IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコムの特許一覧

<>
  • 特開-電子ペン及び電子ペン本体部 図1
  • 特開-電子ペン及び電子ペン本体部 図2
  • 特開-電子ペン及び電子ペン本体部 図3
  • 特開-電子ペン及び電子ペン本体部 図4
  • 特開-電子ペン及び電子ペン本体部 図5
  • 特開-電子ペン及び電子ペン本体部 図6
  • 特開-電子ペン及び電子ペン本体部 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015944
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電子ペン及び電子ペン本体部
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240130BHJP
   B43K 24/08 20060101ALI20240130BHJP
   G06F 3/044 20060101ALN20240130BHJP
   G06F 3/046 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/03 400A
B43K24/08 110
G06F3/044 B
G06F3/046 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146186
(22)【出願日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2022117723
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】神山 良二
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA01
2C353HC04
2C353HG04
(57)【要約】
【課題】電子ペン本体部のペン先側においてペン筐体の内壁面と接触させたくない部品が、ペン筐体の内壁面と接触してしまうのを防止する。
【解決手段】筒状のペン筐体と、このペン筐体の中空部内に収納可能な筒状の本体部筐体を有し、本体部筐体の軸心方向の一端側に芯体が装着され、本体部筐体の軸心方向の他端側が、ペン筐体内に係止される電子ペン本体部とを備える。電子ペン本体部の本体部筐体の外周部の、軸心方向の所定位置には、本体部筐体の軸心方向に交差する方向に突出する張出部が形成されている。ペン筐体の中空部の内壁面には、芯体の先端側がペン筐体の開口から外部に露出する状態において、本体部筐体の張出部と係合して、ペン筐体内において、電子ペン本体部のペン先側への移動を阻止するストッパ部が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先側に開口を備え、内部に中空部を有する筒状のペン筐体と、
前記ペン筐体の前記中空部内に収納可能な筒状の本体部筐体を有し、前記本体部筐体の軸心方向の一端側に芯体が装着され、前記本体部筐体の軸心方向の他端側が、前記ペン筐体内に係止される電子ペン本体部と、
を備え、
前記電子ペン本体部の前記本体部筐体の外周部の、前記軸心方向の所定位置には、前記本体部筐体の軸心方向に交差する方向に張り出す張出部が形成され、
前記ペン筐体の前記中空部の内壁面には、前記芯体の先端側が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出する状態において、前記本体部筐体の前記張出部と係合して、前記ペン筐体内において、前記電子ペン本体部の前記ペン先側への移動を阻止するストッパ部が形成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記張出部は、前記本体部筐体に装着された前記芯体の先端位置から前記ストッパ部と係合する前記張出部の部分までの前記本体部筐体の軸心方向における長さが、前記ペン筐体の前記ペン先側の先端位置から前記ストッパ部までの軸心方向の長さに、前記芯体が装着された前記電子ペン本体部のペン先側が、電子ペンの使用時に前記ペン筐体の前記ペン先側の開口から外部に露出すべきとして定められた前記本体部筐体の軸心方向の長さを加えた長さとなるように、前記本体部筐体の外周部に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記電子ペン本体部に装着された前記芯体が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出すると共に、前記本体部筐体の前記張出部と前記ストッパ部とが係合している状態において、前記電子ペン本体部は前記ペン筐体内で前記ペン先側に弾性的に付勢されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記電子ペン本体部は、前記本体部筐体の軸心方向の荷重が印加された場合に、前記印加された荷重に応じて、前記電子ペン本体部の前記軸心方向の長さを弾性的に収縮変位させる弾性変位部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記電子ペン本体部は、前記本体部筐体内に、前記芯体に印可される筆圧を検出する筆圧検出部を備え、
前記弾性変位部は、前記筆圧検出部で検出される前記筆圧値の範囲の荷重に対しては不感であって、前記筆圧値の範囲の荷重よりも大きな荷重を吸収するように前記弾性変位をする
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記弾性変位部は、前記本体部筐体に対して、前記本体部筐体の軸心方向において、前記芯体が装着される側とは反対側に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記電子ペン本体部に装着された前記芯体が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出すると共に、前記本体部筐体の前記張出部と前記ストッパ部とが係合している状態においては、前記弾性変位部により、前記電子ペン本体部は前記ペン筐体内で前記ペン先側に弾性的に付勢されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記ペン筐体の軸心方向の他端側には、前記本体部筐体の軸心方向の他端側を保持して、当該電子ペン本体部の本体部筐体に装着された前記芯体を、使用者によるノック操作に基づいて前記ペン筐体の前記ペン先側の開口から出没させるようにするノックカム機構部が設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記ノック操作がなされた場合に、前記電子ペン本体部の前記本体部筐体の前記張出部と前記ペン筐体の前記内壁面の前記ストッパ部とが係合する状態において、前記弾性変位部が前記弾性変位をするように構成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記張出部は、前記本体部筐体の軸心方向に交差する方向の突出端面が前記ペン筐体の前記中部部の内壁面に衝合することにより、前記本体部筐体の中心線位置が、前記ペン筐体の前記中空部の中心線位置と同一の位置を保持するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項11】
前記電子ペン本体部のペン先側には、磁性体コアに巻回されたコイルが設けられており、前記芯体が前記ペン筐体の前記ペン先側の開口から突出する状態のときに、前記コイルのペン先側の端部が前記ペン筐体の内壁面に接触しないように、前記電子ペン本体部の前記張出部の前記本体筐体部の軸心方向の形成位置と、前記ペン筐体の内壁面のストッパ部の前記ペン筐体の軸心方向の形成位置が定められている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記ストッパ部は、前記ペン筐体の内壁面に形成された段部の構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項13】
ペン先側に開口を備える筒状のペン筐体の中空部内に収納可能な筒状の本体部筐体を有し、前記本体部筐体の軸心方向の一端側に芯体が装着され、前記軸心方向の他端側が、前記ペン筐体内に係止される電子ペン本体部であって、
前記本体部筐体の外周部の、前記軸心方向の所定位置には、前記軸心方向に交差する方向に突出する張出部が形成され、
前記芯体の先端側が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出する状態において、前記本体部筐体の前記張出部が、前記ペン筐体の前記中空部の内壁面に設けられているストッパ部と係合して、前記電子ペン本体部の前記軸心方向の前記ペン先側への移動が阻止されるように構成されている
ことを特徴とする電子ペン本体部。
【請求項14】
前記張出部は、前記本体部筐体に装着された前記芯体の先端位置から前記ストッパ部と係合する前記張出部の部分までの前記本体部筐体の軸心方向における長さが、前記ペン筐体の前記ペン先側の先端位置から前記ストッパ部までの軸心方向の長さに、前記芯体が装着された前記電子ペン本体部のペン先側が、電子ペンの使用時に前記ペン筐体の前記ペン先側の開口から突出すべきとして設定された前記本体部筐体の軸心方向の長さを加えた長さとなるように、前記本体部筐体の外周部に配設されている
ことを特徴とする請求項13に記載の電子ペン本体部。
【請求項15】
前記本体部筐体の軸心方向の荷重が印加された場合に、前記印加された荷重に応じて電子ペン本体部の前記軸心方向の長さを弾性的に収縮変位させる弾性変位部を備えている
ことを特徴とする請求項13に記載の電子ペン本体部。
【請求項16】
前記本体部筐体内に、前記芯体に印可される筆圧を検出する筆圧検出部を備え、
前記弾性変位部は、前記筆圧検出部で検出される前記筆圧値の範囲の荷重に対しては不感であって、前記筆圧値の範囲の荷重よりも大きな荷重を吸収するように前記弾性変位をする
ことを特徴とする請求項15に記載の電子ペン本体部。
【請求項17】
前記弾性変位部は、前記本体部筐体に対して、前記本体部筐体の軸心方向において、前記芯体が装着される側とは反対側に設けられている
ことを特徴とする請求項15に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ペン本体部がペン筐体内に収納される電子ペン及び前記電子ペン本体部に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子ペンは、全体形状(外筐体)の多様化(デザイン重視)のため、いわゆるカートリッジ式になりつつある。これを実現するために、電子ペンの主要な機能としての位置検出センサに対する位置指示機能や筆圧検出機能などを具備する電子ペン本体部が、電子ペン用カートリッジとして、ペン筐体内に収納される電子ペンが提案されている(特許文献1(WO2016/158418)等参照)。
【0003】
この種の電子ペンは、この電子ペン本体部を、筒状のペン筐体の中空部内に収納して組み込むだけで構成することができるので、ボールペンのリフィル等と同様に、電子ペン本体部の交換が容易になると共に、電子ペンをノック式の構成とすることができて、非常に便利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2016/158418
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような電子ペンにおいては、電子ペン本体部は、その軸心方向においてペン先側と反対側の後端側が、ペン筐体内に設けられる嵌合部に嵌合されて、ペン筐体内に保持される構成とされている。このため、電子ペン本体部のペン先側は、自由に動ける状態となっており、電子ペン本体部のペン先側においてペン筐体の内壁面と接触させたくない部品が、ペン筐体の内壁面に接触する恐れがある。
【0006】
また、電子ペン本体部のペン先側には芯体が装着され、電子ペンの使用時には、当該装着された芯体の先端部が、ペン筐体のペン先側の開口から突出するようにされる。その場合に、上述のような電子ペンにおいては、芯体が装着された電子ペン本体部の、ペン筐体のペン先側の開口から突出する部分の長さは、電子ペン本体部の後端部の、ペン筐体内の嵌合部への嵌合量などに応じたものとなり、バラツキがある。このバラツキによっても、電子ペン本体部のペン先側においてペン筐体の内壁面と接触させたくない部品が、ペン筐体の内壁面と接触してしまう恐れがある。
【0007】
さらに、ノック式の電子ペンの場合には、ノック操作によるペン先の繰り出しときと、ペン先をペン筐体内に収納させる復帰状態にするときには、回転カムを用いた従来のノックカム機構の構成上、ペン筐体のペン先側の開口からは、電子ペン本体部のペン先側は、電子ペンの使用時にペン筐体のペン先側の開口から突出するペン先量よりも一時的に大きく突出する動きを行うため、その際に、電子ペン本体部のペン先側においてペン筐体の内壁面と接触させたくない部品が、ペン筐体の内壁面に接触する恐れがある。
【0008】
電子ペン本体部のペン先側においてペン筐体の内壁面と接触させたくない部品の例としては、例えば電磁誘導方式の電子ペンの場合における磁性体コアに巻回されたコイルが挙げられる。すなわち、電磁誘導方式の電子ペンの場合には、磁性体コアに巻回されたコイルはペン先側近傍に配設されるが、当該コイルがペン筐体の内壁面に接触すると、その接触部分でコイルに負荷がかかり、位置検出センサとの電磁誘導による結合ための磁束が不安定となり、電子ペンと位置検出センサとの間のインタラクション特性に悪影響が生じる恐れがある。
【0009】
この発明は、以上の問題点を解決することができるようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、
ペン先側に開口を備え、内部に中空部を有する筒状のペン筐体と、
前記ペン筐体の前記中空部内に収納可能な筒状の本体部筐体を有し、前記本体部筐体の軸心方向の一端側に芯体が装着され、前記本体部筐体の軸心方向の他端側が、前記ペン筐体内に係止される電子ペン本体部と、
を備え、
前記電子ペン本体部の前記本体部筐体の外周部の、前記軸心方向の所定位置には、前記本体部筐体の軸心方向に交差する方向に張り出す張出部が形成され、
前記ペン筐体の前記中空部の内壁面には、前記芯体の先端側が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出する状態において、前記本体部筐体の前記張出部と係合して、前記ペン筐体内において、前記本体部筐体の前記ペン先側への移動を阻止するストッパ部が形成されている
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0011】
上述の構成の電子ペンにおいては、電子ペン本体部の本体部筐体の外周部に設けた張出部は、ペン筐体の内壁面に設けられたストッパ部と係合し、電子ペン本体部のペン先側への移動が阻止される。したがって、上述の構成の電子ペンによれば、電子ペン本体部のペン先側においてペン筐体の内壁面と接触させたくない部品は、電子ペンのペン筐体のペン先側の内壁面に接触することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明による電子ペンの実施形態及び電子ペン本体部の実施形態を説明するための図である。
図2】電子ペンの実施形態及び電子ペン本体部の実施形態のペン先側の構成例を説明するための図である。
図3】電子ペン本体部の実施形態のペン先側の構成例を説明するための斜視図である。
図4】この発明による電子ペンの実施形態の比較例としての従来のノック式の電子ペンのノック操作時のペン先側の動きを説明するための図である。
図5】この発明による電子ペンの実施形態のノック操作時のペン先側の動きを説明するための図である。
図6】この発明による電子ペンの他の実施形態を説明するための断面図である。
図7】この発明による電子ペン本体部の他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明による電子ペンの実施形態を、電子ペン本体部の実施形態と共に、図を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、この発明による電子ペンの実施形態の構成例を示す図であり、この例は、電磁誘導方式の電子ペンの場合である。この実施形態の電子ペン1では、カートリッジ式の構成とされ、位置検出センサに対する位置指示機能や筆圧検出機能などの電子ペンの主要な機能は、電子ペン用カートリッジとしての電子ペン本体部3に収納される構成とされていると共に、電子ペン本体部3のペン先側が、ペン筐体2の長手方向の一端の開口2b側から出し入れされるノック式の構成を備える。この実施形態では、電子ペン本体部3は、ペン筐体2に対して着脱可能の構成とされている。
【0015】
図1(A)は、電子ペン本体部3の全体がペン筐体2の中空部2a内に収容されている状態を示し、図1(B)は、後述するノックカム機構部10により電子ペン本体部3のペン先側が、ペン筐体2の開口2bから繰り出された状態を示している。なお、図1(A)、(B)では、電子ペン1のペン筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。そして、図1(C)は、この実施形態の電子ペン本体部3の構成例を示す図である。
【0016】
この実施形態の電子ペン1のペン筐体2は、図1(A)及び(B)に示すように、筒状、この例では円筒状形状を有する。このペン筐体2は、内部に中空部2aを有すると共に、その軸心方向の一端側は徐々に先細とされたペン先側とされ、その先端部に開口2bが設けられている。そして、この実施形態の電子ペン1においては、図1(A)及び(B)に示すように、筒状のペン筐体2の中空部2a内に、電子ペン本体部3が収納され、ペン筐体2の軸心方向の他端側(以下、後端側という)に設けられるノックカム機構部10により、電子ペン本体部3のペン先側が、ペン筐体2の長手方向の一端の開口2b側から出し入れされる構成とされる。
【0017】
ペン筐体2は、この例では、図1(A)及び(B)に示すように、軸心方向の一端側のペン先側筐体部21と、軸心方向の他端側の後端側筐体部22とが、結合部23において結合されて構成される。結合部23は、この例では、後端側筐体部22に対して、ペン先側筐体部21がねじ込まれる構造とされている。
【0018】
なお、ペン先側筐体部21と、後端側筐体部22との結合は、この例のようなねじ込みの螺合による結合ではなく、ペン先側筐体部21と後端側筐体部22との一方にリング状凸部を形成すると共に、他方にリング状凹部を形成して、ペン先側筐体部21と後端側筐体部22との一方対して他方を圧入嵌合させ、リング状凸部にリング状凹部を嵌合させることで結合させる構成であってもよい。
【0019】
ノックカム機構部10は、この例では、図1(A)及び(B)に示すように、ペン筐体2の後端側筐体部22内に設けられる。ノックカム機構部10は、周知の市販のノック式ボールペンのノックカム機能部と同一の構成とされる。すなわち、ノックカム機構部10は、図1(A)及び(B)に示すように、カム本体11と、ノック棒12と、回転子13とが組み合わされた周知の構成とされている。カム本体11は、後端側筐体部22の内壁面に形成されている。ノック棒12は、使用者のノック操作を受け付けることができるように、端部12aが、後端側筐体部22のペン先側とは反対側の開口であるペン筐体2の後端側開口2cから突出するようにされている。
【0020】
なお、図1において、コイルバネ5は、ノック操作により、電子ペン本体部3のペン先側を、図1(B)に示すように突出させた繰り出し状態から、図1(A)に示す非繰り出し状態に復帰させるようにするための復帰用バネ(以下、復帰用バネ5という)である。
【0021】
回転子13は、電子ペン本体部3の後端側に設けられる嵌合突部3P(図1(A)、(B)の破線及び図1(C)参照)が嵌合される嵌合凹部13Jを具備する電子ペン本体部保持部13aを備える。
【0022】
この実施形態では、後端側筐体部22に設けられているノックカム機構部10の回転子13の電子ペン本体部保持部13aの嵌合凹部13Jに、電子ペン本体部3の後端部の嵌合突部3Pを嵌合させて、電子ペン本体部3を後端側筐体部22に係止させる。そして、ペン先側筐体部21の後端側から電子ペン本体部3を当該ペン先側筐体部21内に挿入させ、後端側筐体部22に対して、当該ペン先側筐体部21を結合することで、電子ペン1が構成される。なお、電子ペン本体部3は、ノックカム機構部10の回転子13の電子ペン本体部保持部13aに対して着脱可能とされている。
【0023】
この実施形態の電子ペン本体部3は、図1(C)に示すように、芯体30と、信号送信用部材40と、本体部筐体50と、この例では本体部筐体50と嵌合突部3Pとの間に設けられる弾性変位部60とからなる。本体部筐体50は、筆圧検出部71を保持すると共に電子回路が配設される回路基板72を保持するホルダー部51と、ホルダー部51に保持される筆圧検出部71と回路基板72とを収納して保護する機能を備える保護カバー部52とからなる。
【0024】
芯体30は、この例では比較的硬質で弾性を有する樹脂材料、例えばPOM(Polyoxymethylene)からなり、この例では、棒状の軸心部のペン先側に、軸心部よりも径が大きい先端部30aが形成されている。
【0025】
信号送信用部材40は、電磁誘導方式で位置検出装置と信号を送受信するための共振回路を構成するコイル41と、このコイル41が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア42とで構成されている。フェライトコア42には軸心方向に貫通孔42aが形成されている。
【0026】
このフェライトコア42の貫通孔42aの径は、芯体30の軸心部の径よりも大きくされており、芯体30の軸心部は、この貫通孔42aを挿通して、筆圧検出部71に嵌合される。この場合に、芯体30の先端部30aは、ペン先として、フェライトコア42よりも突出するようにされると共に、芯体30の軸心部の後端側の端部30bが、筆圧検出部71に嵌合される。これにより、芯体30の先端部30aに印加される圧力(筆圧)が、筆圧検出部71に印加される。芯体30は、筆圧検出部71に対して、着脱可能とされている。
【0027】
筆圧検出部71は、例えば容量可変キャパシタの静電容量を、印加される圧力(筆圧)に応じて変化させる機構を用いるもの(例えば特許文献(特開2011-186803号公報)参照)で構成される。なお、筆圧検出部71は、容量可変キャパシタをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子からなる半導体チップで構成したもの(例えば特許文献(特開2013-161307号公報)参照)を用いてもよい。なお、筆圧検出部71の構成は、この例のものに限られるものではない。
【0028】
回路基板72には、コイル41と共に共振回路を構成するコンデンサなどの電子部品が搭載されると共に、この例では、共振回路に容量可変キャパシタの構成の筆圧検出部71を接続するための導体パターンが形成されている。
【0029】
本体部筐体50のホルダー部51は、例えば樹脂材料で構成され、信号送信用部材40のフェライトコア42と嵌合すると共に、筆圧検出部71を保持する筒状部(図示は省略)を備えると共に、回路基板72を載置して保持する回路基板載置台部(図示は省略)を備える。
【0030】
本体部筐体50の保護カバー部52は、硬質の材料からなるパイプ形状の部材、この例では金属からなるパイプ形状の部材により構成され、ホルダー部51に保持される筆圧検出部71及び回路基板72の電気的回路構成部分を保護する回路部保護部材を構成する。
【0031】
すなわち、本体部筐体50は、ホルダー部51の筆圧検出部71を保持する筒状部の一部と回路基板載置台部とが、保護カバー部52の中空部内に収納されるような状態で、ホルダー部51と保護カバー部52とが軸心方向に結合されて構成される。この場合に、図1(C)に示すように、ホルダー部51の筒状部の径と、保護カバー部52を構成するパイプ形状の部材の径は、等しい径R0とされている。
【0032】
弾性変位部60は、図1(C)に示すように、この例では、本体部筐体50の保護カバー部52の内径よりも細い、例えば樹脂からなる棒状部材61に、コイルバネ62が伸縮自在の状態で遊嵌されて構成されたもので、この例では、本体部筐体50の保護カバー部52の後端側に設けられている。
【0033】
この場合に、棒状部材61の軸心方向の一方の端部61aは、棒状部材61の、コイルバネ62が遊嵌されている中間部分61mよりも若干大きな径とされていると共に、保護カバー部52の後端側の開口52aの内径が、棒状部材61の軸心方向の一方の端部61aの径よりも若干小さくされている。棒状部材61は、保護カバー部52に対して、一方の端部61aが、保護カバー部52の中空部内の後端の開口52a側に位置する状態で、中間部分61m及び軸心方向の他方の端部61bが保護カバー部52の外部に露出するように取り付けられる。
【0034】
棒状部材61の一方の端部61aと、保護カバー部52の後端側の開口52aの内径との関係から、棒状部材61は、保護カバー部52の後端側に取り付けられた状態では、保護カバー部52の後端側の開口52aから離脱しないようにされている。しかし、棒状部材61の径は、保護カバー部52の内径よりも小さい径とされているので、棒状部材61の一方の端部61a側は、保護カバー部52の中空部内において、ペン先側に移動可能の状態となっている。
【0035】
そして、棒状部材61の軸心方向の他方の端部61bは、棒状部材61の、コイルバネ62が遊嵌される中間部分61mよりも大きな径を有するように構成されており、この例では、端部61bの径は、本体部筐体50の径R0と等しく選定されている。この例においては、棒状部材61の他方の端部61bの円形端面の中央部に、電子ペン本体部3の後端側の嵌合突部3Pが形成されている。
【0036】
コイルバネ62の径は、棒状部材61の中間部61mの径よりは大きく、保護カバー部52及び棒状部材61の他方の端部61bの径R0よりも小さく選定されている。したがって、コイルバネ62は、本体部筐体50の保護カバー部52の後端側の端部と、棒状部材61の他方の端部61bとの間の中間部分61mに保持される。この保持状態においては、コイルバネ62は、その弾性復帰力により、本体部筐体50の保護カバー部52の後端側の端部と、棒状部材61の他方の端部61bとを弾性的に付勢する状態とされている。
【0037】
この実施形態では、以上のようにして、本体部筐体50の後端側に弾性変位部60が取り付けられることで、図1(C)に示すような電子ペン本体部3が形成される。そして、この電子ペン本体部3に対して、その軸心方向の長さを、弾性変位部60の弾性変位力に抗して収縮させるようとする、所定値以上の荷重が印加されたときに、弾性変位部60のコイルバネ62が弾性的に収縮して、棒状部材61の一方の端部61a側が保護カバー部52内でペン先側に移動するような変位をする。そして、そのような荷重が消失すると、コイルバネ62が伸長するように弾性的に復帰し、電子ペン本体部3の軸心方向の長さが、元の図1(C)の状態に戻る。
【0038】
この場合に、コイルバネ62の弾性特性は、電子ペン1の使用時に、芯体30の先端部30aに印加される筆圧の範囲の荷重に対しては、不感とされている。すなわち、コイルバネ62の弾性特性は、筆圧検出部71で検出される筆圧値の範囲の荷重に対しては不感とされる。そして、コイルバネ62は、電子ペン1の使用時に、芯体30の先端部30aに印加される筆圧の範囲の荷重よりも大きい使用者によるノック操作による荷重が印加されたとき、あるいは、電子ペン1に対して筆圧の範囲の荷重よりも大きい衝撃荷重などが印加されたときに、上述のように伸縮するような弾性特性とされている。
【0039】
なお、弾性変位部60は、電子ペン本体部3の保護カバー部52から取り外し可能とされている。
【0040】
なお、上述したノックカム機構における復帰用バネ5の弾性特性は一般的なノック式ボールペンなどに用いられているものと同様とされ、弾性変位部60のコイルバネ62よりも弾性力が小さいものである。
【0041】
そして、この実施形態の電子ペン本体部3においては、図1(A),(B),(C)に示すように、本体部筐体50の軸心方向の一端側と前記軸心方向の他端側との間の所定位置に、本体部筐体50の外周側面から軸心方向に交差する方向、この例では軸心方向に直交する方向に張り出す張出部80が設けられる。張出部80は、張り出している部分のペン先側の端面として、軸心方向に交差する方向、この例では軸心方向に直交する方向の端面を有する。この実施形態では、張出部80は、本体部筐体50のペン先側のホルダー部51に設けられている。張出部80は、ホルダー部51の外筐と一体に構成されていてもよいし、ホルダー部51とは別体として構成されていてもよい。
【0042】
この場合に、張出部80は、ホルダー部51の外周部の全周分に亘って軸心方向に直交する方向に張り出すように形成してもよいが、この実施形態では、図2に示すように、ホルダー部51の径の幅分だけ、互いに180度離れた部分が軸心方向に直交する方向に張り出すような形状とされている。張出部80の軸心方向の先端部は、ペン筐体2の内壁面に沿った形状となるように、円弧形状を有するようにされている。このように構成したのは、張出部80の軸心方向の先端部とペン筐体2の内壁面との接触部分をできるだけ少なくして、ノック操作時や衝撃荷重を受けたときに、ペン筐体2内で、電子ペン本体部3が軸心方向に動きやすくするためである。
【0043】
また、張出部80は、この実施形態では、本体部筐体50の外周において、互いに180度異なる角範囲部分から張り出すように形成したので、共振回路を構成するコイル41と回路基板72上のコンデンサとを接続する線部は、この張出部80以外の部分を通すことができ、ペン筐体2の内壁面と、擦れることがない。このことにおいても、ノック式の電子ペン1での不具合を軽減できる。
【0044】
そして、この実施形態では、ペン筐体2の内壁面、この実施形態ではペン先側筐体部21の内壁面には、図1(A),(B)に示すように、電子ペン本体部3の本体部筐体50に設けられている張出部80のペン先側の、この例では軸心方向に直交する方向の端面と係合して、電子ペン本体部3のペン筐体2のペン先側への移動を阻止するためのストッパ部の例として、この例では段部2dが形成されている。
【0045】
電子ペン1においては、位置検出センサの入力面における筆記時に、電子ペン本体部3のペン先側がペン筐体2の開口2bから外部に突出すべき軸心方向の長さ(規定突出長)が、使用者の入力操作のし易さなどが考慮されて、予め定められている。
【0046】
この実施形態では、電子ペン本体部3の本体部筐体50に設けられている張出部80と、ペン筐体2の内壁面に形成される段部2dとは、電子ペン本体部3のペン先側の、ペン筐体2の開口2bからの突出長が、上記の規定突出長Lpとなったときに、係合するように形成されている。
【0047】
この実施形態における電子ペン本体部3の本体部筐体50に設けられている張出部80の形成位置と、ペン筐体2の内壁面に形成される段部2dの形成位置との関係を、図3を参照してさらに説明する。
【0048】
図3(A)は、ペン筐体2のペン先側筐体部21のペン先側の断面図であり、図3(B)は、電子ペン本体部3のペン先側を示す図である。
【0049】
電子ペン本体部3は、図3(B)に示すように、外径がR0の本体部筐体50のペン先側のホルダー部51に対して、コイル41が巻回されたフェライトコア42からなる信号送信用部材40が取り付けられ、さらに、芯体30が、フェライトコア42の貫通孔42aを通じて挿通されて、ホルダー部51に配設されている筆圧検出部71に嵌合されている。
【0050】
この例においては、図3(B)に示すように、フェライトコア42の外径R1は、本体部筐体50の外径R0よりも小さい径とされている。そして、フェライトコア42にコイル41が巻回されている部分の外径R2は、本体部筐体50の外径R0以下とされている。すなわち、R1<R2≦R0の関係を有するように構成されている。
【0051】
図3(A)に示すように、ペン筐体2(ペン先側筐体部21)のペン先側の開口2bの径R3は、電子ペン本体部3のフェライトコア42の外径R1よりも若干大きい径とされており、図1((B)に示すように、電子ペン1の使用時には、この例では、芯体30のみならず、フェライトコア42の一部も、当該開口2bから外部に露出するように構成されている。
【0052】
そして、図3(B)に示すように、軸心方向において、芯体30の先端部30aの先端から、フェライトコア42のペン先側の一部までの長さが、前述した規定突出長Lpとなるように定められている。また、図3(B)に示すように、軸心方向において、芯体30の先端部30aの先端から、電子ペン本体部3のホルダー部51の張出部80のペン先側の端面までの長さは、Lzとされている。
【0053】
一方、図3(A)に示すように、ペン筐体2のペン先側筐体部21の開口2bに連通するペン先部の中空部の内径R4は、電子ペン本体部3の外径R0よりも僅かに大きくされており、この内径R4の中空部において、信号送信用部材40が、ペン先側筐体部21の内壁面に接触しないように構成されている。この例の場合、図3(A)に示すように、ペン先側筐体部21の中空部は、内径R4の部分から径R3の開口2bまでの部分は、徐々に径が小さくなるようなテーパを有するものとなっている。そのため、そのテーパ部分に、電子ペン本体部3のコイル41の部分が位置するようになると、コイル41がテーパ部分の内壁面に接触してしまう恐れがある。
【0054】
そこで、この例では、図3(A),(B)に示すように、軸心方向において、電子ペン本体部3の芯体30の先端から規定突出長Lpだけ後端側の位置から、コイル41の巻回部分のペン先側の端部までの長さが、ペン筐体2のペン先側筐体部21の開口2bの先端から、テーパ部を介して、内径R4のペン先側端部までの長さL2に等しくなるように構成されている。
【0055】
そして、図3(A),(B)に示すように、ペン筐体2のペン先側筐体部21の開口2bの先端から、Lz-Lpに等しい長さL1(=Lz-Lp)の位置から後端側の、ペン先側筐体部21の中空部の内径を、上記内径R4及び上記外径R0よりも大きい径R5とする。これにより、ペン筐体2のペン先側筐体部21の開口2bの先端から、Lz-Lpに等しい長さL1(=Lz-Lp)の位置に、段部2dが形成される。
【0056】
したがって、図3(A)に示すように、この実施形態の電子ペン1のペン筐体2においては、ペン先側の径R4となる部分の長さは、長さL3(=L1-L2)となる。そして、電子ペン本体部3のペン先側が規定突出長Lpだけ突出する状態では、中空部2aの、この径R4の長さL3の部分に、図3(B)に示す電子ペン本体部3のコイル41が位置するようになる。したがって、コイル41は、ペン筐体2の中空部2aの内壁には接触することはない。このため、コイル41には、接触による不要な負荷がかかることはなく、信号送信用部材40により、安定な磁束で位置検出センサと結合することができる。
【0057】
そして、電子ペン本体部3の本体部筐体50のホルダー部51に形成されている張出部80の突出方向の先端の円弧部の径は、ペン筐体2のペン先側筐体部21の前記段部2dよりもペン先側の中空部の内径R4よりは大きく、かつ、ペン筐体2のペン先側筐体部21の前記内径R5とほぼ等しい、あるいは僅かに小さい径R6とされている。つまり、R4<R6≦R5の関係を有するように構成されている。
【0058】
以上のように構成されていることにより、図1(B)に示すように、ペン筐体2のペン先側筐体部21の内壁面の段部2dに、電子ペン本体部3の張出部80が係合することで、電子ペン本体部3は、ペン筐体2の中空部2a内において、ペン先側に移動するのが阻止される状態となる。そして、その状態では、電子ペン本体部3のペン先側の芯体30及びフェライトコア42の一部が、規定突出長Lpだけ、ペン筐体2の開口2bから外部に突出する状態とすることができる。
【0059】
したがって、電子ペン1は、そのペン先側においては、常に規定突出長Lpだけ開口2bから外部に突出するような状態が維持されるようになり、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2の内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2の内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。
【0060】
しかも、この実施形態においては、電子ペン本体部3に設けられている張出部80の突出方向の先端の円弧状部の径は、ペン筐体2のペン先側筐体部21の内径R5とほぼ等しい、あるいは僅かに小さい径R6とされているので、電子ペン本体部3は、軸心方向に直交する方向への変位も抑えられている。したがって、これによっても、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2の内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2の内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。
【0061】
そして、この実施形態の電子ペン1においては、ペン筐体2のペン先側筐体部21の内壁面の段部2dに、電子ペン本体部3の張出部80が係合することで、電子ペン本体部3のペン先側は、規定突出長Lp以上がペン筐体2の開口2bから外部に突出することはないように構成されているので、ノック操作時においても規定突出長以上の突出が防止され、この点でも、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2の内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2の内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。
【0062】
この実施形態の電子ペン1のノック操作時のペン先側の動きを、従来のノック式の電子ペン1PRのペン先側の動きと比較して説明する。
【0063】
図4は、従来のノック式の電子ペン1PRのノック操作時における、電子ペン本体部3PRのペン先側の動きを説明するための図である。図4(A)は、電子ペン本体部3PRのペン先側が、ペン筐体2PR内に収納されている非繰り出し状態を示している。そして、図4(B)は、この図4(A)の状態から、電子ペン1PRの使用者が、ノックカム機構部10PRのノック棒12PRを押下して、電子ペン本体部3PRのペン先側を、ペン筐体2PRの開口から規定突出長Lpだけ突出させた状態を示す。
【0064】
従来のノック式の電子ペン1PRでは、この図4(B)の状態では、電子ペン本体部3PRのペン先部の繰り出し操作は完了しておらず、ノック棒12PRの押下操作を止めると、ノックカム機構部10PRの復帰用バネ(図4では図示を省略)の弾性変位力により、電子ペン本体部3PRは、図4(A)の非繰り出し状態に戻ってしまう。
【0065】
この図4(B)の状態から、使用者がさらにノック棒12PRを押し込んで、図4(C)に示すように、電子ペン本体部3PRのペン先部を、ペン筐体2PRの開口から規定突出長Lp以上を突出させるようにする。すると、ノックカム機構部10PRの回転子が回転して、図4(D)に示すように、電子ペン本体部3PRのペン先部が規定突出長Lpだけペン筐体2Aの開口から突出する状態で、ノックカム機構部10PRがロックして、繰り出し操作が完了する。
【0066】
そして、この図4(D)の規定突出長Lpだけ、ペン先部を繰り出す電子ペン1PRの使用状態から、さらに、ノック棒12PRを押して、図4(E)に示すように、再度、電子ペン本体部3PRのペン先部を、ペン筐体2PRの開口から規定突出長Lp以上を突出させるようにすると、ノックカム機構部10PRの回転子が回転して、繰り出しのロック状態が解除され、ノックカム機構部10PRの復帰用バネ(図4では図示を省略)の弾性変位力により、電子ペン本体部3PRは、図4(F)に示すように、図4(A)に示した電子ペン本体部3PRのペン先側が、ペン筐体2PR内に収納されている非繰り出し状態に復帰する。
【0067】
以上のようにして、従来のノック式の電子ペン1PRの場合、図4(C)及び(E)に示すように、規定突出長Lpよりも大きい突出長に亘って電子ペン本体部3PRのペン先が突出するように電子ペン本体部3PRをペン筐体2PRの開口側に移動させる状態とする必要があり、それらの状態においては、長年の使用により、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2の内壁面と接触させたくない部品の例である信号送信用部材のコイルが、ペン筐体2の内壁面と接触する状態となるおそれがある。
【0068】
次に、この実施形態のノック式の電子ペン1のノック操作時における、電子ペン本体部3のペン先側の動きを、図5を参照しながら説明する。図5(A)は、電子ペン本体部3のペン先側が、ペン筐体2内に収納されている非繰り出し状態を示している。この状態では、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とは離間しており、係合する状態とはなっていない。
【0069】
そして、この図5(A)の状態から、電子ペン1の使用者が、ノックカム機構部10のノック棒12を復帰用バネ5の弾性力に抗して押下して、図5(B)に示すように、電子ペン本体部3のペン先側を、ペン筐体2の開口から規定突出長Lpだけ突出させた状態にすると、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とが係合し、筆記入力用カートリッジ5のペン先側は、それ以上、ペン先側筐体部21内において開口2aから突出する方向には移動しない状態になる。
【0070】
しかし、この図5(B)の状態では、電子ペン本体部3のペン先部の繰り出し操作は完了しておらず、ノック棒12の押下操作を止めると、ノックカム機構部10の復帰用バネ5(図5では図示を省略)の弾性変位力により、電子ペン本体部3は、図5(A)の非繰り出し状態に戻ってしまう。
【0071】
この図5(B)の状態から、使用者が、復帰用バネ5の弾性変位力に抗する圧力(荷重)であるが、弾性変位部60のコイルバネ62の弾性変位力よりは小さい圧力(荷重)で、ノック操作部をペン先側に押し込むようにした場合には、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とが係合しているため、回転子部13をペン先側に移動させることはできない。
【0072】
そして、図5(B)の状態から、使用者が、弾性変位部60のコイルバネ62の弾性変位力に抗する大きい圧力(荷重)をかけてノック棒12を押し込むと、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とが係合しているため、電子ペン本体部3のペン先側の突出長は、規定突出長Lpのままとなるが、図5(C)に示すように、電子ペン本体部3の弾性変位部60のコイルバネ62が収縮し、弾性変位部60が軸心方向に収縮する。すると、これに応じて、ノックカム機構部10の回転子13が軸心方向に移動すると共に回転して、電子ペン本体部3のペン先部が規定突出長Lpだけペン筐体2の開口から突出する状態で、ノックカム機構部10がロックする。そして、図5(D)に示すように、収縮した電子ペン本体部3の弾性変位部60のコイルバネ62が元の状態に戻り、収縮した弾性変位部54は元の長さの状態に戻る。そして、電子ペン1は、規定突出長Lpだけペン先部を繰り出す使用状態になり、ノック操作によるペン先部の繰り出しが完了する。
【0073】
以上の説明から明らかなように、電子ペン本体部3のペン先側を、ペン筐体2の開口から突出させる際におけるノックカム機構部のノック操作の際の軸心方向のストロークの長さよりも、電子ペン本体部3のペン先側がノック操作の際に移動する軸心方向の長さは小さくなる。すなわち、電子ペン本体部3のペン先側は、張出部80がペン筐体2の段部2dと衝合するまでは、ノック棒12の押し込み量と同じだけ移動するが、それ以上は移動しない。そして、ノック棒12に、電子ペン本体部3の弾性変位部60のコイルバネ62に抗する圧力(荷重)が掛けられると、電子ペン本体部3の弾性変位部60が、軸心方向の長さを変える。この電子ペン本体部3の弾性変位部54の長さの変位分が、ノック操作時における必要なストロークの一部となる。
【0074】
この図5(D)の使用状態において、使用者が電子ペン1のペン先の芯体30の先端を位置検出センサの入力面に接触させて筆圧を印可させたときには、弾性変位部60は、その筆圧に対しては不感となっているので、筆圧検出部71で、芯体30の先端に印可される筆圧が的確に検出される。
【0075】
そして、この電子ペン本体部3のペン先がペン筐体2の開口から繰り出されている状態において、例えば電子ペン1を誤って落下させる等して、ペン先側に衝撃荷重が印加されたときには、その衝撃荷重は、弾性変位部60の弾性変位で吸収され、電子ペン1が損傷してしまうのを回避することができる。すなわち、弾性変位部60は、いわゆるショックアブソーバーの役割をする。なお、ノックカム機構部10のノック棒12側に衝撃荷重が加わったときにも、同様である。
【0076】
次に、この図5(D)の規定突出長Lpだけペン先部を繰り出す使用状態から、さらに、ノック棒12を押し込むと、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とが係合しているため、電子ペン本体部3のペン先側の突出長は、規定突出長Lpのままとなるが、図5(E)に示すように、電子ペン本体部3の弾性変位部60が軸心方向に収縮し、これに応じて、ノックカム機構部10の回転子13が回転して、繰り出しのロック状態が解除され、ノックカム機構部10の復帰用バネ5(図5では図示を省略)の弾性変位力により、電子ペン本体部3は、図5(F)に示すように、図5(A)に示した電子ペン本体部3のペン先側が、ペン筐体2内に収納されている非繰り出し状態に復帰する。
【0077】
以上説明したように、この実施形態の電子ペン1においては、電子ペン1におけるノック操作においては、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とを係合させて、電子ペン本体部3のペン先側は、規定突出長Lpよりも突出しない状態を維持しつつ、弾性変位部60の弾性変位により、ノックカム機構部10による電子ペン本体部3のペン先部の繰り出し及び復帰動作を可能としている。
【0078】
したがって、ノック操作時においても、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2の内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2の内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。そして、ノック操作により繰り出された電子ペン本体部3は、前述したように、張出部80の存在により、軸心方向に直交する方向への変位も抑えられており、これによっても、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2の内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2の内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。
【0079】
[他の実施形態]
なお、上述の実施形態の電子ペンは、ノック式の構成であったが、この発明による電子ペンは、ノック式の構成のものに限られるものではない。図6は、非ノック式の構成の電子ペン1Aの構成例を示す図である。
【0080】
この実施形態の電子ペン1Aでは、図6に示すように、上述の実施形態の電子ペン本体部3はそのまま用いる。そして、この電子ペン本体部3を、例えば樹脂などで構成される筒状のペン筐体2Aの中空部2Aa内に収納する共に、ペン筐体2Aの後端側を、例えば樹脂などで構成される蓋部20Aで閉塞することにより、電子ペン本体部3を軸心方向に移動不可の状態とするように構成する。
【0081】
この場合に、この実施形態の電子ペン1Aのペン筐体2Aは、上述した電子ペン1のペン筐体2のペン先側筐体部21と同様に、軸心方向の一端側に、電子ペン本体部3のペン先側の芯体30の先端部30a及びコイル41が巻回されるフェライトコア42のペン先側の一部を外部に突出させるための開口2Abを有する。また、図6に示すように、ペン筐体2Aの内壁面は、当該ペン筐体2Aの軸心方向において、ペン先側の開口2Abの先端部から長さL1の位置に段部2Adが形成されるように、ペン先側の内径がR4、後端側の内径がR5に選定されている。
【0082】
したがって、電子ペン本体部3をペン筐体2Aの後端側の開口から中空部2Aa内に挿入すると、図6に示すように、電子ペン本体部3は、ペン先側を前述した規定突出長Lpだけ突出させた状態で、張出部80が、ペン筐体2Aの段部2Adに衝合して、それ以上、軸心方向のペン先側には移動しない状態となる。
【0083】
この状態において、ペン筐体2Aの後端側に、蓋部20Aを結合させて、後端側開口を閉塞することで、電子ペン本体部3を、ペン筐体2Aの中空部2Aa内で、軸心方向において移動しない状態でペン筐体2Aの中空部2Aa内に収納する。この場合に、蓋部20Aには、電子ペン本体部3の後端部の嵌合突部3Pと嵌合する嵌合凹部20Aaを備えている。
【0084】
そして、この実施形態の電子ペン1Aにおいては、電子ペン本体部3の弾性変位部60を若干収縮させて、電子ペン本体部3の軸心方向の長さを弾性的に変位させる状態で、蓋部20Aがペン筐体2Aに結合される。これにより、電子ペン本体部3の張出部80がペン筐体2Aの内壁面の段部2Adをペン先側に常に弾性的に付勢するような状態で、蓋部20Aがペン筐体2Aに結合される。
【0085】
図示は省略するが、ペン筐体2Aと蓋部20Aとの結合部23Aは、ねじ込みによる螺合とされている。なお、ペン筐体2Aと蓋部20Aとの結合部23Aは、ねじ込みの螺合による結合ではなく、ペン筐体2Aと蓋部20Aとの一方にリング状凸部を形成すると共に、他方にリング状凹部を形成して、ペン筐体2Aと蓋部20Aとの一方対して他方を圧入嵌合させ、リング状凸部にリング状凹部を嵌合させることで結合させる構成であってもよい。
【0086】
この実施形態の電子ペン1Aにおいても、電子ペン本体部3は、張出部80がペン筐体2の段部2dと係合することで、電子ペン本体部3のペン先側は、常に、規定突出長Lpだけ突出する状態を維持する。これによって、この実施形態の電子ペン1Aにおいても、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2Aの内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2Aの内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。
【0087】
そして、この実施形態の電子ペン1Aにおいても、電子ペン本体部3に設けられている張出部80の突出方向の先端の円弧状部の径は、ペン筐体2Aの内径R5とほぼ等しい、あるいは僅かに小さい径R6とされているので、電子ペン本体部3は、軸心方向に直交する方向への変位も抑えられている。したがって、これによっても、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2の内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2Aの内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。
【0088】
また、この例の電子ペン1Aの使用状態においても、上述の実施形態の電子ペン1と同様に、使用者がペン先の芯体30の先端を位置検出センサの入力面に接触させて筆圧を印可させたときには、弾性変位部60は、その筆圧に対しては不感となっているので、筆圧検出部71で、芯体30の先端に印可される筆圧が的確に検出される。
【0089】
そして、電子ペン1Aを誤って落下させる等して、ペン先側に衝撃荷重が印加されたときには、その衝撃荷重は、弾性変位部60の弾性変位で吸収され、電子ペン1Aが損傷してしまうのを回避することができる。
【0090】
なお、図6の実施形態の電子ペン1Aにおいては、弾性変位部60を有する電子ペン本体部3をそのまま用いるようにしたが、電子ペン本体部3は、弾性変位部60を有しない構成であってもよい。その場合には、蓋部20Aを、例えば弾性を有する部材、例えば硬質ゴムなどの弾性樹脂部材で構成することで、電子ペン本体部3の張出部80がペン筐体2Aの内壁面の段部2Adと係合している状態において、電子ペン本体部3を、ペン筐体2Aの中空部2Aa内において、ペン先側に常に弾性的に付勢するように、蓋部20Aをペン筐体2Aに結合するように構成することができる。
【0091】
[その他の実施形態または変形例]
なお、上述の実施形態では、張出部80と係合して、電子ペン本体部3のペン先側への移動を阻止するためのペン筐体2の内壁面のストッパ部は、ペン筐体2の中空部の径を変えることで形成される段部2dの構成としたが、このような段部2dに限られるものではなく、張出部80と係合して、電子ペン本体部3のペン先側への移動を阻止することができるものであれば、どのようなものでもよい。例えば、ストッパ部は、ペン筐体2の内壁面に張出部80の全部あるいは一部と係合して、電子ペン本体部3のペン先側への移動を阻止する突部の構成としてもよい。
【0092】
上述の実施形態においては、電子ペン本体部3に設ける張出部80は、本体部筐体50の軸心方向に直交する方向に張り出すようにしたが、直交する方向に限られる訳ではなく、軸心方向に交差する方向であって、段部2d、2Adなどからなるストッパ部と係合するものであればよい。その場合を考慮すると、段部2d,2Adなどのストッパ部の形成位置及び張出部80の形成位置を決める際には、段部2d,2Adなどのストッパ部と張出部80との係合位置を基準にして選定するようにする。
【0093】
また、上述の実施形態では、弾性変位部60は、電子ペン本体部3の本体部筐体50の後端側に設けるようにしたが、本体部筐体50の中間に設けてよい。例えば、本体部筐体50の例えば保護カバー部52を2分して、その2分した保護カバー部52の中間に設けるようにしてもよい。
【0094】
また、上述の実施形態では、張出部80は、本体部筐体50の外周において、互いに180度異なる角範囲部分から張り出すように形成したが、これに限られるものではなく、互いに120度異なる角範囲から3方に張り出すように形成してもよいし、あるいは、本体部筐体50の全周に亘って形成するようにしてもよい。また、電子ペン本体部3の本体部筐体50の外周の所定の角範囲に亘って1個の張出部を形成するようにしてもよい。
【0095】
図7は、電子ペン本体部3の本体部筐体50の全周に亘って張出部を形成する例であって、この例は、本体部筐体50のホルダー部51の形状を工夫して張出部を形成するようにした例である。
【0096】
図7(A)は、この例における本体部筐体50Aのホルダー部51Aの、フェライトコア42に巻回されたコイル41からなる信号送信用部材52との結合側の拡大図である。また、図7(B)は、フェライトコア42に巻回されたコイル41からなる信号送信用部材40及び本体部筐体50Aのホルダー部51Aの部分の拡大斜視図である。
【0097】
この図7の例においては、本体部筐体50Aのホルダー部51Aは、保護カバー部52のペン先側端部との結合位置では、保護カバー部52の外径R0と等しい外径を有する。そして、ホルダー部51Aは、当該保護カバー部52との結合位置の外径R0からペン先側に向かって徐々に外径が大きくなり、最大外径がペン筐体2の中空部の内径R5とほぼ等しい、あるいは僅かに小さい径R6となる張出形状部80Aを有する。張出形状部80Aは、張出部を構成する。そして、図7の例においては、張出形状部80Aよりもさらにペン先側には、外径が保護カバー部52の外径R0と等しい外径の先端部分51Aaが形成されている。
【0098】
したがって、この例では、図7(A)及び(B)に示すように、張出形状部80Aのペン先側の端部と、先端部分51Aaとの境目に段部が生じ、この段部を構成する張出形状部80Aの端面80Aaが、ペン筐体2の段部21sと係合する。なお、先端部分51Aaは設けずに、張出形状部80Aのみを有するようにホルダー部51Aを形成し、張出形状部80Aの端面80Aaが、ペン筐体2の内壁面のストッパ部の例である段部2dと係合するように構成してもよい。
【0099】
そして、この実施形態では、図7(A)及び(B)に示すように、ホルダー部51Aの張出形状部80Aにおいて、円周方向の所定角度位置には、凹部80Abが設けられている。一方、この例の場合には、ペン筐体2の段部2dの近傍の内壁面の円周方向の所定の角度位置には、凹部80Abに係合する突部が形成されており、凹部80Abにペン筐体2の突部が係合することで、電子ペン本体部3が軸心方向を中心とした回転をしないように構成されている。つまり、凹部80Abは、電子ペン本体部3の回り止め用である。
【0100】
また、この例においては、図7(B)に示すように、ホルダー部51Aの張出形状部80Aの外周面において、円周方向の所定の角度位置には、軸心方向に沿う凹溝80Acが形成されている。そして、この例では、図7(B)に示すように、この凹溝80Acに、コイル41の両端のリード部41a及び41bが納められ、保護カバー部52内に導かれている。保護カバー部52内には、ホルダー部51Aにより保持されている回路基板が在り、コイル41のリード部41a及び41bは、この回路基板に配設されているコンデンサと接続されることで、共振回路が形成される。
【0101】
上述の実施形態は、電磁誘導方式の電子ペンの場合について説明したが、電磁誘導方式に限られるものではなく、例えばアクティブ静電容量方式などの静電容量方式の電子ペンの場合にも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
1,1A…電子ペン、2,2A…ペン筐体、2a,2Aa…中空部、2b,2Ab…開口、2d,2Ad…段部、3…電子ペン本体部、5…復帰バネ、10…ノックカム機構部、12…ノック棒、40…信号送信用部材、50…本体部筐体、60…弾性変位部、71…筆圧検出部、72…回路基板、80…張出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン先側に開口を備え、内部に中空部を有する筒状のペン筐体と、
前記ペン筐体の前記中空部内に収納可能な筒状の本体部筐体を有し、前記本体部筐体の軸心方向の一端側に芯体が装着され、前記本体部筐体の軸心方向の他端側が、前記ペン筐体内に係止される電子ペン本体部と、
を備え、
前記電子ペン本体部の前記本体部筐体の外周部の、前記軸心方向の所定位置には、前記本体部筐体の軸心方向に交差する方向に張り出す張出部が形成され、
前記ペン筐体の前記中空部の内壁面には、前記芯体の先端側が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出する状態において、前記本体部筐体の前記張出部と係合して、前記ペン筐体内において、前記電子ペン本体部の前記ペン先側への移動を阻止するストッパ部が形成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記張出部は、前記本体部筐体に装着された前記芯体の先端位置から前記ストッパ部と係合する前記張出部の部分までの前記本体部筐体の軸心方向における長さが、前記ペン筐体の前記ペン先側の先端位置から前記ストッパ部までの軸心方向の長さに、前記芯体が装着された前記電子ペン本体部のペン先側が、電子ペンの使用時に前記ペン筐体の前記ペン先側の開口から外部に露出すべきとして定められた前記本体部筐体の軸心方向の長さを加えた長さとなるように、前記本体部筐体の外周部に配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記電子ペン本体部に装着された前記芯体が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出すると共に、前記本体部筐体の前記張出部と前記ストッパ部とが係合している状態において、前記電子ペン本体部は前記ペン筐体内で前記ペン先側に弾性的に付勢されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記電子ペン本体部は、前記本体部筐体の軸心方向の荷重が印加された場合に、前記印加された荷重に応じて、前記電子ペン本体部の前記軸心方向の長さを弾性的に収縮変位させる弾性変位部を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記電子ペン本体部は、前記本体部筐体内に、前記芯体に印可される筆圧を検出する筆圧検出部を備え、
前記弾性変位部は、前記筆圧検出部で検出される前記筆圧値の範囲の荷重に対しては不感であって、前記筆圧値の範囲の荷重よりも大きな荷重を吸収するように前記弾性変位をする
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記弾性変位部は、前記本体部筐体に対して、前記本体部筐体の軸心方向において、前記芯体が装着される側とは反対側に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記電子ペン本体部に装着された前記芯体が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出すると共に、前記本体部筐体の前記張出部と前記ストッパ部とが係合している状態においては、前記弾性変位部により、前記電子ペン本体部は前記ペン筐体内で前記ペン先側に弾性的に付勢されている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記ペン筐体の軸心方向の他端側には、前記本体部筐体の軸心方向の他端側を保持して、当該電子ペン本体部の本体部筐体に装着された前記芯体を、使用者によるノック操作に基づいて前記ペン筐体の前記ペン先側の開口から出没させるようにするノックカム機構部が設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記ノック操作がなされた場合に、前記電子ペン本体部の前記本体部筐体の前記張出部と前記ペン筐体の前記内壁面の前記ストッパ部とが係合する状態において、前記弾性変位部が前記弾性変位をするように構成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記張出部は、前記本体部筐体の軸心方向に交差する方向の突出端面が前記ペン筐体の前記中空部の内壁面に衝合することにより、前記本体部筐体の中心線位置が、前記ペン筐体の前記中空部の中心線位置と同一の位置を保持するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項11】
前記電子ペン本体部のペン先側には、磁性体コアに巻回されたコイルが設けられており、前記芯体が前記ペン筐体の前記ペン先側の開口から突出する状態のときに、前記コイルのペン先側の端部が前記ペン筐体の内壁面に接触しないように、前記電子ペン本体部の前記張出部の前記本体部筐体の軸心方向の形成位置と、前記ペン筐体の内壁面のストッパ部の前記ペン筐体の軸心方向の形成位置が定められている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記ストッパ部は、前記ペン筐体の内壁面に形成された段部の構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項13】
ペン先側に開口を備える筒状のペン筐体の中空部内に収納可能な筒状の本体部筐体を有し、前記本体部筐体の軸心方向の一端側に芯体が装着され、前記軸心方向の他端側が、前記ペン筐体内に係止される電子ペン本体部であって、
前記本体部筐体の外周部の、前記軸心方向の所定位置には、前記軸心方向に交差する方向に突出する張出部が形成され、
前記芯体の先端側が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出する状態において、前記本体部筐体の前記張出部が、前記ペン筐体の前記中空部の内壁面に設けられているストッパ部と係合して、前記電子ペン本体部の前記軸心方向の前記ペン先側への移動が阻止されるように構成されている
ことを特徴とする電子ペン本体部。
【請求項14】
前記張出部は、前記本体部筐体に装着された前記芯体の先端位置から前記ストッパ部と係合する前記張出部の部分までの前記本体部筐体の軸心方向における長さが、前記ペン筐体の前記ペン先側の先端位置から前記ストッパ部までの軸心方向の長さに、前記芯体が装着された前記電子ペン本体部のペン先側が、電子ペンの使用時に前記ペン筐体の前記ペン先側の開口から突出すべきとして設定された前記本体部筐体の軸心方向の長さを加えた長さとなるように、前記本体部筐体の外周部に配設されている
ことを特徴とする請求項13に記載の電子ペン本体部。
【請求項15】
前記本体部筐体の軸心方向の荷重が印加された場合に、前記印加された荷重に応じて電子ペン本体部の前記軸心方向の長さを弾性的に収縮変位させる弾性変位部を備えている
ことを特徴とする請求項13に記載の電子ペン本体部。
【請求項16】
前記本体部筐体内に、前記芯体に印可される筆圧を検出する筆圧検出部を備え、
前記弾性変位部は、前記筆圧検出部で検出される前記筆圧値の範囲の荷重に対しては不感であって、前記筆圧値の範囲の荷重よりも大きな荷重を吸収するように前記弾性変位をする
ことを特徴とする請求項15に記載の電子ペン本体部。
【請求項17】
前記弾性変位部は、前記本体部筐体に対して、前記本体部筐体の軸心方向において、前記芯体が装着される側とは反対側に設けられている
ことを特徴とする請求項15に記載の電子ペン本体部
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記の課題を解決するために、
ペン先側に開口を備え、内部に中空部を有する筒状のペン筐体と、
前記ペン筐体の前記中空部内に収納可能な筒状の本体部筐体を有し、前記本体部筐体の軸心方向の一端側に芯体が装着され、前記本体部筐体の軸心方向の他端側が、前記ペン筐体内に係止される電子ペン本体部と、
を備え、
前記電子ペン本体部の前記本体部筐体の外周部の、前記軸心方向の所定位置には、前記本体部筐体の軸心方向に交差する方向に張り出す張出部が形成され、
前記ペン筐体の前記中空部の内壁面には、前記芯体の先端側が前記ペン筐体の前記開口から外部に露出する状態において、前記本体部筐体の前記張出部と係合して、前記ペン筐体内において、前記電子ペン本体部の前記ペン先側への移動を阻止するストッパ部が形成されている
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
図1】この発明による電子ペンの実施形態及び電子ペン本体部の実施形態を説明するための図である。
図2】電子ペンの実施形態及び電子ペン本体部の実施形態のペン先側の構成例を説明するための図である。
図3】電子ペン本体部の実施形態のペン先側の構成例を説明するためのである。
図4】この発明による電子ペンの実施形態の比較例としての従来のノック式の電子ペンのノック操作時のペン先側の動きを説明するための図である。
図5】この発明による電子ペンの実施形態のノック操作時のペン先側の動きを説明するための図である。
図6】この発明による電子ペンの他の実施形態を説明するための断面図である。
図7】この発明による電子ペン本体部の他の実施形態を説明するための図である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
なお、図1(A)及び(B)において、コイルバネ5は、ノック操作により、電子ペン本体部3のペン先側を、図1(B)に示すように突出させた繰り出し状態から、図1(A)に示す非繰り出し状態に復帰させるようにするための復帰用バネ(以下、復帰用バネ5という)である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
この図4(B)の状態から、使用者がさらにノック棒12PRを押し込んで、図4(C)に示すように、電子ペン本体部3PRのペン先部を、ペン筐体2PRの開口から規定突出長Lp以上を突出させるようにする。すると、ノックカム機構部10PRの回転子が回転して、図4(D)に示すように、電子ペン本体部3PRのペン先部が規定突出長Lpだけペン筐体2PRの開口から突出する状態で、ノックカム機構部10PRがロックして、繰り出し操作が完了する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
以上のようにして、従来のノック式の電子ペン1PRの場合、図4(C)及び(E)に示すように、規定突出長Lpよりも大きい突出長に亘って電子ペン本体部3PRのペン先が突出するように電子ペン本体部3PRをペン筐体2PRの開口側に移動させる状態とする必要があり、それらの状態においては、長年の使用により、電子ペン本体部3PRのペン先側においてペン筐体2PRの内壁面と接触させたくない部品の例である信号送信用部材のコイルが、ペン筐体2PRの内壁面と接触する状態となるおそれがある。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
そして、この図5(A)の状態から、電子ペン1の使用者が、ノックカム機構部10のノック棒12を復帰用バネ5の弾性力に抗して押下して、図5(B)に示すように、電子ペン本体部3のペン先側を、ペン筐体2の開口から規定突出長Lpだけ突出させた状態にすると、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とが係合し、電子ペン本体部3のペン先側は、それ以上、ペン先側筐体部21内において開口2bから突出する方向には移動しない状態になる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
この図5(B)の状態から、使用者が、復帰用バネ5の弾性変位力に抗する圧力(荷重)であるが、弾性変位部60のコイルバネ62の弾性変位力よりは小さい圧力(荷重)で、ノック棒12をペン先側に押し込むようにした場合には、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とが係合しているため、回転子部13をペン先側に移動させることはできない。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
そして、図5(B)の状態から、使用者が、弾性変位部60のコイルバネ62の弾性変位力に抗する大きい圧力(荷重)をかけてノック棒12を押し込むと、ペン筐体2の段部2dと電子ペン本体部3の張出部80とが係合しているため、電子ペン本体部3のペン先側の突出長は、規定突出長Lpのままとなるが、図5(C)に示すように、電子ペン本体部3の弾性変位部60のコイルバネ62が収縮し、弾性変位部60が軸心方向に収縮する。すると、これに応じて、ノックカム機構部10の回転子13が軸心方向に移動すると共に回転して、電子ペン本体部3のペン先部が規定突出長Lpだけペン筐体2の開口から突出する状態で、ノックカム機構部10がロックする。そして、図5(D)に示すように、収縮した電子ペン本体部3の弾性変位部60のコイルバネ62が元の状態に戻り、収縮した弾性変位部60は元の長さの状態に戻る。そして、電子ペン1は、規定突出長Lpだけペン先部を繰り出す使用状態になり、ノック操作によるペン先部の繰り出しが完了する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
以上の説明から明らかなように、電子ペン本体部3のペン先側を、ペン筐体2の開口から突出させる際におけるノックカム機構部のノック操作の際の軸心方向のストロークの長さよりも、電子ペン本体部3のペン先側がノック操作の際に移動する軸心方向の長さは小さくなる。すなわち、電子ペン本体部3のペン先側は、張出部80がペン筐体2の段部2dと衝合するまでは、ノック棒12の押し込み量と同じだけ移動するが、それ以上は移動しない。そして、ノック棒12に、電子ペン本体部3の弾性変位部60のコイルバネ62に抗する圧力(荷重)が掛けられると、電子ペン本体部3の弾性変位部60が、軸心方向の長さを変える。この電子ペン本体部3の弾性変位部60の長さの変位分が、ノック操作時における必要なストロークの一部となる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
この実施形態の電子ペン1Aにおいても、電子ペン本体部3は、張出部80がペン筐体2Aの段部2Adと係合することで、電子ペン本体部3のペン先側は、常に、規定突出長Lpだけ突出する状態を維持する。これによって、この実施形態の電子ペン1Aにおいても、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2Aの内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2Aの内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0087
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0087】
そして、この実施形態の電子ペン1Aにおいても、電子ペン本体部3に設けられている張出部80の突出方向の先端の円弧状部の径は、ペン筐体2Aの内径R5とほぼ等しい、あるいは僅かに小さい径R6とされているので、電子ペン本体部3は、軸心方向に直交する方向への変位も抑えられている。したがって、これによっても、電子ペン本体部3のペン先側においてペン筐体2Aの内壁面と接触させたくない部品の例であるコイル41が、ペン筐体2Aの内壁面に接触する状態とならないようにすることができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
図7(A)は、この例における本体部筐体50Aのホルダー部51Aの、フェライトコア42に巻回されたコイル41からなる信号送信用部材40との結合側の拡大図である。また、図7(B)は、フェライトコア42に巻回されたコイル41からなる信号送信用部材40及び本体部筐体50Aのホルダー部51Aの部分の拡大斜視図である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
したがって、この例では、図7(A)及び(B)に示すように、張出形状部80Aのペン先側の端部と、先端部分51Aaとの境目に段部が生じ、この段部を構成する張出形状部80Aの端面80Aaが、ペン筐体2の段部2dと係合する。なお、先端部分51Aaは設けずに、張出形状部80Aのみを有するようにホルダー部51Aを形成し、張出形状部80Aの端面80Aaが、ペン筐体2の内壁面のストッパ部の例である段部2dと係合するように構成してもよい。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
そして、この実施形態では、図7(A)及び(B)に示すように、ホルダー部51Aの張出形状部80Aにおいて、円周方向の所定角度位置には、凹部80Abが設けられている。一方、この例の場合には、ペン筐体2の段部2dの近傍の内壁面の円周方向の所定の角度位置には、凹部80Abに係合する突部が形成されており、凹部80Abにペン筐体2の突部が係合することで、電子ペン本体部3Aが軸心方向を中心とした回転をしないように構成されている。つまり、凹部80Abは、電子ペン本体部3Aの回り止め用である。