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特開2024-159664バッテリセルおよびこのようなバッテリセルを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159664
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】バッテリセルおよびこのようなバッテリセルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/536 20210101AFI20241031BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20241031BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20241031BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20241031BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M50/536
H01M50/54
H01M50/533
H01M50/557
H01M50/15
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071860
(22)【出願日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】10 2023 203 846.3
(32)【優先日】2023-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】メスト ユルトセヴェン
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H043AA19
5H043CA04
5H043DA02
5H043DA08
5H043EA07
5H043EA32
5H043EA36
5H043EA39
5H043HA02E
5H043HA07E
5H043HA17E
5H043JA07E
5H043JA08E
5H043JA13E
5H043JA21E
5H043LA02E
(57)【要約】      (修正有)
【課題】曲げ過程において、曲げ剛性に形成されたコンタクト要素が変形加工されず、可撓性に形成された導出ラグが変形加工可能なバッテリセル、およびバッテリセルを製造する方法を提供する。
【解決手段】製造プロセス中に形成されるバッテリセル中間製品21において、セルスタック1の導出ラグ2から形成された導出ラグ束5が、コンタクト要素11により延長され、該コンタクト要素11が、バッテリセルのセル端子7に電気的に接触接続可能であり、導出ラグ束5およびコンタクト部材11から成る複合体23が、セルスタック積層方向Sに対して横方向で、開いたセルハウジング19から突出し、組み立てられた状態では、導出ラグ束5およびコンタクト要素11から成る複合体23が曲げ過程においてセルスタック1と、セルハウジング開口19を閉じる壁要素9、特にセルハウジング底部との間の組付けギャップ内に位置決めされている、バッテリセルとする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルスタック(1)が配置されているセルハウジングを備えたバッテリセルであって、該バッテリセルを製造するためのプロセス中に、バッテリセル中間製品(21)が形成されており、該バッテリセル中間製品(21)において、前記セルスタック(1)が、ハウジング内部に配置されており、前記セルスタック(1)の導出ラグ(2)から形成された導出ラグ束(5)がコンタクト要素(11)によって延長されており、該コンタクト要素(11)が、前記バッテリセルのセル端子(7)に電気的に接続接触可能であり、導出ラグ束(5)およびコンタクト要素(11)から成る複合体(23)が、特にセルスタック積層方向(S)に対して横方向で、開いたセルハウジング開口(19)から突出しており、組み立てられた状態では、導出ラグ束(5)およびコンタクト要素(11)から成る前記複合体(23)が曲げ過程においてセルスタック(1)と、前記セルハウジング開口(19)を閉じる壁要素(9)、特にセルハウジング底部との間の組付けギャップ(24)内に位置決めされているバッテリセルにおいて、
前記曲げ過程において、特に曲げ剛性に形成された前記コンタクト要素(11)が変形加工されない、つまり曲げを有しないままであり、かつ前記曲げ過程において、専ら、特に可撓性に形成された前記導出ラグ(5)が変形加工可能であることを特徴とする、バッテリセル。
【請求項2】
前記コンタクト要素(11)が、前記壁要素(9)の構成部分である前記セル端子(7)に接続されていることを特徴とする、請求項1記載のバッテリセル。
【請求項3】
前記コンタクト要素(11)が、ベース金属薄板部分(29)と、該ベース金属薄板部分(29)とは別個の付加金属薄板部分(31)との2つの部分から構成されており、特に前記ベース金属薄板部分(29)が、前記セル端子(7)に接続されていることを特徴とする、請求項1または2記載のバッテリセル。
【請求項4】
前記ベース金属薄板部分(29)が、前記付加金属薄板部分(31)と一緒に溶接箇所、特に超音波溶接箇所を形成し、該溶接箇所において、前記導出ラグ束(5)が、前記付加金属薄板部分(31)と前記ベース金属薄板部分(29)との間で溶接されていることを特徴とする、請求項3記載のバッテリセル。
【請求項5】
前記導出ラグ(5)が、側方で前記セルスタック(1)から突出しており、かつ/または側方の外側の導出ラグ端部が、予備位置固定ステップにおいて圧縮可能であり、これにより前記導出ラグ束(5)を形成し、該導出ラグ束(5)において、前記導出ラグ端部が隙間なしに互いに上下に積層されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のバッテリセル。
【請求項6】
前記導出ラグ(5)が、前記セルスタック(1)と前記導出ラグ束(5)との間の領域、特に導出ラグ束(5)への移行部において、曲げ軸線もしくは曲げ箇所(B)を定義し、該曲げ箇所(B)を中心として、前記導出ラグ束(5)が前記曲げ過程において前記組付けギャップ(24)内に折込み可能であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のバッテリセル。
【請求項7】
前記曲げ過程において、U字形への折畳みが行われ、該U字形への折畳み時に特に前記コンタクト要素(11)が、前記曲げ軸線/曲げ箇所(B)を中心として折返し可能であり、かつ/または前記コンタクト要素(11)が、前記可撓性の導出ラグ(5)の変形加工/曲げにより前記組付けギャップ(24)内に位置決め可能であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のバッテリセル。
【請求項8】
前記バッテリセル中間製品(21)において、前記セル端子(7)に接続された前記コンタクト要素(11)が、前記壁要素(9)よりも横断面で小さく形成されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のバッテリセル。
【請求項9】
前記バッテリセル中間製品(21)において、前記コンタクト要素(11)が、ずれ寸法(Δx)だけ壁要素周縁部の内側に形成されており、該壁要素周縁部が、組み立てられた状態で、前記セルハウジング開口(19)の開口縁部上に位置しているので、好適には前記組み立て時に前記コンタクト要素(11)が妨害輪郭なしに、かつ変形加工なしにハウジング内部の前記組付けギャップ(24)内に位置決め可能であることを特徴とする、請求項8記載のバッテリセル。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載のバッテリセルを製造する方法であって、前記バッテリセルが、セルスタック(1)が配置されているセルハウジングを有し、前記バッテリセルを製造する方法中に、バッテリセル中間製品(21)を形成し、該バッテリセル中間製品(21)において、前記セルスタック(1)がハウジング内部に配置されており、前記セルスタック(1)の導出ラグ(2)から形成された導出ラグ束(5)が、コンタクト要素(11)により延長されており、該コンタクト要素(11)を、前記バッテリセルのセル端子(7)に電気的に接続接触させ、導出ラグ束(5)およびコンタクト要素(11)から成る複合体(23)が、特にセルスタック積層方向(S)に対して横方向で、開いたセルハウジング開口(19)から突出しており、組立て中に、導出ラグ束(5)およびコンタクト要素(11)から成る前記複合体(23)を、曲げ過程においてセルスタック(1)と、前記セルハウジング開口(19)を閉じる壁要素(9)、特にセルハウジング底部との間の組付けギャップ(24)内に位置決めする方法において、
前記曲げ過程において、特に曲げ剛性に形成された前記コンタクト要素(11)が変形加工されない、つまり曲げを有しないままであり、かつ前記曲げ過程において、専ら、特に可撓性に形成された前記導出ラグ(5)を変形加工させることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載のバッテリセルおよび請求項10の前提部に記載のこのようなバッテリセルを製造する方法に関する。
【0002】
角柱形のバッテリセルは、セルハウジング内部にセルスタック、つまり電極/セパレータ積層体を有しており、このスタック内において、アノードとカソードとがセパレータを介在させて積層方向で交互に互いに上下に重なり合って配置されている。アノードが、アノード側の導出ラグにより、側方でセルスタックから延長されているのに対して、カソードは、カソード側の導出ラグにより、側方でセルスタックから延長されている。
【0003】
冒頭で述べた形式のバッテリセルにおいて、アノード側の導出ラグの側方の外端部が、圧縮されてアノード側の導出ラグ束を形成している一方で、カソード側の導出ラグの側方の外端部は、圧縮されてカソード側の導出ラグ束を形成している。アノードおよびカソードは、それぞれ、活性材料で被覆された可撓性の基材フィルムから成っている。導出ラグは、基板フィルムの材料統一された一体的な構成部分である。
【0004】
側方でセルスタックから突出している導出ラグは、小さな固有剛性しか有していない。このことは、製造プロセスにおいて、導出ラグが特定の構造長さ以上では取扱いが困難になることにつながる。したがって導出ラグは、十分に短い構造長さに寸法設定すべきであり、この短い構造長さに起因して、導出ラグ束は、セル端子に直接に電気的に接触させられているのではなく、導出ラグ束は、曲げ剛性のコンタクト要素もしくはタブにより延長されており、このコンタクト要素もしくはタブが、バッテリセルの対応するセル端子に電気的に接触接続可能である。
【0005】
バッテリセルの製造中に、バッテリセル中間製品が形成され、このバッテリセル中間製品では、導出ラグ束とコンタクト要素とから成る複合体が、セルスタック積層方向に対して横方向に、突出部でもって開いたセルハウジング開口から外方に向かって突出している。今、バッテリセルの組立て時に、曲げ過程が行われる。この曲げ過程では、導出ラグ束とコンタクト要素とから成る複合体を、セルスタックと壁要素、特にセルハウジング底部との間のハウジング内部の組付けギャップ内に位置決めする。従来技術では、曲げ過程においてZ字形への折畳みが行われ、Z字形への折畳みでは、コンタクト要素区分が第1の曲げ箇所を中心として折り畳まれ、さらに、可撓性の導出ラグが第2の曲げ箇所を中心として曲げられる。コンタクト要素区分は、その比較的高い固有剛性に基づいて、組立て中に、場合によっては不十分にしか曲げることができないか、またはこのコンタクト要素区分は、ばね弾性的に戻ってしまう。この場合、セルスタックの近傍のコンタクト要素区分が、可撓性のセルスタック側を損傷するか、または変形させてしまう。
【0006】
国際公開第2020/156951号からは、第1の極性の複数の電極と、第1の極性とは逆の第2の極性の複数の電極とが電極積層体内に配置されているバッテリセルが公知である。第1の極性の複数の電極は、第1の導出ラグをそれぞれ有しており、第1の導出ラグは、電極スタックの第1の側で電極スタックから突出している。これに対して、第2の極性の電極は、第2の導出ラグをそれぞれ有しており、第2の導出ラグは、電極スタックの、第1の側とは反対側の第2の側で電極スタックから突出している。
【0007】
本発明の課題は、従来技術と比較して欠点のないバッテリセルの組立てが実施可能である、バッテリセルおよびこのようなバッテリセルを製造する方法を提供することである。
【0008】
この課題は、請求項1または10に記載の特徴によって解決される。本発明の好適な改良形は従属請求項に開示されている。
【0009】
本発明は、セルスタックが配置されているセルハウジングを備えたバッテリセルを起点とする。バッテリセルを製造するためのプロセス中に、バッテリセル中間製品が形成され、このバッテリセル中間製品において、セルスタックがハウジング内部に配置されており、セルスタックの導出ラグから形成された導出ラグ束がコンタクト要素によって延長されている。コンタクト要素が、バッテリセルのセル端子に電気的に接触接続可能である。バッテリセル中間製品において、導出ラグ束とコンタクト要素とから成る複合体が、セルスタック積層方向に対して横方向に、突出部でもって、開いたセルハウジング開口から突出している。別の製造プロセスにおいて、バッテリセルの組立てが実施され、この組立てでは、導出ラグ束とコンタクト要素とから成る複合体が、曲げ過程において、セルスタックと、セルハウジング開口を閉じる壁要素との間の組付けギャップ内に位置決めされる。請求項1の特徴部によれば、曲げ過程において、特に曲げ剛性に形成されたコンタクト要素が変形加工されない、つまり曲げを有しないままである。これに対して、曲げ過程において、専ら、特に可撓性に形成された導出ラグが変形加工される。したがって、本発明によれば、単に導出ラグが曲げられ、曲げ剛性のコンタクト要素は曲げられないので、可撓性のセルスタック側の損傷もしくは変形を阻止することができる。これに対して、セルスタック側のこのような変形は、曲げ過程時に曲げ剛性のコンタクト要素が曲げにより付加的に変形加工され得る場合に生じるだろう。この場合、コンタクト要素の曲げが不十分な場合に、妨害輪郭が形成されてしまい、この妨害輪郭により可撓性のセルスタック側が変形してしまう。
【0010】
バッテリセル中間製品では、コンタクト要素が、壁要素の構成部分であるセル端子に接続されていてよい。接続は、たとえば材料結合式に、たとえば超音波溶接または接着により行うことができる。
【0011】
技術的な実現において、コンタクト要素が、2つの部分から形成されていてよく、しかもベース金属薄板部分と、このベース金属薄板部分とは別個の付加金属薄板部分とから構成されていてよい。ベース金属薄板部分が、セル端子に直接に接続されていてよい。さらにベース金属薄板部分は、付加金属薄板部分と一緒に溶接箇所、特に超音波溶接箇所を形成することができ、この溶接箇所において、導出ラグ束が、付加金属薄板部分とベース金属薄板部分との間で溶接されている。付加金属薄板部分を使用することによって、超音波溶接工具が、導出ラグ束に直接に接触させられない。むしろ付加金属薄板部分を介在させて圧力が加えられ、これによって導出ラグ束の損傷を阻止することができる。
【0012】
導出ラグは、側方でセルスタックから突出している。さらに、バッテリセル中間製品において、側方の外側の導出ラグ端部が、予備位置固定ステップにおいて圧縮可能であり、これにより導出ラグ束を形成し、導出ラグ束において、導出ラグ端部が積層方向で隙間なしに、もしくは空気封入なしに互いに上下に積層されている。
【0013】
導出ラグは、セルスタックと導出ラグ束との間の領域において、曲げ軸線または曲げ箇所を有していてよく、曲げ軸線または曲げ箇所を中心にとして、導出ラグ束が曲げ過程において組付けギャップ内に折込み可能である。曲げ軸線または曲げ箇所は、特に導出ラグにおける導出ラグ束への移行部において定義されている。
【0014】
本発明によれば、曲げ過程においてU字形への折畳みが行われ、このU字形への折畳み時に、コンタクト要素が、曲げ軸線/曲げ箇所を中心にして折り返され、しかも曲げ軸線を中心として可撓性の導出ラグを曲げながら折り返される。これにより、コンタクト要素と導出ラグ束とから成る複合体をハウジング内部の組付けギャップ内に位置決め可能である。
【0015】
妨害輪郭のない簡単な組立てを可能にするために、バッテリセル中間製品において、セル端子に接続されたコンタクト要素が、壁要素よりも横断面で小さく寸法設定されていると好適である。この場合、コンタクト要素が、ずれ寸法だけ壁要素周縁部の内側に形成されていてよい。この壁要素周縁部は、組立て状態で、セルハウジング開口の開口縁部上に位置決めされている。このようなコンタクト要素幾何学形状では、コンタクト要素は、組立て時に妨害輪郭なしに、かつ変形加工なしに(曲げなしに)ハウジング内の組付けギャップ内に位置決めされ得る。
【0016】
以下では、本発明の実施例を添付の図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるバッテリセルを示す図である。
図2】本発明によるバッテリセルを示す図である。
図3】本発明によるバッテリセルを示す図である。
図4】本発明によるバッテリセルを示す図である。
図5】本発明に含まれない比較例によるバッテリセルを示す図である。
図6】本発明に含まれない比較例によるバッテリセルを示す図である。
図7】本発明に含まれない比較例によるバッテリセルを示す図である。
図8】本発明に含まれない比較例によるバッテリセルを示す図である。
【0018】
本発明のより簡単な理解の観点から、まず本発明に含まれない比較例を示す図4図8を参照する。図7には、部分断面図で組み立てられた状態で角柱形のバッテリセルが示されている。バッテリセルは、セルハウジング内部にセルスタック1、すなわち、電極/セパレータ積層体を有しており、このセルスタック1内には、アノードとカソードとがセパレータプレートを介在させて積層方向Sで交互に互いに上下に重なり合って配置されている。図8には例示的にアノードAが示されている。このアノードは、活性材料で被覆されている可撓性の基材フィルムから形成されている。基板フィルムは、側方で外側に向かって、被覆されていない導出ラグ2により延長されている。詳細に図示しないカソードも、同様に構成されている。全ての図面において、複数の導出ラグ2のうち常に2つの外側の導出ラグ2のみが示されている。
【0019】
図7には1つのセルスタック側が示されており、このセルスタック側からアノード側の全ての導出ラグ2が側方でセルスタック1から突出している。側方の外側の導出ラグ端部は、圧縮されてアノード側の導出ラグ束5を形成する。導出ラグ束5は、セルハウジングのハウジング底部9に形成されているセル端子7には直接に電気的に接触接続していない。むしろ導出ラグ束5は、曲げ剛性のコンタクト要素11によって延長されており、コンタクト要素11が、セル端子7に接続されている。これにより、可撓性のアノードAの導出ラグ2は、構造長さl図8)を減じられて形成されていてよく、これにより、バッテリー製造中の導出ラグ2の取扱いが容易になる。
【0020】
図5図6または図7では、セルハウジングは、ハウジング底部9の他に直方体形のハウジング筐体13を有している。このハウジング筐体13は、対向する2つの平坦側壁15を有しており、これらの平坦側壁15は、狭幅側壁17を介して互いに結合されている。壁15,17は、それぞれ反対側に位置するセルハウジング開口19を画定しており、これらのセルハウジング開口19のうち、図5図7には単に1つのセルハウジング開口19しか図示されていない。図示しないセルハウジング開口19は、組立て状態では、ハウジングカバーと、セル端子と、このセル端子に電気的に接触接続されたセルスタック1とから成るカバー構成群(図示せず)により閉じられている。図5図6および図7に図示した反対の側では、セルハウジング内部は、組立て状態(図7)においてハウジング底部9により閉じられている。
【0021】
図5および図6では、バッテリセルが、組立て状態前のプロセス時点に、バッテリセル中間製品21として示されている。したがって、カバー構成群(図示せず)が既にハウジング筐体13内に挿入されている一方で、ハウジング底部9はまだハウジング筐体13を閉じるように組み付けられていない。むしろ、導出ラグ束5とコンタクト要素11とから成る複合体23が、突出部でもって、まだ開いているセルハウジング開口19から外方に向かって突出している。コンタクト要素11は、図5図7では、二層の金属薄板部分として実現されている。これらの金属薄板層25,27は、セルスタック1に面した側で拡開するように曲げられており、導出ラグ束5は、コンタクト要素11の2つの金属薄板層25,27の間に位置決めされている。両金属薄板層25,27ならびにその間に配置された導出ラグ束5は、超音波溶接により材料結合式に接合されている。
【0022】
図5および図6に示したプロセス時点を起点として、ハウジング底部9は、接合ステップにおいてセルハウジング開口19の開口縁部領域上に位置決めされる。接合ステップでは、導出ラグ束5とコンタクト要素11とから成る複合体23が、曲げ箇所B1,B2(図6または図7)を中心としたZ字形への折畳みで折り畳まれる。第1の曲げ箇所B1は、コンタクト要素11を、セル積層体の近傍のコンタクト要素区分と、セル積層体から遠いコンタクト要素区分とに分割する。図6からさらに明らかであるように、バッテリセル中間製品21では、コンタクト要素11の金属薄板層25,27は、ハウジング底部9の周縁部を所定の過剰寸法Δxだけ超え出る。これにより、導出ラグ2の構造長さlを短縮することができる。しかし、妨害輪郭のない組立てを保証するために、2つのコンタクト要素区分を曲げ箇所B1を中心として互いに重なるように折り畳まなければければならない。
【0023】
第2の曲げ箇所B2は、セルスタック1と導出ラグ束5との間の導出ラグ2の領域に(直接に導出ラグ束5への移行部において)設けられている。Z字形への折畳み時に、まずセルスタックから離れたコンタクト要素区分が、セルスタックの近傍のコンタクト要素区分に対して第1の曲げ箇所B1を中心として反時計回りに曲げられる。さらに、導出ラグ束5とコンタクト要素11とから成る複合体23が、第2の曲げ箇所B2を中心として時計回りに曲げられ、これにより複合体23が、セルスタック1とハウジング底部9との間のハウジング内部の組付けギャップ24内に挿入可能である。コンタクト要素区分は、その比較的高い固有剛性に基づいて、曲げ過程中に場合によっては第1の曲げ箇所B1を中心として不十分にしか曲げられ得ないか、または第1の曲げ箇所B1を中心にしてコンタクト要素区分は僅かにばね弾性的に戻る。この場合、セルスタックの近傍のコンタクト要素区分が、可撓性のセルスタック側を損傷または変形させるという問題が生じる。
【0024】
以下に、図1図4につき本発明による手段を説明する。この手段により、組み立て中に可撓性のセルスタック側のこのような損傷または変形を回避することができる。図1図4に示した構成要素の基本的な構造および機能形式は、図5図8において説明した構成要素の構造ならびに機能形式とほぼ同一である。したがって、図1図4では、図5図8の説明が参照される。
【0025】
比較例とは異なり、本発明によれば曲げ過程時にコンタクト要素11は変形加工されない、つまり曲げを有しないままである一方で、曲げ過程においては可撓性に形成された導出ラグ2だけが変形加工させられる(すなわち折り曲げられる)。コンタクト要素11の曲げを回避するために、図1および図2に示したバッテリセル中間製品21では、セル端子7に接続されたコンタクト要素11が、従来技術とは異なり、ハウジング底部9よりも横断面で小さく寸法設定されている。したがってコンタクト要素11は、ハウジング底部9の周縁部に対してずれ寸法Δx図2)だけセットバックさせられている。これにより、横断面の大きなコンタクト要素11を妨害輪郭なしに組み立てるための折畳みのために必要である曲げ箇所B1(比較例、図6)を省略することができる。
【0026】
反対に、図1図4に示した実施例では、導出ラグ2の構成部材長さlは(図8と比較して)僅かにのみ増加しており、これによって、製造プロセス中の導出ラグ2の取扱いがさらに困難になることはない。
【0027】
したがって本発明によれば、専らセルスタック1と導出ラグ束5との間の導出ラグ2の領域において(すなわち、導出ラグ束5への移行部において)、まさに1つの曲げ軸線もしくは曲げ箇所Bが規定されており、この曲げ軸線もしくは曲げ箇所Bを中心として、導出ラグ束5とコンタクト要素11とから成る複合体23を、ハウジング内部の組付けギャップ24内に折り込むことができる。したがって組立て時に、(比較例のように)Z字形への折畳みではなく、U字形への折畳みが行われ、このU字形への折畳みでは、コンタクト要素11が曲げ軸線Bを中心として折り返される。この折返しは、可撓性の導出ラグ5の変形加工/曲げのみにより行われ、これにより複合体23は、組付けギャップ24内に位置決めされ、しかもコンタクト要素11を付加的に曲げることなしに位置決めされる。
【0028】
図1図3からさらに判るように、コンタクト要素11は、2つの部分から、すなわちベース金属薄板部分29と付加金属薄板部分31とから実現されている。ベース金属薄板部分29は、セル端子7に接続されている。付加金属薄板部分31は、導出ラグ束5を介在させてベース金属薄板部分29に超音波溶接により材料結合式に結合されている。
【符号の説明】
【0029】
1 セルスタック
2 導出ラグ
3 導出ラグ端部
5 導出ラグ束
7 セル端子
9 壁要素もしくはハウジング底部
11 コンタクト要素
13 ハウジング筐体
15 平坦側壁
17 狭幅側壁
19 セルハウジング開口
21 バッテリセル中間製品
23 複合体
24 組付けギャップ
25,27 金属薄板層
29 ベース金属薄板部分
31 付加金属薄板部分
A アノード
B1,B2,B 曲げ箇所
Δx ずれ寸法
Δx 過剰寸法
,l 構造長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルスタック(1)が配置されているセルハウジングを備えたバッテリセルであって、該バッテリセルを製造するためのプロセス中に、バッテリセル中間製品(21)が形成されており、該バッテリセル中間製品(21)において、前記セルスタック(1)が、ハウジング内部に配置されており、前記セルスタック(1)の導出ラグ(2)から形成された導出ラグ束(5)がコンタクト要素(11)によって延長されており、該コンタクト要素(11)が、前記バッテリセルのセル端子(7)に電気的に接続接触可能であり、導出ラグ束(5)およびコンタクト要素(11)から成る複合体(23)が、特にセルスタック積層方向(S)に対して横方向で、開いたセルハウジング開口(19)から突出しており、組み立てられた状態では、導出ラグ束(5)およびコンタクト要素(11)から成る前記複合体(23)が曲げ過程においてセルスタック(1)と、前記セルハウジング開口(19)を閉じる壁要素(9)、特にセルハウジング底部との間の組付けギャップ(24)内に位置決めされているバッテリセルにおいて、
前記曲げ過程において、特に曲げ剛性に形成された前記コンタクト要素(11)が変形加工されない、つまり曲げを有しないままであり、かつ前記曲げ過程において、専ら、特に可撓性に形成された前記導出ラグ(5)が変形加工可能であることを特徴とする、バッテリセル。
【請求項2】
前記コンタクト要素(11)が、前記壁要素(9)の構成部分である前記セル端子(7)に接続されていることを特徴とする、請求項1記載のバッテリセル。
【請求項3】
前記コンタクト要素(11)が、ベース金属薄板部分(29)と、該ベース金属薄板部分(29)とは別個の付加金属薄板部分(31)との2つの部分から構成されており、特に前記ベース金属薄板部分(29)が、前記セル端子(7)に接続されていることを特徴とする、請求項1記載のバッテリセル。
【請求項4】
前記ベース金属薄板部分(29)が、前記付加金属薄板部分(31)と一緒に溶接箇所、特に超音波溶接箇所を形成し、該溶接箇所において、前記導出ラグ束(5)が、前記付加金属薄板部分(31)と前記ベース金属薄板部分(29)との間で溶接されていることを特徴とする、請求項3記載のバッテリセル。
【請求項5】
前記導出ラグ(5)が、側方で前記セルスタック(1)から突出しており、かつ/または側方の外側の導出ラグ端部が、予備位置固定ステップにおいて圧縮可能であり、これにより前記導出ラグ束(5)を形成し、該導出ラグ束(5)において、前記導出ラグ端部が隙間なしに互いに上下に積層されていることを特徴とする、請求項1記載のバッテリセル。
【請求項6】
前記導出ラグ(5)が、前記セルスタック(1)と前記導出ラグ束(5)との間の領域、特に導出ラグ束(5)への移行部において、曲げ軸線もしくは曲げ箇所(B)を定義し、該曲げ箇所(B)を中心として、前記導出ラグ束(5)が前記曲げ過程において前記組付けギャップ(24)内に折込み可能であることを特徴とする、請求項1記載のバッテリセル。
【請求項7】
前記曲げ過程において、U字形への折畳みが行われ、該U字形への折畳み時に特に前記コンタクト要素(11)が、前記曲げ軸線/曲げ箇所(B)を中心として折返し可能であり、かつ/または前記コンタクト要素(11)が、前記可撓性の導出ラグ(5)の変形加工/曲げにより前記組付けギャップ(24)内に位置決め可能であることを特徴とする、請求項1記載のバッテリセル。
【請求項8】
前記バッテリセル中間製品(21)において、前記セル端子(7)に接続された前記コンタクト要素(11)が、前記壁要素(9)よりも横断面で小さく形成されていることを特徴とする、請求項1記載のバッテリセル。
【請求項9】
前記バッテリセル中間製品(21)において、前記コンタクト要素(11)が、ずれ寸法(Δx)だけ壁要素周縁部の内側に形成されており、該壁要素周縁部が、組み立てられた状態で、前記セルハウジング開口(19)の開口縁部上に位置しているので、好適には前記組み立て時に前記コンタクト要素(11)が妨害輪郭なしに、かつ変形加工なしにハウジング内部の前記組付けギャップ(24)内に位置決め可能であることを特徴とする、請求項8記載のバッテリセル。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項記載のバッテリセルを製造する方法であって、前記バッテリセルが、セルスタック(1)が配置されているセルハウジングを有し、前記バッテリセルを製造する方法中に、バッテリセル中間製品(21)を形成し、該バッテリセル中間製品(21)において、前記セルスタック(1)がハウジング内部に配置されており、前記セルスタック(1)の導出ラグ(2)から形成された導出ラグ束(5)が、コンタクト要素(11)により延長されており、該コンタクト要素(11)を、前記バッテリセルのセル端子(7)に電気的に接続接触させ、導出ラグ束(5)およびコンタクト要素(11)から成る複合体(23)が、特にセルスタック積層方向(S)に対して横方向で、開いたセルハウジング開口(19)から突出しており、組立て中に、導出ラグ束(5)およびコンタクト要素(11)から成る前記複合体(23)を、曲げ過程においてセルスタック(1)と、前記セルハウジング開口(19)を閉じる壁要素(9)、特にセルハウジング底部との間の組付けギャップ(24)内に位置決めする方法において、
前記曲げ過程において、特に曲げ剛性に形成された前記コンタクト要素(11)が変形加工されない、つまり曲げを有しないままであり、かつ前記曲げ過程において、専ら、特に可撓性に形成された前記導出ラグ(5)を変形加工させる
ことを特徴とする、方法。
【外国語明細書】