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特開2024-159562合成ガスを用いたオレフィンのアルコキシカルボニル化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159562
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】合成ガスを用いたオレフィンのアルコキシカルボニル化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/38 20060101AFI20241031BHJP
   C07C 69/24 20060101ALI20241031BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20241031BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C07C67/38
C07C69/24
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064684
(22)【出願日】2024-04-12
(31)【優先権主張番号】23170052.7
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ベルラー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ククミールクザイク
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジャックステル
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ ゲー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルフライド ニューマン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BE11A
4G169BE11B
4G169CB72
4H006AA02
4H006AC21
4H006AC48
4H006BA09
4H006BA25
4H006BA36
4H006BA48
4H006BB14
4H006BC11
4H006BC32
4H006BC38
4H006BE20
4H006BE40
4H006KA34
4H039CA66
4H039CF10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】合成ガスを用いたオレフィンのアルコキシカルボニル化方法を提供する。
【解決手段】a)最初にオレフィンを投入する工程、b)下式(I):のリガンドを添加する工程、c)Pdを含む化合物を添加する工程、d)アルコールを添加する工程、e)COおよびHを供給し、Hを供給する圧力を少なくとも0.6MPa(6バール)とする工程、f)工程a)~工程e)の反応混合物を加熱し、オレフィンをエステルに転化する工程を含む、方法である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)最初にオレフィンを投入する工程、
b)式(I):
【化1】
(式中、RおよびRは、それぞれ-(C-C20)-ヘテロアリール基であり、
およびRは、それぞれ-(C-C12)-アルキルである。)
のリガンドを添加する工程、
c)Pdを含む化合物を添加する工程、
d)アルコールを添加する工程、
e)COおよびHを供給し、Hを供給する圧力を少なくとも0.6MPa(6バール)とする工程、
f)前記工程a)~前記工程e)の反応混合物を加熱し、前記オレフィンをエステルに転化する工程
を含む方法。
【請求項2】
COを1MPa(10バール)~3MPa(30バール)の範囲の圧力で供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
COを1.5MPa(15バール)~2.5MPa(25バール)の範囲の圧力で供給する、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
を0.6MPa(6バール)~2.9MPa(29バール)の範囲の圧力で供給する、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
を0.9MPa(9バール)~2.1MPa(21バール)の範囲の圧力で供給する、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
COとHを供給する圧力の比が1:0.3~1:1.4の範囲である、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
、Rは、それぞれフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリルから選択される、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
およびRは、terBuである、請求項1~請求項7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記工程b)の前記リガンドは、式(1):
【化2】
を有する、請求項1~請求項8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記工程c)の前記Pdを含む化合物は、二塩化パラジウム、パラジウム(II)アセチルアセトネート、パラジウム(II)アセテート、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、二塩化(シンナミル)パラジウムから選択される、請求項1~請求項9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記工程c)の前記Pdを含む化合物は、Pd(acac)である、請求項1~請求項10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記工程d)の前記アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、3-ペンタノール、シクロヘキサノール、フェノール、またはそれらの混合物から選択される、請求項1~請求項11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記工程d)の前記アルコールは、メタノールである、請求項1~請求項12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
d’)アルミニウムトリフラート、硫酸、メチルスルホン酸(MSA)、パラトルエンスルホン酸(p-TSA)から選択される酸を添加する追加工程を含む、請求項1~請求項13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記酸:前記リガンドの比が1モル:1モル~15モル:1モルの範囲である、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガス(COとHの混合物)を用いたオレフィンのアルコキシカルボニル化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和化合物のアルコキシカルボニル化は、重要性が増している方法である。アルコキシカルボニル化とは、エチレン性不飽和化合物(オレフィン)と一酸化炭素およびアルコールとを金属リガンド錯体の存在下で反応させ、対応するエステルを得ることを意味する。通常、使用される金属は、パラジウムである。下記の図は、アルコキシカルボニル化の一般的な反応式を示している。
【0003】
【化1】
【0004】
従来、アルコキシカルボニル化方法は、COを用いて操作される。1つは、欧州特許出願公開第4001256号明細書に記載されている。Hを供給すると、副反応(例えば、ヒドロホルミル化)が促進され、所望の目的生成物への転化が低下すると思われていたため、Hの供給は、これまで意図的に避けられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第4001256号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的目的は、収率の向上をもたらす新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1記載の方法によって達成される。
【0008】
a)最初にオレフィンを投入する工程、
b)式(I):
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、RおよびRは、それぞれ-(C-C20)-ヘテロアリール基であり、
およびRは、それぞれ-(C-C12)-アルキルである。)
のリガンドを添加する工程、
c)Pdを含む化合物を添加する工程、
d)アルコールを添加する工程、
e)COおよびHを供給し、Hを供給する圧力を少なくとも0.6MPa(6バール)とする工程、
f)工程a)~工程e)の反応混合物を加熱し、オレフィンをエステルに転化する工程
を含む方法。
【0011】
表現(C~C12)アルキルは、1~12個の炭素原子を有する直鎖状および分岐鎖状アルキル基を包含する。これらは、好ましくは(C~C)アルキル基、より好ましくは(C~C)アルキル基であり、最も好ましくは(C~C)アルキル基である。
【0012】
表現(C~C20)ヘテロアリールは、3~20個の炭素原子を有する単環式または多環式芳香族炭化水素基を包含する。なお、1個または複数の炭素原子は、ヘテロ原子で置換されている。好ましいヘテロ原子は、N、OおよびSである。(C~C20)ヘテロアリール基は、3~20個、好ましくは6~14個、特に好ましくは6~10個の環原子を有する。したがって、例えば、本明細書の文脈では、ピリジルは、C-ヘテロアリール基であり、フリルは、C-ヘテロアリール基である。
【0013】
本方法の一変形例では、COは、1MPa(10バール)~3MPa(30バール)の範囲の圧力で供給される。
【0014】
本方法の一変形例では、COは、1.5MPa(15バール)~2.5MPa(25バール)の範囲の圧力で供給される。
【0015】
本方法の一変形例では、COは、2MPa(20バール)の圧力で供給される。
【0016】
本方法の一変形例では、Hは、0.6MPa(6バール)~2.9MPa(29バール)の範囲の圧力で供給される。
【0017】
本方法の一変形例では、Hは、0.9MPa(9バール)~2.1MPa(21バール)の範囲の圧力で供給される。
【0018】
本方法の一変形例では、Hは、1MPa(10バール)~2MPa(20バール)の範囲の圧力で供給される。
【0019】
本方法の一変形例では、COおよびHが供給される圧力比は、1:0.3~1:1.4の範囲である。
【0020】
本方法の一変形例では、R、Rは、それぞれフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリルから選択される。
【0021】
本方法の一変形例では、RおよびRは、terBuである。
【0022】
本方法の一変形例では、工程b)のリガンドは、式(1):
【0023】
【化3】
【0024】
を有する。
【0025】
本方法の一変形例では、工程c)のPdを含む化合物は、二塩化パラジウム、パラジウム(II)アセチルアセトネート、パラジウム(II)アセテート、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、二塩化(シンナミル)パラジウムから選択される。
【0026】
本方法の一変形例では、工程c)のPdを含む化合物は、Pd(acac)である。
【0027】
本方法の一変形例では、工程d)のアルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、3-ペンタノール、シクロヘキサノール、フェノール、またはそれらの混合物から選択される。
【0028】
本方法の一変形例では、工程d)のアルコールは、メタノールである。
【0029】
本方法の一変形例では、本方法は、
d’)アルミニウムトリフラート、硫酸、メチルスルホン酸(MSA)、パラトルエンスルホン酸(p-TSA)から選択される酸を添加する追加工程
を含む。
【0030】
本方法の一変形例では、アルミニウムトリフラートは、工程d’)で添加される。
【0031】
本方法の一変形例では、酸:リガンド比は、1モル:1モル~15モル:1モルの範囲である。
【0032】
本方法の一変形例では、アルミニウムトリフラート:リガンド比は、1モル:1モル~15モル:1モルの範囲である。
【0033】
オレフィンをエステルに転化するために、本発明による方法の工程f)において、反応混合物は、好ましくは30℃~150℃、好ましくは40℃~140℃、より好ましくは50℃~120℃の範囲の温度まで加熱される。
【0034】
本発明は、実施例を参照して以下で詳細に説明される。
【実施例0035】
実験例1
【0036】
【化4】
【0037】
Pd(acac):0.04モル%
(1):0.12モル%
Al(OTf):0.6モル%
実験は、合成ガスで1回実施し、比較実験として純粋なCOで実施した。合成ガスは、COとHの混合物であった。両方の実験において、COは、20バールの圧力で供給した。合成ガスを用いた実験では、Hも同様に20バールで供給し、合計圧力が40バールになった。
エステルの収率:
CO:47%
CO+H:67%
【0038】
実験例2(H圧力のバリエーション)
【0039】
【化5】
【0040】
Pd(acac)2:0.04モル%
(1):0.12モル%
Al(OTf):0.6モル%
一連の実験は、20バールの一定のCO圧力で実施した。H圧力は、下記の表に従って変化させた。
【0041】
【表1】
【0042】
実施した実験で示されているように、合成ガスの使用により、収率が向上した。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)最初にオレフィンを投入する工程、
b)式(I):
【化1】
(式中、RおよびRは、それぞれ-(C-C20)-ヘテロアリール基であり、
およびRは、それぞれ-(C-C12)-アルキルである。)
のリガンドを添加する工程、
c)Pdを含む化合物を添加する工程、
d)アルコールを添加する工程、
e)COおよびHを供給し、Hを供給する圧力を少なくとも0.6MPa(6バール)とする工程、
f)前記工程a)~前記工程e)の反応混合物を加熱し、前記オレフィンをエステルに転化する工程
を含む方法。
【請求項2】
COを1MPa(10バール)~3MPa(30バール)の範囲の圧力で供給する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
COを1.5MPa(15バール)~2.5MPa(25バール)の範囲の圧力で供給する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
を0.6MPa(6バール)~2.9MPa(29バール)の範囲の圧力で供給する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
を0.9MPa(9バール)~2.1MPa(21バール)の範囲の圧力で供給する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
COとHを供給する圧力の比が1:0.3~1:1.4の範囲である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
、Rは、それぞれフリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジル、ピラジニル、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリルから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
およびRは、terBuである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記工程b)の前記リガンドは、式(1):
【化2】
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記工程c)の前記Pdを含む化合物は、二塩化パラジウム、パラジウム(II)アセチルアセトネート、パラジウム(II)アセテート、ジクロロ(1,5-シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、二塩化(シンナミル)パラジウムから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記工程c)の前記Pdを含む化合物は、Pd(acac)である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記工程d)の前記アルコールは、メタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、3-ペンタノール、シクロヘキサノール、フェノール、またはそれらの混合物から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記工程d)の前記アルコールは、メタノールである、請求項1記載の方法。
【請求項14】
d’)アルミニウムトリフラート、硫酸、メチルスルホン酸(MSA)、パラトルエンスルホン酸(p-TSA)から選択される酸を添加する追加工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記酸:前記リガンドの比が1モル:1モル~15モル:1モルの範囲である、請求項14記載の方法。
【外国語明細書】