(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159455
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 39/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H01H39/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215370
(22)【出願日】2023-12-21
(62)【分割の表示】P 2023072640の分割
【原出願日】2023-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】木本 進弥
(72)【発明者】
【氏名】粉間 克哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
(57)【要約】
【課題】アークによる導電性のガスを遮断装置の外部へ漏れ難くする。
【解決手段】遮断装置10は、樹脂部材4と、点火器と、導電体3と、を備える。樹脂部材4は、内部空間400を有する。点火器は、内部空間400にガスを充填させる。導電体3は、板状であって、点火器2の下方に位置する。導電体3は、樹脂部材4に埋設される第1保持部34と、樹脂部材4に埋設される第2保持部35と、第1保持部34と第2保持部35との間をつなぐ接続部36と、を有する。第1保持部34は、貫通孔344を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する樹脂部材と、
前記内部空間にガスを充填させる点火器と、
前記点火器の下方に位置する板状の導電体と、を備え、
前記導電体は、
前記樹脂部材に埋設される第1保持部と、
前記樹脂部材に埋設される第2保持部と、
前記第1保持部と前記第2保持部との間をつなぐ接続部と、を有し、
前記第1保持部は、貫通孔を有し、
前記第1保持部は、上面と下面とのうちの少なくとも一方に設けられている複数の溝を有し、
前記複数の溝は、前記樹脂部材に埋設されている、
遮断装置。
【請求項2】
平面視で、前記複数の溝は、前記導電体が延伸する方向に直交する方向に延伸している、
請求項1に記載の遮断装置。
【請求項3】
平面視で、前記複数の溝は、前記導電体が延伸する方向と斜めに交差する方向に延伸している、
請求項1に記載の遮断装置。
【請求項4】
平面視で、前記複数の溝は、
前記導電体が延伸する方向に直交する方向に延伸している第1溝と、
前記導電体が延伸する方向と斜めに交差する方向に延伸している第2溝と、
を含む、
請求項1に記載の遮断装置。
【請求項5】
前記複数の溝の各々の断面は、V字形状である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断装置。
【請求項6】
前記第1保持部は、側面に形成されている窪み部を有し、
前記窪み部は、前記樹脂部材に埋設されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断装置。
【請求項7】
前記第1保持部は、凸部を有し、
前記凸部は、前記樹脂部材に埋設されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断装置。
【請求項8】
平面視で、前記導電体が延伸する方向に直交する方向において、
前記第1保持部の長さは、前記接続部と前記第1保持部との境界線の第1端部と第2端部との間の長さよりも長く、
前記貫通孔の長さは、前記接続部と前記第1保持部との前記境界線の第1端部と第2端部との間の前記長さと同じかそれよりも長い、
請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断装置。
【請求項9】
前記第1保持部は、複数の貫通孔を有し、
前記貫通孔は、前記複数の貫通孔のうちの一つである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の遮断装置。
【請求項10】
前記複数の貫通孔は、前記貫通孔と第2貫通孔とを含み、
前記導電体の幅方向において、前記貫通孔と前記第2貫通孔との中心は、一致しない、
請求項9に記載の遮断装置。
【請求項11】
前記第1保持部は、前記貫通孔とつながっている第1凹所を更に有し、
前記第1凹所は、前記樹脂部材に埋設されている、
請求項10に記載の遮断装置。
【請求項12】
前記第1保持部は、第2凹所を更に有し、
前記第1凹所及び前記貫通孔は、前記第2凹所と前記接続部との間に位置し、
前記第2凹所は、前記樹脂部材に埋設されている、
請求項11に記載の遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に遮断装置に関する。本開示は、より詳細には、点火器を備える遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遮断装置が開示されている。この遮断装置は、外殻部材としてのハウジングと、点火器と、発射体と、導電体と、を備えている。
【0003】
ハウジングは、上端側から下端側に延在する収容空間を有している。収容空間は、発射体が移動可能なように直線状に形成された空間である。発射体は、点火器から受けるエネルギーにより、収容空間に沿って発射される。導電体は、その一部に、点火器から受けるエネルギーによって移動する発射体によって切除される被切除部を有する。導電体は、被切除部が収容空間を横切るように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の遮断装置では、導電体に電流が流れている状態で被切除部が切除されると、アーク放電が発生する可能性がある。そのため、遮断装置では、アーク放電により発生する導電性のガスが、ハウジングの外部へ漏れる可能性がある。アーク放電による導電性のガスが遮断装置の外部へ漏れると、外部の部材に絶縁劣化等の悪影響を引き起こす可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、アークによる導電性のガスを遮断装置の外部へ漏れ難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の遮断装置は、樹脂部材と、点火器と、導電体と、を備える。前記樹脂部材は、内部空間を有する。前記点火器は、前記内部空間にガスを充填させる。前記導電体は、板状であって、前記点火器の下方に位置する。前記導電体は、前記樹脂部材に埋設される第1保持部と、前記樹脂部材に埋設される第2保持部と、前記第1保持部と前記第2保持部との間をつなぐ接続部と、を有する。前記第1保持部は、貫通孔を有する。前記第1保持部は、上面と下面とのうちの少なくとも一方に設けられている複数の溝を有する。前記複数の溝は、前記樹脂部材に埋設されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アークによる導電性のガスを遮断装置の外部へ漏れ難くすることが可能となる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の遮断装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の遮断装置のX軸に直交する平面での断面図である。
【
図4】
図4は、同上の遮断装置のY軸に直交する平面での断面図である。
【
図5】
図5は、同上の遮断装置の遮断動作後の状態における、Y軸に直交する平面での断面図である。
【
図6】
図6は、同上の遮断装置が備えるプッシャの斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の遮断装置が備える導電体の正面図である。
【
図9】
図9は、同上の遮断装置のZ軸に直交する平面での断面図である。
【
図10】
図10は、同上の遮断装置の、Z軸に直交する平面であって
図9とは異なる高さにおける断面図である。
【
図14】
図14は、変形例2の遮断装置が備える導電体の要部の上面図である。
【
図15】
図15は、変形例3の遮断装置が備える導電体の要部の上面図である。
【
図16】
図16は、変形例4の遮断装置が備える導電体の要部の上面図である。
【
図17】
図17は、変形例5の遮断装置が備える導電体の要部の上面図である。
【
図18】
図18は、変形例6の遮断装置が備える導電体の要部の上面図である。
【
図19】
図19は、変形例7の遮断装置の要部を拡大した断面図である。
【
図20】
図20Aは、変形例8の遮断装置が備えるプッシャの側面図である。
図20Bは、同上のプッシャの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態に係る遮断装置について、添付の図面を参照して説明する。ただし、下記の各実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎない。下記の各実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の各実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(1)実施形態
本実施形態の遮断装置10について、
図1~
図12を参照して説明する。
【0012】
遮断装置10は、電源から供給される電流を流す電気回路を有する対象物に搭載される装置である。遮断装置10は、例えば、対象物内の電気回路又はシステム等の異常時に作動して電気回路を遮断することにより、異常の被害が大きくなることを防止する。
【0013】
遮断装置10は、例えば、対象物の一例である車両に搭載される。遮断装置10は、例えば、車両におけるモータとモータ駆動用のバッテリ(例えば、リチウムイオンバッテリ)との間に接続され、異常又は事故等の緊急時に、モータとモータ駆動用のバッテリとの電気的な接続を遮断する。対象物は、車両以外であってもよく、例えば、家電製品、太陽光発電システム等が例示されるが、特に限定されない。
【0014】
(1.1)遮断装置の構成
図1~
図4に示すように、遮断装置10は、筐体1と、点火器2と、導電体3と、樹脂部材4と、プッシャ5と、保護部6と、弾性部材71~74と、を備えている。
【0015】
以下では、遮断装置10に対して、下記の通りに右手系の三次元直交座標系の三軸(X軸、Y軸、及びZ軸)を規定して説明する。すなわち、筒状の樹脂部材4を貫通する貫通孔40の軸に沿った方向をZ軸方向、Z軸方向と直交する方向であって板状の導電体3の延伸方向に沿った方向をY軸方向、Y軸方向及びZ軸方向と直交する方向をX軸方向とする。また、説明の便宜上、Z軸に沿った方向を上下方向ともいい、導電体3から見て点火器2が位置する側(Z軸の正の向き)を「上」、その反対を「下」ともいう。また、Y軸に沿った方向を左右方向ともいい、導電体3の第1端子部31から見て第2端子部32が位置する側(Y軸の正の向き)を「右」、その反対を「左」ともいう。また、また、X軸に沿った方向を前後方向ともいい、X軸の正の向きを「前」、その反対を「後」ともいう。ただし、本開示における軸及び方向の規定は、遮断装置10の部材間の相対的な位置関係を示すものに過ぎず、遮断装置10を対象物に設置する際の姿勢等を限定するものではない。
【0016】
筐体1は、遮断装置10の外殻を構成する。
図3、
図4に示すように、筐体1は、中空の筒状である。筐体1は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属により形成される。ただし、これに限らず、筐体1は、アルミニウム等の他の金属により形成されてもよい。
図3に示すように、筐体1の内部に、点火器2(の少なくとも下端部)、導電体3の一部(後述の接続部36を含む部分)、樹脂部材4、プッシャ5、保護部6、及び弾性部材71~74が収容される。
【0017】
図1~
図4に示すように、筐体1は、上部筐体11と下部筐体12とを有する。
【0018】
上部筐体11は、上底面の中央に開口110を有し下底面の全体が開口した、内部が空洞の筒状である。上部筐体11は、上底部111と、第1筒部112と、第1接続部113と、第2筒部114と、第2接続部115と、第1結合部116と、を有する。
【0019】
上底部111は、中央に開口110を有する円板状(環状)である。第1筒部112は、上底部111の外周縁から下方に延在する円筒状である。
【0020】
第2筒部114は、第1筒部112よりも径の大きな円筒状であって、第1筒部112と同軸で第1筒部112から下方に離れて配置されている。
【0021】
第1結合部116は、第2筒部114よりも径の大きな円筒状であって、第2筒部114と同軸で第2筒部114から下方に離れて配置されている。
図1、
図2に示すように、第1結合部116の左右の両側の部分には、第1結合部116の下端から上端にかけて切り欠かれた、側面視略矩形の切り欠き117が設けられている。そのため、第1結合部116は、一対の円弧板状の部材を含む、とも言える。
【0022】
第1接続部113は、下方ほど径が大きくなる筒状であって、第1筒部112と第2筒部114とを上下につないでいる。第2接続部115は、下方ほど径が大きくなる筒状であって、第2筒部114と第1結合部116とを上下につないでいる。
【0023】
下部筐体12は、上側の底面が開口した、内部が空洞の有底筒状である。下部筐体12は、下底部121と、第3筒部122と、第3接続部123と、第2結合部124と、を有する。
【0024】
下底部121は、上方に突出する円錐台状の突部120を中央に有する、円形のトレー状である。突部120は、導電体3(後述の接続部36)を挟んで、点火器2と対向する。突部120は、点火器2により発生したガスによって下方に移動する導電体3及びプッシャ5と接触して、つぶれるように下方へ変形する。つまり、突部120は、変形することで、導電体3及びプッシャ5からの衝撃(運動エネルギー)を吸収する機能を有する。下底部121は、必ずしも突部120を有していなくてもよい。
【0025】
第3筒部122は、下底部121の外周縁から上方に延在する円筒状である。
【0026】
第2結合部124は、第3筒部122よりも径の大きな円筒状であって、第3筒部122と同軸で第3筒部122から上方に離れて配置されている。第2結合部124の左右の両側の部分には、第2結合部124の上端から下端にかけて切り欠かれた切り欠き125が設けられている。そのため、第2結合部124は、一対の円弧板状の部材を含む、とも言える。
【0027】
第3接続部123は、上方ほど径が大きくなる筒状であって、第3筒部122と第2結合部124とを上下につないでいる。
【0028】
上部筐体11と下部筐体12とは、上部筐体11の第1結合部116の下端部と下部筐体12の第2結合部124とを重ねあわせ、重ね合わせた部分同士を例えば溶接により結合することで、互いに固定される。溶接は、例えばレーザ溶接により行われるが、これに限らず、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、プロジェクション溶接等の他の溶接方法により行われてもよい。また、上部筐体11と下部筐体12との固定方法は、溶接に限らず、例えばねじ止め等の他の方法により行われてもよい。
【0029】
樹脂部材4は、合成樹脂等の樹脂材料から形成される。
【0030】
図1~
図4に示すように、樹脂部材4は、筒体部41と、一対の突出部42と、を有している。
【0031】
筒体部41は、径方向に所定の厚さを有する中空の筒状であって、ここでは中空の略円筒状である。筒体部41には、軸方向に貫通する貫通孔40が形成されている。そのため、
図3、
図4に示すように、樹脂部材4(筒体部41)は、内部空間400(貫通孔40内の空間)を有している。貫通孔40の径は、上部筐体11の第1筒部112の内径と同じである。なお、本開示において、2つの要素が「同じ」とは、2つの要素が厳密に同じであってもよいが、これに限られず、例えば実質的に同等な範囲であってもよく、例えば数%程度(あるいは、10%程度)の差異を含んでいてもよい。
【0032】
筒体部41の上端付近には、周方向に第1収容溝43が形成されている。筒体部41の下端付近には、周方向に第2収容溝44が形成されている。
【0033】
一対の突出部42は、筒体部41の左右の側面から突出する。一対の突出部42の各々は、略矩形の柱状であって、その突出端にフランジを有している。
【0034】
樹脂部材4は、筒体部41の軸方向が筐体1の軸方向に沿った状態で筐体1の内部に筒体部41が位置し、筐体1の切り欠き117,125によって形成された一対の開口をそれぞれ通して一対の突出部42が筐体1から突出するように、筐体1に保持される。このように、樹脂部材4(の筒体部41)は、筐体1の内部に位置している。
【0035】
なお、樹脂部材4は、筐体1の切り欠き117,125の縁部分が突出部42と接触することによる樹脂部材4の内部空間400の気密性の確保等のために突出部42を備えているが、突出部42が省略されてもよい。
【0036】
導電体3は、導電性の金属体である。導電体3は、遮断装置10が搭載される対象物の電気部品(バッテリ、モータ等)に接続されて、これらの電気部品とともに電気回路を形成する。導電体3は、例えば、銅(Cu)等の金属によって形成される。ただし、導電体3は、銅以外の金属で形成されていてもよいし、銅と他の金属との合金で形成されてもよい。例えば、導電体3は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等を含んで構成されてもよい。
【0037】
図1~
図3に示すように、導電体3は、板状である。導電体3は、左右方向に延在し上下方向に厚さを有する平板状である。導電体3は、左右方向において樹脂部材4を貫通するように、樹脂部材4に保持されている。導電体3は、一方の突出部42、筒体部41、及び他方の突出部42を貫通している。導電体3は、例えば、導電体3をインサート品とするインサート成形により樹脂部材4を形成することで、樹脂部材4と一体に形成されている。導電体3は、点火器2の下方に位置している。
【0038】
図3に示すように、導電体3は、第1端子部31と、第2端子部32と、導電部33と、を有している。
【0039】
第1端子部31は、導電体3において、樹脂部材4の左側の突出部42の左側面から左方に突出する部分である。第1端子部31は、筐体1から突出している。ここでは、第1端子部31は、筐体1の左側面から左方に突出している。第1端子部31は、対象物の電気部品に接続される端子として使用され得る。
【0040】
第2端子部32は、導電体3において、樹脂部材4の右側の突出部42の右側面から右方に突出する部分である。第2端子部32は、筐体1から突出している。ここでは、第2端子部32は、筐体1の右側面から右方に突出している。つまり、第2端子部32は、左右方向において第1端子部31とは反対側で、筐体1から突出している。第2端子部32は、対象物の電気部品に接続される端子として使用され得る。
【0041】
導電部33は、導電体3において、第1端子部31と第2端子部32とをつなぐ部分である。
図3、
図4に示すように、導電部33は、点火器2の下方に位置している。導電部33のうちの一部は貫通孔40内(内部空間400内)に位置し、導電部33の残りの部分は樹脂部材4に埋まっている。逆に言えば、樹脂部材4は、導電体3の一部を埋設している。そのため、導電体3は、導電部33のうちで樹脂部材4に埋まっている部分で樹脂部材4に保持されている。以下では、導電部33のうちで、樹脂部材4に埋まっておりかつ第1端子部31につながっている部分(導電部33のうちの左側部分)を、「第1保持部34」ともいう。また、導電部33のうちで、樹脂部材4に埋まっておりかつ第2端子部32につながっている部分(導電部33のうちの右側部分)を、「第2保持部35」ともいう。また、導電部33のうちで、貫通孔40内の内部空間400に位置する部分(導電部33のうちの中央部分)を、「接続部36」ともいう。接続部36は、第1保持部34と第2保持部35とをつないでいる。
【0042】
図3、
図7、
図8Aに示すように、導電体3の上面において、第1保持部34と接続部36との境界付近には、分離溝371が形成されている。また、導電体3の上面において、第2保持部35と接続部36との境界付近には、分離溝372が形成されている。更に、導電体3の下面において、第1保持部34と接続部36との境界付近(分離溝371の裏側の位置)には、分離溝373が形成されている。導電体3の下面において、第2保持部35と接続部36との境界付近(分離溝372の裏側の位置)には、分離溝374が形成されている。分離溝371~374の各々は、プッシャ5の外周形状と対応する形状を有している。また、分離溝371~374の各々は、樹脂部材4の貫通孔40の内周に沿った形状である。分離溝371~374の各々は、ここでは円弧状である。
【0043】
点火器2は、電気式点火器である。
図3、
図4に示すように、点火器2は、ケース20と、2つの通電ピン21と、火薬24と、発熱素子25と、を備えている。火薬24はケース20の収容空間200内に収容されており、2つの通電ピン21は、収容空間200内で発熱素子25を介してつながっている。ケース20は、下側の部分に、収容空間200を閉じる蓋部22を有している。
【0044】
図3、
図4に示すように、点火器2は、筐体1の上部筐体11の開口110を通して筐体1の内部に挿入され、蓋部22が下方を向きかつ点火器2の一部(下端部)がプッシャ5の凹所51内に収容されるように、筐体1に保持される。
【0045】
点火器2の上部には、コネクタ受け29が配置されている。コネクタ受け29には、2つの通電ピン21に接続される2つの接続端子を有するコネクタが、接続される。コネクタの2つの接続端子には、例えば、遮断装置10が搭載される対象物の制御部(例えば車両のECU:Electronic Control Unit)等から、作動電流が供給される。2つの通電ピン21を介して発熱素子25に作動電流が供給されると、火薬24が点火・燃焼してガスを発生させる。発生したガスは、収容空間200の内部の圧力を上昇させる。収容空間200内の圧力が蓋部22の耐圧を超えると、蓋部22が開放(破壊)されて、ガスが点火器2の外部に高い圧力で放出される。このように、点火器2は、ガスを発生させる。蓋部22には、例えば十字溝のような、蓋部22の開放の起点となる構造が設けられていてもよい。なお、通電ピン21に作動電流を供給するのは、対象物の制御部に限られない。例えば、対象物の異常時に自動で作動電流を流す機構(例えば、車体への衝撃に応じて磁石に対して動くコイルで発生する誘導電流を、作動電流として供給する機構等)が、通電ピン21に作動電流を供給してもよい。
【0046】
図1~
図4に示すように、筐体1は、蓋材13を更に備えている。蓋材13は、下端にフランジを有し上面が開口したテーパ筒状である。蓋材13は、通電ピン21が露出するように点火器2を上側から覆う。蓋材13は、例えば、フランジが上部筐体11の上底部111の上面に溶接等で固定されることで、上部筐体11に固定される。
【0047】
プッシャ5は、例えば、合成樹脂等の絶縁部材によって形成されている。プッシャ5は、例えば、ナイロンにより形成されている。
図3、
図4、
図6に示すように、プッシャ5は、柱状の部材であり、ここでは円柱状の部材である。プッシャ5の外径は、上部筐体11の第1筒部112の内径及び樹脂部材4の貫通孔40の内径に対応しており、これらの径よりわずかに小さい。
【0048】
図3、
図4に示すように、プッシャ5の上面には、点火器2を配置するための凹所51が形成されている。凹所51は、プッシャ5の上面から下方に凹んでいる。凹所51は、下方に向かうにつれて径が徐々に小さくなる第1部分511と、径が略一定であって第1部分511とつながって第1部分511の下方に位置する第2部分512と、を有している。プッシャ5の凹所51内には、点火器2で発生したガスによって加圧される空間(加圧空間)510が形成される。
【0049】
図3、
図4、
図6に示すように、プッシャ5の下面には、上方へ凹んだ凹所52が複数(ここでは7個)形成されている。7個の凹所52のうちの1個の凹所521は、プッシャ5の下面の中央に形成されている。残りの6個の凹所522は、プッシャ5の下面の径方向において、下面の中心と外周縁とのほぼ中間の位置に、周方向に略等角度間隔で形成されている。また、プッシャ5の下面には、その外周縁に沿って、中央の部分よりも下方へ突出する環状の支持突部53が形成されている。
【0050】
図3、
図4に示すように、プッシャ5は、筐体1の上底部111及び第1筒部112、樹脂部材4の貫通孔40の内面、及び導電体3の導電部33で囲まれた空間内に、支持突部53が導電部33に載せられた状態で配置される(プッシャ5の第1位置)。すなわち、プッシャ5は、点火器2と、破断前の導電体3(第1保持部34、第2保持部35)と、の間の位置である第1位置に配置されている。プッシャ5は、例えば、6個の凹所522のうちの2個の凹所522が上下方向において導電体3と重なり、残りの4個の凹所522が上下方向において導電体3と重ならないように、導電部33の上面に載せられる。
【0051】
プッシャ5は、点火器2で発生したガスによって、第1位置から第2位置へ向かって下方へ移動する。第2位置は、プッシャ5の下端が、導電体3(第1保持部34、第2保持部35)の下端よりも下方に位置するプッシャ5の位置であって、例えば
図5に示すプッシャ5の位置である。プッシャ5は、第1位置から第2位置へ移動する際に、導電部33を上方から下方へ押すことで、導電部33の接続部36を第1保持部34及び第2保持部35から切り離す。
【0052】
要するに、遮断装置10は、プッシャ5を備えている。プッシャ5は、導電体3と点火器2との間の第1位置に配置される。プッシャ5は、点火器2で発生したガスによって、第1位置から、導電体3の一部(接続部36)を破断して第1位置よりも下方に位置する第2位置に向かって移動する。プッシャ5が第2位置に位置している状態(
図5参照)では、点火器2の収容空間200は樹脂部材4の内部空間400につながっているので、点火器2から発生したガスは、樹脂部材4の内部空間400にも充填される。なお、点火器2から発生したガスの一部は、樹脂部材4の貫通孔40の内面とプッシャ5の外面との間の隙間を通って、筐体1の下側の空間(接続部36が位置する空間)にも充填される。
【0053】
保護部6は、点火器2がガスを発生させたときに点火器2の蓋部22によってプッシャ5が破損してしまうことを抑制するための部材である。保護部6は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属により形成されるが、アルミニウム等の他の金属により形成されてもよいし、樹脂により形成されてもよい。
【0054】
保護部6は、第1筒部61と、第2筒部62と、フランジ部63と、を有する。
【0055】
第1筒部61は、点火器2の側方を囲む筒状の部分であり、点火器2のケース20の外形形状に沿った形状を有している。第1筒部61は、例えば、断面視において、下方に向かって段階的に径が小さくなる階段状(例えば、2段の階段状)に形成される。なお、第1筒部61の形状はこれに限定されず、例えば、第1筒部61は、下方に向かうほど径が小さくなるテーパ状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0056】
第2筒部62は、第1筒部61の下側に位置し、第1筒部61よりも径が小さい筒状である。第2筒部62は、第1筒部61の下端から下方に突出する。第2筒部62は、第2筒部62の下端が点火器2の蓋部22よりも下側に位置するように、下方に突出している。第2筒部62には、点火器2からガスが発生する際に開放された蓋部22の一部(
図5参照)が、接触し得る。第2筒部62があることで、蓋部22がプッシャ5に衝突するのが抑制される。
【0057】
フランジ部63は、第1筒部61の上端から上面視における外方に向けて突出する環状である。フランジ部63は、上部筐体11の上底部111の下面に、溶接等により固定される。このように、保護部6は、筐体1に固定される。フランジ部63は、周方向にわたって隙間なく上底部111と固定されていてもよい。
【0058】
弾性部材71~74は、筐体1の内部空間の気密性を向上させるための部材である。弾性部材71~74は、点火器2により発生したガスが筐体1の内部空間から外部の空間に漏れてしまうことを抑制する。
【0059】
弾性部材71~74の各々は、ゴム等の弾性を有する部材であり、ここでは環状に形成されるOリングである。弾性部材71~74の各々は、押圧された状態(変形した状態)で配置されている。
【0060】
弾性部材71は、上部筐体11の上底部111の上面と、蓋材13と、点火器2のケースの側面と、の間に形成された空間に配置される。弾性部材71は、上底部111、蓋材13、及び点火器2とそれぞれ接触して押圧されている。
【0061】
弾性部材72は、上部筐体11の第1接続部113の内面と、樹脂部材4の筒体部41の上面と、プッシャ5の外側面と、の間に形成された空間に配置される。弾性部材72は、第1接続部113、樹脂部材4、及びプッシャ5とそれぞれ接触して押圧されている。弾性部材72は、プッシャ5が第1位置にある状態(
図3、
図4参照)で、凹所51内の空間510と導電体3が位置する空間とを、分離している。
【0062】
弾性部材73は、上部筐体11の第2筒部114の内側面と樹脂部材4の筒体部41の第1収容溝43の内面との間に形成された空間に配置される。弾性部材73は、少なくとも、第1収容溝43の底面及び第2筒部114とそれぞれ接触して押圧されている。
【0063】
弾性部材74は、下部筐体12の第3筒部122の内側面と樹脂部材4の筒体部41の第2収容溝44の内面との間に形成された空間に配置される。弾性部材74は、少なくとも、第2収容溝44の底面及び第3筒部122とそれぞれ接触して押圧されている。
【0064】
(1.2)遮断装置の動作
遮断装置10の動作について、
図3~
図5を参照して説明する。
【0065】
(1.2.1)通常動作
点火器2が駆動されていない場合の遮断装置10の動作(通常動作)について、まず説明する。通常動作においては、プッシャ5は、第1位置(
図3、
図4に示す位置)に位置している。
【0066】
上述のように、遮断装置10は、車両等の対象物に搭載される。例えば、導電体3の第1端子部31には、バッテリの正極側の端子が、必要に応じて電気部品を介して接続される。また、導電体3の第2端子部32には、バッテリの負極側の端子が、必要に応じて電気部品を介して接続される。これにより、遮断装置10の導電体3は、バッテリから供給される電流を通過させる電路を形成するので、対象物内に電気回路が形成される。電気部品に含まれるスイッチがオンされると、バッテリからの電流が、導電体3を含む電気回路に供給される。
【0067】
(1.2.2)遮断動作
次に、点火器2が駆動された場合の遮断装置10の動作(遮断動作)について説明する。
【0068】
例えば、車両の事故等のように遮断装置10が搭載されている対象物に異常が発生すると、対象物の動作を制御する制御部(例えば車両のECU)は、コネクタの接続端子及び点火器2の通電ピン21を介して発熱素子25に作動電流を供給する。
【0069】
発熱素子25に作動電流が供給されると、発熱素子25の温度が上昇し、発熱素子25の周囲の火薬24の温度を上昇させる。例えば、火薬24の温度が発火点に達すると、火薬24が点火・燃焼してガスを発生させ、点火器2の収容空間200内の圧力を増加させる。収容空間200内の圧力が蓋部22の耐圧を超えると、蓋部22が開放(破壊)されて、収容空間200内のガスが、プッシャ5の凹所51内の空間(加圧空間)510に高い圧力で放出される。
【0070】
第1位置にあるプッシャ5(
図3、
図4参照)は、加圧空間510内のガスの圧力により下方へ押されて、導電体3の接続部36を下方へ押圧する。導電体3の接続部36は、プッシャ5に押されることで、分離溝371~374に沿って第1保持部34及び第2保持部35から切り離され、プッシャ5と一緒に下方へ移動する。接続部36が第1保持部34及び第2保持部35から切り離されることで、遮断装置10内で電路が遮断される。これにより、対象物の電気回路が遮断されることになる。
【0071】
このように、遮断装置10は、対象物の異常時等に動作して対象物の電気回路を遮断することにより、異常の被害が大きくなることを防止することができる。
【0072】
なお、下方へ移動するプッシャ5及び接続部36は、下部筐体12の突部120に衝突し(
図5参照)、突部120を変形させながらエネルギーを失って、移動を停止する(プッシャ5の第2位置)。
【0073】
(1.3)導電体の詳細
次に、本実施形態の遮断装置10の導電体3の詳細について、
図3、
図4、
図7~
図9を参照してより詳細に説明する。
【0074】
上述のように、導電体3は、平板状の部材であって、第1端子部31と、第2端子部32と、導電部33と、を備えている。
【0075】
第1端子部31は、導電体3において、筐体1(樹脂部材4)から左方に突出する部分である。第1端子部31は板状であって、厚さ方向(上下方向)に貫通する貫通孔311が形成されている。貫通孔311は、第1端子部31を外部の電線等に接続するため等に用いられ得る。
【0076】
第2端子部32は、導電体3において、筐体1(樹脂部材4)から右方に突出する部分である。第2端子部32は板状であって、厚さ方向(上下方向)に貫通する貫通孔321が形成されている。貫通孔321は、第2端子部32を外部の電線等に接続するため等に用いられ得る。
【0077】
導電部33は、左右方向に沿って延在する板状の部材である。導電部33は、第1端子部31と第2端子部32とをつないでいる。上述のように、導電部33は、第1保持部34と、第2保持部35と、接続部36と、を有している。
【0078】
(1.3.1)第1保持部
第1保持部34は、導電部33のうちで、樹脂部材4に埋設されており、かつ第1端子部31と接続部36とをつなぐ部分である。
【0079】
図8A、
図9に示すように、第1保持部34は、第1部分341と、第2部分342と、接続部分343と、を有している。
【0080】
第1部分341は、第1保持部34のうちで、第1端子部31とつながる部分である。第1部分341と第1端子部31との境界(すなわち第1保持部34と第1端子部31との境界)は、導電体3において、樹脂部材4に埋まっている部分と樹脂部材4の外側面から突出している部分との境界である。例えば、第1部分341の前後方向の寸法(長さL10)は、後述の窪み部345が設けられている部分を除いて、一定である。例えば、前後方向において、第1部分341の寸法(長さL10)は、第1端子部31の寸法(長さ)と同じである。
【0081】
第2部分342は、第1保持部34のうちで、接続部36とつながる部分である。第2部分342と接続部36との境界(すなわち第1保持部34と接続部36との境界)は、導電体3において、樹脂部材4に埋まっている部分と樹脂部材4の内側面から突出している部分との境界である。例えば、第2部分342の前後方向の寸法(長さL12)は一定である。前後方向において、第2部分342の寸法(長さL12)は、第1部分341の寸法(長さL10)よりも小さい。例えば、前後方向において、第2部分342の寸法(長さL12)は、接続部36の寸法(長さ)と同じである。また、
図7に示すように、上下方向において、第2部分342の寸法(厚さ)は、第1部分341の寸法(厚さ)よりも小さい。
【0082】
接続部分343は、第1保持部34のうちで、第1部分341と第2部分342とをつなぐ部分である。
図8A、
図9に示すように、接続部分343の前後の両側面は、第1部分341側から第2部分342側へ向かって接続部分343の前後方向の寸法が徐々に小さくなるように、傾斜している。また、
図7に示すように、接続部分343の上面と下面とのうちの少なくとも一方(ここでは下面)は、第1部分341側から第2部分342側へ向かって接続部分343の上下方向の寸法(厚さ)が徐々に小さくなるように、傾斜している。
【0083】
図8A、
図9に示すように、第1保持部34は、第1保持部34を上下に貫通する貫通孔344を有している。貫通孔344は、第1部分341に形成されている。貫通孔344は、前後方向に長い長孔状である。貫通孔344は、第1部分341の前後方向における中央に形成されている。前後方向において、貫通孔344の寸法(長さL11)は、第1部分341の寸法(長さL10)よりも小さく、第2部分342の寸法(長さL12)よりも大きい。貫通孔344の前端は、第2部分342の前側面よりも前方に位置しており、貫通孔344の後端は、第2部分342の後側面よりも後方に位置している。言い換えれば、貫通孔344は、左方から見て、第2部分342の全部と重なる形状を有している。
図9に示すように、貫通孔344は、樹脂部材4に埋設されている。
【0084】
図8A、
図9に示すように、第1保持部34は、窪み部345を有している。窪み部345は、第1保持部34の側面に形成されている。窪み部345は、第1部分341の側面に形成されている。窪み部345は、前側面と後側面とのうちの少なくとも一方に形成されており、ここでは前側面及び後側面の両方に形成されている。
【0085】
窪み部345は、例えば、左右方向において貫通孔344と重なる位置に、設けられている。窪み部345は、例えば、前方から後方に向かって又は後方から前方に向かって上面視円弧状に凹んだ凹部である。
図9に示すように、窪み部345は、樹脂部材4に埋設されている。
【0086】
図7、
図8A、
図9に示すように、第1保持部34は、貫通孔344とつながっている第1凹所346を有している。第1凹所346は、第1保持部34の上面と下面とのうちの少なくとも一方に設けられており、ここでは上面と下面との両方に設けられている。第1凹所346は、ここでは溝状であり、前後方向に延びており、貫通孔344から第1保持部34の前側面又は後側面(ここでは窪み部345)まで設けられている。
図9に示すように、第1凹所346は、樹脂部材4に埋設されている。なお、
図9は、第1凹所346の深さ方向の途中で遮断装置10を切った時の断面図である。
【0087】
図7、
図8A、
図9に示すように、第1保持部34は、第2凹所347を有している。第2凹所347は、左右方向において、第1凹所346と第1端子部31との間にある。言い換えれば、第1凹所346及び貫通孔344は、第2凹所347と接続部36との間に位置している。第2凹所347は、第1保持部34の上面と下面とのうちの少なくとも一方に設けられており、ここでは上面と下面との両方に設けられている。第2凹所347は、ここでは溝状であり、前後方向に延びており、第1保持部34の前後方向の全長にわたって設けられている。第2凹所347の深さ(上下方向の寸法)は、ここでは第1凹所346の深さと同じであるが、異なっていてもよい。
図9に示すように、第2凹所347は、樹脂部材4に埋設されている。
【0088】
図8Aに示すように、第1保持部34の上面と下面とうちの少なくとも一方には、複数の溝38が形成されている。言い換えれば、第1保持部34は、上面と下面とのうちの少なくとも一方に設けられている複数の溝38を有する。ここでは、複数の溝38は、第1保持部34の上面(
図8A参照)及び下面の両方に形成されている。複数の溝38は、例えばローレット加工により形成されている。
【0089】
図8Aに示すように、複数の溝38は、第1保持部34の上面のうちで、第1部分341の第2凹所347と接続部分343との間の部分の上面、及び接続部分343の上面に設けられている。また、複数の溝38は、第1保持部34の下面のうちで、第1部分341の第2凹所347と接続部分343との間の部分の下面、及び接続部分343の下面に設けられている。溝38は第1凹所346及び第2凹所347には設けられていないが、これは加工の容易性の問題であって、第1凹所346と第2凹所347とのうちの少なくとも一方、例えば両方に、溝38が設けられていてもよい。また、第2部分342の上面及び下面には溝38が設けられていないが、これは加工の容易性の問題であって、第2部分342の上面と下面とのうちの少なくとも一方、例えば両方に、溝38が設けられていてもよい。
【0090】
複数の溝38は、前後方向において、第1保持部34の全体にわたって形成されている。複数の溝38は、樹脂部材4に埋設されている。
【0091】
図8A、
図8Bに示すように、複数の溝38は、複数の第1溝381と、複数の第2溝382と、を含む。
【0092】
第1溝381は、上面視で、前後方向に延伸している。言い換えれば、第1溝381は、上面視で、導電体3が延伸する方向(左右方向)に直交する方向(前後方向)に延伸している。複数の第1溝381は、互いに平行である。なお、本開示において、2つの要素が「直交」又は「平行」とは、2つの要素が厳密に「直交」又は「平行」であってもよいが、これに限られず、例えば実質的に直交又は平行であってもよく、例えば数%程度(あるいは、10%程度)の差異を含んでいてもよい。
【0093】
第2溝382は、上面視で、第1溝381の延伸方向と斜めに交差している。言い換えれば、第2溝382は、導電体3が延伸する方向(左右方向)と斜めに交差する方向に延伸している。複数の第2溝382は、互いに平行である。第1溝381の延伸方向に対する第2溝382の延伸方向の交差角度は、0度よりも大きければ特に限定されない。この交差角度は、本実施形態では、例えば40~50度程度である。
【0094】
図8Bに示すように、複数の溝38の各々は、V字状の断面を有している。言い換えれば、複数の溝38の各々の断面は、V字形状である。「溝38の断面」とは、溝38の延伸方向と直交する仮想面における、溝38の外形形状(断面形状)である。第1溝381の断面はV字形状であり、第2溝382の断面はV字形状である。第1保持部34の上面及び下面は、互いに交差するV字状の複数の第1溝381及び複数の第2溝382が設けられていることで、
図8Bに示すように、多数の四角錐状の突起383を有している。
【0095】
(1.3.2)第2保持部
第2保持部35は、導電部33のうちで、樹脂部材4に埋設されており、かつ第2端子部32と接続部36とをつなぐ部分である。本実施形態では、第2保持部35は、第1保持部34と鏡面対称かつ2回回転対称の構造を有している。第2保持部35において、第1保持部34と同様の構造については、詳細な説明は省略する。
【0096】
図8A、
図9に示すように、第2保持部35は、第1部分351と、第2部分352と、接続部分353と、を有している。
【0097】
第1部分351は、第2保持部35のうちで、第2端子部32とつながる部分である。第1部分351と第2端子部32との境界(すなわち第2保持部35と第2端子部32との境界)は、導電体3において、樹脂部材4に埋まっている部分と樹脂部材4の外側面から突出している部分との境界である。
【0098】
第2部分352は、第2保持部35のうちで、接続部36とつながる部分である。第2部分352と接続部36との境界(すなわち第2保持部35と接続部36との境界)は、導電体3において、樹脂部材4に埋まっている部分と樹脂部材4の内側面から突出している部分との境界である。
【0099】
接続部分353は、第2保持部35のうちで、第1部分351と第2部分352とをつなぐ部分である。
【0100】
図7、
図8A、
図9に示すように、第2保持部35は、貫通孔354、窪み部355、第1凹所356、第2凹所357、及び複数の溝39(第1溝391及び第2溝392を含む)を有している。第2保持部35の貫通孔354、窪み部355、第1凹所356、第2凹所357、及び複数の溝39は、第1保持部34の貫通孔344、窪み部345、第1凹所346、第2凹所347、及び複数の溝38と、それぞれ同様の構成を有している。なお、複数の溝39のうちの第2溝392は、
図8Aに示すように溝38の第2溝382と鏡面対称でなくてもよい。
【0101】
第2保持部35を第1保持部34と鏡面対称又は2回回転対称の構造とすることで、導電体3の通電性能について対称性を与えることができる。例えば、第1端子部31から導電部33を通って第2端子部32へ電流を流すことも可能であり、その逆向きに電流を流すことも可能である。
【0102】
(1.3.3)接続部
接続部36は、導電部33のうちで、樹脂部材4の貫通孔40内の内部空間400に位置する部分である。接続部36は、左右方向に延在し上下方向に厚さを有する板状である。
図3、
図7に示すように、接続部36は、下面における左右方向の両端付近に傾斜面361を有しており、これにより、中央部分の厚さよりも左右の両端部分の厚さの方が薄い。
【0103】
接続部36は、その中央に貫通孔362を有している。
図3、
図4に示すように、貫通孔362は、プッシャ5の下面の7個の凹所52のうちの中央の凹所521とつながっている。貫通孔362及び凹所52(521,522)があることで、遮断動作時に、接続部36を切り離した後に下方へ移動しようとするプッシャ5を、空気抵抗によって減速させることができる。
【0104】
また、
図8Aに示すように、接続部36の中央付近において前後の両側面には、貫通孔362に対応するように外側に膨らんだ膨出部363が設けられている。膨出部363があることで、左右方向(すなわち導電体3内で電流が流れる方向)と直交する面での接続部36の断面積を、貫通孔362がある部分とない部分とでほぼ一定にすることが可能となり、貫通孔362を設けながらも導電体3の通電性能を維持することが可能となる。
【0105】
接続部36の上面には、第1保持部34との境界付近に、上面視における接続部36と第1保持部34との境界線B1(
図10参照)に沿って、上述の分離溝371(
図7、
図8A参照)が形成されている。本開示において、「上面視における接続部36と第1保持部34との境界線B1」とは、導電体3の上面における、導電体3において樹脂部材4に埋まっている部分と樹脂部材4から突出している部分との間の線(ここでは円弧状の線)である。また、接続部36の上面には、第2保持部35との境界付近に、上面視における接続部36と第2保持部35との境界線B2(
図10参照)に沿って、上述の分離溝372(
図7、
図8A参照)が形成されている。接続部36の下面には、第1保持部34との境界付近に、下面視における接続部36と第1保持部34との境界線に沿って、上述の分離溝373(
図7参照)が形成されている。接続部36の下面には、第2保持部35との境界付近に、下面視における接続部36と第2保持部35との境界線に沿って、上述の分離溝374(
図7参照)が形成されている。
図7に示すように、分離溝371~374は、接続部36において相対的に厚さが薄い両端部分に設けられている。
【0106】
接続部36において第1保持部34との境界付近の部分における前後方向の寸法は、第1保持部34の前後方向の寸法よりも小さい。言い換えれば、第1保持部34の長さは、接続部36と第1保持部34との境界線B1の第1端部P11と第2端部P12との間の長さL13(
図9参照)よりも長い。ここで、「第1保持部34の長さ」とは、第1保持部34の前後方向における最大寸法であり、ここでは第1部分341の長さL10である。また、「接続部36と第1保持部34との境界線B1の第1端部P11及び第2端部P12」とは、それぞれ、接続部36と第1保持部34との間の円弧状の境界線B1の一端及び他端である。「接続部36と第1保持部34との境界線B1の第1端部P11と第2端部P12との間の長さL13」とは、第1端部P11と第2端部P12との間の直線距離(最短距離)である。
【0107】
また、接続部36において第1保持部34との境界付近の部分における前後方向の寸法は、第1保持部34の貫通孔344の前後方向の寸法(長さL11)(
図8A参照)よりも小さい。特に、第1保持部34の貫通孔344の長さL11は、接続部36と第1保持部34との境界線B1の第1端部P11第2端部P12との間の長さL13(
図9参照)と同じかそれよりも長い。ここで、「第1保持部34の貫通孔344の長さL11」とは、前後方向における貫通孔344の最大寸法である。
【0108】
同様に、第2保持部35の長さL20は、接続部36と第2保持部35との境界線B1の第1端部P21と第2端部P22との間の長さL23よりも長い。また、貫通孔354の長さL21は、接続部36と第2保持部35との境界線B2の第1端部P21と第2端部P22との間の長さL23と同じかそれよりも長いである。
【0109】
(1.3.4)アーク遮蔽構造
遮断装置10の遮断動作は、導電体3に電流が流れている状態で実行される場合がある。導電体3に電流が流れている状態で、遮断動作によって接続部36が第1保持部34及び第2保持部35から切り離されると、切り離された部分の間でアーク(電弧)が発生する場合がある。ここで、樹脂部材4が導電体3と一体に形成されているため、樹脂部材4と導電体3との間には隙間はなく、そのため、発生したアークは、基本的には樹脂部材4の内部空間400内に留められる。しかしながら、発生するアークの容量が非常に大きい場合には、アークによる導電性のガスが、樹脂部材4と導電体3(第1保持部34又は第2保持部35)との間(境界)を通って、筐体1の外部へと漏れてしまう可能性がある。そこで、本実施形態の遮断装置10は、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを抑制する、アーク遮蔽構造を有している。
【0110】
アーク遮蔽構造は、導電体3の第1保持部34及び第2保持部35に形成されている貫通孔344,354を含んでいる。言い換えれば、導電体3のうちで樹脂部材4に埋まっている第1保持部34及び第2保持部35に形成された貫通孔344,354は、アーク遮蔽構造として機能する。
【0111】
接続部36と第1保持部34(又は第2保持部35)との破断部分で発生したアークによる導電性のガス(プラズマ等)は、第1保持部34(又は第2保持部35)の上面又は下面と樹脂部材4との境界を通りながら左方(又は右方)に移動して、筐体1の外部へ出ようとする。しかしながら、貫通孔344(又は354)が樹脂部材4に埋設されていることで、導電性のガスは、その移動の途中で貫通孔344(又は354)を埋めている樹脂部材4の壁に当たって、左方(又は右方)への移動が妨げられる。これにより、導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのが、抑制される。また、ガス(プラズマ等)の一部は、樹脂部材4の貫通孔344(又は354)部分を迂回して左方(又は右方)へ更に移動しようとするが、迂回することで移動経路が長くなるため、その迂回中にガスが冷却されて、ガス(プラズマ等)の導電性が失われる。そのため、仮にガスが筐体1の外部へ漏れたとしても、その漏れたガスは導電性を失っているため、外界に与える影響を小さく抑えることができる。
【0112】
アーク遮蔽構造は、導電体3の第1保持部34及び第2保持部35に形成されている第1凹所346,356を含んでいる。言い換えれば、導電体3のうちで樹脂部材4に埋まっている第1保持部34及び第2保持部35に形成された第1凹所346,356は、アーク遮蔽構造として機能する。
【0113】
第1凹所346,356があることで、貫通孔344,354の場合と同様に、導電性のガスの移動を妨げたり迂回させたりすることができる。これにより、アークによる導電性のガスが、筐体1の外部へ漏れるのを抑制することが可能となる。
【0114】
また、第1凹所346,356は、貫通孔344,354とつながっているので、第1凹所346,356内の樹脂部材4の部分は、貫通孔344,354内の樹脂部材4の部分とつながっている。すなわち、第1凹所346,356があることで、貫通孔344,354内の樹脂部材4の強度を向上させることもできる。
【0115】
なお、第1凹所346(又は356)は、貫通孔344(又は354)から第1保持部34(又は第2保持部35)の前側面又は後側面までつながっていることが好ましいが、必ずしも前側面又は後側面までつながっていなくてもよい。
【0116】
アーク遮蔽構造は、導電体3の第1保持部34及び第2保持部35に形成されている第2凹所347,357を含んでいる。言い換えれば、導電体3のうちで樹脂部材4に埋まっている第1保持部34及び第2保持部35に形成された第2凹所347,357は、アーク遮蔽構造として機能する。
【0117】
第2凹所347,357があることで、第1凹所346,356の場合と同様に、導電性のガスの移動を妨げたり迂回させたりすることができる。これにより、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを抑制することが可能となる。
【0118】
なお、第2凹所347(又は357)は、第1保持部34(又は第2保持部35)の前後方向の全長にわたって形成されていることが好ましいが、第1保持部34(又は第2保持部35)の前後方向の一部のみに形成されていてもよい。その場合、第2凹所347(又は357)は、左方又は右方から見て貫通孔344(又は354)と重ならない部分に、少なくとも設けられていてもよい。
【0119】
アーク遮蔽構造は、導電体3の第1保持部34及び第2保持部35に形成されている窪み部345,355を含んでいる。言い換えれば、導電体3のうちで樹脂部材4に埋まっている第1保持部34及び第2保持部35に形成された窪み部345,355は、アーク遮蔽構造として機能する。
【0120】
接続部36と第1保持部34(又は第2保持部35)との破断部分で発生したアークによる導電性のガス(プラズマ等)は、第1保持部34(又は第2保持部35)の前側面又は後側面と樹脂部材4との境界を通って、筐体1の外部へ出ようとする。しかしながら、第1保持部34(又は第2保持部35)の前側面及び後側面に窪み部345(又は355)があることで、第1凹所346,356等の場合と同様に、導電性のガスの移動を妨げたり迂回させたりすることができる。これにより、ガスが筐体1の外部へ漏れにくくなり、また、ガスの冷却が促されるので、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを、抑制することが可能となる。
【0121】
アーク遮蔽構造は、導電体3の第1保持部34及び第2保持部35に形成されている複数の溝38,39を含んでいる。言い換えれば、導電体3のうちで樹脂部材4に埋まっている第1保持部34及び第2保持部35に形成された複数の溝38,39は、アーク遮蔽構造として機能する。
【0122】
溝38,39があることで、第1凹所346,356等の場合と同様に、導電性のガスの移動を妨げたり移動距離を長くさせたりすることができる。これにより、ガスが筐体1の外部へ漏れにくくなり、また、ガスの冷却が促されるので、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを抑制することが可能となる。特に、加工の容易性及び移動経路を長くする観点から、溝38,39は、V字形状の断面を有しているとよい。
【0123】
また、導電体3の第1保持部34及び第2保持部35に複数の溝38,39があることで、樹脂部材4を導電体3と一体成形する際に導電体3への樹脂部材4の食いつきがよくなり、導電体3に対する樹脂部材4の密着性を向上させることができる。そのため、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを、更に抑制することができる。
【0124】
(1.4)樹脂部材の詳細
次に、本実施形態の遮断装置10の樹脂部材4の詳細について、
図3、
図4、
図10~
図12を参照して説明する。
【0125】
上述のように、樹脂部材4は、筒体部41と一対の突出部42とを備えている。樹脂部材4は、例えばインサート成形により、導電体3と一体に形成されている。
【0126】
図3、
図4、
図10に示すように、樹脂部材4の筒体部41には、軸方向に貫通する貫通孔40が形成されている。貫通孔40の内側面は、円筒面状である。
【0127】
図11、
図12に示すように、筒体部41の外側面において、上端付近には第1収容溝43が環状に形成され、下端付近には第2収容溝44が環状に形成されている。
【0128】
筒体部41は、いわゆる肉抜きされている。これにより、筒体部41の外側面には、
図11、
図12に示すように、第1凹部群45と第2凹部群46とが設けられている。第1凹部群45及び第2凹部群46は、筒体部41の外側面において、導電体3が突出していない領域に設けられている。
【0129】
図11に示すように、樹脂部材4は、第1凹部群45を有している。第1凹部群45は、複数の第1凹部450を含んでいる。第1凹部群45は、筒体部41の外側面における前側の領域に設けられている。また、
図12に示すように、樹脂部材4は、第2凹部群46を有している。第2凹部群46は、複数の第2凹部460を含んでいる。第2凹部群46は、筒体部41の外側面における後側の領域に設けられている。
【0130】
(1.4.1)第1凹部群
上述のように、第1凹部群45は、筒体部41の外側面において前側の領域に設けられている。
【0131】
第1凹部群45は、複数の第1凹部450として、m×n個の第1凹部450を含んでいる。ここで、「m」は2以上の自然数であり、「n」は1以上の自然数である。第1凹部群45のm×n個の第1凹部450は、正面視において、m行n列のマトリクス状に配置されている。「m」は、上下方向に並ぶ第1凹部450の行の数を示し、「n」は、左右方向に並ぶ第1凹部450の列の数を示す。すなわち、第1凹部群45は、上下方向に2行以上並び左右方向に1列以上並ぶように配列された、複数(m×n個)の第1凹部450を含んでいる。
【0132】
図10に示すように、複数の第1凹部450の各々は、樹脂部材4を貫通しない凹部である。複数の第1凹部450の各々の深さは、第1凹部450の底面と貫通孔40の内側面との間の寸法(
図10に示す厚さL100)が所定厚さ以上となるように、設定されている。上記の「所定厚さ」は、遮断装置10が搭載された対象物に事故等の異常が発生したり、遮断装置10が遮断動作を行ったりしても、樹脂部材4に破損が発生しない程度の強度を樹脂部材4が有するのに最低限必要な寸法であり得る。複数の第1凹部450の各々の底面は、貫通孔40の内底面に沿うように、円筒面状に湾曲している。
【0133】
複数の第1凹部450の各々は、樹脂部材4の外側面から、X軸に沿って後方に凹むように形成されている。そのため、樹脂部材4において左右方向に隣り合う第1凹部450の間の壁部は、左右方向の寸法(厚さL101)(
図10参照)が、前後方向にわたってほぼ一定である。これにより、壁部の強度が向上し得る。
【0134】
複数の第1凹部450は、同じ列に属する第1凹部450の横幅(例えば、最も左側の列の2個の第1凹部450の横幅同士)が互いに同じになるように、形成されている。本実施形態では、「第1凹部450の横幅」とは、第1凹部450の開口面の左端と右端とを、筒体部41の外側面の湾曲形状に沿ってつなぐ、仮想線の長さである。「第1凹部450の開口面」とは、第1凹部450の左右の開口端縁同士を、筒体部41の外側面の湾曲形状に沿ってつなぐ仮想面である。
【0135】
複数の第1凹部450は、同じ列に属する第1凹部450同士では、下側の第1凹部450ほど縦幅が大きくなるように、形成されている。本実施形態では、「第1凹部450の縦幅」とは、第1凹部450の開口面の上端と下端とをつなぐ、仮想線の長さである。
【0136】
図11に示すように、複数の第1凹部450は、上下方向において、導電体3とずれた位置に形成されている。本開示において、「上下方向において第1凹部450が導電体3とずれた位置に形成されている」とは、正面視において(すなわち上下方向と直交する方向から見た場合に)、導電体3の全体が第1凹部450と重ならないことであってもよいし、導電体3の少なくとも一部(例えば、上下方向における半分以上の部分)が第1凹部450と重ならないことであってもよい。本実施形態では、正面視において、導電体3の下側の半分以上の部分が、いずれの第1凹部450とも重なっていない。
【0137】
図11に示すように、m×n個の第1凹部450は、第1所定凹部R1と、第2所定凹部R2と、第3所定凹部R3と、を含んでいる。第1所定凹部R1は、m行n列のマトリクス状に配置されたm×n個の第1凹部450のうち、導電体3の第1端子部31に隣接する第1凹部450である。第2所定凹部R2は、m行n列のマトリクス状に配置されたm×n個の第1凹部450のうち、導電体3の第2端子部32に隣接する第1凹部450である。第3所定凹部R3は、m行n列のマトリクス状に配置されたm×n個の第1凹部450のうち、第1所定凹部R1と第2所定凹部R2との間に位置する第1凹部450である。なお、本開示では、「所定凹部」について言及する場合、列の数「n」は、3以上の自然数であり得る。
【0138】
例えば、第1所定凹部R1は、m×n個の第1凹部450のうちで、第1端子部31に最も近い1列目のm個の第1凹部450のうちのいずれか1個である。また、第2所定凹部R2は、第2端子部32に最も近い(第1端子部31から最も遠い)n列目のm個の第1凹部450のうち、第1所定凹部R1と同じ行にある第1凹部450である。また、第3所定凹部R3は、2~(n-1)列目のm×(n-2)個の第1凹部450のうち、第1所定凹部R1及び第2所定凹部R2と同じ行にある(n-2)個の第1凹部450のうちのいずれか1個である。
【0139】
本実施形態では、第1所定凹部R1の体積、及び第2所定凹部R2の体積のそれぞれは、第3所定凹部R3の体積よりも大きい。言い換えれば、第1所定凹部R1の体積は、第3所定凹部R3の体積より大きく、第2所定凹部R2の体積は、第3所定凹部R3の体積より大きい。ここで、「第1凹部450(第1所定凹部R1~第3所定凹部R3の各々)の体積」とは、第1凹部450の内面(内底面及び内側面)と開口面とで囲まれる空間の体積(容積)である。
【0140】
また、第1所定凹部R1の横幅D1、及び第2所定凹部R2の横幅D2のそれぞれは、第3所定凹部R3の横幅D3よりも大きい。言い換えれば、第1所定凹部R1の横幅D1は、第3所定凹部R3の横幅D3より大きく、第2所定凹部R2の横幅D2は、第3所定凹部R3の横幅D3より大きい。「第1所定凹部R1の横幅D1」、「第2所定凹部R2の横幅D2」、及び「第3所定凹部R3の横幅D3」は、第1所定凹部R1、第2所定凹部R2、及び第3所定凹部R3が並ぶ方向に沿った幅である。本実施形態では、第1所定凹部R1、第2所定凹部R2、及び第3所定凹部R3は、筒体部41の外側面の湾曲形状に沿って並んでいる。そのため、本実施形態では、「第1所定凹部R1、第2所定凹部R2、及び第3所定凹部R3が並ぶ方向に沿った、第1~第3所定凹部R1~R3の横幅D1~D3」とは、第1所定凹部R1、第2所定凹部R2、及び第3所定凹部R3が並ぶ方向(ここでは、筒体部41の外側面の周方向)における、筒体部41の外側面の湾曲形状に沿った第1~第3所定凹部R1~R3の寸法である(
図10参照)。
【0141】
なお、列の数「n」が4以上の場合には、第1所定凹部R1と第2所定凹部R2との間に、2個以上の第3所定凹部R3が存在し得る。その場合、2個以上の第3所定凹部R3のうちの少なくとも1個の第3所定凹部R3の体積が、第1所定凹部R1の体積及び第2所定凹部R2の各々の体積よりも小さければよい。また、2個以上の第3所定凹部R3のうちの少なくとも1個の第3所定凹部R3の横幅D3が、第1所定凹部R1の横幅D1及び第2所定凹部R2の横幅D2の各々よりも小さければよい。もちろん、2個以上の第3所定凹部R3の各々の体積(又は横幅D3)が、第1所定凹部R1の体積(又は横幅D1)より小さく、かつ第2所定凹部R2の体積(又は横幅D2)より小さくてもよい。
【0142】
本実施形態では、行の数「m」は「2」であり、列の数「n」は「3」である。すなわち、
図11に示すように、第1凹部群45は、2×3(=6)個の第1凹部450を含んでいる。第1凹部群45は、2行3列のマトリクス状に配置されている。
【0143】
2×3個の第1凹部450は、1行1列目に配置されている第1凹部450である第1所定凹部R1と、1行3列目に配置されている第1凹部450である第2所定凹部R2と、1行2列目に配置されている第1凹部450である第3所定凹部R3と、を含んでいる。第1所定凹部R1の体積は、第3所定凹部の体積よりも大きい。第2所定凹部R2の体積は、第3所定凹部R3の体積よりも大きい。また、第1所定凹部R1の横幅D1は、第3所定凹部の横幅D3よりも大きい。第2所定凹部R2の横幅D2は、第3所定凹部R3の横幅D3よりも大きい。
【0144】
別の観点から見ると、第1凹部群45は、
図11に示すように、2行3列のマトリクス状に配置された2×3個の第1凹部450を含んでいる。2×3個の第1凹部450は、第1規定凹部S1と、第2規定凹部S2と、を含んでいる。第1規定凹部S1は、2×3個の第1凹部450のうち、1行1列目に配置されている第1凹部450である。第2規定凹部S2は、2×3個の第1凹部450のうち、2行1列目に配置されている第1凹部450である。第2規定凹部S2は、第1規定凹部S1よりも下方に位置している。
【0145】
そして、本実施形態では、第1規定凹部S1の体積は、第2規定凹部S2の体積よりも小さい。また、第1規定凹部S1の縦幅は、第2規定凹部S2の縦幅よりも小さい。「第1規定凹部S1の縦幅」、及び「第2規定凹部S2の縦幅」は、第1規定凹部S1、及び第2規定凹部S2が並ぶ方向に沿った幅である。
【0146】
(1.4.2)厚肉部
樹脂部材4の筒体部41は、外側面における前側の領域に、第1凹部450が設けられていない部分(以下、「厚肉部47」ともいう)を有している。
【0147】
より詳細には、
図11に示すように、m×n個の第1凹部450は、上側凹部T1と、下側凹部T2と、を含んでいる。上側凹部T1は、導電体3に対して上方にずれて位置する第1凹部450である。下側凹部T2は、導電体3に対して下方にずれて位置する第1凹部450である。
【0148】
例えば、上側凹部T1は、導電体3に対して上方にずれて位置する1個以上の第1凹部450のうちのいずれか1個である。下側凹部T2は、導電体3に対して下方にずれて位置する1個以上の第1凹部450のうち、上側凹部T1の下方に位置する第1凹部450である。
【0149】
また、例えば、上側凹部T1は、m行n列のマトリクス状に配置されたm×n個の第1凹部450のうち、最も上側の行である1行目のn個の第1凹部450のうちのいずれか1個であり得る。下側凹部T2は、最も下側の行であるm行目(本実施形態では2行目)のn個の第1凹部450のうちで上側凹部T1と同じ列にある第1凹部450であり得る。
【0150】
本実施形態では、一例として、2行3列のマトリクス状に配置された2×3個の第1凹部450のうち、上側凹部T1は1行1列目の第1凹部450である。下側凹部T2は2行1列目の第1凹部450である。
【0151】
厚肉部47は、第1厚肉部471~第3厚肉部473を有している。
【0152】
第1厚肉部471は、筒体部41のうちで、上側凹部T1よりも上側の部分である。第1厚肉部471は、筒体部41の径方向に厚さを有する環状である。第1厚肉部471は、m×n個の第1凹部450の全体よりも上側に位置している。第1厚肉部471は、第1収容溝43よりも下側に位置している。すなわち、第1厚肉部471は、上下方向において、第1収容溝43と第1凹部群45との間にある。
【0153】
第2厚肉部472は、筒体部41のうちで、下側凹部T2よりも下側の部分である。第2厚肉部472は、筒体部41の径方向に厚さを有する環状である。第2厚肉部472は、m×n個の第1凹部450の全体よりも下側に位置している。第2厚肉部472は、第2収容溝44よりも上側に位置している。すなわち、第2厚肉部472は、上下方向において、第2収容溝44と第1凹部群45との間にある。
【0154】
第3厚肉部473は、筒体部41のうちで、上側凹部T1と下側凹部T2との間の部分である。第3厚肉部473は、筒体部41の径方向に厚さを有する環状である。第3厚肉部473は、m行n列のマトリクス状に配置されたm×n個の第1凹部450のうち、1行目のn個の第1凹部450よりも下側、かつm行目のn個の第1凹部450よりも上側にある。
【0155】
図4に示すように、第3厚肉部473の厚さは、第1厚肉部471の厚さよりも厚く、第2厚肉部472の厚さよりも厚い。
図4に示すように、ここでは、第1厚肉部471の内径と第3厚肉部473の内径は同じであり、第2厚肉部472の内径よりも小さい。
【0156】
また、第1厚肉部471の外径A1と第2厚肉部472の外径A2とのそれぞれは、第3厚肉部473の外径A3よりも小さい。言い換えれば、樹脂部材4において上側凹部T1よりも上方の部分(第1厚肉部471)の外径A1と、樹脂部材4において下側凹部T2よりも下方の部分(第2厚肉部472)の外径A2と、のそれぞれは、樹脂部材4において上側凹部T1と下側凹部T2との間の部分(第3厚肉部473)の外径A3よりも小さい。
【0157】
また、
図11に示すように、厚肉部47は、第4厚肉部474を更に有している。第4厚肉部474は、筒体部41のうちで、左右方向において第1凹部群45と導電体3との間の部分である。
【0158】
厚肉部47は、第5厚肉部475を更に有している。第5厚肉部475は、筒体部41のうちで、左右方向に(すなわち、同じ行において)隣り合う2個の第1凹部450の間の部分である。列の数「n」が「1」の場合、第5厚肉部475は存在しない。
【0159】
(1.4.3)第1凹部群による効果
上述のように、遮断装置10が遮断動作を行うと、樹脂部材4の内部空間400内でアークが発生する場合がある。そのため、樹脂部材4には、アークに対する耐圧が求められる。アークに対する耐圧を高めるためには、樹脂部材4の厚さを厚くすることが考えられる。しかしながら、樹脂部材4の厚さを全体的に厚くすると、樹脂部材4を形成するために必要な樹脂材料の量が多くなる。また、樹脂部材4の厚さを全体的に厚くすると、樹脂部材4の内部にボイドができやすくなる等して成形性が悪化し、逆にアークに対する耐圧が低下する場合がある。そこで、本実施形態の遮断装置10では、m行n列のマトリクス状に配置されたm×n個の第1凹部450を含む第1凹部群45を樹脂部材4に設けることで、樹脂部材4の強度を維持しつつ樹脂材料の量の低減を図っている。
【0160】
すなわち、樹脂部材4の外側面の前側の領域に第1凹部450を少なくとも1つ設けることで、樹脂部材4には、相対的に厚さが薄い部分(第1凹部450が設けられている部分)と相対的に厚さが厚い部分(第1凹部450が設けられていない部分;厚肉部47)とができる。これにより、樹脂部材4の成形性の悪化を抑制して樹脂部材4内でのボイドの発生を抑制し、樹脂部材4の強度の向上を図ることが可能となる。また、第1凹部450が1つも設けられていない場合と比較して、樹脂部材4を形成するために必要な樹脂材料の量を低減することができる。
【0161】
特に、樹脂部材4の外側面の前側の領域に第1凹部450を設けることで、樹脂部材4の外側面の左右の領域(導電体3が突出している領域)には、自ずと相対的に厚さが厚い部分(第4厚肉部474)ができる。樹脂部材4の左右の領域は、導電体3を保持している部分であって、接続部36が第1保持部34及び第2保持部35から切り離される際に導電体3から最も力を受けやすい樹脂部材4の部分である。そのため、この領域に第4厚肉部474があることで、導電体3が破断された際に樹脂部材4が損傷する可能性を低減することが可能となる。
【0162】
また、複数の第1凹部450がm行n列(mは2以上の自然数)のマトリクス状に配置されていることで、第3厚肉部473のような左右に延びる壁状の部分が形成される。また、列の数「n」が「2」以上の場合、第5厚肉部475のような上下に延びる壁状の部分が形成される。これにより、複数の第1凹部450がランダムに配置されている場合と比較して、樹脂部材4の強度の向上を図ることが可能となる。
【0163】
特に、mが2以上の自然数であることで、上側凹部T1と下側凹部T2との間に第3厚肉部473が形成されることとなる。これにより、樹脂部材4の強度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0164】
また、第3厚肉部473の厚さ(径方向の寸法)を、第1厚肉部471の厚さ及び第2厚肉部472の厚さそれぞれよりも厚くすることで、接続部36が第1保持部34及び第2保持部35から切り離される際に導電体3から最も力を受けやすい樹脂部材4の部分の強度を、向上させることが可能となる。また、この第3厚肉部473は、樹脂部材4においてアークからの圧力を最も受けやすい部分でもあるので、アークに対する耐圧も更に向上させることができる。
【0165】
特に、第3厚肉部473が、正面視において導電体3と重なるように配置されていることで、樹脂部材4の強度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0166】
また、第1所定凹部R1の体積及び第2所定凹部R2の体積のそれぞれを第3所定凹部R3の体積よりも大きくする(言い換えれば、第3所定凹部R3内の空間の体積を、相対的に小さくする)ことで、樹脂部材4において、相対的に点火器2に近く大きな圧力がかかりやすい第3所定凹部R3周りの部分の強度を、向上させることが可能となる。また、第1所定凹部R1の横幅D1及び第2所定凹部R2の横幅D2のそれぞれを第3所定凹部R3の横幅D3よりも大きくする(言い換えれば、第3所定凹部R3の横幅D3を、相対的に小さくする)ことで、樹脂部材4において、相対的に点火器2に近く大きな圧力がかかりやすい第3所定凹部R3周りの部分の強度を、向上させることが可能となる。
【0167】
また、第1規定凹部S1の体積を第2規定凹部S2の体積よりも小さくすることで、樹脂部材4において、相対的に点火器2に近く大きな圧力がかかりやすい第1規定凹部S1周りの部分の強度を、向上させることが可能となる。また、第1規定凹部S1の縦幅を第2規定凹部S2の縦幅よりも小さくすることで、樹脂部材4において、相対的に点火器2に近く大きな圧力がかかりやすい第1規定凹部S1周りの部分の強度を、向上させることが可能となる。
【0168】
また、本実施形態の遮断装置10では、
図4、
図10等に示されるように、第1凹部群45は、筐体1の内側面と向かいあっている。すなわち、樹脂部材4のうちで第1凹部450が形成されていて相対的に強度の小さい部分と向かい合うように、筐体1が配置されている。これにより、筐体1によって樹脂部材4の補強を図ることが可能となり、遮断装置10の機械的な強度の向上を図ることが可能となる。
【0169】
特に、本実施形態の遮断装置10では、
図4に示されるように、m×n個の第1凹部450のうちの少なくとも1つの第1凹部450(本実施形態では、2行目の3個の第1凹部450)は、上部筐体11の第1結合部116と下部筐体12の第2結合部124とが重なっている領域と、向かいあっている。すなわち、樹脂部材4のうちで第1凹部450が形成されていて相対的に強度の小さい部分と向かい合うように、筐体1のうちで相対的に強度が大きな部分(上部筐体11の第1結合部116と下部筐体12の第2結合部124とが重なっている部分)が配置されている。これにより、筐体1によって樹脂部材4の補強を図ることが可能となり、遮断装置10の機械的な強度の向上を図ることが可能となる。
【0170】
また、
図4に示されるように、下部筐体12の上端は、m×n個の第1凹部450のうちの少なくとも1つの第1凹部450(本実施形態では、2行目の3個の第1凹部450)の、内側面と接触している。これにより、筐体1によって樹脂部材4の補強を図ることが可能となり、遮断装置10の機械的な強度の向上を図ることが可能となる。
【0171】
(1.4.4)第2凹部群
上述のように、第2凹部群46は、筒体部41の外側面において後側の領域に設けられている。
【0172】
第2凹部群46は、複数の第2凹部460として、m×n個の第2凹部460を含んでいる。つまり、第2凹部群46は、第1凹部群45に含まれる第1凹部450の個数と同じ個数(m×n個)の第2凹部460を含んでいる。第2凹部群46のm×n個の第2凹部460は、後面視において、m行n列のマトリクス状に配置されている。
【0173】
上述のように、第1凹部群45が筒体部41の外側面において前側の領域に設けられ、第2凹部群46が筒体部41の外側面において後側の領域に設けられているので、導電体3は、第1凹部群45と第2凹部群46との間に位置している。
図10~
図12に示すように、第1凹部群45と第2凹部群46とは、導電体3を挟んで互いに反対側に位置している。本実施形態では特に、第1凹部群45と第2凹部群46とは、上方から見て線対称に設けられている。これにより、樹脂部材4に第1凹部群45のみが形成されている場合と比較して、樹脂部材4に強度の弱い部分ができにくくなる。
【0174】
第2凹部群46に含まれるm×n個の第2凹部460についても、第1凹部450と同様に、第1所定凹部R1~第3所定凹部R3、第1規定凹部S1及び第2規定凹部S2、上側凹部T1及び下側凹部T2が、設定され得る。なお、第2凹部群46は、第1凹部群45と線対称(鏡面対称)に形成されているので、第2凹部群46の配置、形状、及び効果等についての詳細な説明は省略する。
【0175】
本実施形態の遮断装置10では、第1凹部群45に加えて第2凹部群46が樹脂部材4に設けられていることで、樹脂部材4の強度を維持しつつ、樹脂部材4を形成するのに必要な樹脂材料の量の更なる低減を図ることが可能となる。
【0176】
(2)変形例
上記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。上記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。上記の実施形態及び以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下の各変形例の説明において、上記の実施形態の遮断装置10と同様の構成については、適宜説明を省略する場合がある。
【0177】
(2.1)変形例1
本変形例の遮断装置10では、
図13Aに示すように、導電体3の第1保持部34の上面と下面とのうちの少なくとも一方(例えば両方)に設けられている複数の溝38が、第1溝381のみを有している。すなわち、上面視で、複数の溝38(複数の第1溝381)は、導電体3が延伸する方向(左右方向)に直交する方向(前後方向)に延伸している。また、図示は省略するが、本変形例の遮断装置10では、導電体3の第2保持部35の上面と下面とのうちの少なくとも一方(例えば両方)に設けられている複数の溝39が、第1溝391のみを有している。上面視で、複数の溝39(複数の第1溝391)は、導電体3が延伸する方向(左右方向)に直交する方向(前後方向)に延伸している。
【0178】
図13Bに示すように、複数の溝38(複数の第1溝381)の各々の断面は、V字形状である。また、複数の溝39(複数の第1溝391)の各々の断面は、V字形状である。
【0179】
本変形例の遮断装置10でも、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを抑制することが可能となる。
【0180】
(2.2)変形例2
本変形例の遮断装置10では、
図14に示すように、導電体3の第1保持部34の上面と下面とのうちの少なくとも一方(例えば両方)に設けられている複数の溝38が、第2溝382のみを有している。すなわち、上面視で、複数の溝38(複数の第2溝382)は、導電体3が延伸する方向(左右方向)と斜めに交差する方向に延伸している。また、図示は省略するが、本変形例の遮断装置10では、導電体3の第2保持部35の上面と下面とのうちの少なくとも一方(例えば両方)に設けられている複数の溝39が、第2溝392のみを有している。上面視で、複数の溝39(複数の第2溝392)は、導電体3が延伸する方向(左右方向)と斜めに交差している。
【0181】
本変形例でも、複数の溝38(複数の第2溝382)の各々の断面は、V字形状であり、複数の溝39(複数の第2溝392)の各々の断面は、V字形状である。
【0182】
本変形例の遮断装置10でも、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを抑制することが可能となる。
【0183】
なお、導電体3の第1保持部34(又は第2保持部35)に設けられている複数の溝38(又は39)は、上面と下面とで異なる溝が設けられていてもよい。例えば、第1保持体34(又は第2保持体35)の上面には複数の第1溝381(又は391)が設けられ、下面には複数の第2溝382(又は392)が設けられていてもよい。また第1保持部34に設けられている複数の溝38と第2保持部35に設けられている複数の溝39とは、異なっていてもよい。例えば、第1保持体34には第1溝381のみが設けられ、第2保持体35には第2溝392のみが設けられていてもよい。
【0184】
(2.3)変形例3
本変形例の遮断装置10では、
図15に示すように、第1保持部34が、複数の貫通孔340を有している。そして、上記実施形態の貫通孔344は、複数の貫通孔340のうちの一つである。言い換えれば、第1保持部34は、上記実施形態の貫通孔344に加えて、1以上の貫通孔340を更に有している。貫通孔344とは別の貫通孔340も、樹脂部材4に埋設されている。貫通孔344とは別の貫通孔340は、ここでは円形状である。
【0185】
図15に示すように、貫通孔344とは別の貫通孔340は、正面視で(X軸に沿って前方から見て)貫通孔344と部分的に重なる位置に形成されている。
【0186】
本変形例の遮断装置10では、第1保持部34が複数の貫通孔340を有していることで、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを更に防ぎやすくなる。すなわち、複数の貫通孔340は、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを防ぐ、アーク遮蔽構造として機能する。
【0187】
なお、第2保持部35も、第1保持部34の複数の貫通孔340と同様、複数の貫通孔を有していてもよい。
【0188】
(2.4)変形例4
本変形例の遮断装置10でも、
図16に示すように、第1保持部34が、複数の貫通孔340を有している。そして、上記実施形態の貫通孔344は、複数の貫通孔340のうちの一つである。ただし、貫通孔344の長さは、接続部36と第1保持部34との境界線B1の第1端部P11と第2端部P12との間の長さL13(
図9参照)よりも短い。
【0189】
図16に示すように、複数の貫通孔340の各々は、円形状である。また、複数の貫通孔340は、全ての貫通孔340の中心が左右方向において一致しないように(言い換えれば、少なくとも1つの貫通孔340の中心が、他の少なくとも1つの貫通孔340の中心と、左右方向においてずれるように)、配置されている。仮に、全ての貫通孔340の中心が左右方向において一致すると、第1保持部34において貫通孔340が形成されている部分の左右方向と直交する面での断面積が小さくなって、この部分での通電性能が小さくなる可能性があるためである。ただし、これに限らず、複数の貫通孔340は、全ての貫通孔340の中心が左右方向において一致するように配置されていてもよい。
【0190】
(2.5)変形例5
本変形例の遮断装置10では、
図17に示すように、第1保持部34が凸部348を有している。凸部348は、樹脂部材4に埋設されている。
【0191】
図17に示すように、第1保持部34は、凸部348を2個有している。各凸部348は、上面視で三角形状である。各凸部348は、第1保持部34の接続部分343の側面(右側面)から、右方へ突出する。
【0192】
第1保持部34が凸部348を有していることで、窪み部345と同様に、筐体1の外部へ出ようとする導電性のガスの移動距離が長くなる。これにより、ガスが筐体1の外部へ漏れにくくなり、また、ガスの冷却が促される。すなわち、凸部348は、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを防ぐ、アーク遮蔽構造として機能する。
【0193】
なお、第2保持部35も、第1保持部34の凸部348と同様の凸部を有していてもよい。
【0194】
(2.6)変形例6
本変形例の遮断装置10では、
図18に示すように、第1保持部34が凸部349を有している。凸部349は、樹脂部材4に埋設されている。
【0195】
図18に示すように、第1保持部34は、凸部349を2個有している。各凸部349は、第1保持部34の接続部分343の側面(前側面又は後側面)において、窪み部345の代わりに設けられている。
【0196】
第1保持部34が凸部349を有していることで、窪み部345と同様に、筐体1の外部へ出ようとする導電性のガスの移動距離が長くなる。すなわち、凸部349は、アークによる導電性のガスが筐体1の外部へ漏れるのを防ぐ、アーク遮蔽構造として機能する。
【0197】
なお、第2保持部35も、第1保持部34の凸部349と同様の凸部を有していてもよい。
【0198】
また、第1保持部34(又は第2保持部35)は、一方の側面(例えば前側面)に凸部349を有し、他方の側面(例えば後側面)に窪み部345(又は355)を有していてもよい。
【0199】
また、第1保持部34(又は第2保持部35)は、変形例5で説明した凸部348と変形例6で説明した凸部349との両方を有していてもよい。
【0200】
また、第1保持部34と第2保持部35とは、凸部348,349に関して対称な形状を有していなくてもよい。
【0201】
(2.7)変形例7
本変形例の遮断装置10では、
図19に示すように、プッシャ5は、下底面の外周縁に、面取り部54を有している。面取り部54は、プッシャ5の外側面から下底面にかけて、R状に湾曲している。面取り部45は、ここでは、支持突部53に形成されている。
【0202】
本変形例の遮断装置10では、面取り部45があることで、プッシャ5の破損の可能性が低減される。
【0203】
(2.8)変形例8
本変形例の遮断装置10では、
図20A、
図20Bに示すように、プッシャ5は、下底面の中央に、下方へ突出する突出部55を有している。突出部55は、下面視円形状であって、その中央に、凹所521による円形状の孔が形成されている。突出部55は、6個の凹所522とは重ならない位置(6個の凹所522で囲まれる領域の内側)に形成されている。突出部55の下面は、例えば、支持突部53の下面と面一である(上下方向において同じ位置にある)。
【0204】
本変形例の遮断装置10では、突出部55があることで、プッシャ5が下方へ移動する際に、プッシャ5のうちで突出部55が最初に導電体3と接触する。これにより、プッシャ5の破損の可能性が低減される。
【0205】
(2.9)その他の変形例
上記実施形態及び各変形例では、導電体3は、単一の部材で形成されているが、これに限られず、例えば複数の部材で形成されていてもよい。接続部36は、第1端子部31と第2端子部32との間を電気的につなぐものであればよい。例えば、接続部36は、第1保持部34とつながる第1固定片と、第2保持部35とつながる第2固定片と、第1固定片と第2固定片との間を左右方向につなぐ可動片と、を有していて、ばね等の弾性部材等によって可動片が第1固定片及び第2固定片に押しつけられる構造であってもよい。
【0206】
一変形例において、第1保持部34は、窪み部345、第1凹所346、第2凹所347、及び複数の溝38のうちの少なくとも一つを有していなくてもよい。第2保持部35も同様である。
【0207】
一変形例において、導電体3は、第1保持部34の長さが接続部36と第1保持部34との境界線B1の第1端部P11と第2端部P12との間の長さL13より長くなくてもよい。導電体3は、第1保持部34が貫通孔344を有していれば、例えば前後方向の寸法が一定の平板状であってもよい。
【0208】
一変形例において、貫通孔344の長さL11は、接続部36と第1保持部34との境界線B1の第1端部P11と第2端部P12との間の長さL13未満であってもよい。例えば長さL11が長さL13未満であっても、ガスの一部の移動を妨げたり迂回させたりするアーク遮蔽構造としての機能は発揮される。貫通孔354の長さL21についても同様である。
【0209】
一変形例において、第1保持部34と第2保持部35とは、対称な形状を有していなくてもよい。
【0210】
一変形例において、溝38(又は39)の断面はV字形状でなくてもよく、例えばU字形状、半円弧状等であってもよい。
【0211】
(3)態様
以上説明した実施形態及び変形例から明らかなように、本明細書には以下の態様が開示されている。
【0212】
第1の態様の遮断装置(10)は、樹脂部材(4)と、点火器(2)と、導電体(3)と、を備える。樹脂部材(4)は、内部空間(400)を有する。点火器(2)は、内部空間(400)にガスを充填させる。導電体(3)は、板状であって、点火器(2)の下方に位置する。導電体(3)は、樹脂部材(4)に埋設される第1保持部(34)と、樹脂部材(4)に埋設される第2保持部(35)と、第1保持部(34)と第2保持部(35)との間をつなぐ接続部(36)と、を有する。第1保持部(34)は、貫通孔(344)を有する。
【0213】
この態様によれば、貫通孔(344)内を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。
【0214】
第2の態様の遮断装置(10)では、第1の態様において、第1保持部(34)は、上面と下面とのうちの少なくとも一方に設けられている複数の溝(38)を有する。複数の溝(38)は、樹脂部材(4)に埋設されている。
【0215】
この態様によれば、複数の溝(38)の内部を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。また、導電体(3)への樹脂部材(4)の食いつきがよくなり、導電体(3)に対する樹脂部材(4)の密着性を向上させることができる。
【0216】
第3の態様の遮断装置(10)では、第2の態様において、上面視で、複数の溝(第1溝381)は、導電体(3)が延伸する方向(左右方向)に直交する方向(前後方向)に延伸している。
【0217】
この態様によれば、複数の溝(第1溝381)の内部を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。また、導電体(3)への樹脂部材(4)の食いつきがよくなり、導電体(3)に対する樹脂部材(4)の密着性を向上させることができる。
【0218】
第4の態様の遮断装置(10)では、第2の態様において、上面視で、複数の溝(第2溝382)は、導電体(3)が延伸する方向(左右方向)と斜めに交差する方向に延伸している。
【0219】
この態様によれば、複数の溝(第2溝382)の内部を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。また、導電体(3)への樹脂部材(4)の食いつきがよくなり、導電体(3)に対する樹脂部材(4)の密着性を向上させることができる。
【0220】
第5の態様の遮断装置(10)では、第2の態様において、上面視で、複数の溝(38)は、導電体(3)が延伸する方向(左右方向)に直交する方向(前後方向)に延伸している第1溝(381)と、導電体(3)が延伸する方向(左右方向)と斜めに交差する方向に延伸している第2溝(382)と、を含む。
【0221】
この態様によれば、第1溝(381)及び第2溝(382)の内部を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。また、導電体(3)への樹脂部材(4)の食いつきがよくなり、導電体(3)に対する樹脂部材(4)の密着性を向上させることができる。
【0222】
第6の態様の遮断装置(10)では、第2~第5のいずれか一つの態様において、複数の溝(38)の各々の断面は、V字形状である。
【0223】
この態様によれば、複数の溝(38)の内部を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。また、導電体(3)への樹脂部材(4)の食いつきがよくなり、導電体(3)に対する樹脂部材(4)の密着性を向上させることができる。
【0224】
第7の態様の遮断装置(10)では、第1~第6のいずれか一つの態様において、第1保持部(34)は、側面に形成されている窪み部(345)を有する。窪み部(345)は、樹脂部材(4)に埋設されている。
【0225】
この態様によれば、窪み部(345)の内部を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。
【0226】
第8の態様の遮断装置(10)では、第1~第7のいずれか一つの態様において、第1保持部(34)は、凸部(348,349)を有する。凸部(348,349)は、樹脂部材(4)に埋設されている。
【0227】
この態様によれば、凸部(348,349)によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。
【0228】
第9の態様の遮断装置(10)では、第1~第8のいずれか一つの態様において、第1保持部(34)は、貫通孔(344)とつながっている第1凹所(346)を更に有する。第1凹所(346)は、樹脂部材(4)に埋設されている。
【0229】
この態様によれば、第1凹所(346)の内部を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。また、貫通孔(344)内の樹脂部材(4)の部分の強度を向上させることができる。
【0230】
第10の態様の遮断装置(10)では、第9の態様において、第1保持部(34)は、第2凹所(347)を更に有する。第1凹所(346)及び貫通孔(344)は、第2凹所(347)と接続部(36)との間に位置する。第2凹所(347)は、樹脂部材(4)に埋設されている。
【0231】
この態様によれば、第2凹所(347)の内部を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。
【0232】
第11の態様の遮断装置(10)では、第1~第10のいずれか一つの態様において、上面視で、導電体(3)が延伸する方向(左右方向)に直交する方向(前後方向)において、第1保持部(34)の長さは、接続部(36)と第1保持部(34)との境界線(B1)の第1端部(P1)と第2端部(P2)との間の長さ(L13)よりも長く、貫通孔(344)の長さ(L11)は、接続部(36)と第1保持部(34)との境界線(B1)の第1端部(P1)と第2端部(P2)との間の長さ(L13)と同じかそれよりも長い。
【0233】
この態様によれば、アークによる導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ出るためには、樹脂部材(4)のうちの貫通孔(344)内にある部分を迂回する必要が生じるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ更に漏れ難くなる。
【0234】
第12の態様の遮断装置(10)では、第1~第11のいずれか一つの態様において、第1保持部(34)は、複数の貫通孔(340)を有する。貫通孔(344)は、複数の貫通孔(340)のうちの一つである。
【0235】
この態様によれば、貫通孔(340)内を埋めている樹脂部材(4)の部分によって、アークによる導電性のガスの移動が妨げられ、またガスの移動経路が長くなるので、導電性のガスが遮断装置(10)の外部へ漏れ難くなる。
【符号の説明】
【0236】
10 遮断装置
2 点火器
3 導電体
34 第1保持部
340 貫通孔
344 貫通孔
345 窪み部
346 第1凹所
347 第2凹所
348 凸部
349 凸部
35 第2保持部
36 接続部
38 溝
381 第1溝
382 第2溝
4 樹脂部材
400 内部空間
B1 境界線
L11 長さ
L13 長さ
P11 第1端部
P12 第2端部