(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159533
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バッテリーセル用電極を製造するための処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20241031BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M10/058
H01G13/00 391B
H01G13/00 371C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024055530
(22)【出願日】2024-03-29
(31)【優先権主張番号】10 2023 203 853.6
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・アーベル
【テーマコード(参考)】
5E082
5H029
【Fターム(参考)】
5E082MM35
5H029AJ14
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ04
5H029CJ22
5H029HJ20
(57)【要約】
【課題】従来技術と比べて損失材料がより少なくなる形で電極の品質検査を実施可能である、バッテリーセル用電極を製造するための処理装置及び方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、導電体フォイル1をエンドレスストリップとして処理ステーションを通して連続的に案内可能である、詳しくは、最後の裁断ステーションで電極として分離及び/又は裁断される電極ストリップEを作成するように案内可能である、バッテリーセル用電極を製造するための処理配置に関する。本発明では、この処理装置が、少なくとも一つの測定器4を備えた測定ステーションMを有し、この測定ステーションで、活物質層3の固有抵抗ρ及び/又は導電体フォイル1に対する活物質層3の接触抵抗Ω、或いはそれらに関連する値が測定可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体フォイル(1)をエンドレスストリップとして処理ステーションを通して連続的に案内可能である、詳しくは、最後の裁断ステーションで電極として分離及び/又は裁断される電極ストリップ(E)を作成するように案内可能である、バッテリーセル用電極を製造するための処理装置において、
この処理装置が、少なくとも一つの測定器(4)を備えた測定ステーション(M)を有し、この測定ステーションで、活物質層(3)の固有抵抗(ρ)及び/又は導電体フォイル(1)に対する活物質層(3)の接触抵抗(Ω)、或いはそれらに関連する値が測定可能であることと、
特に、この測定プロセスが、電極ストリップ(E)に対して直接的に(インラインで)実施可能である、即ち、電極の完成前に実施可能であることと、を特徴とする処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置において、
この処理装置が、処理ステーションとして、
導電体フォイル(1)の片側又は両側に活物質層(3)を塗布可能なコーティングステーションと、
導電体フォイル(1)上に塗布された活物質層(3)を乾燥させる乾燥ステーションと、
導電体フォイル(1)上に塗布された活物質層(3)を予め定義された層厚にまで圧縮可能なカレンダー処理ステーションと、
を有することと、
この裁断ステーションが、プロセス技術に関してカレンダー処理ステーションの後に接続されていることと、を特徴とする処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、プロセス技術に関してカレンダー処理ステーションの直前及び/又は直後に接続されており、その結果、固有抵抗(ρ)又は接触抵抗(Ω)が、カレンダー処理の前及び/又は後に測定可能であることを特徴とする処理装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、測定器(4)によって検出された抵抗測定値(ρ,Ω)を目標値(ρsoll,Ωsoll)と比較する評価ユニット(19)を備えることと、
特に、実際に検出された抵抗測定値(ρ,Ω)の偏差が有意である場合に、実際に測定された電極ストリップ部分が電極の製造のために使用されるのではなく、材料廃棄部に送られることを特徴とする処理装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の処理装置において、
前記の測定器(4)が、少なくとも一つの微小電極アレイ(11)を備え、当該微小電極アレイ(11)の電極が、測定中に活物質層(3)の表面と非破壊的に接触することを特徴とする処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の処理装置において、
前記の微小電極アレイ(11)を用いて、電極ストリップ部分の複数の点に予め定義された電流(I)を印加することが可能であり、それにより得られる電位分布が、活物質層(3)の表面上の複数の測定点において検出可能であることと、
前記の微小電極アレイ(11)が、電流(I)を発生させるための電流ソース及び電流シンクとして電極が作用する電流測定アレイ(13)と、電流(I)から生じる電位分布を電極が測定する電圧測定アレイ(15)とに分けられていることと、
特に、電流(I)、検出された電位分布、活物質層(3)の層厚(s)及び導電体フォイル(1)の固有抵抗に基づいて、活物質層(3)の固有抵抗(ρ)と接触抵抗(Ω)を計算する、詳しくは、特に、FEMシミュレーションを用いて計算する計算ユニット(16)が微小電極アレイ(11)に割り当てられていることと、の中の一つ以上を特徴とする処理装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、少なくとも一つの測定ローラー(5,7)を備えたローラー機器を有し、電極ストリップ(E)が、当該測定ローラー(5,7)上を進むことと、
特に、前記の測定器(4)が、測定ローラー(5,7)の外周に配置されているか、或いは、前記の測定ステーション(M)が、電極ストリップ(E)の動きと連動して直線的にシフト可能なスライダーを備え、このスライダーを用いて、前記の測定器(4)が、直線的な測定区間に渡って、測定のために電極ストリップ(E)と接触可能であることと、を特徴とする処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の処理装置において、
前記の測定器(4)が、測定ローラー(5,7)の固い基材(21)上に直に配置されているのではなく、弾力的に撓む緩衝材(23)を間に挟んで測定ローラー(5,7)の基材(21)上に配置されており、その結果、特に、この測定器(4)が、予め定義された押圧力で電極ストリップ(E)の活物質層(3)に押し付けられる、詳しくは、有利には、活物質層(3)の層厚の許容偏差に関係無く押し付けられ、特に、前記の測定ローラ(5,7)の外周が、測定器(4)以外の領域において、ローラー材料の摩耗による活物質層(3)の汚染を防止するために耐摩耗コーティング(25)で覆われていることと、
前記のローラー機器が二つの測定ローラー(5,7)を備え、電極ストリップ(E)の両側が、これらの測定ローラー上を進み、その結果、電極ストリップ(E)の一方の側が測定のために第一の測定ローラー(5)と接触可能であり、電極ストリップ(E)の他方の側が測定のために第二の測定ローラー(7)と接触可能であることと、の中の一つ以上であることを特徴とする処理装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の処理装置において電極を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づくバッテリーセル用電極を製造するための処理装置及び請求項9に基づくそのような電極を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリーセルの電極は、連続プロセスで大量生産して製造することができ、そのプロセスでは、導電体フォイルがエンドレスストリップとしてコーティングステーションを通して連続的に供給され、そのステーションにおいて、導電体フォイルが片側又は両側に活物質を塗布される。そのようにして作成された電極ストリップは、次に乾燥ステーションを通過し、そのステーションにおいて、導電体フォイル上に塗布された活物質が乾燥される。その後に、カレンダー処理ステーションが続き、そのステーションにおいて、導電体フォイル上に塗布された活物質が予め定義された層厚にまで圧縮される。その連続プロセスは裁断ステーションで終了し、そのステーションにおいて、電極ストリップが、電極として分離及び/又は裁断される。そのようにして製造された電極は、次に電極スタック/セパレータスタックに統合され、そのスタックは、バッテリーセルに組み込みことが可能である。
【0003】
そのようなバッテリーセルの内部抵抗の大きさは、バッテリーセルの性能にとって重要である。バッテリーセルの内部抵抗は、特に、電極の活物質の固有抵抗と、導電体フォイルに対する活物質層の接触抵抗とによる影響を受ける。活物質層の固有抵抗と接触抵抗の測定に関して、HIOKI社の分析器が知られており(パンフレット「HIOKI社の電極抵抗測定システムRM2610」を参照)、その機器を用いて、既に製造された電極の固有抵抗と接触抵抗を無作為抽出形態により測定可能である。その分析器が、固有抵抗又は接触抵抗に関して過剰に高い測定値を検出した場合、一つの生産区間のコーティング処理グループ全体に関して既に製造された全ての電極を材料廃棄部に送らなければならず、従って、それらは、最早更なるバッテリー製造のために用いることができない。
【0004】
特許文献1により、基板上のコーティングの厚さを測定するための方法及び装置が周知である。その方法は、特に、電極製造用の導電体フォイル上の活物質層の層厚を測定するためにも用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許公開第102014006870号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術と比べて損失材料がより少なくなる形で電極の品質検査を実施可能である、バッテリーセル用電極を製造するための処理装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1又は請求項10の特徴によって解決される。本発明の有利な改善構成は従属請求項に開示されている。
【0008】
本発明は、バッテリーセル用電極を製造するための処理装置を出発点としている。この製造プロセスでは、導電体フォイルが、エンドレスストリップとして処理ステーションを通して連続的に案内される、詳しくは、電極ストリップを作成するように案内される。これらの電極ストリップは、最後の裁断ステーションにおいて、電極として分離及び/又は裁断される。請求項1の特徴部分によると、この処理装置には、測定器を備えた測定ステーションが統合されており、この測定ステーションにおいて、活物質層の固有抵抗及び/又は導電体フォイルに対する活物質層の接触抵抗、或いはそれらと関連する値が測定される。
【0009】
本発明による測定プロセスは、従来技術と異なり、製造された電極に対して漸く実施されるのではない。むしろ、この測定プロセスは、早くも裁断ステーションに未だ供給されない電極ストリップに対して直接的に、即ち、電極が未だ完成しない前に実施される。このようにして、固有抵抗又はフォイルとコーティングの間の接触抵抗の「インライン」での品質検査が提供される。この測定ステーションで、一つの電極ストリップ部分における品質の問題が検知された場合、その電極ストリップ部分が材料廃棄部に送られる一方、同じコーティング処理グループのそれ以外の(正常として検査された)電極ストリップ部分が、電極を製造するための標準プロセスに進む。このようにして、電極を製造する際の損失材料を従来技術と比べて大幅に削減することができる。
【0010】
一つの技術的な実施形態において、この処理装置は、処理ステーションとして、エンドレスストリップとしての導電体フォイルの片側又は両側に活物質を塗布できるコーティングステーションと、導電体フォイル上に塗布された活物質層を乾燥させる乾燥ステーションと、導電体フォイル上に塗布された活物質を予め定義された層厚にまで圧縮するカレンダー処理ステーションとを備えることができる。このカレンダー処理ステーションは、電極ストリップを電極として分離する裁断ステーションの後に間接的又は直接的に接続される。
【0011】
この固有抵抗及び/又は接触抵抗を測定する測定ステーションは、有利には、カレンダー処理ステーションの直前又は直後に配置することができる。従って、必要に応じて、固有抵抗と接触抵抗は、早いプロセス時点で早期に検出することができる、詳しくは、有利には、早くも電極ストリップがカレンダー処理ステーションを通過する前に検出することができる。
【0012】
この処理装置に組み込まれる測定ステーションは、評価ユニットを備えることができ、このユニットでは、測定器により検出された抵抗測定値が、評価ユニットに保存された目標値と比較される。実際に検出された抵抗測定値の偏差が有意である場合、実際に測定された電極ストリップ部分を通常の電極製造部から取り出して、材料廃棄部に送ることができる一方、抵抗測定値が正常であるそれ以外の電極ストリップ部分は、更なるバッテリーセル製造のために使用される。
【0013】
この測定器は、HIOKI社の分析器(パンフレット「HIOKI社の電極抵抗測定システムRM2610」を参照)の形式で実現することができる。このケースでは、測定器は、少なくとも一つの微小電極アレイを備えることができ、当該微小電極アレイの電極は、測定中、電極ストリップの活物質層の表面と非破壊的に接触される。この微小電極アレイは、電圧測定アレイと電流測定アレイに分けることができる。従って、電圧測定と電流測定を互いに別個に実施することができる。従って、この微小電極アレイを用いて、電極ストリップ部分の複数の点に予め定義された電流を加えることができる。その結果得られる電位分布は、電圧測定アレイの電極を用いて、活物質層の表面上の複数の測定点で検出することができる。この測定プロセスでは、電流が導電体フォイルだけを通って流れるのではなく、活物質層も通って流れ、その結果、接触抵抗と固有抵抗の両方を測定することが可能である。
【0014】
この微小電極アレイには、計算ユニットを割り当てることができる。この計算ユニットには、測定された電流、測定された電位分布、活物質層の層厚及び導電体フォイルの固有抵抗のデータが入力される。この計算ユニットでは、これらのデータに基づき、FEMシミュレーションが実行され、このシミュレーションに基づき、実際に測定された電極ストリップ部分の固有抵抗と接触抵抗が算出される。
【0015】
一つの具体的な変化形態では、この測定ステーションは、少なくとも一つの測定ローラーから成るローラー機器を備えることができる。電極ストリップは、この測定ローラー上を進む。このケースでは、測定ローラーの外周上に直に測定器を配置することができ、それによって、プロセス技術的に簡単な「インライン」での品質検査が可能になる。
【0016】
プロセス的に確実な品質検査のために、測定器は、測定ローラーの固い基体上に直に配置されるのではなく、むしろ、弾力的に撓む緩衝材を間に挟んで、測定ローラーの基材上に配置することができる。この緩衝材は、過負荷保護スプリングの形式で作用し、その結果、測定器は、常にエンドレスストリップの活物質層に対して、この弾力的に撓む緩衝材のスプリング定数によって決まる予め定義された押圧力で押し付けられる。このケースでは、活物質層の層厚の許容偏差に関係なく、動作に関して確実に測定プロセスを実施することができる。
【0017】
測定器以外の測定ローラーの外周は、耐摩耗コーティングで覆うことができる。このようにして、活物質層の汚染を引き起こすローラー材料の磨耗を防止することができる。
【0018】
測定精度を向上させるためには、ローラー機器が二つの測定ローラーを備え、電極ストリップの両側が、これらの測定ローラー上を進むのが有利である。このケースでは、電極ストリップの一方の側を測定のために第一の測定ローラーと接触させる一方、電極ストリップの他方の側を測定のために第二の測定ローラーと接触させることができる。
【0019】
以下において、添付図面に基づき本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による処理装置の測定ステーションを図解した模式図
【
図2】本発明による処理装置の測定ステーションを図解した模式図
【
図3】本発明による処理装置の測定ステーションを図解した模式図
【
図4】本発明による処理装置の測定ステーションを図解した模式図
【
図5】本発明による処理装置の測定ステーションを図解した模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、バッテリーセル用電極を連続プロセスで製造する詳しく図示されていない処理装置の構成要素である品質検査用の測定ステーションMが図示されている。この処理装置は、測定ステーションM以外に、図示されていない別の処理ステーション、即ち、コーティングステーション、乾燥ステーション、カレンダー処理ステーション及び裁断ステーションを備えている。このコーティングステーションでは、エンドレスストリップとしての導電体フォイル1が、片側又は両側に活物質層3を塗布される、詳しくは、電極ストリップEを構成するように塗布される。この電極ストリップEは、更なるプロセスフローにおいて、乾燥ステーションを通して案内され、このステーションにおいて、導電体フォイル1上に塗布された活物質層3が乾燥される。それに続いて、電極ストリップEは、カレンダー処理ステーションを通して案内され、このステーションにおいて、導電体フォイル1上に塗布された活物質層3が予め定義された層厚にまで圧縮される。この後に裁断ステーションが続き、このステーションにおいて、電極ストリップEが電極として分離又は裁断される。
【0022】
この測定ステーションMの測定器4を用いて、活物質層3の固有抵抗ρと、導電体フォイル1に対する活物質層3の接触抵抗Ωとを測定することができる。本発明の核心は、測定ステーションMが電極を連続して製造する処理装置に統合されていることである。これによって、測定プロセスが「インライン」で、即ち、連続製造プロセス中に電極ストリップEに対して直接的に、即ち、早くも電極の完成前のプロセス時点で実施可能となる。
【0023】
図1から更に分かる通り、測定ステーションMが、二つの測定ローラー5,7から成るローラー機器を備え、電極ストリップEの両側が、これらのローラー上を進む。即ち、
図1によると、電極ストリップEの一方の側を測定のために第一の測定ローラー5に接触させることが可能である一方、電極ストリップEの他方の側を測定のために第二の測定ローラー7に接触させることが可能である。これらの測定ローラー5,7は、各測定ローラー5,7の外周の周囲に分散して配置された測定器4を備えている。これらの測定器4の通電接点は、例えば、ケーブル接続により、或いはバッテリー溶液を介して、それぞれの測定ローラー5,7に組み込むことができる。更に、
図1の二つの測定ローラー5,7の後に、精密厚さ測定器17が接続されており、この測定器を用いて、電極ストリップEの局所的な厚さが検出される。
【0024】
これらの測定器4の中の一つの測定器4が
図2~5に詳しく図示されている。これは、電極アレイ11を備えたチップとして実現されており、このチップは、
図2~4において、本発明の理解に必要な範囲内で模式的に図示されている。このチップ4の全幅は、コーティングの厚さと同じオーダーであると規定される。更に、このチップ4は、
図2では、フレキシブル回路基板(flexible printed circuit:FPC)設計部の構成要素であり、これは、電気導体路とチップ4が取り付けられた薄い曲がるプラスチック基板9から構成される。このチップ4は、電流測定アレイ13と電圧測定アレイ15に分けられる微小電極アレイ11を有する。この電流測定アレイ13は、周縁側の外側電流測定電極から構成される一方、この電圧測定アレイ15は、外側電流測定電極によって取り囲まれた内側電圧測定電極から構成される。従って、これらの電流測定アレイ13と電圧測定アレイ15を用いて、電流測定と電圧測定が互いに独立して行われる。測定プロセス中(
図5)に、微小電極アレイ11の電極が、電極ストリップEの活物質層3の表面と非破壊的に接触される。この微小電極アレイ11を用いて、実際に測定すべき電極ストリップ部分の複数の点に予め定義された電流Iが印加される。その結果得られる電位分布は、活物質層3の表面上の複数の測定点において、電圧測定アレイ15の電極によって検出される。
【0025】
この外側電流測定アレイ13の電極は、測定プロセス中、電流のソース又はシンクとして選択的に使用可能である一方、この内側電圧測定アレイ15の電極は、電圧測定のために使用可能である。この場合、各電極は、個別に駆動可能又は読取可能なチャンネルを備えることができる(これは符号化することもできる)。このチップ4の電極と評価ユニット19の信号接続は、無線(5G、Wifi)又は有線により接続された誘導接点を介してデジタル信号符号化方式に基づき実現することができる。
【0026】
この測定器4は、
図1では、計算ユニット16を割り当てられており、このユニットには、電流測定アレイ13と電圧測定アレイ15によって検出されたデータ、電極ストリップEの厚さ測定器17によって検出されたデータ(即ち、電極ストリップの測定された厚さs)を読み込むことが可能である。この計算ユニット16は、これらのデータと導電体フォイル1の固有抵抗に基づき、実際に測定された電極ストリップ部分の活物質層3の固有抵抗ρと導電体フォイルに対する活物質層3の接触抵抗Ωとを算出する。この計算ユニット16は、ローカルFEMシミュレーションを用いて処理する。従って、この計算ユニット16では、チップ4の下に在る活物質層3のシミュレーションが、シミュレーションモデルと層厚測定を用いて行われる。
【0027】
これらの算出された抵抗値ρ,Ωが評価ユニット19に送られて、このユニットが、抵抗値ρ,Ωをそれらに対応する目標値ρsoll,Ωsollと比較する。実施に検出された抵抗測定値の偏差が有意である場合、この実際に測定された電極ストリップ部分は、更なる電極製造のために使用されるのではなく、むしろ材料廃棄部に送られる。実際の抵抗測定値ρ,Ωが大きな偏差無しに目標値ρsoll,Ωsollの範囲内に在る場合、この実際に測定された電極ストリップ部分は更なるバッテリーセル製造のために使用される。
【0028】
図5では、電流測定アレイ13の電流測定電極の間の電流Iが破線で表示されている。それによると、電流Iが、導電体フォイル1だけを通って流れるのではなく、活物質層3も通って流れ、その結果、活物質層3の固有抵抗ρと導電体フォイル1に対する活物質層3の接触抵抗Ωの両方が高い精度で測定可能である。
【0029】
図2では、測定ローラー5,7の材料構造が大まかに模式的に図示されている。それによると、各測定ローラー5,7が固い基材21を有する。フレキシブル回路基板(FPC)設計部は、測定ローラー5の固い基材21上に直接的に配置されているのではなく、むしろ弾性的に撓む緩衝材23を間に挟んで配置されている。この緩衝材23が過負荷保護スプリングの形式で作用し、これを用いて、測定器4(即ち、チップ)が、常に予め定義された押圧力でエンドレスストリップEの活物質層3に押し付けられる、詳しくは、例えば、電極ストリップEの層厚sの許容偏差に関係なく押し付けられる。更に、測定ローラー5は、測定器4以外の外周を(例えば、PTFEから成る)耐摩耗コーティング25で覆われており、それによって、活物質層3の汚染を引き起こす可能性のある、動作時に起こるローラー材料の摩耗が防止される。
【0030】
図示された実施例に代わって、チップ4は、例えば、測定ローラー5,7に直接取り付けるか、或いは固体層に埋め込むことができる。このローラー構造は、更に、耐摩耗層25の無い形で実現することもできる。更に、耐摩耗層25は、PTFEに代わって、金属、例えば、クロム、ニッケルにより、或いはセラミックコーティングにより実現することもできる。更に、別の実施例は、スプリング式の個別接点を備えたチップである。これは、任意の形式のスプリングによって保証することができる。動作時に、異なる電極の間の電気的接触を生じさせないことが重要である。
【符号の説明】
【0031】
1 導電体フォイル
3 活物質層
4 測定器
5,7 測定ローラー
9 プラスチック基板
11 微小電極アレイ
13 電流測定アレイ
15 電圧測定アレイ
16 計算ユニット
17 厚さ測定部
19 評価ユニット
21 ローラー基材
23 緩衝材
25 耐摩耗コーティング
E 電極ストリップ
M 測定ステーション
FPC フレキシブルプリント回路基板設計部
ρ 固有抵抗
Ω 接触抵抗
s 電極ストリップEの層厚
I 電流
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体フォイル(1)をエンドレスストリップとして処理ステーションを通して連続的に案内可能である、詳しくは、最後の裁断ステーションで電極として分離及び/又は裁断される電極ストリップ(E)を作成するように案内可能である、バッテリーセル用電極を製造するための処理装置において、
この処理装置が、少なくとも一つの測定器(4)を備えた測定ステーション(M)を有し、この測定ステーションで、活物質層(3)の固有抵抗(ρ)及び/又は導電体フォイル(1)に対する活物質層(3)の接触抵抗(Ω)、或いはそれらに関連する値が測定可能であることと、
特に、この測定プロセスが、電極ストリップ(E)に対して直接的に(インラインで)実施可能である、即ち、電極の完成前に実施可能であることと、を特徴とする処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置において、
この処理装置が、処理ステーションとして、
導電体フォイル(1)の片側又は両側に活物質層(3)を塗布可能なコーティングステーションと、
導電体フォイル(1)上に塗布された活物質層(3)を乾燥させる乾燥ステーションと、
導電体フォイル(1)上に塗布された活物質層(3)を予め定義された層厚にまで圧縮可能なカレンダー処理ステーションと、
を有することと、
この裁断ステーションが、プロセス技術に関してカレンダー処理ステーションの後に接続されていることと、を特徴とする処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、プロセス技術に関してカレンダー処理ステーションの直前及び/又は直後に接続されており、その結果、固有抵抗(ρ)又は接触抵抗(Ω)が、カレンダー処理の前及び/又は後に測定可能であることを特徴とする処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、測定器(4)によって検出された抵抗測定値(ρ,Ω)を目標値(ρsoll,Ωsoll)と比較する評価ユニット(19)を備えることと、
特に、実際に検出された抵抗測定値(ρ,Ω)の偏差が有意である場合に、実際に測定された電極ストリップ部分が電極の製造のために使用されるのではなく、材料廃棄部に送られることを特徴とする処理装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の処理装置において、
前記の測定器(4)が、少なくとも一つの微小電極アレイ(11)を備え、当該微小電極アレイ(11)の電極が、測定中に活物質層(3)の表面と非破壊的に接触することを特徴とする処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の処理装置において、
前記の微小電極アレイ(11)を用いて、電極ストリップ部分の複数の点に予め定義された電流(I)を印加することが可能であり、それにより得られる電位分布が、活物質層(3)の表面上の複数の測定点において検出可能であることと、
前記の微小電極アレイ(11)が、電流(I)を発生させるための電流ソース及び電流シンクとして電極が作用する電流測定アレイ(13)と、電流(I)から生じる電位分布を電極が測定する電圧測定アレイ(15)とに分けられていることと、
特に、電流(I)、検出された電位分布、活物質層(3)の層厚(s)及び導電体フォイル(1)の固有抵抗に基づいて、活物質層(3)の固有抵抗(ρ)と接触抵抗(Ω)を計算する、詳しくは、特に、FEMシミュレーションを用いて計算する計算ユニット(16)が微小電極アレイ(11)に割り当てられていることと、の中の一つ以上を特徴とする処理装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、少なくとも一つの測定ローラー(5,7)を備えたローラー機器を有し、電極ストリップ(E)が、当該測定ローラー(5,7)上を進むことと、
特に、前記の測定器(4)が、測定ローラー(5,7)の外周に配置されているか、或いは、前記の測定ステーション(M)が、電極ストリップ(E)の動きと連動して直線的にシフト可能なスライダーを備え、このスライダーを用いて、前記の測定器(4)が、直線的な測定区間に渡って、測定のために電極ストリップ(E)と接触可能であることと、を特徴とする処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の処理装置において、
前記の測定器(4)が、測定ローラー(5,7)の固い基材(21)上に直に配置されているのではなく、弾力的に撓む緩衝材(23)を間に挟んで測定ローラー(5,7)の基材(21)上に配置されており、その結果、特に、この測定器(4)が、予め定義された押圧力で電極ストリップ(E)の活物質層(3)に押し付けられる、詳しくは、有利には、活物質層(3)の層厚の許容偏差に関係無く押し付けられ、特に、前記の測定ローラ(5,7)の外周が、測定器(4)以外の領域において、ローラー材料の摩耗による活物質層(3)の汚染を防止するために耐摩耗コーティング(25)で覆われていることと、 前記のローラー機器が二つの測定ローラー(5,7)を備え、電極ストリップ(E)の両側が、これらの測定ローラー上を進み、その結果、電極ストリップ(E)の一方の側が測定のために第一の測定ローラー(5)と接触可能であり、電極ストリップ(E)の他方の側が測定のために第二の測定ローラー(7)と接触可能であることと、の中の一つ以上であることを特徴とする処理装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の処理装置において電極を製造する方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
図示された実施例に代わって、チップ4は、例えば、測定ローラー5,7に直接取り付けるか、或いは固体層に埋め込むことができる。このローラー構造は、更に、耐摩耗層25の無い形で実現することもできる。更に、耐摩耗層25は、PTFEに代わって、金属、例えば、クロム、ニッケルにより、或いはセラミックコーティングにより実現することもできる。更に、別の実施例は、スプリング式の個別接点を備えたチップである。これは、任意の形式のスプリングによって保証することができる。動作時に、異なる電極の間の電気的接触を生じさせないことが重要である。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る。
1.
導電体フォイル(1)をエンドレスストリップとして処理ステーションを通して連続的に案内可能である、詳しくは、最後の裁断ステーションで電極として分離及び/又は裁断される電極ストリップ(E)を作成するように案内可能である、バッテリーセル用電極を製造するための処理装置において、
この処理装置が、少なくとも一つの測定器(4)を備えた測定ステーション(M)を有し、この測定ステーションで、活物質層(3)の固有抵抗(ρ)及び/又は導電体フォイル(1)に対する活物質層(3)の接触抵抗(Ω)、或いはそれらに関連する値が測定可能であり、
特に、この測定プロセスが、電極ストリップ(E)に対して直接的に(インラインで)実施可能である、即ち、電極の完成前に実施可能である当該処理装置。
2.
上記1に記載の処理装置において、
この処理装置が、処理ステーションとして、
導電体フォイル(1)の片側又は両側に活物質層(3)を塗布可能なコーティングステーションと、
導電体フォイル(1)上に塗布された活物質層(3)を乾燥させる乾燥ステーションと、
導電体フォイル(1)上に塗布された活物質層(3)を予め定義された層厚にまで圧縮可能なカレンダー処理ステーションと、
を有することと、
この裁断ステーションが、プロセス技術に関してカレンダー処理ステーションの後に接続されている当該処理装置。
3.
上記1又は2に記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、プロセス技術に関してカレンダー処理ステーションの直前及び/又は直後に接続されており、その結果、固有抵抗(ρ)又は接触抵抗(Ω)が、カレンダー処理の前及び/又は後に測定可能である当該処理装置。
4.
上記1、2又は3に記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、測定器(4)によって検出された抵抗測定値(ρ,Ω)を目標値(ρ
soll,
Ω
soll
)と比較する評価ユニット(19)を備えることと、
特に、実際に検出された抵抗測定値(ρ,Ω)の偏差が有意である場合に、実際に測定された電極ストリップ部分が電極の製造のために使用されるのではなく、材料廃棄部に送られる当該処理装置。
5.
上記1~4の何れか1つに記載の処理装置において、
前記の測定器(4)が、少なくとも一つの微小電極アレイ(11)を備え、当該微小電極アレイ(11)の電極が、測定中に活物質層(3)の表面と非破壊的に接触する当該処理装置。
6.
上記5に記載の処理装置において、
前記の微小電極アレイ(11)を用いて、電極ストリップ部分の複数の点に予め定義された電流(I)を印加することが可能であり、それにより得られる電位分布が、活物質層(3)の表面上の複数の測定点において検出可能であることと、
前記の微小電極アレイ(11)が、電流(I)を発生させるための電流ソース及び電流シンクとして電極が作用する電流測定アレイ(13)と、電流(I)から生じる電位分布を電極が測定する電圧測定アレイ(15)とに分けられていることと、
特に、電流(I)、検出された電位分布、活物質層(3)の層厚(s)及び導電体フォイル(1)の固有抵抗に基づいて、活物質層(3)の固有抵抗(ρ)と接触抵抗(Ω)を計算する、詳しくは、特に、FEMシミュレーションを用いて計算する計算ユニット(16)が微小電極アレイ(11)に割り当てられていることと、の中の一つ以上である処理装置。
7.
上記1~6の何れか1つに記載の処理装置において、
前記の測定ステーション(M)が、少なくとも一つの測定ローラー(5,7)を備えたローラー機器を有し、電極ストリップ(E)が、当該測定ローラー(5,7)上を進み、
特に、前記の測定器(4)が、測定ローラー(5,7)の外周に配置されているか、或いは、前記の測定ステーション(M)が、電極ストリップ(E)の動きと連動して直線的にシフト可能なスライダーを備え、このスライダーを用いて、前記の測定器(4)が、直線的な測定区間に渡って、測定のために電極ストリップ(E)と接触可能である当該処理装置。
8.
上記7に記載の処理装置において、
前記の測定器(4)が、測定ローラー(5,7)の固い基材(21)上に直に配置されているのではなく、弾力的に撓む緩衝材(23)を間に挟んで測定ローラー(5,7)の基材(21)上に配置されており、その結果、特に、この測定器(4)が、予め定義された押圧力で電極ストリップ(E)の活物質層(3)に押し付けられる、詳しくは、有利には、活物質層(3)の層厚の許容偏差に関係無く押し付けられ、特に、前記の測定ローラ(5,7)の外周が、測定器(4)以外の領域において、ローラー材料の摩耗による活物質層(3)の汚染を防止するために耐摩耗コーティング(25)で覆われていることと、 前記のローラー機器が二つの測定ローラー(5,7)を備え、電極ストリップ(E)の両側が、これらの測定ローラー上を進み、その結果、電極ストリップ(E)の一方の側が測定のために第一の測定ローラー(5)と接触可能であり、電極ストリップ(E)の他方の側が測定のために第二の測定ローラー(7)と接触可能であることと、の中の一つ以上である当該処理装置。
9.
上記1~8の何れか1つに記載の処理装置において電極を製造する方法。
【外国語明細書】