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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159637
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】構造物用シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241031BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241031BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241031BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20241031BHJP
   E04D 1/12 20060101ALI20241031BHJP
   E04D 1/20 20060101ALI20241031BHJP
   E04D 1/28 20060101ALI20241031BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B7/022
E04D1/12 F
E04D1/20 A
E04D1/28 A
E04D1/28 H
E04G23/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070944
(22)【出願日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2023074522
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000165088
【氏名又は名称】恵和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 紀昭
(72)【発明者】
【氏名】松野 有希
【テーマコード(参考)】
2E176
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
2E176AA23
2E176BB01
4F100AE01
4F100AE01C
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK42
4F100AK42D
4F100AK51
4F100AK51A
4F100AK52
4F100AK52A
4F100AK52B
4F100AK52C
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100BA02B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02A
4F100CA16
4F100CA16A
4F100CB05
4F100CB05A
4F100DE00
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4F100DE00B
4F100DE00C
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100GB07
4F100JK03
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK07A
4F100JL09
4F100JL09B
4F100JL13
4F100JL13A
4F100JL14
4F100JL14D
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA04
4J004CA07
4J004CC03
4J004DB02
4J004FA04
4J040DF021
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040LA01
4J040LA06
4J040MA06
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】せん断力変形が生じにくく、かつ下地からの剥離が生じにくい、構造物用シートの提供。
【解決手段】構造物用シート2は、機能層4、中間層6及び粘着層8を有している。機能層4は、耐候性に優れる。中間層6は、シート2の剛性等に寄与する。粘着層8は、下地と当接する。粘着層8の粘着力により、シート2は構造物に貼り付けられる。粘着層8の材質は、ポリマーを基材とする粘着剤組成物である。粘着層8の、80℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上である。粘着層8の、-10℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能層と粘着層とを備えており、
上記粘着層の、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、-10℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である、構造物用シート。
【請求項2】
上記粘着層の材質が粘着剤組成物であり、この組成物の基材がアクリル樹脂である、請求項1に記載の構造物用シート。
【請求項3】
上記粘着剤組成物がイソシアネート硬化剤を含む、請求項2に記載の構造物用シート。
【請求項4】
上記粘着剤組成物が粘着付与剤を含む、請求項2又は3に記載の構造物用シート。
【請求項5】
上記粘着層の厚さが30μm以上300μm以下である、請求項1又は2に記載の構造物用シート。
【請求項6】
80℃におけるせん断力が、14.0N/cm以上であり、且つ、-10℃における粘着力が、4.0N/25mm以上である、請求項1又は2に記載の構造物用シート。
【請求項7】
前記機能層と前記粘着層との間に配置された中間層を更に備える、請求項1又は2に記載の構造物用シート。
【請求項8】
前記中間層は、補強材料を含む、請求項7に記載の構造物用シート。
【請求項9】
前記機能層及び前記粘着層の少なくともいずれかは、フィラーを含む、請求項7に記載の構造物用シート。
【請求項10】
前記粘着層の前記機能層側とは反対側の面に配置された離型フィルムを備える、請求項1又は2に記載の構造物用シート。
【請求項11】
構造物の補修又は補強の方法であって、
(1)機能層と、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり-10℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である粘着層とを有する、第1シートを準備する工程、
(2)機能層と、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり-10℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である粘着層とを有する、第2シートを準備する工程、
(3)上記第1シートの上記粘着層の粘着力により、上記構造物の表面に上記第1シートを貼り付ける工程、
及び
(4)上記第1シートの縁の近傍に上記第2シートの一部を重ねつつ、上記第2シートの上記粘着層の粘着力により、上記第1シートの表面及び上記構造物の表面に、上記第2シートを貼り付ける工程
を備えた、構造物の補修又は補強の方法。
【請求項12】
屋根の補修の方法であって、
(1)それぞれが、機能層と、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり-10℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である粘着層とを有する、複数のシートを準備する工程、
及び
(2)それぞれのシートの上記粘着層の粘着力により、上記屋根の表面にこのシートを貼り付けて、上記複数のシートによって上記屋根の表面の全体を覆う工程
を備えた、屋根の補修又は補強の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、構造物に貼り付けられて使用されるシートを開示する。
【背景技術】
【0002】
住宅のスレート屋根が長期間風雨に曝されると、劣化が生じる。劣化したスレート屋根からの雨漏りが、懸念される。雨漏りの防止の目的で、スレート屋根に塗料が塗布されている。しかし、劣化が激しいスレート屋根の場合、塗料の塗布によっても雨漏りが防止されないことがある。
【0003】
特開2022-101896公報には、ポリマーセメント層と樹脂層とを有するシートによる屋根の補修方法が、開示されている。このシートが屋根に貼り付けられることで、屋根の雨漏りが抑制されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-101896公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2022-101896公報に開示されたシートで屋根が補修されるとき、このシートを作業者が踏むことがある。作業者の体重がシートにかかることで、シートにせん断力がかかりうる。このせん断力は、シートのせん断変形(ずれ)を誘発する。
【0006】
複数のシートが使用された補修により、屋根の広い面積がこれらのシートで覆われうる。この補修では、第1シートの上に、この第1シートに隣接する第2シートが、部分的に重ねられる。重ねの部分において、第2シートが、下地である第1シートから剥離することがある。この剥離は、屋根への水の浸入を誘発する。
【0007】
同様の問題は、スレート屋根以外の屋根の補修でも生じている。同様の問題は、屋根以外の構造物の補修又は補強でも、生じている。
【0008】
本出願人の意図するところは、せん断力変形が生じにくく、かつ下地からの剥離が生じにくい、構造物用シートの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書が開示する構造物用シートは、機能層と粘着層とを有する。この粘着層の、80℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上である。この粘着層の、-10℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以下である。
【発明の効果】
【0010】
この構造物用シートでは、夏場に施工されるときでも、せん断変形が生じにくい。この構造物用シートは、冬場でも、下地から剥離しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る構造物用シートの一部が示された斜視図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3は、図2において符号IIIが付された部分が示された拡大図である。
図4図4は、図1の構造物用シートが屋根と共に示された正面図である。
図5図5は、図4において符号Vが付された部分が示された拡大図である。
図6図6は、図4のVI-VI線に沿った拡大断面図である。
図7図7は、図5のVII-VII線に沿った拡大断面図である。
図8図8は、図1の構造物用シートによる屋根の補修方法が示されたフローチャートである。
図9図9は、第2実施形態に係る構造物用シートの一部が示された断面図である。
図10図10は、第3実施形態に係る構造物用シートの一部が示された断面図である。
図11図11は、実施例に係る構造物用シートのせん断力の測定方法が示された斜視図である。
図12図12は、第4実施形態に係る構造物用シートを模式的に示す断面構成図である。
図13図13は、第5実施形態に係る構造物用シートを模式的に示す断面構成図である。
図14図14は、第6実施形態に係る構造物用シートを模式的に示す断面構成図である。
図15図15は、本開示の構造物用シートを収容した供給物品の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
<第1実施形態>
[層構造]
図1-3に、構造物用シート2(以下、シート2とも称する。)が示されている。このシート2の平面形状は、概して矩形である。図3から明らかなように、このシート2は、それぞれ少なくとも1つの層を含む、機能層4、中間層6、及び、粘着層8を備える。図3から明らかなように、シート2は、例えば、それぞれ単一の機能層4、中間層6、及び、粘着層8を備える。このシート2は、構造物に貼り付けられる。シート2が、離型紙又は離型フィルム(図12の離型フィルム9を参照)を有してもよい。離型紙及び離型フィルムは、粘着層8と積層される。離型紙又は離型フィルムは、例えば、シート2の使用時等の所定のタイミングまで残存していてもよい。また後述するように、粘着層8及び機能層4の少なくともいずれかは、フィラーを含んでいてもよい。
【0013】
[機能層]
本実施形態では、機能層4は、最も上に位置している。換言すれば、シート2が下地(構造物等)に貼られたとき、機能層4は、この下地から最も離れて位置する。本実施形態の機能層4は、粘着層8の上方に配置されている。機能層4は、シート2に望まれる機能に、寄与する。この機能として、耐光性、耐候性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性、非透水性、非透湿性及び透湿性が例示される。機能層4は、1又は2以上の機能に寄与しうる。
【0014】
機能層4の材質は、ポリマー組成物である。この機能層4は、概して柔軟である。この機能層4を有するシート2は、下地の凹凸に追従しうる。ポリマー組成物は、基材ポリマーを含む。合成樹脂、合成ゴム及び天然ゴムが、基材ポリマーとして、組成物に含有されうる。
【0015】
機能層4に耐候性が望まれる場合、機能層4の耐候性は、例えば、機能層4の材料や機能層4中の前記材料の選択及び含有量を調整することで制御できる。機能層4に耐候性が望まれる場合の機能層4の材料としては、例えば、紫外線で劣化しにくい基材ポリマーが好ましい。具体的には、紫外線(410KJ/mol)よりも強い結合エネルギーを有する結合構造を機能層4中に多く形成できる材料(ポリマー等)を配置したり、機能層4中の当該材料の含有量を増大させたりする方法を例示できる。機能層4の耐候性及びシート2の柔軟性に寄与しうるポリマーとして、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、柔軟エポキシ樹脂及びポリブタジエンが例示される。
【0016】
また、機能層4中の反応点を少なくして機能層4を化学的に安定にする観点から、機能層4は、二重結合が少ない構造を有する材料を含んでいてもよい。当該材料が機能層4に多く存在すると、機能層4の化学的安定性が増大する。このような材料として、非ジエン系のゴムを例示できる。具体的に当該非ジエン系のゴムとしては、CIIR(塩素化ブチルゴム)、BIIR(臭素化ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)の少なくともいずれかを例示できる。機能層4中に前記結合構造を多く形成する方法として、例えば、紫外線(UV)等のエネルギー線の照射により生じたラジカルをトラップするラジカルトラップ材、HALS等UVを吸収してラジカルの発生を抑制する添加材、フェノール系、チオエーテル系等の酸化防止剤の少なくともいずれかを偏在させる方法も例示できる。
【0017】
耐候性の観点から、本実施形態の機能層4の基材ポリマーに特に適した樹脂は、一例として、アクリルシリコーン樹脂である。アクリルシリコーン樹脂は、シロキサン結合を含む。アクリルシリコーン樹脂は、耐熱性及び耐寒性にも優れる。アクリルシリコーン樹脂を含む組成物の具体例として、大日精化工業(株)製の商品名「クールライフSPブラック(CB1)P5-0」、藤倉化成(株)製の商品名「ベルアース弾性黒」、東亞合成(株)製の商品名「アロンブルコートT-1000」、並びに(株)日本触媒製の商品名「アクリセットEMN325E」及び「ユーダブルEF008」が挙げられる。機能層4のポリマー組成物は、必要に応じ、顔料、充填剤、補強材、防汚剤等の添加剤を含みうる。顔料を含む機能層4は、化粧性に優れる。有機顔料及び無機顔料を、ポリマー組成物は含みうる。充填剤として、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物粒子が例示される。補強材として、セルロールナノファイバーが例示される。それぞれの添加剤の含有率は、機能に応じ調整される。
【0018】
図3において矢印T1は、機能層4の厚さを表す。機能の観点から、厚さT1は10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上が特に好ましい。シート2の柔軟性、生産性及び軽量の観点から、厚さT1は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。構造物用シート2が、2以上の機能層4を有してもよい。なお機能層4がフィラーを含む場合、後述する中間層6が含むフィラーと同様のフィラーを含んでいてもよい。
【0019】
[中間層]
中間層6は、シート2の剛性等に寄与する。中間層6は、例えば、シート2の形状を規定する層である。中間層6は、例えば、シート2の全体形状を保持する機能を有する。中間層6の好ましい材質は、ポリマーとフィラーとの、複合材料である。これにより、構造物用シート2に所定の剛性を付与し易くできる。ポリマーとして、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂が例示される。フィラーとして、セメント、モルタル、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム及びカーボンブラックが例示される。好ましい複合材料は、アクリル樹脂とモルタルとを含む。特に、ポリマーセメントが好ましい。前記例示した材料は、単体又は混合して用いられてもよい。
【0020】
中間層6の材料である樹脂成分とモルタルの比率を制御することで、構造物用シート2の剛性を容易に制御できると共に、材料設計の自由度を向上できる。また、取り扱い易い程度の中間層6の厚みが得られる。また例えば、フィラーの粒子形状を調整することで、構造物用シート2の剛性を制御できる。具体的にフィラーの粒子形状としては、球状、針状、不定形、テトラポット形状等を例示できる。更に、中間層6の厚みを調節することで、構造物用シート2の剛性を制御できる。
【0021】
中間層6に適したポリマーを含む組成物の具体例として、菊水化学工業(株)製の商品名「スプリングコートハケ混和液」及び東亞合成(株)製の商品名「アロンブルコートA450ベース」が挙げられる。中間層6に適したセメントを含む組成物の具体例として、菊水化学工業(株)の商品名「スプリングコートハケ粉体」及び東亞合成(株)製の商品名「アロンブルコートA450セッター」が挙げられる。
【0022】
中間層6が樹脂とモルタルとを含む場合、樹脂及びモルタルの合計に対する樹脂の比率は、10質量%以上90質量%以下が好ましい。この比率が10質量%以上である中間層6は、他の層(機能層4)との密着性に優れる。この観点から、この比率は30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が特に好ましい。この比率が90質量%以下である中間層6は、剛性に優れる。この観点から、この比率は70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が特に好ましい。
【0023】
図3において矢印T2は、中間層6の厚さを表す。シート2の剛性の観点から、厚さT2は100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、300μm以上が特に好ましい。シート2の生産性及び軽量の観点から、厚さT2は1500μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、700μm以下が特に好ましい。構造物用シート2が、2以上の中間層6を有してもよい。構造物用シート2が、中間層6を含まない層構造を有してもよい。
【0024】
構造物用シート2は、1又は複数の中間層6を備えていてもよい。構造物用シート2が備える中間層6の数は、例えば、構造物用シート2の全体厚み、中間層6に付与される機能、工場の製造ラインの長さ、或いは、構造物用シート2の生産コスト等を考慮して設定される。例えば、工場の製造ラインが短いために所定の厚みを有する単一の中間層6が得られない場合、中間層6の材料を重ね塗りすることで、所定の全体厚みを有する複数の中間層6の積層構造を形成すればよい。
【0025】
[粘着層]
粘着層8は、下地と当接する。粘着層8の粘着力により、シート2は構造物に貼り付けられる。粘着層8の粘着性は、例えば、粘着層8の厚みや表面特性、及び、粘着層8の材料を調整することで制御できる。粘着層8の表面特性を制御する場合、例えば、後述する微細構造を採用できる。更に、粘着層8の厚みを厚過ぎず且つ薄過ぎない適度な値に設定することも、粘着層8の粘着性の制御には有効である。また、粘着層8の粘着力を所定範囲に制御し易いという観点から、粘着剤の材料及び粘着層8の厚みを組み合わせて調整することも好ましい。
【0026】
より具体的に、粘着層8の材料としては、アクリル、シロキサン結合を有するシリコーン、ゴム、ウレタン系、ポリエステル系等の、ガラス転移温度(Tg)が低く且つファンデルワールス力や静電気力を利用できる粘着剤を例示できる。また、粘着層8の厚みや、粘着層8の架橋度を調整することで、粘着層8の粘着力を制御できる。また、粘着層8の貼付面をヤモリの手足のような微細構造(大表面積かつ分子間力を利用できる構造)に構成してもよい。更に、前記粘着剤と前記微細構造を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本実施形態の粘着層8の材質は、一例として、ポリマーを基材とする粘着剤組成物である。粘着剤組成物に適したポリマーとして、アクリル樹脂、シリコーン、ポリウレタン、ポリエステル、天然ゴム及び合成ゴムが、例示される。耐候性及び耐熱性に優れ、原材料の種類が豊富であることから、基材として特に好ましいポリマーは、アクリル樹脂である。アクリル樹脂は、重合操作により分子量を調整することが可能であり、共重合体とすることにより、ベースポリマーの骨格に凝集力成分及び/又は官能基成分を組み込むことができるという利点がある。
【0028】
アクリル系粘着剤組成物の具体例として、トーヨーケム(株)製の商品名「オリバインBPS6574」、「オリバインBPS6554」及び「オリバインBPS5565K」が挙げられる。ウレタン系粘着剤組成物の具体例として、三洋化成工業(株)製の商品名「ポリシックUPK-2」、「ポリシックUPS-2A」等が挙げられる。ポリエステル系粘着剤組成物の具体例として、三菱ケミカル(株)製の商品名「LP-050S50TO」、「SNT」、「NP-120S45EO」、「NP-110S50EO」、「S-0091S55EO」、「S-0097S55EO」等があげられる。ゴム系粘着剤組成物の具体例として、ビックテクノス(株)製の商品名「GR-1139」、「GR-1045M-1」、「GR-1025M-1」、「GRN-13B」等が挙げられる。シリコーン系粘着剤組成物の具体例として、信越化学工業(株)製の商品名「X-40-3237」、「X-40-3240」、「X-40-3291-1」等が挙げられる。前述した理由により、本開示の構造物用シートには、アクリル系粘着剤組成物が好適に用いられる。
【0029】
粘着剤組成物が硬化剤を含んでもよい。硬化剤の種類は特に限定されず、ポリマーの種類に応じて適切な硬化剤を選択して用いることができる。硬化剤としては、イソシアネート硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤等が例示される。必要に応じて、紫外線(UV)又は電子線(EB)による照射架橋を併用してもよい。硬化剤の量は特に限定されず、ポリマー及び硬化剤の種類に応じて調整することができる。例えば、粘着剤組成物の基材ポリマー100質量部に対する硬化剤の量は0.5質量部以上であってよく、1.0質量部以上であってよく、2.0質量部以上であってよく、3.0質量部以上であってよく、また、20質量部以下であってよく、15質量部以下であってよく、10質量部以下であってよい。
【0030】
基材がアクリル樹脂である場合の好ましい硬化剤は、イソシアネート硬化剤である。その理由は、イソシアネートは反応性が高く、アミン類、アルコール類、カルボン酸、メルカプタン、ウレタン、カルボン酸アミド等の活性水素を持つ化合物と容易に硬化反応が生じるためである。アクリル樹脂100質量部に対するイソシアネート硬化剤の比率は1.0質量部以上が好ましく、2.0質量部以上がより好ましく、2.5質量部以上が特に好ましい。この比率は10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下が特に好ましい。適正な量の硬化剤の含有により、粘着層8の適正な貯蔵弾性率(後に詳説)が達成されうる。
【0031】
粘着剤組成物は、粘着付与剤を含みうる。一般に、粘着剤組成物の基材とされる樹脂又はエラストマーは高分子のため粘着力を有するが、粘着対象物に対するぬれ性に劣り、また、柔らかいために凝集力が低い場合がある。粘着付与剤は、粘着対象物に対する濡れ性を改善させる機能を有する。そのため、粘着付与剤を含む粘着剤組成物は、対象物上に速やかに濡れ広がって、その粘着力が十分に発揮される。
【0032】
粘着付与剤として、ロジン樹脂系粘着付与剤、ロジン誘導体樹脂系粘着付与剤、テルペン樹脂系粘着付与剤、C5樹脂、C5/C9樹脂、C9樹脂のような石油樹脂系粘着付与剤、フェノール樹脂系粘着付与剤、テルペンフェノール樹脂系粘着付与剤、クロマン・スチレン樹脂系粘着付与剤、等が例示される。基材ポリマー100質量部に対する粘着付与剤の比率は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が特に好ましい。この比率は15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、7質量部以下が特に好ましい。後述される貯蔵弾性率の値が達成されるよう、粘着付与剤の種類及び量が選定される。適正な軟化点を有する粘着付与剤の、適量の含有により、粘着層8の優れた貯蔵弾性率が達成されうる。
【0033】
ロジン樹脂系粘着付与剤の具体例として、荒川化学工業(株)の商品名「エステルガム H」、「エステルガム AA-V」及び「エステルガム 105」が例示される。これらの熱間の軟化点は、以下の通りである。
エステルガムH:68℃以上75℃以下
エステルガムAA-V:82℃以上95℃以下
エステルガム105:100℃以上110℃以下
【0034】
図3において矢印T3は、粘着層8の厚さを表す。粘着性の観点から、厚さT3は30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。シート2のせん断変形抑制の観点、並びにシート2の生産性及び軽量の観点から、厚さT3は300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下が特に好ましい。せん断変形しにくく、かつ、粘着力に優れた粘着層が得られやすいとの観点から、好ましい粘着層の厚さは、50μm以上200μm以下であり、100μm以上150μm以下がより好ましい。構造物用シート2が、2以上の粘着層8を有してもよい。
【0035】
[離型フィルム]
離型フィルム9は、粘着層8の中間層6側とは反対側の面に配置(貼付)されている。構造物用シート2では、使用前においては粘着層8を表面保護する目的で、離型フィルム9が貼付されていることが好ましい。離型フィルム9は、構造物用シート2の貼付に際して剥離される。離型フィルム9が剥離されることで粘着層8が露出した構造物用シート2は、粘着層8を構造物の表面に接触させて、構造物に貼付される。
【0036】
離型フィルム9の構造は特に限定されず、例えば、支持層と剥離層とを有するシートを例示できる。支持層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ナイロン6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、セルロースアセテート等のセルロース樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂を例示できる。また前記支持層は、紙を主成分として形成されていてもよい。更に支持層は、2層以上の構成層を備える積層体であってもよい。
【0037】
剥離層を構成する材料としては、例えば、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フッ素化重合体等を例示できる。剥離層は、例えば、剥離層を構成する材料、及び、有機溶剤を含む塗工液を、支持層上に、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法等の公知の塗布方法によって塗布し、前記塗布より形成された塗膜を乾燥及び硬化させることで形成できる。また、剥離層の形成に当たっては、予め、支持層の剥離層が形成される面に、コロナ処理や易接着処理を施していてもよい。
【0038】
[他の層]
構造物用シート2は、機能層4の上に位置する他の層を有してもよい。典型的な他の層は、例えばクリアーペイント層である。構造物用シート2が、機能層4と中間層6との間に位置する層を有してもよい。構造物用シート2が、中間層6と粘着層8との間に位置する層を有してもよい。
【0039】
[総厚さ]
構造物用シート2の総厚さは、150μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましく、400μm以上が特に好ましい。この総厚さは、5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。
【0040】
[構造物用シートの柔軟性]
構造物用シート2は、上記した剛性を有しつつ、適度な柔軟性も有する。例えば構造物用シート2は、ロール状に巻き取りが可能な程度の柔軟性を有する。ここで言うロール状の巻き取りとは、例えば数cm以上数十cm以下の値の直径(具体的には、例えば、10mm以上300mm以下の値の直径)を有するロール芯材への構造物用シート2の巻き取りを指す。これより細いロール芯材でも、手巻き等により、構造物用シート2を数m程度巻き取ることは可能である。従って、例えば、構造物用シート2をロール状で管理できる。更に、ロール状に巻回された構造物用シート2を施工現場で展開し、所定のサイズに切り出した構造物用シート2を迅速に準備して施工することも可能である。よって、比較的大面積を有する施工対象に対しても、構造物用シート2を容易且つ簡便に適用できる。
【0041】
またシート2は、80℃におけるせん断力が、14.0N/cm以上である。これにより、例えば、夏場に構造物用シート2が柔軟になり過ぎて、表面に外力が作用した際に貼付位置がずれる現象である、いわゆる横滑りが発生するのを適切に防止できる。またシート2は、-10℃における粘着力が、4.0N/25mm以上である。これにより、冬場でもシートを構造物の表面に確実に貼付した状態を維持できる。
【0042】
なお、シート2の80℃におけるせん断力は42.0N/cm以下であると、例えば、シート2を加工し易い範囲内でシート2の強度を維持し易くできる。また、シート2の-10℃における粘着力が、18.0N/25mm以下、特に、15.0N/25mm以下であると、例えば、構造物用シート2の貼り直しが必要になった場合でも、構造物の表面から構造物用シート2を、破損を防ぎながら剥がして貼り直しし易くできる。シート2の80℃におけるせん断力は、例えば、14.0N/cm以上であることが好ましく、20N/cm以上であることがより好ましく、25N/cm以上であることが一層好ましい。また、シート2の-10℃における粘着力は、例えば、4.0N/25mm以上であることが好ましく、6.0N/25mm以上であることがより好ましく、9.0N/25mm以上であることが一層好ましい。
【0043】
[製造方法]
以下、この構造物用シート2の製造方法の一例が、説明される。この製造方法では、機能層4のポリマー組成物が溶媒と混合され、第1塗料が得られる。この第1塗料がベースフィルム(図14のベースフィルム39を参照)の上に塗工され、第1塗膜が得られる。この第1塗膜が加熱され、第1塗料から溶媒が揮発する。この加熱によって第1塗膜中の基材ポリマーが硬化し、機能層4が得られる。ベースフィルムは、第1塗膜に形状を付与する形状付与フィルム(シート)である。
【0044】
次に、中間層6の複合材料が溶媒と混合され、第2塗料が得られる。この第2塗料が機能層4の上に塗工され、第2塗膜が得られる。この第2塗膜が加熱され、第2塗料から溶媒が揮発する。この加熱によってポリマーが硬化し、中間層6が得られる。
【0045】
次に、粘着層8の粘着剤組成物が溶媒と混合され、第3塗料が得られる。この第3塗料が、離型紙又は離型フィルムの上に塗工され、第3塗膜が得られる。この第3塗膜が加熱され、第3塗料から溶媒が揮発して、粘着層8が得られる。
【0046】
この粘着層8が、中間層6と重ねられる。さらに、機能層4からベースフィルムが剥離され、粘着層8から離型フィルムが剥離されて、構造物用シート2が得られる。なお、離型紙又は離型フィルム、及び、ベースフィルムの少なくともいずれかは、使用の際までに剥離除去されていてもよい。
【0047】
ここでベースフィルムの具体例について述べる。ベースフィルムは、構造物用シート2の製造の際の基材として用いられる。ベースフィルムは、構造物用シート2の製造工程で用いられる工程紙である樹脂ラミネート紙や、樹脂フィルムを含んでいてもよい。ここで言う樹脂ラミネート紙は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン樹脂層を有していてもよい。具体的にベースフィルムとしては、例えば、PPラミネートシート(例えばリンテック(株)製)を利用できる。このPPラミネートシートの厚みは、一例として50μm以上200μm以下の値である。
【0048】
[屋根の補修]
この構造物用シート2の典型的な用途は、屋根の補修である。図4及び5に、補修された屋根10が示されている。これらの図には、屋根10と共に、2つのシート2(第1シート2a及び第2シート2b)が示されている。第2シート2bの仕様は、第1シート2aの仕様と同じである。屋根10として、スレート屋根、瓦屋根、鋼板屋根(折板屋根を含む)、銅板屋根、トタン板屋根、コンクリート屋根等が挙げられる。
【0049】
図4では、第1シート2aの下縁12aの位置は、屋根10の下端14の位置と概ね一致している。第1シート2aは、全体として、屋根10に貼られている。第2シート2bは、その下縁12b(図5参照)の近傍において、第1シート2aの上縁16aの近傍と重なっている。この重なりにより、継ぎ目18が形成されている。第2シート2bのうち、継ぎ目18以外の部分は、屋根10に貼られている。
【0050】
図6は、図4のVI-VI線に沿った拡大断面図である。図6には、屋根10及び第1シート2aと共に、プライマー層20が示されている。図6には、第1シート2aの、機能層4a、中間層6a及び粘着層8aが示されている。プライマー層20は、屋根10の表面を覆っている。第1シート2aは、プライマー層20を介して屋根10に貼り付けられている。粘着層8aの粘着力により、第1シート2aが下地(屋根10又はプライマー層20)に貼り付けられている。本明細書では、プライマー層20等を介してシート2が屋根10に貼り付けられる場合も含め、「シートが屋根に貼り付けられる」と称される。
【0051】
図7は、図5のVII-VII線に沿った拡大断面図である。図7には、継ぎ目18の断面が示されている。図7には、屋根10、プライマー層20、第1シート2a及び第2シート2bが示されている。図7には、第2シート2bの、機能層4b、中間層6b及び粘着層8bが示されている。図6において言及されたように、第1シート2aは、下地に貼り付けられている。第2シート2bは、継ぎ目18において、第1シート2aに貼り付けられている。第2シート2bの粘着層8bの粘着力により、第2シート2bが第1シート2aの機能層4aに貼り付けられている。第2シート2bのうち、継ぎ目18以外の部分は、図6に示された第1シート2aと同様、屋根10又はプライマー層20に貼り付けられている。
【0052】
[補修方法]
図8に、このシート2が用いられた屋根10の補修方法が示されている。この補修方法では、まず、屋根10の表面にプライマーが塗工される(STEP1)。このプライマーが乾燥し、プライマー層20が形成される。次に、複数のシート2が準備される(STEP2)。これらのシート2の仕様は、同じである。これらのシート2は、第1シート2a(図4及び5を参照)及び第2シート2bを含んでいる。
【0053】
この第1シート2aが、屋根10に貼り付けられる(STEP3)。前述の通り、第1シート2aの下縁12aの位置は、屋根10の下端14の位置と概ね一致する。この第1シート2aに、第2シート2bが継ぎ貼りされる(STEP4)。継ぎ貼りにより、第1シート2aと第2シート2bとによって継ぎ目18が形成される。この第2シート2bに第3シート2が継ぎ貼りされ、この第3シート2に第4シート2が継ぎ貼りされる。以下同様に、この継ぎ貼りが繰り返される。屋根10の表面の、所望のゾーンがシート2で覆われた段階で、補修が完了する。
【0054】
[貯蔵弾性率]
粘着層8の、80℃における貯蔵弾性率G'(1)は、1.0×10Pa以上が好ましい。シート2が屋根10に貼られた後、このシート2を作業者が踏むことがある。このとき、シート2にはせん断力がかかる。シート2の上に物が置かれた場合も、シート2にせん断力がかかりうる。粘着層8の貯蔵弾性率G'(1)が1.0×10Pa以上であるシート2では、せん断力がかかったときのせん断変形が、抑制されうる。このシート2は、ズレにくい。このシート2では、夏場のような高温環境下においても、せん断変形が抑制されうる。せん断変形の抑制の観点から、貯蔵弾性率G'(1)は、3.1×10Pa以上がより好ましく、2.3×10Pa以上が特に好ましい。
【0055】
粘着層8の、-10℃における貯蔵弾性率G'(2)は、1.0×10Pa以下が好ましい。前述の通り粘着層8は、下地及び他のシート2の機能層4に当接する。粘着層8の貯蔵弾性率G'(2)が1.0×10Pa以下であるシート2は、下地及び他のシート2の機能層4から、剥離しにくい。この粘着層8は、プライマー層20を介さずに粘着層8が他のシート2に当接する箇所(つまり継ぎ目18)においても、剥離を十分に抑制しうる。このシート2で補修された構造物では、剥離に起因する水等の進入が生じにくい。このシート2では、冬場のような低温環境下においても、剥離が抑制されうる。剥離の抑制の観点から、貯蔵弾性率G'(2)は、2.3×10Pa以下がより好ましく、8.7×10Pa以下が特に好ましい。
【0056】
貯蔵弾性率G'(1)及びG'(2)は、粘弾性測定装置によって測定されうる。測定に適した装置の一例として、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の商品名「DMAQ850 レオメータDHR-2」が挙げられる。この測定では、粘着層8と同じ組成物から、厚さが2.0mmであるスラブが作成される。このスラブが打ち抜かれて、円盤状であって直径が5.0mmであるサンプルが得られる。測定条件は、以下の通りである。
周波数:1.0Hz
温度範囲:-80℃から80℃
昇温速度:5℃/min
モード:せん断
【0057】
前述の通り、
(1)硬化剤の種類の選定
(2)硬化剤の含有率の調整
(3)粘着付与剤の種類の選定
又は
(4)粘着付与剤の量の調整
により、好ましい貯蔵弾性率G'(1)及びG'(2)の値が達成されうる。
さらに、
(5)基材ポリマーの分子量の選定
(6)充填剤の種類の選定
(7)充填剤の量の調整
(8)補強材の種類の選定
(9)補強材の量の調整
等の手段によっても、好ましい貯蔵弾性率G'(1)及びG'(2)の値が達成されうる。
【0058】
[効果]
前述の通り、このシート2では、継ぎ目18からの水の浸入が生じにくい。このシート2が継ぎ貼りされることで、広い面積にて、屋根10の表面がシート2で覆われうる。シート2は柔軟なので、段差に追従しうる。従って、表面に段差を有する屋根10であっても、広い面積にて、屋根10の表面がシート2で覆われうる。粘着層8は粘着性に優れるので、屋根10の表面の材質が複合的である場合でも、広い面積にて、屋根10の表面がシート2で覆われうる。例えば、表面が金属及びスレートの両方を含む屋根10であっても、広い面積にて、屋根10の表面がシート2で覆われうる。
【0059】
屋根10の表面の全体が、シート2で覆われてもよい。本明細書において屋根10の表面とは、鉛直方向の上から屋根10が見られたとき、視認されうる面を意味する。屋根10の表面の全体が単一種類のシート2で覆われる補修方法は、従来の工法には見られない。
【0060】
このシート2は、鋼板、銅板、トタン板等に比べ、軽量である。従って、広い面積にて屋根10の表面がシート2で覆われても、建築物の耐震性への悪影響は、小さい。シート2に経年劣化が生じたとき、このシート2に他のシート2が積層されてもよい。この場合でも、建築物の耐震性への悪影響は、小さい。耐震性の観点から、シート2の密度は4.0g/cm以下が好ましく、3.0g/cm以下がより好ましく、2.5g/cm以下が特に好ましい。この密度は、屋根10の補修に賞用されているアルミニウム-亜鉛合金メッキ鋼板(商品名「ガルバリウム鋼板(登録商標)」)の密度に比べ、はるかに小さい。
【0061】
[他の用途]
このシート2は、屋根10以外の構造物の補修又は補強に寄与しうる。屋根10以外の構造物として、住宅の壁、柱、軒、塀、門、扉、パラペット、並木等が挙げられる。このシート2が、商用ビルディング、工場、倉庫、橋梁、下水施設、鉄道施設、トンネル等に用いられてもよい。
【0062】
<第2実施形態>
[層構造]
図9に、第2実施形態に係る構造物用シート22が示されている。このシート22は、機能層24、中間層26及び粘着層28を有している。機能層24の材質、厚さ等の構成は、図1-7に示されたシート2の機能層4のそれらと同じである。粘着層28の材質、厚さ等の構成は、図1-7に示されたシート2の粘着層8のそれらと同じである。このシート22は、構造物に貼り付けられる。シート22が、離型紙又は離型フィルムを有してもよい。離型紙及び離型フィルムは、粘着層28と積層される。
【0063】
[中間層]
中間層26は、機能層24と粘着層28との間に配置されている。中間層26は、補強材料30を含んでいる。中間層26の、補強材料30を除く部分の材質は、図1-7に示されたシート2の中間層6の材質と同じである。本実施形態の補強材料30は、一例としてメッシュである。
【0064】
補強材料30の材質として、合成樹脂及び金属が例示される。好ましい合成樹脂として、ビニロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン及びポリフッ化ビニリデンが例示される。好ましい金属として、アルミニウム合金、炭素鋼及び合金鋼が例示される。補強材料30は、シート22の剛性に寄与しうる。補強材料30を含むシート22は、取り扱い性に優れる。補強材料30としては、メッシュに代えて、樹脂フィルム又は金属箔を含んでいてもよい。このうち樹脂フィルムは、例えば2軸延伸フィルムでもよい。中間層26のための塗膜が乾燥する前に、この塗膜に補強材料30が押し当てられることで、補強材料30を含む中間層26が得られうる。
【0065】
補強材料30がメッシュである場合、補強材料30は、一例として、経糸、緯糸の繊維が格子状に配置された二軸組布構造を有する。補強材料30の形状は、特に限定されない。補強材料30がメッシュである場合の補強材料30の形状としては、二軸組布構造の他、例えば、三軸組布構造等の任意の形状を例示できる。補強材料30としては、例えば、高強度ビニロンメッシュ(例えば土木用途)や、ビニロン(例えば農業用途)、ポリエステル、ポリビニルアルコール等で形成された寒冷紗等の網材が好ましい。これらの補強材料30によれば、構造物用シート22の弾性域を広げ易くできる。また、構造物用シート22に適度な剛性を付与し易くできる。更に、構造物用シート22の取扱性を改善できる。
【0066】
例えば、補強材料30の線ピッチは、50mm以上1.2mm以下の値が好ましい。言い換えると、例えば、補強材料30の線密度は、0.2本/cm以上8.0本/cm以下の値が好ましい。このような補強材料30によれば、構造物用シート22の引張強度を確保しつつ、構造物用シート22に剛性を付与し易くできる。
【0067】
補強材料30は、例えば、中間層26を平面視したとき、中間層26の全面をカバーする大きさを有していてもよいし、中間層26よりも小さい大きさを有していてもよい。すなわち、平面視したときの補強材料30の面積は、平面視したときの中間層26の面積と同等、又は、中間層26の前記面積より小さくてもよい。
【0068】
平面視したときの補強材料30の面積(平面視面積)は、例えば、中間層26の平面視面積に対し60%以上95%以下の値であることが好ましい。補強材料30の平面視面積が60%以上の値であれば、例えば、構造物用シート22の剛性を確保し易くなり、構造物用シート22の伸び率も制御し易くできる。また、構造物用シート22の異なる領域での剛性のバラツキも抑制し易くできる。また、補強材料30の平面視面積が95%以下の値であれば、例えば、構造物用シート22の厚み方向で補強材料30を挟むように中間層26が形成された場合、中間層26の全体において、中間層26に対する補強材料30の接着強度を確保し易くできる。尚、補強材料30の平面視面積は、公知の方法で測定できる。
【0069】
補強材料30の厚みは、例えば、中間層26の厚みに対して10%以上の値である。補強材料30の厚みは、中間層26の厚みに対して、例えば、20%以上の値が好ましく、30%以上の値がより好ましく、40%以上の値が特に好ましく、50%以上の値が最も好ましい。一方、補強材料30の厚みは、例えば、中間層26の厚みに対して80%以下の値である。補強材料30の厚みは、中間層26の厚みに対して、例えば、70%以下の値が好ましく、60%以下の値がより好ましく、55%以下の値が特に好ましい。このような中間層26の厚みの設定により、構造物用シート22に適度な剛性を付与し易くできる。
【0070】
更に、補強材料30の厚みと中間層26の厚みとを前記関係を有するように設定することで、本開示の構造物用シート22は、粘着層28と中間層26との密着性に優れ、適切な剛性を有するように構成できる。よって、構造物の屋根等に構造物用シート22を貼り合せる際に優れた取扱性が得られ、シワや、構造物の屋根等との隙間を生じることなく、構造物を長期にわたって構造物用シート22により保護できる。例えば、中間層26の厚みに対する補強材料30の厚みの下限は、45%が好ましく、当該厚みの上限は、55%が好ましい。
【0071】
図9において矢印T2は、中間層26の厚さを表す。シート22の剛性の観点から、厚さT2は100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、300μm以上が特に好ましい。シート22の生産性及び軽量の観点から、厚さT2は1500μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、700μm以下が特に好ましい。構造物用シート22が、2以上の中間層26を有してもよい。構造物用シート22が、中間層26を含まない層構造を有してもよい。
【0072】
[用途]
このシート22は、図1-7に示されたシート2と同様、屋根の補修に適している。このシート22はさらに、図1-7に示されたシート2と同様、住宅の壁、柱、軒、塀、門、扉、パラペット、並木等に用いられうる。このシート22が、商用ビルディング、工場、倉庫、橋梁、下水施設、鉄道施設、トンネル等に用いられてもよい。
【0073】
[貯蔵弾性率]
前述の通り、粘着層28の材質は、図1-7に示されたシート2の粘着層8の材質と、同じである。従って、この粘着層28の貯蔵弾性率G'(1)及びG'(2)は、粘着層8のそれらと同じである。このシート22では、せん断変形が抑制されうる。さらにこのシート22は、下地及び他のシート22の機能層24から、剥離しにくい。
【0074】
[密度]
シート22の密度は4.0g/cm以下が好ましく、3.0g/cm以下がより好ましく、2.5g/cm以下が特に好ましい。
【0075】
<第3実施形態>
[層構造]
図10に、第3実施形態に係る構造物用シート32が示されている。このシート32は、機能層34及び粘着層36を有している。機能層34の材質は、図1-7に示されたシート2の機能層4の材質と同じである。粘着層36の材質、厚さ等の構成は、図1-7に示されたシート2の粘着層8のそれらと同じである。このシート32は、構造物に貼り付けられる。シート32が、離型紙又は離型フィルムを有してもよい。離型紙及び離型フィルムは、粘着層36と積層される。
【0076】
[用途]
このシート32は、図1-7に示されたシート2と同様、屋根の補修に適している。このシート32はさらに、図1-7に示されたシート2と同様、住宅の壁、柱、軒、塀、門、扉、パラペット、並木等に用いられうる。このシート32が、商用ビルディング、工場、倉庫、橋梁、下水施設、鉄道施設、トンネル等に用いられてもよい。
【0077】
[貯蔵弾性率]
前述の通り、粘着層36の材質は、図1-7に示されたシート2の粘着層8の材質と、同じである。従って、この粘着層36の貯蔵弾性率G'(1)及びG'(2)は、粘着層8のそれらと同じである。このシート32では、せん断変形が抑制されうる。さらにこのシート32は、下地及び他のシート32の機能層34から、剥離しにくい。
【0078】
[密度]
シート32の密度は4.0g/cm以下が好ましく、3.0g/cm以下がより好ましく、2.5g/cm以下が特に好ましい。
【0079】
<その他の補足事項>
[構造物用シートの剛性について]
構造物用シート2は、例えば、構造物への貼付の際の取扱い性を確保するとの観点から、折曲げに耐えうる剛性を有することが好ましい。このため例えば、構造物用シート2は、貼付面側に配置された第1層、及び、貼付面とは反対側に配置された第2層の少なくともいずれかを所定の剛性を有するように構成されていてもよい。或いは構造物用シート2は、貼付面側に配置された第1層と、貼付面とは反対側に配置された第2層と、第1層と第2層との間に配置された第3層とを備え、第3層が所定の剛性を有するように構成されていてもよい。以下、具体的に説明する。
【0080】
構造物用シート2の貼付面側に配置された第1層としては、粘着層8を例示できる。粘着層8に剛性を付与する方法としては、粘着層8を、粘着剤とフィラーとを含むように構成する方法を例示できる。この場合、粘着層8は、例えば、アクリル、シロキサン結合を有するシリコーン、ゴム、ウレタン系等のガラス転移温度(Tg)が比較的低く且つファンデルワールス力や静電気力を利用できる粘着剤と、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等のフィラーを含む。例えば、粘着層8のフィラーの添加量及びフィラーの粒子形状の少なくともいずれかを調整することで、粘着層8の剛性を制御できる。具体的にフィラーの粒子形状としては、球状、針状、不定形、テトラポット形状等を例示できる。また、機能層4の厚みを調整することで、構造物用シート2の剛性を制御できる。また、機能層4中の粘着剤のTgを調整することで、構造物用シート2の剛性を制御できる。
【0081】
構造物用シート2の表面側に配置された層、即ち、構造物用シート2の貼付面とは反対側に配置された第2層としては、機能層4を例示できる。機能層4に剛性を付与する方法として、機能層4を、主材と、フィラーとを含むように構成する方法を例示できる。この場合、機能層4は、例えば、アクリルシリコーン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、非ジエン系ゴム等の主材と、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カーボンブラック等のフィラーとを含む。例えば、機能層4のフィラーの添加量及びフィラーの粒子形状の少なくともいずれかを調整することで、機能層4の剛性を制御できる。具体的にフィラーの粒子形状としては、球状、針状、不定形、テトラポット形状等を例示できる。また、機能層4の厚み、及び、機能層4の主材のTgの少なくともいずれかを調整することで、構造物用シート2の剛性を制御できる。このように構造物用シート2では、粘着層8及び機能層4の少なくともいずれかは、フィラーを含んでいてもよい。
【0082】
貼付面側に配置された第1層(例えば粘着層8)と、貼付面とは反対側に配置された第2層(例えば機能層4)と、第1層と第2層との間に配置された第3層とを備え、第3層が所定の剛性を有するように構成された構造物用シート2において、第3層に剛性を付与する方法としては、例えば、第3層を後述する中間層6として構成し、中間層6に剛性を付与する方法がある。
【0083】
更に、中間層6が含有する樹脂成分のTgを調整することでも構造物用シート2の剛性を制御できる。また、中間層6中の空隙の量や空隙の径を調整することでも構造物用シート2の剛性を制御できる。また、構造物用シート2が複数の中間層6を備える場合、例えば、Tgが所定の値である樹脂成分を含む第1の中間層6と、第1の中間層6に含まれる樹脂成分よりも低いTgを有する樹脂成分を含む第2の中間層6とを備えていてもよい。
【0084】
構造物用シート2の剛性を確保する観点から、中間層6の厚みは、例えば100μm以上の値である。中間層6の厚みは、例えば、200μm以上の値が好ましく、300μm以上の値がより好ましく、350μm以上の値が最も好ましい。一方、生産性等も考慮すると、中間層6の厚みは、例えば1500μm以下の値である。中間層6の厚みは、1200μm以下の値が好ましく、1000μm以下の値がより好ましく、750μm以下の値が最も好ましい。このように、中間層6の厚みを適宜調整することで、構造物用シート2の適切な剛性が得られる。
【0085】
中間層6の材料として、樹脂成分、モルタル成分、及び補強材料30を使用する場合、具体例として、樹脂成分としては、菊水化学工業(株)製スプリングコート(ハケ)混和液を利用できる。またモルタル成分としては、菊水化学工業(株)製スプリングコート(ハケ)粉体を利用できる。また、補強材料30(メッシュ成分)としては、ユニチカ(株)製のビニロン系網材(寒冷紗(BINEO(登録商標)「V520」))を利用できる。
【0086】
[補強材料の詳細]
構造物用シート2の内部構造を制御するため、前述したように、中間層6の内部に補強材料30を配置することが好ましい。この場合、中間層6の補強材料30の含有量を変化させることで、構造物用シート2の内部構造を制御できる。また、構造物用シート2が複数の層を備える場合、構造物用シート2は、内部に配置された層構造の補強材料30を備えていてもよい。この場合、層構造の補強材料30により、構造物用シート2に所定の剛性が付与されることで、構造物用シート2の内部構造を制御できる。
【0087】
構造物用シート2が強度調整用のフィラーを含む場合、構造物用シート2に剛性を付与する具体的方法として、例えばフィラーの材質、構造物用シート2中のフィラーの添加量、フィラー粒子のサイズや形状の少なくともいずれかを制御する方法を例示できる。この場合、フィラーの材料は、無機材料又は有機材料のいずれでもよく、無機材料及び有機材料を混合してもよい。
【0088】
なお、補強材料30としては、不織布も利用できる。この場合、不織布としては、繊維を織らずにシート状に形成した不織布であれば、特に限定されない。また、不織布を構成する繊維としては、天然繊維及び化学繊維の少なくともいずれかを例示できる。化学繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂からなる繊維、及び、これら樹脂の共重合物、変性物、及び、これらの組合せからなる合成繊維を例示できる。これらの中でも、耐水性、耐熱性、寸法安定性、耐候性等に優れる繊維として、例えばポリエステル繊維が好ましい。
【0089】
また構造物用シート2に剛性を付与する具体的方法として、構造物用シート2の厚みを制御してもよい。また、中間層6を備える構造物用シート2の場合、中間層6の粘弾性を調節することでも構造物用シート2の剛性を制御できる。この場合、中間層6が含む樹脂のガラス転移点温度(Tg、以下単にTgとも称する。)を調節したり、当該樹脂の架橋度を変化したりすることで、中間層6の粘弾性を調節してもよい。このように、構造物用シート2の剛性を制御する方法として様々な方法を利用できる。
【0090】
<その他の実施形態>
以下、構造物用シート2の更なる構成を例示する。図12は、第4実施形態に係る構造物用シートを模式的に示す断面構成図である。本実施形態の構造物用シート2は、前述した離型フィルム9を第1離型フィルム9とするとき、機能層44の粘着層48側とは反対側に配置された第2離型フィルム17を備える。一例として、構造物用シート2は、厚み方向において、第1離型フィルム9、粘着層48、中間層46、機能層44、及び第2離型フィルム17が、この順に配置されている。
【0091】
第2離型フィルム17は、外部に露出する表面17aが、第1離型フィルム9の外部に露出する表面9aと接触した際、表面17a、9a同士が固着しにくいように構成されている。このため、後述するシート2を巻回したロール体51(図15参照)から構造物用シート2を繰り出す際、第1離型フィルム9を第2離型フィルム17から容易に離して、構造物用シート2を簡単に繰り出すことができる。
【0092】
また第2離型フィルム17は、所定の剛性を有する。このため、第1離型フィルム9が剥離除去された残余の構造物用シート2の剛性を向上できる。従って、第1離型フィルム9及び第2離型フィルム17が剥離除去された残余の構造物用シート2の剛性が低い場合でも、シート2を貼り付ける際の取扱性を向上できると共に、構造物の表面に構造物用シート2を容易に貼付できる。また、第1離型フィルム9及び第2離型フィルム17が剥離除去された残余の構造物用シート2を、剛性を比較的小さい構成に設計できる。このため例えば、構造物用シート2が貼付される構造物の表面の形状が、凹凸や欠陥による高低差により平坦でない場合でも、構造物用シート2を当該表面に良好に追従させて貼付できる。また例えば、当該表面に対するアンカー効果を向上できるため、許容される範囲内で構造物用シート2の粘着力を十分に向上できる。
【0093】
第2離型フィルム17の構造は、適宜設定できる。例えば図12に示すように、第2離型フィルム17は、構造物用シート2がロール状に巻回された際に第1離型フィルム9と接触する接触層11と、構造物用シート2が平坦に配置された状態において、接触層11の第1離型フィルム9側に配置された微粘着層13とを有する。
【0094】
接触層11は、単一層により構成されていてもよいし、複数層により構成されていてもよい。また接触層11は、樹脂を含有していてもよい。言い換えると接触層11は、樹脂層でもよい。接触層11が含有する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ナイロン6、アラミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、セルロースアセテート等のセルロース樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂、ウレタン等を例示できる。
【0095】
或いは接触層11は、繊維成分と、繊維成分を結合するバインダ成分を含む繊維層でもよい。或いは接触層11は、紙を含有していてもよい。この場合、接触層11は、紙を主成分として含有していてもよいし、所定の主成分と共に紙を含有していてもよい。接触層11が紙を含有する場合、接触層11は、例えば、構造物用シート2を施工対象に貼付する際に接触層11が不用意に破れない程度の強度を有する紙を含有することが好ましい。また接触層11が紙を含有する場合、接触層11は、例えば、紙と共に、シロキサン結合を有するシリコーンを含有することが好ましい。接触層11は、例えば、離型フィルム9と第2離型フィルム17とが省略され且つ接触層11と微粘着層13が省略された残余の構造物用シート2の部分に比べて、高い剛性を有する。
【0096】
接触層11の厚みは、適宜設定可能であるが、例えば20μm以上500μm以下の値である。接触層11がポリエチレンテレフタレート(PET)を含む場合、接触層11の厚みは、例えば20μm以上50μm以下の値が好ましい。
【0097】
微粘着層13は、比較的低い粘着力を有する。例えば、微粘着層13の機能層44に対する粘着力は、粘着層48の中間層46に対する粘着力よりも低い。また例えば、微粘着層13の接触層11に対する粘着力は、微粘着層13の機能層44に対する粘着力よりも高い。微粘着層13は、例えば静電気により、機能層44に被着されていてもよい。微粘着層13は、Tgが実質的に0である主成分を含有していてもよい。微粘着層13は、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ウレタン、シロキサン結合を有するシリコーン、アクリル等を含有していてもよい。なお、第2離型フィルム17は、上記した構成に限定されず、例えば、後述するベースフィルム39であってもよい。
【0098】
図13は、第5実施形態に係る構造物用シート2を模式的に示す断面構成図である。本実施形態の構造物用シート2は、機能層44の粘着層48側とは反対側に配置された離型シート29を備える。一例として、構造物用シート2は、厚み方向において、粘着層48、中間層46、機能層44、及び離型シート29が、この順に配置されている。本実施形態の構造物用シート2では、離型フィルム9は省略されている。
【0099】
離型シート29は、外部に露出する表面29a及びその近傍に配置された離型剤を含有する。離型剤としては、例えば、シロキサン結合を有するシリコーンを例示できる。これにより、ロール体51において、離型シート29の外部に露出する表面29aが、粘着層48の貼付面48aと接触した際、表面29a及び貼付面48aが互いに固着しにくいように構成されている。このため、ロール体51から構造物用シート2を繰り出す際、粘着層48を離型シート29から容易に剥離して、構造物用シート2を簡単に繰り出すことができる。
【0100】
このように本開示では、ロール体51から構造物用シート2を繰り出す際、例えば、構造物用シート2の粘着成分が設けられた部分が構造物用シート2の他の部分に付着して取り出しにくくならないように、予め構造物用シート2がロール体51から繰り出し易くされていてもよい。また離型シート29は、所定の剛性を有する。このため本実施形態では、離型フィルム9が省略されていても、構造物用シート2の剛性を向上できる。従って、構造物用シート2の取扱性を向上させ、構造物の貼付対象に構造物用シート2を容易に貼付できる。この場合、離型シート29は、離型シート29が剥離除去された残余の構造物用シート2に比べて、高い剛性を有する。
【0101】
離型シート29の構造は、適宜設定できる。例えば図13に示すように、離型シート29は、構造物用シート2がロール状に巻回された際に粘着層48の貼付面48aと接触する表面29aを有する離型中間層15と、構造物用シート2が平坦に配置された状態において、離型中間層15の粘着層48側に配置された微粘着層13とを有する。離型中間層15は、例えば離型剤を含有する点以外は、接触層11と同様の構成を有していてもよい。また離型シート29は、表面29aに重ねて配置された離型剤層を有していてもよい。
【0102】
図14は、第6実施形態に係る構造物用シート2を模式的に示す断面構成図である。本実施形態の構造物用シート2は、平坦に配置された状態において、機能層44の粘着層48側とは反対側に配置されたベースフィルム39を備える。ベースフィルム39は、前述した機能層4の形成時に使用されるベースフィルムである。本実施形態の構造物用シート2は、機能層44の形成後も剥離されることなくベースフィルム39を備えている。
【0103】
一例として、構造物用シート2は、厚み方向において、離型フィルム9、粘着層48、中間層46、機能層44、及びベースフィルム39が、この順に配置されている。ベースフィルム39の外部に露出する表面39aと、離型フィルム9の外部に露出する表面9aとは、互いに接触した際、固着しにくいように構成されている。このため、ロール体51から構造物用シート2を繰り出す際、構造物用シート2を簡単に繰り出すことができる。またベースフィルム39は、所定の剛性を有する。この場合、ベースフィルム39は、離型フィルム9及びベースフィルム39が剥離除去された残余の構造物用シート2に比べて、高い剛性を有する。このため、離型フィルム9が剥離除去された残余の構造物用シート2において、ベースフィルム39により構造物用シート2の剛性を向上できる。従って、第1離型フィルム9及びベースフィルム39が剥離除去された残余の構造物用シート2の剛性が低い場合でも、構造物用シート2の取扱性を向上できると共に、構造物の貼付対象に構造物用シート2を容易に貼付できる。
【0104】
なおベースフィルム39は、互いに貼付された2部材を剥がすと二度と接着できない性質である疑似接着性を有する樹脂ラミネート紙を含有していてもよい。この場合、例えば、ベースフィルム39が、樹脂層と紙とを積層した樹脂ラミネート紙を含有し、樹脂ラミネート紙中で、樹脂層と紙とが疑似接着により接着されていてもよい。この構成によれば、樹脂層が機能層44に被着した状態で、樹脂ラミネート紙中の紙を樹脂層から剥離すると、紙のみが剥離除去され、樹脂層が構造物用シート2の機能層44に被着した状態で残留する。
【0105】
次に、第4~第6実施形態において、構造物用シート2を構造物に貼付することにより構造物の補強又は修復を行う施工方法について例示する。本施工方法において、作業者は、必要な長さの構造物用シート2をロール体51から繰り出す。次に作業者は、第4及び第6実施形態の場合、構造物用シート2の離型フィルム9を剥離しつつ、露出した粘着層48の貼付面48aを構造物の貼付対象の表面に貼付する。このとき作業者は、構造物用シート2から離型フィルム9を少しずつ剥離させながら、露出した粘着層48の貼付面48aを貼付対象の表面に貼付してもよい。他方で作業者は、第5実施形態の場合、構造物用シート2の粘着層48の貼付面48aを構造物の貼付対象の表面に貼付する。
【0106】
その後、作業者は、第4~第6実施形態の場合、構造物用シート2を貼付対象に貼付した後、構造物用シート2から、対応する第2離型フィルム17、離型シート29、及び、ベースフィルム39のいずれかを剥離除去する。
【0107】
即ち第4~第6実施形態に係る本施工方法は、構造物用シート2がロール状に巻回されたロール体51を準備する準備工程と、ロール体51から構造物用シート2を繰り出す繰出工程と、繰り出された構造物用シート2から第1離型フィルム9を剥離すると共に、外部に露出した貼付面を構造物の表面に貼付する貼付工程とを有する。ここで第4及び第6実施形態の準備工程では、第1離型フィルム9により貼付面48aが覆われた構造物用シート2を用いてロール体51を準備する。
【0108】
また本施工方法では、準備工程で準備されるロール体51の構造物用シート2が、機能層44と粘着層48とを含む積層構造を有し、機能層44の粘着層48側とは反対側には、被覆シートが配置され、ロール体51では、この被覆シートを含む構造物用シート2がロール状に巻回されており、貼付工程中又は貼付工程後に、被覆シートが剥離除去されてもよい。この被覆シートは、第2離型フィルム17、離型シート29、及び、ベースフィルム39のいずれかであってもよい。
【0109】
また第4実施形態の施工方法では、準備工程で準備されるロール体51の構造物用シート2が、機能層44と粘着層48とを含む積層構造を有すると共に、機能層44の粘着層48側とは反対側に配置され且つ離型フィルム9とは別の離型シート29を有し、準備工程では、離型シート29が粘着層48と接触するように構造物用シート2がロール状に巻回されたロール体51を準備してもよい。
【0110】
本開示の構造物用シート2を使用する際、例えば、以下に示す供給物品45を利用できる。図15は、本開示の構造物用シート2を収容した供給物品45の構造を示す模式図である。図15では、一例として、離型フィルム9を備える構造物用シート2を示している。図15に示される供給物品45は、帯状の構造物用シート2が巻回されたロール体51と、ロール体51を収容する収容空間50aを有する容器50とを備える。容器50は、収容空間50aに収容されたロール体51から外部に構造物用シート2を繰り出して供給可能な供給口50bを有する。供給口50bは、ロール体51の軸方向における構造物用シート2の幅寸法と同等以上の幅寸法を有する。
【0111】
作業者は、例えば供給物品45を施工現場に搬入し、供給物品45から必要な長さの構造物用シート2を繰り出して、構造物用シート2を施工に用いることができる。従って供給物品45によれば、構造物用シート2を保管に適したロール体51の形態で保存できる。更に、構造物用シート2の使用時には必要な分だけ供給物品45から繰り出して使用できる。よって、作業効率の向上を図れる。
【0112】
また作業者は、供給口50bから構造物用シート2を繰り出す際、例えば、構造物用シート2の幅方向の全体領域を供給口50bの開口周縁に押し付けながら構造物用シート2を繰り出すことにより、構造物用シート2の幅方向の全体領域に均一な張力を付与しながら構造物用シート2を繰り出すことができる。これにより、構造物の表面に対して構造物用シート2を均一な張力で貼付できる。従って、貼付後の構造物用シート2に不均一な張力が作用することで、貼付後の構造物用シート2の予期せぬ収縮や膨張が発生するのを防止できる。なお、構造物用シート2の幅方向の全体領域に均一に張力を付与するために、例えば供給口50bの開口周縁に、構造物用シート2の幅方向に延びて構造物用シート2と接触する長尺部材等の別部材を配置してもよい。
【0113】
また、供給物品45が備える構造物用シートは、本開示の構造物用シートであればよく、例えば、第4~第6実施形態のいずれかの構造物用シート2、或いはその他の実施形態の構造物用シート2であってもよい。
【0114】
<実施例>
以下、実施例に係る構造物用シートの効果が明らかにされる。この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
100質量部のアクリル樹脂(前述の商品名「オリバインBPS5565K」)に、2.0質量部の粘着付与剤(前述の商品名「エステルガム AAV」)を添加し、さらに6.0質量部のイソシアネート硬化剤(トーヨーケム(株)製の商品名「BHS8515」)を添加することにより、粘着剤組成物Aを得た。この粘着剤組成物Aを用いて、厚さ2.0mmの粘着層を形成し、貯蔵弾性率を測定した。実施例1に係る粘着層の、80℃における貯蔵弾性率G'(1)は8.4×10Paであり、-10℃における貯蔵弾性率G'(2)は5.8×10Paであった。
【0115】
また、リンテック(株)製PPラミネートシートである厚み130μmのベースフィルムを準備した。このベースフィルム上に、アクリル系樹脂を含む機能層形成用組成物(大日精化工業(株)製の商品名「クールライフSP ブラック(CB1)P5-0」と、藤倉化成(株) 製エフシーコート水性シリコン弾性黒を重量比50:50で混ぜたもの)を塗工した。形成した塗膜を乾燥することにより、単一層により構成される厚み110μmの機能層を形成した。
【0116】
次いで、中間層形成用組成物(菊水化学工業(株)製の商品名「スプリングコート(コテ)」のセメントと混和液を60:40で混ぜた混合物を調整した。この混合物を、機能層上に塗工した。この 混合物の塗膜の表面に、ビニロン系網材(クラレ(株)製寒冷紗である商品名「クレモナ」、♯600(600番、厚み230μm)を押し付けるように配置した。これにより、塗膜を硬化させて、硬化後の厚みが450μmである中間層を機能層の上に形成した。その後、粘着層を機能層及び中間層と組み合わせることにより、図1-3に示された構造物シートを、実施例1にかかる構造物用シートとして作製した。
【0117】
[実施例2-5並びに比較例1-3]
粘着付与剤の種類及び量を下記の表1に示される通りに変更した他は、実施例1と同様にして、実施例2-5並びに比較例1-3の構造物用シートを作製した。実施例2-5並びに比較例1-3の構造物用シートが備える粘着層の、80℃における貯蔵弾性率G'(1)、及び-10℃における貯蔵弾性率G'(2)は、下表1に示されている。
【0118】
[実施例6]
2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)とアクリル酸(AA)とを、モル比(2-EHA/AA)が97/3となるように酢酸エチル中で混合した後、架橋剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加して溶液重合を行うことにより、アクリル系ポリマーを合成した。得られたアクリル系ポリマーを、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定した結果、重量平均分子量Mw412,000、数平均分子量Mn42,000、分子量分布Mw/Mn9.8であった。なお、GPC測定は、溶離液:テトラヒドロフラン、温度:40℃で行った。
【0119】
得られたアクリル系ポリマー100質量部に対して、1.0質量部の粘着付与剤(荒川化学工業(株)製の重合ロジン、商品名「アラダイムR-95」)を添加し、1.0質量部の硬化剤(三菱ガス化学トレーディング(株)製の商品名「テトラッドC」)をさらに添加することにより、粘着剤組成物Mを得た。この粘着剤組成物Mを用いた以外は実施例1と同様にして、貯蔵弾性率を測定するための粘着層及び構造物用シートを実施例6として作製した。実施例6の構造物用シートが有する粘着層の、80℃における貯蔵弾性率G'(1)は1.4×10Paであり、-10℃における貯蔵弾性率G'(2)は2.6×10Paであった。
【0120】
[せん断試験]
図11に示されたプレート38を、準備した。このプレート38の材質は、スチールであった。このプレート38では、幅は30mmであり、長さは50mmであった。一方、構造物用シートから、幅が15mmであり長さが50mmである試験片40を、切り出した。このプレート38及び試験片40を、温度が80℃である恒温槽に投入し、30分間静置した。図11に示されるように、重なりの長さが15mmとなるように、プレート38に試験片40を重ねた。プレート38には、粘着層が当接した。プレート38と粘着層との当接面積は、2.25cmであった。質量が2kgであるローラを、試験片40の上で1往復転動させて、試験片40をプレート38に堅固に貼り付けた。このプレート38及び試験片40を、温度が80℃である恒温槽に投入し、30分間静置した。温調器が取り付けられた引張試験機に、このプレート38及び試験片40をセットし、引張試験を行った。この試験では、試験片40が、プレート38に対し、矢印A1で示される方向に、相対的に引っ張られる。試験の条件は、以下の通りである。
温調器:(株)島津製作所製の商品名「THC1 WF-200T-X」
引張試験機:(株)島津製作所製の商品名「AGX-V」
試験温度:80℃
チャック間距離:50mm
引張速度:50mm/min
試験力の低下速度が1%/sに達した時点で測定を終了し、最大試験力(N)を求めた。この最大試験力を当接面積(2.25cm)で除して、せん断力(N/cm)を算出した。この結果が、下記の表1に示されている。
【0121】
[ピール試験]
「JIS Z0237:2022 10.1」の規定に準拠して準備された試験片を用い、「JIS Z0237:2022 11.5」の規定に準拠して、180°ピール試験を行い、粘着力(N/25mm)を測定した。試験の条件は、以下の通りである。
試験機:(株)島津製作所製の商品名「オートグラフAGX-V」
試験温度:-10℃
試験速度:300mm/min
この結果が、下記の表1に示されている。
【0122】
【表1】
【0123】
[実施例7-12]
【0124】
粘着層の厚さを下表2に示される数値に変更した以外は実施例1と同様に設定して、実施例7-12の構造物用シートを作製した。実施例1-12の構造物用シートが備える粘着層の、80℃における貯蔵弾性率G'(1)、及び-10℃における貯蔵弾性率G'(2)は、下表2に示されている。また、実施例7-12の構造物用シートのそれぞれについて、前述した[せん断試験]及び[ピール試験]を行い、せん断力(N/cm)及び粘着力(N/25mm)を求めた。得られた結果は、下表2に示されている。比較のために、粘着層の厚さが100μmである実施例1の結果を表2に併記した。
【0125】
【表2】
【0126】
表1から明らかな通り、各実施例の構造物用シートは、80℃の環境下にて、十分に大きいせん断力を発揮する。これらのシートはさらに、-10℃の環境下にて、十分に大きい粘着力を発揮する。さらに、表2から明らかな通り、各実施例の構造物用シートでは、粘着層の厚さの変更によりせん断力及び粘着力を制御することができる。この評価結果から、本開示に係る構造物用シートの優位性は明らかである。
【0127】
[開示項目]
【0128】
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態を開示する。
【0129】
[項目1]
機能層と粘着層とを備えており、
上記粘着層の、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、-10℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である、構造物用シート。
【0130】
[項目2]
上記粘着層の材質が粘着剤組成物であり、この組成物の基材がアクリル樹脂である、項目1に記載の構造物用シート。
【0131】
[項目3]
上記粘着剤組成物がイソシアネート硬化剤を含む、項目2に記載の構造物用シート。
【0132】
[項目4]
上記粘着剤組成物が粘着付与剤を含む、項目2又は3に記載の構造物用シート。
【0133】
[項目5]
上記粘着層の厚さが30μm以上300μm以下である、項目1から4のいずれかに記載の構造物用シート。
【0134】
[項目6]
【0135】
80℃におけるせん断力が、14.0N/cm以上であり、且つ、-10℃における粘着力が、4.0N/25mm以上である、項目1から5のいずれかに記載の構造物用シート。
【0136】
[項目7]
【0137】
前記機能層と前記粘着層との間に配置された中間層を更に備える、項目1から6のいずれかに記載の構造物用シート。
【0138】
[項目8]
【0139】
前記中間層は、補強材料を含む、項目7に記載の構造物用シート。
【0140】
[項目9]
前記機能層及び前記粘着層の少なくともいずれかは、フィラーを含む、項目7又は8に記載の構造物用シート。
【0141】
[項目10]
【0142】
前記粘着層の前記機能層側とは反対側の面に配置された離型フィルムを備える、項目1から9のいずれかに記載の構造物用シート。
【0143】
[項目11]
構造物の補修又は補強の方法であって、
(1)機能層と、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり-10℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である粘着層とを有する、第1シートを準備する工程、
(2)機能層と、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり-10℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である粘着層とを有する、第2シートを準備する工程、
(3)上記第1シートの上記粘着層の粘着力により、上記構造物の表面に上記第1シートを貼り付ける工程、
及び
(4)上記第1シートの縁の近傍に上記第2シートの一部を重ねつつ、上記第2シートの上記粘着層の粘着力により、上記第1シートの表面及び上記構造物の表面に、上記第2シートを貼り付ける工程
を備えた、構造物の補修又は補強の方法。
【0144】
[項目12]
屋根の補修の方法であって、
(1)それぞれが、機能層と、80℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり-10℃における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下である粘着層とを有する、複数のシートを準備する工程、
及び
(2)それぞれのシートの上記粘着層の粘着力により、上記屋根の表面にこのシートを貼り付けて、上記複数のシートによって上記屋根の表面の全体を覆う工程
を備えた、屋根の補修又は補強の方法。
【0145】
本開示の構成は、前記実施形態及び前記実施例のものに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、その構成及び方法を変更、追加、又は削除できる。本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。例えば、1つの実施形態又は実施例に記載の構成の一部を、他のいずれかの実施形態又は実施例に記載の構成に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上説明された構造物用シートは、種々の物体に貼り付けられて使用されうる。
【符号の説明】
【0147】
2・・・構造物用シート
2a・・・第1シート
2b・・・第2シート
4・・・機能層
4a・・・第1シートの機能層
4b・・・第2シートの機能層
6・・・中間層
6a・・・第1シートの中間層
6b・・・第2シートの中間層
8・・・粘着層
8a・・・第1シートの粘着層
8b・・・第2シートの粘着層
10・・・屋根
18・・・継ぎ目
20・・・プライマー層
22・・・構造物用シート
24・・・機能層
26・・・中間層
28・・・粘着層
30・・・補強材料
32・・・構造物用シート
34・・・機能層
36・・・粘着層
38・・・プレート
40・・・試験片
44・・・機能層
46・・・中間層
48・・・粘着層
図1
図2
図3
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