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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159506
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ステータコア
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/16 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02K1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024032246
(22)【出願日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2023073415
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520457971
【氏名又は名称】株式会社デンソープレステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓次
(72)【発明者】
【氏名】武井 俊博
(72)【発明者】
【氏名】久戸瀬 裕一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 寛士
(72)【発明者】
【氏名】大平 将希
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601GA02
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB49
5H601GC12
5H601GC15
5H601GD02
5H601GD07
5H601KK18
5H601KK22
(57)【要約】
【課題】ボルト固定後も適正な状態を維持することのできるステータコアを提供する。
【解決手段】ステータコア21は、筒状のコア本体51と、軸方向に延び固定ボルトが挿通されるボルト挿通孔52aを含み、ボルト挿通孔52aに固定ボルトが挿通された状態で固定ボルトによりハウジングに固定可能となっている複数のボルト固定部52と、を有している。コア本体51は、表層に絶縁樹脂層を有する鋼板よりなるコアシート53が積層された積層体である。ボルト固定部52は、コア本体51とは別の部材で設けられ、コア本体51の径方向の外周面の外側に取り付けられている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ固定対象(14)に対して固定ボルト(19)により固定されるステータコア(21)であって、
筒状のコア本体(51)と、
軸方向に延び前記固定ボルトが挿通される挿通部(52a)を含み、前記挿通部に前記固定ボルトが挿通された状態で当該固定ボルトにより前記ステータ固定対象に固定可能となっている複数のボルト固定部(52)と、を有し、
前記コア本体は、表層に絶縁樹脂層を有する鋼板よりなるコアシート(53)が積層された積層体であり、
前記ボルト固定部は、前記コア本体とは別の部材で設けられ、前記コア本体の径方向の外周面の外側に取り付けられている、ステータコア。
【請求項2】
前記ボルト固定部は、
前記鋼板の積層体でなく、
当該ボルト固定部の軸方向両側に設けられ、前記コア本体に固定された端板部(61)と、
軸方向両側の前記端板部の間に挟まれた状態で設けられ、前記挿通部を形成する挿通体(62)と、を有する、請求項1に記載のステータコア。
【請求項3】
前記ボルト固定部の軸方向両側に設けられた前記各端板部のうち、前記固定ボルトの頭部側となる頭部側端板部は、前記コア本体の軸方向端面と面一となりかつ当該コア本体の前記外周面に当接した状態で配置され、
前記頭部側端板部の軸方向両面のうち前記コア本体の軸方向端面とは逆側で、前記頭部側端板部が前記コア本体に対して溶接により接合されている、請求項2に記載のステータコア。
【請求項4】
前記ボルト固定部は、板材が屈曲された状態で形成され、前記挿通部を形成する筒状部(52b)と、前記筒状部から延び前記コア本体の前記外周面に接合される被接合部(52c)とを有している、請求項1に記載のステータコア。
【請求項5】
前記ボルト固定部は、軸方向の長さが、前記コア本体の軸方向の長さよりも短い、請求項1~4のいずれか1項に記載のステータコア。
【請求項6】
前記ボルト固定部は、軸方向両側の軸方向端面のうち少なくとも一方の軸方向端面が前記コア本体の前記外周面において軸方向のコア中間位置となるようにして当該コア本体に取り付けられており、
前記ボルト固定部において前記コア中間位置となる軸方向端面の位置が、周方向に延びる前記コアシートの積層境界線と一致しない位置になっている、請求項5に記載のステータコア。
【請求項7】
前記ボルト固定部は、軸方向両側の軸方向端面のうち少なくとも一方の軸方向端面が前記コア本体の前記外周面において軸方向のコア中間位置となるようにして当該コア本体に取り付けられており、
前記ボルト固定部において前記コア中間位置となる軸方向端面には、少なくとも前記コア本体の前記外周面と対向する側に、軸方向に凹凸状となる凹凸部が設けられている、請求項5に記載のステータコア。
【請求項8】
前記コア本体は、円環状に形成されたバックヨーク(31)を有し、
前記コア本体の軸方向両側には、前記バックヨークの軸方向端面に当接した状態で、円環状の端板部(71)が固定されており、
軸方向両側の前記端板部の間に、周方向に所定間隔で前記各ボルト固定部が取り付けられている、請求項1に記載のステータコア。
【請求項9】
前記端板部は、前記コア本体に対して径方向の位置決めを行う位置決め部(73)を有している、請求項8に記載のステータコア。
【請求項10】
前記コア本体は、円環状に形成されたバックヨーク(31)と、前記バックヨークから径方向に延び、周方向に所定間隔で設けられた複数のティース(32)とを有し、周方向に隣り合う前記各ティースの間にスロット(33)が形成されているステータコアであって、
前記コアシートは、スロット形成用の開口凹部である複数の第1部分(53a)と、径方向のスロット開口側の反対側において周方向に所定間隔で設けられ、凹部又は凸部よりなる第2部分(53c)とを有し、
前記コア本体には、前記コアシートの前記第2部分により軸方向に直線状に延びる被結合部(51a)が形成されており、
前記ボルト固定部には、軸方向に直線状に延びる結合部(52d)が設けられており、
前記コア本体の前記被結合部に、前記ボルト固定部の前記結合部が結合されることで、前記ボルト固定部が前記コア本体に取り付けられている、請求項1に記載のステータコア。
【請求項11】
前記コア本体は、帯状をなす前記コアシートが螺旋状に積層されたヘリカルコア構造となっており、
前記コアシートは、前記第2部分の周方向の位置を軸方向で一致させた状態で螺旋状に積層されている、請求項10に記載のステータコア。
【請求項12】
前記コア本体において、前記スロットは径方向内側に開口するように形成されており、
前記コアシートには、前記第1部分から径方向外側に延びるスリット(53b)が形成されるとともに、周方向に隣り合う前記スリットの間の中央位置に、前記第2部分としての凹部(53c)が形成されている、請求項11に記載のステータコア。
【請求項13】
前記コア本体は、帯状をなす前記コアシートが螺旋状に積層されたヘリカルコア構造となっており、
前記コア本体の前記外周面に対して前記ボルト固定部が溶接されており、その溶接部が、前記コア本体の軸方向端面において、前記コアシートの長手方向端部を固定するシート固定部を兼ねている、請求項1に記載のステータコア。
【請求項14】
前記ボルト固定部は、軸方向両端の少なくとも一方において、前記コア本体の軸方向端面よりも軸方向に突出した状態で前記コア本体に取り付けられている、請求項1に記載のステータコア。
【請求項15】
前記ボルト固定部は、前記コア本体の前記外周面に対して溶接により接合されており、
前記コア本体の前記外周面に対する前記ボルト固定部の溶接位置が、軸方向において複数に分断されている、請求項1に記載のステータコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、回転電機に用いられるステータコアに関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のステータに関する先行技術として、ステータコアを、電磁鋼板等からなるコアシートを軸方向に多層に積層して積層構造としたものが知られている。また、ステータコアにおいて、ステータ巻線を挿入する複数のスロットを設けるとともに、コア外周面から径方向に突出させてボルト固定部(耳部)を設け、そのボルト固定部において固定ボルトの螺着によりステータコアをハウジング等に固定するようにした構成が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-78197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1を含み既存の技術では、積層構造のステータコアにおいて、スロットが設けられた本体部分と、固定ボルトにより締め付け固定されるボルト固定部(耳部)とが、一体部材として構成されている。つまり、ステータコアの各コアシートが、スロットを形成する環状部分と、ボルト固定部を形成する突出部分とを有しており、そのコアシートの積層体がボルト固定部でボルト締結される構成となっている。この場合、一般にコアシートは表層に絶縁樹脂層を有する鋼板よりなり、ボルト締結後にステータコアに熱ストレスが加わると、熱膨張により膨らんだ鋼板がコアシート表面の絶縁樹脂層を圧縮し、絶縁樹脂層のへたりが生じる。固定ボルトによる締結部分においては、このへたりに起因してボルト軸力の低下が生じ、ステータにおいて振動や騒音が生じることが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボルト固定後も適正な状態を維持することのできるステータコアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
手段1は、
ステータ固定対象に対して固定ボルトにより固定されるステータコアであって、
筒状のコア本体と、
軸方向に延び前記固定ボルトが挿通される挿通部を含み、前記挿通部に前記固定ボルトが挿通された状態で当該固定ボルトにより前記ステータ固定対象に固定可能となっている複数のボルト固定部と、を有し、
前記コア本体は、表層に絶縁樹脂層を有する鋼板よりなるコアシートが積層された積層体であり、
前記ボルト固定部は、前記コア本体とは別の部材で設けられ、前記コア本体の径方向の外周面の外側に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
ステータコアは、コアシートの積層体であるコア本体と、そのコア本体とは別の部材で設けられた複数のボルト固定部とを有し、ボルト固定部は、コア本体の径方向の外周面の外側に取り付けられている。この構成では、ステータコアの製造段階において、コア本体に対して、例えば溶接や係合形状による嵌合といった手段によりボルト固定部の取り付けが行われる。そしてその後、ボルト固定部での固定ボルトの締め付けによりステータコアがステータ固定対象に固定される。この場合、先工程であるコア本体に対するボルト固定部の取り付けの時点で、コア本体のコアシートに、溶接時の溶接熱や嵌合時の摩擦熱による熱ストレスが加わり、コアシートの絶縁樹脂層のへたりが生じる。そのため、後工程であるボルト固定部での固定ボルトの締め付け時において新たに絶縁樹脂層のへたりが生じることが抑制され、ひいては絶縁樹脂層のへたりに起因する軸力の低下を抑制できる。その結果、ステータコアにおいてボルト固定後も適正な状態を維持することができる。
【0008】
手段2では、前記ボルト固定部は、前記鋼板の積層体でなく、当該ボルト固定部の軸方向両側に設けられ、前記コア本体に固定された端板部と、軸方向両側の前記端板部の間に挟まれた状態で設けられ、前記挿通部を形成する挿通体と、を有する。
【0009】
ボルト固定部は、鋼板の積層体でなく、すなわち絶縁樹脂層を持たないため、熱ストレスによる軸力低下は生じない。また、ボルト固定部は、ボルト固定部の軸方向両側に設けられた端板部によってコア本体に取り付けられ、軸方向両側の端板部の間に設けられた挿通体内に、固定ボルトが挿通される構成となっている。この場合、コア本体に対するボルト固定部の取り付けは、軸方向両側に設けられた端板部により行われていればよく、その取り付けが容易となる。また、コア本体の径方向内外の外周面のうちボルト固定部の取り付け側の外周面では、その外周面の外側に挿通体が対向配置されていればよく、コア本体の外周面が冷却液による冷却エリアとなっている場合において冷却液の当たる範囲を広くし、ひいては冷却性を向上させることができる。
【0010】
手段3では、前記ボルト固定部の軸方向両側に設けられた前記各端板部のうち、前記固定ボルトの頭部側となる頭部側端板部は、前記コア本体の軸方向端面と面一となりかつ当該コア本体の前記外周面に当接した状態で配置され、前記頭部側端板部の軸方向両面のうち前記コア本体の軸方向端面とは逆側で、前記頭部側端板部が前記コア本体に対して溶接により接合されている。
【0011】
頭部側端板部(ボルト頭部側の端板部)がコア本体の軸方向端面と面一となる状態でコア本体に対して溶接により接合される場合には、溶接ビード(溶接痕)に起因する軸力の低下が懸念される。この点を鑑み、頭部側端板部を、頭部側端板部の軸方向両面のうちコア本体の軸方向端面とは逆側でコア本体に対して溶接により接合する構成とした。これにより、ボルト固定後における軸力の低下を効果的に抑制できる。
【0012】
手段4では、前記ボルト固定部は、板材が屈曲された状態で形成され、前記挿通部を形成する筒状部と、前記筒状部から延び前記コア本体の前記外周面に接合される被接合部とを有している。
【0013】
上記構成では、ボルト固定部が、板材が屈曲された状態で形成され、固定ボルトが挿通される挿通部を形成する筒状部と、コア本体の外周面に接合される被接合部とを有するものとなっている。この場合、ボルト固定部は、鋼板の積層体でなく、すなわち絶縁樹脂層を持たないため、熱ストレスによる軸力低下は生じない。また、ボルト固定部では、ステータ外側の露出面だけでなく、筒状部と被接合部との間の隙間にも冷却液を流すことができ、冷却性を向上させることができる。
【0014】
手段5では、前記ボルト固定部は、軸方向の長さが、前記コア本体の軸方向の長さよりも短い。
【0015】
コア本体と、周方向に複数のボルト固定部とを別体とした構成では、ボルト固定部の軸長をコア本体の軸長に対して任意に定めることができる。つまり、コア本体を形成するコアシートとして複数種類のコアシートを用意しなくても、ボルト固定部の軸長を容易に変更可能となっている。ボルト固定部の軸方向の長さをコア本体の軸方向の長さよりも短くしたことにより、コア本体の外周面が冷却液による冷却エリアとなっている場合において冷却液の当たる範囲を広くし、ひいては冷却性を向上させることができる。
【0016】
手段6では、前記ボルト固定部は、軸方向両側の軸方向端面のうち少なくとも一方の軸方向端面が前記コア本体の前記外周面において軸方向のコア中間位置となるようにして当該コア本体に取り付けられており、前記ボルト固定部において前記コア中間位置となる軸方向端面の位置が、周方向に延びる前記コアシートの積層境界線と一致しない位置になっている。
【0017】
ボルト固定部の軸方向端面が、コア本体の外周面において軸方向のコア中間位置となっている場合において、ボルト固定部の軸方向端面の位置とコアシートの積層境界線の位置とが一致していると、振動等により、ボルト固定部のコア側角部(エッジ)がコアシートどうしの境界部分に食い込み、コアシートのばらけが生じることが懸念される。この点を鑑み、ボルト固定部においてコア中間位置となる軸方向端面の位置が、軸方向においてコアシートの積層境界線と一致しない位置になるようにした。これにより、コアシートのばらけが生じることが抑制される。
【0018】
手段7では、前記ボルト固定部は、軸方向両側の軸方向端面のうち少なくとも一方の軸方向端面が前記コア本体の前記外周面において軸方向のコア中間位置となるようにして当該コア本体に取り付けられており、前記ボルト固定部において前記コア中間位置となる軸方向端面には、少なくとも前記コア本体の前記外周面と対向する側に、軸方向に凹凸状となる凹凸部が設けられている。
【0019】
ボルト固定部においてコア中間位置となる軸方向端面に、軸方向に凹凸状となる凹凸部を設ける構成とした。この場合、ステータコアの正面視において、ボルト固定部の軸方向端面である凹凸面がコアシートの積層境界線に交差するため、ボルト固定部のコア側角部(エッジ)がコアシートどうしの境界部分に食い込むことが抑制される。これにより、コアシートのばらけが生じることが抑制される。
【0020】
手段8では、前記コア本体は、円環状に形成されたバックヨークを有し、前記コア本体の軸方向両側には、前記バックヨークの軸方向端面に当接した状態で、円環状の端板部が固定されており、軸方向両側の前記端板部の間に、周方向に所定間隔で前記各ボルト固定部が取り付けられている。
【0021】
軸方向両側の端板部を、円環状とし、コア本体におけるバックヨークの軸方向端面に当接した状態で設ける構成とした。また、端板部により、周方向に所定間隔で複数のボルト固定部が連結されている構成とした。これにより、周方向において互いに離間する各ボルト固定部を、所望の間隔で好適に設けることができる。
【0022】
手段9では、前記端板部は、前記コア本体に対して径方向の位置決めを行う位置決め部を有している。
【0023】
上記構成では、円環状の端板部が、コア本体に対して径方向の位置決めを行う位置決め機能を有している。これにより、コア本体に対して各ボルト固定部の位置調整を容易とし、かつ端板部の調心作用により振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0024】
手段10では、
前記コア本体は、円環状に形成されたバックヨークと、前記バックヨークから径方向に延び、周方向に所定間隔で設けられた複数のティースとを有し、周方向に隣り合う前記各ティースの間にスロットが形成されているステータコアであって、
前記コアシートは、スロット形成用の開口凹部である複数の第1部分と、径方向のスロット開口側の反対側において周方向に所定間隔で設けられ、凹部又は凸部よりなる第2部分とを有し、
前記コア本体には、前記コアシートの前記第2部分により軸方向に直線状に延びる被結合部が形成されており、
前記ボルト固定部には、軸方向に直線状に延びる結合部が設けられており、
前記コア本体の前記被結合部に、前記ボルト固定部の前記結合部が結合されることで、前記ボルト固定部が前記コア本体に取り付けられている。
【0025】
コアシートが多層に積層されてなる積層構造のステータコアでは、軸方向においてコアシートのスロット凹部(第1部分)の位置が周方向にずれることが懸念される。この点、上記構成では、コア本体とは別体のボルト固定部を、コアシートのスロット凹部の周方向の位置合わせに用いる構成とした。つまり、コア本体に、コアシートの第2部分により軸方向に直線状に延びる被結合部を形成するとともに、ボルト固定部に、軸方向に直線状に延びる結合部を形成し、コア本体の被結合部に、ボルト固定部の結合部を結合させる構成とした。これにより、コア本体に対するボルト固定部の取り付けに伴い、積層状態のコアシートにおけるスロット凹部の位置合わせが可能となっている。
【0026】
手段11では、前記コア本体は、帯状をなす前記コアシートが螺旋状に積層されたヘリカルコア構造となっており、前記コアシートは、前記第2部分の周方向の位置を軸方向で一致させた状態で螺旋状に積層されている。
【0027】
ヘリカルコア構造のステータコアでは、帯状のコアシートを螺旋状に積層させる際に、スロットの周方向の位置ずれの懸念が高くなる。この点、コアシートを、第2部分の周方向の位置を軸方向で一致させた状態で螺旋状に積層する構成にした。これにより、ヘリカルコア構造のステータコアにおいて、コアシートにおけるスロット凹部の位置合わせを好適に行わせることができる。
【0028】
手段12では、前記コア本体において、前記スロットは径方向内側に開口するように形成されており、前記コアシートには、前記第1部分から径方向外側に延びるスリットが形成されるとともに、周方向に隣り合う前記スリットの間の中央位置に、前記第2部分としての凹部が形成されている。
【0029】
ヘリカルコア構造のステータコアでは、コアシートにおいてスロット凹部(第1部分)から径方向外側に延びるスリットが形成されていることで、直線帯状のコアシートを螺旋状に積層する上で好適な構成を実現できる。また、周方向に隣り合うスリットの間の中央位置に、第2部分としての凹部が形成されているため、コアシートの幅方向両側にそれぞれ凹部やスリットが形成される構成においてコアシートの強度が過度に低下することを抑制できる。
【0030】
手段13では、前記コア本体は、帯状をなす前記コアシートが螺旋状に積層されたヘリカルコア構造となっており、前記コア本体の前記外周面に対して前記ボルト固定部が溶接されており、その溶接部が、前記コア本体の軸方向端面において、前記コアシートの長手方向端部を固定するシート固定部を兼ねている。
【0031】
コア本体の外周面に対してボルト固定部を取り付けるための溶接部が、コアシートの長手方向端部を固定するシート固定部を兼ねる構成とした。これにより、ヘリカルコア構造のコア本体において、コアシートの長手方向端部(すなわち、コアシートの巻き初め端部及び巻き終わり端部)のめくれを抑制し、かつ溶接作業工程における作業性向上を図ることができる。
【0032】
手段14では、前記ボルト固定部は、軸方向両端の少なくとも一方において、前記コア本体の軸方向端面よりも軸方向に突出した状態で前記コア本体に取り付けられている。
【0033】
ボルト固定部を、コア本体の軸方向端面よりも軸方向に突出した状態で取り付ける構成とした。この場合、ステータ固定対象(ハウジング)に対して固定ボルトによりステータが固定される際には、コア本体がステータ固定対象や固定ボルトから離間した状態で固定ボルトによる締結固定が行われる。これにより、ステータコアにおいて軸力低下による騒音等の不都合が効果的に抑制される。
【0034】
手段15では、前記ボルト固定部は、前記コア本体の前記外周面に対して溶接により接合されており、前記コア本体の前記外周面に対する前記ボルト固定部の溶接位置が、軸方向において複数に分断されている。
【0035】
コア本体の外周面に対するボルト固定部の溶接位置が、軸方向において複数に分断されている構成とした。これにより、コア本体においてコアシートの積層方向に生じる渦電流のループが小さくなり、損失低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】回転電機の縦断面図。
図2】ステータの斜視図。
図3】ステータコアの平面図。
図4】導体セグメントとステータコアの一部とを示す斜視図。
図5】ステータコアについて一部を分解して示す斜視図。
図6】コア本体に対してボルト固定部が固定された状態を示す斜視図。
図7】コア本体に対してボルト固定部が固定された状態を示す斜視図。
図8】ステータコアについて一部を分解して示す斜視図。
図9】第2実施形態におけるステータコアについて一部を分解して示す斜視図。
図10】第2実施形態におけるステータコアについて一部を分解して示す斜視図。
図11】ステータコアがボルト固定された状態を示す平面図。
図12】コア本体に対して端板部が固定された状態を示す斜視図。
図13】第3実施形態におけるステータコアの構成を示す斜視図。
図14】ステータコアの構成例を示す正面図。
図15】コア本体及びボルト固定部の正面図。
図16】コア本体及びボルト固定部の正面図。
図17】第4実施形態におけるステータコアの構成を示す斜視図。
図18】第5実施形態においてヘリカルコア構造のステータコアを示す平面図。
図19】コアシートの部分拡大図。
図20】ステータコアにボルト固定部を取り付けた状態を示す斜視図。
図21】コア本体に対するボルト固定部の取り付け部分を拡大して示す斜視図。
図22】コア本体に対するボルト固定部の取り付け部分を拡大して示す斜視図。
図23】ステータコアの溶接部を示す斜視図。
図24】ステータコアの平面図。
図25】ステータコアの平面図。
図26】ステータコアの斜視図。
図27】回転電機の縦断面図。
図28】別例におけるステータコアを示す図。
図29】ステータコアの平面図。
図30】コア本体に対するボルト固定部の取り付け部分を拡大して示す斜視図。
図31】別例におけるステータコアの平面図。
図32】別例におけるステータコアの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る回転電機の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態及び変形例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。この実施形態の回転電機としてのモータは、例えば車両用の電動機や、飛行体用の電動機として用いられる。
【0038】
本実施形態に係る回転電機10は、永久磁石型の同期式多相交流モータであり、インナロータ構造(内転構造)のものとなっている。回転電機10の概要を図1に示す。図1は、回転電機10の回転軸11に沿う方向での縦断面図である。以下の記載では、回転軸11の延びる方向を軸方向とし、回転軸11を中心として放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸11を中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0039】
回転電機10は、回転軸11に固定されたロータ12と、ロータ12を包囲する位置に設けられた円筒状のステータ13と、これらロータ12及びステータ13を収容するハウジング14と、ハウジング14の軸方向の一端側に固定されたカバー15とを備えている。ロータ12及びステータ13は、径方向に互いに対向した状態で同軸に配置されている。ハウジング14は、軸方向の一端側に開口する有底筒状をなしており、その開口端部に、締結具としての複数のボルト16によりカバー15が取り付けられている。ハウジング14及びカバー15には軸受17,18が設けられ、軸受17,18により回転軸11及びロータ12が回転自在に支持されている。
【0040】
ハウジング14には、ステータ13を固定する台座部14aが設けられ、その台座部14aには、軸方向に延びるねじ孔14bが形成されている。ステータ13は、台座部14aの軸方向端面に当接した状態で配置され、固定ボルト19がステータ13に挿通され、かつねじ孔14bにねじ入れられることで、ハウジング14に対して固定されている。ハウジング14が「ステータ固定対象」に相当する。
【0041】
回転電機10では、ハウジング14内において潤滑油等からなる冷却液を用いた冷却が行われるようになっている。例えば、回転電機10が、回転軸11を水平方向に延びる向きとして配置される場合には、図1に示すようにハウジング14の上側から冷却液CLが供給され、冷却液CLがステータ13の外周面を伝って流れることによりステータ13が冷却されるとよい。
【0042】
なお、回転電機10は、3相巻線を有する回転電機であり、永久磁石同期電動機をはじめ、巻線界磁型や誘導機であってもよい。
【0043】
図2は、ステータ13の構成を示す斜視図である。図2に示すように、ステータ13は、円環状をなすステータコア21と、そのステータコア21に巻装されたステータ巻線22とを備えている。ステータ巻線22は、相ごとの相巻線としてU相巻線、V相巻線及びW相巻線を有しており、各相の相巻線の一方の端部に各相の動力線バスバ23が接続されるとともに、他方の端部に中性線バスバ24が接続されている。
【0044】
図3は、ステータコア21の平面図である。ステータコア21は、円環状のバックヨーク31と、バックヨーク31から径方向内側へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース32とを有し、周方向に隣り合うティース32の間にスロット33が形成されている。スロット33は、径方向を長手として延びる開口形状をなし、ステータコア21において周方向に等間隔に設けられている。スロット33は、径方向内側に開口している。そして、各スロット33にステータ巻線22が巻装される構成となっている。本実施形態では、ステータコア21を、磁性体である電磁鋼板を軸方向に積層した積層構造としている。
【0045】
ステータ巻線22は、不図示のインバータを介して電源から電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。本実施形態では、セグメント構造のステータ巻線22を用いることとしており、以下に、図4を用いてその構成を説明する。
【0046】
図4に示すように、導体セグメント40は、略矩形断面(平角断面)の一定太さの電気導体を略U字状に成形した分割導体であり、直線状をなす一対の直線部41と、一対の直線部41どうしを繋ぐように屈曲形成されたターン部42とを有している。一対の直線部41は、ステータコア21の軸方向の厚さよりも長い長さを有している。導体セグメント40は、導体を絶縁被膜により被覆した平角導線を用いて構成されており、各直線部41の先端部は、絶縁被膜が切除されることで、導体が露出した導体露出部43となっている。
【0047】
ステータコア21のスロット33には、複数の導体セグメント40が径方向に一列に並べられた状態で挿入される。本実施形態では、スロット33内に、導体セグメント40の各直線部41を複数層(例えば4層)に積層した状態で収容する構成としている。導体セグメント40において、一対の直線部41は所定のコイルピッチを隔てた2つのスロット33にそれぞれ収容される。なお、スロット33内には、ステータコア21とステータ巻線22(導体セグメント40)との間を電気絶縁する絶縁シート34が設けられている。
【0048】
導体セグメント40の一対の直線部41は、2つのスロット33において径方向位置を1つずらしてそれぞれ収容されている。例えば一方の直線部41が径方向奥側(バックヨーク側)からn番目の位置に収容される場合、他方の直線部41は径方向奥側からn+1番目の位置に収容されるようになっている。
【0049】
ステータコア21のスロット33に対する各導体セグメント40の挿入に際し、各導体セグメント40の直線部41は、ステータコア21の軸方向両端の第1端側及び第2端側のうち第1端側から挿入され、その直線部41の先端部が第2端側から突出する。この場合、ステータコア21の第1端側では、導体セグメント40のターン部42により一方のコイルエンド部が形成される。また、ステータコア21の第2端側では、各直線部41の反ターン部側が周方向に屈曲され、かつ互いに異なる導体セグメント40の直線部41どうしが接続されることにより、他方のコイルエンド部が形成される。
【0050】
本実施形態では、ステータコア21の構成を特徴的なものとしており、以下にはステータコア21の構成について詳しく説明する。図5は、ステータコア21について一部を分解して示す斜視図である。
【0051】
図5に示すように、ステータコア21は、円筒状をなすコア本体51と、コア本体51の径方向外側の外周面から径方向に突出しかつ軸方向に延びるように設けられた複数のボルト固定部52とを有している。コア本体51及びボルト固定部52は、それぞれ別部材で設けられ、接合手段により一体化されている。本実施形態では、コア本体51及びボルト固定部52の軸方向の長さ(軸長)が互いに同寸法になっている。なお、ボルト固定部52は耳部とも称される。
【0052】
コア本体51は、電磁鋼板よりなるコアシート53が積層された積層体である。コアシート53は、例えば電磁鋼板の打ち抜きにより円環状に形成されており、周知のとおり電磁鋼板の表面に絶縁樹脂層を有するものとなっている。コアシート53には、周方向に所定間隔でスロット形成用のスロット凹部53aが形成されており、コアシート53が多層に積層された状態でスロット凹部53aが軸方向に連なることにより、スロット33が形成されるようになっている。つまり、コア本体51では、コアシート53の積層により円環状のバックヨーク31と複数のティース32とが形成され、それらバックヨーク31及びティース32により囲まれてスロット33が形成されている。コア本体51では、カシメや溶接、接着の少なくともいずれかにより積層状態の各コアシート53が固定されている。
【0053】
ボルト固定部52は、ステータコア21をハウジング14に固定する際に固定ボルト19(図1参照)により締め付け固定される被固定部材である。ボルト固定部52は、軸方向に貫通するボルト挿通孔52aを有し、そのボルト挿通孔52aに固定ボルト19を挿通させることが可能となっている。ボルト挿通孔52aが「挿通部」に相当する。ボルト固定部52は、例えば鉄等の金属材料により形成されている。また、ボルト固定部52は、コア本体51とは異なり、多数の板材を軸方向に積層した積層構造ではなく、軸方向一端側から他端側まで一体物となっている。
【0054】
ボルト固定部52は、その外周面のうちコア本体51の外周面に対向する面が、コア本体51の外周面に接合される接合面となっている。その接合面は、凹状の曲面であり、その曲率はコア本体51の外周面と同じであるか、又はコア本体51の外周面よりも大きいとよい。換言すれば、ボルト固定部52の接合面の半径はコア本体51の外周面と同じであるか、又はコア本体51の外周面よりも小さいとよい。この場合、ボルト固定部52の接合面の曲率がコア本体51の外周面と同じであるか、又はコア本体51の外周面よりも大きいことで、ボルト固定部52をコア本体51の外周面に当接させた場合に、ボルト固定部52において少なくとも周方向両端がコア本体51の外周面に接触するようになっている。
【0055】
ボルト固定部52は、コア本体51の外周面に対して、溶接、ロウ付け等の接合手段により取り付けられている。例えば、コア本体51の外周面に対して溶接によりボルト固定部52が接合されている構成では、ボルト固定部52は、コア本体51との境界部分において直線状に溶接が行われているとよい。ただし、軸方向の複数箇所の溶接によりボルト固定部52がコア本体51に取り付けられていてもよい。このとき、溶接時の溶接熱によって、コア本体51には予め熱ストレスが加わり、絶縁樹脂層にはへたりが生じた後の状態となっている。
【0056】
図1に示すように、回転電機10では、ボルト固定部52のボルト挿通孔52aに固定ボルト19が挿通された状態で、固定ボルト19の螺着によりステータ13がハウジング14に固定される。この場合、絶縁樹脂層のへたりが生じた後にボルト軸力が加わるため、コアシート表面の絶縁樹脂層のへたりに起因する軸力の低下が抑制される。これにより、ステータコア21においてボルト固定後も適正な状態が維持される。
【0057】
コア本体51に対してボルト固定部52の溶接が行われる溶接範囲を図6に示す。図6では、ボルト固定部52においてコア本体51との周方向の境界部分で溶接が行われることで、ボルト固定部52がコア本体51に固定されている。この場合、ボルト固定部52において、コア本体51の軸方向両端の間でありかつ軸方向に直線状に連続する範囲で溶接が行われる構成となっている(図のY1)。なお、ボルト固定部52の周方向両側でY1の溶接がそれぞれ行われているとよい。ボルト固定部52において、コア本体51との径方向の境界部分で溶接が行われる構成であってもよい(図のY2)。
【0058】
図6の場合、ボルト固定部52とコア本体51との溶接部Y1が、コア積層方向においてコアシート53どうしを接合する接合部を兼ねていてもよい。
【0059】
図6の構成に代えて、図7(a)の構成にすることも可能である。図7(a)では、ボルト固定部52とコア本体51との周方向の境界部分において、軸方向に分断された複数箇所でそれぞれ溶接が行われている(図のY3)。つまり、ボルト固定部52の軸方向両端の間において、軸方向に溶接箇所と非溶接箇所とが交互に並ぶ構成となっている。また、図7(a)では、ボルト固定部52の周方向両側で、軸方向に並ぶ溶接箇所と非溶接箇所とが互い違いに(すなわち千鳥状に)配置されている。また、ボルト固定部52において周方向一方の側の溶接範囲と周方向他方の側の溶接範囲とが軸方向に一部分ずつ重複しているとよい。
【0060】
その他、図7(b)のように、ボルト固定部52とコア本体51との周方向の境界部分において、軸方向に並ぶように複数の点溶接が行われる構成とすることも可能である。
【0061】
ボルト固定部52は、図8に示す構成であってもよい。図8では、ボルト固定部52が鉄等からなる板材が屈曲されて形成されている。具体的には、ボルト固定部52は、固定ボルト19を挿通させるボルト挿通孔52aを形成する筒状部52bと、筒状部52bから延び、コア本体51の外周面に接合される被接合部52cとを有している。この場合、ボルト固定部52は、被接合部52cとコア本体51との当接部分の溶接により、コア本体51に取り付けられている。
【0062】
上記図8の構成では、ボルト固定部52において、ステータ外側の露出面だけでなく、筒状部52bと被接合部52cとの間の隙間にも冷却液が流れることになり、冷却性が高められる。
【0063】
回転電機10の製造時には、以下の手順で作業が行われるとよい。まずは円環状の多数のコアシート53を用意する。このとき、各コアシート53は、径方向外側に突出する突出部分(耳部分)を有しておらず、突出部分を有する場合に比べて、材料歩留まりの向上が可能なものとなっている。そして、多数のコアシート53を積層するとともに、積層状態の各コアシート53に対してカシメや溶接、接着の少なくともいずれかを施してコアシート積層体を形成する。一方で、図5又は図8に示す複数のボルト固定部52を、鋼材の切削加工や鋼板材のプレス加工等により形成しておく。
【0064】
そして、コア本体51(コアシート積層体)の外周面の外側において、周方向に所定間隔を隔てた複数の取り付け位置に、溶接やロウ付け等によりボルト固定部52を固定する。ボルト固定部52の固定時には、コア本体51に熱ストレスが加わり、コアシート53の絶縁樹脂層のへたりが生じる。また、ステータコア21に対してステータ巻線22を巻装するとともに、コイルエンドの配線部として動力線バスバ23や中性線バスバ24を接続する。これにより、ステータ13が完成する。
【0065】
その後、ハウジング14に対して、ステータ13を複数の固定ボルト19により固定する。そのボルト固定時には、各ボルト固定部52において固定ボルト19の締め付けによる軸力が生じる。この場合、仮に各ボルト固定部52が鋼板の積層体により構成されていると、換言すれば、ボルト固定部52がコア本体51と共にコアシート53により形成されていると、鋼板表面の絶縁層が熱膨張により圧縮され、絶縁層のへたりに起因する軸力低下が懸念される。しかしながら、本実施形態では、コア本体51とボルト固定部52とを別体としたため、コア本体51とボルト固定部52とが溶接等で接合される際の入熱によりコアシート表面の絶縁樹脂層のへたりが予め生じた状態となっており、ボルト固定後の軸力低下が抑止される。
【0066】
上記実施形態によれば、以下の優れた効果を有する。
【0067】
ステータコア21において、コア本体51と複数のボルト固定部52とを別体として、コア本体51の径方向の外周面の外側にボルト固定部52を取り付ける構成とした。この場合、固定ボルト19の締め付けによりステータコア21がハウジング14(ステータ固定対象)に取り付けられていても、固定ボルト19の締め付け軸力の低下が抑止される。これにより、ステータコア21においてボルト固定後も適正な状態を維持することができる。
【0068】
ボルト固定部52を、多数の板材を軸方向に積層した積層構造でない構成とした。これにより、コア本体51とは別体のボルト固定部52について軸力低下を抑制でき、ステータコア21の安定な固定状態を維持することができる。
【0069】
コア本体51の外周面に対するボルト固定部52の溶接位置が、軸方向において複数に分断されている構成とした。これにより、コア本体51においてコアシート53の積層方向に生じる渦電流のループが小さくなり、損失低減を図ることができる。
【0070】
図8に示す構成のステータコア21では、ボルト固定部52が、板材が屈曲された状態で形成され、固定ボルト19が挿通される筒状部52bと、コア本体51の外周面に接合される被接合部52cとを有するものとなっている。この場合、ボルト固定部52では、ステータ外側の露出面だけでなく、筒状部52bと被接合部52cとの間の隙間にも冷却液を流すことができ、冷却性を向上させることができる。また、ボルト固定部52を板材による成形体とすることで、熱容量を小さくすることができ、コア本体51への溶接接合時における入熱過多による歪を低減することができる。
【0071】
以下に、他の実施形態を、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0072】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態におけるステータコア21の構成を示す斜視図である。図9に示すステータコア21では、ボルト固定部52は、ボルト固定部52の軸方向一端側及び軸方向他端側に設けられた一対の端板部61と、軸方向両側の端板部61の間に挟まれた状態で設けられた挿通体62とを有している。挿通体62は筒体形状をなしており、その中空部は、固定ボルト19を挿通させる挿通部(ボルト挿通孔52a)となっている。端板部61は、その一部がコア本体51に固定された状態で、コア本体51から径方向外側に突出している。各端板部61は、コア本体51の外周面に対して溶接等により接合されている。各端板部61の溶接は、コア本体51との境界部において周方向に行われているとよい。
【0073】
ステータコア21の製造時には、コア本体51及び端板部61の溶接固定と、端板部61及び挿通体62の溶接固定とが行われる。このとき、コア本体51を軸方向に圧縮した状態で、コア本体51に対して端板部61及び挿通体62が溶接固定されるとよい。なお、これら各部材を固定する手順は任意であり、コア本体51に対して端板部61を固定した後に、軸方向両側の端板部61の間に挿通体62を固定する手順であってもよいし、各端板部61と挿通体62とを固定した後に、コア本体51に対して各端板部61を固定する手順であってもよい。
【0074】
図9に示す構成のステータコア21がハウジング14に固定される場合には、一方の端板部61がハウジング14の台座部14aに当接した状態で、他方の端板部61側から固定ボルト19が挿通され、ボルト締結が行われる。
【0075】
以上本実施形態の構成では、コア本体51に対するボルト固定部52の取り付けは、軸方向両側に設けられた端板部61により行われていればよく、その取り付けが容易となる。また、ボルト固定部52の挿通体62は、コア本体51の外周面の外側に対向配置されていればよく、コア本体51の外周面が冷却液による冷却エリアとなっている場合において冷却液の当たる範囲を広くし、ひいては冷却性を向上させることができる。また、ボルト固定部52の熱容量を小さくし、コア本体51への溶接接合時における入熱過多による歪を低減することができる。
【0076】
また、ボルト固定部52において、挿通体62の長さを変更することで、軸長寸法の異なるステータ13にも簡易に対応させることができ、設計変更に伴うコストアップを抑制できる。
【0077】
なお、挿通体62の形態を変更することが可能であり、例えば図10に示すように、挿通体62を、横断面でU字形状をなすものとしてもよい。
【0078】
ここで、上述した図9に示す構成では、ボルト固定部52の軸方向両側にそれぞれ端板部61が設けられており、軸方向両側の端板部61のうち一方(例えば図の上側の端板部61)が、固定ボルト19の頭部側となる頭部側端板部61Aである。頭部側端板部61Aは、コア本体51の軸方向端面と面一となりかつコア本体51の外周面に当接した状態で配置されている。この場合、頭部側端板部61Aにおいて図の上面側で溶接が行われると、その上面側に溶接ビード(溶接痕)が形成される。
【0079】
また、図11に示すように、ステータコア21の固定に用いられる固定ボルト19の頭部の一部が、コア本体51の軸方向端面に対して軸方向に対向することが考えられる。固定ボルト19は、例えば六角穴付きボルトであり、頭部に一体に設けられた座金部分の座面がコア本体51の軸方向端面に対向している。つまり、固定ボルト19の座面がボルト固定部52からはみ出し、コア本体51側にかかっている。この場合、溶接ビードに起因して、固定ボルト19の締結後に軸力が低下することが懸念される。
【0080】
その対策として、図12に示すように、頭部側端板部61Aの軸方向両面のうちコア本体51の軸方向端面とは逆側で、頭部側端板部61Aがコア本体51に対して溶接により接合されるようになっているとよい(図のY4)。頭部側端板部61Aにおいてコア本体51の軸方向端面と面一になる側では溶接は行われていない。この場合、端板部61の溶接固定により溶接ビードが形成されても、軸力低下の発生が抑制される。つまり、ボルト固定後における軸力の低下を効果的に抑制することができる。
【0081】
(第3実施形態)
本実施形態では、ボルト固定部52における軸方向の長さを、コア本体51の軸方向の長さよりも短くした構成としている。図13(a)~(c)は、第3実施形態におけるステータコア21の構成を示す斜視図である。
【0082】
図13(a)では、ボルト固定部52がコア本体51の外周面に接合される構成において、ボルト固定部52の軸長がコア本体51の軸長よりも短くなっている。図13(b)では、ボルト固定部52が、板材の屈曲により形成されている構成(図8参照)において、ボルト固定部52の軸長がコア本体51の軸長よりも短くなっている。図13(c)では、ボルト固定部52が、軸方向両側の一対の端板部61と、その一対の端板部61の間の挿通体62とを有する構成(図9図10参照)において、ボルト固定部52の軸長がコア本体51の軸長よりも短くなっている。
【0083】
コア本体51とボルト固定部52とを別体とした構成では、ボルト固定部52の軸長をコア本体51の軸長に対して任意に定めることができる。つまり、コア本体51の軸長に応じたボルト固定部52を必ずしも用意する必要はなく、ボルト固定部52の軸長はコア本体51の軸長にかかわらず固定としたり、必要に応じて可変させたりと、容易に変更可能となっている。ボルト固定部52の軸長をコア本体51の軸長よりも短くしたことにより、コア本体51の外周面が冷却液による冷却エリアとなっている場合において冷却液の当たる範囲を広くし、ひいては冷却性を向上させることができる。
【0084】
ボルト固定部52における軸方向の長さを、コア本体51の軸方向の長さよりも短くした構成は、図14(a)~(c)のいずれかであるとよい。
【0085】
図14(a)では、ボルト固定部52の軸方向両側の端面のうちボルト頭部側となる端面がコア本体51の軸方向端面に面一となる状態で、ボルト固定部52がコア本体51に取り付けられている。図14(b)では、ボルト固定部52の軸方向両側の端面のうちボルト頭部とは逆側となる端面がコア本体51の軸方向端面に面一となる状態で、ボルト固定部52がコア本体51に取り付けられている。図14(c)では、ボルト固定部52の軸方向両側の端面がコア本体51の軸方向端面に面一となっておらず、軸方向においてコア本体51の中間部分となる位置にボルト固定部52が取り付けられている。なお、図14(a)~(c)では、固定ボルト19の頭部が、コア本体51に干渉しない大きさとなっている。
【0086】
上記図14(a)~(c)の構成では、ボルト固定部52は、その軸方向端面がコア本体51の外周面において軸方向のコア中間位置となるようにコア本体51に取り付けられている。この場合、ボルト固定部52の軸方向端面の位置とコアシート53の積層境界線の位置とが一致していると、振動等により、ボルト固定部52のコア側角部(エッジ)がコアシートどうしの境界部分に食い込み、コアシート53のばらけが生じることが懸念される。その対策として、以下の構成が考えられる。図15及び図16は、コア本体51及びボルト固定部52の正面図である。
【0087】
図15では、ボルト固定部52の軸方向端面52xの位置が、周方向に延びるコアシート53の積層境界線と一致しない位置になっている。これにより、ボルト固定部52のコア側角部(エッジ)がコアシートどうしの境界部分に食い込むことが抑制され、ひいてはコアシート53のばらけが生じることが抑制される。
【0088】
また、図16(a)~(c)では、ボルト固定部52の軸方向端面52xにおいて、少なくともコア本体51の外周面と対向する側に、軸方向に凹凸部を形成する凹部52yが設けられている。この場合、ステータコア21の正面視において、ボルト固定部52の軸方向端面52xである凹凸面がコアシート53の積層境界線に交差するため、ボルト固定部52のコア側角部(エッジ)がコアシートどうしの境界部分に食い込むことが抑制される。これにより、コアシート53のばらけが生じることが抑制される。
【0089】
ボルト固定部52の軸方向端面52xに設けられた凹部52yの形状は任意である。例えば図16(a)では、凹部52yが楔形の凹部形状をなしている。図16(b)では、半円状の凹部形状をなしている。図16(c)では、四角形状の凹部形状をなしている。いずれにしろ、凹部52yによって凹凸部となっているボルト固定部52の軸方向端面52xは、固定ボルト19の頭部が着座可能となっていること、凹凸面がコアシート53の積層境界線に交差すること、コア本体51の外周面と対向する側において一部が欠落していること、を満たすものであればよい。
【0090】
なお、図15及び図16の構成は、図14(a)~(c)に示す各構成に適用できる。つまり、ボルト固定部52においてボルト頭部側及びその反対側のいずれにおいても適用可能である。また、図15及び図16の構成は、図13(a)及び(c)に示す各構成に適用できる。なお、図13(b)では、被接合部52cの軸方向端部の位置が、周方向に延びるコアシート53の積層境界線と一致しない位置になっているとよい。
【0091】
(第4実施形態)
図17(a),(b)は、第4実施形態におけるステータコア21の構成を示す斜視図である。
【0092】
図17に示すステータコア21では、コア本体51の軸方向一端側及び軸方向他端側に、バックヨーク31の軸方向端面に当接した状態で、円環状の端板部71が固定されている。端板部71は、周方向に所定間隔で、径方向外側に突出する複数の突出部72を有している。そして、軸方向両側の端板部71の間、詳しくは軸方向両側の突出部72の間に、それぞれ筒体からなるボルト固定部52が固定されている。軸方向両側の突出部72の間にボルト固定部52が固定されることで、ステータコア21において周方向に所定間隔で各ボルト固定部52が取り付けられる。各突出部72には貫通孔72aが形成されており、ボルト固定部52が取り付けられた状態では、端板部71側の貫通孔72aとボルト固定部52のボルト挿通孔52aとが連通されている。
【0093】
また、端板部71には、周方向の複数箇所に、コア本体51に対して径方向の位置決めを行う位置決め部73が設けられている。位置決め部73は、端板部71における円板部分の一部が軸方向に屈曲された屈曲部として形成されており、各位置決め部73がコア本体51の外周面に係合することで、端板部71の径方向位置が定められるようになっている。端板部71は、固定ボルト19の締結によりコア本体51の軸方向両側に対してそれぞれ固定される。ただしこの場合、軸方向両側の端板部71の間には挿通体であるボルト固定部52が介在しており、コア本体51に対する過剰な締め付けが生じないようになっている。
【0094】
以上本実施形態では、軸方向両側の端板部71を、円環状とし、コア本体51におけるバックヨーク31の軸方向端面に当接した状態で設ける構成とした。また、端板部71により、周方向に所定間隔で複数のボルト固定部52が連結されている構成とした。これにより、周方向において互いに離間する各ボルト固定部52を、所望の間隔で好適に設けることができる。
【0095】
また、円環状の端板部71が、コア本体51に対して径方向の位置決めを行う位置決め機能を有している。これにより、コア本体51に対して各ボルト固定部52の位置調整を容易とし、かつ端板部71の調心作用により振動や騒音の発生を抑制することができる。
【0096】
(第5実施形態)
本実施形態では、ステータコア21をヘリカルコア構造としている。図18は、ヘリカルコア構造のステータコア21を示す平面図である。
【0097】
ステータコア21は、帯状のコアシート53が螺旋状に積層されて構成されている。コアシート53には、周方向に所定間隔でスロット形成用のスロット凹部53aが形成されており、コアシート53が螺旋状に積層されることで、各スロット凹部53aが軸方向に連なりスロット33が形成されるようになっている。スロット33は、径方向内側に開口している。また、コアシート53には、スロット凹部53aから径方向外側に延びるスリット53bが形成されている。
【0098】
図19は、コアシート53の部分拡大図である。図19(a)はコアシート53を螺旋状に曲げる前の状態を示し、図19(b)はコアシート53を螺旋状に曲げた後の状態を示している。図19(a)の状態では、スリット53bは、スロット凹部53a側が拡がった略V字状になっている。そして、図19(b)に示すように、コアシート53を螺旋状に曲げることで、スリット53bが閉じるよう変形する。
【0099】
図20は、本実施形態のステータコア21に対して3つのボルト固定部52を取り付けた状態を示す斜視図である。また、図21(a),(b)は、コア本体51に対するボルト固定部52の取り付け部分を拡大して示す斜視図である。
【0100】
本実施形態では、コア本体51の外周面に、軸方向に直線状に延びる溝部51aが設けられるとともに、ボルト固定部52に、軸方向に直線状に延びる突条部52dが設けられている。この場合、コアシート53には、径方向におけるスロット開口側の反対側(すなわち外周側)に所定間隔で複数の外周凹部53cが設けられており、コアシート53の積層により、コアシート53の外周凹部53cが軸方向に連なり溝部51aが形成されている。
【0101】
なお、コアシート53において、スロット凹部53aが、スロット形成用の開口凹部である「第1部分」に相当し、外周凹部53cが「第2部分」に相当する。コア本体51の溝部51aが「被結合部」に相当する。また、ボルト固定部52の突条部52dが「結合部」に相当する。
【0102】
コアシート53には、周方向に所定間隔で外周凹部53cが設けられており、外周凹部53cの周方向の位置を軸方向で一致させた状態で、コアシート53が螺旋状に積層されている。本実施形態では、ステータコア21のスロット数は例えば48であり、16個のスロット凹部53aごとに外周凹部53cが設けられている。ボルト固定部52の数をmとする場合、コア本体51で周方向に「360°/(m×n)」(nは自然数)となる間隔で外周凹部53cが設けられているとよい。
【0103】
そして、コア本体51の溝部51aにボルト固定部52の突条部52dを圧入等により組み付けることで、コア本体51に対してボルト固定部52が取り付けられている。すなわち、コア本体51とボルト固定部52とは凹凸の嵌合により結合されている。この場合、ボルト固定部52の取り付けにより、周方向においてコアシート53のスロット凹部53aの位置合わせが行われるようになっている。なお、ステータ13の製造時には、帯状のコアシート53を螺旋状に積層して円筒状のコア本体51を仮形成した後、コア本体51に対してボルト固定部52を取り付けることでスロット33の位置調整を行い、その後、軸方向のコアシート固定として、積層状態のコアシート53に対してカシメや溶接、接着の少なくともいずれかを施すとよい。
【0104】
コア本体51とボルト固定部52との嵌合による結合時には、摩擦熱によってボルト固定部52に熱ストレスが加わり、コアシート表面の絶縁樹脂層にへたりが生じた状態となる。そのため、ボルト固定部52でのボルト締結時に絶縁樹脂層のへたりが生じた後にボルト軸力が加わることとなり、コアシート表面の絶縁樹脂層のへたりに起因する軸力の低下が抑制される。
【0105】
図21(a),(b)に示すように、コア本体51には、周方向に隣り合うスリット53bの間の中央位置に溝部51aが形成されている。コアシート53の構成で言えば、スロット凹部53aから径方向外側に延びるスリット53bが形成され、周方向に隣り合うスロット凹部53aの間の中央位置に外周凹部53cが形成されている。ボルト固定部52の突条部52dは、コア本体51の溝部51aと同じ形状となっており、溝部51aに対して突条部52dが圧入嵌合により組み付けられている。溝部51a及び突条部52dは、それぞれ径方向内側ほど幅広となる楔形状をなしているとよい。また、溝部51aに対して突条部52dを挿入し、かつ溶接やロウ付け、接着(加熱を伴う接着)により固定を行うことで、ボルト固定部52をコア本体51に取り付ける構成であってもよい。溶接やロウ付け等を行わず、圧入のみによりボルト固定部52をコア本体51に取り付ける構成であってもよい。
【0106】
図22(a),(b)に示すように、各ボルト固定部52に突条部52dを2つずつ設け、それら各突条部52dを、コア本体51側の2つの溝部51aに組み付ける構成であってもよい。
【0107】
積層構造のステータコア21では、軸方向においてコアシート53のスロット凹部53aの位置が周方向にずれることが懸念される。この点、上記構成では、コア本体51とは別体のボルト固定部52を、コアシート53のスロット凹部53aの周方向の位置合わせに用いる構成とした。つまり、コア本体51に、コアシート53の外周凹部53cにより軸方向に直線状に延びる溝部51aを形成するとともに、ボルト固定部52に、軸方向に直線状に延びる突条部52dを形成し、コア本体51の被結合部に、ボルト固定部52の結合部を結合させる構成とした。これにより、コア本体51に対するボルト固定部52の取り付けに伴い、積層状態のコアシート53におけるスロット凹部53aの位置合わせが可能となっている。
【0108】
ヘリカルコア構造のステータコア21では、帯状のコアシート53を螺旋状に積層させる際に、スロット33の周方向の位置ずれの懸念が高くなる。この点、コアシート53を、外周凹部53cの周方向の位置を軸方向で一致させた状態で螺旋状に積層する構成にした。これにより、ヘリカルコア構造のステータコア21において、コアシート53におけるスロット凹部53aの位置合わせを好適に行わせることができる。
【0109】
ヘリカルコア構造のステータコア21では、コアシート53においてスロット凹部53aから径方向外側に延びるスリット53bが形成されていることで、直線帯状のコアシート53を螺旋状に積層する上で好適な構成を実現できる。また、周方向に隣り合うスリット53bの間の中央位置に外周凹部53cが形成されているため、コアシート53の幅方向両側にそれぞれ凹部53a,53cやスリット53bが形成される構成においてコアシート53の強度が過度に低下することを抑制できる。
【0110】
図23に示すように、ヘリカルコア構造のステータコア21において、コア本体51の外周面に対してボルト固定部52を取り付けるための溶接部が、コア本体51の軸方向端面においてコアシート53の長手方向端部を固定するシート固定部を兼ねている構成としてもよい。図23において、Y5は、コア本体51に対するボルト固定部52の溶接部であり、Y6は、コアシート53の長手方向端部Eの溶接部である。これにより、ヘリカルコア構造のコア本体51において、コアシート53の長手方向端部(すなわち、コアシート53の巻き初め端部及び巻き終わり端部)のめくれを抑制し、かつ溶接作業工程における作業性向上を図ることができる。
【0111】
また、図19に示すコアシート53を用いる構成において、各スリット53bとボルト固定部52との周方向の位置関係を以下のように規定してもよい。図24では、周方向において、ボルト固定部52の周方向両端の位置とスリット53bの位置とが略一致している。この場合、ステータコア21の円環剛性が低下する。そのため、冷熱応力等によりステータコア21に対して相対的にボルト固定部52が移動した際の発生応力を緩和することができる。
【0112】
また、図25では、周方向において、ボルト固定部52の周方向両端の位置とスリット53bの位置とが一致していない。具体的には、ボルト固定部52は、その周方向両端の位置が、周方向に隣り合うスリット53bの間において略中心位置になるように配置されている。この場合、ヘリカルコアの剛性が低い部分において、ボルト固定部52の周方向両端が重ならず、応力集中を抑制することができる。
【0113】
ヘリカルコア構造のステータコア21と、図17で説明した円環状の端板部71とを組み合わせた構成とすることも可能である。この場合、図26に示すように、端板部71は、スリット53bの根元部分に設けられた円穴53dに挿入される複数の突起部81を有している。コア本体51の軸方向端面に端板部71が組み付けられた状態では、コア本体51側の円穴53dに端板部71側の突起部81が挿入される。これにより、コア本体51に対する端板部71の位置決め、換言すればボルト固定部52の位置決めが可能になっている。なお、突起部81は、複数の円穴53dごとに設けられているとよい。端板部71の突起部81がスロット33に挿入される構成とすることも可能である。
【0114】
(変形例)
上記実施形態において、その構成の一部を変更してもよい。以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0115】
・ボルト固定部52は、コア本体51の軸方向両端の少なくとも一方において、コア本体51の軸方向端面よりも軸方向に突出した状態で取り付けられる構成であるとよい。具体的には、図27に示す構成では、ボルト固定部52の下端側がハウジング14の台座部14aに当接し、ボルト固定部52の上端側がボルト頭部に当接している。また、ステータコア21において、ボルト固定部52の軸方向の長さが、コア本体51の軸方向の長さよりも長い構成となっている。この場合、ボルト固定部52の下端部は、コア本体51の下側端面よりも下方に突出しているため、コア本体51の下側端面が台座部14aに接触しない状態となっている(図のG2)。また、ボルト固定部52の上端部は、コア本体51の上側端面よりも上方に突出しているため、コア本体51の上側端面がボルト頭部に接触しない状態となっている(図のG1)。
【0116】
上記構成では、コア本体51がハウジング14や固定ボルト19から離間した状態で、ステータ固定対象であるハウジング14に対して固定ボルト19による締結固定が行われる。これにより、コア本体51における軸力の低下が効果的に抑制される。なお、ボルト固定部52は、ボルト固定部52の下端部がコア本体51の下側端面よりも下方に突出する構成と、ボルト固定部52の上端部がコア本体51の上側端面よりも上方に突出する構成とのいずれか一方のみを有するものであってもよい。
【0117】
・上記第5実施形態では、コア本体51とボルト固定部52とを凹凸の嵌合により結合する構成において、コア本体51側に凹部(溝部51a)を設け、ボルト固定部52側に凸部(突条部52d)を設けたが、これを変更してもよい。すなわち、コア本体51側に凸部を設け、ボルト固定部52側に凹部を設けてもよい。
【0118】
また、ヘリカルコア構造でなく、多数の円環状のコアシート53を積層するコア構造において、コア本体51とボルト固定部52とを凹凸の嵌合により結合する構成としてもよい。
【0119】
・コアシート53においてスロット凹部53aごとにスリット53bが設けられている構成では、図28(a)に示すように、コア本体51の外周が多角形となる。例えば48個のスロット33を有するコア本体51では、コア本体51が48角形の筒体となる。この場合、図28(b)に示すように、ボルト固定部52の接合面を、コア本体51の外周面に合わせて多面形状とするとよい。この場合、ボルト固定部52において周方向の位置決め効果が得られる。
【0120】
・コア本体51は、周方向に複数に分割可能な分割コアにより構成されていてもよい。具体的には、図29に示すように、コア本体51は、複数の分割コア91を有している。分割コア91は、それぞれ電磁鋼板が軸方向に積層されてなる鋼板積層体である。各分割コア91は、ステータ巻線が巻回されるティース92を有している。コア本体51は、各分割コア91の周方向の端面どうしが互いに接合されることにより円筒状に形成されている。
【0121】
コア本体51には、周方向に隣り合う2つの分割コア91に跨がるようにして、ボルト固定部52が取り付けられている。ボルト固定部52は、コア本体51の分割コア91に対して例えば溶接により固定されている。つまり、ボルト固定部52は、周方向に並ぶ2つの分割コア91の見切り境界線を跨ぐ位置に配置され、それら2つの分割コア91に対してそれぞれ溶接等により固定されている。この場合、ボルト固定部52は、周方向に並ぶ分割コア91どうしを結合する役目を兼ねている。
【0122】
コア本体51に対するボルト固定部52の固定構造は、図30(a),(b)に示す構成となっていてもよい。図30(a),(b)の構成では、周方向に隣り合う各分割コア91に、軸方向に延びる溝部93がそれぞれに形成されている。一方、ボルト固定部52には、軸方向に延びる突条部52dが2箇所に形成されている。そして、分割コア91の溝部93に対して突条部52dが圧入嵌合等により組み付けられている。溝部93に対して突条部52dが挿入された状態で、溶接やロウ付け、接着(加熱を伴う接着)が行われることで、ボルト固定部52が各分割コア91に固定される構成であってもよい。
【0123】
・コア本体51において周方向に設けられる複数のボルト固定部52は、周方向に等間隔に配置される以外に、周方向に不等間隔に配置される構成であってもよい。本実施形態では、既述のとおりコア本体51とボルト固定部52とを別部材により構成しており、各ボルト固定部52の取り付け位置の変更が容易に実現できるものとなっている。
【0124】
・ステータコア21において、コア本体51に取り付けられる複数のボルト固定部52が、異なる形状又は異なる大きさとなるものを含む構成であってもよい。例えば、ボルト固定部52において軸方向の長さ寸法、周方向の幅寸法、ボルト挿通孔52aの孔径、コア外周面からのボルト挿通孔52aの径方向位置の少なくともいずれかが、全てのボルト固定部52で同一になっていなくてもよい。この場合、ハウジング14に対してステータコア21が組み付けられる組み付け構造において組み付け形態の自由度を向上させることができる。
【0125】
・上記実施形態では、ステータコア21が複数のボルト固定部52を有する構成において、それら複数のボルト固定部52を全てコア本体51とは別体の構成としたが、これを変更してもよい。例えば、複数のボルト固定部52のうち一部のボルト固定部52をコア本体51と一体部材で設けるとともに、残りのボルト固定部52をコア本体51と別部材で設ける構成とする。具体的には、図31に示すように、4つのボルト固定部52を有するステータコア21において、4つのボルト固定部52のうち2つのボルト固定部52をコア本体51と一体部材で設けるとともに、残り2つのボルト固定部52をコア本体51と別部材で設ける構成とする。4つ(複数)のボルト固定部52のうち1つのみをコア本体51と一体部材とし、残り全てをコア本体51と別部材とすることも可能である。
【0126】
・ボルト固定部52は、軸方向において複数(数個程度)に分割可能に構成されていてもよい。
【0127】
・コア本体51とボルト固定部52とで、材質、熱処理、機械加工、板厚の少なくとも1つが異なっている構成としてもよい。例えば、コア本体51には電磁鋼板を用い、ボルト固定部52には一般鋼板を用いる構成とする。これにより、高価な電磁鋼板の使用量削減、ボルト固定部52の強度、靭性向上等を実現することができる。
【0128】
・ステータコア21として、図32に示すカーリングコア構造のステータコアを用いることも可能である。この場合、コア製造時には、ステータコア21の円周分の長さで切断された複数のコアシート53(電磁鋼板)が積層されるとともに、その積層体が円筒状に曲げ成形される。そして、積層体の端部どうしが溶接等により接合される。
【0129】
・上記実施形態では、ステータ巻線22を、導体セグメント40を用いたセグメント構造としたが、これを変更してもよい。例えば、ステータコア21の各スロット33に対して、連続線を波巻きにより巻装することでステータ巻線22を形成する構成であってもよい。
【0130】
・コア本体51は、コアシート53として電磁鋼板以外の鋼板を用いたものであってもよい。コア本体51は、例えばSPCC(Steel Plate Cold Commercial)を積層した積層体であってもよい。
【0131】
・ステータコア21は、ハウジング14以外のステータ固定対象に固定されるものであってもよい。例えば、車両等の移動体に設けられる回転電機において、移動体のフレーム等に固定されるものであってもよい。
【0132】
・本開示の技術をアウタロータ構造(外転構造)の回転電機に適用することも可能である。この場合、ステータコアにおいて、コア本体における径方向内側の外周面の外側(すなわちコア本体の中空部側)にボルト固定部が取り付けられているとよい。
【符号の説明】
【0133】
14…ハウジング、19…固定ボルト、21…ステータコア、51…コア本体、52…ボルト固定部、52a…ボルト挿通孔、53…コアシート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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