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特開2024-159423遊星歯車キャリアの製造方法{MANUFACTURING METHOD OF PLANETARY GEAR CARRIER}
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  • 特開-遊星歯車キャリアの製造方法{MANUFACTURING  METHOD  OF  PLANETARY  GEAR  CARRIER} 図1
  • 特開-遊星歯車キャリアの製造方法{MANUFACTURING  METHOD  OF  PLANETARY  GEAR  CARRIER} 図2
  • 特開-遊星歯車キャリアの製造方法{MANUFACTURING  METHOD  OF  PLANETARY  GEAR  CARRIER} 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159423
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】遊星歯車キャリアの製造方法{MANUFACTURING METHOD OF PLANETARY GEAR CARRIER}
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/28 20060101AFI20241031BHJP
   B23P 15/14 20060101ALI20241031BHJP
   F16H 57/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16H1/28
B23P15/14
F16H57/08
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177146
(22)【出願日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】10-2023-0055755
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2022韓国自動車工学会秋季学術大会及び展示会(2022年11月16日~19日開催)
(71)【出願人】
【識別番号】520181434
【氏名又は名称】ヒュンダイ トランシス インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI TRANSYS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】105, Sindang 1-ro, Seongyeon-myeon, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31930, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】523388892
【氏名又は名称】コリア シンタード メタル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, テフン
(72)【発明者】
【氏名】ド, ギョンロク
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジュソン
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ドングク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ギュホ
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
【Fターム(参考)】
3J027FA20
3J027GE01
3J063AB12
3J063BB46
3J063BB48
3J063CB05
3J063CB06
3J063XA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、焼結成形されたフロントキャリアキャップの表面にイオン窒化層を生成し、成形されたフロントキャリアキャップの溶接部にイオン窒化層が残らないように溶接部を乾式切削加工してレーザ溶接時の溶接部の気泡またはクラックの発生などのような溶接欠陥を防止できるようにした遊星歯車キャリアの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の遊星歯車キャリアの製造方法は、フロントキャリアキャップを焼結成形する、焼結成形段階;焼結成形されたフロントキャリアキャップの表面にイオン窒化層を生成する、イオン窒化層生成段階;前記フロントキャリアキャップの溶接部表面をイオン窒化影響層の生成厚さだけ切削加工する、溶接部切削加工段階;および前記フロントキャリアキャップと材質が異なる異種材質の部品と連結される前記フロントキャリアキャップの溶接部を前記異種材質の部品と接合されるように溶接する、溶接段階;を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントキャリアキャップを焼結成形する、焼結成形段階;
焼結成形されたフロントキャリアキャップの表面にイオン窒化層を生成する、イオン窒化層生成段階;
前記フロントキャリアキャップの溶接部表面をイオン窒化影響層の生成厚さだけ切削加工する、溶接部切削加工段階;および
前記フロントキャリアキャップと材質が異なる異種材質の部品と連結される前記フロントキャリアキャップの溶接部を前記異種材質の部品と接合されるように溶接する、溶接段階;
を含む、遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項2】
前記フロントキャリアキャップの表面に生成されるイオン窒化影響層の厚さは、0.3~0.5mmであることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項3】
前記焼結成形段階において、
前記フロントキャリアキャップは、全含量で炭素(C)の含量が0.1~0.6%になるように焼結成形されることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項4】
前記溶接部切削加工段階において、
前記フロントキャリアキャップの溶接部表面切削加工時に切削油を使用せずに乾式切削加工することを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項5】
前記フロントキャリアキャップの溶接部表面切削加工時に切削油を使用する場合、前記フロントキャリアを加熱して切削油を除去する脱油段階が追加されることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項6】
前記溶接段階において、
溶接はレーザ溶接であることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項7】
前記イオン窒化層生成段階の前に焼結成形段階で前記フロントキャリアキャップと同様にフロントキャリアプレートを成形し、成形された前記フロントキャリアプレートと前記フロントキャリアキャップとの連結部位を焼結ろう付け接合と同時に焼結することを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項8】
前記イオン窒化層生成段階において、
前記フロントキャリアキャップの表面と共に前記フロントキャリアプレートの表面もイオン窒化層を生成することを特徴とする、請求項7に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項9】
前記異種材質の部品は、
アニュラスギアであることを特徴とする、請求項1に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【請求項10】
前記異種材質の部品は、
炭素合金鋼素材で構成されることを特徴とする、請求項9に記載の遊星歯車キャリアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車キャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に遊星歯車(planetary gear)は、変速機主軸の駆動軸に固定されて回転力を伝達する太陽歯車と、変速機主軸の被動軸に連結されて駆動力を推進軸に伝達するリングギアとの間で、キャリアによって支持されている歯車であり、オーバードライブ機構の一構成部品である。
【0003】
遊星歯車キャリア(planetary gear carrier)は、変速機主軸の被動軸スプラインにはめ込まれ、太陽歯車とリングギアとの間に噛み合った遊星歯車を支える。
【0004】
遊星歯車キャリアは、フロントキャリアプレートおよびフロントキャリアキャップを含む。フロントキャリアキャップの一側にフロントキャリアプレートがろう付け(brazing)によって接合されることができる。フロントキャリアキャップの他側にアニュラスギア(annulus gear)が溶接結合されることができる。
【0005】
フロントキャリアプレートおよびフロントキャリアキャップは、鋳物、鍛造溶接、プレス溶接、焼結などの様々な方法によって製造されることができる。
【0006】
焼結(sintering)は、粉体成形物を加熱して固めて作るものであり、フロントキャリアプレートおよびフロントキャリアキャップなどの複雑な形状の部品も容易に作製することができる。
【0007】
ところで、焼結成形されたフロントキャリアキャップをアニュラスギアなどのような異種材質の部品と一般的な溶接(welding)を行う場合、溶接部で気泡またはクラックが発生し、部品の強度確保が難しいだけでなく、焼結粉末の成分と接合される材質の種類によって溶接品質の散布(dispersion)が大きいため、品質管理に困難があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報第10-2095239号(2020.03.31.公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の問題を解決するために、本発明は、焼結成形されたフロントキャリアキャップの表面にイオン窒化層を生成し、成形されたフロントキャリアキャップの溶接部にイオン窒化層が残らないように溶接部を乾式切削加工してレーザ溶接時の溶接部の気泡またはクラックの発生などのような溶接欠陥を防止できるようにした遊星歯車キャリアの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本発明は、フロントキャリアキャップを焼結成形する、焼結成形段階;焼結成形されたフロントキャリアキャップの表面にイオン窒化層を生成する、イオン窒化層生成段階;前記フロントキャリアキャップの溶接部表面をイオン窒化影響層の生成厚さだけ切削加工する、溶接部切削加工段階;および前記フロントキャリアキャップと材質が異なる異種材質の部品と連結される前記フロントキャリアキャップの溶接部を前記異種材質の部品と接合するように溶接する、溶接段階;を含む遊星歯車キャリアの製造方法を提供する。
【0011】
また、前記フロントキャリアキャップの表面に生成されるイオン窒化影響層の厚さは、0.3~0.5mmであってもよい。
【0012】
また、前記焼結成形段階において、前記フロントキャリアキャップは、全含量で炭素(C)の含量が0.1~0.6%になるように焼結成形してもよい。
【0013】
また、前記溶接部切削加工段階において、前記フロントキャリアキャップの溶接部表面切削加工時に切削油を用いずに乾式切削加工してもよい。
【0014】
また、前記フロントキャリアキャップの溶接部表面切削加工時に切削油を使用する場合、前記フロントキャリアを加熱して切削油を除去する脱油段階が追加されてもよい。
【0015】
また、前記溶接段階において、溶接はレーザ溶接であってもよい。
【0016】
また、前記イオン窒化層生成段階の前に焼結成形段階で前記フロントキャリアキャップと同様にフロントキャリアプレートを成形し、成形された前記フロントキャリアプレートと前記フロントキャリアキャップとの連結部位を焼結ろう付け接合と同時に焼結してもよい。
【0017】
また、前記イオン窒化層生成段階において、前記フロントキャリアキャップの表面とともに前記フロントキャリアプレートの表面もイオン窒化層を生成してもよい。
【0018】
また、前記異種材質の部品はアニュラスギアであってもよい。
【0019】
なお、前記異種材質の部品は炭素合金鋼素材で構成されてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、焼結成形されたフロントキャリアキャップの表面にイオン窒化層を生成し、成形されたフロントキャリアキャップの溶接部にイオン窒化層が残らないように溶接部を乾式切削加工し、レーザ溶接時の溶接部の気泡またはクラック発生などの溶接欠陥を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好ましい一実施形態による遊星歯車キャリアの製造方法の製造過程を示すフローチャートである。
図2】本発明の好ましい一実施形態による遊星歯車キャリアを示す斜視図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態による遊星歯車キャリアを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。まず、各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたって、同一の構成要素については、異なる図面に表示しても、できるだけ同一の符号を有するようにしていることに留意されたい。なお、本発明の説明において、関連する公知の構成または機能に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にすると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。さらに、以下に本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明の技術的思想は、これに限定または制限されず、当業者によって変更され様々に実施され得ることは言うまでもない。
【0023】
図1は、本発明の好ましい一実施形態による遊星歯車キャリアの製造方法の製造過程を示すフローチャートであり、図2は、本発明の好ましい一実施形態による遊星歯車キャリアを示す斜視図であり、図3は、本発明好ましい一実施形態による遊星歯車キャリアを示す側断面図である。
【0024】
図1~3に示すように、本発明による遊星歯車キャリアの製造方法は、焼結成形段階(S100)、イオン窒化層生成段階(S200)、溶接部切削加工段階(S300)、および溶接段階(S400)を含む。
【0025】
焼結成形段階(S100)において、フロントキャリアキャップ10とフロントキャリアプレート30のそれぞれを成形した後、焼結と同時に焼結ろう付けを行う。
【0026】
例えば、フロントキャリアキャップ10は、全含量で炭素(C)の含量が0.1~0.6%になるように焼結成形することが好ましい。
【0027】
例えば、フロントキャリアキャップ10の全含量で炭素(C)が占める含量が0.6%を超えると、レーザ溶接(LASER welding)時の溶接部位の溶融点が低くなり、異種素材と融点差が大きく発生し、気泡が発生することがある。
【0028】
このように、レーザ溶接過程で気泡が発生する場合、フロントキャリアキャップ10の品質が低下することがあるため、フロントキャリアキャップ10の全含量で炭素(C)が占める含量が0.6%以下となるように、フロントキャリアキャップ10を焼結成形することが好ましい。
【0029】
焼結成形されたフロントキャリアプレート30とフロントキャリアキャップ10との連結部位を焼結ろう付け接合(BC)してもよい。
【0030】
例えば、フロントキャリアプレート30もフロントキャリアキャップ10と同様に焼結成形されてもよい。
【0031】
例えば、フロントキャリアプレート30とフロントキャリアキャップ10とのろう付け接合の前にろう付け接合が容易に行われるように、フロントキャリアプレート30とフロントキャリアキャップ10とのろう付け接合部位をろう付け接合に適した形態に加工することができる。
【0032】
イオン窒化層生成段階(S200)において、接合状態のフロントキャリアプレート30とフロントキャリアキャップ10の表面に設定された一定厚さでイオン窒化層を生成する。
【0033】
イオン窒化層20により、フロントキャリアキャップ10およびフロントキャリアプレート30の硬度および耐久性を向上させることができる。
【0034】
例えば、フロントキャリアキャップ10およびフロントキャリアプレート30の表面に生成されるイオン窒化影響層の厚さは、0.3~0.5mmであることが好ましい。
【0035】
溶接部切削加工段階(S300)において、フロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面をイオン窒化影響層の生成厚さだけ切削加工する。
【0036】
例えば、イオン窒化層およびイオン窒化影響部の窒素成分によりレーザ溶接時に気泡が発生することがあり、これによりフロントキャリアキャップ10の品質が低下することがある。
【0037】
このように、フロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面にイオン窒化層が残っている状態でレーザ溶接を進行する場合、フロントキャリアキャップ10の溶接部11組織に気泡が発生することがあるため、イオン窒化層が残らないように、フロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面を切削加工することが好ましい。
【0038】
フロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面を切削加工時に切削油(cutting oil)を使用せずに乾式切削加工することが好ましい。
【0039】
フロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面を切削加工する際に切削油を使用する場合、切削加工後に切削油を完全に除去するためにフロントキャリアキャップ10を加熱して脱油(deoiling)する段階がさらに必要である。
【0040】
例えば、フロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面を切削加工する際に切削油を使用すると、フロントキャリアキャップ10の溶接部11組織に切削油が浸透し、レーザ溶接時に気泡が発生することがあるため、フロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面を乾式切削加工することが好ましい。
【0041】
フロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面を乾式切削加工する場合、溶接部11の表面と切削工具との間に摩擦熱が発生することがある。
【0042】
このようなフロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面と切削工具との間に発生する摩擦熱を最小化できるように、できるだけ切削加工速度を遅くしてフロントキャリアキャップ10の溶接部11の表面を乾式切削加工することが好ましい。
【0043】
例えば、フロントキャリアキャップ10を加熱してフロントキャリアキャップ10に残っている油分を除去する脱油処理工程を進めてもよい。
【0044】
溶接段階(S400)において、フロントキャリアキャップ10と材質が異なる異種材質の部品20と連結されるフロントキャリアキャップ10の溶接部11を異種材質の部品20と連結するようにレーザ溶接(LW)する。
【0045】
例えば、レーザ溶接(LW)を進む前に、フロントキャリアキャップ10の溶接部11をレーザ溶接に適した形態に加工してもよい。
【0046】
例えば、異種材質の部品20は、炭素合金鋼(SCr420HB)素材のアニュラスギア(annulus gear)であってもよい。
【0047】
以上のように、本発明は、焼結成形されたフロントキャリアキャップの表面にイオン窒化層を生成し、レーザ溶接の前にイオン窒化層が残らないようにフロントキャリアキャップの溶接部の表面を乾式切削加工した状態でレーザ溶接を進めることで、溶接部の気泡またはクラックの発生などの溶接欠陥を防止することができる。
【0048】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内で種々の修正、変更および置換が可能である。したがって、本発明に開示された実施形態および添付の図面は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、そのような実施形態および添付の図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0049】
10 ・・・フロントキャリアキャップ
11 ・・・溶接部
20 ・・・異種材質の部品
30 ・・・フロントキャリアプレート
BC ・・・ろう付け接合
LW ・・・レーザ溶接
図1
図2
図3