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特開2024-159476測定ユニット、測定ユニットの製造方法及び生体試料測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159476
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】測定ユニット、測定ユニットの製造方法及び生体試料測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20241031BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20241031BHJP
   G01N 1/42 20060101ALI20241031BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20241031BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20241031BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01N21/78 C
G01N21/03 Z
G01N1/42
G01N35/02 A
C12M1/02 A
C12M1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009568
(22)【出願日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2023074638
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】全 哲洙
(72)【発明者】
【氏名】數村 公子
【テーマコード(参考)】
2G052
2G057
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AD46
2G052CA04
2G052DA08
2G052EB08
2G052EB09
2G052FB02
2G052FB07
2G052GA11
2G057AA04
2G057AC01
2G057BA01
2G057BB06
2G057CB05
2G057HA03
2G058BB02
2G058BB07
2G058BB12
2G058CC08
2G058CE01
2G058EA04
2G058EA12
2G058FA02
2G058GA01
4B029AA08
4B029FA01
4B029HA05
(57)【要約】
【課題】溶液の品質の維持及び簡便な作業を可能にする測定ユニット、測定ユニットの製造方法及び生体試料測定方法を提供する。
【解決手段】測定ユニットは、生体試料の特性の測定に用いられる。測定ユニットは、第1容器4と、第1溶液6と、を備えている。第1容器4は、第1収容空間S1、第1収容空間S1に連通する開口4a、及び第1収容空間S1で発生する光を透過させる光透過領域4bを含んでいる。第1溶液6は、生体試料から発生する成分と反応する指示薬を含む複数の試薬の混合物である。第1溶液6は、第1収容空間S1に収容された状態で凍結されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料の特性の測定に用いられる測定ユニットであって、
第1収容空間、前記第1収容空間に連通する第1開口、及び前記第1収容空間で発生する光を透過させる光透過領域を含む第1容器と、
前記生体試料から発生する成分と反応する指示薬を含む複数の試薬の混合物である第1溶液と、を備え、
前記第1溶液は、凍結された状態で前記第1収容空間に収容されている、測定ユニット。
【請求項2】
前記生体試料は、白血球を含んでいる、請求項1に記載の測定ユニット。
【請求項3】
前記指示薬は、蛍光指示薬である、請求項1に記載の測定ユニット。
【請求項4】
前記第1溶液に浸漬されるように前記第1収容空間に収容された回転子を更に備える、請求項1に記載の測定ユニット。
【請求項5】
前記第1容器は、平板状を呈している、請求項1に記載の測定ユニット。
【請求項6】
前記第1容器は、曲面状を呈する内面を含んでいる、請求項1に記載の測定ユニット。
【請求項7】
第2収容空間、及び前記第2収容空間に連通する第2開口を含む第2容器と、
前記生体試料の機能を活性化させる刺激剤を含む第2溶液と、を更に備え、
前記第2溶液は、凍結された状態で前記第2収容空間に収容されている、請求項1に記載の測定ユニット。
【請求項8】
前記第2溶液と前記第2開口との間には仮収容空間が存在する、請求項7に記載の測定ユニット。
【請求項9】
前記仮収容空間の容積は、前記第2溶液の体積以上ある、請求項8に記載の測定ユニット。
【請求項10】
前記第2容器は、ピペットチップである、請求項7に記載の測定ユニット。
【請求項11】
生体試料の特性の測定に用いられる測定ユニットを製造する方法であって、
第1収容空間、前記第1収容空間に連通する第1開口、及び前記第1収容空間で発生する光を透過させる光透過領域を含む第1容器が準備される第1準備工程と、
前記生体試料から発生する成分と反応する指示薬を含む複数の試薬の混合物である第1溶液が前記第1収容空間に収容された状態で凍結される第1凍結工程と、を備える、測定ユニットの製造方法。
【請求項12】
前記第1溶液が調製される溶液調製工程を更に備え、
前記溶液調製工程では、前記複数の試薬が前記第1収容空間の外側で混合される、請求項11に記載の測定ユニットの製造方法。
【請求項13】
前記第1凍結工程では、前記第1収容空間に収容された回転子が前記第1溶液に浸漬された状態で、前記第1溶液が凍結される、請求項11に記載の測定ユニットの製造方法。
【請求項14】
第2収容空間、及び前記第2収容空間に連通する第2開口を含む第2容器が準備される第2準備工程と、
前記生体試料の機能を活性化させる刺激剤を含む第2溶液が前記第2収容空間に収容された状態で凍結される第2凍結工程と、を更に備える、請求項11に記載の測定ユニットの製造方法。
【請求項15】
前記第2凍結工程では、前記第2溶液と前記第2開口との間に仮収容空間が存在する状態で、前記第2溶液が凍結される、請求項14に記載の測定ユニットの製造方法。
【請求項16】
前記第2凍結工程の前に、前記第2溶液が前記第2収容空間へ導入される溶液導入工程を更に備え、
前記溶液導入工程では、前記第2溶液が前記第2開口を介して前記第2収容空間へ吸引された後、空気が前記第2開口を介して前記第2収容空間へ更に吸引される、請求項15に記載の測定ユニットの製造方法。
【請求項17】
前記溶液導入工程で吸引される前記空気の体積は、前記溶液導入工程で吸引される前記第2溶液の体積以上である、請求項16に記載の測定ユニットの製造方法。
【請求項18】
生体試料の特性を測定する方法であって、
請求項7に記載の測定ユニットが準備される準備工程と、
前記第1溶液が解凍される第1解凍工程と、
前記第1解凍工程の後、前記生体試料が前記第1開口を介して前記第1収容空間へ添加される第1添加工程と、
前記第2溶液が解凍される第2解凍工程と、
前記第2解凍工程の後、前記第2溶液が前記第2開口から導出されると共に前記第1開口を介して前記第1収容空間へ添加される第2添加工程と、
前記第1収容空間で発生し且つ前記第1容器の前記光透過領域を透過した光が測定される測定工程と、を備える、生体試料測定方法。
【請求項19】
前記第1添加工程の後、前記第1溶液の温度が調整される温度調整工程を更に備え、
前記第1解凍工程では、前記第1溶液の温度が前記生体試料にとっての適温に至るように前記第1溶液が加温され続け、
前記温度調整工程では、前記第1溶液の温度が前記生体試料にとっての適温に維持されるように前記第1溶液が加温される、請求項18に記載の生体試料測定方法。
【請求項20】
前記準備工程では、前記第1溶液に浸漬された回転子が準備され、
前記温度調整工程では、前記回転子が回転されながら前記第1溶液が加温される、請求項19に記載の生体試料測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定ユニット、測定ユニットの製造方法及び生体試料測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体試料の特性を測定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような技術では、容器への複数の試薬の導入によって調製された調製溶液に対して、被検体(例えば人体)から採取された生体試料が添加された後、容器の収容空間で発生する光が測定されることで、生体試料の特性が測定される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-213464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術では、複数の試薬のうち少なくとも一つが常温の状態では劣化しやすい場合があり、その場合には、調製溶液の調製及び容器への調製溶液の導入のような作業を光の測定の直前に且つ被検体の近傍で実施することが望ましい。しかし、これらの作業が被検体の近傍で実施されると、作業が煩雑となるおそれがある。
【0005】
本発明は、溶液の品質の維持及び簡便な作業を可能にする測定ユニット、測定ユニットの製造方法及び生体試料測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定ユニットは、[1]「生体試料の特性の測定に用いられる測定ユニットであって、第1収容空間、前記第1収容空間に連通する第1開口、及び前記第1収容空間で発生する光を透過させる光透過領域を含む第1容器と、前記生体試料から発生する成分と反応する指示薬を含む複数の試薬の混合物である第1溶液と、を備え、前記第1溶液は、凍結された状態で前記第1収容空間に収容されている、測定ユニット。」である。
【0007】
この測定ユニットでは、複数の試薬の混合物である第1溶液が、凍結された状態で第1収容空間に収容されている。これにより、第1溶液が凍結された状態で測定ユニットを被検体の近傍に持ち運ぶことができ、被検体の近傍で第1溶液を解凍した後、被検体から採取された生体試料を第1溶液に添加することができる。そのため、第1溶液の品質が維持されるだけではなく、被検体の近傍では、第1溶液の調製及び第1容器への第1溶液の導入のような作業が不要となる。よって、この測定ユニットによれば、第1溶液の品質が維持されると共に生体試料の特性を測定するための作業が簡便になる。
【0008】
本発明の測定ユニットは、[2]「前記生体試料は、白血球を含んでいる、上記[1]に記載の測定ユニット。」であってもよい。白血球の特性の測定に用いられる溶液には、冷凍保存が求められる場合がある。上述したように、第1溶液が凍結されているため、第1溶液の冷凍保存が実現される。
【0009】
本発明の測定ユニットは、[3]「前記指示薬は、蛍光指示薬である、上記[1]又は[2]に記載の測定ユニット。」であってもよい。蛍光指示薬を含む溶液には、冷凍保存が求められる場合がある。上述したように、蛍光指示薬を含む第1溶液が凍結されているため、蛍光指示薬を含む第1溶液の冷凍保存が実現される。
【0010】
本発明の測定ユニットは、[4]「前記第1溶液に浸漬されるように前記第1収容空間に収容された回転子を更に備える、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の測定ユニット。」であってもよい。これにより、解凍された第1溶液と第1収容空間へ添加された生体試料とを、回転子によって撹拌することができ、第1溶液への生体試料の分散を促進することができる。
【0011】
本発明の測定ユニットは、[5]「前記第1容器は、平板状を呈している、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の測定ユニット。」であってもよい。これにより、例えば第1容器が円柱状を呈している場合に比べて、第1容器の比表面積が大きくなるため、第1溶液の解凍効率が向上する。
【0012】
本発明の測定ユニットは、[6]「前記第1容器は、曲面状を呈する内面を含んでいる、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の測定ユニット。」であってもよい。これにより、第1収容空間に収容された液体が流動しやすくなるため、第1溶液への生体試料の分散が促進される。
【0013】
本発明の測定ユニットは、[7]「第2収容空間、及び前記第2収容空間に連通する第2開口を含む第2容器と、前記生体試料の機能を活性化させる刺激剤を含む第2溶液と、を更に備え、前記第2溶液は、凍結された状態で前記第2収容空間に収容されている、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の測定ユニット。」であってもよい。これにより、第2溶液が凍結された状態で測定ユニットを被検体の近傍に持ち運ぶことができ、被検体の近傍で第2溶液を解凍した後、解凍された第2溶液を第1溶液に添加することができる。そのため、第2溶液の品質が維持されるだけではなく、被検体の近傍では、第2容器への第2溶液の導入のような作業が不要となる。したがって、第2溶液の品質が維持されると共に生体試料の特性を測定するための作業が簡便になる。
【0014】
本発明の測定ユニットは、[8]「前記第2溶液と前記第2開口との間には仮収容空間が存在する、上記[7]に記載の測定ユニット。」であってもよい。これにより、解凍された第2溶液の一部が第2開口に向かって移動したとしても、当該第2溶液の一部が仮収容空間に収容されるため、第2開口からの第2溶液の漏出が抑制される。
【0015】
本発明の測定ユニットは、[9]「前記仮収容空間の容積は、前記第2溶液の体積以上である、上記[8]に記載の測定ユニット。」であってもよい。これにより、第2開口からの第2溶液の漏出が確実に抑制される。
【0016】
本発明の測定ユニットは、[10]「前記第2容器は、ピペットチップである、上記[7]~[9]のいずれか一つに記載の測定ユニット。」であってもよい。これにより、第2容器の取得が容易となる。
【0017】
本発明の測定ユニットの製造方法は、[11]「生体試料の特性の測定に用いられる測定ユニットを製造する方法であって、第1収容空間、前記第1収容空間に連通する第1開口、及び前記第1収容空間で発生する光を透過させる光透過領域を含む第1容器が準備される第1準備工程と、前記生体試料から発生する成分と反応する指示薬を含む複数の試薬の混合物である第1溶液が前記第1収容空間に収容された状態で凍結される第1凍結工程と、を備える、測定ユニットの製造方法。」である。
【0018】
この測定ユニットの製造方法によれば、上述した効果を奏する測定ユニットを製造することができる。
【0019】
本発明の測定ユニットの製造方法は、[12]「前記第1溶液が調製される溶液調製工程を更に備え、前記溶液調製工程では、前記複数の試薬が前記第1収容空間の外側で混合される、上記[11]に記載の測定ユニットの製造方法。」であってもよい。これにより、第1収容空間の外側で調製された第1溶液を複数の第1容器の第1収容空間へ順次に導入することができ、測定ユニットの製造効率の向上を実現することができる。
【0020】
本発明の測定ユニットの製造方法は、[13]「前記第1凍結工程では、前記第1収容空間に収容された回転子が前記第1溶液に浸漬された状態で、前記第1溶液が凍結される、上記[11]又は[12]に記載の測定ユニットの製造方法。」であってもよい。これにより、第1溶液に浸漬された回転子を有する測定ユニットを製造することができる。
【0021】
本発明の測定ユニットの製造方法は、[14]「第2収容空間、及び前記第2収容空間に連通する第2開口を含む第2容器が準備される第2準備工程と、前記生体試料の機能を活性化させる刺激剤を含む第2溶液が前記第2収容空間に収容された状態で凍結される第2凍結工程と、を更に備える、上記[11]~[13]のいずれか一つに記載の測定ユニットの製造方法。」であってもよい。これにより、上述した効果を奏する測定ユニットを製造することができる。
【0022】
本発明の測定ユニットの製造方法は、[15]「前記第2凍結工程では、前記第2溶液と前記第2開口との間に仮収容空間が存在する状態で、前記第2溶液が凍結される、上記[14]に記載の測定ユニットの製造方法。」であってもよい。これにより、第2凍結工程において第2溶液の一部が第2開口に向かって移動したとしても、当該第2溶液の一部が仮収容空間に収容されるため、第2開口からの第2溶液の漏出が抑制される。
【0023】
本発明の測定ユニットの製造方法は、[16]「前記第2凍結工程の前に、前記第2溶液が前記第2収容空間へ導入される溶液導入工程を更に備え、前記溶液導入工程では、前記第2溶液が前記第2開口を介して前記第2収容空間へ吸引された後、空気が前記第2開口を介して前記第2収容空間へ更に吸引される、上記[15]に記載の測定ユニットの製造方法。」であってもよい。これにより、第2溶液と第2開口との間に仮収容空間を形成することができる。
【0024】
本発明の測定ユニットの製造方法は、[17]「前記溶液導入工程で吸引される前記空気の体積は、前記溶液導入工程で吸引される前記第2溶液の体積以上である、上記[16]に記載の測定ユニットの製造方法。」であってもよい。これにより、第2開口からの第2溶液の漏出が確実に抑制される。
【0025】
本発明の生体試料測定方法は、[18]「生体試料の特性を測定する方法であって、上記[7]~[10]のいずれか一つに記載の測定ユニットが準備される準備工程と、前記第1溶液が解凍される第1解凍工程と、前記第1解凍工程の後、前記生体試料が前記第1開口を介して前記第1収容空間へ添加される第1添加工程と、前記第2溶液が解凍される第2解凍工程と、前記第2解凍工程の後、前記第2溶液が前記第2開口から導出されると共に前記第1開口を介して前記第1収容空間へ添加される第2添加工程と、前記第1収容空間で発生し且つ前記第1容器の前記光透過領域を透過した光が測定される測定工程と、を備える、生体試料測定方法。」である。
【0026】
この生体試料測定方法では、複数の試薬の混合物である第1溶液が、第1容器の第1収容空間に収容され且つ凍結された状態で準備される。これにより、第1溶液が凍結された状態で測定ユニットを被検体の近傍に持ち運ぶことができ、被検体の近傍で第1溶液を解凍した後、被検体から採取された生体試料を第1溶液に添加することができる。そのため、第1溶液の品質が維持されるだけではなく、被検体の近傍では、第1溶液の調製及び第1容器への第1溶液の導入のような作業が不要となる。また、この生体試料測定方法では、第2溶液が、第2容器の第2収容空間に収容され且つ凍結された状態で準備される。これにより、第2溶液が凍結された状態で測定ユニットを被検体の近傍に持ち運ぶことができ、被検体の近傍で第2溶液を解凍した後、解凍された第2溶液を第1溶液に添加することができる。そのため、第2溶液の品質が維持されるだけではなく、被検体の近傍では、第2容器への第2溶液の導入のような作業が不要となる。以上により、この生体試料測定方法によれば、第1溶液及び第2溶液の品質が維持されると共に生体試料の特性を測定するための作業が簡便になる。
【0027】
本発明の生体試料測定方法は、[19]「前記第1添加工程の後、前記第1溶液の温度が調整される温度調整工程を更に備え、前記第1解凍工程では、前記第1溶液の温度が前記生体試料にとっての適温に至るように前記第1溶液が加温され続け、前記温度調整工程では、前記第1溶液の温度が前記生体試料にとっての適温に維持されるように前記第1溶液が加温される、上記[18]に記載の生体試料測定方法。」であってもよい。これにより、第1溶液が解凍されると共に、生体試料にとっての好適な温度環境が維持される。
【0028】
本発明の生体試料測定方法は、[20]「前記準備工程では、前記第1溶液に浸漬された回転子が準備され、前記温度調整工程では、前記回転子が回転されながら前記第1溶液が加温される、上記[19]に記載の生体試料測定方法。」であってもよい。これにより、第1溶液の温度調整及び第1溶液への生体試料の分散が促進される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、溶液の品質の維持及び簡便な作業を可能にする測定ユニット、測定ユニットの製造方法及び生体試料測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態の測定ユニットの正面図である。
図2図1に示される第1測定キットの正面図である。
図3図2のIII-III線に沿っての断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿っての断面図である。
図5図4のV-V線に沿っての断面図である。
図6図1に示される第2測定キットの部分断面図である。
図7図1に示される測定ユニットの製造方法の工程を示す図である。
図8】測定装置の模式図である。
図9】測定装置の模式図である。
図10図1に示される測定ユニットを用いた生体試料測定方法の工程を示す図である。
図11】第1測定キットの変形例を示す図である。
図12図11のII-II線に沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
図1に示される測定ユニット1は、生体試料の特性の測定に用いられる。生体試料は、例えば被検体(生体)の血液(例えば全血)等である。被検体は、例えば人体等である。本実施形態では、被検体は、病院の患者である。生体試料は、例えば白血球を含んでいる。生体試料の特性は、例えば白血球の活性である。本実施形態では、生体試料の特性は、好中球細胞の活性である。
【0033】
好中球細胞は、白血球の1種である。好中球細胞の主な役割は、生体内に進入した細菌及び真菌類を貪食殺菌することによって感染を防ぐことである。好中球細胞は、細菌等を好中球形質膜で包むことによって細菌等を好中球内に取り込む。これにより、食胞が形成される。食胞が顆粒と融合すると、顆粒内容物が食胞内に放出される。細胞膜(食胞の膜)に形成されたNADPH酸化酵素系により活性酸素(スーパーオキシド、過酸化水素)が発生し、この活性酸素が細菌等を殺菌する。また、顆粒内容物に含まれるミエロペルオキシダーゼ(EC番号1.11.2.2)の酵素反応により、過酸化水素(H)及び塩素イオン(CI)から次亜塩素酸(HOCl)(又はそのハロゲン等価体)が産生され、この次亜塩素酸が細菌等を殺菌する。したがって、ミエロペルオキシダーゼ活性又はスーパーオキシド産生活性が、好中球細胞の活性の評価のための指標として用いられている。本実施形態の測定ユニット1は、ミエロペルオキシダーゼ活性又はスーパーオキシド産生活性を測定するために用いられる。
【0034】
図1に示されるように、測定ユニット1は、第1測定キット2と、第2測定キット3と、を備えている。図2及び図3に示されるように、第1測定キット2は、第1容器4と、回転子5と、第1溶液6と、を有している。第1容器4は、第1収容空間S1及び開口(第1開口)4aを含んでいる。開口4aは、第1収容空間S1に連通している。第1容器4は、例えば平板状を呈している。第1容器4は、例えば矩形板状を呈している。
【0035】
第1容器4の厚さ(Y軸方向における第1容器4の長さ)Tは、第1容器4の幅(X軸方向における第1容器4の長さ)W1よりも小さい。第1容器4の厚さTは、第1容器4の幅W1の1/3以下である。第1容器4の厚さTは、第1容器4の高さ(Z軸方向における第1容器4の長さ)W2よりも小さい。第1容器4の厚さTは、第1容器4の高さW2の1/3以下である。第1容器4の高さW2は、第1容器4の幅W1よりも大きい。第1容器4の高さW2は、第1容器4の幅W1の1.1倍以上である。第1容器4の厚さTは、例えば6mm程度である。第1容器4の幅W1は、例えば28mm程度である。第1容器4の高さW2は、例えば41mm程度である。
【0036】
第1容器4は、第1部材41及び第2部材42を有している。第1部材41は、例えば矩形板状を呈している。第1部材41は、主面41a,41b及び収容空間41cを含んでいる。主面41aと主面41bとは、Y軸方向(第1容器4の厚さ方向)において互いに反対側を向いている。収容空間41cは、Z軸方向(第1容器4の高さ方向)における第1部材41の一端に開口している。収容空間41cは、Z軸方向における第1部材41の一端に至っており、Z軸方向における第1部材41の他端には至っていない。収容空間41cは、Y軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。
【0037】
第1部材41は、凹部41dを含んでいる。凹部41dは、収容空間41cの内面のうち主面41aとは反対側を向いている面に形成されている。凹部41dは、Z軸方向における第1部材41の一端に開口している。凹部41dの深さは、Z軸方向における第1部材41の他端側からZ軸方向における第1部材41の一端側に向うに従って、漸増した後一定値に維持している。X軸方向における凹部41dの幅は、X軸方向における収容空間41cの最大幅よりも小さい。X軸方向における凹部41dの両端は、X軸方向における収容空間41cの両端よりも内側に位置している。
【0038】
第2部材42は、第1部材41の収容空間41cに配置されている。図4及び図5に示されるように、第2部材42は、例えば矩形板状を呈している。第2部材42の外形は、収容空間41cの形状と略一致している。具体的には、X軸方向における第2部材42の幅は、X軸方向における収容空間41cの幅と同じである。Y軸方向における第2部材42の幅は、Y軸方向における収容空間41cの幅と同じである。Z軸方向における第2部材42の幅は、Z軸方向における収容空間41cの幅と同じである。
【0039】
第2部材42は、主面42a,42b、凹部421、仕切壁422及び支持部423を含んでいる。主面42aと主面42bとは、Y軸方向において互いに反対側を向いている。主面42aは、第1部材41の主面41aと同側を向いている。主面42aは、収容空間41cの内面に接触している。主面42bは、第1部材41の主面41bと同側を向いている。主面42bは、収容空間41cの内面に接触している。凹部421は、主面42aに形成されている。凹部421は、Z軸方向における第2部材42の一端に至っており、Z軸方向における第2部材42の他端には至っていない。
【0040】
仕切壁422は、凹部421の底面から突出している。仕切壁422の高さ(Y軸方向における幅)は、凹部421の深さよりも小さい。仕切壁422の頂面は、主面42aと主面42bとの間に位置している。仕切壁422は、Y軸方向から見た場合に、Z軸方向に沿って延在している。Z軸方向における仕切壁422の両端は、Z軸方向における凹部421の両端よりも内側に位置している。仕切壁422は、第2部材42のうちの一部の領域である。
【0041】
凹部421は、第1領域42c、第2領域42d及び中間領域42eを含んでいる。第1領域42cは、仕切壁422に対してZ軸方向における一方側に位置している。第1領域42cは、Y軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。第1領域42cは、Z軸方向における第2部材42の一端に開口している。第2領域42dは、仕切壁422に対してZ軸方向における他方側に位置している。Y軸方向から見た場合に、X軸方向における第2領域42dの幅は、Z軸方向における第2部材42の一端側からZ軸方向における第2部材42の他端側に向かうに従って漸減する。つまり、凹部421は、曲面状を呈する内面42fを含んでいる。内面42fは、Y軸方向から見た場合に、仕切壁422とは反対側に向かって湾曲している。
【0042】
中間領域42eは、第1領域42cと第2領域42dとの間に位置している。中間領域42eは、第1領域42c及び第2領域42dのそれぞれに連通している。中間領域42eは、Y軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。Y軸方向から見た場合に、Z軸方向における中間領域42eの一端の位置は、Z軸方向における仕切壁422の一端の位置と一致し、Z軸方向における中間領域42eの他端の位置は、Z軸方向における仕切壁422の他端の位置と一致している。
【0043】
支持部423は、第2領域42dに位置している。支持部423は、凹部421の底面から突出している。支持部423の表面は、例えば曲面状を呈している。支持部423は、第2部材42の一部の領域である。
【0044】
第2部材42は、傾斜領域42g(図3も参照)を含んでいる。傾斜領域42gは、X軸方向に平行であり且つXZ面に対して傾斜している。傾斜領域42gは、凹部421の底面のうち仕切壁422に対してZ軸方向における一方側の領域に形成されている。傾斜領域42gは、開口4aに向かうに従って主面42bに近付くように傾斜している。Z軸方向における傾斜領域42gの一端は、主面42bに至っている。Z軸方向における傾斜領域42gの一端は、開口4aよりも内側に位置している。Z軸方向における傾斜領域42gの他端は、Z軸方向における仕切壁422の一端の位置と一致している。X軸方向における傾斜領域42gの幅は、X軸方向における凹部421の幅と同じである。
【0045】
第1収容空間S1は、収容空間41cのうち第2部材42を除く空間である。第1容器4の開口4aは、収容空間41cの開口及び凹部421の開口によって構成されている。第1容器4は、光透過領域4bを含んでいる。光透過領域4bは、Y軸方向から見た場合に、第1部材41のうち第1収容空間S1(凹部421)と重なる領域である。光透過領域4bは、第1部材41のうち第1収容空間S1に対して主面41bとは反対側の部分である。第1収容空間S1で発生した光は、光透過領域4bを透過する。本実施形態では、第1部材41及び第2部材42の全体が光透過性を有している。第1部材41及び第2部材42のそれぞれの材料は、例えば透明な樹脂等である。
【0046】
第1部材41の主面41bには、識別面41eが形成されている。識別面41eは、Z軸方向に平行であり且つ主面41bに対して傾斜している。識別面41eは、Z軸方向における第1部材41の両端に至っている。識別面41eによれば、光透過領域4bを含む主面41aを簡単に識別することができる。第1部材41は、同一の材料によって一体的に形成されている。これにより、収容空間41cに収容された第1溶液6の漏出が抑制される。
【0047】
回転子5は、第2領域42dに配置されている。回転子5は、例えば棒状を呈している。回転子5は、例えば磁性を有している。回転子5の直径は、例えば1mm以下であり、回転子5の長さは、例えば10mm以下である。回転子5は、例えば、芯材、及び芯材の表面に形成されたメッキ層等を有している。芯材は、例えば磁性を有している。メッキ層の材料は、例えば金等である。回転子5は、第1容器4の外側に設けられた回転装置の回転に従って回転する。回転子5は、支持部423によって支持された状態で、Y軸方向に平行な線を軸線として回転する。
【0048】
第1溶液6は、第1収容空間S1に収容されている。第1溶液6は、第1領域42cの一部、中間領域42e及び第2領域42dを充填している。第1溶液6の表面6aは、Z軸方向における仕切壁422の一端と開口4aとの間に位置している。つまり、第1溶液6は、開口4aに至っていない。第1溶液6は、回転子5を浸漬している。換言すると、回転子5は、第1溶液6に浸漬されるように第1収容空間S1に収容されている。回転子5は、第1溶液6に埋もれている。なお、図4及び図5においては第1溶液6の図示が省略されている。
【0049】
第1溶液6は、複数の試薬の混合物である。第1溶液6は、複数の試薬として、例えば、生理食塩水、緩衝液及び蛍光指示薬等を含んでいる。蛍光指示薬は、生体試料から発生する成分(HOCl)と反応する。蛍光指示薬は、例えばアミノフェニルフルオレセイン(APF:Aminophenyl Fluorescein)等である。蛍光指示薬としては、市販品が用いられてもよい。
【0050】
第1溶液6は、第1収容空間S1に収容された状態で凍結されている。第1溶液6は、全体的に凍結されていてもよく、部分的に凍結されていてもよい。第1溶液6の温度は、第1溶液6に含まれるいずれかの試薬の凝固点以下である。つまり、第1溶液6の温度は、第1溶液6に含まれるいずれかの試薬の凝固点と同じであってもよく、第1溶液6に含まれるいずれかの試薬の凝固点よりも低くてもよい。本実施形態では、第1溶液6の温度は、第1溶液6に含まれる複数の試薬のうち体積がもっとも大きい試薬の凝固点以下である。第1溶液6の温度は、第1溶液6に含まれる複数の試薬のうち凝固点がもっとも低い試薬の凝固点以下であってもよい。本実施形態では、第1溶液6の温度は、第1溶液6に含まれる緩衝液の凝固点以下である。第1溶液6の温度は、第1溶液6に含まれる蛍光指示薬の凝固点以下であってもよい。本実施形態では、第1測定キット2の全体の温度が、第1溶液6に含まれるいずれかの試薬の凝固点以下である。第1溶液6の温度は、例えば-20℃程度である。なお、本実施形態では、「温度」とは、大気圧下での温度のことをいう。
【0051】
図6に示されるように、第2測定キット3は、第2容器7と、第2溶液8と、を有している。第2容器7は、例えば、Z軸方向に平行な線を中心線とする円錐状を呈している。第2容器7は、例えば弾性を有している。第2容器7は、第2収容空間S2、開口(第2開口)7a、及び開口(第3開口)7b(図9参照)を含んでいる。開口7a及び開口7bは、互いに反対側を向いている。開口7a及び開口7bのそれぞれは、第2収容空間S2に連通している。第2収容空間S2は、例えば円錐状を呈している。第2収容空間S2の断面積は、開口7bから開口7aに向かうに従って減少する。開口7aの直径は、開口7bの直径よりも小さい。開口7aは、第2容器7の吐出口である。開口7aは、第2容器7の吸入口として機能してもよい。第2容器7は、例えばピペットチップ等である。
【0052】
第2溶液8は、第2収容空間S2に収容されている。第2溶液8は、第2収容空間S2の一部を充填している。第2溶液8と開口7aとの間には仮収容空間S3が存在し、第2溶液8と開口7bとの間には空間S4が存在する。具体的には、第2溶液8は、開口7a及び開口7bのそれぞれよりも内側に位置している。第2溶液8は、開口7aを向いている表面8a、及び開口7bを向いている表面8bを含んでいる。表面8aは、開口7aから離れている。表面8bは、開口7bから離れている。
【0053】
仮収容空間S3の容積は、第2溶液8の体積以上である。Z軸方向における仮収容空間S3の長さ(開口7aと表面8aとの間の距離)は、Z軸方向における第2溶液8の長さ(表面8aと表面8bとの間の距離)以上である。空間S4の容積は、第2溶液8の体積以上である。Z軸方向における空間S4の長さ(開口7bと表面8bとの間の距離)は、Z軸方向における第2溶液8の長さ以上である。空間S4の容積は、第2溶液8の体積よりも小さくてもよい。Z軸方向における空間S4の長さは、Z軸方向における第2溶液8の長さよりも小さくてもよい。空間S4の容積は、仮収容空間S3の容積以上である。Z軸方向における空間S4の長さは、Z軸方向における仮収容空間S3の長さ以上である。空間S4の容積は、仮収容空間S3の容積よりも小さくてもよい。Z軸方向における空間S4の長さは、Z軸方向における仮収容空間S3の長さよりも小さくてもよい。
【0054】
第2溶液8は、複数の試薬の混合物である。第2溶液8は、複数の試薬として、例えば、刺激剤、有機溶剤及び緩衝液(バッファー)等を含んでいる。刺激剤は、生体試料の機能を活性化させるための試薬である。刺激剤は、例えば、生体試料の好中球細胞を擬似的に刺激する。好中球細胞が擬似的に刺激されると、好中球細胞の自然免疫反応(生体防御反応)が惹起される。刺激剤は、例えばfMLP(N-formyl-L-methionyl-L-leucyl-phenylalanine)又はPMA(4β-phorbol-12-myristate-13-acetate)等である。有機溶剤は、粉末状態の刺激剤を溶解するための試薬である。有機溶剤は、例えばDMSO(Dimethyl sulfoxide)等である。緩衝液は、有機溶剤を希釈するための試薬である。第2溶液8においては有機溶剤が緩衝液によって希釈されているため、生体試料に対して第2溶液8を直接適用したとしても、生体試料が有機溶剤によって害されることが抑制される。刺激剤、有機溶剤及び緩衝液のそれぞれとしては、例えば市販品が用いられてもよい。
【0055】
第2溶液8は、第2収容空間S2に収容された状態で凍結されている。第2溶液8は、第2溶液8と開口7aとの間に仮収容空間S3が存在し且つ第2溶液8と開口7bとの間に空間S4が存在する状態で、凍結されている。第2溶液8は、全体的に凍結されていてもよく、部分的に凍結されていてもよい。第2溶液8の温度は、第2溶液8に含まれるいずれかの試薬の凝固点以下である。つまり、第2溶液8の温度は、第2溶液8に含まれるいずれかの試薬の凝固点と同じであってもよく、第2溶液8に含まれるいずれかの試薬の凝固点よりも低くてもよい。本実施形態では、第2溶液8の温度は、第2溶液8に含まれる複数の試薬のうち体積がもっとも大きい試薬の凝固点以下である。第2溶液8の温度は、第2溶液8に含まれる複数の試薬のうち凝固点がもっとも低い試薬の凝固点以下であってもよい。本実施形態では、第2溶液8の温度は、第2溶液8に含まれる緩衝液の凝固点以下である。本実施形態では、第2測定キット3の全体の温度が、第2溶液8に含まれるいずれかの試薬の凝固点以下である。第2溶液8の温度は、第1溶液6の温度よりも低い。第2溶液8の温度は、例えば-40℃以下である。本実施形態では、第2溶液8の温度は、-80℃である。有機溶剤が緩衝液によって希釈されると、有機溶剤に溶解された刺激剤が劣化しやすい場合がある。本実施形態では、第2溶液8の温度が上述したように第1溶液6の温度よりも低いため(極低温であるため)、生体試料に対して第2溶液8を直接適用するために有機溶剤が緩衝液によって希釈されたとしても、有機溶剤に溶解された刺激剤の劣化が抑制された状態を維持したまま、第2溶液8を保存することが可能となる。
【0056】
以上説明したように、測定ユニット1では、複数の試薬の混合物である第1溶液6が、凍結された状態で第1収容空間S1に収容されている。これにより、第1溶液6が凍結された状態で測定ユニット1を被検体の近傍に持ち運ぶことができ、被検体の近傍で第1溶液6を解凍した後、被検体から採取された生体試料を第1溶液6に添加することができる。そのため、第1溶液6の品質が維持されるだけではなく、被検体の近傍では、第1溶液6の調製及び第1容器4への第1溶液6の導入のような作業が不要となる。よって、測定ユニット1によれば、第1溶液6の品質が維持されると共に生体試料の特性を測定するための作業が簡便になる。
【0057】
生体試料は、白血球を含んでいる。白血球の特性の測定に用いられる溶液には、冷凍保存が求められる場合がある。上述したように、第1溶液6が凍結されているため、第1溶液6の冷凍保存が実現される。
【0058】
指示薬は、蛍光指示薬である。蛍光指示薬を含む溶液には、冷凍保存が求められる場合がある。上述したように、蛍光指示薬を含む第1溶液6が凍結されているため、蛍光指示薬を含む第1溶液6の冷凍保存が実現される。
【0059】
測定ユニット1は、第1溶液6に浸漬されるように第1収容空間S1に収容された回転子5を備えている。これにより、解凍された第1溶液6と第1収容空間S1へ添加された生体試料とを、回転子5によって撹拌することができ、第1溶液6への生体試料の分散を促進することができる。また、回転子5の撹拌によって第1溶液6における熱の移動を促進することができ、第1溶液6の解凍工程における第1溶液6の解凍効率を高めることができる。
【0060】
第1容器4は、平板状を呈している。これにより、例えば容器が円柱状を呈している場合に比べて、第1容器4の比表面積が大きくなるため、第1溶液6の解凍効率が向上する。
【0061】
第1容器4の厚さTは、第1容器4の幅W1の1/3以下である。これにより、第1収容空間S1への熱の移動効率が向上するため、第1溶液6の解凍効率が向上する。
【0062】
第1容器4の高さW2は、第1容器4の幅W1の1.1倍以上である。これにより、第1収容空間S1の容積が確保されると共に、第1溶液6の解凍効率が向上する。
【0063】
第1容器4は、曲面状を呈する内面42fを含んでいる。これにより、第1収容空間S1に収容された液体が流動しやすくなるため、第1溶液6への生体試料の分散が促進される。
【0064】
測定ユニット1は、第2容器7と、第2溶液8と、を備えている。第2容器7は、第2収容空間S2、及び第2収容空間S2に連通する開口7aを含んでいる。第2溶液8は、生体試料の機能を活性化させる刺激剤を含んでいる。第2溶液8は、凍結された状態で第2収容空間S2に収容されている。これにより、第2溶液8が凍結された状態で測定ユニット1を被検体の近傍に持ち運ぶことができ、被検体の近傍で第2溶液8を解凍した後、解凍された第2溶液8を第1溶液6に添加することができる。そのため、第2溶液8の品質が維持されるだけではなく、被検体の近傍では、第2溶液8の調製及び第2容器7への第2溶液8の導入のような作業が不要となる。したがって、第2溶液8の品質が維持されると共に生体試料の特性を測定するための作業が簡便になる。
【0065】
第2溶液8と開口7aとの間には仮収容空間S3が存在する。これにより、解凍された第2溶液8の一部が開口7aに向かって移動したとしても、当該第2溶液8の一部が仮収容空間S3に収容されるため、開口7aからの第2溶液8の漏出が抑制される。例えば、溶液の表面の位置が開口の位置と一致している場合に、溶液が解凍されると、解凍された溶液の一部が開口から垂れてしまうおそれがある。本実施形態では、上述したように、開口7aからの第2溶液8の漏出が抑制される。
【0066】
仮収容空間S3の容積は、第2溶液8の体積以上である。これにより、開口7aからの第2溶液8の漏出が確実に抑制される。
【0067】
第2容器7は、ピペットチップである。これにより、第2容器7の取得が容易となる。
【0068】
次に、測定ユニット1の製造方法について説明する。図7に示されるように、まず、ステップS11において、第1容器4が準備される。ステップS11が第1準備工程に相当する。ステップS11では、回転子5が第1収容空間S1に収容された状態で、第1容器4が準備される。
【0069】
続いて、ステップS12において、第1溶液6が調製される。ステップS12が溶液調製工程に相当する。ステップS12では、複数の試薬(生理食塩水、緩衝液及び蛍光指示薬等)が第1収容空間S1の外側で混合される。ステップS12で調製される第1溶液6の体積は、第1収容空間S1の容積の数倍以上である。つまり、ステップS12では、第1収容空間S1の容積に比べて大量の第1溶液6が調製される。続いて、ステップS13において、予め調製された第1溶液6が第1収容空間S1へ導入される。ステップS13では、第1溶液6が複数の第1容器4の第1収容空間S1へ順次に導入される。
【0070】
続いて、ステップS14において、第1溶液6が第1収容空間S1に収容された状態で凍結される。ステップS14が第1凍結工程に相当する。ステップS14では、第1収容空間S1に収容された回転子5が第1溶液6に浸漬された状態で、第1溶液6が凍結される。ステップS14では、回転子5及び第1溶液6が収容された第1容器4が、冷却設備の冷却空間に配置される。冷却空間の温度は、例えば-20℃程度である。第1容器4は、当該冷却空間に例えば2時間程度配置される。これにより、第1溶液6が凍結され、第1測定キット2が製造される。第1測定キット2は、当該冷却空間に保存されてもよい。ステップS14では、第1容器4の開口4aが、例えばパラフィルム又はゴム栓のようなシール部材によって封止されていてもよい。
【0071】
続いて、ステップS15において、第2容器7が準備される。ステップS15が第2準備工程に相当する。続いて、ステップS16において、第2溶液8が調製される。ステップS16では、複数の試薬(刺激剤、有機溶剤及び緩衝液等)が第2収容空間S2の外側で混合される。ステップS16で調製される第2溶液8の体積は、第2収容空間S2の容積の数倍以上である。つまり、ステップS16では、第2収容空間S2の容積に比べて大量の第2溶液8が調製される。
【0072】
続いて、ステップS17において、予め調製された第2溶液8が第2収容空間S2へ導入される。ステップS17が溶液導入工程に相当する。ステップS17では、第2溶液8が開口7aを介して第2収容空間S2へ吸引された後、空気が開口7aを介して第2収容空間S2へ更に吸引される。
【0073】
具体的には、ステップS17では、例えばマイクロチューブ又はマイクロプレートのような予備容器等に規定量の第2溶液8が配置される。続いて、第2容器7の開口7bに吸引ノズルが挿入される。続いて、第2容器7の開口7aが第2溶液8に接触するように、第2容器7が配置される。続いて、吸引ノズルの吸引力によって、規定量の第2溶液8が開口7aを介して第2収容空間S2へ吸引される。続いて、空気が開口7aを介して第2収容空間S2へ吸引される。これにより、開口7aと第2溶液8との間に仮収容空間S3が形成される。ステップS17で吸引される空気の体積は、ステップS17で吸引される第2溶液8の体積以上である。なお、ステップS17では、例えば一つの予備容器等に配置された第2溶液8が複数の第2容器7の第2収容空間S2へ同時に導入されてもよい。
【0074】
続いて、ステップS18において、第2溶液8が第2収容空間S2に収容された状態で凍結される。ステップS18が第2凍結工程に相当する。ステップS18では、吸引ノズルが第2容器7の開口7bから抜出される。続いて、開口7aと第2溶液8との間に仮収容空間S3が存在し且つ開口7bと第2溶液8との間に空間S4が存在する状態で、第2容器7が冷却設備の冷却空間に配置される。冷却空間の温度は、例えば-80℃程度である。第2容器7は、当該冷却空間に例えば1時間程度配置される。これにより、第2溶液8が凍結され、第2測定キット3が製造される。第2測定キット3は、当該冷却空間に保存されてもよい。一つの第1測定キット2及び一つの第2測定キット3は、一つの包装に収容された状態で、同一の冷却空間に保存されてもよい。なお、ステップS15~ステップS18の少なくとも一つは、ステップS11~ステップS14の少なくとも一つと同時に実施されてもよい。
【0075】
以上説明したように、この製造方法によれば、上述した効果を奏する測定ユニット1を製造することができる。
【0076】
ステップS12では、複数の試薬が第1収容空間S1の外側で混合される。これにより、第1収容空間S1の外側で調製された第1溶液6を複数の第1容器4の第1収容空間S1へ順次に導入することができ、測定ユニット1の製造効率の向上を実現することができる。
【0077】
ステップS14では、第1収容空間S1に収容された回転子5が第1溶液6に浸漬された状態で、第1溶液6が凍結される。これにより、第1溶液6に浸漬された回転子5を有する測定ユニット1を製造することができる。
【0078】
ステップS18では、第2溶液8と開口7aとの間に仮収容空間S3が存在する状態で、第2溶液8が凍結される。これにより、ステップS18において第2溶液8の一部が開口7aに向かって移動したとしても、当該第2溶液8の一部が仮収容空間S3に収容されるため、開口7aからの第2溶液8の漏出が抑制される。
【0079】
ステップS17では、第2溶液8が開口7aを介して第2収容空間S2へ吸引された後、空気が開口7aを介して第2収容空間S2へ更に吸引される。これにより、第2溶液8と開口7aとの間に仮収容空間S3を形成することができる。また、規定量の第2溶液8を第2収容空間S2へ正確に吸引することができる。
【0080】
ステップS17で吸引される空気の体積は、ステップS17で吸引される第2溶液8の体積以上である。これにより、開口7aからの第2溶液8の漏出が確実に抑制される。
【0081】
次に、測定ユニット1を用いた生体試料測定方法について説明する。まず、測定装置について説明する。図8及び図9に示されるように、測定装置9は、支持部材91と、ヒータ92と、ノズル93と、回転装置94と、光装置95と、を備えている。支持部材91は、装着空間(スロット)91a及び開口91bを含んでいる。開口91bは、支持部材91の側壁を貫通している。開口91bは、装着空間91aに連通している。第1測定キット2は、光透過領域4bが開口91bに対向するように、装着空間91aに装着される。ヒータ92は、支持部材91の側壁に設けられている。ヒータ92は、Y軸方向から見た場合に、装着空間91aに対してX軸方向における両側のそれぞれに設けられている。ヒータ92から発生する熱は、支持部材91を介して第1測定キット2へ移動する。
【0082】
ノズル93は、支持部材91に対して鉛直方向における上方に配置されている。ノズル93は、例えば空気を吐出する。第2容器7の開口7bは、ノズル93に装着される。ノズル93から空気が吐出されると、空間S4の圧力が仮収容空間S3の圧力よりも大きくなる。解凍された第2溶液8は、空間S4と仮収容空間S3との圧力差によって、開口7aから導出される。開口7aから導出された第2溶液8は、第1容器4の第1収容空間S1へ添加される。
【0083】
回転装置94は、装着空間91aに対して開口91bとは反対側に配置されている。回転装置94は、例えばマグネティックスターラである。回転装置94は、第1測定キット2の回転子5を回転させる。
【0084】
光装置95は、装着空間91aに対して回転装置94とは反対側に配置されている。光装置95は、励起部96、光学系97及び受光部98を有している。励起部96は、例えば、レーザダイオード又は発光ダイオード等のような発光素子を有している。励起部96は、励起光を出射する。光学系97は、励起部96と装着空間91aとの間、及び、受光部98と装着空間91aとの間のそれぞれに配置されている。光学系97は、例えば光を集光するレンズである。受光部98は、例えば、フォトダイオード等のような光電変換素子を有している。受光部98は、入射光を検出する。励起部96から出射された励起光は、光学系97、開口91b及び光透過領域4bを介して、第1収容空間S1に到達する。これにより、生体試料から発生する成分と第1溶液6の蛍光指示薬との反応によって生じた物質が励起される結果、蛍光が発生する。当該蛍光は、光透過領域4b、開口91b及び光学系97を介して、受光部98に到達する。受光部98は、当該蛍光を検出する。
【0085】
図10に示されるように、生体試料測定方法では、まず、ステップS21において、測定ユニット1が準備される。ステップS21が準備工程に相当する。
【0086】
続いて、ステップS22において、第1溶液6が解凍される。ステップS22が第1解凍工程に相当する。ステップS22では、第1測定キット2が装着空間91aに装着される。ステップS22では、第1溶液6が解凍するまでヒータ92によって加温される。ヒータ92の熱は、支持部材91及び第1容器4を介して第1溶液6に伝わる。ステップS22では、第1溶液6の温度が生体試料にとっての適温(至適温度)に至るように第1溶液6が加温され続ける。生体試料にとっての適温は、例えば37℃である。ステップS22では、第1溶液6の温度が、例えば36.5℃~37.5℃となるように、第1溶液6が加温される。ステップS22では、第1溶液6が例えば5分~10分間加温される。これにより、第1溶液6が比較的緩やかに加温されるため、第1溶液6の機能低下が抑制される。
【0087】
ステップS22では、回転子5が回転されながら第1溶液6が加温される。具体的には、ステップS22では、第1溶液6が解凍された結果流動可能となった後、回転子5が回転される。回転子5が回転すると、第1溶液6が、第1領域42c、中間領域42eの一方側、第2領域42d、中間領域42eの他方側を順次に流動すると共に、中間領域42eの他方側から、仕切壁422と第1部材41の内面との間の領域を介して、中間領域42eの一方側へ流動する。これにより、第1溶液6における熱移動が促進され、第1溶液6の解凍効率が向上する。ステップS22では、第1溶液6が流動可能となる前(例えば第1測定キット2が装着空間91aに装着される前)から回転装置94が起動されてもよい。この場合、第1溶液6が流動可能となると同時に回転子5が回転する。
【0088】
続いて、ステップS23において、生体試料が開口4aを介して第1収容空間S1へ添加される。ステップS23が第1添加工程に相当する。ステップS23では、例えばランセットのような採血器具によって被検体の指から採取された微量(2μL~3μL程度)の末梢血が生体試料として第1収容空間S1へ添加される。
【0089】
続いて、ステップS24において、第1溶液6の温度が調整される。ステップS24が温度調整工程に相当する。ステップS24では、第1溶液6がヒータ92によって加温される。ステップS24では、第1溶液6の温度が生体試料にとっての上記適温に維持されるように第1溶液6が加温される。ステップS24では、第1溶液6の温度が、例えば36.8℃~37.2℃となるように、第1溶液6が加温される。ステップS24では、回転子5が回転されながら第1溶液6が加温される。ステップS24は、生体試料測定方法が終了するまで実施され続ける。
【0090】
続いて、ステップS25において、第2溶液8が解凍される。ステップS25が第2解凍工程に相当する。ステップS25では、第2測定キット3の第2容器7がノズル93に装着された状態で、第2測定キット3が1~2分間放置される。つまり、ステップS25では、第2溶液8が自然解凍される。第2溶液8と開口7aとの間に仮収容空間S3が存在するため、解凍された第2溶液8の一部が開口7aに向かって移動したとしても、当該第2溶液8の一部は、仮収容空間S3に収容される。第2溶液8が解凍される間に、空間S4に存在する空気の温度上昇に起因して、空間S4に存在する空気が膨張する。空間S4に存在する空気が膨張すると、解凍した第2溶液8が開口7a側へ移動すると共に仮収容空間S3の容積が小さくなる。しかし、移動後の第2溶液8と開口7aとの間には、依然として仮収容空間S3が存在する。第2溶液8の解凍が終了した状態では、解凍した第2溶液8が開口7aに至っていてもよい。つまり、第2溶液8の解凍が終了した状態では、第2溶液8と開口7aとの間に空間が存在しなくてもよい。ステップS25は、ステップS22~ステップS24の少なくとも一つと同時に実施されてもよい。
【0091】
続いて、ステップS26において、解凍後の第2溶液8が開口7aから導出されると共に開口4aを介して第1収容空間S1へ添加される。ステップS26が第2添加工程に相当する。ステップS26では、第2収容空間S2のうち第2溶液8に対して開口7aとは反対側の所定位置から開口7aまでの内容物が、開口7aから導出される。所定位置は、第2溶液8の表面8bと開口7bとの間の位置である。つまり、所定位置は、第2溶液8の表面8bから離れている。ステップS26では、解凍後の第2溶液8の体積と仮収容空間S3の容積との合計よりも大きい体積を有する内容物が開口7aから導出される。ステップS26では、ノズル93から空気が吐出される。吐出される空気の体積は、解凍後の第2溶液8の体積と仮収容空間S3の容積との合計よりも大きい。これにより、第2溶液8、及び第2溶液8よりも開口7a側に位置する内容物が開口7aから確実に導出される。なお、ステップS26では、第2溶液8の温度が刺激剤にとっての適温(至適温度)に維持された状態で、第2溶液8が第1収容空間S1へ添加されてもよい。
【0092】
続いて、ステップS27において、第1収容空間S1で発生し且つ第1容器4の光透過領域4bを透過した光が測定される。ステップS27が測定工程に相当する。ステップS27では、第1収容空間S1に対して励起光が照射され続け、第1収容空間S1で発生した光が検出され続ける。励起光の照射及び光の検出は、ステップS26の前から始まる。つまり、励起光の照射及び光の検出は、第1容器4への第2溶液8の添加の前から始まる。
【0093】
第1溶液6の蛍光指示薬と生体試料から発生したHOClとの反応が進行している第1収容空間S1に対して波長480nm程度の励起光が照射されると、第1収容空間S1では波長515nm程度の蛍光が発生する。ステップS27では、波長515nm程度の蛍光が検出される。これにより、ミエロペルオキシダーゼ活性が測定される。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の生体試料測定方法では、複数の試薬の混合物である第1溶液6が、第1容器4の第1収容空間S1に収容され且つ凍結された状態で準備される。これにより、第1溶液6が凍結された状態で測定ユニット1を被検体の近傍に持ち運ぶことができ、被検体の近傍で第1溶液6を解凍した後、被検体から採取された生体試料を第1溶液6に添加することができる。そのため、第1溶液6の品質が維持されるだけではなく、被検体の近傍では、第1溶液6の調製及び第1容器4への第1溶液6の導入のような作業が不要となる。また、本実施形態の生体試料測定方法では、第2溶液8が、第2容器7の第2収容空間S2に収容され且つ凍結された状態で準備される。これにより、第2溶液8が凍結された状態で測定ユニット1を被検体の近傍に持ち運ぶことができ、被検体の近傍で第2溶液8を解凍した後、解凍された第2溶液8を第1溶液6に添加することができる。そのため、第2溶液8の品質が維持されるだけではなく、被検体の近傍では、第2溶液8の調製及び第2容器7への第2溶液8の導入のような作業が不要となる。以上により、本実施形態の生体試料測定方法によれば、第1溶液6及び第2溶液8の品質が維持されると共に生体試料の特性を測定するための作業が簡便になる。
【0095】
ステップS22では、第1溶液6の温度が生体試料にとっての適温に至るように第1溶液6が加温され続け、ステップS24では、第1溶液6の温度が生体試料にとっての適温に維持されるように第1溶液6が加温される。これにより、第1溶液6が解凍されると共に、生体試料にとっての好適な温度環境が維持される。
【0096】
ステップS21では、第1溶液6に浸漬された回転子5が準備され、ステップS24では、回転子5が回転されながら第1溶液6が加温される。これにより、第1溶液6の温度調整及び第1溶液6への生体試料の分散が促進される。また、ステップS22では、回転子5が回転されながら第1溶液6が解凍されるため、第1溶液6の解凍効率が向上する。
【0097】
ステップS26では、第2収容空間S2のうち第2溶液8に対して開口7aとは反対側の所定位置から開口7aまでの内容物が、開口7aから導出される。これにより、第2収容空間S2に収容された第2溶液8の全てが開口7aから確実に導出される。
【0098】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0099】
図11及び図12に示されるように、測定ユニット1は、第1測定キット2に代えて、第1測定キット2Aを備えていてもよい。第1測定キット2Aは、第1容器4に代えて第1容器4Aを有している点で、第1測定キット2と主に異なる。
【0100】
第1容器4Aは、第1板部材43及び第2板部材44を有している。第1板部材43は、例えば矩形板状を呈している。第1板部材43は、主面43a,43b、凹部431、仕切壁432及び支持部433を含んでいる。主面43aと主面43bとは、Y軸方向(第1容器4Aの厚さ方向)において互いに反対側を向いている。凹部431は、主面43aに形成されている。凹部431は、Y軸方向から見た場合に、Z軸方向(第1容器4Aの高さ方向)に沿って延在している。凹部431は、Z軸方向における第1板部材43の一端に至っており、Z軸方向における第1板部材43の他端には至っていない。
【0101】
仕切壁432は、凹部431の底面から突出している。仕切壁432の高さ(Y軸方向における幅)は、凹部431の深さよりも小さい。仕切壁432の頂面は、主面43aと主面43bとの間に位置している。仕切壁432は、Y軸方向から見た場合に、Z軸方向に沿って延在している。Z軸方向における仕切壁432の両端は、Z軸方向における凹部431の両端よりも内側に位置している。仕切壁432は、第1板部材43のうちの一部の領域である。
【0102】
凹部431は、第1領域43c、第2領域43d及び中間領域43eを含んでいる。第1領域43cは、仕切壁432に対してZ軸方向における一方側に位置している。第1領域43cは、Y軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。第1領域43cは、Z軸方向における第1板部材43の一端に開口している。第2領域43dは、仕切壁432に対してZ軸方向における他方側に位置している。Y軸方向から見た場合に、X軸方向(第1容器4Aの幅方向)における第2領域43dの幅は、Z軸方向における第1板部材43の一端側からZ軸方向における第1板部材43の他端側に向かうに従って漸減する。つまり、凹部431は、曲面状を呈する内面43fを含んでいる。内面43fは、Y軸方向から見た場合に、仕切壁432とは反対側に向かって湾曲している。
【0103】
中間領域43eは、第1領域43cと第2領域43dとの間に位置している。中間領域43eは、第1領域43c及び第2領域43dのそれぞれに連通している。中間領域43eは、Y軸方向から見た場合に、例えば矩形状を呈している。Y軸方向から見た場合に、Z軸方向における中間領域43eの一端の位置は、Z軸方向における仕切壁432の一端の位置と一致し、Z軸方向における中間領域43eの他端の位置は、Z軸方向における仕切壁432の他端の位置と一致している。
【0104】
支持部433は、第2領域43dに位置している。支持部433は、凹部431の底面から突出している。支持部433の表面は、例えば曲面状を呈している。支持部433は、第1板部材43の一部の領域である。
【0105】
第2板部材44は、例えば矩形板状を呈している。第2板部材44は、主面44a,44b及び凹部441を含んでいる。主面44aと主面44bは、Y軸方向において互いに反対側を向いている。凹部441は、主面44aに形成されている。凹部441は、Z軸方向における第2板部材44の一端に開口している。凹部441の深さは、Z軸方向における第2板部材44の他端側からZ軸方向における第2板部材44の一端側に向うに従って、漸増した後一定値に維持している。
【0106】
第2板部材44の主面44aは、第1板部材43の主面43aに対向している。Y軸方向から見た場合に、第2板部材44の外縁は、第1板部材43の外縁と一致している。第2板部材44の凹部441は、第1板部材43の第1領域43cに対向している。第2板部材44は、第1板部材43に固定されている。第2板部材44は、例えば第1板部材43に接着されている。第2板部材44が第1板部材43に固定されることで、第1容器4Aの第1収容空間S1が形成されている。
【0107】
第1収容空間S1は、凹部431及び凹部441によって構成された空間のうち、仕切壁432及び支持部433を除く空間である。Z軸方向における凹部441の幅は、Z軸方向における第1領域43cの幅と同じである。X軸方向における凹部441の幅は、X軸方向における第1領域43cの幅と同じである。第1容器4Aの開口4aは、凹部441の開口及び第1領域43cの開口によって構成されている。
【0108】
第2板部材44は、光透過領域4bを含んでいる。光透過領域4bは、Y軸方向から見た場合に、第2板部材44のうち第1収容空間S1と重なる領域である。第1収容空間S1で発生した光は、光透過領域4bを透過する。本実施形態では、第2板部材44の全体が光透過性を有している。第2板部材44の材料は、例えば透明な樹脂等である。本実施形態では、第1板部材43も光透過性を有している。第1収容空間S1で発生した光は、第1板部材43を透過する。第1板部材43の材料は、例えば透明な樹脂等である。なお、第1板部材43は、光透過性を有していなくてもよい。
【0109】
実施形態において、被検体として人体が例示されたが、被検体は、例えば動物等であってもよい。生体試料が被検体の血液である例が示されたが、生体試料は、例えば被検体の体液等であってもよい。生体試料は、例えば、被検体の唾液、潅流液、涙液、汗又は尿等であってもよい。生体試料の特性として、好中球細胞の活性の例が示されたが、生体試料の特性は、例えば、単球、好酸球、好塩基球、B細胞、T細胞、NK細胞又は血管内皮細胞等のような組織細胞の活性であってもよい。
【0110】
実施形態において、第1溶液6が蛍光指示薬を含んでいる例が示されたが、第1溶液6は、化学発光指示薬を含んでいてもよい。化学発光指示薬は、生体試料から発生する成分(スーパーオキシド)と反応する。化学発光指示薬は、例えばMCLA(2-Methyl-6-(4-methoxyphenyl)-3,7-dihydroimidazo[1,2-a]pyrazin-3-one)等である。化学発光指示薬としては、市販品が用いられてもよい。生体試料から発生したスーパーオキシドと第1溶液6の化学発光指示薬との反応が進行している第1収容空間S1では、最大発光波長465nm程度の化学発光が発生する。ステップS27では、最大発光波長465nm程度の化学発光が検出されてもよい。これにより、スーパーオキシド産生活性が測定される。
【0111】
実施形態において、第2容器7がピペットチップである例が示されたが、第2容器7は、例えば、キャピラリーノズル、スポイト、ホールピペット、駒込ピペット、メスピペット、ヘマトクリット毛細管又はシリンジ等であってもよい。
【0112】
実施形態において、仮収容空間S3の容積が第2溶液8の体積以上である例が示されたが、仮収容空間S3の容積は、第2溶液8の体積よりも小さくてもよい。
【0113】
実施形態において、第2容器7の開口7bに挿入された吸引ノズルによって、第2溶液8が第2収容空間S2へ導入される例が示されたが、第2溶液8は、第2容器7自体の吸引力によって第2収容空間S2へ導入されてもよい。具体的には、まず第2容器7の開口7bが塞がれる。続いて、例えば作業者の手によって第2容器7の外側から第2容器7へ加圧される。これにより、第2収容空間S2の空気が開口7aを介して導出される。続いて、第2容器7の開口7aが第2溶液8に接触するように、第2容器7が配置される。続いて、作業者の手による加圧が解除される。これにより、第2溶液8が開口7aを介して第2収容空間S2へ吸引される。
【0114】
実施形態において、ステップS22では、第1溶液6が測定装置9のヒータ92によって加温される例が示されたが、ステップS22では、第1溶液6が測定装置9とは別体に設けられた加温装置(例えばプレインキュベータ等)によって加温されてもよい。
【0115】
生体試料測定方法は、ステップS24を備えていなくてもよい。この場合、ステップS23では、第1溶液6の温度が、例えば36.8℃~37.2℃となるように、第1溶液6が加温される。
【0116】
第1溶液6は、ミエロペルオキシダーゼにより産生される次亜塩素酸(又はそのハロゲン等価体)と反応する指示薬として、例えば、タウリン/TNB(J.Clin.Invest.,Vol.70,pp.598~607,1982年参照)、8-アミノ-5-クロロ-7-フェニルピリド[3,4-d]ピリダジン-1,4-(2H,3H)ジオン(L-012:Anal Biochem.,Vol.271(1),pp.53-58,1999年参照)等を含んでいてもよい。
【0117】
第1溶液6は、スーパーオキシドと反応する指示薬として、例えば、2-メチル-6-フェニル-3,7-ジヒドロイミダゾ[1,2-a]ピラジン-3-オン(CLA)、2-メチル‐6-p-メトキシフェニルエチニルイミダゾピラジノン(MPEC)、インドシアニン型イミダゾピラノジン化合物(NIR-CLA)、2-[2,4,5,7-テトラフルオロ-6-(2-ニトロ-4,5-ジメトキシフェニルスルホニルオキシ)-3-オキソ-3H-キサンテン-9-イル]安息香酸(BES-So)等を含んでいてもよい。
【0118】
第2溶液8は、刺激剤として、例えば、オプソニン化ザイモン(OZ)を含んでいてもよい。
【0119】
実施形態において、第1収容空間S1の外側で予め調製された第1溶液6が、第1収容空間S1へ導入される例が示されたが、第1溶液6は、第1収容空間S1の内部で調製されてもよい。例えば、複数の試薬のそれぞれは、互いに分離した状態で第1収容空間S1へ導入されてもよい。複数の試薬のそれぞれは、第1収容空間S1へ順次に又は同時に導入されてもよい。
【0120】
実施形態において、第2溶液8が緩衝液を含んでいる例が示されたが、第2溶液8は、緩衝液を含んでいなくてもよい。この場合、緩衝液に起因する刺激剤の劣化が抑制される。具体的には、緩衝液によって希釈された刺激剤は、第2溶液8の凍結までの期間が長いほど劣化する傾向にある。第2溶液8が緩衝液を含んでいない場合、たとえ第2溶液8の凍結までの期間が比較的長かったとしても、刺激剤の劣化が抑制される。第2溶液8が緩衝液を含んでいない場合、第2溶液8の温度は、第2溶液8に含まれる有機溶剤の凝固点以下であってもよい。なお、第2溶液8の調製に用いられる緩衝液は、第1溶液6を調製するステップS12において用意されてもよい。具体的には、ステップS12においては、第1溶液6の調製に必要な緩衝液の量及び第2溶液8の調製に必要な緩衝液の量の合計値に相当する緩衝液が用意され、第2溶液8の調製に必要な緩衝液も含んだ第1溶液6が調製されてもよい。そして、ステップS13においては、第2溶液8の調製に必要な緩衝液も含んだ第1溶液6が第1容器4の第1収容空間S1へ導入されてもよい。換言すると、第2溶液8の調製に用いられる緩衝液は、ステップS13において第1収容空間S1へ導入されてもよい。また、第2溶液8の調製に用いられる緩衝液は、ステップS26において第1収容空間S1への第2溶液8の添加の前に、第1収容空間S1へ添加されてもよい。
【0121】
測定装置9(図9参照)は、Z軸方向(鉛直方向)におけるノズル93の位置を調整する調整機構を有していてもよい。ステップS26においては、第2容器7の開口7a(第2容器7の先端)が第1容器4の開口4aと第1溶液6の表面(液面)6aとの間に位置した状態で、第2溶液8が第1溶液6に対して添加されてもよい。第2容器7の先端と第1溶液6の表面6aとの間の距離は、例えば1mm程度であってもよい。この場合、第2溶液8の飛散又は第1溶液6の表面6aの乱れが抑制される結果、生体試料の特性の測定精度の低下が抑制される。具体的には、第2溶液8が緩衝液を含んでいない場合、第2溶液8の添加量が非常に少ない傾向にあるため、ノズル93及び第2容器7を用いた第2溶液8の滴下の制御が困難である。そのため、ノズル93からの空気の吐出圧が大きくなる結果、第2溶液8が第2容器7の開口7aから噴射される場合がある。第2溶液8が開口7aから噴射されると、第2溶液8が飛散する結果、第1溶液6へ添加される刺激剤が不足するおそれがある。また、第2溶液8が開口7aから噴射されると、第1溶液6の表面6aが気泡に起因して乱れる結果、散乱光が生じるおそれがある。本発明者らは、第2容器7の先端と第1溶液6の表面6aとの間の距離を最適化することで、第2溶液8の飛散又は第1溶液6の表面6aの乱れに起因する生体試料の特性の測定精度の低下を抑制することに成功した。なお、第2容器7の先端と第1溶液6の表面6aとの間の距離は、第2溶液8の添加量又はノズル93からの空気の吐出圧等に基づいて調整されてもよい。
【0122】
測定ユニット1の製造方法のステップS17(図7参照)では、吸引ノズルとして例えばピペットマン等が用いられてもよい。具体的には、まず、ピペットマンの先端が第2容器7の開口7bに挿入される。続いて、ピペットマンの吸引力によって、規定量(例えば0.75μL)の第2溶液8が第2容器7の開口7aを介して第2容器7の第2収容空間S2へ吸引される。続いて、ピペットマンの先端が第2容器7の開口7bに挿入された状態で、ピペットマンの吸引量を例えば3μLまで増大させる。これにより、所定量の空気が開口7aを介して第2収容空間S2へ更に吸引される。
【符号の説明】
【0123】
1…測定ユニット、2,2A…第1測定キット、4,4A…第1容器、3…第2測定キット、4a…開口(第1開口)、4b…光透過領域、5…回転子、6…第1溶液、7…第2容器、7a…開口(第2開口)、8…第2溶液、42f,43f…内面、S1…第1収容空間、S2…第2収容空間、S3…仮収容空間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12