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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159594
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】筆記具用インキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20241031BHJP
   C09D 11/18 20060101ALI20241031BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09D11/16
C09D11/18
B43K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067255
(22)【出願日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2023074796
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 太郎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 秀憲
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350NA11
2C350NA13
4J039AB01
4J039AD06
4J039AD07
4J039BC12
4J039BC56
4J039BE01
4J039BE22
4J039EA42
4J039GA27
(57)【要約】
【課題】気泡の形成や残留を抑制することができる筆記具用インキ組成物の提供。
【解決手段】特定の構造を有する気泡抑制剤および着色剤を含んでなる、筆記具用インキ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される気泡抑制剤、
【化1】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、前記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)、および
着色剤
を含んでなる、筆記具用インキ組成物。
【請求項2】
前記気泡抑制剤が、式(Ia)で表される、請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【化2】
(ここで、
1aは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、
2aは、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~6のアルキル基であり、
3aは、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~6のアルキル基あり、
4aは、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、または炭素数1~3のアルキル基であり、ただし、R4aの少なくとも1つは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基または(メタ)アクリロイルオキシ基である)
【請求項3】
溶媒をさらに含んでなる、請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項4】
増粘剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項5】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、リン酸エステル系界面活性剤を含む、請求項5に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項7】
前記リン酸エステル系界面活性剤の配合量が、前記組成物の総質量を基準として、0.1~5質量%である、請求項6に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項8】
前記筆記具用インキ組成物に配合される気泡抑制剤とリン酸エステル系界面活性剤の質量比(気泡抑制剤/リン酸エステル系界面活性剤)が0.2~8である、請求項6に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項9】
ボールペン用インキ組成物である、請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項10】
水性ボールペン用インキ組成物である、請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項11】
前記気泡抑制剤の配合量が、前記組成物の総質量を基準として、0.005~3質量%である、請求項10に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項12】
油性ボールペンインキ組成物である、請求項1に記載の筆記具用インキ組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の筆記具用インキ組成物を具備してなる筆記具。
【請求項14】
着色剤を含む筆記具用インキ組成物における気泡を抑制する方法であって、前記筆記具用インキ組成物と、式(I)で表される気泡抑制剤
【化3】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)
と、を共存させることを含む、方法。
【請求項15】
着色剤を含む筆記具用インキ組成物における気泡を抑制するための、式(I)で表される気泡抑制剤
【化4】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)
を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筆記具用インキ組成物に関する。具体的には、気泡抑制剤を含んでなる筆記具用インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記具用インキ組成物は、例えば、レフィルに充填され、レフィルを備えたボールペンとして使用される。筆記具用インキ組成物が充填されたレフィルは、気泡の影響を受けやすく、気泡によって筆記性能が低下することがある。例えば、ノック操作や落下等による衝撃によりペン先から混入した空気が気泡化したり、高速回転するボール近傍が低圧になることで筆記具用インキ組成物中の溶存空気が気泡化した場合、気泡がペン先にとどまることにより、筆跡カスレが生じたり、筆記不能となることがある。
このような問題の対策として、空気などの気体を化学的に除去する方法が考えられ、例えば特定の構造を有するヒドロキシアミン類を添加する試みが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
ラジカル重合性樹脂を塗料に用いる際に、空気中の酸素による反応阻害を抑制するために、樹脂に不飽和二重結合含有化合物を含む酸素吸収剤を添加する試みが開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-265844号公報
【特許文献2】国際公開第2019/107252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、気泡の原因となる気体の一部を化学的に除去することにより、気泡の形成や残留を抑制することができる、新規な気泡抑制剤を含んでなる筆記具用インキ組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による筆記具用インキ組成物は、
式(I)で表される気泡抑制剤、
【化1】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)、および
着色剤
を含んでなる。
【0007】
本開示による筆記具は、上記の筆記具用インキ組成物を具備してなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示による筆記具用インキ組成物は、気泡の形成や残留が抑制されており、良好な筆記性能を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本開示において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準で有り、含有量とは、筆記具用インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
【0010】
<筆記具用インキ組成物>
本開示による筆記具用インキ組成物(以下、場合により「インキ組成物」と表す)は、式(I)で表される気泡抑制剤および着色剤を含んでなる。
本開示による筆記具用インキ組成物の用途は限定されないが、好ましくはボールペン用インキ組成物である。本開示による筆記具用インキ組成物は、水性であっても、油性であってもよい。好ましい一形態において、本開示による筆記具用インキ組成物は水性ボールペン用インキ組成物である。好ましい別の一形態において、本開示による筆記具用インキ組成物は油性ボールペン用インキ組成物である。
【0011】
(気泡抑制剤)
本開示によるインキ組成物は、式(I)で表される気泡抑制剤を含んでなる。
本開示による気泡抑制剤は、組成物中に存在する空気などの気泡を小さくしたり消失させたりして、気泡の形成や残留を抑制することができる。理論に拘束されないが、本開示による気泡抑制剤は、気泡中の酸素を分解して減量または消失させ、それにより気泡中の窒素の分圧が上がるために窒素のインキ組成物に対する溶解量が増加するので、気泡全体が小さくなっていく、または消失すると考えられる。
【0012】
式(I)は以下である。
【化2】
ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、好ましくは、水素または炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくは水素である。
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、好ましくは、水素または炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくは水素である。
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、好ましくはヒドロキシ基または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換された、炭素数1~6のアルキレン基であり、より好ましくはヒドロキシ基または(メタ)アクリロ
イルオキシ基で置換された、プロピレン基である。
pは、0~3の整数であり、好ましくは1~3であり、より好ましくは1である。
【0013】
気泡抑制剤は、好ましくは式(Ia)で表される。
【化3】
ここで、
1aは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、好ましくはメチル基である。
2aは、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~6のアルキル基であり、好ましくは水素である。
3aは、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~6のアルキル基あり、好ましくは水素である。
4aは、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、または炭素数1~3のアルキル基であり、ただし、R4aの少なくとも1つは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基または(メタ)アクリロイルオキシ基である。好ましくは、R4aのうちの1つが、水素またはメチル基、より好ましくは水素であり、もう一つが、ヒドロキシ基または(メタ)アクリロイルオキシ基、より好ましくはヒドロキシ基である。
【0014】
本開示に用いられる気泡抑制剤としては、例えば、1,3-ビス[(3-メチル-2-ブテン-1-イル)オキシ]-2-プロパノール、1,3-ビス(3-メチル-2-ブテノキシ)-2-メタクリロイルオキシプロパン等が挙げられ、好ましくは1,3-ビス[(3-メチル-2-ブテン-1-イル)オキシ]-2-プロパノールである。
【0015】
気泡抑制剤の配合量は特に限定されないが、本開示に用いられる気泡抑制剤は後述するように、溶媒として機能することも可能であるため高配合とすることもでき、配合量は、好ましくは0.005~90質量%である。
水性のインキ組成物に配合される場合に、気泡抑制剤の配合量は、溶解性を考慮すると、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは0.005~3質量%であり、より好ましくは0.01~2質量%である。
油性のインキ組成物に配合される場合に、気泡抑制剤の配合量は、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは0.005~90質量%であり、より好ましくは0.005~10質量%であり、さらに好ましくは0.01~2質量%である。
インキ組成物が気泡抑制剤を含むことにより、さらにボール座の摩耗抑制効果を発揮することができる。
【0016】
(着色剤)
本開示による筆記具用インキ組成物は、着色剤を含んでなる。着色剤としては、顔料、染料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。
【0017】
顔料としては、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、着色樹脂粒子体として顔料を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包または固溶化させたマイクロカプセル顔料、液晶類、可逆熱変色性組成物、フォトクロミック材料などの機能性材料を内包したマイクロカプセル顔料を用いてもよい。さらに、顔料を透明、半透明の樹脂等で覆った着色樹脂粒子などや、また着色樹脂粒子や無色樹脂粒子を、顔料もしくは染料で着色したもの等も用いることもできる。これらの染料および顔料は、単独または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0018】
染料としては、媒体に溶解もしくは分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料、造塩染料および食用色素など各種染料が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
酸性染料としては、C.I.アシッドレッド18、C.I.アシッドレッド51、C.I.アシッドレッド52、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド92、C.I.アシッドレッド289、C.I.アシッドオレンジ10、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー7、C.I.アシッドイエロー23、C.I.アシッドイエロー42、C.I.アシッドグリーン3、C.I.アシッドグリーン16、C.I.アシッドブルー1、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー22、C.I.アシッドブルー90、C.I.アシッドブルー239、C.I.アシッドブルー248、C.I.アシッドバオレット15、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.アシッドブラック1、C.I.アシッドブラック2、塩基性染料としては、C.I.ベーシックオレンジ2、C.I.ベーシックオレンジ14、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックブルー9、C.I.ベーシックブルー26、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット3、C.I.ベーシックバイオレット10、直接染料としては、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトイエロー44、C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ダイレクトブルー87、C.I.ダイレクトバイオレット51、C.I.ダイレクトブラック19、分散染料としては、Yellow 3G 200、Yellow 6GF 200、Light Red B-S 200、Orange 2GF Liq、Blue CL-SF、Blue BD-S con、N.Blue ECXN 350、Blue 3RF Liq、Black ECX 300k、Black RV-SF 300、Black PF-13 Li、造塩染料としては、バリファーストブラック1802、バリファーストブラック1805、バリファーストブラック1807、バリファーストバイオレット1701、バリファーストバイオレット1704、バリファーストバイオレット1705、バリファーストブルー1601、バリファーストブルー1605、バリファーストブルー1613、バリファーストブルー1621、バリファーストブルー1631、バリファーストレッド1320、バリファーストレッド1355、バリファーストレッド1360、バリファーストイエロー1101、バリファーストイエロー1151、ニグロシンベースEXBP、ニグロシンベースEX、BASE OF BASIC DYES ROB-B、BASE OF BASIC DYES RO6G-B、BASE OF BASIC DYES VPB-B、BASE OF BASIC DYES VB-B、BASE OF BASIC DYES MVB-3、アイゼンスピロンブラック GMH-スペシャル、アイゼンスピロンバイオレット C-RH、アイゼンスピロンブルー GNH、アイゼンスピロンブルー 2BNH、アイゼンスピロンブルー C-RH、アイゼンスピロンレッド C-GH、アイゼンスピロンレッド C-BH、アイゼンスピロンイエロー C-GNH、アイゼンスピロンイエロー C-2GH、S.P.T.ブルー111、S.P.T.ブルーGLSH-スペシャル、S.P.T.レッド533、S.P.T.オレンジ6、S.B.N.イエロー510、S.B.N.イエロー530、S.R.C-BH、食用色素としては、C.I.フードイエロー3、C.I.フードブラック2などが挙げられる。
【0019】
着色剤の配合量は、特に限定されないが、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは0.1~50質量%であり、より好ましくは1~40質量%である。
【0020】
(溶媒)
本開示による筆記具用インキ組成物は、上記したように、気泡抑制剤が溶媒の機能を果たすことができるので、さらに溶媒を含まなくてもよいが、好ましくは気泡抑制剤以外の溶媒を含んでなる。本明細書において、上記した気泡抑制剤は、溶媒に含めないものとする。
溶媒としては、特に限定されないが、水や従来公知の有機溶剤が適用される。
有機溶剤の具体例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシペンタノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート等のグリコールエーテル類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のシクロアルカン類、キシレン、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、ポリエチレングリコール、3-メチル-1,3ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール等のグリコール類、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、酢酸-2-エチルヘキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルモノグリコール、ベンジルジグリコール、プロピレングリコールモノフェニルエーテルベンジルアルコール、β-フェニルエチルアルコール、α-メチルベンジルアルコール等のグリコール類、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等のアミド類等が挙げられる。
【0021】
溶媒は、1種または2種以上を組み合わせることができる。溶媒の含有量は、インキ組成物の用途により異なるが、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは、30~99質量%であり、より好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは40~80質量%である。
【0022】
本開示による筆記具用インキ組成物は、上記の成分の他に、その他の成分を組み合わせることができる。以下にそのような追加成分について説明する。追加成分の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0023】
(増粘剤)
増粘剤を含むことにより、静置時における着色剤の沈降や凝集を抑制したり、潤滑性を良好にすることができる。増粘剤としては、従来公知の物質を用いることができる。
インキ組成物に、好ましくは、剪断減粘性を付与できる物質(剪断減粘性付与剤)を含んでなる。とりわけ、筆記具がボールペンである場合には、筆記時にボールの回転に伴ってインキ組成物に強い剪断応力が加わり、インキ組成物がより低粘度化しやすいため、インキ組成物の吐出性を良好とし、発色性に優れる筆跡を形成することができる。
剪断減粘性付与剤としては、例えば、ポリアクリル酸、架橋型ポリアクリル酸、会合性ウレタンなどの合成高分子、多糖類等が挙げられる。
多糖類は、種々の効果をもたらすが、主に、インキ組成物の粘度の調整、剪断減粘性の付与、耐ドライアップ性能向上などの効果をもたらす。具体的には、デキストリン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム、λ-カラギーナン、セルロース誘導体、ダイユータンガム等が挙げられる。
ポリビニルブチラール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ケトン樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレンーマレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の樹脂、好ましくはポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂およびケトン樹脂からなる群から選択される樹脂、を用いてインキ組成物の粘度を調整することができ、特にインキ組成物が油性である場合に上記の樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
増粘剤は、1種または2種以上の組み合わせることができる。増粘剤の配合量は、特に限定されないが、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは0.01~50質量%である。インキ組成物が水性である場合に、増粘剤の配合量は、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~5質量%であり、さらに好ましくは0.1~2質量%であり、特に好ましくは0.1~1質量%である。インキ組成物が油性である場合に、増粘剤の配合量は、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは0.1~45質量%であり、より好ましくは0.5~35質量%である。
【0025】
(界面活性剤)
本開示による筆記具用インキ組成物は、各種界面活性剤を含んでいてもよい。
本開示の気泡抑制剤と界面活性剤を併用すると、気泡抑制効果を向上させることができるため好適である。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を用いることができ、特にノニオン系界面活性剤および/またはアニオン系界面活性剤(特に、リン酸エステル系界面活性剤)を含むことが好ましい。
【0026】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ポリグリセリル、脂肪酸ポリオキシアルキレングリセリル、脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ノニオン系界面活性剤としては、好ましくは脂肪酸ポリオキシアルキレンソルビタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルである。
【0027】
アニオン系界面活性剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば
(1)リン酸エステル系界面活性剤;
(2)ラウリルスルホン酸、ミリスチルスルホン酸、セチルスルホン酸、オレイルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、第二級アルキルスルホン酸(C13~15)等の脂肪族スルホン酸もしくは芳香族スルホン酸、またはそれらの塩;
(3)ラウリル硫酸エステル、オレイル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル等の脂肪族アルコールの硫酸エステル、またはそれらの塩;
(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル、またはそれらの塩;
(5)ひまし油脂肪酸硫酸エステル、ごま油脂肪酸硫酸エステル、トール油脂肪酸硫酸エステル、大豆油脂肪酸硫酸エステル、なたね油脂肪酸硫酸エステル、パーム油脂肪酸硫酸エステル、豚脂脂肪酸硫酸エステル、牛脂脂肪酸硫酸エステル、鯨油脂肪酸硫酸エステル等の脂肪酸の硫酸エステル、またはそれらの塩;
(6)ひまし油の硫酸エステル、ごま油の硫酸エステル、トール油の硫酸エステル、大豆油の硫酸エステル、菜種油の硫酸エステル、パーム油の硫酸エステル、豚脂の硫酸エステル、牛脂の硫酸エステル、鯨油の硫酸エステル等の油脂の硫酸エステル、またはそれらの塩;
などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0028】
アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0029】
リン酸エステル系界面活性剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アルコキシエチル基(C2n+1OCHCHO)またはアルコキシ基(C2m+1O)を有するリン酸エステル(式中、nおよびmは、各々独立して、任意の正の整数である);ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテルまたはポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸トリエステル;アルキルリン酸エステル;アルキルエーテルリン酸エステル;またはそれらの誘導体、またはそれらの塩などが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。リン酸エステル系界面活性剤としては、良好なボール座の摩耗の抑制効果を得る観点からは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸エステル、それらの誘導体、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸エステルの誘導体としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレン置換アリールエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。ポリオキシエチレン置換アリールエーテルリン酸エステルとは、アリール基の水素原子の1つ以上が任意の置換基で置換されているものを意味する。そのような任意の置換基としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン基(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、カルボキシル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~6のアルケニル基、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~6のアルキニル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数3~6のシクロアルケニル基、炭素数1~6のアルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。これらの置換基における1つ以上の水素原子は、任意の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0030】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、その誘導体、またはその塩としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アルキル基が炭素数8~22のアルコールにエチレンオキサイド(EO)が1~60モル付加されているポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。アルコールのアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよく、飽和でも不飽和でもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの具体的な例としては、例えば、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンエイコシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルリン酸エステル、またはそれらの塩等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、その誘導体、またはその塩は、ボール座の摩耗の抑制効果を向上しうる観点からは、炭素数が8~20、好ましくは10~20、より好ましくは12~18のアルキル基を有するものであることが好ましい。これらの中でも、良好な溶剤溶解性および/または経時的な安定性の観点からは、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル、またはそれらの塩が好ましく、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステルまたはその塩がさらに好ましい。
【0031】
ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸エステル、その誘導体(例えば、ポリオキシエチレン置換アリールエーテルリン酸エステル)、またはその塩としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ポリオキシエチレンフェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンナフチルエーテルリン酸エステル、またはそれらの塩等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ポリオキシエチレン置換アリールエーテルリン酸エステルまたはその塩が好ましく、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルまたはその塩がさらに好ましい。理論に拘束されるものではないが、ポリオキシエチレンアリールエーテルリン酸エステル、その誘導体、またはその塩(好ましくは、ポリオキシエチレン置換アリールエーテルリン酸エステルまたはその塩、より好ましくはポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルまたはその塩)は、アリール基の立体障害により、他のリン酸エステル系界面活性剤と比較してリン酸エステル金属塩の析出を抑制しうる点で有利である。特に、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルまたはその塩は、フェニル基の水素原子の1つ以上がスチレンにより置換されているため、より立体障害が起こりやすく、リン酸エステル金属塩の析出を一層抑制しうると考えられる。
【0032】
リン酸エステル系界面活性剤は、任意の酸価を有するものであってもよい。本開示において、上記酸価は、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を意味するものとする。リン酸エステル系界面活性剤の酸価は、リン酸エステル系界面活性剤による滑り性の向上を発揮しやすくする観点からは、160(mgKOH/g)以下とすることが好ましく、120(mgKOH/g)以下とすることがより好ましく、100(mgKOH/g)以下とすることがさらに好ましい。さらに筆記具用インキ組成物中での安定性や、潤滑性等の観点からは、リン酸エステル系界面活性剤の酸価は、好ましくは30~160(mgKOH/g)、より好ましくは40~120(mgKOH/g)、さらに好ましくは40~100(mgKOH/g)である。
【0033】
界面活性剤の親水性と親油性のバランスから求められた親和性の程度を表すHLB値は、好ましくは6~19であり、より好ましくは8~19であり、さらに好ましくは10~19である。本開示に用いられる気泡抑制剤は、界面活性剤を併用することで、水に対する分散性、可溶性が向上する為、安定に存在することができる。このためインキ組成物の経時安定性をより向上させることができる。また、気泡抑制剤を微細に分散、可溶化して用いることで、気泡に対する気泡抑制剤の接触が促進され、気泡抑制力をより向上させることができる。特に可溶化状態での気泡抑制剤の使用が好ましく、HLB値として12~19の界面活性剤を併用することが最も好ましい。
HLB値はアトラス法、グリフィン法、デイビス法、川上法などの算出法が知られており、いずれの算出法も使用可能であるが、本開示ではグリフィン法でのHLB値を用いる。
【0034】
本開示による筆記具用インキ組成物は、リン酸エステル系界面活性剤を含むことが好ましい。リン酸エステル系界面活性剤は、インキ組成物の分散性などを改良する効果の他、インキ組成物をボールペンに用いる場合、潤滑剤としても作用するため、効果的である。本開示の一実施態様によれば、リン酸エステル系界面活性剤を使用する場合、そのHLB値は、6~19、好ましくは6.5~18、より好ましくは7~17であってもよい。
【0035】
界面活性剤は、1種または2種以上の組み合わせることができる。界面活性剤の配合量は、特に限定されないが、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは0.01~15質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0036】
本開示の一実施態様によれば、本開示の筆記具用インキ組成物中にリン酸エステル系界面活性剤が含まれる場合、リン酸エステル系界面活性剤の配合量は、筆記具用インキ組成物の総質量を基準として、0.01~15質量%、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~2.5質量%、さらに好ましくは0.5~2.5質量%である。
【0037】
本開示の一実施態様によれば、本開示の筆記具用インキ組成物に配合される気泡抑制剤とリン酸エステル系界面活性剤の質量比(気泡抑制剤/リン酸エステル系界面活性剤)が0.1~30、好ましくは0.2~8、より好ましくは0.25~5である。特に、本開示の筆記具用インキ組成物に配合される気泡抑制剤とリン酸エステル系界面活性剤の質量比(気泡抑制剤/リン酸エステル系界面活性剤)が0.2~8(好ましくは0.25~5、より好ましくは、0.25~4)の範囲であることは、摩耗抑制効果が特に優れる観点から有利である。
【0038】
(有機アミン)
本開示によるインキ組成物は、有機アミンを含むことができる。
有機アミンとしては、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミンや、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。
インキ組成物が油性である場合に、インキ成分の安定性を考慮すれば、有機アミンを用いることが好ましい。特にリン酸エステル系界面活性剤を用いる場合は、中和することで、インキ組成物中で安定する効果や、書き出し性能や書き味を向上する効果が得られやすいため、好ましい。
インキ組成物が水性である場合に、特にアルカノールアミンは、水性インキ中で安定してpHを調整することができる。
有機アミンは、1種または2種以上の組み合わせることができる。有機アミンの配合量は、特に限定されないが、インキ組成物の総質量を基準として、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。
【0039】
(保湿剤)
本開示による筆記具用インキ組成物は、保湿剤をさらに含むことができる。特に、インキ組成物が水性である場合に、水分蒸発防止を目的として、上記した水溶性有機溶剤、多糖類の他に、尿素、ソルビトール等の保湿剤を含むことができる。なお、本明細書において、上記した水溶性有機溶剤、多糖類は保湿剤に含めないこととする。
保湿剤は、1種または2種以上を組み合わせることができる。保湿剤の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0040】
(pH調整剤)
本開示による筆記具用インキ組成物は、pH調整剤をさらに含むことができる。本開示において、上記した有機アミンはpH調整剤に含めないものとする。pH調整剤としては、例えば、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸およびクエン酸などが挙げられる。
【0041】
(防錆剤)
防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。
【0042】
(防腐剤)
防腐剤としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3オン、N-(n-ブチル)-1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバマート安息香酸ナトリウム、ベンゾトリアゾールおよびフェノールなどが挙げられる。
【0043】
上記以外に、消泡剤、潤滑剤、分散剤、キレート剤等のインキ組成物に従来配合されているものを配合することができる。
【0044】
<筆記具用インキ組成物の製造方法>
本開示による筆記具用インキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
【0045】
<筆記具>
本開示による筆記具は、本開示による筆記具用インキ組成物を具備してなる。
本開示による筆記具用筆記具の構造、形状は特に限定されるものではなく、マーキングペンチップやボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペンの他、筆ペン、万年筆、およびカリグラフィーペン等の筆記具が挙げられるが、好ましくはボールペンである。
【0046】
ボールペンとしては、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に直接インキ組成物を収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させ、インキ流量調節部材とチップが連結されてなる構造を備えるボールペン、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキ組成物の端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等からなるものが用いられるのが一般的である。またボール径は一般に0.2~3.0mm、好ましくは0.25~1.5mm、より好ましくは0.25~1.0mmのものが適用できる。
インキ組成物を収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。
インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して上記インキ収容管とチップを連結してもよい。
インキ収容管はレフィルの形態として、レフィルを樹脂製、金属製等の軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、軸筒内に直接インキ組成物を充填してもよい。
インキ収容管に収容したインキ組成物の後端にはインキ逆流防止体が充填されることが好ましい。インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体または難揮発性液体からなる。具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、1種または2種以上を併用することもできる。
【0047】
[気泡の抑制方法]
本開示の別の実施態様によれば、着色剤を含む筆記具用インキ組成物における気泡を抑制する方法であって、上記筆記具用インキ組成物と、式(I)で表される気泡抑制剤
【化4】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)
と、を共存させることを含む、方法が提供される。
【0048】
[気泡抑制剤の用途]
本開示の別の実施態様によれば、着色剤を含む筆記具用インキ組成物における気泡を抑制するための、式(I)で表される気泡抑制剤
【化5】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)
を含む組成物が提供される。
【0049】
本開示は、以下のものを包含する。
[1]式(I)で表される気泡抑制剤、
【化6】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)、および
着色剤
を含んでなる、筆記具用インキ組成物。
[2]上記気泡抑制剤が、式(Ia)で表される、[1]に記載の組成物。
【化7】
(ここで、
1aは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、
2aは、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~6のアルキル基であり、
3aは、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~6のアルキル基あり、
4aは、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、または炭素数1~3のアルキル基であり、ただし、R4aの少なくとも1つは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基または(メタ)アクリロイルオキシ基である)
[3]溶媒をさらに含んでなる、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]増粘剤をさらに含んでなる、[1]または[2]に記載の組成物。
[5]界面活性剤をさらに含んでなる、[1]または[2]に記載の組成物。
[6]ボールペン用インキ組成物である、[1]または[2]に記載の組成物。
[7]水性ボールペン用インキ組成物である、[1]または[2]に記載の組成物。
[8]上記気泡抑制剤の配合量が、上記組成物の総質量を基準として、0.005~3質量%である、[7]に記載の組成物。
[9]油性ボールペンインキ組成物である、[1]または[2]に記載の組成物。
[10][1]または[2]に記載の組成物を具備してなる筆記具。
【0050】
本開示は、さらに以下のものも包含する。
[11]式(I)で表される気泡抑制剤、
【化8】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)、および
着色剤
を含んでなる、筆記具用インキ組成物。
[12]上記気泡抑制剤が、式(Ia)で表される、[11]に記載の筆記具用インキ組成物。
【化9】
(ここで、
1aは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基であり、
2aは、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~6のアルキル基であり、
3aは、それぞれ独立に、水素、または炭素数1~6のアルキル基あり、
4aは、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、または炭素数1~3のアルキル基であり、ただし、R4aの少なくとも1つは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基または(メタ)アクリロイルオキシ基である)
[13]溶媒をさらに含んでなる、[11]または[12]に記載の筆記具用インキ組成物。
[14]増粘剤をさらに含んでなる、[11]~[13]のいずれかに記載の筆記具用インキ組成物。
[15]界面活性剤をさらに含んでなる、[11]~[14]のいずれかに記載の筆記具用インキ組成物。
[16]上記界面活性剤が、リン酸エステル系界面活性剤を含む、[15]に記載の筆記具用インキ組成物。
[17]上記リン酸エステル系界面活性剤の配合量が、上記組成物の総質量を基準として、0.1~5質量%である、[16]に記載の筆記具用インキ組成物。
[18]上記筆記具用インキ組成物に配合される気泡抑制剤とリン酸エステル系界面活性剤の質量比(気泡抑制剤/リン酸エステル系界面活性剤)が0.2~8である、[16]または[17]に記載の筆記具用インキ組成物。
[19]ボールペン用インキ組成物である、[11]~[18]のいずれかに記載の筆記具用インキ組成物。
[20]水性ボールペン用インキ組成物である、[11]~[19]のいずれかに記載の筆記具用インキ組成物。
[21]上記気泡抑制剤の配合量が、上記組成物の総質量を基準として、0.005~3質量%である、[20]に記載の筆記具用インキ組成物。
[22]油性ボールペンインキ組成物である、[11]~[19]のいずれかに記載の筆記具用インキ組成物。
[23][11]~[22]のいずれかに記載の筆記具用インキ組成物を具備してなる筆記具。
[24]着色剤を含む筆記具用インキ組成物における気泡を抑制する方法であって、上記筆記具用インキ組成物と、式(I)で表される気泡抑制剤
【化10】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)
と、を共存させることを含む、方法。
[25]着色剤を含む筆記具用インキ組成物における気泡を抑制するための、式(I)で表される気泡抑制剤
【化11】
(ここで、
は、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~12のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数7~13のアラルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、
Lは、ヒドロキシ基、スチリルオキシ基、または(メタ)アクリロイルオキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~30の脂肪族炭化水素基であり、ここで、上記脂肪族炭化水素基中のメチレン基(-CH-)がオキシ基(-О-)によって置き換えられていてもよい、かつ
pは、0~3の整数である)
を含む組成物。
【実施例0051】
以下、実施例により、本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
<実施例101~106、201、301、および比較例101、201、301、302>
表1~3に記載の材料を配合し、撹拌機で撹拌し、実施例101~106、201、301、および比較例101、201、301、302の筆記具用インキ組成物を得た。表中の組成の数値は質量%を示す。なお、実施例101~106、201、および比較例101、201の筆記具用インキ組成物は、水性の筆記具用インキ組成物である。また、実施例301、および比較例301、302の筆記具用インキ組成物は、油性の筆記具用インキ組成物である。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表中、
・DPNG:1,3-ビス[(3-メチル-2-ブテン-1-イル)オキシ]-2-プロパノール、
・顔料A:着色樹脂粒子分散体「ルミコールNKW-6305H」、日本蛍光化学株式会社、固形分42.7質量%(表中は、固形分のみの含有量を示す)、
・顔料B:着色樹脂粒子分散体「ルミコール-NKW6304H」、日本蛍光化学株式会社、固形分42.4質量%(表中は、固形分のみの含有量を示す)、
・顔料C:Pigment Red 254、
・染料A:C.I.Acid Red 87、
・染料B:塩基性赤染料と有機酸との造塩染料、保土ヶ谷化学工業株式会社、
・デキストリン:「サンデック♯30」、三和澱粉工業株式会社、質量平均分子量120000、
・サクシノグリカン:「メイポリ」、三晶株式会社、
・キサンタンガム:「モナートガムGS」、三晶株式会社、
・ポリビニルブチラール樹脂:「エスレックBL-1」、積水化学工業株式会社、
・ポリビニルピロリドン樹脂:「PVP K85N」、株式会社日本触媒、
・界面活性剤A:モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)「レオドールスーパーTW-L120」、HLB16.7、花王株式会社、
・界面活性剤B:リン酸エステル系界面活性剤、「プライサーフA215C」、第一工業製薬株式会社、
・界面活性剤C:リン酸エステル系界面活性剤、「フォスファノールRB410」(ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル、酸価:80~90、HLB:8.6)、東邦化学工業株式会社。
【0057】
得られた各筆記具用インキ組成物の外観を目視で観察すると、全て、凝集はなく、均一であった。実施例101、102の筆記具用インキ組成物は、気泡抑制剤が溶解しており、均一であった。実施例103、104の筆記具用インキ組成物は、気泡抑制剤の一部が分散した状態であった。実施例105、106の筆記具用インキ組成物は、気泡抑制剤が溶解しており、均一であり、界面活性剤の可溶化効果が得られていた。
得られた各筆記具用インキ組成物をレフィルに充填し、そのレフィルを装着したボールペンを得た。ボールペンにより、筆記用紙に筆記し、得られた筆跡の色調を目視により観察すると、全て、良好な色調であった。
【0058】
<気体吸収力評価>
得られた各筆記具用インキ組成物をレフィルに充填した。レフィルの外観から気泡が見えるように、筆記具用インキ組成物中に、シリンジで空気を挿入し、レフィル外観から確認される気泡の直径を測定し初期面積を算出した。その後、レフィルを25℃で5日間横置きで放置した。このとき、レフィル外観から確認される気泡の直径を測定し面積を算出した。
気泡の初期面積を基準として、25℃で5日間横置きで放置後の気泡の面積変化を算出した。具体的には、実施例101の気泡の面積変化は、以下の式により算出した。
(実施例101の気泡の25℃5日後面積)/(実施例101の気泡の初期面積)×100-100
実施例101の筆記具用インキ組成物の気泡の面積変化は、(3.94mm)/(4.71mm)×100-100=-16.4(%)であり、気泡面積が減少した、つまり気体吸収力が高いことがわかった。気泡抑制剤を用いていない比較例101の筆記具用インキ組成物は、面積変化がなかった。他の実施例も同様に算出し、得られた結果は表1~3のとおりであった。
【0059】
<実施例401、比較例401、402>
表4に記載の材料を配合し、撹拌機で撹拌し、実施例401、および比較例401、402の筆記具用インキ組成物を得た。表中の組成の数値は質量%を示す。なお、実施例401、および比較例401、402の筆記具用インキ組成物は、油性の筆記具用インキ組成物である。
【0060】
【表4】
【0061】
表中、
・DPNG:1,3-ビス[(3-メチル-2-ブテン-1-イル)オキシ]-2-プロパノール、
・顔料C:Pigment Red 254、
・染料C:塩基性黄染料と有機酸との造塩染料、保土ヶ谷化学工業株式会社、
・ポリビニルブチラール樹脂:「エスレックBL-1」、積水化学工業株式会社、
・ケトン樹脂:アセトフェノン系ケトン樹脂、日立化成株式会社、
・ポリビニルピロリドン樹脂:「PVP K85N」、株式会社日本触媒、
・界面活性剤C:リン酸エステル系界面活性剤、「フォスファノールRB410」(ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル、酸価:80~90、HLB:8.6)、東邦化学工業株式会社、
・界面活性剤D:「ユニスターHR170R0」、日油株式会社、
・オキシエチレンアルキルアミン:「ナイミーンL201」、日油株式会社。
【0062】
<摩耗量評価>
実施例401、比較例401、402の筆記具用インキ組成物を、超硬合金製ボール(φ0.7mm)を回転自在に抱時したチップ本体(ステンレス製)を先端に有するインキ収容筒の内部に充填させたレフィルを作製し、このレフィルを、株式会社パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(スーパーグリップ(登録商標))に配設して、ボールペンを得た。得られたボールペンを試験用ボールペンとし、JIS S6039(ISO12757-1)に記載の筆記試験機により、筆記角度70°、筆記荷重500g、筆記速度4m/minにて100mまたは500m筆記した後、ボール座の摩耗量を測定した。得られた結果は表4のとおりであった。実施例401の筆記具用インキ組成物を用いると、摩耗抑制効果があることがわかった。
【0063】
<実施例501~505>
表5に記載の材料を配合し、撹拌機で撹拌し、実施例501~505の筆記具用インキ組成物を得た。表中の組成の数値は質量%を示す。なお、実施例501~505の筆記具用インキ組成物は、油性の筆記具用インキ組成物である。
【0064】
【表5】
【0065】
表中、
・DPNG:1,3-ビス[(3-メチル-2-ブテン-1-イル)オキシ]-2-プロパノール、
・顔料C:Pigment Red 254、
・染料C:塩基性黄染料と有機酸との造塩染料、保土ヶ谷化学工業株式会社、
・ポリビニルブチラール樹脂:「エスレックBL-1」、積水化学工業株式会社、
・ケトン樹脂:アセトフェノン系ケトン樹脂、日立化成株式会社、
・界面活性剤E:リン酸エステル系界面活性剤、「フォスファノールRS710」、東邦化学工業株式社、
・界面活性剤F:リン酸エステル系界面活性剤、「フォスファノールRA600」、東邦化学工業株式会社、
・ジメチルアルキルアミン:「ファーミンDM2098」、花王株式会社、
・オキシエチレンアルキルアミン:「ナイミーンL201」、日油株式会社。
【0066】
得られた実施例501~505の筆記具用インキ組成物の外観を目視で観察すると、全て、凝集はなく、均一であった。
得られた実施例501~505の筆記具用インキ組成物をレフィルに充填し、そのレフィルを装着したボールペンを得た。ボールペンにより、筆記用紙に筆記し、得られた筆跡の色調を目視により観察すると、全て、良好な色調であった。
実施例501~505の筆記具用インキ組成物では、DPNGは、溶媒の機能も果たしており、筆記具用インキ組成物として使用できるものであった。これらの筆記具用インキ組成物が充填された、キャップ式、ノック式等の油性ボールペンも広く使用することができた。
【0067】
<実施例601~614、比較例601、602>
表6に記載の材料を配合し、撹拌機で撹拌し、実施例601~614、および比較例601、602の筆記具用インキ組成物を得た。表中の組成の数値は質量%を示す。なお、実施例601~614、および比較例601、602の筆記具用インキ組成物は、油性の筆記具用インキ組成物である。
【0068】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0069】
表中、
・DPNG:1,3-ビス[(3-メチル-2-ブテン-1-イル)オキシ]-2-プロパノール、
・顔料C:Pigment Red 254、
・染料D:塩基性黄染料と有機酸との造塩染料、オリエント化学株式会社、
・ポリビニルブチラール樹脂:「エスレックBL-1」、積水化学工業株式会社、
・ケトン樹脂:アセトフェノン系ケトン樹脂、日立化成株式会社、
・ポリビニルピロリドン樹脂:「PVP K85N」、株式会社日本触媒、
・界面活性剤C:リン酸エステル系界面活性剤、「フォスファノールRB410」(ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル、酸価:80~90、HLB:8.6)、東邦化学工業株式会社、
・界面活性剤D:「ユニスターHR170R0」、日油株式会社、
・界面活性剤G:リン酸エステル系界面活性剤、「プライサーフAL」(ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、酸価:70~95)、第一工業製薬株式会社、
・オキシエチレンアルキルアミン:「ナイミーンL201」、日油株式会社。
【0070】
<摩耗量評価>
実施例601~614、および比較例601、602の筆記具用インキ組成物を、超硬合金製ボール(φ0.7mm)を回転自在に抱時したチップ本体(ステンレス製)を先端に有するインキ収容筒の内部に充填させたレフィルを作製し、このレフィルを、株式会社パイロットコーポレーション製の油性ボールペン(スーパーグリップ(登録商標))に配設して、ボールペンを得た。得られたボールペンを試験用ボールペンとし、JIS S6039(ISO12757-1)に記載の筆記試験機により、筆記角度70°、筆記荷重500g、筆記速度4m/minにて100mまたは500m筆記した後、ボール座の摩耗量を測定した。得られた結果は表6のとおりであった。
実施例601~614の筆記具用インキ組成物を用いると、比較例601、602の筆記具用インキ組成物と比較して、摩耗抑制効果があることがわかった。また、実施例601~614の筆記具用インキ組成物の結果から、より一層良好な摩耗抑制効果(特に、0~500mにおける座摩耗量における摩耗抑制効果)を得る観点からは、気泡抑制剤と界面活性剤CまたはG(すなわち、リン酸エステル系界面活性剤)との質量比(気泡抑制剤/界面活性剤CまたはG)が0.2~8(好ましくは、0.25~5、より好ましくは0.25~4)であることが好ましいと考えられる。