(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159460
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】フッ素含有化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 12/34 20060101AFI20241031BHJP
C07C 41/01 20060101ALI20241031BHJP
C07C 43/29 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08F12/34
C07C41/01
C07C43/29 A
C07C43/29 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221748
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023073744
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000174851
【氏名又は名称】三井・ケマーズ フロロプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江頭 厳
(72)【発明者】
【氏名】東田 恵伍
(72)【発明者】
【氏名】一之瀬 和弥
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC43
4H006BA02
4H006BA32
4H006BB20
4H006BC10
4H006GN01
4H006GP06
4J100AB15P
4J100BA02P
4J100BB07P
4J100BC04P
4J100BC43P
4J100BC44P
4J100BC49P
4J100CA23
4J100CA27
4J100DA19
4J100DA39
4J100DA40
4J100DA55
4J100EA03
4J100FA19
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】優れた電気特性を有すると共に、優れた熱硬化性を有し、硬化物の熱膨張係数が顕著に低く、寸法安定性に優れた、次世代高周波に要求される優れた電気特性を有する基板を作製可能なフッ素含有化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素含有化合物の製造方法において、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている化合物Aに対して、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下の化合物Bを、A:B(当量比)が1:1.2~1:3.0の割合で配合し、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物Cを前記化合物Aに対して1:0.2~1:2.5の割合で配合した後、10~200℃の温度で1~80時間混合することにより、下記式C-B-(A-B)n-C(但し、nは1~4)の構造を有するフッ素含有化合物を合成することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている化合物Aに対して、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下の化合物Bを、A:B(当量比)が1:1.2~1:3.0の割合で配合し、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物Cを前記化合物Aに対して1:0.2~1:2.5の割合で配合した後、10~200℃の温度で1~80時間混合することにより、下記式
C-B-(A-B)n-C (但し、nは1~4)
の構造を有するフッ素含有化合物を合成することを特徴とするフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項2】
主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている化合物Aに対して、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下の化合物Bを、B:A(当量比)が1:1.2~1:3.0の割合で配合し、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物Cを前記化合物Bに対して1:0.2~1:2.5の割合で配合した後、10~200℃の温度で1~80時間混合することにより、下記式
C-A-(B-A)n-C (但し、nは1~4)
の構造を有するフッ素含有化合物を合成することを特徴とするフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項3】
前記化合物Aに含まれる前記環状構造がベンゼン環である請求項1又は2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項4】
前記化合物Aに対する化合物Bの配合割合が、A:B(当量比)が1:1.8~1:2.2であり、前記反応性化合物Cを前記化合物Bと同当量で配合し、下記式
C-B-A-B-C
の構造を有するフッ素含有化合物を合成する請求項1記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項5】
前記化合物Aに対する化合物Bの配合割合が、B:A(当量比)が1:1.8~1:2.2であり、前記反応性化合物Cを前記化合物Aと同当量で配合し、下記式
C-A-B-A-C
の構造を有するフッ素含有化合物を合成する請求項2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項6】
前記化合物Aが、側鎖も含めて1~3個の環構造を有する請求項1又は2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項7】
前記化合物Aが、下記式(A-1)~(A-4)の何れかの構造を有する請求項1又は2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【化1】
【請求項8】
前記化合物Bが、側鎖も含めて1~4個の環構造を有する請求項1又は2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項9】
前記化合物Bが、ビスフェノール類である請求項1又は2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項10】
前記化合物Cが、フッ素を含む請求項1又は2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項11】
前記化合物Cが、ベンゼン環を含む請求項1又は2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項12】
前記化合物Cが、パーフルオロスチレンである請求項1又は2記載のフッ素含有化合物の製造方法。
【請求項13】
主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、
主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及び
オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、
を含み、
前記構成単位A乃至Cが、C-B-A-B-C又はC-A-B-A-Cの順で結合して成るフッ素含有化合物であって、
硬化物の240~290℃の温度範囲における熱膨張係数の値が200ppm/℃以下であることを特徴とするフッ素含有化合物。
【請求項14】
前記構成単位Aに含まれる前記環状構造がベンゼン環である請求項13記載のフッ素含有化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有化合物の製造方法に関するものであり、より詳細には、次世代高周波基板にも好適に使用可能な電気特性を有すると共に、熱膨張係数が小さく寸法安定性に優れたフッ素含有化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末等の情報通信機器等においては、近年では高速且つ大容量伝送が可能な次世代高周波に向けた開発が進んでおり、これに対応するため、使用される基板材料にも伝送損失を低減できる低誘電率、低誘電正接であることが求められている。
従来、高速通信・伝送用の樹脂材料として、エポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等の材料が用いられていた(特許文献1)。しかしながら、エポキシ樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂では、近年の高速且つ大容量伝送には対応することが困難である。また基板材料には、難燃性も求められているが、ポリフェニレンエーテル樹脂は難燃性に劣ることから、難燃剤を配合する必要がある。
【0003】
熱硬化性樹脂に添加される難燃剤としては、従来ハロゲン系難燃剤が用いられてきたが、安全性、廃棄・焼却時の環境への影響の観点から、ハロゲンを含まない難燃剤が求められている。
近年、リン系や無機系難燃剤の添加が試みられているが、難燃剤の添加によって耐熱性の低下、電気特性の悪化が生じてしまうことがある。例えば、リン系難燃剤は、硬化に寄与せず可塑剤として働くため、硬化不足による耐熱性の悪化を起こす。また、無機系難燃剤は、樹脂組成物の吸水率を高くし電気特性の悪化を引き起こすことが知られている。
【0004】
一方、優れた電気特性を有する材料として、フッ素樹脂が知られている。特に、分子鎖中の水素が全てフッ素に置換されたペルフルオロ樹脂は、特に優れた電気特性(低い誘電率および低い誘電損失)を示すことが知られている。しかしながら、フッ素樹脂(ペルフルオロ樹脂)は、応力による変形が発生しやすいこと、および熱膨張係数が大きいことなどの問題点を有し、基板材料として用いることが難しい。
【0005】
電子部品における誘電体材料として、フッ素化ポリ(アリーレンエーテル)および架橋性フッ素化ポリ(アリーレンエーテル)を用いることが提案されている(特許文献2、3)。しかしながら、それら材料の電気特性は、現在の高速通信・伝送の要求を満足できるものではない。また高いゲル分率を有する硬化物を得るために、400℃以上の高温で加熱する必要があり、大量生産および製造コスト低減の観点から、架橋処理温度を低下させることが求められている。
このような課題を解決するものとして、本発明者等は、下記特許文献4に示すフッ素樹脂を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-128718号公報
【特許文献2】米国特許第5115082号明細書
【特許文献3】米国特許第5179188号明細書
【特許文献4】特開2022-89150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載されたフッ素樹脂は、高速通信・伝送のための基板材料として、優れた電気特性(低い誘電率および低い誘電損失)、薄膜成形を容易にするための高い溶剤可溶性、および200℃程度の加熱による製膜を可能とする優れた架橋性を有し、耐熱性にも優れた樹脂材料である。
しかしながら、5GHzを超える次世代高周波に対応し得る基板を作製するために、基板材料には、優れた電気特性、広い温度範囲での使用を可能にする熱硬化後の低い熱膨張係数、及び、高温環境下での使用やはんだ付けを可能にする高いガラス転移温度或いは基板作製に用いられるプリプレグを確実に成形できること等も必要である。
【0008】
従って本発明の目的は、次世代高周波基板にも好適に使用可能な電気特性を有すると共に、優れた熱硬化性を有し、熱膨張係数が著しく低減されたフッ素含有化合物の製造方法及び熱膨張係数が著しく低減されたフッ素含有化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている化合物Aに対して、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下の化合物Bを、A:B(当量比)が1:1.2~1:3.0の割合で配合し、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物Cを前記化合物Aに対して1:0.2~1:2.5の割合で配合した後、10~200℃の温度で1~80時間混合することにより、下記式(i)
C-B-(A-B)n-C (但し、nは1~4) ・・・(i)
の構造を有するフッ素含有化合物を合成することを特徴とするフッ素含有化合物の製造方法が提供される。
【0010】
本発明によればまた、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている化合物Aに対して、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下の化合物Bを、B:A(当量比)が1:1.2~1:3.0の割合で配合し、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物Cを前記化合物Bに対して1:0.2~1:2.5の割合で配合した後、10~200℃の温度で1~80時間混合することにより、下記式(ii)
C-A-(B-A)n-C (但し、nは1~4) ・・・(ii)
の構造を有するフッ素含有化合物を合成することを特徴とするフッ素含有化合物の製造方法が提供される。
【0011】
本発明のフッ素含有化合物の製造方法においては、
[1]前記化合物Aに含まれる前記環状構造がベンゼン環であること、
[2]前記化合物Aに対する化合物Bの配合割合が、A:B(当量比)が
1:1.8~1:2.2であり、前記反応性化合物Cを前記化合物Bと同当量で配合
し、C-B-A-B-Cの構造を有するフッ素含有化合物を合成すること、
[3]前記化合物Aに対する化合物Bの配合割合が、B:A(当量比)が
1:1.8~1:2.2であり、前記反応性化合物Cを前記化合物Aと同当量で配合
し、C-A-B-A-Cの構造を有するフッ素含有化合物を合成すること、
[4]前記化合物Aが、側鎖も含めて1~3個の環構造を有すること、
[5]前記化合物Aが、下記式(A-1)~(A-4)の何れかの構造を有すること、
[6]前記化合物Bが、側鎖も含めて1~4個の環構造を有すること、
[7]前記化合物Bが、ビスフェノール類であること、
[8]前記化合物Cが、フッ素を含むこと、
[9]前記化合物Cが、ベンゼン環を含むこと、
[10]前記化合物Cが、パーフルオロスチレンであること、
が好適である。
【0012】
【0013】
本発明によれば更に、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及びオレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、を含み、前記構成単位A乃至Cが、C-B-A-B-C又はC-A-B-A-Cの順で結合して成るフッ素含有化合物であって、硬化物の240~290℃の温度範囲における熱膨張係数の値が200ppm/℃以下であることを特徴とするフッ素含有化合物が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフッ素含有化合物の製造方法においては、上記化合物A乃至Cを所定の量比で用い、反応性化合物Cを、化合物Aと化合物Bの配合と同時に添加、或いは化合物Aと化合物Bを先に配合した場合でもこれらの縮合反応を生じる前に添加することにより、C-B-(A-B)n-C又はC-A-(B-A)nーC(nは1~4)の構造を有するフッ素含有化合物を合成することが可能となる。
本発明の製造方法により得られたフッ素含有化合物は、上記化合物A乃至Cが有する優れた機能を有しており、電気特性、溶剤可溶性、熱硬化性(架橋性)に優れている。またnの値が1であるフッ素含有化合物では熱膨張係数が顕著に低減されており、特に優れた寸法安定性を有している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(フッ素含有化合物の製造方法)
本発明のフッ素含有化合物の製造方法においては、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている化合物Aに対して、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下の化合物Bを、
(i)A:B(当量比)が1:1.2~1:3.0の割合で配合し、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物Cを前記化合物Aに対して1:0.2~1:2.5の割合で配合すること、又は
(ii)B:A(当量比)が1:1.2~1:3.0の割合で配合し、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物Cを前記化合物Bに対して1:0.2~1:2.5の割合で配合すること、
が第一の重要な特徴であり、化合物A乃至Cを全て添加した後、10~200℃の温度で1~80時間混合することが第二の重要な特徴であり、これにより、上記(i)の配合割合の場合には、下記式(i)
C-B-(A-B)n-C (但し、nは1~4) ・・・(i)
の構造を有するフッ素含有化合物が合成でき、上記(ii)の配合割合の場合には、下記式(ii)
C-A-(B-A)n-C (但し、nは1~4) ・・・(ii)
の構造を有するフッ素含有化合物を合成できる。
【0016】
すなわち本発明のフッ素含有化合物の製造方法によれば、上記化合物Aに由来する優れた電気特性(低い誘電率および低い誘電損失)及び難燃性、上記化合物Bに由来する優れた溶剤可溶性や高いガラス転移温度を備えると共に、上記化合物C由来の優れた反応性を有する構成単位Cをフッ素含有化合物の末端に位置することにより、架橋剤を用いない場合でも高いゲル分率の硬化物を成形可能な優れた熱硬化性を備えることが可能となる。
本発明の製造方法によれば、化合物A乃至C由来の構成単位A乃至Cが、上記式(i)又は(ii)で示す順で結合すると共に、nの値が1~4、特に1である低分子量化合物として製造することができる。これにより得られるフッ素含有化合物に占める架橋点の割合が多くなり、ゲル分率(架橋密度)の高い硬化物を架橋剤を用いることなく得ることができるフッ素含有化合物として製造することが可能となる。
【0017】
なお、上記式(i)及び(ii)並びに後述する構造式において、「n」は平均重合度を表す。平均重合度は、モノマーの化学量論比から予想できるほか、核磁気共鳴スペクトル等従来公知の方法で測定することができる。本明細書において、「nが1である」とは、その化合物の平均重合度が0.5~1.4であることを意味する。本発明において、nを整数で表すことがあるが、同様に分布があるものを含む。
【0018】
[化合物A]
本発明の製造方法に用いられる化合物Aは、主骨格に3~12員環の環状構造を含み、該環状構造における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する。化合物Aの水素原子の50%以上、好適には100%がフッ素原子に置換されていることによって、フッ素が有する優れた電気特性及び難燃性をフッ素含有化合物に付与することが可能となる。
化合物Aにおいて、3~12員環の環状構造は、主骨格中に3つ以上有することも可能であるが、好適には主骨格中に1又は2個であり、側鎖も含めて1~3個の環構造とすることが好適である。環状構造を構成する元素としては特に限定されず、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子等が挙げられる。
【0019】
化合物Aとして具体的には、それぞれ置換基を有していても良いシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、シクロノナジエン、シクロデカジエン、シクロヘプタトリエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエン、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、インダン、アセナフチレン、フルオレン、スピロフルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ヘキサセン、ペンタセン、ルビセン、コロネン、オバレン、ピロール、チオフェン、フラン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、イソインドリン、インドリン、インダゾリン、プリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ガルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イソベンゾオキサゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、トリアジン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ベンゾカルバゾール、ジベンゾカルバゾール、チアジアゾール、イミダゾピリジン等が挙げられる。
化合物Aにおいて、3~12員環の環状構造を複数含むとき、それらは同一の構造でもよく、異なった構造でも良い。
【0020】
置換基としては、下記の任意の置換基を例示できる。
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、C1~C60のアルキル基、C2~C60のアルケニル基、C2~C60のアルキニル基、およびC1~C60のアルコキシ基;
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、およびイミダゾピリミジニル基、からなる群より選択された少なくとも一つで置換された、C1~C60のアルキル基、C2~C60のアルケニル基、C2~C60のアルキニル基およびC1~C60のアルコキシ基;
【0021】
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基およびイミダゾピリミジニル基;
【0022】
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、C1~C60のアルキル基、C2~C60のアルケニル基、C2~C60のアルキニル基、C1~C60のアルコキシ基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基、およびイミダゾピリミジニル基からなる群より選択された少なくとも一つで置換された、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、インダニル基、アセナフチル基、フルオレニル基、スピロ-フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ヘキサセニル基、ペンタセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、オバレニル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ベンゾキノリニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、イソベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソベンゾオキサゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアジニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾピリジニル基およびイミダゾピリミジニル基;等
置換基は複数有していても良く、そのとき、当該置換基は同一でも良く、それぞれ異なっていても良い。
【0023】
化合物Aは、ベンゼン環を含むことが好ましい。より好ましくは、置換基を有していても良いベンゼン;置換基を有していても良いビフェニルやターフェニル等のベンゼン環と他の芳香環が結合した化合物;置換基を有していても良いナフタレン等のベンゼン環と他の芳香環が縮合した化合物が挙げられる。特に好ましくは、以下の構造式(A-1’)~(A-4’)で表される構造を有する化合物である。
【0024】
【化2】
(式中、mはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。)
【0025】
上記構造式において、Rとしてはそれぞれ独立に、前述した置換基が挙げられる。
前述のように、構成単位Aとしては、主骨格の環状構造における水素原子の100%がフッ素原子に置換されている構造がより好適である。すなわち、最も好適な構造として、前述した構造式(A-1)~(A-4)で表される構造を有する化合物が挙げられる。
【0026】
化合物Aとしては、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロビフェニル、パーフルオロナフタレン、4,4-ジフルオロベンゾフェノン,1,1’-(1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロ-1,6-ヘキサンジイル)ビス4-フルオロベンゼン等を例示できる。中でも、ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロビフェニル、パーフルオロナフタレンが好適である。
【0027】
[化合物B]
本発明の製造方法に用いられる化合物Bは、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が原子数の30%以下である構造を有する。化合物Bにおいてはフッ素原子を有していないことが好適であり、フッ素原子を有する場合でも化合物B中の原子数の30%以下であることが重要である。これにより、得られるフッ素含有化合物が優れた溶剤可溶性を有すると共に、フッ素含有化合物が確実に合成される。
化合物Bにおいては、ベンゼン環は、主骨格中に3つ以上有することも可能であるが、好適には主骨格中に2又は3個であり、側鎖も含めて1~4個の環構造とすることが好適である。
【0028】
化合物Bは、置換基を有していても良いベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、インデン、ナフタレン、インダン、アセナフチレン、フルオレン、スピロフルオレン、ベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ヘキサセン、ペンタセン、ルビセン、コロネン、オバレン、イソインドリン、インドリン、インダゾリン、キノリン、イソキノリン、ベンゾキノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ガルバゾール、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、イソベンゾオキサゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ベンゾカルバゾール、ジベンゾカルバゾール等が挙げられる。
ここで置換基としては、前記化合物Aにて例示した置換基が挙げられる。
【0029】
このような化合物Bとしては、下記式(B)で示されるビスフェノール類であることが好適である。
【0030】
【0031】
式中、Lは、下記式(b-1)又は(b-2)の構造であり、
【0032】
【0033】
上記式(b-1)及び(b-2)におけるR1及びR2は、それぞれ独立的に、水素原子、C1~C10のアルキル基、C1~C10のハロアルキル基、C6~C10のアリール基からなる群から選択される基であるか、またはR1およびR2が一緒になって置換基を有してもよい環構造を形成する基である。
C1~C10のアルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基(イソブチル基)、ブチル基、ペンチル基などを含む。C1~C10のハロアルキル基の例は、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基などを含む。C6~C10のアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基(1-異性体および2-異性体を含む)を含む。
【0034】
あるいはまた、R1およびR2が一緒になって、置換基を有してもよい環構造を形成する基であってもよい。環構造を形成する基の例は、テトラメチレン基(シクロペンタン環を形成する)、ペンタメチレン基(シクロヘキサン環を形成する)、ウンデカメチレン基(シクロドデカン環を形成する)、2-メチル-ペンタメチレン基(メチルシクロヘキサン環を形成する)、2,2,4-トリメチル-ペンタメチレン基(トリメチルシクロヘキサン環を形成する)、ビフェニル-2,2’-ジイル基(フルオレン環を形成する)などを含む。
【0035】
上記式(B)において、R3及びR4は、それぞれ独立的に、水素原子、フッ素原子、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC1~C10の飽和または不飽和炭化水素基、または、一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC6~C10のアリール基であってもよい。一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC1~C10の飽和または不飽和炭化水素基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基(イソブチル基)、ブチル基、ペンチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ビニル基、アリル基、1-メチルビニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基などを含む。一部または全ての水素がハロゲンに置換されていてもよいC6~C10のアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基(1-異性体および2-異性体を含む)、ペルフルオロフェニル基などを含む。
【0036】
本発明の製造方法に好適に使用し得る化合物Bとしては、ビスフェノールAF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、ビスフェノールZ(1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)、ビスフェノールA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールC(2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、4-ヒドロキシフェニルブタン、4,4’-(1,3-ジメチルブチリデン)ジフェノール、ビスフェノールP(1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン)、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,7-ジヒドロキシナフタレン等を例示でき、中でもビスフェノールAF、ビスフェノールZ、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンが特に好適である。
【0037】
[化合物C]
本発明の製造方法に用いられる化合物Cは、オレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する反応性化合物であり、この反応性化合物が末端に位置することにより架橋剤を用いない場合でも高いゲル分率の硬化物を成形可能な優れた熱硬化性(架橋性)をフッ素含有化合物に付与することができる。また化合物Cは脱離基が脱離して構成単位Cを構成する。この脱離基としては、F,Cl,Br及びIからなる群から選択され、少なくとも1個のフッ素原子を含んでいることが好適であり、具体的には、化合物中の原子数の50%以下のフッ素原子を含んでいることが好適である。これにより化合物A由来のフッ素原子と相俟って優れた電気特性や難燃性を付与することができる。
更に化合物Cはベンゼン環を有することが好適である。
好適な化合物Cは、以下の(C-1)~(C-10)の構造を含む。
【0038】
【0039】
式中、pは、0~4の整数であり、いくつかの態様において、pは4である。別の態様において、pは0である。Rは、C1~C10のアルキル基、およびC6~C10のアリール基からなる群から選択される基を表す。R’は、水素原子またはC1~C10のアルキル基を表す。
【0040】
化合物Cは、特に好ましくは以下の(C-11)~(C-16)の構造を有する。
【0041】
【0042】
[その他]
本発明のフッ素含有化合物は、上記構成単位A乃至Cが有する上述した種々の機能を損なわない範囲において、構成単位A乃至C以外の他の構成単位を少量含むことを除外するものではない。
例えば、電気特性を向上するものとして、ベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂肪族ジオール化合物又はベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂環式ジオール化合物に由来する構成単位を、フッ素含有化合物を構成する全構成単位の20モル%以下の量で含有させることができる。
【0043】
このようなベンゼン環及びフッ素原子を含まない脂肪族ジオール化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールなどが挙げられる。
【0044】
またベンゼン環およびフッ素原子を含まない脂環式ジオール化合物としては、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジオールなどのシクロヘキサンジオール類、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのシクロヘキサンジメタノール類、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノールなどのノルボルナンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、1,3-アダマンタンジオール、2,2-アダマンタンジオール、デカリンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、イソソルビド、3,9-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジエチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジプロピルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。
【0045】
[合成方法]
前述した通り、本発明においては、前記式(i)で示した構造のフッ素含有化合物を合成する場合は、化合物A:化合物Bを当量比で1:1.2~1:3.0、特に1:1.3~1:2.0の割合で配合し、反応性化合物Cを化合物Aに対して1:0.2~1:2.5、特に1:0.3~1:2.0の割合で配合する。
また前記式(ii)で示した構造のフッ素含有化合物を合成する場合は、化合物B:化合物Aを当量比で1:1.2~1:3.0、特に1:1.3~1:2.0の割合で配合し、反応性化合物Cを化合物Bに対して1:0.2~1:2.5、特に1:0.3~1:2.0の割合で配合する。
【0046】
化合物A乃至Cの反応には、脱HF剤として塩基性物質を配合することが好ましい。
このような塩基性物質としては、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、および水酸化物を例示でき、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムを好適に使用することができる。
塩基性物質は、化合物B1モルあたり塩基として2規定以上、好ましくは4~6規定の塩基性物質を用いることが好ましい。
【0047】
化合物A乃至Cは、これらと上記塩基性物質を全て同時に反応溶媒に添加して混合することもできるが、化合物A及びBが固体(パーフルオロビフェニル等及びビスフェノール類)で、化合物Cが液体(パーフルオロスチレン等)である場合には、化合物A及び化合物Bと塩基性物質とを、真空引きした後、窒素充填した反応容器内に添加し、反応溶媒を加えた後、化合物Cを添加することが好ましい。すなわち、化合物Cとして好適に用いられるパーフルオロスチレンは揮発性が高いことから、このような化合物を用いる場合には、反応器内を真空脱気して窒素置換した後で添加することが好ましい。
【0048】
上記反応溶媒としては、非プロトン性極性溶媒中、または非プロトン性極性溶媒を含む混合溶媒中で実施することが好ましい。好ましい非プロトン性極性溶剤の例は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホランなどを含む。混合溶媒は、フッ素含有化合物の溶解性を低下させることがなく、かつ反応に影響を及ぼさない限りにおいて、低極性溶媒を含んでもよい。
用いることができる低極性溶媒の例は、トルエン、キシレン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ベンゾトリフルオリド((トリフルオロメチル)ベンゼン)、キシレンヘキサフルオリド(1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)などを含む。低極性溶媒の添加により溶剤混合物の極性(誘電率)を変化させて、反応の速度を制御することができる。
【0049】
化合物A乃至Cの加熱混合は、用いる化合物の種類によって異なり一概に規定できないが、前記式(i)又は(ii)におけるnの値が1~4の範囲となるように反応を制御することが必要であり、10~200℃の反応温度および1~80時間の反応時間、好ましくは20~180℃の反応温度および1~60時間の反応時間、より好ましくは30~180℃の反応温度および1~24時間の反応時間、50~160℃の反応温度および3~40時間の反応時間の条件の範囲内で、用いる化合物の種類に応じて適宜選択して実施することが好ましい。
反応終了後、冷却して、得られた反応混合物を分離して洗浄乾燥することによりフッ素含有化合物が得られる。
【0050】
(フッ素含有化合物)
本発明の製造方法により得られるフッ素含有化合物は、前記式(i)又は(ii)におけるnの値が1~4の範囲にあり、前述した化合物Aに由来する、主骨格にベンゼン環を含み、該ベンゼン環における水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されている構造を有する構成単位A、前述した化合物Bに由来する、主骨格にベンゼン環を含み、フッ素原子が構成単位中の原子数の30%以下である構造を有する構成単位B、及び前述した化合物Cに由来するオレフィン性炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する構成単位C、を含んで成っている。
本発明においては特に、nの値が1である、構成単位A乃至Cが、C-B-A-B-C又はC-A-B-A-Cの順で結合して成るフッ素含有化合物であることが好適であり、このフッ素含有化合物は、200℃・120分の条件で硬化させた硬化物の240~290℃の温度範囲における熱膨張係数の値が200ppm/℃以下に低減されている。
【0051】
上記フッ素含有化合物を構成する構成単位A乃至Cとしては、本発明の製造方法に用いる原料である化合物A乃至Cについて前述した構造を含んでいる。
本発明の製造方法により得られる好適なフッ素含有化合物は、これに限定されるものではないが、下記の構造を有する化合物を例示できる。(式中、nは1~4の値であり、「(*)」は結合位置を示す)。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
本発明のフッ素含有化合物は、溶剤に可溶であることが好ましい。フッ素含有組成物が「溶剤に可溶」であるとは、所与の溶剤から得られる溶液100gあたり、1g以上、好ましくは10g以上のフッ素含有化合物が溶解していることを意味する。本実施形態のフッ素含有化合物は、後述する炭化水素類に可溶であることが好ましい。また、本実施形態のフッ素含有化合物は、コストの観点からトルエンに可溶であることが特に好ましい。
本発明のフッ素含有化合物においては、前述した各構成単位A乃至Cで規定したフッ素原子含有率を満足する限りこれに限定されるものではないが、フッ素含有化合物の全質量に対して20~40質量%のフッ素含有量であることが望ましい。これにより優れた電気特性と共に、すぐれた溶剤可溶性及び難燃性を有している。
本発明のフッ素含有化合物は、数平均分子量が500~4000、特に1000~2000の範囲にあることが好適である。数平均分子量が上記範囲にあることにより、溶剤可溶性が向上すると共に、架橋性が向上し、後述する硬化物のゲル分率を高めることが可能となる。
【0056】
本発明のフッ素含有化合物は、それ自体優れた架橋性を有することから、架橋剤を含有しない場合においても優れた硬化性を発現可能であるが、フッ素含有化合物と共に架橋剤を使用することにより、更に優れた硬化性を得ることができる。
フッ素含有化合物に好適に使用可能な架橋剤としては、分子中に2個以上のオレフィン性炭素-炭素二重結合を有する化合物を含む。このような架橋剤の例は、分子中に2個以上のメタクリル基を有する多官能メタクリレート化合物、分子中に2個以上のアクリル基を有する多官能アクリレート化合物、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)などのトリアルケニルイソシアヌレート化合物、ジビニルベンゼンなどを含む。多官能性アクリレート/メタクリレート化合物の例は、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどのジシクロペンタジエン型アクリレート化合物、およびトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートなどのジシクロペンタジエン型メタクリレート化合物を含む。
架橋剤の配合量は、フッ素含有化合物:架橋剤(質量比)で、9.5:0.5~5:5、好ましくは7.5:2.5~5.5:4.5の範囲内である。この範囲内の質量比を用いることにより、フッ素含有化合物から成る硬化物に十分な硬度を与えることができる。
【0057】
本発明のフッ素含有化合物は、溶剤を含むワニス状であってもよく、種々の溶剤を用いることができる。溶剤可溶性の観点から、本発明においては非プロトン性溶剤を用いることが好ましい。このような非プロトン性溶剤としては:ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ミネラルスピリットなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)などのケトン類;シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノンなどの環式ケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、1,3-ジオキソランなどの環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-シクロヘキシルピロリドンなどのアミド類;スルホラン、ジメチルスルホンなどのスルホン類;およびジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホキシド類を含む。本発明において好ましい溶剤は炭化水素類であり、特に好ましくは芳香族炭化水素類である。
【0058】
前述した通り、本発明のフッ素含有化合物はそれ自体優れた硬化性を有するため、反応開始剤が存在しなくても加熱による架橋・硬化は可能であるが、反応開始剤が存在する場合、より緩和な条件でより効率的な架橋・硬化が可能となるので、反応開始剤を用いることが好適である。用いることができる反応開始剤は、たとえば、過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ジクミル、クミルヒドロペルオキシド、α,α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製パーブチル(登録商標)P)、ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)ペルオキシド(日油株式会社製パークミル(登録商標)D)、t-ブチルα,α-ジメチルベンジルペルオキシド(日油株式会社製パーブチル(登録商標)C)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリルなどを含む。
【0059】
フッ素含有化合物から成る硬化物は、1種または複数種の充填材を含んでもよい。充填材は、有機充填材であってもよいし、無機充填材であってもよい。用いることができる有機充填材は:ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのエンジニアリングプラスチック;およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)などの溶剤不溶性フッ素樹脂を含む。用いることができる無機充填材は:金属;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物;金属水酸化物;チタン酸金属塩;ホウ酸亜鉛;スズ酸亜鉛;ベーマイト;シリカ;ガラス;酸化ケイ素;炭化ケイ素;窒化ホウ素;フッ化カルシウム;カーボンブラック;マイカ;タルク;硫酸バリウム;二硫化モリブデンなどを含む。溶剤不溶性フッ素樹脂は、フッ素含有組成物の硬化物の電気特性(誘電率、誘電損失など)の改善の点から好ましい。また、シリカは、フッ素含有組成物の硬化物の電気特性(誘電率、誘電損失など)を損なうことなしに、熱膨張係数を減少させることができる点で好ましい。
【0060】
前述した通り、本発明のフッ素含有化合物はそれ自体硬化性に優れており、架橋剤を含有しない場合でも、200℃・120分の条件で硬化させた硬化物が、ゲル分率(架橋密度)が50%以上と、非常に優れた熱硬化性を有している。
ゲル分率(架橋密度)は、80%以上であることがより好ましく、90%以上が更に好ましく、100%であることが最も好ましい。ゲル分率(架橋密度)が大きいことで、未反応の架橋部位が存在することによる耐久性の低下の抑制や、架橋密度増加による熱膨張係数の低下といった効果が考えられる。
ゲル分率の測定方法は後述する。
またこの硬化物のガラス転移温度は200℃以上と高いことから、通常使用環境下での熱膨張係数が低減され、電子基板として用いた際の耐久性が改善する。加えて、高温での熱膨張係数が小さいことで、高温環境下での使用や、はんだ付けが容易になるなどの利点がある。
更に、ガラス転移温度を超えた温度環境での熱膨張係数が200ppm/℃より小さいことが好ましく、180ppm/℃より小さいことがより好ましく、150ppm/℃より小さいことが更に好ましい。
【実施例0061】
【0062】
(実施例1)(上記式(1)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
ガラス製反応容器に、0.805g(3.0ミリモル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)(化合物中のF原子割合0%)、0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニル(環状構造におけるF原子置換割合100%)および0.912g(6.6ミリモル)の炭酸カリウムを装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAcおよび0.582g(3.0ミリモル)の2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを添加した。反応混合物を遮光し、攪拌しながら80℃に加熱し、15時間にわたって攪拌した。加熱終了後、反応混合物を室温に冷却した。続いて、反応混合物を、0.5Lの純水に注加した。反応混合物を吸引濾過し、得られた固形物を純水およびメタノールで洗浄した。洗浄後の固形物を減圧乾燥して、1.54gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトル(オックスフォード・インストゥルメンツ社製核磁気共鳴装置、X-Plus)より算出した平均重合度は1.0であった。
【0063】
(実施例2)(上記式(1)のフッ素含有化合物(n=2)の合成)
ビスフェノールZを0.805g(3.0ミリモル)に対しデカフルオロビフェニルを0.668g(2.0ミリモル)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを0.388g(2.0ミリモル)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.50gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は1.9であった。
【0064】
(実施例3)(上記式(1)のフッ素含有化合物(n=3)の合成)
ビスフェノールZ 0.805g(3.0ミリモル)に対しデカフルオロビフェニルを0.752g(2.3ミリモル)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを0.291g(1.5ミリモル)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.61gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は2.8であった。
【0065】
(実施例4)(上記式(1)のフッ素含有化合物(n=4)の合成)
ビスフェノールZ 0.805g(3.0ミリモル)に対しデカフルオロビフェニルを0.802g(2.4ミリモル)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを0.233g(1.2ミリモル)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.58gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は3.5であった。
【0066】
【0067】
(実施例5)(上記式(2)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
ビスフェノールZ 0.805g(3.0ミリモル)に代えて1.009g(3.0ミリモル)の(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)(ビスフェノールAF)(化合物中のF原子割合18%)、0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルに代えて0.408g(1.5ミリモル)のオクタフルオロナフタレン(環状構造におけるF原子置換割合100%)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.61gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は1.0であった。
【0068】
【0069】
(実施例6)(上記式(3)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルに代えて0.279g(1.5ミリモル)のヘキサフルオロベンゼン(環状構造におけるF原子置換割合100%)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.31gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は1.0であった。
【0070】
【0071】
(実施例7)(上記式(4)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルに代えて0.408g(1.5ミリモル)のオクタフルオロナフタレン(環状構造におけるF原子置換割合100%)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返し、1.49gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は1.0であった。
【0072】
【0073】
(実施例8)(上記式(10)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.805gの1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)に代えて0.889g(3.0ミリモル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンを用いたことを除いて実施例1の手順を繰り返し、1.68gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は1.0であった。
【0074】
【0075】
(実施例9)(上記式(11)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.805gの1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)に代えて0.481g(3.0ミリモル)の1,7-ジヒドロキシナフタレンを用いたことを除いて実施例1の手順を繰り返し、1.33gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は1.0であった。
【0076】
【0077】
(実施例10)(上記式(12)のフッ素含有化合物(n=4)の合成)
ガラス製反応容器に、1.073g(4.0ミリモル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、および1.216g(8.8ミリモル)の炭酸カリウムを装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAc、0.558g(3.0ミリモル)のヘキサフルオロベンゼンおよび0.305g(2.0ミリモル)のクロロメチルスチレン(m-,p-混合物)を添加した。反応混合物を遮光し、攪拌しながら80℃に加熱し、15時間にわたって攪拌した。加熱終了後、反応混合物を室温に冷却した。続いて、反応混合物を、0.5Lの純水に注加した。反応混合物を吸引濾過し、得られた固形物を純水およびメタノールで洗浄した。洗浄後の固形物を減圧乾燥して、1.60gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は4.0であった。
【0078】
(比較例1)(上記式(1)のフッ素含有化合物(n=30)の合成)
前記特許文献4(特開2022-89150号公報)に記載の方法に準じ、フッ素化合物を得た。
すなわち、ガラス製反応容器に、0.805g(3.0ミリモル)の1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)および0.912g(6.6ミリモル)の炭酸カリウムを装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAcを添加した。反応混合物を攪拌しながら150℃に加熱し、3時間にわたって攪拌した。加熱終了後、反応混合物を室温に冷却した。次いで、反応混合物に0.802g(2.4ミリモル)のデカフルオロビフェニルを添加した。反応混合物を攪拌しながら70℃に加熱し、4時間にわたって攪拌した。次いで、反応混合物を遮光し、0.17mL(0.233g、1.2ミリモル)の2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを添加した。70℃の温度で15時間にわたって攪拌を継続した。攪拌終了後、反応混合物を室温まで冷却した。続いて、反応混合物を、0.5Lの純水に注加した。反応混合物を吸引濾過し、得られた固形物を純水およびメタノールで洗浄した。洗浄後の固形物を減圧乾燥して、1.14gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルにより算出した平均重合度は30であった。
【0079】
【0080】
(比較例2)(上記式(13)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
0.805gの1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)に代えて0.990g(3・0ミリモル)のオクタフルオロ-4,4’-ビフェノール(化合物中のF原子割合33%)を用いたことを除いて実施例1の手順を繰り返し、1.05gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は1.0であった。
【0081】
(比較例3)
ビスフェノールZ 0.805g(3.0ミリモル)に代えて0.990g(3.0ミリモル)のオクタフルオロ-4,4‘-ビフェノール(化合物中のF原子割合33%)、0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルに代えて0.279g(1.5ミリモル)のヘキサフルオロベンゼン(環状構造におけるF原子置換割合100%)としたことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。
しかしながら、合成反応が進行せず、未反応の原料が回収された。
【0082】
【0083】
(比較例4)(上記式(14)のフッ素含有化合物(n=1)の合成)
ガラス製反応容器に、0.636g(3.0ミリモル)の2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ペンタンジオール、0.501g(1.5ミリモル)のデカフルオロビフェニルを装填した。ガラス製反応容器内を真空に減圧した後に、窒素置換した。次いで、ガラス製反応容器内に10mLのDMAcおよび0.582g(3.0ミリモル)の2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンを添加した。反応混合物を攪拌しながら0℃に冷却し、0.300g(7.5ミリモル)の水素化ナトリウム(油性、約60%)を添加し、1時間にわたって攪拌した。続いて、反応混合物を室温まで戻し、15時間にわたって撹拌した。反応混合物に0.05Lの純水を添加し、反応を停止した後、酢酸エチルによって抽出を行った。抽出した有機層をろ過し、減圧濃縮して0.928gのフッ素含有化合物を得た。
核磁気共鳴スペクトルより算出した平均重合度は1.0であった。
【0084】
(参考例)ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂
本発明のフッ素含有化合物の性能を示す対照として、高周波伝送用基板材料として一般的に用いられているポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂(SABIC社製NORYL SA9000)についても各種の測定を行った。
【0085】
(評価1:溶剤可溶性および熱硬化性の評価(ゲル分率))
実施例1~10及び比較例1で得られたフッ素含有化合物並びにPPE樹脂をそれぞれ0.5g秤量し、トルエンを加えて80℃に加熱して混合し、50質量%トルエン溶液が得られた場合は、可溶と判断した。
得られた溶液を全てアルミカップに取り、恒温オーブン(エスペック株式会社製SPHH-102)を用いて200℃で2時間加熱乾燥し、熱硬化物を得た。この熱硬化物をアルミカップから取り、その重量を測定した。9mLのサンプル管に5gのメチルエチルケトン(MEK)と硬化物を入れ、24時間MEK中で硬化物を浸漬した。その後、溶剤を揮発させ、MEKで洗浄後、熱硬化物を乾燥させた。乾燥後の質量を測定し、MEK浸漬後の乾燥硬化物の質量を算出した。
ゲル分率は、MEK浸漬後の乾燥硬化物の質量/MEK浸漬前の硬化物の質量×100(%)として算出した。得られた結果を表1に示す。
【0086】
(評価2:電気特性)
[ワニス状組成物の作製]
実施例1~10および比較例1で得られたフッ素含有化合物並びにPPE樹脂について、上記と同様にトルエンに溶解させ、50質量%の溶液を得た。さらに反応開始剤としてパーブチル(登録商標)P(日油株式会社製)をフッ素含有化合物またはPPE樹脂に対して2質量%になるように加え、ワニス状組成物とした。
[プリプレグの作製]
上記の方法で得た各ワニス状組成物を、7cm×7cmのガラスクロス片(旭化成株式会社製L2-1078)に滴下し、均一に含浸させた。その後、該含浸物を110℃で10分間乾燥し、プリプレグを得た。
[銅張積層板の作製]
上記方法で得たプリプレグを、5cm×5cmにカットし、電解銅箔(厚み18μm)(古河電気工業社製、HVLP)とともに真空ホットプレス機(株式会社井元製作所製 手動油圧真空加熱プレス IMC-4900)を用いて、減圧しながら200℃まで昇温し、さらに200℃で120分間・4MPaでプレスすることで、プリプレグと銅箔を接着させた。
実施例1~10で得られたフッ素含有化合物を使用したプリプレグからは、均一に複合化した銅張積層板が得られた。しかし、比較例1で得られた化合物を使用した場合、ガラスクロスと均一に複合化できず、綺麗な銅張積層板が得られなかった。
銅張積層板の銅箔をピンセットで剥がし、4cm×4cmにカットして得られた試験片について、ベクトルネットワークアナライザ(KEYSIGHT 5247B)を用いて、スプリットシリンダ法、28GHz、25℃条件下にて、誘電率及び誘電正接を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0087】
【0088】
表1の結果より、本発明の製造方法により得られたフッ素含有化合物は、溶剤可溶性に優れるとともに、高い熱硬化性(ゲル分率)を有する。また銅張積層板に加工することが容易であり、更に高周波伝送用基板材料として現在一般的に用いられているPPE樹脂に比べても、28GHzという非常に大きな周波数領域での誘電正接が大きく低減していることがわかる。なお、比較例2及び比較例4で得られたフッ素含有化合物は、溶剤に不溶であり、その余の評価は実施できなかった。
【0089】
(評価3:ガラス転移温度)
上記電気特性評価で作製した実施例1,5,7,8,比較例1,及び参考例(PPE)の銅張積層板について、ガラスクロスの網目に対して、斜め45度になるように切断し、縦幅25mm×横幅25mmの試験片を作製した。
この試験片について、動的粘弾性測定装置(DMA ARES-G2、TA Instruments社製)にて、周波数1.0Hz、歪量0.1%に設定し、以下の温度プロファイルを実行した。
(1)25℃で60秒にわたって保持し、5℃/分の速度で、25℃から360℃まで加熱する。
(2)60秒にわたって、360℃の温度を維持し、測定を終了する。
算出されたグラフの温度に対する損失係数(tanδ)のピーク位置の温度をガラス転移温度(Tg)とした。結果を表2に示す。
【0090】
(評価4:熱膨張係数(CTE))
評価3と同様に作製した試験片を用い、動的粘弾性測定装置(DMA ARES-G2、TA Instruments社製)を用いて、熱膨張係数の測定を行った。240℃~290℃の熱膨張係数を表2に示す。
【0091】
【0092】
表2の結果より、本発明の製造方法により得られたフッ素含有化合物は、高いガラス転移温度を有し、さらに240℃~290℃というガラス転移温度以上の高温領域においても膨張しにくいという特異的な特徴を有している。
【0093】
(評価5:難燃性)
実施例5、8及び比較例1で得られた化合物並びにPPE樹脂について、評価2と同様に試験片を作製した。
2cm×2cmに切断した試験片について、IEC60695-11-5に準拠して、ニードルフレーム試験を行った。
【0094】
本発明のフッ素含有化合物の製造方法は、優れた電気特性(低誘電率及び低誘電正接)を有すると共に、難燃性、溶剤可溶性、熱硬化性(架橋性)の全てにおいて優れた、フッ素含有化合物を効率よく製造可能であり、この製造方法により得られたフッ素含有化合物の硬化物は著しく低減された熱膨張係数を有し、寸法安定性に優れていることから、電気機器、電子機器、通信機器に用いられる基板材料として好適に使用することができ、特に高速且つ大容量伝送が可能な次世代高周波用のプリプレグ、銅張積層板等の基板材料として好適に使用できる。