(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159646
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】活性抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/403 20060101AFI20241031BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20241031BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20241031BHJP
A61K 33/30 20060101ALI20241031BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61K31/403
A61P43/00 121
A61P1/02
A61K31/365
A61K33/30
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071217
(22)【出願日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2023072473
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100129414
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 京
(72)【発明者】
【氏名】青木 優
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB331
4C083AB332
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC402
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC642
4C083AC682
4C083AC692
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC862
4C083AD042
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD532
4C083AD552
4C083AD662
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE33
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086HA03
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA57
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA67
(57)【要約】
【課題】口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性を抑制するための新たな技術を提供する。
【解決手段】カルバゾクロムを有効成分とする、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバゾクロムを有効成分とする、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制用組成物。
【請求項2】
前記口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼが、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼならびにマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-1、MMP-2およびMMP-9からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の活性抑制用組成物。
【請求項3】
カルバゾクロムを有効成分とする、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼの活性抑制用組成物。
【請求項4】
カルバゾクロムを有効成分とする、ジンジパインの活性抑制用組成物。
【請求項5】
カルバゾクロムを有効成分とする、塩基性アミノ酸-ジンジパインの活性抑制用組成物。
【請求項6】
口腔用組成物である、請求項1乃至5いずれか一項に記載の活性抑制用組成物。
【請求項7】
塩化亜鉛およびエリソルビン酸からなる群から選択される少なくとも一つの化合物をさらに含む、請求項6に記載の活性抑制用組成物。
【請求項8】
口腔用組成物にカルバゾクロムを配合する工程を有する、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制用組成物を製造する方法。
【請求項9】
口腔用組成物にカルバゾクロムを配合する工程を有する、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼの活性抑制用組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性抑制用組成物に関し、さらに具体的には、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病の治療に関連する技術として、特許文献1および非特許文献1に記載のものがある。
特許文献1には、手術等を要することなく、より効果的に且つ安全に歯周組織の再生を促す歯周組織再生剤、この歯周組織再生剤を用いた歯周組織再生方法、歯周組織増殖・活性化剤及び歯周組織アンチエージング剤を提供することを目的とする技術として(段落0005)、ハッカ油、ユリエキス、真珠タンパク質エキス、アロエエキス、グリチルリチン酸二カリウム、カンゾウエキス、イソ吉草酸イソアミル、ウイキョウ油、クエン酸ナトリウム、L-グルタミン酸塩酸塩、セバシン酸ジエチル、チモール、濃グリセリン、ハチミツ、ヘスペリジン、ペパーミントエッセンス、ベンジルアルコール、D-マンニトール、メチルセルロース、及びカルバゾクロムからなる群より選択される少なくとも一種を含有する、歯周組織再生剤について記載されており(請求項1)、かかる剤は、歯周病の治療や歯周病により崩壊した歯根膜の治療のために用いられうることが記載されている(請求項5および6)。また、上記有効成分のうち、カルバゾクロムは止血剤であることが記載されている(段落0044)。
【0003】
非特許文献1には、辺縁性歯周炎、歯肉炎の治療のための歯肉マッサージ薬に、抗炎症剤としてカルバゾクロムを用いた例が記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、ヒノキチオール及びシャクヤク加工物よりなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼの活性抑制用組成物について記載されている(請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-153396号公報
【特許文献2】特開2020-109071号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山下 智他11名、「辺縁性歯周炎および歯肉炎に対する歯肉マッサージ薬『LPD』の盲検法による臨床評価」、日本歯周病学会会誌、1984年、第26巻、第2号、p.397-420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1および非特許文献1に記載の技術は、歯肉炎またはその進行に伴う歯周炎の治療のための技術である一方、これらの発生自体を抑制しようとするものではなかった。
また、特許文献2に記載の技術においては、有効成分であるヒノキチオールが特徴的な芳香を持つ臭いの強い物質であることから、適用範囲の自由度の点で改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性を抑制するための新たな技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下の活性抑制用組成物およびその製造方法が提供される。
[1] カルバゾクロムを有効成分とする、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制用組成物。
[2] 前記口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼが、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼならびにマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-1、MMP-2およびMMP-9からなる群から選択される少なくとも一種である、[1]に記載の活性抑制用組成物。
[3] カルバゾクロムを有効成分とする、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼの活性抑制用組成物。
[4] カルバゾクロムを有効成分とする、ジンジパインの活性抑制用組成物。
[5] カルバゾクロムを有効成分とする、塩基性アミノ酸-ジンジパインの活性抑制用組成物。
[6] 口腔用組成物である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の活性抑制用組成物。
[7] 塩化亜鉛およびエリソルビン酸からなる群から選択される少なくとも一つの化合物をさらに含む、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の活性抑制用組成物。
[8] 口腔用組成物にカルバゾクロムを配合する工程を有する、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制用組成物を製造する方法。
[9] 口腔用組成物にカルバゾクロムを配合する工程を有する、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼの活性抑制用組成物を製造する方法。
【0010】
また、本発明によれば、たとえば、カルバゾクロムを有効成分とする、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制剤を提供することができる。
また、本発明によれば、たとえば、口腔組織の炎症予防用組成物の製造のための前記本発明における活性抑制剤の使用を提供することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性を抑制するための新たな技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
【0013】
(活性抑制用組成物)
本実施形態において、活性抑制用組成物は、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制用組成物であって、カルバゾクロムを有効成分とする。
また、活性抑制用組成物は、具体的には、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制剤であり、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性阻害剤であってもよい。
【0014】
本実施形態においては、活性抑制用組成物が有効成分としてカルバゾクロムを含む構成とすることにより、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態によれば、たとえば、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制効果に優れるとともに、適用範囲の自由度に優れる活性抑制用組成物を得ることができる。
すなわち、本実施形態における活性抑制用組成物を用いることにより、たとえば、口腔組織コラーゲンの分解を好適に抑制することができるため、たとえば、歯肉炎、歯周炎等の口腔組織の炎症の発生自体を効果的に抑制することも可能となる。
また、本実施形態により、たとえば、臭いの低減された活性抑制用組成物を得ることができるため、活性抑制用組成物の適用範囲の自由度を向上することも可能となる。
【0015】
以下、活性抑制用組成物の構成をさらに具体的に説明する。
はじめに、口腔組織コラーゲンおよび口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼについて説明する。
口腔組織コラーゲンは、具体的には、口腔組織に含まれるコラーゲンであり、さらに具体的には、歯肉、歯根膜、粘膜等の口腔軟組織に含まれるコラーゲンである。コラーゲンは口腔組織の構成成分の一つであり、たとえば歯茎の大部分はコラーゲンにより構成されている。
また、口腔組織コラーゲンは、たとえばI型コラーゲン、III型コラーゲンおよびIV型コラーゲンからなる群から選択される一種または二種以上である。
【0016】
口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼとは、具体的には、口腔組織コラーゲンの分解に関わるプロテアーゼであり、さらに具体的には、口腔組織コラーゲンを分解するプロテアーゼである。
口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼは、たとえば口腔組織コラーゲンを基質とするプロテアーゼであり、さらに具体的には、I型コラーゲン、III型コラーゲンおよびIV型コラーゲンからなる群から選択される一種または二種以上を基質とするプロテアーゼである。
また、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼは、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼ等の歯周病原因性プロテアーゼであってもよい。
【0017】
口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼとして、たとえば、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
以下に各酵素の具体例を挙げる。
【0018】
歯周病原因菌産生システインプロテアーゼとして、具体的には、ジンジパインが挙げられる。活性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、ジンジパインは、好ましくは塩基性アミノ酸-ジンジパインであり、より好ましくは、Arg-ジンジパイン(Rgp)およびLys-ジンジパイン(Kgp)からなる群から選択される少なくとも一種の塩基性アミノ酸-ジンジパインであり、さらに好ましくはKgpである。
【0019】
本実施形態において、活性抑制用組成物は、活性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、好ましくは、カルバゾクロムを有効成分とする、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼの活性抑制用組成物であり、より好ましくは、カルバゾクロムを有効成分とする、ジンジパインの活性抑制用組成物であり、さらに好ましくは、カルバゾクロムを有効成分とする、塩基性アミノ酸-ジンジパインの活性抑制用組成物である。
【0020】
歯周病原菌の具体例として、Porphyromonas gingivalis(P.g.)、Tannerella forsythia(T.f.)、Treponema denticola(T.d.)、Actinobacicclus actino-mycetemcomitans(A.a)およびPrevotella intermedia(P.i)からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
歯周病原菌は、活性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、好ましくはP.g.である。P.g.のfimA遺伝子型としては、I~V型およびIb型が挙げられる。活性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、P.gは、好ましくはfimAI型のP.g.であり、より好ましくはWild type(fimAI型)のP.g.である。
【0021】
また、MMPsとして、具体的には、口腔組織コラーゲンを基質とするMMPが挙げられる。活性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、MMPは、好ましくは、I型コラーゲンおよびIV型コラーゲンからなる群から選択される少なくとも一種を基質とする。
同様の観点から、MMPsは、好ましくはMMP-1、MMP-2およびMMP-9からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0022】
活性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼは、好ましくは歯周病原因菌産生システインプロテアーゼならびにMMP-1、MMP-2およびMMP-9からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0023】
口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制とは、具体的には、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの有する活性を低減または消失させることをいい、さらに具体的には、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの有するタンパク質分解活性を低減または消失させることをいう。上記タンパク質分解活性は、具体的には、口腔組織コラーゲンの分解活性である。
【0024】
本実施形態において、活性抑制用組成物は、具体的には、上述の活性抑制のために用いられる組成物であり、カルバゾクロムを有効成分として含む。カルバゾクロムとしては、たとえば市販品を用いることができる。
【0025】
活性抑制用組成物中のカルバゾクロムの濃度は、性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、好ましくは10μM以上であり、より好ましくは50μM以上、さらに好ましくは0.1mM以上、さらにより好ましくは0.5mM以上である。
また、活性抑制用組成物中のカルバゾクロムの濃度は、好ましくは100mM以下であり、より好ましくは90mM以下である。
【0026】
活性抑制用組成物中のカルバゾクロムの含有量は、活性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、活性抑制用組成物全体に対して、たとえば0.0005質量%以上であってよく、好ましくは0.003質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、たとえば0.03質量%以上であってもよい。
また、溶解性向上の観点から、活性抑制用組成物中のカルバゾクロムの含有量は、活性抑制用組成物全体に対して、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0027】
活性抑制用組成物は、カルバゾクロムの成分以外の成分をさらに含むことができる。かかる成分は、たとえばその用途、剤型に応じて、選択することができる。
また、活性抑制用組成物は、たとえば、医薬品、医薬部外品として使用されてもよい。
【0028】
カルバゾクロムの成分以外の成分として、たとえば、塩化亜鉛、エリソルビン酸およびその塩からなる群から選択される少なくとも一つの化合物が挙げられる。エリソルビン酸の塩として、たとえば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
また、活性抑制用組成物は、カルバゾクロムとともに活性抑制用組成物に含まれる際に好ましい相乗効果を得る観点から、好ましくは塩化亜鉛およびエリソルビン酸からなる群から選択される少なくとも一つの化合物をさらに含む。このとき、活性抑制用組成物は好ましくは後述の口腔用組成物である。
【0029】
活性抑制用組成物中の塩化亜鉛の含有量は、カルバゾクロムとともに活性抑制用組成物に含まれる際に好ましい相乗効果を得る観点から、活性抑制用組成物全体に対して、好ましくは0.00005質量%以上であり、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上である。
また、活性抑制用組成物中の塩化亜鉛の含有量は、活性抑制用組成物全体に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。これにより、亜鉛の金属味を低減することができる。
【0030】
活性抑制用組成物中のエリソルビン酸の含有量は、カルバゾクロムとともに活性抑制用組成物に含まれる際に好ましい相乗効果を得る観点から、活性抑制用組成物全体に対して、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。
また、同様の観点から、活性抑制用組成物中のエリソルビン酸の含有量は、活性抑制用組成物全体に対して、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0031】
活性抑制用組成物中のカルバゾクロムの含有量に対する塩化亜鉛の含有量の質量比(塩化亜鉛/カルバゾクロム)は、カルバゾクロムとともに活性抑制用組成物に含まれる際に好ましい相乗効果を得る観点から、組成物がRgpの活性抑制組成物であるとき、好ましくは0.02~0.2、より好ましくは0.055~0.065であり、組成物がKgpの活性抑制組成物であるとき、好ましくは0.05~0.06である。
また、活性抑制用組成物中のカルバゾクロムの含有量に対するエリソルビン酸の含有量の質量比(エリソルビン酸/カルバゾクロム)は、カルバゾクロムとともに活性抑制用組成物に含まれる際に好ましい相乗効果を得る観点から、組成物がRgpの活性抑制組成物であるとき、好ましくは20~200、より好ましくは60~65であり、組成物がKgpの活性抑制組成物であるとき、好ましくは8~9である。
【0032】
(口腔用組成物)
活性抑制用組成物は、活性抑制用組成物の活性抑制効果向上の観点から、好ましくは口腔に適用される。また、同様の観点から、活性抑制用組成物は、好ましくは口腔用組成物である。
口腔用組成物の具体例として、練歯磨、液体歯磨、歯磨粉等の歯磨剤;口腔内用ゲル製剤、口腔用軟膏剤、口腔内用パスタ剤、口腔内用ペースト剤等の口腔用塗布剤;歯肉付着性テープ製剤等の口腔用貼付剤;含嗽剤(洗口液);口腔用丸剤;口腔内用錠剤;口腔用散剤;口腔内用粉剤;口腔内用液剤;口腔内用懸濁剤;口腔内用乳剤;口腔内用顆粒剤;ガム剤;トローチ剤;バッカル状からなる群から選択される一種が挙げられる。
また、口腔用組成物の剤型として、たとえば、液剤、半固形剤および固形剤が挙げられる。
【0033】
口腔用組成物の口腔への適用量について、1日あたりのカルバゾクロムの適用量は、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制効果向上の観点から、好ましくは0.002mg以上であり、より好ましくは0.2mg以上である。
また、安全性の観点から、1日あたりのカルバゾクロムの適用量は、好ましくは30mg以下である。
また、口腔用組成物の口腔への1日あたりの適用回数は、たとえば1~10回としてよく、好ましくは1~5回である。
【0034】
(その他成分)
活性抑制用組成物が口腔用組成物であるとき、口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の成分以外の成分を含んでもよい。
かかる成分としては、たとえば、薬用成分、研磨剤、粘結剤、粘稠剤、界面活性剤、矯味剤、防腐剤、香料、着色剤、pH調整剤、溶剤、可溶化剤、基剤、洗浄剤、吸着剤等が挙げられ、剤形に応じて適宜選択し得る。以下に添加成分の具体例を示すが、本発明の配合可能な成分はこれらに限定されるものではない。
【0035】
薬用成分としては、たとえば、殺菌剤、抗炎症剤、血行促進剤、歯石沈着抑制剤、ステイン除去剤、知覚過敏抑制剤、ビタミン剤および歯垢分解酵素からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの薬効成分は、医薬品、口腔用組成物等に使用しうるものであれば限定されない。
【0036】
薬用成分のうち、殺菌剤としては、たとえば、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、セチルピリジニウム塩化物水和物、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ヒノキチオール、クロルヘキシジン塩酸塩、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ラウロイルサルコシンナトリウムおよびトリクロサンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中の殺菌剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.01~1質量%とすることができる。
【0037】
抗炎症剤としては、たとえば、β-グリチルレチン酸、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二アンモニウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム(グリチルリチン酸ジカリウム)、グリチルリチン酸モノアンモニウム、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物、アラントイン、アラントインジヒドロキシアルミニウム、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロールおよびリゾチーム塩酸塩からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中の抗炎症剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.01~1質量%とすることができる。
【0038】
血行促進剤としては、たとえば、塩化ナトリウムおよび酢酸トコフェロールからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
口腔用組成物中の血行促進剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.01~40質量%とすることができる。
【0039】
歯石沈着抑制剤としては、たとえば、ゼオライト、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム(無水)、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸水素二ナトリウム(結晶)、リン酸三ナトリウムおよびポリリン酸ナトリウムからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0040】
ステイン除去剤としては、たとえば、マクロゴール(マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000など)、ポリリン酸ナトリウムおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0041】
知覚過敏抑制剤としては、たとえば、硝酸カリウムおよびアルミニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0042】
ビタミン剤としては、たとえば、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、ピリドキシン塩酸塩、酢酸DL-α-トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、トコフェロールニコチン酸エステルおよびパンテノールからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中のビタミン剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.1~5質量%とすることができる。
【0043】
歯垢分解酵素としては、たとえばデキストラナーゼが挙げられる。
【0044】
研磨剤としては、たとえば、無水ケイ酸、シリカ(結晶性シリカ又は非晶性シリカ)、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤;ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウムおよび合成樹脂系研磨剤からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中の研磨剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば1~40質量%とすることができる。
【0045】
粘結剤としては、たとえば、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等の有機系粘結剤、増粘性無水ケイ酸およびベントナイトからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中の粘結剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.5~5質量%とすることができる。
【0046】
粘稠剤としては、たとえば医薬品、食品または化粧品原料として市販されているものであればよく、具体的には、多価アルコール、さらに具体的にソルビット、グリセリン、濃グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロパンジオール(1,3-プロパンジオール)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、トレハロース、ヒアルロン酸ナトリウムおよび加水分解コラーゲンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。また、粘結剤の他の例として、セタノール、ステアリルアルコールが挙げられる。
このうち、ソルビットはたとえばソルビット液(70%)として添加されてもよい。
口腔用組成物中の粘稠剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば1~30質量%とすることができる。
【0047】
界面活性剤としては、具体的には、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられ、好ましくはアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0048】
アニオン界面活性剤では、たとえば、N-アシルアミノ酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム等)、および、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸塩からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中のアニオン界面活性剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.01~3質量%とすることができる。
ノニオン界面活性剤では、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミド、グリセリン脂肪酸エステルおよびモノステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中のノニオン界面活性剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.1~10質量%とすることができる。
両性界面活性剤では、たとえば、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤およびイミダゾリニウムベタイン系界面活性剤からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。その具体例としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン(たとえばヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン)が挙げられる。
口腔用組成物中の両性界面活性剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.1~3質量%とすることができる。
【0049】
矯味剤としては、たとえば、L-グルタミン酸ナトリウム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、ショ糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、ハチミツ、アスパルテーム、ステビア、スクラロース、キシリトール、イノシトール、D-ソルビトール、ソルビトール液、D-マンニトール、アラビトール、ラフィノース、ラクチュロース、ラクチトール、エリスリトール、還元パラチノース、パラチノース、パラチニット、アセスルファムK、マルトース、マルトシルトレハロースまたはマルチトール、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ペリラルチン、p-メトキシシンナミックアルデヒドおよびソーマチンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中の矯味剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.1~40質量%とすることができる。
【0050】
防腐剤としては、たとえば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、イソプロピルパラベン、プロピルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル;フェノキシエタノール、エタノール等のアルコール類;ソルビン酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、プロピオン酸およびこれらの塩;エチレンジアミン四酢酸塩、ならびに、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中の防腐剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.1~1質量%とすることができる。
【0051】
香料としては、たとえば、L-メントール、ペパーミント、スペアミント、フルーツ香料およびハッカ油からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中の香料の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.1~5質量%とすることができる。
【0052】
着色剤としては、たとえば、ベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、クマリンド色素等の天然色素;赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等の法定色素;リボフラビン、および、二酸化チタンからなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0053】
pH調整剤としては、たとえば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタミン酸、ピロリン酸、酒石酸、酢酸水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等の酸やアルカリ、緩衝剤からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中のpH調整剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば0.01~3質量%とすることができる。
【0054】
溶剤としては、たとえば、水;エタノール、プロパノールなどの低級アルコールが挙げられる。
口腔用組成物中の溶剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば10~90質量%とすることができる。
【0055】
可溶化剤は、たとえば水への上記添加剤や薬効成分の溶解を促進させるために添加してもよい。そのような可溶化剤の例として、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類が挙げられる。
【0056】
基剤としては、たとえば炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
また、軟膏剤の基剤として、たとえば、ステアリルアルコール、ステアリン酸、セタノール、濃グリセリンおよびマクロゴール(マクロゴール400、マクロゴール4000等)からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。
口腔用組成物中の基剤の含有量は、口腔用組成物全体に対してたとえば1~99質量%とすることができる。
【0057】
洗浄剤としては、たとえばポリリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0058】
吸着剤としては、たとえばβ-シクロデキストリンが挙げられる。
【0059】
さらに、上記成分以外にも、本発明の内容を損なわない範囲で、通常、口腔用組成物の用途に適した成分も適宜配合することができる。
【0060】
(製造方法)
本実施形態において、口腔組織コラーゲン分解プロテアーゼの活性抑制用組成物を製造する方法は、たとえば、口腔用組成物にカルバゾクロムを配合する工程を有する。
かかる製造方法は、好ましくは、歯周病原因菌産生システインプロテアーゼの活性抑制用組成物を製造する方法である。
活性抑制用組成物の具体的な製造手順は、たとえば活性抑制用組成物の剤型に応じて選択することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0062】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
以下の例において、以下の成分を用いた。
カルバゾクロム:三和ケミカル社製
ヒノキチオール:富士フィルム和光純薬工業社製
グリチルリチン酸ジカリウム:丸善製薬社製
酢酸トコフェロール:エーザイ社製
濃グリセリン:化粧品用濃グリセリン、阪本薬品工業社製
クエン酸:関東化学社製
クエン酸ナトリウム:関東化学社製
フェノキシエタノール:四日市合成社製
イソプロピルメチルフェノール:大阪化成社製
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60:日光ケミカルズ社製
マクロゴール400:日油社製
マクロゴール4000:日油社製
セチルピリジニウム塩化物水和物:MERCK社製
アラントイン:富士フィルム和光純薬社製
カルボキシメチルセルロースナトリウム:CMCダイセル1150、ダイセルミライズ社製
ソルビトール液:花王社製
プロピレングリコール:ADEKA社製
ラウレス硫酸ナトリウム:ナカライテスク社製
【0064】
(試験例1)酵素阻害活性の測定
本例では、歯周病原菌分泌酵素およびMMPsの阻害活性を測定した。
【0065】
(ジンジパイン阻害活性の測定)
以下の手順でPoryphyromonas gingivalisから分泌される酵素であるジンジパイン(RgpおよびKgp)に対する阻害活性を測定した。結果を表1(表1-1および1-2)に示す。
【0066】
(酵素液の調製)
嫌気チャンバー内にてディスポーサブル15mL遠心管に0.7%グルコース添加GAM broth (日歯周誌46:118-126、2004)10mLを分注し、菌株(Porphyromonas gingivalis、ATCC 33277 Wild type(fimA type I))の凍結保管菌液を融解して0.1mLを接種した後、37℃で24時間嫌気的に培養した。また、ディスポーサブル50mL遠心管に0.7%グルコース添加GAM broth 25mLを分注し、菌株の菌懸濁液0.25mLを接種した後、37℃で24時間嫌気的に培養した。これら培養液を嫌気チャンバーから搬出し、4℃下で1,100 rpm、5分間遠心分離し、上清を新しいディスポーサブル50mL遠心管に移した。氷冷下で培養上清と等量の80%硫酸アンモニウムを加え、よく撹拌した後、4℃下で10,000×g、30分間遠心分離した。上清を除去した後、沈渣に氷冷したバッファーA(20mM Tris-HCl (pH7.4)、150mM NaCl、10mM CaCl2)を十分量加え、完全に溶解した。その後、各菌株の溶解液0.5mLを0.02% Tween20添加バッファーA中で、Membrane Molecular-Weight Cutoff 10,000、カセットサイズ0.1-0.5mLのSlide-A-Lyzer Dialysis Cassetteキット(Thermo SCIENTIFIC、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて一晩透析した。透析方法はキットの説明書に準拠して行った。カセットから回収した溶液を4℃下で7,000×g、10分間遠心分離し、沈渣を除いた上清を濃縮P.g.上清とした。
【0067】
(酵素阻害活性の測定方法)
1.10倍に希釈した濃縮P.g.上清と被験物質を体積比1:1で加え、プレインキュベーション(96穴プレートを使用、37℃、10分間)した。被検物質として、カルバゾクロム(実施例1)およびヒノキチオール(対照例1)を用いた。
2.酵素基質(終濃度10μM)を添加し、10分間インキュベートした。Rgpの基質としてZ-His-Glu-Lys-MCA (ペプチド研究所社製)を用い、Kgpの基質としてBz-Arg-MCA (ペプチド研究所社製)を用いた。
3.蛍光測定(Enspire、PerkinElmer社製、Ex/Em 380/460 nm)により、基質から遊離した物質の蛍光強度から、ブランク溶液の値を減算し、以下の式に従って酵素阻害活性を算出した。
酵素阻害活性(%)=100-(測定サンプル蛍光強度 / コントロールの蛍光強度)×100
なお、コントロールは被験物質のかわりに、被験物質の希釈調製に用いたpH7.4リン酸緩衝液を加えた群である。実験はN=3で行い、表1(表1-1および1-2)には求めた酵素阻害活性の平均値を示した。
【0068】
(MMPs阻害活性の測定)
被検物質として、カルバゾクロムを用い(実施例1)、以下の手順でMMPs(MMP-1、MMP-2およびMMP-9)に対する阻害活性を測定した。結果を表1(表1-3~1-5)に示す。
【0069】
(酵素阻害活性の測定方法)
MMP-1阻害活性の測定にはMMP-1 Inhibitor Screening Kit(BioVision社製、#K794-100)を用い、以下の流れで実験を行った。
1.バッファーで希釈したMMP-1酵素液を96ウェルプレートに50μL添加した後、反応液が最終0.1mM, 1mMとなるようカルバゾクロム水溶液を25μL加え、軽く振盪後、37℃で5分インキュベートした。
2.MMP-1の基質を含む反応液を25μL添加し、10分後に蛍光(Enspire、PerkinElmer社製、Ex/Em 480/530 nm)を測定した。ブランク溶液の値を減算した蛍光値を用い、下記式に従って酵素阻害活性(%)を算出した。表1(表1-3)にはN=3の平均値を示した。
酵素阻害活性(%)=100-(測定サンプル蛍光強度 / コントロールの蛍光強度)×100
なお、コントロールは被験物質の代わりにバッファーのみを添加した群を指す。
【0070】
MMP-2およびMMP-9阻害活性の測定には、MMP-2/9 Assay kit(Sonsolyte #AS-72224)を、標準プロトコールから一部改変し、以下の流れで試験を行った。
1.必要量のMMP-2/9酵素溶液を200 ng/mLとなるように調製した。
2.1.で調製した液に、酢酸4-アミノフェニル水銀を1mMとなるように添加し37℃で1時間インキュベートした。
3.2.の液50μLと、最終25, 250μMとなるよう調整したカルバゾクロム水溶液をそれぞれ96well plateに添加し、37℃で10分間インキュベートした。
4.キット付属のMMP-2/9基質を100μLずつ添加し、37℃で10分間インキュベートした。
5.蛍光(Enspire、PerkinElmer社製、Ex/Em 480/530 nm)を測定し、ブランク溶液の値を減算した蛍光値を用い、下記式に従って酵素阻害活性(%)を算出した。表1(表1-4および1-5)にはN=3の平均値を示した。
酵素阻害活性(%)=100-(測定サンプル蛍光強度 / コントロールの蛍光強度)×100
なお、コントロールは被験物質の代わりにバッファーのみを添加した群を指す。
【0071】
【0072】
表1より、カルバゾクロムは、RgpおよびKgpならびにMMP-1、MMP-2およびMMP-9に対し、高い阻害活性を示すことが確認された。また、カルバゾクロムの酵素阻害活性は、特許文献2に記載のヒノキチオールを用いた場合(対照例1)と比べても、これに劣らぬ効果的なものであることが確認された。
【0073】
(試験例2)洗口液
表2に記載の成分のうち、添加順Aの成分を60℃で混合、溶解した。これに添加順Bの成分を加えて混合し、各例の洗口液を得た。
各例で得られた洗口液の外観を目視にて観察した。また、各例で得られた洗口液のにおいを評価した。においは各被験物質を配合していない基剤群(Mock)を参照して評価した。結果を表2に示す。
表2ならびに後述の表3および表4に記載の処方は以下の通りである。
MOCK:基剤
HO処方:ヒノキチオール
CSS処方:カルバゾクロム
【0074】
【0075】
(試験例3)口腔用軟膏剤
表3に記載の成分のうち、添加順Aの成分を80℃で混合、溶解した。これに添加順Bの成分を加えて混合、分散し、50℃に冷却した。そして、添加順Cの成分を加えて混合、分散し、室温に冷却して各例の口腔用軟膏剤を得た。
各例で得られた口腔用軟膏剤の外観を目視にて観察した。また、各例で得られた洗口液のにおいを評価した。においは各被験物質を配合していない基剤群(Mock)を参照して評価した。結果を表3に示す。
【0076】
【0077】
(試験例4)歯磨組成物
表4に記載の成分のうち、添加順Bの成分を60℃で加熱溶解した。これを添加順Aの成分に加えて混合した。混合物を撹拌しながら添加順Cの成分を加え、各例の歯磨組成物を得た。
各例で得られた歯磨組成物の外観を目視にて観察した。また、各例で得られた洗口液のにおいを評価した。においは各被験物質を配合していない基剤群(Mock)を参照して評価した。結果を表4に示す。
【0078】
【0079】
表2~表4より、各実施例においては、口腔用組成物の臭いが好適に抑制された。
【0080】
(試験例5)酵素阻害活性の測定
本例では、組成物のジンジパイン(RgpおよびKgp)の阻害活性を、後述の点以外は試験例1に準じて評価した。各例の組成物の配合を以下に示す。
実施例5:カルバゾクロム(CSS)0.0001、0.001、0.1、1および10mM(以上、濃度5点)、溶媒PBS
実施例6:塩化亜鉛(ZC)0.0001、0.01、0.1、1および10mM(以上、濃度5点)、溶媒PBS
実施例7:エリソルビン酸(Es)0.0001、0.01、0.1、1および10mM(以上、濃度5点)、溶媒PBS
上記の実施例5~7から求めた活性阻害率から、50%活性阻害濃度(IC50)を算出した結果は以下の表5のとおりである。
【0081】
【0082】
さらに、カルバゾクロムと、塩化亜鉛またはエリソルビン酸をそれぞれ上記のIC50によってノーマライズした濃度を基に1:3、1:1、3:1となるように組み合せ、相加的に算出した50%活性阻害濃度を基準に2倍量から公比2で3段階除した各4濃度に調製した組み合わせ成分を用いて、再度試験例1に準じて下記の実施例8ならびに実施例9の評価を行った。
実施例8:カルバゾクロムおよび塩化亜鉛(ZC)、上記4濃度(溶媒PBS)
実施例9:カルバゾクロムおよびエリソルビン酸(Es)、上記4濃度(溶媒PBS)
【0083】
(相乗的効果の評価)
50%増殖阻害効果を指標とした成分の併用効果を、アイソボログラム(Isobologram)を用いて評価した。カルバゾクロムと他の成分とを組み合わせた際のジンジパイン阻害活性に相加作用を示す場合、下記式に示されるCombination Index(CI)値が1となり、相乗作用を示す場合がCI<1、拮抗作用を示す場合、CI>1となる。下記式中のXはZC、EsまたはCSSである。
CI=(DX1/DX1_50)+(DX2/DX2_50)
ただし、DXiは成分併用時に50%阻害効果を示す組合せの用量、DXi_50は単独で50%活性阻害効果を示す用量である。
【0084】
相乗効果の評価結果を表6に示す。表6に示した結果は、各成分が単独で50%阻害率を示す濃度に対する、実施例8および実施例9から算出した成分組み合せ時のKgpおよびRgpに対する50%阻害活性率を示す濃度を計算した評価結果であり、各比率におけるCI値を示した。
表6より、組成物がカルバゾクロムと塩化亜鉛またはエリソルビン酸とを組み合わせて含むことにより、Rgpについて各比率で組み合わせにより相乗作用を示し、さらに優れた阻害効果を得ることができる。また、Kgpについても、カルバゾクロムと塩化亜鉛またはエリソルビン酸とを1:1で組み合わせることで、これらの相乗作用によりさらに優れた阻害効果を得ることができる。
【0085】
【0086】
(製剤例)
軟膏剤(製剤例1-1および1-2)、歯磨剤(製剤例2-1および2-2)、および、外用液剤もしくは洗口液(製剤例3-1および3-2)の製剤例をそれぞれ表7~表9に示す。表7~表9中の成分量は質量%である。
【0087】
【0088】
【0089】