(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159483
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法及び発光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 33/38 20100101AFI20241031BHJP
H01L 33/42 20100101ALN20241031BHJP
H01L 33/32 20100101ALN20241031BHJP
【FI】
H01L33/38
H01L33/42
H01L33/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014326
(22)【出願日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2023073598
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】北濱 俊
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA04
5F241AA43
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA74
5F241CA88
5F241CA92
5F241CA93
5F241CA98
5F241CB25
(57)【要約】
【課題】透光性導電層における光吸収を低減しつつ、透光性導電層と導電層とをより高い信頼性で電気的に接続することができる発光素子の製造方法及び発光素子を提供すること。
【解決手段】発光素子の製造方法は、n側半導体層と、n側半導体層上に位置する活性層と、活性層上に位置するp側半導体層とを有する半導体構造体を準備する工程と、p側半導体層の上面の一部に形成された第1層と、p側半導体層の上面及び第1層を覆う第2層とを有する透光性導電層を形成する工程と、第2層を覆う絶縁膜を形成する工程と、平面視において第1層と重なる領域の絶縁膜を除去し絶縁膜に第1開口を形成することで、絶縁膜から透光性導電層を露出させる工程と、第1開口に透光性導電層と電気的に接続する第1導電層を形成する工程とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n側半導体層と、前記n側半導体層上に位置する活性層と、前記活性層上に位置するp側半導体層と、を有する半導体構造体を準備する工程と、
前記p側半導体層の上面の一部に形成された第1層と、前記p側半導体層の前記上面及び前記第1層を覆う第2層と、を有する透光性導電層を形成する工程と、
前記第2層を覆う絶縁膜を形成する工程と、
平面視において前記第1層と重なる領域の前記絶縁膜を除去し前記絶縁膜に第1開口を形成することで、前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程と、
前記第1開口に、前記透光性導電層と電気的に接続する第1導電層を形成する工程と、
を備える、発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記透光性導電層を形成する工程は、前記第1層を形成する工程と、前記第2層を形成する工程とを有し、
前記第1層を形成する工程は、
第1膜を前記p側半導体層の前記上面に形成する工程と、
前記第1膜の一部を除去して、前記p側半導体層の前記上面の前記一部に前記第1膜の他の一部を前記第1層として残す工程と、
を有する、請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程において、前記透光性導電層の一部が除去される、請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程において、平面視において前記第1層と重なる領域の前記第2層の一部を除去し前記第2層に第2開口を形成することで、前記第2層から前記第1層を露出させ、
前記第1導電層を形成する工程において、前記第1開口及び前記第2開口に、前記透光性導電層と電気的に接続する前記第1導電層を形成する、請求項3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1層の厚さは、前記第2層の厚さよりも厚い、請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1層の厚さは、30nm以上50nm以下であり、前記第2層の厚さは、5nm以上25nm以下である、請求項5に記載の発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記透光性導電層を形成する工程は、
前記第1層を形成した後、前記第2層を形成する前に、350℃より大きく400℃以下である第1温度で第1熱処理を行う工程と、
前記第2層を形成した後、300℃以上350℃以下である第2温度で第2熱処理を行う工程と、
を有する、請求項5に記載の発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程において、複数の前記第1開口を形成し、
前記第1層は、平面視において、複数の前記第1開口に重なるそれぞれの領域に位置する第1部分と、前記第1部分の間を接続する第2部分と、を有する、請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記透光性導電層を形成する工程において、前記第1層と前記p側半導体層の前記上面との接触面積は、前記第2層と前記p側半導体層の前記上面との接触面積よりも小さい、請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項10】
n側半導体層と、前記n側半導体層上に位置する活性層と、前記活性層上に位置するp側半導体層と、を有する半導体構造体と、
前記p側半導体層の上面の一部に配置された第1層と、前記p側半導体層の前記上面及び前記第1層を覆う第2層と、を有する透光性導電層と、
前記第2層を覆う絶縁膜であって、平面視において前記第1層と重なる領域に位置する第1開口を有する絶縁膜と、
前記第1開口に配置され、且つ前記第1開口の下方において前記透光性導電層と接する第1導電層と、
を備え、
前記第1層上に位置する前記第2層の粒径は、前記第1層の粒径よりも大きい、発光素子。
【請求項11】
前記第1層の厚さは、前記第2層の厚さよりも厚い、請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記第1層の厚さは、30nm以上50nm以下であり、前記第2層の厚さは、5nm以上25nm以下である、請求項11に記載の発光素子。
【請求項13】
前記第1層の粒径は、0.35nm以上0.7nm以下であり、
前記第1層上に位置する前記第2層の粒径は、0.7nm以上1.0nm以下である、請求項10~12のいずれか1つに記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法及び発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、p側半導体層上に透明電極を配置し、透明電極を覆う分布ブラッグ反射膜を形成した後、分布ブラッグ反射膜に形成した開口を介してp側半導体層に接続するpコンタクト電極を分布ブラッグ反射膜上に形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透光性導電層における光吸収を低減しつつ、透光性導電層と導電層とをより高い信頼性で電気的に接続することができる発光素子の製造方法及び発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光素子の製造方法は、n側半導体層と、前記n側半導体層上に位置する活性層と、前記活性層上に位置するp側半導体層と、を有する半導体構造体を準備する工程と、前記p側半導体層の上面の一部に形成された第1層と、前記p側半導体層の前記上面及び前記第1層を覆う第2層と、を有する透光性導電層を形成する工程と、前記第2層を覆う絶縁膜を形成する工程と、平面視において前記第1層と重なる領域の前記絶縁膜を除去し前記絶縁膜に第1開口を形成することで、前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程と、前記第1開口に、前記透光性導電層と電気的に接続する第1導電層を形成する工程と、を備える。
【0006】
本発明の一態様によれば、発光素子は、n側半導体層と、前記n側半導体層上に位置する活性層と、前記活性層上に位置するp側半導体層と、を有する半導体構造体と、前記p側半導体層の上面の一部に配置された第1層と、前記p側半導体層の前記上面及び前記第1層を覆う第2層と、を有する透光性導電層と、前記第2層を覆う絶縁膜であって、平面視において前記第1層と重なる領域に位置する第1開口を有する絶縁膜と、前記第1開口に配置され、且つ前記第1開口の下方において前記透光性導電層と接する第1導電層と、を備え、前記第1層上に位置する前記第2層の粒径は、前記第1層の粒径よりも大きい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透光性導電層における光吸収を低減しつつ、透光性導電層と導電層とをより高い信頼性で電気的に接続することができる発光素子の製造方法及び発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1のII-II線における模式断面図である。
【
図3】実施形態の発光素子における第1導電層と透光性導電層との接続部分の模式断面図である。
【
図4A】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4B】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4C】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4D】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4E】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4F】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4G】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4H】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4I】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4J】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式平面図である。
【
図4K】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4L】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4M】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4N】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図4O】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式断面図である。
【
図5A】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式平面図である。
【
図5B】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式平面図である。
【
図5C】実施形態の発光素子の製造方法の一工程を説明するための模式平面図である。
【
図6A】実施形態の発光素子の透光性導電層における第1層のAFM画像である。
【
図6B】実施形態の発光素子の透光性導電層における第1層上に位置する第2層のAFM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、又は部材の一部の図示を省略する場合がある。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。また、断面図において、半導体構造体の各層の境界を見やすくするために、半導体構造体の断面にはハッチングを付していない。
【0010】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「上」と表現する位置関係は、接している場合と、接していないが上方に位置している場合も含む。また、本明細書において、特定的な記載がない限り、部材が被覆対象を覆うとは、部材が被覆対象に接して被覆対象を直接覆う場合と、部材が被覆対象に非接触で被覆対象を間接的に覆う場合を含む。
【0011】
[発光素子]
図1~
図3を参照して、実施形態の発光素子1について説明する。
図1に示す発光素子1の平面視において、互いに直交する2つの方向を第1方向X及び第2方向Yとする。第1方向X及び第2方向Yに直交する方向を第3方向Zとする。
【0012】
発光素子1は、半導体構造体10と、透光性導電層43と、絶縁膜20と、第1導電層41とを備える。
【0013】
<半導体構造体>
半導体構造体10は、窒化物半導体からなる。本明細書において「窒化物半導体」とは、例えば、InxAlyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。また、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電型などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むものも「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0014】
図2に示すように、半導体構造体10は、n側半導体層11と、第3方向Zにおいてn側半導体層11上に位置する活性層12と、第3方向Zにおいて活性層12上に位置するp側半導体層13とを有する。活性層12は、第3方向Zにおいて、n側半導体層11とp側半導体層13との間に位置する。活性層12は、光を発する発光層であり、例えば複数の障壁層と、複数の井戸層を含むMQW(Multiple Quantum well)構造を有する。n側半導体層11は、n型不純物を含む半導体層を有する。p側半導体層13は、p型不純物を含む半導体層を有する。
【0015】
n側半導体層11は、第1面11dと、第3方向Zにおいて第1面11dの反対側に位置し、活性層12及びp側半導体層13が配置された第2面11cとを有する。活性層12が発する光は、主に第1面11dから半導体構造体10の外部に取り出される。また、n側半導体層11は、第3方向Zにおいて第1面11dの反対側に位置し、p側半導体層13及び活性層12から露出する複数の第1露出部11aを有する。平面視において、複数の第1露出部11aの最大幅は、例えば、100nm以上30μm以下である。また、n側半導体層11は、第3方向Zにおいて第1面11dの反対側に位置し、p側半導体層13及び活性層12から露出する第2露出部11bを有する。
【0016】
図1に示すように、n側半導体層11は、平面視において、第1方向Xに延びる2つの第1外縁11Aと、第2方向Yに延びる2つの第2外縁11Bとを有する。第2露出部11bは、平面視において第1外縁11A及び第2外縁11Bに隣接するn側半導体層11の外周部に位置する。第2露出部11bは、第1外縁11A及び第2外縁11Bに沿って連続している。第1露出部11aは、平面視において、n側半導体層11の外周部よりも内側に位置し、p側半導体層13に囲まれている。平面視において、1つの第1外縁11Aの長さと1つの第2外縁11Bの長さは、例えば、30μm以上2000μm以下である。
【0017】
図2に示すように、発光素子1は、半導体構造体10を支持する基板100を備えることができる。n側半導体層11が第3方向Zにおいて基板100側に位置するように、半導体構造体10は基板100上に配置されている。
図2において、基板100は、第1面11dと接している。基板100の材料として、例えば、サファイア、スピネル、GaN、SiC、ZnS、ZnO、GaAs、またはSiなどを用いることができる。発光素子1は、基板100を備えなくてもよい。
【0018】
<透光性導電層>
透光性導電層43は、p側半導体層13の上面13aに配置されている。透光性導電層43は、活性層12が発する光に対する透光性を有する。透光性導電層43の活性層12が発する光のピーク波長に対する透過率は、例えば、60%以上である。これにより、透光性導電層43における光の吸収を低減できる。また、透光性導電層43は、第1導電層41から供給される電流をp側半導体層13の面方向に拡散させることができる。これにより、発光分布の偏りを低減できる。透光性導電層43の材料として、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、In2O3(Indium Oxide)などを用いることができる。
【0019】
図3は、p側半導体層13の上面13aの一部を含む領域の模式断面図である。
図3に示す領域において、後述する第1導電層41が透光性導電層43と電気的に接続する。
図3に示すように、透光性導電層43は、p側半導体層13の上面13aの一部に配置され、上面13aに接する第1層43Aと、p側半導体層13の上面13aに接すると共に第1層43Aを覆う第2層43Bとを有する。第2層43Bは、p側半導体層13の上面13a、第1層43Aの上面の一部及び側面を覆う。第2層43Bとp側半導体層13の上面13aとの接触面積は、第1層43Aとp側半導体層13の上面13aとの接触面積よりも大きい。例えば、第1層43Aとp側半導体層13の上面13aとの接触面積は、第2層43Bとp側半導体層13の上面13aとの接触面積の0.1%以上5%以下である。
【0020】
第1層43A上に位置する第2層43Bの粒径は、第1層43Aの粒径よりも大きい。また、第1層43A上に位置する第2層43Bの粒径は、第1層43Aを介さずにp側半導体層13の上面13a上に位置する第2層43Bの粒径よりも大きい。
【0021】
第1層43Aの粒径及び第2層43Bの粒径は、例えば、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により観察された画像から測定することができる。
図6Aは、第1層43AのAFM画像を示す。
図6Bは、第1層43A上に位置する第2層43BのAFM画像を示す。
図6A及び
図6Bともに5μm×5μmの領域を示す。第1層43Aの粒径は、例えば、0.35nm以上0.7nm以下である。第1層43A上に位置する第2層43Bの粒径は、例えば、0.7nm以上1.0nm以下である。
【0022】
第1層43Aの粒径及び第2層43Bの粒径は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:SEM)、または、表面電位顕微鏡(Kelvin Force Microscope:KFM)により観察された画像から測定することもできる。
【0023】
第1層43A上に位置する第2層43Bの粒径が、第1層43Aの粒径よりも大きいことにより、第1層43A上に位置する第2層43Bの抵抗率を第1層43Aの抵抗率よりも低くできる。
【0024】
<絶縁膜>
絶縁膜20は、p側半導体層13上に配置され、p側半導体層13の上面13a及び透光性導電層43を覆っている。活性層12からp側半導体層13側に放射された光を、絶縁膜20により、主な光取り出し面である第1面11d側に反射させることができる。絶縁膜20は、単層構造でもよく、または後述するように複数の絶縁膜が積層された積層構造でもよい。
【0025】
絶縁膜20は、透光性導電層43の上方に位置する第1開口21を有する。
図1に示すように、絶縁膜20は、複数の第1開口21を有する。例えば、複数の第1開口21は、平面視において、第1方向Xおよび第2方向Yに沿って行列状に配列されている。隣り合って配置された第1開口21間の距離は、例えば、それぞれ略同じとすることができる。例えば、平面視において、第1露出部11aと、第1露出部11aと最も近い位置に位置する第1開口21との最短距離は、100nm以上10μm以下である。複数の第1開口21の個数は、例えば、400個以上1500個以下とすることができる。複数の第1開口21の平面視における総面積は、例えば、p側半導体層13の上面13aの面積の0.2%以上5%以下である。このような複数の第1開口21の個数及び/又は平面視における総面積にすることで、絶縁膜20が光を反射するための面積を維持しつつ、第1導電層41とp側半導体層13とが電気的に接続される面積を確保することできるため、発光素子1の発光効率を向上できる。例えば、第1開口21の平面視における最大幅は、1nm以上10μm以下である。
【0026】
図2に示す例では、絶縁膜20は、p側半導体層13上、活性層12上、第1露出部11a上、及び第2露出部11b上に連続して配置され、それらを覆っている。また、絶縁膜20は、活性層12と第1露出部11aとの間に連続するn側半導体層11の側面、及び活性層12と第2露出部11bとの間に連続するn側半導体層11の側面を覆っている。絶縁膜20は、第1露出部11aの上方に位置する複数の第3開口22と、第2露出部11bの上方に位置する複数の第4開口23とを有する。
【0027】
<第1導電層>
第1導電層41は、絶縁膜20上及び第1開口21に配置されている。
図3に示すように、第1導電層41は、絶縁膜20の第1開口21の下方において透光性導電層43と接し、透光性導電層43と電気的に接続している。第1導電層41は、透光性導電層43を介してp側半導体層13と電気的に接続している。また、第1導電層41は、活性層12からp側半導体層13側に放射された光を反射させて第1面11dに向かわせる層としても機能することができる。第1導電層41の活性層12が発する光のピーク波長に対する反射率は、例えば、60%以上である。第1導電層41の材料として、例えば、銀、アルミニウムなどを用いることができる。第1導電層41は、単層構造としてよいし、複数の金属層が積層された積層構造としてもよい。
【0028】
図3に示すように、第1導電層41は、第1開口21の下方において第2層43Bを貫通して第1層43Aに接してよい。この場合、第1導電層41の側面が、第1層43A上に位置する第2層43Bに接することができる。前述したように、第1層43A上に位置する第2層43Bの抵抗率は、第1層43Aの抵抗率よりも低い。第1導電層41の側面が、第1層43A上に位置する第2層43Bに接することにより、第1導電層41と透光性導電層43との接触抵抗を低減できる。
【0029】
または、第1開口21の下方において、第1導電層41が第2層43Bを貫通せず、第1導電層41の下面が、第1層43A上に位置する第2層43Bに接してよい。この場合、第1導電層41が第2層43Bを貫通する場合よりも、第1導電層41と、第1層43A上に位置する第2層43Bとの接触面積を大きくでき、第1導電層41と透光性導電層43との接触抵抗を低減できる。
【0030】
実施形態の発光素子1は、層間絶縁膜30と、第2導電層44と、第3導電層42とをさらに備えることができる。
【0031】
<層間絶縁膜>
層間絶縁膜30は、第1導電層41上に配置されている。層間絶縁膜30は、第1導電層41の上方に位置する複数の第5開口31を有する。層間絶縁膜30として、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を用いることができる。層間絶縁膜30は、単層構造でもよく、または複数の絶縁膜が積層された積層構造でもよい。
【0032】
層間絶縁膜30は、第1導電層41上及び絶縁膜20上に連続して配置されている。層間絶縁膜30は、n側半導体層11の第1露出部11aの上方に配置される複数の第6開口32を有する。平面視において、層間絶縁膜30の第6開口32の少なくとも一部は、絶縁膜20の第3開口22に重なる。層間絶縁膜30は、n側半導体層11の第2露出部11bの上方に配置される複数の第7開口33を有する。平面視において、層間絶縁膜30の第7開口33の少なくとも一部は、絶縁膜20の第4開口23に重なる。
【0033】
<第2導電層>
第2導電層44は、層間絶縁膜30上に配置されている。また、第2導電層44は、第1露出部11aの上方に配置された絶縁膜20の第3開口22及び層間絶縁膜30の第6開口32においてn側半導体層11に接し、n側半導体層11と電気的に接続されている。また、第2導電層44は、第2露出部11bの上方に配置された絶縁膜20の第4開口23及び層間絶縁膜30の第7開口33においてn側半導体層11に接し、n側半導体層11と電気的に接続されている。
【0034】
<第3導電層>
図2に示すように、第3導電層42は、p側半導体層13の上方に位置する層間絶縁膜30上に配置されている。第3導電層42は、層間絶縁膜30の第5開口31において第1導電層41に接し、第1導電層41と電気的に接続されている。
図1に示す例では、第3導電層42は、第1方向Xに延びる長方形状に形成されている。第2導電層44は、平面視において第3導電層42を囲んでいる。平面視において、第2導電層44の面積は、第3導電層42の面積よりも広い。
【0035】
第2導電層44及び第3導電層42の材料として、例えば、Ag(銀)、Pt(白金)、Al(アルミニウム)、Au(金)などを用いることができる。第2導電層44及び第3導電層42のそれぞれは、単層構造としてよいし、複数の金属層が積層された積層構造としてもよい。
【0036】
[発光素子の製造方法]
次に、
図4A~
図4Oを参照して、実施形態に係る発光素子1の製造方法について説明する。なお、
図4C~
図4F、
図4H、及び
図4Kは、前述した
図3に示すp側半導体層13の上面13aの一部を含む領域の模式断面図である。
図4Jは、
図4Kに示す領域の模式平面図である。なお、
図4J及び
図4Kは、絶縁膜20から透光性導電層43を露出させる工程を説明するための模式平面図及び模式断面図である。
【0037】
発光素子1の製造方法は、半導体構造体10を準備する工程と、透光性導電層43を形成する工程と、絶縁膜20を形成する工程と、絶縁膜20から透光性導電層43を露出させる工程と、第1導電層41を形成する工程とを備える。
【0038】
<半導体構造体を準備する工程>
図4Aに示すように、半導体構造体10を準備する工程において、n側半導体層11と、n側半導体層11上に位置する活性層12と、活性層12上に位置するp側半導体層13とを有する半導体構造体10を準備する。
【0039】
半導体構造体10を準備する工程は、例えば、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)法により、基板100上にn側半導体層11、活性層12、及びp側半導体層13を順に形成する工程を有する。さらに、半導体構造体10を準備する工程は、n側半導体層11に第1露出部11a及び第2露出部11bを形成する工程を有する。例えば、塩素系ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法により、p側半導体層13の上面13a側からp側半導体層13の一部及び活性層12の一部を除去して、第1露出部11a及び第2露出部11bを形成することができる。
【0040】
<透光性導電層を形成する工程>
図4Bに示すように、透光性導電層43を形成する工程において、透光性導電層43がp側半導体層13の上面13aに形成される。
【0041】
透光性導電層43を形成する工程は、
図4Fに示すように、p側半導体層13の上面13aの一部に第1層43Aを形成する工程と、p側半導体層13の上面13a及び第1層43Aを覆う第2層43Bを形成する工程とを有する。複数の第1層43Aが、互いに離隔してp側半導体層13の上面13aに形成される。第2層43Bを形成する工程において、第2層43Bは第1層43Aの上面及び側面を覆う。透光性導電層43において、第1層43Aと第2層43Bとが積層された部分の第3方向Zの最大厚さは、第2層43Bにおける第1層43Aを被覆していない部分の第3方向Zの最大厚さよりも厚い。
【0042】
<絶縁膜を形成する工程>
図4Hに示すように、絶縁膜20は透光性導電層43の第2層43Bを覆う。絶縁膜20は、例えば、スパッタリング法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。
【0043】
また、
図4Gに示すように、絶縁膜20は、透光性導電層43、及び半導体構造体10における第1面11dの反対側に位置する表面を連続して覆う。絶縁膜20に覆われる半導体構造体10の表面は、p側半導体層13の上面13a、p側半導体層13の側面、活性層12の側面、n側半導体層11の第1露出部11a、及びn側半導体層11の第2露出部11bを含む。絶縁膜20に覆われる半導体構造体10の表面は、さらに、n側半導体層11における第1露出部11aに連続する側面、及びn側半導体層11における第2露出部11bに連続する側面を含む。
【0044】
<絶縁膜から透光性導電層を露出させる工程>
図4Kは、
図4JのIVK-IVK線における模式断面図である。
図4Jに示すように、平面視において透光性導電層43の第1層43Aと重なる領域の絶縁膜20を除去し、絶縁膜20に第1開口21を形成する。平面視において、第1開口21の形状及び第1層43Aの形状は、例えば、円形とすることができる。平面視において、第1開口21の外縁は、第1層43Aの外縁よりも内側に位置する。第1開口21を形成することで、
図4J及び
図4Kに示すように、絶縁膜20から透光性導電層43を露出させる。例えば、
図4Iに示すように、複数の第1開口21を透光性導電層43の上方に形成することができる。本実施形態において、第1開口21の数は、透光性導電層43の第1層43Aの数と同じである。
【0045】
絶縁膜20を、例えば、レジストマスクを用いたRIE法により除去して、第1開口21を形成することができる。第1開口21を形成するときのエッチング条件において、透光性導電層43のエッチングレートは、絶縁膜20のエッチングレートよりも低い。
【0046】
<第1導電層を形成する工程>
図4L及び
図3に示すように、第1開口21に第1導電層41を形成する。第1導電層41は、第1開口21の下方において透光性導電層43と電気的に接続される。第1導電層41は、p側半導体層13の上方に位置する絶縁膜20上と、複数の第1開口21内とに形成される。第1導電層41は、例えば、スパッタリング法などにより形成することができる。
【0047】
本実施形態によれば、絶縁膜20から透光性導電層43を露出させる工程おいて、透光性導電層43のうち第1層43A及び第2層43Bが配置された部分の上方に位置する絶縁膜20を除去して、第1開口21を形成する。第1層43A及び第2層43Bが配置された部分は、透光性導電層43において他の部分よりも厚い部分であるため、絶縁膜20に第1開口21を形成する際に、第1開口21の下方の透光性導電層43が消失しにくくなる。第1開口21の下方に透光性導電層43を残しやすくできるため、第1開口21に形成される第1導電層41と、透光性導電層43とをより高い信頼性で電気的に接続することができる。
【0048】
透光性導電層43のうち第2層43Bのみが配置された部分の厚さは、透光性導電層43のうち第1層43A及び第2層43Bが配置された部分の厚さよりも薄いため、活性層12が発する光の透光性導電層43における吸収を低減できる。したがって、本実施形態によれば、透光性導電層43における光吸収を低減しつつ、透光性導電層43と第1導電層41とをより高い信頼性で電気的に接続することができる。
【0049】
透光性導電層43を形成する工程において、
図4C~
図4Eに示す方法により、p側半導体層13の上面13aの一部に第1層43Aを形成することができる。
【0050】
第1層43Aを形成する工程は、
図4Cに示すように、第1膜143をp側半導体層13の上面13aに形成する工程を有する。例えば、スパッタリング法または蒸着法により、第1膜143をp側半導体層13の上面13aに形成することができる。なお、第1膜143は、p側半導体層13の上面13aと、第1露出部11aと、第2露出部11bとに連続して形成されてよい。この場合、後述する第1層43Aを形成する工程において、第1露出部11a及び第2露出部11bに形成されている第1膜143は除去される。
【0051】
第1膜143を形成した後、第1層43Aを形成する工程は、第1膜143の一部を除去して、p側半導体層13の上面13aの一部に第1膜143の他の一部を第1層43Aとして残す工程を有する。例えば、
図4Dに示すように、第1膜143の他の一部の上にレジストマスク91を配置する。そして、レジストマスク91を用いたエッチングにより、レジストマスク91から露出する第1膜143の一部を除去する。これにより、
図4Eに示すように、p側半導体層13の上面13aの一部に、レジストマスク91の下の第1膜143の他の一部が、第1層43Aとして残される。第1膜143の一部は、ウェットエッチングにより除去することが好ましい。ウェットエッチングにより第1膜143の一部を除去することで、ドライエッチングにより第1膜143の一部を除去する場合と比較して、p側半導体層13の上面13aと、第2層43Bとの間の接触抵抗を低減できる。これは、ドライエッチングにより第1膜143の一部を除去する場合と比較して、p側半導体層13の上面13aがエッチングにより受けるダメージを低減できるためであると考えられる。
【0052】
この後、
図4Fに示すように、p側半導体層13の上面13a及び第1層43Aを覆う第2層43Bを形成する。第2層43Bは、スパッタリング法または蒸着法により形成することができる。
図4Bに示されるように、断面視において第2層43Bは、第1露出部11a及び第2露出部11bから離れた位置に形成される。なお、
図4Bに示す透光性導電層43の位置と、第2層43Bが形成される位置は同じ位置である。また、上面視においても、第2層43Bは、第1露出部11a及び第2露出部11bから離れた位置に形成される。p側半導体層13の上面13aと、第1露出部11aと、第2露出部11bとに連続して第2層43Bとなる膜を形成した後、第1露出部11a及び第2露出部11bに形成された第2層43Bとなる膜を除去することで、第1露出部11a及び第2露出部11bから離れた位置に第2層43Bを残すことができる。また、第1露出部11a及び第2露出部11bにマスクを形成した後、p側半導体層13の上面13aからマスク上に第2層43Bとなる膜を形成し、マスクをリフトオフすることで、第1露出部11a及び第2露出部11bから離れた位置に第2層43Bを残してもよい。
【0053】
一部が厚い透光性導電層を形成する方法の第1参考例として、第1膜をp側半導体層13の上面13aに形成する工程と、第1膜の一部をレジストマスクで覆って、レジストマスクから露出する第1膜をエッチングにより除去して薄くする工程とを有する方法が考えられる。この第1参考例の方法においては、透光性導電層のうちエッチングにより薄くする部分の厚さがばらつきやすい。
【0054】
また、一部が厚い透光性導電層を形成する方法の第2参考例として、第1膜をp側半導体層13の上面13aに形成する工程と、第1膜の一部上に複数の開口を有するレジストマスクを第1膜上に配置する工程と、レジストマスクの複数の開口内及びレジストマスク上に第2膜を形成する工程と、リフトオフによりレジストマスク及びレジストマスク上の第2膜を除去し、第1膜の一部上に第2膜を残す工程とを有する方法が考えられる。この第2参考例においては、レジストマスクが有する複数の開口の平面視における幅がばらつくことで、透光性導電層の厚い部分の平面視における幅がばらつきやすい。
【0055】
前述した
図4C~
図4Eに示す方法によれば、第1参考例のように第1膜をエッチングにより薄くする工程、及び第2参考例のようにレジストマスクの開口内に第2膜を形成する工程がない。そのため、第2層43Bの厚さのばらつき及び第1層43Aの平面視における幅のばらつきを低減できる。
【0056】
絶縁膜20から透光性導電層43を露出させる工程において、
図4Kに示すように、透光性導電層43の一部を除去することができる。透光性導電層43の一部を除去することで、第1開口21の下方の透光性導電層43に凹部46が形成される。凹部46は、第1開口21に連続する。第1導電層41を形成する工程において、第1導電層41は、第1開口21及び凹部46に形成され、凹部46を画定する透光性導電層43の底面及び側面において透光性導電層43と接することができる。これにより、第1導電層41が透光性導電層43の上面のみと接する場合に比べて、第1導電層41と透光性導電層43との接触面積を大きくでき、発光素子の順方向電圧を低減できる。
【0057】
絶縁膜20から透光性導電層43を露出させる工程において透光性導電層43の一部を除去する場合、平面視において第1層43Aと重なる領域の第2層43Bの一部を除去し、第2層43Bに第2開口45を形成することで第2層43Bから第1層43Aを露出させることができる。第2開口45は、第1開口21の下方において第1開口21に連続する。第1導電層41を形成する工程において、第1開口21及び第2開口45に、透光性導電層43と電気的に接続する第1導電層41を形成する。第1導電層41は、第2開口45の側面を画定する第2層43Bの側面43Baに接することができる。第2層43Bから第1層43Aを露出させるように第2開口45を形成することで、第1層43Aを第2層43Bから露出させない場合に比べて、第2層43Bの側面43Baにおいて第1導電層41と透光性導電層43とが接触する面積を大きくできる。これにより、発光素子の順方向電圧のさらなる低減が可能となる。
【0058】
第1層43Aの厚さは、第2層43Bの厚さよりも厚いことが好ましい。第1層43Aの厚さは、第3方向Zにおける最大厚さを表す。第2層43Bの厚さは、第1層43Aを被覆していない部分の第3方向Zにおける最大厚さを表す。第1層43Aが第2層43Bよりも厚いことにより、絶縁膜20を除去する際に透光性導電層43がエッチングにより消失しにくくできる。また、第2層43Bが第1層43Aよりも薄いことにより、第1導電層41と透光性導電層43とが接続しない部分における透光性導電層43による光吸収を低減できる。例えば、第1層43Aの厚さは30nm以上50nm以下、第2層43Bの厚さは5nm以上25nm以下にすることができる。
【0059】
透光性導電膜43を形成する工程において、第1層43Aとp側半導体層13の上面13aとの接触面積は、第2層43Bとp側半導体層13の上面13aとの接触面積よりも小さい。これにより、第1層43Aにおける光吸収を低減できる。また、これにより、第1層43Aが第2層43Bよりも厚い場合に、第1層43Aにおける光吸収を低減できる。
【0060】
透光性導電層43に対して熱処理を行うことで、透光性導電層43とp側半導体層13の上面13aとの接触抵抗を低減することができる。透光性導電層43に対する熱処理は、第1層43Aの成膜後と、第2層43Bの成膜後とにそれぞれ行っても良く、第1層43A及び第2層43Bの成膜後に一回行っても良い。
【0061】
第1層43Aの厚さを第2層43Bの厚さよりも厚くする場合、透光性導電層43を形成する工程は、第1層43Aを形成した後、第2層43Bを形成する前に、第1温度で第1熱処理を行う工程と、第2層43Bを形成した後、第1温度よりも低い温度である第2温度で第2熱処理を行う工程とを有することができる。第1温度は、例えば、350℃より大きく400℃以下とすることができる。第2温度は、例えば、300℃以上350℃以下とすることができる。
【0062】
第1層43Aは、第1熱処理及び第2熱処理の2回の熱処理による熱が加えられるので、第1熱処理及び第2熱処理のいずれか1回の熱処理による熱が加えられる場合に比べて、p側半導体層13の上面13aとの接触抵抗を低減することができる。これにより、第1導電層41とp側半導体層13との電気的接続部の抵抗を低減でき、発光素子の順方向電圧を低減することができる。また、第2層43Bは第1層43Aよりも薄いので、第1熱処理よりも低温の第2温度で行う第2熱処理を1回行うことにより、第1層43Aとp側半導体層13の上面13aとの接触抵抗を低減することができる。第1熱処理と、第1熱処理よりも低温の第2温度で行う第2熱処理を行うことで、第1層43A及び第2層43Bの成膜後に第1熱処理よりも高温で一回の熱処理を行う場合と比較して、半導体構造体10への熱ダメージを低減できる。
【0063】
第1層43Aを形成した後、上記第1熱処理を行うことにより、第1熱処理前において非晶質状態だった第1層43Aを結晶化することができる。これにより、第1層43Aに対する前述した
図4Eに示す工程におけるエッチング制御性を向上できる。
図4Fに示す工程において第1層43A上に形成される第2層43Bは、第1層43Aの粒径を引き継がず、第1層43A上に位置する第2層43Bの粒径は、第1層43Aの粒径よりも大きくなる。
【0064】
絶縁膜20を形成する工程は、
図4Hに示すように、透光性導電層43の第2層43B上に第1絶縁膜20Aを形成する工程と、第1絶縁膜20A上に第2絶縁膜20Bを形成する工程とを有することができる。
【0065】
第1絶縁膜20Aを透光性導電層43に接して形成することで、活性層12が発する光を、第1絶縁膜20Aと透光性導電層43との界面で全反射させて、半導体構造体10の主な光取り出し面である第1面11dに向かわせることができる。第1絶縁膜20Aとして、例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜を用いることができる。このような材料からなる第1絶縁膜20Aは、第1開口21を形成する工程において、例えば、フッ素を含むガスを用いたRIE法でエッチングすることができる。
【0066】
第2絶縁膜20Bとして、例えば、屈折率の異なる2種類の膜が交互に積層されたDBR(Distributed Bragg Reflector)膜を用いることができる。これにより、第1絶縁膜20Aを透過してきた光を、第2絶縁膜20Bにより第1面11d側に反射させることができる。
【0067】
第2絶縁膜20Bは、例えば、交互に積層されたSiO2膜とNb2O5膜とを含む。第2絶縁膜20BにおけるSiO2膜とNb2O5膜のペア数は、例えば、1以上5以下とすることができる。Nb2O5膜は、ウェットエッチングでは除去しにくい傾向がある。そのため、第2絶縁膜20BがNb2O5膜を含む場合、第1開口21を形成する工程において、第2絶縁膜20BをRIE法でエッチングすることが好ましい。SiO2膜及びNb2O5膜を含む第2絶縁膜20Bは、例えば、フッ素を含むガスを用いたRIE法でエッチングすることができる。したがって、上記材料からなる第1絶縁膜20A及び第2絶縁膜20Bを、同じガス(フッ素を含むガス)を用いてエッチングすることができる。フッ素を含むガスを用いたRIEにおいて、例えばITO、ZnO、またはIn2O3からなる透光性導電層43のエッチングレートは、上記材料からなる絶縁膜20のエッチングレートよりも低い。第1開口21を形成する工程においてRIE法で絶縁膜20をエッチングする場合に、ウェットエッチングに比べて、透光性導電層43がエッチングされやすい傾向がある。本実施形態によれば、前述したように、絶縁膜20に第1開口21を形成する位置の下方において透光性導電層43の厚さを厚くしているため、ドライエッチングで第1開口21を形成する場合においても、第1開口21の下方における透光性導電層43を消失しにくくできる。
【0068】
図5A~
図5Cは、透光性導電膜43上の絶縁膜20に第1開口21を形成した状態を示し、平面視において透光性導電膜43及び絶縁膜20の一部を拡大した図である。透光性導電層43を形成する工程において、
図5A~
図5Cに示すように、複数の第1部分43A1と、第1部分43A1の間を接続する第2部分43A2とを有する第1層43Aを形成することができる。
【0069】
複数の第1部分43A1のそれぞれは、平面視において、複数の第1開口21に重なるそれぞれの領域に位置する。
【0070】
図5Aに示す例では、複数の第2部分43A2は、平面視において、第1方向X及び第2方向Yに延び、複数の第1部分43A1の間を接続している。
図5Bに示す例では、複数の第2部分43A2は、平面視において、第1方向X及び第2方向Yに対して傾斜した方向に延び、複数の第1部分43A1の間を接続している。
図5Cに示す例では、複数の第2部分43A2は、平面視において、第1方向X、第2方向Y、及び第1方向X及び第2方向Yに対して傾斜した方向に延び、複数の第1部分43A1の間を接続している。
【0071】
透光性導電層43の第2層43Bは、第1部分43A1及び第2部分43A2を覆う。平面視において、第2部分43A2に重なる部分の絶縁膜20には、第1開口21は形成されない。従って、第2部分43A2が形成された部分の透光性導電層43は、第1開口21を形成する工程においてエッチングされない。第2部分43A2が形成された部分の透光性導電層43の厚さは、第2層43Bのみが形成された部分の透光性導電層43の厚さよりも厚い。第2部分43A2を含む透光性導電層43の厚い部分が、第1導電層41と接続される部分である複数の第1部分43A1の間を接続して形成されることで、例えば、第1層43Aが第1部分43A1のみを含む場合に比べて、p側半導体層13の面方向において電流を拡散させやすくできる。これにより、p側半導体層13の面方向における電流密度分布のむらを低減でき、発光素子の発光面における輝度むらを低減できる。
【0072】
図5A、
図5Cに示すように、平面視において、第1方向Xに延びる第2部分43A2の第2方向Yにおける幅は、第1部分43A1の第2方向Yにおける幅よりも小さいことが好ましい。また、
図5A、
図5Cに示すように、平面視において、第2方向Yに延びる第2部分43A2の第1方向Xにおける幅は、第1部分43A1の第1方向Xにおける幅よりも小さいことが好ましい。また、
図5B、
図5Cに示すように、平面視において、第1方向X及び第2方向Yに対して傾斜した方向に延びる第2部分43A2の第2部分43A2が延びる方向と直交する方向における幅は、第1部分43A1の第2部分43A2が伸びる方向と直交する方向における幅よりも小さい。第1部分43A1と第2部分43A2の平面視における幅がこれらの関係になっていることで、第2部分43A2による光吸収を低減することができる。平面視において、第1方向Xに延びる第2部分43A2の第2方向Yにおける幅は、第1部分43A1の第2方向Yにおける幅の、例えば、20%以上60%以下である。平面視において、第2方向Yに延びる第2部分43A2の第1方向Xにおける幅は、第1部分43A1の第1方向Xにおける幅の、例えば、20%以上60%以下である。平面視において、第1方向X及び第2方向Yに対して傾斜した方向に延びる第2部分43A2の第2部分43A2が延びる方向と直交する方向における幅は、第1部分43A1の第2部分43A2が伸びる方向と直交する方向における幅の、例えば、20%以上60%以下である。第1部分43A1と第2部分43A2の平面視における幅がこれらの範囲であることで、p側半導体層13の面方向において電流を拡散させやすくできる。
【0073】
発光素子1の製造方法は、第1導電層41を形成する工程の後、層間絶縁膜30を形成する工程と、層間絶縁膜30から第1導電層41を露出させる工程と、層間絶縁膜30及び絶縁膜20から第1露出部11a及び第2露出部11bを露出させる工程と、半導体構造体10を複数の素子部50に分離する工程と、第2導電層44を形成する工程と、第3導電層42を形成する工程とをさらに備えることができる。
【0074】
<層間絶縁膜を形成する工程>
図4Mに示すように、層間絶縁膜30は、第1導電層41及び絶縁膜20を覆う。層間絶縁膜30は、例えば、絶縁膜20と同様の方法で形成することができる。
【0075】
<層間絶縁膜から第1導電層を露出させる工程>
図4Nに示すように、第1導電層41上において、層間絶縁膜30に複数の第5開口31を形成する。第5開口31において、第1導電層41が層間絶縁膜30から露出する。例えば、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜である層間絶縁膜30に対して、フッ素を含むガスを用いたRIE法により、第5開口31を形成することができる。
【0076】
<層間絶縁膜及び絶縁膜から第1露出部及び第2露出部を露出させる工程>
第5開口31を形成する工程において、層間絶縁膜30に第6開口32及び第7開口33を形成することができ、さらに絶縁膜20に第3開口22及び第4開口23を形成することができる。
【0077】
第6開口32及び第3開口22は連続し、第6開口32及び第3開口22において、n側半導体層11の第1露出部11aが層間絶縁膜30及び絶縁膜20から露出する。第7開口33及び第4開口23は連続し、第7開口33及び第4開口23において、n側半導体層11の第2露出部11bが層間絶縁膜30及び絶縁膜20から露出する。
【0078】
<半導体構造体を複数の素子部に分離する工程>
図4Oに示すように、半導体構造体10に基板100に達する溝81を形成し、半導体構造体10を基板100上において複数の素子部50に分離する。例えば、塩素を含むガスを用いたRIEにより半導体構造体10を除去して、溝81を形成することができる。
【0079】
<第2導電層を形成する工程及び第3導電層を形成する工程>
半導体構造体10を素子部50に分離した後、
図2に示すように、p側半導体層13の上方における層間絶縁膜30上及び第5開口31内に、第3導電層42を形成する。第3導電層42は、例えば、第1導電層41と同様の方法で形成することができる。第3導電層42は、第5開口31において第1導電層41に接し、第1導電層41と電気的に接続される。
【0080】
第3導電層42を形成する工程において、層間絶縁膜30上に第2導電層44も同時に形成することができる。例えば、第3導電層42及び第2導電層44となる導電層を層間絶縁膜30上に連続して形成した後、RIE法により導電層の一部を除去して、導電層を第3導電層42と第2導電層44とに分離する。または、層間絶縁膜30上において第3導電層42が形成される領域と第2導電層44が形成される領域との間にレジストを配置した状態で層間絶縁膜30上に導電層を形成した後、レジストを除去することで第3導電層42及び第2導電層44を形成する。
【0081】
第2導電層44は、第6開口32内及び第3開口22内に形成され、n側半導体層11の第1露出部11aに接する。また、第2導電層44は、第7開口33内及び第4開口23内に形成され、n側半導体層11の第2露出部11bに接する。第2導電層44は、第1露出部11a及び第2露出部11bにおいて、n側半導体層11と電気的に接続される。
【0082】
本発明の実施形態は、以下の発光素子の製造方法及び発光素子を含むことができる。
【0083】
[項1]
n側半導体層と、前記n側半導体層上に位置する活性層と、前記活性層上に位置するp側半導体層と、を有する半導体構造体を準備する工程と、
前記p側半導体層の上面の一部に第1層と、前記p側半導体層の前記上面及び前記第1層を覆う第2層と、を有する透光性導電層を形成する工程と、
前記第2層を覆う絶縁膜を形成する工程と、
平面視において前記第1層と重なる領域の前記絶縁膜を除去し前記絶縁膜に第1開口を形成することで、前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程と、
前記第1開口に、前記透光性導電層と電気的に接続する第1導電層を形成する工程と、
を備える、発光素子の製造方法。
[項2]
前記透光性導電層を形成する工程は、前記第1層を形成する工程と、前記第2層を形成する工程とを有し、
前記第1層を形成する工程は、
第1膜を前記p側半導体層の前記上面に形成する工程と、
前記第1膜の一部を除去して、前記p側半導体層の前記上面の前記一部に前記第1膜の他の一部を前記第1層として残す工程と、
を有する、項1に記載の発光素子の製造方法。
[項3]
前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程において、前記透光性導電層の一部が除去される、項1または2に記載の発光素子の製造方法。
[項4]
前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程において、平面視において前記第1層と重なる領域の前記第2層の一部を除去し前記第2層に第2開口を形成することで、前記第2層から前記第1層を露出させ、
前記第1導電層を形成する工程において、前記第1開口及び前記第2開口に、前記透光性導電層と電気的に接続する前記第1導電層を形成する、項3に記載の発光素子の製造方法。
[項5]
前記第1層の厚さは、前記第2層の厚さよりも厚い、項1~4のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
[項6]
前記第1層の厚さは、30nm以上50nm以下であり、前記第2層の厚さは、5nm以上25nm以下である、項5に記載の発光素子の製造方法。
[項7]
前記透光性導電層を形成する工程は、
前記第1層を形成した後、前記第2層を形成する前に、350℃より大きく400℃以下である第1温度で第1熱処理を行う工程と、
前記第2層を形成した後、300℃以上350℃以下である第2温度で第2熱処理を行う工程と、
を有する、項5または6に記載の発光素子の製造方法。
[項8]
前記絶縁膜から前記透光性導電層を露出させる工程において、複数の前記第1開口を形成し、
前記第1層は、平面視において、複数の前記第1開口に重なるそれぞれの領域に位置する第1部分と、前記第1部分の間を接続する第2部分と、を有する、項1~7のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
[項9]
前記透光性導電層を形成する工程において、前記第1層と前記p側半導体層の前記上面との接触面積は、前記第2層と前記p側半導体層の前記上面との接触面積よりも小さい、項1~8のいずれか1つに記載の発光素子の製造方法。
[項10]
n側半導体層と、前記n側半導体層上に位置する活性層と、前記活性層上に位置するp側半導体層と、を有する半導体構造体と、
前記p側半導体層の上面の一部に配置された第1層と、前記p側半導体層の前記上面及び前記第1層を覆う第2層と、を有する透光性導電層と、
前記第2層を覆う絶縁膜であって、平面視において前記第1層と重なる領域に位置する第1開口を有する絶縁膜と、
前記第1開口に配置され、且つ前記第1開口の下方において前記透光性導電層と接する第1導電層と、
を備え、
前記第1層上に位置する前記第2層の粒径は、前記第1層の粒径よりも大きい、発光素子。
[項11]
前記第1層の厚さは、前記第2層の厚さよりも厚い、項10に記載の発光素子。
[項12]
前記第1層の厚さは、30nm以上50nm以下であり、前記第2層の厚さは、5nm以上25nm以下である、項11に記載の発光素子。
[項13]
前記第1層の粒径は、0.35nm以上0.7nm以下であり、
前記第1層上に位置する前記第2層の粒径は、0.7nm以上1.0nm以下である、項10~12のいずれか1つに記載の発光素子。
【0084】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0085】
1…発光素子、10…半導体構造体、11…n側半導体層、12…活性層、13…p側半導体層、20…絶縁膜、20A…第1絶縁膜、20B…第2絶縁膜、21…第1開口、30…層間絶縁膜、41…第1導電層、42…第3導電層、43…透光性導電層、44…第2導電層、43A…第1層、43B…第2層、45…第2開口、46…凹部、50…素子部、100…基板、143…第1膜