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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159515
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】縫糸
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/44 20060101AFI20241031BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20241031BHJP
   A41D 27/24 20060101ALI20241031BHJP
   D01F 6/86 20060101ALI20241031BHJP
   D01F 6/84 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
D02G3/44
A41D27/00 Z
A41D27/24 C
D01F6/86 301L
D01F6/84 305C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039715
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2023074490
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】折原 桂介
(72)【発明者】
【氏名】高月 珠里
(72)【発明者】
【氏名】廣部 育弥
【テーマコード(参考)】
3B035
4L035
4L036
【Fターム(参考)】
3B035AA02
3B035AB18
3B035AC15
3B035AD02
4L035AA05
4L035BB31
4L035EE04
4L035EE20
4L035FF07
4L035HH10
4L036MA05
4L036MA33
4L036PA01
4L036PA03
4L036PA18
4L036PA26
4L036UA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルカリ易溶性であると同時に工業洗濯に対する耐久性にも優れる新規な縫糸を提供する。
【解決手段】アルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維の少なくとも一種を含む縫糸であって、工業洗濯50洗後の強力保持率が70%以上であり、かつ濃度20g/Lのアルカリ水溶液を使用して100℃下30分間アルカリ減量処理したときの減量率が50%以上であることを特徴とする縫糸。アルカリ可溶性樹脂がポリ乳酸樹脂または共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維の少なくとも一種を含む縫糸であって、工業洗濯50洗後の強力保持率が70%以上であり、かつ濃度20g/Lのアルカリ水溶液を使用して100℃下30分間アルカリ減量処理したときの減量率が50%以上であることを特徴とする縫糸。
【請求項2】
アルカリ可溶性樹脂がポリ乳酸樹脂である請求項1記載の縫糸。
【請求項3】
アルカリ可溶性樹脂が共重合ポリエステル樹脂であって、ポリエステルを構成する全酸成分の合計量を100モル%とするとき、テレフタル酸が80モル%以上、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸が0.5~5モル%含まれ、ポリエステルを構成する全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールが80モル%以上、ポリエーテル化合物が0.1~1.0モル%含まれる請求項1記載の縫糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂で形成される繊維からなる縫糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から使用済みの衣服を回収し、リサイクル(再生利用)する試みがされている。衣服は多くの部材から構成されるため、衣服をリサイクルするには、まずリサイクルできる部分を衣服から分離する必要がある。このため、衣服のリサイクルは、身頃、袖、衿片、袖口片、裾片、ボタン、ファスナーといった衣服の構成部材を部材毎に分離し、リサイクルできる部材とできない部材とを分別するところから始まる。部材は、縫製部分を裁断するか又は縫糸を抜取るなどすれば容易に分離できる。しかし、いずれも人の手により行うのが通常で、作業の省力化や簡略化が求められていた。
【0003】
そこで、衣服を構成部材毎に分離するにあたり、構成部材を縫い合わせている縫糸を溶出可能なものとすることにより、作業の省力化や簡略化を図ることが考えられる。例えば特許文献1には、水溶性ポリビニルアルコール繊維からなる縫糸を温水で溶出する技術が、特許文献2には、アルカリ易溶性ポリエステル繊維からなる縫糸を強アルカリ水溶液で溶出する技術が各々開示されている。これらの縫糸を使用すれば、回収した衣服を温水又は強アルカリ水溶液に浸すだけで、縫製部分を裁断したり縫糸を抜取るなどの手間をかけずに衣服を構成部材毎に分離することができる。
【0004】
しかしながら、衣服は着用したら洗濯するのが必定である。この点、汚れ落ちについていえば、例えば介護用衣服、医療用衣服、作業用衣服、スポーツ用衣服などといったユニフォーム衣料の場合、一般衣料と比べ汚れの範囲が広く汚れが強固に付着する傾向にあるため、通常の家庭洗濯では汚れを十分に除去できないことがある。このため、アルカリ剤入りの業務用洗剤を使用して温水下で工業洗濯するのが一般的であり、頻度も着用の度に行うのが一般的である。
【0005】
工業洗濯が繰り返し求められる衣服の場合、工業洗濯に耐えられない縫糸を使用すると、洗濯の途中で縫糸の強度が低下してしまい、着用に著しい支障をきたすこととなる。
特許文献1、2に記載の縫糸は、回収した衣服を温水又は強アルカリ水溶液に浸すだけで、容易に溶出されるため衣服をリサイクルする点で有利である。しかしながら、これらの縫糸は、工業洗濯に対する耐久性を有していない。したがって、耐工業洗濯性を具備しない縫糸では、工業洗濯を行う衣服には使用できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-81811号公報
【特許文献2】特開平7-216615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、アルカリ易溶性であると同時に工業洗濯に対する耐久性にも優れる新規な縫糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維の少なくとも一種を含む縫糸であって、工業洗濯50洗後の強力保持率が70%以上であり、かつ濃度20g/Lのアルカリ水溶液を使用して100℃下30分間アルカリ減量処理したときの減量率が50%以上であることを特徴とする縫糸を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の縫糸は、強アルカリ水溶液で容易に溶出できるとともに、工業洗濯を繰り返しても十分な耐久性を有している。このため、例えば着用の度に工業洗濯が求められるユニフォーム衣料に使用した場合、洗濯の途中で縫糸の強度が低下し難いため、長期間使用することが可能となる。そして、使用済みとなりリサイクルする際は、衣服の状態で強アルカリ水溶液に浸すだけで、衣服を容易に構成部材毎に分離することができ、衣服をリサイクルする点で有利となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、アルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維の少なくとも一種を含む縫糸であり、アルカリ可溶性樹脂としては特にポリエステル樹脂が好適である。一般に、ポリエステル樹脂で形成されるポリエステル繊維からなる縫糸(ポリエステル縫糸)は、他の繊維からなる縫糸と比べ光沢感に優れ、縫目の見映えも良好になるとされている。本発明の縫糸は、従来のアルカリ可溶性樹脂からなる縫糸、とりわけポリエステル縫糸が持つ特徴は無論のこと、上記した本発明の効果をも奏することができるものである。
【0011】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂としては、縫糸としたときに強アルカリ水溶液で容易に溶出でき、かつ工業洗濯を繰り返したときに十分な耐久性が期待できるものであれば、使用可能である。具体的には、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂,アルギン酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂の他、特定成分からなるポリエステル樹脂などが挙げられる。中でも特定成分からなるポリエステル樹脂が好適であり、当該ポリエステル樹脂としては、ポリカプロラクトン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリエチレンアジペート樹脂、特定の共重合成分を使用した共重合ポリエステル樹脂などが挙げられる。本発明では、アルカリ易溶性と耐工業洗濯性とを両立させる観点から共重合ポリエステル樹脂やポリ乳酸樹脂が特に好ましい。
【0012】
上記共重合ポリエステル樹脂には、ポリエステルを構成する全酸成分の合計量を100モル%とするとき、テレフタル酸が80モル%以上含まれることが好ましい。テレフタル酸の含有量が80モル%未満になると、樹脂の結晶性が低下する結果、繊維の強度が低下し、使用に耐えうるだけの強度を持つ縫糸が得られなくなる。一方、テレフタル酸の上限含有量としては特に限定されないが、97.5モル%を上限とすることが好ましい。97.5モル%を超えると、後述する金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸や炭素数5~10の脂肪族ジカルボン酸の含有量が少なくなり、アルカリ易溶性を付与し難くなる結果、衣服を強アルカリ水溶液に浸しても縫糸が溶出し難くなるため、好ましくない。
【0013】
また、共重合ポリエステル樹脂を構成する酸成分中には、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸が0.5~5モル%共重合成分として含まれていることが好ましく、中でも0.8~3モル%含まれていることが好ましい。含有量(共重合量)が0.5モル%未満になると、樹脂の結晶性が高くなる結果、繊維にアルカリ易溶性を付与し難くなる。一方、5モル%を超えると、アルカリ水溶液に対する耐性が低下する結果、工業洗濯に耐えうる縫糸が得られ難くなる。さらに、繊維の耐熱性が低下し、縫糸をミシン糸としたとき、縫製時の摩擦熱により縫糸の糸切れや目飛びなどが生じ易くなる。
【0014】
金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸としては、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホナフタレンジカルボン酸、ナトリウムスルホフェニルジカルボン酸、5-ナトリウムスルホテレフタル酸などが例示でき、2種類以上の併用やこれらの誘導体も使用可能である。本発明では、溶融紡糸時の操業性及びコストの点から、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が好適である。
【0015】
さらに、共重合ポリエステル樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、テレフタル酸、金属スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸以外の酸成分が含まれていてもよい。具体的には、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。本発明では、これらを2種類以上併用してもよく、これらの誘導体も使用できる。
【0016】
ポリエステルを構成するもう一方の成分であるグリコール成分としては、ポリエステルを構成する全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールが80モル%以上、ポリエーテル化合物が0.1~1.0モル%含まれていることが好ましい。
エチレングリコールの含有量が80モル%未満になると、繊維の耐熱性が低下する傾向にあり、結果、ミシン糸としたとき縫製時の摩擦熱により糸切れや目飛びなどが生じ易くなり、好ましくない。一方、エチレングリコールの上限含有量としては特に限定されないが、99モル%を上限とすることが好ましい。99モル%を超えると、ポリエーテル化合物の含有量が少なくなり、アルカリ易溶性を付与し難くなる結果、衣服を強アルカリ水溶液に浸しても縫糸が溶出し難くなるため、好ましくない。
【0017】
ポリエーテル化合物の含有量は0.1~1.0モル%であることが好ましく、中でも共重合成分として0.15~0.5モル%含まれていることが好ましい。含有量(共重合量)が0.1モル%未満になると、繊維にアルカリ易溶性を付与し難くなる。一方、1.0モル%を超えると、アルカリ水溶液に対する耐性が低下する結果、工業洗濯に耐えうる縫糸が得られ難くなる。
【0018】
本発明におけるポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体などが挙げられるが、中でもポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0019】
また、ポリエーテル化合物の数平均分子量としては、1000~15000であることが好ましい。ポリエーテル化合物の数平均分子量が1000より小さい場合、得られる繊維のアルカリ易溶性が低下しやすくなる。一方、ポリエーテル化合物の数平均分子量が15000を超える場合、ポリエステル樹脂の熱安定性が損なわれることとなり、紡糸時に糸切れが多発しやすくなる。
【0020】
さらに、共重合ポリエステル樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、エチレングリコール、ポリエーテル化合物の以外のグリコール成分が含まれていてもよい。具体的には、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールA又はビスフェノールSのエチレンオキシド付加体などが使用できる。本発明では、これらを2種類以上併用してもよく、これらの誘導体も使用可能である。また、エチレングリコール、ポリエーテル化合物の以外のグリコール成分は、共重合ポリエステル樹脂を製造する際に生じ得る副生成物として含まれるものであってもよい。
【0021】
上記した共重合ポリエステル樹脂は、一旦使用したポリエステル樹脂を再利用するマテリアルリサイクルにより得られるもの、もしくはケミカルリサイクルにより得られるものであってもよい。
【0022】
また、ポリ乳酸樹脂としては、ポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、L-乳酸とD-乳酸の共重合体であるポリ-D,L-乳酸、あるいは高融点となるポリ-L-乳酸とポリ-D-乳酸の混合物(ステレオコンプレックス)のいずれでもよい。
【0023】
本発明で用いるポリ乳酸樹脂において、L-乳酸とD-乳酸の共重合体であるポリ-D,L-乳酸を用いる場合のD-乳酸とL-乳酸の共重合比(D-乳酸/L-乳酸)は、100/0~95/5、5/95~0/100であることが好ましい。
【0024】
また、ポリ乳酸樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、ε-カプロラクトン等の環状ラクトン類、α-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、α-ヒドロキシ吉草酸等のα-オキシ酸類、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール等のグリコール類、コハク酸、セバシン酸等のジカルボン酸類が含有されていてもよい。
【0025】
本発明の縫糸は、上記したようなアルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維の少なくとも一種を含むものである。本発明の縫い糸は、長繊維のみからなるもの、短繊維のみからなるもの、両繊維を含むものの何れでもよい。
【0026】
中でも上記したようなアルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維は、上記アルカリ可溶性樹脂を90質量%以上含むものであることが好ましく、中でも上記アルカリ可溶性樹脂のみからなるものであることが好ましい。つまり、アルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維は、アルカリ可溶性樹脂のみからなるものであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の樹脂を含む複合繊維であってもよい。
複合繊維の形態としては、サイドバイサイド型、芯鞘型、海島型のものが挙げられる。
【0027】
本発明の縫糸中には、上記した共重合ポリエステル樹脂又はポリ乳酸樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維を50質量%以上含むことが好ましく、中でも70質量%以上、さらには90質量%以上含むことが好ましく、100質量%含むものが最も好ましい。
【0028】
また、縫糸中に含まれる上記した共重合ポリエステル樹脂又はポリ乳酸樹脂の含有量としても、50質量%以上であることが好ましく、中でも70質量%以上、さらには90質量%以上であることが好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0029】
なお、本発明の縫糸中には、アルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維以外のその他の繊維を含むことができる。その他の繊維としては、本発明の効果を損なわない限り、任意の繊維が使用できるが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、セルロース繊維などが挙げられる。その他の繊維の形態としては、長繊維、短繊維の何れでもよい。
【0030】
そして、本発明の縫糸の形態は、上記アルカリ可溶性樹脂で形成される長繊維もしくは短繊維の少なくとも一種を含むものとして、フィラメント糸、紡績糸、長短複合糸の何れでもよいが、フィラメント糸又は紡績糸とすることが実用上、好ましい。その際、目的に応じて意匠糸としてもよいし、一色の先染糸もしくは複数の先染糸を複合して杢感を持たせたものでもよい。
【0031】
本発明の縫糸の太さは目的に応じて任意に設定すればよく、フィラメント糸であれば20~1500dtex、紡績糸又は長短複合糸であれば4~200番手(英式綿番手)とすることが好ましい。
【0032】
さらに、本発明の縫糸は無撚糸、有撚糸の何れでもよい。撚りを与えると一般に糸の強度が上がるため、強度の点からは有撚糸が好ましい。一方、衣服を効率よく構成部材毎に分離するにはアルカリ減量速度が速い方が好ましく、撚りが少なくなるほどアルカリ減量速度が速くなることから、アルカリ易溶性の点では無撚糸が好ましいといえる。無撚糸及び有撚糸の何れを選択するかは、縫糸の使用目的に応じて選択すればよい。
【0033】
また、縫糸は、1本の糸条のみからなるものでもよいが、縫糸の強度を高める観点からは、複数の糸条を合わせたものとすることが好ましい。具体的には、糸条を複数本用意してこれらを単に引き揃えるか又は引き揃えながら撚りを与えたものなど、目的に応じて様々なものが選択できる。このとき用意する糸条は無撚糸でもよいが、強度を高める観点から有撚糸とすることが好ましい。加えて、引き揃えながら撚りを与えられた糸を複数本用意し、これらにさらに撚りを与えてもよい。
【0034】
本発明の縫糸がフィラメント糸である場合、フィラメント糸としては、生糸、仮撚糸又は混繊糸などの形態のものとすることができる。混繊糸の場合は、インターレース混繊糸、タスラン加工糸などが採用できる。また、仮撚りと混繊を付与した仮撚混繊糸としてもよい。
【0035】
縫糸の形態を無撚糸とする場合、1本のフィラメント糸のみから縫糸を構成するときは、紡糸したフィラメント糸をそのまま縫糸とするか、仮撚もしくは混繊したフィラメント糸をそのまま縫糸とすればよい。このときのフィラメント糸の太さとしては、何れの形態であっても前記の如く20~1500dtexが好ましい。また、合糸して縫糸とするときは、何れの形態であっても好ましくは20~200dtex程度のフィラメント糸を複数本好ましくは2~5本程度用意し、ワインダーなどを使用してこれらを引き揃えればよい。
【0036】
一方、縫糸の形態を有撚糸とする場合も、同じく1本のフィラメント糸のみから縫糸を構成してもよい。このときの撚方向としては何れの形態であってもZ方向が好ましく、撚数としても同じく100~1800T/m程度が好ましい。
また、合糸する場合、下撚りのみを与えるときは、何れの形態でも夫々のフィラメント糸にまず撚り与え、その後ワインダーなどを使用してこれらを引き揃えればよい。このときの個々のフィラメント糸の太さは、20~200dtexが好ましく、撚り方向はZ方向が好ましい。
【0037】
上撚りのみを与えるときは、何れの形態であっても、複数本好ましくは2~5本程度の無撚フィラメント糸をリング撚糸機へ同時に供給し引き揃えつつ撚りを与えるか、又は複数の無撚フィラメント糸をワインダーで一旦合糸した後、ダブルツイスターへ供給して撚りを与えればよい。このときの個々のフィラメント糸の太さは、20~200dtexが好ましく、撚り方向はZ方向が好ましく、撚数としては100~1800T/m程度が好ましい。
【0038】
さらに、上撚りと下撚りを付す場合には、好ましくは太さ20~200dtex程度の無撚フィラメント糸を複数本用意し、各々にS方向に100~1500T/m程度の下撚りを与えた後、下撚り1に対しZ方向に0.5~0.9倍程度の上撚りを与えればよい。上撚りはリング撚糸機などを用いて行うのがよい。そして、上撚り、下撚り及び中撚りを付す場合には、例えばZ方向に下撚りがS方向に中撚りが各々付されたフィラメント糸を複数本好ましくは2~5本用意し、これらを引き揃えつつZ方向へ100~1000T/m程度上撚りすればよい。これにより可縫性に優れた縫糸が得られる。
【0039】
次に、本発明の縫糸が紡績糸である場合は、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、結束紡績糸など任意のものが採用でき、複重層糸のような芯鞘構造を呈するものでもよいし、コンパクトスピン糸のような毛羽伏せ加工されたものでもよい。
【0040】
紡績糸の場合も1本の紡績糸のみから縫糸を構成してもよく、このときの太さとしては前記したように4~200番手(英式綿番手)が好ましい。また、撚方向としてはZ方向が好ましく、撚数としては、100~2000T/m程度が好ましい。
【0041】
紡績糸を合糸して縫糸とする場合は、下撚りのみであれば、好ましくは太さ10~60番手(英式綿番手)でZ方向に100~2000T/m程度の撚りが付された紡績糸を複数本、好ましくは2~5本程度用意した後、ワインダーなどによりこれらを引き揃えればよい。
【0042】
上撚りと下撚りを付すときは、好ましくは太さ10~60番手(英式綿番手)でS方向に100~2000T/m程度の下撚りが付された紡績糸を複数本用意し、下撚り1に対しZ方向に0.5~0.9倍程度の上撚りを与えればよい。上撚りは上記同様リング撚糸機などを用いて行うのがよい。
【0043】
さらに上撚り、下撚り及び中撚りを付す場合には、Z方向に下撚りがS方向に中撚りが各々付された紡績糸を複数本好ましくは2~5本用意し、これらを引き揃えつつZ方向に上撚りすれば目的とする縫糸が得られる。
【0044】
また、本発明の縫糸が長短複合糸である場合は、例えば、芯部にフィラメント糸を鞘部に短繊維粗糸を各々配しつつ同時に精紡することにより得れたものが使用できる。
長短複合糸の場合もフィラメント糸及び紡績糸同様、1本の糸のみから縫糸を構成してもよいし、複数本の糸を合糸して縫糸としてもよい。長短複合糸を使用して縫糸となす場合、太さ、撚数などは基本的に上記紡績糸と同様のものを採用すればよい。
【0045】
本発明の縫糸は、アルカリ易溶性と耐工業洗濯性を兼備する。
アルカリ易溶性とは、強アルカリ水溶液で容易に溶出できる能力を指すが、本発明の縫糸は、その指標として、濃度20g/Lのアルカリ水溶液を使用して100℃下30分間アルカリ減量処理したときの減量率が特定範囲を満足する必要がある。具体的に、減量率は50%以上である必要があり、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が最も好ましい。
【0046】
減量率が50%以上になるまで減量が進むと、縫糸は僅かな力で容易に糸切れするような状態になる。これにより、リサイクルに際し衣服を構成部材毎に分離する作業が大幅に簡略化できることになる。加えて、濃度20g/Lのアルカリ水溶液を使用して100℃下30分間アルカリ減量処理したときの強度保持率が25%以下になると、さらに容易に糸切れし易くなる傾向にある。
【0047】
本発明で採用するアルカリ減量処理の条件(濃度20g/L、100℃下30分間)は、環境負荷の低減と後のリサイクルを考慮したものである。すなわち、縫糸が単にアルカリ易溶性を有しているだけでは足りず、環境負荷を抑えつつアルカリ水溶液による衣服構成部材の損傷も抑えたうえで所望のアルカリ易溶性が達成されなければならない。例えば、アルカリ水溶液の濃度が濃くなれば、その分アルカリ易溶性は促されるが、それでは排水処理において中和剤の量が増えてしまうなど、環境負荷が大きくなる。加えて、衣服構成部材に例えばポリエステル繊維などが含まれていると、その繊維の溶出も進んでしまい、結果としてリサイクルできる部材の総量が減ってしまうことにもなる。ゆえに、濃度20g/L、100℃下30分間という厳しすぎない条件下において所定のアルカリ易溶性を具現させる必要がある。
【0048】
一方、耐工業洗濯性としては、50洗後の強力保持率が70%以上である必要があり、75%以上がより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。これにより、一般衣料はもとより着用の度に工業洗濯が求められるユニフォーム衣料でも洗濯途中で縫糸が強度低下し難いため、広く繊維製品全般へ適用できるようになる。
工業洗濯とは、ユニフォーム衣料などの洗濯に適用されるもので、高温アルカリ浴を使用するなど家庭洗濯よりも厳しい条件で実施される。
【0049】
本発明における工業洗濯の条件は、表1に示す工程を、それぞれの工程における条件(温度、水量、時間、洗剤、洗剤投入量)に従って行う。洗剤としては、花王プロフェッショナル・サービス社製「バイオハーベスト(商品名)」を使用する。
【0050】
まず、予洗1として衣服を常温洗濯した後、水を抜かずにそのまま水温だけを上げて、予洗2として温度35度の温水で洗濯する。洗濯液については、水と洗剤を表1記載の通りに投入すれば、pH10.0±1.0程度のアルカリ浴に調製できる。次に、水を入れ替えて衣服を本洗する。浴比(洗剤:水)は、予洗、本洗とも1:30とする。続いて、水位を保ったまま水温が40℃になるまで注水し、40℃になったその時点から5分間衣服をクールダウンする。そして、水を入れ替えてためすすぎ1を行い、その後、すすぎ2~5の工程においては都度水を入れ替えてためすすぎを行う。その後、衣服を脱水及び乾燥する。
【0051】
【表1】
【0052】
本発明においては、工業洗濯50洗後の強度保持率を測定するにあたって、表1記載の洗濯を50回繰り返した後の強力保持率により評価するものであるが、当該洗濯を50回行うことは、作業としてかなり煩雑である。このため、本発明では、表1記載の洗濯を50回繰り返すことと同じ洗濯効果を奏するものとして、表2記載の工程を5回繰り返すことで50回洗濯したとみなし、縫糸の工業洗濯50洗後の強度保持率を測定する。
【0053】
【表2】
【0054】
以上のように、本発明によれば、強アルカリ水溶液で容易に溶出できる一方で工業洗濯を繰り返しても十分耐えうるだけの縫糸が提供できる。これにより、一般衣料はもとより着用の度に工業洗濯が求められるユニフォーム衣料への適用も可能となる。縫糸の種類は、ミシン糸、手縫い糸など任意のものに使用することができる。
【0055】
さらに、本発明の縫糸は、縫製後、アイロンの熱を受けてパッカリングすることを抑える観点から、160℃下10分間乾熱処理したときの乾熱収縮率及び100℃下20分間熱水処理したときの熱水収縮率が、共に5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。なお、乾熱収縮率と熱水収縮率の測定方法は、実施例において詳細を記載する。
【0056】
本発明の縫糸ではポリエステル樹脂が好適に用いられるところ、ポリエステル樹脂を使用することによりポリエステル樹脂が本来有する光沢感にも優れ、縫目を見映え良く仕上げることができる。また、ポリエステル縫糸とすることで耐熱性も発現する。その結果、ミシン糸として使用したときに受けるミシン回転に伴う摩擦熱にも耐えうるだけでなく、医療用衣服などの工業洗濯時に併施するオートクレーブ処理(高圧蒸気滅菌処理)に伴う熱にも耐えることができる。
【0057】
次に、本発明の縫糸の製造方法について説明する。
上述したアルカリ可溶性樹脂を用いて公知の手段により溶融紡糸を行い、マルチフィラメントもしくはステープルファイバー状の糸条となし、糸条を上記したようなフィラメントの糸、紡績糸、長短複合糸の形態に加工して目的とする縫糸とすることができる。
【0058】
ここでは、上記特定成分を含有する共重合ポリエステル樹脂を用いてマルチフィラメントを得る場合の縫糸の製造方法について説明する。まず、重合工程を経て当該共重合ポリエステル樹脂を製造し、得られた共重合ポリエステル樹脂をチップ化した後は、チップを乾燥し、溶融紡糸することでマルチフィラメントを得る。溶融紡糸の条件としては、紡糸温度270~300℃、紡糸速度1000~2000m/分、延伸温度65~85℃、熱セット温度120~160℃、延伸速度300~1000m/分といった条件が採用でき、延伸倍率としては、未延伸糸の最大延伸倍率の0.25~0.45倍程度とすればよい。紡糸延伸の条件は上記に限定されるものではなく、2000m/分以上の高速紡糸により、半未延伸糸として巻き取るPOY法、若しくは2000m/分以上で高速紡糸し、一旦巻き取ることなく続けて延伸するスピンドロー法などが適宜採用できる。
その後、ダブルツイスターを使用して、得られたマルチフィラメントをZ方向に300~800T/M撚糸し、50~100℃で30分間程度撚止めセットすることで本発明の縫糸を得ることができる。
【実施例0059】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、縫糸の特性値は以下の方法により測定した。
1.工業洗濯50洗後の強力保持率
まず、得られた縫糸を筒編みし、洗濯試料200gを用意した。そして、洗濯試料と導布(ポリエステル繊維からなる編物、目付;300g/m)2400gを工業洗濯機に投入し、表2記載の工程を表2記載の条件で5回繰り返し行った。次に、筒編み前の縫糸と、洗濯後の洗濯試料から丁寧に取り出した縫糸とを用意し、縫糸の形態がフィラメント糸のときはJIS L1013 8.5.1に基づき、紡績糸のときはJIS L1095 9.5.1に基づいて縫糸の引張強力を測定した。その後、次式により強力保持率を算出した。
強力保持率(%)=(洗濯後の引張強力(mN)/筒編み前の引張強力(mN))×100
【0060】
2.アルカリ減量処理したときの減量率及び強力保持率
まず、得られた縫糸を筒編し減量試料とし、秤量した。次に、減量試料を濃度20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液と共に浴比1:50(減量試料:水酸化ナトリウム水溶液)の割合で円柱状容器に密閉した。続いて、当該容器の長手方向を水平にして100℃に温められたオイルバス中に容器の半分程度が沈むように浸し、一方の周方向へ速度1回転/秒で20回回転させた後、同じ速度で同じ回数反転させた。これを30分間繰り返した後、円柱状容器をオイルバスから引き上げ、容器から試料を取り出した。その後、試料を丁寧に水洗し、平らな台の上に乗せ常温乾燥した。そして、乾燥後の減量試料を秤量し、次式により減量率を算出した。
減量率(%)=(アルカリ減量前の質量(g)-アルカリ減量後の質量(g))/アルカリ減量前の質量(g)×100
さらに、筒編み前の縫糸と減量後の減量試料から丁寧に取り出した縫糸とを用意し、以降は前記「1.工業洗濯50洗後の強力保持率」と同様にして強力保持率を算出した。
強力保持率(%)=(減量後の引張強力(mN)/筒編み前の引張強力(mN))×100
【0061】
3.共重合成分の含有量
日本電子株式会社製、核磁気共鳴装置「ECA500(商品名)」(室温プローブ)を用いて測定した。縫糸15mgとトリフルオロ酢酸0.7mLとを試験管に入れ、室温30分間の超音波処理及び攪拌により測定溶液を調製し、測定核H、測定周波数500MHZにて測定した。
【0062】
実施例1
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであり、ポリエステル全体の酸成分100モル%に対してテレフタル酸(TPA)を97.4モル%、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(SIPM)を2.2モル%、イソフタル酸(IPA)を0.4モル%含有し、ポリエステル全体のグリコール成分100モル%に対してエチレングリコール(EG)を93.6モル%、ジエチレングリコール(DEG)を6.0モル%、数平均分子量4000のポリエチレングリコール(PEG)を0.4モル%含有する共重合ポリエステル樹脂チップを用意した。
【0063】
続いて、チップを乾燥し、紡糸口金を備えた紡糸装置に投入した。そして、36孔の丸断面紡糸口金より、紡糸温度290℃、紡糸速度1600m/分で溶融紡糸して一旦未延伸糸を得た後、延伸速度600m/分、延伸温度78℃、熱処理温度150℃、最大延伸倍率の0.720倍で延伸し、56dtex36fのポリエステル繊維糸条とした。
その後、ダブルツイスターを使用してポリエステル繊維糸条をZ方向に500T/M撚糸し、70℃で30分間撚止めセットすることで本発明の縫糸を得た。
【0064】
実施例2
ポリ乳酸チップを紡糸温度210℃、紡糸速度3000m/分で溶融紡糸して一旦未延伸糸を得た後、延伸速度700m/分、延伸温度70℃、熱処理温度 110℃、延伸倍率1.26で延伸し、56dtex36fのポリ乳酸繊維糸条とした。
それ以降は実施例1と同様に行い、本発明の縫糸を得た。
【0065】
実施例3
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであり、ポリエステル全体の酸成分100モル%に対してテレフタル酸(TPA)を98.0モル%、5-ナトリウムスルホイソフタル酸(SIPM)を2.0モル%含有し、ポリエステル全体のグリコール成分100モル%に対してエチレングリコール(EG)を96.7モル%、ジエチレングリコール(DEG)を3.1モル%、数平均分子量6000のポリエチレングリコール(PEG)を0.2モル%含有する共重合ポリエステル樹脂チップを用意した。
【0066】
続いて、チップを乾燥し、紡糸口金を備えた紡糸装置に投入した。そして、36孔の丸断面紡糸口金より、紡糸温度280℃、紡糸速度1100m/分で溶融紡糸して一旦未延伸糸を得た後、延伸速度361m/分、延伸温度75℃、熱処理温度140℃、最大延伸倍率の0.333倍で延伸し、56dtex36fのポリエステル繊維糸条とした。 それ以降は実施例1と同様に行い、本発明の縫糸を得た。
【0067】
比較例1
ポリエステルを構成する全酸成分の合計量を100モル%とするとき、テレフタル酸を100モル%、ポリエステルを構成する全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールを100モル%含むポリエステル樹脂チップを用意した。
上記チップを用いて、紡糸速度を1200m/分にしたこと、ポリエステル繊維糸条の太さを84dtex36fとしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル繊維糸条を得た。
その後、ダブルツイスターを使用してポリエステル繊維糸条をZ方向に400T/M撚糸し、70℃で30分間撚止めセットすることで本発明の縫糸を得た。
【0068】
実施例4
実施例1で得られた56dtex36fのポリエステル繊維糸条を3.8mmに切断することで短繊維(合繊綿)とし、この合繊綿を常法に準じて紡績し、S方向に950T/Mの下撚りを有する40番手の紡績糸とした。
続いて、この紡績糸を3本合撚し、Z方向に650T/Mの上撚りを有する40番手の縫糸を得た。
【0069】
比較例2
比較例1で得られた84dtex36fのポリエステル繊維糸条を3.8mmに切断することで短繊維(合繊綿)とし、この合繊綿を常法に準じて紡績し、S方向に1050T/Mの下撚りを有する50番手の紡績糸とした。
続いて、この紡績糸を3本合撚し、Z方向に700T/Mの上撚りを有する50番手の縫糸を得た。
【0070】
実施例1~4、比較例1~2で得られた縫糸の特性値を表3に記載する。
【0071】
【表3】
【0072】
表3から明らかなように、実施例1~4で得られた縫糸は、工業洗濯50洗後の強力保持率が高く、アルカリ減量処理を施すと、減量率が50%以上のものであった。
一方、比較例1~2で得られた縫糸は、アルカリ減量処理による減量率が低く、本発明で目的とするリサイクル用途に使用するには適していないものであった。
【0073】
なお、縫糸の可縫性について、本縫いミシン(JUKI社製「DDLー5530N(商品名)」)を用い、縫製速度4500spm、縫目ピッチ2mmの条件で、綿平織物(経緯糸30番手、経糸密度78本/2.54cm、緯糸密度72本/2.54cm)を5枚重ねたものを縫製することにより評価した。縫製については直線状に1mの長さで縫い、各縫糸について5回試験した。
その結果、実施例1~4で得られた縫糸は何れも糸切れ、目飛びが認められず、可縫性は良好であった。