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特開2024-159607炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159607
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20241031BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20241031BHJP
   B22F 3/20 20060101ALI20241031BHJP
   B22F 8/00 20060101ALI20241031BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20241031BHJP
   B21C 23/00 20060101ALI20241031BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20241031BHJP
   C22C 32/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B22F1/00 N
C22C21/00 Z
B22F3/20
B22F8/00
B22F9/04 B
B21C23/00 A
C01B32/05
C22C32/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068734
(22)【出願日】2024-04-21
(31)【優先権主張番号】112115934
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】524153879
【氏名又は名称】行富投資股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HF investment Co.,LTD
【住所又は居所原語表記】14F.-2,No.168,Shizheng N.6th Rd.,Xitun Dist.,Taichung City 407606,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】李健豪
【テーマコード(参考)】
4E029
4G146
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4E029AA06
4G146AA01
4G146AB01
4G146AC27A
4K017AA04
4K017BA01
4K017BB13
4K017EA07
4K018AA14
4K018BA08
4K018BB08
4K018BD10
4K018CA01
4K018EA34
4K018HA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルミニウムリサイクルプロセスにおける環境汚染のリスクを回避し、前記プロセスにおいて、時間、資源およびコストを節約可能な炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材を提供する。
【解決手段】本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材は、複数のアルミニウム粒子から構成され、前記アルミニウム粒子の主成分は、アルミニウム元素であり、0.1~8重量%の炭素または有機物成分を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアルミニウム粒子から構成され、前記アルミニウム粒子の主成分は、アルミニウム元素であり、0.1~8重量%の炭素または有機物成分を含む、炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項2】
前記複数のアルミニウム粒子は、アルミニウムストリップから切断して形成され、前記アルミニウムストリップの横断面の面積は、0.2~450平方センチメートルであり、前記横断面は、20~500個の炭素粒子を含み、前記炭素粒子は、前記有機物の少なくとも一部が炭化して形成され、50重量%以上の炭素元素を含む請求項1に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項3】
前記炭素粒子は、85~95重量%の炭素元素、2~8重量%の酸素元素、1~10重量%のアルミニウム元素を含む請求項2に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項4】
前記横断面は、複数の結晶粒の複数の結晶粒横断面を含み、各前記結晶粒横断面は、不規則な帯状であり、各結晶粒横断面の第1長軸長は、10~2000マイクロメートルであり、
前記アルミニウム合金棒の前記横断面は、1平方ミリメートルあたり5~60個の結晶粒の横断面を含み、
各前記結晶粒横断面の面積は、1平方ミリメートル未満である請求項2に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項5】
前記アルミニウム粒子がリサイクルアルミニウム材料からなり、前記有機物がアルカン、脂質、樹脂またはポリエステルを含む請求項2に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項6】
前記アルミニウム粒子は、0.1~2重量パーセントのケイ素、0~2重量パーセントの銅、0.1~30重量パーセントのマグネシウム、0.1~10重量パーセントのマンガンおよび0~10重量パーセントの亜鉛元素をさらに含み、前記炭素粒子は、塩化物、硫化物、窒化物、ケイ酸塩または酸化物をさらに含む請求項5に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項7】
前記断面は、第1相と第2相の前記結晶粒を含み、前記第1相と前記第2相の硬度比が1よりも大きい請求項5に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項8】
前記アルミニウム粒子は、1つ以上の凹面または中空孔を含む請求項1に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項9】
前記横断面は、中心または前記中心付近で1平方ミリメートルあたり5~50個の粒子横断面を含み、前記横断面は、外縁付近で1平方ミリメートルあたり10~60個の粒子断面を含む請求項2に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項10】
前記アルミニウム合金棒は、押出成形により製造され、押出移動方向に沿った押出方向、及び前記押出方向に垂直な径方向を定義し、前記押出方向に垂直な前記横断面及び前記径方向に垂直な縦断面の硬度比が1よりも大きい請求項2~9のいずれか一項に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項11】
前記アルミニウム合金棒の前記縦断面は、複数の前記結晶粒の複数の結晶粒縦断面を含み、各前記結晶縦断面は帯状であり、且つ各前記結晶粒縦断面の第2長軸は、前記押出方向と平行である請求項10に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項12】
前記アルミニウム合金棒の前記横断面及び前記縦断面は、1つ以上の亀裂又は穴を含む請求項11に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【請求項13】
前記アルミニウム合金棒のリサイクルアルミニウム材料は、リサイクルアルミ缶からなり、前記横断面方向結晶が(200)優先配向を有する請求項11に記載の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、アルミニウム合金脱酸材、特に炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材に関する。
【背景技術】
【0002】
循環経済は、現在社会において既に顕著な科学となっており、従来の資源採掘から生産、消費および最終処分に至る直線的な経済モデルとは異なり、資源の回収および再利用を基礎とした経済モデルにより、資源の消耗及び浪費を最大限減少させることが期待されている。循環経済モデルは、資源のリサイクルを促進し、資源の回収、再生および再利用などの手段を通じて資源の価値を最大化し、持続可能な経済発展モデルを実現する。
【0003】
金属および関連製造業は、重要な資源消費者および環境汚染の原因の1つであるため、循環経済の導入はこの産業にとって極めて重要である。金属をリサイクルすると原材料とエネルギーを大幅に節約し、炭素排出量を削減でき、回収された金属は新しい製品の製造に使用できるため、多くの関連業界はすでに金属リサイクルを導入している。しかし、現在のアルミニウムのリサイクルモデルでは、回収したアルミニウムを製錬および焼き戻しする必要があり、エネルギー消費が極めて高く、作業工数が多く、可動コストが高く、加熱による酸化により生成率を損失させて大量のアルミニウム金属を浪費し、アルミニウムを再溶解すると、有毒な煙、粉塵およびスラグが発生する。
【0004】
また、現在のアルミニウムリサイクルモデルが収集するリサイクルアルミニウム材料は、例えば、アルミ缶、アルミ箔パッケージなど又はツールマシンで加工、切削した後に発生するアルミニウム廃材であり、何れもそのリサイクルアルミニウム材料の回収前の使用の必要及び特性によってそのリサイクルアルミニウム材料に一定の程度の有機物が混在し、例えば、アルミ缶は、内部表面に樹脂コーディング層および外部の印刷塗料層を含み、アルミニウム廃材は、切削液等を含み、これらのリサイクルアルミニウム材料に付着した有機物は、現在のアルミニウムリサイクルプロセスでは、そのリサイクルアルミニウム材料を再溶解する過程でダイオキシンなどの有機汚染物質が生成され、深刻な環境汚染および公害を招く。
【0005】
一方、鉄鋼産業では、溶鋼から酸素を除去し、溶鋼の品質と性能を効果的に改善し、溶鋼の純度と均一性を高め、欠陥を減らし、鋼の靭性と耐食性を向上させるため、脱酸材料は製鉄プロセスで広く使用されており、特に酸素と迅速に反応できるアルミニウム合金が脱酸材料として使用される。しかし、アルミニウム合金はコストが高く、従来の技術でアルミニウム合金脱酸材を製造する場合のエネルギー消費量も非常に大きいため、循環経済を実現し、製造コストを低減するアルミニウム合金脱酸材を開発することが、関連分野での緊急の開発目標となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のアルミニウムリサイクルプロセスにおける、アルミニウム廃材の溶解過程で発生する有機汚染物質が環境汚染を招き、製鉄産業で必要とされる脱酸材はコストが高く且つ製造過程でエネルギーを消費するという問題を解決するため、本発明は、炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数のアルミニウム粒子から構成され、前記アルミニウム粒子の主成分は、アルミニウム元素であり、0.1~8重量%の炭素または有機物成分を含む炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材を提供する。
【0008】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記複数のアルミニウム粒子は、アルミニウムストリップから切断して形成され、前記アルミニウムストリップの横断面の面積は、0.2~450平方センチメートルであり、前記横断面は、20~500個の炭素粒子を含み、前記炭素粒子は、前記有機物の少なくとも一部が炭化して形成され、50重量%以上の炭素元素を含む。
【0009】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記炭素粒子は、85~95重量%の炭素元素、2~8重量%の酸素元素、1~10重量%のアルミニウム元素を含む。
【0010】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記横断面は、複数の結晶粒の複数の結晶粒横断面を含み、各前記結晶粒横断面は、不規則な帯状であり、各結晶粒横断面の第1長軸長は、10~2000マイクロメートルであり、前記アルミニウム合金棒の前記横断面は、1平方ミリメートルあたり5~60個の結晶粒の横断面を含み、各前記結晶粒横断面の面積は、1平方ミリメートル未満である。
【0011】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記アルミニウム粒子がリサイクルアルミニウム材料からなり、前記有機物がアルカン、脂質、樹脂またはポリエステルを含む。
【0012】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記アルミニウム粒子は、0.1~2重量パーセントのケイ素、0~2重量パーセントの銅、0.1~30重量パーセントのマグネシウム、0.1~10重量パーセントのマンガンおよび0~10重量パーセントの亜鉛元素をさらに含み、前記炭素粒子は、塩化物、硫化物、窒化物、ケイ酸塩または酸化物をさらに含む。
【0013】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記断面は、第1相と第2相の前記結晶粒を含み、前記第1相と前記第2相の硬度比が1よりも大きい。
【0014】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記アルミニウム粒子は、1つ以上の凹面または中空孔を含む。
【0015】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記横断面は、中心または前記中心付近で1平方ミリメートルあたり5~50個の粒子横断面を含み、前記横断面は、外縁付近で1平方ミリメートルあたり10~60個の粒子断面を含む。
【0016】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記アルミニウム合金棒は、押出成形により製造され、押出移動方向に沿った押出方向、及び前記押出方向に垂直な径方向を定義し、前記押出方向に垂直な前記横断面及び前記径方向に垂直な縦断面の硬度比が1よりも大きい。
【0017】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記アルミニウム合金棒の前記縦断面は、複数の前記結晶粒の複数の結晶粒縦断面を含み、各前記結晶縦断面は帯状であり、且つ各前記結晶粒縦断面の第2長軸は、前記押出方向と平行である。
【0018】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記アルミニウム合金棒の前記横断面及び前記縦断面は、1つ以上の亀裂又は穴を含む。
【0019】
前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材において、前記アルミニウム合金棒のリサイクルアルミニウム材料は、リサイクルアルミ缶からなり、前記横断面方向結晶が(200)優先配向を有する。
【発明の効果】
【0020】
上記の説明から、本発明は以下の利点を有することがわかる。
1.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、空気の汚染を大幅に低減でき、汚染物が環境中に散逸するリスクを避けることができる。
2.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、多くのエネルギーを節約でき、アルミニウム廃材を溶解する時に有毒な煙、粉塵およびスラグを発生させることがない。
3.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造方法は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、プロセスにおけるアルミニウムの酸化による金属アルミニウムの損失を回避できる。
4.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材は、リサイクルアルミニウム材料を製鋼用の脱酸材とし、製鋼プロセスの脱酸材のコストと原材料の消費量を低減し、資源再生利用の効果を実現する。
5.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造は、リサイクルアルミニウム材料に有機物を含むことによってプロセス中に有機汚染物質を生成することがなく、前記リサイクルアルミニウム材料の前処理プロセスを簡易化、更には省くことができ、時間、資源およびコストを節約し、環境保護に有利である。
6.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法の製造方法は、従来技術のようにアルミニウムブロックを接着剤で固定する必要がないため、コストを削減でき、接着剤による環境汚染や資源の浪費を回避できる。
7.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造方法は、先ず前記リサイクルアルミニウム材料をアルミニウムストリップに形成し、複数のアルミニウム粒子に切断することで、各切断面がいずれも極薄の酸化アルミニウム層の新たな表面となり、脱酸材の脱酸効果を向上させる。
8.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の形状は、凹面および中空孔の形状を含むことで、接触表面積を増加させることができ、脱酸効果を大幅に向上させる。
9.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材は、他の元素をさらに添加し、合金成分を調整することで前記アルミニウム粒子の酸化還元能力と比重を制御し、脱酸材の脱酸効果を向上させることができる。
10.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材は、アルミニウム合金の切削加工で発生するアルミニウム屑や使用済みのアルミ缶など、従来技術では処理が困難なアルミニウム廃材をリサイクル処理することができ、これらのアルミニウム屑が大きな表面積及び体積比を有し、酸化し易く、経常的に潤滑剤、切削液又は飲料残渣及び塗料層との混合によって有効にリサイクル利用することが難しい問題を解決し、従来技術のリサイクル及び再溶解処理の問題を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の好適実施形態のステップ図である。
図2】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの説明図である。
図3】本発明の好適実施形態の複数のアルミニウム粒子の説明図である。
図4】本発明の好適実施形態の複数のアルミニウム粒子の説明図である。
図5】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの押出方向、横断面および縦断面の説明図である。
図6】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図7】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図8】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図9】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図10】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図11】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図12】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図13】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図14】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図15】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面の部分金属組織図である。
図16】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの縦断面の部分金属組織図である。
図17】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの縦断面の部分金属組織図である。
図18】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの縦断面の部分金属組織図である。
図19】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの縦断面の部分金属組織図である。
図20】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップの横断面のSEM画像である。
図21】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップのX線回折分析図である。
図22】本発明の好適実施形態のアルミニウムストリップのX線回折分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の技術案をより明確に説明するために、以下では、各実施形態の説明に使用する必要がある図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明における図面は、本発明の一部の例示又は実施形態にすぎず、当業者は、創造的な作業をすることなく、これらの図面に従って他の同様の場面に本発明を適用することもできる。文脈から明らかでない限り、又は別途説明がない限り、図中の同様の部材符号は同様の構造又は動作を表す。
【0023】
本発明及び特許請求の範囲に示すように、文脈が例外を明確に示していない限り、「一」、「1つ」、「1種」又は「前記」等の単語は、特に単数を指すものではなく、複数を含んでもよい。一般的に言えば、「備える」及び「含む」という用語は、明確に識別されたステップ及び要素を含むこと示すのみであり、これらのステップ及び要素は排他的なリストを構成するものではなく、方法又は装置は他のステップ又は要素も含んでもよい。
【0024】
本発明では、フローチャートを使用して、本発明の実施形態のシステムに従って実行される操作を説明する。なお、先又は後の動作は、必ずしも順に従って正確に実行される必要はなく、逆の順序で処理又は各ステップを同時に処理してもよい。また、他の操作をこれらの過程に追加してもよく、これらの過程から一つ又は幾つかの操作を除いてもよい。
【0025】
図1は、本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1の一部の実施形態の製造ステップ図である。本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1の主な製造は、ステップS10~ステップS50を含む。
【0026】
ステップS10:複数のリサイクルアルミニウム材料を成形部材に入れて圧縮し、前記リサイクルアルミニウム材料が前記成形部材を満たすまで続ける。このステップS10では、収集した前記リサイクルアルミニウム材料を集中させ、前記成形部材に入れて圧縮し続ける。前記リサイクルアルミニウム材料が圧縮により収縮する場合、前記リサイクルアルミニウム材料が完全に前記成形部材を満たすまで、より多くの前記リサイクルアルミニウム材料を前記カバー材に投入することができる。好ましくは、前記成形部材は中空管であり、前記中空管は、両端に前記開口を有するか、一端のみに前記開口を有する管材であってよい。ここで、前記中空管の断面は、円形である。好適実施形態では、前記中空管の断面の円形の直径は、9cmであり、且つ前記中空管の長さは、60cmである。
【0027】
ここで、前記リサイクルアルミニウム材料としては、各種リサイクルアルミニウム廃材を使用することができる。例えば、前記リサイクルアルミニウム材料としては、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生されるアルミニウム屑、又は前処理してシュレッドした後のリサイクルアルミ缶およびアルミ箔パックチップなどであってよい。ここで、前記リサイクルアルミニウム材料は、各種異なる供給源および品質のアルミニウム廃材であってよい。好ましくは、前記中空管に充填される前記リサイクルアルミニウム材料は、何れも単一の供給源からのリサイクルアルミニウム材料である。いわゆる単一の供給源とは、前記リサイクルアルミニウム材料がすべて、同じ合金系、同じ米国アルミニウム協会合金番号、または同じプロセスで生産されたアルミニウム合金製品から生成又はリサイクルされたアルミニウム合金廃材であることを意味する。一実施形態では、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源は、同じ工作機械で同じ切削加工を施して製造されたアルミニウム合金のアルミニウム屑である。別の実施形態では、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源は、リサイクルアルミニウム合金のイージーオープン缶の破片である。
【0028】
ここで、前記リサイクルアルミニウム材料は、まず一連の前処理を経た後、前記成形部材内に入れて圧縮および充填することができる。一実施形態では、前記リサイクルアルミニウム材料は、予備洗浄と空気分離を経て大きな不純物が除去され、その後磁気分離を使用して強磁性金属が除去される。ただし、これらの前処理は必ずしも必要なわけではなく、前記リサイクルアルミニウム材料の供給源に応じて適切な前処理方法を選択することができる。例えば、一実施形態では、前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑であり、前記リサイクルアルミニウム材料に対して予備洗浄と切削液の粗除去を行うだけで前記リサイクルアルミニウム材料を前記成形部材内に投入し、充填及び圧縮することができる。
【0029】
したがって、前記リサイクルアルミニウム材料には、残留する複数種の有機化合物が含まれる。ここで、前記リサイクルアルミニウム材料は、0.1~8重量%の有機物の組成を含む。より好ましくは、前記リサイクルアルミニウム材料は、0.5~5重量%の有機物の組成を含む。一実施形態において、前記リサイクルアルミニウム材料は、アルミニウム合金ブロックの切削加工プロセスで発生するアルミニウム屑であり、前記リサイクルアルミニウム材料に残留する複数種の前記有機化合物は、ほとんどが切削液であり、前記切削液には、鉱物油、乳化剤、水、防錆添加剤、消泡剤などの成分を含み得る。別の実施形態では、前記リサイクルアルミニウム材料は、前記リサイクルアルミニウム材料は、リサイクルアルミ缶およびアルミ箔パックチップであり、前記リサイクルアルミニウム材料に残留する複数種の前記有機物は、アルミ箔パックに含まれるセルロースおよび半繊維またはリグニンなどの紙成分、又はアルミニウム缶胴部に完全に除去されていない印刷層およびアルミ缶内装の塗料層でありえ、前記塗料層の成分は、蝋等の各種脂質、又はエポキシ樹脂などの各種樹脂、又はアクリル酸共重合体やポリカーボネートなどの各種ポリエステルの成分であり得る。これらの有機化合物が膨大な時間、エネルギー及び資源を費やすことなく、前処理過程で完全に除去されることが困難である。しかし、本ステップS10では、前記リサイクルアルミニウム材料は、煩雑な前処理工程を必要とせずにそれを前記成形部材に投入し、圧縮および充填し、アルミニウムパッケージを形成することができる。一実施形態では、前記処理されていない、または簡易に前処理された前記リサイクルアルミニウム材料は、米国アルミニウム協会合金番号7075のアルミニウム材料からリサイクルされ、1.5~8重量%の有機物の組成を含む。別の実施形態では、前記処理されていない、または簡易に前処理された前記リサイクルアルミニウム材料は、米国アルミニウム協会合金番号5000シリーズのアルミニウム材料からリサイクルされ、2~5重量%の有機物の組成を含む。更に別の実施形態では、処理されていない、または簡易に前処理された前記リサイクルアルミニウム材料は、米国アルミニウム協会合金番号6000シリーズのアルミニウム材料からリサイクルされ、0.5~1.5重量%の有機物の組成を含む。
【0030】
本発明が形成するアルミニウム合金脱酸材により良好な効果をもたせるために、前記リサイクルアルミニウム材料をさらに前記カバー材に入れて充填および圧縮するステップと同時に、マグネシウム、マンガン、ケイ素、亜鉛又は銅などの強い脱酸効果を有する元素を前記アルミニウムパッケージに添加し、全体的な脱酸効果をさらに向上させ、本発明によって形成されるアルミニウム合金の脱酸材の割合を調整する。好ましくは、異なる前記リサイクルアルミニウム材料に基づいて異なる割合の元素を添加して指定の割合を達成する。一実施形態では、前記アルミニウムパッケージは、0.1~2重量%のケイ素、0~2重量%の銅、および0.1~30重量%のマグネシウム、0.1~10重量%のマンガンおよび0~10重量%の亜鉛元素を含む。
【0031】
ステップS20(選択可能):圧縮成形した前記リサイクルアルミニウム材料を金型に入れる。本ステップS20では、前記リサイクルアルミニウム材料は前記成形部材に圧縮して充填されており、前記成形部材から圧縮した前記リサイクルアルミニウム材料を取り出して前記金型に投入する。本ステップS20は、前記成形部材から前記リサイクルアルミニウム材料を取り出して前記金型に入れることができる。前記リサイクルアルミニウム材料は圧縮されているため、取り出し時に前記リサイクルアルミニウム材料は、前記カバー材内での形状を維持して飛散や変形が生じることない。好ましくは、前記カバー材は、前記中空管であり、圧縮成形された前記リサイクルアルミニウム材料を取り出した後、円柱形となる。圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料を前記金型に入れる。ここで、前記金型は、長い中空円筒の形状をしており、その長さと断面は、いずれも前記中空管よりも大きい。前記金型の底部には、長軸の中心に固定リングが配置され、前記固定リングは、圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料の断面と等しいか、やや大きく、前記固定リングを圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料が前記金型の前記長軸の中心に位置してズレを生じることがないように固定することができる。前記金型は、1つ以上の締め付け装置を含み、圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料を前記金型に安定して固定させることができる。好適実施形態では、前記金型の開口の直径は、12.7cmであり、前記金型の長さは、60cmであり、金型の底部には、直径10cm、深さ1cmの前記固定リングが設けられ、前記金型の上部には、締め付け用のアルミシート及びネジが設けられる。好適実施形態では、前記金型は、アルミニウム合金管で前記圧縮された前記リサイクルアルミニウム材料を固定する。
【0032】
また、本ステップS20は、前記リサイクルアルミニウム材料で満たされた前記成形部材を前記金型に直接投入して、前記リサイクルアルミニウム材料を前記成形部材から取り出す必要がない。好適実施形態では、前記成形部材は、前記中空管であり、且つ前記中空管は、アルミニウム合金材質であり、前記中空管を圧縮した後に前記リサイクルアルミニウム材料を取り出す必要はなく、アルミニウム合金をともなう前記中空管を前記金型に入れ、前記中空管を前記締め付け装置とする。好ましくは、アルミニウム合金の前記中空管と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金組成を有し、即ち、前記中空管と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金系または同じ米国アルミニウム協会合金番号を有する。
【0033】
ステップS30(選択可能):アルミニウム溶湯を注いで前記リサイクルアルミニウム材料を密封して鋳造パッケージを形成する。本ステップS30では、前記金型に入れた前記リサイクルアルミニウム材料にアルミニウム溶湯を注ぎ、前記アルミニウム溶湯が前記リサイクルアルミニウム材料を完全に覆い密閉し、冷却固化して鋳造パッケージを成形する。前記アルミニウム溶湯は、溶融したアルミニウム合金であり、且つ好ましくは、前記アルミニウム溶湯と前記リサイクルアルミニウム材料は、同じ合金組成を有し、即ち、前記アルミニウム溶湯と前記リサイクルアルミニウム材料は同じ合金系または同じ米国アルミニウム協会合金番号を有する。一実施形態では、単一の供給源から収集されたリサイクルアルミニウム合金イージーオープン缶をシュレッドした後、前記中空管に入れて圧縮および充填して成形する前記リサイクルアルミニウム材料は、本ステップでは、類似の供給源からの前記アルミニウム溶湯を注入して、前記鋳造パッケージの合金に同じ均質なアルミニウム合金の特性を維持させる。好ましくは、締め付け用の前記アルミシートおよび前記リサイクルアルミニウム材料も、同じ合金からなる。前記アルミニウム溶湯は、前記リサイクルアルミニウム材料を完全に密閉するため、複数の前記有機化合物が前記鋳造パッケージ内に封入される。
【0034】
ここで、前記ステップS20及び前記ステップS30は、択一に行っても、2つのステップを両方行ってもよい。
【0035】
ステップS40:前記アルミニウムパッケージ又は鋳造パッケージを予熱した後、熱間押出してアルミニウムストリップAを形成する。本ステップS40では、前記鋳造パッケージを前記金型から取り出し、予熱した後にアルミブランクとし、熱間押出によりアルミストリップを形成する。前記アルミニウムストリップAの断面形状は、必要に応じて前記鋳造パッケージが通過する押出を設計でき、且つ前記熱間押出は、直接押出または間接押出で行うことができる。ここで、前記間接押出成形は、前記アルミニウムストリップAの内部に中空構造を生成することができる。好ましくは、前記熱間押出の温度は、360~550℃であり、前記熱間押出の押出速度は、0.2~20mm/秒であり、いわゆる押出速度は、前記熱間押出機のプレスロッドの移動速度である。好ましくは、前記中空管と前記アルミニウムストリップAの断面積比は、40:1~10:1である。前記中空管と前記アルミニウムストリップAの断面積の比は、即ち、押出比であり、本ステップS40の好ましい押出比は、10~40であり、且つ生成する前記アルミニウムストリップAの気孔率は、1%未満である。熱間押出を経て成形された前記アルミニウムストリップAは、一部の有機物が炭素に変換される。ここで、前記アルミニウムストリップAは、0.1~8重量%の炭素又は有機物の組成を含む。より好ましくは、前記アルミニウムストリップAは、0.5~5重量%の炭素又は有機物の組成を含む。
【0036】
好ましくは、前記ステップS40は、無酸素環境で行うことができ、例えば、窒素環境で前記アルミニウムストリップAを押出成形し、前記アルミニウムストリップAの内部にアルミナを形成し難くさせ、前記アルミニウムストリップAの材料特性を向上させる。
【0037】
図2及び図5を併せて参照し、好ましくは、前記アルミニウムストリップAは、柱状であり、前記アルミニウムストリップAの各複数の横断面CSの形状および面積をいずれも同一にさせる。いわゆる「横断面」とは、本発明では、前記アルミニウムストリップAの押出方向に垂直な面で前記アルミニウムストリップAを切断して形成される面をいう。好ましくは、前記横断面CSの面積は、0.2~450平方センチメートルである。好ましくは、前記アルミニウムストリップAは、丸棒であり、法線ベクトルが前記押出方向EDに平行な前記横断面が円形となるようにする。好ましくは、前記横断面CSの前記円形の直径は、0.5~2cmである。本発明の好適実施形態では、前記アルミニウムストリップAの前記横断面CSの前記円形の直径は1.4cmである。
【0038】
図2図5および図20を併せて参照し、前記アルミニウムストリップAが加熱される時、前記アルミニウム含有材料に付着した有機化合物がさらに炭化され、前記アルミニウムストリップAに複数の炭素粒子Bを含ませることができる。ここで、前記炭素粒子Bは、50重量%以上の炭素元素を含む。前記炭素粒子Bは、優れた耐高温性能を有し、前記アルミニウム条材Aの耐熱性を向上させることができ、前記アルミニウムストリップAを高温環境下で加工可能にさせる。また、前記炭素粒子Bの存在により、前記アルミニウムストリップAの熱伝導性が向上し、高温下でも優れた熱伝導性を発揮することができる。好ましくは、前記アルミニウムストリップAの前記横断面CSは、20~500個の前記炭素粒子Bを含む。
【0039】
好ましくは、前記炭素粒子Bは、塩化物、硫化物、窒化物、ケイ酸塩または酸化物を含む。
【0040】
ここで、前記炭素粒子Bは、次の成分および重量%割合を含む元素組成を含むものであってよい:85~95%の炭素元素、2~8%の酸素元素、および1~10%のアルミニウム元素。
【0041】
図20を参照し、好適実施形態では、前記アルミニウムストリップAの前記横断面CSの前記炭素粒子Bに対してEDS分析を実行し、前記炭素粒子Bは、次の成分と重量%割合の元素組成を含む。炭素元素90.99%、酸素元素4.22%、マグネシウム元素0.64%、アルミニウム元素2.79%、ケイ素元素1.16%、塩素元素0.10%、および鉄元素0.11%。
【0042】
本発明の前記アルミニウムストリップAは、溶融処理を経ていない前記リサイクルアルミニウム材料を使用して上記の工程を経て押し出し成形して製造され、本発明の前記アルミニウムストリップA材料に独特の材料質感及び組成をもたせる。図6図15は、本発明の好適実施形態の前記アルミニウムストリップAの複数の前記横断面CSの金属組織図である。図6図15の前記アルミニウムストリップAの複数の横断面CSの金属組織図は、前記アルミニウムストリップAを金属組織試験片に作製し、冷間実装した後、順に100番~2000番のサンドペーパーで研磨し、粒径1マイクロメートルと0.3マイクロメートルの酸化アルミニウム粉末研磨液で鏡面に磨き上げた後、ケラーエッチング液でエッチングし、光学顕微鏡で微細組織を写真で観察している。
【0043】
前記アルミニウムストリップAの断面CSは、複数の結晶粒(grain)の複数の結晶粒横断面10を含む。前記アルミニウムストリップAの前記横断面CSは、中心と外縁とを定義する。好ましくは、前記アルミニウムストリップAは、前記外縁が円形であり且つ中心が前記横断面CSの中心となる丸棒である。
【0044】
各前記結晶粒横断面10は、不規則な帯状であり、好ましくは、少なくとも一部分の前記結晶粒横断面10は、半月状であり、本発明の各前記結晶粒横断面10は、第1長軸の長さが10~2000μmである。いわゆる「第1長軸」とは、本発明では、前記結晶粒横断面10の最も遠い2点を端点として形成される軸線を指す。
【0045】
前記アルミニウムストリップAの前記横断面CSは、1平方ミリメートル当たり5~50個の結晶粒横断面10を含む。好ましくは、前記中心または前記中心付近の前記横断面CSの1平方ミリメートル当たり5~20個の結晶粒横断面10を含み、前記外縁付近の前記横断面CSは、1平方ミリメートル当たり10~60個の結晶粒横断面10を含む。本発明では、前記中心付近の定義は、前記中心を中心して前記横断面CSの面積の50%を囲む範囲であり、前記外縁付近は、前記範囲外の他の残りの前記横断面CSとして定義する。好ましくは、各前記結晶粒横断面10の面積は、1平方ミリメートル未満であり、より好ましくは、各前記結晶粒横断面10の面積は、0.6平方ミリメートル未満である。
【0046】
好ましくは、図6から図15を併せて参照し、押出時、前記アルミニウムストリップAの前記外縁の径方向に比較的大きな圧力を受けるため、前記外縁付近の各前記結晶粒横断面10の各前記長軸を前記中心及び前記外縁の1点を結ぶ線に垂直にさせる。
【0047】
図13図15は、本発明の好適実施形態の前記アルミニウムストリップAの前記横断面CSの部分金属組織図である。好ましくは、前記横断面CSの中心または中心付近は、1つ以上の亀裂20(cracks)または穴21(voids)を含み、前記亀裂20または前記穴21は、有機物を含むリサイクルアルミニウム材料の押出プロセスによって生成される欠陥である。
【0048】
図16図19は、本発明の前記アルミニウムストリップAの好適実施形態の前記縦断面LSの金属組織図である。図16図19の前記アルミニウムストリップAの複数の前記縦断面LSの金属組織図は、前記アルミニウムストリップAを金属組織試験片に調製し、冷間実装した後、100番~2000番のサンドペーパーで順に研磨し、その後、粒径1マイクロメートルと0.3マイクロメートルの酸化アルミニウム粉末研磨液を使用して鏡面に研磨し、研磨後ケラーエッチング液を使用してエッチングし、光学顕微鏡を使用して撮像した微細構造を観察する。
【0049】
前記アルミニウムストリップAの前記縦断面LSは、複数の前記結晶粒の複数の結晶粒縦断面11を含む。各前記結晶粒縦断面11は、長尺な帯状であり、各前記結晶粒縦断面10の第2長軸は、前記押出方向EDと平行である。いわゆる「第2長軸」とは、本発明では、前記結晶粒縦断面11の最も遠い2点を端点として形成される軸線を指す。
【0050】
好ましくは、前記縦断面LSの粒界は複数の穴21を含み、前記穴21は、前記リサイクルアルミニウム材料の押出プロセスにより生じた欠陥である。
【0051】
さらに、前記アルミニウムストリップAは、異方性の材料機械的特性を有する。前記アルミニウムストリップAは、長尺の円柱状であり、長尺円柱の押出移動方向に沿った押出方向EDと、前記押出方向EDに垂直な径方向とを定義する。ここで、前記押出方向EDに垂直な前記横断面CS(即ち、前記横断面CSの法線ベクトルが押出方向EDに平行)の硬度は、前記径方向に垂直な縦断面LSよりも硬い。好ましくは、前記押出方向EDに垂直な前記横断面CSと前記径方向に垂直な縦断面LSとの硬度比は1.2よりも大きく、より好ましくは1.5よりも大きい。好適実施形態では、ロックウェル硬さ試験(Rockwell hardness test)のHRF硬さスケールを使用し、即ち、直径1.588mmの鋼球により荷重60kgfで測定し、前記横断面CSで測定された値は、23.9~42.5であり、前記縦断面LSで測定した値は63.1~76.7である。
【0052】
さらに、図6図19を参照し、前記アルミニウム合金棒の前記横断面CSおよび前記縦断面LSは、それぞれ第1相101および第2相102である少なくとも2つの異なる前記結晶粒相を含む。前記第1相101は、前記横断面CSおよび前記縦断面LSの金属組織図において色の濃い結晶粒であり、前記第2相102は、前記横断面CSおよび前記縦断面LSの金属組織図において色の薄い結晶粒である。好ましくは、前記第1相101の硬度は、第2相102の硬度よりも高く、前記第1相101と前記第2相102の硬度比は、1.2よりも大きく、更に好ましくは、1.5よりも大きい。好適実施形態では、ビッカース硬さ試験(Vickers hardness test)で測定し、前記第2相102が測定した数値は、57.1~64.9HVであり、前記第2相102が測定した数値は、28.8~45.5HVである。
【0053】
図21を参照し、X線回折分析を使用して、前記押出方向EDに垂直な前記アルミニウムストリップAの前記横断面CSを測定し、前記アルミニウムストリップAの結晶体がほとんどミラー指数(Miller index)(200)で配置されていることが観察でき、アルミニウム粉末標準品のランダム組織のX線回折結果がほとんど(111)で配置されていることと異なり、前記アルミニウムストリップAは、(200)方向の優先的な結晶配向を有することを示している。また、一部の好適実施形態では、前記アルミニウムストリップAにいくつかの炭素回折ピーク(三角形箇所)を含むことを観察でき、これは、前記有機化合物が炭化された後の前記炭素粒子Bが前記アルミニウムストリップAに存在することを説明する。
【0054】
図22を参照し、別の好適実施形態では、前記リサイクルアルミニウム材料は、米国アルミニウム協会の合金番号6000シリーズと7000シリーズのアルミニウム材料の混合リサイクルによって形成され、X線回折分析を使用して前記アルミニウムストリップAの前記押出方向EDに平行で、前記横断面CSに垂直な面を測定し、前記アルミニウムストリップAの結晶体がミラー指数で表される比較的強度の高い(111)配列を表していることが観察でき、アルミニウム粉末標準品のランダム組織のX線回折結果のほとんどが(111)で配置されることと類似し、前記アルミニウムストリップAの結晶体は、ミラー指数(200)がいくらか向上しており、本実施形態の前記アルミニウムストリップAが明らかな優先的な結晶配向を有さないことを示している。
【0055】
ステップS50:前記アルミニウムストリップAを複数のアルミニウム粒子に切断し、炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材を完成させる。図3及び図4を併せて参照し、本ステップS50では、熱間押出により形成された前記アルミニウムストリップを複数のアルミニウム粒子に切断し、前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1の作製を完成する。ここで、前記アルミニウム粒子は、球形、水滴形または多角形に切断することができる。好ましくは、前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1は、1つ以上の凹面および中空孔を更に含むこともでき、前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1の表面積を増加させ、より良好な脱酸効果を発揮し、脱酸効率を向上させる。一実施形態では、ステップS40で間接熱間押出により形成された前記アルミニウムストリップAは、軸方向に沿った中空部を含み、前記アルミニウムストリップAを複数の前記アルミニウム粒子2に切断する時、貫通孔を有する前記アルミニウム粒子2を形成する。
【0056】
好ましくは、前記ステップS50は、無酸素環境で行うことができ、例えば、窒素ガス環境で前記アルミニウムストリップを複数のアルミニウム粒子に切断してパッケージし、前記アルミニウム粒子の切断が形成する表面に酸化アルミニウムが形成されることを低減し、前記アルミニウム合金脱酸材の脱酸能力及び効率を向上させる。
【0057】
<炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の性質および応用>
本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1は、複数のアルミニウム粒子2から構成され、前記アルミニウム粒子2の主要成分は、アルミニウム元素であり、0.1~8重量%の炭素又は有機物を含む。いわゆる「前記アルミニウム粒子2の主要成分がアルミニウム元素である」とは、本発明においては、アルミニウム元素の成分が前記アルミニウム粒子2に占める重量%が他の成分が前記アルミニウム粒子2に占める重量%よりも大きいことを指す。また、前記アルミニウム粒子2を構成するアルミニウムは、酸化された酸化アルミニウムではなく、主として単体のアルミニウムである。前記アルミニウム粒子2の大気に接触する外層には、一層の酸化皮膜が形成される場合があり、前記酸化皮膜の成分は、主に酸化アルミニウムである。前記酸化皮膜は、アルミニウム粒子2を緻密かつ完全に覆い、前記アルミニウム粒子2の内部の無機物がさらに酸化されることを防ぎ、前記アルミニウム粒子2中のアルミニウムは、酸化された酸化アルミニウムではなく主に単体アルミニウムとなり、前記アルミニウム粒子2の脱酸効果の低下を回避する。前記アルミニウム粒子2は、前記リサイクルアルミニウム材料を溶融して製造するのではなく、表面および内部界面のみに酸化した無機物を有することで、本発明の前記アルミニウム粒子2の脱酸効果を更に優れたものとさせる。
【0058】
さらに、前記アルミニウム粒子2は、0.1~2重量%のケイ素、0~2重量%の銅、0.1~30重量%のマグネシウム、0.1~10重量%のマンガン、および0~10重量%の亜鉛元素も含み、且つ前記炭素粒子Bは、アルカン、脂質、樹脂またはポリエステルを含む前記有機物が炭化して形成される。一実施形態では、前記有機物は、主に切削液を含み、別の実施形態では、前記有機物は、主にアルミ缶の内面コーティング材を含む。これらの有機物は、本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1の製造工程を経た後、大部分が予熱及びホットプレスプロセスによって炭化されることによって前記炭素粒子Bの形式で前記アルミニウム粒子2中に分布しており、前記アルミニウム粒子2を使用してそれを製鋼炉に投入する時、製鋼炉の温度は、高分子有機物の分解温度よりもはるかに高いため、環境の汚染又は有毒な有機物を完全に分解させ、廃棄物の問題を減少させ、有害な有機物の生成を低減させる。
【0059】
一実施形態では、本発明の形成中の前記アルミニウムストリップAと製造完成したアルミニウム粒子2に対してダイオキシンとフランの検出を実施し、検出結果はそれぞれ0.013ngI‐TEQ/gと0.00004ngI‐TEQ/gであり、底質リサイクル製品または土壌の規制基準0.1ngI‐TEQ/gよりもはるかに低く、本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1の製品自体及び製造過程の何れも、リサイクルアルミニウム材料に存在する有機物によってダイオキシン汚染を発生することがないことが確認できる。
【0060】
本発明の有機含有アルミニウム合金脱酸材1の脱酸効果を最適化するために、前記アルミニウムパッケージ又は前記鋳造パッケージに投入する金属元素を調整することにより、本発明の有機含有アルミニウム合金脱酸材1の前記アルミニウム粒子2に特定の金属元素の割合を達成させることができる。例えば、前記アルミニウム粒子2中のマグネシウム元素の割合を増やして脱酸能力を高めたり、前記アルミニウム粒子2中の銅元素の割合を増やしてアルミニウム粒子2の密度を高めたりすることで、脱酸材が溶鋼表面に浮遊し、脱酸能力に影響を与える状況を改善することができる。一実施形態では、前記アルミニウム粒子2は、0.1~2重量%のケイ素、0.1~2重量%のマグネシウム、および0.1~2重量%のマンガン元素を含む。別の実施形態では、前記アルミニウム粒子2は、0.1~2重量%のケイ素、0.1~10重量%のマグネシウム、および0.1~2重量%のマンガン元素を含む。別の実施形態では、前記アルミニウム粒子2は、0.1~2重量%のケイ素、1~2重量%の銅、0.1~1重量%のマグネシウム、0.1~1重量%のマンガン、および0.1~10重量%の亜鉛元素を含む。さらに別の実施形態では、前記アルミニウム粒子2は、0.1~10重量%のケイ素、0.1~10重量%のマグネシウム、0.1~2重量%のマンガン、および0.1~10重量%の亜鉛元素を含む。
【0061】
ここで、本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1は、脱酸効果をより効率よく発揮させるために、各前記アルミニウム粒子2の形状は、球形、水滴形、または多角形である。さらに、前記有機含有アルミニウム合金脱酸材1のより良い脱酸効果を高めるために、熱間押出および切断によって前記アルミニウム粒子2に1つ以上凹面または中空の穴3を含めることができ、前記アルミニウム粒子2の表面積を大幅に増加させることができる。熱間押出された低気孔率の脱酸材は、前記アルミニウム粒子2の浮力を減少させ、従来のアルミニウム粒子が溶鋼の表面にのみ浮遊する状況を改善し、脱酸効果を高めることができる。
【0062】
本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1は、低コストで効率的かつ環境に優しい低炭素排出脱酸材として鉄鋼業界に提供でき、一実施形態では、前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1は、溶鋼用の優れた脱酸材として使用できる。製鋼炉の温度は1000℃をはるかに超えており、前記アルミニウム粒子には残留する複数種の有機物が含まれているため、前記炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1に含まれる各種有機物は、この温度で完全に炭化及び分解され、ダイオキシンなどの有機汚染物質の排出を避けることができ、溶鋼の脱酸を効果的に促進し、本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1を、従来のリサイクル処理が困難であったアルミニウム廃材をリサイクルさせると同時に、低エネルギー消費で、低金属消費で、高付加価値の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材1に変換し、有害有機物による環境汚染を回避する。
【0063】
上記の説明から、本発明は以下の利点を有することがわかる。
1.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、空気の汚染を大幅に低減でき、汚染物が環境中に散逸するリスクを避けることができる。
2.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、多くのエネルギーを節約でき、アルミニウム廃材を溶解する時に有毒な煙、粉塵およびスラグを発生させることがない。
3.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造方法は、加熱してアルミニウム廃材を溶解する必要がないため、プロセスにおけるアルミニウムの酸化による金属アルミニウムの損失を回避できる。
4.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材は、リサイクルアルミニウム材料を製鋼用の脱酸材とし、製鋼プロセスの脱酸材のコストと原材料の消費量を低減し、資源再生利用の効果を実現する。
5.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造は、リサイクルアルミニウム材料に有機物を含むことによってプロセス中に有機汚染物質を生成することがなく、前記リサイクルアルミニウム材料の前処理プロセスを簡易化、更には省くことができ、時間、資源およびコストを節約し、環境保護に有利である。
6.本発明のアルミニウム合金脱酸材の製造方法の製造方法は、従来技術のようにアルミニウムブロックを接着剤で固定する必要がないため、コストを削減でき、接着剤による環境汚染や資源の浪費を回避できる。
7.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の製造方法は、先ず前記リサイクルアルミニウム材料をアルミニウムストリップに形成し、複数のアルミニウム粒子に切断することで、各切断面がいずれも極薄の酸化アルミニウム層の新たな表面となり、脱酸材の脱酸効果を向上させる。
8.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材の形状は、凹面および中空孔の形状を含むことで、接触表面積を増加させることができ、脱酸効果を大幅に向上させる。
9.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材は、他の元素をさらに添加し、合金成分を調整することで前記アルミニウム粒子の酸化還元能力と比重を制御し、脱酸材の脱酸効果を向上させることができる。
10.本発明の炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材は、アルミニウム合金の切削加工で発生するアルミニウム屑や使用済みのアルミ缶など、従来技術では処理が困難なアルミニウム廃材をリサイクル処理することができ、これらのアルミニウム屑が大きな表面積及び体積比を有し、酸化し易く、経常的に潤滑剤、切削液又は飲料残渣及び塗料層との混合によって有効にリサイクル利用することが難しい問題を解決し、従来技術のリサイクル及び再溶解処理の問題を改善する。
【0064】
上記の説明及び詳述に基づき、当業者は、上記の実施方式に変更及び修正を加えることもできることに留意されたい。従って、本開示は、上で開示及び説明した具体的実施例に限定するものではなく、本開示に対するいくつかの均等の修正及び変更も、本開示の特許請求の範囲の保護範囲内にあるべきである。また、本明細書では一連の特定の用語を使用しているが、これらの用語は説明の便宜のためのみであり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 炭素化合物含有アルミニウム合金脱酸材
2 アルミニウム粒子
3 穴
10 結晶粒横断面
11 結晶粒縦断面
20 亀裂
21 穴
101 第1相
102 第2相
A アルミニウムストリップ
B 炭素粒子
CS 横断面
LS 縦断面
ED 押出方向
S10 ステップ
S20 ステップ
S30 ステップ
S40 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22