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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159478
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010148
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2023073425
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 和明
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雅行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸市
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA06
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA06
3C064BB01
3C064CA54
3C064CA60
3C064CA61
3C064CA77
3C064CA78
3C064CA79
3C064CA80
3C064CA82
3C064CB17
3C064CB24
3C064CB28
3C064CB63
3C064CB69
3C064CB71
3C064CB91
3C064DA02
3C064DA19
3C064DA22
3C064DA23
3C064DA28
3C064DA31
3C064DA43
3C064DA57
3C064DA59
3C064DA60
3C064DA65
3C064DA78
3C064DA89
3C064DA91
(57)【要約】
【課題】モータを適切に保護可能な電動作業機を提供する。
【解決手段】電動作業機は、モータと、電流取得部と、速度取得部と、第1制御部と、を備える。第1制御部は、電流取得部により検出又は推定された線電流の値が、電流閾値よりも大きい場合に、第1カウンタを増加させる。第1制御部は、速度取得部により検出又は推定された回転速度が速度閾値よりも大きい場合に、第1カウンタを減少させる。第1制御部は、第1カウンタが第1閾値を超えた場合に、モータを停止させる。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電力を受けて駆動するように構成されたモータと、
前記電源から前記モータへ供給される電源電流の値を検出又は推定するように構成された電流取得部と、
前記モータの回転速度を検出又は推定するように構成された速度取得部と、
前記モータの駆動を制御するように構成された第1制御部であって、
前記第1制御部は、
前記電流取得部により検出又は推定された前記電源電流の値に基づいて算出された前記モータを流れる線電流の値が、電流閾値よりも大きい場合に、第1カウンタを増加させ、
前記速度取得部により検出又は推定された前記回転速度が速度閾値よりも大きい場合に、前記第1カウンタを減少させ、
前記第1カウンタが第1閾値を超えた場合に、前記モータを停止させるように構成されている、第1制御部と、を備える、
電動作業機。
【請求項2】
前記第1制御部は、前記速度取得部により検出又は推定された前記回転速度に応じて、前記第1カウンタの減少率を変化させるように構成されている、
請求項1に記載の電動作業機。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記速度取得部により検出又は推定された前記回転速度の増加に応じて、前記減少率を大きくするように構成されている、
請求項2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記電源は、前記電動作業機に接続されたバッテリパックを含み、
前記回転速度と前記第1カウンタの減少率との対応を示す複数の対応データであって、互いに異なる前記対応を示す複数の対応データを記憶している記憶部を更に備え、
前記第1制御部は、
前記バッテリパックに含まれるバッテリの種類に応じて、前記記憶部に記憶されている前記複数の対応データのうちの1つの対応データを選択し、
選択された前記1つの対応データに基づいて、前記第1カウンタを減少させるように構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記バッテリの種類は、前記バッテリの内部抵抗値に対応する、
請求項4に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記バッテリパックは、第2カウンタと、前記バッテリからの充放電電流に基づいて前記第2カウンタを増加又は減少させ、前記第2カウンタが第2閾値を超えた場合に、前記バッテリからの放電を停止させるように構成された第2制御部と、を備え、
前記バッテリパックの種類は、前記第2閾値に対応する、
請求項4に記載の電動作業機。
【請求項7】
前記第1制御部は、保護を実行した回数の増加に応じて、前記第1カウンタの減少率を小さくするように構成されており、
前記保護を実行することは、前記第1カウンタが前記第1閾値を超えた場合に、前記モータを停止させることに相当する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項8】
前記第1制御部は、
前記モータの回転中に、前記第1カウンタの減少を開始してからの経過時間が第1時間に到達した場合に、前記第1カウンタを減少させることを停止するように構成されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項9】
前記第1制御部は、
前記モータの停止中に、(i)前記第1カウンタを減少させ、且つ、(ii)前記第1カウンタの減少を開始してからの経過時間が第2時間に到達した場合に、前記第1カウンタを減少させることを停止する、ように構成されている、
請求項1~8のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項10】
前記第1制御部から指令された電圧指令値に基づいて、前記電源の出力を前記モータへ入力するように構成された駆動回路を更に備え、
前記第1制御部は、前記電源が出力される電源電圧の値及び/又は前記電圧指令値に基づいて、前記速度閾値を算出するように構成されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項11】
前記第1制御部は、前記電源電圧の値、又は、前記電圧指令値の増加に応じて、前記速度閾値を大きく算出するように構成されている、
請求項10に記載の電動作業機。
【請求項12】
前記電圧指令値はデューティ比を含み、
前記第1制御部は、前記電源電圧の値と前記デューティ比の積の増加に応じて、前記速度閾値を大きく算出するように構成されている、
請求項10に記載の電動作業機。
【請求項13】
前記モータへ入力されるモータ電圧の値を検出するように構成された電圧検出部を更に備え、
前記第1制御部は、前記電圧検出部により検出された前記モータ電圧の値に基づいて、前記速度閾値を算出するように構成されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項14】
前記第1制御部は、前記電圧検出部により検出された前記モータ電圧の値の増加に応じて、前記速度閾値を大きく算出するように構成されている、
請求項13に記載の電動作業機。
【請求項15】
前記第1制御部は、前記第1カウンタの値に基づいて、前記第1カウンタの減少量を算出するように構成されている、
請求項1~14のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項16】
前記第1制御部は、前記第1カウンタの値の増加に応じて、前記減少量を大きく算出するように構成されている、
請求項15に記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動作業機のモータを保護する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の装置は、電動工具がバッテリの電力で駆動しているときに、バッテリから流れる電流を測定する。上記装置は、測定された電流が所定の上限値よりも大きい場合にはカウンタを増加させ、測定された電流が所定の上限値よりも小さい場合にはカウンタを減少させる。そして、上記装置は、カウンタが所定値を超えた場合に、電動工具のスイッチをオフにし、バッテリを保護する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0232352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリの電力で電動工具を駆動する場合、バッテリだけでなく、電動工具のモータも焼損しないように保護する必要がある。しかしながら、モータは回転することにより冷却される。そのため、バッテリから流れる電流のみに基づいた上記装置のカウンタは、モータの実温度と乖離する可能性がある。すなわち、上記装置のカウンタを用いても、モータを適切に保護できない可能性がある。
【0005】
本開示の1つの局面は、モータを適切に保護可能な電動作業機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの局面の電動作業機は、電源から電力を受けて駆動するように構成されたモータと、電源からモータへ供給される電源電流の値を検出又は推定するように構成された電流取得部と、モータの回転速度を検出又は推定するように構成された速度取得部と、モータの駆動を制御するように構成された第1制御部と、を備える。第1制御部は、電流取得部により検出又は推定された電源電流の値に基づいて算出されたモータを流れる線電流の値が、電流閾値よりも大きい場合に、第1カウンタを増加させる。第1制御部は、速度取得部により検出又は推定された回転速度が速度閾値よりも大きい場合に、第1カウンタを減少させる。第1カウンタが第1閾値を超えた場合に、モータを停止させる。
【0007】
モータに電流が流れていない場合でも、モータが惰性で回転し、モータが冷却されることがある。そのため、線電流の値のみからは、モータ温度の低下量、ひいては、モータ温度を精度よく推定できない。本開示の1つの局面の電動作業機では、第1カウンタは、線電流の値に基づいて増やされ、モータの回転速度に基づいて減らされる。したがって、上記電動作業機では、第1カウンタは、モータの実温度に高い精度で対応する。ひいては、上記電動作業機では、モータを適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電動作業機の外観を示す図である。
図2】第1実施形態に係る電動作業機の電気的構成を示す図である。
図3】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行するメイン処理を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行するスイッチ操作検出処理を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行するAD変換処理を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行するバッテリ通信処理を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行するエラー検出処理を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行するモータ制御処理を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行する過負荷保護検出処理を示すフローチャートである。
図10】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行する過負荷カウンタの加算処理を示すフローチャートである。
図11】第1実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行する過負荷カウンタの減算処理を示すフローチャートである。
図12】第1実施形態に係る電動作業機が有する過負荷カウンタの加算値のテーブルを示す図である。
図13】第1実施形態に係る電動作業機が有する第1カウンタ閾値のテーブルを示す図である。
図14】第1実施形態に係る電動作業機が有するモータ回転中における過負荷カウンタの減算値のテーブルを示す図である。
図15】第1実施形態に係る電動作業機が有するモータ停止中における過負荷カウンタの減算値のテーブルを示す図である。
図16】減算時間の上限が設定されていない場合における、第1実施形態に係る電動作業機のモータの実温度及び過負荷カウンタの時間変化を示すタイムチャートである。
図17】減算時間の上限が設定されている場合における、第1実施形態に係る電動作業機のモータの実温度及び過負荷カウンタの時間変化を示す第1のタイムチャートである。
図18】減算時間の上限が設定されている場合における、第1実施形態に係る電動作業機のモータの実温度及び過負荷カウンタの時間変化を示す第2のタイムチャートである。
図19】第1実施形態に係る電動作業機の各種パラメータの時間変化を示す第1のタイムチャートである。
図20】第1実施形態に係る電動作業機の各種パラメータの時間変化を示す第2のタイムチャートである。
図21】第1実施形態に係る電動作業機の各種パラメータの時間変化を示す第3のタイムチャートである。
図22】第2実施形態に係る電動作業機の電気的構成を示す図である。
図23】第2実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行する過負荷カウンタの減算処理を示すフローチャートである。
図24】第2実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行する速度閾値算出処理を示すフローチャートである。
図25】第2実施形態に係る電動作業機のマイコンが実行する減算値の補正処理を示すフローチャートである。
図26】第2実施形態に係る電動作業機の各種パラメータの時間変化を示す第1のタームチャートである。
図27】他の実施形態に係る電動作業機の電気的構成を示す図である。
図28】別の他の実施形態に係る電動作業機の電気的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態の総括)
ある実施形態では、以下の特徴1~7のうちの少なくとも一つを備えている電動作業機を提供してもよい。
・特徴1:電源から電力を受けて駆動するように構成されたモータ。
・特徴2:電源からモータへ供給される電源電流の値を検出又は推定するように構成された電流取得部。
・特徴3:モータの回転速度を検出又は推定するように構成された速度取得部。
・特徴4:モータの駆動を制御するように構成された第1制御部。
・特徴5:第1制御部は、電流取得部により検出又は推定された前記前記電源電流の値に基づいて算出された前記モータを流れる線電流の値が、電流閾値よりも大きい場合に、第1カウンタを増加させる。
・特徴6:第1制御部は、速度取得部により検出又は推定された回転速度が速度閾値よりも大きい場合に、第1カウンタを減少させる。
・特徴7:第1制御部は、第1カウンタが第1閾値を超えた場合に、モータを停止させる。
【0010】
少なくとも特徴1~7を備えている電動作業機では、第1カウンタは、線電流の値に基づいて増やされ、モータの回転速度に基づいて減らされる。したがって、上記電動作業機では、第1カウンタは、モータの実温度に高い精度で対応する。ひいては、上記電動作業機では、モータを適切に保護することができる。
【0011】
ある実施形態では、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴8を備えていてもよい。
・特徴8:第1制御部は、速度取得部により検出又は推定された回転速度に応じて、第1カウンタの減少率を変化させる。
【0012】
少なくとも特徴1~8を備えている電動作業機では、回転速度に応じて、第1カウンタの減少率を変化させることにより、第1カウンタを、モータの実温度により高い精度で対応させることができる。
【0013】
ある実施形態では、上述の特徴1~8のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴9を備えていてもよい。
・特徴9:第1制御部は、速度取得部により検出又は推定された回転速度の増加に応じて、減少率を大きくする。
【0014】
少なくとも特徴1~9を備えている電動作業機では、回転速度の増加に応じて第1カウンタの減少率を大きくすることにより、第1カウンタを、モータの実温度により高い精度で対応させることができる。
【0015】
ある実施形態では、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴10~13のうちの少なくとも1つを備えていてもよい。
・特徴10:電源は、電動作業機に接続されたバッテリパックを含む。
・特徴11:回転速度と第1カウンタの減少率との対応を示す複数の対応データであって、互いに異なる対応を示す複数の対応データを記憶している記憶部。
・特徴12:第1制御部は、バッテリパックに含まれるバッテリの種類に応じて、記憶部に記憶されている複数の対応データのうちの1つの対応データを選択する。
・特徴13:第1制御部は、選択された1つの対応データに基づいて、第1カウンタを減少させる。
【0016】
少なくとも特徴1~7、10~13を備えている電動作業機では、バッテリの種類に応じて対応データを変えることにより、第1カウンタを、モータの実温度により高い精度で対応させることができる。
【0017】
ある実施形態では、上述の特徴1~7、10~13のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴14を備えていてもよい。
・特徴14:バッテリの種類は、バッテリの内部抵抗値に対応する。
【0018】
すくなくとも特徴1~7、及び10~14を備えている電動作業機では、バッテリの内部抵抗値に応じて対応データを変えることにより、第1カウンタを、モータの実温度により高い精度で対応させることができる。
【0019】
ある実施形態では、特徴1~7、10~13のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴15及び16のうちの少なくとも1つを備えていてもよい。
・特徴15:バッテリパックは、第2カウンタと、バッテリからの充放電電流に基づいて第2カウンタを増加又は減少させ、第2カウンタが第2閾値を超えた場合に、バッテリからの放電を停止させるように構成された第2制御部と、を備える。
・特徴16:バッテリパックの種類は、第2閾値に対応する。
【0020】
少なくとも特徴1~7、10~13、及び15~16を備えている電動作業機では、第2閾値に応じて対応データを変えることにより、第1カウンタを、モータの実温度により高い精度で対応させることができる。
【0021】
ある実施形態では、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴17及び18のうちの少なくとも1つを備えていてもよい。
・特徴17:第1制御部は、保護を実行した回数の増加に応じて、第1カウンタの減少率を小さくする。
・特徴18:保護を実行することは、第1カウンタが第1閾値を超えた場合に、モータを停止させることに相当する。
【0022】
少なくとも特徴1~7及び17~18を備えている電動作業機では、保護の実行回数の増加に応じて、第1カウンタの減少率を小さくすることにより、第1カウンタを、モータの実温度により高い精度で対応させることができる。
【0023】
ある実施形態では、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴19を備えていてもよい。
・特徴19:第1制御部は、モータの回転中に、第1カウンタの減少を開始してからの経過時間が第1時間に到達した場合に、第1カウンタを減少させることを停止する。
【0024】
少なくとも特徴1~7及び19を備えている電動作業機では、モータの回転中に、第1カウンタの減少を開始してからの経過時間が第1時間に到達した場合に、第1カウンタの減少を停止させることにより、第1カウンタが、モータの実温度から乖離することを抑制できる。
【0025】
ある実施形態では、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴20を備えていてもよい。
・特徴20:第1制御部は、モータの停止中に、(i)第1カウンタを減少させ、且つ、(ii)第1カウンタの減少を開始してからの経過時間が第2時間に到達した場合に、第1カウンタを減少させることを停止する。
【0026】
少なくとも特徴1~7及び20を備えている電動作業機では、モータの停止中に、第1カウンタの減少を開始してからの経過時間が第2時間に到達した場合に、第1カウンタの減少を停止させることにより、第1カウンタが、モータの実温度から乖離することを抑制できる。
【0027】
ある実施形態では、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴21及び22のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
・特徴21:第1制御部から指令された電圧指令値(例えば、デューティ比)に基づいて、電源の出力をモータへ入力するように構成された駆動回路。
・特徴22:第1制御部は、電源から出力される電源電圧の値及び/又は電圧指令値に基づいて、速度閾値を算出する。
【0028】
少なくとも特徴1~7、21及び22を備えている電動作業機では、電源電圧の値及び/又は電圧指令値に基づいて、すなわち、モータへの入力電圧の値に基づいて、速度閾値が算出される。モータが定回転制御されている場合、モータに加わる負荷が大きくても、回転速度が維持される。その結果、線電流の値が電流閾値よりも大きく、且つ、回転速度が速度閾値よりも大きくなり、第1カウンタの減算と増加が同時に起こりうる。ここで、モータの入力電圧は、回転速度が一定でも、負荷が大きくなると増加する。したがって、第1制御部がモータの入力電圧に基づいて速度閾値を算出することにより、負荷に応じて第1カウンタの減算を抑制することができる。ひいては、第1カウンタの減少と増加の同時発生を抑制することができる。
【0029】
ある実施形態では、上述の特徴1~7、21及び22のうちの少なくとも1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴23を備えてもよい。
・特徴23:第1制御部は、電源電圧の値、又は電圧指令値の増加に応じて、速度閾値を大きく算出する。
【0030】
少なくとも特徴1~7、及び21~23を備えている電動作業機では、モータへの入力電圧の値の増加に応じて、速度閾値が大きく算出される。これにより、モータに重負荷が加わっている場合に、第1カウンタの減算が抑制される。よって、定回転制御中にモータに重負荷が加わった場合に、不適切な第1カウンタの減算を抑制することができる。
【0031】
ある実施形態では、上述の特徴1~7、21及び22のうちの少なくとも1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴24及び25の内の少なくとも1つを備えてもよい。
・特徴24:電圧指令値はデューティ比を含む。
・特徴25:第1制御部は、電源電圧の値とデューティ比の積の増加に応じて、速度閾値を大きく算出する。
【0032】
少なくとも特徴1~7、24及び25を備えている電動作業機では、モータへの入力電圧の値の増加に応じて、速度閾値が大きく算出される。よって、定回転制御中にモータに重負荷が加わった場合に、不適切な第1カウンタの減算を抑制することができる。
【0033】
ある実施形態では、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴26及び27のうちの少なくとも1つを備えてもよい。
・特徴26:モータへ入力されるモータ電圧の値を検出するように構成された電圧検出部。
・特徴27:第1制御部は、電圧検出部により検出されたモータ電圧の値に基づいて、速度閾値を算出する。
【0034】
少なくとも特徴1~7、26及び27を備えている電動作業機では、モータ電圧の値に基づいて速度閾値が算出されるため、モータに加わる負荷に応じて第1カウンタの減算を抑制することができる。ひいては、第1カウンタの減少と増加の同時発生を抑制することができる。
【0035】
ある実施形態では、上述の特徴1~7、26及び27のうちの少なくとも1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴28を備えてもよい。
・特徴28:第1制御部は、電圧検出部により検出されたモータ電圧の値の増加に応じて、速度閾値を大きく算出する。
【0036】
少なくとも特徴1~7、及び26~28を備えている電動作業機では、モータ電圧の値の増加に応じて、速度閾値が大きく算出される。これにより、定回転数制御時にモータに重負荷が加わった場合に、不適切な第1カウンタの減少を抑制することができる。
【0037】
ある実施形態では、上述の特徴1~7のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴29を備えてもよい。
・特徴29:第1制御部は、第1カウンタの値に基づいて、第1カウンタの減少量を算出する。
【0038】
少なくとも特徴1~7、及び29を備えている電動作業機では、第1カウンタの値に基づいて減少量が算出される。モータ温度は、周囲温度とモータ温度の温度差の増加に応じて、速く低下する。また、モータ温度の増加に応じて、周囲温度とモータ温度との温度差は増加する。よって、第1カウンタの値に基づいて減少量が算出されることにより、第1カウンタの値とモータ温度との乖離を低減することができる。
【0039】
ある実施形態では、上述の特徴1~7及び29のうちの少なくともいずれか1つに加えて、あるいは代えて、以下の特徴30を備えてもよい。
・特徴30:第1制御部は、第1カウンタの値の増加に応じて、減少量を大きく算出する。
【0040】
少なくとも特徴1~7、29及び30を備えている電動作業機では、第1カウンタの値の増加に応じて、減少量が大きく算出される。これにより、第1カウンタの値とモータ温度との乖離をより低減し、モータを適切に保護することができる。
【0041】
(第1実施形態)
<1.構成>
<1-1.全体構成>
図1を参照して、本開示に係る電動作業機1の構成について説明する。本実施形態に係る電動作業機1は、電動工具の一種であるチェーンソーである。
【0042】
電動作業機1は、本体5と、ソーチェーン3と、ガイドバー4と、を備える。ソーチェーン3は、ガイドバー4に取り付けられている。ガイドバー4は、本体5から突出するように、ボルト6及びナット7により本体5に固定されている。本実施形態では、ガイドバー4が突出する方向を前、その反対方向を後と称する。また、前方に向かって右側を右、前方に向かって左側を左と称する。
【0043】
ボルト6は、本体5に形成された図示しない貫通孔に挿入されることにより、本体5の内側から外側へ突出している。ボルト6が本体5の外側でナット7に羅合することにより、ガイドバー4は、本体5に固定される。
【0044】
ガイドバー4は、本体5に内蔵された図示しないスプロケットとともにソーチェーン3を周回可能に支持する。本体5は、図2に示すモータ70及びコントローラ30Aを内蔵している。モータ70は、スプロケットを回転させることにより、ガイドバー4の外周に沿って移動するようにソーチェーン3を駆動する。
【0045】
電動作業機1は、第1グリップ12と、第2グリップ14と、を備える。第1グリップ12は、本体5の上面において、本体5の上面との間に空間が形成されるように、本体5の前端を後端に連結している。第2グリップ14は、第1グリップ12の前部の左側面を、本体5の後部の左側面に連結している。ユーザは、右手で第1グリップ12を把持し、左手で第2グリップ14を把持して、電動作業機1を使用する。
【0046】
電動作業機1は、ハンドガード16を備える。ハンドガード16は、第1グリップ12の前方に配置されており、モータ70の緊急停止機構に接続されている。第2グリップ14を把持するユーザの手がハンドガード16を前方へ倒すと、モータ70が緊急停止する。
【0047】
電動作業機1は、バッテリ装着部10を備える。バッテリ装着部10は、本体5の下面の後部に配置されている。バッテリ装着部10には、バッテリパック8が着脱可能に装着される。本実施形態では、バッテリパック8が本開示の電源の一例に相当する。
【0048】
電動作業機1は、操作パネル20を備える。操作パネル20は、第1グリップ12の上面の前部に配置されている。操作パネル20は、主電源スイッチ21と、主電源/エラー表示部23と、を備える。主電源スイッチ21は、タクトスイッチを含み、ユーザにより押されている場合に、オン状態になり、オンを示す主電源信号を後述する第1マイクロコンピュータ(以下、第1マイコン)40へ出力する。主電源スイッチ21は、ユーザにより放されている場合にオフ状態になり、オフを示す主電源信号を第1マイコン40へ出力する。主電源信号がオンからオフへ切り替わる都度、主電源の状態がオンとオフとの間で切り替えられる。
【0049】
主電源/エラー表示部23は、互いに色が異なる2つ以上のLEDを含む。主電源/エラー表示部23は、主電源の状態がオフのとき消灯し、主電源の状態がオンのとき点灯又は点滅する。主電源/エラー表示部23は、主電源の状態がオンのときに、電動作業機1が使用可能な状態と、電動作業機1が使用不可能な状態とで、点灯又は点滅する色が変わる。電動作業機1が使用不可能な状態は、電動作業機1でエラーが発生している状態である。主電源/エラー表示部23は、エラーの種類に応じて、点灯又は点滅する色が変わる。エラーの種類は、モータ70の高温状態、モータ70の過負荷状態、バッテリパック8の高温状態、バッテリパック8の容量低下等を含む。
【0050】
電動作業機1は、トリガスイッチ18を備える。トリガスイッチ18は、第1グリップ12の前部の下面に配置されている。ユーザは、モータ70を駆動させるためにトリガスイッチ18を引き、モータ70を停止させるためにトリガスイッチ18を放す。トリガスイッチ18は、ユーザによりトリガスイッチ18が引かれている場合に、オンを示すトリガ信号を第1マイコン40へ出力し、ユーザによりトリガスイッチ18が放されている場合に、オフを示すトリガ信号を第1マイコン40へ出力する。
【0051】
電動作業機1は、ロック解除レバー19を備える。ロック解除レバー19は、第1グリップ12の上面且つ操作パネル20の後方に配置されている。ユーザがロック解除レバー19を押し下げると、トリガスイッチ18との係合が外れて、ユーザは、トリガスイッチ18は引くことができるようになる。ユーザがロック解除レバー19を押し下げないと、ユーザは、トリガスイッチ18を引くことができない。ユーザは、ロック解除レバー19を押さえつつ第1グリップ12を把持することにより、トリガスイッチ18を指先で引くことができる。
【0052】
<1-2.電気的構成>
図2を参照して、電動作業機1の電気的構成を説明する。電動作業機1は、モータ70を備える。モータ70は、3相のブラシレスモータである。電動作業機1は、回転センサ71を備える。回転センサ71は、3つのホールセンサを含む。3つのホールセンサは、モータ70の三相の巻線に対応して配置されている。3つのホールセンサは、モータ70のロータが電気角60度回転する都度、順番に位置信号を第1マイコン40へ出力する。本実施形態では、回転センサ71及び第1マイコン40が本開示の取得部の一例に相当する。なお、別の実施形態では、モータ70は、ブラシ付きモータであってもよい。また、モータ70がブラシレスモータ及びブラシ付きモータのいずれの場合でも、電動作業機1は、回転センサ71を備えていなくてもよい。この場合、第1マイコン40が、モータ70の巻線の誘起電圧に基づいて、モータ70の回転速度を推定し、実回転速度の代わりに、推定した回転速度を用いればよい。
【0053】
電動作業機1は、コントローラ30Aを備える。コントローラ30Aは、電源制御回路31、レギュレータ32、第1マイコン40、バッテリ電圧検出部33、データ通信部34、ゲート回路50、遮断スイッチ51、インバータ回路60、温度検出回路61、及び電流検出回路62を備える。
【0054】
電源制御回路31は、バッテリパック8の正極に接続されており、電源遮断信号及び主電源切替信号に基づいて、レギュレータ32を制御する。電源遮断信号は、バッテリパック8の残容量が所定量未満である場合に、バッテリパック8から電源制御回路31へ出力される。電源制御回路31は、電源遮断信号が出力されておらず、且つ、主電源の状態がオンである場合に、レギュレータ32に、コントローラ30Aの各回路へ供給する電力を生成させる。電源制御回路31は、電源遮断信号が出力されている場合、又は、主電源の状態がオフである場合に、レギュレータ32を停止させる。
【0055】
インバータ回路60は、遮断スイッチ51を介して、バッテリ83の正極に接続されている。インバータ回路60は、ローサイドの3個のスイッチング素子と、ハイサイドの3個のスイッチング素子とを有するフルブリッジ回路である。各スイッチング素子は、例えば、MOSFETである。遮断スイッチ51は、MOSFET等のスイッチング素子である。インバータ回路60は、本開示の駆動回路の一例に相当する。
【0056】
ゲート回路50は、第1マイコン40から入力されたモータ制御信号に基づいて、インバータ回路60の各スイッチング素子のオンオフを制御する。インバータ回路60は、各スイッチング素子のオンオフに応じた電圧を、モータ70の3相の巻線に印加する。また、ゲート回路50は、第1マイコン40から入力されたスイッチ制御信号に基づいて、遮断スイッチ51のオンオフを制御する。遮断スイッチ51がオンのとき、インバータ回路60はバッテリ83に導通し、バッテリ83から電力を受ける。遮断スイッチ51がオフのとき、インバータ回路60がバッテリ83から電気的に遮断される。
【0057】
バッテリ電圧検出部33は、バッテリ電圧値Vbatを検出して、検出したバッテリ電圧値Vbatを第1マイコン40へ出力する。バッテリ電圧値Vbatは、バッテリパック8の出力電圧の大きさに対応する。
【0058】
温度検出回路61は、コントローラ30Aの回路温度を検出し、検出した回路温度を第1マイコン40へ出力する。
電流検出回路62は、電源電流値を検出して、検出した電源電流値を第1マイコン40へ出力する。電源電流値は、バッテリパック8からモータ70へ流れる電流の大きさに対応する。本実施形態では、電流検出回路62が本開示の電流測定部の一例に相当する。
【0059】
第1マイコン40は、第1CPU41と、第1メモリ42と、を備える。第1メモリ42は、例えば、ROM、RAM,NVRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリを含む。第1マイコン40は、第1CPU41が第1メモリ42に格納されたプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。また、第1マイコン40は、各種機能に応じて生成された一時的なデータを第1メモリ42に保存する。本実施形態では、第1マイコン40が本開示の第1制御部の一例に相当する。
【0060】
第1マイコン40により実現される各種機能の一部又は全部は、プログラムの実行によって(即ち、ソフトウェア処理によって)達成されてもよいし、一つあるいは複数のハードウェアによって達成されてもよい。例えば、第1マイコン40は、マイクロコンピュータに代えて、又はマイクロコンピュータに加えて、複数の電子部品を含むロジック回路を備えていてもよいし、ASIC及び/又はASSPなどの特定用途向け集積回路を備えていてもよいし、任意の論理回路を構築可能な例えばFPGAなどのプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。
【0061】
第1マイコン40は、データ通信部34を介して、バッテリパック8とシリアル通信を実行し、バッテリ83の種類を示すバッテリ情報を受信する。バッテリ83の種類は、バッテリ83のパラメータに応じて異なる。バッテリ83のパラメータは、バッテリ83の内部抵抗値、バッテリ83の内部インダクタンス、バッテリ83の電流出力の過渡応答特性等を含む。本実施形態では、バッテリ83の種類は、バッテリ83の内部抵抗値に応じて異なる。バッテリ情報は、例えば、バッテリパック8の型番号等の識別データ、バッテリ83の内部抵抗値、バッテリ83の使用履歴、後述する保護閾値などを含む。バッテリパック8の識別データは、バッテリ83の内部抵抗値と対応しており、識別データから内部抵抗値を取得できる。バッテリ83の使用履歴は保護閾値と対応しており、使用履歴から保護閾値を取得できる。また、第1マイコン40は、データ通信部34を介して、バッテリパック8から放電許可信号又は放電禁止信号を受信する。放電許可信号は、バッテリ83からモータ70への放電を許可し、バッテリ83が放電可能な状態である場合に、バッテリパック8から送信される。放電禁止信号は、バッテリ83からモータ70への放電を禁止し、バッテリ83が放電不可能な状態である場合に、バッテリパック8から送信される。
【0062】
第1マイコン40は、位置信号に基づいて、モータ70の回転速度を算出する。さらに、第1マイコン40は、主電源信号と、トリガ信号と、回路温度と、バッテリ電圧値Vbatと、バッテリ電流値と、モータ70の回転速度と、バッテリ情報と、放電許可信号又は放電禁止信号とに基づいて、モータ制御信号及びスイッチ制御信号を生成する。第1マイコン40は、生成したモータ制御信号及びスイッチ制御信号をゲート回路50へ出力する。モータ制御信号は、パルス幅変調(PWM)信号である。また、第1マイコン40は、主電源信号、及び、モータ70及び/又はバッテリ83の検出されたエラーに基づいて、主電源/エラー表示部23のLEDを制御する。
【0063】
バッテリパック8は、バッテリ83と、第2マイクロコンピュータ(以下、第2マイコン)80と、を含む。バッテリ83は、充放電可能な二次でバッテリであり、例えば、リチウムイオンバッテリである。バッテリ83は、直列接続された複数のバッテリセルを含む。
【0064】
第2マイコン80は、第2CPU81と、第2メモリ82と、を含む。第2メモリ82は、例えば、ROM、RAM,NVRAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリを含む。第1マイコン40は、第2CPU81が第2メモリ82に格納されたプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。また、本実施形態では、第2マイコン80が本開示の第2制御部の一例に相当する。
【0065】
第2マイコン80は、バッテリ83から流出する放電電流、及びバッテリ83へ流れ込む充電電流に基づいて、バッテリカウンタを増加又は減少させる。詳しくは、第2マイコン80は、放電電流の値が所定値以上である場合には、バッテリカウンタを増加させ、放電電流の値が所定値以下である場合、又は充電電流がバッテリ83へ流れている場合には、バッテリカウンタを減少させる。バッテリカウンタは、バッテリ83が受けた負荷の蓄積に対応し、負荷の蓄積の増加に応じて、バッテリカウンタの値が増加する。第2マイコン80は、バッテリカウンタが保護閾値を超えた場合に、バッテリ83からの放電を禁止する。また、第2マイコン80は、保護閾値を含むバッテリ情報を第1マイコン40へ送信する。
【0066】
<2.処理>
図3を参照して、第1マイコン40が実行するメイン処理について説明する。第1マイコン40は、所定の制御周期で本処理を繰り返し実行する。
【0067】
S10では、第1マイコン40は、今回の処理サイクルを開始してから制御周期が経過したか判定する。制御周期は、予め設定されている。第1マイコン40は、制御周期が経過したと判定した場合は(S10:YES)、S20の処理へ進み、制御周期が経過していないと判定した場合は(S10:NO)、S10の処理を繰り返し実行する。
【0068】
S20では、第1マイコン40は、スイッチ操作検出処理を実行し、ユーザによる主電源スイッチ21及びトリガスイッチ18の操作を検出する。スイッチ操作検出処理の詳細は後述する。第1マイコン40は、S20の処理を実行した後、S30の処理へ進む。
【0069】
S30では、第1マイコン40は、AD変換処理を実行し、回路温度、バッテリ電圧値Vbat、電源電流値のアナログ値をデジタル値に変換する。さらに、第1マイコン40は、線電流値を推定する。線電流値は、モータ70の巻線に流れる電流の大きさに対応する。線電流値の推定の詳細は後述する。第1マイコン40は、S30の処理を実行した後、S40の処理へ進む。
【0070】
S40では、第1マイコン40は、バッテリ通信処理を実行し、データ通信部34を介して、バッテリパック8からバッテリ情報を受信する。バッテリ通信処理の詳細は後述する。第1マイコン40は、S40の処理を実行した後、S50の処理へ進む。
【0071】
S50では、第1マイコン40は、エラー検出処理を実行し、コントローラ30A、モータ70又はバッテリパック8を保護する必要があるエラーの発生を検出する。第1マイコン40は、エラーの発生を検出した場合には、コントローラ30A、モータ70又はバッテリパック8の保護を実行する。エラーの種類としては、モータ70に過大な電流が流れている過電流エラー、モータ70が過大な負荷を受けている過負荷エラー、回路温度が正常範囲よりも高い高温エラー、モータ70の回転速度が上限を超える速度超過エラー、バッテリパック8が放電禁止状態であるバッテリエラーなどが挙げられる。過負荷エラーの検出処理の詳細は後述する。第1マイコン40は、S50の処理を実行した後、S60の処理へ進む。
【0072】
S60では、第1マイコン40は、モータ制御処理を実行し、モータ70の駆動を制御する。モータ制御処理の詳細は後述する。第1マイコン40は、S60の処理を実行した後、S70の処理へ進む。
【0073】
S70では、第1マイコン40は、表示処理を実行する。詳しくは、第1マイコン40は、主電源の状態、及び検出されたエラーの種類に基づいて、主電源/エラー表示部23の対応する色のLEDを点灯、点滅、又は消灯させる。第1マイコン40は、S70の処理を実行した後、S80の処理へ進む。
【0074】
S80では、第1マイコン40は、電源管理処理を実行する。詳しくは、第1マイコン40は、主電源スイッチ21の変化フラグがオンに設定されている場合に、主電源の状態をオンからオフ、又はオフからオンに切換える。また、第1マイコン40は、主電源のオン中に、トリガスイッチ18のオフ状態が継続した場合に、節電のため、主電源をオンからオフへ切り替える。第1マイコン40は、S80の処理を実行した後、S10の処理へ戻る。
【0075】
<2-1.スイッチ操作検出処理>
図4を参照して、第1マイコン40がS20において実行するスイッチ操作検出処理について説明する。
【0076】
S100では、第1マイコン40は、各種スイッチの状態を取得する。すなわち、第1マイコン40は、主電源スイッチ21から主電源信号を取得し、トリガスイッチ18からトリガ信号を取得する。第1マイコン40は、S100の処理を実行した後、S110の処理へ進む。
【0077】
S110では、第1マイコン40は、各種スイッチから取得した各種信号にフィルタ処理を適用して、オン状態が一定時間以上継続した場合に、信号がオンであることを検出し、オフ状態が一定時間以上継続した場合に、信号がオフであることを検出する。すなわち、第1マイコン40は、瞬時定な信号の変化は検出しない。第1マイコン40は、S110の処理を実行した後、S120の処理へ進む。
【0078】
S120では、第1マイコン40は、各種スイッチの状態変化に応じた変化フラグをオンにする。詳しくは、第1マイコン40は、主電源信号がオンからオフ又はオフからオンに変化した場合には、主電源変化フラグをオンにする。また、第1マイコン40は、トリガ信号がオンからオフ又はオフからオンに変化した場合には、トリガ変化フラグをオンにする。第1マイコン40は、S120の処理を実行した後、S130の処理へ進む。
【0079】
S130では、第1マイコン40は、各種スイッチがオン状態を継続している時間、又は、各種スイッチがオフ状態を継続している時間を計測し、本処理を終了する。
【0080】
<2-2.AD変換処理>
図5を参照して、第1マイコン40がS30の処理において実行するAD変換処理における線電流の推定処理について説明する。
【0081】
S150では、第1マイコン40は、電流検出回路62から受信した電源電流値のアナログ値をデジタル値に変換し、デジタル値の電源電流値を取得する。
S160では、第1マイコン40は、電源電流値と出力デューティ比に基づいて、線電流値を推定する。出力デューティ比は、モータ70に印加されるPWM信号が有するデューティ比である。具体的には、第1マイコン40は、線電流値=電源電流値÷出力デューティ比(%)×100に基づいて、線電流値を推定する。第1マイコン40は、S160の処理を実行した後、本処理を終了する。
【0082】
<2-3.バッテリ通信処理>
図6を参照して、第1マイコン40がS40において実行するバッテリ通信処理について説明する。
【0083】
S200では、第1マイコン40は、データ通信部34を介してバッテリパック8からバッテリ情報を取得する。第1マイコン40は、バッテリ情報からバッテリ83の内部抵抗値又は保護閾値を取得する。第1マイコン40は、S200の処理を実行した後、S210の処理へ進む。
【0084】
S210では、第1マイコン40は、内部抵抗値又は保護閾値に基づいて、バッテリ83がAタイプか判定する。本実施形態では、予め、バッテリの種類として、Aタイプ、Bタイプ、Cタイプの3つのタイプが決められている。Aタイプは、比較的低い内部抵抗値を有する低抵抗値タイプ、又は、比較的高い保護閾値を有する高閾値タイプである。Cタイプは、比較的高い内部抵抗値を有する高抵抗値タイプ、又は、比較的低い保護閾値を有する低閾値タイプである。Bタイプは、AタイプとCタイプの中間のタイプであり、中程度の内部抵抗値を有する中抵抗値タイプ、又は、中程度の保護閾値を有する中閾値タイプである。バッテリが劣化すると、内部抵抗値が大きくなる。また、バッテリが劣化すると、バッテリ83を保護するために保護閾値が小さく設定される。したがって、低抵抗値タイプは高閾値タイプに対応し、高抵抗値タイプは低閾値タイプに対応する。なお、別の実施形態では、バッテリの種類は、2つのタイプが決められていてもよいし、4つ以上のタイプが決められていてもよい。
【0085】
第1マイコン40は、バッテリ83がAタイプであると判定した場合は(S210:YES)、S220の処理へ進み、バッテリ83がAタイプでないと判定した場合は(S210:NO)、S230の処理へ進む。
【0086】
S220では、第1マイコン40は、バッテリの種類に「Aタイプ」を設定して、本処理を終了する。
S230では、第1マイコン40は、内部抵抗値又は保護閾値に基づいて、バッテリ83がBタイプか判定する。第1マイコン40は、バッテリ83がBタイプであると判定した場合は(S230:YES)、S240の処理へ進み、バッテリ83がBタイプでないと判定した場合は(S230:NO)、S250の処理へ進む。
【0087】
S240では、第1マイコン40は、バッテリの種類に「Bタイプ」を設定して、本処理を終了する。
S250では、第1マイコン40は、バッテリの種類に「Cタイプ」を設定して、本処理を終了する。
【0088】
<2-4.エラー検出処理>
図7を参照して、第1マイコン40がS50の処理において実行するエラー検出処理における過負荷エラーの検出処理について説明する。過負荷エラーは、モータ70が過大な負荷を受けて、モータ70が高温になっている状態である。モータ70が高温になっている場合、モータ70が焼損することがないように、モータ70を停止させてモータ70を保護する必要がある。
【0089】
S300では、第1マイコン40は、いずれかのエラーが検出したことに基づいて、検出されたエラーに対応した保護フラグがセットされているか判定する。第1マイコン40は、いずれかの保護フラグがセットされていると判定した場合は(S300:YES)、S330の処理へ進み、いずれの保護フラグもセットされていないと判定した場合は(S300:NO)、S310の処理へ進む。
【0090】
S310では、第1マイコン40は、過負荷保護フラグがクリアされているか判定する。過負荷保護フラグは、後述する過負荷保護検出処理において、過負荷エラーが検出された場合にセットされる。第1マイコン40は、過負荷保護フラグがクリアされていると判定した場合は、本処理を終了し、過負荷保護フラグがセットされていると判定した場合は、S320の処理へ進む。
【0091】
S320では、第1マイコン40は、エラー状態に過負荷を設定して、本処理を終了する。
S330では、第1マイコン40は、現在のエラー状態が、過負荷であるか判定する。第1マイコン40は、エラー状態が過負荷であると判定した場合は(S330:YES)、S340の処理へ進み、エラー状態が過負荷以外であると判定した場合は(S330:NO)、本処理を終了する。
【0092】
S340では、第1マイコン40は、保護の解除判定処理を実行する。すなわち、第1マイコン40は、過負荷に応じたモータ70の保護を解除できるか判定する。第1マイコン40は、モータ70の保護を解除できると判定した場合には、過負荷保護フラグをクリアして、本処理を終了する。
【0093】
<2-5.モータ制御処理>
図8を参照して、第1マイコン40がS60の処理において実行するモータ制御処理について説明する。
【0094】
S400では、第1マイコン40は、主電源がオン状態か判定する。第1マイコン40は、主電源がオン状態であると判定した場合は(S400:YES)、S410の処理へ進み、主電源がオフ状態であると判定した場合は(S400:NO)、S470の処理へ進む。
【0095】
S410では、第1マイコン40は、いずれかの保護フラグがセットされているか判定する。第1マイコン40が、いずれかの保護フラグがセットされていると判定した場合は(S410:YES)、S470の処理へ進み、いずれの保護フラグもセットされていないと判定した場合は(S410:NO)、S420の処理へ進む。
【0096】
S420では、第1マイコン40は、トリガスイッチ18がオン状態か判定する。第1マイコン40は、トリガスイッチ18がオン状態であると判定した場合は(S420:YES)、S430の処理へ進み、トリガスイッチ18がオフ状態であると判定した場合は(S420:NO)、S470の処理へ進む。
【0097】
S430では、第1マイコン40は、モータ70の制御モードに駆動モードを設定し、S440の処理へ進む。
S440では、第1マイコン40は、モータ70の目標回転速度ωTを設定し、S450の処理へ進む。電動作業機1が複数の動作モードを備えている場合には、動作モードごとに目標回転速度ωTが決められているので、第1マイコン40は、設定されている動作モードに応じた目標回転速度ωTを設定する。
【0098】
S450では、第1マイコン40は、モータ70に印加する電圧指令値を算出する。例えば、モータ70をPWM制御する場合には、第1マイコン40は、電圧指令値として、モータ70に印加するPWM信号の出力デューティ比を算出する。詳しくは、第1マイコン40は、モータ70の実回転速度と目標回転速度ωTとの差分に基づいて、出力デューティ比を算出する。第1マイコン40は、算出された出力デューティ比を有するPWM信号をゲート回路50へ出力し、S460の処理へ進む。なお、第1マイコン40は、モータ70をベクトル制御してもよい。
【0099】
S460では、第1マイコン40は、過負荷保護検出処理を実行し、モータ70の過負荷を検出した場合に、過負荷保護フラグを設定する。過負荷保護検出処理の詳細は後述する。第1マイコン40は、S460の処理を実行した後、本処理を終了する。
【0100】
S470では、第1マイコン40は、モータ70の制御モードに停止モードを設定し、S480の処理へ進む。
S480では、第1マイコン40は、モータ70の停止処理を実行する。具体的には、第1マイコン40は、遮断スイッチ51をオフにするスイッチ制御信号をゲート回路50へ出力する。第1マイコン40は、S480の処理を実行した後、S490の処理へ進む。
【0101】
S490では、第1マイコン40は、電圧指令値の初期化処理を実行して、電圧指令値をゼロにし、本処理を終了する。
【0102】
<2-5-1.過負荷保護検出処理>
図9を参照して、第1マイコン40がS460において実行する過負荷保護検出処理について説明する。
【0103】
S500では、第1マイコン40は、モータ70の制御モードが駆動モードに設定されているか判定する。第1マイコン40は、制御モードが駆動モードに設定されていると判定した場合は(S500:YES)、S510の処理へ進み、制御モードが停止モードに設定されていると判定した場合は(S500:NO)、S570の処理へ進む。
【0104】
S510では、第1マイコン40は、過負荷カウンタ加算処理を実行し、S520の処理へ進む。詳しくは、第1マイコン40は、線電流値及びバッテリ83の種類に応じた加算値を、過負荷カウンタに加算し、過負荷カウンタが第1カウンタ閾値Ta以上である場合に、過負荷保護フラグをセットする。
【0105】
過負荷カウンタは、モータ70の温度の推定値に相当する。モータ70の温度を測定することは難しい。そのため、第1マイコン40は、モータ70の温度を上昇させる要因及び下降させる要因に基づいて、過負荷カウンタを増減し、過負荷カウンタをモータ70の温度に対応させる。過負荷カウンタ加算処理の詳細は後述する。なお、本実施形態において、モータ70の温度は、モータ70のステータの温度に対応する。
【0106】
S520では、第1マイコン40は、過負荷保護フラグがセットされているか判定する。第1マイコン40は、過負荷保護フラグがセットされていると判定した場合は(S520:YES)、S530の処理へ進み、過負荷保護フラグがクリアされていると判定した場合は(S520:NO)、S590の処理へ進む。
【0107】
S530では、第1マイコン40は、過負荷保護の実行回数を加算し、S540の処理へ進む。過負荷保護は、過負荷保護フラグがセットされたことに応じて実行される。過負荷保護の実行回数は、電動作業機1にバッテリパック8が接続されてからバッテリパック8が取り外されるまでの間に、過負荷保護が実行された回数であり、過負荷保護フラグがセットされた回数に対応する。
【0108】
S540では、第1マイコン40は、過負荷カウンタをゼロにリセットし、S550の処理へ進む。
S550では、第1マイコン40は、後述するモータ駆動カウンタをゼロにリセットし、S560の処理へ進む。
S560では、第1マイコン40は、後述するモータ停止カウンタをゼロにリセットし、S590の処理へ進む。
【0109】
S570では、第1マイコン40は、過負荷保護フラグをクリアして、S580の処理へ進む。
S580では、第1マイコン40は、線電流値にローパスフィルタを適用して、S590の処理へ進む。
【0110】
S590では、第1マイコン40は、過負荷カウンタ減算処理を実行する。詳しくは、第1マイコン40は、実回転速度及びバッテリ83の種類に応じた減算値を、過負荷カウンタから減算する。過負荷カウンタ減算処理の詳細は後述する。第1マイコン40は、S590の処理を実行した後、本処理を終了する。
【0111】
<2-5-1a.過負荷カウンタ加算処理>
図10を参照して、第1マイコン40がS510の処理において実行する過負荷カウンタ加算処理について説明する。
【0112】
S600では、第1マイコン40は、線電流値にローパスフィルタを適用して、線電流値の急激な変化を取り除き、S610の処理へ進む。
S610では、第1マイコン40は、過負荷保護の実行回数が3回以上であるか判定する。過負荷保護の実行回数の増加に応じて、モータ70に蓄積される熱が増加する。そのため、過負荷保護が繰り返し実行された場合には、モータ70を停止させることが望ましい。本実施形態では、過負荷保護が3回実行された場合にモータ70を停止させるため、判定閾値が3回に設定されている。別の実施形態では、判定閾値は、2回又は4回以上であってもよい。第1マイコン40は、過負荷保護の実行回数が3回以上であると判定した場合は(S610:YES)、S620の処理へ進み、過負荷保護の実行回数が2回以下であると判定した場合は(S610:NO)、S630の処理へ進む。
【0113】
S620では、第1マイコン40は、線電流値に200Aを設定し、S630の処理へ進む。第1メモリ42には、加算値テーブルが記憶されている。図12に示すように、加算値テーブルは、線電流値とバッテリの種類とに応じた加算値のテーブルである。加算値は、正の値である。加算値テーブルでは、線電流値が大きいほど加算値は大きく、且つ、内部抵抗値が大きいほど(又は保護閾値が小さいほど)加算値は大きい。200Aは、バッテリの各タイプにおいて、加算値を最大にする値である。別の実施形態では、バッテリの各タイプにおいて加算値を最大にする値であれば、線電流値に200A以外の値を設定してもよい。また、別の実施形態では、第1メモリ42に、加算値テーブルの代わりに、加算率のテーブルが記憶されていてもよく、加算値の代わりに加算率に基づいて過負荷カウンタを増加させてもよい。
【0114】
S630では、第1マイコン40は、線電流値が第1電流閾値It1よりも小さいか判定する。第1マイコン40は、線電流値が第1電流閾値Ith1よりも小さいと判定した場合は(S630:YES)、S640の処理へ進み、線電流値が第1電流閾値Ith1以上であると判定した場合は(S630:NO)、S650の処理へ進む。
【0115】
S640では、第1マイコン40は、加算インデックスAにa0を設定し、S680の処理へ進む。
S650では、第1マイコン40は、線電流値が第2電流閾値It2よりも小さいか判定する。第2電流閾値It2は、第1電流閾値It1よりも大きい。第1マイコン40は、線電流値が第2電流閾値Ith2よりも小さいと判定した場合は(S650:YES)、S660の処理へ進み、線電流値が第2電流閾値Ith2以上であると判定した場合は(S650:NO)、S670の処理へ進む。
【0116】
S660では、第1マイコン40は、加算インデックスAにa1を設定し、S680の処理へ進む。
S670では、第1マイコン40は、加算インデックスAにa2を設定し、S680の処理へ進む。
【0117】
S680では、第1マイコン40は、バッテリ83の種類がAタイプか判定する。第1マイコン40は、バッテリ83の種類がAタイプであると判定した場合は(S680:YE)、S690の処理へ進み、バッテリ83の種類がAタイプ以外であると判定した場合は(S680:NO)、S700の処理へ進む。
【0118】
S690では、第1マイコン40は、加算インデックスBにb0を設定し、S730の処理へ進む。
S700では、第1マイコン40は、バッテリ83の種類がBタイプか判定する。第1マイコン40は、バッテリ83の種類がBタイプであると判定した場合は(S700:YES)、S710の処理へ進み、バッテリ83の種類がCタイプであると判定した場合は(S700:NO)、S720の処理へ進む。
【0119】
S710では、第1マイコン40は、加算インデックスBにb1を設定し、S730の処理へ進む。
S720では、第1マイコン40は、加算インデックスBにb2を設定し、S730の処理へ進む。
【0120】
S730では、第1マイコン40は、設定された加算インデックスA及び加算インデックスBに応じた加算値を加算値テーブルから取得する。バッテリの各タイプにおいて、線電流値が第1電流閾値Ith1未満である場合には、加算値はゼロであり、線電流値が第1電流閾値Ith1以上である場合には、加算値はゼロよりも大きい値である。そして、第1マイコン40は、過負荷カウンタに取得した加算値を加算し、S740の処理へ進む。なお、本実施形態では、第1電流閾値Ith1が、本開示の電流閾値の一例に相当する。
【0121】
S740では、第1マイコン40は、過負荷保護の実行回数が3回よりも多いか判定する。第1マイコン40は、過負荷保護の実行回数が3回よりも多いと判定した場合は(S740:YES)、S750の処理へ進み、過負荷保護の実行回数が3回以下であると判定した場合は(S740:NO)、S760の処理へ進む。
【0122】
S750では、第1マイコン40は、過負荷保護の実行回数に3回を設定し、S760の処理へ進む。
S760では、第1カウンタ閾値テーブルから、過負荷保護の実行回数に応じた第1カウンタ閾値Taを取得し、S770の処理へ進む。過負荷保護の実行回数の増加に応じて、モータ70に蓄積される熱が増加するため、第1マイコン40は、第1カウンタ閾値Taを過負荷保護の実行回数に応じて変化させる。第1メモリ42には、第1カウンタ閾値テーブルが記憶されている。図13に示すように、第1カウンタ閾値テーブルは、過負荷保護の実行回数に応じた第1カウンタ閾値Taのテーブルである。第1マイコン40は、過負荷保護の実行回数に応じた第1カウンタ閾値Taを第1カウンタ閾値テーブルから取得する。3回に応じた第1カウンタ閾値Taは1であり、2回に応じた第1カウンタ閾値Taは、1よりも大きいA3である。1回に応じた第1カウンタ閾値Taは、A3よりも大きいA2である。0回に応じた第1カウンタ閾値Taは、A2よりも大きいA1である。
【0123】
S770では、第1マイコン40は、過負荷カウンタが第1カウンタ閾値Ta以上であるか判定する。第1マイコン40は、過負荷カウンタが第1カウンタ閾値Ta以上であると判定した場合は(S770:YES)、S780の処理へ進み、過負荷カウンタが第1カウンタ閾値Ta未満であると判定した場合は(S770:NO)、本処理を終了する。
【0124】
S780では、第1マイコン40は、過負荷保護フラグをセットして、本処理を終了する。
【0125】
<2-5-1b.過負荷カウンタ減算処理>
図11を参照して、第1マイコン40がS590の処理において実行する過負荷カウンタ減算処理について説明する。
【0126】
S800では、第1マイコン40は、モータ70の実回転速度が第1速度閾値ωt1よりも小さいか判定する。モータ70が回転すると、ロータが備えるファンの回転により、モータ70が冷却される。モータ70に電流が流れておらず、モータ70が惰性で回転している場合でも、実回転速度が所定速度以上である場合には、モータ70が冷却される。
【0127】
第1メモリ42には、第1減算値テーブルが記憶されている。図14に示すように、第1減算値テーブルは、モータ70の実回転速度とバッテリの種類とに応じた減算値のテーブルである。減算値は、正の値である。第1減算値テーブルでは、実回転速度が大きいほど減算値は大きく、且つ、内部抵抗値が大きいほど(又は保護閾値が小さいほど)減算値は大きい。なお、別の実施形態では、第1メモリ42に、第1減算値テーブルの代わりに、第1減算率のテーブルが記憶されていてもよく、第1減算率に基づいて過負荷カウンタを減算させてもよい。
【0128】
第1マイコン40は、実回転速度が第1速度閾値ωt1よりも小さいと判定した場合は(S800:YES)、S810の処理へ進み、実回転速度が第1速度閾値ωt1以上であると判定した場合は(S800:NO)、S820の処理へ進む。
【0129】
S810では、第1マイコン40は、減算インデックスAにaa0を設定し、S850の処理へ進む。
S820では、第1マイコン40は、実回転速度が第2速度閾値ωt2よりも小さいか判定する。第2速度閾値ωt2は、第1速度閾値ωt1よりも大きい。第1マイコン40は、実回転速度が第2速度閾値ωt2よりも小さいと判定した場合は(S820:YES)、S830の処理へ進み、実回転速度が第2速度閾値ωt2以上であると判定した場合は(S820:NO)、S840の処理へ進む。
【0130】
S830では、第1マイコン40は、減算インデックスAにaa1を設定し、S850の処理へ進む。
S840では、第1マイコン40は、減算インデックスAにaa2を設定し、S850の処理へ進む。
【0131】
S850では、第1マイコン40は、バッテリ83の種類がAタイプか判定する。第1マイコン40は、バッテリ83の種類がAタイプであると判定した場合は(S850:YES)、S860の処理へ進み、バッテリ83の種類がAタイプ以外であると判定した場合は(S850:NO)、S870の処理へ進む。
【0132】
S860では、第1マイコン40は、減算インデックスBにbb0を設定し、S900の処理へ進む。
S870では、第1マイコン40は、バッテリ83の種類がBタイプか判定する。第1マイコン40は、バッテリ83の種類がBタイプであると判定した場合は(S870:YES)、S880の処理へ進み、バッテリ83の種類がCタイプであると判定した場合は(S870:NO)、S890の処理へ進む。
【0133】
S880では、第1マイコン40は、減算インデックスBにbb1を設定し、S900の処理へ進む。
S890では、第1マイコン40は、減算インデックスBにbb2を設定し、S900の処理へ進む。
【0134】
S900では、第1マイコン40は、モータ70の実回転速度が0rpmよりも大きいか判定する。すなわち、第1マイコン40は、モータ70が回転しているか判定する。モータ70のロータが停止すると、モータ70は放熱して冷却される。しかしながら、モータ70の停止中におけるモータ70の温度の低下速度は、モータ70の駆動中におけるモータ70の温度の低下速度よりも小さい。したがって、第2減算率は、第1減算率よりも小さくすることが望ましい。第1減算率は、モータ70の駆動中における過負荷カウンタの減算率に対応し、第2減算率は、モータ70の停止中における過負荷カウンタの減算率に対応する。S900では、第1マイコン40は、第2減算率を第1減算率とは変えるため、モータ70が回転しているか判定する。
【0135】
第1マイコン40は、実回転速度が0rpmよりも大きい、すなわち、モータ70が回転していると判定した場合は(S900:YES)、S910の処理へ進む。第1マイコン40は、実回転速度が0rpm以下である、すなわち、モータ70が停止していると判定した場合は(S900:NO)、S980の処理へ進む。
【0136】
S910では、第1マイコン40は、モータ70が回転中であるため、モータ停止カウンタをゼロにリセットし、S920の処理へ進む。
S920では、第1マイコン40は、過負荷カウンタが0よりも大きいか判定する。第1マイコン40は、過負荷カウンタが0よりも大きいと判定した場合は(S920:YES)、S930の処理へ進み、過負荷カウンタが0以下であると判定した場合は(S920:NO)、S970の処理へ進む。
【0137】
S930では、第1マイコン40は、設定された減算インデックスA及び減算インデックスBに応じた減算値を第1減算値テーブルから取得し、S940の処理へ進む。バッテリの各タイプにおいて、実回転速度が第1速度閾値ωt1未満である場合には、減算値はゼロであり、実回転速度が第1速度閾値ωt1以上である場合には、減算値はゼロよりも大きい値である。なお、本実施形態では、第1速度閾値ωt1が、本開示の速度閾値の一例に相当する。
【0138】
本実施形態において想定されるモータ70の負荷の範囲では、第1電流閾値Ith1と第1速度閾値ωt1は、線電流値が第1電流閾値Ith1以上である場合に、実回転速度が第1速度閾値ωt1未満になり、且つ、実回転速度が第1速度閾値ωt1以上である場合に、線電流値が第1電流閾値Ith1未満になるように、決められている。すなわち、第1電流閾値Ith1と第1速度閾値ωt1は、加算値が0よりも大きい値になる場合には、減算値が0になり、減算値が0よりも大きい値になる場合には、加算値が0になるように、決められている。これにより、過負荷カウンタの増加が、過負荷カウンタの減少と同時に生じることはない。
【0139】
S940では、第1マイコン40は、S930で取得した減算値が0よりも大きいか判定する。第1マイコン40は、減算値が0よりも大きいと判定した場合は(S940:YES)、S950の処理へ進み、減算値が0以下であると判定した場合は(S940:NO)、S970の処理へ進む。
【0140】
S950では、第1マイコン40は、モータ駆動カウンタに固定値を加算し、S960の処理へ進む。モータ駆動カウンタは、モータ70の回転中において、過負荷カウンタの減少を開始してからの経過時間に対応する。
【0141】
S960では、第1マイコン40は、モータ駆動カウンタが第2カウンタ閾値Txよりも小さいか判定する。第1マイコン40は、モータ駆動カウンタが第2カウンタ閾値Txよりも小さいと判定した場合は(S960:YES)、S65の処理へ進み、モータ駆動カウンタが第2カウンタ閾値Tx以上であると判定した場合は(S960:NO)、S970の処理へ進む。
【0142】
S970では、第1マイコン40は、減算値をゼロにリセットし、S65の処理へ進む。これにより、モータ70の回転中において、過負荷カウンタの減少開始からの経過時間が第2カウンタ閾値Txに到達すると、過負荷カウンタの減少が停止する。
【0143】
図16に示すように、モータ70が回転しているとき、モータ70のステータ温度は、急激に低下した後、緩やかに低下する。そのため、モータ70の回転中において、過負荷カウンタの減少を続けると、過負荷カウンタがモータ70のステータ温度から乖離してしまう。
【0144】
そこで、図17に示すように、モータ70の回転中において、過負荷カウンタの減算時間の上限を設定し、減算時間が上限に到達した場合には、過負荷カウンタの減少を停止させて、過負荷カウンタを維持する。なお、本実施形態では、第2カウンタ閾値Txが、本開示の第1時間の一例に相当する。
【0145】
S980では、第1マイコン40は、モータ70が停止中であるため、モータ駆動カウンタをゼロにリセットし、S990の処理へ進む。
S990では、第1マイコン40は、過負荷カウンタが0よりも大きいか判定する。第1マイコン40は、過負荷カウンタが0よりも大きいと判定した場合は(S990:YES)、S15の処理へ進み、過負荷カウンタが0以下であると判定した場合は(S990:NO)、S55の処理へ進む。
【0146】
S15では、第1マイコン40は、第2減算値テーブルから、過負荷保護の実行回数に応じた減算値を取得し、S25の処理へ進む。第1メモリ42には、第2減算値テーブルが記憶されている。図15に示すように、第2減算値テーブルは、過負荷保護の実行回数に応じた減算値のテーブルである。過負荷保護の実行回数の減少に応じて、減算値は大きくなっている。なお、別の実施形態では、第1メモリ42に、第2減算値テーブルの代わりに、第2減算率のテーブルが記憶されていてもよく、第2減算率に基づいて過負荷カウンタを減算させてもよい。
【0147】
S25では、第1マイコン40は、減算値が0よりも大きいか判定する。第1マイコン40は、減算値が0よりも大きいと判定した場合は(S25:YES)、S35の処理へ進み、減算値が0以下であると判定した場合は(S25:NO)、S55の処理へ進む。
【0148】
S35では、第1マイコン40は、モータ停止カウンタに固定値を加算し、S45の処理へ進む。モータ停止カウンタは、モータ70の停止中において、過負荷カウンタの減少を開始してからの経過時間に対応する。
【0149】
S45では、第1マイコン40は、モータ停止カウンタが第3カウンタ閾値Tyよりも小さいか判定する。第1マイコン40は、モータ停止カウンタが第3カウンタ閾値Tyよりも小さいと判定した場合は(S45:YES)、S65の処理へ進み、モータ停止カウンタが第3カウンタ閾値Ty以上であると判定した場合は(S45:NO)、S55の処理へ進む。
【0150】
S55では、第1マイコン40は、減算値をゼロにリセットし、S65の処理へ進む。これにより、モータ70の停止中において、過負荷カウンタの減少開始からの経過時間が第3カウンタ閾値Tyに到達すると、過負荷カウンタの減少が停止する。
【0151】
図16に示すように、モータ70が停止しているときに、モータ70の温度は、やや急激に低下した後、非常に緩やかに低下する。そのため、モータ70の停止中において、過負荷カウンタの減少を続けると、過負荷カウンタがモータ70のステータ温度から乖離し得る。
【0152】
そこで、図17に示すように、モータ70の停止中において、過負荷カウンタの減算時間の上限を設定し、減算時間が上限に到達した場合には、過負荷カウンタの減少を停止させて、過負荷カウンタを維持する。なお、本実施形態では、第3カウンタ閾値Tyが、本開示の第2時間の一例に相当する。
【0153】
図18に、モータ70のステータ温度の時間変化を実線で示す。また、モータ70の回転中及び停止中における減算時間の上限が設定されている場合における、過負荷カウンタの時間変化を点線で示す。また、モータ70の回転中及び停止中における減算時間の上限が設定されていない場合における、過負荷カウンタの時間変化を破線で示す。減算時間の上限が設定されている場合は、過負荷カウンタがステータ温度に追従し、過負荷カウンタとステータ温度との乖離が小さい。すなわち、過負荷カウンタはモータ70の温度に高精度に対応している。一方、減算時間の上限が設定されていない場合、過負荷カウンタとステータ温度との乖離が大きい。すなわち、過負荷カウンタは、モータ70の温度に精度良く対応していない。
【0154】
S65では、第1マイコン40は、過負荷カウンタが減算値以上であるか判定する。第1マイコン40は、過負荷カウンタが減算値以上であると判定した場合は(S65:YES)、S75の処理へ進み、過負荷カウンタが減算値未満であると判定した場合は(S65:NO)、S85の処理へ進む。
【0155】
S75では、第1マイコン40は、過負荷カウンタから減算値を減算して、本処理を終了する。
S85では、第1マイコン40は、過負荷カウンタをゼロにリセットし、本処理を終了する。本実施形態では、過負荷カウンタは0以上の値として使用する。第1マイコン40は、過負荷カウンタが減算値未満である場合には、過負荷カウンタが負の値にならないように、過負荷カウンタをゼロにリセットする。
【0156】
<3.動作>
図19のタイムチャートを参照して、モータ70の回転中における各種パラメータの時間変化を説明する。
【0157】
時点t1で主電源スイッチ21が押されて、第1CPU41の電源がオンになる。時点t2で、トリガスイッチ18がオンになる。時点t3で、モータ制御モードが駆動モードに設定される。これにより、モータ70に線電流が流れ、モータ70が回転し始める。
【0158】
時点t4で、ユーザが電動作業機1を用いて作業を開始したことにより、線電流値が増加する。また、時点t4で、モータ70が受ける負荷に応じて、実回転速度が低下する。さらに、時点t4で、線電流値が第1電流閾値Ith1以上になったことにより、線電流値に応じた増加率で過負荷カウンタが増加し始める。時点t4から時点t5までの間、線電流値が第1電流閾値Ith1以上になり、過負荷カウンタが増加し続ける。時点t4から時点t5までの間、実回転速度は第1速度閾値ωt1未満である。
【0159】
時点t5で、線電流が第1電流閾値Ith1未満になるとともに、実回転速度が第1速度閾値ωt1以上になったことにより、実回転速度に応じた減少率で過負荷カウンタが減少し始める。また、モータ駆動カウンタが増加し始める。時点t6で、実回転速度が第2速度閾値ωt2以上になったことにより、過負荷カウンタの減少率が大きくなる。時点t7において、実回転速度が第1速度閾値ωt1以上且つ第2速度閾値ωt2未満になるが、モータ駆動カウンタが第2カウンタ閾値Txに到達したことにより、過負荷カウンタの減少が停止する。
【0160】
次に、図20のタイムチャートを参照して、モータ70の惰性回転中及び停止中における各種パラメータの時間変化を説明する。
時点t11で、ユーザが電動作業機1を用いて作業を開始したことにより、線電流値が増加し、実回転速度が低下する。時点t11で、線電流値が第1電流閾値Ith1以上になったことにより、線電流値に応じた増加率で過負荷カウンタが増加し始める。時点t12で、線電流値が第2電流閾値Ith2以上になったことにより、過負荷カウンタの増加率が大きくなる。
【0161】
時点t13で、トリガスイッチ18がオフになり、線電流値がゼロになる。時点t13から時点t14までの間、モータ70は、惰性で回転を続け、時点t14で、モータ70が停止する。時点t13で、実回転速度が第1回転閾値ωt1以上になったことにより、実回転速度に応じた減少率で過負荷カウンタが減少し始めるとともに、モータ駆動カウンタが増加し始める。時点t14で、モータ70が停止したことにより、モータ駆動カウンタがクリアされる。
【0162】
時点t14で、モータ70が停止したことにより、過負荷保護の実行回数に応じた減少率で過負荷カウンタが減少し続けるとともに、モータ停止カウンタが増加し始める。
時点t15で、モータ停止カウンタが第3カウンタ閾値Tyに到達したことにより、過負荷カウンタの減少が停止する。時点t16で、トリガスイッチ18がオンになる。時点t17で、モータ70が回転し始めたことにより、モータ停止カウンタがクリアされる。
【0163】
次に、図21のタイムチャートを参照して、過負荷保護の実行回数に応じた過負荷カウンタの減算率の変化を説明する。
時点t31において、過負荷カウンタが第1カウンタ閾値Ta以上になったことにより、過負荷保護フラグがセットされ、モータ70が停止する。このとき、第1カウンタ閾値Taには、0回目の閾値A1が設定されている。過負荷保護が実行されたことにより、過負荷保護の実行回数が0回から1回になる。また、過負荷カウンタはゼロにリセットされ、過負荷保護フラグはクリアされる。さらに、第1カウンタ閾値Taには、1回目の閾値A2が設定される。
【0164】
時点t32において、電動作業機1による作業に伴い、線電流値が第1電流閾値Ith1以上になり、線電流値に応じた増加率で過負荷カウンタが増加する。時点t33において、トリガスイッチ18がオフになる。時点t33から時点t34までの間、モータ70は惰性で回転し、実回転速度が第1速度閾値ωt1以上になったことにより、実回転速度に応じた減少率で過負荷カウンタが減少するとともに、モータ駆動カウンタが増加する。
【0165】
時点t34において、モータ70が停止し、モータ駆動カウンタがクリアされる。また、モータ70が停止したことにより、過負荷保護の実行回数「1」に応じた減少率で、過負荷カウンタが減少し始めるとともに、モータ停止カウンタが増加し始める。過負荷カウンタは0になったことに応じて、減少が停止される。
【0166】
時点t35において、モータ70が回転し始めたことにより、モータ停止カウンタはクリアされる。実回転速度は第2回転閾値ωt2以上になっているが、過負荷カウンタが0になっているため、過負荷カウンタは減少しない。
【0167】
時点t36において、線電流値が第2電流閾値Ith2以上になったことにより、線電流値に応じた増加率で過負荷カウンタが増加し始める。時点t37において、過負荷カウンタが第1カウンタ閾値Ta以上になったことにより、過負荷保護フラグがセットされ、モータ70が停止する。過負荷保護が実行されたことにより、過負荷保護の実行回数が1回から2回になる。また、過負荷カウンタはゼロにリセットされ、過負荷保護フラグはクリアされる。さらに、第1カウンタ閾値Taには、2回目の閾値A3が設定される。
【0168】
時点t38において、電動作業機1による作業に伴い、線電流値が第1電流閾値Ith1以上になり、線電流値に応じた増加率で過負荷カウンタが増加する。時点t39において、トリガスイッチ18がオフになる。時点t39から時点t40までの間、モータ70は惰性で回転し、実回転速度が第1速度閾値ωt1以上になったことにより、実回転速度に応じた減少率で過負荷カウンタが減少するとともに、モータ駆動カウンタが増加する。
【0169】
時点t40において、モータ70が停止し、モータ駆動カウンタがクリアされる。また、モータ70が停止したことにより、過負荷保護の実行回数「2」に応じた減少率で、過負荷カウンタが減少し始めるとともに、モータ停止カウンタが増加し始める。過負荷カウンタは0になったことに応じて、減少が停止される。
【0170】
時点t41において、モータ70が回転し始めたことにより、モータ停止カウンタはクリアされる。実回転速度は第2回転閾値ωt2以上になっているが、過負荷カウンタが0になっているため、過負荷カウンタは減少しない。
【0171】
時点t42において、線電流値が第1電流閾値Ith1以上になり、線電流値に応じた増加率で過負荷カウンタが増加する。時点t43において、過負荷カウンタが第1カウンタ閾値Ta以上になったことにより、過負荷保護フラグがセットされ、モータ70が停止する。過負荷保護が実行されたことにより、過負荷保護の実行回数が2回から3回になる。また、過負荷カウンタはゼロにリセットされ、過負荷保護フラグはクリアされる。さらに、第1カウンタ閾値Taには、3回目の閾値A4が設定される。
【0172】
時点t44において、線電流値が第2電流閾値Ith2以上になり、線電流値に応じた増加率で過負荷カウンタが増加する。そして、過負荷カウンタは第1カウンタ閾値Ta以上になり、過負荷保護フラグがセットされ、モータ70が停止する。過負荷保護の実行回数が3回を超えたことにより、時点t44以降では、トリガスイッチ18がオンになっても、モータ70は駆動しない。
【0173】
<4.効果>
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)過負荷カウンタは、線電流値に基づいて増やされ、モータ70の実回転速度に基づいて減らされる。したがって、過負荷カウンタは、モータ70の惰性回転中においても、実回転速度に基づいて減らされる。よって、過負荷カウンタは、モータ70の実温度に高い精度で対応する。ひいては、電動作業機1では、モータ70を適切に保護することができる。
【0174】
(2)モータ70の実回転速度によって、モータ70の温度の低下量は変化する。実回転速度に応じて、過負荷カウンタの減少率を変化させることにより、過負荷カウンタを、モータ70の実温度により高い精度で対応させることができる。
【0175】
(3)モータ70の実回転速度が高いほど、モータ70の温度の低下量は大きくなる。実回転速度の増加に応じて過負荷カウンタの減少率を大きくすることにより、過負荷カウンタを、モータ70の実温度により高い精度で対応させることができる。
【0176】
(4)モータ70の実回転速度が同じであっても、バッテリ83の種類に応じて、線電流値が異なり、モータ70の温度の低下量が異なる。バッテリ83の種類に応じて減算値を変えることにより、過負荷カウンタを、モータ70の実温度により高い精度で対応させることができる。
【0177】
(5)モータ70の実回転速度が同じであっても、バッテリ83の内部抵抗値が異なると、線電流値が異なる。ひいては、モータ70の温度の低下量が異なる。バッテリ83の内部抵抗値に応じて減算値を変えることにより、過負荷カウンタを、モータ70の実温度により高い精度で対応させることができる。
【0178】
(6)バッテリ83の劣化が進むと、バッテリ83の内部抵抗値が大きくなる。また、バッテリパック8は、バッテリ83の劣化が進むと、バッテリ83を早期に保護するために保護閾値を小さくする。したがって、保護閾値に応じて減算値を変えることにより、過負荷カウンタを、モータ70の実温度により高い精度で対応させることができる。
【0179】
(7)過負荷保護の実行回数は、モータ70の温度の蓄積に対応する。したがって、過負荷保護の実行回数の増加に応じて、過負荷カウンタの減少率を小さくすることにより、過負荷カウンタを、モータ70の実温度により高い精度で対応させることができる。
【0180】
(8)モータ70の実温度は、ある程度まで急速に低下した後、緩やかに低下する。したがって、モータ70の回転中に、過負荷カウンタを減少させ続けると、過負荷カウンタが、モータ70の実温度から乖離する。よって、モータ70の回転中における減算時間に上限を設定し、減算時間が上限に到達した場合に、過負荷カウンタの減少を停止させる。これにより、過負荷カウンタが、モータ70の実温度から乖離することを抑制できる。
【0181】
(9)モータ70の停止中に、過負荷カウンタを減少させ続けると、過負荷カウンタが、モータ70の実温度から乖離する。よって、モータ70の停止中における減算時間に上限を設定し、減算時間が上限に到達した場合に、過負荷カウンタの減少を停止させる。これにより、過負荷カウンタが、モータ70の実温度から乖離することを抑制できる。
【0182】
(第2実施形態)
<1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0183】
第1実施形態では、電動作業機1はコントローラ30Aを備えていたが、第2実施形態では、電動作業機1は、コントローラ30Aの代わりに、コントローラ30Bを備える点で、第1実施形態と異なる。
【0184】
また、第1実施形態では、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2は一定値であったが、第2実施形態では、第1マイコン40が、モータ70の入力電圧値Vmоtに基づいて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2を算出する点で、第1実施形態と異なる。
【0185】
モータ70が定回転制御されている場合、モータ70に加わる負荷が大きくても、回転速度が維持される。そのため、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2が一定である場合、モータ70に重負荷が加わると、線電流値が第1電流閾値It1よりも大きく、且つ、回転速度が第1速度閾値ωt1よりも大きくなることがあり得る。ひいては、過負荷カウンタの減算と増加が同時に起こって、過負荷カウンタとモータ70の温度が乖離し、モータ70を適切なタイミングで保護できないことが起こり得る。
【0186】
そこで、第2実施形態では、第1マイコン40は、モータ70の入力電圧値Vmоtから誘起電圧値Vfを差し引いた差分ΔVが、所定値(例えば、3.6V)未満である場合に限って、過負荷カウンタを減算する。定回転制御中にモータ70に重負荷が加わった場合、モータ70の回転速度を一定に維持するために、入力電圧値Vmоtは増加する。誘起電圧値Vfは、モータ70の回転速度に比例する。よって、定回転制御では、負荷の増加に応じて差分ΔVは大きくなる。したがって、差分ΔVが所定値以上である場合に過負荷カウンタを減算しないことにより、不適切な過負荷カウンタの減算が抑制される。第2実施形態では、差分ΔVが所定値未満である場合に限って過負荷カウンタが減算されるように、第1マイコン40は、入力電圧値Vmоtに基づいて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2を算出する。
【0187】
さらに、第1実施形態では、第1又は第2減算値テーブルから取得した減算値を、過負荷カウンタから減算した。これに対して、第2実施形態では、第1又は第2減算値テーブルから取得した減算値を過負荷カウンタに基づいて補正し、補正後の減算値を過負荷カウンタから減算する点で、第1実施形態と異なる。
【0188】
モータ温度(具体的には、ステータの温度)は、周囲温度とモータ温度との温度差が大きいほど、速く低下する。そして、モータ温度が大きいほど、温度差は大きくなる。したがって、モータ温度が大きいほど、モータ温度の低下率は大きくなる。そのため、モータ温度の低下率を一定にすると、過負荷カウンタがモータ70の実温度よりも大きくなることがあり得る。その結果、第1マイコン40は、過負荷カウンタに基づいて、不必要に早期にモータ70が停止させることがあり得る。そこで、第2実施形態では、過負荷カウンタとモータ70の実温度との乖離をより抑制するために、第1マイコン40は、過負荷カウンタの増加に応じて減少量が大きくなるように、減算値を補正する。
【0189】
<2.コントローラの構成>
図22を参照して、第2実施形態に係るコントローラ30Bの構成について説明する。コントローラ30Bは、電流検出回路62を備えていない。その代わりに、コントローラ30Bは、モータ電流検出回路72A,72Bと、モータ電流処理回路73A,73Bと、を備える。モータ電流検出回路72Aは、モータ70の1相の巻線に配置されており、その1相の巻線を流れる線電流値を検出し、検出した線電流値をモータ電流処理回路73Aへ出力する。モータ電流検出回路72Bは、モータ70の別の1相の巻線に配置されており、別の1相の巻線を流れる線電流値を検出し、検出した線電流値をモータ電流処理回路73Bへ出力する。
【0190】
モータ電流処理回路73A,73Bは、入力された線電流値に対してフィルタ処理及び増幅処理を行い、処理した線電流値を第1マイコン40へ出力する。これにより、第1マイコン40は、3相のうちの2相の線電流値を取得する。3相の線電流値の合計値は一定である。そのため、第1マイコン40は、2相の線電流値を取得することにより、残りの1相の線電流値も取得できる。
【0191】
<3.過負荷カウンタ減算処理>
図23を参照して、第1マイコン40がS590の処理において実行する過負荷カウンタ減算処理について説明する。
【0192】
まず、S1000にいて、第1マイコン40は、速度閾値算出処理を実行して、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2を算出する。速度閾値算出処理の詳細は後述する。
続いて、S800~S990及びS15~S55では、第1マイコン40は、第1実施形態におけるS800~S990及びS15~S55と同様の処理を実行する。
【0193】
続いて、S1100では、第1マイコン40は、減算値の補正処理を実行して、第1又は第2減算値テーブルから取得された減算値を補正する。減算値の補正処理の詳細は後述する。
続いて、S65~S85では、第1マイコン40は、第1実施形態におけるS65~S85と同様の処理を実行する。
【0194】
すなわち、第2実施形態に係る過負荷カウンタ減算処理では、第1マイコン40は、第1実施形態に係る過負荷カウンタ減算処理に加えて、S1000の処理及びS1100の処理を実行する。
【0195】
<3-1.速度閾値算出処理>
図24を参照して、第1マイコン40がS1000の処理において実行する速度閾値算出処理について説明する。
【0196】
まず、S1010では、第1マイコン40は、バッテリ電圧検出部33により検出された現在のバッテリ電圧値Vbatを取得する。
続いて、S1020では、第1マイコン40は、現在の電圧指令値を取得する。
【0197】
続いて、S1030では、第1マイコン40は、S1010で取得したバッテリ電圧値Vbatと、S1020で取得した電圧指令値とに基づいて、入力電圧値Vmоtを算出する。具体的には、モータ70をPWM制御する場合には、第1マイコン40は、バッテリ電圧値Vbat×電圧指令値(具体的には、出力デューティ比)(%)÷100に基づいて、入力電圧値Vmоtを算出する。あるいは、モータ70をベクトル制御する場合には、第1マイコン40は、回転座標系の2相の電圧指令値を固定座標系の3相の電圧指令値に変換して、3相の電圧指令値を入力電圧値Vmоtとする。
【0198】
続いて、S1040では、第1マイコン40は、S1030で算出された入力電圧値Vmоtに基づいて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2を算出する。具体的には、第1マイコン40は、入力電圧値Vmоtの増加に応じて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2を大きく算出する。例えば、第1マイコン40は、入力電圧値Vmоtに第1係数K1を乗算して第1速度閾値ωt1を算出し、入力電圧値Vmоtに第2係数K2を乗算して第2速度閾値ωt2を算出する。第1係数K1及び第2係数K2は、正の値であり、第2係数K2は第1係数K1よりも大きい。
【0199】
これにより、入力電圧値Vmоtが大きいほど、過負荷カウンタの減算が抑制される。すなわち、モータ70に重負荷が加わり、入力電圧Vmоtを増大させて回転速度を維持している場合に、過負荷カウンタの減算が抑制される。
【0200】
<3-2.減算値の補正処理>
図25を参照して、第1マイコン40がS1100の処理において実行する減算値の補正処理について説明する。
【0201】
まず、S1110では、第1マイコン40は、第1又は第2減算値テーブルから取得された減算値が0よりも大きいか判定する。第1マイコン40は、減算値が0よりも大きいと判定した場合(S1110:YES)、S1120の処理へ進む。第1マイコン40は、減算値が0であると判定した場合(S1110:NO)、減算値の補正をせずに本処理を終了する。
【0202】
S1120では、第1マイコン40は、現在の過負荷カウンタを取得する。
S1130では、第1マイコン40は、過負荷カウンタに基づいて、減算値を再計算する。具体的には、第1マイコン40は、過負荷カウンタが大きいほど、減算値を大きく算出する。例えば、第1マイコン40は、現在の過負荷カウンタを基準カウンタ値で除して、補正係数Knを算出する。基準カウンタ値は定数であり、第1カウンタ閾値Ta未満である。補正係数Knは、1以下の値とする。例えば、第1カウンタ閾値Taを10000、基準カウンタ値を80000とした場合、補正係数Knは1.125と算出されるが、この場合、補正係数Kn=1とする。
【0203】
第1マイコン40は、現在の減算値に補正係数Knを乗算して、補正後の減算値を算出する。補正係数Knは、過負荷カウンタ値が大きい場合、1に近い値になり、過負荷カウンタ値が小さい場合、0に近い値になる。これにより、過負荷カウンタ値が大きい場合、減算値が大きくなり、過負荷カウンタ値が小さい場合、減算値が小さくなる。
【0204】
続いて、S1140において、第1マイコン40は、S1130で算出された減算値が、下限値未満か判定する。下限値は減算値の最小値であり、予め設定されている。第1マイコン40は、下限値が減算値未満であると判定した場合は(S1140:YES)、S1150の処理へ進み、下限値が減算値以上であると判定した場合は(S1140:NO)、本処理を終了する。
【0205】
S1150では、第1マイコン40は、減算値を下限値に設定する。第1マイコン40は、過負荷カウンタが一定程度減るように、減算値が下限値未満の場合には、減算値を下限値に設定する。
【0206】
<4.動作>
図26のタイムチャートを参照して、モータ70の回転中における各種パラメータの時間変化を説明する。
【0207】
時点t51で、主電源スイッチ21が押されて、第1CPU41の電源がオンになる。時点t52で、トリガスイッチ18がオンになる。時点t53で、トリガスイッチ18のオン信号のフィルタ処理が終わり、モータ制御モードが駆動モードに設定される。これにより、モータ70に線電流が流れる。そして、実回転速度が目標回転速度ωTとなるように、モータ70の定回転制御が開始される。このとき、目標回転速度ωT及び実回転速度は、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2よりも小さい。また、線電流値は第1電流閾値Ith1未満である。
【0208】
時点t54で、ユーザが電動作業機1を用いて作業を開始したことにより、モータ70に加わる負荷が増加し、線電流が増加する。さらに、実回転速度を目標回転速度ωTに維持するために、負荷の増加に応じて、電圧指令値及び入力電圧値Vmotが増加する。ひいては、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2が、目標回転速度ωTよりも大きくなる。また、負荷の増加に応じて、電圧降下量が大きくなり、バッテリ電圧値Vbatが低下する。
【0209】
時点t54では、線電流値が、第1電流閾値Ith1以上且つ第2電流閾値Ith2未満になっているため、過負荷カウンタは加算される。しかしながら、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2が目標回転速度ωTよりも大きくなっているため、過負荷カウンタは減算されない。
【0210】
時点t55で、モータ70に加わる負荷が減少し、線電流が第1電流閾値Ith1よりも小さくなる。さらに、実回転速度を目標回転速度ωTに維持するために、負荷の減少に応じて、電圧指令値及び入力電圧値Vmоtが減少する。ひいては、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2が小さくなる。第1速度閾値ωt1は、目標回転速度ωTよりも小さく、第2速度閾値ωt2は目標回転速度ωTよりも大きい。
【0211】
したがって、過負荷カウンタは、過負荷カウンタの値に応じた減少量で減算される。さらに、過負荷カウンタの減少開始に伴い、モータ駆動カウンタが増加し始める。時点t56で、モータ駆動カウンタが第2カウンタ閾値Txに到達したことにより、過負荷カウンタの減少が停止する。
【0212】
<5.効果>
以上詳述した第2実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)~(8)に加えて、以下の効果を奏する。
【0213】
(9)入力電圧Vmоtの増加に応じて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2が増加する。これにより、モータ70に重負荷が加わっている場合に、過負荷カウンタが加算されるが減算されない。よって、定回転制御中にモータ70に重負荷が加わった場合に、不適切な過負荷カウンタの減算を抑制することができる。
【0214】
(10)過負荷カウンタの値の増加に応じて、過負荷カウンタの減少量が大きくなる。これにより、過負荷カウンタの値とモータ温度との乖離がより低減される。ひいては、モータ70を適切に保護することができる。
【0215】
(他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0216】
(a)上記実施形態では、電動作業機1をチェーンソーであったが、本開示の電動作業機1はチェーンソーに限定されるものではない。電動作業機1は、チェーンソー以外の電動工具でもよいし、園芸工具でもよい。電動工具は、例えば、ドライバドリル、インパクトドライバ、丸鋸などでもよい。園芸工具は、例えば、草刈機、トリマなどでもよい。
【0217】
(b)上記実施形態では、電動作業機1は、バッテリ装着部10を備えていたが、バッテリ装着部10に代えて、あるいは加えて、電源コードを備えていてもよい。すなわち、電動作業機1は、商用電源等の外部電源に電源コードを接続して、外部電源から電力を受けてもよい。この場合、外部電源が、本開示の電源の一例に相当する。
【0218】
(c)上記実施形態では、電動作業機1は、ブラシレスモータであるモータ70と、回転センサ71とを備えていたが、電動作業機1は、ブラシレスモータであるモータ70を備え、回転センサ71を備えていなくてもよい。この場合、第1マイコン40が、モータ70の巻線に誘起された誘起電圧に基づいて、ロータの位置を検出し、回転速度を推定すればよい。そして、第1マイコン40は、位置信号から算出される実回転速度の代わりに、推定された回転速度を用いればよい。この場合、第1マイコン40が、本開示の取得部の一例に相当する。
【0219】
(d)上記実施形態では、モータ70の回転中において、実回転速度の増加に応じて、減算値が大きくなっていたが、本開示はこれに限定されない。電動作業機1の種類によっては、モータ70の実回転速度が所定速度を超えた場合に、ブレーキをかける場合がある。モータ70にブレーキを作動させると、ブレーキによる熱が生じるため、モータ70の温度の低下率が小さくなる。そこで、実回転速度が所定速度以下の場合には、実回転速度の増加に応じて減算値を大きくし、実回転速度が所定速度を超えた場合には、減算値を小さくしてもよい。
【0220】
(e)上記実施形態では、バッテリ83の種類及び線電流値に応じて、加算値を変えたが、本開示はこれに限定されない。線電流値のみに応じて、加算値を変えてもよいし、バッテリ83の種類のみに応じて、加算値を変えてもよい。また、バッテリ83の種類及び線電流値のどちらにもよらず、加算値を一定にしてもよい。
【0221】
(f)上記実施形態では、過負荷保護の実行回数に応じて、第1カウンタ閾値Taを変えたが、本開示はこれに限定されない。過負荷保護の実行回数によらず、第1カウンタ閾値Taを一定にしてもよい。
【0222】
(g)上記実施形態では、モータ70の回転中において、バッテリ83の種類及び実回転速度に応じて、減算値を変えたが、本開示はこれに限定されない。実回転速度のみに応じて、減算値を変えてもよいし、バッテリ83の種類のみに応じて、減算値を変えてもよい。また、バッテリ83の種類及び実回転速度のどちらにもよらず、減算値を一定にしてもよい。
【0223】
(h)上記実施形態では、モータ70の停止中において、過負荷保護の実行回数に応じて、減算値を変えたが、本開示はこれに限定されない。モータ70の停止中において、過負荷保護の実行回数によらず、減算値を一定にしてもよい。
【0224】
(i)第2実施形態において、第1マイコン40は、入力電圧値Vmоtに基づいて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2を算出したが、電源電圧値(例えば、バッテリ電圧値Vbat)又は電圧指令値に基づいて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωtを算出してもよい。具体的には、第1マイコン40は、電源電圧値の増加に応じて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2を大きく算出してもよい。あるいは、第1マイコン40は、電圧指令値の増加に応じて、第1速度閾値ωt1及び第2速度閾値ωt2を大きく算出してもよい。
【0225】
(j)第1実施形態に係る電動作業機1は、コントローラ30Aの代わりに、コントローラ30Bを備えていてもよい。この場合、第1マイコン40は、線電流値を推定する代わりに、検出された線電流値を用いればよい。また、第2実施形態に係る電動作業機1は、コントローラ30Bの代わりに、コントローラ30Aを備えていてもよい。この場合、第1マイコン40は、線電流値を推定すればよい。
【0226】
(k)第1及び第2実施形態に係る電動作業機1は、コントローラ30A,30Bの代わりに、図27に示すコントローラ30C又は図28に示すコントローラ30Dを備えていてもよい。コントローラ30Cは、コントローラ30Bの構成に加えて、モータ電流検出回路72Cと、モータ電流処理回路73Cと、を備える。すなわち、コントローラ30Cは、3相の各々の巻線に配置されたモータ電流検出回路72A,72B,72Cと、対応するモータ電流処理回路73A,73B,73Cと、を備える。
【0227】
コントローラ30Dは、コントローラ30Aと比べて、電流検出回路62を備えていない。その代わりに、コントローラ30Bは、モータ電圧検出回路74A,74B,74Cと、モータ電圧処理回路75A,75B,75Cと、を備える。モータ電圧検出回路74A,74B,74Cは、3相の各々の巻線に配置されており、各相の入力電圧値Vmоtを検出し、検出した入力電圧値Vmоtをモータ電圧処理回路75A,75B,75Cへ出力する。モータ電圧処理回路75A,75B,75Cは、入力電圧値Vmоtに対してフィルタ処理及び増幅処理を行い、処理した入力電圧値Vmоtを第1マイコン40へ出力する。この場合、第1マイコン40は、入力電圧値Vmоtを推定する代わりに、検出された入力電圧値Vmоtを用いればよい。また、第1マイコン40は、巻線の抵抗値と入力電圧値Vmоtとから、線電流値を推定すればよい。
【0228】
(l)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0229】
1…電動作業機、8…バッテリパック、10…バッテリ装着部、21…主電源スイッチ、30…コントローラ、33…バッテリ電圧検出部、34…データ通信部、40…第1マイコン、42…第1メモリ、60…インバータ回路、61…温度検出回路、62…電流検出回路、70…モータ、71…回転センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
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