手段】自動運転ECU50は、自動運転機能によって走行可能な自車両Amの状況を監視する車両用監視装置の機能を有している。自動運転ECU50は、自車両Amへの搭乗が予定されていない注意者UMの自車両Amへの接近を判定する。そして、注意者UMの自車両への接近が判定された場合、自動運転ECU50は、自車両Amに設けられた車外表示器24を用いて、乗車不可を示す車外報知を実施する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)の状況を監視する車両用監視装置であって、
前記自車両への搭乗が予定されていない注意者(UM)の前記自車両への接近を判定する接近判定部(73)と、
前記注意者の前記自車両への接近が判定された場合、前記自車両に設けられた車外報知器(24,25)を用いて、乗車不可を示す車外報知を実施する報知実施部(72)と、
を備える車両用監視装置。
【請求項2】
停止中の前記自車両に前記注意者が接近した場合、前記自車両が停止中の現在位置から移動可能か否かを判定し、移動可能と判定した場合、前記自車両を前記現在位置から移動させる行動制御部(63)、をさらに備える請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項3】
前記行動制御部は、車室内に設けられた緊急避難ボタン(119)が搭乗者(PS)によって操作された場合、前記緊急避難ボタンの操作がない場合よりも、前記自車両を前記現在位置よりも遠い場所へ移動させる請求項2に記載の車両用監視装置。
【請求項4】
前記接近判定部は、前記注意者の前記自車両への接触可能性を判定し、
前記行動制御部は、前記注意者に前記接触可能性がある場合、前記接触可能性がない場合よりも移動速度を抑制する請求項2に記載の車両用監視装置。
【請求項5】
前記行動制御部にて前記自車両が移動可能でないと判定された場合、前記自車両のドアを外側から開けることができないように施錠する施錠制御部(65)、をさらに備える請求項2に記載の車両用監視装置。
【請求項6】
前記自車両への搭乗申請を取得する申請取得部(70)、をさらに備え、
前記行動制御部は、前記現在位置からの移動を開始した後、前記注意者についての前記搭乗申請が前記申請取得部によって取得された場合、前記自車両の移動を中止する請求項2に記載の車両用監視装置。
【請求項7】
前記行動制御部は、車室内の搭乗者(PS)及び前記自車両を遠隔監視する監視者(RO)の少なくとも一方による停止指示を取得するまで、前記自車両の移動を継続する請求項2に記載の車両用監視装置。
【請求項8】
前記報知実施部は、
前記注意者の接近を判定した状態が所定時間以上継続した場合、車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、所定の通報先(CNT)に前記注意者の接近を通報するか否かを問い合わせ、
前記車室内の搭乗者(PS)によって通報の実施が承認された場合、前記通報先への通報を実施する請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項9】
前記報知実施部は、
予め設定された乗降地点とは異なる場所で前記注意者の前記自車両への接近が判定された場合、車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、前記注意者の個人認証を行うか否かを問い合わせ、
前記車室内の搭乗者(PS)によって前記個人認証の実施が許可された場合、前記注意者の前記個人認証を実施する請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項10】
前記自車両への搭乗予約が受け付けられた承認者に紐づくユーザ端末(170)からの要求に基づき、車室内に設けられた車室内カメラ(29)による車内カメラ映像を前記ユーザ端末に配信する映像配信部(66)、をさらに備える請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項11】
前記映像配信部は、前記承認者の搭乗予定地点から所定距離以内となる範囲まで前記自車両が接近した場合に、前記車内カメラ映像の前記ユーザ端末への配信を許可する請求項10に記載の車両用監視装置。
【請求項12】
前記映像配信部は、前記承認者の搭乗予定時刻まで所定時間以内となった場合に、前記車内カメラ映像の前記ユーザ端末への配信を許可する請求項10に記載の車両用監視装置。
【請求項13】
前記映像配信部は、前記承認者の降車後、所定時間が経過するまで前記車内カメラ映像の前記ユーザ端末への配信を許可し続ける請求項10に記載の車両用監視装置。
【請求項14】
前記自車両に設けられた運転操作部(110)に最も近い運転席(DS)への搭乗者(PS)の移動を検知する車内監視部(71)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記搭乗者の前記運転席への移動が判定された場合、車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、前記運転席からの離席を促す車内警告を実施する請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項15】
前記報知実施部は、前記車内警告の実施後、前記自車両を遠隔監視する監視者(RO)に、前記搭乗者の前記運転席への移動を通報する請求項14に記載の車両用監視装置。
【請求項16】
前記自車両の車室内にあるドライブキーに搭乗者(PS)が触れたことを検知する車内監視部(71)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記搭乗者が前記ドライブキーに触れたと判定された場合、前記車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、前記ドライブキーに触れないように注意を促す車内警告を実施する請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項17】
前記注意者の前記自車両への接近が判定された場合、前記自車両の左右両側に設けられたドアのうちで、前記注意者が接近する側とは反対側の前記ドアを車室内から開けることができるように解錠する施錠制御部(65)、をさらに備える請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項18】
前記報知実施部は、前記反対側の前記ドアの解錠後、前記車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、前記反対側の前記ドアが解錠されていることを示す車内報知を実施する請求項17に記載の車両用監視装置。
【請求項19】
前記自車両の機能オフ処理に基づき前記自車両の停止場所を記憶する位置記憶部(78)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記自車両の機能オン処理に基づき把握される前記自車両の起動場所が前記停止場所と異なる場合、盗難発生を示す車外警告を実施する請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項20】
前記報知実施部は、前記自車両に盗難が発生した場合に、車室内の搭乗者(PS)に紐づくユーザ端末(170)の位置情報を所定の通報先(CNT)に通知する請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項21】
前記自車両のオーナー(OW)に紐づくユーザ端末(170)から、前記自車両を呼び寄せる指令を取得する指令取得部(61)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記オーナーの位置まで移動する前記自車両の走行が前記注意者によって妨げられた場合に、前記ユーザ端末に通報する請求項1に記載の車両用監視装置。
【請求項22】
前記注意者の乗車許可が前記指令取得部にて取得された場合、前記自車両のドアを外側から開けることができるように解錠する施錠制御部(65)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記乗車許可が前記指令取得部にて取得されない場合、前記車外報知器を用いて前記乗車不可を示す前記車外報知を実施する請求項21に記載の車両用監視装置。
【請求項23】
自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)の状況を監視する車両用監視プログラムであって、
前記自車両への搭乗が予定されていない注意者(UM)の前記自車両への接近を判定し(S13,S213,S312)、
前記注意者の前記自車両への接近を判定した場合、前記自車両に設けられた車外報知器(24,25)を用いて、乗車不可を示す車外報知を実施する(S14,S219,S317)、
ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(51)に実行させる車両用監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、自車両の状況を監視する車両用の監視の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動運転機能を備えた自動運転車両である乗合車両において用いられる車室内監視システムが開示されている。車室内監視システムは、車室内の人間及び荷物を認識し、車室内が混雑している状況下、荷物による座席の占有や一人の乗客による複数座席への着座が発生している場合には、車内への警告を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-154979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の乗合車両のように、特定のドライバが搭乗しない状態で自律走行する車両では、搭乗を予定していない人間(以下、注意者)が、強引に車両に乗り込もうとする可能性がある。こうした注意者から乗客及び車両を守るため、注意者に対応する技術が必要とされ得る。
【0005】
本開示は、ドライバが搭乗していない場合でも、自車両に接近する注意者への対応が可能な車両用監視装置、及び車両用監視プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示された一つの態様は、自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)の状況を監視する車両用監視装置であって、自車両への搭乗が予定されていない注意者(UM)の自車両への接近を判定する接近判定部(73)と、注意者の自車両への接近が判定された場合、自車両に設けられた車外報知器(24,25)を用いて、乗車不可を示す車外報知を実施する報知実施部(72)と、を備える車両用監視装置とされる。
【0007】
また開示された一つの態様は、自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)の状況を監視する車両用監視プログラムであって、自車両への搭乗が予定されていない注意者(UM)の自車両への接近を判定し(S13,S213,S312)、注意者の自車両への接近を判定した場合、自車両に設けられた車外報知器(24,25)を用いて、乗車不可を示す車外報知を実施する(S14,S219,S317)、ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(51)に実行させる車両用監視プログラムとされる。
【0008】
これらの態様では、自車両に接近する注意者に対し、自車両に設けられた車外報知器を用いた乗車不可を示す車外報知が実施される。こうした車外報知により、自車両への搭乗が予定されていない注意者の自車両への乗り込みは、抑止され得る。したがって、ドライバが搭乗していない場合でも、自車両に接近する注意者への対応が可能になる。
【0009】
尚、上記及び特許請求の範囲等における括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。また、特に組み合わせに支障が生じなければ、特許請求の範囲において明示していない請求項同士の組み合せも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態による自動運転ECUを含む自動運行システムの全体像を示す図である。
図2】遠隔側システムの詳細を示すブロック図である。
図3】車両側システムの詳細を示すブロック図である。
図4】注意者の接近判定に伴う対応を時系列に沿って示す図である。
図5】自動運転ECUにて実施される注意者対応処理の詳細を示すフローチャートである。
図6】自動運転ECUにて実施される緊急避難処理の詳細を示すフローチャートである。
図7】搭乗者による問題行動に対応する行動警告処理の詳細を示すフローチャートである。
図8】ドライバレス車両の盗難に対応する盗難報知処理の詳細を示すフローチャートである。
図9】第二実施形態による車両側システムの詳細を示すブロック図である。
図10】自動運転ECUにて実施される映像配信処理の詳細を示すフローチャートである。
図11】自動運転ECUにて実施される注意者対応処理の詳細を示すフローチャートである。
図12】自動運転ECUにて実施される盗難報知処理の詳細を示すフローチャートである。
図13】自動運転ECUにて実施される乗っ取り対応処理の詳細を示すフローチャートである。
図14】第三実施形態での注意者の接近判定に伴う対応を時系列に沿って示す図である。
図15】自動運転ECUにて実施される注意者対応処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
(第一実施形態)
図1に示す自動運転ECU(Electronic Control Unit)50は、車両(以下、自車両Am)に搭載されている。自動運転ECU50の搭載により、自車両Amは、自動運転機能を備えた自動運転車両又は自律走行車両となる。自車両Amは、レベル4の自動運転機能により、ドライバが運転席DSに搭乗しないドライバレス車両ADVとして走行可能となる。本開示における自動運転レベルは、米国自動車技術会(Society of Automotive Engineers)によって規定された基準に基づいている。
【0013】
自動運転ECU50は、本開示の第一実施形態による車両用監視装置として機能する。自動運転ECU50は、ドライバの搭乗しないドライバレス車両ADVにおいて、ドライバに代わり、自車両Amの車室内及び車外の状況を監視する。具体的に、自動運転ECU50は、乗車を予定している人間(ユーザ)以外が自車両Amに乗り込もうとするシーン等にて、ドライバに代わって対応処理を実施する。
【0014】
[ドライバレス車両の特定自動運行]
ドライバレス車両ADVは、モビリティサービスを提供する車両として利用される。自車両Amを含む複数のドライバレス車両ADVの運行は、遠隔監視施設CNTによって遠隔監視される。遠隔監視施設CNTは、レベル4の自動運転移動サービス(以下、特定自動運行)を行う事業者(以下、特定自動運行実施者)等によって運営されている。遠隔監視施設CNTには、遠隔監視者RO及び運行管理者OM等が常駐している。遠隔監視者RO及び運行管理者OMは、特定自動運行実施者に所属する職員(特定自動運行業務従事者)である。
【0015】
遠隔監視者ROは、特定自動運行を管理する管理者(特定自動運行主任者)である。遠隔監視施設CNTには、主監視者ROm及び副監視者ROs等、複数の遠隔監視者ROが配置されている。遠隔監視者ROは、後述する自動運行システム100の作動状態を監視し、自動運行システム100が正常に作動していないことを認めたときは、ドライバレス車両ADVの運行を終了させる。
【0016】
運行管理者OMは、遠隔監視者ROを管理する。運行管理者OMは、遠隔監視者ROに異常が生じた場合、及び複数のドライバレス車両ADVに異常が生じた場合等にて、上述した遠隔監視者ROの業務の少なくとも一部を代行可能である。尚、遠隔監視施設CNTが小規模である場合、又は複数の遠隔監視者ROが常駐している場合、運行管理者OMの配置は、省略されてもよい。言い替えれば、遠隔監視者ROが運行管理者OMを兼ねていてもよい。さらに、遠隔監視施設CNTに配置される遠隔監視者ROは、1人であってもよい。
【0017】
ここまで説明した特定自動運行を可能にする自動運行システム100は、遠隔側システム130、インフラ側システム160、及び車両側システムIVS等によって構成されている。以下、これらの構成の詳細を順に説明する。
【0018】
[遠隔側システム]
図1及び図2に示す遠隔側システム130は、複数台のドライバレス車両ADVから遠隔に存在している。遠隔側システム130は、自車両Amを含む複数台のドライバレス車両ADVの遠隔監視者ROによる運行管理を実現する。遠隔側システム130は、ドライバレス車両ADVに異常が生じた場合に、遠隔監視者ROによる遠隔での状況確認を可能にする。遠隔側システム130は、ドライバレス車両ADVの自動運転が継続困難な場合、動的な運転タスク(Dynamic Driving Task)を自動運転ECU50から遠隔監視者ROに引き継がせる。これにより、遠隔監視者ROは、ドライバレス車両ADVを遠隔で操縦可能となる。遠隔側システム130は、センタ通信機131、複数の遠隔者インターフェース132、及び遠隔制御装置140等によって構成されている。
【0019】
センタ通信機131は、公衆通信回線網を介して、インフラ側システム160、車両側システムIVS、及びモビリティサービスを利用するユーザのユーザ端末170(例えば、スマートフォン等)と通信可能である。センタ通信機131は、インフラ側システム160によって収集されたインフラ情報を受信する。センタ通信機131は、車両側システムIVSによって収集された車両情報を受信すると共に、遠隔側システム130の取得する入力情報、遠隔運転情報、及び監視者カメラ映像等を車両側システムIVSへ向けて送信する。センタ通信機131は、モビリティサービスの利用を予定しているユーザの入力に基づく利用申請情報をユーザ端末170から受信する。
【0020】
遠隔者インターフェース132は、遠隔監視施設CNTに配置された遠隔監視者RO及び運行管理者OM等の遠隔者に対して1つずつ設けられている。遠隔者インターフェース132には、入力デバイス133、遠隔者カメラ134、遠隔操作部135、遠隔側表示器136、及び遠隔側スピーカ137等が含まれている。
【0021】
入力デバイス133は、キーボード及びマウス等である。入力デバイス133には、遠隔者による端末操作が入力される。遠隔者カメラ134は、遠隔者の顔部及びその周辺を撮影するように設置されている。遠隔者カメラ134は、遠隔者の顔部を含む監視者カメラ映像を生成する。遠隔者カメラ134には、遠隔者の声を集音するマイクが設けられている。監視者カメラ映像には、マイクによって集音された音声が付属している。
【0022】
遠隔操作部135は、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリングホイール等である。遠隔操作部135には、特定のドライバレス車両ADVを遠隔操縦するための運転操作が、遠隔者によって入力される。遠隔側表示器136及び遠隔側スピーカ137は、ドライバレス車両ADVの遠隔監視に関連する情報であって、センタ通信機131によって受信されるインフラ情報及び車両情報等を遠隔者に提示する。
【0023】
遠隔制御装置140は、処理部151、RAM152、記憶部153、入出力インターフェース154、及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。処理部151は、RAM152へのアクセスにより、本開示の遠隔管理方法を実現するための種々の処理(インストラクション)を実行する。記憶部153には、処理部151によって実行される種々のプログラム(遠隔管理プログラム等)が格納されている。処理部151によるプログラムの実行により、遠隔制御装置140には、情報取得部141、操作取得部142、提示制御部143、及び運行管理部144等が構築される(図2参照)。
【0024】
情報取得部141は、入力デバイス133に入力される端末操作の入力情報、及び遠隔者カメラ134によって生成される監視者カメラ映像等を取得する。情報取得部141によって取得される入力情報及び監視者カメラ映像は、ドライバレス車両ADVに異常が発生した場合等に、運行管理部144及びセンタ通信機131を介して、ドライバレス車両ADVの車両側システムIVSに送信される。
【0025】
操作取得部142は、ドライバレス車両ADVの自動運転が継続できなくなった場合に、遠隔操作部135に入力される運転操作を示す遠隔運転情報を取得する。遠隔操作情報は、一例として、アクセル操作量、ブレーキ操作量、ステアリング操作量をそれぞれ示す複数の運転指示値を含んでなる。操作取得部142によって取得される遠隔運転情報は、運行管理部144及びセンタ通信機131を介して、自動運転が継続できなくなったドライバレス車両ADVの車両側システムIVSに送信される。
【0026】
提示制御部143は、センタ通信機131及び運行管理部144によって取得されるインフラ情報及び車両情報を、遠隔側表示器136及び遠隔側スピーカ137を用いて遠隔者に提示する。一例として、ドライバレス車両ADVの車室内の映像及び音声、並びにドライバレス車両ADVの走行経路の映像及び音声等が、遠隔側表示器136及び遠隔側スピーカ137によって遠隔者に提示される。遠隔者は、遠隔側表示器136及び遠隔側スピーカ137から提供される情報に基づき、ドライバレス車両ADVの状況を把握する。
【0027】
運行管理部144は、センタ通信機131を介して自動運転ECU50と連携し、ドライバレス車両ADVの運行を管理する。運行管理部144は、センタ通信機131を通じてユーザ端末170から利用申請情報を取得する。運行管理部144は、利用申請情報に基づき、管理下にあるドライバレス車両ADVの目的地及び経由地を設定し、設定した地点情報を自動運転ECU50に送信する。運行管理部144は、ドライバレス車両ADVの走行経路を設定し、設定した走行経路を自動運転ECU50に送信してもよい。
【0028】
運行管理部144は、ユーザ端末170から取得した利用申請情報を、各ユーザが利用を予定しているドライバレス車両ADVの自動運転ECU50と共有する。具体的に、運行管理部144は、利用申請情報に基づき、個々の経由地にてドライバレス車両ADVに搭乗を予定しているユーザ(搭乗者PS)の識別情報を、地点情報等と共に自動運転ECU50に送信する。加えて運行管理部144は、新たな利用申請情報を取得した場合、このユーザの利用に適した(例えは、最も近くにいる)ドライバレス車両ADVの自動運転ECU50に、当該ユーザの識別情報を逐次送信する。
【0029】
運行管理部144は、ドライバレス車両ADVの自動運転が継続できなくなった場合に、自動運転ECU50と連携し、自動運転ECU50による自動運転から、遠隔監視者ROによる遠隔運転への切り替えを実施する。運行管理部144は、遠隔運転への切り替え後、提示制御部143と連携してドライバレス車両ADVの車内外の最新状況を遠隔者に提示し続けると共に、操作取得部142にて取得される遠隔運転情報を車両側システムIVSに逐次送信する。
【0030】
[インフラ側システム]
図1に示すインフラ側システム160は、監視カメラ161を備えている。インフラ側システム160は、ドライバレス車両ADVの走行経路に設置されている。インフラ側システム160は、ドライバレス車両ADVの走行経路全体を漏れなく撮影できるように多数設置されてもよく、又は走行経路にある停留所及び交差点等の特定の地点のみに設置されていてもよい。
【0031】
インフラ側システム160は、公衆通信回線網を介して遠隔側システム130と通信可能である。インフラ側システム160は、監視カメラ161によって撮影された走行経路の監視映像を、インフラ情報として遠隔側システム130へ向けて送信する。インフラ側システム160は、監視カメラ161と異なるインフラセンサを備えていてもよい。こうした形態では、インフラセンサの検出情報が、インフラ側システム160から遠隔側システム130にインフラ情報として送信される。
【0032】
[車両側システム]
図1及び図3に示す車両側システムIVSを搭載する自車両Amは、車室内に搭乗者PSを搭乗させた状態で、遠隔側システム130の管理に従って運行される。自車両Amは、運転席DSにドライバが着座していない状態でも、自動運転ECU50の制御によって自律走行可能である。自動運転ECU50によって実施される自動運転は、上述のレベル4の自動運転であってもよく、遠隔監視者ROによる遠隔での常時周辺監視を前提としたレベル3の自動運転であってもよい。
【0033】
搭乗者PSは、ドライバレス車両ADVを用いたモビリティサービスの利用者(乗客)である。搭乗者PSは、ユーザ端末170及びユーザ端末170にインストールされたアプリケーションを用いてモビリティサービスを利用する。ユーザ端末170は、モビリティサービスの利用に必要な情報として、乗車予定場所(又は現在位置)、乗車予定時刻、降車予定場所、及び搭乗者PSを識別する識別情報等を含む利用申請情報を、遠隔側システム130に送信する。識別情報には、搭乗者PSの名前、年齢、性別、及び障がいの有無等の情報が含まれている。ユーザ端末170は、ドライバレス車両ADVへの搭乗時(チェックイン)及び降車時(チェックアウト)における搭乗者PSの個人認証にも利用される。また、モビリティサービスの利用料は、ユーザ端末170のアプリケーションを通じて支払われてよい。
【0034】
自車両Amには、搭乗者PSによる手動運転(以下、車内運転)を行うための車内操作部110が設けられている。例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリングホイール等の車内操作部110が、車内操作部110として運転席DSの前方に設けられている。言い替えれば、ドライバレス車両ADVでは、車内操作部110に最も近い座席が、運転席DSとなる。例えば、自動運転が継続困難となり、自動運転ECU50又は遠隔制御装置140によって車内運転が許可された場合、運転席DSに着座した搭乗者PSがドライバとなり、車内操作部110に入力される運転操作が受け付けられる。
【0035】
車両側システムIVSは、自動運転ECU50を主体として構成されている。自動運転ECU50は、自車両Amに搭載された車載ネットワークの通信バスに通信可能に接続されている。通信バスには、車内モニタ装置29、ユーザ受付端末120、周辺監視センサ30、ロケータ35、ナビゲーションECU38、車載通信機39、走行制御ECU40、ボディECU43、及びHMI制御装置10等が接続されている。これらの機器及びECU等のうち、特定のノード同士は、相互に直接的に電気接続され、通信バスを介することなく通信可能であってもよい。
【0036】
車内モニタ装置29は、自車両Amの車室内を撮影する複数の車室内カメラと、複数の車室内カメラを制御する制御ユニットと備えている。車室内カメラは、可視光カメラであってもよく、又は近赤外光源と組み合わされた近赤外カメラであってもよい。複数の車室内カメラのうち少なくとも1つは、運転席DSに着座する搭乗者PS(ドライバ)を撮影可能に設置されており、ドライバモニタとして機能する。また、複数の車室内カメラのうち別の1つは、ドアの近傍に設置され、自車両Amに乗り込もうとするユーザを撮影可能に設定されている。車内モニタ装置29は、車室内カメラによる撮像画像、又は撮像画像を画像解析した解析結果を、車内モニタ情報として自動運転ECU50等に提供する。車内モニタ情報には、搭乗者PSの人数、車室内における各搭乗者PSの位置、立っているか着座しているか等の各搭乗者PSの状態等を示す情報が含まれている。
【0037】
ユーザ受付端末120は、搭乗者PSが乗降時にユーザ端末170をかざすことができるように、自車両Amのドア近傍に設けられている。ユーザ受付端末120は、車室内に設置されていてもよく、自車両Amの外側面部(例えば、ドアを開けるボタンの近傍)に設置されていてもよく、又は車内外の両方に設置されていてもよい。ユーザ受付端末120は、自車両Amに搭乗を予定しているユーザ、言い替えれば、遠隔側システム130によって利用申請情報が取得されている予約済みのユーザの識別情報(以下、搭乗申請)を、車載通信機39を通じて運行管理部144から取得する。
【0038】
ユーザ受付端末120は、近距離無線通信(Near Field Communication,NFC)、或いは1次元コード又は2次元コード等を用いて、自車両Amに乗車しようとするユーザの識別情報をユーザ端末170から受信する。ユーザ受付端末120は、乗車しようとするユーザの識別情報と、予め取得していた搭乗申請とを照合し、乗車予定でないユーザ、言い替えれば、正しく搭乗予約を行っていないユーザの乗車を検知する。
【0039】
周辺監視センサ30は、自車両Amの周辺環境を認識する自律センサである。周辺監視センサ30には、例えばカメラユニット、ミリ波レーダ、ライダ、及びソナーのうちの1つ又は複数が含まれている。周辺監視センサ30の検出範囲は、自車両Amの全周囲を含むように設定されている。周辺監視センサ30は、自車周囲の検出範囲から移動物体及び静止物体を検出可能である。周辺監視センサ30は、自車周囲の物体の検出情報を自動運転ECU50等に提供する。
【0040】
ロケータ35は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサ等を含む構成である。ロケータ35は、GNSS受信機で複数の測位衛星から受信する測位信号、慣性センサの計測結果、及び通信バスに出力される車速情報等を組み合わせ、自車両Amの自車位置及び進行方向等を逐次測位する。ロケータ35は、測位結果に基づく自車両Amの位置情報及び方角情報を、ロケータ情報として通信バスに逐次出力する。
【0041】
ロケータ35は、地図データを格納した地図データベース(以下、地図DB)をさらに有している。地図DBは、多数の3次元地図データ及び2次元地図データを格納した大容量の記憶媒体を主体とする構成である。3次元地図データは、いわゆるHD(High Definition)マップであり、自動運転に必要な道路情報を含んでいる。ロケータ35は、現在位置周辺の地図データを地図DBから読み出し、自動運転ECU50等にロケータ情報と共に提供する。
【0042】
ナビゲーションECU38は、ロケータ情報に基づく現在位置の地点情報と、遠隔側システム130にて決定された目的地及び経由地等の地点情報とに基づき、現在位置から目的地へ向かう走行経路を設定する。ナビゲーションECU38は、遠隔側システム130にて設定された走行経路を利用してもよい。ナビゲーションECU38は、目的地までの走行経路を示す経路情報を、自動運転ECU50等に提供する。
【0043】
車載通信機39は、自車両Amに搭載された車外通信ユニットである。車載通信機39は、V2X(Vehicle to Everything)通信機として機能する。車載通信機39は、道路脇に設置された路側機及び自車周囲の他車両等との間で無線通信(V2I通信及びV2V通信等)を行い、種々の情報を送受信する。車載通信機39は、交通信号機の点灯パターンを示す信号情報、並びに停止車両、駐車車両、歩行者、及びサイクリスト等の検出情報を、路側機及び他車両から受信する。
【0044】
車載通信機39は、公衆通信回線網を介したセンタ通信機131との通信(V2N通信)により、自動運転ECU50及び遠隔制御装置140間での情報の共有を可能にする。車載通信機39は、自車両Amの状態を示す車両情報を遠隔側システム130に送信する。車両情報には、周辺監視センサ30のカメラユニットにて撮影される車外カメラ映像、及び車内モニタ装置29(車室内カメラ)によって撮影される車内カメラ映像等が含まれている。車載通信機39は、入力情報、遠隔運転情報、監視者カメラ映像、及び利用申請情報(搭乗申請)等を遠隔側システム130から受信する。車載通信機39は、路側機、他車両、及び遠隔側システム130から受信した情報を、HMI制御装置10及び自動運転ECU50等に提供する。
【0045】
走行制御ECU40は、マイクロコントローラを主体として含む電子制御装置である。走行制御ECU40は、ブレーキ制御ECU、駆動制御ECU、及び操舵制御ECUの機能を少なくとも有している。走行制御ECU40は、操作量検出センサ115と電気的に接続されている。操作量検出センサ115は、車内操作部110に入力された運転操作に基づく車内運転情報を走行制御ECU40へ向けて出力する。走行制御ECU40は、車内操作部110に入力されたアクセル操作量、ブレーキ操作量、ステアリング操作量をそれぞれ示す複数の運転指示値を、車内運転情報として操作量検出センサ115から取得する。
【0046】
走行制御ECU40は、自動運転ECU50が自動運転を行っている場合、自動運転ECU50の生成する制御指令に基づき、各輪のブレーキ力制御、車載動力源の出力制御、及び操舵角制御を継続的に実施する。一方、自車両Amが遠隔運転の状態にある場合、走行制御ECU40は、車載通信機39から入力される遠隔側システム130の指令(遠隔運転情報,運転指示値)に従い、各輪のブレーキ力制御、車載動力源の出力制御、及び操舵角制御を継続的に実施する。さらに、搭乗者PSによる車内運転が許可された場合、走行制御ECU40は、操作量検出センサ115から取得する車内運転情報(運転指示値)に従い、各輪のブレーキ力制御、車載動力源の出力制御、及び操舵角制御を継続的に実施する。
【0047】
ボディECU43は、マイクロコントローラを主体として含む電子制御装置である。ボディECU43は、自車両Amに搭載されたドアロックアクチュエータ45を制御する。ドアロックアクチュエータ45は、ボディECU43の指令信号に基づき、自車両Amに設けられたドアのロック機構の状態を、解錠状態及び施錠状態のうちで切り替える。ドアロックアクチュエータ45は、車室内及び車外のそれぞれついて、ロック機構の状態を個別に切り替え可能であってよい。
【0048】
HMI(Human Machine Interface)制御装置10は、処理部、RAM、記憶部、入出力インターフェース、及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。HMI制御装置10は、車内表示器21、車内スピーカ22、車外表示器24、及び車外スピーカ25等と共に車載報知システムを構成している。HMI制御装置10は、提示制御装置として機能し、車内表示器21及び車内スピーカ22等を用いた車室内への情報提示と、車外表示器24及び車外スピーカ25等を用いた車外への情報提示とを統合的に制御する。HMI制御装置10は、自動運転ECU50から取得する報知の実施要求に基づき、ドライバレス車両ADVの運行状況及び自動運転機能の動作状態等を示す報知を、車室内及び車外へ向けて実施する。
【0049】
車内表示器21及び車内スピーカ22は、自車両Amの車室内に設けられた車内報知器である。車内表示器21は、車室内の搭乗者PSへ向けて情報を表示する。全ての搭乗者PSが車内表示器21を視認できるように、自車両Amの車室内には、複数の車内表示器21が設置されている。車内表示器21には、種々の情報をカラー表示可能なカラーディスプレイが採用されている。車内スピーカ22は、報知音又は音声メッセージ等を車室内に再生させる。車内表示器21と同様に、複数の車内スピーカ22が、自車両Amの車室内に設置されてよい。
【0050】
車外表示器24及び車外スピーカ25は、自車両Amに設けられた車外報知器である。車外表示器24は、自車両Amの外側面に設置されており、車外へ向けて情報を表示する。車外表示器24は、文字表示可能なディスプレイであり、搭乗者PSが乗り降りするドアの近傍に少なくとも設けられている。車外表示器24は、自車両Amの前面及び後面にさらに設置されていてもよい。車外スピーカ25は、車外へ向けて報知音又は音声メッセージ等を再生する。車外表示器24及び車外スピーカ25は、自車両Amにおける現在の自動運転機能の動作状態を、自車周囲の歩行者、サイクリスト、及び他車両のドライバ等に通知する。
【0051】
[自動運転ECU]
自動運転ECU50は、処理部51、RAM52、記憶部53、入出力インターフェース54、及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。処理部51は、RAM52へのアクセスにより、本開示の自動運転制御方法を実現するための種々の処理(インストラクション)を実行する。記憶部53には、処理部51によって実行される種々のプログラム(自動運転制御プログラム及び車両用監視プログラム等)が格納されている。処理部51によるプログラムの実行により、自動運転ECU50には、自動運転機能及び車両監視機能を実現するための複数の機能部として、情報連携部61、環境認識部62、行動判断部63、制御実行部64、及び機器制御部65等が構築される(図3参照)。
【0052】
情報連携部61は、HMI制御装置10への情報提供と、HMI制御装置10、車内モニタ装置29、及びユーザ受付端末120等からの情報取得と、を実施する。情報連携部61は、HMI制御装置10、車内モニタ装置29、及びユーザ受付端末120との情報連携のためのサブ機能部として、ユーザ認証部70、状況把握部71、及び報知要求部72を有する。
【0053】
ユーザ認証部70は、自車両Amを利用するユーザ(搭乗者PS)に関する情報を把握する。ユーザ認証部70は、遠隔制御装置140から提供される利用申請情報をユーザ受付端末120と共有することで、ユーザの搭乗申請を取得する。ユーザ認証部70は、搭乗申請に基づき、各経由地にて自車両Amに乗り込む予定のユーザの人数、年齢及び性別等の情報を把握する。
【0054】
状況把握部71は、車内モニタ装置29から取得する車内モニタ情報に基づき、自車両Amの車室内の搭乗者PSの状況等を把握する。状況把握部71は、車内運転が許可された場合、運転席DSに搭乗者PSが着座しているか否か、及び、運転席DSに着座している搭乗者PSは運転操作可能な状態か否か等を継続的に把握する。
【0055】
状況把握部71は、車室内の継続的な監視により、車室内での怪我人又は急病人の発生、車室内での搭乗者PS同士のトラブルの発生、並びに搭乗者PSの問題行動等を検知する。一例として、車内運転が許可されていない状況下での搭乗者PSの運転席DSへの移動、及び自車両Amの車室内にある特定物(例えば、ドライブキー等)に触れる行動等を、状況把握部71は、問題行動として検知する。尚、問題行動とされる搭乗者PSの行動は、適宜変更されてよい。
【0056】
状況把握部71は、緊急停止ボタン117、緊急通報ボタン118、及び緊急避難ボタン119に入力される操作の操作情報を取得する。各ボタン117~119は、自車両Amの車室内に複数設けられている。各ボタン117~119は、搭乗者PSの着座する各シートの近傍に、搭乗者PSによって直ちに操作され易いように配置されている。緊急停止ボタン117には、自車両Amの走行を直ちに停止させる必要があるシーンにて、搭乗者PSによる押圧操作が入力される。緊急通報ボタン118には、遠隔側システム130等への通報が必要なシーンにて、搭乗者PSによる押圧操作が入力される。緊急避難ボタン119には、自車両Amを現在位置から避難させる必要があるシーンにて、搭乗者PSによる押圧操作が入力される。
【0057】
報知要求部72は、HMI制御装置10へ向けた報知の実施要求の出力により、自動運転機能の動作状態に同期したHMI制御装置10による報知を可能にする。報知要求部72は、自動運転機能の動作状態を示す制御状態情報を行動判断部63から取得し、制御状態情報に基づく実施要求をHMI制御装置10に出力する。これにより、報知要求部72は、車室内及び車外に向けて自動運転機能の動作状態を示す報知を、HMI制御装置10に実施させる。加えて、報知要求部72は、車載通信機39を介して遠隔制御装置140に報知の実施要求を出力する。報知要求部72は、遠隔側表示器136及び遠隔側スピーカ137(図2参照)を用いて、遠隔側システム130に紐づく遠隔監視者RO及び運行管理者OMに、自車両Amに関する情報を報知する。
【0058】
環境認識部62は、ロケータ35より取得するロケータ情報及び地図データと、周辺監視センサ30より取得する検出情報とを組み合わせ、自車両Amの走行環境を認識する。環境認識部62は、車載通信機39にて受信される検出情報を、走行環境の認識に用いることも可能である。環境認識部62は、ナビゲーションECU38から経路情報を取得し、取得した経路情報を行動判断部63に提供する。
【0059】
環境認識部62は、走行環境認識のためのサブ機能部として、物標把握部73及び道路把握部74を有する。物標把握部73は、自車両Amの周囲を走行する他車両等、自車周囲の動的な物標の相対位置及び相対速度等を把握する。道路把握部74は、自車両Amの走行する道路又は走行予定の道路に関連した道路情報を取得する。環境認識部62は、物標把握部73及び道路把握部74にて把握された情報、即ち、走行環境の認識結果を行動判断部63に逐次提供する。
【0060】
行動判断部63は、自動運転ECU50に運転操作の制御権がある場合、環境認識部62による走行環境の認識結果と、ナビゲーションECU38によって生成される経路情報とに基づき、自車両Amを走行させる予定走行ラインを生成する。行動判断部63は、生成した予定走行ラインを制御実行部64に出力することで、予定走行ラインに従って自車両Amを自律走行させる。行動判断部63は、自動運転機能を補完するサブ機能部として、制御切替部77を有する。
【0061】
制御切替部77は、走行制御ECU40と連携し、自動運転、遠隔運転、及び車内運転のうちで、自車両Amの制御状態を切り替える。制御切替部77は、遠隔監視施設CNTの遠隔監視者ROによって遠隔運転への移行が判断された場合、遠隔制御装置140と連携し、自動運転から遠隔運転に自車両Amの制御状態を遷移させる。遠隔運転への移行により、走行制御ECU40は、車載通信機39を通じて遠隔側システム130から受信する運転指示値に基づき、自車両Amを走行させる。制御切替部77は、自動運転及び遠隔運転の間で自車両Amの制御状態を切り替える場合、自車両Amを必ず一時停止させる。
【0062】
制御切替部77は、制御状態が自動運転又は遠隔運転である場合、走行制御ECU40にて、車内操作部110へ入力された運転操作を自車両Amの挙動に反映させないことで、搭乗者PSによる運転操作を禁止する。一方、制御切替部77は、遠隔監視者ROによって車内運転への移行が許可された場合、車内操作部110への搭乗者PSによる運転操作の入力を許可する。制御切替部77は、運転席DSに搭乗者PSが着座しており、かつ、運転操作が可能な状態(姿勢)であることを確認した場合、自動運転から車内運転に自車両Amの制御状態を遷移させる。車内運転への移行により、走行制御ECU40は、操作量検出センサ115から取得する運転指示値に基づき、自車両Amを走行させる。
【0063】
制御実行部64は、自動運転ECU50に運転操作の制御権がある場合、走行制御ECU40との連携により、行動判断部63にて生成された予定走行ラインに従って、自車両Amの加減速制御及び操舵制御等を実行する。具体的に、制御実行部64は、予定走行ラインに基づく制御指令を生成し、生成した制御指令を走行制御ECU40へ向けて逐次出力する。
【0064】
機器制御部65は、ボディECU43へ向けた制御指令の出力により、自車両Amに搭載された種々の車載機器の作動を制御する。機器制御部65は、ボディECU43と連携し、ドアロックアクチュエータ45を制御することで、自車両Amのドアのロック機構の状態を切り替える。
【0065】
[自車両に接近する注意者への対応]
ここまで説明したドライバレス車両ADVでは、上述したように、一時停止時に搭乗予定のない人間(以下、注意者UM,図4参照)が車室内に乗り込もうとする可能性がある。このような状況において、注意者UMへの対応が行われない場合、自車両Amが盗難されるリスク、及び搭乗者PSに悪影響が及ぶリスク等が懸念される。
【0066】
そのため自動運転ECU50は、注意者UMの接近を検知した場合、図4に示す一連の注意者対応を実施する。注意者対応には、注意者UMへ向けた車外報知、車外への避難を可能にするドアの解錠制御、遠隔監視施設CNTへの通報(以下、センタ通報)、及び自車両Amを注意者UMから遠ざける避難制御が少なくとも含まれている。以下、注意者UMの接近判定の詳細と、車外報知、解錠制御、センタ通報、及び避難制御を含む一連の注意者対応の詳細とを、図4に基づき、図1図3を参照しつつ説明する。
【0067】
<注意者の接近判定>
注意者UMの接近判定は、物標把握部73によって実施される。物標把握部73は、自車周囲の検出情報に基づき、自車両Amへの搭乗が予定されていない注意者UMの自車両Amへの接近を判定する。物標把握部73は、ユーザ認証部70との情報共有によって搭乗申請を参照し、ユーザの搭乗が予定されている乗車予定場所、並びに各乗車予定場所で乗り込む予定のユーザの人数、年齢及び性別等の搭乗者情報を取得する。物標把握部73は、搭乗者情報に基づき、自車両Amに接近する人間が、搭乗予定のユーザか、それ以外の注意者UMなのかを判別する。
【0068】
物標把握部73は、渋滞又は信号待ち等により、乗車予定場所及び降車予定場所等(以下、乗降地点)以外で自車両Amが停止している場合、自車両Amへ接近する人間を全て注意者UMと判定する。乗降地点は、利用申請情報に基づき運行管理部144によって設定されるドライバレス車両ADVの目的地及び経由地である。乗降地点は、自動運行における仮想のバス停である。一例として、停止中の自車両Amに注意者UMが数メートル程度の位置まで近づいた場合、物標把握部73は、注意者UMが自車両Amに接近したと判定する。
【0069】
物標把握部73は、自車両Amが乗降地点で停止している場合、搭乗者情報にない年齢又は性別の人間が自車両Amに接近したとき、この人間を注意者UMと判定する。加えて、物標把握部73は、乗降地点にて、自車両Amに乗り込もうとする人間がユーザか注意者UMかを判別する場合、車内モニタ装置29から状況把握部71に提供される車内モニタ情報を利用してもよい。
【0070】
物標把握部73は、自車両Amに乗り込もうとする人間の不適切な行動を把握した場合、この人間を注意者UMと判定する。具体的に、物標把握部73は、車内モニタ情報に基づき、ユーザ端末170をユーザ受付端末120にかざす等の正規の乗車手続きを行なわず、自車両Amに乗り込もうとする人間を検知した場合、この人間を注意者UMと判定する。さらに、物標把握部73は、閉まっているドアを強引に開けようとする人間、又は降車用のドアから乗り込もうとする人間等も、注意者UMと判定する。
【0071】
<注意者対応>
注意者対応における車外報知は、注意者UMの接近判定に基づき、自動運転ECU50及びHMI制御装置10の連携によって実施される。報知要求部72は、注意者UMへ向けて乗車不可を示す車外報知(以下、乗車不可警告)の実施要求をHMI制御装置10に出力する。これにより、HMI制御装置10は、車外表示器24及び車外スピーカ25を用いた乗車不可警告を実施する。乗車不可警告は、避難制御による移動が終了されるまで継続される。
【0072】
乗車不可警告では、「ご利用の予約が行なわれていません。」又は「お客様の利用はできません。」等のメッセージが、ドアの近傍(側方又は上方等,図1又は図4参照)に設けられた車外表示器24に表示される。さらに、車外表示器24に表示されるものと同じ音声メッセージが、車外スピーカ25により車外へ向けて再生される。さらに、「ご利用になられる場合は、アプリによる利用手続をお願いします」等の利用案内を行う音声メッセージがさらに再生されてもよい。
【0073】
解錠制御は、乗車不可警告の開始後、機器制御部65及びボディECU43の連携によって実施される。機器制御部65は、注意者UMの自車両Amへの接近が判定された場合、自車両Amの左右両側に設けられたドアのうちで、注意者UMが接近する側とは反対側のドア(以下、避難側ドア)を車室内から開けることができるように解錠する。避難用ドアは、通常は利用されない非常口等であってもよい。
【0074】
報知要求部72は、解錠制御による避難側ドアの解錠後、この避難側ドアが解錠されていることを示す車内報知の実施要求をHMI制御装置10に出力する。HMI制御装置10は、車内表示器21及び車内スピーカ22を用いた車内報知(以下、避難ドア案内)にて、避難側ドアを車室内から開けて車外に避難できることを搭乗者PSに示す。この避難ドア案内では、避難側ドアの位置及び開け方等が車内表示器21に表示されてよい。
【0075】
センタ通報は、乗車不可警告の開始後、注意者UMの接近を判定した状態が所定時間(例えば、10秒程度)以上継続した場合に実施される。報知要求部72は、注意者UMの接近を判定した状態が所定時間以上継続すると、HMI制御装置10と連携し、車内表示器21及び車内スピーカ22を用いて、遠隔監視施設CNTに注意者UMの接近を通報するか否かを問い合わせる。HMI制御装置10は、遠隔監視施設CNTへの通報が必要な場合、緊急通報ボタン118を押すように、表示及び音声メッセージを用いて案内する。搭乗者PSによる緊急通報ボタン118の押圧操作があり、車室内の搭乗者PSによって通報の実施が承認された場合、報知要求部72は、遠隔監視施設CNTへの通報を実施する。
【0076】
避難制御は、自車両Amを現在位置から移動させる走行制御である。行動判断部63は、注意者UMの接近判定に基づき、自車両Amが停止中の現在位置から移動可能か否かを判定する。行動判断部63は、自車両Amが移動可能と判定した場合、避難制御による走行を開始する。避難制御は、例えばセンタ通報の後に開始される。避難制御は、センタ通報を受けた遠隔監視者ROによって許可された場合に限り、実施されてもよい。機器制御部65は、避難制御による走行開始前に、全てのドアを車内及び車外から開けることができないように施錠する。
【0077】
物標把握部73は、避難制御による走行開始前に、注意者UMの自車両Amへの接触可能性を判定する。行動判断部63は、注意者UMに接触可能性がある場合、接触可能性がない場合よりも避難制御における自車両Amの移動速度を抑制する。注意者UMが自車両Amに既に触れている場合は、接触可能性がある場合に含まれる。移動速度が抑制された場合、行動判断部63は、注意者UMの自車両Amへの接触を許容しつつ、徐行程度の速度(例えば、時速数キロメートル程度)を維持するように自車両Amを発進させる。行動判断部63は、自車両Amを数メートル移動させ、注意者UMの接触可能性がなくなったタイミングで自車両Amを通常通り加速させる。
【0078】
行動判断部63は、自車両Amを所定距離(例えば、数メートル~十数メートル)移動させると、避難制御を終了し、自車両Amを一時停止させる。加えて、行動判断部63は、現在位置からの移動を開始した後、注意者UMについての搭乗申請がユーザ認証部70によって取得された場合、自車両Amの移動を中止する。この場合、注意者UMの接近判定は、解除される。尚、注意者UMについての利用申請情報は、注意者UMのユーザ端末170によって遠隔側システム130に提供されてもよく、又は車室内の搭乗者PSのユーザ端末170によって遠隔側システム130に提供されてもよい。
【0079】
注意者UMの接近判定後、行動判断部63にて自車両Amが移動可能でないと判定された場合、機器制御部65は、自車両Amの全てのドアを外側から開けることができないように施錠する。この場合、乗車不可警告は継続される。行動判断部63は、自車両Amが移動可能となった場合、全てのドアの施錠状態を維持しつつ、避難制御による移動を開始する。
【0080】
行動判断部63は、ここまで説明した通常の避難制御(以下、通常避難制御)に加えて、自車両Amを即時移動させる緊急用の避難制御(以下、緊急避難制御)を実施可能である。行動判断部63は、車室内に設けられた緊急避難ボタン119が搭乗者PSによって操作された場合、この緊急避難操作に基づき、緊急避難制御による移動を開始する。
【0081】
行動判断部63は、緊急避難制御にて、通常避難制御よりも現在位置から遠い場所へ自車両Amを移動させる。行動判断部63は、車室内の搭乗者PS及び遠隔監視施設CNTの遠隔監視者ROの少なくとも一方による停止指示を取得するまで、自車両Amの移動を継続する。具体的に、行動判断部63は、搭乗者PSが緊急停止ボタン117に押圧操作を入力した場合、又は遠隔監視者ROが入力デバイス133に停止指示を入力した場合、緊急避難制御を終了し、自車両Amを停止させる。
【0082】
[注意者対応処理及び緊急避難処理]
次に、ここまで説明した注意者対応及び緊急避難制御を実現するため、自動運転ECU50にて実施される注意者対応処理及び緊急避難処理の各詳細を、図5及び図6に基づき、図1図4を参照しつつ、さらに説明する。注意者対応処理及び緊急避難処理は、自動運転又は遠隔運転による自車両Amの運行が開始されたことに基づき、自動運転ECU50によって開始される。注意者対応処理及び緊急避難処理は、自車両Amの運行が終了するまで、自動運転ECU50によって継続的に実施される。
【0083】
<注意者対応処理>
図5に示す注意者対応処理のS11にて、環境認識部62は、自車両Amが停止中か否かを判定する。自車両Amが走行中の場合(S11:NO)、自車両Amの停止を待機する状態が継続される。自車両Amが停止中の場合(S11:YES)、物標把握部73は、S12にて車外監視を実施し、S13にて注意者UMが接近しているか否かを判定する。注意者UMの接近がない場合(S13:NO)、S11~S13の処理が繰り返される。
【0084】
注意者UMの接近が判定された場合(S13:YES)、報知要求部72は、S14にて、HMI制御装置10と連携し、乗車不可を示す車外報知を実施する。さらに、機器制御部65は、注意者UMの接近判定に基づき、S15にて、上述の解錠制御により、避難側ドアのロックを解除する。加えて、S15では、避難側ドアが解錠されていることを示す車内報知である避難ドア案内が実施される。これにより、搭乗者PSは、避難側ドアを開けて車外に避難可能であることを把握する。
【0085】
物標把握部73は、S16にて、注意者UMの接近状態が所定時間以上継続したか否かを判定する。注意者UMの接近状態が所定時間以上継続していない場合(S16:NO)、S11~S16の処理が繰り返される。一方、注意者UMの接近が所定時間以上継続していた場合(S16:YES)、報知要求部72は、S17にて、センタ通報の要否確認処理を実施する。センタ通報の実施が搭乗者PSによって承認された場合、即ち、緊急通報ボタン118が操作された場合、報知要求部72は、遠隔監視施設CNTへ向けてのセンタ通報を実施する。
【0086】
行動判断部63は、S18にて、自車両Amが現在位置から移動可能か否かを判定する。自車両Amが移動可能でない場合(S18:NO)、機器制御部65は、S19にて、自車両Amの全てのドアを施錠する。そして、物標把握部73は、S20にて、注意者UMが消失したか否かを判定する。注意者UMが消失した場合(S20:YES)、注意者対応処理は、一旦終了される。一方、注意者UMが消失しておらず、引き続き注意者UMが検知されている場合(S20:NO)、行動判断部63は、自車両Amが移動可能な状態になるのを待機する。
【0087】
自車両Amが移動可能である場合(S18:YES)、物標把握部73は、S21にて、注意者UMに自車両Amへの接触可能性があるか否かを判定する。注意者UMに自車両Amへの接触の可能性がある場合(S21:YES)、行動判断部63は、S22にて、接触の可能性がない場合よりも、自車両Amの移動速度を抑制する設定を適用する。一方、注意者UMに自車両Amへの接触の可能性がない場合(S21:NO)、こうした速度抑制設定は適用されない。行動判断部63は、S23にて、乗車不可警告を継続しつつ、通常避難制御による自車両Amの現在位置からの移動を開始させる。
【0088】
行動判断部63は、自車両Amの移動を開始させた後、S24にて、自車両Amの停止条件が成立したか否かを判定する。行動判断部63は、注意者UMの接近が解消した場合、予め規定されていた距離を移動した場合、搭乗者PSが緊急停止ボタン117に押圧操作を入力した場合、又は注意者UMについての搭乗申請が取得された場合等に、停止条件が成立したと判定する。停止条件が成立していない場合(S24:NO)、行動判断部63は、停止判定の成立を待機する。一方、停止条件が成立した場合(S24:YES)、行動判断部63は、S25にて、通常避難制御による自車両Amの移動を終了させる。避難後の自車両Amに対し注意者UMが再び接近した場合、自動運転ECU50は、注意者対応処理を再度実施し、注意者UMから自車両Amを遠ざける。
【0089】
<緊急避難処理>
図6に示す緊急避難処理のS41にて、状況把握部71は、搭乗者PSによる緊急避難ボタン119への緊急避難操作の有無を判定する。緊急避難操作がない場合(S41:NO)、S41の判定が繰り返されることで、緊急避難操作の入力を待機した状態が維持される。一方、緊急避難操作があった場合(S41:YES)、緊急避難制御を開始する。緊急避難制御は、通常避難制御に対し優先して実施される。機器制御部65は、S42にて、自車両Amの全てのドアを、車内及び車外から開けることができないように施錠する。
【0090】
行動判断部63は、S43にて、自車両Amが現在位置から移動可能か否かを判定する。自車両Amが移動可能でない場合(S43:NO)、状況把握部71は、S44にて、緊急避難制御を解除する操作の有無を判定する。一例として、搭乗者PSによる緊急停止ボタン117の押圧操作又は遠隔監視者ROによる入力デバイス133への入力操作が、緊急避難制御の解除操作とされる。解除操作があった場合(S44:YES)、緊急避難処理は、緊急避難操作の入力を待機した状態に戻る。一方、解除操作がない場合(S44:NO)、行動判断部63は、自車両Amが移動可能な状態になるのを待機する。
【0091】
自車両Amが移動可能である場合(S43:YES)、行動判断部63は、S45にて、緊急避難制御による自車両Amの現在位置からの緊急移動を開始させる。このとき、報知要求部72は、HMI制御装置10と連携し、移動開始を通知する車外報知を実施してもよい。行動判断部63は、S46にて、搭乗者PS及び遠隔監視者ROの少なくとも一方による停止指示が取得されたか否かを判定する。停止指示の取得がない場合(S46:NO)、S46の判定が繰り返されることで、停止指示の取得が待機される。これにより、行動判断部63は、搭乗者PS又は遠隔監視者ROによる停止指示を取得するまで、走行可能な方向への自車両Amの走行を継続させる。そして、停止指示が取得されると(S46:YES)、行動判断部63は、S47にて、緊急避難制御による自車両Amの移動を終了させる。
【0092】
[搭乗者による問題行動への対応]
ここまで説明した車外の注意者UMへの対応に加えて、自動運転ECU50は、車内監視を継続的に行うことで、車室内の搭乗者PSによる問題行動に対応する。以下、自動運転ECU50にて実施される行動警告処理及び盗難通報処理の各詳細を、図7及び図8に基づき、図1図4を参照しつつ、さらに説明する。行動警告処理及び盗難通報処理は、自動運転又は遠隔運転による自車両Amの運行が開始されたことに基づき、自動運転ECU50によって開始される。行動警告処理及び盗難通報処理は、自車両Amの運行が終了するまで、自動運転ECU50により所定の時間間隔で開始される。
【0093】
<行動警告処理>
図7に示す行動警告処理は、搭乗中の搭乗者PSの問題行動に対して車内警告を行う処理である。行動警告処理のS61では、状況把握部71が、車内モニタ情報を用いた車内監視を実施する。状況把握部71は、S61にて取得した車内モニタ情報に基づき、S62にて、搭乗者PSの問題行動が車内モニタ装置29によって検知されたか否かを判定する。上述したように、車内モニタ装置29は、車内運転が許可されていない状況下での運転席DSへの搭乗者PSの移動、及びドライブキーへの搭乗者PSの接触等を問題行動として検知する。問題行動の検知がない場合(S62:NO)、今回の行動警告処理は終了される。
【0094】
対して、状況把握部71が問題行動を検知したと判定した場合(S62:YES)、報知要求部72は、S63にて、HMI制御装置10と連携し、検知した問題行動に紐づく車内警告を実施する。具体的に、搭乗者PSの運転席DSへの移動が検知された場合、報知要求部72は、車内表示器21及び車内スピーカ22の少なくとも一方を用いて、運転席DSからの離席を促す車内警告を実施する。この場合、報知要求部72は、車内操作部110に触れないように注意を促す車内警告を実施してもよい。また、搭乗者PSのドライブキーへの接触が検知された場合、報知要求部72は、車内表示器21及び車内スピーカ22の少なくとも一方を用いて、ドライブキーに触れないように注意を促す車内警告を実施する。
【0095】
報知要求部72は、車内警告の実施後、S64にて、自車両Amを遠隔監視する遠隔監視施設CNTの遠隔監視者ROに、搭乗者PSによる問題行動の発生を通報する。こうしたセンタ通報では、問題行動の内容も、遠隔監視者ROに通知される。具体的には、搭乗者PSの運転席DSへの移動、及びドライブキーへの接触等の発生が、センタ通報により遠隔監視者ROに通知される。以上によれば、遠隔監視者ROは、搭乗者PSの行動が、問題行動ではなく、緊急事態への対応のための行動なのか否かを、搭乗者PSへの直接的な確認によって判断できる。
【0096】
<盗難報知処理>
図8に示す盗難報知処理は、ドライバレス車両ADVの盗難(バスジャック)の発生を、自車周囲及び遠隔監視施設CNTに報知する処理である。盗難報知処理のS71では、状況把握部71が、盗難が発生したか否かを判定する。盗難が発生していない場合(S71:NO)、今回の盗難報知処理は、終了される。
【0097】
対して、盗難が発生したと判定された場合(S71:YES)、報知要求部72は、S72にて、遠隔監視施設CNTに盗難の発生を通報する。報知要求部72は、遠隔監視施設CNTに加えて、警察又は警備会社等への通報を実施してもよい。さらに、報知要求部72は、S73にて、HMI制御装置10と連携し、車外表示器24を用いて、盗難の発生を自車周囲に報知する。一例として、「車両の盗難が発生しています。本車両から離れてください。」等の文字メッセージが、車外表示器24に点滅表示される。ドライバレス車両ADVの盗難を知らせる車外報知は、遠隔監視施設CNTの遠隔監視者ROによって所定の停止操作が入力されるまで継続される。
【0098】
(第一実施形態まとめ)
ここまで説明した第一実施形態では、自車両Amに接近する注意者UMに対し、自車両Amに設けられた車内表示器21及び車内スピーカ22を用いた乗車不可を示す車外報知が実施される。こうした車外報知により、自車両Amへの搭乗が予定されていない注意者UMの自車両Amへの乗り込みは、抑止され得る。したがって、ドライバが搭乗していない場合でも、自車両Amに接近する注意者UMへの対応が可能になる。その結果、ドライバレス車両ADVとして運用される車両の盗難リスク、ドライバレス車両ADVに搭乗する搭乗者PSに悪影響が及ぶリスク等が、低減可能となる。
【0099】
加えて第一実施形態では、停止中の自車両Amに注意者UMが接近した場合、行動判断部63は、自車両Amが停止中の現在位置から移動可能か否かを判定する。そして、行動判断部63は、移動可能と判定した場合、自車両Amを現在位置から移動させる。このような避難制御によって自車両Amを注意者UMから遠ざけることによれば、注意者UMに起因する自車両Amのリスクは、確実に低減され得る。
【0100】
また第一実施形態では、車室内に設けられた緊急避難ボタン119が搭乗者PSによって操作された場合、行動判断部63は、緊急避難ボタン119の操作がない場合よりも、自車両Amを現在位置よりも遠い場所へ移動させる。こうした緊急避難制御によれば、搭乗者PSの判断を利用して、注意者UMに起因する自車両Amのリスクを効果的に低減することが可能になる。
【0101】
さらに第一実施形態では、報知要求部72により、注意者UMの自車両Amへの接触可能性が判定される。そして、注意者UMに接触可能性がある場合、行動判断部63は、接触可能性がない場合よりも移動速度を抑制する。以上によれば、注意者UMに接触可能性がある場合でも、注意者UMの接触を許容しつつ、自車両Amを注意者UMから確実に遠ざけることが可能になる。その結果、注意者UMに起因する自車両Amのリスクは、確実に低減され得る。
【0102】
加えて第一実施形態では、行動判断部63にて自車両Amが移動可能でないと判定された場合、自車両Amのドアが外側から開けることができないように施錠される。以上によれば、自車両Amを注意者UMから遠ざけることができないシーンでも、車室内の搭乗者PSに悪影響が及ぶリスクは、確実に低減され得る。
【0103】
また第一実施形態では、自車両Amへの搭乗申請がユーザ認証部70によって取得される。そして、自車両Amが現在位置からの移動を開始した後、注意者UMについての搭乗申請がユーザ認証部70によって取得された場合、行動判断部63は、自車両Amの移動を中止する。以上によれば、ドライバレス車両ADVに危害を加える意図がなく、単に搭乗申請が行なわれていなかったユーザを、注意者UMと判定し続ける事態は回避され得る。
【0104】
さらに第一実施形態では、車室内の搭乗者PS及び自車両Amを遠隔監視する遠隔監視者ROの少なくとも一方による停止指示を取得するまで、行動判断部63は、自車両Amの移動を継続する。その結果、注意者UMによる悪影響が及ばない位置まで、自車両Amを確実に避難させることが可能になる。
【0105】
加えて第一実施形態では、注意者UMの接近を判定した状態が所定時間以上継続した場合、車室内に設けられた車内表示器21及び車内スピーカ22を用いて、遠隔監視施設CNTに注意者UMの接近を通報するか否かの問い合わせが実施される。そして、車室内の搭乗者PSによって通報の実施が承認された場合、報知要求部72は、遠隔監視施設CNTへの通報を実施する。以上によれば、搭乗者PSによって高リスクと判断される注意者UMが自車両Amに接近した場合、遠隔監視施設CNTの遠隔監視者ROは、こうした注意者UMの接近を漏れなく把握できる。
【0106】
また第一実施形態では、自車両Amに設けられた車内操作部110に最も近い運転席DSへの搭乗者PSの移動が検知される。そして、報知要求部72は、搭乗者PSの運転席DSへの移動が判定された場合、車室内に設けられた車内表示器21及び車内スピーカ22を用いて、運転席DSからの離席を促す車内警告を実施する。以上によれば、車室内における搭乗者PSの問題行動であって、ドライバレス車両ADVの盗難に繋がり得る行動を、適切に抑止することが可能になる。
【0107】
さらに第一実施形態では、運転席DSからの離席を促す車内警告の実施後、自車両Amを遠隔監視する遠隔監視者ROに、搭乗者PSの運転席DSへの移動が通報される。故に、遠隔監視者ROは、ドライバレス車両ADVの盗難に繋がり得る搭乗者PSの行動を、早期に漏れなく把握できる。
【0108】
加えて第一実施形態では、自車両Amの車室内にあるドライブキーに搭乗者PSが触れたことが検知される。そして、報知要求部72は、搭乗者PSがドライブキーに触れたと判定された場合、車室内に設けられた車内表示器21及び車内スピーカ22を用いて、ドライブキーに触れないように注意を促す車内警告を実施する。こうした車内警告によっても、ドライバレス車両ADVの盗難に繋がり得る搭乗者PSの問題行動を、適切に抑止することが可能になる。
【0109】
また第一実施形態では、注意者UMの自車両Amへの接近が判定された場合、自車両Amの左右両側に設けられたドアのうちで、注意者UMが接近する側とは反対側に位置する避難側ドアが、車室内から開けることができるように解錠される。故に、注意者UMが高リスクな人間である場合、搭乗者PSは、避難側ドアを開けて車外に避難できる。その結果、搭乗者PSに悪影響が及ぶリスク等は、より確実に低減され得る。
【0110】
さらに第一実施形態では、避難側ドアの解錠後に、車室内に設けられた車内表示器21及び車内スピーカ22を用いて、避難側ドアが解錠されていることを示す車内報知が実施される。以上によれば、搭乗者PSは、避難側ドアを開けて車外に避難できることを、確実に把握し得る。その結果、搭乗者PSに悪影響が及ぶリスク等は、さらに低減され得る。
【0111】
尚、上記第一実施形態では、遠隔監視施設CNTが「通報先」に相当し、遠隔監視者ROが「監視者」に相当し、車内表示器21及び車内スピーカ22が「車内報知器」に相当し、車外表示器24及び車外スピーカ25が「車外報知器」に相当する。また、自動運転ECU50が「車両用監視装置」に相当し、行動判断部63が「行動制御部」に相当し、機器制御部65が「施錠制御部」に相当し、ユーザ認証部70が「申請取得部」に相当する。さらに、状況把握部71が「車内監視部」に相当し、報知要求部72が「報知実施部」に相当し、物標把握部73が「接近判定部」に相当し、車内操作部110が「運転操作部」に相当する。
【0112】
(第二実施形態)
本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。図9に示す第二実施形態の自動運転ECU50は、処理部51によるプログラムの実行により、映像配信部66及び保安機能部67をさらに備える。以下、第二実施形態の自動運転ECU50によって実施される映像配信処理、注意者対応処理、盗難報知処理、及び乗っ取り対応処理の各詳細を、図10図13に基づき、図1図2及び図9を参照しつつ説明する。
【0113】
<映像配信処理>
図10に示す映像配信処理は、ドライバレス車両ADVのユーザに紐づくユーザ端末170へ向けて、車内モニタ装置29(車室内カメラ)による車内カメラ映像を、概ねリアルタイムに配信する処理である。映像配信処理は、主に映像配信部66によって実施される。ドライバレス車両ADVに搭乗予定のユーザであって、遠隔側システム130によって搭乗申請が受け付けられている予約済みのユーザ(承認者)は、ユーザ端末170のアプリケーションから車内カメラ映像の配信を要求する。映像配信部66は、ユーザ端末170からの配信要求の取得に基づき、映像配信処理を開始する。
【0114】
映像配信処理のS201にて、映像配信部66は、配信の要求元となるユーザを特定する。映像配信部66は、遠隔制御装置140から提供される利用申請情報、及び配信要求と共に取得するユーザの識別情報等を、ユーザの特定に使用する。映像配信部66は、S201にて特定したユーザについて、S202にて、搭乗申請が受け付けられた承認済のユーザか否かを判定する。配信要求元のユーザが承認済みのユーザでない場合(S202:NO)、映像配信部66は、車内カメラ映像の提供を行わない。映像配信部66は、S205にて、要求元のユーザ端末170へ向けてエラーメッセージを送信する。
【0115】
配信要求元のユーザが承認済みのユーザである場合(S202:YES)、映像配信部66は、S203にて、承認済みユーザへの車内カメラ映像の提供が可能な配信可能期間か否かを判定する。配信可能期間か否かは、承認済みユーザの搭乗予定地点と自車両Amの現在位置との位置関係、及び承認済みユーザの搭乗予定時刻と現在時刻との時間関係等に基づき判断される。
【0116】
映像配信部66は、承認済みユーザの搭乗予定地点を示す情報と、自車両Amの現在位置を示す情報とを取得する。映像配信部66は、搭乗予定地点から所定距離(例えば、数100m~1km程度)以内となる範囲まで自車両Amが接近した場合に、配信可能期間であると判定する。また、映像配信部66は、承認済みユーザの搭乗予定時刻を示す情報と、現在時刻を示す情報とを取得する。映像配信部66は、搭乗予定時刻まで所定時間(例えば、数分~10分程度)以内となった場合に、配信可能期間であると判定する。映像配信部66は、上記の位置条件及び時間条件のうち、一方が満たされた場合に車内カメラ映像の配信を許可してもよく、又は両方の条件が満たされた場合に車内カメラ映像の配信を許可してもよい。
【0117】
映像配信部66は、承認済みユーザの降車後、所定時間(例えば、数分~10分程度)が経過するまで、配信可能期間を継続し、車内カメラ映像のユーザ端末170への配信を許可し続ける。映像配信部66は、承認済みユーザの降車後、所定時間が経過したタイミングで配信可能期間を終了させる。
【0118】
映像配信部66は、承認済みユーザへの配信可能期間でないと判定した場合(S203:NO)、車内カメラ映像の提供を行わず、S205にて、要求元のユーザ端末170へ向けてエラーメッセージを送信する。この場合、例えば「配信可能時間外です。」等の通知が、承認済みユーザのユーザ端末170へ向けて送信される。対して、承認済みユーザへの配信可能期間であると判定した場合(S203:YES)、映像配信部66は、S204にて、車室内カメラによる車内カメラ映像のユーザ端末170への配信を開始する。
【0119】
映像配信部66は、複数の車室内カメラが車室内に設けられている場合、ユーザ端末170からの要求に応じて、ユーザ端末170に提供する車内カメラ映像の映像を複数のうちで切り替える。加えて、映像配信部66は、ユーザ端末170からの要求に応じて、ユーザ端末170に提供する車内カメラ映像の解像度を変更可能であってもよく、車内カメラ映像のズームイン及びズームアウトを可能にしてもよい。
【0120】
以上の映像配信処理の一部又は全てのステップは、遠隔制御装置140によって実施されてもよい。即ち、映像配信部66に相当する機能部が、自動運転ECU50ではなく、遠隔制御装置140に構築されていてもよい。遠隔制御装置140に設けられる映像配信部66は、ドライバレス車両ADVから車内カメラ映像を取得し、取得した車内カメラ映像を承認済みユーザに紐づくユーザ端末170に提供する。
【0121】
<注意者対応処理>
図11に示す注意者対応処理は、予め設定された乗降地点とは異なる場所にて、自車両Amに接近する注意者UMに対応する処理である。注意者対応処理は、主にユーザ認証部70、報知要求部72、物標把握部73、及び保安機能部67等によって実施される。注意者対応処理では、車室内の搭乗者PSにより、注意者UMの個人認証を実施してよいか否かが判断される。注意者対応処理は、第一実施形態と同様に、自動運転又は遠隔運転による自車両Amの運行が開始されたことに基づき開始され、自車両Amの運行が終了するまで継続的に実施される。
【0122】
注意者対応処理のS211にて、環境認識部62は、乗降地点以外で自車両Amが停止しているか否かを判定する。自車両Amが走行中の場合又は乗降地点で停止している場合(S211:NO)、乗降地点以外での停止を待機した状態が継続される。対して、乗降地点以外で自車両Amが停止している場合(S211:YES)、物標把握部73は、S212にて車外監視を実施し、S213にて注意者UMが接近しているか否かを判定する。注意者UMの接近がない場合(S213:NO)、S211~S213の処理が繰り返される。
【0123】
注意者UMの接近が判定された場合(S213:YES)、報知要求部72は、S214にて、HMI制御装置10と連携し、車内表示器21及び車内スピーカ22を用いて、車室内の搭乗者PSに対し、注意者UMの個人認証を行うか否かの問い合わせを実施する。この場合の車内問い合わせでは、「車外のお客様のお知り合いの方がいらっしゃいましたら、お知らせください。」等のメッセージが、車内表示器21に表示される。車内表示器21には、「搭乗を許可する」等のタッチアイコンがさらに表示される。加えて車内スピーカ22は、車内表示器21に表示されるものと同じ音声メッセージを車室内に再生する。
【0124】
状況把握部71は、S215にて、搭乗者PSによる車内承認があったか否かを判定する。搭乗者PSは、タッチアイコンへのタッチ操作の入力等により、車内承認を実施する。搭乗者PSは、ユーザ端末170のアプリケーションを用いて、車内承認を実施してもよい。搭乗者PSによる車内承認がない場合(S215:NO)、報知要求部72は、S216にて、センタ通報を実施する。これにより、搭乗者PSと繋がりのない注意者UMの自車両Amへの接近が遠隔監視施設CNTに通知される。さらに、報知要求部72は、S219にて、HMI制御装置10と連携し、車外表示器24及び車外スピーカ25を用いた車外報知を実施する。この場合、乗車不可を示す乗車不可警告が注意者UMに対して実施される。
【0125】
一方、搭乗者PSによる車内承認があった場合(S215:YES)、ユーザ認証部70は、S217にて、注意者UMの個人認証を実施する。注意者UMがモビリティサービスのユーザとして予め登録されている場合、注意者UMは、例えばユーザ受付端末120にユーザ端末170をかざすことで個人認証を完了できる。個人認証は、ユーザ端末170のアプリケーションを利用して実施されてもよく、又は車外カメラ映像の画像解析によって実施されてもよい。
【0126】
個人認証が完了した場合(S217:YES)、保安機能部67は、S218にて、注意者UMを認証済みのユーザとし、自車両Amへの乗車を許可する。この場合、機器制御部65及びボディECU43の連携により、乗車用のドアのロックが解除される。以上により、注意者UMとして検知されたユーザの乗車が可能になる。対して、個人認証が完了しなかった場合(S217:NO)、保安機能部67は、注意者UMの乗車を許可しない。この場合のS219でも、乗車不可を示す乗車不可警告が注意者UMに対して実施される。
【0127】
<盗難報知処理>
図12に示す盗難報知処理は、運行時間外にて駐車されていた自車両Amが盗難された場合に、自車両Amが盗難車両となったことを車外警告する処理である。盗難報知処理では、レッカー車両又は回送車両等により自車両Amが自走しない状態で搬送される盗難が想定されている。盗難報知処理は、主電源オン又はイグニッションオン等、自車両Amを走行可能な状態にするための機能オン処理の実施に基づき、保安機能部67によって開始される。
【0128】
盗難報知処理のS231では、保安機能部67が、盗難検知の機能について、オン状態にあるか否かを判定する。盗難検知機能は、運行管理者OM等の特別な権限をもった操作者のみがオフ状態にできる。盗難検知機能のオフ切り替えには、パスワード等の入力が必要とされてもよい。例えば、自車両Amが正規の所有者によって輸送される場合に、盗難検知機能はオフ状態にされる。盗難検知機能がオフ状態である場合(S231:NO)、保安機能部67は、S235にて、正常な状態であると判定し、盗難報知処理を終了する。
【0129】
保安機能部67は、盗難検知機能がオン状態である場合(S231:YES)、S232にて、自車両Amの現在位置を把握する。保安機能部67は、環境認識部62及びロケータ35と連携し、機能オン処理に基づき把握される自車両Amの位置情報を、起動場所を示す情報として取得する。さらに、保安機能部67は、S233にて、前回の機能オフ処理の際に記憶された停止場所を示す情報を位置記憶部79から読み出す。位置記憶部79は、主電源オフ又はイグニッションオフ等、自車両Amの機能オフ処理に基づき、自車両Amの位置情報を取得する。位置記憶部79は、取得した位置情報を自車両Amの停止場所を示す情報として記憶する。以上のS232及びS233の実施順序は、適宜変更されてよい。
【0130】
保安機能部67は、S234にて、起動場所を示す位置情報と、停止場所を示す位置情報とが整合しているか否かを判定する。起動場所と停止場所とのずれが、GNSSの精度に相当する程度(例えば数m以内)であれば、保安機能部67は、起動場所と停止場所とが整合していると判定する。起動場所と停止場所とが整合している場合(S234:YES)、保安機能部67は、S235にて、盗難は発生しておらず、正常な状態であると判定する。
【0131】
一方、起動場所と停止場所とが整合していない場合(S234:NO)、保安機能部67は、S236にて、盗難が発生したと判定する。この場合、報知要求部72は、盗難発生を示す車外警告を実施する。具体的に、報知要求部72は、「車両が盗難されました。本車両は盗難車両です。」等の文字メッセージを、車外表示器24に表示させる。加えて報知要求部72は、「盗難が発生しました」との音声メッセージ又は大音量の警報音等を、車外スピーカ25によって再生させる。さらに、報知要求部72は、盗難発生を示す通知を、S232にて取得した起動場所の位置情報と共に、遠隔監視施設CNT、警察、及び警備会社等に送信する。
【0132】
<乗っ取り対応処理>
図13に示す乗っ取り対応処理は、自車両Amの盗難の発生を遠隔監視施設CNTに通報する処理である。乗っ取り対応処理では、盗難者による車両側システムIVSの一部の機能の乗っ取りが想定されている。乗っ取り対応処理は、車両側システムIVSの一部が機能しない状態でも、搭乗者PSのユーザ端末170と連携することで、遠隔監視施設CNTへの通報を可能にする。乗っ取り対応処理は、自動運転又は遠隔運転による自車両Amの運行が開始されたことに基づき開始され、自車両Amの運行が終了するまで継続的に実施される。
【0133】
乗っ取り対応処理のS251では、保安機能部67が、状況把握部71にて把握される車室内の状況に基づき、盗難が発生したか否かを判定する。盗難が発生していない場合(S251:NO)、今回の乗っ取り対応処理は、終了される。対して、盗難が発生したと判定した場合(S251:YES)、保安機能部67は、車両側システムIVSに異常が生じているか否か、言い替えれば、盗難に関連して機能の乗っ取りが生じているか否かを判定する。
【0134】
具体的に、保安機能部67は、S252にて、車載通信機39を主体とする車外通信システムに異常があるか否かを判定する。車外通信システムに異常があり(S252:YES)、遠隔監視施設CNT等に通報できない可能性がある場合、保安機能部67は、S253にて、車室内にあるユーザ端末170との連携を実施する。連携先となるユーザ端末170は、搭乗者PSの所有するユーザ端末170であって、例えば自車両Amの車内Wi-Fi(登録商標)に接続されたユーザ端末170である。保安機能部67は、車室内にある複数のユーザ端末170と連携してもよい。保安機能部67は、S253にて連携したユーザ端末170に、S259にて、センタ通報の実施を要請する。ユーザ端末170は、S259での保安機能部67からの要請に基づき、自端末にて取得している現在の位置情報を、盗難発生の通知と共に遠隔監視施設CNT等に送信する。
【0135】
一方、車外通信システムに異常がない場合(S252:NO)、保安機能部67は、S254にて、ロケータ35を主体とする測位システムに異常があるか否かを判定する。測位システムに異常があり(S254:YES)、正しい自車両Amの位置情報を取得できない可能性がある場合、保安機能部67は、S253と同様に、S256にて、車室内のユーザ端末170との連携を実施する。保安機能部67は、S256にて連携したユーザ端末170から、S257にて、最新の位置情報を取得する。
【0136】
車外通信システム及び測位システムの両方に異常がない場合(S254:NO)、保安機能部67は、S255にて、自車両Amの位置情報をロケータ35から取得する。S258では、報知要求部72が、車載通信機39を用いて、盗難の発生を通知するセンタ通報を実施する。このセンタ通報では、S255又はS257にて取得した位置情報であって、自車両Amの現在位置を示す位置情報が、遠隔監視施設CNT等に送信される。さらに、報知要求部72は、S260にて、車外表示器24及び車外スピーカ25を用いて、盗難の発生を自車周囲にも報知する。
【0137】
(第二実施形態まとめ)
ここまで説明した第二実施形態でも、自車両Amに接近する注意者UMへの車外報知により、注意者UMの自車両Amへの乗り込みが抑止される。その結果、第一実施形態と同様の効果を奏し、ドライバが搭乗していない場合でも、自車両Amに接近する注意者UMへの対応が可能になる。
【0138】
加えて第二実施形態では、予め設定された乗降地点とは異なる場所にて、注意者UMの自車両Amへの接近が判定された場合、注意者UMの個人認証を行うか否かを問い合わせが、車室内に設けられた車内表示器21及び車内スピーカ22を用いて実施される。そして、車室内の搭乗者PSにより個人認証の実施が許可された場合、注意者UMの個人認証が行われる。故に、自車両Amの搭乗者PSに関連する人物が、正規の手続きを行わないまま自車両Amに接近した場合でも、搭乗者PSの協力のもと、この人物を自車両Amに乗車させることが可能になる。その結果、ドライバレス車両ADVの利便性がいっそう向上する。
【0139】
また第二実施形態では、自車両Amへの搭乗予約が受け付けられた承認済みユーザに紐づくユーザ端末170からの要求に基づき、ユーザ端末170に車内カメラ映像が配信される。故に、ドライバレス車両ADVの利用を予定しているユーザは、不審者等が乗っているか否か、過度に混雑しているか否か等を、乗車前に確認できる。また、ドライバレス車両ADVがライドへリング用の送迎車両であり、相乗りを前提としていない車両である場合、ユーザは、他の乗客が誤って搭乗していないことを、乗車前に確認できる。
【0140】
さらに第二実施形態では、承認済みユーザの搭乗予定地点から所定距離以内となる範囲まで自車両Amが接近した場合に、車内カメラ映像のユーザ端末170への配信が許可される。こうした配信可能期間の設定によれば、車内カメラ映像の配信先が、適切なユーザの範囲に限定され得る。
【0141】
加えて第二実施形態では、承認済みユーザの搭乗予定時刻まで所定時間以内となった場合に、車内カメラ映像のユーザ端末170への配信が許可される。こうした配信可能期間の設定によっても、車内カメラ映像の配信先が、適切なユーザの範囲に限定され得る。
【0142】
また第二実施形態では、承認済みユーザの降車後、所定時間が経過するまで車内カメラ映像のユーザ端末170への配信が許可され続ける。以上によれば、ユーザは、降車後に車内カメラ映像を見ることで、車室内に忘れ物をしたか否かを確認できる。
【0143】
さらに第二実施形態では、自車両Amの機能オフ処理に基づき、自車両Amの停止場所が位置記憶部78に記憶される。そして、機能オン処理に基づき把握される自車両Amの起動場所が停止場所と異なる場合、盗難発生を示す車外警告が実施される。以上によれば、機能オフ処理後に盗難され、自車両Amが遠方に運ばれた場合でも、自車両Amの発見につながる処理が確実に実行され得る。
【0144】
加えて第二実施形態では、バスジャック等の盗難が運行中の自車両Am発生した場合、車室内の搭乗者PSに紐づくユーザ端末170の位置情報が、遠隔監視施設CNTに通知される。故に、車両側システムIVSの一部が盗難によって機能しなくなり、車両側システムIVSから遠隔監視施設CNTへの通報が不可能な状況下でも、ユーザ端末170又はそのアプリケーションの機能を利用して、遠隔監視施設CNTへの通報が行われ得る。尚、上記第二実施形態では、車内モニタ装置29が「車室内カメラ」に相当する。
【0145】
(第三実施形態)
本開示の第三実施形態は、第二実施形態の変形例である。図14に示す第三実施形態の自動運転ECU50は、モビリティサービスを提供する車両ではなく、個人所有を前提としたPOV(Personally Owned Vehicle)に搭載されている。自動運転ECU50は、POVである自車両Amを、少なくとも特定のエリア(例えば、商業施設の駐車場等)において自律走行させることが可能である。
【0146】
自動運転ECU50には、自車両Amを所有するオーナーOWのユーザ端末170が予め登録されている。ユーザ端末170は、自車両Amを呼び寄せる指令(以下、呼び寄せ指令)を、自端末の位置情報と共に自動運転ECU50へ向けて送信する。自動運転ECU50は、オーナーOWに紐づくユーザ端末170からの遠隔での呼び寄せに応じて、ドライバが搭乗しない状態で、オーナーOWの近くまで自車両Amを移動させる。オーナーOWに紐づくユーザ端末170は、スマートフォン等の汎用の端末であってもよく、又はFoBキーの機能を含む専用端末等であってもよい。
【0147】
自動運転ECU50は、呼び寄せ指令に応じた移動期間において、オーナーOWとは異なる注意者UMが自車両Amに接近した場合、注意者UMに対応する注意者対応処理を実施する。注意者対応処理は、呼び寄せ指令が情報連携部61によって取得されたことに基づき、自動運転ECU50によって開始される。以下、第三実施形態の注意者対応処理の詳細を、図15に基づき、図14及び図9を参照しつつ説明する。
【0148】
注意者対応処理のS311では、環境認識部62が、自車両Amについて、停止したか否かを中か否かを判定する。自車両Amが移動中である場合(S311:NO)、環境認識部62は、S311の判定を繰り返し、自車両Amの停止を待機する。そして、自車両Amが停止した場合(S311:YES)、物標把握部73は、S312にて車外監視を実施し、注意者UMが接近しているか否かを判定する。
【0149】
注意者UMが接近していない場合(S312:NO)、環境認識部62は、S319にて、オーナーOWの近傍まで自車両Amが移動したか否か、言い替えれば、呼び寄せが完了したか否かを判定する。オーナーOWの近傍で停止しており、呼び寄せが完了した場合(S319:YES)、注意者対応処理は、終了となる。一方、呼び寄せが完了していない場合(S319:NO)、S311及びS312の判定が繰り返される。
【0150】
注意者UMが接近しており、オーナーOWの位置まで移動する自車両Amの走行が注意者UMによって妨げられている場合(S312:YES)、報知要求部72は、S313にて、注意者UMの接近をユーザ端末170に通報する。加えて、映像配信部66は、S314にて、周辺監視センサ30のカメラユニットにて撮影される車外カメラ映像であって、注意者UMが写る車外カメラ映像を、ユーザ端末170に送信する。
【0151】
オーナーOWは、ユーザ端末170に配信される車外カメラ映像を確認し、注意者UMの乗車を許可するか否かを判断する。オーナーOWは、注意者UMの搭乗を許可する場合、ユーザ端末170に許可操作を入力する。情報連携部61は、S315にて、オーナーOWによる乗車許可の取得の有無を判定する。情報連携部61にて注意者UMの乗車許可が取得された場合(S315:YES)、保安機能部67は、注意者UMの搭乗を許可する。これにより、機器制御部65は、S316にて、ボディECU43及びドアロックアクチュエータ45と連携し、自車両Amのドアを外側から開けることができるように解錠する。
【0152】
一方、情報連携部61にて注意者UMの乗車許可が取得されない場合(S315:NO)、保安機能部67は、注意者UMの搭乗を許可しない。この場合、報知要求部72は、S317にて、車外表示器24及び車外スピーカ25を用いて、乗車不可を示す車外報知(乗車不可警告)を実施する。車外表示器24は、例えば自車両Amの前面に設けられている。S317の車外報知では、ユーザ端末170によって集音されたオーナーOWの発話音声が、車外スピーカ25によって再生されてもよい。
【0153】
物標把握部73は、S318にて車外監視を実施し、注意者UMが消失したか否かを判定する。注意者UMが引き続き自車両Amの走行を妨げている場合(S318:NO)、乗車を許可するか否かのオーナーOWの判断が待機される。この場合、車外報知が継続されてもよい。対して、注意者UMが消失した場合(S318:YES)、S319にて、呼び寄せの完了が判定される。
【0154】
(第三実施形態まとめ)
ここまで説明した第三実施形態でも、自車両Amに接近する注意者UMへの車外報知により、注意者UMの自車両Amへの乗り込みが抑止される。その結果、第一,第二実施形態と同様の効果を奏し、ドライバが搭乗していない場合でも、自車両Amに接近する注意者UMへの対応が可能になる。
【0155】
加えて第三実施形態では、自車両AmのオーナーOWに紐づくユーザ端末170から、自車両Amを呼び寄せる指令が取得される。そして、オーナーOWの位置まで移動する自車両Amの走行が注意者UMによって妨げられた場合、報知要求部72は、ユーザ端末170に通報する。以上によれば、自車両Amが個人所有される車両であっても、オーナーOWが搭乗していない状況下にて、自車両Amに接近する注意者UMへの対応が適切に実施され得る。
【0156】
また第三実施形態では、注意者UMの乗車許可が取得された場合、自車両Amのドアは、外側から開けることができるように解錠される。故に、オーナーOWに関連する人物が、オーナーOWよりも先に自車両Amに近づいた場合でも、自車両Amへの搭乗が可能になる。その結果、自車両Amの利便性が向上し得る。一方で、注意者UMの乗車許可が取得されない場合、乗車不可を示す車外報知が実施される。その結果、注意者UMに適切な行動を促すことが可能になる。尚、上記第三実施形態では、情報連携部61が「指令取得部」に相当する。
【0157】
(他の実施形態)
以上、本開示による複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0158】
上記実施形態の変形例1による自動運転ECU50は、上記第三実施形態と同様に、モビリティサービスを提供する車両ではなく、個人所有を前提としたPOVに搭載されている。自動運転ECU50は、POVである自車両Amを、レベル4以上の自動運転で自律走行させることが可能である。こうした変形例1のように、自動運転ECU50を搭載する車両は、モビリティサービス用の車両に限定されず、一般的な自家用の乗用車、レンタカー用の車両、有人タクシー用の車両、貨物車両及びバス等であってもよい。さらに、遠隔側システム130との連携による遠隔運転の機能は、適宜省略されてよい。
【0159】
変形例1の自動運転ECU50において、物標把握部73は、予め登録された自宅等以外で自車両Amが停止しており、かつ、予め登録されたユーザが車室内にいる場合、自車両Amへ接近する人間を全て注意者UMと判定する。また、物標把握部73は、FoBキーを持たない人物が自車両Amに接近した場合、注意者UMが接近したと判定してもよい。
【0160】
上記実施形態の変形例2では、乗車不可を示す乗車不可警告は、車外表示器24及び車外スピーカ25の一方のみを用いて実施される。また、車外表示器24は、メッセージの文字表示に替えて、例えば警告色の点滅表示により、乗車不可を示す乗車不可警告を実施してもよい。
【0161】
上記実施形態の変形例3では、車内表示器21は、タッチパネルとしての機能を有している。そして、緊急停止ボタン117、緊急通報ボタン118、及び緊急避難ボタン119の少なくとも一部は、物理的なスイッチに替えて、車内表示器21に表示されるタッチアイコンとされる。自動運転ECU50及びHMI制御装置10は、操作が必要とされるタイミングで、車内表示器21に各ボタン117~119を表示させる。
【0162】
上記第一実施形態での注意者対応における避難制御の内容は、適宜変更されてよい。一例として、行動判断部63は、通常避難制御であっても、搭乗者PS及び遠隔監視者ROの少なくとも一方による停止指示を取得するまで、自車両Amの移動を継続してもよい。また、緊急避難制御において、運転席DSに運転可能な搭乗者PSがいる場合、車内運転が許可されてもよい。さらに、注意者対応として少なくとも車外報知が実施されていれば、解錠制御、センタ通報、及び避難制御の少なくとも1つは、適宜省略されてよい。また、車内監視の機能及び盗難報知の機能も、適宜省略されてよい。
【0163】
自動運転ECU50を搭載する車両は、右ハンドル車両であってもよく、又は左ハンドル車両であってもよい。さらに、車両が走行する交通環境は、左側通行を前提とした交通環境であってもよく、右側通行を前提とした交通環境であってもよい。ドライバレス車両ADVに設けられるドアの位置、並びに車外表示器24及び車外スピーカ25の位置等は、ドライバレス車両ADVが運用されるそれぞれの国及び地域の道路交通法、さらに車両のハンドル位置等に応じて適宜最適化されてよい。
【0164】
自車両Amに設けられる車内操作部110の形態は、アクセルペダル、ブレーキペダル、及びステアリングホイール等に限定されてない。例えば、レバー形状の制御器、ジョイスティック、及び十字キー等を含むコントローラ(ゲームパッド)等が、車内操作部110として設けられていてもよい。
【0165】
上記実施形態では、車内外の監視に関連する各処理(図5図8図10図13図15参照)は、ドライバレス車両ADVに搭載された自動運転ECU50によって実施されていた。一方、上記実施形態の変形例4では、各処理の一部又は全部が、遠隔制御装置140によって実施される。以上のように、自動運転ECU50の少なくとも一部の機能は、遠隔制御装置140に実装されていてもよい。こうした変形例4では、遠隔制御装置140が、自動運転ECU50と共に、又は単独で、「自動運転制御装置」に相当する。
【0166】
さらに、車両用監視装置の機能は、例えばHMI制御装置10等、自動運転ECU50とは異なる車載ECUに実装されていてもよい。さらに、車両用監視装置の機能は、例えばセントラルECU及びゾーンECU等、自車両Amに搭載された複数の車載ECUに分散された状態で実装されてもよい。また、車両用監視装置の機能を有する単独の車載ECUが、ドライバレス車両ADVに搭載されていてもよい。これらの変形例では、車載ECUが、単独又は複数で「車両用監視装置」に相当する。
【0167】
上記実施形態にて、自動運転ECU等によって提供されていた各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。さらに、こうした機能がハードウェアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。また、こうした機能を実現するためのソフトウェアは、例えば現実世界のカメラ映像を用いてトレーニングされたニューラルネットワーク又は言語モデルにより自動生成されたコードを少なくとも一部に含んでいてもよい。
【0168】
上述実施形態の各処理部は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。処理部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural network Processing Unit)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってよい。処理部は、プリント基板に個別に実装された構成であってもよく、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、SoC(System on Chip)及びFPGA等に実装された構成であってよい。
【0169】
各種プログラム等を記憶する記憶媒体(持続的有形コンピュータ読み取り媒体,non-transitory tangible storage medium)の形態は、適宜変更されてよい。さらに、記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、自動運転ECU又は遠隔制御装置の制御回路に電気的に接続される構成であってよい。また、記憶媒体は、自動運転ECU又は遠隔制御装置へのプログラムのコピー元又は配信元となる光学ディスク、ハードディスクドライブ、及びソリッドステートドライブ等であってもよい。
【0170】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0171】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0172】
(技術的思想1)
自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)の状況を監視する車両用監視装置であって、
前記自車両への搭乗が予定されていない注意者(UM)の前記自車両への接近を判定する接近判定部(73)と、
前記注意者の前記自車両への接近が判定された場合、前記自車両に設けられた車外報知器(24,25)を用いて、乗車不可を示す車外報知を実施する報知実施部(72)と、
を備える車両用監視装置。
(技術的思想2)
停止中の前記自車両に前記注意者が接近した場合、前記自車両が停止中の現在位置から移動可能か否かを判定し、移動可能と判定した場合、前記自車両を前記現在位置から移動させる行動制御部(63)、をさらに備える技術的思想1に記載の車両用監視装置。
(技術的思想3)
前記行動制御部は、車室内に設けられた緊急避難ボタン(119)が搭乗者(PS)によって操作された場合、前記緊急避難ボタンの操作がない場合よりも、前記自車両を前記現在位置よりも遠い場所へ移動させる技術的思想2に記載の車両用監視装置。
(技術的思想4)
前記接近判定部は、前記注意者の前記自車両への接触可能性を判定し、
前記行動制御部は、前記注意者に前記接触可能性がある場合、前記接触可能性がない場合よりも移動速度を抑制する技術的思想2又は3に記載の車両用監視装置。
(技術的思想5)
前記行動制御部にて前記自車両が移動可能でないと判定された場合、前記自車両のドアを外側から開けることができないように施錠する施錠制御部(65)、をさらに備える技術的思想2~4のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想6)
前記自車両への搭乗申請を取得する申請取得部(70)、をさらに備え、
前記行動制御部は、前記現在位置からの移動を開始した後、前記注意者についての前記搭乗申請が前記申請取得部によって取得された場合、前記自車両の移動を中止する技術的思想2~5のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想7)
前記行動制御部は、車室内の搭乗者(PS)及び前記自車両を遠隔監視する監視者(RO)の少なくとも一方による停止指示を取得するまで、前記自車両の移動を継続する技術的思想2~6のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想8)
前記報知実施部は、
前記注意者の接近を判定した状態が所定時間以上継続した場合、車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、所定の通報先(CNT)に前記注意者の接近を通報するか否かを問い合わせ、
前記車室内の搭乗者(PS)によって通報の実施が承認された場合、前記通報先への通報を実施する技術的思想1~7のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想9)
前記報知実施部は、
予め設定された乗降地点とは異なる場所で前記注意者の前記自車両への接近が判定された場合、車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、前記注意者の個人認証を行うか否かを問い合わせ、
前記車室内の搭乗者(PS)によって前記個人認証の実施が許可された場合、前記注意者の前記個人認証を実施する技術的思想1~8のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想10)
前記自車両への搭乗予約が受け付けられた承認者に紐づくユーザ端末(170)からの要求に基づき、車室内に設けられた車室内カメラ(29)による車内カメラ映像を前記ユーザ端末に配信する映像配信部(66)、をさらに備える技術的思想1~9のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想11)
前記映像配信部は、前記承認者の搭乗予定地点から所定距離以内となる範囲まで前記自車両が接近した場合に、前記車内カメラ映像の前記ユーザ端末への配信を許可する技術的思想10に記載の車両用監視装置。
(技術的思想12)
前記映像配信部は、前記承認者の搭乗予定時刻まで所定時間以内となった場合に、前記車内カメラ映像の前記ユーザ端末への配信を許可する技術的思想10又は11に記載の車両用監視装置。
(技術的思想13)
前記映像配信部は、前記承認者の降車後、所定時間が経過するまで前記車内カメラ映像の前記ユーザ端末への配信を許可し続ける技術的思想10~12のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想14)
前記自車両に設けられた運転操作部(110)に最も近い運転席(DS)への搭乗者(PS)の移動を検知する車内監視部(71)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記搭乗者の前記運転席への移動が判定された場合、車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、前記運転席からの離席を促す車内警告を実施する技術的思想1~13のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想15)
前記報知実施部は、前記車内警告の実施後、前記自車両を遠隔監視する監視者(RO)に、前記搭乗者の前記運転席への移動を通報する技術的思想14に記載の車両用監視装置。
(技術的思想16)
前記自車両の車室内にあるドライブキーに搭乗者(PS)が触れたことを検知する車内監視部(71)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記搭乗者が前記ドライブキーに触れたと判定された場合、前記車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、前記ドライブキーに触れないように注意を促す車内警告を実施する技術的思想1~15のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想17)
前記注意者の前記自車両への接近が判定された場合、前記自車両の左右両側に設けられたドアのうちで、前記注意者が接近する側とは反対側の前記ドアを車室内から開けることができるように解錠する施錠制御部(65)、をさらに備える技術的思想1~16のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想18)
前記報知実施部は、前記反対側の前記ドアの解錠後、前記車室内に設けられた車内報知器(21,22)を用いて、前記反対側の前記ドアが解錠されていることを示す車内報知を実施する技術的思想17に記載の車両用監視装置。
(技術的思想19)
前記自車両の機能オフ処理に基づき前記自車両の停止場所を記憶する位置記憶部(78)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記自車両の機能オン処理に基づき把握される前記自車両の起動場所が前記停止場所と異なる場合、盗難発生を示す車外警告を実施する技術的思想1~18のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想20)
前記報知実施部は、前記自車両に盗難が発生した場合に、車室内の搭乗者(PS)に紐づくユーザ端末(170)の位置情報を所定の通報先(CNT)に通知する技術的思想1~19のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想21)
前記自車両のオーナー(OW)に紐づくユーザ端末(170)から、前記自車両を呼び寄せる指令を取得する指令取得部(61)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記オーナーの位置まで移動する前記自車両の走行が前記注意者によって妨げられた場合に、前記ユーザ端末に通報する技術的思想1~20のいずれか一項に記載の車両用監視装置。
(技術的思想22)
前記注意者の乗車許可が前記指令取得部にて取得された場合、前記自車両のドアを外側から開けることができるように解錠する施錠制御部(65)、をさらに備え、
前記報知実施部は、前記乗車許可が前記指令取得部にて取得されない場合、前記車外報知器を用いて前記乗車不可を示す前記車外報知を実施する技術的思想21に記載の車両用監視装置。
(技術的思想23)
自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)の状況を監視する車両用監視方法であって、
前記自車両への搭乗が予定されていない注意者(UM)の前記自車両への接近を判定し(S13)、
前記注意者の前記自車両への接近を判定した場合、前記自車両に設けられた車外報知器(24,25)を用いて、乗車不可を示す車外報知を実施する(S14)、
というステップを、少なくとも一つの処理部(51)にて実施される処理に含む車両用監視方法。
【符号の説明】
【0173】
Am 自車両、CNT 遠隔監視施設(通報先)、DS 運転席、OW オーナー、PS 搭乗者、RO 遠隔監視者(監視者)、UM 注意者、21 車内表示器(車内報知器)、22 車内スピーカ(車内報知器)、24 車外表示器(車外報知器)、25 車外スピーカ(車外報知器)、29 車内モニタ装置(車室内カメラ)、50 自動運転ECU(車両用監視装置)、51 処理部、61 情報連携部(指令取得部)、63 行動判断部(行動制御部)、65 機器制御部(施錠制御部)、66 映像配信部、70 ユーザ認証部(申請取得部)、71 状況把握部(車内監視部)、72 報知要求部(報知実施部)、73 物標把握部(接近判定部)、78 位置記憶部、110 車内操作部(運転操作部)、119 緊急避難ボタン、170 ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15