(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159630
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】回転プレス機の部品の摩耗状態を評価する方法および回転プレス機
(51)【国際特許分類】
G01M 13/00 20190101AFI20241031BHJP
G01N 3/56 20060101ALI20241031BHJP
B30B 11/08 20060101ALI20241031BHJP
B30B 15/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01M13/00
G01N3/56 K
B30B11/08 Z
B30B15/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024070654
(22)【出願日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】10 2023 110 808.5
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】513277289
【氏名又は名称】フェッテ コンパクティング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルプ スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ゲス ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】ノヴィコヴァ アンナ
【テーマコード(参考)】
2G024
4E088
【Fターム(参考)】
2G024AD09
2G024BA12
2G024CA11
2G024CA13
2G024DA01
2G024EA11
2G024FA03
2G024FA06
2G024FA15
4E088JJ04
4E088JJ08
4E088JJ09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】回転プレス機の部品の摩耗状態を評価する方法に関する。
【解決手段】回転プレス機は、回転可能なロータを備え、ロータは上部加圧パンチ用の上部パンチ・ガイドと、下部加圧パンチ用の下部パンチ・ガイドと、このパンチ・ガイド間に配置されているダイ・プレートとを備える。回転プレス機はさらに充填装置を備え、この充填装置によって、加圧される予定の粉体材料がダイ・プレートのキャビティに充填され、回転プレス機は圧力装置を備え、この圧力装置は動作中に上部加圧パンチおよび下部加圧パンチと協働して、ダイ・プレートのキャビティに粉体材料を圧入してペレットにする。回転プレス機は、加圧パンチの軸方向の運動を制御するために加圧パンチのパンチ・ヘッドと協働する制御カムを備える。制御カムは、下部加圧パンチを制御して、キャビティ内で製造されたペレットをキャビティから吐出する吐出カムを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転プレス機の部品の摩耗状態を評価する方法であって、前記回転プレス機は、ロータリ・ドライブを用いて回転可能なロータを備え、前記ロータは上部加圧パンチ(14)用の上部パンチ・ガイド(18)と、下部加圧パンチ(16)用の下部パンチ・ガイド(20)と、前記パンチ・ガイド間に配置されているダイ・プレート(10)とを備え、加圧パンチ(14,16)は前記ダイ・プレート(10)のキャビティ(12)と相互作用し、前記回転プレス機はさらに充填装置(26)を備え、前記充填装置(26)によって、加圧される予定の粉体材料が前記ダイ・プレート(10)のキャビティ(12)に充填され、前記回転プレス機は圧力装置(34)を備え、前記圧力装置(34)は動作中に前記上部加圧パンチ(14)および前記下部加圧パンチ(16)と協働して、前記ダイ・プレート(10)のキャビティ(12)に粉体材料を圧入してペレットにし、前記回転プレス機は、前記加圧パンチ(14,16)の軸方向の運動を制御するために前記加圧パンチ(14,16)のパンチ・ヘッドと協働する制御カムを備え、前記制御カムは、前記下部加圧パンチを制御して、前記キャビティ(12)内で製造されたペレットを前記キャビティ(12)から吐出する吐出カム(56)を備え、前記方法は、以下のステップを備えることを特徴とする、方法:
・少なくとも1つの力センサ(64)を用いて、前記回転プレス機の動作中に前記吐出カム(56)に作用する吐出力を測定値として測定し、かつ/または少なくとも1つの振動センサ(58,60,62)を用いて、前記回転プレス機の動作中に生じる振動を測定値として測定するステップと、
・前記測定値を評価装置(52)に送り、前記評価装置(52)は得られた測定値に基づいて前記回転プレス機の部品の摩耗状態を評価するステップ。
【請求項2】
前記吐出カム(56)の摩耗状態が前記評価装置(52)によって評価されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
力センサ(64)が前記吐出カム(56)に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
振動センサ(58,60,62)が、前記吐出カム(56)および/または前記圧力装置(34)に、特に、前記圧力装置(34)の圧力ローラ(40,42)、および/または前記圧力装置(34)の圧力ローラ(40,42)の支持部(39,41)に、かつ/または前記ダイ・プレート(10)のキャビティ(12)内に充填された前記粉体材料を計量するための前記制御カムの計量カム(54)に配置されていることを特徴とする、請求項1から3のうちの一項に記載の方法。
【請求項5】
前記測定値が、測定値曲線、特に時間依存の測定値曲線として記録されることを特徴とする、請求項1から4のうちの一項に記載の方法。
【請求項6】
前記得られた測定値と基準値との比較に基づいて、前記部品の摩耗状態が前記評価装置(52)によって評価されることを特徴とする、請求項1から5のうちの一項に記載の方法。
【請求項7】
前記評価装置(52)が前記部品の摩耗の増加を検出するのは、前記得られた測定値が基準値と比較してズレがある場合、かつ/または前記得られた測定値の振幅が基準値と比較して変化している場合、かつ/または前記得られた測定値の傾きが基準値と比較して変化している場合であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記得られた測定値が基準値から少なくとも1つの規定限界値だけずれている場合、前記評価装置(52)が部品がさらに摩耗したことを検出することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの規定限界値は、操作者によって規定および/または調整され、かつ/または前記少なくとも1つの規定限界値は、アルゴリズムによって、特に機械学習アルゴリズムによって、規定および/または調整されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記評価装置(52)が、前記部品の摩耗状態の評価の結果を操作者に表示することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記部品がさらに摩耗したことが検出されると、前記評価装置(52)が警告メッセージを出力することを特徴とする、請求項1から10のうちの一項に記載の方法。
【請求項12】
前記警告メッセージが、クリーニング、および/または再加工、および/またはより摩耗した部品の交換の提案を含んでいることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
回転プレス機であって、ロータを備え、前記ロータは上部加圧パンチ(14)用の上部パンチ・ガイド(18)と、下部加圧パンチ(16)用の下部パンチ・ガイド(20)と、前記パンチ・ガイド間に配置されているダイ・プレート(10)とを備え、加圧パンチ(14,16)は前記ダイ・プレート(10)のキャビティ(12)と相互作用し、前記回転プレス機はさらに充填装置(26)を備え、前記充填装置(26)によって加圧される予定の粉体材料が前記ダイ・プレート(10)のキャビティ(12)に充填され、前記回転プレス機はさらに圧力装置(34)を備え、前記圧力装置(34)は動作中に前記上部加圧パンチ(14)および前記下部加圧パンチ(16)と相互作用して、前記ダイ・プレート(10)のキャビティ(12)にある前記粉体材料をペレットに圧入し、前記回転プレス機はさらに前記加圧パンチ(14,16)の軸方向の運動を制御するために前記加圧パンチ(14,16)のパンチ・ヘッドと相互作用する制御カムを備え、前記制御カムは、前記下部加圧パンチを制御して、前記キャビティ(12)内で製造されたペレットを前記キャビティ(12)から吐出する吐出カム(56)を備え、
・前記回転プレス機が少なくとも1つの力センサ(64)を備え、前記力センサ(64)を用いて、前記回転プレス機の動作中に前記吐出カム(56)に作用する吐出力を測定値として測定することができ、かつ/または、前記回転プレス機が少なくとも1つの振動センサ(58,60,62)を備え、前記振動センサ(58,60,62)を用いて、前記回転プレス機の動作中に生じる振動を測定値として測定することができ、
・評価装置(52)が設けられており、前記評価装置(52)に測定値が送られ、前記評価装置(52)は得られた測定値に基づいて前記回転プレス機の部品の摩耗状態を評価するように設計されている、回転プレス機。
【請求項14】
力センサ(64)が前記吐出カム(56)に配置されていることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
振動センサ(58,60,62)が、前記吐出カム(56)および/または前記圧力装置(34)に、特に、前記圧力装置(34)の圧力ローラ(40,42)、かつ/または前記ダイ・プレート(10)のキャビティ(12)内に充填された前記粉体材料を計量するための前記制御カムの計量カム(54)に配置されていることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記回転プレス機、特に前記評価装置(52)を、請求項1から12のいずれか一項による方法を実行するように設計されていることを特徴とする、請求項13から15のうちの一項に記載の回転プレス機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転プレス機の部品の摩耗状態を評価する方法に関する。この回転プレス機は、ロータリ・ドライブを用いて回転可能なロータを備え、このロータは上部加圧パンチ用の上部パンチ・ガイドと、下部加圧パンチ用の下部パンチ・ガイドと、このパンチ・ガイド間に配置されているダイ・プレートとを備える。加圧パンチはダイ・プレートのキャビティと相互作用する。回転プレス機はさらに充填装置を備え、この充填装置によって、加圧される予定の粉体材料がダイ・プレートのキャビティに充填され、回転プレス機は圧力装置を備え、この圧力装置は動作中に上部加圧パンチおよび下部加圧パンチと協働して、ダイ・プレートのキャビティに粉体材料を圧入してペレットにする。回転プレス機は、加圧パンチの軸方向の運動を制御するために加圧パンチのパンチ・ヘッドと協働する制御カムを備え、制御カムは、下部加圧パンチを制御して、キャビティ内で製造されたペレットをキャビティから吐出する吐出カムを備える。
【0002】
本発明はまた、回転プレス機に関する。回転プレス機は、ロータを備え、このロータは上部加圧パンチ用の上部パンチ・ガイドと、下部加圧パンチ用の下部パンチ・ガイドと、このパンチ・ガイド間に配置されているダイ・プレートとを備え、加圧パンチはダイ・プレートのキャビティと相互作用する。回転プレス機はさらに充填装置を備え、この充填装置によって加圧される予定の粉体材料がダイ・プレートのキャビティに充填され、回転プレス機はさらに圧力装置を備え、この圧力装置は動作中に上部加圧パンチおよび下部加圧パンチと相互作用して、ダイ・プレートのキャビティにある粉体材料をペレットに圧入する。回転プレス機はさらに加圧パンチの軸方向の運動を制御するために加圧パンチのパンチ・ヘッドと相互作用する制御カムを備え、制御カムは、下部加圧パンチを制御して、キャビティ内で製造されたペレットをキャビティから吐出する吐出カムを備える。
【0003】
回転プレス機には、多数の上部および下部の加圧パンチが通常設けられており、これらはいずれも対になって1つのダイ・プレートの1つのキャビティに割り当てられている。回転プレス機の動作中、上部および下部の加圧パンチはダイ・プレートと共に回転し、この加圧パンチの軸方向の運動は、制御カムによって制御され、上部および下部のパンチ・ガイドによって案内される。回転している間、ダイ・プレートは回転プレス機のさまざまな装置、すなわち充填装置や圧力装置を通過する。充填装置では、加圧される粉体材料がダイ・プレートのキャビティに案内され、圧力装置では、粉体材料をたとえば錠剤などのペレットに圧入するために、上部および下部の加圧パンチが上部および下部の圧力ローラによってキャビティに通常押圧される。圧力装置の後、上部加圧パンチがキャビティから上方に案内され、キャビティ内で製造されたペレットは下部加圧パンチによってダイ・プレートの上面に押される。この目的を達成するために、吐出カムが設けられており、そのためにこの吐出カムが下部加圧パンチを上方へ移動させる。たとえばスクレーパによって、ついでペレットはダイ・プレートから回転プレス機の出力部に掻出され、そこからペレットがさらに処理されるために供給される。
【0004】
回転プレス機は高回転速度で、それに応じて高製造速度で動作する。対応する多数の加圧プロセスにわたって、回転プレス機のさまざまな部品、特に制御カム、ここでは特にプレス金型との接触中に特定の応力を受ける吐出カムに摩耗が生じる。加圧されることになる粉体材料と接触することによってまた、それに応じた摩耗につながる可能性がある。より摩耗した部品は、ペレット品質の悪化につながる可能性がある。たとえば、より摩耗した吐出カムは、発生した欠陥が選別中に認識されず、不良錠剤が排除されないことにつながる可能性がある。これまでは、回転プレス機の多くの部品、特に吐出カムの摩耗状態は、設定されたメンテナンス間隔で、通常は操作者によって手動で確認されてきた。このことの欠点は、その間に生じる、錠剤の品質の悪化につながる可能性のある摩耗の検出が間に合わないことである。手動での摩耗の確認はまた時間がかかり、確実に再現することは不可能である。
【0005】
したがって、説明した先行技術により、本発明の目的は、回転プレス機の部品の摩耗状態を確実に、適時に、再現性をもって評価することができる、冒頭に述べたタイプの方法および回転プレス機を提供することである。
【0006】
本発明は、独立請求項1および13によって本目的を達成する。有利な実施形態は、独立請求項、明細書、および図面に開示されている。
【0007】
冒頭に述べたタイプの方法について、本発明は以下のステップによってこの目的を達成する。すなわち、
・少なくとも1つの力センサを用いて、回転プレス機の動作中に吐出カムに作用する吐出力を測定値として測定し、かつ/または少なくとも1つの振動センサを用いて、回転プレス機の動作中に生じる振動を測定値として測定するステップと、
・測定値を評価装置に送り、評価装置は得られた測定値に基づいて回転プレス機の部品の摩耗状態を評価するステップ。
【0008】
前述のタイプの回転プレス機について、本発明は以下において本目的を達成する。すなわち、
・回転プレス機が少なくとも1つの力センサを備え、この力センサを用いて、回転プレス機の動作中に吐出カムに作用する吐出力を測定値として測定することができ、かつ/または、回転プレス機が少なくとも1つの振動センサを備え、この振動センサを用いて、回転プレス機の動作中に生じる振動を測定値として測定することができ、
・評価装置が設けられており、この評価装置に測定値が送られ、評価装置は得られた測定値に基づいて回転プレス機の部品の摩耗状態を評価するように設計されている。
【0009】
本発明に従って設けられているように、かつ/または本発明による方法に使用されているように、回転プレス機の基本的設計は冒頭に述べたものである。説明したように、上部および下部のパンチ・ガイドが、軸方向に運動中の加圧パンチを案内する。パンチ・ヘッドは、ロータで回転中に加圧パンチを軸方向に、特に互いに接近し、あるいは互いに離れるように移動させる制御カムと相互作用する。制御カムは、概して、複数の制御カム要素から作られる。制御カムは、パンチ・ヘッドを対応するガイド・ホルダに収容することも、パンチ・ヘッドの鏡面にのみ配置することも可能である。圧力装置は概して、上部圧力ローラおよび下部圧力ローラを備え、これらは上部および下部の加圧パンチのパンチ・ヘッドと相互作用する。たとえば、予圧装置および主圧力装置など、このタイプの圧力装置が複数設けられてもよい。吐出カムは、制御カムの一部として、ペレットがそれぞれのキャビティ内で生成された後に下部加圧パンチを上方に移動させるので、それぞれのペレットはダイ・プレートの上側に到達し、そこから、たとえばダイ・プレートの上に固定配置されているスクレーパによって錠剤出口に案内されることができる。
【0010】
本発明によると、回転プレス機の動作中に吐出カムに作用する吐出力を、少なくとも1つの力センサによって測定値として測定し、かつ/または、回転プレス機の動作中に生じる振動を、少なくとも1つの振動センサによって測定する。測定値が評価装置に送られる。評価装置は、得られた測定値に基づいて、回転プレス機の部品の摩耗状態を評価する。この部品は、特に、前述の回転プレス機の部品のうちの1つである。たとえば、この部品は、吐出カムなどの制御カムの要素であってもよい。本発明は、回転プレス機の部品の摩耗が、特に吐出カムの吐出力の変化、および/または回転プレス機の動作中に生じる振動の変化によって明らかになるという洞察に基づいている。また、力センサで測定した吐出力と振動センサで測定した振動の両方を測定値として検出し、評価装置で評価するような組み合わせの測定も有用である。両方のタイプの測定値が記録される場合、それぞれは上記および下記の方法で評価することが可能である。たとえば、記録された測定値と基準値との比較では、吐出力の測定値を吐出力の基準値と比較し、振動の測定値を振動の基準値と比較する。ついで、両方の種類の測定値に基づいて摩耗状態を評価することが可能である。たとえば、記録された一種類または両方の種類の測定値が対応する基準値と異なる場合、部品がより摩耗されていると判断できる。特に、両方の種類の測定値が記録され評価されると、測定値の種類のうちの1つに作用する影響因子は、たとえば、考慮され得るか、またはそれぞれ排除され得るため、測定値は変化するが、摩耗状態の変化によるものではない。一例は、ウェブの高さ、すなわちキャビティ内で製造されるペレットの高さ、または、圧力プランジャ、特に上部圧力プランジャのキャビティ内への侵入の深さ、または吐出力に特別な影響を与えるキャビティからペレットを吐出するときの下部圧力プランジャの侵入の深さの変化である。さらに、振動信号を考慮すると、摩耗状態に関連しないこのような影響因子を認識し、排除することが可能である。
【0011】
評価装置は、回転プレス機の一部であってもよい。たとえば、評価装置は、回転プレス機の機械制御部に一体化することが可能である。しかし、評価装置は、回転プレス機から独立しているたとえばコンピュータやタブレットやスマートフォンなどに、回転プレス機から独立して設計することも可能であり、あるいは、たとえば、クラウド・ソリューションのコンテキスト内で回転プレス機とは別のサーバに設計可能である。
【0012】
本発明は、特にリアルタイムに、回転プレス機の部品の摩耗度を予測することができる。これは、吐出カムの吐出力、および/または回転プレス機の振動の測定信号を用いて、簡潔かつ確実に行われる。本発明による摩耗状態の評価は、メンテナンス間隔に依存することなく、特に回転プレス機の連続した運転中に行うことができるので、より摩耗していることを適時に検出することが可能である。プロセスの安定性が高まり、回転プレス機の想定外の停止を最小限に抑える。同時に、製造されたペレットの品質特性を永続的に最適化することが可能となる。本発明による評価は、操作者による個別の評価とは独立しており、したがって、信頼性が高く、客観的に再現可能である。
【0013】
評価装置は、入力装置、および/または表示装置を備えることが可能である。これらは評価装置に一体化されてもよく、あるいはそこから独立して、たとえばPCやタブレット、スマートフォン、特にアプリ(アプリケーション)にあってもよい。
【0014】
本発明に従って記録された測定値は、吐出カムの摩耗状態を評価するのに特に適している。吐出カムはまた、摩耗状態の評価に関連する。というのは、吐出カムの状態を予め自動的に監視しなかったためである。設定されたメンテナンス間隔のコンテキスト内では、手動による確認しか行われない。本発明によると、吐出カムの摩耗は、吐出力と振動信号とによって確実に検出できることがわかった。
【0015】
吐出力の測定値を記録する力センサを、吐出カムに配置することが可能である。現在のところ、たいていは、吐出力を測定するのに応じた力センサが、すでに吐出カムに配置されている。しかし、これらは摩耗を検出するためには使用されていない。たとえば、力変換器を力センサとして吐出カムに取り付けることが可能である。力変換器は、たとえば、歪ゲージと場合によっては一体型の測定増幅器を備えた曲げビームを備えていてもよい。たとえば吐出カムの下に配置されている力変換器は、吐出されたパンチによって伝達される力によって偏向する。吐出力は、この偏向を用いて測定可能である。
【0016】
別の実施形態によると、振動センサは、吐出カムおよび/または圧力装置に、特に、圧力装置の上部および/または下部の圧力ローラ、および/または上部および/または下部の圧力ローラの上部および/または下部支持部に、かつ/またはダイ・プレートのキャビティ内に充填された粉体材料を計量するための制御カムの計量カムに配置されてもよい。したがって、1つ以上の振動センサを設けて、回転プレス機の動作中に生じる振動を測定値として記録することが可能である。たとえば、吐出カム上の振動センサ、たとえば力変換器上の振動センサ、たとえば力変換器の曲げ測定ビーム上の振動センサは、吐出カム内で発生する振動を直接測定するので、吐出カムの摩耗状態に関する極めて直接的な情報を提供することができる。しかし、発明者らが発見したのは、計量カムの要素、すなわち、キャビティに粉体材料を充填する際に下部パンチの高さを制御(計量)する制御カム要素上の振動信号および圧力装置の圧力ローラ上の振動信号が、回転プレス機の他の場所、特に吐出カムに配置された部品の摩耗状態に関する情報も提供することである。複数の振動センサを配置して使用することもまた、有用である。このようにして、摩耗状態とはおそらく無関係である他の影響を評価において特定して排除することができる。
【0017】
測定値は、測定値曲線、特に時間依存の測定値曲線として記録することが可能である。たとえば、測定値は、時間、速度、または加速度に対してプロットされた測定値曲線として記録することが可能である。測定値を測定値曲線としてプロットすることは、力センサまたは振動センサによってすでに行われていてもよいし、力センサまたは振動センサによって提供される個々の測定値を評価装置によって記録して、対応する測定値曲線を形成してもよい。部品の摩耗状態に関する特に信頼できる情報は、記録された測定値の特に時間特性の変化から得ることができる。
【0018】
極めて実用的な方法で、得られた測定値と基準値との比較に基づいて、部品の摩耗状態を評価装置によって評価することが可能である。基準値は、たとえば、新しい吐出湾曲部などの、新規の対応する部品を有する回転プレス機の運転中の測定値であってもよい。これらの基準値は目標値を形成し、この目標値と後に得られる回転プレス機の運転時の測定値とを比較することが可能である。基準値は、評価された回転プレス機の履歴データであってもよいし、データベースに保存されたデータであってもよく、たとえば回転プレス機のタイプごとに保存されたデータであってもよい。現在記録されている測定値の基準値からの偏差を測定することから、それぞれの部品の摩耗状態をそれぞれ推測することが可能である。たとえばウェブの高さや圧力プランジャの浸入深さなど、摩耗状態に関係のない他の要因による影響は、すでに述べたように計算や測定によって排除することができる。特に、測定値を測定値曲線として記録すると、測定値を基準値曲線と比較することが可能である。
【0019】
別の実施形態によると、評価装置が部品の摩耗の増加を検出するのは、得られた測定値が基準値と比較してズレがある場合、かつ/または得られた測定値の振幅が基準値と比較して変化している場合、かつ/または得られた測定値の傾きが基準値と比較して変化している場合である。発見したことは、特に、高周波振動信号または高周波吐出力信号の時間のズレが、回転プレス機の吐出湾曲部の摩耗度と相関することである。ズレに加えて、高周波振動信号または高周波吐出力信号の最大値の大きさや形状はまた、摩耗状態を示すパラメータである。たとえば、吐出湾曲部に関しては、傾斜状の吐出湾曲部にある加圧パンチの衝突角は、パンチ・ヘッドと頻繁に力がかかり接触することによる摩耗によって変化する。このことは、対応する測定値曲線の最大値の対応するズレや変化した形状につながる。吐出湾曲部の摩耗は、加速度と振動信号および/または吐出力信号の振幅のレベルの変化によっても認識可能である。このことはまた、評価装置によって上述の方法で考慮することが可能である。
【0020】
別の実施形態によると、得られた測定値が基準値から少なくとも1つの規定限界値だけずれていれば、評価装置が部品がさらに摩耗したことを検出可能である。その少なくとも1つの規定限界値は、操作者によって規定および/または調整可能である。代替的に、あるいは追加的に、その少なくとも1つの規定限界値は、アルゴリズムによって、特に機械学習アルゴリズムによって、規定および/または調整可能である。したがって、対応する限界値は、操作者に加えて、ソフトウェアによって規定可能であり、あるいはたとえば新しい吐出湾曲部などの新しい部品の基準値を使用して、プロセスに応じて決めることが可能である。また、機械学習アルゴリズム、特に自己学習アルゴリズムは、規定限界値を最適化またはそれぞれ調整するために使用可能である。たとえば、操作者は、評価装置の入力装置を介して限界値を入力したり、それぞれの要件に応じて限界値を調整したりすることが可能である。機械学習アルゴリズムは特に、ニューラルネットワークを含んでいてもよい。
【0021】
評価装置が、部品の摩耗状態の評価結果を操作者に表示することが可能である。さらに、部品がさらに摩耗したことが検出されると、評価装置は警告メッセージを出力することが可能である。上述の評価装置の表示装置には、評価結果の表示、またはそれぞれの警告メッセージを表示することが可能である。警告メッセージは、クリーニング、および/または再加工、および/またはより摩耗した部品の交換の提案を含んでいてもよい。
【0022】
回転プレス機、特に評価装置を、本発明による方法を実行するように設計可能である。したがって、本発明による方法は、本発明による回転プレス機を使用することによって実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の例示的実施形態を、図を参照しつつ、以下により詳細に説明する。
【0024】
【
図1】本発明による回転プレス機の、展開したロータの状態を示す模式図。
【0025】
特に明記されていない限り、同じ参照記号は図中の同じ対象物を指す。
【0026】
図1に示す回転プレス機は、錠剤を製造するための回転プレス機であり、その中で粉体材料が圧入されて錠剤になる。回転プレス機は、ロータリ・ドライブによって回転式に駆動するロータを備え、ロータが備えるダイ・プレート10が複数のキャビティ12を有する。キャビティ12は、たとえばダイ・プレート10にある孔によって形成されてもよい。ロータはさらに、複数の上部加圧パンチ14と下部加圧パンチ16とを備え、これらはダイ・プレート10と同期して回転する。上部加圧パンチ14は上部パンチ・ガイド18内で軸方向に案内され、下部加圧パンチ16は下部パンチ・ガイド20内で軸方向に案内される。ロータが回転する間の上部加圧パンチ14および下部加圧パンチ16の軸方向の運動は、上部制御カム要素22および下部制御カム要素24によって制御される。回転プレス機はさらに、充填装置26を備え、この充填装置26は充填リザーバ28と充填チャンバ30とを含み、これらは充填パイプ32を介して接続されている。このように、本実施例では、粉体材料が重力によって充填チューブ32を介して充填リザーバ28から充填チャンバ30内へ達し、そこから、充填チャンバ30の下面に設けられている充填開口部を介してダイ・プレート10のキャビティ12内に達する。
【0027】
回転プレス機はさらに、圧力装置34を備える。圧力装置34は、上部支持部35に保持されている上部予圧ローラ36と下部支持部37に保持されている下部予圧ローラ38とを有する予圧装置、ならびに上部支持部39に保持されている上部圧力ローラ40と下部支持部41に保持されている下部圧力ローラ42とを有する主圧力装置を備える。さらに、回転プレス機は、吐出装置44および掻取装置46を備え、掻取装置46は回転プレス機で製造された錠剤48を回転プレス機から吐出するための吐出装置50まで供給する掻取要素を有する。掻取装置46は、たとえば、下部加圧パンチ16によって搬送された錠剤48を、ダイ・プレート10から、吐出装置44の領域にあるダイ・プレート10の上面に掻出し、それらを吐出装置50に供給する、好ましくは三日月形の掻取要素を含んでもよい。
【0028】
以下により詳細に説明するように、回転プレス機はさらに、回転プレス機の動作を制御し、かつ本発明による方法を実施するための評価装置52を備える。
【0029】
制御カム24は、さまざまな制御カム要素、とりわけ計量カム54および吐出カム56を備える。示されている例では、振動センサ58,60,62が、計量カム54、上部および下部の圧力ローラ40,42の上部および下部の支持部39,41、ならびに吐出カム56に配置されている。振動センサ58,60,62は、配置された各部品において、回転プレス機の動作中に発生する振動を測定する。さらに、力センサ64が吐出カム56に配置されており、加圧パンチ14,16によって回転プレス機の動作中に吐出カム56に作用する吐出力を計測する。振動センサ58,60,62および力センサ64によって回転プレス機の動作中に検出された測定値は、測定値曲線として記録され、評価装置52に送られる。得られた測定値曲線に基づいて、評価装置52は図示する例にある回転プレス機の吐出湾曲部56の摩耗状態を評価する。評価結果、すなわちそれぞれはより摩耗した場合の警告メッセージが、評価装置52の表示装置に出力可能である。これは、評価装置52に組み込まれてもよく、たとえばコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどで形成されてもよい。評価装置52はまた入力装置を備え、この入力装置を介して、操作者は、評価装置52による状態評価のためのパラメータ、たとえば基準値曲線からの偏差に対する制限値を入力することができる。この入力装置はまた、評価装置52に組み込まれてもよく、あるいは評価装置52から独立してたとえばコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどに形成されてもよい。
【0030】
図示する例では、評価装置52は、振動センサ58,60,62および力センサ64の記録された測定値曲線を、たとえば新しくしたがって摩耗していない吐出湾曲部56を用いてたとえば実験的に作成可能であった基準値曲線と比較する。基準値曲線は、評価する回転プレス機または同じタイプの別の回転プレス機について作成可能である。特に、評価装置52が吐出湾曲部56の摩耗の増加を検出可能であるのは、たとえば、得られた測定値曲線が基準値曲線と比較して時間的なズレがある場合、かつ/または得られた測定値曲線の振幅が基準値曲線、特に変化した最大値と比較して変化している場合、かつ/または得られた測定値曲線の傾きが基準値曲線、特に振幅の変化した傾きまたは最大値と比較して変化している場合である。
【0031】
このことを、
図2から
図5に示す図を例にして説明する。
図2では、付番66が示すのは、吐出カム56に配置されている振動センサ62により測定された回転プレス機の動作中に生じる振動の振動頻度を、振動加速度に対してそれぞれの場合に任意の単位でプロットしたものである。対応する基準値を
図2に参照符号68で示す。一方、振動センサ62によって測定された振動信号の振幅、すなわち最大値は、基準値よりも大きく、さらに振動加速度が小さくなっていることがわかる。これらの記録された測定値の基準値からの偏差を、評価装置52によって対応する規定限界値と比較する。偏差が限界値を超えると、評価装置52は、吐出湾曲部56がより摩耗したと評価する。
【0032】
図3は
図2に対応する図であり、この場合は、参照符号70で、計量カム54に配置されている振動センサ58によって記録された測定値が対応する基準値と比較され、参照符号72でプロットされる。曲線70と72の重なりを網掛けで示す。
図2で識別可能な偏差は、計量カム54上の振動センサ58の配置により目立たないが、
図3でも識別可能である。
図2で説明したのと同じように、評価装置52はまた、振動センサ58の測定値に基づいて、吐出湾曲部56の摩耗状態を評価することが可能である。
【0033】
図4は、
図2および
図3と比較して、上部圧力ローラ40に配置されている振動センサ60によって記録された測定値についてわずかに異なる図である。
図4では、振動の速度に対する振動の頻度を再び任意の単位でプロットしている。振動センサ60によって記録されている測定値を、参照符号74で示す。新しい吐出カム56の対応する基準値を、参照符号76で示す。曲線74と76の重なりを網掛けで再び示す。再度、評価装置52は、認識可能かつ対応する限界値と比較可能な測定値間の偏差を生成する。したがって、測定値74の頻度の振幅、すなわち頻度の最大値が基準値76よりも大きくなる。さらに、振動速度は基準値よりも大きい。評価装置52は、対応する規定限界値と比較することで、より摩耗したことを検出可能である。
【0034】
図5では、吐出カム56に配置された力センサ64によって経時的に記録された吐出力の測定値曲線が参照符号78でプロットされ、新しい吐出カム56の対応する基準値曲線が参照符号80でプロットされる。力センサ64によって記録された測定値曲線78が基準値曲線80に対して時間的にずれていることがはっきりと認識できる。しかし、測定値曲線の振幅は顕著には変化しない。再び、基準値曲線80に対する測定値曲線78の時間的ずれの限界値を特定することができ、これに基づいて、評価装置52は吐出カム56がより摩耗したことを検出することができる。
【0035】
本発明は、吐出カム56の摩耗状態を評価するための例示的な実施形態を参照しつつ説明してきたが、当然ながら、回転プレス機の他の部品についても、その摩耗状態に関して適宜評価することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…ダイ・プレート
12…キャビティ
14…上部加圧パンチ
16…下部加圧パンチ
18…上部パンチ・ガイド
20…下部パンチ・ガイド
22…上部制御カム要素
24…下部制御カム要素
26…充填装置
28…充填リザーバ
30…充填チャンバ
32…充填チューブ
34…加圧装置
35…上部支持部
36…上部予圧ローラ
37…下部支持部
38…下部予圧ローラ
39…上部支持部
40…上部圧力ローラ
41…下部支持部
42…下部圧力ローラ
44…吐出装置
46…掻取装置
48…錠剤
50…排出装置
52…評価装置
54…計量カム
56…吐出カム
58…振動センサ
60…振動センサ
62…振動センサ
64…力センサ
66…測定値
68…基準値
70…測定値
72…基準値
74…測定値
76…基準値
78…測定値
80…基準値
【外国語明細書】