(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159613
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】磁石用樹脂トレイ
(51)【国際特許分類】
B65D 77/08 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B65D77/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069298
(22)【出願日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2023074561
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】多田 篤司
(72)【発明者】
【氏名】仲田 凌
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 大地
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB99
3E067AC04
3E067BA10A
3E067BB16A
3E067BC02A
3E067EE38
3E067EE50
3E067FA01
3E067FC03
(57)【要約】
【課題】変形の抑制が図られた磁石用樹脂トレイを提供する。
【解決手段】 樹脂トレイ10においては、一対の第1の辺11および一対の第2の辺12のそれぞれにおいて、磁石収容部20の突出凹部23A、24の先端位置P2、P4がスカート部15のスカート凹部16の先端位置P1、P3より外側に位置しているため、側面方向からの外力によるスカート部15の内方への変形が抑制される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形状の外形を有するとともに互いに平行な上面および下面を有し、
平面視における前記上面の外縁から前記下面の外縁まで延びるスカート部と、
前記上面から窪んで構成され、磁石が収容されるとともに、平面視における外縁から外方に向かって延びる突出凹部を複数含む磁石収容部と、
平面視において前記スカート部から内方に窪んで構成された複数のスカート凹部と
を備え、
平面視における少なくとも一つの辺に沿って、前記磁石収容部の複数の前記突出凹部と前記スカート部の複数の前記スカート凹部とが交互に並んでおり、かつ、平面視において前記突出凹部の先端位置が前記スカート凹部の先端位置より外側に位置している、磁石用樹脂トレイ。
【請求項2】
平面視における前記少なくとも一つの辺において、前記複数のスカート凹部が前記スカート部に等間隔に設けられている、請求項1に記載の磁石用樹脂トレイ。
【請求項3】
平面視において、互いに平行な一対の第1の辺と、前記第1の辺に対して直交する一対の第2の辺とを有し、
平面視における前記第1の辺および前記第2の辺の両方において、前記磁石収容部の複数の前記突出凹部と前記スカートの複数の前記スカート凹部とが交互に並んでおり、かつ、平面視において前記突出凹部の先端位置が前記スカート凹部の先端位置より外側に位置している、請求項1に記載の磁石用樹脂トレイ。
【請求項4】
前記磁石収容部は、前記磁石が保持される複数の磁石保持領域を有し、
前記磁石は、前記磁石保持領域の一部を画成する前記突出凹部により保持される、請求項1に記載の磁石用樹脂トレイ。
【請求項5】
平面視において、互いに平行な一対の第1の辺と、前記第1の辺に対して直交する一対の第2の辺とを有し、
前記複数の磁石保持領域は、それぞれが前記第2の辺に対して平行に延在し、かつ、前記第1の辺に沿って千鳥配置されている、請求項4に記載の磁石用樹脂トレイ。
【請求項6】
前記スカート部から前記磁石収容部までの距離が8.0mm以下である、請求項1に記載の磁石用樹脂トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石用樹脂トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型部品を複数持ち運ぶ際にトレイが用いられる。たとえば下記特許文献1には、半導体集積回路等の電子部品を複数並べて収容することができる樹脂トレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した樹脂トレイに磁石を収容することが考えられる。ただし、磁石は空気中の水分により劣化することがあり、希土類磁石は特に水分によって劣化しやすい。このような磁石の劣化は、磁石が収容された樹脂トレイを真空パックすることで抑制され得るが、真空パックによって樹脂トレイが変形することがある。
【0005】
本発明の一側面は、変形の抑制が図られた磁石用樹脂トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る磁石用樹脂トレイは、略長方形状の外形を有するとともに互いに平行な上面および下面を有し、平面視における上面の外縁から下面の外縁まで延びるスカート部と、上面から窪んで構成され、磁石が収容されるとともに、平面視における外縁から外方に向かって延びる突出凹部を複数含む磁石収容部と、平面視においてスカート部から内方に窪んで構成された複数のスカート凹部とを備え、平面視における少なくとも一つの辺に沿って、磁石収容部の複数の突出凹部とスカート部の複数のスカート凹部とが交互に並んでおり、かつ、平面視において突出凹部の先端位置がスカート凹部の先端位置より外側に位置している。
【0007】
上記磁石用樹脂トレイにおいては、平面視において磁石収容部の複数の突出凹部とスカート部の複数のスカート凹部とが交互に並ぶとともに突出凹部の先端位置がスカート凹部の先端位置より外側に位置している辺では、スカート部の内方への変形が抑制される。
【0008】
他の側面に係る磁石用樹脂トレイでは、平面視における少なくとも一つの辺において、複数のスカート凹部がスカート部に等間隔に設けられている。
【0009】
他の側面に係る磁石用樹脂トレイでは、平面視において、互いに平行な一対の第1の辺と、第1の辺に対して直交する一対の第2の辺とを有し、平面視における第1の辺および第2の辺の両方において、磁石収容部の複数の突出凹部とスカートの複数のスカート凹部とが交互に並んでおり、かつ、平面視において突出凹部の先端位置がスカート凹部の先端位置より外側に位置している。
【0010】
他の側面に係る磁石用樹脂トレイでは、磁石収容部は、磁石が保持される複数の磁石保持領域を有し、磁石は、磁石保持領域の一部を画成する突出凹部により保持される。
【0011】
他の側面に係る磁石用樹脂トレイでは、平面視において、互いに平行な一対の第1の辺と、第1の辺に対して直交する一対の第2の辺とを有し、複数の磁石保持領域は、それぞれが第2の辺に対して平行に延在し、かつ、第1の辺に沿って千鳥配置されている。
【0012】
他の側面に係る磁石用樹脂トレイでは、前記スカート部から前記磁石収容部までの距離が8.0mm以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の種々の側面によれば、変形の抑制が図られた磁石用樹脂トレイが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る樹脂トレイを示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示した樹脂トレイの第1の辺を拡大した要部拡大図である。
【
図6】
図6は、
図2に示した樹脂トレイの第2の辺を拡大した要部拡大図である。
【
図7】
図7は、従来技術に係る樹脂トレイを示した図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した樹脂トレイを積み重ねた状態を示した図である。
【
図9】
図9は、スカート部の変形を示した断面図である。
【
図10】
図10は、異なる態様の樹脂トレイを示した概略斜視図である。
【
図12】
図12は、異なる態様の樹脂トレイを示した平面図である。
【
図13】
図13は、実施例のサンプル2に係る樹脂トレイを示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0016】
図1~3に示すように、一実施形態に係る樹脂トレイ10(磁石用樹脂トレイ)は、平面視において略長方形状を呈する。なお、略長方形には、各辺が歪んだ長方形や角が丸い長方形などが含まれる。以下では、説明の便宜上、樹脂トレイ10の互いに平行な一対の第1の辺11に沿う方向を第1方向D1と称し、第1の辺11に対して直交する一対の第2の辺12に沿う方向を第2方向D2と称する。
【0017】
樹脂トレイ10は、樹脂シートを金型を用いて熱成形することにより得られる。樹脂トレイ10は、公知の樹脂材料を用いることができる。本実施形態では、樹脂トレイ10は非晶性ポリエチレンテレフタレート(A-PET)で構成されている。樹脂トレイ10は、PET以外の樹脂材料で構成されていてもよく、たとえばポリプロピレン(PP)等で構成されていてもよい。
【0018】
図2に示すように、上面10aは平面視(上面視)において略長方形状の外形を有する。上面10aは、外縁に位置する環状の外枠部13を含む。平面視における外枠部13の内側には、上面10aから窪んで構成された磁石収容部20が設けられている。磁石収容部20は、複数の保持壁21A、21B、21C、21Dによって画成された複数の収容部20A、20B、20Cを含んで構成されている。本実施形態では、磁石収容部20は、4つの保持壁21A、21B、21C、21Dによって画成された3つの収容部20A、20B、20Cを含んで構成されている。4つの保持壁21A、21B、21C、21Dは第1方向D1に沿って延在しており、3つの収容部20A、20B、20Cも第1方向D1に沿って延在している。
【0019】
磁石収容部20には、たとえば角柱状または長方形板状の磁石が複数収容される。本実施形態では、積層された4本の角柱状の希土類磁石(磁石積層体)30が、第2方向D2に延在する姿勢で磁石収容部20に収容される。複数の磁石30は、第1方向D1に沿って3列に並ぶように、3つの収容部20A、20B、20Cのそれぞれに配置される。磁石収容部20の各収容部20A、20B、20Cでは、複数の磁石30が第2方向D2に関して所定距離だけ交互にずらして並べられるように(いわゆる、千鳥配置またはジグザク配置)、
図2に示すように、磁石30が保持される複数の磁石保持領域22についても第2方向D2に関して所定距離だけ交互にずれるように千鳥配置されている。また、磁石収容部20の各収容部20A、20B、20Cでは、第1方向D1において隣り合う磁石保持領域22は所定距離だけ離間されており、複数の磁石保持領域22のそれぞれに磁石30が配置されたときに、第1方向D1において隣り合う磁石30は所定距離だけ離間される。それにより、樹脂トレイ10に磁石30を収容するときや樹脂トレイ10から磁石30を取り出すときに、指や治具により磁石30を掴みやすくなっている。磁石保持領域22は保持壁21A、21B、21C、21Dによって画成され、保持壁21A、21B、21C、21Dは、磁石30の第1方向D1に関する端部30a、30bを保持する長方形状の凹部23を有する。保持壁21Aおよび保持壁21Dは、平面視において樹脂トレイ10の第1の辺11に対応する外枠部13に隣接しており、保持壁21Aおよび保持壁21Dのそれぞれの凹部23は平面視において外方に向かって延びている。
【0020】
図3に示すように、下面10bは平面視(下面視)において略長方形状の外形を有する。下面10bの外形は、上面10aの外形と同一または相似の関係を有し、本実施形態では上面10aの外形より大きな寸法となるように設計されている。下面10bは、上面10aに対して平行に延在している。下面10bは、外縁に位置する環状の脚部14を含む。本実施形態では、脚部14に加えて、磁石収容部20も、樹脂トレイ10の下面10bの一部を構成している。
【0021】
樹脂トレイ10は、平面視における上面10aの外縁から下面10bの外縁まで延びるスカート部15をさらに備える。スカート部15が脚部14を含む態様であってもよい。スカート部15は、樹脂トレイ10の全周にわたって形成されており、樹脂トレイ10の側面を構成している。上述のとおり下面10bの外形が上面10aの外形より大きくなっているため、本実施形態では、スカート部15は、高さ方向(すなわち、上面10aと下面10bとの対面方向)に対して傾斜しており、より詳しくは下方に向かって拡がるように傾斜している。スカート部15には、内方に長方形状に窪んだ複数のスカート凹部16が形成されている。各スカート凹部16は、上面10aから延びる縦溝(いわゆるリブ)であり、下面10b近傍においてスカート部15の途中で終端している。スカート部15は、スカート凹部16が設けられることで、高さ方向に関する強度が高められている。
【0022】
続いて、スカート凹部16と磁石収容部20との位置関係について、
図4~7を参照しつつ説明する。
【0023】
樹脂トレイ10の第1の辺11に対応するスカート部15では、6つのスカート凹部16が第1方向D1に沿って均一なピッチで等間隔に設けられている。磁石収容部20では、上述したとおり第1方向D1に沿って12の磁石保持領域22が千鳥配置されており、保持壁21Aでは、均一なピッチで凹部23が外方に突出して、磁石収容部20の突出凹部23Aを形成している。本実施形態では、6つのスカート凹部16のピッチと6つの突出凹部23Aのピッチとは同一であり、互いに半ピッチだけずれている。そのため、樹脂トレイ10の第1の辺11では、第1方向D1に沿って6つのスカート凹部16と6つの突出凹部23Aとが交互かつ等間隔に並んでいる。
【0024】
樹脂トレイ10の第1の辺11に対応するスカート部15における第2方向D2に関するスカート凹部16の切り込み深さd1は、6つのスカート凹部16においていずれも同じ深さになるように設計されている。スカート凹部16の切り込み深さd1は制限されない。スカート凹部16の切り込み深さd1が比較的深いと、樹脂トレイ10の変形量が小さくなる傾向がある一方、深すぎると磁石の収容数が低下し、効率が悪くなる。スカート凹部16の切り込み深さd1が比較的浅いと、樹脂トレイ10の変形量が大きくなる傾向があり、それに加えて本願請求項1の構造を得ることが困難となる。スカート凹部16の切り込み深さd1は10.0mm以下であってもよく、2.0mm以上9.0mm以下の範囲内であってもよく、2.3mm以上8.0mm以下の範囲内であってもよい。平面視において、第2方向D2に関する複数のスカート凹部16のそれぞれの先端位置P1は6つの突出凹部23Aのそれぞれの先端位置P2より内側に位置している。換言すると、平面視において、第2方向D2に関する6つの突出凹部23Aのそれぞれの先端位置P2は6つのスカート凹部16のそれぞれの先端位置P1より外側に位置している。このとき、スカート凹部16の切り込み深さd1は、樹脂トレイ10の第1の辺11に対応するスカート部15から磁石収容部20の突出凹部23Aまでの距離L(以下では、第1の距離L1とも称す。)より長い。
【0025】
樹脂トレイ10の第2の辺12に対応するスカート部15では、2つのスカート凹部16が第2方向D2に沿って設けられている。磁石収容部20では、3つの収容部20A、20B、20Cが均一なピッチで外方に突出して、磁石収容部20の突出凹部24を形成している。本実施形態では、2つのスカート凹部16の間隔と3つの突出凹部24のピッチとは同一であり、3つの突出凹部24は2つのスカート凹部16に対して半ピッチだけずれている。そのため、樹脂トレイ10の第2の辺12では、第1の辺11同様、第2方向D2に沿って2つのスカート凹部16と3つの突出凹部24とが交互かつ等間隔に並んでいる。
【0026】
樹脂トレイ10の第2の辺12に対応するスカート部15における2つのスカート凹部16の切り込み深さd2は同じ深さになるように設計されている。スカート凹部16の切り込み深さd2は制限されない。スカート凹部16の切り込み深さd2が比較的深いと、樹脂トレイ10の変形量が小さくなる傾向がある一方、深すぎると磁石の収容数が低下し、効率が悪くなる。スカート凹部16の切り込み深さd2が比較的浅いと、樹脂トレイ10の変形量が大きくなる傾向があり、それに加えて本願請求項1の構造を得ることが困難となる。スカート凹部16の切り込み深さd2は10.0mm以下であってもよく、7.0mm以上8.0mm以下であってもよい。平面視において、樹脂トレイ10の第2の辺12に対応するスカート部15における2つのスカート凹部16のそれぞれの先端位置P3は3つの突出凹部24のそれぞれの先端位置P4より内側に位置している。換言すると、平面視において、第1方向D1に関する3つの突出凹部23Aのそれぞれの先端位置P4は2つのスカート凹部16のそれぞれの先端位置P3より外側に位置している。このとき、スカート凹部16の切り込み深さd2は、樹脂トレイ10の第2の辺12に対応するスカート部15から磁石収容部20の突出凹部24までの距離L(以下では、第2の距離L2とも称す。)より長い。
【0027】
樹脂トレイ10は、必要に応じて複数段に積み重ねられる。このとき、上下に位置する樹脂トレイ10のスカート部15同士は直接接していてもよい。
図7に示すように、上段の樹脂トレイ10のスカート部15が下段の樹脂トレイ10のスカート部15上に位置し、上段の樹脂トレイ10のスカート部15の内面と下段の樹脂トレイ10のスカート部15の外面とが直接接する。このとき、上段の樹脂トレイ10の下面10b(磁石収容部20の下面)が、下段の樹脂トレイ10の樹脂トレイ10に収容された磁石30の上面と位置合わせされていてもよい。
【0028】
樹脂トレイ10においては、一対の第1の辺11および一対の第2の辺12のそれぞれにおいて、磁石収容部20の突出凹部23A、24の先端位置P2、P4がスカート部15のスカート凹部16の先端位置P1、P3より外側に位置している。発明者らは、突出凹部23A、24の先端位置P2、P4とスカート凹部16の先端位置P1、P3とが上記関係を満たす場合、側面方向(高さ方向に対して交差する方向)からの外力によるスカート部15の内方への変形が抑制されることを新たに見出した。
【0029】
図8に示すように、磁石収容部20の突出凹部23Aの先端位置P2がスカート部15のスカート凹部16の先端位置P1より内側に位置する場合、一点鎖線で示すように連続する長い屈曲線Mが生じる。この場合、スカート部15は、屈曲線Mにおいて長い範囲にわたって変形し、内方への変形量(撓み量)が大きくなる。
図4に示すように、磁石収容部20の突出凹部23Aの先端位置P2がスカート部15のスカート凹部16の先端位置P1より外側に位置する場合には、屈曲線Mが不連続となって(断続的になって)長さが短くなるため、スカート部15の内方への変形量を比較的小さくすることができる。
【0030】
樹脂トレイ10は、収容される磁石30の劣化を抑制するために、磁石収容部20に複数の磁石30が収容された状態で真空パックされる。特に、磁石30が希土類磁石である場合、希土類磁石は空気中の水分によって劣化しやすいため、真空パックが有効である。パック内が負圧になると、樹脂トレイ10には全方位から外力(大気圧)が付加される。このとき側面方向からの外力によるスカート部15が内方へ変形されるが、上述した樹脂トレイ10によれば、突出凹部23A、24の先端位置P2、P4とスカート凹部16の先端位置P1、P3とが上記関係を満たすため、スカート部15の内方への変形が抑制される。
【0031】
なお、真空パックしたときに生じた変形は真空パックを開封したときにもある程度元に戻るが、変形が大きい場合には戻りきらずに変形したままとなり得る。そのため、上述した樹脂トレイ10では、真空パック時にスカート部15の内方への変形が抑制されることで、真空パックを開封したときに元の形状に戻りやすくもなっている。
【0032】
スカート部15から磁石収容部20までの距離L(第1の距離L1および第2の距離L2)も変形量に影響すると考えられる。
図9に示すように、スカート部15はある程度変形したところで磁石収容部20に当接してそれ以上の変形が抑制される。すなわち、スカート部15の変形に対して磁石収容部20がストッパとして機能し、スカート部15の可動長さが制限される。そのため、スカート部15から磁石収容部20までの距離Lが小さいほどスカート部15の内方への変形量が抑制されると考えられる。なお、スカート部15から磁石収容部20までの距離Lが小さすぎる場合には、複数の樹脂トレイ10を積み重ね難くなる。たとえば、樹脂トレイ10の第1の辺11に対応するスカート部15から磁石収容部20の突出凹部23Aまでの第1の距離L1は、8.0mm以下であってもよく、7.8mm以下であってもよく、3.0mm以上6.0mm以下の範囲内であってもよく、3.7mm以上5.8mm以下の範囲内であってもよい。樹脂トレイ10の第2の辺12に対応するスカート部15から磁石収容部20の突出凹部24までの第2の距離L2は、8.0mm以下であってもよく、7.3mm以下であってもよく、7.0mm以上8.0mm以下の範囲内であってもよく、7.3mm以上8.0mm以下の範囲内であってもよい。
【0033】
樹脂トレイ10は、一対の第1の辺11のみ、または、一対の第2の辺12のみにおいて、磁石収容部20の突出凹部23A、24の先端位置P2、P4がスカート部15のスカート凹部16の先端位置P1、P3より外側に位置する態様であってもよい。
図10、11に示した樹脂トレイ10では、一対の第2の辺12のそれぞれにのみ磁石収容部20の突出凹部24の先端位置がスカート部15のスカート凹部16の先端位置より外側に位置しており、一対の第1の辺11のそれぞれでは磁石収容部20の突出凹部23Aの先端位置はスカート部15のスカート凹部16の先端位置より外側に位置していない。この場合、一対の第2の辺12に対応するスカート部15の内方への変形量が抑制される。
【0034】
樹脂トレイ10は、一対の第1の辺11および一対の第2の辺12の全てにおいて、磁石収容部20の突出凹部23A、24の先端位置P2、P4がスカート部15のスカート凹部16の先端位置P1、P3より外側に位置する場合には、一対の第1の辺11および一対の第2の辺12のそれぞれに対応するスカート部15の内方への変形が抑制され、スカート部15の下端に位置する脚部14の変位が抑制される。それにより、複数の樹脂トレイ10を積み重ねる際に、変形したスカート部15や脚部14が干渉する事態が生じにくくなり、複数の樹脂トレイ10を積み重ねやすくなる。
【0035】
なお、スカート部15に設けられる複数のスカート凹部16は、均一ピッチで配置されていてもよく、異なる間隔で配置されていてもよい。
図12に示す態様では、
図2に示した態様におけるスカート凹部16が一部間引かれており、第1の辺11に対応するスカート部15のスカート凹部16は異なる間隔で配置されている。また、
図12に示す態様では、一方の第1の辺11に対応するスカート部15と他方の第1の辺11に対応するスカート部15とでは、スカート凹部16の位置が一部異なっており、平面視において対称性を有していない。
図12に示した態様であっても、磁石収容部20の突出凹部23Aの先端位置がスカート部15のスカート凹部16の先端位置より外側に位置しているため、側面方向からの外力によるスカート部15の内方への変形が抑制され得る。樹脂トレイ10の各辺11、12では、
図2に示したように磁石収容部20の全ての突出凹部23Aとスカート部15の全てのスカート凹部16とが交互に並んでいてもよく、
図12に示したように磁石収容部20の複数の突出凹部23Aの一部とスカート部15の複数のスカート凹部16の一部とが交互に並んでいる態様であってもよい。
【実施例0036】
発明者らは、平面視における突出凹部の先端位置とスカート凹部の先端位置の関係がスケート部の変形量に与える影響を確認するため、以下に示すとおりの実験をおこなった。
【0037】
サンプル1~3として、形態の異なる非晶性ポリエチレンテレフタレート製の樹脂トレイを準備した。サンプル1は
図3に示した形態、サンプル2は
図13、14に示した形態、サンプル3は
図10、11に示した形態を有する。
図13、14に示した樹脂トレイは、磁石収容部20が突出凹部24を有しない点でのみ
図10、11に示した樹脂トレイとは異なり、一対の第1の辺11のそれぞれで磁石収容部20の突出凹部23Aの先端位置がスカート部15のスカート凹部16の先端位置より外側に位置しておらず、かつ、一対の第2の辺12のそれぞれでも磁石収容部20の先端位置がスカート部15のスカート凹部16の先端位置より外側に位置していない。
【0038】
サンプル1~3では、樹脂トレイの第1の辺に対応するスカート部から磁石収容部までの第1の距離L1を同一(5.8mm)としつつ、スカート凹部16の切り込み深さd1について、サンプル1の切り込み深さd1は6.0mm、サンプル2の切り込み深さd1は2.3mm、サンプル3の切り込み深さd1は2.3mmとした。また、樹脂トレイの第2の辺に対応するスカート部のスカート凹部の切り込み深さd2を同一(7.3mm)としつつ、樹脂トレイの第2の辺に対応するスカート部から磁石収容部までの第2の距離L2に関しては、サンプル2のみ10.7mmとし、その他のサンプル1、3は同一(5.0mm)とした。そして、サンプル1~3それぞれについて、樹脂トレイの下面を固定した状態で、第1の辺に対応するスカートおよび第2の辺に対応するスカートを、スカートに対して垂直な方向から同じ圧力(0.1N/mm2)で押圧し、最大変化量を測定した。その結果は、表1に示すとおりとなった。表1の結果から、サンプル1のようにL1<d1が成立する場合、または、サンプル1、3のようにL2<d2が成立する場合に、スカートの変形が効果的に低減されることが確認された。これらの場合には、平面視において突出凹部の先端位置(P2)がスカート凹部の先端位置(P1)より外側に位置している。
【0039】
【0040】
続いて、発明者らは、スカート部から磁石収容部までの距離とスカート部の変形量との関係を確認するため、以下に示すとおりの実験をおこなった。
【0041】
サンプル4~7として、
図1~3に示した構成を有する非晶性ポリエチレンテレフタレート製の樹脂トレイを準備した。サンプル4~7は樹脂トレイの第1の辺に対応するスカート部から磁石収容部までの第1の距離L1が互いに異なっており、サンプル4の第1の距離L1は9.7mm、サンプル5は7.8mm、サンプル6は5.8mm、サンプル7の第1の距離L1は3.7mmとした。なお、サンプル4~7のスカート凹部16の切り込み深さd1は同一(8.0mm)とした。また、サンプル4~7の第2の距離L2も同一(5.0mm)とし、サンプル4~7のスカート凹部16の切り込み深さd2も同一(7.3mm)とした。そして、サンプル4~7それぞれについて、樹脂トレイの下面を固定した状態で、第1の辺に対応するスカートおよび第2の辺に対応するスカートを、スカートに対して垂直な方向から同じ圧力(0.1N/mm
2)で押圧し、最大変化量を測定した。その結果は、表2に示すとおりとなった。表2の結果から、第1の距離L1が短くなるほど、スカートが変形しにくくなり最大変形量が小さくなることが確認された。
【0042】
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0044】
たとえば、スカート部に設けられるスカート凹部の数は、適宜増減することができる。スカート凹部の平面形状は、長方形状に限らず、半円形状や三角形状、多角形状であってもよい。また、樹脂収容部は、複数の磁石を3列に整列させる態様に限らず、1列や2列、4列以上に複数の磁石が整列する態様であってもよい。
【0045】
なお、本明細書で用いた「平行」「直交」「等間隔」「同じ深さ」等の用語については、厳密な意味合いではなく、実質的な意味合いで用いられており、ある程度の誤差(たとえば製造誤差程度)は許容され得る。
【0046】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
略長方形状の外形を有するとともに互いに平行な上面および下面を有し、
平面視における前記上面の外縁から前記下面の外縁まで延びるスカート部と、
前記上面から窪んで構成され、磁石が収容されるとともに、平面視における外縁から外方に向かって延びる突出凹部を複数含む磁石収容部と、
平面視において前記スカート部から内方に窪んで構成された複数のスカート凹部と
を備え、
平面視における少なくとも一つの辺に沿って、前記磁石収容部の複数の前記突出凹部と前記スカート部の複数の前記スカート凹部とが交互に並んでおり、かつ、平面視において前記突出凹部の先端位置が前記スカート凹部の先端位置より外側に位置している、磁石用樹脂トレイ。
[付記2]
平面視における前記少なくとも一つの辺において、前記複数のスカート凹部が前記スカート部に等間隔に設けられている、付記1に記載の磁石用樹脂トレイ。
[付記3]
平面視において、互いに平行な一対の第1の辺と、前記第1の辺に対して直交する一対の第2の辺とを有し、
平面視における前記第1の辺および前記第2の辺の両方において、前記磁石収容部の複数の前記突出凹部と前記スカートの複数の前記スカート凹部とが交互に並んでおり、かつ、平面視において記突出凹部の先端位置が前記スカート凹部の先端位置より外側に位置している、付記1または2に記載の磁石用樹脂トレイ。
[付記4]
前記磁石収容部は、前記磁石が保持される複数の磁石保持領域を有し、
前記磁石は、前記磁石保持領域の一部を画成する前記突出凹部により保持される、付記1~3のいずれか一つに記載の磁石用樹脂トレイ。
[付記5]
平面視において、互いに平行な一対の第1の辺と、前記第1の辺に対して直交する一対の第2の辺とを有し、
前記複数の磁石保持領域は、それぞれが前記第2の辺に対して平行に延在し、かつ、前記第1の辺に沿って千鳥配置されている、付記4に記載の磁石用樹脂トレイ。
[付記6]
前記スカート部から前記磁石収容部までの距離が8.0mm以下である、付記1~5のいずれか一つに記載の磁石用樹脂トレイ。
10…樹脂トレイ、10a…上面、10b…下面、11…第1の辺、12…第2の辺、15…スカート部、16…スカート凹部、20…磁石収容部、22…磁石保持領域、23A、24…突出凹部、30…磁石、P1~P4…先端位置。