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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159459
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】フッ素含有化合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 12/34 20060101AFI20241031BHJP
   C07C 43/29 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08F12/34
C07C43/29 A
C07C43/29 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221747
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023073743
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000174851
【氏名又は名称】三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東田 恵伍
(72)【発明者】
【氏名】江頭 厳
(72)【発明者】
【氏名】一之瀬 和弥
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB46
4J100AB15P
4J100BA02P
4J100BB07P
4J100BC04P
4J100BC22P
4J100BC43P
4J100BC44P
4J100BC49P
4J100CA23
4J100CA27
4J100DA19
4J100DA39
4J100DA40
4J100EA03
4J100FA19
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】優れた電気特性を有すると共に、優れた熱硬化性を有し、硬化物のガラス転移温度が高く、難燃性にも優れた、次世代高周波に要求される優れた電気特性を有する基板を作製可能なフッ素含有化合物を提供する。
【解決手段】主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及び オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、を含み、前記構成単位A乃至Cが、前記構成単位Cを末端として結合して成ることを特徴とするフッ素含有化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、
主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及び
オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、
を含み、
前記構成単位A乃至Cが、前記構成単位Cを末端として結合して成ることを特徴とするフッ素含有化合物。
【請求項2】
前記構成単位Aに含まれる前記環状構造がベンゼン環又はシクロペンテニルである請求項1記載のフッ素含有化合物。
【請求項3】
前記構成単位が、C-B-(A-B)-C 又は C-A-(B-A)-C
(但し、n=1~4)の順で結合する請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【請求項4】
前記nが1である請求項3記載のフッ素含有化合物。
【請求項5】
前記構成単位Aが、側鎖も含めて1~3個の環構造を有する請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【請求項6】
前記構成単位Aが、下記式(A-1)~(A-5)の何れかである請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【化1】
【請求項7】
前記構成単位Bが、側鎖も含めて1~4個の環構造を有する請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【請求項8】
前記構成単位Bが、ビスフェノール類である請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【請求項9】
前記構成単位Cが、フッ素を含む請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【請求項10】
前記構成単位Cが、ベンゼン環を含む請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【請求項11】
前記構成単位Cが、パーフルオロスチレンである請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【請求項12】
硬化物のゲル分率が50%以上である請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【請求項13】
硬化物のガラス転移温度が200℃以上である請求項1又は2記載のフッ素含有化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有化合物に関するものであり、より詳細には、次世代高周波基板にも好適に使用可能な優れた電気特性を有すると共に、優れた難燃性、硬化性及び溶剤可溶性を有するフッ素含有化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末等の情報通信機器等においては、近年では高速且つ大容量伝送が可能な次世代高周波に向けた開発が進んでおり、これに対応するため、使用される基板材料にも伝送損失を低減できる低誘電率、低誘電正接であることが求められている。
従来、高速通信・伝送用の樹脂材料として、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の材料が用いられていた(特許文献1)。しかしながら、エポキシ樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂では、近年の高速且つ大容量伝送には対応することが困難である。また基板材料には、難燃性も求められているが、ポリフェニレンエーテル樹脂は難燃性に劣ることから、難燃剤を配合する必要がある。
【0003】
熱硬化性樹脂に添加される難燃剤としては、従来ハロゲン系難燃剤が用いられてきたが、安全性、廃棄・焼却時の環境への影響の観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が求められている。
近年、リン系や無機系難燃剤の添加が試みられているが、難燃剤の添加によって耐熱性の低下、電気特性の悪化が生じてしまうことがある。例えば、リン系難燃剤は、硬化に寄与せず可塑剤として働くため、硬化不足による耐熱性の悪化を起こす。また、無機系難燃剤は、樹脂組成物の吸水率を高くし電気特性の悪化を引き起こすことが知られている。
【0004】
一方、優れた電気特性を有する材料として、フッ素樹脂が知られている。特に、分子鎖中の水素が全てフッ素に置換されたペルフルオロ樹脂は、特に優れた電気特性(低い誘電率および低い誘電損失)を示すことが知られている。しかしながら、フッ素樹脂(ペルフルオロ樹脂)は、応力による変形が発生しやすいこと、および熱膨張係数が大きいことなどの問題点を有し、基板材料として用いることが難しい。
【0005】
電子部品における誘電体材料として、フッ素化ポリ(アリーレンエーテル)および架橋性フッ素化ポリ(アリーレンエーテル)を用いることが提案されている(特許文献2、3)。しかしながら、それら材料の電気特性は、現在の高速通信・伝送の要求を満足できるものではない。また高いゲル分率を有する硬化物を得るために400℃以上の高温で加熱する必要があり、大量生産および製造コスト低減の観点から、架橋処理温度を低下させることが求められている。
このような課題を解決するものとして、本発明者等は、下記特許文献4に示すフッ素樹脂を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-128718号公報
【特許文献2】米国特許第5115082号明細書
【特許文献3】米国特許第5179188号明細書
【特許文献4】特開2022-89150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載されたフッ素樹脂は、高速通信・伝送のための基板材料として、優れた電気特性(低い誘電率および低い誘電損失)、優れた寸法安定性、薄膜成形を容易にするための高い溶剤可溶性、および200℃程度の加熱による製膜を可能とする優れた架橋性を有し、耐熱性にも優れた樹脂材料である。
しかしながら、5GHzを超える次世代高周波に対応し得る基板を作製するために、基板材料には、さらに優れた電気特性、広い温度範囲での使用を可能にする熱硬化後の低い熱膨張係数、及び、高温環境下での使用やはんだ付けを可能にする高いガラス転移温度、或いは基板作製に用いられるプリプレグを確実に成形できること等も必要である。
【0008】
従って本発明の目的は、優れた電気特性を有することはもちろん、優れた熱硬化性を有し、硬化物のガラス転移温度が高く、難燃性にも優れた、次世代高周波に要求される優れた電気特性を有する基板を作製可能なフッ素含有化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及びオレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、を含み、前記構成単位A乃至Cが、前記構成単位Cを末端として結合して成ることを特徴とするフッ素含有化合物が提供される。
【0010】
本発明のフッ素含有化合物においては、
[1]前記構成単位Aに含まれる前記環状構造がベンゼン環又はシクロペンテニルであ
ること、
[2]前記構成単位A乃至Cが、C-B-(A-B)-C・・・(i)又は
C-A-(B-A)-C ・・・(ii)(但し、n=1~4)の順で結合するこ
と、
[3]前記nが1であること、
[4]前記構成単位Aが、側鎖も含めて1~3個の環構造を有すること、
[5]前記構成単位Aが、下記式(A-1)~(A-5)の何れかであること、
[6]前記構成単位Bが、側鎖も含めて1~4個の環構造を有すること、
[7]前記構成単位Bが、ビスフェノール類であること、
[8]前記構成単位Cが、フッ素を含むこと、
[9]前記構成単位Cが、ベンゼン環を含むこと、
[10]前記構成単位Cが、パーフルオロスチレンであること、
[11]硬化物のゲル分率が50%以上であること、
[12]硬化物のガラス転移温度が200℃以上であること、
が好適である。
【0011】
【化1】
【発明の効果】
【0012】
本発明のフッ素含有化合物においては、上記構成単位A乃至Cを有することにより、優れた電気特性はもちろん、難燃性、溶剤可溶性、熱硬化性(架橋性)の全てにおいて優れている。
本発明のフッ素含有化合物が有するこのような効果は、後述する実施例の結果からも明らかである。すなわち、実施例1~11に示す本発明のフッ素含有化合物は、28GHzという高周波においても優れた電気特性を有すると共に、200℃・120分の硬化条件で硬化させた硬化物のゲル分率が50%以上であり、さらにこの硬化物は難燃性をも有している。
これに対して、従来より基板材料として汎用されているポリフェニレンエーテルでは、28GHzという高周波には対応できないだけでなく、難燃性にも劣っている(比較例4)。またフッ素原子含有率が50%未満である構成単位Aを用いた以外は実施例1と同様の構成を有するフッ素含有化合物においては、難燃性の点で十分満足するものではなく、フッ素原子含有率が30%以上である構成単位Bを有する場合には、溶剤可溶性が悪化するという結果が得られている(比較例1、比較例3)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(フッ素含有化合物)
本発明のフッ素含有化合物は、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位Aと、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及びオレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位Cから成ることにより、上記構成単位A乃至Cが有するそれぞれの機能をフッ素含有化合物が備えることが可能となる。すなわち上記構成単位Aが有する優れた電気特性(低い誘電率および低い誘電損失)及び難燃性、上記構成単位Bが有する優れた溶剤可溶性や高いガラス転移温度を備えると共に、上記構成単位Cが化合物の末端に位置することにより、構成単位Cが有する優れた反応性により架橋剤を用いない場合でも高いゲル分率の硬化物を成形可能な優れた熱硬化性を備えることが可能となる。
【0014】
また本発明のフッ素含有化合物においては、前記構成単位A乃至Cが、
C-B-(A-B)-C・・・(i)又はC-A-(B-A)-C・・・(ii)
の順で結合しており、nの値は1~4の範囲であり、特に上記nの値が1である低分子量化合物であることが好適である。これにより化合物に占める架橋点の割合が多くなり、ゲル分率(架橋密度)の高い硬化物を架橋剤を用いることなく得ることが可能となる。
本発明のフッ素含有化合物において、nは平均重合度を表す。平均重合度は、モノマーの化学量論比から予想できるほか、核磁気共鳴スペクトルなど従来公知の方法で測定することができる。本発明において「nが1である」とは、その化合物の平均重合度が0.5~1.4であることを意味する。本発明において、nを整数で表すことがあるが、同様に分布があるものを含む。
【0015】
[構成単位A]
本発明のフッ素含有化合物を構成する構成単位Aは、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する。構成単位Aの環状構造における水素原子の50%以上、好適には100%がフッ素原子に置換されていることによって、フッ素が有する優れた電気特性及び難燃性をフッ素含有化合物に付与することが可能となる。
構成単位Aにおいて、3~12員環の環状構造は、主骨格中に3つ以上有することも可能であるが、好適には主骨格中に1又は2個であり、側鎖も含めて1~3個の環構造とすることが好適である。環状構造を構成する元素としては特に限定されず、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
【0016】
構成単位Aとして具体的には、それぞれ置換基を有していても良いシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、シクロノナジエン、シクロデカジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエン、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、インダン、アセナフチレン、フルオレン、スピロフルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ヘキサセン、ペンタセン、ルビセン、コロネン、オバレン、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、イソインドリン、インドリン、インダゾリン、プリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ガルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イソベンゾオキサゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、トリアジン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ベンゾカルバゾール、ジベンゾカルバゾール、チアジアゾール、イミダゾピリジン等が挙げられる。
構成単位Aにおいて、3~12員環の環状構造を複数含むとき、それらは同一の構造でもよく、異なった構造でも良い。
【0017】
置換基としては、下記の任意の置換基を例示できる。
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、C1~C60のアルキル基、C2~C60のアルケニル基、C2~C60のアルキニル基、およびC1~C60のアルコキシ基;
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、およびイミダゾピリミジニル基、からなる群より選択された少なくとも一つで置換された、C1~C60のアルキル基、C2~C60のアルケニル基、C2~C60のアルキニル基およびC1~C60のアルコキシ基;
【0018】
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基およびイミダゾピリミジニル基;
【0019】
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、C1~C60のアルキル基、C2~C60のアルケニル基、C2~C60のアルキニル基、C1~C60のアルコキシ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、およびイミダゾピリミジニル基からなる群より選択された少なくとも一つで置換された、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基およびイミダゾピリミジニル基;等
置換基は複数有していても良く、そのとき、当該置換基は同一でも良く、それぞれ異なっていても良い。
【0020】
構成単位Aは、ベンゼン環又はシクロペンテニルを含むことが好ましい。より好ましくは、置換基を有していても良いベンゼン;置換基を有していても良いシクロペンテニル;置換基を有していても良いビフェニルやターフェニル等のベンゼン環と他の芳香環が結合した化合物;置換基を有していても良いナフタレン等のベンゼン環と他の芳香環が縮合した化合物が挙げられる。特に好ましくは、以下の構造式(A-1’)~(A-5’)で表される化合物である。
【0021】
【化2】
(式中、mはそれぞれ独立に0~6の整数を表す。)
【0022】
上記構造式において、Rとしてはそれぞれ独立に、前述した置換基が挙げられる。
前述のように、構成単位Aとしては、主骨格の環状構造における水素原子の100%がフッ素原子に置換されている構造がより好適である。すなわち、最も好適な構造として、前述した構造式(A-1)~(A-5)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
構成単位Aを形成可能な化合物として、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロビフェニル、パーフルオロナフタレン、4,4-ジフルオロベンゾフェノン,1,1’-(1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6ードデカフルオロ-1,6-ヘキサンジイル)ビス4-フルオロベンゼン等のベンゼン環を有するモノマー由来の構成単位、又はオクタフルオロシクロペンテン等のシクロペンテニルを有するモノマー由来の構成単位を例示できる。中でも、上記式(A-1)~(A-5)で表したように、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロビフェニル、パーフルオロナフタレン、オクタフルオロシクロペンテン由来であることが好適である。
【0024】
[構成単位B]
本発明のフッ素含有化合物を構成する構成単位Bは、 主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する。構成単位Bにおいてはフッ素原子を有していないことが好適であり、フッ素原子を有する場合でも構成単位B中の原子数の30%以下であることが重要である。これにより、フッ素含有化合物における優れた溶剤可溶性が得られると共にフッ素含有化合物が確実に合成される。
構成単位Bにおいては、ベンゼン環は、主骨格中に4つ以上有することも可能であるが、好適には主骨格中に2又は3個であり、側鎖も含めて1~4個の環構造とすることが好適である。
【0025】
構成単位Bは、置換基を有していても良いベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、インデン、ナフタレン、インダン、アセナフチレン、フルオレン、スピロフルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ヘキサセン、ペンタセン、ルビセン、コロネン、オバレン、イソインドリン、インドリン、インダゾリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ガルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イソベンゾオキサゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ベンゾカルバゾール、ジベンゾカルバゾール等が挙げられる。
ここで置換基としては、前記構成単位Aにて例示した置換基が挙げられる。
【0026】
このような構成単位Bとしては、下記式(B)で示されるビスフェノール類由来の構成単位であることが好適である。
【0027】
【化3】
【0028】
式中、Lは、下記式(b-1)又は(b-2)の構造であり、
【0029】
【化4】
【0030】
上記式(b-1)及び(b-2)におけるR及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、C~C10のアルキル基、C~C10のハロアルキル基、C~C10のアリール基からなる群から選択される基であるか、またはRおよびRが一緒になって置換基を有してもよい環構造を形成する基である。
~C10のアルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基(イソブチル基)、ブチル基、ペンチル基などを含む。C~C10のハロアルキル基の例は、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基などを含む。C~C10のアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基(1-異性体および2-異性体を含む)を含む。
【0031】
あるいはまた、RおよびRが一緒になって、置換基を有してもよい環構造を形成する基であってもよい。環構造を形成する基の例は、テトラメチレン基(シクロペンタン環を形成する)、ペンタメチレン基(シクロヘキサン環を形成する)、ウンデカメチレン基(シクロドデカン環を形成する)、2-メチル-ペンタメチレン基(メチルシクロヘキサン環を形成する)、2,2,4-トリメチル-ペンタメチレン基(トリメチルシクロヘキサン環を形成する)、ビフェニル-2,2’-ジイル基(フルオレン環を形成する)などを含む。
【0032】
上記式(B)において、R及びRは、それぞれ独立的に、水素原子、フッ素原子、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC~C10の飽和または不飽和炭化水素基、または、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC~C10のアリール基であってもよい。一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC~C10の飽和または不飽和炭化水素基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基(イソブチル基)、ブチル基、ペンチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ビニル基、アリル基、1-メチルビニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基などを含む。一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC~C10のアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基(1-異性体および2-異性体を含む)、ペルフルオロフェニル基などを含む。
【0033】
好適な構成単位Bとしては、ビスフェノールAF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールZ(1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)、ビスフェノールA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールC(2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、4-ヒドロキシフェニルブタン、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ジフェノール、ビスフェノールP(1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン)、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,7-ジヒドロキシナフタレン等を由来とする構成単位を例示でき、中でもビスフェノールAF、ビスフェノールZ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンを由来とする構成単位が好適である。
【0034】
[構成単位C]
本発明のフッ素含有化合物を構成する構成単位Cは、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物に由来する構造を有し、これにより架橋剤を用いない場合でも高いゲル分率の硬化物を成形可能な優れた熱硬化性(架橋性)を付与することが可能となる。また構成単位Cは少なくとも1個のフッ素原子を含んでいることが好適であり、具体的には、構成単位中の原子数の50%以下のフッ素原子を含んでいることが好適である。これにより構成単位Aのフッ素原子と相俟って優れた電気特性や難燃性を付与することができる。
更に構成単位Cはベンゼン環を有することが好適である。
好適な構成単位Cは、以下の(C-1)~(C-10)の構造を含む。
【0035】
【化5】
【0036】
式中、pは、0~4の整数であり、いくつかの態様において、pは4である。別の態様において、pは0である。Rは、C~C10のアルキル基、およびC~C10のアリール基からなる群から選択される基を表す。R’は、水素原子またはC~C10のアルキル基を表す。
【0037】
構成単位Cは、特に好ましくは以下の(C-11)~(C-16)の構造を有する。
【0038】
【化6】
【0039】
[その他]
本発明のフッ素含有化合物は、上記構成単位A乃至Cにより得られる上述した種々の機能を損なわない範囲において、構成単位A乃至C以外の他の構成単位を少量含むことを除外するものではない。
例えば、電気特性を向上するものとして、ベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂肪族ジオール化合物又はベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂環式ジオール化合物由来の構成単位を、フッ素含有化合物を構成する全構成単位の20モル%以下の量で含有させることができる。
【0040】
このようなベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂肪族ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどが挙げられる。
【0041】
またベンゼン環およびフッ素原子を含まない脂環式ジオール化合物としては、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールなどのシクロヘキサンジオール類、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサンジメタノール類、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールなどのノルボルナンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,3-アダマンタンジオール、2,2-アダマンタンジオール、デカリンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、イソソルビド、3,9-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジエチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジプロピルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。
【0042】
[好適態様]
本発明において好適なフッ素含有化合物は、これに限定されるものではないが、下記の構造を有する化合物を例示できる。(式中、nは1~4の値であり、「(*)」は結合位置を示す)。
【0043】
【化7】
【0044】
【化8】
【0045】
【化9】
【0046】
本発明において、フッ素含有化合物は溶剤に可溶であることが好ましい。フッ素含有化合物が「溶剤に可溶」であるとは、所与の溶剤から得られる溶液100gあたり、1g以上、好ましくは10g以上のフッ素含有化合物が溶解していることを意味する。本実施形態のフッ素含有化合物は、後述する炭化水素類に可溶であることが好ましい。また、本実施形態のフッ素含有化合物は、コストの観点からトルエンに可溶であることが特に好ましい。
本発明のフッ素含有化合物においては、前述した各構成単位A乃至Cで規定したフッ素原子含有率を満足する限りこれに限定されるものではないが、フッ素含有化合物の全質量に対して20~40質量%のフッ素含有量であることが望ましい。これにより優れた電気特性と共に、優れた溶剤可溶性及び難燃性を有している。
本発明のフッ素含有化合物は、数平均分子量が500~4000、特に1000~2000の範囲にあることが好適である。数平均分子量が上記範囲にあることにより、溶剤可溶性が向上すると共に、架橋性が向上し、後述する硬化物のゲル分率を高めることが可能となる。
【0047】
(フッ素含有化合物の合成)
本発明のフッ素含有化合物は、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている化合物Aと、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である主骨格にベンゼン環を含む化合物Bと、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物Cとを同時に配合した後、加熱混合、或いは上記化合物Aと上記化合物Bとを先に配合し、これらの縮合反応が生じていないタイミングで反応性化合物Cを配合した後、加熱混合することにより製造することができる。
【0048】
具体的には、前記式(i)で示した構造のフッ素含有化合物を合成する場合は、化合物A:化合物Bを当量比で1:1.2~1:3.0、特に1:1.3~1:2.0の割合で配合し、反応性化合物Cを化合物Aに対して1:0.2~1:2.5、特に1:0.3~1:2.0の割合で配合する。
また前記式(ii)で示した構造のフッ素含有化合物を合成する場合は、化合物B:化合物Aを当量比で1:1.2~1:3.0、特に1:1.3~1:2.0の割合で配合し、反応性化合物Cを化合物Bに対して1:0.2~1:2.5、特に1:0.3~1:2.0の割合で配合する。
【0049】
化合物A乃至Cの反応には、脱HF剤として塩基性物質を配合することが好ましい。
このような塩基性物質としては、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物を例示でき、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムを好適に使用することができる。
塩基性物質は、化合物B1モルあたり塩基として2規定以上、好ましくは4~6規定の塩基性物質を用いることが好ましい。
【0050】
化合物A乃至Cは、これらと上記塩基性物質を全て同時に反応溶媒に添加して混合することもできるが、化合物A及びBが固体(パーフルオロビフェニル等及びビスフェノール類)で、化合物Cが液体(パーフルオロスチレン等)である場合には、化合物A及び化合物Bと塩基性物質とを、真空引きした後、窒素充填した反応容器内に添加し、反応溶媒を加えた後、化合物Cを添加することが好ましい。すなわち、化合物Cとして好適に用いられるパーフルオロスチレンは揮発性が高いことから、このような化合物を用いる場合には、反応器内を真空脱気して窒素置換した後で添加することが好ましい。
【0051】
上記反応溶媒としては、非プロトン性極性溶媒中、または非プロトン性極性溶媒を含む混合溶媒中で実施することが好ましい。好ましい非プロトン性極性溶剤の例は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどを含む。混合溶媒は、フッ素含有化合物の溶解性を低下させることがなく、かつ反応に影響を及ぼさない限りにおいて、低極性溶媒を含んでもよい。
用いることができる低極性溶媒の例は、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ベンゾトリフルオリド((トリフルオロメチル)ベンゼン)、キシレンヘキサフルオリド(1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)などを含む。低極性溶媒の添加により溶剤混合物の極性(誘電率)を変化させて、反応の速度を制御することができる。
【0052】
化合物A乃至Cの加熱混合は、用いる化合物の種類によって異なり一概に規定できないが、前記式(i)又は(ii)におけるnの値が1~4の範囲となるように反応を制御することが必要であり、10~200℃の反応温度および1~80時間の反応時間、好ましくは20~180℃の反応温度および2~60時間の反応時間、より好ましくは50~160℃の反応温度および3~40時間の反応時間の条件の範囲内で、用いる化合物の種類に応じて適宜選択して実施することが好ましい。
反応終了後、冷却して、得られた反応混合物を分離して洗浄乾燥することによりフッ素含有化合物が得られる。
【0053】
本発明のフッ素含有化合物の合成は、上記の方法で行うことが前記式(i)又は(ii)におけるnの値(すなわち重合度)を効果的に制御できる点、および反応工程数を抑えられる点において好ましいが、例えば前述した特許文献4(特開2022-89150号公報)に記載されている公知の方法を採用することを妨げるものではない。
【0054】
(フッ素含有組成物)
本発明のフッ素含有化合物は、それ自体優れた架橋性を有することから、架橋剤を含有しない場合においても優れた硬化性を発現可能であるが、フッ素含有化合物と共に架橋剤を使用することにより、更に優れた硬化性を得ることができ、フッ素含有化合物と共に架橋剤を用いて成るフッ素含有組成物から成る硬化物に充分な硬度を付与することが可能となる。
【0055】
フッ素含有組成物に用いられる架橋剤は、分子中に2個以上のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有する化合物を含む。このような架橋剤の例は、分子中に2個以上のメタクリル基を有する多官能メタクリレート化合物、分子中に2個以上のアクリル基を有する多官能アクリレート化合物、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)などのトリアルケニルイソシアヌレート化合物、ジビニルベンゼンなどを含む。多官能性アクリレート/メタクリレート化合物の例は、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどのジシクロペンタジエン型アクリレート化合物、およびトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートなどのジシクロペンタジエン型メタクリレート化合物を含む。
【0056】
フッ素含有組成物は架橋剤を含んでもよい。またフッ素含有組成物において、フッ素含有化合物:架橋剤の質量比は、好ましくは9.5:0.5~5:5、より好ましくは7.5:2.5~5.5:4.5の範囲内である。この範囲内の質量比を用いることにより、フッ素含有組成物の硬化物に十分な硬度を与えることができる。
【0057】
フッ素含有組成物は、溶剤、反応開始剤、および/または充填材をさらに含んでもよい。また、本実施形態のフッ素含有組成物は、消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤(染料または顔料)、難燃剤、滑剤、分散剤などの、当該技術において知られている任意の添加剤をさらに含んでもよい。
【0058】
フッ素含有組成物は、溶剤を含むワニス状の組成物であってもよく、種々の溶剤を用いることができる。溶剤可溶性の観点から、本発明においては非プロトン性溶剤を用いることが好ましい。このような非プロトン性溶剤としては:ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)などのケトン類;シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノンなどの環式ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキソランなどの環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-シクロヘキシルピロリドンなどのアミド類;スルホラン、ジメチルスルホンなどのスルホン類;およびジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホキシド類を含む。本発明において好ましい溶剤は炭化水素類であり、特に好ましくは芳香族炭化水素類である。
【0059】
前述した通り、本発明のフッ素含有化合物はそれ自体優れた硬化性を有するため、反応開始剤が存在しなくても加熱による架橋・硬化は可能であるが、反応開始剤が存在する場合、より緩和な条件でより効率的な架橋・硬化が可能となるので、反応開始剤を用いることが好適である。用いることができる反応開始剤は、たとえば、過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ジクミル、クミルヒドロペルオキシド、α,α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製パーブチル(登録商標)P)、ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)ペルオキシド(日油株式会社製パークミル(登録商標)D)、t-ブチルα,α-ジメチルベンジルペルオキシド(日油株式会社製パーブチル(登録商標)C)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどを含む。
【0060】
フッ素含有組成物は、1種または複数種の充填材をさらに含んでもよい。充填材は、有機充填材であってもよいし、無機充填材であってもよい。用いることができる有機充填材は:ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのエンジニアリングプラスチック;およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)などの溶剤不溶性フッ素樹脂を含む。用いることができる無機充填材は:金属;
酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物;金属水酸化物;チタン酸金属塩;ホウ酸亜鉛;スズ酸亜鉛;ベーマイト;シリカ;ガラス;酸化ケイ素;炭化ケイ素;窒化ホウ素;フッ化カルシウム;カーボンブラック;マイカ;タルク;硫酸バリウム;二硫化モリブデンなどを含む。溶剤不溶性フッ素樹脂は、フッ素含有組成物の硬化物の電気特性(誘電率、誘電損失など)の改善の点から好ましい。また、シリカは、フッ素含有組成物の硬化物の電気特性(誘電率、誘電損失など)を損なうことなしに、熱膨張係数を減少させることができる点で好ましい。
【0061】
フッ素含有組成物は、本発明のフッ素含有化合物と、架橋剤と、任意選択的成分とを混合させることによって形成することができる。混合時に加熱を行ってもよい。また、混合は、各種の攪拌機、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミルなどの、当該技術において知られている任意の混合装置を用いて実施することができる。
【0062】
(フッ素含有化合物の硬化物)
前述した通り、本発明のフッ素含有化合物はそれ自体硬化性に優れており、架橋剤を含有しない場合でも、200℃・120分の条件で硬化させた硬化物が、ゲル分率(架橋密度)が50%以上と、非常に優れた熱硬化性を有している。
ゲル分率(架橋密度)は、80%以上であることがより好ましく、90%以上が更に好ましく、100%であることが最も好ましい。ゲル分率(架橋密度)が大きいことで、未反応の架橋部位が存在することによる耐久性の低下の抑制や、架橋密度増加による熱膨張係数の低下といった効果が考えられる。ゲル分率の測定方法は後述する。
またこの硬化物のガラス転移温度は200℃以上と高いことから、通常使用環境下での熱膨張係数が低減され、電子基板として用いた際の耐久性が改善する。加えて、高温での熱膨張係数が小さいことで、高温環境下での使用や、はんだ付けが容易になるなどの利点がある。
更に、ガラス転移温度を超えた温度環境での熱膨張係数が200ppm/℃より小さいことが好ましく、180ppm/℃より小さいことがより好ましく、150ppm/℃より小さいことが更に好ましい。ガラス転移温度及び熱膨張係数の測定方法は後述する。
本発明のフッ素含有化合物の硬化物は、優れた電気特性、熱硬化性、及び難燃性を有することから、プリプレグ、銅張積層板、印刷回路に好適に使用することができる。
【0063】
[プリプレグ]
本発明のフッ素含有化合物、或いはこのフッ素含有化合物に架橋剤等を配合して成る前述したフッ素含有組成物は、このフッ素含有化合物又は組成物の半硬化物と繊維質基材とを含むプリプレグに好適に使用することができる。
プリプレグに用いることができる繊維質基材は、ガラス織布、アラミド織布、ポリエステル織布、炭素繊維織布、ガラス不織布、アラミド不織布、ポリエステル不織布、炭素繊維不織布、パルプ紙、リンター紙などを含む。好ましい繊維質基材は、優れた機械強度を実現することができるガラス織布である。繊維質基材は、0.01mm~0.3mmの厚さを有することが望ましい。
特に、本発明のフッ素含有化合物は難燃性に優れるため、従来プリプレグに添加される難燃剤の添加量を少なくするか、無くすことができる。結果として、難燃剤を配合することによる電気特性への影響を減らす、または無くすことが可能になる。
【0064】
プリプレグは、繊維質基材に対して、フッ素含有化合物又はフッ素含有組成物を含浸させ、乾燥させることにより形成することができる。ここで、含浸させるフッ素含有化合物又は組成物は、溶剤を含むワニス状態であることが望ましい。溶剤は、フッ素含有組成物に使用可能な溶剤として前述したものを使用することができる。乾燥処理の結果、ワニス中の溶剤が少なくとも部分的に除去され、フッ素含有化合物又は組成物が半硬化状態(いわゆる「Bステージ」)となる。含浸工程は、浸漬または塗布などの当該技術において知られている任意の方法により実施することができる。フッ素含有化合物又は組成物の含浸を複数回にわたって実施することによって、プリプレグ中のフッ素含有化合物の含有量を調整することができる。乾燥工程の条件(温度および時間)は、フッ素含有化合物の種類、ならびに任意選択的な架橋剤、反応開始剤および/または溶剤の種類に依存する。たとえば、1~60分間にわたって80℃~170℃の温度に加熱することにより、乾燥工程を実施することができる。
【0065】
[銅張積層板]
本発明のフッ素含有化合物から成るプリプレグの硬化物は、銅張積層板に好適に使用することができる。
銅張積層板は、1つまたは複数のプリプレグを積層し、その一方または両方の表面に銅箔を積層し、得られた積層物を加熱加圧処理して一体化することにより形成することができる。銅張積層板中のフッ素含有化合物又は組成物は、硬化が完了した状態(いわゆる「Cステージ」)にあることが望ましい。加熱加圧処理の条件は、製造する銅張積層板の厚さ、プリプレグ中のフッ素含有化合物又は組成物の組成などに基づいて、適宜設定することができる。たとえば、60~150分間にわたって、170℃~220℃の温度に加熱し、1.0MPa~10MPaの圧力を印加することにより、銅張積層板を製造することができる。
【0066】
[印刷回路板]
本発明のフッ素含有化合物の硬化物から成るプリプレグの硬化物は、印刷回路板に好適に使用することができる。
印刷回路板は、上述した銅張積層板の銅層をエッチング加工して、導体パターンを形成することによって製造することができる。あるいは、1つまたは複数のプリプレグを積層および加熱加圧処理して積層体を形成し、積層体の表面に導電性材料をパターン状に積層して導体パターンを形成する方法によって、印刷回路板を製造することができる。
【実施例0067】
【化10】
【0068】
(実施例1)(上記式(1)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
ガラス製反応容器に、0.805g(3.0ミリモル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルおよび0.912g(6.6ミリモル)の炭酸カリウムを装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAcおよび0.582g(3.0ミリモル)の2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを添加した。反応混合物を遮光し、攪拌しながら80℃に加熱し、15時間にわたって攪拌した。加熱終了後、反応混合物を室温に冷却した。続いて、反応混合物を、0.5Lの純水に注加した。反応混合物を吸引濾過し、得られた固形物を純水およびメタノールで洗浄した。洗浄後の固形物を減圧乾燥して、1.54gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(1)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトル(オックスフォード・インストゥルメンツ社製核磁気共鳴装置、X-Plus)より算出した平均重合度は1.0であった。
【0069】
(実施例2)(上記式(1)のフッ素含有化合物(n=2)の合成)
ビスフェノールZを0.805g(3.0ミリモル)に対しデカフルオロビフェニルを0.668g(2.0ミリモル)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを0.388g(2.0ミリモル)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.50gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(1)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルにより平均重合度を求めると1.9であった。
【0070】
(実施例3)(上記式(1)のフッ素含有化合物(n=3)の合成)
ビスフェノールZ 0.805g(3.0ミリモル)に対しデカフルオロビフェニルを0.752g(2.3ミリモル)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを0.291g(1.5ミリモル)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.61gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(1)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は2.8であった。
【0071】
(実施例4)(上記式(1)フッ素含有化合物(n=4)の合成)
ビスフェノールZ 0.805g(3.0ミリモル)に対しデカフルオロビフェニルを0.802g(2.4ミリモル)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを0.233g(1.2ミリモル)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.58gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(1)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は3.5であった。
【0072】
【化11】
【0073】
(実施例5)(上記式(2)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
ビスフェノールZ 0.805g(3.0ミリモル)に代えて1.009g(3.0ミリモル)の2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルに代えて0.408g(1.5ミリモル)のオクタフルオロナフタレンとしたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.61gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(2)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は19%となる。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は1.0であった。
【0074】
【化12】
【0075】
(実施例6)(上記式(3)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルに代えて0.279g(1.5ミリモル)のヘキサフルオロベンゼンとしたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.31gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(3)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は1.0であった。
【0076】
【化13】
【0077】
(実施例7)(上記式(4)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
ガラス製反応容器に、0.805g(3.0ミリモル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)を装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAcおよび0.759g(7.5ミリモル)のトリエチルアミンを添加した。反応混合物を攪拌しながら0℃に冷却した。冷却後、ガラス製反応容器内に0.318g(1.5ミリモル)のオクタフルオロシクロペンテンを添加した。0℃に冷却し2時間にわたって攪拌し、次いで冷却を止め室温下にて24時間にわたって攪拌した。さらに攪拌しながら80℃に加熱し、24時間にわたって攪拌した。加熱終了後、反応混合物を室温に冷却した。続いて、反応混合物を、0.5Lの純水に注加した。反応混合物を吸引濾過し、得られた固形物を純水およびメタノールで洗浄した。洗浄後の固形物を減圧乾燥して、1.52gの中間生成物を得た。
ガラス製反応容器に、得られた中間生成物、および0.912g(6.6ミリモル)の炭酸カリウムを装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAcおよび0.854g(4.4ミリモル)の2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを添加した。反応混合物を遮光し、攪拌しながら80℃に加熱し、15時間にわたって攪拌した。加熱終了後、反応混合物を室温に冷却した。続いて、反応混合物を、0.5Lの純水に注加した。反応混合物を吸引濾過し、得られた固形物を純水およびメタノールで洗浄した。洗浄後の固形物を減圧乾燥して、1.72gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(4)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は1.0であった。
【0078】
【化14】
【0079】
(実施例8)(上記式(5)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルに代えて0.408g(1.5ミリモル)のオクタフルオロナフタレンとしたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.49gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(5)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は1.0であった。
【0080】
【化15】
【0081】
(実施例9)(上記式(11)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.805gの1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)に代えて0.889g(3.0ミリモル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンを用いたことを除いて実施例1の手順を繰り返し、1.68gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(11)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は1.0であった。
【0082】
【化16】
【0083】
(実施例10)(上記式(12)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.805gの1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)に代えて0.481g(3.0ミリモル)の1,7-ジヒドロキシナフタレンを用いたことを除いて実施例1の手順を繰り返し、1.33gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(12)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は1.0であった。
【0084】
【化17】
【0085】
(実施例11)(上記式(13)のフッ素含有化合物(n=4)の合成)
ガラス製反応容器に、1.073g(4.0ミリモル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、および1.216g(8.8ミリモル)の炭酸カリウムを装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAc、0.558g(3.0ミリモル)のヘキサフルオロベンゼンおよび0.305g(2.0ミリモル)のクロロメチルスチレン(m-,p-混合物)を添加した。反応混合物を遮光し、攪拌しながら80℃に加熱し、15時間にわたって攪拌した。加熱終了後、反応混合物を室温に冷却した。続いて、反応混合物を、0.5Lの純水に注加した。反応混合物を吸引濾過し、得られた固形物を純水およびメタノールで洗浄した。洗浄後の固形物を減圧乾燥して、1.60gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(13)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は0%となる。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は4.0であった。
【0086】
【化18】
【0087】
(比較例1)(上記式(14)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.805gの1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)に代えて0.990g(3・0ミリモル)のオクタフルオロ-4,4’-ビフェノールを用いたことを除いて実施例1の手順を繰り返し、1.05gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(14)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は36%となる。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は1.0であった。
【0088】
(比較例2)
0.805gの1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)に代えて0.990g(3.0ミリモル)のオクタフルオロ-4,4’-ビフェノール、0.501gのデカフルオロビフェニルに代えて0.279g(1.5ミリモル)のヘキサフルオロベンゼンとしたことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。
しかしながら、合成反応が進行せず、未反応の原料が回収された。
なお、もし反応が進行していた場合、得られるフッ素含有化合物における、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は36%と想定される。
【0089】
【化19】
【0090】
(比較例3)(上記式(15)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
ガラス製反応容器に、0.636g(3.0ミリモル)の2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ペンタンジオール、0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルを装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAcおよび0.582g(3.0ミリモル)の2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを添加した。反応混合物を攪拌しながら0℃に冷却し、0.300g(7.5ミリモル)の水素化ナトリウム(油性、約60%)を添加し、1時間にわたって攪拌した。続いて、反応混合物を室温まで戻し、15時間にわたって撹拌した。反応混合物に0.05Lの純水を添加し、反応を停止した後、酢酸エチルによって抽出を行った。抽出した有機層をろ過し、減圧濃縮して0.928gのフッ素含有化合物を得た。
得られたフッ素含有化合物は上記式(15)の構造式のものであり、構成単位Aの環状構造における水素原子のフッ素原子置換割合は100%であり、構成単位Bにおけるフッ素原子の割合は35%となる。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は1.0であった。
【0091】
(比較例4)ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂
本発明のフッ素含有化合物の性能を示す対照として、高周波伝送用基板材料として一般的に用いられているポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂(SABIC社製NORYL SA9000)についても各種の測定を行った。
【0092】
(評価1:溶剤可溶性および熱硬化性の評価(ゲル分率))
実施例1~11で得られたフッ素含有化合物およびPPE樹脂をそれぞれ0.5g秤量し、トルエンを加えて80℃に加熱して混合し、50質量%トルエン溶液が得られた場合は、可溶と判断した。
得られた溶液を全てアルミカップに取り、恒温オーブン(エスペック株式会社製SPHH-102)を用いて200℃で2時間加熱乾燥し、熱硬化物を得た。この熱硬化物をアルミカップから取り、その重量を測定した。9mLのサンプル管に5gのメチルエチルケトン(MEK)と硬化物を入れ、24時間MEK中で硬化物を浸漬した。その後、溶剤を揮発させ、MEKで洗浄後、熱硬化物を乾燥させた。乾燥後の質量を測定し、MEK浸漬後の乾燥硬化物の質量を算出した。
ゲル分率は、MEK浸漬後の乾燥硬化物の質量/MEK浸漬前の硬化物の質量×100(%)として算出した。得られた結果を表1に示す。
【0093】
(評価2:電気特性)
[ワニス状組成物の作製]
実施例1~11で得られたフッ素含有化合物およびPPE樹脂について、上記と同様にトルエンに溶解させ、50質量%の溶液を得た。さらに反応開始剤としてパーブチル(登録商標)P(日油株式会社製)をフッ素含有化合物またはPPE樹脂に対して2質量%になるように加え、ワニス状組成物とした。
[プリプレグの作製]
上記の方法で得た各ワニス状組成物を、7cm×7cmのガラスクロス片(旭化成株式会社製L2-1078)に滴下し、均一に含浸させた。その後、該含浸物を110℃で10分間乾燥し、プリプレグを得た。
[銅張積層板の作製]
上記方法で得たプリプレグを、5cm×5cmにカットし、電解銅箔(厚み18μm)(古河電気工業社製、HVLP)とともに真空ホットプレス機(株式会社井元製作所製 手動油圧真空加熱プレス IMC-4900)を用いて、減圧しながら200℃まで昇温し、さらに200℃で120分間・4MPaでプレスすることで、プリプレグと銅箔を接着させた。
銅張積層板の銅箔をピンセットで剥がし、4cm×4cmにカットして得られた試験片について、ベクトルネットワークアナライザ(KEYSIGHT 5247B)を用いて、スプリットシリンダ法、28GHz、25℃条件下にて、誘電率及び誘電正接を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1の結果より、本発明のフッ素含有化合物は、溶剤可溶性に優れるとともに、高い熱硬化性(ゲル分率)を有し、更に高周波伝送用基板材料として現在一般的に用いられているPPE樹脂に比べても、28GHzという非常に大きな周波数領域での誘電正接が大きく低減していることがわかる。なお、比較例1及び比較例3で得られたフッ素含有化合物は、溶剤に不溶であり、その余の評価は実施できなかった。
【0096】
(評価3:ガラス転移温度)
上記電気特性評価で作製した実施例1,5,8,9及び比較例4の銅張積層板について、ガラスクロスの網目に対して、斜め45度になるように切断し、縦幅25mm×横幅25mmの試験片を作製した。
この試験片について、動的粘弾性測定装置(DMA ARES-G2、TA Instruments社製)にて、周波数1.0Hz、歪量0.1%に設定し、以下の温度プロファイルを実行した。
(1)25℃で60秒にわたって保持し、5℃/分の速度で、25℃から360℃まで加熱する。
(2)60秒にわたって、360℃の温度を維持し、測定を終了する。
算出されたグラフの温度に対する損失係数(tanδ)のピーク位置の温度をガラス転移温度(Tg)とした。結果を表2に示す。
【0097】
(評価4:熱膨張係数(CTE))
評価3と同様に作製した試験片を用い、動的粘弾性測定装置(DMA ARES-G2、TA Instruments社製)を用いて、熱膨張係数の測定を行った。240℃~290℃の熱膨張係数を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2の結果より、本発明のフッ素含有化合物は、高いガラス転移温度を有し、さらに240℃~290℃というガラス転移温度以上の高温領域においても膨張しにくいという特異的な特徴を有している。
【0100】
(評価5:難燃性)
実施例5、実施例9及びPPE樹脂について、評価2と同様に試験片を作製した。
2cm×2cmに切断した試験片について、IEC60695-11-5に準拠して、ニードルフレーム試験を行った。
【0101】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のフッ素含有化合物は、優れた電気特性(低誘電率及び低誘電正接)を有すると共に、難燃性、溶剤可溶性、熱硬化性(架橋性)の全てにおいて優れていることから、電気機器、電子機器、通信機器に用いられる基板材料として好適に使用することができ、特に高速且つ大容量伝送が可能な次世代高周波用の基板材料として好適に使用できる。