(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159463
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】運転補助装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/08 20060101AFI20241031BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20241031BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60T7/08 Z
B60T7/02 D
B60T8/17 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023222889
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】202310461220.3
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山中 史景
(72)【発明者】
【氏名】土屋 直記
【テーマコード(参考)】
3D124
3D246
【Fターム(参考)】
3D124AA12
3D124BB06
3D124CC14
3D124CC28
3D124DD56
3D246DA01
3D246DA06
3D246EA02
3D246GB15
3D246GB37
3D246GC11
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA05A
3D246HA08A
3D246HA86A
3D246JB37
3D246JB43
3D246LA03A
(57)【要約】
【課題】自動的に、又は、簡単にブレーキ保持状態とすることができる運転補助装置を提供する。
【解決手段】運転補助装置1は、操作レバー101の操作状態と、車両の状態と、を検出した結果を取りまとめる制御部10を有し、制御部10は、操作レバー101の操作状態と車両の状態とに基づいて、保持部を保持状態とするか解除状態とするかの判断を行い、切り替え指示部13は、制御部10の判断の結果に応じて保持部を保持状態と解除状態とで切り替える指示を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動力及び制動力の操作を行う操作レバーを有する運転補助装置であって、
前記操作レバーは、操作によって、車両に駆動力を発生させるアクセル領域と、車両に制動力を発生させるブレーキ領域と、に移動可能であり、
制動力を保持状態に維持する保持部と、
前記操作レバーの操作状態と、前記車両の状態と、により前記保持部を保持もしくは保持解除する制御部を有し、
前記制御部は、
車速が事前に定めた車速閾値以下であるか否かの判断を行う第1判断部と、
前記操作レバーの操作状態の判断を行う第2判断部と、
を有し、
前記第1判断部の判断結果が前記車速閾値を超える場合は、解除状態から保持状態に切り替え、
前記第1判断部の判断結果が前記車速閾値以下の場合は、第2判断部の結果によって解除状態から保持状態に切り替えること、
を特徴とする運転補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転補助装置において、
前記保持部が保持状態の時、前記制御部が前記保持部を解除状態とする指示を行っている状態において、前記操作レバーが前記車両に制動力を発生させる向きに操作されることによって保持状態が解除されること、
を特徴とする運転補助装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の運転補助装置において、
前記制御部は、前記第2判断部が、前記操作レバーの操作速度が事前に定めた操作速度閾値以上であり、かつ、前記操作レバーが前記保持部を保持状態とすべきと判断する領域である保持判断領域にあると判断した場合に解除状態から保持状態に切り替える指示を行わせること、
を特徴とする運転補助装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の運転補助装置において、
前記制御部は、保持状態とする指示を行ってから一定以上の時間が経過することを解除状態から保持状態に切り替えるための要件の一つとして用いること、
を特徴とする運転補助装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の運転補助装置において、
前記操作レバーは、前記アクセル領域と前記ブレーキ領域とに加えて、ブレーキ保持領域に移動可能であり、
前記制御部は、前記操作レバーが前記ブレーキ保持領域に操作されると、解除状態から保持状態に切り替えること、
を特徴とする運転補助装置。
【請求項6】
請求項5に記載の運転補助装置において、
前記ブレーキ保持領域は、前記制動力を発生させる領域を超えて前記操作レバーを操作する位置に設けられる領域であること、
を特徴とする運転補助装置。
【請求項7】
請求項5に記載の運転補助装置において、
前記操作レバーは、ブレーキ保持解除領域にさらに移動可能であり、
前記制御部は、前記操作レバーが前記ブレーキ保持解除領域に操作されると、保持状態から解除状態に切り替える指示をブレーキが完全に解除されるまで維持すること、
を特徴とする運転補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、身体障害者の運転に適した運転補助装置として、アクセルペダルやブレーキペダルを手で操作可能とする操作レバー等を備える装置がある。特許文献1には、携帯型運転補助装置であって、ブレーキ作動状態でブレーキ位置をロックするラチェット機構を備え、ラチェット機構をリリースレバーで解除することで坂道や一時停止時にパーキングブレーキ操作を不要とする構造が開示されている。また、操作レバー等にブレーキ作動状態でブレーキ位置を保持させるためのブレーキホールドスイッチを設ける構成も従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、利用者の障害の程度によっては、操作レバーのリリースレバーやブレーキホールドスイッチ等を操作することが困難である場合もあり、ブレーキ保持を行うための操作性について改善が要望されていた。
【0005】
本開示の課題は、自動的に、又は、簡単にブレーキ保持状態とすることができる運転補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
第1の開示は、車両の駆動力及び制動力の操作を行う操作レバー(101)を有する運転補助装置(1)であって、前記操作レバー(101)は、操作によって、車両に駆動力を発生させるアクセル領域と、車両に制動力を発生させるブレーキ領域と、に移動可能であり、制動力を保持状態に維持する保持部(108、110、111、112)と、前記操作レバー(101)の操作状態と、前記車両の状態と、により前記保持部(108、110、111、112)を保持もしくは保持解除する制御部(10)を有し、前記制御部(108、110、111、112)は、車速が事前に定めた車速閾値以下であるか否かの判断を行う第1判断部(11)と、前記操作レバー(101)の操作状態の判断を行う第2判断部(12)と、を有し、前記第1判断部(11)の判断結果が前記車速閾値を超える場合は、解除状態から保持状態に切り替え、前記第1判断部(11)の判断結果が前記車速閾値以下の場合は、第2判断部(12)の結果によって解除状態から保持状態に切り替えること、を特徴とする運転補助装置(1)である。
【0008】
第2の開示は、第1の開示に記載の運転補助装置(1)において、前記保持部(108、110、111、112)が保持状態の時、前記制御部(10)が前記保持部(108、110、111、112)を解除状態とする指示を行っている状態において、前記操作レバー(101)が前記車両に制動力を発生させる向きに操作されることによって保持状態が解除されること、を特徴とする運転補助装置(1)である。
【0009】
第3の開示は、第1の開示又は第2の開示に記載の運転補助装置(1)において、前記制御部(10)は、前記第2判断部(12)が、前記操作レバー(101)の操作速度が事前に定めた操作速度閾値以上であり、かつ、前記操作レバーが前記保持部を保持状態とすべきと判断する領域である保持判断領域にあると判断した場合に解除状態から保持状態に切り替える指示を行わせること、を特徴とする運転補助装置(1)である。
【0010】
第4の開示は、第1の開示又は第2の開示に記載の運転補助装置(1)において、前記制御部(10)は、保持状態とする指示を行ってから一定以上の時間が経過することを解除状態から保持状態に切り替えるための要件の一つとして用いること、を特徴とする運転補助装置(1)である。
【0011】
第5の開示は、第1の開示又は第2の開示に記載の運転補助装置(1)において、前記操作レバー(101)は、前記アクセル領域と前記ブレーキ領域とに加えて、ブレーキ保持領域に移動可能であり、前記制御部(10)は、前記操作レバー(101)が前記ブレーキ保持領域に操作されると、解除状態から保持状態に切り替えること、を特徴とする運転補助装置(1)である。
【0012】
第6の開示は、第5の開示に記載の運転補助装置(1)において、前記ブレーキ保持領域は、前記制動力を発生させる領域を超えて前記操作レバー(101)を操作する位置に設けられる領域であること、を特徴とする運転補助装置(1)である。
【0013】
第7の開示は、第5の開示に記載の運転補助装置(1)において、前記操作レバー(101)は、ブレーキ保持解除領域にさらに移動可能であり、前記制御部(10)は、前記操作レバー(101)が前記ブレーキ保持解除領域に操作されると、保持状態から解除状態に切り替える指示をブレーキが完全に解除されるまで維持すること、
を特徴とする運転補助装置(1)である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、自動的に、又は、簡単にブレーキ保持状態と保持状態解除との切り替えをすることができる運転補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の運転補助装置1の概要を説明する図である。
【
図2】中立状態の荷重伝達装置100の主要部を示す側面図である。
【
図3】第1実施形態における操作レバー101のストローク量と各動作領域との関係を示す図である。
【
図4】制御部10が行うブレーキ保持動作を行うか否かの判断の流れを示すフローチャートである。
【
図5】操作時の車速(km/h)と、操作レバー101の操作位置(mm)と、操作レバー101の操作速度(mm/s)との変化を示す図である。
【
図6】第2実施形態における操作レバー101のストローク量と各動作領域との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示を実施するための一形態について図面等を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の運転補助装置1の概要を説明する図である。
図2は、中立状態の荷重伝達装置100の主要部を示す側面図である。
図1及び
図2において、荷重伝達装置100の主な部材についてのみ示しており、また
図2においては、荷重伝達装置100の可動する各部材の主な部分の形状のみを重ねて透視した形態で示している。
図3は、第1実施形態における操作レバー101のストローク量と各動作領域との関係を示す図である。なお、各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張したり、省略したりして示している。
【0018】
本実施形態の運転補助装置1は、不図示の車両に取り付けられ、障害者の運転の補助を行う装置であり、制御部10と、荷重伝達装置100とを備えている。また、これらの他に、制御部10は電源20から電力を供給され、車両に設けられた車両速度検出部30から車両の速度を受け取る。
【0019】
制御部10は、運転補助装置1の動作を制御する制御機器(演算装置)であり、例えば、車両の動作を統括的に制御するECU(electronic control unit:電子制御ユニット)を用いることができる。制御部10には、電源20が接続され、制御部10の動作に必要な電力を供給されている。制御部10は、操作レバー101の操作状態と、車両の状態と、を検出した結果を取りまとめる。ここで、車両の状態としては、車速、加速及び減速の状態、前後方向の傾斜、積載人物の重量、積載人物の重量前後配分、積載人物の重心高さ、タイヤ接地点の摩擦係数、温度、湿度等を例示できる。本実施形態において特に関連が高い構成として、制御部10には車両速度検出部30が接続されており、車両速度検出部30が検出する車両の速度を受け取る。また、制御部10は、第1判断部11、第2判断部12、制御部10の判断の結果に応じて保持部を保持状態と解除状態とで切り替える指示をブレーキロックソレノイド110に対して行う切り替え指示部13を備えているが、これらについての詳細は後述する。
【0020】
荷重伝達装置100は、健常者用の車両に追加的に取り付けられることにより、障害者が手による操作によって車両のブレーキ操作及びアクセル操作を行うことができるようにする装置である。本実施形態の荷重伝達装置100は、操作レバー101を略前方向に操作するブレーキ操作を行うことにより、ブレーキが動作し、略後方向に操作するアクセル操作を行うことによりアクセルが動作する。そして、ブレーキ操作もアクセル操作も行われない位置(
図2中の0%の位置)に操作レバー101が位置する状態を、ここでは中立状態として説明する。なお、前方向とは、
図2中に矢印で示す前の方向であり、車両の前方に対応し、後方向とは、
図2中に矢印で示す後の方向であり、車両の後方に対応する。
【0021】
荷重伝達装置100は、操作レバー101と、第1部材102と、第2部材103と、第3部材104と、伝達部材105と、ブレーキペダル106と、第4部材107と、係止歯部材108と、ブレーキロックソレノイド110と、係止爪部材111、112とを備えている。
【0022】
操作レバー101は、第1部材102と、第2部材103と、第3部材104との組み合わせによりリンク機構を構成しており、図中の-100%の位置から120%の位置まで、運転者の手による操作によって略前後方向に移動(ストローク)可能である。ここで、操作レバー101のストロークが0%の位置が中立位置であり、0%未満から-100%の領域がアクセル領域であり、-100%の位置がアクセル開度最大の位置であり、0%を超え100%までの領域がブレーキ領域であり、100%の位置がブレーキ力最大の位置である。また、100%から110%までの位置がブレーキ保持領域であり、110%から120%までの位置がブレーキ保持解除領域である。また、ブレーキ領域の内、所定以上の操作レバー101のストローク位置(本実施形態では、25%以上の位置)からブレーキ保持領域を含む範囲は、制御部10が保持部を保持状態とすべきと判断する領域である保持判断領域である。操作レバー101は、その操作ストローク中において、ブレーキ領域とブレーキ保持領域との境界部分、及び、ブレーキ保持領域とブレーキ保持解除領域との境界部分に、これらの境界が存在していることを運転者に判るようにする告知手段を備えてもよい。告知手段は、例えば、操作ストロークが境界部分を超えるときに若干の抵抗力(クリック感)によって告知を行ったり、音声や表示等によって告知を行ったりすることができる。
【0023】
操作レバー101が中立位置(
図2中の0%の位置、
図3中のニュートラル領域)にある中立状態では、アクセル動作もブレーキ動作も行われない。また、運転者が操作レバー101から手を離した状態では、後述するブレーキ保持状態を除いて、不図示の付勢部材の付勢力によって操作レバー101は、中立位置に移動してその位置が維持される。
【0024】
操作レバー101がアクセル操作、すなわち略後方向(
図2中の0%の位置よりも-100%側、
図3中のアクセル領域)に操作されると、第2部材103が回動して、不図示のアクセル検出部材の作動量が不図示のアクセルセンサ部によって検出されて、この検出量がアクセル操作量として制御部10へ伝えられる。これにより、制御部10は、アクセルを開く指示を行う。操作レバー101がアクセル操作中は、ブレーキペダル106が動作することはない。また、本実施形態では、不図示のアクセルペダルも車両に健常者用として設けられているが、操作レバー101がアクセル操作中に、荷重伝達装置100がアクセルペダルを動作させることはない。
【0025】
操作レバー101がブレーキ操作、すなわち略前方向(
図2中の0%を超えて100%までの範囲、
図3中のブレーキ領域)に操作されると、第3部材104が前方へ移動し、伝達部材105を押圧することにより、ブレーキペダル106が前方へ押されて、ブレーキが動作する。このとき、操作レバー101が略前方向へ操作されると、第4部材107とともに係止歯部材108がブレーキ位置に応じて回動する。係止歯部材108には、係止歯が連続して設けられており、係止爪部材111、112によって係止歯部材108の位置を一時的に固定(ロック)することができる。係止歯部材108の位置がロックされるとブレーキ保持(ロック)状態となり、ブレーキが最大ブレーキ力で作動した状態が維持される。また、操作レバー101については、後方(アクセル領域)への移動ができないように規制され、前方(ブレーキ領域側)への移動のみが可能となる。係止爪部材111、112は、ブレーキロックソレノイド110によってロック位置と非ロック位置との間で移動可能である。ブレーキロックソレノイド110は、制御部10の切り替え指示部13からの指示にしたがって可動鉄心(プランジャ)を駆動する電動アクチュエータであり、係止爪部材111、112をロック位置と非ロック位置との間で移動させる。なお、本実施形態では、係止爪部材111、112の2つの部材によって係止爪部材を構成した例を示したが、これらを一つにまとめてもよい。係止歯部材108と、ブレーキロックソレノイド110と、係止爪部材111、112とによって、操作レバー101の位置を保持するとともに制動力を保持状態に維持する保持部が構成されている。以下、係止歯部材108と、ブレーキロックソレノイド110と、係止爪部材111、112とをまとめて保持部とも呼ぶ。操作レバー101がブレーキ操作中は、不図示のアクセル検出部材が移動することはなく、アクセル動作は行われない。
【0026】
ここで、制御部10からの指示にしたがってブレーキロックソレノイド110が保持状態を解除する方向へ動作しただけでは、保持部による保持状態は解除されない。保持部が保持状態となると、係止歯部材108と係止爪部材111とが強い力で当接することにより、ブレーキロックソレノイド110解除方向へ動作しても、係止歯部材108と係止爪部材111との係合が解除されないからである。この状態であっても、操作レバー101を前方(ブレーキ領域側)へ移動させると、係止歯部材108が係止爪部材111に当接する力が弱くなる方向へ移動する。よって、係止歯部材108と係止爪部材111との係合を解除させるためには、ブレーキロックソレノイド110が保持状態を解除する方向へ動作することに加えて、操作レバー101を前方(ブレーキ領域側)へ移動させることが必要である。この操作レバー101を前方へ移動させることが必要であることにより、運転者が意図しないで保持状態が解除されることが防止できる。
【0027】
次に、本実施形態の運転補助装置1のブレーキ保持動作について説明する。
図3に示したように、操作レバー101は、操作によって、車両に駆動力を発生させるアクセル領域と、車両に制動力を発生させるブレーキ領域と、ブレーキ保持領域と、に移動可能である。そして、ブレーキ領域を経て、ブレーキ保持領域に操作レバー101を動かすと制御部10が保持部を作動させて、ブレーキ保持状態とする。この構成により、従来、操作レバーに設けていたブレーキロックスイッチの操作が不要となり、利便性が向上し、誤操作防止ができる。また、ブレーキロックスイッチの操作が困難な障害を持つ運転者でも操作可能となる。また、ブレーキ保持領域は、ブレーキ領域を超えて操作レバー101をさらに前方へ操作する位置に設けられる領域であることから、直感的に運転者が操作することができる。
【0028】
また、制御部10は、車速が事前に定めた車速閾値以下であるか否かの判断を行う第1判断部11と、操作レバー101の操作状態の判断を行う第2判断部12とを備えている。ここで、操作レバー101の操作状態には、操作レバー101の位置だけでなく、操作レバー101の操作速度も含んでいる。本実施形態では、制御部10は、第1判断部11の判断結果が車速閾値を超える場合は、保持部を作動させず、ブレーキ保持は行わず、第1判断部11の結果が車速閾値以下の場合は、第2判断部12の結果によって保持部を作動してブレーキ保持を行うか否かの判断を行う。ここで、車速閾値は、任意に設定することができるが、例えば、5km/hを例示できる。
【0029】
図4は、制御部10が行うブレーキ保持動作を行うか否かの判断の流れを示すフローチャートである。ステップ(以下、Sとする)10では、第1判断部11が、車速が車速閾値以下であるか否かの判断を行う。車速が車速閾値以下である場合(YES)には、S20へ進み、車速が車速閾値を超える場合(NO)には、S50へ進む。
【0030】
S20では、第2判断部12が、操作レバー101の位置が保持判断領域にあるか否かの判断を行う。操作レバー101の位置が保持判断領域にある場合(YES)には、S30へ進み、操作レバー101の位置が保持判断領域にない場合(NO)には、S50へ進む。ここで、保持判断領域は、ブレーキ保持領域だけでなく、ブレーキ領域の一部領域も含んでいる。したがって、運転者が明確な意思を持って操作レバー101をブレーキ保持領域へ操作した場合に加えて、ブレーキ領域に操作レバー101がある場合にも、S30へ進む。
【0031】
S30では、第2判断部12が、操作レバー101の操作速度が操作速度閾値以上であるか否かの判断を行う。操作レバー101の操作速度が操作速度閾値以上である場合には、S40へ進み、操作レバー101の操作速度が操作速度閾値よりも低い場合には、S50へ進む。
【0032】
S40では、制御部10は、ブレーキロックソレノイド110へブレーキロックするための動作指示を行い、保持部によるブレーキ保持動作を行う。ブレーキ保持動作が行われると、先に述べたように、ブレーキが最大ブレーキ力で保持され、また、操作レバー101については、後方(アクセル領域)への移動ができないように規制され、前方(ブレーキ領域側)への移動のみが可能となる。S40でブレーキ保持の動作を行った後は、ブレーキ保持を行うか否かの判断動作を終了する。
【0033】
S50では、制御部10は、ブレーキ保持を行わないと判断して、S10へ戻る。このように、本実施形態では、車速を監視し、車速が車速閾値以下のとき(条件1)、操作レバー101の位置がブレーキ保持領域にあり(条件2)、さらに、操作レバー101の操作速度が事前に定めた操作速度閾値以上である場合(条件3)に、運転者がブレーキ保持を必要としていると判断して、自動でブレーキ保持状態とする。よって、3条件揃った場合のみに自動的にブレーキ保持状態とするので、誤作動を抑制することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、上記条件1~3の全てを満たすことを自動でブレーキ保持状態とする要件としたが、これに限らず、例えば、条件1と条件2のみで自動でブレーキ保持状態とするようにしてもよい。この場合でも、車速が車速閾値より大きい場合はブレーキ保持状態とすることがないので、誤作動を抑制することができる。
【0035】
次に、ブレーキ保持状態の解除について説明する。
図5は、操作時の車速(km/h)と、操作レバー101の操作位置(mm)と、操作レバー101の操作速度(mm/s)との変化を示す図である。
図5の横軸は、時間(sec)である。45secまでは、停止状態から加速後に一定速度で進んでいる。
図5に示す例において、45secで運転者が操作レバー101を前方へ操作し始め、46secからは操作レバー101がブレーキ領域に入っており、車速も徐々に減少している。52sec以降は車速が車速閾値を下回って(条件1)車両が停止している。そして
図5中のA点(この例では53sec)では、操作レバー101の位置が100%の位置を超えてブレーキ保持領域に入っており(条件2)、また、操作レバー101の操作速度が操作速度閾値を超えている。よって、このA点において、ブレーキ保持の要件を満たしているので、制御部10は、ブレーキロックソレノイド110に対してブレーキ保持を行う指示を行い、保持部がブレーキ保持状態となる。
【0036】
図5中のB点(この例では57sec)では、運転者が操作レバー101から手を離しており、操作レバー101の位置が僅かに中立側へ移動しているが、依然として操作レバー101ブレーキ保持領域に入っている。
図5中のC点(この例では60sec)は、ブレーキ保持状態に移行したA点(53sec)から7秒経過した位置を示している。ここで、制御部10は、保持部へ保持状態とする指示を行ってから一定以上の時間(本実施形態では、7sec)が経過することを保持部の保持状態を解除するための要件の一つとして用いる。そして、制御部10の切り替え指示部13は、保持部へ保持状態とする指示を行ってから一定以上の時間(本実施形態では、7sec)が経過した場合、ブレーキロックソレノイド110に対してブレーキ保持を解除する指示を行い、保持部は解除状態となることが可能となる解除準備状態となる。そして、この解除準備状態において、操作レバー101が前方へ移動させられると、係止歯部材108と係止爪部材111との係合が解除されて、保持部の保持状態が実際に解除される。よって、本実施形態では、C点以降は、ブレーキの保持状態を解除可能となる。したがって、C点以降もブレーキの保持状態は継続しているが、運転者が操作レバー101を前方(ブレーキ領域側)へ操作すれば、保持部のブレーキ保持状態が解除される。この構成によって、一定時間経過後、かつ、操作レバー101を前方(ブレーキ領域側)へ動かすことで、運転者がブレーキのロックを解除状態としたいという確実な意図がある場合にのみブレーキの保持状態を解除することができるため、誤操作を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の運転補助装置1では、上述したブレーキの保持状態を解除する方法の他の方法でもブレーキの保持状態を解除することができる。操作レバー101は、ブレーキ保持領域を超えてさらに前方へ移動させることにより、ブレーキ保持解除領域に移動させることができる。切り替え指示部13は、保持部が保持状態において、操作レバー101がブレーキ保持領域を超えてブレーキ保持解除領域へ操作されると、保持状態から解除状態に切り替える指示をブレーキが完全に解除されるまで維持する。このように、本実施形態の運転補助装置1では、ブレーキ保持解除領域を備えることにより、従来のブレーキロックスイッチの操作が困難な障害を持つドライバーであってもブレーキ保持状態と保持状態解除との切り替えをすることができる。ここで、「従来のブレーキロックスイッチの操作が困難な障害を持つドライバー」とは、例えば、指を動かす力が弱くてブレーキロックスイッチを押すことができず、手の平で操作レバーを押さえつけて腕の前後運動によって操作レバーを押したり引いたりする操作ができる運転者を例示できる。このような運転者であっても、本実施形態の運転補助装置1では、操作レバー101を押す(ブレーキ保持領域からさらに押し込む)動作によってブレーキロックを解除することができる。なお、本実施形態では、ブレーキ保持解除領域を備える構成を例示したが、ブレーキ保持解除領域を備えない構成としてもよい。
【0038】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態における操作レバー101のストローク量と各動作領域との関係を示す図である。第2実施形態の運転補助装置1は、操作レバー101の操作可能な範囲が異なる点と、これに伴い保持部の保持状態と解除状態との切り替え動作が一部異なる他は、第1実施形態と同様である。よって、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
【0039】
図6に示すように第2実施形態における操作レバー101の操作可能な範囲は、ブレーキ領域を超えてさらに操作可能な範囲は存在していない。したがって、第1実施形態におけるブレーキ保持領域及びブレーキ保持解除領域が存在していない。これに伴い、第2実施形態では、保持判断領域がブレーキ領域のみに設けられている。第2実施形態では、保持部を保持状態とする場合の動作については、保持判断領域が狭い他は、第1実施形態と同様である。
【0040】
一方、第2実施形態では、第1実施形態におけるブレーキ保持領域及びブレーキ保持解除領域が存在していない。よって、操作レバー101をブレーキ保持領域を超えてさらに前方へ移動させてブレーキ保持解除領域に移動させることによって、保持部の保持状態を解除する動作が行えない点で、第1実施形態と異なるが、この点以外では、保持部の保持状態を解除する動作については、第1実施形態と同様である。したがって、先に示した
図5において、C点以降は、ブレーキの保持状態を解除可能である。また、C点以降もブレーキの保持状態は継続しているが、運転者が操作レバー101を前方(ブレーキ領域側)へ操作すれば、保持部のブレーキ保持状態が解除される。この構成によって、一定時間経過後、かつ、操作レバー101を前方(ブレーキ領域側)へ動かすことで、運転者がブレーキのロックを解除状態としたいという確実な意図がある場合にのみブレーキの保持状態を解除することができるため、誤操作を抑制することができる。また、第1実施形態よりも操作レバー101の操作ストロークを少なくすることが可能であり、より簡単な構成で自動的に、又は、簡単にブレーキ保持状態とすることができる運転補助装置を実現できる。
【0041】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0042】
(1)実施形態において、運転補助装置1は、ブレーキペダル106を物理的に押圧する例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、アクセルペダルを物理的に押圧し、ブレーキペダル106は物理的に押圧しない構成としてもよい。この場合は、操作レバー101によるブレーキ操作量を検出するブレーキセンサ部を設け、このブレーキセンサ部による検出量をブレーキ操作量として車両の制御部へ伝え、ブレーキ動作を行う。また、操作レバーによるアクセル操作とブレーキ操作の双方とも、センサによって検出して、アクセル動作とブレーキ動作とを行うようにしてもよい。
【0043】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0044】
1 運転補助装置
10 制御部
11 第1判断部
12 第2判断部
13 切り替え指示部
20 電源
30 車両速度検出部
100 荷重伝達装置
101 操作レバー
102 第1部材
103 第2部材
104 第3部材
105 伝達部材
106 ブレーキペダル
107 第4部材
108 係止歯部材
110 ブレーキロックソレノイド
111 係止爪部材
112 係止爪部材