(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015972
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】磁気共鳴断層撮影システム、及び、磁気共鳴断層撮影システムの省エネルギー運転方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A61B5/055 370
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023095804
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】22186742
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516308401
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ベック
(72)【発明者】
【氏名】スベン ヘルメッケ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB42
4C096AD22
4C096DE06
4C096EA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より大きな節約を可能にする磁気共鳴断層撮影システム、及び、その運転方法を提供する。
【解決手段】本発明は、磁気共鳴断層撮影システム、及び、方法を実行するための磁気共鳴断層撮影システムを運転するための方法に関する。この磁気共鳴断層撮影システムは、制御装置によって状態変化を検知し、運転中断の可能性に関してその状態変化を評価し、次に生じる可能性のある画像撮影中断に対して可能性のある複数の省エネルギーシナリオを決定し、ユーザによる選択を決定し、選択された省エネルギーシナリオを実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像撮影を制御するための制御装置(23)を有する磁気共鳴断層撮影システム(1)を運転する方法であって、
前記磁気共鳴断層撮影システム(1)の状態変化が前記制御装置(23)により検知されるとともに、前記状態変化が運転中断を引き起こすかどうかについて前記状態変化を前記制御装置(23)が評価するステップ(S20)と、
前記状態変化に基づいて次に生じる画像撮影中断に対する複数の省エネルギーシナリオを前記制御装置(23)が決定するステップ(S30)と、
前記決定された複数の可能な省エネルギーシナリオに対する再起動時間を前記制御装置(23)が決定するステップ(S40)と、
前記の複数の省エネルギーシナリオに対する選択可能性が、それぞれの前記再起動時間に関する情報と共に前記制御装置(23)によってユーザに出力されるステップ(S50)と、
省エネルギーシナリオを前記制御装置(23)が実行するステップ(S70)と、
を有する方法。
【請求項2】
本方法がさらに、選択した1つの省エネルギーシナリオをユーザが前記制御装置(23)により入力するステップ(S60)を有し、前記制御装置(23)がステップ(S70)において、前記選択された省エネルギーシナリオを実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力ステップ(S50)の後でユーザ入力のない所定の時間の後に、前記制御装置(23)がステップ(S65)で再起動時間が最も短い省エネルギーシナリオを選択し、続いて、前記制御装置(23)がその省エネルギーシナリオを実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の省エネルギーシナリオを決定する前記ステップ(S30)において前記決定が1つのパラメータに基づいて行われ、さらに、前記パラメータを変化させるステップ(S10)において、前記制御装置(23)がユーザとの対話においてユーザ入力に応じてパラメータを変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記制御装置(23)がステップ(S50)において、出力のために複数の選択可能性を遠隔操作インターフェースに送信し、ステップ(S60)において前記遠隔操作インターフェースからユーザの選択を受信する、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気共鳴断層撮影システム(1)が、ユーザ選択を入力するための複数の操作要素を有し、ステップ(S60)において前記操作要素によりその選択を入力する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記磁気共鳴断層撮影システム(1)が、ユーザ入力に応じてステップ(S80)において前記省エネルギーシナリオを終了させる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
制御装置(23)を有する磁気共鳴断層撮影システムであって、前記制御装置(23)が請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている磁気共鳴断層撮影システム。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気共鳴断層撮影システム(1)の制御装置(23)の記憶ユニットにロードすることができるコンピュータプログラム製品であって、請求項8に記載の磁気共鳴断層撮影システム(1)の前記制御装置(23)においてコンピュータプログラム製品が実行されたときに、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
請求項8に記載の磁気共鳴断層撮影システム(1)の制御装置(23)によって読み取ることができ、且つ、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法を実行するために前記制御装置(23)によって実行することができるプログラムコード手段が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴断層撮影システム、及び、磁気共鳴断層撮影システムの省エネルギー運転方法に関する。この磁気共鳴断層撮影システムは状態変化を識別し、省エネルギーシナリオを提案する。
【0002】
磁気共鳴断層撮影システムは、検査対象物を描出する目的で、検査対象物の核スピンを強力な外部磁場によって整列させ、交番磁場によって励起させてこの整列の周りで歳差運動を起こさせる撮像システムである。次に、この励起状態からより低いエネルギー状態へのスピンの歳差運動又はその戻りにより交番磁界が発生し、これがアンテナを介して受信される。
【0003】
傾斜磁場を用いて信号に位置コードが付され、これにより次に受信信号のボリューム要素への割り付けが可能となる。次に、受信信号が評価され、検査対象物の三次元画像表示が提供される。その信号を受信するために、好適に、複数の局所的な受信アンテナ、いわゆるローカルコイルが使用され、これらはより良い信号対雑音比を達成するために検査対象物の直近に配置される。
【0004】
磁気共鳴断層撮影システムのエネルギー消費は運転コストに大きく影響する。磁気共鳴断層撮影システムの幾つかのサブシステムは急速に動作を停止し、再び動作開始させることが可能である。これに対し、冷却システムや電源装置などの他のサブシステムは運転停止又は運転再開のためにかなりの時間を必要とする。しかし、磁気共鳴断層撮影システムは、通常、いつ運転を再開すべきか分からない。そこで、稼働性を考慮して始動時間の短いサブシステムのみが動作停止されるが、これによる省エネルギー効果には限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、より大きな節約を可能にする磁気共鳴断層撮影システム、及び、その運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の方法、及び、請求項8に記載の磁気共鳴断層撮影システムによって解決される。
【0007】
本発明による方法は、磁気共鳴断層撮影システムを運転するためのものである。この磁気共鳴断層撮影システムは1つの制御装置を有する。この制御装置は画像撮影を制御するために設けられている。この制御装置はさらに、特に、直接的に又は下位の制御装置への制御指令によって、磁気共鳴断層撮影システムのエネルギー多消費性の複数の構成要素を省エネルギーのアイドリング状態に切り替えることができるように、さらに、アイドリング状態から再び作動させることができるようにも、構成されている。省エネルギーのアイドリング状態とは、特に、画像撮影と比較して、又は、1分未満、30秒未満、10秒未満もしくは1秒未満の非常に短い再起動時間を有するかもしくは再起動時間のないスタンバイモードと比較して、エネルギー消費が低減されたユニットの状態を意味する。
【0008】
本発明による方法の1つのステップにおいて、その制御装置は磁気共鳴断層撮影システムの状態変化を検知する。これは、例えば、患者寝台又は患者の位置を検知する複数のセンサによって行うことができる。患者寝台が患者トンネルの外側にあるか、患者寝台上に患者がいなければ、例えば、画像撮影は行われない。この状態変化の検知は、ユーザ入力を解析して行うこともできる。例えば、新しいシーケンスが開始される場合、そのシーケンスの期間中に省エネルギー対策は実行されない、すなわち、省エネルギーシナリオは実施されない。これとは逆に、内部の状態変化に伴い、例えば、制御装置による又はユーザの最後の相互作用後のタイマーの停止による、或るシーケンスの終了に伴い、再度、複数の省エネルギー対策による複数の省エネルギーシナリオの実行が可能となる。
【0009】
特に、この制御装置は、その状態変化が運転の中断を引き起こすかどうか、についてその状態変化を評価する。言い換えると、この制御装置は、その状態変化が運転中断を、特に省エネルギー対策を有する運転中断を可能とするか、その可能性があるか、又は、それどころか運転中断を強制するかをチェックする。このことは、例えば、制御装置が、その状態変化と格納されたデータベースとを比較することによって生じ得る。そのデータベースには、例えば、それぞれの状態変化に対して、その状態変化が省エネルギー対策を可能にする運転中断をもたらすかどうか、又は、それに基づいて運転中にそのような運転中断が頻繁に行われるかどうかを格納することができる。例えば、中断発生の確率、中断の平均期間、及び/又は、省エネルギーのために中断することが可能なサブシステムを格納することができる。これらの情報はまた、実際の運転を観察することにより、その制御装置自体から得ることもでき、適応させることも可能である。また、多くのサブシステムの運転から収集したデータを評価してあらかじめデータベースに格納することも考えられる。
【0010】
その評価は、人的に、機械的に、又は、特に人工知能によって行うことができる。その評価が磁気共鳴断層撮影システムの制御装置において、又は、それに接続された例えばクラウドにおける制御装置において、人工知能により行われる場合には、これは、その評価をそれぞれのローカルな使用習慣及びユーザのプロファイルに継続して適合させることが可能な状態にある。
【0011】
本発明による方法におけるその次のステップでは、この制御装置により、その状態変化に応じて、次に生じる又は次に生じる可能性のある画像撮影中断に対する複数の省エネルギーシナリオが決定される。この決定は好適には、その状態変化により生じた状態に応じて、及び/又は、予想される中断の長さに応じて行われる。例えば、幾つかの状態では幾つかのサブシステムは不要である。
【0012】
本発明による方法の別のステップでは、この制御装置により、決定された複数の可能な省エネルギーシナリオに対する再起動時間が決定される。例えば、個々のサブシステムに対して、複数の再起動シナリオのための数値を制御装置のメモリ又はクラウドに格納することができる。該当する複数のサブシステムが独立している場合には、1つの省エネルギーシナリオに対する個別の該当するサブシステムの最長の再起動時間が、全ての省エネルギーシナリオに対する再起動時間である。複数のサブシステム間に相互依存性がある場合には、複数の個別の再起動時間を加算して合計の再起動時間とすることも考えられる。
【0013】
本発明による方法のその次のステップでは、ユーザに複数の省エネルギーシナリオに対する選択可能性が出力される。この選択可能性は少なくとも2つの異なる省エネルギーシナリオを含み、それらは選択のために例えばリスト又は表の形で提供されている。これは、例えば磁気共鳴断層撮影システムのディスプレイ上で行うことができる。特に、この選択可能性は、ユーザが1つの選択を実行するための入力可能性をも提供する。これは、タッチスクリーン、ディスプレイに付設された複数のボタンであり、又は、単にキーボードもしくはマウスとすることもできる。
【0014】
本発明による方法は有利に、磁気共鳴断層撮影システムの複数のプロセスに対する、及び、磁気共鳴断層撮影システムの内部プロセスに関し本方法により供給される内部的な視点に対する、ユーザの外部からの視点によって、ユーザに特にエネルギーを節約する運転を容易に提供することを可能とする。
【0015】
本発明の磁気共鳴断層撮影システムは、それを実行する本発明による方法の利点を共有する。
【0016】
さらなる有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0017】
本発明による方法の可能な一実施形態において、本方法はさらに、選択した1つの省エネルギーシナリオをユーザが制御装置により入力するステップを有する。このユーザ入力の入力作業は、選択可能性の出力も行われるデバイスで行われることが好ましい。これは、磁気共鳴断層撮影システムにおけるディスプレイの場合、ディスプレイの側のボタンもしくは捻回セレクタのような入力要素とすることができ、又は、これがタッチスクリーンとして構成されている場合には、ディスプレイ自体とすることもできる。隣室内の遠隔操作端末の場合には、それは、キーボード、マウス又はタッチスクリーンのような入力装置とすることもできる。また、出力のための、及び/又は、入力のためのタブレット端末も考えられる。音声制御インターフェースも可能であり、この場合には、複数の選択可能性が音響的に出力され、及び/又は、ユーザ選択が音声制御によって入力される。カメラによるジェスチャー認識も考えられる。
【0018】
ユーザの選択により選ばれた省エネルギーシナリオが、次に、制御装置によって実行される。この場合、好適には、選択された省エネルギーシナリオに対応する複数のサブシステムが省エネルギーのアイドリング状態に切り換えられる。例えば、制御装置は該当する複数のサブシステムを停止させ、次いで、対応するこれらのサブシステムのエネルギー供給を中断させる。例えばローカルコイルのチューニング装置のような簡単なサブシステムの場合には、エネルギー供給を直接的に中断するだけで十分であろう。また、複数のサブシステムが独自の制御装置を有し、磁気共鳴断層撮影システムの制御装置がサブシステムの制御装置へ制御指令を与えることによってサブシステムをアイドリング状態に切り替えることも考えられる。
【0019】
1つの省エネルギーシナリオを選択することは、ユーザがエネルギー消費を減らすことを有利な方法で容易にする。
【0020】
本発明による方法の可能な一実施形態では、出力ステップの後でユーザ入力のない所定の時間の後に、制御装置が再起動時間の最も短い省エネルギーシナリオを選択する。続いて、制御装置が、上述したように、その省エネルギーシナリオを実行する。
【0021】
デフォルトの省エネルギーシナリオを作動させることにより、ユーザの介入なしでも、エネルギー消費の減少が有利な方法で可能となる。
【0022】
本発明による方法の可能な一実施形態では、複数の省エネルギーシナリオを決定するステップにおいて、その決定は1つのパラメータに基づいて行われる。複数のパラメータも考えられる。このパラメータは磁気共鳴断層撮影システムによって予め定義することができ、例えば、省エネルギーシナリオから再起動するために必要な時間である。達成すべき省エネルギーのレベルも考えられる。このパラメータは、磁気共鳴断層撮影システムの検知された状態変化に依存することもできる。磁気共鳴断層撮影システムの使用に依存するパラメータも考えられる。例えば、放射線部門の運転手順によって時間を予め決定することができる。例えば、患者の交代により少なくとも2回の画像撮影の間に必要となる時間である。
【0023】
その次のステップでは、ユーザが対話を介してこのパラメータを変化させる、すなわち、この制御装置は、ユーザとの対話でこのパラメータを変化させるように構成されている。
【0024】
したがって、ユーザは、好適に、省エネルギー調整を運転手順に適応させることができる状態にある。
【0025】
しかし、ユーザ入力の代わりに、制御装置内のアルゴリズム又は人工知能が、多数の画像撮影の複数の運転手順を検知することによって運転実務に自律的に適応することも考えられる。
【0026】
本発明による方法の可能な一実施形態において、制御装置はその出力ステップにおいて、出力のために複数の選択可能性を遠隔操作インターフェースに送信する。これは、例えば、隣接する部屋内の遠隔操作コンピュータ、又は、データネットワークを介して連結された操作端末である。無線でリンクされたタブレット・コンピュータも考えられる。こうして、この制御装置は、1つの省エネルギーシナリオを選択するステップにおいて、その操作インターフェースから、例えば、マウス又はタッチスクリーンを備えたキーボード入力により、ユーザの選択を受信する。
【0027】
遠隔された操作インターフェースにより、有利に、遠隔地から省エネルギーを活性化することも可能である。
【0028】
本発明による磁気共鳴断層撮影システムの可能な一実施形態において、この磁気共鳴断層撮影システムは、ユーザの選択を入力するための複数の操作要素を有する。これらは、装置本体に直に設置されたタッチスクリーン、又は、好ましくは、磁気共鳴断層撮影システムにおける例えば1つ又は複数のボタンのような触覚式の操作要素である。この磁気共鳴断層撮影システムはこれらの操作要素により、省エネルギーシナリオを選択するためのユーザ入力を入力する。
【0029】
磁気共鳴断層撮影システム本体における操作要素は、好適に、直接的で信頼性のある選択を可能にする。
【0030】
本発明による方法の可能な一実施形態では、この磁気共鳴断層撮影システムは1つのステップにおいて、選択され実行された省エネルギーシナリオに従って作動中の1つ又は複数の省エネルギー対策を、ユーザ入力に応じて停止し、さらに、該当のサブシステムを運転再開する、即ち、再起動する。この場合、このユーザ入力は好適には、磁気共鳴断層撮影システムの1つの、複数の、又は、全ての操作要素を用いて行うことができる。目覚ましボタン(運転再開ボタン)のような専用の操作要素が考えられる。停止のためのユーザ入力として、磁気共鳴断層撮影システムにおける操作要素、例えば、患者寝台用の制御ボタンにおける操作も可能である。
【0031】
1つの操作要素による目覚まし作用によって好適に、操作インターフェースを介した一連の命令からなる面倒な手順による運転再開を回避することができる。
【0032】
本発明の上記の特性、特徴及び利点、ならびに、これらが達成される方法を、図面を基に、以下の実施例の説明によりより明確に説明する:
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明による磁気共鳴断層撮影システムの模式図である。
【
図2】本発明による方法の一実施形態に関連する本発明の磁気共鳴断層撮影システムのユニットの模式図である。
【
図3】本発明による方法の一実施形態における模式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明による磁気共鳴断層撮影システム1の一実施例の模式図である。
【0035】
磁石ユニット10は、撮影領域内で検体又は患者100の核スピンを整列させるための静磁場B0を発生させる界磁磁石11を有する。この撮影領域は、磁石ユニット10を通って縦方向2に延びる患者トンネル16内に配置されている。患者100は患者寝台30及び患者寝台30の移動ユニット36によって撮影領域に移動することができる。界磁磁石11は超電導磁石であり、これは通常は3Tまでの磁束密度、最新の装置ではそれを超える磁束密度を有する磁界を提供することができる。しかし、より低い磁界強度のために、永久磁石、又は、常電導コイルを備えた電磁石を使用することもできる。
【0036】
磁石ユニット10はさらに複数の傾斜磁場コイル12を有し、これらは、検査容積において撮影されたマッピング領域の空間的な差別化のために、磁場B0に3つの空間方向で可変磁場を重畳すべく構成されている。これらの傾斜磁場コイル12は一般的に常電導線のコイルであり、検査容積内において相互に直交する磁場を生成することができる。
【0037】
磁石ユニット10は同様に1つの人体側コイル14を有し、これは、信号導体33を介して供給された高周波信号を検査容積内に放射し、患者100から放出された共鳴信号を受信し、信号導体を介して送出すべく構成されている。しかし、高周波信号を送信及び/又は受信するためのこの人体側コイル14は、患者トンネル16内で患者100に近接して配置された複数のローカルコイル50によって置換されることが好ましい。しかし、これらのローカルコイル50が送受信のために構成されていることも考えられ、従って、人体側コイル14を削除することができる。
【0038】
制御ユニット20は、磁石ユニット10に傾斜磁場コイル12及び人体側コイル14のための種々の信号を供給し、受信した信号を評価する。この場合、磁気共鳴断層撮影システムの制御装置23は複数の下位のユニットを調整する。
【0039】
制御ユニット20は傾斜磁場制御装置21を有し、この傾斜磁場制御装置は、給電線を介して傾斜磁場コイル12に可変電流を供給するように構成されており、この可変電流は時間的に調整されて検査容積内で所望の傾斜磁場を提供する。
【0040】
制御ユニット20は、さらに、高周波ユニット22を有し、この高周波ユニットは、患者100内で核スピンの磁気共鳴を励起するために、所定の時間経過、振幅及びスペクトル出力分布を有する高周波パルスを生成するように構成されている。この場合、キロワット範囲のパルス出力を達成することができる。個々のユニットは信号バス25を介して相互に接続されている。
【0041】
高周波ユニット22によって発生された高周波信号は、信号接続部を介して人体側コイル14に供給され、患者100の体内に送信され、そこで核スピンを励起する。しかし、この高周波信号を1つ又は複数のローカルコイル50を介して送信することも考えられる。
【0042】
次いで、ローカルコイル50は、好適に、患者100の身体からの磁気共鳴信号を受信する。というのは、距離が短いのでローカルコイル50の信号対雑音比(SNR)は、人体側コイル14を介して受信する場合よりも良好であるからである。ローカルコイル50で受信されたMR信号はローカルコイル50内で処理され、評価及び画像撮影のために磁気共鳴断層撮影システム1の高周波ユニット22に転送される。この目的のために信号接続部33を使用するのが好適であるが、例えば無線転送も考えられる。
【0043】
エネルギー消費が多いサブシステムとしては、界磁磁石11のための冷却システムを備えた磁石ユニット10、増幅器を介して傾斜磁場コイル12に電流を供給する傾斜磁場制御装置21、及び、核スピンを励起するための高周波励起パルスを生成する高周波ユニット22がある。しかし、高周波ユニット22によるローカルコイル50のチューニングも、それぞれPINダイオードによるスイッチング接続のためにかなりの電力を必要とする。
【0044】
図1に示された実施形態において、本発明による方法は制御ユニット20の制御装置23によって実行される。
【0045】
図2は、本発明による方法の一実施形態に関連する本発明の磁気共鳴断層撮影システムの複数のユニットの模式図である。
【0046】
ここで省エネルギーシナリオのために調整されるユニットは、例えば、磁石ユニット10、傾斜磁場制御装置21、及び、高周波ユニット22であり、これらは制御装置23によりバス25を介して複数のコマンドによって制御される。磁石ユニット10は分離された制御ライン26を介して制御装置23に接続されている。しかし、これらのユニットの全てが1つのハウジング内でコンパクトに統合され制御バス25を介して互いにリンクされるような別の構成も考えられる。しかしながら、分離形の磁気共鳴システムも可能であり、そのシステムでは、電力又は信号の伝達の必要性から傾斜磁場制御装置21及び高周波ユニット22のようなすぐ近くにあることが必要なユニットのみが磁石ユニット10と統合されており、制御装置はネットワークを介して、例えばサーバ71上のクラウド70内で、遠隔して実現されている。
【0047】
ここで磁気共鳴断層撮影システム1の状態変化を引き起こし得るサブシステムの例は、患者寝台30であり、これも同様に制御装置23によって制御されるか、又は、例えば、それが患者トンネル16内に移動されたか、もしくは、患者トンネルから外に移動されたかが、リミットスイッチを介して制御装置23に知らされる。カメラ、光電センサ又は圧力センサマットのような、患者の存在及び/又はその位置を検知する他のセンサも考えられる。
【0048】
磁気共鳴断層撮影システム1の状態変化は、操作インターフェースを介してユーザが引き起こすこともできる。例として、
図2は、操作用コンピュータ61もしくは操作端末、複数の操作要素64を備えたディスプレイ63、又は、無線式のタブレット・コンピュータ62を示す。この場合、制御装置23がこれらの操作インターフェースの1つ、幾つか、もしくは、全てを介してユーザに出力する、又は、入力を受信することが考えられる。また、これら複数の操作インターフェースの内の1つのみを用いた運転も考えられる。
【0049】
また、或る省エネルギーオプションの選択を直接に装置側で簡単に行うために、例えば磁石ユニット10に専用の操作要素64を設けることも考えられる。
【0050】
図3は、本発明による方法の一実施形態における模式的なフローチャートを示す。本発明による磁気共鳴断層撮影システム1はこの方法を実行するように構成されている。
【0051】
ステップS20において、制御装置23は磁気共鳴断層撮影システム1の状態変化を検知する。この状態変化はセンサにより、例えば、患者寝台30に設けられた上述した複数のセンサにより検知することができる。しかし、この状態変化は、例えば、磁気共鳴断層撮影システム1のユーザ又はオペレータが磁気共鳴断層撮影システム1の状態を変化させる入力を行った場合には、前述した操作インターフェースの1つによって検知することもできる。また、システム内部で引き起こされる状態変化も考えられる。例えば、画像撮影、又は、試験プロセスもしくは保守プロセスの一部のような、それまでに実行されていたプロセスの終了、複数のサブシステム又は磁気共鳴断層撮影システム1全体の起動又は停止である。この状態変化は、それが運転中断を引き起こすかどうか、すなわち、その状態変化に続く時間が少なくともゼロより大きい一定の確率で予期されるかどうか、に基づいて評価される。例えば、1つのシーケンス又は試験を開始する場合には、全てのユニットに対して、又は、少なくとも関連する複数のサブシステムに対して、運転中断は行われない。これとは逆に、他の状態変化、例えば、撮影シーケンスの中止、患者寝台30の搬出、又は、患者寝台30上の患者100の不在、はより長い中断を意味する。この場合の「ユニット」という用語は、制御装置23の制御により省エネルギーのアイドリング状態に切り替えることができる磁気共鳴断層撮影システム1のサブシステムを意味し、これらは、例えば、
図2を参照して説明した磁石ユニット10、傾斜磁場ユニット21、又は、高周波ユニット22、又は、高周波パワー増幅器及びチューニングユニットのようなそのサブシステムである。
【0052】
その状態変化が少なくとも予め定められた最小時間の間、例えば、1分超、5分超、20分超、又は、数時間にわたる運転中断を引き起こす場合、制御装置23はステップS30において、その状態変化に応じて、次に生じる画像撮影中断に対する複数の可能な省エネルギーシナリオを探し出す。この場合、好適に、検知された状態変化に基づき、直ちには必要とされない、従って、省エネルギーのアイドリング状態に切り替えることができる磁気共鳴断層撮影システム1の複数のユニット又はサブシステムに対する複数の可能な省エネルギー対策が吟味される。この場合、1つの省エネルギーシナリオは、省エネルギーのアイドリング状態に切り替えることができる少なくとも1つのユニットに対する少なくとも1つの省エネルギー対策を含む。しかし、1つの省エネルギーシナリオに、状態変化後の磁気共鳴断層撮影システム1の状態において共に不要であり、且つ、共に省エネルギーのアイドリング状態に切り替えられる複数のユニット及び/又は複数の省エネルギー対策が含まれていると好適である。例えば、1つの省エネルギーシナリオに、機能的に関連しているか、又は、類似したそれぞれの再起動時間を有する複数のユニットを含むことができる。好適には、1つの省エネルギーシナリオに、状態変化により生じた磁気共鳴断層撮影システム1の状態に基づいて省エネルギーのアイドリング状態に切り換えることができ、かつ、その省エネルギーシナリオのために予め定められた最大時間内に再び運転することができる全てのユニットが含まれている。
【0053】
その次のステップS40では、制御装置23が、決定された複数の省エネルギーシナリオのための再起動時間を決定する。単一の該当ユニットを有する省エネルギーシナリオでは、その省エネルギーシナリオの再起動時間はその単一ユニットの再起動時間である。省エネルギーシナリオが複数のユニットで構成される場合、その省エネルギーシナリオの再起動時間は、省エネルギーシナリオの一部を形成するユニットの最長の再起動時間の値とすることができる。相互依存性がある場合には、再起動時間は関与する複数のユニットの再起動時間の合計とすることもできる。混合形態も考えられる。好適には、省エネルギーシナリオに対する全ての可能なユニットのための再起動時間は制御装置23のメモリに、又は、サーバ71上に格納される。
【0054】
その次のステップS50では、制御装置23が操作インターフェースを介してユーザに、複数の省エネルギーシナリオに対する選択可能性を、それぞれの再起動時間に関する情報と共に出力する。例えば、ディスプレイ63、操作端末61又はタブレット・コンピュータ62上に、複数の省エネルギーシナリオのリスト又は表を出力することができる。しかし、例えば、音声出力も可能である。
【0055】
その次のステップS70では、制御装置23が決定された複数の省エネルギーシナリオの1つを実行する。これはユーザの反応に依存するが、以下に従属請求項についてより詳細に説明する。この実行は、制御装置23が、アイドリング状態を生成するために、該当するユニット又はそれらの制御装置に対して相応の中止命令を出力することにより、又は、単純なユニットの場合にはエネルギー供給を直接中断することによっても行われる。
【0056】
本発明による方法の好適な一実施形態において、本方法は、ユーザが制御装置23を用いて省エネルギーシナリオの選択を入力するステップS60を有する。この選択は、好ましくは、例示のように、操作用コンピュータ61、1つ又は複数の操作要素64と接続されたディスプレイ63、又は、タブレット・コンピュータ62のような操作インターフェースで行われる。例えば、決定された複数の省エネルギーシナリオ及びそれぞれの再起動時間のリスト又は表が、例えば、数字、記号、又はカラーコーディングによって示され、選択は、キーボード、マウス、又は、タッチスクリーンでの入力によって行われる。これらの操作要素64は、例えば、位置、触覚又は視覚マーキングによって、ディスプレイ上で複数の省エネルギーシナリオに割り当てられている。音響出力も可能であり、音声入力、又は、カメラによって捕捉されるジェスチャーによる選択も可能である。
【0057】
次いで、選択の実行が上述のように制御装置23によって行われる。
【0058】
本発明による方法の可能な一実施形態では、制御装置23が、ステップS50の出力の後でユーザ入力のない所定の時間の後に、この出力を同様にユーザ選択として解釈し、所定のデフォルト値をユーザ入力として採用する。この所定の時間は、例えば、1分未満、5分未満、10分未満又は1時間未満とすることができる。この場合、制御装置は、好適に、所定のデフォルト値として、最も短い再起動時間を有する決定された省エネルギーシナリオを選択する。しかし、例えば、以下に述べるようにユーザが構成することができるデフォルトの省エネルギーシナリオも考えられる。
【0059】
本発明による方法の可能な一実施形態において、ステップS30における複数の省エネルギーシナリオの決定は、1つのパラメータに依存して行われる。例えば、ユーザが前述のデフォルトの省エネルギーシナリオを1つのパラメータとして指定することが考えられる。また、特定の状態変化を、予期される運転中断に割り当てることも可能である。また、例えば、特定の時刻にパラメータが変化するような、調節可能な時間依存性も考えられる。
【0060】
1つ又は複数のパラメータの変更は、ステップS10において、運転インターフェースを介してユーザとの対話として行われる。次いで、その又はそれらのパラメータは、制御装置23によりユーザの入力に応じて変更される。
【0061】
本発明による方法の可能な一実施形態では、この制御装置がステップS50において、遠隔の操作インターフェース、例えば、有線の又は無線のデータネットワークを介して制御装置23に接続されている操作用コンピュータ61又はタブレット・コンピュータ62に出力するために、複数の選択可能性を出力する。それに対応して、制御装置はステップS60において、逆方向にその操作インターフェースからユーザの選択を受信する。装置の近くにユーザがいない場合には、より長い再起動時間を伴うより深く且つより効果的な省エネルギー状態が特に有意義である。次に、例えば、中央の、常時有人のサービスセンターを介して、これらの省エネルギー対策を最適化することができる。サービスセンター内のサーバ又は仮想ユーザとしての人工知能による、センターコントロールも可能である。
【0062】
本発明による方法の可能な一実施形態では、制御装置23がステップS80において、ユーザ入力に応答して、その省エネルギー対策すなわち省エネルギーシナリオを終了し、その省エネルギーシナリオに従って省エネルギーのアイドリング状態に切り換えられていたユニットの運転を再開する。
【0063】
本発明を好適な実施例を参照して詳細に図示し説明したが、本発明は、ここに開示された例によって限定されるものではなく、本発明の保護範囲から逸脱することなく、当業者がそれから他の変形を誘導することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像撮影を制御するための制御装置(23)を有する磁気共鳴断層撮影システム(1)を運転する方法であって、
前記磁気共鳴断層撮影システム(1)の状態変化が前記制御装置(23)により検知されるとともに、前記状態変化が運転中断を引き起こすかどうかについて前記状態変化を前記制御装置(23)が評価するステップ(S20)と、
前記状態変化に基づいて次に生じる画像撮影中断に対する複数の省エネルギーシナリオを前記制御装置(23)が決定するステップ(S30)と、
前記決定された複数の可能な省エネルギーシナリオに対する、前記磁気共鳴断層撮影システム(1)の関連するサブシステムの再起動時間を前記制御装置(23)が決定するステップ(S40)と、
前記の複数の省エネルギーシナリオに対する選択可能性が、それぞれの前記再起動時間に関する情報と共に前記制御装置(23)によってユーザに出力されるステップ(S50)と、
省エネルギーシナリオを前記制御装置(23)が実行するステップ(S70)と、
を有する方法。
【請求項2】
本方法がさらに、選択した1つの省エネルギーシナリオをユーザが前記制御装置(23)により入力するステップ(S60)を有し、前記制御装置(23)がステップ(S70)において、前記選択された省エネルギーシナリオを実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記出力ステップ(S50)の後でユーザ入力のない所定の時間の後に、前記制御装置(23)がステップ(S65)で前記再起動時間が最も短い省エネルギーシナリオを選択し、続いて、前記制御装置(23)がその省エネルギーシナリオを実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の省エネルギーシナリオを決定する前記ステップ(S30)において前記決定が1つのパラメータに基づいて行われ、さらに、前記パラメータを変化させるステップ(S10)において、前記制御装置(23)がユーザとの対話においてユーザ入力に応じてパラメータを変化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記制御装置(23)がステップ(S50)において、出力のために複数の選択可能性を遠隔操作インターフェースに送信し、ステップ(S60)において前記遠隔操作インターフェースからユーザの選択を受信する、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気共鳴断層撮影システム(1)が、ユーザ選択を入力するための複数の操作要素を有し、ステップ(S60)において前記操作要素によりその選択を入力する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記磁気共鳴断層撮影システム(1)が、ユーザ入力に応じてステップ(S80)において前記省エネルギーシナリオを終了させる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
制御装置(23)を有する磁気共鳴断層撮影システムであって、前記制御装置(23)が請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている磁気共鳴断層撮影システム。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気共鳴断層撮影システム(1)の制御装置(23)の記憶ユニットにロードすることができるコンピュータプログラム製品であって、請求項8に記載の磁気共鳴断層撮影システム(1)の前記制御装置(23)においてコンピュータプログラム製品が実行されたときに、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法を実行するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
請求項8に記載の磁気共鳴断層撮影システム(1)の制御装置(23)によって読み取ることができ、且つ、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法を実行するために前記制御装置(23)によって実行することができるプログラムコード手段が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体。
【外国語明細書】