(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159494
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241031BHJP
H05B 3/68 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
H05B3/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024095
(22)【出願日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2023074521
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】関谷 秀介
(72)【発明者】
【氏名】三矢 耕平
【テーマコード(参考)】
3K092
5F131
【Fターム(参考)】
3K092QA03
3K092QB03
3K092QB45
5F131AA02
5F131CA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EA04
5F131EA11
5F131EA14
5F131EA15
5F131EA16
5F131EA17
5F131EA18
5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】外部環境からのガスがリフトピン穴を通じて、基板とセラミックス基材の表面によって画定される空間へ流入することを抑制するとともに、基板の、周囲凸部の直上の領域にヒートスポットが発生することを抑制するための技術を提供する。
【解決手段】
セラミックスヒータ100のセラミックス基材110の上面111は、複数の凸部156と、周囲凸部157とが設けられている。周囲凸部157は、リフトピン穴166の周りを取り囲んでいる。周囲凸部157の高さをH1(m)とし、複数の凸部156の高さをH2(m)とし、高さH2(m)と高さH1(m)との差(H2-H1)をΔ(m)としたとき、H1<H2、且つ、1×10
-6(m)≦Δ<50×10
-6(m)である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、及び、前記上面と上下方向において対向する下面を有し、且つ、前記上面から前記下面まで貫通する貫通孔または切り欠き部を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された、又は前記セラミックス基材の前記下面に配置された発熱体と、を備え、
前記セラミックス基材は、
前記セラミックス基材の前記上面よりも上方に突出する複数の凸部と、
前記セラミックス基材の前記上面の、前記貫通孔または前記切り欠き部の周囲に配置されて、前記セラミックス基材の前記上面よりも上方に突出する周囲凸部とを備え、
前記セラミックス基材の前記上面から前記周囲凸部の頂面までの前記上下方向の長さをH1(m)とし、前記セラミックス基材の前記上面から前記複数の凸部の頂面までの前記上下方向の長さをH2(m)とし、前記長さH2(m)と前記長さH1(m)との差(H2-H1)をΔ(m)としたとき、
H1<H2、且つ、1×10-6(m)≦Δ<50×10-6(m)
であることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
前記長さH2(m)と前記長さH1(m)との差Δ(m)が、
3×10-6(m)≦Δ≦30×10-6(m)
であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項3】
前記長さH2(m)と前記長さH1(m)との差Δ(m)が、
5×10-6(m)≦Δ≦15×10-6(m)
であることを特徴とする請求項2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項4】
前記周囲凸部の径方向の幅をW(m)とし、前記周囲凸部の内径をr(m)としたとき、
r・Δ2/W・ln(W/Δ)≦1.0×10-8(m2)
であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の基板を保持して加熱するセラミックスヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部に発熱体が埋設されたセラミックスヒータが開示されている。特許文献1に記載のセラミックスヒータの、基板が載置されるセラミックス基材の表面(加熱面)には、基板との接触面積を小さくするためや基板とセラミックス基材の表面によって画定される空間にガスを流す目的のため、複数の凸部(エンボス部)が形成されている。
【0003】
一般に、セラミックスヒータにおいては、載置された基板の一部にヒートスポットが形成されることがある。特許文献1においては、ヒートスポットと重なる領域の複数の凸部の数を減らすことにより、ヒートスポットの抑制を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックスヒータのセラミックス基材には、基板を上下方向に変位させるためのリフトピンが挿入されるリフトピン穴が形成されることがある。外部環境からのガスがリフトピン穴を通じて、基板とセラミックス基材の表面によって画定される空間へ流入することを抑制するために、リフトピン穴の周囲にはリフトピン穴を取り囲む周囲凸部が形成されることがある。本願発明者らは、基板の、周囲凸部の直上の領域にヒートスポットが発生しうることを見いだした。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、外部環境からのガスがリフトピン穴を通じて、基板とセラミックス基材の表面によって画定される空間へ流入することを抑制するとともに、基板の、周囲凸部の直上の領域にヒートスポットが発生することを抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に従えば、上面、及び、前記上面と上下方向において対向する下面を有し、且つ、前記上面から前記下面まで貫通する貫通孔または切り欠き部を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された、又は前記セラミックス基材の前記下面に配置された発熱体と、を備え、
前記セラミックス基材は、
前記セラミックス基材の前記上面よりも上方に突出する複数の凸部と、
前記セラミックス基材の前記上面の、前記貫通孔または前記切り欠き部の周囲に配置されて、前記セラミックス基材の前記上面よりも上方に突出する周囲凸部とを備え、
前記セラミックス基材の前記上面から前記周囲凸部の頂面までの前記上下方向の長さをH1(m)とし、前記セラミックス基材の前記上面から前記複数の凸部の頂面までの前記上下方向の長さをH2(m)とし、前記長さH2(m)と前記長さH1(m)との差(H2-H1)をΔ(m)としたとき、
H1<H2、且つ、1×10-6(m)≦Δ<50×10-6(m)であることを特徴とするセラミックスヒータが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成のように、セラミックス基材の上面から周囲凸部の頂面までの高さ(上下方向の長さ)をH1(m)とし、セラミックス基材の上面から複数の凸部の頂面までの高さをH2(m)とし、高さH2(m)と高さH1(m)との差(H2-H1)をΔ(m)としたとき、H1<H2、且つ、1×10-6(m)≦Δ<50×10-6(m)である場合には、セラミックスヒータに載置されるウェハを真空吸着する際のガスの消費量を抑えることができる。また、ウェハの、周囲凸部の直上の部分において、ヒートスポットが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、セラミックスヒータ100の上面図である。
【
図2】
図2は、セラミックスヒータ100の概略説明図である。
【
図4】
図4は、ヒータ電極122の概略説明図である。
【
図5】(a)~(e)は、セラミックス基材110の製造方法の流れを示す図である。
【
図6】(a)~(d)は、セラミックス基材110の別の製造方法の流れを示す図である。
【
図7】
図7は実施例1~13及び比較例1、2の結果をまとめた表である。
【
図8】
図8は環状凸部152と周囲凸部157とが協同してリフトピン穴166の周囲を取り囲む状態を説明するための概略説明図である。
【
図9】
図9は切り欠き166aを囲むように周囲凸部157が設けられている状態を説明するための概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<セラミックスヒータ100>
本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ100について、
図1、2を参照しつつ説明する。本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、例えば、半導体製造装置の内部でシリコンウェハなどの半導体ウェハ(以下、単にウェハ10という)を保持し加熱するために用いられる。なお、以下の説明においては、セラミックスヒータ100が使用可能に設置された状態(
図2の状態)を基準として上下方向5が定義される。
図2に示されるように、本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、電極120と、給電線140、141とを備える。
【0011】
セラミックス基材110は、直径12インチ(約300mm)の円形の板状の形状を有する部材であり、セラミックス基材110の上にはウェハ10が載置される。セラミックス基材110は、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成することができる。なお、
図2では図面を見やすくするためにウェハ10とセラミックス基材110とを離して図示している。
図1に示されるように、セラミックス基材110の上面111には、環状の凸部152(以下、単に環状凸部152という)と、複数の凸部156とが設けられている。なお、
図2においては、図面を見やすくするために、
図1と比べて複数の凸部156の数を減らして図示している。また、
図1に示されるように、セラミックス基材110の中心には、ガス流路164(
図2参照)の開口164aが設けられている。開口164aの直径は5mmである。また、セラミックス基材110の中心に対して半径80mmの円を3等配した位置には、それぞれ、リフトピン穴166が設けられている。リフトピン穴166の直径は5mmである。
【0012】
図1、2に示されるように、環状凸部152は、セラミックス基材110の上面111の外周部(外縁部)に配置された円環状の凸部であり、上面111から上方に突出している。
図2に示されるように、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたとき、環状凸部152の頂面152aはウェハ10の下面と当接する。つまり、環状凸部152は、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたときに、上下方向5においてウェハ10と重なる位置に配置されている。
【0013】
セラミックス基材110の上面111の、環状凸部152の内側には、複数の凸部156が設けられている。複数の凸部156は、同心円状に配置されている。複数の凸部156の頂面156aの形状は円形である。
図2に示されるように、リフトピン穴166の周囲には、リフトピン穴166を取り囲む周囲凸部157が配置されている。周囲凸部157の頂面157aは円環状の形状を有しており、その中心はリフトピン穴166の中心と一致する。なお、凸部156が配置される位置及び/又は数は、用途、作用、機能に応じて適宜設定される。例えば、複数の凸部156は、正三角形などの正多角形を敷き詰めたときの各頂点の位置に配置することができる。あるいは、複数の凸部156をランダムな位置に配置することもできる。
【0014】
以下の説明において、周囲凸部157の高さをH1とし、複数の凸部156の高さをH2とし、環状凸部152の高さをH3とする。なお、本明細書において、環状凸部152の高さ及び複数の凸部156の高さは、セラミックス基板110の上面111からの上下方向の長さとして定義される。なお、セラミックス基板110の上面111が平坦でなく、例えば段差を有している場合には、セラミックス基板110の上面111のうち、最も高い位置を基準にして、そこからの上下方向の長さとして定義される。周囲凸部157の高さH1、複数の凸部156の高さH2、環状凸部152の高さH3は、複数個所の平均値で算出することがこのましい。複数の凸部156に関して複数箇所が選択される場合は、周囲凸部157に最も近接する凸部156から順に9か所以上選択されることが好ましい。周囲凸部157に関して複数箇所が選択される場合は、中心線を円周方向に2等配以上に分割した位置を採用することが好ましい。環状凸部152に関して複数箇所が選択される場合は、環状凸部152の中心線を円周方向に8等配以上に分割した位置を採用することが好ましい。本実施形態において、複数の凸部156の高さH2と環状凸部152の高さH3は同じであり、5μm~2mmの範囲にすることができる。これに対して、周囲凸部157の高さH1は、複数の凸部156の高さH2よりも低く、複数の凸部156の高さH2と周囲凸部157の高さH1との差をΔ(=H2-H1)としたとき、1μm≦Δ<50μmとなる。
【0015】
環状凸部152の頂面152aの幅は、一定の幅であることが望ましく、0.1mm~10mmにすることができる。環状凸部152の頂面152aの中心線平均粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、中心線平均粗さRaは、表面の凹凸を、その中心線からの偏差の絶対値の平均で表したものである。同様に、複数の凸部156の頂面156aの中心線平均粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、環状凸部152の頂面152a及び複数の凸部156の頂面156aの中心線平均粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
【0016】
複数の凸部156の、各凸部の離間距離は、1.5mm~30mmの範囲にすることができる。
【0017】
上述のように、上面111の略中心には、ガス流路164の開口164aが開口している(
図2参照)。ガス流路164は、開口164aを備えるガス流路であり、セラミックス基材110の内部に形成されている。本実施形態において、ガス流路164は、開口164aから下方に延びている。ガス流路164は、セラミックス基材110の上面111とウェハ10の下面とによって画定される空間(間隙)にガスを供給するための流路として用いることができる。例えば、ウェハ10とセラミックス基材110との間の伝熱のための伝熱ガスを供給することができる。伝熱ガスとして、例えば、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガスや、窒素ガスなどを用いることができる。伝熱ガスは、ガス流路164を通じて、100Pa~40000Paの範囲内で設定された圧力で供給される。また、環状凸部152の頂面152aとウェハ10の下面との隙間から、環状凸部152の内側の間隙にプロセスガスが侵入してくる場合には、ガス流路164を介して、ガスを排気することができる。この際、排気圧を調整することによって間隙の外側の圧力と、間隙の内側の圧力の差圧を調節することができる。これにより、ウェハ10をセラミックス基材110の上面111に向けて吸着させることができる。さらに、周囲凸部の上面とウェハ10の下面との隙間からプロセスガスが侵入してくる場合も、ガス流路164を介して、ガスを排気することができる。
【0018】
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部には、電極120が埋設されている。電極120は、ヒータ電極122と、静電吸着用電極124とを含んでいる。静電吸着用電極124はヒータ電極122の上方に埋設されている。
【0019】
図3に示されるように、静電吸着用電極124は2つの半円形状の電極124a、124bが所定の間隔を隔てて向かい合うように配置されており、全体として略円形の形状を有している。本実施形態において、静電吸着用電極124の外径は292mmである。電極124a及び電極124bにそれぞれ所定の電圧(例えば、±500V)を印加することにより、ウェハ10を静電吸着することができる。
【0020】
図4に示されるように、ヒータ電極122は帯状に裁断された金属製のメッシュや箔である。ヒータ電極122の外径は298mmである。ヒータ電極120はセラミックス基材110の側面から露出しない。ヒータ電極120の略中央には、給電線140(
図1参照)と接続される端子部121が設けられている。ヒータ電極122はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔等の耐熱金属(高融点金属)により形成されている。タングステン、モリブデンの純度は99%以上であることが好ましい。ヒータ電極122の厚さは0.15mm以下である。なお、ヒータ電極122の抵抗値を高くして、セラミックスヒータ100の消費電流を低減させるという観点からは、ワイヤーの線径を0.1mm以下、ヒータ電極122の厚さをワイヤーの交点を除き0.1mm以下にすることが好ましい。また、帯状に裁断されたヒータ電極122の幅は2.5mm~20mmであることが好ましく、5mm~15mmであることがさらに好ましい。本実施形態においては、ヒータ電極122は、
図4に示される形状に裁断されているがヒータ電極122の形状はこれには限られず、適宜変更しうる。なお、セラミックス基材110の内部にはヒータ電極122に加えて、あるいは、ヒータ電極122に代えて、セラミックス基材110の上方にプラズマを発生させるためのプラズマ電極が埋設されていてもよい。
【0021】
図2に示されるように、セラミックスヒータ100には、ヒータ電極122に電力を供給するための給電線140と、静電吸着用電極124に電力を供給するための給電線141とが配置されている。なお、
図2においては、給電線140、141はそれぞれ1つずつしか図示されていないが、実際には複数の給電線140及び複数の給電線141が配置されている。給電線140の上端は、ヒータ電極122の中央に配置された端子部121(
図4参照)に電気的に接続されている。給電線140は、不図示のヒータ用電源に接続される。これにより、給電線140を介してヒータ電極122に電力が供給される。同様に、給電線141を介して、静電吸着用電極124に電力が供給される。
【0022】
次に、セラミックスヒータ100の製造方法について説明する。以下では、セラミックス基材110が窒化アルミニウムで形成される場合を例に挙げて説明する。
【0023】
まず、セラミックス基材110の製造方法について説明する。なお、説明を簡略化するために、セラミックス基材110の内部には、電極120としてヒータ電極122のみが埋設されているものとする。
図5(a)に示されるように、窒化アルミニウム(AlN)粉末を主成分とする造粒粉Qをカーボン製の有床型601に投入し、パンチ602で仮プレスする。なお、造粒粉Qには、5wt%以下の焼結助剤(例えば、Y
2O
3)が含まれることが好ましい。次に、
図5(b)に示されるように、仮プレスされた造粒粉Qの上に、所定形状に裁断されたヒータ電極122を配置する。なお、ヒータ電極122は、加圧方向に垂直な面(有床型601の底面)に平行になるように配置される。このとき、Wのペレット又はMoのペレットをヒータ電極122の端子121(
図4参照)の位置に埋設してもよい。
【0024】
図5(c)に示されるように、ヒータ電極122を覆うようにさらに造粒粉Qを有床型601に投入し、パンチ602でプレスして成形する。次に、
図5(d)に示されるように、ヒータ電極122が埋設された造粒粉Qをプレスした状態で焼成する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。次に、
図5(e)に示されるように、端子121を形成するために、ヒータ電極122までの止まり穴加工を行う。なお、ペレットを埋設した場合には、ペレットまでの止まり穴加工を行えばよい。さらに、ガス流路164の一部となる貫通孔を形成する。これにより、内部にガス流路164が形成されたセラミックス基材110を作製することができる。この場合、ヒータ電極122がガス流路164から露出しないように、予めヒータ電極122に所定の開口部を設けることが好ましい。
【0025】
なお、セラミックス基材110は以下の方法によっても製造することができる。
図6(a)に示されるように、窒化アルミニウムの造粒粉Qにバインダーを加えてCIP成型し、円板状に加工して、窒化アルミニウムの成形体610を作製する。次に、
図6(b)に示されるように、成形体610の脱脂処理を行い、バインダーを除去する。
【0026】
図6(c)に示されるように、脱脂された成形体610に、ヒータ電極122を埋設するための凹部511を形成する。成形体610の凹部611にヒータ電極122を配置し、別の成形体610を積層する。なお、凹部611は予め成形体610に形成しておいてもよい。次に、
図6(d)に示されるように、ヒータ電極122を挟むように積層された成形体610をプレスした状態で焼成し、焼成体を作製する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。焼成体を作製した後の工程は、上述の工程と同様であるので、説明を省略する。
【0027】
このようにして形成されたセラミックス基材110の上面111に対して研削を行い、研磨加工を行う。さらに、上面111に対してサンドブラスト加工を行うことにより、上面111に複数の凸部156、157及び環状凸部152を形成する。このとき、複数の凸部156、157の高さは同じになるように加工される。また、環状凸部152の頂面152aも所定の形状に加工される。なお、複数の凸部156、157、環状凸部152を形成するための加工方法は、サンドブラスト加工が好適であるが、他の加工方法を用いることもできる。
【実施例0028】
以下、本発明について実施例1~13を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。なお、
図7には、実施例1~13及び比較例1、2の結果をまとめた表が示されている。
【0029】
[実施例1]
実施例1のセラミックスヒータ100(
図2参照)について説明する。実施例1においては、5wt%の焼結助剤(Y
2O
3)を添加した窒化アルミニウム(AlN)を原料として、上述の作製方法により直径300mm、厚さ15mmのセラミックス基材110を作製した。なお、実施例1のセラミックスヒータ100には、上述の静電吸着用電極124は埋設されておらず、
図3に示される形状のヒータ電極122がセラミックス基材110に埋設されている。
【0030】
セラミックス基材110の中心には、ガス流路164(
図2参照)の開口164aを設けた。開口164aの直径は4mmであった。また、セラミックス基材110の中心に対して半径64mmの円(ピッチ円直径128mmの仮想円)を3等配した位置に、それぞれ、リフトピン穴166を設けた。リフトピン穴166の直径は4mmであった。
【0031】
セラミックス基材110の上面111に、内径296mm、外径300mm、幅2mmの環状凸部152を形成した。環状凸部152の高さH3は150μmとした。さらに、セラミックス基材110の上面111に、円柱形状の複数の凸部156を形成した。複数の凸部156の頂面156aの形状は、直径3mmの円形とした。複数の凸部156の高さH2は150μmとした。複数の凸部156は直径20mm~140mm、10mm間隔の同心円上に、8~12mmおきに等間隔で並んでいる。セラミックス基材110の上面111の、リフトピン166を取り囲む位置には、周囲凸部157を形成した。周囲凸部157の頂面157aは、直径2rを10mm(10×10-3m)とし、幅Wを1mm(1.0×10-3m)とする円環形状とした。周囲凸部157の高さH1は140μmとした。つまり、高さH2と高さH1との差Δを10μm(1.0×10-5m)とした。なお、環状凸部152の頂面152a、複数の凸部156の頂面156a、周囲凸部157の頂面157aの中心線平均粗さRaを、いずれも0.4μmとした。
【0032】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に直径300mmの温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、セラミックスヒータ100のヒータ電極122に不図示の外部電源を接続した。以下の手順でシリコンウェハの真空吸着時におけるガスリーク量の評価と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。
【0033】
ガスリーク量の測定においては、真空チャンバ内の圧力を200Torrに減圧し、ガス流路164を不図示の排気装置に接続し、排気装置の排気孔圧力を50Torrとした。これにより、差圧(150Torr)でシリコンウェハを真空吸着した。なお、ガスのリーク量は、主に周囲凸部157の頂面157aとシリコンウェハの下面との間の隙間を通じて、ガス流路164から排気されたガスの流量に対応する。発明者らの知見によれば、ガスのリーク量は、周囲凸部157の頂面157aとシリコンウェハの下面との間の隙間のコンダクタンスに依存し、コンダクタンスは値r・Δ2/W・ln(W/Δ)によって特徴付けられる。実施例1において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は2.3×10-9(m2)であり、ガスのリーク量は33sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。
【0034】
シリコンウェハの温度分布評価においては、上記の手順で温度評価用のシリコンウェハを真空吸着した状態で、定常状態でシリコンウェハの上面の温度が500℃となるように外部電源の出力電力を調整した。その後、温度評価用のシリコンウェハの温度分布を赤外線カメラで計測した。シリコンウェハの上面の、周囲凸部157の直上の位置において、周囲凸部157を横断する線上で貫通孔の中心より±15mm離間した両端を範囲として温度差ΔTを測定した。実施例1において、温度差ΔTは1.0℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0035】
[実施例2]
実施例2のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の高さH1を147μmとし、高さH2と高さH1との差Δを3μm(3×10-6m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0036】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例2において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は2.6×10-10(m2)であり、ガスのリーク量は4sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例2において、温度差ΔTは1.4℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0037】
[実施例3]
実施例3のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の高さH1を145μmとし、高さH2と高さH1との差Δを5μm(5×10-6m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0038】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例3において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は6.6×10-10(m2)であり、ガスのリーク量は10sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例3において、温度差ΔTは0.9℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0039】
[実施例4]
実施例4のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の高さH1を135μmとし、高さH2と高さH1との差Δを15μm(1.5×10-5m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0040】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例4において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は4.7×10-9(m2)であり、ガスのリーク量は68sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例4において、温度差ΔTは1.2℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0041】
[実施例5]
実施例5のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の高さH1を130μmとし、高さH2と高さH1との差Δを20μm(2.0×10-5m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0042】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例5において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は7.8×10-9(m2)であり、ガスのリーク量は113sccmであった。ガスのリーク量が100sccmを超えているものの、300sccm以下であり、リーク量評価は可であると判定された。実施例5において、温度差ΔTは1.3℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0043】
[実施例6]
実施例6のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の高さH1を120μmとし、高さH2と高さH1との差Δを30μm(3.0×10-5m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0044】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例6において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は1.6×10-8(m2)であり、ガスのリーク量は228sccmであった。ガスのリーク量が100sccmを超えているものの、300sccm以下であり、リーク量評価は可であると判定された。実施例6において、温度差ΔTは1.7℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0045】
[実施例7]
実施例7のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の幅Wを0.5mm(5.0×10-4m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0046】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例7において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は3.9×10-9(m2)であり、ガスのリーク量は57sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例7において、温度差ΔTは1.1℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0047】
[実施例8]
実施例8のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の幅Wを2mm(2.0×10-3m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0048】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例8において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は1.3×10-9(m2)であり、ガスのリーク量は19sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例8において、温度差ΔTは0.9℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0049】
[実施例9]
実施例9のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の幅Wを3mm(3.0×10-3m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0050】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例9において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は9.5×10-10(m2)であり、ガスのリーク量は14sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例9において、温度差ΔTは0.8℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0051】
[実施例10]
実施例10のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の幅Wを5mm(5.0×10-3m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0052】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例10において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は6.2×10-10(m2)であり、ガスのリーク量は9sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例10において、温度差ΔTは0.7℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0053】
[実施例11]
実施例11のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の直径2rを5mm(5.0×10-3m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0054】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例11において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は1.2×10-9(m2)であり、ガスのリーク量は17sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例10において、温度差ΔTは0.9であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0055】
[実施例12]
実施例12のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の直径2rを15mm(1.5×10-2m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0056】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例12において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は3.5×10-9(m2)であり、ガスのリーク量は50sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例12において、温度差ΔTは1.0℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0057】
[実施例13]
実施例13のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の直径2rを20mm(2.0×10-2m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0058】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。実施例13において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は4.6×10-9(m2)であり、ガスのリーク量は67sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。実施例13において、温度差ΔTは1.1℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0059】
[比較例1]
比較例1のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の高さH1を150μmとし、複数の凸部156の高さH2と同じにした。この場合、高さH2と高さH1との差Δは、周囲凸部157の頂面157a及び複数の凸部156の頂面156aの中心線平均粗さRa(0.4μm)と同程度となる。比較例1においては、高さH2と高さH1との差Δを0.4μm(4.0×10-7m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0060】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。比較例1において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は6.3×10-12(m2)であり、ガスのリーク量は0sccmであった。ガスのリーク量が100sccm以下であり、リーク量評価は良好であると判定された。しかしながら、比較例1において、温度差ΔTは2.1℃であった。温度差ΔTが2.0℃以上であり、シリコンウェハの温度分布評価は不可であると判定された。
【0061】
[比較例2]
比較例2のセラミックスヒータ100は、周囲凸部157の高さH1を100μmとし、高さH2と高さH1との差Δを50μm(5.0×10-5m)としたことを除いて、実施例1のセラミックスヒータ100と同様の構成を有する。
【0062】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順でガスリーク量の測定と、シリコンウェハの温度分布評価を行った。比較例2において、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)は3.7×10-8(m2)であり、ガスのリーク量は542sccmであった。ガスのリーク量が300sccmを超えており、リーク量評価は不可であると判定された。なお、比較例2において、温度差ΔTは1.8℃であった。温度差ΔTが2.0℃以下であり、シリコンウェハの温度分布評価は良好であると判定された。
【0063】
<実施形態の作用効果>
上記実施形態及び実施例1~13において、セラミックスヒータ100は、円板状のセラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設されたヒータ電極122とを備えている。セラミックス基材110の上面111は、複数の凸部156と、周囲凸部157とが設けられている。周囲凸部157は、セラミックス基材110に形成された貫通孔であるリフトピン穴166の周りを取り囲むようにリフトピン穴166の周囲に配置されている。セラミックス基材110の上面111から周囲凸部157の頂面157aまでの高さ(上下方向5の長さ)をH1(m)とし、セラミックス基材110の上面111から複数の凸部156の頂面156aまでの高さをH2(m)とし、高さH2(m)と高さH1(m)との差(H2-H1)をΔ(m)としたとき、H1<H2、且つ、1×10-6(m)≦Δ<50×10-6(m)である。
【0064】
実施例1~13のように、H1<H2であり、且つ、1×10-6(m)≦Δ<50×10-6(m)である場合には、リーク量を300sccm以下に抑えることができるとともに、温度差ΔTを2.0℃以下に抑えることができる。これにより、ウェハ10を真空吸着する際のガスの消費量を抑えることができるとともに、ウェハ10の周囲凸部157の直上においてヒートスポットが発生することを抑制することができる。
【0065】
なお、比較例1においては、上述のように、周囲凸部157の高さH1と複数の凸部156の高さH2が同じ(H1=H2)であり、高さH2と高さH1との差Δが、周囲凸部157の頂面157a及び複数の凸部156の頂面156aの中心線平均粗さRa(0.4μm)と同程度であった。このように、高さH2と高さH1との差Δが1μmより小さい場合には、温度差ΔTが2.0℃を超え、ウェハ10の周囲凸部157の直上においてヒートスポットが発生してしまうことがわかった。また、比較例2のように、高さH2と高さH1との差Δが50μm以上である場合には、リーク量を300sccm以下に抑えることができず、真空吸着を行うことが非常に困難になることがわかった。
【0066】
上記実施例1~13のように、3×10-6(m)≦Δ≦30×10-6(m)である場合には、リーク量を230sccm未満に抑えることができるとともに、温度差ΔTを1.8℃未満に抑えることができる。これにより、ウェハ10を真空吸着する際のガスの消費量を抑えることができるとともに、ウェハ10の周囲凸部157の直上においてヒートスポットが発生することを抑制することができる。
【0067】
上記実施例1、3、4、7、8~13のように、5×10-6(m)≦Δ≦15×10-6(m)である場合には、リーク量を70sccm以下に抑えることができるとともに、温度差ΔTを1.2℃以下に抑えることができる。これにより、ウェハ10を真空吸着する際のガスの消費量をさらに抑えることができるとともに、ウェハ10の周囲凸部157の直上においてヒートスポットが発生することをさらに抑制することができる。
【0068】
上記実施例1~5及び7~13のように、値r・Δ2/W・ln(W/Δ)が1.0×10-8(m2)以下である場合には、リーク量を120sccm以下に抑えることができるとともに、温度差ΔTを1.4℃以下に抑えることができる。これにより、ウェハ10を真空吸着する際のガスの消費量を抑えることができるとともに、ウェハ10の周囲凸部157の直上においてヒートスポットが発生することを抑制することができる。
【0069】
<変更形態>
上述の実施形態は、あくまで例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、セラミックス基材110の形状、寸法は上記実施形態のものには限られず、適宜変更しうる。環状凸部152の高さ、幅等の寸法、環状凸部152の頂面152aの形状、頂面152aの中心線平均粗さRaの大きさは適宜変更しうる。複数の凸部156の高さ、頂面156aの形状、頂面156aの中心線平均粗さRaの大きさは適宜変更しうる。例えば、複数の凸部156の頂面156aの形状は必ずしも円形でなくてもよく、例えば、正方形などの適宜の形状にすることができる。
【0070】
また、周囲凸部157の頂面157aの形状は、円環形状でなくてもよい。例えば、リフトピン穴166が環状凸部152の近傍にある場合には、
図8に示されるように、環状凸部152と周囲凸部157とが連続するように配置され、環状凸部152と周囲凸部157とが協同してリフトピン穴166の周囲を取り囲んでいてもよい。この場合にも、上記実施形態及び実施例1~13と同様に、ウェハ10を真空吸着する際のガスの消費量を抑えることができるとともに、ウェハ10の周囲凸部157の直上においてヒートスポットが発生することを抑制することができる。
【0071】
上記実施形態及び実施例1~13において、全てのリフトピン穴166の周囲に周囲凸部157が設けられていたが、本発明はそのような態様には限られない。複数のリフトピン穴166のうち、いずれか1つの穴の周囲に周囲凸部157を設けることもできる。また、リフトピン穴166は貫通孔であったが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、
図9に示されるように、リフトピン穴166に代えて、セラミックス基材110の外周部分に切り欠き166aが設けられており、切り欠き166aを囲むように周囲凸部157が設けられていてもよい。この場合、切り欠き部の内径の半径がr、幅がWとなる。この場合にも、上記実施形態及び実施例1~13と同様に、ウェハ10を真空吸着する際のガスの消費量を抑えることができるとともに、ウェハ10の周囲凸部157の直上においてヒートスポットが発生することを抑制することができる。
【0072】
上記実施形態においては、ヒータ電極122として、モリブデン、タングステン、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金を用いていたが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、モリブデン、タングステン以外の金属又は合金を用いることもできる。また、電極120は発熱体としてのヒータ電極122を含んでいた。しかしながら、電極120は必ずしも発熱体としてのヒータ電極122を含む必要は無く、例えば、高周波電極を含んでいてもよい。
【0073】
上記実施形態においては、セラミックスヒータ100はセラミックス基材110に埋設されたヒータ電極122を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、ヒータ電極122はセラミックスヒータ100のセラミックス基材110に埋設されていなくてもよい。例えば、発熱体としてのヒータ電極122又は高周波電極がセラミックス基材110の裏面113に貼付されていてもよい。
【0074】
以上、発明の実施形態及びその変更形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが請求の範囲の記載からも明らかである。
【0075】
明細書、及び図面中において示した製造方法における各処理の実行順序は、特段に順序が明記されておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるので無い限り、任意の順序で実行しうる。便宜上、「まず、」「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。