(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159479
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ソフトカプセルの皮膜用組成物、ソフトカプセル及びその製造方法、ソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法、並びにソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/48 20060101AFI20241031BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241031BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241031BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/18
A61K47/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024010153
(22)【出願日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2023072400
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大前 覚
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA56
4C076BB01
4C076DD51
4C076EE42
4C076EE57
4C076FF33
(57)【要約】
【課題】ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制することができるソフトカプセルの皮膜用組成物及びソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延が抑制されたソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法を提供する。
【解決手段】ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを含むソフトカプセルの皮膜用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを含むことを特徴とするソフトカプセルの皮膜用組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸又はその塩におけるアミノ酸が、グリシン及びリシンの少なくともいずれかである請求項1に記載のソフトカプセルの皮膜用組成物。
【請求項3】
皮膜が、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを含む皮膜であることを特徴とするソフトカプセル。
【請求項4】
前記アミノ酸又はその塩におけるアミノ酸が、グリシン及びリシンの少なくともいずれかである請求項3に記載のソフトカプセル。
【請求項5】
ソフトカプセルの皮膜の原料に、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを配合することを含むことを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
【請求項6】
ソフトカプセルの皮膜の原料に、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを配合することを含むことを特徴とするソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法。
【請求項7】
アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを併用することを特徴とするソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトカプセルの皮膜用組成物、ソフトカプセル及びその製造方法、ソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法、並びにソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂、粉体などの内容物をゼラチンシートなどの皮膜で被覆したソフトカプセルは、サプリメントや医薬品などで用いられている。ソフトカプセルの内容物やゼラチンシートへ配合する成分によっては、ゼラチンが経時的に反応し、崩壊性(以下、「溶解性」と称することがある。)が遅延することが知られている。
【0003】
医薬品のソフトカプセルの場合、37℃の水に20分間以内に溶解することが日本薬局方で定められている。そのため、ソフトカプセルの溶解性が下がらないようにゼラチンをコハク酸で修飾したコハク酸ゼラチンが多く用いられている。一方、サプリメントにおいても医薬品に準じ20分間以内に溶解することが望ましいとされているが、コハク酸ゼラチンは食品への使用が認められていない。
【0004】
これまでに、溶解性が優れ、しかも溶解性が経時的に劣化しない軟カプセル皮膜を提供する技術として、ゼラチンに対し0.5~4重量%のアミノ酸を配合する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そして、寒天とゼラチンが完全に相溶し、経時的に分離せずゼラチンと寒天の両方の性質を併せ持ったカプセル剤であって、皮膜が経時的に崩壊時間が延長することのない、品質が一定なカプセル剤を提供する技術において、ゼラチン不溶化防止剤としてアミノ酸を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭51-101118号公報
【特許文献2】特開平08-245372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制するために、ゼラチン皮膜にクエン酸を配合することや加工デンプンを配合する方法などが検討されてきているが、更なる技術の開発が求められている。
一方で、ソフトカプセルの風味の改善のために酵母などのエキスを配合した製品が販売されている。しかしながら、酵母エキスはゼラチンの溶解性の遅延を促進することが知られている。
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制することができるソフトカプセルの皮膜用組成物及びソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延が抑制されたソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、アミノ酸又はその塩を単独で配合した場合には、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延抑制効果が十分ではないことを新たに知見した。更に、驚くべきことに、アミノ酸又はその塩と、ゼラチンの溶解性の遅延を促進することが知られていた酵母エキスとを併用することで、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制することができることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを含むことを特徴とするソフトカプセルの皮膜用組成物である。
<2> 前記アミノ酸又はその塩におけるアミノ酸が、グリシン及びリシンの少なくともいずれかである前記<1>に記載のソフトカプセルの皮膜用組成物である。
<3> 皮膜が、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを含む皮膜であることを特徴とするソフトカプセルである。
<4> 前記アミノ酸又はその塩におけるアミノ酸が、グリシン及びリシンの少なくともいずれかである前記<3>に記載のソフトカプセルである。
<5> ソフトカプセルの皮膜の原料に、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを配合することを含むことを特徴とするソフトカプセルの製造方法である。
<6> ソフトカプセルの皮膜の原料に、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを配合することを含むことを特徴とするソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法である。
<7> アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを併用することを特徴とするソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制することができるソフトカプセルの皮膜用組成物及びソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延が抑制されたソフトカプセル及びその製造方法、並びにソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ソフトカプセルの皮膜用組成物)
本発明のソフトカプセルの皮膜用組成物は、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0013】
<ゼラチン>
前記ゼラチンとしては、特に制限はなく、ソフトカプセルに用いることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、豚、牛、鶏、魚等の皮、骨、腱等を原料とし、酸又はアルカリで処理して得られる粗コラーゲンを加熱抽出して製造されたものを用いることができる。また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物、アシル化ゼラチン等のゼラチン誘導体を用いることもできる。前記ゼラチンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ゼラチンは、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0014】
前記ソフトカプセルの皮膜用組成物におけるゼラチンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、30質量%~90質量%などが挙げられる。
【0015】
<アミノ酸又はその塩>
前記アミノ酸又はその塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記アミノ酸の塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の無機酸又は有機酸との塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩基との塩などが挙げられる。
【0016】
本発明において、前記アミノ酸又はその塩には、後述する酵母エキスに含まれるものは含まれない。即ち、本発明における前記アミノ酸又はその塩は、酵母エキスとは別に添加するもののことをいう。
【0017】
前記アミノ酸又はその塩におけるアミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リシン(「リジン」と称することもある。)、グリシン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン、スレオニン、プロリン、バリン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン、セリン、ヒスチジン、アラニン、システイン(シスチンの態様を含む。以下同様。)、チロシン、グルタミン、シトルリンなどが挙げられる。これらの中でも、グリシン及びリシンの少なくともいずれかであることが、崩壊時間の遅延をより抑制することができる点で、好ましい。
【0018】
前記アミノ酸又はその塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アミノ酸又はその塩は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0019】
前記ソフトカプセルの皮膜用組成物におけるアミノ酸又はその塩の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゼラチン100gに対するアミノ酸又はその塩の量として、0.3g~15gが好ましく、0.5g~10gがより好ましく、3g~8gが特に好ましい。
【0020】
前記アミノ酸又はその塩の酵母エキスに対する使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、酵母エキスと、アミノ酸又はその塩との質量比(酵母エキス:アミノ酸又はその塩)として、1:0.3~20が好ましく、1:0.5~5がより好ましい。
【0021】
<酵母エキス>
前記酵母エキスは、培養乃至醸造した酵母菌を洗浄し、不純物を除去した後、エキス分を抽出したものである。
前記酵母エキスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
前記酵母の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パン酵母、ビール酵母、トルラ酵母などが挙げられる。
前記酵母の属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属などが挙げられる。
前記エキス分の抽出方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、熱水抽出、自己消化、酵素分解などが挙げられる。
【0023】
前記酵母エキスは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記酵母エキスは、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0024】
前記ソフトカプセルの皮膜用組成物における酵母エキスの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゼラチン100gに対する酵母エキスの量として、0.5g~15gが好ましく、5g~10gがより好ましい。
【0025】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プルラン等のゼラチン以外の皮膜剤;グリセリン、ソルビトール、マルチトール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等の可塑剤(以下、「軟化剤」と称することがある。);カラメル、タール色素、クチナシ色素、マリーゴールド色素、アントシアニン等の着色剤;光隠ぺい剤;パラベン等の防腐剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を用いてもよいし、適宜調製したものを用いてもよい。
前記その他の成分の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記可塑剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼラチン100質量部に対して、10質量部~150質量部などが挙げられる。
【0027】
前記ソフトカプセルの皮膜用組成物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シート状などが挙げられる。
前記シート状のソフトカプセルの皮膜用組成物の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、例えば、製造するソフトカプセルに応じて適宜選択することができる。
【0028】
前記ソフトカプセルの皮膜用組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスと、必要に応じてその他の成分とを水に加熱溶解させ、所望する粘度の混合液とする方法などが挙げられる。
前記加熱の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ソフトカプセルの皮膜用組成物は、シート状に成形したものとすることもできる。
【0029】
本発明のソフトカプセルの皮膜用組成物によれば、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制することができる。
【0030】
(ソフトカプセル)
本発明のソフトカプセルは、皮膜が、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む皮膜である。
前記ソフトカプセルは、前記皮膜内に内容物が含まれている。
【0031】
<皮膜>
前記皮膜としては、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを少なくとも含む限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記した本発明のソフトカプセルの皮膜用組成物を好適に用いることができる。前記ゼラチン、アミノ酸又はその塩、酵母エキス、及びその他の成分としても、上記した本発明のソフトカプセルの皮膜用組成物における各成分を同様にして用いることができ、好ましい態様も同様とすることができる。
【0032】
<内容物>
前記内容物としては、特に制限はなく、栄養補助食品やサプリメント等の食品や医薬品などに用いられているソフトカプセルにおける内容物を適宜選択することができる。例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)等のω-3系脂肪酸;ω-3系脂肪酸を含む油;ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類及びそれらの誘導体や塩類;アミノ酸、イミダゾールジペプチド等のアミノ酸化合物及びその塩類;マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン、モリブデン等のミネラル及びその塩類又はそれらの金属を含有した酵母や乳酸菌などの金属含有微生物;ノコリギヤシエキス、ルテイン、ゼアキサンチン、カロテン類等の油状成分;カテキン、アントシアニン、タンニン等のポリフェノール類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記内容物は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0033】
前記ソフトカプセルにおける前記内容物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
前記内容物の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液状、油状、粉状、ペースト状、ジェル状などが挙げられる。
【0035】
前記ソフトカプセルの形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
前記ソフトカプセルは、食品や医薬品などとして用いることができるが、栄養補助食品やサプリメントなどの食品として好適に用いることができる。
【0037】
本発明によれば、崩壊時間の遅延が抑制されたソフトカプセルとすることができる。
【0038】
前記ソフトカプセルの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明のソフトカプセルの製造方法により、好適に製造することができる。
【0039】
(ソフトカプセルの製造方法)
本発明のソフトカプセルの製造方法は、配合工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記ソフトカプセルの製造方法は、前記配合工程以外は、内容物調製工程、成形工程、乾燥工程などの公知の工程を適宜選択することができる。
【0040】
<配合工程>
前記配合工程は、ソフトカプセルの皮膜の原料に、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを配合する工程である。
【0041】
前記配合工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスと、必要に応じてグリセリン等の可塑剤などのその他の成分とを加温した水に溶解もしくは分散させ、所望する粘度の混合液(ソフトカプセルの皮膜液)とする方法などが挙げられる。前記混合液は、必要に応じて脱泡処理をしてもよい。
前記ゼラチン、前記アミノ酸又はその塩、前記酵母エキス、及び前記その他の成分は、上記した本発明の(ソフトカプセルの皮膜用組成物)の項目に記載したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
前記加温の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
<内容物調製工程>
前記内容物調製工程は、内容物を調製する工程である。
前記内容物調製工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内容物として配合する成分を混合し、ソフトカプセルの内容物とする方法などが挙げられる。
前記内容物は、上記した本発明の(ソフトカプセル)の項目に記載したものと同様とすることができる。
【0043】
<成形工程>
前記成形工程の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法を適宜選択することができ、例えば、ロータリーダイ法、滴下法などが挙げられる。
【0044】
前記ロータリーダイ法に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般的に、ソフトカプセルの皮膜液をシート状に成形するキャスティングドラムと、該表面に成形鋳型が形成された一対のダイロールと、ダイロール間に配されたくさび状のセグメントと、セグメント内に内容物を圧入すると共にセグメントの先端から内容物を押し出すポンプとを備える装置が挙げられる。
前記装置では、まず、60℃~100℃に保持されてゾル状態にあるソフトカプセルの皮膜液が、キャスティングドラム表面に流延され、冷却されてゾル化することによりシート化される。次いで、形成されたシートの2枚が、セグメントに沿って一対のダイロール間に送られる。そして、一対のダイロールの相反する方向への回転に伴い、2枚のシートがヒートシールされ、上方に開放したカプセルが形成されると、この中にセグメントから押し出された内容物が充填される。前記充填と同時に、2枚のシートが上部でヒートシールされ、閉じた内部空間に内容物が充填されたソフトカプセルが得られる。
【0045】
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、前記ソフトカプセルが所定の水分含量となるまで乾燥させる工程である。
前記乾燥に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、調湿乾燥機などが挙げられる。
【0046】
本発明のソフトカプセルの製造方法によれば、崩壊時間の遅延が抑制されたソフトカプセルを簡易な方法で効率良く製造することができる。
【0047】
(ソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法)
本発明のソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法は、配合工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0048】
<配合工程>
前記配合工程は、ソフトカプセルの皮膜の原料に、ゼラチンと、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを配合する工程である。
前記配合工程は、上記した本発明の(ソフトカプセルの製造方法)の項目に記載した配合工程と同様にして行うことができる。
【0049】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(ソフトカプセルの製造方法)の項目に記載した内容物調製工程、成形工程、乾燥工程などが挙げられる。
【0050】
本発明のソフトカプセルの崩壊遅延の抑制方法によれば、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制することができる。
【0051】
(ソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤)
本発明のソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤は、アミノ酸又はその塩と、酵母エキスとを併用するものであり、必要に応じて更にその他の成分を用いる。
【0052】
前記アミノ酸又はその塩、前記酵母エキス、及び前記その他の成分は、上記した本発明の(ソフトカプセルの皮膜用組成物)の項目に記載したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0053】
前記アミノ酸又はその塩、前記酵母エキス、及び前記その他の成分の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(ソフトカプセルの皮膜用組成物)の項目に記載した含有量と同様とすることができる。
【0054】
前記アミノ酸又はその塩、前記酵母エキス、及び前記その他の成分は、各成分を含む1つの剤として使用してもよいし、それぞれ個別の剤として使用時に併用してもよい。
【0055】
本発明のソフトカプセルの崩壊遅延抑制剤によれば、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制することができる。
【実施例0056】
以下に試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(試験例1)
ゼラチン(AP-200(豚由来、ニッピ株式会社製))100質量部に対して、下記の表1~3に記載の量の各成分と、水とを加え、60℃にて加温溶解した後、薄く延ばしてシート状に乾燥した。乾燥後のシートを0.1~0.3gに切り分け、プラスチックシャーレに入れて、60℃で2週間(加速条件:室温2年間に相当)静置した(以下、「加速保管品」と称することがある。)。
なお、酵母エキスには一例として、ロースト酵母エキス(アサヒグループ食品株式会社製)を使用した。
【0058】
イニシャル品(製造直後のもの、以下「イニシャル」と称することがある。)及び加速保管品(以下、「60℃2W」と称することがある。)について、崩壊試験機(ERWEKA社、型番:ZT322、網の目開き:1.8mm)を用いて、下記の条件で第18改正日本薬局方に準じて崩壊時間を確認した。結果を表1~3に示す。
-条件-
・ 補助盤 : 有
・ 振幅幅 : 55mm(53~57mm)
・ 振幅速度 : 30往復(29~32往復)/分
・ 溶媒 : 水
・ 溶媒温度 : 37℃±2℃
【0059】
【表1】
表1中、「A」の欄はゼラチンシートにおける各成分の割合(質量%)を表し、「B」の欄はゼラチンの量を100質量部としたときの各成分の量(質量部)を表す(後述の表2~7における「A」の欄及び「B」の欄も同様)。
【0060】
表1で示したように、酵母エキス及びアミノ酸又はその塩を含まない試験例1-1では、60℃で2週間保管したときに崩壊時間の遅延が生じていた。また、アミノ酸又はその塩を配合せず、酵母エキスを配合した試験例1-2、ポリフェノールを添加した試験例1-3、酵母エキスを配合せず、アミノ酸又はその塩を配合した試験例1-4でも同様に崩壊時間の遅延が生じていた。
【0061】
【0062】
【0063】
表2~3で示したように、酵母エキス及びアミノ酸又はその塩を配合することで、崩壊時間の遅延が抑制されていた(試験例1-6~1-9)。
【0064】
以上で示したように、酵母エキスと、アミノ酸又はその塩とを配合することで、崩壊時間の遅延を抑制できることが確認された。アミノ酸又はその塩の中でも、アミノ酸又はその塩におけるアミノ酸が、グリシン、リシンの場合に、崩壊遅延をより抑制できることが確認された。
【0065】
(試験例2:ソフトカプセル)
<試験例2-1>
-内容液-
精製魚油を内容液とした。
【0066】
-皮膜の調製-
下記処方のシート状の皮膜を常法により、調製した。
[皮膜処方]
・ ゼラチン ・・・ 100質量部
(AP-200、ニッピ株式会社製)
・ グリセリン ・・・ 35質量部
・ 酵母エキス ・・・ 7質量部
(ロースト酵母エキス、アサヒグループ食品株式会社製)
【0067】
-ソフトカプセルの製造-
ロータリーダイ式成形装置(SSM―A4IL-C、株式会社三協製)を使用して、前記内容液及び前記皮膜からなるソフトカプセル(オーバル7.5号、総重量 580mg、中身重量 390mg)を得た。
【0068】
<試験例2-2>
試験例2-1における皮膜処方を下記の皮膜処方に変えた以外は、試験例2-1と同様にして、ソフトカプセルを製造した。
[皮膜処方]
・ ゼラチン ・・・ 100質量部
(AP-200、ニッピ株式会社製)
・ グリセリン ・・・ 35質量部
・ 酵母エキス ・・・ 7質量部
(ロースト酵母エキス、アサヒグループ食品株式会社製)
・ リシン塩酸塩 ・・・ 10質量部
【0069】
<評価>
上記で得られたソフトカプセルをアルミチャック袋に入れて、40℃で7か月間(加速条件:室温3.5年間に相当)保管した。
イニシャル品及び40℃で7か月間保管品(以下、「40℃7M」と称することがある。)について、試験例1と同様にして、崩壊時間を確認した。結果を下記に示す。
[崩壊時間]
・ イニシャル品
試験例2-1 : 13分、試験例2-2 : 10分
・ 40℃7M
試験例2-1 : 43分、試験例2-2 : 10分
【0070】
以上の結果から、本発明によれば、ソフトカプセルの崩壊時間の遅延を抑制できることが確認された。
【0071】
(試験例3)
ゼラチン100質量部に対して、下記の表4~7に記載の量の各成分と、水とを加え、60℃にて加温溶解した後、薄く延ばしてシート状に乾燥した。乾燥後のシートを0.1~0.3gに切り分け、プラスチックシャーレに入れて、60℃で2週間(加速条件:室温2年間に相当)静置した(以下、「加速保管品」と称することがある。)。
なお、ゼラチン及び酵母エキスは、試験例1と同じものを使用した。
【0072】
イニシャル品(製造直後のもの、以下「イニシャル」と称することがある。)及び加速保管品(以下、「60℃2W」と称することがある。)について、試験例1と同様にして、崩壊時間を確認した。試験例1-2の結果と併せて、試験例3-1~3-11の結果を表4~7に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
試験例3-1~3-11で示したように、アミノ酸又はその塩と、金属含有物とを配合することで、アミノ酸又はその塩の含有量、酵母エキスの含有量、酵母エキスと、アミノ酸又はその塩との質量比、可塑剤の配合量を変えた場合でも、崩壊時間の遅延を抑制することができることが確認された。