(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159621
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】光拡散シート、バックライトユニット、液晶表示装置、及び情報機器
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20241031BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241031BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B5/20
F21S2/00 481
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069667
(22)【出願日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2023074699
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000165088
【氏名又は名称】恵和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129919
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 信二
(74)【代理人】
【識別番号】100158399
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 輝
(72)【発明者】
【氏名】竹末 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】蔡 承亨
(72)【発明者】
【氏名】野澤 真佑子
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
3K244
【Fターム(参考)】
2H042BA05
2H042BA20
2H148AA01
2H148AA19
2H148AA25
3K244AA01
3K244BA08
3K244CA02
3K244DA01
3K244GA01
3K244GA02
3K244GA04
(57)【要約】
【課題】輝度均一性を向上させることができる光拡散シートを提供する。
【解決手段】光拡散シート43は、樹脂から構成される本体シートの少なくとも一面に略逆多角錐状の複数の凹部22を有する。光拡散シート43を構成する前記本体シートが備える少なくとも1つの層の波長450nmの光に対する屈折率は、1.55以上1.7以下である。光拡散シート43を構成する本体シートの波長450nmの光に対する吸収率は、7.0%以下である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂から構成される本体シートの少なくとも1つの面に逆多角錐状の複数の凹部が設けられた光拡散シートであって、
前記本体シートは少なくとも1つの層を備え、
前記本体シートを構成する層の波長450nmの光に対する屈折率は1.55以上1.7以下であり、
前記本体シートの波長450nmの光に対する吸収率は7.0%以下である、光拡散シート。
【請求項2】
前記屈折率は、1.6以上である、請求項1に記載の光拡散シート。
【請求項3】
前記本体シートは、単層又は多層シートであり、前記少なくとも1つの層が単一の樹脂からなるものを含み、
前記樹脂は、芳香環を有する高分子樹脂である、請求項1に記載の光拡散シート。
【請求項4】
前記本体シートは、単層又は多層シートであり、前記少なくとも1つの層が単一の樹脂からなるものを含み、
前記樹脂は、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、及び、アクリルのいずれか1つの樹脂である、請求項1に記載の光拡散シート。
【請求項5】
前記樹脂から構成される本体シートは、拡散剤を実質的に含有しない、請求項1に記載の光拡散シート。
【請求項6】
前記複数の凹部は、略逆四角錐状に形成され、二次元マトリクス状に配列される、請求項1に記載の光拡散シート。
【請求項7】
液晶表示装置に組み込まれ、複数の光源から発せられた光を表示画面に導くバックライトユニットであって、
前記表示画面と前記複数の光源との間に、請求項1~6のいずれか1項に記載の光拡散シートを備える、バックライトユニット。
【請求項8】
前記複数の光源は、青色光源である、請求項7に記載のバックライトユニット。
【請求項9】
前記複数の光源は、3mm以下のピッチで二次元マトリクス状に配列される、請求項7に記載のバックライトユニット。
【請求項10】
前記表示画面と前記光拡散シートとの間に、前記光の波長を変換する色変換シートを備える、請求項7に記載のバックライトユニット。
【請求項11】
複数の前記光拡散シートが設けられる、請求項7に記載のバックライトユニット。
【請求項12】
請求項7に記載のバックライトユニットと、
液晶表示パネルとを備える、液晶表示装置。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶表示装置を備える情報機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光拡散シート、バックライトユニット、液晶表示装置、及び情報機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレット端末などの各種情報機器の表示装置として、液晶表示装置が広く利用されている。液晶表示装置のバックライトとしては、光源が液晶パネルの背面に配置される直下型方式が主流となっている。
【0003】
直下型バックライトを採用する場合、表示画面においてLED(Light Emitting Diode)等の光源のイメージを消して輝度均一性を上げるために、光拡散シートが使用される(特許文献1参照)。
【0004】
ノートパソコンやタブレット端末などの薄型ディスプレイにおいては、光拡散シートとして、例えば、逆ピラミッド状の凹部が形成されたシートが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直下型バックライトでは光源が表示画面の直下に配置されるため、ディスプレイの薄型化に伴って、光源から光拡散シートまでの距離や、光拡散シートの厚みが削減されると、光拡散シートによって光を十分に拡散させることが難しくなる。その結果、表示画面内での輝度均一性が悪化するという問題が生じている。
【0007】
本開示は、輝度均一性を向上させることができる光拡散シート、並びに、当該光拡散シートを用いたバックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本開示の態様1に係る光拡散シートは、樹脂から構成される本体シートの少なくとも1つの面に逆多角錐状の複数の凹部が設けられた光拡散シートであって、前記本体シートは少なくとも1つの層を備え、前記本体シートを構成する層の波長450nmの光に対する屈折率は、1.55以上1.7以下であり、前記本体シートの波長450nmの光に対する吸収率は7.0%以下である。
【0009】
本態様によると、本体シートが有する少なくとも1つの面に略逆多角錐状の複数の凹部が設けられていることにより、当該複数の凹部によって光を均一に拡散させることができる。また、光拡散シートを形成するための本体シートを構成する層として、波長450nmの光に対する屈折率が1.55以上1.7以下で、且つ波長450nmの光に対する吸収率が7.0%以下である本体シートを用いる。このため、波長450nmの光に対する屈折率が1.55未満若しくは1.7超、又は波長450nmの光に対する吸収率が7.0%超である樹脂を用いた場合と比べて、輝度均一性を高くすることができる。
【0010】
尚、本開示において、「光拡散シート」は、板状の「光拡散板」や膜状の「光拡散フィルム」を包含するものとする。
【0011】
本開示の態様2に係る光拡散シートは、前記態様1において、当該光拡散シートを成形するための前記本体シートを構成する層の前記屈折率が1.6以上であるとよい。本態様によれば、輝度均一性をさらに向上させることができる。
【0012】
本開示の態様3に係る光拡散シートは、前記態様1又は2において、前記本体シートは、単層又は多層シートであり、前記少なくとも1つの層が単一の樹脂からなるものを含み、前記樹脂が、芳香環を有する高分子樹脂であるとよい。本態様によれば、波長450nmの光に対する屈折率を1.55以上1.7以下、波長450nmの光に対する吸収率を7.0%以下により一層好適に設定することができる。
【0013】
尚、本開示において、「高分子」とは、分子量が1万以上であることを意味する。
【0014】
本開示の態様4に係る光拡散シートは、前記態様1~3のいずれかにおいて、前記本体シートは、単層又は多層シートであり、前記少なくとも1つの層が単一の樹脂からなるものを含み、前記樹脂が、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、及び、アクリルのいずれか1つの樹脂であるとよい。本態様によれば、波長450nmの光に対する屈折率を1.55以上1.7以下、波長450nmの光に対する吸収率を7.0%以下により一層好適に設定することができる。
【0015】
本開示の態様5に係る光拡散シートは、前記態様1~4のいずれかにおいて、前記樹脂から構成される本体シートが拡散剤を実質的に含有しないことが好ましい。本態様によれば、光拡散シートの製造コストを抑えることができる。
【0016】
尚、本開示において、「樹脂が拡散剤を実質的に含有しない」とは、「拡散剤」を意図的に樹脂に添加していないことを意味し、「光拡散性を持つ不可避不純物」が樹脂に混入している場合を排除するものではない。
【0017】
本開示の態様6に係る光拡散シートは、前記態様1~5のいずれかにおいて、前記複数の凹部が、略逆四角錐状に形成され、二次元マトリクス状に配列されることが好ましい。本態様によれば、光拡散シートの製造が容易になる。
【0018】
本開示の態様7に係るバックライトユニットは、液晶表示装置に組み込まれ、複数の光源から発せられた光を表示画面に導くバックライトユニットであって、前記表示画面と前記複数の光源との間に、前述の本開示の態様1~6のいずれかに係る光拡散シートを備える。
【0019】
本開示に係るバックライトユニットは、前述の本開示の態様1~6のいずれかに係る光拡散シートを備えるため、液晶表示装置のさらなる薄型化に対しても、輝度均一性を向上させることができる。
【0020】
本開示の態様8に係るバックライトユニットは、前記態様7において、前記複数の光源が青色光源であるとよい。と、白色光源を用いる場合と比べて、バックライトユニットの製造コストを低減することができる。
【0021】
本開示の態様9に係るバックライトユニットは、前記態様7又は8において、前記複数の光源が、3mm以下のピッチで二次元マトリクス状に配列されると、輝度均一性をさらに向上させることができる。
【0022】
本開示の態様10に係るバックライトユニットは、前記態様7~9のいずれかにおいて、前記表示画面と前記光拡散シートとの間に、前記光の波長を変換する色変換シートを備えるとよい。本態様によれば、色変換シートを複数の光源と光拡散シートとの間に設ける場合と比べて、輝度均一性を高くすることができる。
【0023】
本開示の態様11に係るバックライトユニットは、前記態様7~10のいずれかにおいて、複数の前記光拡散シートが設けられるとよい。本態様によれば、輝度均一性をさらに向上させることができる。
【0024】
本開示の態様12に係る液晶表示装置は、前述の本開示の前記態様7~11のいずれかに係るバックライトユニットと、液晶表示パネルとを備える。
【0025】
本開示に係る液晶表示装置によると、前述の本開示に係るバックライトユニットを備えるため、さらなる薄型化に対しても、輝度均一性を向上させることができる。
【0026】
本開示の態様13に係る情報機器は、前述の本開示の態様12に係る液晶表示装置を備える。
【0027】
本開示に係る情報機器によると、前述の本開示に係る液晶表示装置を備えるため、さらなる薄型化に対しても、輝度均一性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本開示の一態様によれば、輝度均一性を向上させることができる光拡散シート、並びに、当該光拡散シートを用いたバックライトユニット、液晶表示装置及び情報機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る液晶表示装置の断面図である。
【
図2】実施形態に係るバックライトユニットの断面構成の第1例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るバックライトユニットの断面構成の第2例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るバックライトユニットの断面構成の第3例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る光拡散シートの斜視図である。
【
図6】実施例1~6及び比較例1~6に係る光拡散シートを構成する樹脂の波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率を示す図である。
【
図7】実施例1~6及び比較例1~6に係る光拡散シートについて輝度均一性を評価した結果を示す図である。
【
図8】実施例7及び比較例7に係る光拡散シートを構成する本体シートの各層の屈折率、本体シートの吸収率、及び、光拡散シートについて輝度均一性を評価した結果を示す図である。
【
図9】実施例7及び比較例8に係る光拡散シートを構成する本体シートの各層の屈折率、本体シートの吸収率、及び、光拡散シートについて輝度均一性を評価した結果を示す図である。
【
図10】実施例7及び比較例7の比較に採用したバックライトユニットの断面構成の概略を示す図である。
【
図11】実施例7及び比較例8の比較に採用したバックライトユニットの断面構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態)
以下、実施形態に係る光拡散シート、バックライトユニット、液晶表示装置、及び情報機器について、図面を参照しながら説明する。尚、本開示の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0031】
<液晶表示装置>
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置の断面図の一例である。
【0032】
図1に示すように、液晶表示装置50は、液晶表示パネル5と、液晶表示パネル5の下面に貼付された第1偏光板6と、液晶表示パネル5の上面に貼付された第2偏光板7と、液晶表示パネル5の背面側に第1偏光板6を介して設けられたバックライトユニット40とを備える。
【0033】
液晶表示パネル5は、主に、互いに対向するように設けられたTFT基板1及びCF基板2と、TFT基板1とCF基板2との間に設けられた液晶層3とを備える。
【0034】
第1偏光板6及び第2偏光板7は、例えば、一方向の偏光軸を有する偏光子層と、その偏光子層を挟持するように設けられた一対の保護層とを備える。
【0035】
TFT基板1は、例えば、ガラス基板上にマトリクス状に設けられた複数のTFTと、各TFTを覆うように設けられた層間絶縁膜と、層間絶縁膜上にマトリクス状に設けられ且つ複数のTFTにそれぞれ接続された複数の画素電極と、各画素電極を覆うように設けられた配向膜とを備える。
【0036】
CF基板2は、例えば、ガラス基板上に格子状に設けられたブラックマトリクスと、ブラックマトリクスの各格子間にそれぞれ設けられた赤色層、緑色層及び青色層を含むカラーフィルターと、ブラックマトリクス及びカラーフィルターを覆うように設けられた共通電極と、共通電極を覆うように設けられた配向膜とを備える。
【0037】
液晶層3は、電気光学特性を有する液晶分子を含むネマチック液晶材料等により構成される。
【0038】
液晶表示装置50の表示画面50aを正面(
図1の上方)から見た形状は、原則、長方形又は正方形であるが、これに限らず、長方形の角が丸くなった形状、楕円形、円形、台形、又は、自動車のインストルメントパネルなどの任意の形状であってもよい。
【0039】
液晶表示装置50では、各画素電極に対応する各サブ画素において、液晶層3に所定の大きさの電圧を印加して液晶層3の配向状態を変える。これにより、バックライトユニット40から第1偏光板6を介して入射した光の透過率が調整される。透過率が調整された光は第2偏光板7を介して出射されて画像が表示される。
【0040】
液晶表示装置50は、種々の情報機器、例えば、カーナビゲーション等の車載装置、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コピー機、券売機、現金自動預け払い機等に組み込まれる表示装置として用いられる。
【0041】
<バックライトユニット>
図2は、本実施形態に係るバックライトユニット40の断面構成の第1例を示す。尚、
図2では、バックライトユニット40の各構成要素の間隔をあけて示しているが、各構成要素は実質的に接していてもよい。
【0042】
バックライトユニット40は、
図2に示すように、反射シート41と、反射シート41上に2次元状に配置された複数の光源42と、複数の光源42の上側に設けられた光拡散シート43と、光拡散シート43の上側に設けられた色変換シート44と、色変換シート44の上側に順に設けられた第1プリズムシート45及び第2プリズムシート46と、第2プリズムシート46の上側に設けられた上用光拡散シート47とを備える。
【0043】
図2に示す例では、光拡散シート43を3枚積層してバックライトユニット40に設けているが、光拡散シート43は1枚で用いてもよいし、又は、2枚若しくは4枚以上積層して用いてもよい。光拡散シート43は、8枚以下で用いてもよく、より好ましくは6枚以下で用いてもよい。光拡散シート43の積層枚数が多いほど、輝度均一性をより一層向上させることができ、光拡散シート43の積層枚数が少ないほど、バックライトユニットを薄型化することができる。
【0044】
反射シート41は、例えば、白色のポリエチレンテレフタレート樹脂製のフィルム、銀蒸着フィルム等により構成される。
【0045】
光源42の種類は特に限定されないが、例えばLED素子やレーザー素子等であってもよく、コスト、生産性等の観点からLED素子を用いてもよい。
図2に示す例では、光源42として、青色LED素子を用いている。青色LED素子は、例えば、CIE1931の色度座標においてx<0.24、y<0.18の光を発する。光源42は、平面視した場合に長方形状を有していてもよく、その場合、一辺の長さは10μm以上(好ましくは50μm以上)10mm以下(好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下)であってもよい。光源42としてLED素子を用いる場合、複数のLED素子を一定の間隔をもって反射シート41上に配置してもよい。光源42となるLED素子の出光角度特性を調節するために、LED素子にレンズを装着してもよい。光源42の配置数は特に限定されないが、複数の光源42を分散配置する場合は、反射シート41上に規則的に配置することが好ましい。規則的に配置するとは、一定の法則性をもって配置することを意味し、例えば、光源42を等間隔で配置する場合が該当する。等間隔で光源42を配置する場合、隣り合う2つの光源42の中心間距離は、0.5mm以上(好ましくは2mm以上)20mm以下であってもよい。
【0046】
光拡散シート43は、光源42から入射される光を拡散させて出射する。光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂は、光を透過させる材料であって、波長450nmの光に対する屈折率が1.55以上(好ましくは1.6以上)1.7以下で且つ波長450nmの光に対する吸収率が7.0%以下であれば、特に限定されない。
【0047】
詳しくは、光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂を含む層の波長450nmの光に対する屈折率は、1.70以下が好ましく、1.68以下がより好ましく、1.65以下がさらに好ましい。このようにすると、マトリックス樹脂のシート化がより容易となると共に、光の再反射が少なくなって輝度の向上につながる。また、光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂を含む層の波長450nmの光に対する屈折率は、1.55以上が好ましく、1.58以上がより好ましく、1.60以上がさらに好ましい。このようにすると、光を拡散する傾向が強くなって輝度均一性の向上につながる。
【0048】
光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂を含む層を有する本体シートの波長450nmの光に対する吸収率は、7.0%以下が好ましく、6.8%以下がより好ましく、6.0%以下がさらに好ましい。このようにすると、光がより吸収されにくくなって、輝度及び/又は輝度均一性の向上につながる。また、光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂を含む層を有する本体シートの波長450nmの光に対する吸収率は、0%以上が好ましく、2.0%以上がより好ましく、4.0%以上がさらに好ましい。このようにすると、光拡散シート43の用途に応じた適切な樹脂材料の利用が容易となる。
【0049】
光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂を含む層の波長450nmの光に対する屈折率、及び本体シートの波長450nmの光に対する吸収率の組合せは、屈折率を1.55以上1.70以下、且つ、吸収率を7.0%以下とすることが好ましく、屈折を1.58以上1.68以下、且つ、吸収率を6.8%以下とすることがより好ましい。このようにすると、光がより吸収されにくくなって、輝度及び/又は輝度均一性の向上につながる。さらに、光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂を含む層の波長450nmの光に対する屈折率及び本体シートの波長450nmの光に対する吸収率の組合せは、屈折率を1.60以上1.68以下、且つ、吸収率を6.8%以下とすることがさらに好ましく、屈折率を1.60以上1.65以下、且つ、吸収率を6.0%以下とすることがより一層好ましい。このようにすると、光を拡散する傾向が強くなって、輝度均一性の向上につながる。
【0050】
光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂は、例えば、芳香環を有する高分子(具体的には分子量が1万以上の)樹脂であってもよい。或いは、光拡散シート43を構成するマトリックス樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、及び、アクリルのいずれかであってもよい。マトリックス樹脂が芳香環又は硫黄を有することによって屈折率が高くなり、波長450nmの光に対する屈折率を1.55以上、好ましくは1.6以上とすることが可能となる。ここで、アクリルは、UV硬化型アクリル系樹脂であってよい。
【0051】
光拡散シート43の厚さは特に限定されないが、例えば、50μm以上3mm以下であってもよい。光拡散シート43の厚さが3mmを超えると、液晶ディスプレイの薄型化の達成が難しくなる一方、光拡散シート43の厚さが50μmを下回ると、十分な光拡散効果を得ることが難しくなる。
図2に示すように、光拡散シート43を複数枚積層する場合、積層したシートの総厚さが数百μm~数mm程度であってもよい。光拡散シート43は、フィルム状であってもよいし、プレート(板)状であってもよい。光拡散シート43の詳細な構成や製法については後述する。
【0052】
色変換シート44は、光源42からの光(
図2に示す例では青色の光)を、任意の色(例えば緑色や赤色)の波長をピーク波長とする光に変換する波長変換シートである。色変換シート44は、例えば、波長450nmの青色光を、波長540nmの緑色光と波長650nmの赤色光に変換する。この場合、波長450nmの青色光を発する光源42を用いると、色変換シート44によって青色光が部分的に緑色光と赤色光に変換されるので、色変換シート44を透過した光は白色光になる。色変換シート44としては、例えば、QD(量子ドット)シートや蛍光シート等を用いてもよい。
【0053】
第1プリズムシート45及び第2プリズムシート46は、色変換シート44から入射される光線を法線方向側に屈折させる輝度向上シートである。プリズムシート45、46のそれぞれの光出射面側には、例えば、横断面が二等辺三角形の複数の溝条が互いに隣り合うように設けられ、隣り合う一対の溝条に挟まれた三角柱部分によってプリズムが構成される。プリズムの頂角は、例えば90°程度である。第1プリズムシート45に形成された各溝条と、第2プリズムシート46に形成された各溝条とは、互いに直交するように配置されてもよい。このようにすると、色変換シート44から入射される光線を第1プリズムシート45によって法線方向側に屈折させ、さらに第1プリズムシート45から出射される光線を第2プリズムシート46によって上用光拡散シート47の光入射面に対して略垂直に進むように屈折させることができる。プリズムシート45、46は、別体で積層されてもよいし、或いは、一体に形成されてもよい。プリズムシート45、46の合計厚さは、例えば100~400μm程度であってもよい。プリズムシート45、46としては、例えば、PET(polyethylene terephthalate)フィルムにUV硬化型アクリル系樹脂を用いてプリズム形状をつけたものを用いてもよい。
【0054】
尚、輝度向上シートとして、2枚のプリズムシート45、46に代えて、1枚のプリズムシートを用いてもよいし、或いは、光源42から発せられた光の輝度を増大させることができる他の種類の光学シートを用いてもよい。
【0055】
上用光拡散シート47は、第2プリズムシート46側から入射される光線を若干程度拡散させてプリズムシート45、46のプリズム部の形状等に起因する輝度ムラを抑制する。上用光拡散シート47は、第2プリズムシート46の表面に直接積層されてもよい。上用光拡散シート47の厚さは、特に限定されないが、例えば、50μm以上3mm以下であってもよい。上用光拡散シート47の厚さが3mmを超えると、液晶ディスプレイの薄型化の達成が難しくなる一方、上用光拡散シート47の厚さが50μmを下回ると、十分な光拡散効果を得ることが難しくなる。上用光拡散シート47は、フィルム状であってもよいし、プレート(板)状であってもよい。上用光拡散シート47は、基材層と、基材層の光出射面に積層され且つ樹脂マトリックス及びビーズを有する光拡散層とを備えた構成であってもよい。或いは、上用光拡散シート47として、例えば、PETフィルムの少なくとも一面に、熱硬化樹脂を用いてビーズをコーティングしたものや、UV硬化型アクリル系樹脂を用いて凹凸形状をつけたものを用いてもよい。
【0056】
<バックライトユニットの変形例>
図2に示すバックライトユニット40の構成例では、光拡散シート43の上側に、詳しくは、最上層の光拡散シート43と第1プリズムシート45との間に色変換シート44を設けた。これに代えて、
図3に示すように、光拡散シート43の下側に、詳しくは、最下層の光拡散シート43と複数の光源42との間に色変換シート44を設けてもよい。
【0057】
また、
図2又は
図3に示すバックライトユニット40の構成例では、光源42として青色光源を用いると共に色変換シート44を用いた。これに代えて、
図4に示すように、光源42として白色光源を用いて色変換シートを配置しない構成としてもよい。この場合、
図4に示す例のように、上用光拡散シート47を配置しなくてもよい。白色光源は、ピーク波長が青色領域のLED素子と、ピーク波長が緑色領域のLED素子と、ピーク波長が赤色領域のLED素子とから構成され、例えばCIE1931の色度座標において0.24<x<0.42、0.18<y<0.48の光を発してもよい。
【0058】
<光拡散シート>
図5は、本実施形態に係る光拡散シート43の斜視図の一例である。
【0059】
光拡散シート43は、
図5に示すように、光出射面又は光入射面の一方となる第1面43aと、光出射面又は光入射面の他方となる第2面43bとを有する。第1面43aには、略逆多角錐状、例えば略逆四角錐状(逆ピラミッド状)の複数の凹部22が設けられる。第2面43bは、本例ではマット面であるが、これに代えて、平坦面であってもよい。或いは、第2面43bにも、例えば略逆四角錐状(逆ピラミッド状)等の略逆多角錐状、又は略プリズム状(略平行プリズム状)等の複数の凹部を設けてもよい。光拡散シート43を複数枚用いる場合、第1面43aが光出射面となるシートと、第1面43aが光入射面となるシートとが混在してもよいし、凹部22の寸法、形状、配列ピッチや第2面43bの表面形状が異なる複数種類のシートを用いてもよい。
【0060】
複数の凹部22は第1面43aにおいて2次元マトリクス状に配列されてもよい。言い換えると、複数の凹部22は、互いに直交する2方向に沿って配列されてもよい。隣り合う凹部22同士は、稜線23によって区画される。稜線23は、凹部22が配列される2方向に沿って延びる。凹部22の配列ピッチは、例えば50μm程度以上500μm程度以下であってもよい。凹部22の中心(逆ピラミッドの頂点)は、凹部22の最深部である。凹部22の壁面(略逆四角錐の斜面)が光拡散シート43のシート面(凹部22のない仮想鏡面)となす角度は、例えば40度以上65度以下、好ましくは45度以上60度以下であってもよい。言い換えると、凹部22の頂角は、例えば50度以上100度以下、好ましくは60度以上90度以下であってもよい。
【0061】
図5に示す例では、簡単のため、凹部22が5×5のマトリクス状に配置された様子を例示しているが、凹部22の実際の配列数ははるかに多い。複数の凹部22の2次元配列において、各凹部22は、第1面21aに隙間無く設けられてもよいし、所定の間隔をあけて設けられてもよい。また、光拡散効果が損なわれない程度に、一部の凹部22がランダムに配列されてもよい。凹部22は、略逆四角錐状とは異なる他の略逆多角錐状を有していてもよい。例えば、凹部22の「逆多角錐」形状を、逆四角錐と同様に隙間なく二次元配置することが可能な逆三角錐又は逆六角錐としてもよい。凹部22の「逆多角錐」形状を逆四角錐とする場合、凹部22を設ける際の押出成形や射出成形等の製造工程で用いられる金型(金属ロール)の表面切削作業の精度を向上させることが容易である。
【0062】
本開示では、通常の形状転写技術により幾何学的に厳密な逆多角錐又は逆四角錐の凹部を形成することが難しいことを考慮して、「略逆多角錐」又は「略逆四角錐」との表記を用いているが、これらの表記は、真正の又は実質的に逆多角錐又は逆四角錐とみなせる形状を含むことは言うまでもない。すなわち、「略」とは、近似可能であることを意味し、「略逆多角錐」又は「略逆四角錐」とは、逆多角錐又は逆四角錐に近似可能な形状をいう。また、工業生産上の加工精度に起因する不可避的な形状のばらつきの範囲内で「逆四角錐」から変形した形状も、「略逆四角錐」に包含される。
【0063】
光拡散シート43は、樹脂から構成される本体シートである基材層21に上述の複数の凹部22を加工するようにして形成される。便宜上、本体シートは、複数の凹部22を形成する前のシートである点において、光拡散シート43と区別される。本体シートは、光線を透過させる必要があり、透明(例えば無色透明)の合成樹脂のうち、加熱成形が可能な熱可塑性樹脂を主成分として形成される熱可塑性樹脂の層を少なくとも1つ含んでおり、当該層は、単一の樹脂からなるものであることが好ましい。或いは、本体シートは、紫外線硬化樹脂を主成分として形成される紫外線硬化樹脂の層を少なくとも1つ含んでいてもよい。
【0064】
本体シートは、単層シートであってもよく、多層シートであってよく、すなわち、基材層21も、単層又は多層の構成を備え得る。本体シートの少なくとも1層に主成分として含まれる熱可塑性樹脂は、波長450nmの光に対する屈折率が1.55以上(好ましくは1.6以上)1.7以下で且つ波長450nmの光に対する吸収率が7.0%以下であれば、特に限定されない。本体シートの主成分である熱可塑性樹脂又は紫外線硬化樹脂は、例えば、芳香環を有する高分子(具体的には分子量が1万以上の)樹脂であってもよい。或いは、熱可塑性樹脂又は紫外線硬化樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、及び、アクリルのいずれかであってもよく、これらの熱可塑性樹脂が芳香環を有する高分子(具体的には分子量が1万以上の)樹脂であるとよい。基材層21の主成分となる樹脂が芳香環又は硫黄を有することによって屈折率が高くなり、波長450nmの光に対する屈折率を1.55以上、好ましくは1.6以上とすることが可能となる。尚、「主成分」とは、最も含有量の多い成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。
【0065】
本体シートが多層シートである場合、少なくとも1つの樹脂から構成される層が、上述の熱可塑性樹脂を含む層であるとよい。本体シートが多層のシートである場合、当該本体シートは熱可塑性樹脂から構成される層を少なくとも1つ備えていればよく、互いに種類の異なる熱可塑性樹脂を含む層を複数備えていてもよい。また、本体シートが多層の本体シートである場合、熱可塑性樹脂を含む層以外の層として、硬化性樹脂を硬化させることで形成した硬化性樹脂の層を備えていてもよい。
【0066】
本体シートは、単層、及び多層シートのいずれであっても、本体シートの樹脂から構成される少なくとも1つの層の波長450nmの光に対する屈折率、及び本体シートの波長450nmの光に対する吸収率は、所定の厚さに成形された本体シートにより測定し、規定すればよい。これら、波長450nmの光に対する屈折率、及び波長450nmの光に対する吸収率の測定方法の詳細は、実施例にて説明される。ここで、単層の本体シートにて測定された波長450nmの光に対する屈折率、及び波長450nmの光に対する吸収率は本体シートを形成する樹脂を含む層の屈折率、本体シートの波長450nmの光に対する吸収率と定義することができる。
【0067】
多層の本体シートが、硬化性樹脂の層を備えている場合、硬化性樹脂には、UV硬化型アクリル系樹脂、UV硬化型エポキシ系樹脂を硬化させた層が挙げられる。尚、硬化性樹脂は、ラジカル又はカチオン重合性の官能基を有する樹脂であり、紫外線を吸収することでラジカル又はカチオンを生成する重合開始剤を含むことで硬化する硬化性樹脂であることはいうまでもない。
【0068】
基材層21である本体シートを構成する層のそれぞれには、拡散剤その他の添加剤、例えば、シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム若しくは硫酸バリウム等の無機粒子、又は、アクリル、アクリルニトリル、シリコーン、ポリスチレン若しくはポリアミド等の有機粒子を含有してもよい。尚、光拡散シート43の製造コストを抑えるためには、不可避不純物を除いて、基材層21は、拡散剤その他の添加剤を含有しないことが好ましい。
【0069】
光拡散シート43は、基材層21の一層構造としてもよいし、或いは、凹部22が形成された層を含む2層以上の構造としてもよい。光拡散シート43の製造方法は、特に限定されないが、例えば、押し出し成型法、射出成型法等を用いてもよい。
【0070】
押し出し成型法を用いて、凹凸形状を表面に持つ単層の光拡散シートを製造する手順は次の通りである。まず、ペレット状のプラスチック粒子(拡散剤が添加されていてもよい)を単軸押し出し機に投入し、加熱しながら溶融、混錬する。その後、T-ダイスにより押し出された溶融樹脂を2本の金属ロールで挟んで冷却した後、ガイドロールを用いて搬送し、シートカッター機により枚葉平板に切り落とすことによって、光拡散シートを作製する。ここで、所望の凹凸形状を反転した形状を表面に持つ金属ロールを使用して溶融樹脂を挟むことにより、ロール表面の反転形状が樹脂に転写されるので、所望の凹凸形状を光拡散シート表面に賦形することができる。また、樹脂に転写された形状は、必ずしもロール表面の形状が100%転写されたものとはならないので、転写度合いから逆算して、ロール表面の形状を設計してもよい。
【0071】
押し出し成型法を用いて、凹凸形状を表面に持つ2層構造の光拡散シートを製造する場合は、例えば、2つの単軸押し出し機のそれぞれに、各層の形成に必要なペレット状のプラスチック粒子を投入した後、各層毎に前述の単層の光拡散シートと同様の手順を実施し、作製された各シートを積層してもよい。或いは、以下のように、凹凸形状を表面に持つ2層構造の拡散シートを作製してもよい。まず、2つの単軸押し出し機のそれぞれに、各層の形成に必要なペレット状のプラスチック粒子を投入し、加熱しながら溶融、混錬する。その後、各層となる溶融樹脂を1つのT-ダイスに投入し、当該T-ダイス内で積層し、当該T-ダイスにより押し出された積層溶融樹脂を2本の金属ロールで挟んで冷却する。その後、ガイドロールを用いて積層溶融樹脂を搬送し、シートカッター機により枚葉平板に切り落とすことによって、凹凸形状を表面に持つ2層構造の拡散シートを作製してもよい。
【0072】
その他、UV(紫外線)を用いた賦形転写によって、以下のように光拡散シート43を製造してもよい。まず、転写したい凹凸形状の反転形状を有するロールに未硬化の紫外線硬化樹脂等の硬化性樹脂の組成物を充填し、当該樹脂に基材を押し当てる。次に、紫外線硬化樹脂が充填されたロールと基材とが一体になっている状態で、紫外線を照射して樹脂を硬化させる。次に、樹脂によって凹凸形状が賦形転写されたシートをロールからはく離させる。最後に、再度シートに紫外線照射を行って樹脂を完全硬化させ、凹凸形状を表面に持つ光拡散シートを作製する。
【0073】
<実施形態の特徴>
以上に説明した本実施形態の光拡散シート43によると、略逆多角錐状の複数の凹部22を少なくとも一面に有するため、当該複数の凹部22によって光を均一に拡散させることができる。また、光拡散シート43の基材層21を構成する本体シートとして、波長450nmの光に対する屈折率が1.55以上1.7以下で且つ波長450nmの光に対する吸収率が7.0%以下である本体シートを用いる。このため、波長450nmの光に対する屈折率が1.55未満若しくは1.7超、又は波長450nmの光に対する吸収率が7.0%超である樹脂を用いた場合と比べて、輝度均一性を高くすることができる。
【0074】
本実施形態の光拡散シート43において、本体シートの波長450nmの光に対する屈折率が1.6以上であると、輝度均一性をさらに向上させることができる。また、本体シートが備える少なくとも1層の熱可塑性樹脂の層が、芳香環を有する高分子樹脂の層であると、波長450nmの光に対する屈折率を1.55以上1.7以下、波長450nmの光に対する吸収率を7.0%以下に設定しやすくすることができる。或いは、本体シートが含む熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリスルホン(PSU)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、及び、アクリルのいずれかであると、波長450nmの光に対する屈折率を1.55以上1.7以下、波長450nmの光に対する吸収率を7.0%以下に設定しやすくすることができる。
【0075】
本実施形態の光拡散シート43において、基材層21を構成する樹脂が拡散剤を実質的に含有しないと、光拡散シートの製造コストを抑えることができる。
【0076】
本実施形態の光拡散シート43において、複数の凹部22が、略逆四角錐状に形成され、二次元マトリクス状に配列されると、光拡散シート43の製造が容易になる。
【0077】
本実施形態のバックライトユニット40は、液晶表示装置50に組み込まれ、複数の光源42から発せられた光を表示画面50aに導く。バックライトユニット40は、表示画面50aと複数の光源42との間に、本実施形態の光拡散シート43を備えるため、液晶表示装置50のさらなる薄型化に対しても、輝度均一性を向上させることができる。
【0078】
本実施形態のバックライトユニット40において、複数の光源42が青色光源であると、白色光源を用いる場合と比べて、バックライトユニット40の製造コストを低減することができる。また、複数の光源42が、3mm以下のピッチで二次元マトリクス状に配列されると、輝度均一性をさらに向上させることができる。また、複数の光源42が、光拡散シート43から見て表示画面50aの反対側に設けられた反射シート41の上に配置されると、光拡散シート43と反射シート41との間での多重反射によって光がさらに拡散されるので、輝度均一性がより一層向上する。
【0079】
本実施形態のバックライトユニット40において、表示画面50a(具体的には第1プリズムシート45)と光拡散シート43との間に、光の波長を変換する色変換シート44を備えると、色変換シート44を複数の光源42と光拡散シート43との間に設ける場合と比べて、輝度均一性を高くすることができる。
【0080】
本実施形態のバックライトユニット40において、光拡散シート43は、複数枚積層して表示画面50aと複数の光源42との間に配置されてもよい。このようにすると、複数枚の光拡散シート43によって、輝度均一性をさらに向上させることができる。
【0081】
本実施形態のバックライトユニット40において、複数の光源42と光拡散シート43(詳しくは最下層の光拡散シート43)との間の距離が0mm以上1mm以下であると、薄型化のために光源・シート間距離を十分に確保できない場合でも、光拡散シート43の拡散性能によって、輝度均一性の悪化を抑制することができる。
【0082】
本実施形態の液晶表示装置50は、本実施形態のバックライトユニット40と、液晶表示パネル5とを備える。このため、さらなる薄型化に伴う光拡散シート43の厚みや積層枚数の削減などに対しても、輝度均一性を向上させることができる。本実施形態の液晶表示装置50が組み込まれた情報機器(パーソナルコンピュータ、携帯電話など)においても同様の効果を得ることができる。
【0083】
尚、本実施形態においては、バックライトユニット40として、液晶表示装置50の表示画面50aの背面側に複数の光源42を分散配置させた直下型のバックライトユニットを用いている。このため、液晶表示装置50を小型化するためには、光源42と光拡散シート43との距離を小さくする必要がある。しかしながら、この距離を小さくすると、例えば、分散配置された光源42同士の間の領域上に位置する部分の表示画面50aの輝度が他の部分よりも小さくなる現象(輝度ムラ)が生じやすくなる。
【0084】
それに対して、本実施形態の光拡散シート43を用いることは、輝度ムラの抑制に有用である。特に、今後の中小型液晶ディスプレイの薄型化をにらみ、光源42と光拡散シート43との距離を15mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2mm以下、究極的には0mmとした場合に、本実施形態の光拡散シート43の有用性はより一層顕著になると考えられる。
【実施例0085】
(実施例及び比較例)
以下、実施例及び比較例について説明する。
【0086】
(実施例1~6及び比較例1~6の光拡散シートの作製)
実施例1~6及び比較例1~6として、厚さ120μmの基材層21を有する光拡散シート43を用いた。実施例1~6及び比較例1~6のいずれも、基材層21には拡散剤を添加せず、深さ50μm、頂角90°の略逆四角錐状(逆ピラミッド状)の複数の凹部22を光拡散シート43の第1面43aに配列ピッチ100μmで2次元配列し、光拡散シート43の第2面43bは、算術平均粗さRaが1.8μmのマット面とした。
【0087】
実施例1~6及び比較例1~6の光拡散シート43の製造方法は、以下の通りである。まず、ペレット状の母材樹脂(プラスチック樹脂)を押出成形機によって樹脂フィルム化した。その後、2本の金属ロールのうち一方のロールとして、表面が凸ピラミッド形状を持つロール、他方のロールとして、ランダムなマット形状を有するエンボスロールを使用し、当該両ロールを樹脂フィルムに圧着(熱プレス)して、第1面43aに逆ピラミッド形状の凹部22が設けられ且つ第2面43bにマット面を持つ単層の光拡散シート43を作製した。
【0088】
比較例1では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.44、3.4%のポリメチルペンテンを用いた。比較例2では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.48、3.9%の特殊ポリカーボネートを用いた。比較例3では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.49、3.8%の特殊ポリカーボネートを用いた。比較例4では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.50、4.0%の環状オレフィンを用いた。比較例5では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.64、7.7%の特殊ポリカーボネートを用いた。
【0089】
実施例1では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.58、4.9%のポリカーボネートを用いた。実施例2では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.59、4.8%のポリカーボネートを用いた。実施例3では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.60、5.4%のポリエステルを用いた。実施例4では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.60、4.8%のポリカーボネートを用いた。実施例5では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.64、5.9%のポリエステルを用いた。実施例6では、光拡散シート43を構成する樹脂として、波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率がそれぞれ1.67、6.8%のポリエステルを用いた。
【0090】
(本体シートにおける屈折率及び吸収率の測定)
屈折率及び吸収率の測定は、光拡散シート43を構成する樹脂を厚さ500μm±100μmの本体シート(フィルム)に加工して行った。吸収率の測定には、日本分光株式会社(JASCO)製の紫外可視近赤外分光光度計V-770を用い、波長450nmの光に対する透過率(分光透過率)及び反射率(分光反射率)を測定し、吸収率(%)=100-透過率(%)-反射率(%)として、吸収率を算出した。屈折率の測定には、株式会社堀場製作所製の分光エリプソメーターUVISEL2を用い、入射光及び反射光の偏光の変化量を波長ごとに測定し、得られた測定データに基づいて光学モデルを作成してフィッティング計算をすることにより、波長450nmの光に対する屈折率を算出した。
【0091】
(実施例1~6及び比較例1~6に用いる本体シート)
実施例1~6及び比較例1~6の光拡散シート43それぞれを構成する樹脂の屈折率及び吸収率の測定は、各光拡散シート43を構成する樹脂を上述の通り、500μm±100μmの本体シートに加工して、当該本体シートを用いて屈折率及び吸収率を測定した。
【0092】
図6に、実施例1~6及び比較例1~6に係る光拡散シート43を構成する樹脂の波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率を示す。尚、
図6において、比較例1~5をC1~5、実施例1~6をE1~6としている。
【0093】
(実施例7及び比較例7、8に用いる本体シート)
実施例7及び比較例7、8の光拡散シート43それぞれを構成する本体シートの各層の屈折率は、実施例1~6と同様に測定した。
【0094】
実施例7及び比較例7、8の光拡散シート43それぞれを構成する本体シートを、以下に示す手順で作製し、当該本体シートを用いて吸収率を測定した。
【0095】
実施例7では、厚さ300μmのポリカーボネート製のシートの一面に、凹凸形状を形成していない厚さ200μmのUV硬化型アクリル系樹脂を積層して、総厚み500μmの2層構成の本体シートを基材層21として作製した。比較例7では、厚さ300μmの特殊ポリカーボネートのシートの一面に、凹凸形状を形成していない厚さ200μmのUV硬化型アクリル系樹脂を積層して、総厚み500μmの2層構成の本体シートである基材層21を作製した。
【0096】
比較例8では、厚さ300μmのポリカーボネートの代わりに、厚さ300μmの特殊ポリカーボネートを用いた以外は、実施例7と同じ条件にて2層構成の本体シートである基材層21を作製した。
【0097】
実施例7及び比較例7及び8の本体シートに対して吸収率を測定した。
【0098】
(実施例7及び比較例7及び8の光拡散シート)
実施例7及び比較例7及び8の光拡散シート43を作製した。
実施例7では、厚さ300μmのポリカーボネートを基材層21とし、当該基材層21には拡散剤を添加していない。実施例7では、基材層21の一面に、UV硬化型アクリル系樹脂を用いて、深さ50μm、頂角90°の逆四角錐状(逆ピラミッド状)の複数の凹部22を配列ピッチ100μmで2次元配列して、総厚さ350μmの2層の光拡散シート43を作製した。比較例7では、拡散剤を添加していない厚さ300μmの特殊ポリカーボネートのシートの一面に、UV硬化型アクリル系樹脂を用いて、深さ50μm、頂角90°の逆四角錐状(逆ピラミッド状)の複数の凹部22を配列ピッチ100μmで2次元配列して、総厚さ350μmの2層構成の光拡散シート43を作製した。
【0099】
比較例8では、厚さ300μmのポリカーボネートの代わりに、厚さ300μmの特殊ポリカーボネートを用いた以外は、実施例7と同じ条件にて2層構成の光拡散シート43を作製した。
【0100】
(実施例1~6及び比較例1~6の輝度均一性の評価)
以上に説明した実施例及び比較例に係る光拡散シート43を3枚積層して、
図2及び
図3のそれぞれに示すバックライトユニット40に配置し、輝度均一性の評価を行った。詳しくは、バックライト構成(i)では、
図2に示すバックライトユニット40において、複数の光源42として青色LEDを2.8mmピッチで正方配列し、3枚の光拡散シート43を、第1面43a(逆ピラミッド状の凹部22の形成面)を入光面に向けて配置した。バックライト構成(ii)では、
図3に示すバックライトユニット40において、複数の光源42として青色LEDを2.8mmピッチで正方配列し、3枚の光拡散シート43を、第1面43a(逆ピラミッド状の凹部22の形成面)を出光面に向けて配置した。バックライト構成(iii)では、
図2に示すバックライトユニット40において、複数の光源42として青色LEDを3.5mm×4.5mmピッチで配列し、3枚の光拡散シート43を、第1面43a(逆ピラミッド状の凹部22の形成面)を入光面に向けて配置した。バックライト構成(iv)では、
図3に示すバックライトユニット40において、複数の光源42として青色LEDを3.5mm×4.5mmピッチで配列し、3枚の光拡散シート43を、第1面43a(逆ピラミッド状の凹部22の形成面)を出光面に向けて配置した。
【0101】
尚、いずれのバックライト構成でも、色変換シート44としてはQDシートを用いた。また、プリズムシート45及び46としては、PETフィルムからなる基材層に、アクリレートからなるUV硬化型アクリル系樹脂を用いて突条プリズム部を設けたものを用い、第1プリズムシート45では、総厚さを90μmとし、高さ12μm、頂角94°の突条プリズム部をピッチ25μmで配列し、第2プリズムシート46では、総厚さを150μmとし、高さ24μm、頂角93°の突条プリズム部をピッチ51μmで配列した。また、上用光拡散シート47としては、総厚さ135μmでPET基材の両面に熱硬化樹脂でビーズコーティングしたものを用いた。
【0102】
実施例及び比較例の光拡散シート43の輝度均一性の評価は、以下のように行った。まず、前述の各バックライト構成においてシート類の浮きを抑えるために上用光拡散シート47の上に透明ガラス板を載せて、トプコンテクノハウス社製の2次元分光放射計SR-5000HSを用いて、鉛直方向上向き(光源42からガラス板に向かう方向)の輝度を測定した。次に、輝度ムラ測定器を用いて40mm四方の範囲の2次元輝度分布を取得し、全体の輝度バランスの補正を行った上で、輝度の平均値と標準偏差とを算出し、「輝度均一性」=「(輝度の平均値)/(輝度の標準偏差)」として、輝度均一性を求めた。
【0103】
図7に、実施例1~6及び比較例1~6に係る光拡散シートについて輝度均一性を評価した結果を示す。
図7に示すように、波長450nmの光に対する屈折率が1.55以上1.7以下で且つ波長450nmの光に対する吸収率が7.0%以下である実施例1~6では、いずれのバックライト構成でも比較例1~5と比べて、輝度均一性が高くなった。また、バックライト構成(i)、(ii)での輝度均一性の評価結果と、バックライト構成(iii)、(iv)での輝度均一性の評価結果との対比から、複数の光源42の配列ピッチは小さい方が好ましく、特に3mm以下のピッチで二次元マトリクス状に配列すると、高い輝度均一性が得られることが分かった。また、バックライト構成(i)、(iii)での輝度均一性の評価結果と、バックライト構成(ii)、(iv)での輝度均一性の評価結果との対比から、表示画面50a(具体的には第1プリズムシート45)と光拡散シート43(具体的には最上層の光拡散シート43)との間に色変換シート44を設けた方が、複数の光源42と光拡散シート43(具体的には最下層の光拡散シート43)との間に色変換シート44を設けるよりも、輝度均一性を高くできることが分かった。尚、表示画面50aと光拡散シート43との間に色変換シート44を設ける場合は、光拡散シート43を、第1面43a(逆ピラミッド状の凹部22の形成面)を入光面に向けて配置することが輝度向上性の点で好ましく、複数の光源42と光拡散シート43との間に色変換シート44を設ける場合は、光拡散シート43を、第1面43a(逆ピラミッド状の凹部22の形成面)を出光面に向けて配置することが輝度向上性の点で好ましい。
【0104】
光拡散シート43を構成する樹脂の波長450nmの光に対する吸収率は低い方が好ましいが、
図6に示すように、屈折率を大きくしようとすると、吸収率も大きくなる傾向があり、波長450nmの光に対する屈折率が1.55以上の樹脂では、厚さに依存するものの吸収率が4.5%以上になる場合が多かった。また、光拡散シート43を構成する樹脂の波長450nmの光に対する屈折率は高い方が好ましいが、屈折率を高くするために硫黄や芳香環の添加量を増やすと、樹脂が硬くもろくなる傾向が有り、特に屈折率が1.7を超える樹脂の場合、光拡散シートに成形することが困難な場合が多かった。
【0105】
(実施例7及び比較例7、8の輝度均一性の評価)
図10又は
図11に示すように実施例7及び比較例7、8に係る光拡散シート43を、1枚バックライトユニットに配置し、輝度均一性の評価を行った。実施例7及び比較例7のバックライト構成(v)では、光拡散シート43(逆ピラミッド状の凹部22の形成面は入光面に向けて配置)の枚数を3枚から1枚にしたこと以外は、上述のバックライト構成(iii)と同じ条件にして、実施例1~6と同様に光拡散シート43の輝度均一性を求めた(
図10)。また、実施例7及び比較例8のバックライト構成(vi)では、光拡散シート43(逆ピラミッド状の凹部22の形成面は出光面に向けて配置)の枚数を3枚から1枚にしたこと以外は、上述のバックライト構成(iv)と同じ条件にして、実施例1~6と同様に光拡散シート43の輝度均一性を求めた(
図11)。なお、バックライト構成(v)、(vi)は、光拡散シートの枚数が1枚であるので、バックライト構成(iii)、(iv)よりも、輝度均一性を向上することがより困難な評価条件である。
【0106】
図8及び9に、実施例7及び比較例7及び8に係る光拡散シート43を構成する本体シートの波長450nmの光に対する屈折率及び吸収率、及び、光拡散シートについて輝度均一性を評価した結果を示す。
【0107】
図9に示すように、実施例7の光拡散シートを、2層の光拡散シートのうち1層の屈折率が1.55より低い比較例8と比べると、光拡散シートを1枚のみ使用したバックライト構成(vi)において、実施例7の輝度均一性は比較例8よりも高くなった。
【0108】
また、
図8に示すように、実施例7の光拡散シートを、2層の光拡散シートのうち全ての層の屈折率が1.55より低い比較例7と比べると、光拡散シートを1枚のみ使用したバックライト構成(v)において、実施例7の輝度均一性は比較例7よりも高くなった。さらに、実施例7と比較例7の輝度均一性の差は、実施例7と比較例8の輝度均一性の差よりも高くなる傾向があった。
【0109】
(その他の実施形態)
以上、本開示についての実施形態(実施例を含む。以下同じ。)を説明したが、本開示は前述の実施形態のみに限定されず、開示の範囲内で種々の変更が可能である。すなわち、前述の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。