(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159442
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】分水栓及び水道設備用栓
(51)【国際特許分類】
F16K 11/087 20060101AFI20241031BHJP
F16L 41/02 20060101ALI20241031BHJP
F16L 41/16 20060101ALI20241031BHJP
E03B 9/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16K11/087 Z
F16L41/02
F16L41/16
E03B9/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202695
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2023073099
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595086328
【氏名又は名称】株式会社光明製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100178124
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大封 充希
(72)【発明者】
【氏名】階元 鳴彰
(72)【発明者】
【氏名】金村 哲志
(72)【発明者】
【氏名】金村 時喜
【テーマコード(参考)】
3H019
3H067
【Fターム(参考)】
3H019BA02
3H019BB02
3H019BC05
3H067AA24
3H067CC54
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD22
3H067EA01
3H067EA06
3H067EC25
3H067EC27
3H067FF09
3H067GG13
(57)【要約】
【課題】本発明は、異物がボール弁体の周囲に入り込むことを防止できる分水栓並びに水道設備用水栓を提供することを目的とする。
【解決手段】水道本管100と水道支管200の間に取り付けられる分水栓本体10と、分水栓本体10の内部に収容されたボール弁体20と、ボール弁体20を所定の回転軸の周りに軸回転させるための栓棒30とを備える。ボール弁体20は、流入管11側に配置される流入口21と、流出管12側に配置される流出口22と、挿入管13側に配置される挿入口23と、流入口21、流出口22および挿入口23を連通する態様でボール弁体20を貫通する貫通孔24とを備え、流出口22の縁部において流出管12側に突出する態様で延びる突出部25が設けられ、該突出部25が分水栓本体10側に当接している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の水道管を流れる水を第2の水道管に分水するための分水栓であって、
前記第1の水道管と前記第2の水道管の間に取り付けられる分水栓本体と、
前記分水栓本体の内部に収容されたボール弁体と、
前記ボール弁体を所定の回転軸の周りに軸回転させるための栓棒とを備え、
前記分水栓本体は、前記第1の水道管側において回転軸に交差する方向に沿って設けられた流入管と、前記第2の水道管側において回転軸の方向に沿って設けられた流出管と、前記ボール弁体に対する前記流入管の反対側において回転軸に交差する方向に沿って設けられた挿入管とを備え、
前記ボール弁体は、前記流入管側に配置される流入口と、前記流出管側に配置される流出口と、前記挿入管側に配置される挿入口と、前記流入口、前記流出口および前記挿入口を連通する態様で前記ボール弁体を貫通する貫通孔とを備え、前記流出口の縁部において前記流出管側に突出する態様で延びる突出部が設けられ、該突出部が前記分水栓本体側に当接していることを特徴とする分水栓。
【請求項2】
前記ボール弁体は、前記突出部の内面が前記流出管の内面と同一平面となるように構成されている請求項1に記載の分水栓。
【請求項3】
前記ボール弁体は、前記突出部の先端部の内面側が直角に形成されている請求項2に記載の分水栓。
【請求項4】
前記ボール弁体は、ボールシートを介して前記分水栓本体に収容され、
前記突出部は、前記ボールシートよりも前記流出管側に延びる長さに形成され、前記ボールシートと前記流入管に当接している請求項1に記載の分水栓。
【請求項5】
前記ボール弁体は、前記突出部と前記分水栓本体の間においてOリングが設けられている請求項1に記載の分水栓。
【請求項6】
前記ボール弁体は、前記突出部が前記流出口の縁部に対して着脱可能に設けられている請求項1に記載の分水栓。
【請求項7】
前記ボール弁体は、前記突出部が前記流出口の縁部の内面に当接する請求項6に記載の分水栓。
【請求項8】
前記ボール弁体は、前記突出部の基端部の内面がテーパ状に形成されている請求項7に記載の分水栓。
【請求項9】
前記ボール弁体は、前記突出部が前記流出口の縁部の外面に当接する請求項6に記載の分水栓。
【請求項10】
前記ボール弁体は、前記突出部と前記流出口の縁部の端面同士が水の流出方向に沿って内方に傾斜する態様で当接する請求項9に記載の分水栓。
【請求項11】
前記ボール弁体は、前記突出部が前記流出管の内周面を覆う態様で設けられている請求項6に記載の分水栓。
【請求項12】
前記ボール弁体は、前記突出部が弾性素材により構成されている請求項6に記載の分水栓。
【請求項13】
前記突出部は、前記流出管側に突出して延びるスリーブ部と、該スリーブ部の先端部から径方向外側に突出するフランジ部とを備える請求項6に記載の分水栓。
【請求項14】
前記突出部は、前記流出管側に突出して延びるスリーブ部と、ホース部材が接続されるホース接続部とを備え、前記スリーブ部と前記ホース接続部が一体的に設けられている請求項6に記載の分水栓。
【請求項15】
水道設備において第1の水道管と第2の水道管の間に取り付けられる水道設備用栓であって、
栓本体と、
前記栓本体の内部に収容されたボール弁体と、
前記ボール弁体を所定の回転軸の周りに軸回転させるための栓棒とを備え、
前記栓本体は、前記第1の水道管側に設けられた流入管と、前記第2の水道管側に設けられた流出管とを備え、
前記ボール弁体は、前記流入管側に配置される流入口と、前記流出管側に配置される流出口と、前記流入口および前記流出口を連通する態様でボール弁体を貫通する貫通孔とを備え、前記流出口または/および前記流出口の縁部において前記流出管側または/および前記流入管側に突出する態様で延びる突出部が設けられ、該突出部が前記分水栓本体側に当接しながら回転軸周りで軸回転することを特徴とする水道設備用栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道本管等の第1の水道管を流れる水を水道支管等の第2の水道管に分水するための分水栓、ならびに水道設備に用いられる水道設備用栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に埋設された水道本管を流れる水を、住宅やマンションなどの建物に水道支管を通じて分水する場合に分水栓が用いられる。
【0003】
この分水栓1’は、
図11に示すように、水道本管(第1の水道管)と水道支管(第2の水道管)の間に取り付けられる分水栓本体10と、分水栓本体10の内部にボールシート40を介して収容されたボール弁体20と、ボール弁体20を所定の回転軸の周りに軸回転させるための栓棒30とを備える。
【0004】
具体的には、分水栓1’は、水道本管側において回転軸に交差する方向に沿って設けられた流入管11と、水道支管側において回転軸の方向に沿って設けられた流出管12と、前記ボール弁体20に対する流入管11の反対側において回転軸に交差する方向に沿って設けられた挿入管13とを備える。そして、前記ボール弁体20は、前記流入管11側に配置される流入口21と、前記流出管12側に配置される流出口22と、前記挿入管13側に配置される挿入口23と、前記流入口21、前記流出口22および前記挿入口23を連通する態様でボール弁体20を貫通する貫通孔24とを備える(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この分水栓1’を水道本管と水道支管の間にサドルを介して取り付けるに際して、栓棒30によりボール弁体20を軸回転することによりボール弁体20の流入口21および挿入口23をそれぞれ流入管11および挿入管13に向けて開口させると、流入管11と挿入管13がボール弁体20の貫通孔24を介して直線的に連通した状態になるため、切削工具3を分水栓本体10の挿入管13から挿入しながらボール弁体20の貫通孔24を貫通させたあと、流入管11から水道本管を切削しながら穿孔を形成する。
【0006】
そして、水道本管に所定の大きさの穿孔を形成したあと、切削工具を水道本管100から引き抜いて分水栓本体10の挿入管13まで引き上げた際、栓棒30によりボール弁体20を軸回転することによりボール弁体20の流入口21および挿入口23をボール弁体20の側方に向けて開口させると、分水栓1’の流入管11と挿入管13がボール弁体20により閉鎖された状態になるため、切削工具3を分水栓から完全に引き抜いて、キャップ部材15により挿入管13を閉蓋する。
【0007】
そして、栓棒30によりボール弁体20を再び軸回転することにより、ボール弁体20の流入口21および挿入口23をそれぞれ流入管11および挿入管13に向けて開口するように配置すると、流入管11および流出管12がボール弁体20の貫通孔24を介して屈曲しながら連通した状態となるため、水道本管の水が分水栓の流入管11からボール弁体20の貫通孔24を通過して、流出管12から水道支管に流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の分水栓の場合、切削工具により水道管を切削して穿孔を形成した際に生じた切屑や塗料片、あるいは水中に含まれる成分による異物がボール弁体の周囲、特にボール弁体とボールシートの間(
図11のA部付近)に入り込んだ状態になって、栓棒によりボール弁体を軸回転させにくくなったり、ボール弁体や周りの部材の表面にキズが生じることで水漏れが発生する虞があるという問題があった。なお、このように何らかの異物がボール弁体の周囲に入り込むという問題は、分水栓以外の水道設備に用いられる各種水栓にも生じるものと考えられる。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、異物がボール弁体の周囲に入り込むことを防止できる分水栓並びに水道設備用水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、第1の水道管を流れる水を第2の水道管に分水するための分水栓であって、前記第1の水道管と前記第2の水道管の間に取り付けられる分水栓本体と、前記分水栓本体の内部に収容されたボール弁体と、前記ボール弁体を所定の回転軸の周りに軸回転させるための栓棒とを備え、前記分水栓本体は、前記第1の水道管側において回転軸に交差する方向に沿って設けられた流入管と、前記第2の水道管側において回転軸の方向に沿って設けられた流出管と、前記ボール弁体に対する前記流入管の反対側において回転軸に交差する方向に沿って設けられた挿入管とを備え、前記ボール弁体は、前記流入管側に配置される流入口と、前記流出管側に配置される流出口と、前記挿入管側に配置される挿入口と、前記流入口、前記流出口および前記挿入口を連通する態様で前記ボール弁体を貫通する貫通孔とを備え、前記流出口の縁部において前記流出管側に突出する態様で延びる突出部が設けられ、該突出部が前記分水栓本体側に当接していることを特徴とする。
【0012】
これによれば、分水栓の開栓や閉栓に際して、栓棒によりボール弁体を軸回転させると、ボール弁体の流入口と挿入口は位置を変えながら回転軸周りで公転する一方、流出口は流入管側に向けて開口したまま位置を変えずに回転軸周りで軸回転し、それに伴って突出部が分水栓本体側に当接しながら回転軸周りで軸回転する。このため、切削工具により水道管を切削して穿孔を形成した際に生じた切屑や塗料片、あるいは水道管を流れる水に含まれる成分による異物がボール弁体の周囲に入り込むことを簡単かつ確実に防止できる。
【0013】
また、前記ボール弁体は、前記突出部の内面が前記流出管の内面と同一平面となるように構成されてもよい。これによれば、突出部の内面と流出管の内面が同一平面となることによって、水がボール弁体の貫通孔から流出管にかけてスムーズに流れるため、水の圧力損失を軽減することができるとともに、異物がボール弁体の周囲に入り込むことをより簡単かつ確実に防止できる。
【0014】
また、前記ボール弁体は、前記突出部の先端部の内面側が直角に形成されてもよい。これによれば、突出部の先端角部に対して水が直角の方向に流れるため、異物がボール弁体の周囲に入り込むことをより簡単かつ確実に防止できる。
【0015】
また、前記ボール弁体は、ボールシートを介して前記分水栓本体に収容され、前記突出部は、前記ボールシートよりも前記流出管側に延びる長さに形成され、前記ボールシートと前記流入管に当接してもよい。これによれば、異物がボール弁体とボールシートの間に入り込むことをより簡単かつ確実に防止できる。
【0016】
また、前記ボール弁体は、前記突出部と前記分水栓本体の間においてOリングが設けられてもよい。これによれば、異物がボール弁体とボールシートの間に入り込むことをより簡単かつ確実に防止できるとともに、水密性を向上させることができる。
【0017】
また、前記ボール弁体は、前記突出部が前記流出口の縁部に対して着脱可能に設けられてもよい。これによれば、既存のボール弁体に突出部を簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0018】
また、前記ボール弁体は、前記突出部が前記流出口の縁部の内面側に当接してもよい。これによれば、ボール弁体に突出部を簡単かつ確実に取り付けることができるとともに、異物がボール弁体の周囲に入り込むことをより確実に防止できる。
【0019】
また、前記ボール弁体は、前記突出部の基端部の内面側がテーパ状に形成されてもよい。これによれば、流出する水の流れが突出部の基端部で阻害されないため、水の流れによる切粉の排出を促進させることができる。
【0020】
また、前記ボール弁体は、前記突出部が前記流出口の縁部の外側に当接してもよい。これによれば、ボール弁体に突出部を簡単かつ確実に取り付けることができるとともに、異物がボール弁体の周囲に入り込むことをより確実に防止できる。
【0021】
また、前記ボール弁体は、前記突出部と前記流出口の縁部の端面同士が水の流出方向に沿って内方に傾斜する態様で当接してもよい。これによれば、前記突出部と流出口の縁部の端面同士が水の流れに逆行する態様となるため、ボール弁体の周囲に入り込むことをより確実に防止できる。
【0022】
また、前記ボール弁体は、前記突出部が前記流出管の内周面を覆う態様で設けられてもよい。これによれば、突出部により流出管の内周面が覆われるため、異物がボール弁体の周囲に入り込むことをより確実に防止できる。
【0023】
また、前記ボール弁体は、前記突出部が弾性素材により構成されてもよい。これによれば、突出部をボール弁体に当接させ易くなる上、栓棒によりボール弁体をスムーズに回転させることができる。
【0024】
また、前記突出部は、前記流出管側に突出して延びるスリーブ部と、該スリーブ部の先端部から径方向外側に突出するフランジ部とを備えてもよい。これによれば、ボール弁体に突出部を後から取り付ける際、フランジ部を押圧することにより突出部を流出口の縁部に簡単に押し込むことができる。また、フランジ部が過度の押し込みを防止するストッパとして機能するため、突出部を適切に押し込むこともできる。
【0025】
また、前記突出部は、前記突出部は、前記流出管側に突出して延びるスリーブ部と、ホース部材が接続されるホース接続部とを備え、前記スリーブ部と前記ホース接続部が一体的に設けられてもよい。これによれば、スリーブ部とホース接続部が一体的に設けられているため、スリーブ部とホース接続部の境界において漏水が発生する虞を低減させることができる。
【0026】
また、本発明は、水道設備において第1の水道管と第2の水道管の間に取り付けられる水道設備用栓であって、栓本体と、前記栓本体の内部に収容されたボール弁体と、前記ボール弁体を所定の回転軸の周りに軸回転させるための栓棒とを備え、前記栓本体は、前記第1の水道管側に設けられた流入管と、前記第2の水道管側に設けられた流出管とを備え、前記ボール弁体は、前記流入管側に配置される流入口と、前記流出管側に配置される流出口と、前記流入口および前記流出口を連通する態様でボール弁体を貫通する貫通孔とを備え、前記流出口または/および前記流出口の縁部において前記流出管側または/および前記流入管側に突出する態様で延びる突出部が設けられ、該突出部が前記分水栓本体側に当接しながら回転軸周りで軸回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、分水栓の開栓や閉栓に際して、栓棒によりボール弁体を軸回転させると、ボール弁体の流入口と挿入口は位置を変えながら回転軸周りで公転する一方、流出口は流入管側に向けて開口したまま位置を変えずに回転軸周りで軸回転し、それに伴って突出部が分水栓本体側に当接しながら回転軸周りで軸回転する。このため、切削工具により水道管を切削して穿孔を形成した際に生じた切屑や塗料片、あるいは水道管を流れる水に含まれる成分による異物がボール弁体の周囲に入り込むことを簡単かつ確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る分水栓の開栓時の(a)横断面図および(b)縦断面図である。
【
図2】
図1の分水栓の閉栓時の(a)横断面図および(b)縦断面図である。
【
図4】
図1の分水栓を水道本管と水道支管の間に取り付ける過程を示す図である。
【
図5】変形例に係る分水栓の(a)横断面図および(b)縦断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る分水栓の開栓時の縦断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る分水栓の開栓時の縦断面図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態に係る分水栓の開栓時の縦断面図である。
【
図10】
図9の分水栓の変形例を示す拡大図である。
【
図11】従来の分水栓の開栓時の(a)横断面図および(b)縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る分水栓1の第1の実施形態について
図1~
図4を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、
図1の左方向を分水栓1の前方向、
図1の右方向を分水栓1の後方向、
図1(b)の上方向を分水栓1の上方向、
図1(b)の下方向を分水栓1の下方向とする。
【0030】
この分水栓1は、
図1(開栓時)および
図2(閉栓時)に示すように、後述の水道本管100(第1の水道管)を流れる水を後述の水道支管200(第2の水道管)に分水するための分水栓であって、水道本管100と水道支管200の間に取り付けられる分水栓本体10と、分水栓本体10の内部に収容されたボール弁体20と、ボール弁体20を所定の回転軸の周りに軸回転させるための栓棒30とを備える。なお、本実施形態では、前記回転軸Kは、栓棒30の中心軸に沿って水平方向に延びている。
【0031】
前記分水栓本体10は、全体形状が略十字状に形成されており、鉛直方向の下部に設けられた流入管11と、水平方向の前部に設けられた流出管12と、鉛直方向の上部に設けられた挿入管13と、水平方向の後部に設けられた操作管14とを備える。
【0032】
前記流入管11は、回転軸Kに直交する下方向に延びる態様の筒状に形成されており、後述するように先端開口部11aが水道本管100にサドル2を介して接続されることにより、水道本管100から流れてきた水が流入するものとなされている。また、流入管11は、後述するように分水栓1の取付時において切削工具3が挿入される。
【0033】
前記流出管12は、回転軸Kに沿う前方向に延びる態様の筒状に形成されており、後述するように先端開口部12aが水道支管200に接続されることにより、流入管11からボール弁体20を介して流れてきた水を水道支管200に流出するものとなされている。
【0034】
前記挿入管13は、回転軸Kに直交する上方向に延びる態様の筒状に形成されており、後述するように通常時において先端開口部13aがキャップ部材15により閉蓋される一方、分水栓1の取付時においてキャップ部材15が取り外された上で切削工具3が挿入される。なお、本実施形態では、挿入管13は、分水栓本体10に対して脱着可能に構成されており、分水栓1の組立時においてボール弁体20やボールシート40を分水栓本体10に収容したあと、挿入管13を分水栓本体10に螺着状態で装着することにより、ボール弁体20をボールシート40を介して押さえながら回転可能に固定する。
【0035】
前記操作管14は、回転軸Kに沿う後方向に延びる態様の筒状に形成されており、栓棒30が挿通されている。この栓棒30は、操作管14の内部に挿通された軸部31と、操作管14の先端開口部14aから露出した操作部32と、操作管14の先端開口部14aを被覆する態様で設けられたナット部33とを備え、軸部31の先端部がボール弁体20の後部中央に接続されている。これにより、所定の工具により操作部32を把持しながら栓棒30を軸回転させると、それに伴ってボール弁体20が分水栓本体10の内部において回転軸Kの周りで軸回転する。
【0036】
前記ボール弁体20は、略球体状に形成された金属製または樹脂製などの球体であって、分水栓本体10の内部において上側と下側の環状のボールシート40によって上下から挟まれる態様で回転可能に支承されている。
【0037】
また、前記ボール弁体20は、
図3に示すように、鉛直方向の下部に形成された流入口21と、水平方向の前部に形成された流出口22と、鉛直方向の上部に形成された挿入口23と、流入口21、流出口22および挿入口23を連通する態様でボール弁体20の内部を貫通する貫通孔24とを備える。
【0038】
前記流入口21は、ボール弁体20が分水栓本体10に収容された際、栓棒30によりボール弁体20が所定の角度(本実施形態では90度)で軸回転することにより、開栓時には流入管11側に向けて開口するように配置される一方、閉栓時には分水栓本体10の側方に向けて開口するように配置される。
【0039】
前記流出口22は、ボール弁体20が分水栓本体10に収容された際、栓棒30によりボール弁体20が所定の角度(本実施形態では90度)で軸回転することにより、開栓時および閉栓時ともに流出管12側に向けて開口するように配置される。
【0040】
前記挿入口23は、ボール弁体20が分水栓本体10に収容された際、開栓時には挿入管13側に向けて開口するように配置される一方、閉栓時には分水栓本体10の側方に向けて開口するように配置される。
【0041】
而して、分水栓1の開栓に際しては、
図1に示すように、栓棒30によりボール弁体20を軸回転することにより、ボール弁体20の流出口22を流出管12側に向けて開口するように配置したまま、ボール弁体20の流入口21および挿入口23をそれぞれ流入管11および挿入管13に向けて開口するように配置すると、挿入管13と流入管11がボール弁体20の貫通孔24を介して直線的に連通した状態になるとともに、流入管11と流出管12がボール弁体20の貫通孔24を介して屈曲しながら連通した状態になる。
【0042】
一方、分水栓1の閉栓に際しては、
図2に示すように、栓棒30によりボール弁体20を軸回転することにより、ボール弁体20の流出口22を流出管12に向けて開口するように配置したまま、ボール弁体20の流入口21および挿入口23をボール弁体20の側方に向けて開口するように配置すると、分水栓の流入管11と挿入管13がボール弁体20により閉鎖された状態になる。
【0043】
また、前記ボール弁体20は、
図3に示すように、流出口22の縁部22aにおいて流出管12側に突出する態様で延びる環状の突出部25が一体的に設けられている。本実施形態では、突出部25は、
図1および
図2に示すように、ボールシート40の外側縁部よりも長くなるように形成されることにより流出管12が存在する位置まで延びており、全周に沿って分水栓本体10側に当接している。
【0044】
具体的には、前記突出部25は、鉛直方向の上部において、分水栓本体10の上側のボールシート40、挿入管13の下端部と流出管12の後端部に当接している。また、突出部25は、水平方向の左右部において、分水栓本体10の内側面に当接している。さらに、突出部25は、鉛直方向の下部において、分水栓本体10の下側のボールシート40と流入管11の上端部に当接している。なお、上記「当接」とは、各部材の間に隙間がない状態のほか、各部材の間に隙間がある状態も含むものとする。
【0045】
なお、本実施形態では、前記流出管12の基端部分において環状の凹部16が形成されており、ボール弁体20の突出部25が該凹部16に密着状態に嵌合している。これにより、突出部25の内面が流出管12の内面と同一平面となるように構成されるため、水がボール弁体20の貫通孔24から流出管12にかけてスムーズに流れ、水の圧力損失を軽減することができるとともに、異物がボール弁体20の周囲に入り込むことをより簡単かつ確実に防止できる。また、突出部25の内面側の先端角部が直角に形成されているため、突出部25の先端角部に対して水が直角の方向に流れ、異物がボール弁体20の周囲に入り込むことをより一層簡単かつ確実に防止できる。
【0046】
而して、分水栓1の開栓や閉栓に際して、栓棒30によりボール弁体20を軸回転させると、ボール弁体20の流入口21と挿入口23は位置を変えながら回転軸Kの周りで公転する一方、流出口22は流出管12側に向けて開口したまま位置を変えずに回転軸K周りで軸回転し、それに伴って突出部25が分水栓本体10側に当接しながら回転軸Kの周りで軸回転する。このため、切削工具3により水道本管100を切削して穿孔を形成した際に生じた切屑や塗料片、あるいは水道管を流れる水に含まれる成分による異物がボール弁体20の周囲に入り込むことを簡単かつ確実に防止できる。
【0047】
なお、突出部25と分水栓本体10(環状の凹部16)の「当接」とは、突出部25と分水栓本体10(環状の凹部16)の間に隙間がない状態のほか、突出部25と分水栓本体10の間に隙間がある状態も含むものとする。但し、突出部25と分水栓本体10の間の隙間は、切粉の通り抜けを防止ないし軽減するために、十分に小さく設定されている。具体的には、少なくとも分水栓本体10とボール弁体20の隙間の最大値より小さく設定されている。特に、切粉の多くが1mmより大きいため、上記隙間を1mm以下に設定するのが好ましい。また、切削工具(ドリル)の回転数などの穿孔条件によっては、切粉が0.3mm~1mmの大きさとなる場合があるため、上記隙間を0.3mm以下に設定するのがより好ましい。
【0048】
次に水道本管100と水道支管200の間に分水栓を取り付ける方法について
図4を参照しつつ説明する。
【0049】
まず、
図4(a)に示すように、分水栓本体10をサドル2を介して水道本管100に取り付けたあと、栓棒30によりボール弁体20を軸回転することにより、ボール弁体20の流入口21および挿入口23をそれぞれ流入管11および挿入管13に向けて開口するように配置すると、挿入管13と流入管11がボール弁体20の貫通孔24を介して直線的に連通した状態になるため、切削工具3を分水栓本体10の挿入管13から挿入しながらボール弁体20の貫通孔24を貫通させたあと、流入管11から水道本管100を切削しながら穿孔100aを形成する。なお、分水栓本体10をサドル2を介して水道本管100に取り付ける前段階において、栓棒30によりボール弁体20を軸回転することによりボール弁体20の流入口21および挿入口23をそれぞれ流入管11および挿入管13に向けて開口する位置にあらかじめ配置しておいてもよい。
【0050】
次に、
図4(b)に示すように、水道本管100に所定の大きさの穿孔100aを形成したあと、切削工具3を水道本管100から引き抜いて分水栓本体10の挿入管13まで引き上げた際、栓棒30によりボール弁体20を軸回転することにより、ボール弁体20の流入口21および挿入口23をボール弁体20の側方に向けて開口する位置に配置すると、分水栓1の流入管11と挿入管13がボール弁体20により閉鎖された状態(閉栓状態)になるため、切削工具3を分水栓1から完全に引き抜いて、キャップ部材15により挿入管13を閉蓋する。
【0051】
次に、
図4(c)に示すように、分水栓本体10の流出管12に水道支管200を取り付けたあと、栓棒30によりボール弁体20を再び軸回転することにより、ボール弁体20の流入口21および挿入口23をそれぞれ流入管11および挿入管13に向けて開口するように配置すると、流入管11および流出管12がボール弁体20の貫通孔24を介して屈曲しながら連通した状態(開栓状態)となるため、水道本管100の水が分水栓1の流入管11からボール弁体20の貫通孔24を通過して、流出管12から水道支管200に流出する。なお、分水栓1を水道本管100にサドル2を介して取り付けた際、水道支管200を分水栓1の流出管12にあらかじめ接続しておいて、上述のように切削工具3により水道本管100に対する穿孔作業を行ってもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、前記突出部25は、流出管12が存在する位置まで延びるものとしたが、流出管12の手前の位置まで延びるものとしてもよい。この場合、突出部25は、少なくともボールシート40の外周縁部よりも長くなるように形成されるのが好ましい。
【0053】
また、前記突出部25は、ボール弁体20に一体的に形成されるものとしたが、同一または異なる素材により別体に設けられてもよい。
【0054】
また、前記突出部25は、全周に亘って連続した環状に形成されるものとしたが、周方向に断続的に形成されてもよいし、あるいは分水栓本体10との間において隙間が生じやすい部分などの一部に限定して形成されてもよい。
【0055】
また、前記突出部25と前記分水栓本体10の間においてOリング17が設けられていてもよい。例えば、Oリング17は、
図5に示すように、突出部25の先端部の外周面と分水栓本体10の内面の間であって、ボールシート40の径方向外側の位置に設けられる。これによれば、異物がボール弁体20とボールシート40の間に入り込むことをより簡単かつ確実に防止できるとともに、水密性を向上させることができる。
【0056】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る分水栓の第2の実施形態について
図6および
図7を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0057】
前記ボール弁体20は、突出部25が流出口22の縁部22aに対して着脱可能に設けられており、既存のボール弁体20に突出部25を簡単かつ確実に取り付けることができるようになっている。
【0058】
具体的には、前記突出部25は、
図6に示すように、流出管12側に突出して延びる円筒状のスリーブ部251と、スリーブ部251の先端部から径方向外側に突出する環状のフランジ部252とを備える。このフランジ部252は、スリーブ部251と一体的に設けられた鍔部252aと、鍔部252aを被覆するパッキン252bとからなる。
【0059】
また、前記突出部25は、流出口22の縁部22aに取り付けられた状態において、スリーブ部251の基端部251aがボール弁体20の流出口22の内面に当接する態様で挿入されている。これによれば、ボール弁体20に突出部25を簡単かつ確実に取り付けることができるとともに、異物がボール弁体20の周囲に入り込むことをより確実に防止できる。この突出部25は、切削工具(ドリル)と接触しないように、スリーブ部251の基端部251aがボール弁体20の挿入口23の内径より内側に突出しないようになっている。
【0060】
なお、突出部25と流出口22の縁部22aの「当接」とは、突出部25の基端部251aの外面とボール弁体20の流出口22の縁部22aの内面との間に隙間がない状態のほか、突出部25の基端部251aの外面と流出口22の縁部22aの内面との間に隙間(好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.3mm以下)がある状態も含まれる。
【0061】
また、前記突出部25は、ボール弁体20の流出口22の縁部22aに取り付けられた状態において、フランジ部252が流出管12の先端開口部の縁部12aに当接している。これによれば、ボール弁体20に突出部25を後から取り付ける際に、フランジ部252aを押圧することにより突出部25を流出口22の縁部22aに簡単に押し込むことができる。また、フランジ部252aが過度の押し込みを防止するストッパとして機能するため、突出部25を適切に押し込むこともできる。
【0062】
また、前記ボール弁体20は、前記突出部25が前記流出管12の内周面12bを覆う態様で設けられている。これによれば、突出部25により流出管12の内周面12bの全体を覆われるため、異物がボール弁体20の周囲に入り込むことをより確実に防止できる。
【0063】
また、前記ボール弁体20は、突出部25が弾性素材により構成されている。これによれば、突出部25をボール弁体20の流出口22の内側に簡単かつ確実に挿入することができるとともに、突出部25の軸回転を防止しながら栓棒30によりボール弁体20をスムーズに回転させることができる。
【0064】
また、前記突出部25は、スリーブ251の基端部251aの内面側がテーパ状に形成されてもよい。例えば、ボール弁体20は、
図7(a)に示すように、突出部25のスリーブ251の基端部251aの内面側がボール弁体20の方向に曲面的に拡径するようなテーパ状に形成されることが挙げられる。また、突出部25は、
図7(b)に示すように、スリーブ251の先端部251aの内面側がボール弁体20の方向に平面的に拡径するようなテーパ状に形成されることが挙げられる。これによれば、水の流れが突出部25の基端部251aで阻害されないため、水の流れによる切粉の排出を促進させることができる。
【0065】
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る分水栓の第3の実施形態について
図8を参照しつつ説明する。
【0066】
前記突出部25は、
図8に示すように、流出管12側に突出して延びる延びるスリーブ部251と、ホース部材が接続される金属製のホース接続部253とを備え、スリーブ部251とホース接続部253が一体的に設けられるとともに、流出管12の接続ナット12cにより流出管12の内側に押し込まれる態様で固定されている。
【0067】
これによれば、スリーブ部251とホース接続部253が一体的に設けられているため、スリーブ部251とホース接続部253の境界において漏水が発生する虞を低減させることができる。
【0068】
<第4の実施形態>
次に、本発明に係る分水栓の第4の実施形態について
図9および
図10を参照しつつ説明する。
【0069】
前記ボール弁体20は、
図9に示すように、前記突出部25のスリーブ251の基端部251aが流出口22の縁部22aの外面に当接している。これによれば、異物が流出口22と突出部25の間からボール弁体20の周囲に入り込むことをより確実に防止できる。
【0070】
なお、突出部25と流出口22の縁部22aの「当接」とは、突出部25の基端部251aの端面とボール弁体20の流出口22の外面との間に隙間がない状態のほか、突出部25の基端部251aの端面と流出口22の縁部22aの外面との間に隙間(好ましくは1.0mm以下、さらに好ましくは0.3mm以下)がある状態も含まれる。
【0071】
また、本実施形態では、ボール弁体20は、
図9に示すように、突出部25と流出口22の縁部22aの端面同士が鉛直方向に沿って当接しているが、突出部25と流出口22の縁部22aが流出管12の方向(水の流出方向)に沿って内方(径方向内側)に傾斜する態様で当接してもよい。例えば、ボール弁体20は、
図10(a)に示すように、突出部25の基端部251aと流出口22の縁部22aの端面同士が流出管12の方向(水の流出方向)に沿って直線状に内方(径方向内側)に傾斜しながら当接する態様が挙げられる。また、ボール弁体20は、
図10(b)に示すように、突出部25の基端部251aと流出口22の縁部22aの端面同士が流出管12の方向(水の流出方向)に沿って内方(径方向内側)に階段状に傾斜しながら当接する態様が挙げられる。これによれば、突出部25と流出口22の縁部の端面同士が水の流れに逆行する態様となるため、ボール弁体20の周囲に入り込むことをより確実に防止できる。
【0072】
なお、本発明を分水栓に適用したが、その他の水道設備に適用してもよい。この場合、水道設備用栓は、栓本体と、前記栓本体の内部に収容されたボール弁体と、ボール弁体を所定の回転軸の周りに軸回転させるための栓棒とを備える。また、前記栓本体は、少なくとも第1の水道管側に設けられた流入管と、第2の水道管側に設けられた流出管とを備える。また、前記ボール弁体は、前記流入管側に配置される流入口と、前記流出管側に配置される流出口と、前記流入口および前記流出口を連通する態様でボール弁体を貫通する貫通孔とを備え、前記流出口または/および前記流出口の縁部において前記流出管側または/および前記流入管側に突出する態様で延びる突出部が設けられ、該突出部が前記分水栓本体側に当接しながら回転軸周りで軸回転する。
【0073】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…分水栓
10…分水栓本体
11…流入管
12…流出管
13…挿入管
14…操作管
15…キャップ部材
16…凹部
17…Oリング
20…ボール弁体
21…流入口
22…流出口
23…挿入口
24…貫通孔
25…突出部
251…スリーブ部
252…フランジ部
252a…鍔部
252b…パッキン
253…ホース接続部
30…栓棒
31…軸部
32…操作部
33…ナット部
40…ボールシート
2…サドル
3…切削工具
100…水道本管(第1の水道管)
200…水道支管(第2の水道管)