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特開2024-159725浴室用有害生物防除剤および浴室用有害生物防除方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159725
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】浴室用有害生物防除剤および浴室用有害生物防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/06 20060101AFI20241031BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 37/12 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 43/653 20060101ALI20241031BHJP
   A01N 31/08 20060101ALI20241031BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241031BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20241031BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N43/40 101K
A01N33/12 101
A01N37/12
A01N43/653 C
A01N31/08
A01P3/00
A61L9/01 M
A61L9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072430
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2023074411
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大島 務
(72)【発明者】
【氏名】川尻 由美
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
4C180
4H011
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA07
4C180AA10
4C180AA16
4C180AA17
4C180AA18
4C180AA19
4C180BB11
4C180BB12
4C180CA01
4C180EB01X
4C180EB06X
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB12X
4C180EB14X
4C180EB15X
4C180EB17X
4C180EB18X
4C180EC01
4C180GG01
4C180MM10
4H011AA03
4H011BB03
4H011BB04
4H011BB06
4H011BB09
4H011DA21
4H011DB05
4H011DD05
4H011DE16
4H011DF03
4H011DF06
4H011DG16
(57)【要約】
【課題】樹脂製品の多い浴室環境において樹脂への材質影響が少なく、かつ、離れた位置へも到達し、長期間、防除効果を発揮することの出来る有害生物防除剤の提供を課題とする。
【解決手段】有害生物防除成分が、カチオン界面活性剤系成分、グリセリン脂肪酸エステル系成分、アゾール系成分、イソプロピルメチルフェノール、及びチモールからなる群より選択される1種以上を含むエアゾール製品により、上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の特定部位から20cm以上離して使用する有害生物防除用エアゾール製品であって、
有害生物防除成分及び有機溶剤を含有するエアゾール原液と、噴射剤とを、噴射バルブを備えた容器に充填してなり、
前記有害生物防除成分が、カチオン界面活性剤系成分、グリセリン脂肪酸エステル系成分、アゾール系成分、イソプロピルメチルフェノール、及びチモールからなる群より選択される1種以上を含む、有害生物防除用エアゾール製品。
【請求項2】
横向きに噴射可能なアクチュエータを備える請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項3】
エアゾール原液中に0.1w/v%以上のカチオン界面活性剤系成分、1w/v%以上のグリセリン脂肪酸エステル系成分、1w/v%以上のアゾール系成分、5w/v%以上のイソプロピルメチルフェノール、及び5w/v%以上のチモールからなる群より選択される1種以上の前記有害生物防除成分を含む、請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項4】
25w/v%以上のイソプロピルメチルフェノールを含む、請求項3に記載のエアゾール製品。
【請求項5】
前記有害生物防除用エアゾール製品の噴射力が、25℃、噴射口からの距離が15cmの位置において、5.5gf以上である、請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項6】
下記式で表される有効性パラメータYが1以上である、請求項5に記載のエアゾール製品:
【数1】
(式中、Xは、エアゾール原液中の有効成分濃度(w/v%)であり、
Lは、エアゾール原液濃度(v/v%)であり、
Pは、噴射力(gf)であり、
Vは、噴射容量(mL)である)。
【請求項7】
前記特定部位から50cm以上離して使用する、請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項8】
エアゾール製品で処理された前記特定部位が1週間以上有害生物防除効果を有する、請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項9】
前記有機溶剤が、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項10】
前記特定部位が、浴槽、浴室ドア、浴室天井、すのこ、及び小物類からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項11】
前記特定部位の材質にポリスチレンが含まれる、請求項1~10に記載のエアゾール製品。
【請求項12】
ポリスチレンを含む樹脂に材質影響のない、イソプロピルメチルフェノール及び/又はチモール含有エアゾール製品の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室用有害生物防除剤および浴室用有害生物防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的湿度が高く、密閉された空間である浴室における有害生物防除剤は、(1)カビ、細菌等の有害生物に対して高い防除効果を有し、効果が長期間持続すること、(2)樹脂製品の多い浴室環境において樹脂への材質影響が少ないこと、及び(3)離れた位置(例えば、浴室の天井など)へも到達し、防除効果を発揮することなど、複数の性質を兼ね備えることが望ましい。
【0003】
しかしながら、上記(2)及び(3)を検討した例はあまり見られない。例えば、特許文献1及び2のスプレー製剤においても、(2)及び(3)の効果の検討まではなされていない(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-140536号公報
【特許文献2】特開2022-111125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、樹脂製品の多い浴室環境において樹脂への材質影響が少なく、かつ、離れた位置へも到達し、防除効果を発揮することの出来る有害生物防除剤の提供、具体的には、特定の有害生物防除成分を含有したエアゾール原液と噴射剤を、噴射バルブ付きの容器に充填することで、浴室環境の処理面(特定部位)から一定以上の距離を離して使用した場合でも、処理面(特定部位)に有害生物防除成分が十分に付着し、有害生物の防除が長期間可能となり、材質への影響も少ない、浴室環境のための有害生物防除剤及び有害生物防除方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1] 浴室の特定部位から20cm以上離して使用する有害生物防除用エアゾール製品であって、
有害生物防除成分及び有機溶剤を含有するエアゾール原液と、噴射剤とを、噴射バルブを備えた容器に充填してなり、
前記有害生物防除成分が、カチオン界面活性剤系成分、グリセリン脂肪酸エステル系成分、アゾール系成分、イソプロピルメチルフェノール、及びチモールからなる群より選択される1種以上を含む、有害生物防除用エアゾール製品。
[2] 横向きに噴射可能なアクチュエータを備える[1]に記載のエアゾール製品。
[3] エアゾール原液中に0.1w/v%以上のカチオン界面活性剤系成分、1w/v%以上のグリセリン脂肪酸エステル系成分、1w/v%以上のアゾール系成分、5w/v%以上のイソプロピルメチルフェノール、及び5w/v%以上のチモールからなる群より選択される1種以上の前記有害生物防除成分を含む、[1]に記載のエアゾール製品。
[4] 25w/v%以上のイソプロピルメチルフェノールを含む、[3]に記載のエアゾール製品。
[5] 前記有害生物防除用エアゾール製品の噴射力が、25℃、噴射口からの距離が15cmの位置において、5.5gf以上である、[1]に記載の有害生物防除用エアゾール製品。
[6]下記式で表される有効性パラメータYが1以上である、[5]に記載のエアゾール製品:
【数1】
(式中、Xは、エアゾール原液中の有効成分濃度(w/v%)であり、
Lは、エアゾール原液濃度(v/v%)であり、
Pは、噴射力(gf)であり、
Vは、噴射容量(mL)である)。
[7] 前記特定部位から50cm以上離して使用する、[1]に記載のエアゾール製品。
[8] エアゾール製品で処理された前記特定部位が1週間以上有害生物防除効果を有する、[1]に記載のエアゾール製品。
[9] 前記有機溶剤が、エタノール及びイソプロピルアルコールからなる群より選択される1種以上を含む、[1]に記載のエアゾール製品。
[10] 前記特定部位が、浴槽、浴室ドア、浴室天井、すのこ、及び小物類からなる群より選択される1種以上である、[1]に記載のエアゾール製品。
[11] 前記特定部位の材質にポリスチレンが含まれる、[1]~[10]に記載のエアゾール製品。
[12] ポリスチレンを含む樹脂に材質影響のない、イソプロピルメチルフェノール及び/又はチモール含有エアゾール製品の使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、浴室環境において樹脂への材質影響が少なく、かつ、離れた位置へも到達し、長期間、防除効果を発揮することの出来る有害生物防除剤を提供出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[有害生物防除剤(エアゾール製品)]
本発明の有害生物防除剤は、浴室環境において、離れた位置からも使用可能で、有害生物に対して高い防除効果を有し、かつ効果が長期間持続することが好ましい。本発明における「有害生物」とは、例えば、細菌、カビ、ウイルス、ダニ、花粉等の生物又は生物由来のもの、好ましくは、浴室で見られることが多い細菌、カビ、ウイルス、ダニ等、より好ましくは、カビ、細菌等を指し、好ましくは、浴室で見られることがあるピンク色のヌメリの原因(例えば、RhodotorulaやMethylobacteriumなどによって発生するもの)や黒カビの原因(例えば、Cladosporiumによって発生するもの)の他、好湿性であり、かつ、風呂目地等から単離されることがある、Aureobasidium、Phoma等、より好ましくは、上記ピンク色のヌメリや黒カビの原因となる菌などが挙げられるが、これらに限定されない。また、本明細書では、有害生物に関しては、有害生物が生育あるいは存在しにくい環境にして成長や繁殖を防ぐ効果に加えて、有害生物を殺生することにより、繁殖を防ぐ効果と合わせて防除効果と呼ぶ。例えば、カビを防除対象とする場合、防カビ効果や殺カビ効果も防除効果に含まれる。
本発明の有害生物防除剤は、好ましくは、浴室環境での防カビ効果、より好ましくは、カビの発生又は成長をコントロール(無処理の浴室環境)に対して阻害する又は遅延させる作用を有する。特に好ましくは、コントロールに対して約70~100%のカビの発生又は成長を阻害する又は遅延させることが出来るが、これらに限定されない。
【0009】
本発明の有害生物防除剤は、例えば、浴室の処理面(特定部位)から20cm以上、好ましくは、25cm以上、より好ましくは、30cm以上、さらに好ましくは、50cm以上、特に好ましくは、70cm以上、最も好ましくは、100cm以上離して使用することが出来るが、これらに限定されない。なお、処理面又は特定部位は、本発明の有害生物防除剤が処理される対象であり、例えば、浴槽(具体的には、浴槽のエプロン)、浴室ドア(具体的には、樹脂パネル部)、浴室天井、すのこ、又は小物類(具体的には、通常浴室で用いられる又は浴室に持ち込まれ得る製品である、シャンプー、リンス、ボディーソープ、洗浄剤、合成洗剤、洗顔料、石鹸の容器、ペットボトル等とこれらに使用されるシュリンクラベル)を指し、好ましくは、ポリスチレンを含む樹脂が使用されることが多い面又は部位を指すが、これらに限定されない。
【0010】
本発明の有害生物防除剤において、有害生物防除成分は、カチオン界面活性剤系成分、グリセリン脂肪酸エステル系成分、アゾール系成分、イソプロピルメチルフェノール、及びチモールからなる群より選択される1種以上を含む。好ましくは、これらの成分を2種又は3種以上含むが、これらに限定されない。
【0011】
本発明における好ましいカチオン界面活性剤系成分として、例えば、ベンザルコニウムクロライド、ベンザルコニウムメトサルフェート、ベンザルコニウム有機酸塩等のベンザルコニウム塩、ベンゼトニウムクロライド、ベンゼトニウムメトサルフェート、ベンゼトニウム有機酸塩等のベンゼトニウム塩、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムメトサルフェート、セチルピリジニウム有機酸塩等のセチルピリジニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジデシルジメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジラウリルジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムメトサルフェート等のジステアリルジメチルアンモニウム塩、及び1,4-ビス[3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド(以下、「化合物A」とも呼ぶことがある)、1,4-ビス[3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジクロライド、1,4-ビス[3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジメトサルフェート等の1,4-ビス[3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタン塩等が挙げられるが、これらに限定されない。カチオン界面活性剤系成分は、好ましくは、エアゾール原液中に0.05~30w/v%含まれ、より好ましくは、エアゾール原液中に0.1~10.0w/v%含まれ、さらに好ましくは、エアゾール原液中に0.3~5.0w/v%含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
本発明における好ましいグリセリン脂肪酸エステル系成分として、例えば、ラウリン酸グリセリル、カプリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル等が挙げられるが、これらに限定されない。
グリセリン脂肪酸エステル系成分は、好ましくは、エアゾール原液中に0.1~30w/v%含まれ、より好ましくは、エアゾール原液中に0.5~20w/v%含まれ、さらに好ましくは、エアゾール原液中に1.0~10w/v%含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明における好ましいアゾール系成分として、例えば、ビグアナイド系細菌防除成分、テブコナゾール、エニルコナゾール等が挙げられるが、これらに限定されない。
アゾール系成分は、好ましくは、エアゾール原液中に0.1~30w/v%含まれ、より好ましくは、エアゾール原液中に0.5~20w/v%含まれ、さらに好ましくは、エアゾール原液中に1.0~10w/v%含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明において、好ましくは、有害生物防除成分に、イソプロピルメチルフェノール及び/又はチモールが含まれるが、特異臭のないイソプロピルメチルフェノールが含まれることがより好ましい。イソプロピルメチルフェノール又はチモールは、好ましくは、エアゾール原液中に5~50w/v%含まれ、より好ましくは、エアゾール原液中に10~45w/v%含まれ、さらに好ましくは、エアゾール原液中に20~40w/v%含まれるが、これらに限定されない。
なお、イソプロピルメチルフェノール及びチモールは、MIC(最小発育阻止濃度)が高く、揮発性もあるため、上記した他の有害生物防除成分に比べて多く配合する必要があるものの、安全性に優れる。
【0015】
上記の他、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、オルトフェニルフェノールなどが本発明の有害生物防除剤内に追加で含まれていてもよい。
【0016】
本発明の有害生物防除剤は、トリガー式やポンプ式のスプレー容器に充填し、耐圧製容器に充填し噴射剤を配合してなるエアゾール製品の形態で使用される。また、本発明のエアゾール製品は、通常、容器、バルブ、アクチュエータ、及び噴射剤を含む。アクチュエータは、バルブ本体と連結し、内容物を放出させるための作動部を指し、内容物を霧状又はジェット状に噴射させるボタンもこれに含まれる。なお、本発明のアクチュエータは、横向きに噴射可能であることが好ましいが、これに限定されない。噴射剤としては、特に限定されないが、プロパンやブタン等の液化石油ガス(LPG)、ノルマルペンタン、イソペンタン、ジメチルエーテル(DME)、及びHFO1234ze等のハイドロフルオロオレフィン等の液化ガス、並びに窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、及び圧縮空気等の圧縮ガスが挙げられる。これらの噴射剤は、単独で又は混合状態で使用することができるが、噴射粒子が過剰に気中に残存することなく天井や壁面に十分量の防除成分が均一に付着し、浴室環境(狭小空間)において、有害微生物及び/又は有害微細物質を含む特定有害物に対してより優れた防除効果を奏することができるため、LPG、ハイドロフルオロオレフィンを含有するものが好ましいが、これらに限定されない。これらを加圧充填することで、本発明のエアゾール製品を提供することができる。前記エアゾール製品は、定量噴射バルブを備えることで、定量噴射型エアゾール製品とすることや、全量噴射型エアゾール製品とすることも可能である。
エアゾールの種類としては、水性エアゾール、油性エアゾールのいずれでも製剤とすることが可能である。噴射剤は、ゲージ圧(20℃)を0.10~0.70MPaに調整して使用することが好ましいが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の有害生物防除剤の各成分は、溶媒中、好ましくは、有機溶剤中に分散していることが好ましい。上記各成分が溶媒中又は有機溶剤中に分散していることにより、浴室などに存在する有害生物を効果的に防除できる。
本発明の有害生物防除剤に使用される溶媒又は有機溶剤は、エアゾール原液中の主成分であるが、水性でも油性でもよい。溶媒又は有機溶剤は、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール(IPA)、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、キシレン、トルエン、ケロセン(ケロシン)、石油ベンジン、ノルマルパラフィン、及びイソパラフィン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ベンジルグリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール系溶媒、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、フェノキシエタノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール等のグリコールエーテル系溶媒等、トリアセチン、クエン酸トリエチルを用いてもよい。他に、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸エステル、イソ酪酸エステル、ギ酸エステル等のエステル系溶媒を用いてもよく、このようなエステル系溶媒としては、例えば、炭素数の総数が16~30のものが好ましく、16~25のものがより好ましく、16~20のものがさらに好ましいが、これらに限定されない。具体的には、例えば、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、ミリスチン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル等を好ましく挙げることが出来るが、これらに限定されない。上記溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、浴室環境内の処理面(特定部位)への材質影響が少ない、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、グリコール系溶剤が好ましく、処理面(特定部位)に溶剤が残りにくい、揮発性溶剤がより好ましい。具体的には、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒又は有機溶剤の含有量は、有害生物防除成分100質量%に対し、100~200000質量%が好ましく、150~40000質量%がより好ましいが、これらに限定されない。
【0018】
前記溶媒又は有機溶媒には、さらに、通常の界面活性剤、乳化剤、分散剤、展着剤、湿潤剤、安定剤等の添加剤、好ましくはエアゾール剤に通常含まれる添加剤を適宜配合することができる。
具体的には、その他の添加剤としては、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、アセチルブチリルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニル樹脂等のビニル系樹脂;アルキッド系樹脂、ユリア系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム、ポリビニルアルコール等の塗膜形成剤;石鹸類;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアルキルアリールスルホン酸塩等の界面活性剤;カゼイン、ゼラチン、アルギン酸等、その他、気泡剤、補助剤、増量剤等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明に用いられる好ましい界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等)、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の非イオン系界面活性剤、ラウリルアミンオキサイド、ステアリルアミンオキサイド、ラウリル酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド等の高級アルキルアミンオキサイド系界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の有害生物防除剤が定量噴射バルブを備えた定量噴射エアゾール製品の場合、その1回あたりの噴射容量は、例えば、0.08~3.0mLが好ましく、0.2~2.0mLがより好ましく、0.4~1.5mLがより好ましいが、これらに限定されない。噴射容量を0.08mL以上とすることで、薬剤が遠く(使用者から離れた位置)まで到達しやすくなるため、好ましい。
薬剤が遠くまで到達することの利点としては、例えば、浴室の天井、浴槽と壁のすき間、棚の下など、使用者が通常利用する環境で直接又は容易に噴射出来ない箇所に処理出来る他、家事を行う際の時短効果、使用者の疲労軽減効果なども期待することが出来る。
本発明の有害生物防除剤のエアゾール原液と噴射剤の比は、例えば、体積比で1/99~70/30に設定されていることが好ましく、10/90~60/40がより好ましく、20/80~55/45がさらに好ましいが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の有害生物防除剤のアクチュエータの噴射口径は、例えば、0.2~2.0mmが好ましく、0.4~1.5mmがより好ましいが、これらに限定されない。噴射口径を0.2mm以上とすることで、薬剤の拡がりが抑えられ、薬剤が遠くまで到達しやすくなるため、好ましい。
本発明の有害生物防除剤の噴射力は、例えば、噴射口からの距離が15cmの位置において、2.0~50.0gfであることが好ましく、5.5~45.0gfであることがより好ましく、8.0~40.0gfであることがさらに好ましく、9.0~30.0gfであることがとりわけ好ましいが、これらに限定されない。噴射力を2.0gf以上とすることで薬剤が遠くまで到達しやすくなるので好ましい。また、噴射力を50.0gf以下とすることで、薬剤の跳ね返りが抑えられ、使用者が刺激性を感じにくくなることがあるので好ましい。なお、以下の説明において、噴射製品の構成(容器、バルブおよび噴射部材等)は特に限定されない。噴射力の測定は、例えば、デジタルフォースゲージ(FGC、FGP、FGJNシリーズ、ニデックドライブテクノロジー株式会社製)などを用いて行うことができる。
【0022】
また、本発明の有害生物防除剤は、下記式で表される有効性パラメータ(Y)が、-1以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、2.5以上であることがより好ましいが、これらに限定されない。有効性パラメータ(Y)を上記範囲とすることで、対象面から一定以上の距離を離して使用した場合でも、対象面に有害生物防除成分が十分に付着し、高い有害生物防除効果が得られる。別の好ましい例としては、噴射力が5.5gf以上であり、かつ、Yが1以上、より好ましくは、噴射力が5.5gf以上であり、かつ、Yが2.5以上の場合であるが、これらに限定されない。
【数2】
X:エアゾール原液中の有効成分濃度(w/v%)
L:エアゾール原液濃度(v/v%)
P:噴射力(gf)
V:噴射容量(mL)
【0023】
上記の式において、X、L及び/又はVが大きい程、薬剤付着量が大きくなるため、好ましい。また、Lが小さい程、エアゾール全体における噴射剤の濃度が増えるため、薬剤が遠くまで到達しやすくなる。上記を総合的に判断して、Lは30近くの値が好ましい。さらに、Pが大きい程、薬剤が遠くまで到達しやすく、薬剤付着量が大きくなるため、好ましい。5.5gf前後で、効果の差が出やすいことから、上記の式では、「P-5.5」と設定している。
【0024】
本発明の有害生物防除剤の噴射パターンは、例えば、50cm離れた位置における噴射パターンが直径100cm以下であることが好ましく、直径70cm以下であることがより好ましく、直径50cm以下であることが特に好ましい。噴射パターンを100cm以下にすることで、処理面(特定部位)に集中的に薬剤が付着し、長期的な有害生物防除効果を得られやすくなるため、好ましい。
【0025】
本発明の有害生物防除剤のエアゾール原液には、上記成分に加え、殺虫剤、忌避剤、芳香剤、消臭剤、安定化剤、帯電防止剤、消泡剤、並びに賦形剤等を適宜配合することもできる。殺虫剤としては、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、テラレスリン、フラメトリン、エンペントリン、モンフルオロトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、ヘプタフルトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、シフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、トラロメトリン、エトフェンプロックス、イミプロトリン、アレスリン、フタルスリン、プラレトリン、レスメトリン、及び天然ピレトリン等のピレスロイド系化合物、シラフルオフェン等のケイ素系化合物、ジクロルボス、及びフェニトロチオン等の有機リン系化合物、プロポクスル等のカーバメート系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド、及びクロチアニジン等のネオニコチノイド系化合物、フィプロニル、インドキサカルブ、ブロフラニリド、並びにメトキサジアゾン等が挙げられる。忌避剤としては、ディート、ブチルアセチルアミノプロピオン酸エチル(IR3535)、p-メンタン-3,8-ジオール、及びイカリジン等が挙げられる。芳香剤としては、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ペパーミント油、ユーカリ油、レモンユーカリ油、シトロネラ油、ライム油、ユズ油、ジャスミン油、檜油、緑茶精油、ハッカ油、メントール、酢酸メンチル、リモネン、α-ピネン、リナロール、ゲラニオール、フェニルエチルアルコール、アミルシンナミックアルデヒド、クミンアルデヒド、テルピネオール、及びベンジルアセテート等の芳香成分、「緑の香り」と呼ばれる青葉アルコールや青葉アルデヒド配合の香料成分等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、各成分の不斉炭素に基づく光学異性体や二重結合に基づく幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物であってもよい。
【0026】
本発明の有害生物防除剤が水性化処方で製造される場合、エアゾール原液に含まれる水の量は特に限定されないが、5~80v/v%が好ましく、噴射粒子の噴射パターンに影響を与えない範囲で、可溶化助剤として若干量の非イオン系界面活性剤を添加してよい。非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、及びポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル類等のエーテル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンスチレン化フェノール、脂肪酸のポリアルカロールアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
[有害生物防除方法・材質影響の抑制]
本明細書では、浴室環境における有害生物の防除方法を提供する。本発明における有害生物の防除方法は、前記エアゾール製品を用いて噴射処理する有害生物の防除方法であることが好ましく、前記エアゾール製品を浴室環境内の空間、好ましくは特定部位に対して離して噴射することが好ましい。
本発明のエアゾール製品によれば、例えば、定量噴射バルブを備えた定量噴射エアゾール製品の場合、有害物防除用定量噴射エアゾール製品に含まれる有害物防除成分の放出量が、1回のアクチュエータのボタン操作につき、0.25~250mgであることが好ましく、1.5~150mgであることがより好ましく、2.5~100mgであることがさらに好ましいが、これらに限定されない。上記の範囲内である場合、本発明のエアゾール製品を浴室の処理面(特定部位)に向けて噴射したときに、十分量の防除成分が均一に付着し、浴室内に存在する樹脂製品に対し、材質への影響を与えることなく、優れた防除効果を発揮することができるため、好ましい。
【0028】
本発明の有害生物防除剤を浴室環境において使用することにより、樹脂への材質影響が少なく、かつ、離れた位置へも到達し、防除効果を発揮することが出来る。
「浴室」は、例えば、浴槽や洗い場を含めた浴室内の内径寸法で、容積が2.5~15mの空間であるが、これに限定されない。ここでの「浴室環境」とは、浴室のみならず、例えば、脱衣所、洗面所、トイレ等の浴室に近接する空間、又は温度、湿度やカビの成育条件が浴室と類似する空間、あるいは、後述する材質影響に寄与する因子が浴室と類似する環境なども含む。空間は、密閉又は半密閉空間でもよい。
【0029】
本発明の有害生物防除剤は、樹脂製品の多い浴室環境において樹脂への材質影響が少ないことが好ましい。本発明における、材質影響とは、浴室環境において、通常見られる樹脂、好ましくは、例えば、PS(ポリスチレン)、塩化ビニル及びFRP(繊維強化プラスチック)等の樹脂に対する材質影響を指す。より好ましくは、本発明の有害生物防除剤を、ポリスチレンを含む製品、さらに好ましくは、浴槽(特に、浴槽エプロン)、浴室ドア(特に、浴室ドアの樹脂パネル)、浴室天井、すのこ、又は上記した小物類等に噴射して、一定期間が経過した後に、割れやひび、クラックがみられないことを指す。ここでの一定期間とは、例えば、1日以上、より好ましくは3日間以上、さらに好ましくは、1週間以上であるがこれらに限定されない。
【実施例0030】
以下、実施例、試験例などにより本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例、試験例などに限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】
[試験例1]実施例の浴室用有害生物防除剤1~9
以下の処方で本発明の浴室用有害生物防除剤1~9を製造した。
1,4-ビス[3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド(化合物A、30w/v%)を、エタノールに溶解してエアゾール原液(L)を調製した。エアゾール原液(L)45mLと、噴射剤として液化石油ガス(G)105mLを噴射容量が1.0mLである定量噴射バルブ付きエアゾール容器(耐圧容器、容積200mL)に加圧充填して、横向き噴射口を有するアクチュエータ(噴口径φ0.9mm)を装着し、浴室用有害生物防除剤1を得た(実施例1)。浴室用有害生物防除剤1は、25℃における内圧が0.45MPaであった。
【0032】
防除・防カビ成分を化合物A(使用量:30w/v%)から下記の表1に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様の部材と製造方法で本発明の浴室用有害生物防除剤2~9を得た(実施例2~9)。内圧は実施例1と同程度であった。
【0033】
【表1】
【0034】
材質影響評価
特許第5705510号に記載の試験器を用いて、同特許に記載の試験方法を参考に評価した。幅5cm、長さ10cm、厚さ2mmの樹脂試験片を幅9.6cmの試験器にアーチ状に取り付け、試験片と同じ形(幅5cm、長さ10cm)に切った紙ワイパー(日本製紙クレシア製「キムワイプ」)を、試験片全体を覆うように乗せた。その上から、上記で得られた浴室用有害生物防除剤のエアゾール原液1mLを滴下し、当該エアゾール原液が紙ワイパー全体に拡がることを確認した。その後、常温で放置して7日後の樹脂表面の様子を下記基準にて目視により評価した。
○:影響なし
×:割れる、ヒビが入る
【0035】
防カビ評価
蓋を外した直径6cmのプラスチックシャーレ底部を、壁に高さ30cmの位置で垂直に固定した。シャーレから水平方向に30cm~100cm離れた位置から、上記で得られた浴室用有害生物防除剤をシャーレに対して横向きのアクチュエータにより、1回噴射した。その後、シャーレを回収し、乾燥させてから、3~7日間、蓋を外したまま、45Lの密閉容器内(湿度:100%、温度:25℃)で放置した。その後、事前に培養した黒カビ(Cladosporium cladosporioides)胞子分散液と、滅菌水で2倍希釈したGP培地とを1:1で混合したものをシャーレに100μL添加した。シャーレに蓋をして、再び45Lの密閉容器内(湿度:100%、温度:25℃)で3日間培養し、下記の基準に従い、目視により判断した。
○:カビが発生せず
△:コントロール(無処理)よりカビの成長が抑制されている
×:カビがコントロール(無処理)と同等以上に発生
【0036】
上記表1の通り、本発明の有害生物防除剤は、PS、塩化ビニル及びFRP樹脂に対して材質影響を与えなかった。そして、本発明の有害生物防除剤は、浴室環境において、約30cm離れた位置から処理した場合の防カビ効果に優れており、約100cm離れた位置から処理した場合にも防カビ効果に優れていた。また、約50cm離れた位置から処理した場合の防カビ効果をさらに確認したところ、1週間もの間、優れた防カビ効果を維持出来ていた。本発明のエアゾール剤は、浴室環境において、離れた位置から使用出来て、長期間有効に有害生物を防除出来、材質影響もみられない。
【0037】
[試験例2]実施例の浴室用有害生物防除剤10~17
以下の処方で本発明の浴室用有害生物防除剤10~17を製造した。
防除・防カビ成分を1,4-ビス[3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド(使用量:30w/v%)から下記の表2に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様に本発明の浴室用有害生物防除剤を得た(実施例10~17)。評価基準は表1と同じ。
【0038】
【表2】
【0039】
上記表2の通り、本発明の有害生物防除剤はPS、塩化ビニル及びFRP樹脂に対して材質影響を与えなかった。そして、本発明の有害生物防除剤は、約30cm及び約50cm離れた位置から処理した場合の防カビ効果に優れていた。また、約50cm離れた位置から処理した場合の防カビ効果をさらに確認したところ、1週間もの間、優れた防カビ効果を維持出来ていた。本発明のエアゾール剤は、浴室環境において、離れた位置から使用出来て、長期間有効に有害生物を防除出来、かつ、材質に影響を与えない。
【0040】
[試験例3]実施例の浴室用有害生物防除剤18~22
以下の処方で本発明の浴室用有害生物防除剤18~22を製造した。
防除・防カビ成分を1,4-ビス[3,3’-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ]ブタンジブロマイド(使用量:30w/v%)から下記の表3に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様に本発明の浴室用有害生物防除剤を得た(実施例18~22)。評価基準は表1、2と同じ。
【0041】
【表3】
【0042】
上記表3の通り、本発明の有害生物防除剤はPS、塩化ビニル及びFRP樹脂に対して材質影響を与えなかった。そして、本発明の浴室用有害生物防除剤は、約30cm以上及び約50cm以上離れた位置から処理した場合の防カビ効果に優れていた。また、実施例18~20の有害生物防除剤について、約50cm離れた位置から処理した場合の防カビ効果をさらに確認したところ、1週間もの間、優れた防カビ効果を維持出来ていた。本発明のエアゾール剤は、浴室環境において、離れた位置から使用出来て、長期間有効に有害生物を防除出来、かつ、材質に影響を与えない。
【0043】
[比較試験例1]比較例の浴室用有害生物防除剤1~6
上記した実施例のエアゾール剤と同様の部材と製造方法により、表4に記載の処方に従い、本発明以外の公知の防除・防カビ成分を含む浴室用有害生物防除剤1~6(比較例1~6)を製造した。評価基準は表1~3と同じ。
【0044】
【表4】
【0045】
上記表4の通り、本発明以外の公知の防除・防カビ成分を含む浴室用有害生物防除剤(カルバクロール、フェノキシエタノール、及びベンジルアルコール)では、本発明のエアゾール剤(実施例)とは異なり、PS樹脂に対する材質影響(ヒビ割れ)があった。特に、カルバクロールは、イソプロピルメチルフェノールの異性体であるから、PS樹脂に対する材質影響がこのように相違することは予想外であった。本比較試験では、防除・防カビ成分の濃度が高かったことによるPS樹脂に対する材質影響であることが懸念されたので、以下では、同じ防除・防カビ成分などについて、低濃度での検討をさらに行った。
【0046】
[比較試験例2]比較例の浴室用有害生物防除剤7~11
上記した実施例のエアゾール剤と同様の部材と製造方法により、表5に記載の処方に従い、本発明以外の防除・防カビ成分を含む浴室用有害生物防除剤7~11(比較例7~11)を製造した。評価基準は表1~4と同じ。
【0047】
【表5】
【0048】
上記表5の通り、本発明で特定する以外の防除・防カビ成分を低濃度で含む浴室用有害生物防除剤(p-メンタン-3,8-ジオール、カルバクロール、フェノキシエタノール、及びベンジルアルコール)では、PS樹脂に対する材質影響はみられなかったが、本発明のエアゾール剤(実施例)とは異なり、離れた位置(約50cm)から処理した場合の防カビ効果は不十分であった(比較例7~10)。
すなわち、本発明のエアゾール剤は、浴室環境において、離れた位置から使用出来て、長期間有効に有害生物を防除出来、かつ、材質に影響を与えないが、このような効果は、上記した比較例の結果からは予想外のものであると言える。
【0049】
[試験例4]実施例の浴室用有害生物防除剤23~38
以下の処方で本発明の浴室用有害生物防除剤23~35を製造した。評価基準は表1~5と同じ。
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
表6~7の通り、上記した本発明の浴室用有害生物防除剤は、PS、ABS及びFRP樹脂に対して材質影響を与えなかった。そして、有効性パラメータYが1以上であるか、及び/又は噴射力が5.5gf以上である本発明の浴室用有害生物防除剤は、約50cm以上及び約100cm以上離れた位置から処理した場合の防カビ効果に優れていた。
同様に、(1)本発明の浴室用有害生物防除剤(実施例36)として、実施例9に対応する、防除・防カビ成分である塩化ベンザルコニウムを1w/v%含む製剤を、噴射剤ゲージ圧(20℃):0.45MPa、エアゾール原液濃度:30v/v%、及び噴射容量V:1.0mLにて製造し、評価した(噴射力P:20.1gf、有効性パラメータY:14.6)。
また、(2)本発明の浴室用有害生物防除剤(実施例37)として、実施例1に対応する、防除・防カビ成分である化合物Aを30w/v%含む製剤を、噴射剤ゲージ圧(20℃):0.45MPa、エアゾール原液濃度:30v/v%、及び噴射容量V:1.0mLにて製造し、評価した(噴射力P:20.3gf、有効性パラメータY:444.0)。
これらも他の実施例の防除剤と同様、PS、ABS及びFRP樹脂に対して材質影響を与えなかった。また、約50cm以上及び約100cm以上離れた位置から処理した場合の防カビ効果に優れていた(いずれも評価:〇)。
また、同様に、(3)本発明の浴室用有害生物防除剤(実施例38)として、実施例6に対応する、防除・防カビ成分である化合物Aを0.1w/v%含む製剤を、噴射剤ゲージ圧(20℃):0.45MPa、エアゾール原液濃度:30v/v%、及び噴射容量V:1.0mLにて製造し、評価した(噴射力P:20.0gf、有効性パラメータY:1.5)。実施例38も、他の実施例の防除剤と同様、PS、ABS及びFRP樹脂に対して材質影響を与えなかった。また、約50cm以上及び約100cm離れた位置から処理した場合の防カビ効果に優れていた(評価は50cm以上離れた位置:〇、100cm以上離れた位置:△)。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のエアゾール製品は、浴室環境における、有害生物防除剤として有用である。