(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159500
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】保護層を含むセラミック材料で作られた外装部品及びそのような外装部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/08 20060101AFI20241031BHJP
G04B 19/28 20060101ALI20241031BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20241031BHJP
G04B 19/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C23C14/08 N
G04B19/28 A
G04B45/00 D
C23C14/08 K
G04B19/06 N
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024026492
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】23170798.5
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クルショド、 ロイク
(72)【発明者】
【氏名】スパソフ、 ヴラディスラフ
(72)【発明者】
【氏名】タバード、 ルーシー
(72)【発明者】
【氏名】フォルナバイオ、 マルタ
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA04
4K029AA07
4K029AA24
4K029BA44
4K029BA48
4K029BA50
4K029BB02
4K029BC07
4K029CA06
4K029EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】保護コーティングを含むセラミック材料で作られた外装部品に関する。
【解決手段】外装部品10であって、セラミック材料で作られた基板11を備え、基板の表面に透明な無機保護コーティング12が広がり、保護コーティングは、外装部品10が基板の固有色と実質的に同一の色を有するように、光スペクトルの可視領域で基板の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するように構成され、コーティングは300nmから5μmの間で選択される厚さにわたって延在する外装部品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部品(10)であって、それはセラミック材料で作られた基板(11)を備え、前記基板(11)の表面に透明な無機の保護コーティング(12)が広がり、前記保護コーティング(12)は、前記外装部品(10)が前記基板(11)の固有色と実質的に同一の色を有するように、光スペクトルの可視領域で前記基板(11)の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するように構成され、前記コーティング(12)は、300nmから5μmの間で選択される厚さにわたって延在することを特徴とする、外装部品(10)。
【請求項2】
前記保護コーティング(12)は、前記基板(11)の固有色との差がL*a*b*色空間においてデルタE≦10であることを特徴とする色を、それが前記外装部品(10)に与えるように構成される、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項3】
前記保護コーティング(12)は、前記基板(11)の固有色との差がL*a*b*色空間においてデルタE≦5で特徴付けられる色を、それが前記外装部品(10)に与えるように構成される、請求項2に記載の外装部品(10)。
【請求項4】
前記保護コーティング(12)の厚さは300nmから1μmである、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項5】
前記保護コーティング(12)は、光スペクトルの可視領域の波長に対して、それぞれ前記基板の屈折率よりも大きい屈折率と前記基板の屈折率よりも小さい屈折率とを有する少なくとも2つの化合物から形成される、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項6】
前記保護コーティング(12)は、TixAlyOzで作られた少なくとも1つの層を含む、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項7】
前記保護コーティング(12)は、SixOyNzで作られた少なくとも1つの層を含む、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項8】
前記基板(11)は、アルミナAl2O3、ジルコニアZrO2又はアルミナジルコニア複合体で作られる、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項9】
外装部品(10)を製造するための方法であって、
・基板(11)の表面を準備するステップと、
・真空蒸着法によって前記表面に透明な無機の保護コーティング(12)を堆積させるステップと
を含み、
前記堆積ステップは、前記保護コーティング(12)が光スペクトルの可視領域で前記基板(11)の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するように選択された少なくとも1つの材料の少なくとも1つの供給源から行われ、前記ステップはまた、前記保護コーティング(12)が300nmから5μmの厚さを有するように行われることを特徴とする、方法。
【請求項10】
保護コーティング(12)を堆積させる前記ステップは、陰極スパッタリング法によって行われる、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記保護コーティング(12)は、異なる材料の少なくとも2つの供給源から堆積され、前記材料は、前記堆積ステップ中に、それぞれが、光スペクトルの可視領域で、それぞれ前記基板(11)の屈折率よりも大きい屈折率と前記基板(11)の屈折率よりも小さい屈折率とを有する化合物を形成するように選択され、各供給源のスパッタリング電力は、前記保護コーティング(12)中の各化合物の割合が、前記コーティングが前記基板(11)の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するようなものであるように制御される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記保護コーティング(12)は、材料の混合物の少なくとも1つの供給源から堆積され、前記材料は、前記堆積ステップ中に、それぞれが、光スペクトルの可視領域で、それぞれ前記基板(11)の屈折率よりも大きい屈折率と前記基板(11)の屈折率よりも小さい屈折率とを有する化合物を形成するように選択され、前記供給源は、前記保護コーティング12が前記堆積ステップの最後に前記基板(11)の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するように、所定の割合の前記材料を含むように準備される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
選択された前記材料はAl及びTiであり、前記堆積ステップは、前記堆積ステップの最後に、前記保護コーティング(12)がTixAlyOz型の化合物を形成するためにTiO2とAl2O3の混合物を含むように反応ガスとしてO2を用いて行われる、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記保護コーティング(12)は、前記堆積ステップ中に、存在するいくつかの反応性ガスと反応することによってそれがいくつかの化合物を形成するように選択された単一材料の少なくとも1つの供給源から堆積され、前記化合物は、光スペクトルの可視領域で、それぞれ前記基板(11)の屈折率よりも大きい屈折率と前記基板(11)の屈折率よりも小さい屈折率とを有し、前記反応性ガスは、前記堆積ステップの最後に、前記保護コーティング(12)が前記基板(11)の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するように所定の割合で存在する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
前記堆積ステップは、前記堆積ステップの最後に、前記保護コーティング(12)がSixOyNz型の化合物を形成するためにSiO2とSi3N4の混合物を含むように、Siで作られた供給源から、反応性ガスとしてO2及びN2を用いて行われる、請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計製造、宝飾品又は服飾品の分野における装飾品に関し、より詳細には、保護コーティングを含むセラミック材料で作られた外装部品及びそのような外装部品の製造方法に関する。
【0002】
本明細書において、「外装部品」という用語は、使用者に見える部品、特に装飾機能を有する部品を指すために上記の分野で一般に使用される。
【0003】
服飾品はまた、ベルト、靴、衣服などの衣類用の物品又は付属品を含み、さらに、筆記具、眼鏡、革製品、電話又はあらゆる装飾品を含む。
【背景技術】
【0004】
時計製造の分野では、文字盤、フランジ、ベゼル、ミドル部、クラウン、プッシュピース、リンクなどのセラミック外装部品を、外観又は色を変える可能性のある化学的及び/又は機械的攻撃から保護するために、多くの解決策が生み出されてきた。
【0005】
例として、外装部品は、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)又はALD(原子層蒸着)蒸着法などの真空蒸着法によって堆積した薄い保護層を含むことができる。
【0006】
しかしながら、従来技術の解決策は完全に満足できるものではない。実際、従来技術の保護層は、完全に透明でありながら、例えば5μm未満の小さい厚みを有していない。すなわち、光スペクトルの可視領域で、入射する光放射の一部を吸収せず、干渉色を生じず、化学的攻撃及び機械的攻撃に対して適切な耐性を有していない。
【0007】
ALD蒸着法によって堆積した薄層は、PVD蒸着法及びCVD蒸着法によって堆積した薄層よりも有利であることに留意すべきである。実際、これらのALD薄層は、基板を化学的攻撃から保護するのに非常に効果的であり、その小さい厚みのために、肉眼では見えず、カバーする基板の外観に影響を与えない。
【0008】
しかしながら、これらの層は非常に薄いため、摩擦や衝撃などの機械的応力に非常に敏感である。したがって、それらは、時計のベゼルやミドル部などの外側要素と接触する可能性のある外装部品をカバーするのに使用することはできない。
【0009】
ALD薄層の厚さよりも大きい厚さ、一般にミクロン範囲の厚さを有する層は、機械的応力に対するより大きな耐性を提供する。しかしながら、これらの層は基板上で目に見えるため、特に装飾上の理由で基板の外観を維持する必要がある場合には、要件を満たさない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、化学的攻撃及び機械的攻撃に対して効果的であり、このようにして保護された基板の外観を維持するのに適した保護ソリューションが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の欠点を克服し、この目的のために、好ましくは時計のための外装部品であって、セラミック材料で作られた基板を備え、基板の表面に透明な無機保護コーティングが広がる外装部品に関する。コーティングは、少なくとも基板との界面において、光スペクトルの可視領域の波長に対して基板の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するように構成され、それによって干渉現象が発生しないか又は非常に少なく、すなわち実質的に肉眼では見えないようになり、外装部品が基板の固有色と実質的に同一の色を有するようになる。
【0012】
コーティングはまた、外装部品の堆積時間及び製造コストを節約する比較的小さい厚みを有する一方、摩耗に対する優れた機械的耐性及び化学的攻撃に対する優れた保護を与えるのに十分な高い厚みである。詳細には、コーティングの厚さは300nmから5μmである。コーティングは、有利には、高硬度、典型的には25GPa程度のビッカース硬度を有することができる。
【0013】
したがって、本発明は、基板の固有色を保持することを可能にしながら外装部品を保護することを可能にする。
【0014】
特定の実施形態では、本発明はさらに、単独で又は技術的に可能なあらゆる組み合わせで、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。
【0015】
特定の実施形態では、保護コーティングは、基板の固有色との差がL*a*b*色空間においてデルタE(Delta E)≦10であることを特徴とする色を、保護コーティングが外装部品に与えるように構成される。
【0016】
特定の実施形態では、保護コーティングは、基板の固有色との差がL*a*b*色空間においてデルタE≦5であることを特徴とする色を、保護コーティングが外装部品に与えるように構成される。
【0017】
特定の実施形態では、保護コーティングの厚さは300nmから1μmである。
【0018】
特定の実施形態では、保護コーティングは、光スペクトルの可視領域の波長に対して、それぞれ基板の屈折率よりも大きい屈折率と基板の屈折率よりも小さい屈折率とを有する少なくとも2つの化合物から形成される。保護コーティングの組成における各化合物の割合を制御することによって、保護コーティングの屈折率を、基板の屈折率と実質的に等しくなるように細かく制御することができ、それによって干渉現象を排除することができる。
【0019】
特定の実施形態では、保護コーティングは、TixAlyOzで作られた少なくとも1つの層を含む。
【0020】
特定の実施形態では、保護コーティングは、SixOyNzで作られた少なくとも1つの層を含む。
【0021】
特定の実施形態では、基板は、酸化物、窒化物、炭化物、炭窒化物又はホウ化物、特にアルミナAl2O3、ジルコニアZrO2又はアルミナ-ジルコニア複合体で作ることができる。
【0022】
別の態様によれば、本発明はさらに、例えば上記のような外装部品を製造する方法であって、基板の表面を準備するステップと、反応性又は非反応性雰囲気中で真空蒸着法によって前記表面に透明な無機保護コーティングを堆積させるステップとを含む方法に関する。
【0023】
堆積ステップは、保護コーティングが光スペクトルの可視領域で基板の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するように選択された少なくとも1つの材料の少なくとも1つの供給源から行われ、前記ステップはまた、保護コーティングが機械的攻撃及び化学的攻撃に耐性があるように、保護コーティングが300nmから5μmの厚さを有するように行われる。
【0024】
特定の実施では、保護コーティングを堆積させるステップは、陰極スパッタリング法によって行われる。
【0025】
特定の実施では、保護コーティングは、異なる材料の少なくとも2つの供給源から堆積され、前記材料は、堆積ステップ中に、前記材料それぞれが、光スペクトルの可視領域で、それぞれ基板の屈折率よりも大きい屈折率と基板の屈折率よりも小さい屈折率とを有する化合物を形成するように選択される。各供給源のスパッタリング電力は、保護コーティング中の各化合物の割合が、前記コーティングが基板の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するようなものであるように制御される。
【0026】
特定の実施では、保護コーティングは、少なくとも2つの材料の混合物の少なくとも1つの供給源から堆積され、前記材料は、堆積ステップ中に、前記材料それぞれが、光スペクトルの可視領域で、それぞれ基板の屈折率よりも大きい屈折率と基板の屈折率よりも小さい屈折率とを有する化合物を形成するように選択される。供給源は、保護コーティングが堆積ステップの最後に基板の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するように、所定の割合の前記材料を含むように準備される。
【0027】
特定の実施では、選択された材料はAl及びTiであり、堆積ステップは、堆積ステップの最後に、保護コーティングがTixAlyOz型の化合物を形成するためにTiO2とAl2O3の混合物を含むように、反応性ガスとしてO2を用いて行われる。
【0028】
特定の実施では、保護コーティングは、堆積ステップ中に、が存在するいくつかの反応性ガスと反応することによって単一材料いくつかの化合物を形成するように、選択された単一材料の少なくとも1つの供給源から堆積される。光スペクトルの可視領域で、化合物はそれぞれ、基板の屈折率より大きい屈折率と基板の屈折率より小さい屈折率とを有し、反応性ガスは、堆積ステップの最後に、保護コーティングが基板の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するように所定の割合で存在する。
【0029】
特定の実施では、堆積ステップは、堆積ステップの最後に、保護コーティングがSixOyNz型の化合物を形成するためにSiO2とSi3N4の混合物を含むように、Siで作られた供給源から、反応性ガスとしてO2及びN2を用いて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の他の特徴及び利点は、
図1を参照して、非限定的な例として与えられる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1】本発明の好ましい実施形態による外装部品の断面図を概略的に示す。
【0031】
図は、明確にするために必ずしも縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、
図1に概略的に示すように、外装部品10に関する。本発明による外装部品10は、時計製造、宝飾品、服飾品などの分野に適している。好ましくは、外装部品10は、時計の文字盤、ミドル部、ベゼル、ブレスレット、又は使用者に見えるあらゆる他の時計部品を形成するよう意図されている。
【0033】
外装部品10は、例えばアルミナAl2O3、ジルコニアZrO2、又はアルミナジルコニア複合体などのセラミック材料で作られた誘電体基板11を備え、前記基板を着色する顔料はあってもなくてもよい。外装部品10はさらに、使用者に見えるように意図された基板11の表面に広がる透明な無機保護コーティング12を含む。
【0034】
本明細書における「透明」という用語は、人間の目に見えるように光を吸収しない材料の能力を指すことに留意すべきである。
【0035】
保護コーティング12は、単一の薄層又は複数の薄層で形成することができる。
【0036】
有利には、保護コーティング12は、特に湿度、硫黄ガス、酸素及び酸性環境によって生じる化学的攻撃から基板11を保護することができる。さらに、保護コーティング12は、特に摩擦又は衝撃によって生じる機械的応力に耐えるような寸法にされる。
【0037】
この目的のために、保護コーティング12は、例えば、300nmから5μm、より詳細には300nmから1μmの間で選択された厚さにわたって広がる。好ましくは、保護コーティング12の厚さは1μmに等しい。
【0038】
保護コーティング12は、少なくとも前記基板11との界面において、光スペクトルの可視領域で基板11の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するように構成される。本明細書において、保護コーティング12の屈折率は、基板11の値のプラス又はマイナス5パーセントの区間に含まれる範囲で、基板11の屈折率と実質的に等しい。
【0039】
有利には、これらの特徴は、保護コーティング12が光干渉をほとんど又は全く発生させないことを可能にし、したがって、層12によって保護される外装部品10が基板11の固有色を有することを可能にする。発生するいかなる干渉も、使用者には見えないほどわずかであり、したがって無視できることに留意すべきである。
【0040】
「固有色」という概念は、本明細書において、コーティングされていない基板11の色であって、白色光で照らされたときに使用者が知覚する、基板11を構成する材料による色を指す。したがって、保護コーティング12は、基板11上に堆積した保護コーティング12の有無にかかわらず外装部品10が実質的に同じ色を有するという意味において、肉眼では見えない。
【0041】
より具体的には、保護コーティング12は、基板11の固有色との差がL*a*b*色空間においてデルタE≦10、より詳細にはデルタE≦5であることを特徴とする色を、保護コーティング12が外装部品10に与えるように構成される。
【0042】
要約すると、本発明の特徴のおかげで、外装部品10は、基板11の美的外観及び機械的強度を維持しつつ、基板に対する化学的保護を含む。
【0043】
好ましくは、保護コーティングは、光スペクトルの可視領域の波長に対して、それぞれ基板11よりも高い屈折率と基板11よりも低い屈折率とを有する少なくとも2つの化合物から形成される。
【0044】
例えば、保護コーティング12は、高屈折率を有するTiO2と低屈折率を有するAl2O3との混合物を含むことができる。保護コーティング12のこの例は、その屈折率がAl2O3単独のコーティングよりも低いか又はTiO2単独のコーティングよりも高い材料で作られた基板11に適合しないことに留意すべきである。
【0045】
代わりに、保護コーティング12は、高屈折率を有するSi3Ni4と低屈折率を有するSiO2との混合物を含むことができる。
【0046】
より一般的には、要約すると、保護コーティング12は、TixAlyOz又はSixOyNzで作られた少なくとも1つの薄層を含むことができる。
【0047】
本発明はまた、外装部品10、例えば前述の外装部品10を製造する方法に関する。方法は、使用者に見えるように意図された基板11の表面を準備するステップと、真空蒸着法によって前記表面に保護コーティング12を堆積させるステップとを含む。
【0048】
準備ステップは、基板11の研磨、サンドブラスト、ブラッシング、サテン仕上げ、又はあらゆる他の表面処理作業を行うことを含むことができる。
【0049】
堆積ステップは、1つ以上の材料の供給源を用いて行われ、材料の組成は、光スペクトルの可視領域で基板11の屈折率と実質的に等しい屈折率を有する保護コーティング12を形成するために選択される。
【0050】
この堆積ステップはまた、保護コーティング12が、上述のように、機械的攻撃、特に摩耗及び化学的攻撃に耐えるような厚さを有するように、保護コーティング12を堆積させるように行われる。
【0051】
さらに、方法は、堆積ステップ中に使用される少なくとも1つの材料供給源を準備する予備ステップを含むことができる。供給源を準備するステップは、例えば、堆積ステップ中に使用される真空蒸着法に応じて適切なタイプの供給源を適応させることを可能にし、所望の保護コーティング12を得るために供給源が複数の材料を含む場合に供給源における材料の割合を適応させることを可能にする。使用される蒸着法が物理蒸着PVD法である場合、供給源は固体形態のターゲットであり、使用される蒸着法が化学蒸着CVD法又は原子層蒸着ALD法である場合、供給源は気相前駆体であるという点で、材料供給源のタイプは、使用される真空蒸着法により異なる。
【0052】
方法の一変形実施では、保護コーティング12は、異なる材料、例えば異なる金属材料の少なくとも2つの供給源から堆積される。前記材料は、堆積ステップ中に、前記材料それぞれが化合物、例えば酸化物、窒化物又は炭化物を形成するように選択され、前記化合物は、光スペクトルの可視領域で、それぞれ基板11の屈折率よりも大きい屈折率と基板11の屈折率よりも小さい屈折率とを有する。堆積ステップ中、各供給源のスパッタリング電力を制御することによって、保護コーティング12を形成するために堆積される各化合物の割合が、保護コーティング12が所望の屈折率を有するように制御される。保護コーティング12のこの所望の屈折率は、上述のように、基板11の屈折率と実質的に同一である。
【0053】
例えば、材料の一方がAlであることができ、他方がTiであることができる。予備準備ステップは、一方がTiで作られ、他方がAlで作られた2つの供給源を得るために行われ、堆積ステップは、反応性ガスとしてO2を用いて行われる。この実施例では、堆積ステップの最後に、保護コーティング12はTiO2とAl2O3の混合物から形成される。これら2つの金属酸化物は、それぞれ基板11の屈折率よりも高い屈折率と低い屈折率とを有するので、保護コーティング12におけるそれらの割合を制御することにより、コーティング12の屈折率を制御することができる。
【0054】
方法の別の変形実施では、保護コーティング12は、少なくとも2つの材料の混合物の少なくとも1つの供給源から堆積される。前記材料はまた、堆積ステップ中に、前記材料それぞれが化合物、例えば酸化物、窒化物、ホウ化物又は炭化物を形成するように選択され、前記化合物は、光スペクトルの可視領域で、それぞれ基板11の屈折率よりも大きい屈折率と基板11の屈折率よりも小さい屈折率とを有する。予備ステップ中、供給源は、保護コーティング12が堆積ステップの最後に所望の屈折率を有するように、堆積した保護コーティング12の組成を制御するために所定の割合の前記材料を含むように準備される。
【0055】
例えば、予備準備ステップはTiとAlの混合物の供給源を得るために行われ、堆積ステップは反応性ガスとしてO2を用いて行われることが考えられる。この例では、堆積ステップの最後に、保護コーティング12はTiO2とAl2O3の混合物で構成される。前の変形実施と同様に、これら2つの金属酸化物は、それぞれ基板11の屈折率よりも高い屈折率と低い屈折率とを有するので、保護コーティング12におけるそれらの割合を制御することにより、コーティング12の屈折率が基板11の屈折率と実質的に等しくなるように制御することができる。供給源は所定の割合の各材料で上流に準備されるので、この変形例は、方法を工業的に、簡単に、迅速かつ安定的に実施するのにより適している。
【0056】
方法のさらに別の変形実施では、保護コーティング12は、堆積ステップ中に、O2又はN2などの使用される反応性ガスに応じて、単一材料が様々な化合物を形成するように選択された単一材料の少なくとも1つの供給源から堆積させることができる。光スペクトルの可視領域で、化合物は、それぞれ基板11の屈折率よりも低い屈折率と基板11の屈折率よりも高い屈折率とを有する。したがって、堆積ステップ中に存在する各ガスの量を制御することによって、保護コーティング12を構成する化合物の化学量論的組成は、保護コーティング12の所望の屈折率を得るために制御される。
【0057】
例えば、予備準備ステップは、Si供給源を得るために行うことができ、堆積ステップは、反応性ガスとしてN2及びO2を用いて行うことができる。この例では、堆積ステップの最後に、保護コーティング12はSiO2及びSi3N4の混合物で構成される。したがって、金属酸化物と同じ金属の窒化物との制御された割合での混合により、コーティング12の屈折率が基板11の屈折率と実質的に同一になるように制御することができる。
【0058】
これらの異なる変形実施は、有利には、保護コーティング12を構成する異なる化合物間の割合を調整することによって、基板11の屈折率に可能な限り正確に対応する有効屈折率を有する保護コーティング12を、高い適応性で、比較的簡単な方法で得ることができる。
【0059】
保護コーティング12を堆積させるステップは、好ましくは、反応性又は非反応性雰囲気中で、物理蒸着PVD法によって、例えば、アーク蒸着、レーザーアブレーション、イオンビームスパッタリング又は電子ビーム又はジュール効果蒸着によって、好ましくは陰極スパッタリングによって行われる。代わりに、堆積ステップは、あらゆる化学蒸着CVD又は原子層蒸着ALD法によって行うことができる。
【0060】
より一般的には、上記の実施及び実施形態は、非限定的な例として説明されていること、したがって他の変形例が可能であることに留意すべきである。
【0061】
特に、上述した方法の変形実施に記載されるもの以外の材料を使用することができる。特に、金属材料の供給源の使用が説明されているが、非金属材料の供給源を使用することも可能である。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部品(10)であって、前記外装部品(10)はセラミック材料で作られた基板(11)を備え、前記基板(11)の表面に透明な無機の保護コーティング(12)が広がり、前記保護コーティング(12)は、前記外装部品(10)が前記基板(11)の固有色と実質的に同一の色を有するように、光スペクトルの可視領域で前記基板(11)の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するように構成され、前記保護コーティング(12)は、300nmから5μmの間で選択される厚さにわたって延在することを特徴とする、外装部品(10)。
【請求項2】
前記保護コーティング(12)は、前記基板(11)の固有色との差がL*a*b*色空間においてデルタE≦10であることを特徴とする色を、前記保護コーティング(12)が前記外装部品(10)に与えるように構成される、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項3】
前記保護コーティング(12)は、前記基板(11)の固有色との差がL*a*b*色空間においてデルタE≦5で特徴付けられる色を、前記保護コーティング(12)が前記外装部品(10)に与えるように構成される、請求項2に記載の外装部品(10)。
【請求項4】
前記保護コーティング(12)の厚さは300nmから1μmである、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項5】
前記保護コーティング(12)は、光スペクトルの可視領域の波長に対して、それぞれ前記基板の屈折率よりも大きい屈折率と前記基板の屈折率よりも小さい屈折率とを有する少なくとも2つの化合物から形成される、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項6】
前記保護コーティング(12)は、TixAlyOzで作られた少なくとも1つの層を含む、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項7】
前記保護コーティング(12)は、SixOyNzで作られた少なくとも1つの層を含む、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項8】
前記基板(11)は、アルミナAl2O3、ジルコニアZrO2又はアルミナジルコニア複合体で作られる、請求項1に記載の外装部品(10)。
【請求項9】
外装部品(10)を製造するための製造方法であって、
・基板(11)の表面を準備するステップと、
・真空蒸着法によって前記表面に透明な無機の保護コーティング(12)を堆積させるステップと
を含み、
前記堆積させるステップは、前記保護コーティング(12)が光スペクトルの可視領域で前記基板(11)の屈折率と実質的に等しい屈折率を有するように選択された少なくとも1つの材料の少なくとも1つの供給源から行われ、前記堆積させるステップはまた、前記保護コーティング(12)が300nmから5μmの厚さを有するように行われることを特徴とする、製造方法。
【請求項10】
前記堆積させるステップは、陰極スパッタリング法によって行われる、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記保護コーティング(12)は、異なる材料の少なくとも2つの供給源から堆積され、前記材料は、前記堆積させるステップ中に、それぞれが、光スペクトルの可視領域で、それぞれ前記基板(11)の屈折率よりも大きい屈折率と前記基板(11)の屈折率よりも小さい屈折率とを有する化合物を形成するように選択され、各供給源のスパッタリング電力は、前記保護コーティング(12)中の各化合物の割合が、前記保護コーティングが前記基板(11)の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するようなものであるように制御される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記保護コーティング(12)は、材料の混合物の少なくとも1つの供給源から堆積され、前記材料は、前記堆積させるステップ中に、それぞれが、光スペクトルの可視領域で、それぞれ前記基板(11)の屈折率よりも大きい屈折率と前記基板(11)の屈折率よりも小さい屈折率とを有する化合物を形成するように選択され、前記供給源は、前記保護コーティング(12)が前記堆積させるステップの最後に前記基板(11)の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するように、所定の割合の前記材料を含むように準備される、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
選択された前記材料はAl及びTiであり、前記堆積させるステップは、前記堆積させるステップの最後に、前記保護コーティング(12)がTixAlyOz型の化合物を形成するためにTiO2とAl2O3の混合物を含むように反応ガスとしてO2を用いて行われる、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記保護コーティング(12)は、前記堆積させるステップ中に、存在するいくつかの反応性ガスと反応することによって単一材料がいくつかの化合物を形成するように選択された前記単一材料の少なくとも1つの供給源から堆積され、前記化合物は、光スペクトルの可視領域で、それぞれ前記基板(11)の屈折率よりも大きい屈折率と前記基板(11)の屈折率よりも小さい屈折率とを有し、前記反応性ガスは、前記堆積させるステップの最後に、前記保護コーティング(12)が前記基板(11)の屈折率と実質的に同一の屈折率を有するように所定の割合で存在する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
前記堆積させるステップは、前記堆積させるステップの最後に、前記保護コーティング(12)がSixOyNz型の化合物を形成するためにSiO2とSi3N4の混合物を含むように、Siで作られた供給源から、反応性ガスとしてO2及びN2を用いて行われる、請求項14に記載の製造方法。
【外国語明細書】