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特開2024-159640優れたバリア特性を有する膨張性マイクロスフェア
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  • 特開-優れたバリア特性を有する膨張性マイクロスフェア 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159640
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】優れたバリア特性を有する膨張性マイクロスフェア
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20241031BHJP
   B01J 13/16 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09K3/00 111B
B01J13/16
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071029
(22)【出願日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】23170863
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マグヌス
(72)【発明者】
【氏名】エクマーカー,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】キリアキドウ,デスピナ
【テーマコード(参考)】
4G005
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005DA05W
4G005DA12W
4G005DC02W
4G005DC34Y
4G005DC41Y
4G005DE04W
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れたバリア特性及び熱安定性を有する、ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを提供する。
【解決手段】ポリマーシェルはエチレン性不飽和モノマーから作製され、プロペラントを封入し、エチレン性不飽和モノマーは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアは、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの総重量に基づいて、5~17重量%の量でプロペラントを含む。本発明は、こうした熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア、及びこうした熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを含む水性スラリーを調製するためのプロセスに更に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアであって、前記ポリマーシェルがエチレン性不飽和モノマーから作製され、前記プロペラントを封入し、前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアが、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの前記総重量に基づいて、5~17重量%の量で前記プロペラントを含む、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、50~75重量%、好ましくは、53~70重量%、最も好ましくは、55~65重量%の量で、アクリロニトリルを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、15~40重量%、好ましくは、20~35重量%、最も好ましくは、22~30重量%の量で、メタクリロニトリルを含む、請求項1又は2に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、6~34重量%、例えば、7~33重量%、8~32重量%、又は10~30重量%、好ましくは、12~25重量%、及び最も好ましくは、13~23重量%の量で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和モノマーが、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも多くのメタクリロニトリル、好ましくは、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも少なくとも1重量%多いメタクリロニトリル、更により好ましくは、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも少なくとも1重量%多いメタクリロニトリルを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項6】
前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアが、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの前記総重量に基づいて、7~16重量%、好ましくは、9~15重量%、最も好ましくは、10~14重量%の量で、前記プロペラントを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和モノマーが、アクリル酸メチルを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和モノマーが、5重量%未満、好ましくは、2重量%未満、及び更により好ましくは、1重量%未満の、ハロゲン含有モノマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項9】
前記プロペラントが、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つ、好ましくは、イソブタンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項10】
前記プロペラントが、50~100重量%のイソブタンを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項11】
5~30μm、好ましくは、7~28μm、より好ましくは、8~25μm、最も好ましくは、10~20μmの、平均粒子径を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項12】
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、0.1~6.0重量%の一つ以上の架橋剤、好ましくは、0.2~1.0重量%を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項13】
ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを調製するためのプロセスであって、重合混合物中のプロペラントの存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合する工程を含み、前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、前記プロペラントが、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つを含み、前記エチレン性不飽和モノマー及び前記プロペラントの総重量に基づいて、5~30重量%の量で存在する、プロセス。
【請求項14】
前記重合混合物が、無機粒子、好ましくは、水酸化マグネシウム又はコロイダルシリカ、より好ましくは、コロイダルシリカを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の、又は請求項13及び14のいずれかに記載の方法から得られる、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを含む、水性スラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアから作製された、優れたバリア特性及び熱安定性を有する、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア及び膨張性マイクロスフェアに関する。本発明は、こうした熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア、及びこうした熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを含む水性スラリーを調製するための方法に更に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張可能なマイクロスフェアは、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第3615972号、国際特許公開第00/37547号、及び国際特許公開第2007/091960号に記載される。いくつかの実施例は、Expancel(登録商標)という商標名で販売されている。これらは、極めて低重量及び低密度の充填剤を形成するように膨張させることができ、また、発泡樹脂又は低密度樹脂、塗料及びコーティング、セメント、インク、並びにひび割れ充填剤などの用途での使用を、見出すことができる。多くの場合、膨張可能なマイクロスフェアを含有する消費財としては、軽量の靴底(例えば、ランニングシューズ用)、壁紙などのテクスチャ付き被覆材、太陽光反射性及び断熱コーティング、食品パッケージ封止材、ワインコルク、人工皮革、保護用ヘルメットライナー用発泡材、並びに自動車用ウェザーストリップが挙げられる。
【0003】
熱膨張可能なポリマーマイクロスフェアは、通常、熱可塑性ポリマーシェルを含み、中空コアは、加熱により膨張する、プロペラント(又は、場合によっては、発泡剤とも呼ばれる)を含む。プロペラントの例としては、加熱に伴い気化する、室温で凝縮又は液体のいずれかである、低沸点炭化水素又はハロゲン化炭化水素が挙げられる。膨張性マイクロスフェアを製造するためには、熱可塑性ポリマーシェルが軟化するように膨張性マイクロスフェアを加熱し、そして、プロペラントが気化及び膨張し、それによって、マイクロスフェアを膨張させる。典型的には、マイクロスフェアの直径は、膨張中に、1.5~8倍の間に増加してもよい。膨張可能なマイクロスフェアは、様々な形態で、例えば、乾燥自由流動粒子として、水性スラリーとして、又は部分的に脱水された湿潤ケーキとして市販されている。膨張可能なマイクロスフェアの加熱は、様々な技術を使用して実施されてもよい。一般的に使用される技術の1つは、マイクロスフェアが、沸点まで加熱される水中で膨張する、いわゆる湿潤膨張技術である。膨張により高い温度が必要な場合には、例えば、高エネルギー蒸気技術を使用して、膨張を実施してもよい。
【0004】
膨張可能なマイクロスフェアは、例えば、懸濁重合方法を使用して、プロペラントの存在下で、エチレン性不飽和モノマーを重合することによって、製造してもよい。典型的なモノマーとしては、アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、二塩化ビニリデン(VDC)などのハロゲン含有モノマー、及びスチレンに基づくものが挙げられる。通常、このようなモノマーの混合物は、コポリマーシェルを有する膨張可能なマイクロスフェアを製造するために使用される。
【0005】
VDC及びアクリロニトリル(AN)、又はAN及びメタクリロニトリル(MAN)のいずれかに基づく、コポリマーシェルを有する、膨張可能なマイクロスフェアは、多くの場合、湿潤熱膨張可能なマイクロスフェアの製造において使用される。これらのマイクロスフェアは、水がマイクロスフェアシェル内で可塑剤として作用し得るにもかかわらず、ポリマーシェルが、湿潤状態においても、カプセル化されたプロペラントに対して優れたバリア特性を有するという点で、区別される。ポリマーシェルが可塑化される場合、プロペラントは拡散によって失われ、マイクロスフェアの特性が低下する。これは、水環境中での膨張中に、又は湿潤膨張性熱膨張可能なマイクロスフェアの貯蔵中に、すでに見られ得る。
【0006】
ハロゲン含有マイクロスフェア、特にVDC含有マイクロスフェアは、ポリマーシェル内の結晶性ポリ塩化ビニリデン(PVDC)部分に起因して優れたバリア特性を有することが見出されており、これはまた、PVDCの疎水性の性質のため、水の可塑化効果を制限する。これらの膨張可能なVDC含有マイクロスフェアの別の利点は、低いガラス転移点(Tg)、すなわちポリマーシェルの低い軟化点による、比較的低い温度でのそれらの膨張であり、これは、沸騰水中での、これらの膨張可能なVDC含有マイクロスフェアの膨張を可能にする。しかしながら、これらのマイクロスフェアの主な欠点は、PVDCによるハロゲン含有量が高いことであり、これは、マイクロスフェアを持続可能から遠ざける。更に、多くの場合、VDCをPVDCに高変換に重合することは困難であるため、かなりの量で残留VDCのため、これらのVDC含有マイクロスフェアに関する、健康、安全性、及び環境(HSE)上の懸念がある。
【0007】
ハロゲン非含有のAN-co-MANポリマーシェルを用いて、これらの持続可能性、及びHSE上の問題を克服する試みがある。しかしながら、これらのマイクロスフェアは、典型的には、効率的な膨張のために150℃超の温度を必要とし、沸騰水を使用できないため、他の課題が生じる。代わりに、蒸気は、通常、膨張中のエネルギー源として使用される。これにより、膨張装置に対する要求がより高くなるため、これらのマイクロスフェアの使用はフレキシビリティが低くなり、高エネルギー蒸気で作業する際のHSE問題も生じる。更に、特に、例えば、国際特許公開第2007/091960 A1号に記載されるような、このようなハロゲン非含有の膨張可能なマイクロスフェアから作製された膨張性マイクロスフェアの貯蔵安定性に関して、いくつかの欠点があることが見出された。特に、湿潤膨張され、かつ膨張後に湿潤状態で貯蔵された、こうしたハロゲン非含有の膨張可能なマイクロスフェアの貯蔵安定性は、満足のいくものではないことが見出された。貯蔵安定性は、物流上及び経済的理由から、顧客は、膨張性マイクロスフェアのより大きなバッチを注文する傾向があり、その後、膨張性マイクロスフェアは、特定の期間にわたって、例えば、少なくとも3週間にわたって、好ましくは少なくとも4週間にわたって、より好ましくは少なくとも6週間にわたって使用されるため、商業的に非常に関連性の高い問題である。また、膨張性マイクロスフェアを製造現場から顧客に輸送する時間を、考慮に入れる必要がある。更に、膨張性マイクロスフェアが堅牢なマトリクスに完全に包埋されない、膨張性マイクロスフェアの多くの用途がある。このような用途では、膨張性マイクロスフェアの長期貯蔵安定性が重要である。
【0008】
湿潤マイクロスフェアの取扱いは、粉塵粉末である完全に乾燥したマイクロスフェアの取扱いよりもはるかに容易であるため、膨張性マイクロスフェアの湿潤貯蔵が好ましい。しかしながら、既に上述のように、水はポリマーシェルの可塑剤として作用し、したがって、ポリマーシェルのバリア特性を損ない、貯蔵安定性の低下をもたらす。
【0009】
したがって、ハロゲン含有モノマーを本質的に含まず、特にVDCを本質的に含まず、それでもなお、膨張後に優れたバリア安定性、及び非常に良好な貯蔵安定性を有する、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアに対するニーズが依然として存在する。更に、このような熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアが、好ましくは水性の湿潤膨張を使用することによって、より低い温度で膨張できることが望ましい。特に、ハロゲン含有モノマーを本質的に含まず、特にVDCを本質的に含まず、湿潤膨張することができ、湿潤膨張後、湿潤状態で貯蔵されている場合でも、膨張後に優れたバリア安定性、及び非常に良好な貯蔵安定性を有する、このような熱膨張可能なマイクロスフェアを提供することが望ましい。
【0010】
本発明は、したがって、こうした膨張可能なポリマーマイクロスフェアを見出すことを対象とし、そのポリマーシェルは、ハロゲン含有モノマーを本質的に含まず、特にVDCを本質的に含まず、それにも関わらず、膨張後に優れたバリア安定性、及び非常に良好な貯蔵安定性を有し、水性湿潤膨張を使用することなどによって、好ましくはより低い温度で膨張でき、湿潤膨張後に湿潤状態で保管されても、非常に良好な貯蔵安定性を有する。驚くべきことに、これらの目的は、膨張可能なマイクロスフェアに含有される特定の範囲の量のプロペラントと更に組合わされる、特定の範囲の量の膨張可能なマイクロスフェアのポリマーシェルのモノマーとの、特定の組み合わせによって、達成され得ることが見出された。
【発明の概要】
【0011】
第一の態様では、本発明は、ポリマーシェル及びプロペラントを含む、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを対象とし、ポリマーシェルは、エチレン性不飽和モノマーから作製され、プロペラントを封入し、エチレン性不飽和モノマーは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアは、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの総重量に基づいて、5~17重量%の量でプロペラントを含む。
【0012】
第二の態様では、本発明は更に、ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを調製するための方法を対象とし、方法は、重合混合物中のプロペラントの存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合する工程を含み、エチレン性不飽和モノマーは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、プロペラントは、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つを含み、エチレン性不飽和モノマー及びプロペラントの総重量に基づいて、5~30重量%の量で存在する。
【0013】
第三の態様では、本発明は更に、第一の態様による上記の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを含む水性スラリー、又は第二の態様による上記の方法から得られる水性スラリーを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、シングルコア(図1A)とマルチコア(図1B)の、マイクロスフェアの相違を図示する。
図2図2は、最大42日間の期間にわたる、実施例からの膨張性マイクロスフェアの貯蔵安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第一の態様では、本発明は、ポリマーシェル及びプロペラントを含む、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを対象とし、ポリマーシェルは、エチレン性不飽和モノマーから作製され、プロペラントを封入し、エチレン性不飽和モノマーは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアは、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの総重量に基づいて、5~17重量%の量でプロペラントを含む。
【0016】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、50~75重量%、より好ましくは、53~70重量%、最も好ましくは、55~65重量%、例えば、57~61重量%の量で、アクリロニトリルを含む。
【0017】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、15~40重量%、より好ましくは、20~35重量%、例えば、21~33重量%、最も好ましくは、22~30重量%、例えば、23~28重量%の量で、メタクリロニトリルを含む。
【0018】
エチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、6~34重量%、例えば、7~33重量%、8~32重量%、又は10~30重量%、好ましくは、12~25重量%、及び最も好ましくは、13~23重量%、例えば、14~20重量%の量で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルを含む。
【0019】
熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアのポリマーシェルの、エチレン性不飽和モノマーの総重量は、100重量%となる。
【0020】
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアのポリマーシェルは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、50~75重量%の量でアクリロニトリルと、15~40重量%の量でメタクリロニトリルと、10~30重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含む、エチレン性不飽和モノマーから作製される。
【0021】
より好ましい実施形態によれば、本発明の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアのポリマーシェルは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、53~70重量%の量でアクリロニトリルと、20~35重量%の量でメタクリロニトリルと、12~25重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルをと含む、エチレン性不飽和モノマーから作製される。
【0022】
更により好ましい実施形態によれば、本発明の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアのポリマーシェルは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、55~65重量%の量でアクリロニトリルと、22~30重量%の量でメタクリロニトリルと、13~23重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含む、エチレン性不飽和モノマーから作製される。
【0023】
特に好ましい実施形態によれば、本発明の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアのポリマーシェルは、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、57~61重量%の量でアクリロニトリルと、23~28重量%の量でメタクリロニトリルと、14~20重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含む、エチレン性不飽和モノマーから作製される。
【0024】
驚くべきことに、特定のモノマー及びその範囲の量でのこの特定の組み合わせは、低い膨張温度と、同時に、この特定のポリマー混合物を含むポリマーシェルを有する膨張可能なマイクロスフェアから得られた膨張性マイクロスフェアの優れたバリア特性及び良好な長期安定性といった、望ましい特性を提供するのに好適な、ポリマーシェルのためのポリマー混合物を提供することが見出された。
【0025】
更に好ましい実施形態では、本発明の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアのポリマーシェルは、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルについて上記に指定された範囲の量でいずれかの、アクリル酸メチルを含む、エチレン性不飽和モノマーから作製される。
【0026】
更に好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、VDCを実質的に含まない。含まれる場合、VDCの量は、エチレン性不飽和モノマーの、5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、又は更には1重量%未満であり、例えば、エチレン性不飽和モノマーの、0.5重量%未満、更には0.1重量%未満などである。エチレン性不飽和モノマーは、ハロゲン含有モノマーを実質的に含まないことが更に好ましい。含まれる場合、ハロゲン含有モノマーの量は、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーの、5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満、又は更には1重量%未満であり、例えば、エチレン性不飽和モノマーの、0.5重量%未満、更には0.1重量%未満などである。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、いかなるVDCも、及び/又はハロゲン含有モノマーも全く含まない。
【0027】
更に好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも多くのメタクリロニトリルを含む。特に好ましくは、エチレン性不飽和モノマーは、重量基準で、アクリル酸メチルよりも多くのメタクリロニトリルを含む。例えば、エチレン性不飽和モノマーは、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも、少なくとも1重量%多く、好ましくは少なくとも2重量%多く、より好ましくは少なくとも3重量%多く、最も好ましくは少なくとも5重量%多い、メタクリロニトリルを含む。アクリル酸メチルと比較して、このような過剰の重量のメタクリロニトリルは、膨張後のマイクロスフェアの貯蔵安定性を更に改善することが見出された。
【0028】
エチレン性不飽和モノマーは、例えば、各々エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、最大20重量%、例えば0~15重量%、又は0.1~12重量%、好ましくは最大10重量%、例えば、0.2~8重量%、及びより好ましくは最大5重量%、例えば最大2重量%の量で、追加のモノマーを含んでもよい。好適な追加のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリレート、ビニルエステル、スチレン(スチレン、及びα-メチルスチレンなど)、ニトリル含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテル、及びエチルビニルエーテルなど)、N-置換マレイミド、ジエン(ブタジエン、イソプレンなど)、ビニルピリジン、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0029】
更なる実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、追加のモノマーとして、式(1)に従うラクトンを含んでもよい:
【化1】
式中、R、R、R、Rの各々は、互いに別個に、H及びアルキル基からなる群から選択される。アルキル基は、好ましくは、1~4個の炭素原子を含有する。特に好ましいアルキル基は、メチル及びエチルである。より好ましくは、R、R、R、Rの各々は、互いに別個に、H及びCHからなる群から選択される。
【0030】
好ましい実施形態では、式(1)の、R1、R、R、及びRは、以下のように選択される:
=H、R=H、R=CH、R=H(α-メチレン-γ-バレロラクトン(MVL)、γ-メチル-α-メチレン-γ-ブチロラクトンと同一)、
=H、R=H、R=H、R=H(α-メチレン-γ-ブチロラクトン(MBL))、
=CH、R=H、R=H、R=H(β-メチル-α-メチレン-γ-ブチロラクトン(MMBL))、又は
=H、R=H、R=CH3、R=CH(γ,γ-ジメチル-α-メチレン-γ-ブチロラクトン)。
【0031】
エチレン性不飽和モノマーが、式(1)によるラクトンを含む場合、ラクトンは、最も好ましくは、MVL又はMBLのいずれかである。
【0032】
更なる実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、追加のモノマーとして、式(2)に従うイタコネートジアルキルエステルを含んでもよい:
【化2】
式中、R及びRの各々は、互いに別個に、好ましくは、1~4個の炭素原子を有する、アルキル基である。好適なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、及びブチル基が挙げられる。特に、イタコネートジアルキルエステルは、好ましくは、ジメチルイタコネート(DMI)、ジエチルイタコネート(DEI)、ジ(n-プロピル)イタコネート、ジイソプロピルイタコネート、ジブチルイタコネート(DBI)からなる群から選択される。
【0033】
更なる実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、追加のモノマーとして、式(3)のモノマーを含んでもよい。
【化3】
式中、A~A12の各々は、独立して、H及びC~Cアルキルから選択され、各C1~4アルキル基は、任意選択的に、ハロゲン、ヒドロキシル及びC1~4アルコキシから選択される一つ以上の置換基で置換されてもよく、Xは、-O-、-NR”-、-S-、-OC(O)-、-NR”C(O)-、-SC(O)-、-C(O)O-、-C(O)NR”-、及び-C(O)S-から選択される架橋基であり、基C(O)はカルボニル基C=Oを表し、R”は、H、又は、任意選択的に、ハロゲン及びヒドロキシから選択される一つ以上の置換基で置換されるC1-2アルキルである。
エチレン性不飽和モノマーが式(3)のモノマーを含む場合、好ましい実施形態では、A12は、Hである。別の好ましい実施形態では、A12は、任意選択的に、ハロゲン、ヒドロキシ、及びC1~4アルコキシから選択される一つ以上の置換基で置換されてもよい、C1~アルキルから選択され、好ましくは、メチルである。最も好ましくは、エチレン性不飽和モノマーが式(3)のモノマーを含む場合、式(3)のモノマーは、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、又はテトラヒドロフリルアクリレートである。
【0034】
更に好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、一つ以上の架橋多官能性モノマーを少量含み、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマルトリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、3-アクリロイルオキシグリコールモノアクリレート、トリアクリルホルマル、トリアリルイソシアネート、トリアリルイソシヌレートの、一つ以上が挙げられる。特に好ましくは、少なくとも三官能性である架橋モノマーであって、その例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリルホルマルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマル、トリルイソシアネート、及びトリルイソシアヌレートが挙げられる。架橋官能性モノマーの量は、例えば、エチレン性不飽和モノマーの、0.1~6重量%、又は0.1~1重量%、又は1~3重量%であってもよく、一つ以上の多官能性モノマーが少なくとも三官能性である場合、0.1~1重量%が特に好ましく、一つ以上の多官能性モノマーが二官能性である場合、1~3重量%が特に好ましい。アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチル、並びにそれらの混合物以外のエチレン性不飽和モノマーと、一つ以上の架橋多官能性モノマーとが含まれる場合、その量は、好ましくは、0~6重量%であり、最も好ましくは、0~5重量%である。含まれ得るこのような他の種類のモノマーの例としては、ニトリル含有モノマー(α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル、若しくはクロトニトリルなど)、ビニルピリジン、ビニルエステル(酢酸ビニルなど)、スチレン(スチレン、ハロゲン化スチレン、又はα-メチルスチレンなど)、ジエン(ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンなど)、不飽和カルボン酸化合物(アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩など)、又は他の不飽和モノマー(アクリルアミド、メタクリルアミド、若しくはN-置換マレイミドなど)が挙げられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを調製するために使用される、エチレン性不飽和モノマーは、5重量%未満、好ましくは2重量%未満、及び更により好ましくは1重量%未満のハロゲン含有モノマーを含み、重量%は、エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づく。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、ハロゲン含有モノマーを実質的に含まない。
【0036】
更に好ましい実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチル、及びそれらの混合物と、並びに任意選択的に一つ以上の架橋多官能性モノマーとから実質的になり、各モノマーは、上記に指定された各々の量である。特定の実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチル、及びそれらの混合物と、並びに一つ以上の架橋多官能性モノマーとから実質的になり、各モノマーは、上記に指定された各々の量である。更なる特定の実施形態では、エチレン性不飽和モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸メチル、及び一つ以上の架橋多官能性モノマーから実質的になり、各モノマーは、上記に指定された各々の量である。
【0037】
熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアは中空であり、シェルは、上述のエチレン性不飽和モノマーから作製されたポリマーを含み、中空中心又はコアは、一つ以上のプロペラントを含む。膨張性マイクロスフェアでは、密度は、典型的には、1g/cm未満であり、好適には、0.005~0.8g/cm、又は0.01~0.6g/cmの範囲である。好ましい実施形態では、膨張性マイクロスフェアの密度は、0.01~0.4g/cmの範囲である。より高い密度、特に1g/cm以上の密度は、概して、マイクロスフェアの試料が使用に対して好適でないことを意味する。
【0038】
プロペラントは、好ましくは、熱可塑性ポリマーシェルの軟化点以下の沸点を有する、炭化水素又は炭化水素の混合物である。大気圧での沸点は、好ましくは、-50~100℃、最も好ましくは、-20~50℃、特に最も好ましくは、-20~30℃の範囲内である。プロペラントは、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、n-ブタン、及びネオペンタンの少なくとも一つから実質的になってもよく、更に、例えば、プロペラントの0~50重量%の量で、一つ以上の炭化水素を追加で含んでもよい。こうした炭化水素の例としては、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオ-ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、及びイソオクタンが挙げられる。それ以外に、石油エーテルなどの他の炭化水素タイプ、又は塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリクロロフルオロメタン、過フッ素化炭化水素、フッ素含有エーテルなどの、塩化炭化水素若しくはフッ化炭化水素を使用してもよい。好ましい実施形態では、プロペラントは、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つを、単独で、又は一つ以上の他の炭化水素との混合物で含む。より好ましくは、プロペラントは、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つからなる。なおより好ましくは、プロペラントは、イソブタンを含む。最も好ましくは、プロペラントは、イソブタンからなる。プロペラント中のイソブタンの量は、好ましくは、50~100重量%、最も好ましくは、75~100重量%、例えば、75~99重量%である。
【0039】
熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアは、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの総重量に基づいて、5~17重量%の量で、プロペラントを含む。好ましくは、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアは、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの総重量に基づいて、7~16重量%、例えば、9~15重量%、最も好ましくは、10~14重量%の量で、プロペラントを含む。
【0040】
驚くべきことに、未膨張の膨張可能なマイクロスフェアにおいて、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの総重量と比較して、このような極めて少ない量のプロペラントを用い、マイクロスフェアシェルについて上記に特定した量のエチレン性不飽和モノマーの特定の組み合わせと組み合わせることで、一方で、優れたバリア特性、及び良好な貯蔵安定性を有し、同時に、膨張性マイクロスフェアの商業的要求を満たすように、依然として膨張可能である、膨張後マイクロスフェアを得ることが可能である。
【0041】
マイクロスフェアにおけるプロペラントの重量の決定は、マイクロスフェアの揮発性含有量(すなわち、マイクロスフェアに封入された揮発性物質、すなわちプロペラントの重量)を測定することによって、達成することができる。したがって、マイクロスフェアの文脈において本明細書で使用される場合、「プロペラントの重量」、又は「プロペラントの重量割合」という用語は、同等とみなされ、互換的に使用される。マイクロスフェアの揮発性含有量の決定は、当業者には周知であり、原則として、マイクロスフェアの揮発性含有量を決定するための、任意の好適な方法を使用することができる。
【0042】
例えば、マイクロスフェアのプロペラント含有量は、ガスクロマトグラフィー技術を使用して、決定することができる。こうした技術では、マイクロスフェアを密封気密バイアルに入れ、加熱して、封入されたプロペラントを放出させる。気相の試料を、特定の炭化水素の含有量を定量化する、ガスクロマトグラフに導入する。
【0043】
本発明では、熱膨張可能なマイクロスフェアが膨張を開始する温度、TStartは、特に限定されない。例えば、熱膨張可能なマイクロスフェアは、50℃~150℃未満の、TStartを有してもよい。しかしながら、マイクロスフェアは、水性湿潤方法を使用して膨張され得ることが好ましい。したがって、TStartは、60~120℃、例えば、70~110℃、又は80~105℃などであることが好ましい。膨張が開始される温度は、TStartと呼ばれ、最大膨張に達する温度は、Tmaxと呼ばれる。TStart及びTMaxは、当業者によって一般に知られている、標準的な測定技法を使用して決定されてもよい。例えば、TStart及びTMaxは、例えば、Mettler-Toledo TMA/SDTA 841eのようなMettler-Toledo熱機械分析装置を使用し、20℃/分の加熱速度と0.06Nの荷重(正味)を使用することによって、昇温実験で決定することができる。こうした昇温実験では、熱膨張可能なマイクロスフェアの重量が既知である試料は、0.06Nの負荷(正味)下で、20℃/分の一定加熱速度で加熱される。熱膨張可能なマイクロスフェアの膨張が開始されると、試料の体積が増加し、負荷が上方に移動する。こうした測定から、膨張サーモグラムが得られ、ここで、縦軸は、負荷を上向きに移動させる高さを示し、横軸は、温度を示す。TStart及びTMaxは、例えば、Mettler-ToledoからのSTAReソフトウェアを使用して、この膨張サーモグラムから決定することができる。
【0044】
更に好ましい実施形態では、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアは、5~30μm、好ましくは、7~28μm、より好ましくは、8~25μm、最も好ましくは、10~20μmの平均粒子径を有する。ポリマーシェル及びプロペラントの量に対して、モノマー及びその量で特定の組み合わせを使用する場合、このような非常に低い平均粒子径は、容易に膨張し、優れたバリア特性を有し、膨張後に良好な貯蔵安定性を有する、膨張可能なマイクロスフェアを得るために、特に好適であることが見出された。
【0045】
更なる実施形態では、ポリマーシェルは、ポリマーシェルの機械的特性及びガスバリアを改善するための、したがって、ポリマーシェルエンハンサーとして作用する粒子を含んでもよい。こうした粒子の例としては、タルク、モンモリロナイト、ナノ結晶性セルロース、及びベントナイトなどの様々なタイプの粘土がある。
【0046】
ポリマーシェル及びプロペラントとは別に、マイクロスフェアは、その製造中に、通常は、0~20重量%、好ましくは、1~10重量%の量で添加される、更なる物質を含んでもよい。こうした物質の例はとしては、固体懸濁剤があり、例えば、デンプン、架橋ポリマー、ガム寒天、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースなどの誘導体化セルロース、シリカ、例えば、チョーク及びベントナイトなどのコロイド粘土などの一つ以上、並びに/又はAl、Ca、Mg、Ba、Fe、Zn、Ni、及びMnなどの金属の、塩、酸化物、若しくは水酸化物の一つ以上、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、及びアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケル、若しくはマンガンの水酸化物の一つ以上である。存在する場合、これらの固体懸濁剤は、通常、ポリマーシェルの外表面に主に位置する。しかしながら、マイクロスフェアの製造中に懸濁剤が添加された場合であっても、これは後の段階で洗浄され、それ故に最終生成物に実質的に存在しなくてもよい。
【0047】
多数の要因によって、高密度という結果をもたらすことがあり得る。例えば、高密度は、不十分なマイクロスフェア収率、すなわち、ポリマー材料中のマイクロスフェアの割合が低すぎて、全体的な密度を許容可能なレベルまで減少させられない可能性がある。別の問題は、不十分な膨張特性であり、これは、多くのマイクロスフェアが、適切な膨張を可能にするのに不十分なプロペラントしか含まないという問題を生じ得る。これは、ポリマーシェルがプロペラントに対して透過性が高すぎることから、又はいわゆる「マルチコア」マイクロスフェアの形成、すなわち、単一のプロペラント含有コアの代わりに、シェル内に複数のプロペラント含有コアがある(例えば、マイクロスフェア状の、フォーム又はスポンジのように)ことに起因してもたらされる可能性がある。こうしたマルチコアマイクロスフェアでは、プロペラントの濃度は、典型的には、密度を適切に減少させるには低すぎる。別の原因は、ポリマーの凝集又は集合であり、結果として、マイクロスフェアの製造不良、及びより高い密度の材料をもたらす。凝集した物質の割合が高すぎる、又は十分に膨張しないマイクロスフェアは、結果として、生じるマイクロスフェア生成物の膨張特性における、大きい不均質性にもつながる可能性がある。これは、滑らかな仕上げが望ましいコーティングなどの、表面に敏感な用途には特に好ましくない。
【0048】
シングルコア及びマルチコアのマイクロスフェアの例示的断面が、各々、図1A及び図1Bに提供されており、ポリマーの領域1は、網目模様の区域によって表され、また、プロペラント含有領域2は、空白の区域によって表される。
【0049】
第二の態様では、本発明は、ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを調製するためのプロセスを提供し、プロセスは、重合混合物中のプロペラントの存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合する工程を含み、エチレン性不飽和モノマーは、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、プロペラントは、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つを含み、エチレン性不飽和モノマー及びプロペラントの総重量に基づいて、5~30重量%の量で存在する。本発明の第二の態様による方法は、本発明の第一の態様による熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを調製するために使用することができる。
【0050】
方法は、上述の通りのプロペラントの存在下で、好ましくは水性懸濁液中で、上述の通りのエチレン性不飽和モノマーを重合して、プロペラントを封入するポリマーシェルを含む、マイクロスフェアを得ることを含む。モノマーの種類及び量、並びに架橋剤などの上述の任意の更なる添加剤に関して、膨張可能なマイクロスフェアの上記の記載は、本発明のこの第二の態様の方法にも等しく適用される。
【0051】
本発明の第二の態様による方法では、プロペラントは、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つを、例えば、総プロペラント量の、50~100重量%、又は50~99重量%の量で含む。いくつかの実施形態では、プロペラントは、プロパン、イソブタン、n-ブタン、及びそれらの混合物からなる。好ましい実施形態では、プロペラントは、例えば、総プロペラント量の50~100重量%、又は50~99重量%の量でイソブタンを含む。特に好ましい実施形態では、プロペラントはイソブタンからなる。
【0052】
本発明の第二の態様による方法において、プロペラントは、エチレン性不飽和モノマー及びプロペラントの総重量に基づいて、5~30重量%、例えば、7~27重量%、又は10~25重量%、又は12~22重量%、好ましくは15~20重量%の量で、重合混合物中に存在する。
【0053】
原則として、膨張可能なマイクロスフェアを調製するための、任意の公知の一般的な方法を使用することができる。好適な方法としては、例えば、懸濁重合が挙げられる。例えば、方法は、米国特許第3615972号、又は国際特許公開第2019/043235 A1号に記載される方法に従ってもよい。
【0054】
本発明の一実施形態では、マイクロスフェアは、バッチ式方法で製造され、次いで、重合は、反応容器内で、以下に記載されるように行われてもよい。100重量部のモノマー相と(好適には、モノマー及びプロペラントを含み、ポリマーシェル中のモノマーの割合、及び最終生成物中のプロペラントの量を決定する比率で)、好ましくは、0.1~5重量部の量で一つ以上の重合開始剤と、好ましくは、100~800重量部の量で水相と、好ましくは、1~20重量部の量で、好ましくは、一つ以上の固体コロイド懸濁剤とが、混合され、均質化される。得られたモノマー相の液滴の径は、最終的な膨張可能なマイクロスフェアの径を決定する。温度は、40~90℃、好ましくは、50~80℃に好適に維持される一方で、好適なpHは、使用される懸濁剤に依存する。例えば、高pH、好ましくは、5~12、最も好ましくは、6~10は、懸濁剤が、Ca、Mg、Ba、Zn、Ni、及びMnなどの金属の、塩、酸化物、又は水酸化物、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、及び亜鉛、ニッケル、又はマンガンの水酸化物の一つ以上から選択される場合に、好適である。低pH、好ましくは、1~6、最も好ましくは、3~5は、懸濁剤が、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム寒天、シリカ、コロイド状粘土、又はアルミニウム若しくは鉄の酸化物若しくは水酸化物からなる群から選択される場合に、好適である。上記の剤の各々は、例えば、溶解性データに応じて、異なる最適なpHを有する。
【0055】
懸濁剤は、有機相を含有するエチレン性不飽和モノマーの液滴を、水相中に安定化させるのに役立ち、実施形態では、有機相のエマルション(すなわち、水中油型エマルション)を水相中に形成することを支援する。
【0056】
液滴またはエマルション液滴の安定化は、いくつかの理由から好ましい。安定化をさせないと、エチレン性不飽和モノマー及びプロペラントを含有する、液滴の合体が生じる場合がある。合体は、例えば、不均一な液滴径、不十分なマイクロスフェア収率などの、悪影響を有し得、マイクロスフェアの凝集を増加させることができる。
【0057】
懸濁剤は、典型的には、水相中に、0~20重量%、例えば、0.01~20重量%、0.05~10重量%、0.1~5重量%の量で存在する。更なる実施形態では、懸濁剤は、水相中に、0.1~1重量%の量で存在する。
【0058】
懸濁剤の選択は特に限定されないが、無機懸濁剤又は有機懸濁剤から選択してもよい。
【0059】
懸濁剤として作用し得る無機材料の例としては、シリカ、特に、未修飾の「裸」の形態で使用され得るか、又は任意選択的に、例えば、オルガノシラン修飾シリカ若しくはコロイダルシリカを使用して、その疎水性/親水性特性を調整するように表面修飾され得る、コロイダルシリカが挙げられる。
【0060】
実施形態では、オルガノシラン中の「有機」基は、C1~20アルキル、C1~20アルケニル、C5~6アリール、並びにO、S、及びNから選択される一つ以上(例えば、1~3個の)のヘテロ原子を有するC5-6ヘテロアリールから選択されてもよい。これらの基の各々は、任意選択的に、ハライド、ヒドロキシ、エポキシ、チオール、アミノ、C1~20アルキルアミノ、ジ-C1~20アルキルアミノ、ヒドロキシアミノ、ヒドロキシ-C1~20アルキルアミノ、(ヒドロキシ-C1~20アルキル)(C1~20アルキル)アミノ、ジ(ヒドロキシ-C1~20アルキル)アミノC1-20アルコキシ、C1~20アミド、C1~20ウレイド、C1~20メルカプト、C3~20エポキシアルコキシ、C1~20アルキルアクリレート、1~20個のエチレングリコール基を有するエチレングリコール又はそのオリゴマー、及び1~20個のプロピレングリコール基を有するプロピレングリコール又はそのオリゴマーから選択される、一つ以上の基で置換されてもよい。任意の脂肪族基は、直鎖状、分枝状、又は環状であってもよい。
【0061】
オルガノシラン修飾シリカ又はコロイダルシリカは、シリカ(又はコロイダルシリカ)を、典型的には、式、RSiX4-nを有するオルガノシラン化合物と反応させることによって、製造することができ、式中、Rは、上記で特定された有機基の1つであり、Xは、ハライド、ヒドロキシ、又はC1~6アルコキシであり、nは、1~3の範囲、典型的には、1又は2の整数である。
【0062】
好適なシラン化合物としては、トリス-(トリメトキシ)シラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、エポキシ基(エポキシシラン)、グリシドキシ基、及び/又はグリシドキシプロピル基、例えば、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリエトキシシランなどの、グリシドキシプロピル基を含有するシラン、ビニル基、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどの、ビニル基を含有するシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリメチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、i-ブチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ヘキサメチルジシロザン、トリメチルシリルクロリド、ビニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシリザン、及びそれらの混合物が挙げられる。米国特許第4927749号は、使用され得る更に好適なシランを開示する。
【0063】
使用され得るシリカの例としては、コロイダルシリカに関連する、Levasil(登録商標)、Bindzil(登録商標)、及びLudox(登録商標)商標名の下で販売されている、シリカが挙げられる。シリカの固体形態としては、ヒュームドシリカが挙げられ、沈降シリカも使用してもよく、これは、水中に分散されて微細な懸濁液を形成することができる。ヒュームドシリカの供給源としては、商標名、Cab-o-Sil(登録商標)、及びAerosil(登録商標)で販売されているシリカが挙げられる。
【0064】
他の無機懸濁剤としては、コロイド粘土(例えば、チョーク、及びベントナイト)、並びに、Al、Ca、Mg、Ba、Fe、Zn、Ti、Ni及びMnの、塩、酸化物、及び水酸化物(例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、二酸化チタン、及びアルミニウム、鉄、亜鉛、ニッケル又はマンガンの水酸化物)が挙げられる。
【0065】
固体無機懸濁剤を使用する場合、それらは、いわゆる「ピッカリング」エマルションを生成することができ、固体無機粒子は、水相と有機相との間の界面にある。
一つ以上の懸濁剤を、使用してもよい。有機懸濁剤と無機懸濁剤の混合物も、使用してもよい。
【0066】
懸濁剤の効果を高めるために、少量の、例えば、0.001~1重量%の、一つ以上のプロモーターを添加してもよい。通常、このようなプロモーターは、有機物質であり、例えば、水溶性スルホン化ポリスチレン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、水酸化テトラメチルアンモニウム若しくは塩化テトラメチルアンモニウム、又は水溶性複合樹脂性アミン縮合物(例えば、ジエタノールアミンとアジピン酸の水溶性縮合物、エチレンオキシドの水溶性縮合物など)、尿素及びホルムアルデヒド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、タンパク質性物質などの両性物質(例えば、ゼラチン、糊、カゼイン、アルブミン、グルチン、及びこれに類するものなど)、メトキシセルロースのような非イオン性物質、通常懸濁剤として分類されるイオン性物質(例えば、石鹸、アルキル硫酸塩、及びスルホン酸塩など)、並びに長鎖四級アンモニウム化合物の一つ以上から選択することができる、有機物質であってもよい。
【0067】
従来のラジカル重合開始剤は、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、過酸化エステル、過酸化ジカーボネート、又はアゾ化合物などの、有機過酸化物の一つ以上から選択される。好適な開始剤としては、ペルオキシ二炭酸ジセチル、ペルオキシ二炭酸ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)、ペルオキシ二炭酸ジ(2-エチルヘキシル)、過酸化ジオクタニル(dioctanyl peroxide)、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジデカノイル、過酢酸tert-ブチル、過ラウリン酸tert-ブチル、過安息香酸tert-ブチル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、クメンエチルペルオキシド、ジイソプロピルヒドロキシジカルボキシレート、2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’<1>-アゾビス(2-メチルプロピオネート、2,2’<1>-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、及びこれに類するものが挙げられる。また、高エネルギーイオン化放射線などの、放射線を用いて重合を開始することも可能である。
【0068】
適切な場合、マイクロスフェアは、任意の段階で、例えば、国際特許公開第2004/072160号、又は米国特許第4287308号に記述される手順のいずれかによって、残留未反応モノマーの量を低減するように処理されてもよい。
【0069】
更なる態様では、本発明はまた、上述の本発明の第二の態様による方法によって得られる、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを対象とする。
【0070】
更なる態様では、本発明はまた、上述の本発明の第一の態様による、又は上述の本発明の第二の態様による方法によって得られた、好ましくは、スラリーの総重量に基づいて、5~55重量%、最も好ましくは、20~55重量%の量で、膨張可能な熱可塑性マイクロスフェアを含む、水性スラリーを対象とする。こうしたスラリーは、例えば製紙を含む、膨張可能なマイクロスフェアの様々な用途に有用である。スラリーはまた、好ましくは、少なくとも一つの増粘剤を含み、好ましくは、製紙と適合性がある。こうした増粘剤の例としては、デンプン、ガム、セルロース、キチン、キトサン、グリカン、ガラクタン、ペクチン、マンナン、デキストリン、アクリル酸又はその塩(好ましくは、最大50モル%、最も好ましくは、最大20モル%の、アクリル酸又はその塩)を含むモノマーから作製されたコポリマー 、アクリル酸のエステル又はアミドを含むモノマーから作製されたホモポリマー及びコポリマー、メタクリル酸、そのエステル又はそのアミドを含むモノマーから作製されたホモポリマー及びコポリマー、ゴムラテックス及びコポリマー、ポリビニルエステル及びコポリマー(例えば、エチレンを含む)、ポリビニルアルコール、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレン/ポリプロピレンオキシド、ポリウレタン、並びに尿素/ホルムアルデヒド、尿素/メラミン/ホルムアルデヒド、又はフェノール/ホルムアルデヒド、及びポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂などの、アミノプラスト及びフェノプラストのプレコンデンセートからなる群から選択される、少なくとも部分的に水溶性のポリマーが挙げられる。適切なガムの例としては、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、タラガム、カラヤ、オクラ、アカシア、キサンタンガムなど、及びその混合物が挙げられ、その中でも、グアーガムが特に好ましい。好適なセルロースの例としては、誘導体、例えば、任意に化学修飾されたCMC(カルボキシメチルセルロース)、並びにEHEC(エチルヒドロキシエチルセルロース)、及びHEC(ヒドロキシエチルセルロース)などのセルロースエーテル、並びにそれらの混合物が挙げられる。化学修飾セルロース誘導体としては、例えば、四級アミン、他のアミン、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ポリエチレンオキシド、及びポリプロピレンオキシドなどの、様々な官能基で修飾されたものが挙げられる。
【0071】
少なくとも部分的に水溶性のポリマーは、直鎖状、分岐状、又は架橋であってもよい。平均分子量は、ポリマーの種類に応じて、広い限界内で変動し得る。ほとんどの場合、好ましい平均分子量は、少なくとも500、より好ましくは、少なくとも2000、最も好ましくは、少なくとも5000である。上限は重要ではなく、ほとんどの場合、平均分子量は、好ましくは、最大50,000,000、より好ましくは、最大10,000,000、最も好ましくは、最大1,000,000である。
【0072】
特に好ましいポリマーとしては、デンプン、CMC、EHEC、グアーガム、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン樹脂、アクリル酸と他のモノマーとのコポリマー(例えば、アクリルアミドとのコポリマー)、及びポリアクリルアミドのホモポリマー又はコポリマー、ポリアミン、ポリビニルアルコール、及びポリエチレン/ポリプロピレンオキシドが挙げられる。
【0073】
増粘剤として有効な一つ以上の少なくとも部分的に水溶性のポリマーは、再び分散できない程度までの、マイクロスフェアの実質的な堆積又は浮遊に対して、スラリーを安定化する量で存在することが好ましい。多くの場合、これは、25℃で、約150~約1000mPas、最も好ましくは25℃で、約200~約600mPasのスラリーの好ましい粘度(スピンドルL3を備えた、Anton Paar DV-1P粘度計を用いた測定を指す)を得るために、十分なポリマーを添加することによって、達成することができる。スラリーを安定化するために必要な量は、ポリマー、及びpHなどの他の状況に依存する。多くの場合、スラリー中の少なくとも部分的に水溶性のポリマーの好ましい含有量は、約0.1~約15重量%、最も好ましくは、約0.1~約10重量%、特に最も好ましくは、約0.5~約10重量%である。
【実施例0074】
以下の実施例は、本発明を例示することが意図されている。
【0075】
マイクロスフェア中のプロペラント含有量を、Agilent 7890Bガスクロマトグラフに接続された、Agilent 7697A静的ヘッドスペースを使用した、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HS-GC)を使用して決定した。8~10mgの試料を密封気密バイアルに入れ、170℃に加熱する。気相の試料を、CP-Sil 19cbカラム(長さ30m、内径0.32mm、膜厚1μm、Agilent製)を備えたガスクロマトグラフに、気密シリンジによって導入する。イソオクタンを参照として使用し、ThermoからのChromeleonソフトウェアを使用して評価を行う。
【0076】
膨張特性は、STAReソフトウェアを実行するPCにインターフェース接続されたMettler TMA/SDTA 841e熱機械分析装置を使用して評価された。分析する試料を、直径6.8mm及び深さ4.0mmの酸化アルミニウムるつぼに収容された、0.5mg(+/-0.02mg)の熱膨張可能なマイクロスフェアから調製した。るつぼを、直径6.1mmの酸化アルミニウムの蓋を使用して封止した。TMA膨張プローブタイプを使用して、試料の温度を、プローブで0.06Nの負荷(正味)を印加しながら、20℃/分-1の加熱速度で、約30℃から240℃へと上昇させた。プローブの垂直の変位を測定して、膨張特性を分析した。膨張の初期温度(Tstart):プローブの変位が始まった時の温度(℃)。最大膨張温度(Tmax)は、プローブの変位が最大に達した時の温度(℃)である。TMA密度は、プローブの変位がその最大値に達した時に、試料重量(d)を試料の体積増加(dm)で除算したものである。
【0077】
粒子径は、湿潤試料上で、Malvern Mastersizer Hydro 2000 SM装置でのレーザー光散乱によって決定された。粒子径の中央値は、体積中位径d(0.5)として提示される。
【0078】
[実施例1]
マイクロスフェアを、以下の手順を使用して調製した。水中にMg(OH)安定化有機液滴を含有する反応混合物を、相を混合し、好適な液滴径が達成されるまで激しく撹拌することによって、生成した。水分散体は、1.8重量部のMg(OH)、0.02重量部の2-エチルヘキシル硫酸ナトリウム、及び283重量部の水を含有した。有機液滴は、2.0重量部のジラウリルペルオキシド、22.0重量部のイソブタン、55.0重量部のアクリロニトリル、30.0重量部のメタクリロニトリル、15.0重量部のアクリル酸メチル、及び0.3重量部のトリメチロールプロパントリメタクリレートを含有した。重合を、撹拌下で、密封反応器内で、かつ62℃で行った。室温まで冷却した後、得られたマイクロスフェアスラリーの試料を、TMA及びヘッドスペースガスクロマトグラフィーによる分析の前に、除去、濾過、脱水、及び乾燥した。マイクロスフェアは、マイクロスフェアの総重量に基づいて、約14重量%のイソブタンを含有し、約38μmの平均粒子径を有した。TMAの結果は、以下の表1に見出すことができる。
【0079】
[実施例2]
329重量部の水、22.7重量部の50重量%の表面修飾コロイダルシリカ(Bindzil、80m/g、50%プロピルシリル/50%グリセロールプロピルシリルで表面修飾された粒子径32nm)を含む分散液を調製し、約4.5のpHに維持した。水性分散体を、1.6重量部のジラウリルペルオキシド、38.0重量部のイソブタン、55.0重量部のアクリロニトリル、30.0重量部のメタクリロニトリル、15.0重量部のアクリル酸メチル、及び0.3重量部のトリメチロールプロパントリメタクリレートを含有する有機相と混合した。重合を、撹拌下で、密封反応器内で、かつ62℃で行った。室温まで冷却した後、得られたマイクロスフェアスラリーの試料を、TMA及びヘッドスペースガスクロマトグラフィーによる分析の前に、除去、濾過、脱水、及び乾燥した。マイクロスフェアは、マイクロスフェア、イソブタンの総重量に基づいて、約20重量%のイソブタンを含有し、約14μmの平均粒子径を有した。TMAの結果は、以下の表1に見出だすことができる。
【0080】
[実施例3~7]
更なるマイクロスフェアを、実施例2と同じ様式で実施された、追加の重合例で調製した。しかしながら、これらの更なる実施例では、モノマー及びプロペラントは、以下の表1に明記される量で使用した。実施例7では、0.5重量部のアセチルペルオキシジカーボネートを、開始剤として使用した。分析結果は、表1に見出すことができる。
【0081】
【表1】
【0082】
[貯蔵安定性試験]
貯蔵安定性試験を、以下のように実施した。膨張性マイクロスフェアは、例えば、国際特許公開第2014/198532A1号に記載されるように、沸騰水中での膨張によって、実施例1~7で得られた膨張可能なマイクロスフェアスラリーから得られた。膨張性マイクロスフェアを、40℃で、少なくとも28日間密封容器に保存した。各膨張性マイクロスフェアに含有されるプロペラントの初期量を、乾燥後に決定し、100(%)に設定した。更に、各膨張性マイクロスフェアに含有されるプロペラントの量を、1、3、7、14、28、及び42日後に決定し、プロペラントの初期量と比較した、プロペラント含有量の相対割合を計算した(単位%)。結果を、以下の表2に示す。更なる比較マイクロスフェアとして、2つの市販のマイクロスフェア、すなわち、VDC含有ベンチマーク膨張性マイクロスフェアExpancel 461 WE 40(比較例8)、及び市販の未膨張VDCを非含有マイクロスフェアExpancel 051 DU 40(比較例9)を使用し、これは実施例1~7と同じ手順を使用して湿潤膨張後に調査された。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果を、図2に示す。図2は、本発明による膨張可能なマイクロスフェア(すなわち、実施例1、3、4、及び6からのマイクロスフェア)が、改善された貯蔵安定性特性を有し、湿潤マイクロスフェアとして保管された場合でも、他のハロゲン非含有膨張性マイクロスフェア(すなわち、比較例2、5、7、及び9のマイクロスフェア)と比較して、特に、少なくとも28日間の貯蔵後、更には市販のVDC含有膨張性マイクロスフェア(すなわち、比較例8のマイクロスフェア)の貯蔵安定性特性に近いか、又はそれを上回る貯蔵安定性特性を有する。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアであって、前記ポリマーシェルがエチレン性不飽和モノマーから作製され、前記プロペラントを封入し、前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアが、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの前記総重量に基づいて、5~17重量%の量で前記プロペラントを含む、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、50~75重量%、好ましくは、53~70重量%、最も好ましくは、55~65重量%の量で、アクリロニトリルを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、15~40重量%、好ましくは、20~35重量%、最も好ましくは、22~30重量%の量で、メタクリロニトリルを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、6~34重量%、例えば、7~33重量%、8~32重量%、又は10~30重量%、好ましくは、12~25重量%、及び最も好ましくは、13~23重量%の量で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和モノマーが、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも多くのメタクリロニトリル、好ましくは、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも少なくとも1重量%多いメタクリロニトリル、更により好ましくは、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも少なくとも1重量%多いメタクリロニトリルを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項6】
前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアが、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの前記総重量に基づいて、7~16重量%、好ましくは、9~15重量%、最も好ましくは、10~14重量%の量で、前記プロペラントを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和モノマーが、アクリル酸メチルを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和モノマーが、5重量%未満、好ましくは、2重量%未満、及び更により好ましくは、1重量%未満の、ハロゲン含有モノマーを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項9】
前記プロペラントが、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つ、好ましくは、イソブタンを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項10】
前記プロペラントが、50~100重量%のイソブタンを含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項11】
5~30μm、好ましくは、7~28μm、より好ましくは、8~25μm、最も好ましくは、10~20μmの、平均粒子径を有する、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項12】
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、0.1~6.0重量%の一つ以上の架橋剤、好ましくは、0.2~1.0重量%を更に含む、請求項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
【請求項13】
ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを調製するためのプロセスであって、重合混合物中のプロペラントの存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合する工程を含み、前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、前記プロペラントが、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つを含み、前記エチレン性不飽和モノマー及び前記プロペラントの総重量に基づいて、5~30重量%の量で存在する、プロセス。
【請求項14】
前記重合混合物が、無機粒子、好ましくは、水酸化マグネシウム又はコロイダルシリカ、より好ましくは、コロイダルシリカを含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の、又は請求項13及び14のいずれかに記載の方法から得られる、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを含む、水性スラリー。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
表2の結果を、図2に示す。図2は、本発明による膨張可能なマイクロスフェア(すなわち、実施例1、3、4、及び6からのマイクロスフェア)が、改善された貯蔵安定性特性を有し、湿潤マイクロスフェアとして保管された場合でも、他のハロゲン非含有膨張性マイクロスフェア(すなわち、比較例2、5、7、及び9のマイクロスフェア)と比較して、特に、少なくとも28日間の貯蔵後、更には市販のVDC含有膨張性マイクロスフェア(すなわち、比較例8のマイクロスフェア)の貯蔵安定性特性に近いか、又はそれを上回る貯蔵安定性特性を有する。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアであって、前記ポリマーシェルがエチレン性不飽和モノマーから作製され、前記プロペラントを封入し、前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアが、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの前記総重量に基づいて、5~17重量%の量で前記プロペラントを含む、熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項2.
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、50~75重量%、好ましくは、53~70重量%、最も好ましくは、55~65重量%の量で、アクリロニトリルを含む、項1に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項3.
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、15~40重量%、好ましくは、20~35重量%、最も好ましくは、22~30重量%の量で、メタクリロニトリルを含む、項1又は2に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項4.
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、6~34重量%、例えば、7~33重量%、8~32重量%、又は10~30重量%、好ましくは、12~25重量%、及び最も好ましくは、13~23重量%の量で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルを含む、項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項5.
前記エチレン性不飽和モノマーが、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも多くのメタクリロニトリル、好ましくは、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも少なくとも1重量%多いメタクリロニトリル、更により好ましくは、重量基準で、アクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルよりも少なくとも1重量%多いメタクリロニトリルを含む、項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項6.
前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアが、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアの前記総重量に基づいて、7~16重量%、好ましくは、9~15重量%、最も好ましくは、10~14重量%の量で、前記プロペラントを含む、項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項7.
前記エチレン性不飽和モノマーが、アクリル酸メチルを含む、項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項8.
前記エチレン性不飽和モノマーが、5重量%未満、好ましくは、2重量%未満、及び更により好ましくは、1重量%未満の、ハロゲン含有モノマーを含む、項1~7のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項9.
前記プロペラントが、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つ、好ましくは、イソブタンを含む、項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項10.
前記プロペラントが、50~100重量%のイソブタンを含む、項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項11.
5~30μm、好ましくは、7~28μm、より好ましくは、8~25μm、最も好ましくは、10~20μmの、平均粒子径を有する、項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項12.
前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、0.1~6.0重量%の一つ以上の架橋剤、好ましくは、0.2~1.0重量%を更に含む、項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェア。
項13.
ポリマーシェル及びプロペラントを含む熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを調製するためのプロセスであって、重合混合物中のプロペラントの存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合する工程を含み、前記エチレン性不飽和モノマーが、各々前記エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、45~80重量%の量でアクリロニトリルと、10~45重量%の量でメタクリロニトリルと、5~35重量%の量でアクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸メチルとを含み、前記プロペラントが、プロパン、イソブタン、及びn-ブタンの少なくとも一つを含み、前記エチレン性不飽和モノマー及び前記プロペラントの総重量に基づいて、5~30重量%の量で存在する、プロセス。
項14.
前記重合混合物が、無機粒子、好ましくは、水酸化マグネシウム又はコロイダルシリカ、より好ましくは、コロイダルシリカを含む、項13に記載のプロセス。
項15.
項1~12のいずれかに記載の、又は項13及び14のいずれかに記載の方法から得られる、前記熱可塑性熱膨張可能なマイクロスフェアを含む、水性スラリー。
【外国語明細書】