(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159467
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シリンダー保護カバー
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20241031BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20241031BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F15B15/14 335C
F16J3/04 C
F16J15/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004383
(22)【出願日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2023072012
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523157209
【氏名又は名称】株式会社工営
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】楠 高幸
【テーマコード(参考)】
3H081
3J043
3J045
【Fターム(参考)】
3H081BB02
3H081CC07
3H081CC08
3H081EE07
3H081HH01
3J043AA03
3J043AA11
3J043DA06
3J043FA04
3J043FB12
3J045AA20
3J045CB16
3J045CB23
3J045EA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】建設現場における安全性を考慮し、バンド部材の痛みや汚れを防止するとともに、シリンダー保護カバー自体の弛みを効果的に解消でき、かつ安価に容易に製作することができるシリンダー保護カバーを提供する。
【解決手段】シリンダー保護カバー1の上端部については、スカート部3の長さsを大きくとり、スカート部3の余長部分を折返し部4として、谷折り線4aで折り返すことで、折返し部4でバンド部材の外面を覆い隠すことができるようにする。下端部については、スカート部3の端部にバンド部材の幅より長いスカート状の重ね合わせ部5を設け、バンド部材の外周面を重ね合わせ部5で覆えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材による大径部と小径部が交互に形成され、建設工事用の重機のシリンダーロッド部分の外周を覆うジャバラ状のカバー本体と、前記カバー本体の端部に形成され、バンド部材の締め付けによって外側から前記シリンダーロッドの外周部に固定されるスカート部とを備えたシリンダー保護カバーにおいて、前記スカート部の端部に前記バンド部材の幅より長い谷折りの折返し部を設け、前記バンド部材の外周面を前記折返し部で覆えるようにしたことを特徴とするシリンダー保護カバー。
【請求項2】
請求項1記載のシリンダー保護カバーにおいて、前記折返し部には先端部から谷折り線にかけて切込みが設けられていることを特徴とするシリンダー保護カバー。
【請求項3】
シート材による大径部と小径部が交互に形成され、建設工事用の重機のシリンダーロッド部分の外周を覆うジャバラ状のカバー本体と、前記カバー本体の端部に形成され、バンド部材の締め付けによって外側から前記シリンダーロッドの外周部に固定されるスカート部とを備えたシリンダー保護カバーにおいて、前記スカート部の端部に前記バンド部材の幅より長いスカート状の重ね合わせ部を設け、前記バンド部材の外周面を前記重ね合わせ部で覆えるようにしたことを特徴とするシリンダー保護カバー。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のシリンダー保護カバーにおいて、前記大径部どうしの複数区間におけるピッチが、前記カバー本体の一端側で大きくなるようにしたことを特徴とするシリンダー保護カバー。
【請求項5】
請求項4記載のシリンダー保護カバーにおいて、前記大径部どうしの複数区間におけるピッチが、前記カバー本体の一端側から他端側に徐々に短くなるようにしたことを特徴とするシリンダー保護カバー。
【請求項6】
請求項1~3の何れかに記載のシリンダー保護カバーにおいて、前記シート材が熱可塑性樹脂シートであることを特徴とするシリンダー保護カバー。
【請求項7】
請求項6記載のシリンダー保護カバーにおいて、少なくとも前記カバー本体のジャバラ状の部分が、所定形状に裁断された熱可塑性樹脂シートどうしの高周波ウェルダー融着によって形成されていることを特徴とするシリンダー保護カバー。
【請求項8】
請求項7記載のシリンダー保護カバーの製造方法であって、熱可塑性樹脂シートから周方向の一部に切欠き部を有する円盤形状に裁断されたシート材の切欠き端部どうしを高周波ウェルダーによって融着させて側面からみた形状が円錐台形状のリング体を形成し、同様に形成されたリング体どうしを大径部と小径部が交互になるように高周波ウェルダーにより溶着させて前記カバー本体のジャバラ状の部分を形成させることを特徴とするシリンダー保護カバーの製造方法。
【請求項9】
請求項8記載のシリンダー保護カバーの製造方法において、前記カバー本体のジャバラ状の部分の端部に、さらに高周波ウェルダーにより熱可塑性樹脂シートからなるスカート部を融着させることを特徴とするシリンダー保護カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設工事用の重機の脚部のフロントジャッキなどに用いられるシリンダー保護カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、油圧シリンダー、水圧シリンダー、空気圧シリンダー等のシリンダーを構成するピストンロッドを保護するためのシリンダー保護カバーとして、布、ゴム、合成樹脂等の可撓性を有する素材で作製したカバーを、シリンダーのロッド部を覆うようにロッド先端部からシリンダーチューブの先端部位にかけて取り付ける技術が知られている。
【0003】
これらのシリンダー保護カバーに関しては、強度を備えつつ、ロッドの伸縮に合わせて容易に伸縮できるように大径部と小径部が交互に形成されたジャバラ構造としたものが多い。
【0004】
このようなシリンダー保護カバーを、例えば
図8、
図9に示すように建設工事用の大型重機20、30のフロントジャッキなどに使用する場合、
図10に示すように、バンド部材6を用いてシリンダー保護カバー1をシリンダーロッドに固定する。
【0005】
バンド部材6としては、通常、腐食しにくい素材を用いたバンド部材を用いることが多いが、セメントの漏れや砂埃の巻き上げなど過酷な建設現場の環境では痛みや汚れが生じやすいという問題がある。
【0006】
また、特に小型重機のように径の小さいシリンダーの保護カバーとして使用する場合においては、シリンダー保護カバー1が上下方向に用いられるため、
図11に示すようにシリンダー保護カバー1の下部が縮まる形で弛みSLが生じてしまい、重機の操作時や現場作業員のミスにより弛み部分が損傷しやすく、特にセメントや土砂、ゴミなどが付着した場合に、損傷して早期の交換が必要になる原因となっている。
【0007】
また、重機が現場での稼働を終え、資材置き場などでメンテナンスを行う際には、
図12に示すように、重機のシリンダーはフロントジャッキの中にしまわれ、シリンダー保護カバー1は取り外されることなくフロントジャッキと重機の脚の間に挟まれる。この時、ジャバラに強い圧力が生じるので形が変形してしまい、これも破損の原因になっている。従来、この圧力に耐えるために保護カバーにゴム性の素材を採用している場合もある。
【0008】
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、シリンダーのピストンロッドの伸縮に伴う弛みを吸収し、かつピストンロッドへの取付けが容易なシリンダー保護カバーとして、保護カバーの長手方向に一端から他端にわたり少なくとも一箇所切断された切断部とを設けた構造や、蛇腹の太径部の外径寸法が一端から他端に向けて徐々に大きくなるように形成した構造が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、ピストンロッドの伸長時に外気が吸い込まれるシリンダー保護カバーにおいて、ピストンロッドに付着する粉塵等の異物がシリンダーチューブ内に侵入するのを防止するための構造として、カバー部本体を構成する各可撓性シートの谷折れ部からピストンロッドの外周面に摺接するように、ワイピング部を少なくとも1箇所配置する構成としたシリンダー保護カバーが開示されている。
【0010】
また、特許文献3には、シリンダーのピストンロッドが縮んだ状態における厚みを抑えることが可能なシリンダー保護カバーとして、柔軟性を有するシート材で形成され、ピストンロッドの軸方向に沿った一端から他端に亘って切込みが形成されると共に、ピストンロッドの軸方向の伸縮動作に伴って蛇腹状に伸縮する蛇腹体と、その蛇腹体の頂部と溝部との間を繋ぐ繋ぎ面部に設けられ、蛇腹体における切込みの一縁側と他縁側とを連結する複数の連結部とを備え、複数の連結部はそれぞれ柔軟性を有するフラップ状のシート材で形成され、一縁側における繋ぎ面部の表面上に取り付けられて他縁側に向かって延在する延在片と、他縁側に形成されて延在片が係止される係止孔とを含み、延在片は係止孔に挿通されて他縁側における繋ぎ面部の表面上または裏面上で挿通方向と交差する方向に張り出すことにより係止される張り出し部を有するという構成を備えたシリンダー保護カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006-161980号公報
【特許文献2】特開2010-096294号公報
【特許文献3】特許第6775265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、建設工事用の重機のフロントジャッキなどに用いられるシリンダー保護カバーにおいては、シリンダーに固定するためのバンド部材の痛みや汚れ、シリンダー保護カバーの弛みやその弛みに起因する損傷などが問題となっている。
【0013】
特に、近年では建設現場における安全性が重要視されるようになり、安全性の面からも種々の創意工夫がなされているが、複雑な形状となり製作が難しかったり、コストが高くつくといった課題がある。
【0014】
本発明は、建設現場における安全性を考慮し、バンド部材の痛みや汚れを防止するとともに、シリンダー保護カバー自体の弛みを効果的に解消でき、かつ安価に容易に製作することができるシリンダー保護カバーを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のシリンダー保護カバーは、シート材による大径部と小径部が交互に形成され、建設工事用の重機のシリンダーロッド部分の外周を覆うジャバラ状のカバー本体と、このカバー本体の端部に形成され、バンド部材の締め付けによって外側からシリンダーロッドの外周部に固定されるスカート部とを備えたシリンダー保護カバーにおいて、スカート部の端部にバンド部材の幅より長い谷折りの折返し部を設け、バンド部材の外周面を前記折返し部で覆えるようにしたものである。
【0016】
スカート部の折返し部でバンド部材の外周面全体を覆うことで、セメントの漏れや砂埃の巻き上げなどが生じる過酷な建設現場の環境においても、バンド部材の汚れや痛みを簡単かつ効果的に防止することができる。
【0017】
この折返し部は、カバー本体の両端部のスカート部に設けることもできるが、一方の端部のみでもよい。
【0018】
また、この折返し部については、先端部から谷折り線にかけて切込みを設けておくことで、バンド部材で固定した状態から折返し部を簡単に折り返すことができる
【0019】
本発明のシリンダー保護カバーの他の形態としては、シート材による大径部と小径部が交互に形成され、建設工事用の重機のシリンダーロッド部分の外周を覆うジャバラ状のカバー本体と、カバー本体の端部に形成され、バンド部材の締め付けによって外側からシリンダーロッドの外周部に固定されるスカート部とを備えたシリンダー保護カバーにおいて、スカート部の端部にバンド部材の幅より長いスカート状の重ね合わせ部を設け、バンド部材の外周面を重ね合わせ部で覆えるようにしたものとすることができる。
【0020】
すなわち、バンド部材がスカート部外面と重ね合わせの内面との間に入り込む形で取り付けられることで、セメントの漏れや砂埃の巻き上げなどが生じる過酷な建設現場の環境においても、バンド部材の汚れや痛みを簡単かつ効果的に防止することができる。
【0021】
なお、上述した折返し部でバンド部材の外周面を覆う構造と、重ね合わせ部でバンド部材の外周面を覆う構造を組み合わせることができ、例えば上下方向に使用されるシリンダー保護カバーの上端部側については折返し部でバンド部材の外周面を覆う構造、下端部側については重ね合わせ部でバンド部材の外周面を覆う構造とすることができる。
【0022】
この場合、上端部については折返し部が下向きに折り返されるため、めくれる心配がなく、下端部については重ね合わせ部が単純に垂下するだけなので、バンド部材の取付け作業が容易である。
【0023】
また、本発明のシリンダー保護カバーにおいて、大径部どうしの複数区間におけるピッチが、カバー本体の一端側で大きくなるようにすることができる。
【0024】
本発明のシリンダー保護カバーは、大型杭打機、小型地盤改良機、鋼管回転圧入機などの建設工事用の重機の姿勢を固定するためのフロントジャッキなど、上下方向に使用される場合などに、特に有効であり、シリンダーロッドを所定の高さ伸長させた状態でのカバー本体下部の弛みを効果的に抑制することができる。
【0025】
すなわち、カバー本体の大径部どうしの伸長状態におけるピッチを、使用状態における下方の複数区間で大きくなるように製作することで、保護カバーの下部での弛みの集中を抑えることができる。また、建設工事現場で保護カバーに付着するセメント硬化物や、廃塵などに起因する損傷も、弛みを抑えることで防ぐことができる。
【0026】
ピッチを大きくする複数区間は、保護カバーの全体の寸法や標準とする長さによっても異なり、例えば保護カバーの一端側の数区間のみ他の区間のピッチより大きくする場合、カバー本体の一端側から他端側に徐々に短くなるようにする場合などが考えられるが、一端側の数区間のみピッチを大きくし、他の区間を一律とすれば、製作的には容易である。
【0027】
なお、後者のカバー本体の一端側から他端側に徐々に短くなるようにする場合については、さらに保護カバーの一端から他端に向けて複数段階でピッチを短くする場合、連続的にピッチを短くする場合なども考えられる。
【0028】
本発明のシリンダー保護カバーを構成するシート材に関しては、安価でかつ損傷しにくい丈夫な材質が望ましく、例えばポリ塩化ビニルを素材とするシートなどが適する。
【0029】
また、本発明のシリンダー保護カバーの材料として、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を用いる場合のシリンダー保護カバーの製造方法として、少なくとも前記カバー本体のジャバラ状の部分を、所定形状に裁断された熱可塑性樹脂シートどうしの高周波ウェルダー融着によって製造することができる。
【0030】
より具体的には、熱可塑性樹脂シートから周方向の一部に切欠き部を有する円盤形状に裁断されたシート材の切欠き端部どうしを高周波ウェルダーによって融着させて中空円錐台形状のリング体を形成し、同様に形成されたリング体どうしを大径部と小径部が交互になるように高周波ウェルダーにより溶着させて前記カバー本体のジャバラ状の部分を形成させることができる。
【0031】
この場合、従来一般的に用いられているピアノ線などの形態保持用の骨組材を入れなくてもジャバラ形状を保持させることができる。
【0032】
また、カバー本体のジャバラ状の部分の端部には、同様に高周波ウェルダーにより熱可塑性樹脂シートからなるスカート部を融着させてシリンダー保護カバー全体を製造することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のシリンダー保護カバーによれば、シリンダー保護カバー端部のスカート部の折返し部あるいは重ね合わせ部により、バンド部材の外周面を覆うことができるため、過酷な建設現場の環境においても、バンド部材の汚れや痛みなどを簡単かつ効果的に防止することができる。
【0034】
また、シリンダー保護カバーの大径部どうしの複数区間におけるピッチが、カバー本体の一端側で大きくなるようにすることで、特に保護カバーが上下方向に使用される場合において、シリンダーロッドを所定の高さ伸長させた状態でのカバー本体下部の弛みを効果的に抑制することができる。
【0035】
すなわち、カバー本体の大径部どうしの伸長状態におけるピッチを、使用状態における下方の複数区間で大きくなるように製作することで、保護カバーの下部での弛みの集中を抑えることができる。また、建設工事現場で保護カバーに付着するセメント硬化物や、廃塵に起因する損傷も、弛みを抑えることで防ぐことができる。
【0036】
シリンダー保護カバーの材料として、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を用いる場合には、カバー本体のジャバラ状の部分やスカート部を、高周波ウェルダー融着によって容易に製造することができる。また、その場合、形態保持用の骨組材を入れなくてもジャバラ形状を保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明のシリンダー保護カバーの一実施形態(大型重機用)を示したものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【
図2】
図1の実施形態における上部のバンド部材の取付け手順を示したもので、(a)はバンド部材を取り付けた状態の正面図、(b)は折返し部でバンド部材を覆った状態を示す正面図(隠れているバンド部材を一点鎖線で表示)である。
【
図3】
図1の実施形態における上部のバンド部材の取付け手順を示したもので、(a)はバンド部材の取り付け前の状態を示す正面図、(b)は重ね合わせ部でバンド部材を覆った状態を示す正面図(隠れているバンド部材を一点鎖線で表示)である。
【
図4】本発明のシリンダー保護カバーの他の実施形態(小型重機用)を示したものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【
図5】本発明のシリンダー保護カバーのさらに他の実施形態(小型重機用)を示したものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【
図6】本発明のシリンダー保護カバーのさらに他の実施形態を示したものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【
図7】(a)~(g)は本発明のシリンダー保護カバーの製造手順の一例を示す説明図である。
【
図8】建設工事用の大型重機(三点式杭打機)用の従来のシリンダー保護カバーの取付け状態を示す図である。
【
図9】建設工事用の小型重機用の従来のシリンダー保護カバーの取付け状態を示す図(日本車輌製造株式会社の地盤改良・鋼管回転圧入兼用機の写真を引用)である。
【
図10】従来のシリンダー保護カバーのバンド部材によるシリンダーへの取付け状態を示す図である。
【
図11】従来のシリンダー保護カバーの下部の弛みを示す図である。
【
図12】従来のシリンダー保護カバーがフロントジャッキと重機の脚の間に挟まれている状態を示す図である。
【
図13】従来の地盤改良機に用いられているシリンダー保護カバーの問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図3に基づいて説明する。
図1は、本発明のシリンダー保護カバーの一実施形態(大型重機用)を示したものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【0039】
この
図1は、三点式杭打機など大型の建設工事用重機のフロントジャッキ部分に用いる保護カバー自体の外径Dが約380mm程度の場合を想定したシリンダー保護カバーを使用状態における上下方向に合わせて図示したものである。
【0040】
寸法の一例を挙げると、
図1において、シリンダー保護カバー1の外径(大径部11の外径)Dが380mm、上側のスカート部3の外径d
1が250mm、下側のスカート部3の外径d
2が300mm、スカート部3の長さsが60mm、カバー本体部2の端部からスカート部3までの軸方向長さeが120mm、カバー本体2のジャバラのピッチpが50mm、上端部の折返し部の長さおよび下端部の重ね合わせ部の長さrがそれぞれ30mmである。
【0041】
シリンダー保護カバー1は、図に示すように、大径部11と小径部12が交互に形成されて伸縮するジャバラ状のカバー本体2と、カバー本体2の両端部に形成された取付け部としてのスカート部3を備えている。
【0042】
図示を省略しているが、大径部11の内側には、形態保持用の骨組材としてリング状のピアノ線、バネ材あるいはワイヤーなどが取り付けられる。
【0043】
カバー本体2およびスカート部3に関しては、安価でかつ丈夫な素材であるポリ塩化ビニル(PVC)を用いることを想定している。
【0044】
シリンダー保護カバー1を重機のフロントジャッキなどに取り付ける場合、前述した
図10に示されるように、バンド部材6を用いてシリンダーロッドに固定しているが、本発明では
図2に拡大して示すように、上端部について、スカート部3の長さsを大きくとり、スカート部3の余長部分を折返し部4として、谷折り線4aで折り返すことで、折返し部4でバンド部材6の外面を覆い隠すことができるようにしている(
図2(b)参照)。
【0045】
また、この例で、下端部については、
図3に拡大して示すように、スカート部3の端部にバンド部材の幅より長いスカート状の重ね合わせ部5を設け、バンド部材6の外周面を重ね合わせ部5で覆えるようにしている(
図3(b)参照)。すなわち、バンド部材6がスカート部3の外面と重ね合わせ部5の内面との間に入り込むようになっている。
【0046】
なお、上端部の折返し部4には先端部4bから谷折り線4aにかけて切込み4cを設けることで、バンド部材6を取り付けた後、折返し部4を容易に折り返すことができるようにしている。
【0047】
また、同様に、下端部の重ね合わせ部5についても切込み5cを設けることで、バンド部材6を容易に取り付けることができるようにしている。
【0048】
図4は、本発明のシリンダー保護カバーの他の実施形態(小型重機用)を示したものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【0049】
この
図4は、例えば、地盤改良機、鋼管回転圧入機などの比較的小型の建設工事用重機のフロントジャッキ部分に用いる保護カバー自体の外径Dが約200mm程度の場合を想定したシリンダー保護カバーを使用状態における上下方向に合わせて図示したものである。
【0050】
寸法の一例を挙げると、
図4において、シリンダー保護カバー1の外径(大径部11の外径)Dが200mm、上側のスカート部3の外径d
1が140mm、下側のスカート部3の外径d
2が125mm、スカート部3の長さsが70mm、カバー本体部2の端部からスカート部3までの軸方向長さeが25mm、カバー本体部2のジャバラの上部区間のピッチp
1が80mm、下部区間のピッチp
2が90mm、上端部の折返し部の長さおよび下端部の重ね合わせ部の長さrがそれぞれ35mmである。
【0051】
シリンダー保護カバー1は、図に示すように、大径部11と小径部12が交互に形成されて伸縮するジャバラ状のカバー本体2と、カバー本体2の両端部に形成された取付け部としてのスカート部3を備えている。
【0052】
図示を省略しているが、大径部の内側には、形態保持用の骨組材として、ピアノ線相当をリング状としたものが取り付けられている。
【0053】
カバー本体2およびスカート部3に関しては、小型重機用のシリンダー保護カバーではゴム状の素材を使用する場合が多いが、本実施例では安価でかつ丈夫な素材であるポリ塩化ビニル(PVC)を用いることを想定している。
【0054】
図1~
図3に示した実施形態と同様、上端部については、スカート部3の長さsを大きくとり、スカート部3の余長部分を折返し部4として、谷折り線4aで折り返すことで、折返し部4でバンド部材6の外面を覆い隠すことができるようにしている。また、下端部については、スカート部3の端部にバンド部材6の幅より長いスカート状の重ね合わせ部5を設け、バンド部材6の外周面を重ね合わせ部5で覆えるようにしている。
【0055】
また、本実施形態においては、カバー本体2の大径部11どうしの伸長状態におけるピッチについて、下部の区間のピッチp2が上部の区間のピッチp1より大きくなるように製作することで、保護カバーの下部での弛みの集中が抑えられるようにしている。弛みの集中を抑えることで、建設工事現場でこの部分に付着するセメント硬化物や、廃塵に起因する損傷などを防ぐことができる。
【0056】
小型の重機用のシリンダーカバーの場合、従来の既製品の全長は一般的に1m~1.2m程度である。しかしながら、重機の稼働時にシリンダーを伸ばす高さは1m未満であり、そのため余剰分がジャバラの弛みとなってしまう。この弛みの部分にセメントが付着し、固まってジャバラの破損につながるケースや現場作業者がセメントの付着に気づき、それを取り払おうと弛みを引っ張り上げることでの破損のケースが多発している。
【0057】
これに対し、前述した
図4に示す本発明のシリンダーカバーでは、この弛みの影響を軽減するために、重機が通常稼働時にシリンダーを伸ばす高さである60~65cmとしている。丈を短くすることでジャバラの破損をなるべく防ぐこと、さらに弛みの軽減によって重機の脚元が整理され、セメントの付着にも気づきやすくなる。
【0058】
また、重機が現場での稼働を終え、資材置き場などでメンテナンスを行う際には重機のシリンダーはフロントジャッキの中にしまわれ、ジャバラは取り外されることなくシリンダーと重機の脚の間に挟まれる(
図12参照)。
【0059】
この時、ジャバラに強い圧力が生じるので形が変形してしまい、破損の原因になる(油圧でシリンダーをしまうので、ジャバラに強い圧力が加わる)。既製品はこの圧力に耐えるためにゴム製の素材を採用している場合がある。
【0060】
これに対し、シリンダーカバーの素材を塩化ビニル(PVC)とした場合、この油圧に耐えきれない可能性がある。この点については、既製品よりも内径を大きくすることで、ジャバラに加わる圧力を分散させ、シリンダーカバーの損傷を防ぐことができる。
【0061】
この他、従来のシリンダー保護カバーは一般的に白色であるが、建設現場ではセメントを大量に使用するため、使用時にセメントホースからセメントが漏れ、シリンダー保護カバーのジャバラに付着し、汚れが目立ってしまうことがある。そのための対策として、シリンダー保護カバーの色を汚れが目立たない灰色を基準とすることが考えられる。なお、重機の操縦者によっては色の好みが分かれるため、灰色の他に白、黒、青色を用いることも考えられる。
【0062】
図5は、本発明のシリンダー保護カバーの他の実施形態(小型重機用)を示したものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【0063】
この
図5は、
図4と同様に、例えば、地盤改良機、鋼管回転圧入機などの比較的小型の建設工事用重機のフロントジャッキ部分に用いる保護カバー自体の外径Dが約200mm程度の場合を想定したシリンダー保護カバーを使用状態における上下方向に合わせて図示したものである。
【0064】
寸法の一例を挙げると、
図5において、シリンダー保護カバー1の外径(大径部11の外径)Dが200mm、上側のスカート部3の外径d
1が125mm、下側のスカート部3の外径d
2が140mm、上側のスカート部3の長さs
1が80mm、下側のスカート部の長さs
2が40mm、カバー本体部2のジャバラの区間のピッチpが44mmである。
【0065】
シリンダー保護カバー1は、図に示すように、大径部11と小径部12が交互に形成されて伸縮するジャバラ状のカバー本体2と、カバー本体2の両端部に形成された取付け部としてのスカート部3を備えている。下側のスカート部3の上には空気孔を設けている。
【0066】
図1~
図4に示した実施形態と同様、上端部については、スカート部3の長さs
1を大きくとり、スカート部3の余長部分を折返し部4として、谷折り線4aで折り返して覆い隠すことができるようにしている。また、下端部については、
図4の実施形態と異なり、
図1~3の実施形態と同様、バンド部材の幅より長いスカート状の重ね合わせ部5を設け、バンド部材の外周面を重ね合わせ部5で覆えるようにしている。
【0067】
カバー本体2およびスカート部3に関しては、小型重機用のシリンダー保護カバーではゴム状の素材を使用する場合が多いが、本実施例では安価でかつ丈夫な素材であるポリ塩化ビニル(PVC)を用いることを想定している。
【0068】
また、本実施例では、シリンダー保護カバー1を、後述する
図7に示すような高周波ウェルダー融着によって製造することができ、その場合、形態保持用の骨組材は省くことができる。
【0069】
図6は、本発明のシリンダー保護カバーのさらに他の実施形態を示したものであり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【0070】
この
図6も、地盤改良機、鋼管回転圧入機などの比較的小型の建設工事用重機のフロントジャッキ部分に用いる保護カバー自体の外径Dが約200mm程度の場合を想定したものであるが、
図5の実施例との大きな違いは、下端のスカート部3およびその外側の重ね合わせ部5の外径を大きくした点である。
【0071】
例えば
図13に示すような地盤改良機においては、フロントジャッキにシリンダー保護カバーを取り付ける場合に、ボルトで固定される上部取付け部32と四角いパッド状の下部取付け部33に関し、下部取付け部33がフロントジャッキのベース部31にマグネットにより簡易に接続される構成となっており、その場合、重機が稼働している最中にマグネットから外れてしまうことがあり(
図13(a)参照)、沿岸域の作業ではベース部31近傍が塩害によって錆びてしまうといったことがある(
図13(b)参照)。
【0072】
これに対し、
図6の実施形態では、下端のスカート部3およびその外側の重ね合わせ部5の外径を大きくして、ベース部31もカバーできるようにしたものである。
【0073】
寸法の一例を挙げると、
図6において、シリンダー保護カバー1の外径(大径部11の外径)Dが200mm、上側のスカート部3の外径d
1が125mm、下側のスカート部3の外径d
2が195mm、重ね合わせ部5の外径d
3が205mm、上側のスカート部3の長さs
1が150mm、下側のスカート部の長さs
3が110mm、カバー本体部2のジャバラの区間のピッチpが36mmである。
【0074】
図7(a)~(g)は、本発明のシリンダー保護カバーの製造手順の説明図であり、以下の手順でシリンダー保護カバー1を製造することができる。
【0075】
(1) ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂シートから周方向の一部に切欠き部41を有する円盤形状に裁断する(
図7(a)参照)。図中、符号40は裁断されたシートを示す。
【0076】
(2) 裁断されたシート40の切欠き部41の端部どうしを、高周波ウェルダー装置を使用して融着させることで、側面からみた形状が円錐台形状となるリング体を形成させる。図中、符号42は融着部を示す(
図7(b)参照)。
【0077】
(3) 同様に形成されたリング体どうしを、大径部11と小径部12が交互になるように高周波ウェルダーにより、大径部11どうしまたは小径部12どうしを、順次、溶着させて(
図7(c)~(e)参照)、カバー本体のジャバラ状の部分を形成させる(
図7(f)参照)。
【0078】
(4) カバー本体のジャバラ状の部分の端部に、さらに高周波ウェルダーにより熱可塑性樹脂シートからなるスカート部3、重ね合わせ部5を融着させる(
図7(g)参照)。
【符号の説明】
【0079】
1…シリンダー保護カバー
2…カバー本体
3…スカート部
4…折返し部
4a…谷折り線
4b…先端部
4c…切込み
5…重ね合わせ部
5c…切込み
6…バンド部材
7…空気孔
11…大径部
12…小径部
20…大型重機
30…小型重機
31…ベース部
32…上部取付け部
33…下部取付け部
40…裁断したシート
41…切欠き部
42…融着部
SL…弛み