(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159554
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】青果物の鮮度保持方法、及び青果物包装体
(51)【国際特許分類】
A23B 7/148 20060101AFI20241031BHJP
B65D 85/50 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A23B7/148
B65D85/50 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063896
(22)【出願日】2024-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2023073429
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 顕
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慧介
【テーマコード(参考)】
3E035
4B169
【Fターム(参考)】
3E035AA11
3E035BA08
3E035BB02
3E035BC02
3E035BD01
3E035CA04
4B169AA03
4B169AB03
4B169HA11
4B169KA03
4B169KC32
4B169KC36
4B169KD02
4B169KD07
(57)【要約】
【課題】青果物に適した保存雰囲気(最適な酸素濃度、及び最適な二酸化炭素濃度)にすることができ、長期に青果物の鮮度を保持し得る青果物の鮮度保持方法、及び包装体内部を青果物に適した保存雰囲気に調整でき、長期に青果物の鮮度を保持し得る青果物包装体を提供する。
【解決手段】青果物(A)と、酸素吸収能を有する雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に収容して、青果物包装体を得る工程(I)と、前記青果物包装体を保持する工程(II)と、を有し、青果物(A)が、メロンであり、工程(I)において、前記青果物包装体が、下記要件(i)及び(ii)を満たす、青果物の鮮度保持方法。要件(i)は酸素交換速度に対する酸素低減速度の比が、0.5~3.0である。要件(ii)は二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比が、0.2~1.0である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物(A)と、酸素吸収能を有する雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に収容して、青果物包装体を得る工程(I)と、
前記青果物包装体を保持する工程(II)と、を有し、
青果物(A)が、メロンであり、
工程(I)において、前記青果物包装体が、下記要件(i)及び(ii)を満たす、青果物の鮮度保持方法。
要件(i):酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である。
要件(ii):二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である。
ただし、要件(i)において、「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
また、要件(ii)において、「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
【請求項2】
雰囲気調整剤包装体(X)が、更に二酸化炭素発生能を有する、請求項1に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項3】
雰囲気調整剤包装体(X)が、アスコルビン酸類系雰囲気調整剤及び多価フェノール類系雰囲気調整剤から選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項4】
包装材(B)の一部が通気可能な状態で封止されてなる、請求項1又は2に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項5】
包装材(B)が、1以上の貫通孔を有する、請求項1又は2に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項6】
工程(I)が、包装材(B)の開口部から青果物(A)と雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に挿入し、次いで前記開口部を封止する工程と、包装材(B)に穿孔加工する工程を含み、前記2工程の順序は問わない、請求項1又は2に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項7】
工程(II)における前記青果物包装体の保持温度が、0℃以上40℃以下である、請求項1又は2に記載の青果物の鮮度保持方法。
【請求項8】
青果物(A)と、酸素吸収能を有する雰囲気調整剤包装体(X)と、これらを収容する包装材(B)とを備える青果物包装体であって、
青果物(A)が、メロンであり、
前記青果物包装体が、下記要件(i)及び(ii)を満たす、青果物包装体。
要件(i):酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である。
要件(ii):二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である。
ただし、要件(i)において、「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
また、要件(ii)において、「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
【請求項9】
雰囲気調整剤包装体(X)が、二酸化炭素発生能を有する、請求項8に記載の青果物包装体。
【請求項10】
雰囲気調整剤包装体(X)が、アスコルビン酸類系雰囲気調整剤及び多価フェノール類系雰囲気調整剤から選択される1種以上を含む、請求項8又は9に記載の青果物包装体。
【請求項11】
包装材(B)の一部が通気可能な状態で封止されてなる、請求項8又は9に記載の青果物包装体。
【請求項12】
包装材(B)が、1以上の貫通孔を有する、請求項8又は9に記載の青果物包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青果物の鮮度保持方法、及び青果物包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
青果物は、収穫後にも生命活動を継続した状態で流通し、品質と共に鮮度が求められる。鮮度は、外観(変色、萎れ、目減り)・質量減少・成分変化・病変等に分けることができる。
青果物の鮮度を保持する要素は、米国USDAや、日本国内でも国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下、通称「農研機構」という)や大学の調査により明らかになっている。
例えば、青果物の鮮度を保つ方法として、生命活動を維持できる範囲で生体活性を低下させる方法が広く行われてきている。このような生体活性の低下方法は、具体的には、青果物の冷蔵や、酸素や二酸化炭素等のガス雰囲気の調整、ホルモン物質であるエチレンガスの除去等が挙げられ、これらの方法によれば青果物内に貯蔵されている糖・酸類を比較的高く維持すること可能となる。
近年では、冷蔵流通(コールドチェーン)が広く普及しているほか、ガス雰囲気調整による鮮度管理も行われてきている。
特にガス雰囲気調整は、適切にガス雰囲気を管理すれば、高い鮮度保持効果が期待できる。ガス雰囲気調整による青果物の保存方法としては、ガス調整装置を倉庫やコンテナに設置するCA(Controlled Atmosphere)保存や、青果物の呼吸によるガス交換を利用したMA(Modified Atmosphere)包装が利用されている。
ここで重要となるのは、青果物に応じた、ガス雰囲気の調整・管理である。青果物は、品種・産地・収穫時期・栽培方法によって生育状態が異なり呼吸量が大きく異なるため、青果物に応じて、ガス雰囲気の最適化が求められる。
CA保存は、設備が大型であるため、最適化されるガス雰囲気の多様化が困難で、コールドチェーンの切れ目に対応できない課題がある。
一方、MA包装は、CA保存に比べて小規模に実施でき、青果物毎にガス雰囲気を最適化し易い利点がある。例えば、特許文献1では、青果物を密封した高分子フィルムよりなる青果物入り包装体において、(A)有孔高分子フィルムと(B)無孔高分子フィルムとを用い、前記(A)の開孔面積比率を所定の範囲とする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような青果物入り包装体の場合、ガス雰囲気調整は、青果物の呼吸量等と隔離膜の通気量等とが平衡状態に達することで初めて機能が発現するため、CA保存のような専用のガス雰囲気調整装置の使用に比べると、平衡状態まで時間がかかり、且つそれまでの呼吸作用や蒸散によって青果物の糖や水分が失われる問題がある。
また、一律の隔離膜制御では、青果物毎に呼吸量等が異なるため、ガス雰囲気調整が難しく、青果物毎に最適化した対応が必要であり、結果的には、青果物に応じた多様な資材種の隔離膜を準備する必要がある。そのため、MA包装は、鮮度保持効果が期待できても、実際の使用は量産効果が見込める青果物に限定されているのが現状であり、多品種を栽培している農家や近年伸長しているインターネット販売等の少量多品種流通に対応することが難しく、普及が進まない問題がある。
そこで本発明は、青果物に適した保存雰囲気(最適な酸素濃度、及び最適な二酸化炭素濃度)にすることができ、長期に青果物の鮮度を保持し得る青果物の鮮度保持方法、及び包装体内部を青果物に適した保存雰囲気に簡便且つ迅速に調整でき、長期に青果物の鮮度を保持し得る青果物包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
【0006】
[1]青果物(A)と、酸素吸収能を有する雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に収容して、青果物包装体を得る工程(I)と、前記青果物包装体を保持する工程(II)と、を有し、青果物(A)が、メロンであり、工程(I)において、前記青果物包装体が、下記要件(i)及び(ii)を満たす、青果物の鮮度保持方法。
要件(i):酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である。
要件(ii):二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である。
ただし、要件(i)において、「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。また、要件(ii)において、「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
[2]雰囲気調整剤包装体(X)が、更に二酸化炭素発生能を有する、上記[1]に記載の青果物の鮮度保持方法。
[3]雰囲気調整剤包装体(X)が、アスコルビン酸類系雰囲気調整剤及び多価フェノール類系雰囲気調整剤から選択される1種以上を含む、上記[1]又は[2]に記載の青果物の鮮度保持方法。
[4]包装材(B)の一部が通気可能な状態で封止されてなる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の青果物の鮮度保持方法。
[5]包装材(B)が、1以上の貫通孔を有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の青果物の鮮度保持方法。
[6]工程(I)が、包装材(B)の開口部から青果物(A)と雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に挿入し、次いで前記開口部を封止する工程と、包装材(B)に穿孔加工する工程を含み、前記2工程の順序は問わない、上記[1]~[5]のいずれかに記載の青果物の鮮度保持方法。
[7]工程(II)における前記青果物包装体の保持温度が、0℃以上40℃以下である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の青果物の鮮度保持方法。
[8]青果物(A)と、酸素吸収能を有する雰囲気調整剤包装体(X)と、これらを収容する包装材(B)とを備える青果物包装体であって、青果物(A)が、メロンであり、前記青果物包装体が、下記要件(i)及び(ii)を満たす、青果物包装体。
要件(i):酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である。
要件(ii):二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である。
ただし、要件(i)において、「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。また、要件(ii)において、「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
[9]雰囲気調整剤包装体(X)が、更に二酸化炭素発生能を有する、上記[8]に記載の青果物包装体。
[10]雰囲気調整剤包装体(X)が、アスコルビン酸類系雰囲気調整剤及び多価フェノール類系雰囲気調整剤から選択される1種以上を含む、上記[8]又は[9]に記載の青果物包装体。
[11]包装材(B)の一部が通気可能な状態で封止されてなる、上記[8]~[10]のいずれかに記載の青果物包装体。
[12]包装材(B)が、1以上の貫通孔を有する、上記[8]~[11]のいずれかに記載の青果物包装体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、青果物に適した保存雰囲気(最適な酸素濃度、及び最適な二酸化炭素濃度)にすることができ、長期に青果物の鮮度を保持し得る、青果物の鮮度保持方法、及び包装体内部を青果物に適した保存雰囲気に簡便且つ迅速に調整でき、長期に青果物の鮮度を保持し得る青果物包装体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に従う青果物包装体及び青果物の鮮度保持方法の実施形態について、以下で詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」(A<Bの場合)又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を意味する。また、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0009】
[青果物の鮮度保持方法、及び青果物包装体]
本発明の青果物の鮮度保持方法は、青果物(A)と、酸素吸収能を有する雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に収容して、青果物包装体を得る工程(I)と、前記青果物包装体を保持する工程(II)と、を有し、青果物(A)が、メロンであり、工程(I)において、前記青果物包装体が、下記要件(i)及び(ii)を満たす、青果物の鮮度保持方法である。
要件(i):酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である。
要件(ii):二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である。
ただし、要件(i)において、「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。また、要件(ii)において、「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
【0010】
また、本発明には以下の青果物包装体も含まれる。
すなわち、本発明の青果物包装体は、青果物(A)と、酸素吸収能を有する雰囲気調整剤包装体(X)と、これらを収容する包装材(B)とを備える青果物包装体であって、青果物(A)が、メロンであり、前記青果物包装体が、下記要件(i)及び(ii)を満たす、青果物包装体である。
要件(i):酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である。
要件(ii):二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である。
ただし、要件(i)において、「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。また、要件(ii)において、「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
【0011】
本発明の青果物の鮮度保持方法及び青果物包装体が、それぞれ上記構成であることにより、青果物に適した保存雰囲気(最適な酸素濃度、及び最適な二酸化炭素濃度)にすることができ、長期に青果物の鮮度を保持し得る。
本発明の青果物の鮮度保持方法及び青果物包装体が上記効果を奏する理由については、以下のように考える。
青果物は収穫後も生命活動を続け、糖や有機酸等の呼吸基質を分解して生命維持のエネルギーを得ている。代表的な呼吸基質としてグルコースが挙げられ、下記化学式(I)のように、呼吸により得た酸素を使用して、二酸化炭素と水に分解されている。
C6H12O6 +6O2 → 6CO2+6H2O+636kcal ・・・(I)
発生したエネルギーは、生化学反応エネルギー源として蓄積されるほか、熱として放出される。青果物は、適度な熱と酸素があることで呼吸が旺盛になり、呼吸基質の消費が進み鮮度が低下する。
また、呼吸が活発になると、青果物からの水分の蒸散も進み、萎れ等の要因となる。
そのため、青果物の保存雰囲気は低酸素状態とすることが好ましい。保存雰囲気を低酸素状態とすることで、呼吸が抑制され呼吸基質の消費が抑制されると共に、呼吸熱も抑制される。
また、二酸化炭素は、その濃度や、青果物の種類や収穫時の生育ステージによって、青果物の成長ホルモンの一つであるエチレンの発生を抑制・促進する効果がある。そのため、二酸化炭素濃度が高いほど、エチレンガスの発生が抑制される青果物に対しては、青果物の保存雰囲気は高二酸化炭素状態とすることが好ましい。また、二酸化炭素濃度が高いほど、青果物の呼吸も抑制できる。なお、各青果物における保存雰囲気中の二酸化炭素濃度の最適値については、前述の米国USDAや、農研機構等が公開情報として開示している。
本発明の鮮度保持方法及び青果物包装体の好ましい実施形態によれば、特に短時間で青果物に適した保存雰囲気にすることができるため、より長期に青果物の鮮度を保持することができる。
【0012】
以下に本発明の青果物の鮮度保持方法について、各成分及び各要件を説明するが、本発明の青果物包装体についての各成分及び各要件も同様であり、以下の説明をもって、本発明の青果物包装体についての各成分及び各要件の説明とする。
【0013】
<工程(I)>
本発明の青果物の鮮度保持方法における工程(I)は、青果物(A)と、酸素吸収能を有する雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に収容して、青果物包装体を得る工程であり、工程(I)において、前記青果物包装体が、下記要件(i)及び(ii)を満たす。
要件(i):酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である。
要件(ii):二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である。
ただし、要件(i)において、「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。また、要件(ii)において、「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
【0014】
<青果物(A)>
本発明における青果物(A)は、メロンである。メロンは、酸素が低濃度、二酸化炭素が高濃度で保存することにより、鮮度保持できるため、二酸化炭素が共存することでエチレンガスの発生が抑制されるメロンに対して、好適である。特に酸素濃度が3~5体積%、二酸化炭素濃度が5~10体積%で保存することがメロンに対して、より好適である。
本発明において、包装材(B)内に収容されるメロンは、果実部分のことをいう。
前記メロンとしては、通常食用とされるメロンであれば特に制限はないが、マスクメロンであることが好ましい。また、前記メロンとしては、カンタルペンシス群、レティクラトゥス群、イノドルス群、及びマクワ群からなる群より選ばれる少なくとも1つの品種であることが好ましく、カンタルペンシス群及びレティクラトゥス群からなる群より選ばれる少なくとも1つの品種であることがより好ましく、レティクラトゥス群であることが更に好ましい。
【0015】
[雰囲気調整剤包装体(X)]
本発明の青果物の鮮度保持方法における工程(I)で得られる雰囲気調整剤包装体(X)は、酸素吸収能を有する。また、本発明の青果物包装体に備えられる雰囲気調整剤包装体(X)は、酸素吸収能を有する。
雰囲気調整剤包装体(X)は、好ましくは、更に二酸化炭素発生能を有する。二酸化炭素発生能を有する雰囲気調整剤包装体(X)を用いることで、メロンの呼吸を抑制しつつ、エチレンガスの発生を抑制できるため、メロンの鮮度を保持することができる。
【0016】
雰囲気調整剤包装体(X)は、好ましくは、アスコルビン酸類系雰囲気調整剤及び多価フェノール類系雰囲気調整剤から選択される1種以上を含む。また、前記雰囲気調整剤は包装材(b)によって包装され、雰囲気調整剤包装体(X)とすることが好ましい。
前記雰囲気調整剤を以下、雰囲気調整剤(x)ともいう。
すなわち、好ましい実施形態において、雰囲気調整剤包装体(X)は、雰囲気調整剤(x)を含み、少なくとも該雰囲気調整剤(x)が包装材(b)によって包装されている。
雰囲気調整剤包装体(X)は、工程(I)において得られる前記青果物包装体に1つ以上含まれ、2つ以上含んでいてもよい。複数の雰囲気調整剤包装体(X)を用いる場合、複数が全体として、酸素吸収能、及び好ましくは二酸化炭素発生能を発揮すればよく、各雰囲気調整剤包装体(X)の機能は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
(雰囲気調整剤(x))
雰囲気調整剤包装体(X)は、好ましくは、雰囲気調整剤(x)と、これを収容する包装材(b)とを備える。
雰囲気調整剤(x)としては、特に限定されず、雰囲気調整剤包装体(X)の機能に応じて、公知の材料を選択して用いることができる。公知の材料としては、たとえば、鉄粉等の金属粉、鉄化合物等の還元性無機物質、多価フェノール類、多価アルコール類、アスコルビン酸又はその塩等の還元性有機物質又は金属錯体、炭素-炭素二重結合を有する高分子化合物等を酸素吸収反応の主剤とする脱酸素剤が挙げられる。
これらの材料を用いた雰囲気調整剤のなかでも、雰囲気調整剤(x)としては、アスコルビン酸類系雰囲気調整剤、多価フェノール類系雰囲気調整剤等の非鉄系雰囲気調整剤等が好ましい。
【0018】
雰囲気調整剤(x)は、主剤として、アスコルビン酸類等の非鉄系酸素吸収性物質を含むことが好ましく、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、アルカリ性物質、触媒、担体、水、膨潤剤、発熱抑制剤、臭気吸着剤等が挙げられる。
特に、雰囲気調整剤(x)は、非鉄系酸素吸収性物質と、アルカリ性物質、触媒、担体、膨潤剤及び水からなる群から選択される1種以上とを含有することが好ましく、非鉄系酸素吸収性物質と、アルカリ性物質、触媒及び担体を含有することがより好ましい。
【0019】
〈非鉄系酸素吸収性物質〉
非鉄系酸素吸収性物質としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸(イソアスコルビン酸)、エリソルビン酸塩等のアスコルビン酸類、没食子酸、カテコール等の多価フェノール類が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
雰囲気調整剤(x)が、主剤として非鉄系酸素吸収性物質を含む場合には、雰囲気調整剤(x)中の非鉄系酸素吸収性物質の含有量は、好ましくは15質量%以上70質量%以下、より好ましくは45質量%以上65質量%以下、更に好ましくは45質量%以上60質量%以下である。
【0021】
〈アルカリ性物質〉
アルカリ性物質は、非鉄系酸素吸収性物質の酸化反応を迅速に進行させ、反応場をアルカリ性領域に制御する目的で使用され、例えば、炭酸塩や、水酸化物、弱酸と強塩基からなる塩等が挙げられる。中でも、アルカリ性物質は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。更に、例えばアスコルビン酸のような非鉄系酸素吸収性物質との塩になったときの水への溶解度の観点からは、アルカリ性物質は、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物から選択される1種以上がより好ましい。
【0022】
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物等の、水溶性のアルカリ金属炭酸塩が好適に用いられ、中でも炭酸ナトリウムが特に好ましい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられ、中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0023】
雰囲気調整剤(x)が、アルカリ性物質を含む場合には、雰囲気調整剤(x)中のアルカリ性物質の含有量は、好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは8質量%以上15質量%以下である。
【0024】
〈触媒〉
触媒は、酸素吸収量や酸素吸収速度を向上させる役割があり、例えば、遷移金属触媒が挙げられる。触媒を含む構成とすることにより、酸素吸収能の高い雰囲気調整剤(x)を得ることができる。
遷移金属触媒は、好ましくは遷移金属塩である。
遷移金属塩は、好ましくはCu、Fe、Co、Ni、Cr及びMnからなる群から選択される1種以上の遷移金属塩であり、酸素吸収性能、安全性を考慮すると、より好ましくはMn及びFeからなる群から選択される1種以上の遷移金属塩であり、更に好ましくはFeの塩である。
また、遷移金属塩として、例えば、塩酸塩、硫酸塩、塩化物塩、硝酸塩又は複塩、或いはこれらの水和物等の無機塩や、脂肪酸塩、アセチルアセトン金属塩等の有機塩等を好適に用いることができ、中でも硫酸塩がより好ましい。
【0025】
雰囲気調整剤(x)が、触媒を含む場合には、雰囲気調整剤(x)中の触媒の含有量は、好ましくは2質量%以上10質量%以下、より好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0026】
〈担体〉
担体は、非鉄系酸素吸収性物質と触媒を担持するものであり、酸素吸収量や酸素吸収速度を向上させる役割がある。担体を含む構成とすることにより、雰囲気調整剤(x)の構成成分を造粒して、粉体として取り扱うことが可能になる。
担体としては、例えば、活性炭;水酸化カルシウム;ケイ酸カルシウム、シリカ、珪藻土、ゼオライト、バーミキュライト等のケイ酸塩;等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、活性炭が好ましい。
活性炭は、担体としての役割だけでなく、臭気の発生を抑制する機能もあり、原材料としては木質、ヤシ殻、石炭等のいずれであってもよい。
【0027】
雰囲気調整剤(x)が、担体を含む場合には、担体の含有量は、主剤である非鉄系酸素吸収剤100質量部に対して、好ましくは5質量部以上25質量部以下、より好ましくは10質量部以上20質量部以下である。上記範囲とすることにより、酸素吸収能が得られると共に、造粒し易くなる。また、雰囲気調整剤(x)中の担体の含有量は、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
【0028】
〈膨潤剤〉
膨潤剤は、水分により膨潤し、造粒物の形状を保持するための粘結機能を有する物質で、酸素吸収量や酸素吸収速度を向上させる役割がある。膨潤剤は、実質的に乾燥状態で用いるか又は少量乃至必要量の水を吸収した半膨潤あるいは膨潤した状態で用いることが好ましい。
【0029】
膨潤剤としては、一般に知られている膨潤剤であれば特に制限はなく、食品等に用いられている公知の膨潤剤、結着剤、粘着剤、及びバインダーを使用できる。
無機膨潤剤としては、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、ナトリウムモンモリロナイト等の粘土鉱物が挙げられる。有機膨潤剤としては、有機ベントナイト;脱脂凍豆腐、寒天、澱粉、デキストリン、アラビアゴム、ゼラチン、カゼイン等の天然物;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシエチルセルロース、リグニンスルホン酸、ヒドロキシエチル化澱粉等の半合成品;水不溶化したポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル等の合成品等が挙げられる。上述した膨潤剤は、1種を単独で用いることができ、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。また、これらの膨潤剤は、市販品を用いてもよい。
【0030】
前記膨潤剤のなかでも、粘土鉱物及びセルロース系半合成品からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
粘土鉱物は安価で性能的にも優れているので好ましい。粘土鉱物は、無機石鹸としても知られており潤滑剤としての機能を有する。また、水によって膨潤した粘土鉱物は高いチキソトロピー性を示すことが知られており、粘結性も示すので好ましい。
また、セルロース系半合成品は優れた膨潤性を示すため、好ましい。
中でも、安価で且つ粘結力が強いことから、カルシウムベントナイト、ナトリウムベントナイト等のベントナイト類、及びカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムが好ましい。
特に、膨潤剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルシウムベントナイト及びナトリウムベントナイトからなる群から選択される1種以上を含有することがより好ましい。
【0031】
雰囲気調整剤(x)が、膨潤剤を含む場合には、雰囲気調整剤(x)中の膨潤剤の含有量は、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
【0032】
〈発熱抑制剤〉
発熱抑制剤は、非鉄系酸素吸収性物質の酸素吸収反応(例えばアスコルビン酸類の酸化反応)の進行に伴う、過度の発熱を抑制する役割を有し、例えば熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂の種類に特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エラストマー又はこれらの混合物が使用でき、特に分子量10000以下の低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの混合物が軟化点の調整が容易であり、臭気の影響が少ないという観点から好適に用いられる。
【0033】
熱可塑性樹脂は、他の成分との混合性の観点から、粒子径が1μm以上500μm以下の粒状体が好ましく、10μm以上300μm以下の粒状体がより好ましい。また、熱可塑性樹脂の軟化点は、より効果的に発熱を抑制する観点から、90℃以上125℃以下が好ましい。
【0034】
雰囲気調整剤(x)が、発熱抑制剤を含む場合には、雰囲気調整剤(x)中の発熱抑制剤の含有量は、非鉄系酸素吸収剤100質量部に対して、35質量部以上300質量部以下が好ましく、60質量部以上200質量部以下がより好ましい。
【0035】
雰囲気調整剤(x)中における熱可塑性樹脂の含有量は、アスコルビン酸類を主剤とする場合、アスコルビン酸類の酸化反応を進行させる観点から、アスコルビン酸類100質量部に対して、35質量部以上300質量部以下が好ましく、60質量部以上200質量部以下がより好ましい。
【0036】
雰囲気調整剤包装体(X)は、アスコルビン酸類系雰囲気調整剤及び多価フェノール類系雰囲気調整剤からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。中でも、酸素吸収能及び二酸化炭素発生能の観点から、アスコルビン酸類系雰囲気調整剤を含むことがより好ましい。
【0037】
(アスコルビン酸類系雰囲気調整剤)
アスコルビン酸類系雰囲気調整剤は、主剤としてアスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸、エリソルビン酸塩及びエリソルビン酸エステルからなる群から選択される1種以上を含み、更にアルカリ性物質、触媒及び水を含むことが好ましく、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸、エリソルビン酸塩及びエリソルビン酸エステルからなる群から選択される1種以上と、アルカリ性物質、触媒、水、担体及び膨潤剤とを含有するものを好適に用いることができる。
このようなアスコルビン酸類系雰囲気調整剤によれば、アスコルビン酸類の酸化反応、及び反応時の分解物である二酸化炭素の発生を利用することで、青果物包装体内を速やかに、低酸素、高二酸化炭素状態にすることができる。
【0038】
アスコルビン酸塩としては、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
アスコルビン酸エステルとしては、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸2-グルコシド等が挙げられる。
エリソルビン酸塩としては、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
なお、その他の各成分については上記のとおりである。
【0039】
(多価フェノール類系雰囲気調整剤)
多価フェノール類系雰囲気調整剤は、主剤として没食子酸及びカテコールから選択される1種以上を含み、更にアルカリ性物質を含むことが好ましい。
このような多価フェノール類系雰囲気調整剤によれば、多価フェノール類の酸化反応、及び反応時の分解物である二酸化炭素の発生を利用することで、青果物包装体内を速やかに、低酸素、高二酸化炭素状態にすることができる。
なお、その他の各成分については上記のとおりである。
【0040】
青果物包装体中の雰囲気調整剤の含有量は、青果物の呼吸量、青果物包装体のガス透過量、雰囲気調整剤の性能(例えば、酸素吸収速度)、並びに目的とする保存期間等を総合的に勘案して、選択、決定すればよいが、青果物(A)100質量部に対して、長期に青果物の鮮度を保持する観点から、好ましくは0.1~50質量部であり、より好ましくは0.2~30質量部であり、更に好ましくは0.3~10質量部であり、より更に好ましくは0.5~5.0質量部であり、より更に好ましくは1.0~3.0質量部である。
【0041】
(包装材(b))
雰囲気調整剤包装体(X)は、上述した雰囲気調整剤(x)を収容する包装材(b)を備えることが好ましい。
包装材(b)としては、雰囲気調整剤用途に用いられる包装材料からなる包装材であれば特に制限されないが、酸素吸収性能を十分に得る観点から通気性の高い包装材料からなることが好ましく、2枚の通気性包装材料を貼り合わせて袋状としたものや、1枚の通気性包装材料と1枚の非通気性包装材料とを貼り合わせて袋状としたもの、1枚の通気性包装材料を折り曲げ、折り曲げ部を除く縁部同士をシールして袋状としたもの等が挙げられる。
【0042】
ここで、通気性包装材料及び非通気性包装材料が四角形状である場合には、包装材(b)は、2枚の通気性包装材料を重ね合わせ、4辺をヒートシールして袋状としたものや、1枚の通気性包装材料と1枚の非通気性包装材料とを重ね合わせ、4辺をヒートシールして袋状としたもの、1枚の通気性包装材料を折り曲げ、折り曲げ部を除く3辺をヒートシールして袋状としたものが挙げられる。また包装材(b)は、通気性包装材料を筒状にしてその筒状体の両端部および胴部をヒートシールして袋状としたものであってもよい。
【0043】
包装材(b)の形状としては、好ましくは、袋状、三方シール状、四方シール状、スティック状、筒状及び箱型からなる群から選択される1つであり、より好ましくは、袋状、スティック状、筒状、箱型からなる群から選択される1つである。
また、包装材(b)が袋状又は三方シール状である場合、その大きさは、例えば縦10mm以上120mm以下、横10mm以上120mm以下である。
【0044】
〈通気性包装材料〉
通気性包装材料としては、特に酸素や、二酸化炭素を透過する包装材料が選択される。例えば、和紙、洋紙、レーヨン紙等の紙類、パルプ、セルロース、合成樹脂からの繊維等の各種繊維類を用いた不織布、プラスチックフィルム又はその穿孔物等、或いは炭酸カルシウム等を添加した後延伸したマイクロポーラスフィルム等、更にはこれらから選択される2種以上を積層した積層物等が挙げられる。
上記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のフィルムと、シール層としてポリエチレン、アイオノマー、ポリブタジエン、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー又はエチレン酢酸ビニルコポリマー等のフィルムとを積層接着した積層フィルム等が使用できる。
このような通気性包装材料としては、有孔ポリエチレンフィルムと紙類の積層物、ポリエチレンからなる不織布、或いは不織布とマイクロポーラスフィルムとの積層物が好ましい。
【0045】
中でも、通気性包装材料としては、ガーレ式試験機法による透気抵抗度が600秒以下、より好ましくは90秒以下のものが好適に用いられる。ここで、透気抵抗度とは、JIS P8117(1998)の方法により測定された値を言うものとする。より具体的には、ガーレ式デンソメーター(株式会社東洋精機製作所製)を使用して100mLの空気が通気性包装材料を透過するのに要した時間を言う。
【0046】
通気性を付与する方法としては、冷針、熱針による穿孔加工の他、種々の方法が採用可能である。穿孔加工により通気性を付与する場合、通気性は、穿孔する孔の径、数、材質等により自由に調整することができる。
【0047】
また、積層フィルムの厚さは、50μm以上300μm以下であることが好ましく、60μm以上250μm以下であることが特に好ましい。この場合、厚さが上記範囲を外れる場合に比べて、強度を保持しヒートシール性や包装適性に優れた包装材とすることができる。
【0048】
〈非通気性包装材料〉
非通気性包装材料としては、アルミニウム箔等を有する包装材料が挙げられる。例えば、雰囲気調整剤包装体(X)の一面に通気性包装材料を用い、もう一面に通気性を有さない包装材料を用いる場合は、片面のみから酸素を吸収させることができる。
【0049】
包装材(b)は、上述した雰囲気調整剤と、必要に応じて添加されるその他の成分とを内容物として収容しているが、これらの収容量は特に限定されず、雰囲気調整剤包装体の使用方法等に応じて適宜調整することができる。例えば、雰囲気調整剤包装体の汎用性、酸素吸収性能、二酸化炭素発生能、水分発生能及び生産性の観点から、1つの雰囲気調整剤包装体(X)あたり、内容物の収容量は、好ましくは0.1g以上100g以下であり、より好ましくは0.5g以上50g以下であり、更に好ましくは1g以上20g以下であり、より更に好ましくは3g以上20g以下である。
【0050】
<包装材(B)>
包装材(B)は、青果物(A)と、雰囲気調整剤包装体(X)とを収容し、青果物包装体の内外との隔離膜となるものである。
包装材(B)としては、青果物(A)と、雰囲気調整剤包装体(X)とを収容でき、青果物包装体の内外とを隔離し得るものであれば特に制限されず、通気性を有する包装材料や、通気性を有さない包装材料からなる包装材を用いることができ、通気性を有する包装材料からなる包装材が好ましい。
【0051】
(通気性を有する包装材料)
通気性を有する包装材料は、目的とするガス透過量(通気量)に応じて、公知の通気性を有する包装材料から適宜選択すればよく、適度な通気性があれば無孔フィルムであっても、有孔フィルムであってもよい。
【0052】
通気性を有する無孔フィルムとしては、例えば、所望の通気性を有する、紙類、各種繊維類を用いた不織布、マイクロポーラスフィルム、これらから選択される2種以上を積層した積層物等が挙げられる。
【0053】
有孔フィルムとしては、上記通気性を有する無孔フィルムや後述する通気性を有さない包装材料に、開孔処理を施した穿孔物、及びこれらの積層物等が挙げられる。
ガス透過量を制御し易くなる観点で、有孔フィルムが好ましく、包装材(B)が、1以上の貫通孔を有することが好ましい。貫通孔は、前記のように、通気性を有する包装材料や通気性を有さない包装材料に開孔処理を施すことによって得られた孔で、包装体の内部と外部で圧力差を設けなくとも容易にガスの交換が生じる大きさの孔のことをいう。
中でも、ガス透過量を制御し易くなる観点で、後述する通気性を有さない包装材料に開孔処理を施した穿孔物が好ましく、後述する樹脂フィルムに開孔処理を施した穿孔物がより好ましく、中でも、有孔ポリプロピレン、有孔ポリエチレン等を好適に用いることができる。
【0054】
包装材(B)が有孔フィルムからなる包装材である場合の貫通孔としては、針を用いて形成した穿孔、レーザーを用いて形成した微細開孔、パンチングを用いて形成した開孔等が挙げられる。
すなわち、本発明の青果物の鮮度保持方法の工程(I)は、包装材(B)に穿孔加工する工程を含むことが好ましい。なお、本明細書において、包装材(B)が有孔フィルムからなる包装材である場合にも、便宜上、穿孔加工前の包装材(B)も「包装材(B)」という。
そのため、本発明の青果物の鮮度保持方法において、工程(I)が、包装材(B)の開口部から、青果物(A)と雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に挿入し、次いで前記開口部を封止する工程と、包装材(B)に穿孔加工する工程を含むことが好ましい。また、前記2工程の順序は問わない。
包装材(B)の開口部から、青果物(A)と雰囲気調整剤包装体(X)とを包装材(B)内に挿入し、次いで前記開口部を封止する工程を工程(I-1)とし、包装材(B)に穿孔加工する工程を工程(I-2)としたときに、工程(I-1)及び工程(I-2)の順序は問わず、工程(I-1)を行い、次いで工程(I-2)を行うという順に行ってもよく、工程(I-2)を行い、次いで工程(I-1)を行うという順に行ってもよい。
【0055】
(通気性を有さない包装材料)
通気性を有さない包装材料は、公知の非通気性の包装材料から適宜選択すればよく、具体的には通気性を有さない無孔フィルムを好適に用いることができる。
【0056】
通気性を有さない無孔フィルムとしては、ガスバリア性の有無は問わず、例えば、開孔処理が施されていない樹脂フィルムや、当該樹脂フィルムと上記通気性を有する無孔フィルムとの積層物等が挙げられる。
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、アイオノマー、ポリブタジエン、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー又はエチレン酢酸ビニルコポリマー等の単層フィルムや、これらからなる群から選択される2種以上を積層接着した積層フィルム等が挙げられる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン等の安価に流通している樹脂フィルムを好適に用いることができる。
【0057】
包装材(B)が通気性を有さない無孔フィルムからなる包装材である場合、ヒートシール部分に隙間を持たせたパーシャルシール方式等によって、青果物包装体に開口部を設け、通気性を確保することができる。
【0058】
包装材(B)の厚さ、形状、大きさ等は、特に限定されず、収容する青果物(A)の大きさや個数、重量、青果物包装体を収容する流通容器の大きさ等に応じて、適宜選択すればよい。
【0059】
包装材(B)の厚さ、すなわち包装材(B)を構成する包装材料の厚さは、強度及び入手性の観点で、例えば10μm以上500μm以下であり、好ましくは20μm以上400μm以下であり、より好ましくは20μm以上100μm以下である。
【0060】
包装材(B)の形状としては、例えば、袋状、筒状、シート状、箱状等が挙げられる。包装材(B)が袋状又は筒状である場合は、青果物(A)と、雰囲気調整剤包装体(X)をその内部に収容した状態で、開口部(筒状の場合両端)を結束又は密閉して用いればよい。また、包装材(B)がシート状である場合は、青果物(A)と、雰囲気調整剤包装体(X)とをその内部に包み込むように収容し、端部を結束又は密閉すればよい。中でも、青果物(A)等の収容の容易さの観点で、袋状であることが好ましい。
【0061】
包装材(B)の大きさは、例えば、包装材(B)が袋状である場合、好ましくは幅250mm以上550mm以下、長さ400mm以上550mm以下である。
【0062】
<青果物包装体の特性>
本発明の青果物の鮮度保持方法の工程(I)で得られる青果物包装体、及び本発明の青果物包装体は、下記要件(i)及び(ii)を満たす。
要件(i):酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である。
要件(ii):二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である。
ただし、要件(i)において、「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。また、要件(ii)において、「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
なお、前記のように本発明の鮮度保持方法に用いられる青果物包装体は、要件(i)及び(ii)を満たし、工程(II)の間、要件(i)及び(ii)を満たすことが好ましいが、少なくとも、工程(II)開始時点(工程(I)終了時点)で、要件(i)及び(ii)を満たす。より具体的には、青果物(A)と雰囲気調整剤包装体(X)を包装材(B)内に挿入して封止する工程と、包装材(B)に穿孔加工する工程の両方が完了し、少なくとも青果物包装体が完成した時点で、要件(i)及び(ii)を満たす。
また、前記のように本発明の青果物包装体は、要件(i)及び(ii)を満たし、青果物包装体を保持する間(青果物を保存する間)、要件(i)及び(ii)を満たすことが好ましいが、少なくとも、青果物包装体の保持を開始した時点で、要件(i)及び(ii)を満たす。より具体的には、青果物(A)と雰囲気調整剤包装体(X)を包装材(B)内に挿入して封止する工程と、包装材(B)に穿孔加工する工程の両方が完了し、少なくとも青果物包装体が完成した時点で、要件(i)及び(ii)を満たす。
【0063】
(要件(i))
要件(i)は、酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕が、0.5~3.0である要件である。
「酸素交換速度」は、包装材(B)の酸素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
「包装材(B)の酸素透過速度」は、前記包装材(B)を構成する包装材料の酸素透過度[mL/(day・m2・atm)]に前記青果物包装体に対応する前記包装材料の有効面積[m2]を乗じて、24[h(時間)]で除した値である前記包装材(B)の標準大気圧下での1時間あたりの酸素透過量[mL/h]として得られる。したがって、要件(i)における包装材(B)の酸素透過速度は、包装材(B)が有孔フィルムからなる包装材である場合には、穿孔加工前の包装材(B)の酸素透過速度をいう。
「青果物包装体の換気速度」は、青果物包装体を構成する前記包装材(B)が貫通孔を有する場合の貫通孔による1時間あたりの換気量(貫通孔の換気速度)[mL/h]と、前記青果物包装体が開口部を有する場合にはその開口部に由来する1時間あたりの換気量(開口部の換気速度)[mL/h]との合計として得られる。
「酸素低減速度」は、前記青果物(A)の呼吸による1時間あたりの酸素消費量(酸素消費速度)[mL/h]と、前記雰囲気調整剤包装体(X)の1時間あたりの酸素吸収量(酸素吸収速度)[mL/h]との合計として得られる。
なお、上記酸素透過度、上記換気量、上記酸素消費量、上記酸素吸収量は、実施例に記載の方法によって得ることができる。
【0064】
酸素交換速度に対する酸素低減速度の比〔酸素低減速度/酸素交換速度〕は、0.5~3.0であり、長期に青果物の鮮度を保持する観点から、好ましくは0.5~2.5であり、より好ましくは0.6~2.0であり、更に好ましくは0.7~1.8であり、より更に好ましくは0.7~1.4であり、より更に好ましくは0.8~1.2である。
【0065】
(要件(ii))
要件(ii)は、二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕が、0.2~1.0である要件である。
「二酸化炭素交換速度」は、包装材(B)の二酸化炭素透過速度と、前記青果物包装体の換気速度との合計である。
「包装材(B)の二酸化炭素透過速度」は、前記包装材(B)を構成する包装材料の二酸化炭素透過度[mL/(day・m2・atm)]に前記青果物包装体に対応する前記包装材料の有効面積[m2]を乗じて、24[h]で除した値である前記包装材(B)の標準大気圧下での1時間あたりの二酸化炭素透過量[mL/h]として得られる。したがって、要件(ii)における包装材(B)の二酸化炭素透過速度は、包装材(B)が有孔フィルムからなる包装材である場合には、穿孔加工前の包装材(B)の二酸化炭素透過速度をいう。
「青果物包装体の換気速度」は、青果物包装体を構成する前記包装材(B)が貫通孔を有する場合の貫通孔による1時間あたりの換気量(貫通孔の換気速度)[mL/h]と、前記青果物包装体が開口部を有する場合にはその開口部に由来する1時間あたりの換気量(開口部の換気速度)[mL/h]との合計として得られる。
「二酸化炭素増加速度」は、前記青果物(A)の呼吸による1時間あたりの二酸化炭素発生量(二酸化炭素発生速度)[mL/h]と、前記雰囲気調整剤包装体(X)の1時間あたりの二酸化炭素発生量(二酸化炭素発生速度)[mL/h]との合計として得られる。
なお、上記二酸化炭素透過度、上記換気量、上記二酸化炭素発生量は、実施例に記載の方法によって得ることができる。
【0066】
二酸化炭素交換速度に対する二酸化炭素増加速度の比〔二酸化炭素増加速度/二酸化炭素交換速度〕は、0.2~1.0であり、長期に青果物の鮮度を保持する観点から、好ましくは0.2~0.9であり、より好ましくは0.2~0.8であり、更に好ましくは0.2~0.7であり、より更に好ましくは0.3~0.7であり、より更に好ましくは0.3~0.5である。
【0067】
青果物包装体は、上記ガス換気量を得るために、前記包装材(B)を構成する包装材料として貫通孔を有する有孔フィルムを用いてもよいが、青果物包装体に適宜開口部を設けてもよい。
上記ガス換気量に適した開口部を設ける方法としては、包装材(B)の一部を通気可能な状態で封止する方法が挙げられる。このように包装材(B)の一部を通気可能な状態で封止することで、本発明の青果物包装体が、包装材(B)の一部が通気可能な状態で封止されてなるものとなる。また、本発明の青果物の鮮度保持方法で得られる青果物包装体が、包装材(B)の一部が通気可能な状態で封止されてなるものとなる。
包装材(B)の一部を通気可能な状態で封止する方法は、特に限定されないが、例えば、袋状の包装材(B)の開口部を緩く束ねてクリップや輪ゴム、結束テープ、紐等の結束部材で留める方法、開口部をヒートシールする際に隙間を持たせたパーシャルシール方式で留める方法等が挙げられる。
青果物包装体が、その内外で適度な換気を行えることで、青果物の嫌気呼吸による鮮度低下や、系内のエチレンガス濃度の上昇による追熟作用を抑制することができると共に、青果物流通で普及しているコールドチェーンにおいて主力である真空予冷に対応することが可能となる。
【0068】
前記青果物包装体は、MA状態が包装材(B)の中で発現するため、ダンボールやプラスチック容器等の梱包材(流通容器内)に、単数又は複数を組み合わせて保存することが可能である。
【0069】
前記青果物包装体は、CA保存に近いガス雰囲気制御を、流通用のダンボール箱程度の大きさ(例えば、箱の長さ、幅及び深さの合計が、800mm以上1600mm以下程度のもの)で行えることから、CA保存のようなコンテナ単位のガス調整と比べ、最適化されるガス雰囲気の多様化が可能になる。特に雰囲気調整剤(X)によりガスバランスを調整するため、青果種・産地・収穫時期等により最適な保存環境が変動しても、柔軟に対応できる。
【0070】
<工程(II)>
更に、本発明の青果物の鮮度保持方法は、工程(I)で得られた青果物包装体を保持する工程(II)を有する。
本工程により、青果物包装体内部を青果物に適した保存雰囲気に調整でき、青果物の鮮度を長く維持することができる。
【0071】
本発明の青果物の鮮度保持方法によれば、従来のMA保存に比べて、短時間で青果物の保存に適した保存雰囲気を実現することができる。具体的には、メロンを収容した前記青果物包装体が、前記要件(i)及び(ii)を満たすことで、青果物に対して最適な保存雰囲気を実現できる。
【0072】
また、青果物包装体内部は、湿度80%RH以上であることにより、青果物の乾燥を抑制することができる。このような観点から湿度は、より好ましくは85%RH以上である。また、湿度の上限は、特に限定されず、100%RHであってもよい。
【0073】
また、工程(II)における青果物包装体の保持温度は、特に限定されないが、好ましくは0℃以上40℃以下である。従来のMA保存では、冷蔵保存が一般的であり、冷蔵から常温までの広い温度範囲で保存可能な保存方法はなかった。本発明の青果物の鮮度保持方法によれば、常温(例えば15℃以上25℃以下)であっても、青果物の鮮度を維持することが可能であるため、コールドチェーンの切れ目にも対応することが可能である。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例0075】
次に実施例を挙げて本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各製造例、実施例及び参考例における各種測定及び評価は以下のように行った。
【0076】
<鉄粉の平均粒子径>
鉄粉の平均粒子径は、ISO 3310-1:2000(JIS Z8801-1:2006相当)に準拠する標準篩を用いて、5分間振動させた後の篩目のサイズによる質量分率から、累積頻度50%の平均粒子径(D50)を測定した。
【0077】
<鉄粉の比表面積>
上記鉄粉の比表面積(単位:m2/g)は、JIS Z8830:2013に準拠して、BET多点法に基づき測定した。
【0078】
<酸素吸収速度>
実施例及び比較例で用いた雰囲気調整剤包装体の酸素吸収速度は、ガスバリア性の包装材からなる袋(容量20L)に雰囲気調整剤包装体を入れ、空気を15,000mL封入後、初期と48時間経過後の酸素濃度差から酸素吸収速度を算出した。
【0079】
<酸素消費速度>
実施例及び比較例で用いたメロン(青果物)の酸素消費速度は、ガスバリア性の包装材からなる袋(容量3L)にメロンを入れ、空気を3,000mL封入後、初期と48時間保存後の酸素濃度差から酸素吸収速度を算出した。
【0080】
<二酸化炭素発生速度>
実施例及び比較例で用いた雰囲気調整剤包装体の二酸化炭素発生速度は、ガスバリア性の包装材からなる袋(容量20L)に雰囲気調整剤包装体を入れ、空気を15,000mL封入後、初期と48時間経過後の二酸化炭素濃度差から二酸化炭素発生速度を算出した。
実施例及び比較例で用いたメロン(青果物)の二酸化炭素発生速度は、ガスバリア性の包装材からなる袋(容量3L)にメロンを入れ、空気を3,000mL封入後、初期と48時間保管後の二酸化炭素濃度差から二酸化炭素発生速度を算出した。
【0081】
<包装材の酸素透過速度>
実施例及び比較例で用いた包装材(未穿孔の防曇OPP(二軸延伸ポリプロピレン)袋)の酸素透過速度は、以下のようにして算出した。
まず、JIS K7126-2:2006(等圧法)に従い、酸素透過度[mL/(day・m2・atm)]を測定した。
次に前記酸素透過度[mL/(day・m2・atm)]に実施例及び比較例で用いた包装材の有効面積[m2]を乗じて、24[h(時間)]で除した値(標準大気圧下での1時間あたりの酸素透過量[mL/h])を酸素透過速度とした。
【0082】
<包装材の二酸化炭素透過速度>
実施例及び比較例で用いた包装材(未穿孔の防曇OPP袋)の二酸化炭素透過速度は、以下のようにして算出した。
まず、JIS K7126-1:2006(差圧法)に従い、二酸化炭素透過度[mL/(day・m2・atm)]を測定した。
次に前記二酸化炭素透過度[mL/(day・m2・atm)]に実施例及び比較例で用いた包装材の有効面積[m2]を乗じて、24[h(時間)]で除した値(標準大気圧下での1時間あたりの二酸化炭素透過量[mL/h])を二酸化炭素透過速度とした。
【0083】
<包装材の貫通孔の換気速度>
包装材の貫通孔の換気速度は、ガスバリア性の包装材(容量3L)に酸素1%窒素99%に調整した混合ガスを2,000mL封入後、直径0.6mmの冷針によって穿孔し、貫通孔を1ヵ所開け、初期と48時間経過後の酸素濃度差から換気速度を算出した。
【0084】
[雰囲気調整剤包装体の製造]
(製造例1:雰囲気調整剤包装体1)
エリソルビン酸ナトリウム(扶桑薬品工業株式会社製「エリソルビン酸ナトリウム」)100g、硫酸第一鉄13.3g、炭酸ナトリウム20g、活性炭(フタムラ化学株式会社製「太閤S」)15.0g、ナトリウムベントナイト(クニミネ工業株式会社製「ネオクニボンド」)1.7g、及び水20.0gを混合し、混合物を得た。
得られた混合物を、圧縮成形機(株式会社栗本鐵工所製、「コンパクターMRCP-80」)を用いて加圧成形し、厚さ0.8mmの板状の成形体を得た。その後、該成形体を整粒機に通し、粒径約1.5mmφの粒状のアスコルビン酸類系雰囲気調整剤を得た。
表面に有孔ポリエチレンフィルム、内面に有孔低密度ポリエチレンをラミネートした通気性をもつ三層構造の包装紙を折り畳み、超音波シール機(富士インパルス株式会社製、「FA-300」)を用いて3辺を溶融封止して、内袋(横幅60mm、深さ65mm)を作成した。
バリアナイロン袋(横幅100mm、深さ100mm)に直径0.6mmの冷針によって穿孔し、貫通孔を4ヵ所開け、外袋とした。
前記アスコルビン酸類雰囲気調整剤13gを、上記内袋に封入し、上記超音波シール機で開口部を溶融封止し、更に前記内袋を上記外袋に封入し、上記超音波シール機で開口部を溶融封止して、雰囲気調整剤包装体1とした。
得られた雰囲気調整剤包装体1の酸素吸収速度は、14.6mL/hであった。
得られた雰囲気調整剤包装体1の二酸化炭素発生速度は、14.6mL/hであった。
【0085】
(比較製造例1:比較用雰囲気調整剤包装体1)
鉄粉(平均粒子径100μm、比表面積0.09m2/g)100gに、50質量%の塩化カルシウム水溶液2gを加えて、十分に混合した後、乾燥機で乾燥させて塩化カルシウム被覆鉄粉を得た。
続いて、粒状珪藻土(昭和化学工業株式会社製「RC417」)100gに、4質量%の食塩水85gを添加し混合した。食塩水はすべて珪藻土に担持され、珪藻土は流動性を保っていた。この食塩水含浸珪藻土に、100メッシュ以下の粉末活性炭(大阪ガスケミカル株式会社製「白鷺A3」)1gを混合し、水分供与剤を得た。
表面に有孔ポリエチレンフィルム、内面に有孔低密度ポリエチレンをラミネートした通気性をもつ三層構造の包装紙を折り畳み、超音波シール機(富士インパルス株式会社製、「FA-300」)を用いて3辺を溶融封止して、袋(横幅60mm、深さ65mm)を作成した。
上記塩化カルシウム被覆鉄粉5.3gと、水分供与剤3.7gとを、上記袋に封入し、上記超音波シール機で開口部を溶融封止し、比較用雰囲気調整剤包装体1とした。比較用雰囲気調整剤包装体1の酸素吸収速度は、50.0mL/hであった。比較用雰囲気調整剤包装体1の二酸化炭素発生速度は、0mL/hであった。
【0086】
(比較製造例2:比較用雰囲気調整剤包装体2)
エリソルビン酸ナトリウム(扶桑薬品工業株式会社製「エリソルビン酸ナトリウム」)100g、硫酸第一鉄13.3g、炭酸ナトリウム20g、活性炭(フタムラ化学株式会社製「太閤S」)15.0g、ナトリウムベントナイト(クニミネ工業株式会社製「ネオクニボンド」)1.7g、及び水20.0gを混合し、混合物を得た。
得られた混合物を、圧縮成形機(株式会社栗本鐵工所製、「コンパクターMRCP-80」)を用いて加圧成形し、厚さ0.8mmの板状の成形体を得た。その後、該成形体を整粒機に通し、粒径約1.5mmφの粒状のアスコルビン酸類系雰囲気調整剤を得た。
表面に有孔ポリエチレンフィルム、内面に有孔低密度ポリエチレンをラミネートした通気性をもつ三層構造の包装紙を折り畳み、超音波シール機(富士インパルス株式会社製、「FA-300」)を用いて3辺を溶融封止して、袋(横幅60mm、深さ65mm)を作成した。
前記アスコルビン酸類雰囲気調整剤13gを、上記袋に封入し、上記超音波シール機で開口部を溶融封止して、比較用雰囲気調整剤包装体2とした。比較用雰囲気調整剤包装体2の酸素吸収速度は、58.3mL/hであった。比較用雰囲気調整剤包装体2の二酸化炭素発生速度は、58.3mL/hであった。
【0087】
(製造例2:雰囲気調整剤包装体2)
エリソルビン酸ナトリウム(扶桑薬品工業株式会社製「エリソルビン酸ナトリウム」)100g、硫酸第一鉄13.3g、炭酸ナトリウム20g、活性炭(フタムラ化学株式会社製「太閤S」)15.0g、ナトリウムベントナイト(クニミネ工業株式会社製「ネオクニボンド」)1.7g、及び水20.0gを混合し、混合物を得た。
得られた混合物を、圧縮成形機(株式会社栗本鐵工所製、「コンパクターMRCP-80」)を用いて加圧成形し、厚さ0.8mmの板状の成形体を得た。その後、該成形体を整粒機に通し、粒径約1.5mmφの粒状のアスコルビン酸類系雰囲気調整剤を得た。
表面に有孔ポリエチレンフィルム、内面に有孔低密度ポリエチレンをラミネートした通気性をもつ三層構造の包装紙を折り畳み、超音波シール機(富士インパルス株式会社製、「FA-300」)を用いて3辺を溶融封止して、袋(横幅60mm、深さ55mm)を作成した。
前記アスコルビン酸類雰囲気調整剤9gを、上記袋に封入し、上記超音波シール機で開口部を溶融封止して、雰囲気調整剤包装体2とした。
得られた雰囲気調整剤包装体2の酸素吸収速度は、24mL/hであった。
得られた雰囲気調整剤包装体2の二酸化炭素発生速度は、24mL/hであった。
【0088】
[クインシーメロン(マスクメロン、レティクラトゥス群)の保存]
(実施例1)
<工程1>
青果物として、クインシーメロン(レティクラトゥス群、果実、1kg、酸素消費速度:4.8mL/h、二酸化炭素発生速度:4.8mL/時、以下、メロン1ともいう。)を用意した。
包装材として、防曇OPP袋(二軸延伸ポリプロピレン、株式会社シモジマ製、厚さ0.02mm、幅300mm、長さ450mm)に直径0.6mmの冷針で穿孔し、1つの貫通孔を設けた袋を用意した(貫通孔の換気速度:3.5mL/h、未穿孔の防曇OPP袋の酸素透過速度:14.6mL/h、未穿孔の防曇OPP袋の二酸化炭素透過速度:43.9mL/h)。
上記メロン1(クインシーメロン)と、製造例1で作製した雰囲気調整剤包装体1 1個とを、上記包装材に収容し、包装材の開口部を溶融封止して、青果物包装体1を得た。
【0089】
<工程2>
青果物包装体1を、梱包材である段ボール箱(深さ220mm、長さ310mm、幅230mm)に収納し、蓋をした。
梱包材内の青果物包装体1は、25±2℃、湿度50%RH以上65%RH以下の条件下で保存され、28日目に開封し、青果物の保存状態の評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、青果物(クインシーメロン)の保存状態の評価は、保存後の青果物包装体内のにおいと青果物の外皮の状態の目視による観察によって行った。保存後の青果物包装体内のにおいについて、腐敗臭などの異臭が少ないものが、保存状態が良好であり、異臭がないものがより良好である。また、青果物の外皮の状態について、外皮の透けが少ないものが、保存状態が良好である。
【0090】
(比較例1)
実施例1の工程1において、雰囲気調整剤包装体1を比較用雰囲気調整剤包装体1に変更した以外は、実施例1と同様にして青果物包装体2を得、続いて工程2を行い、青果物の保存状態の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0091】
(比較例2)
実施例1の工程1において、雰囲気調整剤包装体1を用いなかった以外は、実施例1と同様にして青果物包装体3を得、続いて工程2を行い、青果物の保存状態の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0092】
(比較例3)
実施例1の工程1において、雰囲気調整剤包装体1を比較用雰囲気調整剤包装体2に変更した以外は、実施例1と同様にして青果物包装体4を得、続いて工程2を行い、青果物の保存状態の評価を行った。
【0093】
【0094】
[ルピアレッド(マスクメロン、レティクラトゥス群)の保存]
(実施例2)
<工程1>
青果物として、ルピアレッド(レティクラトゥス群、果実、成熟が進んだ状態のものを使用。2kg、酸素消費速度:5.1mL/h、二酸化炭素発生速度:5.1mL/時、以下、メロン2ともいう。)を用意した。
包装材として、防曇OPP袋(二軸延伸ポリプロピレン、株式会社シモジマ製、厚さ0.02mm、幅300mm、長さ450mm)に直径0.6mmの冷針で穿孔し、1つの貫通孔を設けた袋を用意した(貫通孔の換気速度:3.5mL/h、未穿孔の防曇OPP袋の酸素透過速度:14.6mL/h、未穿孔の防曇OPP袋の二酸化炭素透過速度:43.9mL/h)。
上記メロン2(ルピアレッド)と、製造例1で作製した雰囲気調整剤包装体1 1個とを、上記包装材に収容し、包装材の開口部を溶融封止して、青果物包装体5を得た。
【0095】
<工程2>
青果物包装体5を、梱包材である段ボール箱(深さ220mm、長さ310mm、幅230mm)に収納し、蓋をした。
梱包材内の青果物包装体1は、25±2℃、湿度50%RH以上65%RH以下の条件下で保存され、7日目に開封し、青果物の保存状態の評価を行った。評価結果を表2に示す。
なお、青果物(ルピアレッド)の保存状態の評価は、保存後の青果物包装体内のにおいと青果物の触感によって行った。保存後の青果物包装体内のにおいについて、嫌気臭がないものが、保存状態が良好である。嫌気臭はわずかでも商品価値を損なう。なお、土臭いことは商品価値にさほど影響しない。また、青果物の触感について、軟化している部分の面積が小さいものが、保存状態が良好であり、軟化している部分がない(軟化していない)ものがより保存状態が良好である。
【0096】
(実施例3)
実施例2の工程1において、雰囲気調整剤包装体1を雰囲気調整剤包装体2に変更した以外は、実施例2と同様にして青果物包装体6を得、続いて工程2を行い、青果物の保存状態の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0097】
(比較例4)
実施例2の工程1において、雰囲気調整剤包装体1を用いず、包装材として、防曇OPP袋にかえて、バリアナイロン袋(横幅300mm、深さ330mm、貫通孔なし。バリアナイロン袋の酸素透過速度:0.1mL/h、バリアナイロン袋の二酸化炭素透過速度:0.2mL/h)を用いた以外は、実施例2と同様にして青果物包装体7を得、続いて工程2を行い、青果物の保存状態の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0098】
【0099】
表1及び表2に示す通り、実施例の青果物の鮮度保持方法によれば、保存されたメロンは長期に鮮度が保持されることがわかる。また、実施例の青果物包装体を用いることで、包装体内に保存されたメロンの鮮度を長期に保持できることがわかる。実施例の青果物包装体を用いることで、48時間という短時間でメロンに適した保存雰囲気にできることもわかる。
このことから、本発明の青果物の鮮度保持方法によれば、青果物に適した保存雰囲気(最適な酸素濃度、及び最適な二酸化炭素濃度)にすることでき、特に短時間で青果物に適した保存雰囲気にすることができ、長期に青果物の鮮度を保持し得る。また、本発明の青果物包装体によれば、包装体内部を青果物に適した保存雰囲気に調整でき、長期に青果物の鮮度を保持し得る。更に本発明の鮮度保持方法及び青果物包装体の好ましい実施形態によれば、特に短時間で青果物に適した保存雰囲気にすることができるため、より長期に青果物の鮮度を保持することができる。