(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001595
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】自動車踏み間違い防止システム
(51)【国際特許分類】
B60K 28/10 20060101AFI20231227BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20231227BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20231227BHJP
B60J 3/04 20060101ALI20231227BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
B60K28/10 Z
G02F1/13 505
B60J1/00 H
B60J3/04
B60J1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100343
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上村 博典
(72)【発明者】
【氏名】中山 健太郎
【テーマコード(参考)】
2H088
3D037
【Fターム(参考)】
2H088EA23
2H088EA34
2H088GA10
2H088HA01
2H088HA02
2H088MA20
3D037FA27
3D037FB12
(57)【要約】
【課題】停車していた自動車が発進の際、パーキングギアからバックギアを選択した場合に、フロントウインドウ上により視覚的、直感的に注意をうながす警告を報知する自動車踏み間違い防止システム提供することを課題とする。
【解決手段】調光フィルムと、該調光フィルムの透過率を制御する調光制御部と、シフトポジションを検出するシフトポジション検出部と、を備える自動車踏み間違い防止システムであって、
前記調光フィルムは、調窓枠に沿って格子状に複数部位に分割されており、
前記調光制御部は、前記シフトポジション検出部によって、パーキングギアからバックギアにギアチェンジされたことを示す検出情報に基づいて、一定時間少なくともフロントウィンドウに警告を想定する表示を映し出す自動車踏み間違い防止システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の少なくともフロントウインドウに搭載される調光フィルムと、該調光フィルムの透過率を制御する調光制御部と、シフトポジションを検出するシフトポジション検出部と、を備える自動車踏み間違い防止システムであって、
前記調光フィルムは、調光層と、該調光層に電圧を印加する透明電極層が形成された2枚の透明基材に挟持されてなる構成で、窓枠に沿って格子状に複数部位に分割されており、
前記調光制御部は、前記複数部位の各部位について、それぞれの個別透過率を調整可能であり、前記シフトポジション検出部によって、パーキングギアからバックギアにギアチェンジされたことを示す検出情報に基づいて、前記複数部位のうち遮光する遮光部位と、前記複数部位のうち遮光しない非遮光部位とを決定して、一定時間前記調光フィルム上に透明箇所および不透明箇所を形成することで、少なくともフロントウィンドウに警告を想定する表示を映し出すことを特徴とする自動車踏み間違い防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントウィンドウに液晶方式の調光部材を搭載した、自動車踏み間違い防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故が多発している。また、踏み間違い事故の特徴として、高齢者によるもの、発進時に多いことがある。その中でもよく挙げられる事例として、ギアがバックに入っているのに気づかず、アクセルを踏み込んでしまいおしりから店舗内に突入する事故が報告されている。
【0003】
オートマティック車の便利さから、シフト操作を忘れ、前記の様な事故を起こしている。今後の高齢化社会では、同種の事故が起こりやすいと思われ、未然に防止する製品が求められている。
【0004】
踏み間違い防止装置は多々ある。例えば、「ペダル操作による防止装置」の場合機構的に誤操作を防ごうとするものである。ただ、この装置によれば、高齢者等は当該誤操作防止機能が発揮している状態なのか単純な故障なのかの判断が付きづらくより一層アクセルを踏み込む操作をしかねない。
【0005】
また、特許文献1には、ステアリング操作、ウインカ-操作、車両後退操作したときに、顔向きカメラの撮像画像の処理結果によって、運転者による安全確認が既に行われていたか否かを判別し、その安全確認が未だ行われていなかったと判別された場合に、運転者に対して警告を与える車両用警報装置が示されている。
【0006】
しかしながら、例えば、高齢者のドライバーにおいて、オートマティック車の前進・後進操作を忘れ、自分の意思と反対に動き慌ててアクセルとブレーキを踏み間違える事故が発生するなど、顔向きカメラの撮像画像の処理結果によって運転者による安全確認が未だ行われていなかったと判別された場合に運転者に対して警告を与えるだけでは十分でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、係る問題を解決するためになされたもので、停車していた自動車が発進の際、パーキングギアからバックギアを選択した場合に、少なくともフロントウインドウ上により視覚的、直感的に注意をうながす警告を報知し、自己の意志と異なる方向へ発進してしまうことを防止することのできる、自動車踏み間違い防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の第1の態様は、
自動車の少なくともフロントウインドウに搭載される調光フィルムと、該調光フィルムの透過率を制御する調光制御部と、シフトポジションを検出するシフトポジション検出部と、を備える自動車踏み間違い防止システムであって、
前記調光フィルムは、調光層と、該調光層に電圧を印加する透明電極層が形成された2枚の透明基材に挟持されてなる構成で、窓枠に沿って格子状に複数部位に分割されており、
前記調光制御部は、前記複数部位の各部位について、それぞれの個別透過率を調整可能であり、前記シフトポジション検出部によって、パーキングギアからバックギアにギアチェンジされたことを示す検出情報に基づいて、前記複数部位のうち遮光する遮光部位と、前記複数部位のうち遮光しない非遮光部位とを決定して、一定時間前記調光フィルム上に透明箇所および不透明箇所を形成することで、少なくともフロントウィンドウに警告を想定する表示を映し出すことを特徴とする自動車踏み間違い防止システムである。
【発明の効果】
【0010】
停車していた自動車が発進の際、パーキングギアからバックギアを選択した場合に、少なくともフロントウインドウ上により視覚的、直感的に注意をうながす警告を報知し、自己の意志と異なる方向へ発進してしまうことを防止することのできる、自動車踏み間違い防止システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】自動車踏み間違い防止システムの構成を示すブロック図。
【
図3】車内から見たフロントウィンドウに(a)警告が表示されていないことを示す図(b)警告が表示されていることを示す図。
【
図4】フロントウィンドウに配置され、分割された調光フィルムの一例を示す斜視図および拡大図。
【
図5】自動車踏み間違い防止システムの処理フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<システム構成>
図1は、自動車踏み間違い防止システム1の全体構成を示すブロック図である。
図2は、調光フィルムの構成図である。
図3は、フロントウィンドウ10に搭載された自動車踏み間違い防止システム1を車内から見た図である。(a)警告が表示されていないことを示す図(b)フロントウィンドウ10に「!ギア確認 深呼吸」という警告を文字で報知した図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る自動車踏み間違い防止システム1は、フロントウィンドウ10に搭載される調光フィルム2と、調光フィルムに印加電圧を与える外部電源3と、調光フィルム2の透過率を制御する調光制御部4と、シフトポジションを検出するシフトポジション検出部5と、を備える自動車踏み間違い防止システム1である。
【0015】
図4は、フロントウィンドウ10に配置され、分割された調光フィルムの一例を示す斜視図および拡大図である。
図4に示すように、調光フィルム2は、窓枠に沿って格子状に複数部位に分割されており、調光制御部4は、複数部位の各部位30について、それぞれの個別透過率を調整可能であり、シフトポジション検出部5から、パーキングギアからバックギアにギアチェンジされたことを示す検出情報を取得した時に、分割された複数部位30のうち遮光する遮光部位と、複数部位30のうち遮光しない非遮光部位とを決定して、一定時間調光フィルム2上に透明箇所および不透明箇所を形成することでフロントウィンドウ10に警告を想定する表示を映し出すことが可能になる。
【0016】
具体的には、警告を想定する表示とは、下記のようなものが考えられる。
(1)分割調光で、例えば「!ギア確認 深呼吸」などの文字型表示(文字の部分を白濁させ)を一定時間出し、警告を報知する(
図3参照)。
(2)フロントウィンドウ10の一部または全域に帯状の不透明領域が発現し、視界を遮って前進できない状態を一定時間作り出す。一定時間経過後は透明に戻す、または点滅させてから透明に戻す。
(3)フロントウィンドウ10に加えて、サイドウィンドウにも配置した調光フィルム2を駆動させ、異常状態を(1)のような文字型表示で車内外に報知する。
【0017】
上記のように、フロントウィンドウ10や、サイドウィンドウに警告表示を映し出すことで、より視覚的、直感的に注意を促すことが出来て、発進時にギアの再確認と心を落ち着かせる時間を作りだすことにより、事故防止につなげることが可能になる。
【0018】
本発明に係る、自動車踏み間違い防止システム1は、駐車状態から発進する際に、パーキングギアからバックギアにギアチェンジすることが誤操作であるという前提で、安全側に動作させるように警告を報知する、フェールセーフ的機能を有する自動車踏み間違い防止システム1である。
【0019】
<調光フィルムの構成>
図2に示すように、調光フィルム2は、調光層22と、調光層に電圧を印加する透明電極層が形成された2枚の透明基材21に挟持されてなる構成で、透明基材21に設けられた電源接続部23を介して外部電源3に接続されている。
【0020】
調光フィルム2は、フレキシブルで薄い材料が主体であり、可撓性に富む。そして、フロントウインドウ10のほぼ全面または一部に配置されている。より具体的には、フロントウインドウ10を構成する透明板材としての一例であるウィンドウガラス板に、車内側から調光フィルム2が貼り付けられている。なお、調光フィルム2は、車外側より貼り付けられてもよく、また、各ウインドウの合わせガラスのガラス板間に中間膜を介して挟持されてもよい。
【0021】
図3には、フロントウインドウ10の一部に配置された調光フィルム2が模式的に示されている。この調光フィルム2は、水平方向に沿って並んだ複数の線と、複数の線と交差する複数の交差線とによって、窓枠に沿って格子状に複数部位に分割されている。調光制御部4は、各部位30について、それぞれの個別透過率を調整可能な手段を有している。
【0022】
調光フィルム2の分割された各部位30は、
図2に示されるように、2枚の透明電極層21との間に調光層22が配置され、2枚の透明電極層21との間に加えられた電圧によって透過率を変化させることができる。調光制御部4は、格子状の複数部位30のうち遮光する遮光部位と、複数部位30のうち遮光しない非遮光部位とを決定して、一定時間前記調光フィルム2上に透明箇所および不透明箇所を形成することで、例えばフロントウィンドウ10に警告文を表示(白濁)したり、非表示(透明)にしたりすることが可能である。
【0023】
上述したように、調光フィルム2の全面一括でなく領域毎に選択的に表示(透過/散乱)を切り替える用途形態では、少なくとも一方の透明電極層を領域分割してなる構成となり、分割された領域毎に給電するための電源接続部23を要することになる。
図2の透明電極層21の組み合わせからなる調光フィルム2では、駆動による表示は、双方の透明電極層21に電圧が印加された領域の調光層の液晶分子の配向状態が変化するため、分割領域毎に選択的に切り替わる。
【0024】
調光層12は、液晶組成物を含む。例えば、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:P
olymer Network Liquid Crystal)、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、カプセル型ネマティック液晶(NCAP:Nematic Curvilinear Aligned Phase)等から構成される。例えば、高分子ネットワーク型液晶は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備え、高分子ネットワークが有する空隙に液晶分子を保持する。調光層12が含む液晶分子は、例えば、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系の液晶分子である。
【0025】
調光層12に電圧を印加する一対の透明電極層の各々は、導電性を有する透明な層である。透明電極層を構成する材料としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)を含むポリマー等が挙げられる。透明電極層13A、13Bの好適な厚さは略80nm以上150nm以下である。
【0026】
液晶素子を調光層として用いる調光フィルム2には、その使用態様により、ノーマルモードとリバースモードの二種が知られている。ノーマルモードとは、電圧印加(ON)により透過状態となり、電圧除去(OFF)により散乱状態となるモードを言う。また、リバースモードとは、電圧除去(OFF)により透過状態となり、電圧印加(ON)により散乱状態となるモードを言う。
【0027】
ノーマルモードの調光フィルム2では、透明電極層21に駆動電圧が印加されていないとき、液晶分子の向きは不規則である。そのため、調光層22に入射した光は散乱し、調光領域は白濁して見える。すなわち、調光層22に駆動電圧が印加されていないとき、調光領域は不透明である。一方、透明電極層21に駆動電圧が印加されると、液晶分子が配向され、液晶分子が透明電極層21間の電界方向に沿った向きとなる。その結果、調光層22を光が透過しやすくなり、調光領域は透明となる。本実施形態では、調光フィルム2の各部位30は、電圧印加(ON)時に白濁し、電圧除去(OFF)時には透明になるリバースモードを使用している。
【0028】
<自動車踏み間違い防止フロー>
図5は、自動車踏み間違い防止システム1の処理フローの一例を示すフローチャートである。この動作プログラムは、調光制御部4内の、図示しないROMに格納されており、CPUによって実行される。自動車踏み間違い防止システム1は、下記調光アラートシーケンスにしたがって警告を報知する。
【0029】
図5を参照して、処理フローを詳細に説明する。
S1:Power on。
S3:フラグが立っていれば、調光アラートシーケンスに遷移。
S5:通常透明状態にするため調光電圧off。
S7~S11:バックギア→パーキングギア→Power off(駐車完了)の3つの条件を満たすことによりS13のフラグが立つ。それぞれのステップで条件を満たさない(ほかのギアに変わる)と通常に戻る。
S19~S27:調光アラートシーケンス。フラグが立っている状態(駐車状態)でギアをバックに入れてしまうと誤操作と判断し、調光電圧印加して警告表示を行い、一定時間経過すると自動的に電圧除去(透明化)される。
S29:駐車状態でもギアをバックに入れなければ通常の発進動作がなされたと判断し、通常運転モードに入る。この判断は、たとえば、フェールセーフ機能の一部を利用してチェックすることも可能。
【0030】
本発明によって、上記構成により、停車していた自動車が発進の際、パーキングギアからバックギアを選択した場合に、フロントウインドウ上により視覚的、直感的に注意をうながす警告を報知し、自己の意志と異なる方向へ発進してしまうことを防止することのできる、自動車踏み間違い防止システムを提供することが可能になった。
【符号の説明】
【0031】
1・・・自動車踏み間違い防止システム
2・・・調光フィルム
3・・・外部電源
4・・・調光制御部
5・・・シフトポジション検出部
10・・・フロントウィンドウ
21・・・透明電極層
22・・・調光層
23・・・電源接続部
30・・・分割部位