(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015967
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ウレタンフォームの分解剤
(51)【国際特許分類】
C08L 71/02 20060101AFI20240130BHJP
C08G 65/331 20060101ALI20240130BHJP
C08G 18/82 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08L71/02
C08G65/331
C08G18/82
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087461
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2022118013
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小澤 宏和
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊介
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CH051
4J002CK042
4J002GT00
4J005AA04
4J005BB01
4J005BD03
4J034DG04
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC71
4J034LB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、水酸基価が低い分解生成物を得ることが出来るウレタンフォームの分解剤を提供するものである。
【解決手段】本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、水酸基価が30~700mgKOH/gであり、かつ溶解度パラメータ(SP値)が8~14(cal/cm3)1/2であるポリオールからなるウレタンフォームの分解剤であり、ポリオールが、1分子あたり2~4個の水酸基を有するポリオールからなる請求項1に記載のウレタンフォームの分解剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価が30~700mgKOH/gであり、かつ溶解度パラメータ(SP値)が8~14(cal/cm3)1/2であるポリオールからなるウレタンフォームの分解剤。
【請求項2】
ポリオールが、1分子あたり2~4個の水酸基を有するポリオールからなる請求項1に記載のウレタンフォームの分解剤。
【請求項3】
ポリオールがポリエーテルポリオールからなる請求項1に記載のウレタンフォームの分解剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンフォームの分解剤に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化、オゾン層破壊などの地球環境問題への意識の高まりとともに、近年廃棄物処理技術、特に廃プラスチックのリサイクル技術の研究開発が急速に進められている。廃プラスチックのリサイクル技術として化学的処理により原料として再生するケミカルリサイクルは資源の循環利用の観点から有用である。
【0003】
ポリウレタンのケミカルリサイクル技術の一つとしてグリコール分解法が知られている(特許文献1)。グリコール分解法は、廃ポリウレタンを過剰のジオール中で加熱混合することにより分解し、ポリオールを生成回収する方法である。このグリコール分解法においてはポリオール化合物等が生成する。
グリコール分解法において、ウレタンフォームの分解剤としては、炭素数が2~6個の脂肪族ジオール(特許文献1)やジエチレングリコール(特許文献2~3)などの低分子の化合物が使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭53-029359号公報
【特許文献2】特許第5358635号公報
【特許文献3】特許第4319298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウレタンフォームの分解剤として、ジエチレングリコールなどの低分子の化合物を使用する場合、得られる分解生成物の水酸基価が高く、得られた分解生成物から所望の硬度を有するウレタンフォームを再形成するのが難しいという問題があった。
更に、ジエチレングリコールなどの低分子の化合物は、ウレタンフォームを再形成する際、ポリエーテルポリオールと分離してしまうため、得られた分解生成物から取り除く必要があった。
従って、本発明は、水酸基価が低い分解生成物を得ることが出来るウレタンフォームの分解剤を提供するものである。更に得られた分解生成物が分解剤とポリエーテルポリオールとに分離しない、分解剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、水酸基価が30~700mgKOH/gであり、かつ溶解度パラメータ(SP値)が8~14(cal/cm3)1/2であるポリオールからなるウレタンフォームの分解剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウレタンフォームの分解剤を使用することにより、水酸基価が低い分解生成物を得ることが出来る。更に得られた分解生成物が分解剤とポリエーテルポリオールとに分離しないため、分解剤を除去することなくウレタンフォームを再形成することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
分解されるウレタンフォームは、特に限定されるものではないが、例えば、製造工程において発生するフォーム屑(切り欠きフォーム、ばり、空気抜き穴などからの洩れフォーム、品質管理などのためのフリー発泡フォーム、不良品など)や、使用済みの各種産業製品(産業機器、家具、建材など)から回収された回収フォームなどが挙げられる。
【0009】
分解に用いるウレタンフォームの形状は、特に制限はないが、例えば、フォーム屑や回収フォームをそのまま用いてもよいし、カッター刃を備えるペレタイザー、カッターミル、セントリーカッター、一軸破砕機及び二軸破砕機等で更に細断したフォームでもよい。
【0010】
本発明のウレタンフォームの分解剤はポリオールからなる。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール及びエポキシポリオール等をあげることができる。これらのうち、得られるウレタンフォームの耐加水分解性及びウレタンフォームの分解物の粘度の観点より、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0011】
本発明のウレタンフォームの分解剤は、水酸基価が30~700mgKOH/gであり、更に好ましくは35~500mgKOH/gであり、最も好ましくは50~250mgKOH/gである。
水酸基価が30mgKOH/g未満では、使用する分解剤の量が多くなってしまい、ウレタンフォームの分解物中の廃ポリウレタンの比率が低くなってしまうという問題がある。
本明細書における水酸基価は、JIS K0070(1995年版)に規定の方法で測定される。
【0012】
本発明のウレタンフォームの分解剤は、溶解度パラメータ(SP値)が8~14(cal/cm3)1/2であり、更に好ましくは8.5~12.5(cal/cm3)1/2であり、最も好ましくは9~11(cal/cm3)1/2である。
SP値が8(cal/cm3)1/2未満、または14(cal/cm3)1/2を超えると分解効率が低下する。
本発明において、SP値とは、下記に示す通り凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表されるものである。
SP値=(△E/V)1/2
ここで△Eは凝集エネルギー密度、Vは分子容を表し、その値は、Robert F.Fedorsらの計算によるもので、例えばポリマー エンジニアリング アンド サイエンス(Polymer engineering and science)第14巻、147~154頁に記載されている。
【0013】
本発明のウレタンフォームの分解剤の水酸基の数は、好ましくは2~4であり、更に好ましくは3~4である。水酸基の数が2未満だと、得られるウレタンフォームの耐久性が悪化する。水酸基の数が4を超えると、得られるウレタンフォームの伸び、及び引っ張り強度が悪化し、硬度も高くなる。
本発明のウレタンフォームの分解剤の水酸基の数は、ポリオール1分子当たりの水酸基の数であり、13C-NMRから算出することができる。
【0014】
本発明のウレタンフォームの分解剤の数平均分子量は、好ましくは240~8400であり、更に好ましくは340~5000であり、最も好ましくは600~3400である。数平均分子量が240未満だと、得られるウレタンフォームの分解物が、ウレタンフォームを構成していたポリオールを主成分とする上層液と、ウレタンフォームの分解剤や副生成物を含有している下層液に分離してしまい、数平均分子量が8400より大きいと、分解効率が悪くなってしまうという問題がある。
【0015】
本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以降GPCと略記)を用いて、例えば以下の条件で測定することができる。
装置本体:HLC-8120(東ソー(株)製)
カラム:東ソー(株)製TSKgel α6000、G3000 PWXL
検出器:RI(Refractive Index)
溶離液:0.5%酢酸ソーダ・水/メタノール(体積比70/30)
溶離液流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
試料濃度:0.25重量%
注入量:200μl
標準物質:東ソー(株)製TSK TANDARD POLYETHYLENE OXIDE
データ処理ソフト:GPC-8020modelII(東ソー(株)製)
【0016】
本発明のウレタンフォームの分解剤のうち、水酸基価が30~700mgKOH/gであり、かつ溶解度パラメータ(SP値)が8~14(cal/cm3)1/2であり、水酸基の数が2である、ポリエーテルポリオールとしては、例えばプロピレングリコールのPO付加物、プロピレングリコールのEO付加物、プロピレングリコールのPOとEO付加物等が挙げられる。
【0017】
本発明のウレタンフォームの分解剤のうち、水酸基価が30~700mgKOH/gであり、かつ溶解度パラメータ(SP値)が8~14(cal/cm3)1/2であり、水酸基の数が3である、ポリエーテルポリオールとしては、例えばグリセリンのPO付加物、グリセリンのEO付加物、グリセリンのPOとEO付加物等が挙げられる。
【0018】
本発明のウレタンフォームの分解剤のうち、水酸基価が30~700mgKOH/gであり、かつ溶解度パラメータ(SP値)が8~14(cal/cm3)1/2であり、水酸基の数が4である、ポリエーテルポリオールとしては、例えばペンタエリスリトールのPO付加物、ペンタエリスリトールのEO付加物、ペンタエリスリトールのPOとEO付加物(数平均分子量240~8400)等が挙げられる。
【0019】
本発明のウレタンフォームの分解剤は、単独で用いても良く、または、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明のウレタンフォームの分解剤を用いてウレタンフォームの分解を行う方法としては、ウレタンフォームと本発明のウレタンフォームの分解剤との混合物を加熱及び撹拌する方法であれば特に限定するものではない。
ウレタンフォームと本発明のウレタンフォームの分解剤との混合物の反応温度は100~300℃であり、好ましくは140~260℃であり、更に好ましくは180~220℃である。
反応温度を100℃より低くした場合、ウレタンフォームの分解が遅く、反応が充分進まないことにより残った固形分の後処理が困難となり、ウレタンフォームのリサイクル率が低くなってしまうという問題がある。反応温度を300℃より高くすると、分解剤が分解してしまったり、消費エネルギーが多くなってしまったりするという問題がある。
【0021】
ウレタンフォームと本発明のウレタンフォームの分解剤との混合物の反応時間は好ましくは30分~15時間であり、更に好ましくは1~10時間であり、最も好ましくは2~6時間である。
反応時間が30分未満では、反応が充分進まないことにより、残った固形分の後処理が困難となり、ウレタンフォームのリサイクル率が低くなってしまうという問題がある。15時間を超えると消費エネルギーが多くなってしまうという問題がある。
【0022】
ウレタンフォームの分解に用いる本発明のウレタンフォームの分解剤の量は、ウレタンフォーム100重量部に対して好ましくは50~5000重量部であり、更に好ましくは100~2600重量部であり、最も好ましくは150~700重量部である。
分解剤の量が、ウレタンフォーム100重量部に対して50重量部未満であれば、ウレタンフォームを液状化することが出来ず、5000重量部を超えると生産性やウレタンフォームのリサイクル性に問題がある。
【0023】
ウレタンフォームの分解剤を用いてウレタンフォームの分解を行う際に、必要に応じてウレタンフォームの分解を促進する分解触媒を添加することで、分解速度を上げることができる。
添加する分解触媒としては、例えば、水酸化カリウムなどが挙げられる。
分解触媒の添加量は、分解効率及び生産性の観点より、ウレタンフォーム100重量部に対し好ましくは0.2~5重量部であり、更に好ましくは0.9~4.4重量部であり、最も好ましくは1.4~3.4重量部である。
分解触媒の添加量は、ウレタンフォーム100重量部に対して0.2重量部未満であれば、分解反応時間が長くなってしまい、5重量部を超えると分解触媒の除去が難しくなるという問題がある。
【0024】
本発明のウレタンフォームの分解物を得る方法として、ウレタンフォーム100重量部に対して50~5000重量部の請求項1に記載のウレタンフォームの分解剤及び0.2~5重量部の分解触媒を反応槽に投入する工程と、窒素雰囲気下で100℃~300℃の反応温度にて30分~15時間反応させてウレタンフォームの分解物を生産する工程とを含む他、前記分解触媒を除去する工程を含んでも良い。
分解触媒を除去する方法としては、吸着剤に前記分解触媒を吸着する方法、イオン交換樹脂を用いる方法(特開昭51-23211号公報等)及び前記分解触媒を炭酸ガスで中和して生じる炭酸塩を濾過する方法(特公昭52-33000号公報)等が挙げられる。
【0025】
吸着剤に前記分解触媒を吸着する方法の吸着剤としては、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の珪酸塩、活性白土、酸性白土、シリカゲル等が挙げられる。
市販の吸着剤としては、例えば、キョーワード600、700(それぞれ商品名:協和化学工業)、ミズカライフP-1、P-1S、P-1G、F-1G(それぞれ商品名:水澤化学工業)、トミタ-AD600、700(それぞれ商品名:富田製薬)等の珪酸塩等を用いることができる。これらの吸着剤を1種のみ使用する、若しくは2種以上を併用するものであっても構わない。
吸着剤は、分解触媒100重量部に対して好ましくは100~700重量部であり、更に好ましくは200~500重量部である。100重量部未満だと、分解触媒を取り除けない。700重量部より多いと、吸着材の除去が難しくなる。さらに、吸着剤に前記分解触媒を吸着した後、ろ過を行い、吸着剤を取り除いても良い。
【実施例0026】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
【0027】
<製造例1>
オートクレーブに、グリセリン100重量部、水酸化カリウム0.4重量部を投入し、反応温度が125~135℃を保つように制御しながら、1,2-プロピレンオキサイド(以下において、POと略記することがある)715重量部を3時間かけて滴下した後、130℃で2時間熟成した。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を16重量部、水16重量部を投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水し、数平均分子量が750であるグリセリンPO付加物を得た。水酸基価224mgKOH/g、水酸基の数3、SP値10.3(cal/cm3)1/2であった。こちらをウレタンフォームの分解剤(A-1)[以下、分解剤(A-1)と記載する]とした。
【0028】
<製造例2>
反応容器に、グリセリン100重量部、水酸化カリウム9重量部を投入し、反応温度が125~135℃を保つように制御しながら、PO 2684重量部を3時間かけて滴下した後、130℃で2時間熟成した。次いで反応温度が125~135℃を保つように制御しながら、エチレンオキサイド(以下において、EOと略記することがある)292重量部を2時間かけて滴下し、130℃で2時間熟成した。さらに、反応温度が125~135℃を保つように制御しながら、PO 255重量部を2時間かけて滴下した後、130℃で2時間熟成した。次いで、キョーワード600(協和化学工業(株)製)67重量部、水67重量部を投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水し、数平均分子量3000であるグリセリンPOEO付加物を得た。水酸基価56mgKOH/g、水酸基の数3、SP値9.2(cal/cm3)1/2であった。こちらをウレタンフォームの分解剤(A-2)[以下、分解剤(A-2)と記載する]とした。
【0029】
<製造例3>
オートクレーブに、グリセリン100重量部、水酸化カリウム0.06重量部を投入し、反応温度が125~135℃を保つように制御しながら、PO 166重量部を2時間かけて滴下した後、130℃で2時間熟成した。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を1.4重量部、水1.4重量部を投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水し、数平均分子量が250であるグリセリンPO付加物を得た。水酸基価670mgKOH/g、水酸基の数3、SP値13.3(cal/cm3)1/2であった。こちらをウレタンフォームの分解剤(A-3)[以下、分解剤(A-3)と記載する]とした。
【0030】
<製造例4>
オートクレーブに、ペンタエリトリトール100重量部、水酸化カリウム0.15重量部を投入し、反応温度が125~135℃を保つように制御しながら、PO 310重量部を2時間かけて滴下した後、130℃で2時間熟成した。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を3.2重量部、水3.2重量部を投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水し、数平均分子量が560であるペンタエリトリトールPO付加物を得た。水酸基価402mgKOH/g、水酸基の数4、SP値12.1(cal/cm3)1/2であった。こちらをウレタンフォームの分解剤(A-4)[以下、分解剤(A-4)と記載する]とした。
【0031】
<製造例5~6>
表1に示した部数に従って、ポリオールに、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合し、更に有機ポリイソシアネートを混合して混合物(H)を得た。得られた混合物(H)を下記の発泡条件により発泡して、ポリウレタンフォーム(X)を作製した。
得られたポリウレタンフォーム(X)を温度25℃、湿度50%にて24時間静置した後、それぞれのポリウレタンフォーム(X)の25%圧縮硬さ、40%圧縮硬さ、反発弾性率、引張強度、伸び、引裂き強度及び乾熱圧縮永久歪みを測定し、結果を表1に示した。
なお、表1における各成分の数値のうち、有機ポリイソシアネートを除く原料の数値は重量部を意味し、有機ポリイソシアネートについては、イソシアネート指数を意味し、そのイソシアネート指数に対応する量の有機ポリイソシアネートを用いた。
【0032】
<発泡条件>
型サイズ:250mm×250mm×250mm
材質:木材
ミキシング方法:ハンドミキシング(必要試薬を所定の容器に必要量仕込んだ後、攪拌羽を容器中に挿入し、回転数3000回転/分で6~20秒間攪拌させる発泡方法)
ミキシング時間:5~20秒
撹拌羽回転数:3000回転/分
【0033】
【0034】
<製造例7>
表2に示した部数に従って、ポリオールに、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合し、更に有機ポリイソシアネートを混合して混合物(H)を得た。得られた混合物(H)を下記の発泡条件により発泡して、ポリウレタンフォーム(X-3)を作製した。
得られたポリウレタンフォーム(X-3)を温度25℃、湿度50%にて24時間静置した後、それぞれのポリウレタンフォーム(X-3)の密度、圧縮強さ、熱伝導率を測定し、結果を表2に示した。
なお、表1における各成分の数値のうち、有機ポリイソシアネートを除く原料の数値は重量部を意味し、有機ポリイソシアネートについては、イソシアネート指数を意味し、そのイソシアネート指数に対応する量の有機ポリイソシアネートを用いた。
【0035】
<発泡条件>
型サイズ:300mm×300mm×50mm
金型温度:65℃
脱型時間:5分
ミキシング方法:ハンドミキシング(必要試薬を所定の容器に必要量仕込んだ後、攪拌羽を容器中に挿入し、回転数8000回転/分で5秒間攪拌させる発泡方法)
ミキシング時間:5秒
撹拌羽回転数:8000回転/分
【0036】
【0037】
<実施例1>
反応器に製造例1で製造した分解剤(A-1)2701g、製造例5で製造したポリウレタンフォーム(X-1)433g及び水酸化カリウム27g投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させた。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を82重量部、水を82重量部投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水を行うことでポリウレタンフォーム(X-1)の分解物(Y-1)を得た。得られたポリウレタンフォーム(X-1)の分解物(Y-1)の水酸基価は206mgKOH/g、粘度(25℃)は630mPa・sであった。
【0038】
<実施例2>
反応器に製造例2で製造した分解剤(A-2)3129g、製造例6で製造したポリウレタンフォーム(X-2)125g及び水酸化カリウム31.3gを投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させた。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を82重量部、水を82重量部投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水を行うことでポリウレタンフォーム(X-2)の分解物(Y-2)を得た。得られたポリウレタンフォーム(X-2)の分解物(Y-2)の水酸基価は55mgKOH/g、粘度(25℃)510mPa・sであった。
【0039】
<実施例3>
反応器に製造例1で製造した分解剤(A-1)2701g、製造例5で製造したポリウレタンフォーム(X-1)1371g及び水酸化カリウム27g投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させた。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を82重量部、水を82重量部投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水を行うことでポリウレタンフォーム(X-1)の分解物(Y-3)を得た。得られたポリウレタンフォーム(X-1)の分解物(Y-3)の水酸基価は171mgKOH/g、粘度(25℃)は710mPa・sであった。
【0040】
<実施例4>
反応器に製造例2で製造した分解剤(A-2)3129g、製造例6で製造したポリウレタンフォーム(X-2)939g及び水酸化カリウム31.3gを投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させた。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を82重量部、水を82重量部投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水を行うことでポリウレタンフォーム(X-2)の分解物(Y-4)を得た。得られたポリウレタンフォーム(X-2)の分解物(Y-4)の水酸基価は52mgKOH/g、粘度(25℃)660mPa・sであった。
【0041】
ポリウレタンフォームの分解物の粘度(mPa・s)は、ガラス瓶に入れて密閉して25℃、24時間温調後、B型粘度計でローターNo3又は4を使用して測定を行った。
なお、粘度が10000mPa・s以下(とくに、5000mPa・s以下)であれば、実用上問題のない粘度である。
【0042】
<実施例5~8>
表3に示した部数に従って、ポリオールに、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合し、更に有機ポリイソシアネートを混合して混合物(H)を得た。得られた混合物(H)を前述の発泡条件により発泡して、ポリウレタンフォーム(Z)を作製した。
得られたポリウレタンフォーム(Z)を温度25℃、湿度50%にて24時間静置した後、それぞれのポリウレタンフォーム(Z)の25%圧縮硬さ、40%圧縮硬さ、反発弾性率、引張強度、伸び、引裂き強度及び乾熱圧縮永久歪みを測定し、結果を表3に示した。
【0043】
【0044】
<実施例9>
反応器に製造例3で製造した分解剤(A-3)2701g、製造例7で製造したポリウレタンフォーム(X-3)1371g及び水酸化カリウム27g投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させた。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を82重量部、水を82重量部投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水を行うことでポリウレタンフォーム(X-3)の分解物(Y-5)を得た。得られたポリウレタンフォーム(X-3)の分解物(Y-5)の水酸基価は502mgKOH/g、粘度(25℃)は1620mPa・sであった。
【0045】
<実施例10>
反応器に製造例4で製造した分解剤(A-4)2701g、製造例7で製造したポリウレタンフォーム(X-3)1371g及び水酸化カリウム27g投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させた。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を82重量部、水を82重量部投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水を行うことでポリウレタンフォーム(X-3)の分解物(Y-6)を得た。得られたポリウレタンフォーム(X-3)の分解物(Y-6)の水酸基価は324mgKOH/g、粘度(25℃)は2630mPa・sであった。
【0046】
<実施例11~12>
表4に示した部数に従って、ポリオールに、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合し、更に有機ポリイソシアネートを混合して混合物(H)を得た。得られた混合物(H)を前述の発泡条件により発泡して、ポリウレタンフォーム(Z)を作製した。
得られたポリウレタンフォーム(Z)を温度25℃、湿度50%にて24時間静置した後、それぞれのポリウレタンフォーム(Z)の密度、圧縮強さ、熱伝導率を測定し、結果を表4に示した。
【0047】
【0048】
<比較例1>
反応器にジエチレングリコール(水酸基価1057mgKOH/g、数平均分子量106.12、SP値15)46.7g、製造例5で製造したポリウレタンフォーム(X-1)35g及び水酸化カリウム0.467gを投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させた。得られたウレタンフォームの分解物は2層に分離した。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を1.6重量部、水を1.6重量部投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水を行うことでポリウレタンフォーム(X-1)の分解物を得た。得られたウレタンフォームの分解物は2層に分離した(上層液Y-7、下層液Y-8)。上層液の水酸基価は311mgKOH/g及であり、下層液の水酸基価は766mgKOH/g及びであった。
【0049】
<比較例2>
反応器にジエチレングリコール46.7g、製造例6で製造したポリウレタンフォーム(X-2)35g及び水酸化カリウム0.467gを投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させた。60℃まで冷却した後、キョーワード600(協和化学工業(株)製)を1.6重量部、水を1.6重量部投入して90℃で1時間処理し、水酸化カリウムを吸着させ、濾過を行い、減圧脱水を行うことでポリウレタンフォーム(X-1)の分解物を得た。得られたウレタンフォームの分解物は2層に分離した(上層液Y-9、下層液Y-10)。上層液の水酸基価は148mgKOH/gであり、下層液の水酸基価は826mgKOH/gであった。
【0050】
<比較例3>
反応器にジエチレングリコール(水酸基価1057mgKOH/g、数平均分子量106.12、SP値15)14.6g、製造例5で製造したポリウレタンフォーム(X-1)35g及び水酸化カリウム0.146gを投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させたところ、未分解のウレタンフォームを含むペースト状の生成物を得た。
【0051】
<比較例4>
反応器にジエチレングリコール(水酸基価1057mgKOH/g、数平均分子量106.12、SP値15)6.2g、製造例6で製造したポリウレタンフォーム(X-2)35g及び水酸化カリウム0.062gを投入し、内部を窒素置換した後、185~190℃にて2時間反応させたところ、未分解のウレタンフォームを含むペースト状の生成物を得た。
【0052】
<比較例5~6>
表3に示した部数に従って、ポリオールに、発泡剤、触媒及び整泡剤を混合し、更に有機ポリイソシアネートを混合して混合物(H)を得た。得られた混合物(H)を前述の発泡条件により発泡して、ポリウレタンフォーム(Z)を作製した。
得られたポリウレタンフォーム(Z)を温度25℃、湿度50%にて24時間静置した後、それぞれのポリウレタンフォーム(Z)の25%圧縮硬さ、40%圧縮硬さ、反発弾性率、引張強度、伸び、引裂き強度及び乾熱圧縮永久歪みを測定し、結果を表2に示した。
【0053】
<比較例7>
製造例5で得られたポリウレタンフォーム(X-1)を比較例7とした。
【0054】
<比較例8>
製造例6で得られたポリウレタンフォーム(X-2)を比較例8とした。
【0055】
<比較例9>
製造例7で得られたポリウレタンフォーム(X-3)を比較例9とした。
【0056】
ポリウレタンフォームの密度、25%圧縮硬さ、40%圧縮硬さ、反発弾性率、引張強度、伸び、引裂き強度及び乾熱圧縮永久歪みは以下に記載の方法で測定した。
【0057】
<密度>
JIS 6400に準拠して密度(kg/m3)を測定した。
【0058】
<圧縮硬さ>
25℃の環境で温調したポリウレタンフォームを用いてJIS K6400に準拠して25%圧縮硬さ及び40%圧縮硬さを測定した(単位はN/314cm2)。
【0059】
<反発弾性率>
反発弾性率は、JIS K6400に準拠した方法で測定した。
ウレタンフォームは、反発弾性率が15%以下のものが低反発とされる。
【0060】
<引張強度>
引張強度は、JIS K6400に準拠した方法で測定した。
【0061】
<伸び>
伸びは、JIS K6400に準拠した方法で測定した。
【0062】
<引裂き強度>
引裂き強度は、JIS K6400に準拠した方法で測定した。
【0063】
<乾熱圧縮永久歪み>
乾熱圧縮永久歪みは、JISK6400に準拠した方法で測定した。
【0064】
<熱伝導率>
モールド発泡で得られた300(縦)×300(横)×50(厚み)mmの硬質ポリウレタンフォームを、200(縦)×200(横)×35(厚み)mmのサイズに切り出した。JIS A1412-2に従い、熱伝導率測定機(「AUTO-Λ HC-074」、英弘精機(株)製)を使用して熱伝導率を測定した。
【0065】
<圧縮強さ(N/cm2)>
モールド発泡で得られた300(縦)×300(横)×50(厚み)mmの硬質ポリウレタンフォームを、50(縦)×50(横)×35(厚み)mmのサイズに切り出し試験片とした。JIS K7220に従い、試験片の縦、横から断面積を求めた後、試験片の厚みに対して10%圧縮し圧縮応力を測定した。その後、圧縮応力を断面積で除した値を圧縮強さとした。
【0066】
実施例より、本発明のウレタンフォームの分解剤は、水酸基価が低いポリウレタンフォームの分解物を得ていることが分かる。
さらに、前記ポリウレタンフォームの分解物を用いて作製したウレタンフォームであり、低反発性である実施例5及び実施例7は、前記ポリウレタンフォームの分解物を用いずに作製した低反発性のウレタンフォームである比較例7と、同等の密度、圧縮硬さ、引張強度、伸び、引裂き強度及び乾熱圧縮永久歪みを有している。分解剤としてジエチレングリコールを用いてウレタンフォームの分解を行って得た分解生成物の上層液を使用して製造した比較例5は、実施例5及び実施例7と比べ、圧縮硬さ、伸び及び乾熱圧縮永久歪みが不良である。
前記ポリウレタンフォームの分解物を用いて作製したウレタンフォームであり、反発弾性率が50~60%である実施例6及び実施例8は、前記ポリウレタンフォームの分解物を用いずに作製したウレタンフォームである比較例8と、同等の密度、圧縮硬さ、引張強度、伸び、引裂き強度及び乾熱圧縮永久歪みを有している。分解剤としてジエチレングリコールを用いてウレタンフォームの分解を行って得た分解生成物の上層液を使用して製造した比較例6は、実施例6及び実施例8と比べ、圧縮硬さ、伸び及び乾熱圧縮永久歪みが不良である。
本発明のウレタンフォームの分解液は、ウレタンフォームの再生にそのまま適用することができ、ウレタンフォームのリサイクルに好適であり、ウレタンフォームの廃棄物処分の負荷軽減に有効である。