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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159495
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】全固体電池用負極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20241031BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241031BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 B
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025200
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2023-0055387
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 潤 光
(72)【発明者】
【氏名】金 潤 星
(72)【発明者】
【氏名】林 佳 ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】李 圭 準
(72)【発明者】
【氏名】閔 泓 錫
(72)【発明者】
【氏名】李 尚 憲
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB11
5H050EA02
5H050FA20
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明はリチウムイオン伝導性及び貯蔵性に優れた全固体電池用負極活物質の提供およびエネルギー密度及び寿命特性に優れた全固体電池用負極活物質の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の全固体電池用負極活物質は、複数の麟状炭素断片(flake carbon fragments)が多重に重なって所定の形状を成している粒子と、前記麟状炭素断片の間の空間に充填され、リチウム親和性を有する第1物質と、前記粒子の表面の少なくとも一部に被覆され、リチウム親和性を有する第2物質とを含むことができる。前記粒子の形状は、球形、楕円形またはロッド形であり得る。いずれか一麟状炭素断片とこれに隣接した他の麟状炭素断片との間の最短距離は10nm~100nmであり得る。前記第1物質は前記麟状炭素断片の間の空間の80%以上を占めることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の麟状炭素断片(flake carbon fragments)が多重に重なって所定の形状を成している粒子と、
前記麟状炭素断片の間の空間に充填され、リチウム親和性を有する第1物質と、
前記粒子の表面の少なくとも一部に被覆され、リチウム親和性を有する第2物質と、を含むことを特徴とする全固体電池用負極活物質。
【請求項2】
前記粒子の形状は、球形、楕円形またはロッド形であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項3】
いずれか一麟状炭素断片とこれに隣接した他の麟状炭素断片との間の最短距離は10nm~100nmであることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項4】
前記第1物質は前記麟状炭素断片の間の空間の80%以上を占めていることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項5】
前記第1物質は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項6】
前記第1物質は、珪素(Si)または珪素(Si)とリチウムとの合金を含み、
前記第1物質は非晶質であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項7】
前記第2物質は前記粒子の全表面の90%以上に被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項8】
前記第2物質の厚さは20nm~1,000nmであることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項9】
前記第2物質は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項10】
前記第2物質は、珪素(Si)または珪素(Si)とリチウムとの合金を含み、
前記第2物質は非晶質であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項11】
前記負極活物質の平均粒径(D50)は1μm~20μmであることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項12】
前記負極活物質は、
前記粒子40重量%~90重量%と、
前記第1物質及び第2物質の和10重量%~60重量%と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項13】
前記負極活物質の比表面積は0.5m/g~4m/gであることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項14】
複数の1次粒子が結球した2次粒子を含み、
前記1次粒子は、
麟状炭素断片と、
前記麟状炭素断片の表面に被覆され、リチウム親和性物質(Lithiophilic material)を含むコーティング部と、を含むことを特徴とする全固体電池用負極活物質。
【請求項15】
いずれか一麟状炭素断片とこれに隣接した他の麟状炭素断片との間の最短距離は10nm~100nmであることを特徴とする請求項14に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項16】
前記コーティング部は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことを特徴とする請求項14に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項17】
前記コーティング部は、前記麟状炭素断片の全表面の90%以上に被覆されていることを特徴とする請求項14に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項18】
前記コーティング部の厚さは20nm~1,000nmであることを特徴とする請求項14に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項19】
前記負極活物質は、
前記麟状炭素断片40重量%~90重量%と、
前記コーティング部10重量%~60重量%と、を含むことを特徴とする請求項14に記載の全固体電池用負極活物質。
【請求項20】
前記負極活物質の比表面積は0.5m/g~4m/gであることを特徴とする請求項14に記載の全固体電池用負極活物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全固体電池用負極活物質に係り、より詳しくは、粒子の内部及び表面にリチウム親和性物質が蒸着された全固体電池用負極活物質に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、構造上、リチウムイオンを取り交わすことができる正極素材、負極素材及びリチウムイオンの輸送を担当する電解質から構成されている。
既存の電池は、短絡防止を目的で正極と負極との物理的な接触を防止するための分離膜を含む。全固体電池は分離膜及び液体電解質の役割を固体電解質が担当するシステムである。したがって、全固体電池は爆発の危険性が著しく低くて安全性が高い。また、固体電解質は、理論的には液体電解質よりも速いイオン移動特性を有するので、全固体電池は次世代高出力及び高エネルギーバッテリーとして嘱望されている。
全固体電池はすべての構成要素が固体からなっているので、粒子間の界面を通して電子及びイオンが伝達される。したがって、素材間の界面が電池特性に及ぶ影響が支配的である。この問題を解決するためには、界面でのイオン及び電子の伝達を制御することができなければならなく、その過程でリチウムイオンの貯蔵、脱離の可逆的反応が要求される。特に、黒鉛系素材ではこのような問題の解決が必ず必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はリチウムイオン伝導性及び貯蔵性に優れた全固体電池用負極活物質の提供を目的とする。
また、エネルギー密度及び寿命特性に優れた全固体電池用負極活物質の提供を目的とする。
本発明の目的は以上で言及した目的に限定されない。本発明の目的は以下の説明によってより明らかになり、特許請求の範囲に記載された手段及びその組合せによって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の全固体電池用負極活物質は、複数の麟状炭素断片(flake carbon fragments)が多重に重なって所定の形状を成している粒子と、前記麟状炭素断片の間の空間に充填され、リチウム親和性を有する第1物質と、前記粒子の表面の少なくとも一部に被覆され、リチウム親和性を有する第2物質とを含むことができる。
前記粒子の形状は、球形、楕円形またはロッド形であり得る。
いずれか一麟状炭素断片とこれに隣接した他の麟状炭素断片との間の最短距離は10nm~100nmであり得る。
【0005】
前記第1物質は前記麟状炭素断片の間の空間の80%以上を占めることができる。
前記第1物質は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことができる。
前記第1物質は、珪素(Si)または珪素(Si)とリチウムとの合金を含み、前記第1物質は非晶質であり得る。
【0006】
前記第2物質は前記粒子の全表面の90%以上に被覆されることができる。
前記第2物質の厚さは20nm~1,000nmであり得る。
前記第2物質は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことができる。
前記第2物質は、珪素(Si)または珪素(Si)とリチウムとの合金を含み、前記第2物質は非晶質であり得る。
【0007】
前記負極活物質の平均粒径(D50)は1μm~20μmであり得る。
前記負極活物質は、前記粒子40重量%~90重量%と、前記第1物質及び第2物質の和10重量%~60重量%とを含むことができる。
前記負極活物質の比表面積は0.5m/g~4m/gであり得る。
本発明の一実施例による全固体電池用負極活物質は、複数の1次粒子が結球した2次粒子を含み、前記1次粒子は、麟状炭素断片と、前記麟状炭素断片の表面に被覆され、リチウム親和性物質(Lithiophilic material)を含むコーティング部とを含むことができる。
【0008】
前記コーティング部は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことができる。
前記コーティング部は、前記麟状炭素断片の全表面の90%以上に被覆されることができる。
前記コーティング部の厚さは20nm~1,000nmであり得る。
前記負極活物質は、前記麟状炭素断片40重量%~90重量%と、前記コーティング部10重量%~60重量%とを含むことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リチウムイオン伝導性及び貯蔵性に優れた全固体電池用負極活物質を得ることができる。
また、エネルギー密度及び寿命特性に優れた全固体電池用負極活物質を得ることができる。
本発明の効果は以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は以下の説明から推論可能なすべての効果を含むものと理解されなければならないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による全固体電池を示す図である。
図2】本発明による負極活物質の第1実施形態を示す図である。
図3】負極活物質に含まれた粒子を示す図である。
図4】本発明による負極において負極活物質と固体電解質との間のリチウムイオン(Li)の移動を説明するための参考図である。
図5a】充電初期の負極活物質を示す図である。
図5b】充電が充分に進行されたときの負極活物質を示す図である。
図6】本発明による負極活物質の第2実施形態を示す図である。
図7】負極活物質に含まれた1次粒子を示す図である。
図8図7のA-A’線についての断面図である。
図9図6による負極活物質の断面図である。
図10】製造例による負極活物質の断面を走査電子顕微鏡で分析した結果を示す図である。
図11】実施例1による負極に対するX線分光分析の結果を示す図である。
図12】実施例1による負極を含む半電池の第1充放電グラフである。
図13】比較例1による負極を含む半電池の第1充放電グラフである。
図14】実施例1による負極を含む半電池の高率充放電グラフである。
図15】比較例1による負極を含む半電池の高率充放電グラフである。
図16】比較例2による完電池の容量維持率を測定した図である。
図17】実施例2による完電池の容量維持率を測定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は添付図面に基づく以下の好適な実施例によって容易に理解可能であろう。しかし、本発明はここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化することもできる。むしろ、ここで紹介する実施例は開示の内容が徹底的で完全になるように、かつ通常の技術者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために提供するものである。
各図の説明において類似の参照符号を類似の構成要素に付けた。添付図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して示すものである。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用することができるが、構成要素は用語に限定されてはいけない。用語は一構成要素を他の構成要素と区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範疇内で第1構成要素は第2構成要素と名付けることができ、同様に第2構成要素も第1構成要素と名付けることができる。単数の表現は文脈上明らかに他に指示しない限り、複数の表現を含む。
【0012】
本明細書で、“含む”又は“有する”などの用語は明細書上に記載した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分“上に”あると言う場合、これは他の部分の“すぐ上に”ある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“下に”あると言う場合、これは他の部分の“すぐ下に”ある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。
他に明示しない限り、本明細書で使用した成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のものの中でこのような値を得るのに発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合に“約”という用語で修飾されるものと理解されなければならない。また、以下の記載で数値範囲を開示する場合、このような範囲は連続的であり、他に指示しない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指示する場合、他に指示しない限り、最小値から最大値が含まれた最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0013】
図1は本発明による全固体電池を示す図である。全固体電池は、負極10、正極20、及び負極10と正極20との間に位置する固体電解質層30を含むことができる。負極10には負極集電体40が付着することができ、正極20には正極集電体50が付着することができる。
負極10は対向する少なくとも2個の主表面を有するシートの形状を有することができる。2個の主表面はそれぞれ数学的平面だけでなく、一部に一定の曲面を含んでいても良く、負極10の製作中に発生する凹凸を持っていても良い。この意味で、シート形状は比較的薄い直方体に限定されない。
シート状の負極10において、対向する2個の主表面の間の間隔は負極10の厚さであり得る。負極10の厚さ方向と直交する第1方向(例えば、幅方向)の長さは厚さより大きい。また、負極10の厚さ方向及び第1方向のそれぞれと直交する第2方向(例えば、長さ方向)の長さは厚さより大きい。
負極10の厚さは特に限定されないが、1μm~100μmであり得る。負極10の厚さは、測定対象を5点で測定したときの平均値を意味し得る。また、負極10の厚さは全固体電池の放電時の厚さを意味し得る。
負極10は、負極活物質、固体電解質、バインダーなどを含むことができる。
【0014】
図2は本発明による負極活物質100の第1実施形態を示す図である。負極活物質100は、所定の形状を成している粒子110、粒子110の内部に充填され、リチウム親和性を有する第1物質120、及び粒子110の表面の少なくとも一部に被覆され、リチウム親和性を有する第2物質130を含むことができる。
従来の全固体電池は黒鉛系負極活物質を含む。黒鉛系負極活物質の内部にリチウムイオン(Li)が挿入及び脱離されることで充放電が進行される。液体電解質を使用するリチウムイオン電池では、黒鉛系負極活物質の内部及び外部に液体電解質が含浸されているので、リチウムイオンの移動に問題がない。しかし、固体電解質を使用する全固体電池は黒鉛系負極活物質の表面と固体電解質との接触部ではリチウムイオンが円滑に伝導されるが、黒鉛系負極活物質の内部では拡散による移動のみ可能であるので、リチウムイオンの伝達経路が非常に長くなる。すなわち、拡散による移動速度が低い常温または低温では全固体電池の出力が非常に低く、リチウムが容易に析出してしまう問題がある。
【0015】
また、従来の全固体電池は、黒鉛系負極活物質と固体電解質との界面で炭素、固体電解質、リチウムイオン(Li)及び電子の酸化/還元反応によって固体電解質界面層(Solid electrolyte interphase layer)が形成される。固体電解質界面層は電池内リチウムの枯渇を誘導し、リチウムイオン(Li)の挿入及び脱離を妨げる。また、固体電解質の表面にリチウムデンドライトの形成を誘導して電池の寿命を縮める。
本発明はこのような従来の黒鉛系負極活物質の問題点を解決するためのものであり、粒子110の内部及び表面にリチウム親和性を有する物質を充分に蒸着させることで、負極活物質100の内部のリチウムイオン伝導性を高め、負極活物質100と固体電解質との界面を均一にしながら粒子110と固体電解質との間の副反応が起こらないようにしたことを特徴とする。これについては後述する。
【0016】
図3は前記粒子110を示す図である。粒子110は、多重に重なっている複数の鱗状炭素断片(flake carbon fragments)111及び麟状炭素断片の間の空間112を含むことができる。
粒子110は麟状炭素断片111が同心円状に、キャベツ状に、またはランダムに造粒されたものであり得る。図3の粒子110は球形であるが、粒子110の形状がこれに限定されるものではなく、粒子110の形状は楕円形、ロッド形などであり得る。
麟状炭素断片111は鱗片状の薄板状片であり得る。
麟状炭素断片111のうちのいずれか一つとこれに隣接した他の一つとの間の最短距離は10nm~100nmであり得る。ここで、最短距離は、麟状炭素断片111が多重に積もって一連の層を形成するとき、麟状炭素断片111が成すいずれか一層と他の一層との間の距離を意味し得る。また、最短距離は、麟状炭素断片111の断面を基準に空間112のサイズを意味し得る。最短距離が10nm未満であれば第1物質120が空間112内に蒸着しにくいことがあり、100nmを超えれば負極活物質100内でリチウムイオン(Li)の伝導性が落ちることがある。
【0017】
空間112は、麟状炭素断片111を多重に重ねて造粒する過程で発生する粒子110内の空隙(Pore)であり得る。空間112は粒子110の表面から中心部まで連続的にまたは断続的に形成され得る。
第1物質120は麟状炭素断片111の間の空間112に充填され得る。また、第1物質120は、リチウム親和性を有する金属または準金属を含むことができる。ここで、リチウム親和性を有するというのは、リチウムと合金を形成することができることを意味し得る。リチウム合金はリチウムイオン(Li)を引き寄せてリチウムイオン(Li)の拡散移動速度を高めることができる。
前述したように、空間112は粒子110の表面から中心部まで連続的に形成できるので、空間112に第1物質120が充填されれば、負極活物質100の内部でリチウムイオン(Li)がより容易に移動することができる。したがって、本発明による全固体電池は、常温または低温で駆動しても出力低下、リチウムの過度な析出などの問題が発生しないことができる。これについては後述する。
【0018】
第1物質120は、空間112の全容積を基準に、空間112の80%以上を占めることができる。第1物質120の充填率が80%未満であれば、負極活物質100の内部のリチウムイオン(Li)の移動が円滑でないことがある。第1物質120の充填率の上限は特に限定されず、100%以下、99%以下、95%以下、または90%以下であり得る。
第1物質120は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことができる。
好ましくは、第1物質120は、珪素(Si)または珪素(Si)とリチウムとの合金を含むことができる。より好ましくは、第1物質120は、非晶質の珪素(Si)または非晶質の珪素(Si)とリチウムとの合金を含むことができる。非晶質の珪素は等方膨張するので、第1物質120の変形及び脱離を最小化することができ、第1物質120と粒子110との間のリチウムイオン(Li)の伝達も容易になることができる。
第2物質130は粒子110の表面の少なくとも一部に被覆され得る。第2物質130は、粒子110が固体電解質と接触することを防止することができる。粒子110が外部に露出されて固体電解質と接触すれば、粒子110の高い電子伝導度によって固体電解質が分解することがある。
【0019】
第2物質130は、リチウム親和性を有する金属または準金属を含むことができる。第2物質130が粒子110の表面の大部分を被覆しているので、固体電解質を介して伝導されたリチウムイオン(Li)は第2物質130がないときに比べてより早く負極活物質100に挿入されることができる。第2物質130がリチウムイオン(Li)を伝達する速度が粒子110に比べて早いからである。
第2物質130は粒子110の全表面積の90%以上に被覆され得る。第2物質130の被覆率の上限は特に限定されず、100%以下、99%以下または95%以下であり得る。
第2物質130の厚さは20nm~1,000nmであり得る。第2物質130の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope、TEM)による観察によって測定することができる。サンプルの数は多いことが好ましく、例えば10個以上、好ましくは100個以上の負極活物質100に形成された第2物質130の厚さを測定し、平均値として算出することができる。厚さが20nm未満であれば第2物質130が粒子110の表面を充分に被覆することができないことがあり、1,000nmを超えれば生産性が落ち、負極活物質100の物性に良くない影響を与えることがある。
【0020】
第2物質130は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことができる。
好ましくは、第2物質130は、珪素(Si)または珪素(Si)とリチウムとの合金を含むことができる。より好ましくは、第2物質130は、非晶質の珪素(Si)または非晶質の珪素(Si)とリチウムとの合金を含むことができる。非晶質の珪素は等方膨張するので、第2物質130の変形及び脱離を最小化することができ、第2物質130と粒子110との間のリチウムイオン(Li)の伝達も容易になることができる。
【0021】
負極活物質100は粒子110を40重量%~90重量%含み、第1物質120及び第2物質130を10重量%~60重量%含むことができる。第1物質120と第2物質130とを合わせた重量が10重量%未満であれば、第1物質120が空間112を充分に満たすことができないかまたは第2物質130が粒子110の表面を充分に被覆することができないことがある。第1物質120と第2物質130とを合わせた重量が60重量%を超えれば、第2物質130があまりにも厚くなることがある。
負極活物質100の平均粒径(D50)は1μm~20μmであり得る。平均粒径(D50)は市販のレーザー回折散乱式粒度分布測定機、例えばマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定することができる。また、電子燎微鏡写真から任意に200個の粒子を抽出して平均粒径を算出することもできる。負極活物質100の平均粒径(D50)が1μm以上のとき、負極10の密度を高めることができるので、容積当たりの放電容量を向上させることができ、20μm以下のとき、充電性及びサイクル特性を向上させることができる。
負極活物質100の比表面積は0.5m/g~4m/gであり得る。比表面積は窒素吸着によるBET(Brunauer Emmett-Teller)法によって測定することができ、例えば一般的に使用する比表面積測定機器(MOUNTECH社のMacsorb HM(model 1210)またはMicrotracBEL社のBelsorp-miniなど)を用いることができる。比表面積が数値範囲に属するとき、負極活物質100の体積膨張の抑制に有利であり得る。
【0022】
負極活物質100の製造方法は特に限定されない。図3のように麟状炭素断片111が多重に重なって所定の形状を成している粒子110を準備した後、粒子110に第1物質120及び第2物質130に相当する金属または準金属の元素を蒸着して負極活物質100を製造することができる。蒸着は、例えば化学気相蒸着法(Chemical vapor deposition、CVD)、物理気相蒸着法(Physical vapor deposition、PVD)などであり得、第1物質120の充填率、第2物質130の被覆率及び第2物質130の均一な厚さを考慮すれば、化学気相蒸着法で蒸着することが好ましい。
負極10は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含むことができる。固体電解質は酸化物系固体電解質または硫化物系固体電解質であり得る。リチウムイオン伝導度が高い硫化物系固体電解質を使用することが好ましい。
【0023】
硫化物系固体電解質は、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ここで、m、nは正の数であり、ZはGe、Zn、及びGaのうちの一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ここで、x、yは正の数であり、MはP、Si、Ge、B、Al、Ga、及びInのうちの一つである)、Li10GeP12などを含むことができる。
【0024】
図4は本発明による負極10において負極活物質100と固体電解質200との間のリチウムイオン(Li)の移動を説明するための参考図である。図5aは充電初期負極活物質100を示す図である。図5bは充電が充分に進行されたときの負極活物質100を示す図である。
全固体電池の充電の際、正極20から負極10に移動したリチウムイオン(Li)は負極10内でリチウムイオン伝導性を有する固体電解質200を介して負極活物質100に挿入される。
第2物質130が粒子110の大部分の表面を被覆しているので、粒子110は固体電解質200と接触しないことができる。したがって、負極活物質100の表面には、粒子110、固体電解質200、リチウムイオン(Li)及び電子の酸化及び還元反応による固体電解質界面層(Solid electrolyte interphase layer)が存在しないことができる。固体電解質界面層は全固体電池内リチウムの枯渇を誘導し、リチウムイオン(Li)の挿入及び脱離を妨げるが、本発明は第2物質130を粒子110の表面に被覆してこのような問題を解決したことを特徴とする。
【0025】
図4及び図5aを参照すると、充電の初期に固体電解質200を介して負極活物質100に伝導されたリチウムイオン(Li)は第2物質130と反応して外側リチウム合金130’を形成する。
充電がさらに進行されれば、リチウムイオン(Li)は負極活物質100の内部に拡散して移動することができる。リチウムイオン(Li)は粒子110に挿入される。この際、粒子110の内部に充填された第1物質120がリチウムイオン(Li)と反応して図5bのように内側リチウム合金120’を形成することができる。内側リチウム合金120’はリチウムイオン(Li)の伝達経路になることにより、リチウムイオン(Li)の拡散移動速度が速くなる。
その後、リチウムイオン(Li)が負極活物質100の内部にさらに拡散して粒子110の収容量に到逹するまで粒子110に挿入されると充電が完了する。
負極活物質100内でリチウムイオン(Li)の伝達経路が短く拡散速度が速いので、本発明による全固体電池は常温または低温で駆動されるかまたは出力が高くなっても正常に作動することができる。
【0026】
負極10は、バインダーを含むことができる。バインダーは負極活物質100と固体電解質200とを付着することができる。
バインダーの種類は特に限定されず、例えばブタジエンゴム(Butadiene rubber)、ニトリルブタジエンゴム(Nitrile Butadiene rubber)、水素化ニトリルブタジエンゴム(Hydrogenated Nitrile Butadiene rubber)、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose、CMC)などを含むことができる。
負極10は負極活物質100 80重量%~85重量%、固体電解質200 10重量%~15重量%及びバインダー1重量%~5重量%を含むことができる。ただし、各成分の含量は目的とする全固体電池の容量、効率などを考慮して適切に調節することができる。
【0027】
図6は本発明による負極活物質100の第2実施形態を示す図である。負極活物質100は、複数の1次粒子150が結球した2次粒子140を含むことができる。
図7は1次粒子150を示す図である。図8図7のA-A’線についての断面図である。図9図6による負極活物質100の断面図である。
2次粒子140は1次粒子150が同心円形に、キャベツ形状に、またはランダムに造粒されたものであり得る。図6の2次粒子140は球形であるが、2次粒子140の形状がこれに限定されるものではなく、2次粒子140の形状は楕円形、ロッド形などであり得る。
1次粒子150は、麟状炭素断片111、及び麟状炭素断片111の表面に被覆され、リチウム親和性物質(Lithiophilic material)を含むコーティング部113を含むことができる。
【0028】
麟状炭素断片111は前述したので、以下ではこれについての具体的な説明は省略する。
コーティング部113は麟状炭素断片111の全表面の90%以上に被覆され得る。コーティング部113の被覆率の上限は特に限定されず、100%以下、99%以下または95%以下であり得る。コーティング部113の被覆率が90%以上のとき、図9のように、負極活物質100の内部及び表面にリチウム親和性物質が充分に充填及び/または被覆されることができる。
コーティング部113の厚さは20nm~1,000nmであり得る。第2物質130の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscope、TEM)による観察によって測定することができる。サンプルの数は多いことが好ましく、例えば10個以上、好ましくは100個以上の1次粒子150に形成されたコーティング部113の厚さを測定し、平均値として算出することができる。
【0029】
負極活物質100は、麟状炭素断片111 40重量%~90重量%及びコーティング部113 10重量%~60重量%を含むことができる。コーティング部113が10重量%未満であれば負極活物質100の内部及び表面にリチウム親和性物質が充分に充填及び/または被覆されにくいことがあり、60重量%を超えればコーティング部113があまりにも厚くなることがある。
コーティング部113は、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種またはこれらとリチウムとの合金を含むことができる。
好ましくは、コーティング部113は、珪素(Si)または珪素(Si)とリチウムとの合金を含むことができる。より好ましくは、コーティング部113は、非晶質の珪素(Si)または非晶質の珪素(Si)とリチウムとの合金を含むことができる。非晶質の珪素は等方膨張するので、コーティング部113の変形及び脱離を最小化することができ、コーティング部113と麟状炭素断片111との間のリチウムイオン(Li)の伝達も容易になることができる。
【0030】
負極活物質100の製造方法は特に限定されない。麟状炭素断片111の表面にリチウム親和性物質を蒸着して1次粒子150を準備した後、1次粒子150を結球して2次粒子140形態の負極活物質100を製造することができる。
正極20は対向する少なくとも2個の主表面を有するシート状を有することができる。2個の主表面はそれぞれ数学的平面だけでなく、一部に一定の曲面を含んでいても良く、正極20の製作中に発生する凹凸を持っていても良い。この意味で、シート状は比較的薄い直方体に限定されない。
シート状の正極20において、対向する2個の主表面の間の間隔は正極20の厚さであり得る。正極20の厚さ方向と直交する第1方向(例えば、幅方向)の長さは厚さより大きい。また、正極20の厚さ方向及び第1方向のそれぞれと直交する第2方向(例えば、長さ方向)の長さは厚さより大きい。
正極20の厚さは特に限定されないが、1μm~100μmであり得る。正極20の厚さは測定対象を5点で測定したときの平均値を意味し得る。また、正極20の厚さは全固体電池の放電時の厚さを意味し得る。
正極20は、正極活物質、固体電解質、導電材、バインダーなどを含むことができる。
【0031】
正極活物質はリチウムイオンを吸蔵及び放出することができる。
正極活物質は、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、Li1+xNi1/3Co1/3Mn1/3などの岩塩層型活物質、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)Oなどのスピネル型活物質、LiNiVO、LiCoVOなどの逆スピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPOなどのオリビン型活物質、LiFeSiO、LiMnSiOなどの珪素含有活物質、LiNi0.8Co(0.2-x)Al(0<x<0.2)のように遷移金属の一部を異種金属に置換した岩塩層型活物質、Li1+xMn2-x-y(MはAl、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnのうちの少なくとも一種であり、0<x+y<2)のように遷移金属の一部を異種金属に置換したスピネル型活物質、LiTi12のチタン酸リチウムなどを含むことができる。
固体電解質は、酸化物系固体電解質または硫化物系固体電解質を含むことができる。
【0032】
リチウムイオン伝導度が高い硫化物系固体電解質を使用することが好ましい。硫化物系固体電解質は、特に限定されないが、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ここで、m、nは正の数であり、ZはGe、Zn、及びGaのうちの一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ここで、x、yは正の数であり、MはP、Si、Ge、B、Al、Ga、及びInのうちの一つである)、Li10GeP12などを含むことができる。正極20に含まれた固体電解質は負極10に含まれた固体電解質と同じか異なることができる。
【0033】
導電材は、カーボンブラック(Carbon black)、伝導性黒鉛(Conductive graphite)、エチレンブラック(Ethylene black)、グラフェン(Graphene)などを含むことができる。
バインダーは、ブタジエンゴム(Butadiene rubber)、ニトリルブタジエンゴム(Nitrile Butadiene rubber)、水素化ニトリルブタジエンゴム(Hydrogenated Nitrile Butadiene rubber)、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidene fluoride、PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose、CMC)などを含むことができる。正極20に含まれたバインダーは負極10に含まれたバインダーと同じか異なることができる。
【0034】
固体電解質層30は対向する少なくとも2個の主表面を有するシート形状を有することができる。2個の主表面はそれぞれ数学的平面だけでなく、一部に一定の曲面を含んでいても良く、固体電解質層30の製作中に発生する凹凸を持っていても良い。この意味で、シート状は比較的薄い直方体に限定されない。
シート状の固体電解質層30において、対向する2個の主表面の間の間隔は固体電解質層30の厚さであり得る。固体電解質層30の厚さ方向と直交する第1方向(例えば、幅方向)の長さは厚さより大きい。また、固体電解質層30の厚さ方向及び第1方向のそれぞれと直交する第2方向(例えば、長さ方向)の長さは厚さより大きい。
固体電解質層30の厚さは、特に限定されないが、1μm~100μmであり得る。固体電解質層30の厚さは測定対象を5点で測定したときの平均値を意味し得る。
固体電解質層30は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含むことができる。固体電解質は、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。また、固体電解質は結晶質、非晶質、またはこれらが混合された状態であり得る。
【0035】
酸化物系固体電解質は、ペロブスカイト(perovskite)型LLTO(Li3xLa2/3-xTiO)、リン酸塩(phosphate)系のナシコン(NASICON)型LATP(Li1+xAlTi2-x(PO)などを含むことができる。
硫化物系固体電解質は、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ここで、m、nは正の数であり、ZはGe、Zn、及びGaのうちの一つである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ここで、x、yは正の数であり、MはP、Si、Ge、B、Al、Ga、及びInのうちの一つである)、Li10GeP12などを含むことができる。
好ましくは、固体電解質は、アルジロダイト型結晶構造を有する硫化物系固体電解質を含むことができる。アルジロダイト結晶構造を有する硫化物系固体電解質は、Li7-xPS6-xCl(0<x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0<x≦2)、Li7-xPS6-x(0<x≦2)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0036】
負極集電体40は電気伝導性を有する板状の基材であり得る。具体的には、負極集電体40は、シート状、薄膜状またはホイル状を有するものであり得る。
負極集電体40は、リチウムと反応しない素材を含むことができる。具体的には、負極集電体40は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ステンレススチール(Stainless steel)及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
負極集電体40の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm~500μmであり得る。
正極集電体50は、電気伝導性を有する板状の基材を含むことができる。具体的には、正極集電体50は、シート状、薄膜状またはホイル状を有するものであり得る。
正極集電体50は、アルミニウム薄板(Aluminium foil)を含むことができる。
正極集電体50の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm~500μmであり得る。
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明の他の形態をより具体的に説明する。下記の実施例は本発明の理解を手伝うための例示に過ぎなく、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
製造例
複数の麟状炭素断片が多重に重なって球形または楕円形に近い形状を有する粒子を準備した。粒子の内部及び表面に化学気相蒸着法でシリコンを蒸着した。具体的には、粒子をチャンバーに投入し、チャンバーを真空にした後、チャンバーにシリコンを含む反応ガスを注入した。チャンバーの内部を所定の温度に加熱することで、反応ガスに含まれたシリコンを粒子の内部及び表面にそれぞれ第1物質及び第2物質として蒸着させて負極活物質を製造した。
本製造例による負極活物質は、粒子70重量%及び第1物質及び第2物質の和30重量%を含む。
図10は製造例による負極活物質の断面を走査電子顕微鏡で分析した結果を示す。暗く現れた部分は麟状炭素断片が結球した粒子であり、明るく現れた部分は第1物質及び第2物質である。これを参照すると、粒子の表面に被覆された第2物質の厚さが20nm~1,000nmであり、厚さの偏差がほとんどなく均一に形成されたことが分かる。
【0038】
比較製造例1
シリコンを蒸着しなかった製造例の粒子を比較製造例1に設定した。
比較製造例2
負極活物質が粒子95重量%及び第1物質及び第2物質の和5重量%を含むようにしたことを除き、製造例と同様な方法で負極活物質を製造した。
実施例1
製造例による負極活物質、硫化物系固体電解質及びバインダーを溶媒に投入してスラリーを準備した。スラリーを負極集電体上に塗布して厚さ約50μmの負極を形成した。バインダーとしては、NBR(Nitrile Butadiene rubber)を使用し、溶媒としてはヘキシルブチレートを使用した。
【0039】
図11は実施例1による負極に対するX線分光分析の結果を示す。下側の結果は製造された直後の負極に対する結果であり、上側の結果は2週が経った後の負極に対する結果である。固体電解質及び粒子に起因したピークは発見されるが、シリコンに起因したピークが発見されないことから、負極活物質に蒸着されたシリコンは非晶質であることが分かる。
負極上に硫化物系固体電解質を含む固体電解質層を積層し、固体電解質層上にリチウム金属を積層して半電池を構成した。
比較例1
比較製造例1による負極活物質を使用したことを除き、実施例1同様に半電池を構成した。
【0040】
実験例1
図12は実施例1による負極を含む半電池の第1充放電グラフである。図13は比較例1による負極を含む半電池の第1充放電グラフである。それぞれは30℃及び60℃でその特性を評価した。
比較例1は初期充電反応(>0.5V)で相対的に高い反応性を表す。これは非可逆的抵抗層を形成する反応であり、実施例1の結果では見えない。
30℃で評価したとき、実施例1の初期効率は約91.8%であり、比較例1の初期効率は約89.5%である。60℃で評価したとき、実施例1の初期効率は約90.0%であり、比較例1の初期効率は約88.2%である。
実験例2
電流密度を2mA/cmに高めて前記と同様に充放電特性を評価した。蒸着容量は3.5mAh/cmに設定した。
【0041】
図14は実施例1による負極を含む半電池の高率充放電グラフである。図15は比較例1による負極を含む半電池の高率充放電グラフである。それぞれは30℃及び60℃でその特性を評価した。
図15を参照すると、比較例1は温度別容量具現の差が大きく現れる。リチウム移動が制限的な低温ではリチウムの挿入が円滑でない。これは、粒子の表面と固体電解質との間のリチウム移動が円滑でなくて発生する。また、粒子と固体電解質との間の界面に形成された固体電解質界面層は抵抗として作用してリチウムの移動を妨げることができる。
図14を参照すると、実施例1では負極活物質に貯蔵されるリチウムの温度別偏差が急激に減少する。これは、第1物質及び第2物質が負極活物質の内部にリチウムを早く移動させることに寄与した結果である。
【0042】
実施例2
実施例1による負極上に硫化物系固体電解質を含む固体電解質層を積層し、固体電解質層上に正極活物質、固体電解質、導電材及びバインダーを含む正極を積層して完電池を構成した。正極活物質としてはニッケル-コバルト-マンガン酸化物を使用した。
比較例2
比較製造例2による負極活物質を使用したことを除き、実施例2と同様に完電池を構成した。
【0043】
図16は比較例2による完電池の容量維持率を測定した図である。図17は実施例2による完電池の容量維持率を測定した図である。第1物質及び第2物質の含量が高くて粒子の内部及び表面にシリコンが充分に蒸着された実施例2は比較例2に比べて容量維持率が数等優れ、安定的に駆動されることが分かる。
以上で、本発明の実験例及び実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は上述した実験例及び実施例に限定されず、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の多くの変形及び改良形態も本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10 負極
20 正極
30 固体電解質層
40 負極集電体
50 正極集電体
100 負極活物質
110 粒子
111 麟状炭素断片
112 空間
113 コーティング部
120 第1物質
130 第2物質
140 2次粒子
150 1次粒子
200 固体電解質
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17