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特開2024-159739ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法およびポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159739
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法およびポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 6/22 20060101AFI20241031BHJP
   C08F 261/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08F6/22
C08F261/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073898
(22)【出願日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2023074547
(32)【優先日】2023-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剣吾
(72)【発明者】
【氏名】市川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢汰
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈人
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
(72)【発明者】
【氏名】安田 幸平
【テーマコード(参考)】
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
4J026AA31
4J026AC25
4J026AC26
4J026BA11
4J026BB01
4J026DB04
4J026DB08
4J026DB15
4J026DB16
4J026FA04
4J026GA10
4J100AC26P
4J100GC01
4J100GC07
4J100GC17
4J100JA01
4J100JA07
4J100JA11
4J100JA13
4J100JA15
4J100JA51
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】特定の重合単位を含有する重合体の存在下にテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を製造する製造方法であって、特定の重合単位を含有する重合体の含有量が、従来の製造方法により得られる組成物よりも、低減された組成物を製造することができる製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法であって、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する重合分散液を得て、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンと、有機溶剤と、凝析剤とを接触させることにより、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンを凝析させて、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を得る製造方法を提供する。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中の符号は明細書に記載のとおりである。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法であって、
一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する重合分散液を得て、
前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンと、有機溶剤と、凝析剤とを接触させることにより、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンを凝析させて、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を得る
製造方法。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【請求項2】
前記有機溶剤が、炭素数1~7のアルコールである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶剤が、炭素数2~7のアルコールである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
凝析に用いる前記有機溶剤の量が、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンに対して、1.0質量%以上、150質量%以下である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記凝析剤が、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニアおよび尿素からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
凝析に用いる前記凝析剤の量が、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンに対して、0.01質量%以上、5.0質量%以下である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンと前記有機溶剤と凝析剤とを接触させる際の温度が、5~80℃である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンを凝析させて、凝析物を得た後、前記凝析物の洗浄を行うことにより、前記組成物を得る請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項9】
一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)、および、ポリテトラフルオロエチレンを含有し、重合体(I)の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンに対して、0.23質量%以下であり、前記ポリテトラフルオロエチレンの平均二次粒子径が、200~1000μmである組成物。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【請求項10】
実質的に含フッ素界面活性剤を含有しない請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法であって、
一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する重合分散液を得て、
前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンと、有機溶剤とを接触させることにより、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンを凝析させて、凝析物を得た後、20℃以上で前記凝析物の洗浄を行うことにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を得る
製造方法。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法およびポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下記一般式(1)で表される単量体に基づく重合単位(1)を含む重合体(1)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーの重合を行うことによりフルオロポリマーを得る工程を含むフルオロポリマーの製造方法が記載されている。
CX=CY(-CZ-O-Rf-A) (1)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。但し、X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
【0003】
特許文献2には、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でフルオロモノマーを重合することにより得られるフルオロポリマー原料を、酸化剤と接触させるフルオロポリマー組成物の製造方法が記載されている。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/168183号
【特許文献2】国際公開第2023/277139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、特定の重合単位を含有する重合体の存在下にテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を製造する製造方法であって、特定の重合単位を含有する重合体の含有量が、従来の製造方法により得られる組成物よりも、低減された組成物を製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法であって、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する重合分散液を得て、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンと、有機溶剤と、凝析剤とを接触させることにより、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンを凝析させて、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を得る製造方法が提供される。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、特定の重合単位を含有する重合体の存在下にテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を製造する製造方法であって、特定の重合単位を含有する重合体の含有量が、従来の製造方法により得られる組成物よりも、低減された組成物を製造することができる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示を具体的に説明する前に、本開示で使用するいくつかの用語を定義または説明する。
【0009】
本開示において、フッ素樹脂とは、部分結晶性フルオロポリマーであり、フルオロプラスチックスである。フッ素樹脂は、融点を有し、熱可塑性を有するが、溶融加工性であっても、非溶融加工性であってもよい。
【0010】
本開示において、溶融加工性とは、押出機及び射出成形機等の従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。従って、溶融加工性のポリテトラフルオロエチレンは、後述する測定方法により測定されるメルトフローレートが0.01~500g/10分であることが通常である。
【0011】
本開示において、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕は、全重合単位に対するテトラフルオロエチレン単位の含有量が99モル%以上であるフルオロポリマーであることが好ましい。
【0012】
本開示において、フッ素樹脂(但し、ポリテトラフルオロエチレンを除く)は、いずれも、全重合単位に対するテトラフルオロエチレン単位の含有量が99モル%未満であるフルオロポリマーであることが好ましい。
【0013】
本開示において、フルオロポリマーを構成する各モノマーの含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0014】
本開示において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、または有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO-、および、
RaNRbSO
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、または、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、Hまたは1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0015】
また、本開示において、「置換基」は、置換可能な基を意味する。当該「置換基」の例は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族オキシカルボニル基、芳香族オキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、脂肪族スルホニルオキシ基、芳香族スルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、アミノ基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、芳香族オキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、脂肪族スルフィニル基、芳香族スルフィニル基、脂肪族チオ基、芳香族チオ基、ヒドロキシ基、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、脂肪族オキシアミノ基、芳香族オキシアミノ基、カルバモイルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ハロゲン原子、スルファモイルカルバモイル基、カルバモイルスルファモイル基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、および、ジ芳香族オキシホスフィニル基を包含する。
【0016】
上記脂肪族基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~4のアルキル基、たとえば、メチル基、エチル基、ビニル基、シクロヘキシル基、カルバモイルメチル基などが挙げられる。
【0017】
上記芳香族基は、たとえば、ニトロ基、ハロゲン原子、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族基としては、炭素数6~12、好ましくは総炭素原子数6~10のアリール基、たとえば、フェニル基、4-ニトロフェニル基、4-アセチルアミノフェニル基、4-メタンスルホニルフェニル基などが挙げられる。
【0018】
上記ヘテロ環基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記ヘテロ環基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~10の5~6員ヘテロ環、たとえば2-テトラヒドロフリル基、2-ピリミジル基などが挙げられる。
【0019】
上記アシル基は、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアシル基、たとえばアセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、3-ピリジンカルボニル基などが挙げられる。
【0020】
上記アシルアミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよく、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは2~8のアシルアミノ基、総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
【0021】
上記脂肪族オキシカルボニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシカルボニル基としては、総炭素原子数2~8、好ましくは2~4のアルコキシカルボニル基、たとえばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、(t)-ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0022】
上記カルバモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイル基としては、無置換のカルバモイル基、総炭素数2~9のアルキルカルバモイル基、好ましくは無置換のカルバモイル基、総炭素原子数2~5のアルキルカルバモイル基、たとえばN-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基などが挙げられる。
【0023】
上記脂肪族スルホニル基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、ヒドロキシ基、芳香族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記脂肪族スルホニル基としては、総炭素原子数1~6、好ましくは総炭素原子数1~4のアルキルスルホニル基、たとえばメタンスルホニル基などが挙げられる。
【0024】
上記芳香族スルホニル基は、ヒドロキシ基、脂肪族基、脂肪族オキシ基、カルバモイル基、脂肪族オキシカルボニル基、脂肪族チオ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アシルアミノ基、カルバモイルアミノ基などを有していてもよい。上記芳香族スルホニル基としては、総炭素原子数6~10のアリールスルホニル基、たとえばベンゼンスルホニル基などが挙げられる。
【0025】
上記アミノ基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。
【0026】
上記アシルアミノ基は、たとえば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などを有していてもよい。上記アシルアミノ基としては、総炭素原子数2~12、好ましくは総炭素原子数2~8のアシルアミノ基、より好ましくは総炭素原子数2~8のアルキルカルボニルアミノ基、たとえばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、2-ピリジンカルボニルアミノ基、プロパノイルアミノ基などが挙げられる。
【0027】
上記脂肪族スルホンアミド基、芳香族スルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基は、たとえば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、2-ピリジンスルホンアミド基などであってもよい。
【0028】
上記スルファモイル基は、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記スルファモイル基としては、スルファモイル基、総炭素原子数1~9のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数2~10のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数7~13のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~12のヘテロ環スルファモイル基、より好ましくはスルファモイル基、総炭素原子数1~7のアルキルスルファモイル基、総炭素原子数3~6のジアルキルスルファモイル基、総炭素原子数6~11のアリールスルファモイル基、総炭素原子数2~10のヘテロ環スルファモイル基、たとえば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基、4-ピリジンスルファモイル基などが挙げられる。
【0029】
上記脂肪族オキシ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、メトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などを有していてもよい。上記脂肪族オキシ基としては、総炭素原子数1~8、好ましくは1~6のアルコキシ基、たとえばメトキシ基、エトキシ基、i-プロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メトキシエトキシ基などが挙げられる。
【0030】
上記芳香族アミノ基、ヘテロ環アミノ基は、脂肪族基、脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、カルバモイル基、該アリール基と縮環したヘテロ環基、脂肪族オキシカルボニル基、好ましくは総炭素原子数1~4の脂肪族基、総炭素原子数1~4の脂肪族オキシ基、ハロゲン原子、総炭素原子数1~4のカルバモイル基、ニトロ基、総炭素原子数2~4の脂肪族オキシカルボニル基を有していてもよい。
【0031】
上記脂肪族チオ基は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、総炭素原子数1~8、より好ましくは総炭素原子数1~6のアルキルチオ基、たとえばメチルチオ基、エチルチオ基、カルバモイルメチルチオ基、t-ブチルチオ基などが挙げられる。
【0032】
上記カルバモイルアミノ基は、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基などを有していてもよい。上記カルバモイルアミノ基としては、カルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~9のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~13のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~12のヘテロ環カルバモイルアミノ基、好ましくはカルバモイルアミノ基、総炭素原子数2~7のアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~6のジアルキルカルバモイルアミノ基、総炭素原子数7~11のアリールカルバモイルアミノ基、総炭素原子数3~10のヘテロ環カルバモイルアミノ基、たとえば、カルバモイルアミノ基、メチルカルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルカルバモイルアミノ基、フェニルカルバモイルアミノ基、4-ピリジンカルバモイルアミノ基などが挙げられる。
【0033】
本開示において、端点によって表わされる範囲には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(たとえば、1~10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
【0034】
本開示において、「少なくとも1」の記載には、1以上の全ての数値が含まれる(たとえば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0035】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0036】
本開示の製造方法において用いる重合体(I)は、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【0037】
重合中に重合体(I)が存在することによって、テトラフルオロエチレン(TFE)の重合が円滑に進行し、ポリテトラフルオロエチレンを含有する重合分散液が得られる。しかし、得られる重合分散液、および、従来の方法で重合分散液から回収されたポリテトラフルオロエチレンには、重合体(I)が残留する問題がある。たとえば、特許文献1には、重合分散液を高速で撹拌することにより、重合分散液中のフッ素樹脂を凝固させ、凝固した湿潤粉末を乾燥させることが記載されているが、この方法では、得られるポリテトラフルオロエチレンに比較的多量の重合体(I)が残留する。
【0038】
本出願人は、この問題を解決する手段を既に見出しており、既に提出済みの出願において、フッ素樹脂を含有する組成物(フッ素樹脂組成物)を得る製造方法を提案している。
【0039】
既に提案した上記の製造方法においては、重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレン(TFE)を重合することにより、TFE単位を含有するフッ素樹脂を含有する重合分散液を得て、得られた重合分散液中のフッ素樹脂の凝析を行うことにより、凝析物を得て、得られた凝析物の洗浄を行うことにより、フッ素樹脂を含有する組成物(フッ素樹脂組成物)を得る製造方法であって、凝析および洗浄を、次の(1)および(2)のいずれか一方または両方の方法により行う。
(1)凝析を、重合分散液中のフッ素樹脂と、有機溶剤とを接触させることにより行う。
(2)洗浄を、凝析物と有機溶剤とを接触させることにより行う。
【0040】
上記の製造方法においては、洗浄および凝析の少なくとも一方を、有機溶剤を用いて行うものであることから、重合により得られるフッ素樹脂に残留する重合体(I)を、高い効率でフッ素樹脂から除去することができる。それによって、重合体(I)を用いて得られるフッ素樹脂組成物であるにもかかわらず、重合体(I)の含有量が低減されたフッ素樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
一方で、上記の製造方法により重合分散液中のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を凝析させた場合、重合分散液中のPTFEの一部が凝析せずに、重合分散液中に残留してしまう問題があった。
【0042】
本開示の第1の製造方法は、この問題を解決するための製造方法として提案されるものであり、重合体(I)を用いて得られるPTFEを含有する組成物であるにもかかわらず、重合体(I)の含有量が低減された組成物を得ることができ、しかも、PTFEを含有する組成物を高い収率で製造することができる。
【0043】
すなわち、本開示の第1の製造方法は、PTFEを含有する組成物の製造方法であって、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でTFEを重合することにより、PTFEを含有する重合分散液を得て、重合分散液中のPTFEと、有機溶剤と、凝析剤とを接触させることにより、重合分散液中のPTFEを凝析させて、PTFEを含有する組成物を得る製造方法である。
【0044】
このように、本開示の第1の製造方法においては、PTFEを凝析させる際に、重合分散液中のPTFEと有機溶剤および凝析剤とを接触させる。有機溶剤および凝析剤を併用することによって、重合分散液中のPTFEを驚くほど円滑に凝析させることができ、重合分散液から凝析物を回収した後には、PTFEがほとんど残留していない分散液(排水)を得ることができる。
【0045】
本開示の第1の製造方法が上記のような効果を奏する理由は次のように推測される。重合分散液には、PTFEおよび重合体(I)が含まれる。重合分散液中では、PTFEの粒子同士の静電反発力、および、重合体(I)によるPTFEの粒子の安定化作用によって、水性媒体中にPTFEの粒子が安定に分散している。重合分散液中のPTFEに対して、有機溶剤および凝析剤が接触すると、主に凝析剤の作用によって、PTFEの粒子同士の静電反発力が低下すると同時に、有機溶剤の作用によって、重合体(I)が有機溶剤中に移り、PTFEの粒子から離れる。有機溶剤および凝析剤によるこれらの相乗的な作用によって、PTFEの粒子が高い効率で凝析するものと推測される。
【0046】
また、重合により得られるフッ素樹脂に残留する重合体(I)を、より一層高い効率でフッ素樹脂から除去することができる技術も求められている。
【0047】
本開示の第2の製造方法は、このような要望に応えるための製造方法として提案されるものであり、重合体(I)を用いて得られるPTFEを含有する組成物であるにもかかわらず、重合体(I)の含有量が低減された組成物を得ることができる。
【0048】
すなわち、本開示の第2の製造方法は、PTFEを含有する組成物の製造方法であって、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でTFEを重合することにより、PTFEを含有する重合分散液を得て、重合分散液中のPTFEと、有機溶剤とを接触させることにより、重合分散液中のPTFEを凝析させて、凝析物を得た後、20℃以上で凝析物の洗浄を行うことにより、PTFEを含有する組成物を得る製造方法である。
【0049】
このように、本開示の第2の製造方法においては、重合分散液中のPTFEと有機溶剤とを接触させることにより、PTFEを凝析させ、得られた凝析物を比較的高い温度で洗浄する。有機溶剤を用いて凝析を行い、凝析物を比較的高い温度で洗浄することによって、重合体(I)の含有量が低減された組成物を得ることができる。
【0050】
次に、本開示の製造方法において用いる有機溶剤および凝析剤について、より詳細に説明する。
【0051】
(有機溶剤)
本開示の第1および第2の製造方法において用いる有機溶剤としては、有機溶剤(ただし、窒素含有化合物を除く)が好ましい。窒素含有化合物としては、尿素が挙げられる。また、本開示の製造方法において用いる有機溶剤としては、有機溶剤(ただし、凝析剤を除く)であってよい。
【0052】
本開示の第1の製造方法においては、上記したとおり、有機溶剤および凝析剤による相乗的な作用によって、PTFEの粒子が高い効率で凝析させるものである。有機溶剤は、主に、重合体(I)によるPTFEの粒子の分散安定化の作用を低下させる機能があると推測される。したがって、有機溶剤としては、重合体(I)の水に対する溶解度より高い溶解度を示すものが好ましい。
【0053】
有機溶剤としては、少なくとも酸性の水溶液中では電離しない有機溶剤が好ましく、非電解質がより好ましい。
【0054】
有機溶剤としては、たとえば、
アルコール;
酢酸、プロピオン酸、エトキシ酢酸、吉草酸などのカルボン酸;
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、炭酸ジメチルなどのエステル;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、3-メチル-2-シクロペンテノンなどのケトン;
ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンなどのエーテル;
などが挙げられる。
【0055】
有機溶剤としては、なかでも、アルコールが好ましい。アルコールは、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのいずれであってもよい。アルコールとしては、重合体(I)の除去効率が一層向上することから、一価アルコールが好ましい。
【0056】
アルコールとしては、たとえば、
メタノールなどの炭素数1のアルコール;
エタノール、エチレングリコールなどの炭素数2のアルコール;
1-プロパノール、2-プロパノール、プロピレングリコール、グリセリンなどの炭素数3のアルコール
1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールなどの炭素数4のアルコール;
1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、3-メチル-2-ブタノール、2-メチル-2-ブタノールなどの炭素数5のアルコール;
1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノール、2-エチル-1-ブタノールなどの炭素数6のアルコール;
1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、2-メチル-1-ヘキサノールなどの炭素数7のアルコール;
5-フッ化プロパノール、1H,1H,5H-オクタフルオロペンタノールなどのフッ化アルコール;
などが挙げられる。
【0057】
アルコールとしては、重合体(I)の除去効率が一層向上することから、MolLogPが、0.3~1.6の範囲内にあるアルコールが好ましい。MolLogPは、より好ましくは1.2以下である。
【0058】
MolLogPが、0.3~1.6の範囲内にあるアルコールとしては、たとえば、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、1-ペンタノールなどが挙げられる。
【0059】
MolLogPは、オープンソースライブラリであるRDKitを用いて算出される化合物のオクタノール/水の分配係数である。
【0060】
アルコールの炭素数は、重合体(I)の除去効率が一層向上することから、好ましくは1~7であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上であり、より好ましくは5以下である。
【0061】
有機溶剤としては、重合体(I)の除去効率が一層向上し、さらに、重合分散液中のPTFEを一層円滑に凝析させられることから、なかでも、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノールおよび2-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、2-プロパノール、2-ブタノールおよび2-ペンタノールからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0062】
(凝析剤)
本開示の第1の製造方法において用いる凝析剤としては、凝析剤(ただし、アルコールを除く)が好ましい。第2の製造方法においても、第1の製造方法と同様に、凝析剤を用いることができる。
【0063】
本開示の第1の製造方法においては、上記したとおり、有機溶剤および凝析剤による作用によって、PTFEの粒子が高い効率で凝析させるものである。凝析剤は、主に、PTFEの粒子同士の静電反発力が低下させる機能があると推測される。したがって、凝析剤としては、電解質が好ましく、水に対する溶解度が高く、かつ、酸性条件下で電離度が高い電解質が好ましい。また、凝析剤としては、少なくとも酸性の水溶液中で電離する凝析剤が好ましい。
【0064】
凝析剤としては、強酸、弱アルカリ、強アルカリ性を示すものが好ましく、強酸、弱アルカリ性を示すものがより好ましい。
【0065】
凝析剤としては、乾燥工程において、簡単に分解、除去されるものが好ましい。
【0066】
凝析剤としては、
硝酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の無機塩;
塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等;
アンモニア、尿素等の含窒素化合物;
などが挙げられる。
【0067】
凝析剤としては、重合分散液中のPTFEを一層円滑に凝析させられることから、なかでも、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニアおよび尿素からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0068】
本開示の一実施形態においては、有機溶剤として、上述したアルコールを用い、凝析剤として、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニアおよび尿素からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0069】
次に、本開示の製造方法において用いる凝析方法について、より詳細に説明する。
【0070】
(凝析方法)
本開示の第1の製造方法においては、重合分散液中のPTFEの凝析を行う際に、PTFEと有機溶剤と凝析剤とを接触させる。
【0071】
第1の製造方法において、PTFEと有機溶剤と凝析剤とを接触させる方法は特に限定されず、重合分散液および凝析剤を有機溶剤に添加する方法、有機溶剤および凝析剤を重合分散液に添加する方法などが挙げられる。重合分散液、有機溶剤および凝析剤を含有する混合物を攪拌することにより、PTFEと有機溶剤と凝析剤とを十分に接触させて、重合分散液中のPTFEを凝析させてもよい。また、PTFEの凝析は、バッチ式でおこなってもよいし、連続式でおこなってもよい。重合分散液に有機溶剤および凝析剤を添加するタイミングは、凝析前でもよいし、凝析途中でもよい。
【0072】
本開示の第2の製造方法においては、重合分散液中のPTFEの凝析を行う際に、PTFEと有機溶剤とを接触させる。第2の製造方法においても、凝析の際に、有機溶剤に加えて凝析剤を用いることができる。第2の製造方法の一実施形態においては、凝析剤を用いることなく、凝析を行う。
【0073】
第2の製造方法において、PTFEと有機溶剤とを接触させる方法は特に限定されず、重合分散液を有機溶剤に添加する方法、有機溶剤を重合分散液に添加する方法などが挙げられる。重合分散液および有機溶剤を含有する混合物を攪拌することにより、PTFEと有機溶剤を十分に接触させて、重合分散液中のPTFEを凝析させてもよい。また、PTFEの凝析は、バッチ式でおこなってもよいし、連続式でおこなってもよい。
【0074】
凝析前に、水を用いて、重合により得られた重合分散液中のPTFEの含有量を調整してもよい、凝析に用いる重合分散液中のPTFEの含有量は、重合分散液に対して、5~40質量%であってよく、5~20質量%であってよい。
【0075】
重合分散液中のPTFEの含有量は、重合分散液1gを送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、加熱残分の質量を測定し、重合分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率として算出することにより得られる値である。
【0076】
第1および第2の製造方法において、凝析に用いる有機溶剤の量は、重合体(I)の除去効率が一層向上し、さらに、重合分散液中のPTFEを一層円滑に凝析させられることから、重合分散液中のPTFEの重量(乾燥重量)に対して、好ましくは1.0質量%以上に相当する重量である。凝析に用いる有機溶剤の量は、より好ましくは5.0質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。凝析に用いる有機溶剤の量の上限は特に限定されない。たとえば、重合分散液中のPTFEの重量に対して、50倍に相当する重量以下の量、より好ましくは10倍に相当する重量以下の量、さらに好ましくは5倍に相当する重量以下の量、特に好ましくは3倍に相当する重量以下の量の有機溶剤を用いることができる。
【0077】
また、本開示の第1の製造方法においては、凝析の際に、有機溶剤に加えて凝析剤を用いるものであることから、有機溶剤の使用量を減らすことも可能である。有機溶剤の使用量を減らすことにより、凝析物に残留する有機溶剤の量を低減することができる。凝析に用いる有機溶剤の量は、重合分散液中のPTFEの重量(乾燥重量)に対して、好ましくは150質量%以下であり、より好ましくは100質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0078】
また、本開示の第2の製造方法においては、凝析せずに重合分散液の残存するPTFEの重量を減らす観点から、凝析に用いる有機溶剤の量は、重合分散液中のPTFEの重量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%以上である。
【0079】
第1の製造方法において、凝析に用いる凝析剤の量は、重合分散液中のPTFEを一層円滑に凝析させられることから、重合分散液中のPTFEの重量(乾燥重量)に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.10質量%以上であり、さらに好ましくは0.30質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下である。
【0080】
第1の製造方法において、凝析のために、重合分散液中のPTFEと有機溶剤と凝析剤とを接触させる際の温度は、重合体(I)の除去効率が一層向上し、さらに、重合分散液中のPTFEを一層円滑に凝析させられることから、好ましくは5~80℃であり、より好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは15℃以上であり、より好ましくは70℃以下であり、さらに好ましくは60℃以下である。
【0081】
第2の製造方法において、凝析のために、重合分散液中のPTFEと有機溶剤とを接触させる際の温度は、重合体(I)の除去効率が一層向上し、さらに、重合分散液中のPTFEを一層円滑に凝析させられることから、好ましくは5~80℃であり、より好ましくは10℃以上であり、さらに好ましくは15℃以上であり、さらに好ましくは20℃以上であり、特に好ましくは25℃以上であり、より好ましくは70℃以下であり、さらに好ましくは60℃以下である。
【0082】
第1および第2の製造方法において、凝析前に、重合により得られた重合分散液のpHを調整してもよい、凝析のために、重合分散液中のPTFEと有機溶剤と凝析剤とを接触させる際の重合分散液のpHは、重合体(I)の除去効率が一層向上し、さらに、重合分散液中のPTFEを一層円滑に凝析させられることから、好ましくは3~12の範囲内であり、より好ましくは4以上であり、さらに好ましくは6以上であり、尚さらに好ましくは8以上であり、より好ましくは11以下であり、さらに好ましくは10以下である。
【0083】
pHの調整は、重合分散液に酸またはアルカリを添加することにより行うことができる。たとえば、重合分散液のpHが低すぎる場合は、重合分散液にアンモニアなどのアルカリを添加して、重合分散液のpHを上記の範囲内に調整することができる。
【0084】
第1の製造方法において、重合分散液中のPTFEを凝析させた後、凝析物として、PTFEを含有する組成物を回収することができる。重合分散液中のPTFEと有機溶剤と凝析剤とを接触させることにより得られる凝析物からは重合体(I)が除去されているが、重合体(I)の除去効率が一層向上することから、得られた凝析物をさらに洗浄することが好ましい。
【0085】
第1の製造方法において、重合分散液中のPTFEと有機溶剤と凝析剤とを接触させることにより得られる凝析物(PTFE)の洗浄には、有機溶剤または水を用いることができる。凝析物の洗浄方法としては、少なくとも水により凝析物を洗浄する方法が好ましい。凝析物の洗浄方法としては、水のみにより凝析物を洗浄する方法、有機溶剤により凝析物を洗浄した後、水により凝析物を洗浄する方法が挙げられる。
【0086】
第2の製造方法においては、重合分散液中のPTFEを凝析させ、凝析物を得た後、20℃以上で凝析物の洗浄を行う。比較的高温で凝析物の洗浄を行うことによって、重合体(I)の除去効率が向上する。第1の製造方法においても、第2の製造方法と同様に、比較的高い温度で凝析物を洗浄してもよい。
【0087】
第2の製造方法における洗浄の際の温度は、25℃以上、30℃以上、35℃以上または40℃以上であってよく、100℃未満、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下または50℃以下であってよい。
【0088】
第2の製造方法において、凝析物(PTFE)の洗浄には、有機溶剤または水を用いることができる。凝析物の洗浄方法としては、少なくとも水により凝析物を洗浄する方法が好ましい。凝析物の洗浄方法としては、水のみにより凝析物を洗浄する方法、有機溶剤により凝析物を洗浄した後、水により凝析物を洗浄する方法が挙げられる。
【0089】
第2の製造方法の一実施形態においては、洗浄に用いる有機溶剤または水を20℃以上に調整する。洗浄に用いる有機溶剤または水の温度は、25℃以上、30℃以上、35℃以上または40℃以上であってよく、100℃未満、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下または50℃以下であってよい。
【0090】
有機溶剤または水による凝析物(PTFE)の洗浄は、従来公知の方法により行う。有機溶剤または水による洗浄の回数は、1回であってもよいし、2回以上であってもよい。また、凝析物(PTFE)の洗浄は、バッチ式でおこなってもよいし、連続式でおこなってもよい。また、洗浄に要する時間は、1分以上であってよく、3分以上であってよく、30分以下であってよい。
【0091】
PTFEを洗浄した後、PTFEを乾燥させることができる。乾燥の詳細は後述する。
【0092】
次に、凝析に供する重合分散液の調製方法について、より詳細に説明する。
【0093】
(重合分散液の調製)
本開示の製造方法において用いる重合分散液は、重合体(I)の存在下に、水性媒体中でTFEを重合することにより、製造される。重合体(I)の存在下に水性媒体中で少なくともTFEを含有するフルオロモノマーを重合することにより、いわゆる乳化重合反応が進行し、通常、水性媒体中にPTFE粒子が分散した重合分散液が得られる。次いで、PTFE粒子を凝析させることにより、重合分散液中のPTFEを回収することができる。
【0094】
(重合体(I))
本開示の製造方法において用いる重合体(I)は、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【0095】
本開示において、アニオン性基には、サルフェート基、カルボキシレート基などのアニオン性基に加えて、-COOHのような酸基、-COONHのような酸塩基などのアニオン性基を与える官能基が含まれる。アニオン性基としては、サルフェート基、カルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホネート基、または、-C(CFOM(式中、Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)が好ましい。
【0096】
本開示の製造方法において、一般式(I)で表される単量体(I)として、1種または2種以上の単量体を用いることができる。
【0097】
Rは、連結基である。本開示において「連結基」は、(m+1)価連結基であり、mが1の場合は二価連結基である。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、たとえば、100以下であってよく、50以下であってよい。
【0098】
連結基は、鎖状または分岐鎖状、環状または非環状構造、飽和または不飽和、置換または非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、および窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素およびカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄または窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
【0099】
mは1以上の整数であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。mが2以上の整数である場合、Z、ZおよびAは、同一であっても、異なっていてもよい。
次に、一般式(I)においてmが1である場合の好適な構成について説明する。
【0100】
Rは、たとえば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、または、2価の有機基であることが好ましい。
【0101】
Rが2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、たとえば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状および非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(たとえば、エステル、エーテル、ケトン(ケト基)、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
【0102】
Rはまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化または過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
【0103】
Rとしては、たとえば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、または、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
【0104】
Rは、エーテル結合またはケト基を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がフッ素に置換されていてもよい。
【0105】
Rとして好ましくは、-(CH-、-(CF-、-(CF-O-、-O-(CF-、-(CF-O-(CF-、-O(CF-O-(CF-、-(CF-[O-(CF-、-O(CF-[O-(CF-、-[(CF-O]-[(CF-O]-、-O[(CF-O]-、-O[(CF-O]-[(CF-O]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-、-O-(CF-O-[CF(CF)CFO]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-O-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-O-[CF(CF)CFO]-、-[CFCF(CF)O]-、-[CF(CF)CFO]-、-(CF-O-[CF(CF)CFO]-、-(CF-O-[CF(CF)CFO]-(CF-、-[CFCF(CF)]-CO-(CF-、および、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、cおよびdは独立して少なくとも1以上である。a、b、cおよびdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、cおよびdの上限は、たとえば、100である。
【0106】
Rとしてより好ましくは、-O-CF-、-O-CFCF-、-O-CFCF-O-、-O-CFCFCF-、-O-CFCFCF-O-、-O-CFCF(CF)-O-、-O-CFCF-O-CF(CF)CF-O-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-O-、および、-O-CFCF(CF)-O-CF-から選択される少なくとも1種である。
【0107】
Rとしては、一般式(r1):
-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)- (r1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0または1である)で表される2価の基が好ましく、一般式(r2):
-CF-O-(CX -(O)- (r2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、gは0または1である)で表される2価の基がより好ましい。
【0108】
Rとして好適な具体的としては、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CH-、-CF-O-CHCF-、-O-CF-、-O-CFCF-、-O-CFCFCF-、-O-CFCFCFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CFCH-、-CF-O-CFCFCH-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CH-等が挙げられる。なかでも、Rは、酸素原子を含んでもよい、パーフルオロアルキレン基が好ましく、具体的には、-CF-O-、-CF-O-CF-、-O-CF-、-O-CFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、または、-CF-O-CF(CF)CF-O-が好ましい。
【0109】
一般式(I)の-R-CZ-としては、一般式(s1):
-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)-CZ- (s1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0または1であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基である)で表されるものが好ましく、式(s1)において、ZおよびZは、FまたはCFがより好ましく、一方がFで他方がCFであることがさらに好ましい。
【0110】
また、一般式(I)において、-R-CZ-としては、一般式(s2):
-CF-O-(CX -(O)-CZ- (s2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、FまたはCFであり、eは0~3の整数であり、gは0または1であり、ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基である)で表されるものが好ましく、式(s2)において、ZおよびZは、FまたはCFがより好ましく、一方がFで他方がCFであることがさらに好ましい。
【0111】
一般式(I)の-R-CZ-としては、-CF-O-CF-、-O-CFCF-、-O-CFCFCF-、-O-CFCFCFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-C(CF-、-CF-O-CF-CF-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CF-C(CF-、-CF-O-CFCF-CF-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、または、-CF-O-CF(CF)CF-O-C(CF-が好ましく、-O-CFCF-、-O-CFCFCF-、-O-CFCFCFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、または、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-がより好ましく、-O-CFCF-、-O-CFCF(CF)-O-CFCF-が更に好ましい。
【0112】
重合体(I)は、高度にフッ素化されていることも好ましい。たとえば、ホスフェート基部分(たとえば、CHOP(O)(OM))およびサルフェート基部分(たとえば、CHOS(O)OM)のようなアニオン性基(A)を除き、重合体(I)中のC-H結合の80%以上、90%以上、95%以上、または100%がC-F結合で置換されていることが好ましい。
【0113】
単量体(I)および重合体(I)は、アニオン性基(A)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(I)において、X、X、およびXの全てがFであり、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状および分岐鎖状のいずれでもよく、環状および非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
【0114】
単量体(I)および重合体(I)は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、単量体(I)および重合体(I)は、アニオン性基(A)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
【0115】
アニオン性基(A)は、-SOM、-SOM、-OSOM、-COOM、-SONR’CHCOOM、-CHOP(O)(OM)、[-CHO]P(O)(OM)、-CHCHOP(O)(OM)、[-CHCHO]P(O)(OM)、-CHCHOSOM、-P(O)(OM)、-SONR’CHCHOP(O)(OM)、[-SONR’CHCHO]P(O)(OM)、-CHOSOM、-SONR’CHCHOSOM、または、-C(CFOMであってよい。なかでも、-SOM、-OSOM、-COOM、-P(O)(OM)または-C(CFOMが好ましく、-COOM、-SOM、-OSOM、-P(O)(OM)または-C(CFOMがより好ましく、-SOM、-COOMまたは-P(O)(OM)がさらに好ましく、-SOMまたは-COOMが特に好ましい。
【0116】
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。
【0117】
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
【0118】
Mとしては、-H、金属原子またはNR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNHが更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNHが更により好ましく、-H、-NaまたはNHが特に好ましく、-Hまたは-NHが最も好ましい。
【0119】
重合体(I)において、各重合単位(I)で異なるアニオン性基を有してもよいし、同じアニオン性基を有してもよい。
【0120】
単量体(I)は、一般式(Ia)で示される単量体であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(Ia)で示される単量体に基づく重合単位(Ia)を含む重合体であることも好ましい。
CF=CF-O-Rf-A (Ia)
(式中、Aはアニオン性基であり、Rfは、過フッ素化されており、鎖状または分岐鎖状、環状または非環状構造、飽和または不飽和、置換または非置換であってもよく、硫黄、酸素、および窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
【0121】
単量体(I)は、一般式(Ib)で示される単量体であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(Ib)で示される単量体に基づく重合単位(Ib)を含む重合体であることも好ましい。
CH=CH-O-Rf-A (Ib)
(式中、Aはアニオン性基であり、Rfは式Iaで定義される過フッ素化二価連結基である。)
【0122】
一般式(I)において、Aはサルフェート基であることが好ましい形態の一つである。Aは、たとえば、-CHOSOM、-CHCHOSOM、または、-SONR’CHCHOSOMであり、式中、R’はH、または炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0123】
がサルフェート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF(OCFCFCHOSOM)、CF=CF(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)CHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOSOM)、CH=CH(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(OCFCFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(OCFCFCFCHOSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0124】
一般式(I)において、Aはスルホネート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしてはたとえば、-SOMであり、式中、Mは上記と同じである。
【0125】
がスルホネート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSOM)、CH=CH(OCFCFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSOM)、CH=CH(O(CFSOM)、CH=CH(O(CFSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0126】
一般式(I)において、Aはカルボキシレート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては、たとえばCOOMまたはSONR’CHCOOMであり、式中、R’はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。Aがカルボキシレート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)COOM)、CF=CF(OCFCF(CF)O(CFCOOM)(nは1より大きい)、CH=CH(OCFCFCOOM)、CH=CH(O(CFCOOM)、CH=CH(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(O(CFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(O(CFSONR’CHCOOM)、CH=CH(O(CFSONR’CHCOOM)等が挙げられる。上記式中、R’はHまたは炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0127】
一般式(I)において、Aはホスフェート基であることも好ましい形態の一つである。Aとしては、たとえば、-CHOP(O)(OM)、[-CHO]P(O)(OM)、-CHCHOP(O)(OM)、[-CHCHO]P(O)(OM)、[-SONR’CHCHO]P(O)(OM)またはSONR’CHCHOP(O)(OM)であり、式中、R’は炭素数1~4のアルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0128】
がホスフェートである場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(O(CFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)CHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CH=CH(OCFCFCHOP(O)(OM))、CH=CH(O(CFCHOP(O)(OM))、CH=CH(O(CFCHOP(O)(OM))等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0129】
一般式(I)において、Aはホスホネート基であることも好ましい形態の一つである。Aがホスホネート基である場合、一般式(I)で表される単量体としては、CF=CF(OCFCFP(O)(OM))、CF=CF(O(CFP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)P(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(O(CFP(O)(OM))、CH=CH(O(CFP(O)(OM))が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
【0130】
単量体(I)は、一般式(1)で表される単量体(1)であることが好ましい。
重合体(I)は、一般式(1)で表される単量体に基づく重合単位(1)を含む重合体(1)であることが好ましい。
CX=CY(-CZ-O-Rf-A) (1)
(式中、Xは、同一または異なって、-HまたはFであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Zは、同一または異なって、-H、-F、アルキル基またはフルオロアルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、-H、金属原子、-NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)である。但し、X、YおよびZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。)
【0131】
本開示の製造方法において、一般式(1)で表される単量体(1)と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(1)は、一般式(1)で表される単量体(1)の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0132】
上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0133】
一般式(1)において、Xは-HまたはFである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。たとえば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0134】
一般式(1)において、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基である。上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記Yとしては、-H、-FまたはCFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0135】
一般式(1)において、Zは、同一または異なって、-H、-F、アルキル基またはフルオロアルキル基である。上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。上記Zとしては、-H、-FまたはCFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0136】
一般式(1)において、上記X、YおよびZの少なくとも1つはフッ素原子を含む。たとえば、Xが-Hであり、YおよびZが-Fであってよい。
【0137】
一般式(1)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
【0138】
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、上記含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、6以下が特に好ましく、3以下が最も好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCF-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0139】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、9以下が特に好ましく、6以下が最も好ましい。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、たとえば、一般式:
【化1】
(式中、ZはFまたはCF;ZおよびZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
【0140】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CFCF(CF)OCF-、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CF-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0141】
一般式(1)において、Aは、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)である。
【0142】
としては、HまたはC1-10の有機基が好ましく、HまたはC1-4の有機基がより好ましく、HまたはC1-4のアルキル基が更に好ましい。
【0143】
金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、KまたはLiが好ましい。
【0144】
Mとしては、H、金属原子またはNR が好ましく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、H、Na、K、LiまたはNHが更に好ましく、H、Na、KまたはNHが更により好ましく、H、NaまたはNHが特に好ましく、HまたはNHが最も好ましい。
【0145】
Aとしては、-COOMまたは-SOMが好ましい。
【0146】
一般式(1)で表される単量体としては、たとえば、一般式(1a):
CX=CFCF-O-(CF(CF)CFO)n5-CF(CF)-A (1a)
(式中、各Xは、同一であり、FまたはHを表す。n5は0または1~10の整数を表し、Aは、上記定義と同じ。)で表される単量体が例示される。
【0147】
一般式(1a)において、n5は、一次粒子径が小さい粒子を得ることができる点で、0または1~5の整数であることが好ましく、0、1または2であることがより好ましく、0または1であることが更に好ましい。
【0148】
本開示の製造方法において、一般式(1a)で表される単量体と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(1)は、一般式(1a)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0149】
単量体(1)は、一般式(1A)で表される単量体であることが好ましい。
重合単位(1)は、一般式(1A)で表される単量体に基づく重合単位(1A)であることが好ましい。
CH=CF(-CF-O-Rf-A) (1A)
(式中、RfおよびAは前記と同じ。)
【0150】
本開示の製造方法において、一般式(1A)で表される単量体と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(1)は、一般式(1A)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0151】
式(1A)で表される単量体として具体的には、一般式
【0152】
【化2】
【0153】
(式中、ZはFまたはCF;ZおよびZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、ただし、ZおよびZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない;Aは上記定義と同じ)で表される単量体が挙げられる。より具体的には、
【0154】
【化3】
【0155】
などが好ましく挙げられ、なかでも
【0156】
【化4】
【0157】
であることが好ましい。
【0158】
一般式(1A)で表される単量体としては、式(1A)中のAが-COOMであることが好ましく、特に、CH=CFCFOCF(CF)COOM、および、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH=CFCFOCF(CF)COOMがより好ましい。
【0159】
また、一般式(1)で表される単量体としては、下記式で表される単量体等も挙げられる。
CF=CFCF-O-Rf-A
(式中、RfおよびAは上記と同じ)
【0160】
より具体的には、
【化5】
等が挙げられる。
【0161】
単量体(I)は、一般式(2)で表される単量体(2)であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(2)で表される単量体に基づく重合単位(2)を含む重合体(2)であることも好ましい。
CX=CY(-O-Rf-A) (2)
(式中、Xは、同一または異なって、-HまたはFであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合もしくはケト基を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、前記と同じである。)
【0162】
本開示の製造方法において、一般式(2)で表される単量体(2)と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(2)は、一般式(2)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0163】
一般式(2)において、Xは-HまたはFである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。たとえば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0164】
一般式(2)において、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基である。アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。Yとしては、-H、-Fまたは-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0165】
一般式(2)において、上記XおよびYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。たとえば、Xが-Hであり、YおよびZが-Fであってよい。
【0166】
一般式(2)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のケト基を有する含フッ素アルキレン基である。なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0167】
Rfの含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-、-CFCFCF-、CFCFCFCF-等が挙げられる。含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましく、分岐していない直鎖状のパーフルオロアルキレン基であることがより好ましい。
【0168】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、たとえば、一般式:
【化6】
(式中、ZはFまたはCF;ZおよびZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
【0169】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CFCF(CF)OCF-、-CFCF(CF)OCFCF-、-CFCF(CF)OCFCFCF-、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CF-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0170】
上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、5以下が特に好ましい。
【0171】
上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CFCF(CF)CO-CF-、-CFCF(CF)CO-CFCF-、-CFCF(CF)CO-CFCFCF-、-CFCF(CF)CO-CFCFCFCF-等が挙げられる。上記ケト基を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0172】
含フッ素アルキレン基中のケト基に水が付加してもよい。したがって、単量体(2)は水和物であってもよい。ケト基に水が付加した含フッ素アルキレン基としては、-CFCF(CF)C(OH)-CF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCFCF-、-CFCF(CF)C(OH)-CFCFCFCF-等が挙げられる。
【0173】
一般式(2)で表される単量体は、一般式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)、(2e)、(2f)および(2g)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF=CF-O-(CFn1-A (2a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは前記と同じ。)
CF=CF-O-(CFC(CF)F)n2-A (2b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFXn3-A (2c)
(式中、Xは、FまたはCFを表し、n3は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFXO)n4-(CFn6-A (2d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、AおよびXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFCFXO)n5-CFCFCF-A (2e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、AおよびXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFn7-O-(CFn8-A (2f)
(式中、n7は、1~10の整数を表し、n8は、1~3の整数を表す。Aは、前記定義と同じ。)
CF=CF[OCFCF(CF)]n9O(CFn10O[CF(CF)CFO]n11CF(CF)-A (2g)
(式中、n9は、0~5の整数を表し、n10は、1~8の整数を表し、n11は、0~5の整数を表す。Aは、前記定義と同じ。)
【0174】
一般式(2a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。
【0175】
一般式(2a)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF-O-CFCOOM、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CFOCFSOM、CF=CFOCFCFCFSOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0176】
一般式(2b)において、n2は、得られる組成物の分散安定性の点で、3以下の整数であることが好ましい。
【0177】
一般式(2c)において、n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Aは、-COOMであることが好ましく、上記Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
【0178】
一般式(2d)において、Xは、組成物の分散安定性の点で、-CFであることが好ましく、n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、H、NaまたはNHであることが好ましい。
【0179】
一般式(2d)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFSOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFSOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0180】
一般式(2e)において、n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNHであることが好ましい。
【0181】
一般式(2e)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFOCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、Na、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0182】
一般式(2f)において、n7は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMまたは-SOMであることが好ましく、-COOMがより好ましい。Mは、H、Na、KまたはNHであることが好ましい。
【0183】
一般式(2f)で表される単量体としては、たとえば、CF=CF-O-(CF-O-CF-COOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0184】
一般式(2g)において、n9は、水溶性の点で3以下の整数であることが好ましく、n10は3以下の整数であることが好ましく、n11は3以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMまたは-SOMであることが好ましく、-COOMがより好ましい。Mは、H、Na、KまたはNHであることが好ましい。
【0185】
一般式(2g)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFO(CFOCF(CF)COOM、CF=CFOCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFOCF(CF)COOM、CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)COOM、CF=CF[OCFCF(CF)]O(CFO[CF(CF)CFO]CF(CF)COOM(式中、Mは、H、NHまたはアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0186】
単量体(I)は、一般式(3)で表される単量体(3)であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(3)で表される単量体に基づく重合単位(3)を含む重合体(3)であることも好ましい。
CX=CY(-Rf-A) (3)
(式中、Xは、同一または異なって、-HまたはFであり、Yは-H、-F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、または、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Aは、前記と同じである。)
【0187】
本開示の製造方法において、一般式(3)で表される単量体(3)と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(3)は、一般式(3)で表される単量体の単独重合体であってもよいし、他の単量体との共重合体であってもよい。
【0188】
なお、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0189】
一般式(3)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(3)において、XおよびYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
【0190】
一般式(3)で表される単量体は、一般式(3a):
CF=CF-(CFn1-A (3a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)で表される単量体、および、一般式(3b):
CF=CF-(CFC(CF)F)n2-A (3b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Aは、前記定義と同じ。)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0191】
一般式(3a)および一般式(3b)において、Aは、-SOMまたはCOOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。Rは、Hまたは有機基を表す。
【0192】
一般式(3a)において、n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNHであることが好ましい。
【0193】
一般式(3a)で表される単量体としては、たとえば、CF=CFCFCOOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0194】
一般式(3b)において、n2は、得られる組成物の分散安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Aは、-COOMであることが好ましく、Mは、HまたはNHであることが好ましい。
【0195】
次に、一般式(I)においてmが2以上の整数である場合の好適な構成について説明する。
【0196】
単量体(I)は、一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
重合体(I)は、一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位(4)を含む重合体(4)であることも好ましい。
CF=CF-CF-O-QF1-CF(-QF2-CZ-A) (4a)
(式中、Z、ZおよびAは上記定義と同じ、QF1およびQF2は、同一又は異なって、単結合、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキレン基または炭素炭素間にエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素オキシアルキレン基である)
CF=CF-O-QF1-CF(-QF2-CZ-A) (4b)
(式中、Z、Z、A、QF1およびQF2は上記定義と同じ)
【0197】
一般式(4a)および一般式(4b)で表される単量体としては、
【化7】
等が挙げられる。
【0198】
単量体(I)としては、単量体(1)、単量体(2)および単量体(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、単量体(1)がより好ましく、単量体(1A)がさらに好ましい。
重合体(I)は、重合体(1)、重合体(2)および重合体(3)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、重合体(1)がより好ましい。
【0199】
本開示の製造方法において、単量体(I)と、他の単量体とを共重合してもよい。
重合体(I)は、重合単位(I)のみからなる単独重合体であってもよいし、重合単位(I)と、一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位とを含む共重合体であってもよい。水性媒体への溶解性の観点からは、重合単位(I)のみからなる単独重合体が好ましい。重合単位(I)は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(I)は、2種以上の異なる一般式(I)で表される単量体に基づく重合単位(I)を含んでいてもよい。
【0200】
上記他の単量体としては、一般式CFR=CR(式中、Rは、独立に、H、Fまたは炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である)で表される単量体が好ましい。また、他の単量体としては、炭素数2または3の含フッ素エチレン性単量体が好ましい。他の単量体としては、たとえば、CF=CF、CF=CFCl、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CF=CFCF、CH=CFCF、CH=CHCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられる。
なかでも、共重合性が良好である点で、テトラフルオロエチレン(CF=CF)、クロロトリフルオロエチレン(CF=CFCl)およびフッ化ビニリデン(CH=CF)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、テトラフルオロエチレンおよびフッ化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。従って、上記他の単量体に基づく重合単位は、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位であることが好ましい。上記他の単量体に基づく重合単位は、各出現において、同一または異なっていてもよく、重合体(I)は、2種以上の異なる他の単量体に基づく重合単位を含んでいてもよい。
【0201】
上記他の単量体としては、また、一般式(n1-2):
【0202】
【化8】
【0203】
(式中、X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;XはH、F、Cl、CHまたはCF;X、Xは同じかまたは異なりHまたはF;aおよびcは同じかまたは異なり0または1である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される単量体が挙げられる。
【0204】
具体的には、CH=CFCF-O-Rf、CF=CF-O-Rf、CF=CFCF-O-Rf、CF=CF-Rf、CH=CH-Rf、CH=CH-O-Rf(式中、Rfは前記式(n1-2)と同じ)などが好ましく挙げられる。
【0205】
上記他の単量体としては、式(n2-1):
【0206】
【化9】
【0207】
(式中、XはH、FまたはCH;Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アクリレート単量体も挙げられる。上記Rf基は、
【0208】
【化10】
【0209】
(式中、d3は1~4の整数;e3は1~10の整数)などが挙げられる。
【0210】
上記他の単量体としては、式(n2-2):
CH=CHO-Rf (n2-2)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニルエーテルも挙げられる。
【0211】
一般式(n2-2)の単量体として具体的には、
【0212】
【化11】
【0213】
(式中、e6は1~10の整数)などが好ましく挙げられる。
【0214】
より具体的には、
【0215】
【化12】
【0216】
などが挙げられる。
【0217】
その他、一般式(n2-3):
CH=CHCHO-Rf (n2-3)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素アリルエーテル、一般式(n2-4):
CH=CH-Rf (n2-4)
(式中、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキル基または炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキル基)で表される含フッ素ビニル単量体等も挙げられる。
【0218】
一般式(n2-3)および(n2-4)で表される単量体として具体的には、
【0219】
【化13】
【0220】
などの単量体が挙げられる。
【0221】
重合体(I)は、通常、末端基を有する。末端基は、重合時に生成する末端基であり、代表的な末端基は、水素、ヨウ素、臭素、鎖状または分岐鎖状のアルキル基、および、鎖状または分岐鎖状のフルオロアルキル基から独立に選択され、任意追加的に少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含有してもよい。アルキル基またはフルオロアルキル基は、炭素数が1~20であることが好ましい。これらの末端基は、一般的には、重合体(I)の形成に使用される開始剤または連鎖移動剤から生成するか、または連鎖移動反応中に生成する。
【0222】
重合体(I)において、重合単位(I)の含有量としては、全重合単位に対して、好ましくなる順に、1.0モル%以上、3.0モル%以上、5.0モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上である。重合単位(I)の含有量は、実質的に100モル%であることが特に好ましく、重合体(I)は、重合単位(I)のみからなることが最も好ましい。
【0223】
重合体(I)において、一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量としては、全重合単位に対して、好ましくなる順に、99.0モル%以下、97.0モル%以下、95.0モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、20モル%以下、10モル%以下である。一般式(I)で表される単量体と共重合可能な他の単量体に基づく重合単位の含有量は、実質的に0モル%であることが特に好ましく、重合体(I)は、他の単量体に基づく重合単位を含まないことが最も好ましい。
【0224】
重合体(I)の数平均分子量は、0.1×10以上が好ましく、0.2×10以上がより好ましく、0.3×10以上が更に好ましく、0.4×10以上が更により好ましく、0.5×10以上が殊更に好ましく、1.0×10以上が特に好ましく、3.0×10以上が殊更特に好ましく、3.1×10以上が最も好ましい。また、75.0×10以下が好ましく、50.0×10以下がより好ましく、40.0×10以下が更に好ましく、30.0×10以下が殊更に好ましく、20.0×10以下が特に好ましい。数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出する値である。また、GPCによる測定ができない場合には、NMR、FT-IR等により得られた末端基数から計算された数平均分子量とメルトフローレートとの相関関係により、重合体(I)の数平均分子量を求めることができる。メルトフローレートは、JIS K 7210に準拠して測定できる。
【0225】
重合体(I)の重量平均分子量の下限としては、好ましくなる順に、0.2×10以上、0.4×10以上、0.6×10以上、0.8×10以上、1.0×10以上、2.0×10以上、5.0×10以上、10.0×10以上、15.0×10以上、20.0×10以上、25.0×10以上である。また、重合体(I)の重量平均分子量の上限としては、好ましくなる順に、150.0×10以下、100.0×10以下、60.0×10以下、50.0×10以下、40.0×10以下である。
【0226】
重合体(I)は、53以下のイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。上記IXRは、イオン性基に対するポリマー主鎖中の炭素原子数と定義される。加水分解によりイオン性となる前駆体基(たとえば、-SOF)は、IXRを決定する目的ではイオン性基と見なされない。
【0227】
IXRは、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、4以上が更により好ましく、5以上が殊更に好ましく、8以上が特に好ましい。また、IXRは43以下がより好ましく、33以下が更に好ましく、23以下が特に好ましい。
【0228】
重合体(I)のイオン交換容量としては、好ましくなる順に、0.80meq/g以上、1.50meq/g以上、1.75meq/g以上、2.00meq/g以上、2.20meq/g以上、2.20meq/g超、2.50meq/g以上、2.60meq/g以上、3.00meq/g以上、3.50meq/g以上である。イオン交換容量は、重合体(I)のイオン性基(アニオン性基)の含有量であり、重合体(I)の組成から計算により求められる。
【0229】
重合体(I)において、イオン性基(アニオン性基)は、典型的に、ポリマー主鎖に沿って分布している。上記重合体(I)は、ポリマー主鎖を、この主鎖に結合された繰り返し側鎖とともに含み、この側鎖はイオン性基を有することが好ましい。
【0230】
重合体(I)は、10未満、より好ましくは7未満のpKaを有するイオン性基を含むことが好ましい。重合体(I)のイオン性基は、好ましくは、スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、および、ホスファートからなる群から選択される。
【0231】
用語「スルホナート、カルボキシラート、ホスホナート、およびホスファート」は、それぞれの塩、または塩を形成し得るそれぞれの酸をいうことが意図される。塩が用いられる場合、好ましくは、その塩はアルカリ金属塩またはアンモニウム塩である。好ましいイオン性基は、カルボキシラート基、スルホナート基である。
【0232】
重合体(I)は、水溶性を有していることが好ましい。水溶性とは、容易に水性媒体に溶解または分散する性質を意味する。水溶性を有する重合体(I)は、たとえば、動的光散乱法(DLS)によって、粒子径を測定できないか、または、10nm以下の粒子径が示される。
【0233】
重合体(I)の水溶液の粘度は、好ましくは5.0mPa.s以上であり、より好ましくは8.0mPa.s以上であり、さらに好ましくは10.0mPa.s以上であり、特に好ましくは12.0mPa.s以上であり、最も好ましくは14.0mPa.s以上であり、好ましくは100.0mPa.s以下であり、より好ましくは50.0mPa.s以下であり、さらに好ましくは25.0mPa.s以下であり、殊更に好ましくは20.0mPa.s以下である。
【0234】
重合体(I)の水溶液の粘度は、水溶液中の重合体(I)の含有量を水溶液に対して33質量%に調整し、得られた水溶液の粘度を、エー・アンド・デイ社製音叉振動式粘度計(型番:SV-10)を用いて、20℃で測定することにより、特定することができる。
【0235】
重合体(I)の臨界ミセル濃度(CMC)は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0236】
重合体(I)の臨界ミセル濃度は、表面張力を測定することで決定できる。表面張力は、例えば、協和界面化学株式会社製表面張力計CBVP-A3型により測定することができる。
【0237】
重合体(I)の酸価は、好ましくは60以上であり、より好ましくは90以上であり、さらに好ましくは120以上であり、特に好ましくは150以上であり、最も好ましくは180以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは300以下である。
【0238】
重合体(I)の酸価は、重合体(I)が酸型の官能基以外のアニオン性基、たとえば、-COOM、-SOM、-OSOMまたは-C(CFOM(Mは、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウムまたは置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基)を有している場合には、これらの基を酸型の基に変換した後、酸-塩基滴定によって測定できる。
【0239】
重合分散液中の重合体(I)の含有量は、PTFEに対して、好ましくは0.23質量%超であり、好ましくは10.0質量%以下、5.0質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、特に好ましくは0.50質量%以下である。
【0240】
重合分散液中の重合体(I)の含有量は、固体NMR測定または溶融NMR測定により求められる。重合体(I)がカルボニル基を含有する場合、フーリエ変換赤外分光分析装置により求めることもできる。
また、国際公開第2014/099453号、国際公開第2010/075497、国際公開第2010/075496号、国際公開第2011/008381、国際公開第2009/055521号、国際公開第1987/007619号、特開昭61-293476号公報、国際公開第2010/075494号、国際公開第2010/075359号、国際公開第2012/082454号、国際公開第2006/119224号、国際公開第2013/085864号、国際公開第2012/082707号、国際公開第2012/082703号、国際公開第2012/082451号、国際公開第2006/135825号、国際公開第2004/067588号、国際公開第2009/068528号、特開2004-075978号公報、特開2001-226436号公報、国際公開第1992/017635号、国際公開第2014/069165号、特開平11-181009号公報などに、それぞれの重合体の測定方法が記載されている。重合体(I)の含有量の測定方法としては、これらに記載のそれぞれの重合体の測定方法を用いることができる。
【0241】
(テトラフルオロエチレン(TFE)の重合)
本開示の製造方法においては、水性媒体中で、フルオロモノマーとして、少なくともテトラフルオロエチレン(TFE)を重合する。これによって、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する重合分散液を得ることができる。水性媒体中でのTFEの重合により得られるPTFEは、通常、重合分散液中に分散した一次粒子の形態で得られる。
【0242】
上記重合における重合体(I)の添加量としては、水性媒体に対して、好ましくは0.02質量%を超え10質量%以下であり、より好ましい上限は1質量%以下である。重合体(I)の添加量を上記範囲内とすることにより、水性媒体中でのフルオロモノマーの重合を円滑に進行させることができる。重合体(I)の添加量は、上記重合において添加する重合体(I)の合計添加量である。
【0243】
上記重合においては、重合体(I)を一括して添加してもよいし、重合体(I)を連続的に添加してもよい。重合体(I)を連続的に添加するとは、例えば、重合体(I)を一括ではなく、経時的に、かつ、間断なく又は分割して、添加することである。上記重合においては、重合体(I)と水を含む水溶液を調製して、該水溶液を添加してもよい。
【0244】
上記重合においては、水性媒体中に形成されるPTFEの固形分含有量が0.5質量%に達する前に、重合体(I)の添加を開始し、その後も重合体(I)を連続的に添加することが好ましい。重合体(I)の添加開始時期としては、好ましくはPTFEの固形分含有量が0.3質量%に達する前であり、より好ましくは0.2質量%に達する前であり、さらに好ましくは0.1質量%に達する前であり、特に好ましくは重合開始と同時である。上記固形分含有量は、水性媒体およびPTFEの合計に対するPTFEの含有量である。
【0245】
上記重合においては、重合体(I)を少なくとも1種用いれば、PTFEを効率よく製造することが可能である。また、重合体(I)に包含される化合物を2種以上同時に用いてもよいし、揮発性を有するもの又はPTFEからなる成形体等に残存してもよいものであれば、重合体(I)以外のその他の界面活性能を有する化合物を同時に使用してもよい。
【0246】
上記重合において、核形成剤を使用してもよい。核形成剤の添加量は、核形成剤の種類により適宜選択できる。核形成剤の添加量としては、水性媒体に対して、5000質量ppm以下であってよく、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは500質量ppm以下であり、さらに好まくは100p質量pm以下であり、特に好ましくは50質量ppm以下であり、最も好ましくは10質量ppm以下である。
【0247】
上記重合においては、重合開始前、又は、水性媒体中に形成されるPTFEの固形分含有量が5.0質量%に達する前に、核形成剤を水性媒体中に添加することが好ましい。重合初期に核形成剤を添加することによって、平均一次粒子径が小さく、安定性に優れる水性分散液を得ることができる。
【0248】
重合初期に添加する核形成剤の量としては、得られるPTFEに対して、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.1質量%以上である。重合初期に添加する核形成剤の量の上限は限定されるものではないが、たとえば、2000質量%である。
【0249】
核形成剤を使用することにより、上記核形成剤の非存在下で重合を行うのと比較して、小さい一次粒子径を有するPTFEが得られる。
【0250】
上記核形成剤としては、ジカルボン酸、パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸またはその塩、炭化水素含有界面活性剤等が挙げられる。上記核形成剤は、芳香環を含まないことが好ましく、脂肪族化合物であることが好ましい。
【0251】
上記核形成剤は、重合開始剤の添加より前、もしくは、重合開始剤の添加と同時に加えることが好ましいが、重合途中に加えることにより、粒度分布を調整することもできる。
【0252】
上記ジカルボン酸の好ましい量として、上記水性媒体に対し、1000質量ppm以下であり、より好ましい量として500質量ppm以下であり、更に好ましい量として100質量ppm以下である。
【0253】
上記パーフルオロポリエーテル(PFPE)酸またはその塩は、分子の主鎖中の酸素原子が、1~3個の炭素原子を有する飽和フッ化炭素基によって隔てられる任意の鎖構造を有してよい。また、2種以上のフッ化炭素基が、分子中に存在してよい。代表的な構造は、下式に表される繰り返し単位を有する:
(-CFCF-CF-O-) (VII)
(-CF-CF-CF-O-) (VIII)
(-CF-CF-O-)-(-CF-O-) (IX)
(-CF-CFCF-O-)n-(-CF-O-) (X)
【0254】
これらの構造は、Kasaiによって、J.Appl.Polymer Sci.57,797(1995)に記載されている。この文献に開示されているように、上記PFPE酸又はその塩は、一方の末端または両方の末端にカルボン酸基またはその塩を有してよい。上記PFPE酸又はその塩は、また、一方の末端または両方の末端に、スルホン酸、ホスホン酸基又はこれらの塩を有してよい。また、上記PFPE酸又はその塩は、各末端に異なる基を有してよい。単官能性のPFPEについては、分子の他方の末端は、通常、過フッ素化されているが、水素または塩素原子を含有してよい。上記PFPE酸又はその塩は、少なくとも2つのエーテル酸素、好ましくは少なくとも4つのエーテル酸素、さらにより好ましくは少なくとも6つのエーテル酸素を有する。好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも1つ、より好ましくは、このようなフッ化炭素基の少なくとも2つは、2または3個の炭素原子を有する。さらにより好ましくは、エーテル酸素を隔てるフッ化炭素基の少なくとも50%は、2または3個の炭素原子を有する。また、好ましくは、上記PFPE酸又はその塩は、合計で少なくとも15個の炭素原子を有し、例えば、上記の繰返し単位構造中のnまたはn+mの好ましい最小値は、少なくとも5である。1つの末端または両方の末端に酸基を有する2つ以上の上記PFPE酸又はその塩が、本開示の製造方法に使用され得る。上記PFPE酸又はその塩は、好ましくは、6000g/モル未満の数平均分子量を有する。
【0255】
上記炭化水素含有界面活性剤の添加量は、上記水性媒体に対して、好ましくは40質量ppm以下、より好ましくは30質量ppm以下、更に好ましくは質量20ppm以下である。上記水性媒体中に存在する親油性核形成部位のppm量は、上記添加量よりも少ないと推測される。したがって、上記親油性核形成部位の量は、それぞれ上記の40質量ppm、30質量ppm、20質量ppmよりも小さい。上記親油性核形成部位は分子として存在すると考えられるので、ごく少量の上記炭化水素含有界面活性剤でも、大量の親油性核形成部位を生成することができる。したがって、上記炭化水素含有界面活性剤を水性媒体に1質量ppm程度加えるだけでも、有益な効果が得られる。好ましい下限値は0.01質量ppmである。
【0256】
上記炭化水素含有界面活性剤には、米国特許第7897682号明細書(Brothers et al.)および米国特許第7977438号明細書(Brothers et al.)に開示されるものなどのシロキサン界面活性剤を含む、非イオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤が含まれる。
【0257】
上記炭化水素含有界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(例えば、非イオン性炭化水素界面活性剤)が好ましい。すなわち、核形成剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましい。上記非イオン性界面活性剤は、好ましくは芳香族部分を含まない。
【0258】
非イオン性界面活性剤は、通常、帯電した基を含まず、長鎖炭化水素である疎水性部分を有する。非イオン性界面活性剤の親水性部分は、エチレンオキシドとの重合から誘導されるエチレンエーテルの鎖などの水溶性官能基を含む。
【0259】
非イオン性界面活性剤としては、下記が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、グリセロールエステル、それらの誘導体。
【0260】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等。
【0261】
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等。
【0262】
ポリオキシエチレンアルキルエステルの具体例:ポリエチレングリコールモノラウリレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート等。
【0263】
ソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等。
【0264】
ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルの具体例:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等。
【0265】
グリセロールエステルの具体例:モノミリスチン酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール等。
【0266】
上記誘導体の具体例:ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニル-ホルムアルデヒド凝縮物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート等。
【0267】
上記エーテル及びエステルは、10~18のHLB値を有してよい。
【0268】
非イオン性界面活性剤としては、ダウ・ケミカル社製のTriton(登録商標)Xシリーズ(X15、X45、X100等)、Tergitol(登録商標)15-Sシリーズ、Tergitol(登録商標)TMNシリーズ(TMN-6、TMN-10、TMN-100等)、Tergitol(登録商標)Lシリーズ、BASF社製のPluronic(登録商標)Rシリーズ(31R1、17R2、10R5、25R4(m~22、n~23)、Iconol(登録商標)TDAシリーズ(TDA-6、TDA-9、TDA-10)等が挙げられる。
【0269】
上記非イオン性界面活性剤としては、フッ素を含有しない非イオン性界面活性剤であることが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型非イオン性界面活性剤;エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等のポリオキシエチレン誘導体;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル型非イオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のアミン系非イオン性界面活性剤;等が挙げられる。
【0270】
上記非イオン性界面活性剤において、その疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れであってもよい。
【0271】
非イオン性界面活性剤としては、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤が好ましい。
-O-A-H (i)
(式中、Rは、炭素数8~18の直鎖状若しくは分岐鎖状の1級又は2級アルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)
【0272】
一般式(i)において、Rの炭素数は、10~16が好ましく、12~16がより好ましい。Rの炭素数が18以下であると組成物の優れた沈降安定性が得られやすい。またRの炭素数が18を超えると流動温度が高いため取扱い難い。Rの炭素数が8より小さいと組成物の表面張力が高くなり、浸透性やぬれ性が低下しやすい。
【0273】
のポリオキシアルキレン鎖はオキシエチレンとオキシプロピレンとからなるものであってもよい。オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2からなるポリオキシアルキレン鎖であり、親水基である。オキシエチレン単位数は、通常提供される広いまたは狭い単峰性分布、またはブレンドすることによって得られるより広いまたは二峰性分布のいずれかを含み得る。オキシプロピレン基の平均繰り返し数が0超の場合、ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に配列しても、ランダム状に配列してもよい。組成物の粘度および沈降安定性の点からは、オキシエチレン基の平均繰り返し数7~12およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2より構成されるポリオキシアルキレン鎖が好ましい。特にAがオキシプロピレン基を平均して0.5~1.5有すると低起泡性が良好であり好ましい。
【0274】
より好ましくは、Rは、(R’)(R’’)HC-であり、ここで、R’及びR’’は、同じか又は異なる直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基であり、炭素原子の合計量は、少なくとも5個、好ましくは7~17個である。好ましくは、R’またはR’’のうちの少なくとも一つは、分岐鎖または環状炭化水素基である。
【0275】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの具体例としては、C1327-O-(CO)-H、C1225-O-(CO)-H、C1021CH(CH)CH-O-(CO)-H、C1327-O-(CO)-(CH(CH)CHO)-H、C1633-O-(CO)-H、HC(C11)(C15)-O-(CO)-H(各式中、nは1以上の整数である)等が挙げられる。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、例えば、Genapol X080(商品名)を例とするGenapol Xシリーズ(クラリアント社製)、ノイゲンTDS-80(商品名)を例とするノイゲンTDSシリーズ(第一工業製薬社製)、レオコールTD-90(商品名)を例とするレオコールTDシリーズ(ライオン社製)、ライオノール(登録商標)TDシリーズ(ライオン社製)、T-Det A138(商品名)を例とするT-Det Aシリーズ(Harcros Chemicals社製)、Tergitol(登録商標)15-Sシリーズ(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0276】
上記非イオン性界面活性剤は、平均約4~約18個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、平均約6~約12個のエチレンオキシド単位を有する2,6,8-トリメチル-4-ノナノールのエトキシレート、またはその混合物であることも好ましい。この種類の非イオン性界面活性剤は、例えば、TERGITOL TMN-6、TERGITOL TMN-10、及びTERGITOL TMN-100X(いずれも商品名、ダウ・ケミカル社製)としても市販されている。
【0277】
また、非イオン性界面活性剤の疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れかであってもよい。例えば、非イオン性界面活性剤としては、例えば、一般式(ii)
-C-O-A-H (ii)
(式中、Rは、炭素数4~12の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、Aは、ポリオキシアルキレン鎖である。)で表される非イオン性界面活性剤が挙げられる。上記非イオン性界面活性剤として具体的には、トライトン(登録商標)X-100(商品名、ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0278】
のポリオキシアルキレン鎖はオキシエチレンとオキシプロピレンとからなるものであってもよい。オキシエチレン基の平均繰り返し数5~20およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2からなるポリオキシアルキレン鎖であり、親水基である。オキシエチレン単位数は、通常提供される広いまたは狭い単峰性分布、またはブレンドすることによって得られるより広いまたは二峰性分布のいずれかを含み得る。オキシプロピレン基の平均繰り返し数が0超の場合、ポリオキシアルキレン鎖におけるオキシエチレン基とオキシプロピレン基はブロック状に配列しても、ランダム状に配列してもよい。組成物の粘度および沈降安定性の点からは、オキシエチレン基の平均繰り返し数7~12およびオキシプロピレン基の平均繰り返し数0~2より構成されるポリオキシアルキレン鎖が好ましい。特にAがオキシプロピレン基を平均して0.5~1.5有すると低起泡性が良好であり好ましい。
【0279】
より好ましくは、Rは、1級若しくは2級のアルキル基であり、より好ましくは(R’)(R’’)HC-であり、ここで、R’及びR’’は、同じか又は異なる直鎖、分岐鎖、又は環式のアルキル基であり、炭素原子の合計量は、少なくとも5個、好ましくは7~17個である。好ましくは、R’またはR’’のうちの少なくとも一つは、分岐鎖または環状炭化水素基である。
【0280】
上記非イオン性界面活性剤としてはポリオール化合物も挙げられる。具体的には、国際公開第2011/014715号に記載されたもの等が挙げられる。ポリオール化合物の典型例としては、ポリオール単位として1個以上の糖単位を有する化合物が挙げられる。糖単位は、少なくとも1個の長鎖を含有するように変性されてもよい。少なくとも1つの長鎖部分を含有する好適なポリオール化合物としては、例えば、アルキルグリコシド、変性アルキルグリコシド、糖エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。糖としては、単糖、オリゴ糖、及びソルビタンが挙げられるが、これらに限定されない。単糖としては、五炭糖及び六炭糖が挙げられる。単糖の典型例としては、リボース、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アラビノース、キシロースが挙げられる。オリゴ糖としては、2~10個の同一又は異なる単糖のオリゴマーが挙げられる。オリゴ糖の例としては、サッカロース、マルトース、ラクトース、ラフィノース、及びイソマルトースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0281】
典型的に、ポリオール化合物として使用するのに好適な糖としては、4個の炭素原子と1個のヘテロ原子(典型的に、酸素又は硫黄であるが、好ましくは酸素原子)との五員環を含有する環状化合物、又は5個の炭素原子と上述のような1個のヘテロ原子、好ましくは酸素原子との六員環を含有する環状化合物が挙げられる。これらは、炭素環原子に結合している少なくとも2個の又は少なくとも3個のヒドロキシ基(-OH基)を更に含有する。典型的に、糖は、エーテル又はエステル結合が長鎖残基と糖部分との間に作製されるように、炭素環原子に結合しているヒドロキシ基(及び/又はヒドロキシアルキル基)の水素原子のうちの1個以上が、長鎖残基によって置換されているという点で変性されている。糖系ポリオールは、1個の糖単位又は複数の糖単位を含有してもよい。1個の糖単位又は複数の糖単位は、上述のような長鎖部分で変性されてもよい。糖系ポリオール化合物の特定の例としては、グリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。
【0282】
ポリオール化合物の好ましい種類は、アルキル又は変性アルキルグルコシドである。これらの種類の界面活性剤は、少なくとも1個のグルコース部分を含有する。
【化14】
(式中、xは、0、1、2、3、4、又は5を表し、R及びRは、独立して、H又は少なくとも6個の炭素原子を含有する長鎖単位を表すが、但しR及びRのうちの少なくとも1個はHではない)によって表される化合物が挙げられる。R及びRの典型例としては、脂肪族アルコール残基が挙げられる。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。上記の式は、ピラノース形態のグルコースを示すアルキルポリグルコシドの特定の例を表すが、他の糖又は同じ糖であるが異なる鏡像異性体又はジアステレオマー形態である糖を用いてもよいことが理解される。
アルキルグルコシドは、例えば、グルコース、デンプン、又はn-ブチルグルコシドと脂肪族アルコールとの酸触媒反応によって入手可能であり、これからは、典型例に、様々なアルキルグルコシドの混合物が得られる(Alkylpolygylcoside,Rompp,Lexikon Chemie,Version 2.0,Stuttgart/New York,Georg Thieme Verlag,1999)。脂肪族アルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、テトラデカノール、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサン酸、及びこれらの組み合わせ挙げられる。また、アルキルグルコシドは、Cognis GmbH,Dusseldorf,Germanyから商品名GLUCOPON又はDISPONILとして市販されている。
【0283】
その他の非イオン性界面活性剤として、BASF社からPluronic(登録商標)Rシリーズとして供給される二官能基ブロックコポリマー、BASF社からIconol(登録商標)TDAシリーズとして供給されるトリデシルアルコールアルコキシレートが挙げられる。
【0284】
上記非イオン性界面活性剤としては、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤、および、一般式(ii)で表される非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、一般式(i)で表される非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0285】
上記非イオン性界面活性剤としては、好ましくは芳香族部分を含まないものである。
【0286】
上記重合において、重合体(I)とともに、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物を使用してもよい。ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物としては、後述する変性モノマー(A)と同じ化合物を使用できる。
【0287】
上記重合において、重合体(I)と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては、緩衝剤、pH調整剤、安定化助剤、分散安定剤などが挙げられる。
【0288】
安定化助剤としては、パラフィンワックス、フッ素系オイル、フッ素系溶剤、シリコーンオイルなどが好ましい。安定化助剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。安定化助剤としては、パラフィンワックスがより好ましい。パラフィンワックスとしては、室温で液体でも、半固体でも、固体であってもよいが、炭素数12以上の飽和炭化水素が好ましい。パラフィンワックスの融点は、通常40~65℃が好ましく、50~65℃がより好ましい。
【0289】
安定化助剤の使用量は、使用する水性媒体の質量基準で0.1~12質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましい。安定化助剤は十分に疎水的で、重合後に水性分散液と完全に分離されて、コンタミ成分とならないことが望ましい。
【0290】
上記重合は、実質的に含フッ素界面活性剤(但し、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する化合物を除く)の非存在下に、TFEを重合するものであることが好ましい。従来、水性媒体中でのTFEの重合には、含フッ素界面活性剤が使用されてきたが、本開示の製造方法によれば、含フッ素界面活性剤を使用しない場合であってもPTFEを得ることができる。
【0291】
本開示において「実質的に含フッ素界面活性剤の非存在下に」とは、水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量が10質量ppm以下であることを意味する。水性媒体に対する含フッ素界面活性剤の量としては、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下である。
【0292】
含フッ素界面活性剤としては、アニオン性含フッ素界面活性剤等が挙げられる。上記アニオン性含フッ素界面活性剤は、例えば、アニオン性基を除く部分の総炭素数が20以下のフッ素原子を含む界面活性剤であってよい。
【0293】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、アニオン性部分の分子量が1000以下のフッ素を含む界面活性剤であってよい。
なお、上記「アニオン性部分」は、上記含フッ素界面活性剤のカチオンを除く部分を意味する。例えば、後述する式(I)で表されるF(CFn1COOMの場合には、「F(CFn1COO」の部分である。
【0294】
上記含フッ素界面活性剤としてはまた、LogPOWが3.5以下の含フッ素界面活性剤が挙げられる。上記LogPOWは、1-オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS-120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー(株)製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0295】
上記含フッ素界面活性剤として具体的には、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003-119204号公報、国際公開第2005/042593号、国際公開第2008/060461号、国際公開第2007/046377号、特開2007-119526号公報、国際公開第2007/046482号、国際公開第2007/046345号、米国特許出願公開第2014/0228531号、国際公開第2013/189824号、国際公開第2013/189826号に記載されたもの等が挙げられる。
【0296】
上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(N):
n0-Rfn0-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl又は及びFである。Rfn0は、炭素数3~20で、鎖状、分枝鎖状または環状で、一部または全てのHがFにより置換されたアルキレン基であり、該アルキレン基は1つ以上のエーテル結合を含んでもよく、一部のHがClにより置換されていてもよい。Yはアニオン性基である。)で表される化合物が挙げられる。
のアニオン性基は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-COOM、又は、-SOMであってよい。
Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、例えば、Na、K又はLiである。
としては、H又はC1-10の有機基であってよく、H又はC1-4の有機基であってよく、H又はC1-4のアルキル基であってよい。
Mは、H、金属原子又はNR であってよく、H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)又はNR であってよく、H、Na、K、Li又はNHであってよい。
上記Rfn0は、Hの50%以上がフッ素に置換されているものであってよい。
【0297】
上記一般式(N)で表される化合物としては、
下記一般式(N):
n0-(CFm1-Y (N
(式中、Xn0は、H、Cl及びFであり、m1は3~15の整数であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn1-O-(CF(CF)CFO)m2CFXn1-Y (N
(式中、Rfn1は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、m2は、0~3の整数であり、Xn1は、F又はCFであり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn2(CHm3-(Rfn3-Y (N
(式中、Rfn2は、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、m3は、1~3の整数であり、Rfn3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、qは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、下記一般式(N):
Rfn4-O-(CYn1n2CF-Y (N
(式中、Rfn4は、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Yn1及びYn2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、pは0又は1であり、Yは、上記定義したものである。)で表される化合物、及び、一般式(N):
【化15】
(式中、Xn2、Xn3及びXn4は、同一若しくは異なってもよく、H、F、又は、炭素数1~6のエーテル結合を含んでよい直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基である。Rfn5は、炭素数1~3のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yは、上記定義したものである。但し、Xn2、Xn3、Xn4及びRfn5の合計炭素数は18以下である。)で表される化合物が挙げられる。
【0298】
上記一般式(N)で表される化合物としてより具体的には、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω-Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、下記一般式(VII)で表されるω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)、下記一般式(VIII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)、下記一般式(IX)で表されるアルキルアルキレンカルボン酸(IX)、下記一般式(X)で表されるフルオロカルボン酸(X)、下記一般式(XI)で表されるアルコキシフルオロスルホン酸(XI)、下記一般式(XII)で表される化合物(XII)、下記一般式(XIII)で表される化合物(XIII)などが挙げられる。
【0299】
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CFn1COOM (I)
(式中、n1は、3~14の整数であり、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、H又は有機基である。)で表されるものである。
【0300】
上記ω-Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CFn2COOM (II)
(式中、n2は、4~15の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0301】
上記パーフルオロエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf-O-(CF(CF)CFO)n3CF(CF)COOM (III)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0302】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf(CHn4RfCOOM (IV)
(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0303】
上記アルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf-O-CYCF-COOM (V)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0304】
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CFn5SOM (VI)
(式中、n5は、3~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0305】
上記ω-Hパーフルオロスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
H(CFn6SOM (VII)
(式中、n6は、4~14の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0306】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VIII)は、下記一般式(VIII)
Rf(CHn7SOM (VIII)
(式中、Rfは、炭素数1~13のパーフルオロアルキル基であり、n7は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0307】
上記アルキルアルキレンカルボン酸(IX)は、下記一般式(IX)
Rf(CHn8COOM (IX)
(式中、Rfは、炭素数1~13のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、n8は、1~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0308】
上記フルオロカルボン酸(X)は、下記一般式(X)
Rf-O-Rf-O-CF-COOM (X)
(式中、Rfは、炭素数1~6のエーテル結合及び/又は塩素原子を含み得る直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rfは、炭素数1~6の直鎖状または分枝鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0309】
上記アルコキシフルオロスルホン酸(XI)は、下記一般式(XI)
Rf-O-CYCF-SOM (XI)
(式中、Rfは、炭素数1~12のエーテル結合を含み得る直鎖状または分枝鎖状であって、塩素を含んでもよい、部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Y及びYは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0310】
上記化合物(XII)は、下記一般式(XII):
【化16】
(式中、X、X及びXは、同一若しくは異なってもよく、H、F及び炭素数1~6のエーテル結合を含み得る直鎖状または分岐鎖状の部分または完全フッ素化されたアルキル基であり、Rf10は、炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、Lは連結基であり、Yはアニオン性基である。)で表されるものである。
は、-COOM、-SOM、又は、-SOMであってよく、-SOM、又は、COOMであってよい(式中、Mは上記定義したものである。)。
Lとしては、例えば、単結合、炭素数1~10のエーテル結合を含みうる部分又は完全フッ素化されたアルキレン基が挙げられる。
【0311】
上記化合物(XIII)は、下記一般式(XIII):
Rf11-O-(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOOM (XIII)
(式中、Rf11は、塩素を含む炭素数1~5のフルオロアルキル基であり、n9は、0~3の整数であり、n10は、0~3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。化合物(XIII)としては、CFClO(CFCF(CF)O)n9(CFO)n10CFCOONH(平均分子量750の混合物、式中、n9およびn10は上記定義したものである。)が挙げられる。
【0312】
上述したように上記アニオン性含フッ素界面活性剤としては、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等が挙げられる。
【0313】
含フッ素界面活性剤は、1種の含フッ素界面活性剤であってもよいし、2種以上の含フッ素界面活性剤を含有する混合物であってもよい。
【0314】
含フッ素界面活性剤としては、以下の式で表される化合物が挙げられる。含フッ素界面活性剤は、これらの化合物の混合物であってよい。上記重合の一実施形態においては、実質的に以下の式で表される化合物の非存在下に、TFEを重合する。
F(CFCOOM、
F(CFCOOM、
H(CFCOOM、
H(CFCOOM、
CFO(CFOCHFCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFCFCFOCF(CF)COOM、
CFCFOCFCFOCFCOOM、
OCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、
CFClCFCFOCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCFCFOCFCF(CF)OCFCOOM、
CFClCF(CF)OCF(CF)CFOCFCOOM、
CFClCF(CF)OCFCF(CF)OCFCOOM、
【化17】
(各式中、Mは、H、金属原子、NR 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであり、Rは、Hまたは有機基である。)
【0315】
(水性媒体)
本開示の製造方法において用いる水性媒体とは、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよく、水のみが好ましい。
【0316】
本開示の製造方法においては、TFEおよび変性モノマーを重合することも好ましい。すなわち、PTFEとしては、TFE単位のみを含有するホモPTFEであってもよいし、TFE単位およびTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含有する変性PTFEであってもよい。
【0317】
TFEを重合する際に添加する変性モノマーの量は、得られるPTFEに対して、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上であり、特に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.3質量%以下である。
【0318】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、フルオロモノマーおよび非フルオロモノマーが挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0319】
非フルオロモノマーとしては、特に限定されず、一般式:
CH=CRQ1-LRQ2
(式中、RQ1は、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、単結合、-CO-O-*、-O-CO-*または-O-を表す。*はRQ2との結合位置を表す。RQ2は、水素原子、アルキル基またはニトリル基を表す。)で表されるモノマーが挙げられる。
【0320】
非フルオロモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレートブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ビニルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。非フルオロモノマーとしては、なかでも、ブチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリル酸が好ましい。
【0321】
フルオロモノマーとして、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン等のパーハロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン;パーフルオロアリルエーテル等が挙げられる。
【0322】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、一般式(A):
CF=CF-ORf (A)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本開示において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0323】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、一般式(A)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0324】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0325】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、一般式(A)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0326】
【化18】
【0327】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0328】
CFCFCF-(O-CF(CF)-CF
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0329】
水素含有フルオロオレフィンとしては、CH=CF、CFH=CH、CFH=CF、CH=CFCF、CH=CHCF、CHF=CHCF(E体)、CHF=CHCF(Z体)などが挙げられる。
【0330】
(パーフルオロアルキル)エチレン(PFAE)としては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン等が挙げられる。
【0331】
パーフルオロアリルエーテルとしては、例えば、
一般式:CF=CF-CF-ORf
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるフルオロモノマーが挙げられる。
【0332】
上記一般式のRfは、一般式(A)のRfと同じである。Rfとしては、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基または炭素数1~10のパーフルオロアルコキシアルキル基が好ましい。パーフルオロアリルエーテルとしては、CF=CF-CF-O-CF、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CF=CF-CF-O-C、CF=CF-CF-O-C、及び、CF=CF-CF-O-Cからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、CF=CF-CF-O-CFCFCFがさらに好ましい。
【0333】
上記変性モノマーとしては、モノマー反応性比が0.1~8である変性モノマー(3)も好ましく例示される。変性モノマー(3)を存在させることによって、粒子径が小さいPTFE粒子を得ることができ、分散安定性の高い水性分散液を得ることができる。
【0334】
ここで、TFEとの共重合におけるモノマー反応性比とは、成長ラジカルがTFEに基づく繰り返し単位未満であるときに、該成長ラジカルがTFEと反応する場合の速度定数を、該成長ラジカルが変性モノマーと反応する場合の速度定数で除した値である。この値が低いほど、変性モノマーがTFEと高反応性であることを表す。モノマー反応性比は、TFEと変性モノマーとを共重合して開始直後の生成ポリマー中の組成を求め、ファインマン-ロスの式より算出できる。
【0335】
上記共重合は、内容積6.0Lのステンレス製オートクレーブに3600gの脱イオン脱気水、上記水に対して1000質量ppmのパーフルオロオクタン酸アンモニウム、100gのパラフィンワックスを使用して、圧力0.78MPaG、温度70℃で実施する。0.05g、0.1g、0.2g、0.5g、1.0gの変性モノマーをそれぞれ反応器に加え、0.072gの過硫酸アンモニウム(対水20質量ppm)を加えて、重合圧力0.78MPaGを維持させるため、TFEを連続的に供給する。TFE仕込量が1000gに到達したとき、撹拌を停止して、反応器が大気圧になるまで脱圧を行なう。冷却後、パラフィンワックスを分離することにより、生成ポリマーを含む水性分散液が得られる。上記水性分散液を撹拌して生成ポリマーを凝析させ、150℃で乾燥させる。得られた生成ポリマー中の組成を、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析をモノマーの種類によって適宜組み合わせることで算出する。
【0336】
モノマー反応性比が0.1~8である変性モノマー(3)としては、式(3a)~(3d)で表される変性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
CH=CH-Rf (3a)
(式中、Rfは炭素数が1~10のパーフルオロアルキル基である。)
CF=CF-O-Rf (3b)
(式中、Rfは炭素数が1~2のパーフルオロアルキル基である。)
CF=CF-O-(CFCF=CF (3c)
(式中、nは1又は2である。)
【0337】
【化19】
(式中、X及びXはF、Cl又はメトキシ基であり、Yは式Y1又はY2である。)
【0338】
【化20】
(式Y2中、Z及びZ’はF又は炭素数1~3のフッ素化アルキル基である。)
【0339】
変性モノマー(3)単位の含有量は、PTFEの全重合単位に対して0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。上限としては、好ましくなる順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0340】
上記変性モノマーとしては、一次粒子の平均一次粒子径が小さく、一次粒子のアスペクト比が小さく、安定性に優れる水性分散液を得ることができることから、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン、エチレン、及び、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。上記変性モノマーを使用することで、より平均一次粒子径が小さく、一次粒子のアスペクト比が小さく、分散安定性に優れるPTFEの水性分散液を得ることができる。また、未凝析ポリマーが少ない水性分散液を得ることができる。
【0341】
上記変性モノマーは、TFEとの反応性の観点からは、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)及び(パーフルオロアルキル)エチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
より好ましくは、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロヘキシル)エチレン、及び、(パーフルオロオクチル)エチレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことである。
上記ヘキサフルオロプロピレン単位、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位及び(パーフルオロアルキル)エチレン単位の合計量は、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1質量%の範囲であることが好ましい。上記合計量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更に好ましい。上限としては、好ましくなる順に、0.80質量%、0.70質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0342】
上記変性モノマーは、ラジカル重合で反応可能な官能基と親水基とを有する変性モノマー(以下「変性モノマー(A)」と記載する。)を含むことも好ましい。
【0343】
上記変性モノマー(A)を存在させることによって、一次粒子径が小さいPTFE粒子を得ることができ、分散安定性の高い水性分散液を得ることができる。また、未凝析ポリマー量を少なくすることもできる。更に、一次粒子のアスペクト比を小さくすることができる。
【0344】
上記変性モノマー(A)の使用量は、水性媒体の0.1質量ppmに相当する量を超える量であることが好ましく、0.5質量ppmを超える量であることがより好ましく、1.0質量ppmを超える量であることが更に好ましく、5質量ppm以上であることが更により好ましく、10質量ppm以上であることが特に好ましい。上記変性モノマー(A)の使用量が少なすぎると、得られるPTFEの平均一次粒子径が小さくならないおそれがある。
上記変性モノマー(A)の使用量は、上記範囲であればよいが、例えば、上限を5000質量ppmとすることができる。また、上記製造方法では、反応中または反応後の水性分散液の安定性を向上させるために、反応途中で変性モノマー(A)を系中に追加してもよい。
【0345】
上記変性モノマー(A)は水溶性が高いので、未反応の変性モノマー(A)が水性分散液中に残存したとしても、濃縮工程、あるいは凝析・洗浄工程での除去は容易である。
【0346】
上記変性モノマー(A)は、重合の過程で生成ポリマー中に取り込まれるが、重合系中の変性モノマー(A)の濃度そのものが低く、ポリマーに取り込まれる量が少ないため、PTFEの耐熱性が低下したり焼成後に着色したりする問題はない。
【0347】
上記変性モノマー(A)における親水基としては、例えば、-NH、-POM、-OPOM、-SOM、-OSOM、-COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SOM又は-COOMが好ましい。R7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
【0348】
上記変性モノマー(A)における「ラジカル重合で反応可能な官能基」としては、例えば、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基は、下記式:
CX=CXR-
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H、CF、CFH、CFH、又は、CHであり;Rは連結基である。)で示すことができる。Rの連結基としては後述するRとしての連結基が挙げられる。好ましくは-CH=CH、-CF=CH2、-CH=CF2、-CF=CF、-CH-CH=CH、-CF-CF=CH、-CF-CF=CF、-(C=O)-CH=CH、-(C=O)-CF=CH、-(C=O)-CH=CF、-(C=O)-CF=CF、-(C=O)-C(CH)=CH、-(C=O)-C(CF)=CH、-(C=O)-C(CH)=CF、-(C=O)-C(CF)=CF、-O-CH-CH=CH、-O-CF-CF=CH、-O-CH-CH=CF、-O-CF-CF=CF等の不飽和結合を有する基が挙げられる。
【0349】
上記変性モノマー(A)は、ラジカル重合で反応可能な官能基を有するので、上記重合において使用すると、重合反応初期に含フッ素モノマーと反応し、上記変性モノマー(A)に由来する親水基を有し安定性が高い粒子が形成されると推測される。このため、上記変性モノマー(A)の存在下に重合を行うと、粒子数が多くなると考えられる。
【0350】
上記重合は、上記変性モノマー(A)を1種存在させるものであってもよいし、2種以上存在させるものであってもよい。
【0351】
上記重合において、上記変性モノマー(A)として、不飽和結合を有する化合物を使用することができる。
【0352】
変性モノマー(A)は、一般式(4):
CX=CX-(CZ-Y (4)
(式中、X、X及びXは、それぞれ独立して、F、Cl、H又はCFであり;Yは、親水基であり;Rは連結基であり;Z及びZは、それぞれ独立して、H、F又はCFであり、kは0又は1である)で表される化合物が好ましい。
上記親水基としては、例えば、-NH、-POM、-OPOM、-SOM、-OSOM、-COOM(各式において、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)が挙げられる。上記親水基としては、なかでも、-SOM又は-COOMが好ましい。R7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。上記金属原子としては、1、2価の金属原子が挙げられ、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
上記変性モノマー(A)を用いることによって、より平均一次粒子径が小さく、より安定性に優れる水性分散液を得ることができる。また、一次粒子のアスペクト比をより小さくすることもできる。
【0353】
上記Rは、連結基である。本開示において「連結基」は、二価連結基を指す。連結基は、単結合であってもよく、少なくとも1個の炭素原子を含むことが好ましく、炭素原子の数は、2以上であってよく、4以上であってよく、8以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってもよい。上限は限定されないが、例えば、100以下であってよく、50以下であってよい。
上記連結基は、鎖状又は分岐状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってよく、所望により硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含み、所望によりエステル、アミド、スルホンアミド、カルボニル、カーボネート、ウレタン、尿素及びカルバメートからなる群から選択される1つ以上の官能基を含んでよい。上記連結基は、炭素原子を含まず、酸素、硫黄又は窒素等のカテナリーヘテロ原子であってもよい。
【0354】
上記Rは、例えば、酸素、硫黄、窒素等のカテナリーヘテロ原子、又は、2価の有機基であることが好ましい。
が2価の有機基である場合、炭素原子に結合する水素原子は、フッ素以外のハロゲン、例えば塩素等で置き換えられてもよく、二重結合を含んでも含まなくてもよい。また、Rは、鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよい。また、Rは、官能基(例えば、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ハロゲン化物等)を含んでもよい。
はまた、非フッ素の2価の有機基であってもよいし、部分フッ素化又は過フッ素化された2価の有機基であってもよい。
としては、例えば、炭素原子にフッ素原子が結合していない炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換された炭化水素基、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子で置換された炭化水素基、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、エーテル結合を含有する炭化水素基であってもよく、これらは酸素原子を含んでいてもよく、二重結合を含んでいてもよく、官能基を含んでいてもよい。
【0355】
は、-(C=O)-、-(C=O)-O-、又は、エーテル結合を含んでいてもよく、カルボニル基を含んでいてもよい炭素数1~100の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素に置換されていてもよい。
として好ましくは、-(CH-、-(CF-、-O-(CF-、-(CF-O-(CF-、-O(CF-O-(CF-、-(CF-[O-(CF-、-O(CF-[O-(CF-、-[(CF-O]-[(CF-O]-、-O[(CF-O]-[(CF-O]-、-O-[CFCF(CF)O]-(CF-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH-、-(C=O)-(CF-、-(C=O)-O-(CH-、-(C=O)-O-(CF-、-(C=O)-[(CH-O]-、-(C=O)-[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF-、-(C=O)-(CH-O-(CH-、-(C=O)-(CF-O-(CF-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF-、-(C=O)-O-C-、及び、これらの組み合わせから選択される少なくとも1種である。
式中、a、b、c及びdは独立して少なくとも1以上である。a、b、c及びdは独立して、2以上であってよく、3以上であってよく、4以上であってよく、10以上であってよく、20以上であってよい。a、b、c及びdの上限は、例えば、100である。
【0356】
として好適な具体例としては、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CH-、-CF-O-CHCF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CFCH-、-CF-O-CFCFCH-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-CF-O-CF(CF)CH-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-、-(C=O)-[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CF-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-、-(C=O)-(CF-O-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-、-(C=O)-O-C-等が挙げられる。中でも、上記Rは、具体的には、-CF-O-、-CF-O-CF-、-CF-O-CFCF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O[(CH-O]-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-、又は、-(C=O)-O-C-が好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
【0357】
一般式(4)における-R-(CZ-としては、-CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-C(CF-、-CF-O-CF-CF-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CF-C(CF-、-CF-O-CFCF-CF-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)-CF-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-C(CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-O-C(CF-、-(C=O)-、-(C=O)-O-、-(C=O)-(CH)-、-(C=O)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-(CH)-、-(C=O)-[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-[(CF-O]-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CF)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-、-(C=O)-O[(CF-O]-(CF)-(CF)-、-(C=O)-(CH-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-(CF-O-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-(CF)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-C(CF-、-(C=O)-O-(CF-O-(CF)-C(CF-、又は、-(C=O)-O-C-C(CF-が好ましく、-CF-O-CF(CF)-、-CF-O-CF-CF(CF)-、-CF-O-CFCF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-CF(CF)-、-CF-O-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(C=O)-、-(C=O)-O-(CH)-、-(C=O)-O-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O[(CH-O]-(CH)-(CH)-、-(C=O)-O-(CH-O-(CH)-C(CF-、又は、-(C=O)-O-C-C(CF-がより好ましい。
上記式中、nは1~10の整数である。
【0358】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、
【化21】
(式中、X及びYは上記と同じ。nは1~10の整数である。)等が挙げられる。
【0359】
としては、一般式(r1):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)- (r1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である)で表される2価の基が好ましく、一般式(r2):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -(O)- (r2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1である。)で表される2価の基も好ましい。
【0360】
一般式(4)の-R-(CZ-としてはまた、下記式(t1):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -{O-CF(CF)}-(O)-CZ- (t1)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、fは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである)で表される2価の基も好ましく、式(t1)において、Z及びZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
また、一般式(4)において、-R-(CZ-としては、下記式(t2):
-(C=O)-(O)-CF-O-(CX -(O)-CZ- (t2)
(式中、Xはそれぞれ独立してH、F又はCFであり、eは0~3の整数であり、gは0又は1であり、hは0又は1であり、iは0又は1であり、Z及びZは、それぞれ独立して、F又はCFである)で表される2価の基も好ましく、式(t2)において、Z及びZは、一方がFで他方がCFであることがより好ましい。
【0361】
一般式(4)で表される化合物は、親水基(Y)を除いて、C-F結合を有し、C-H結合を有していないことも好ましい。すなわち、一般式(4)において、X、X、及びXの全てがFであり、Rは炭素数が1以上のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、上記パーフルオロアルキレン基は、鎖状及び分岐状のいずれでもよく、環状及び非環状のいずれでもよく、少なくとも1つのカテナリーヘテロ原子を含んでもよい。上記パーフルオロアルキレン基の炭素数は、2~20であってよく、4~18であってもよい。
【0362】
一般式(4)で表される化合物は、部分フッ素化されたものであってもよい。すなわち、一般式(4)で表される化合物は、親水基(Y)を除いて、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有し、炭素原子に結合した少なくとも1つのフッ素原子を有することも好ましい。
【0363】
一般式(4)で表される化合物は、下記式(4a)で示される化合物であることも好ましい。
CF=CF-O-Rf-Y (4a)
(式中、Yは親水基であり、Rfは、過フッ素化されており、鎖状又は分岐状、環状又は非環状構造、飽和又は不飽和、置換又は非置換であってもよく、硫黄、酸素、及び窒素からなる群から選択される1つ以上のヘテロ原子を任意追加的に含有する過フッ素化二価連結基である。)
【0364】
一般式(4)で表される化合物は、下記式(4b)で示される化合物であることも好ましい。
CH=CH-O-Rf-Y (4b)
(式中、Yは親水基であり、Rfは式(4a)で定義される過フッ素化二価連結基である。)
【0365】
一般式(4)において、Yは-OSOMであることが好ましい形態の一つである。Yが-OSOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCHOSOM)、CH=CH(O(CFCHOSOM)、CF=CF(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)CHOSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOSOM)、CH=CH(O(CFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOSOM)、CH=CH(OCFCFCHOSOM)、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0366】
一般式(4)において、Yは-SOMであることも好ましい形態の一つである。Yが-SOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFSOM)、CF=CF(O(CFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSOM)、CH=CH(OCFCFSOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSOM)、CH=CH(O(CFSOM)、CH=CH(O(CFSOM)等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0367】
一般式(4)において、Yは-COOMであることも好ましい形態の一つである。Yが-COOMである場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFCFCOOM)、CF=CF(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)COOM)、CF=CF(OCFCF(CF)O(CFCOOM)(nは1より大きい)、CH=CH(OCFCFCOOM)、CH=CH(O(CFCOOM)、CH=CH(O(CFCOOM)、CF=CF(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(O(CFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)SONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(OCFCFSONR’CHCOOM)、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCFCFSONR’CHCOOM)、CH=CH(O(CFSONR’CHCOOM)、CH=CH(O(CFSONR’CHCOOM)等が挙げられる。上記式中、R’はH又はC1-4アルキル基であり、Mは上記と同じである。
【0368】
一般式(4)において、Yは-OPOMまたは-OP(O)(OM)であることも好ましい形態の一つである。Yが-OPOMまたは-OP(O)(OM)である場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(O(CFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)CHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CF=CF(OCFCFCFCFSON(CH)CHCHOP(O)(OM))、CH=CH(OCFCFCHOP(O)(OM)、CH=CH(O(CFCHOP(O)(OM))、CH=CH(O(CFCHOP(O)(OM))等が挙げられる。上記式中、Mは上記と同じである。
【0369】
一般式(4)において、Yは-POMまたは-P(O)(OM)であることも好ましい形態の一つである。Yが-POMまたは-P(O)(OM)である場合、一般式(4)で表される化合物としては、CF=CF(OCFCFP(O)(OM))、CF=CF(O(CFP(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)P(O)(OM))、CF=CF(OCFCF(CF)OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(OCFCFP(O)(OM))、CH=CH(O(CFP(O)(OM))、CH=CH(O(CFP(O)(OM))等が挙げられ、式中、Mは上記と同じである。
【0370】
一般式(4)で表される化合物としては、一般式(5):
CX=CY(-CZ-O-Rf-Y) (5)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、一般式(6):
CX=CY(-O-Rf-Y) (6)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、及び、一般式(7):
CX=CY(-Rf-Y) (7)
(式中、Xは、同一又は異なって、-H又は-Fであり、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基であり、Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。Yは、前記と同じである。)で表される化合物、からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、上記炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、酸素原子が末端である構造を含まず、炭素炭素間にエーテル結合を含んでいるアルキレン基である。
【0371】
一般式(5)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0372】
一般式(5)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0373】
一般式(5)において、Zは、同一又は異なって、-H、-F、アルキル基又はフルオロアルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Zとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0374】
一般式(5)において、上記X、Y及びZの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
【0375】
一般式(5)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0376】
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は3以上が好ましい。また、エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基の炭素数は、60以下が好ましく、30以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基としては、例えば、下記式:
【化22】
(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が1~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数)で表される2価の基であることも好ましい。
上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基として具体的には、-CF(CF)CF-O-CF(CF)-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)-(式中、nは1~10の整数)、-CF(CF)CF-O-CF(CF)CH-、-(CF(CF)CF-O)-CF(CF)CH-(式中、nは1~10の整数)、-CHCFCFO-CHCFCH-、-CFCFCFO-CFCF-、-CFCFCFO-CFCFCH-、-CFCFO-CF-、-CFCFO-CFCH-等が挙げられる。上記エーテル結合を有する含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0377】
一般式(5)において、Yは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
7yにおける有機基としてはアルキル基が好ましい。
7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Mとしては、-H、金属原子またはNR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNHが更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNHが更により好ましく、-H、-NaまたはNHが特に好ましく、-Hまたは-NHが最も好ましい。
上記Yとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0378】
一般式(5)で表される化合物は、一般式(5a)で表される化合物(5a)であることが好ましい。
CH=CF(-CF-O-Rf-Y) (5a)
(式中、Rf及びYは前記と同じ。)
【0379】
一般式(5a)で表される化合物として具体的には、下記式
【0380】
【化23】
【0381】
(式中、ZはFまたはCF;Z及びZはそれぞれHまたはF;ZはH、FまたはCF;p1+q1+r1が0~10の整数;s1は0または1;t1は0~5の整数、Yは前記と同じ。ただし、Z及びZがともにHの場合、p1+q1+r1+s1が0でない)で表される化合物が挙げられる。より具体的には、
【0382】
【化24】
【0383】
などが好ましく挙げられ、なかでも
【0384】
【化25】
【0385】
であることが好ましい。
【0386】
一般式(5a)で表される化合物としては、式(5a)中のYが-COOMであることが好ましく、特に、CH=CFCFOCF(CF)COOM、及び、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、CH=CFCFOCF(CF)COOMがより好ましい。
【0387】
一般式(5)で表される化合物は、一般式(5b)で表される化合物(5b)であることが好ましい。
CX =CFCF-O-(CF(CF)CFO)n5-CF(CF)-Y
(5b)
(式中、各Xは、同一であり、F又はHを表す。n5は、0又は1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
【0388】
上記式(5b)において、上記n5は、得られる水性分散液の安定性の点で0又は1~5の整数であることが好ましく、0、1又は2であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、不純物として残留しにくく、得られた成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
【0389】
上記式(5b)で表される化合物としては、例えば、CH=CFCFOCF(CF)COOM、CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0390】
また、一般式(5)で表される化合物としては、一般式(5c)で表される化合物等も挙げられる。
【0391】
CF=CFCF-O-Rf-Y (5c)
(式中、Rf及びYは上記と同じ)
【0392】
より具体的には、
【化26】
等が挙げられる。
【0393】
一般式(6)において、Xは-H又は-Fである。Xは、両方が-Fであってもよいし、少なくとも1つが-Hであってよい。例えば、片方が-Fで他方が-Hであってもよいし、両方が-Hであってもよい。
【0394】
一般式(6)において、Yは-H、-F、アルキル基又は含フッ素アルキル基である。
上記アルキル基は、フッ素原子を含有しないアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記含フッ素アルキル基は、フッ素原子を少なくとも1つ含有するアルキル基であり、炭素数は1以上であればよい。上記含フッ素アルキル基の炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。
上記Yとしては、-H、-F又は-CFが好ましく、-Fがより好ましい。
【0395】
一般式(6)において、上記X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。例えば、Xが-Hであり、Y及びZが-Fであってよい。
【0396】
一般式(6)において、上記Rfは炭素数1~40の含フッ素アルキレン基、又は、炭素数2~100のエーテル結合を有する含フッ素アルキレン基である。
上記含フッ素アルキレン基の炭素数は2以上が好ましい。また、含フッ素アルキレン基の炭素数は、30以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。上記含フッ素アルキレン基としては、-CF-、-CHCF-、-CFCF-、-CFCH-、-CFCFCH-、-CF(CF)-、-CF(CF)CF-、-CF(CF)CH-等が挙げられる。上記含フッ素アルキレン基は、パーフルオロアルキレン基であることが好ましい。
【0397】
上記一般式(6)において、Yは、-COOM、-SOM又は-OSOM(Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウム、R7yは、H又は有機基であり、同一でも異なっていてもよい。いずれか2つがお互いに結合して、環を形成してもよい。)であることが好ましい。
7yの有機基としてはアルキル基が好ましい。R7yとしては、H又はC1-10の有機基が好ましく、H又はC1-4の有機基がより好ましく、H又はC1-4のアルキル基が更に好ましい。
上記金属原子としては、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)等が挙げられ、Na、K又はLiが好ましい。
Mとしては、-H、金属原子またはNR が好ましく、-H、アルカリ金属(1族)、アルカリ土類金属(2族)またはNR がより好ましく、-H、-Na、-K、-LiまたはNHが更に好ましく、-H、-Na、-KまたはNHが更により好ましく、-H、-NaまたはNHが特に好ましく、-Hまたは-NHが最も好ましい。
上記Yとしては、-COOM又は-SOMが好ましく、-COOMがより好ましい。
【0398】
一般式(6)で表される化合物は、一般式(6a)、(6b)、(6c)、(6d)および(6e)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
CF=CF-O-(CFn1-Y (6a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFC(CF)F)n2-Y (6b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFXn3-Y (6c)
(式中、Xは、F又はCFを表し、n3は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFXO)n4-(CFn6-Y (6d)
(式中、n4は、1~10の整数を表し、n6は、1~3の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
CF=CF-O-(CFCFCFXO)n5-CFCFCF-Y (6e)
(式中、n5は、0~10の整数を表し、Y及びXは、前記定義と同じ。)
【0399】
上記式(6a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
【0400】
上記式(6a)で表される化合物としては、例えば、CF=CF-O-CFCOOM、CF=CF(OCFCFCOOM)、CF=CF(OCFCFCFCOOM)(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0401】
上記式(6b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
【0402】
上記式(6c)において、上記n3は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、上記Mは、分散安定性がよくなる点で、H又はNHであることが好ましい。
【0403】
上記式(6d)において、上記Xは、水性分散液の安定性の点で、-CFであることが好ましく、上記n4は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
【0404】
上記式(6d)で表される化合物としては、例えば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCOOM、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0405】
一般式(6e)において、上記n5は、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性と水性分散液の安定性が得られる点で-COOMであることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
【0406】
一般式(6e)で表される化合物としては、例えば、CF=CFOCFCFCFCOOM(式中、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。
【0407】
一般式(7)において、Rfは、炭素数1~40の含フッ素アルキレン基であることが好ましい。一般式(7)において、X及びYの少なくとも1つはフッ素原子を含むことが好ましい。
【0408】
一般式(7)で表される化合物は、一般式(7a):
CF=CF-(CFn1-Y (7a)
(式中、n1は、1~10の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)で表される化合物、及び、一般式(7b):
CF=CF-(CFC(CF)F)n2-Y (7b)
(式中、n2は、1~5の整数を表し、Yは、前記定義と同じ。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
上記Yは、-SOM又は-COOMが好ましく、Mは、H、金属原子、NR7y 、置換基を有していてもよいイミダゾリウム、置換基を有していてもよいピリジニウム又は置換基を有していてもよいホスホニウムであることが好ましい。上記R7yは、H又は有機基を表す。
【0409】
上記式(7a)において、上記n1は、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性を得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
上記式(7a)で表される化合物としては、例えば、CF=CFCFCOOM(式中、Mは上記定義と同じ。)が挙げられる。
【0410】
上記式(7b)において、上記n2は、得られる水性分散液の安定性の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び水性分散液の安定性が得られる点で、-COOMであることが好ましく、Mは、不純物として残留しにくく、得られる成形体の耐熱性が向上する点で、H又はNHであることが好ましい。
【0411】
上記変性モノマーは、変性モノマー(A)を含むことが好ましく、一般式(5a)、一般式(5c)、一般式(6a)、一般式(6b)、一般式(6c)、及び、一般式(6d)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、一般式(5a)または一般式(5c)で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0412】
変性モノマーとして変性モノマー(A)を用いる場合、変性モノマー(A)単位の含有量は、PTFEの全重合単位に対して、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましい。上限としては、好ましくなる順に、0.90質量%、0.50質量%、0.40質量%、0.30質量%、0.20質量%、0.15質量%、0.10質量%、0.08質量%、0.05質量%、0.01質量%である。
【0413】
本開示の製造方法において、TFEの重合は、通常、重合温度10~150℃、重合圧力0.05~5MPaGにて行われる。例えば、重合温度は、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましい。また、重合圧力は、0.3MPaG以上がより好ましく、0.5MPaG以上が更に好ましく、また、5.0MPaG以下がより好ましく、3.0MPaG以下が更に好ましい。特に、PTFEの得量を向上させる観点からは、1.0MPaG以上が好ましく、1.2MPaG以上がより好ましく、1.5MPaG以上が更に好ましく、2.0MPaG以上がより好ましい。
【0414】
一の態様において、上記重合は、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に純水を仕込み、脱酸素後、TFEを仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して反応を開始する。反応の進行とともに圧力が低下する場合は、初期圧力を維持するように、追加のTFEを連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のTFEを供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のTFEをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。圧力が低下しないように、追加のTFEを連続的又は間欠的に追加供給してもよい。
【0415】
PTFEの製造において、重合体(I)は、上述した本開示の製造方法における使用範囲で用いることができる。重合体(I)の濃度は、上記範囲であれば特に限定されない。添加量が多すぎるとアスペクト比の大きい針状粒子が生成し、水性分散液がゲル状となり安定性が損なわれる。重合体(I)の使用量の下限は、水性媒体に対して、好ましくは0.0001質量%、より好ましくは0.001質量%、更に好ましくは0.01質量%、特に好ましくは0.02質量%である。上記重合体(I)の使用量の上限は、水性媒体に対して、好ましくは10質量%、より好ましくは5質量%である。
【0416】
重合体(I)は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合開始後に一括して添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
【0417】
PTFEの製造において、重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したりすることもできる。
【0418】
上記レドックス系の重合開始剤としては、酸化剤と還元剤を組み合わせるレドックス開始剤を用いるのが好ましい。酸化剤としては、過硫酸塩、有機過酸化物、過マンガン酸カリウム、三酢酸マンガン、セリウム硝酸アンモニウム等が挙げられる。還元剤としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、臭素酸塩、ジイミン、シュウ酸等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤の分解速度を上げるため、レドックス開始剤の組み合わせには、銅塩、鉄塩を加えることも好ましい。銅塩としては、硫酸銅(II)、鉄塩としては硫酸鉄(II)が挙げられる。
【0419】
上記レドックス開始剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸、過マンガン酸カリウム/シュウ酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム/重亜硫酸塩/硫酸鉄、三酢酸マンガン/シュウ酸、セリウム硝酸アンモニウム/シュウ酸、臭素酸塩/重亜硫酸塩等が挙げられ、過マンガン酸カリウム/シュウ酸が好ましい。レドックス開始剤を用いる場合は、酸化剤又は還元剤のいずれかをあらかじめ重合槽に仕込み、ついでもう一方を連続的又は断続的に加えて重合を開始させてもよい。例えば、過マンガン酸カリウム/シュウ酸を用いる場合、重合槽にシュウ酸を仕込み、そこへ過マンガン酸カリウムを連続的に添加することが好ましい。
【0420】
PTFEの製造において、連鎖移動剤としては、公知のものが使用できるが、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、水素等が挙げられるが、常温常圧で気体状態のものが好ましい。
【0421】
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるTFE全量に対して、1~10000質量ppmであり、好ましくは1~5000質量ppmである。
【0422】
PTFEの製造において、更に、反応系の分散安定剤として、実質的に反応に不活性であって、上記反応条件で液状となる炭素数が12以上の飽和炭化水素を、水性媒体100質量部に対して2~10質量部で使用することもできる。また、反応中のpHを調整するための緩衝剤として、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等を添加してもよい。
【0423】
TFEの重合が終了した時点で、固形分濃度が1.0~50質量%、平均一次粒子径が50~500nmの重合分散液を得ることができる。
【0424】
上記固形分濃度の下限は5質量%が好ましく、8質量%がより好ましい。上限は特に限定されないが40質量%であってもよく、35質量%であってもよい。
【0425】
上記平均一次粒子径の下限は100nmが好ましく、150nmがより好ましい。上限は400nmが好ましく、350nmがより好ましい。
【0426】
上記平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。上記平均一次粒子径は、固形分濃度約1.0質量%に調整した水性分散液を作成し、動的光散乱法を使用して、25℃、溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・s、積算70回にて測定できる。動的光散乱法としては、例えばELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
【0427】
また、上記平均一次粒子径は、次の方法によっても測定できる。分散液を水で固形分濃度が0.15質量%になるまで希釈し、得られた希釈ラテックスの単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真により定方向径を測定して決定した数基準長さ平均粒子径とを測定して、検量線を作成する。この検量線を用いて、各試料の550nmの投射光の実測透過率から平均粒子径を求めることができる。
【0428】
(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
第1の製造方法においては、上記のようにして得られた重合分散液中のPTFEと有機溶剤と凝析剤とを接触させることによりPTFEを凝析させ、所望により得られた凝析物を洗浄し、乾燥することにより、PTFEの粉末を得ることができる。第2の製造方法においては、上記のようにして得られた重合分散液中のPTFEと有機溶剤を接触させることによりPTFEを凝析させ、凝析物を洗浄し、乾燥することにより、PTFEの粉末を得ることができる。PTFEの粉末は、いわゆる「ファインパウダー」と呼ばれるものであってよい。
【0429】
本開示の製造方法によれば、比較的大きな平均二次粒子径を有するPTFEの粉末を製造することができる。PTFEの平均二次粒子径は、200~1000μmであり、より好ましくは250μm以上であり、より好ましくは900μm以下、更に好ましくは800μm以下、更により好ましくは700μm以下である。PTFEの平均二次粒子径は、質量基準の平均粒子径(50%積算粒子径)d50であり、JIS K6891に準拠した測定により求めることができる。
【0430】
本開示の製造方法を用いることによって、二次粒子径が適切に調整されたPTFEを得ることができる。二次粒子径を調整するメカニズムは、明確ではないが、以下のように考える。
【0431】
第1の製造方法においては、凝析時に有機溶剤を使用することで重合体(I)を除去できるが、粒子表面に有機溶剤が存在することにより、一次粒子が凝集した凝集粒子が水中で安定に存在できる。また、凝析工程中に形成する一次粒子が凝集した凝集粒子の凝集力が弱く、凝析、洗浄により得られる二次粒子径が小さくなる。そこで、凝析剤を添加することで一次粒子が凝集した凝集粒子の凝集力を強くすることが出来るため、目的の二次粒子径を持つPTFE粉末を得ることが出来る。
【0432】
第2の製造方法においては、有機溶剤を添加して凝集工程により得られた一次粒子が凝集した凝集粒子は、凝集粒子の表面に有機溶剤が偏在している。洗浄工程の温度を高くすることで有機溶剤を除去しやすくなることが出来る。このとき、温度が高いと有機溶剤が凝集粒子から除去する速度が速くなり、洗浄水により粒子表面を濡らして安定化するよりも、凝集粒子同士がさらに凝集して、大きな粒子が形成することができ、目的の二次粒子径を持つPTFE粉末を得ることが出来る。
【0433】
PTFEは、53より高いイオン交換率(IXR)を有することが好ましい。好ましいPTFEは、イオン性基を全く有さないか、または約100より高いイオン交換率をもたらす限られた数のイオン性基を有する。好ましいPTFEのイオン交換率は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましく、5000以上が更に好ましい。
【0434】
PTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のPTFEのコアと、より低分子量のPTFE又は変性のPTFEシェルとを含む変性PTFEが挙げられる。このような変性PTFEとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるPTFEが挙げられる。
【0435】
上記コアシェル構造としては、次の構造をとり得る。
コア:TFE単独重合体 シェル:TFE単独重合体
コア:変性PTFE シェル:TFE単独重合体
コア:変性PTFE シェル:変性PTFE
コア:TFE単独重合体 シェル:変性PTFE
コア:低分子量PTFE シェル:高分子量PTFE
コア:高分子量PTFE シェル:低分子量PTFE
【0436】
上記コアシェル構造を有するPTFEにおいて、コアの比率の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは2.0質量%、尚更に好ましくは3.0質量%、特に好ましくは5.0質量%、最も好ましくは10.0質量%である。コアの比率の上限は、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.0質量%、更に好ましくは98.0質量%、更により好ましくは97.0質量%、特に好ましくは95.0質量%、最も好ましくは90.0質量%である。
【0437】
上記コアシェル構造を有するPTFEにおいて、シェルの比率の下限は、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1.0質量%、更に好ましくは2.0質量%、尚更に好ましくは3.0質量%、特に好ましくは5.0質量%、最も好ましくは10.0質量%である。シェルの比率の上限は、好ましくは99.5質量%、より好ましくは99.0質量%、更に好ましくは98.0質量%、更により好ましくは97.0質量%、特に好ましくは95.0質量%、最も好ましくは90.0質量%である。
【0438】
上記コアシェル構造を有するPTFEにおいて、上記コア又は上記シェルを2層以上の構成とすることもできる。例えば、変性PTFEのコア中心部と、TFE単独重合体のコア外層部と、変性PTFEのシェルとを有する3層構造を有するPTFEであってよい。
【0439】
上記コアシェル構造を有するPTFEとしては、また、PTFEの1つの粒子が複数のコアを有するものも挙げられる。
【0440】
上記凝析前や凝析中に、着色のための顔料や機械的性質を改良するための各種充填剤を添加することにより、顔料や充填剤が均一に混合した顔料入り又は充填剤入りのPTFEファインパウダーを得ることができる。
【0441】
PTFEの水性分散液を凝析して得られた凝析物の乾燥は、通常、凝析物をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にファインパウダー型のPTFEに好ましくない影響を与える。これは、この種のPTFEからなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。
【0442】
上記乾燥は、10~300℃、好ましくは100~300℃の乾燥温度で行う。
【0443】
得られるPTFEファインパウダーは、成形用として好ましく、好適な用途としては、航空機及び自動車等の油圧系、燃料系のチューブ等が挙げられ、薬液、蒸気等のフレキシブルホース、電線被覆用途等が挙げられる。
【0444】
PTFEファインパウダーは、加工助剤として使用することも好ましい。加工助剤として使用する場合、ファインパウダーをホストポリマー等に混合することにより、ホストポリマー溶融加工時の溶融強度向上や、得られたポリマーの機械的強度、電気特性、難燃性、燃焼時の滴下防止性、摺動性を向上することができる。
【0445】
PTFEファインパウダーは、電池用結着剤、防塵用途として使用することも好ましい。
【0446】
PTFEファインパウダーは、また、PTFE以外の樹脂と複合させてから加工助剤として使用することも好ましい。ファインパウダーは、例えば、特開平11-49912号公報、米国特許第5804654号明細書、特開平11-29679号公報、特開2003-2980号公報に記載されたPTFEの原料として好適である。ファインパウダーを使用した加工助剤は、上記各刊行物に記載された加工助剤に比べてもなんら劣るものではない。
【0447】
重合により得られる高分子量PTFE粉末は、延伸性及び非溶融加工性を有し、延伸体(多孔体)の原料としても有用である。
この延伸体が膜である場合(PTFE延伸膜またはPTFE多孔膜)、公知のPTFE延伸方法によって延伸することができる。延伸することにより高分子量PTFEは容易にフィブリル化し、結節と繊維からなるPTFE多孔体(膜)となる。
好ましくは、シート状または棒状のペースト押出物を押出方向にロール延伸することで、一軸延伸膜を得ることができる。
更に、テンター等により幅方向に延伸して、二軸延伸膜も得ることができる。
延伸前に半焼成処理を行うことも好ましい。
【0448】
このPTFE延伸体は、高い空孔率を持つ多孔体であり、エアフィルター、薬液フィルター等の各種精密濾過フィルターの濾材、高分子電解質膜の支持材等として好適に利用できる。
また、繊維分野、医療分野、エレクトロケミカル分野、シール材分野、空気濾過分野、換気/内圧調整分野、液濾過分野、一般消費材分野等で使用する製品の素材としても有用である。
以下に、具体的な用途を例示する。
【0449】
エレクトロケミカル分野
誘電材料プリプレグ、EMI遮蔽材料、伝熱材料等。より詳細には、プリント配線基板、電磁遮蔽シールド材、絶縁伝熱材料、絶縁材料等。
シール材分野
ガスケット、パッキン、ポンプダイアフラム、ポンプチューブ、航空機用シール材等。
【0450】
空気濾過分野
ULPAフィルター(半導体製造用)、HEPAフィルター(病院・半導体製造用)、円筒カートリッジフィルター(産業用)、バグフィルター(産業用)、耐熱バグフィルター(排ガス処理用)、耐熱プリーツフィルター(排ガス処理用)、SINBRANフィルター(産業用)、触媒フィルター(排ガス処理用)、吸着剤付フィルター(HDD組込み)、吸着剤付ベントフィルター(HDD組込み用)、ベントフィルター(HDD組込み用他)、掃除機用フィルター(掃除機用)、汎用複層フェルト材、GT用カートリッジフィルター(GT向け互換品用)、クーリングフィルター(電子機器筐体用)等。
【0451】
換気/内圧調整分野
凍結乾燥用の容器等の凍結乾燥用材料、電子回路やランプ向けの自動車用換気材料、容器キャップ向け等の容器用途、タブレット端末や携帯電話端末等の小型端末を含む電子機器向け等の保護換気用途、医療用換気用途等。
【0452】
液濾過分野
半導体液ろ過フィルター(半導体製造用)、親水性PTFEフィルター(半導体製造用)、化学薬品向けフィルター(薬液処理用)、純水製造ライン用フィルター(純水製造用)、逆洗型液ろ過フィルター(産業排水処理用)等。
【0453】
一般消費材分野
衣類、ケーブルガイド(バイク向け可動ワイヤ)、バイク用衣服、キャストライナー(医療サポーター)、掃除機フィルター、バグパイプ(楽器)、ケーブル(ギター用信号ケーブル等)、弦(弦楽器用)等。
【0454】
繊維分野
PTFE繊維(繊維材料)、ミシン糸(テキスタイル)、織糸(テキスタイル)、ロープ等。
【0455】
医療分野
体内埋設物(延伸品)、人工血管、カテーテル、一般手術(組織補強材料)、頭頸部製品(硬膜代替)、口内健康(組織再生医療)、整形外科(包帯)等。
【0456】
本開示の製造方法により、低分子量PTFEを製造することもできる。
低分子量PTFEは、重合により製造しても良いし、重合で得られた高分子量PTFEを公知の方法(熱分解、放射線照射分解等)で低分子量化して製造することもできる。
【0457】
分子量60万以下の低分子量PTFE(PTFEマイクロパウダーとも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させること等を目的とした添加剤として、プラスチック、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器部材、トナー等の製造に好適である(例えば、特開平10-147617号公報参照。)。
【0458】
また、更に連鎖移動剤の存在下、水性媒体中に重合開始剤及び重合体(I)を分散させ、TFE、又は、TFEと共重合し得るモノマーとTFEを重合させることによって、低分子量PTFEを得てもよい。この場合、連鎖移動剤としては、炭素数2~4のアルカンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタンがより好ましく、エタン、プロパンが更に好ましい。この場合、連鎖移動剤の量としては、水性媒体に対して、10質量ppm以上または10質量ppm超が好ましい。
【0459】
上記重合により得られる低分子量PTFEを粉末として用いる場合、上記水性分散液を凝析させることで粉末粒子とすることができる。
【0460】
本開示において、高分子量PTFEとは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有するPTFEを意味する。他方、低分子量PTFEとは、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しないPTFEを意味する。
【0461】
上記非溶融加工性とは、ASTM D 1238及びD 2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味する。
【0462】
フィブリル化性の有無は、TFEの重合体から作られた粉末である「高分子量PTFE粉末」を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断できる。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量のPTFEがフィブリル化性を有するからである。ペースト押出しで得られた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがない場合、例えば伸びが0%で引っ張ると切れるような場合はフィブリル化性がないとみなすことができる。
【0463】
上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、ASTM D4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定する。本開示において、「高分子量」とは、上記標準比重が上記の範囲内にあることを意味する。
【0464】
上記低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1×10~7×10Pa・sである。本開示において、「低分子量」とは、上記溶融粘度が上記の範囲内にあることを意味する。溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定する値である。
【0465】
上記高分子量PTFEは、上記低分子量PTFEよりも溶融粘度が極めて高く、その正確な溶融粘度を測定することは困難である。他方、上記低分子量PTFEの溶融粘度は測定可能であるが、上記低分子量PTFEからは、標準比重の測定に使用可能な成形品を得ることが難しく、その正確な標準比重を測定することが困難である。従って、本開示では、上記高分子量PTFEの分子量の指標として、標準比重を採用し、上記低分子量PTFEの分子量の指標として、溶融粘度を採用する。なお、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEのいずれについても、直接に分子量を特定できる測定方法は知られていない。
【0466】
上記高分子量PTFEは、ピーク温度が333~347℃であることが好ましく、335~345℃であることがより好ましい。上記低分子量PTFEは、ピーク温度が322~333℃であることが好ましく、324~332℃であることがより好ましい。ピーク温度は、TG/DTA(示差熱熱重量同時測定装置)を用いて、300℃以上の温度に加熱した履歴のないPTFEを10℃/分の条件で昇温させることにより得られる示差熱(DTA)曲線に現れる極大値に対応する温度として、特定できる。
【0467】
PTFEのピーク温度は、322~347℃であってよい。
PTFEが高分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の上限は、347℃以下、346℃以下、345℃以下、344℃以下、343℃以下、342℃以下、341℃以下、340℃以下であってよい。
PTFEが高分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の下限は、333℃以上、335℃以上であってよい。
PTFEが低分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の上限は、333℃以下、332℃以下であってよい。
PTFEが低分子量PTFEである場合のPTFEのピーク温度の下限は、322℃以上、324℃以上であってよい。
【0468】
低分子量PTFEの一次粒子の平均一次粒子径は、好ましくは10~300nmであり、より好ましくは50nm以上であり、より好ましくは100nm以上であり、さらに好ましくは150nm以上であり、より好ましくは250nm以下である。一次粒子の比較的小さい平均一次粒子径は、たとえば、TFEの重合初期に、変性モノマーを重合系に添加することにより、得ることができる。
【0469】
低分子量PTFEの一次粒子の平均一次粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。まず、ポリマー固形分濃度を約1.0質量%に調整した低分子量PTFE水性分散液を作製し、動的光散乱法を使用して、測定温度を25℃、溶媒(水)の屈折率を1.3328、溶媒(水)の粘度を0.8878mPa・s、積算回数を70回として、測定できる。動的光散乱法においては、たとえば、ELSZ-1000S(大塚電子社製)が使用できる。
【0470】
上記高分子量PTFEは、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線において、333~347℃の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークが現れ、上記融解熱曲線から算出される290~350℃の融解熱量が52mJ/mg以上であることが好ましい。PTFEの融解熱量は、より好ましくは55mJ/mg以上であり、さらに好ましくは58mJ/mg以上である。
【0471】
上記で得られたPTFEファインパウダーから、未焼成テープ(生テープ)を得ることもできる。
【0472】
本開示の製造方法において、PTFEの凝析、洗浄、乾燥などを行った場合は、排水やオフガスが発生する。上記凝析、又は、洗浄により発生した排水、及び/又は、乾燥により発生するオフガスから、上記重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を回収し、精製することにより、上記重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を再利用してもよい。上記回収、及び、精製を行う方法としては特に限定されるものではないが、公知の方法により行うことができる。例えば、特表2011-520020号公報に記載の方法により、米国特許出願公開第2007/15937号明細書、米国特許出願公開第2007/25902号明細書、米国特許出願公開第2007/27251号明細書に記載の方法が挙げられ、具体的には以下の方法が挙げられる。
【0473】
上記排水から重合体(I)、上記重合体(I)から副生する上記重合体(I)の分解物や副生成物、残留モノマー等を回収する方法としては、排水にイオン交換樹脂、活性炭、シリカゲル、クレイ、ゼオライト等の吸着粒子を接触させて上記重合体(I)等を吸着させた後、排水と吸着粒子とを分離する方法が挙げられる。上記重合体(I)等を吸着した吸着粒子を焼却すれば、上記重合体(I)等の環境への放出を防ぐことができる。
【0474】
また、上記重合体(I)等を吸着したイオン交換樹脂粒子から公知の方法により上記重合体(I)等を脱離・溶出させて回収することもできる。例えば、イオン交換樹脂粒子が陰イオン交換樹脂粒子である場合、鉱酸を陰イオン交換樹脂に接触させるにより重合体(I)等を溶出させることができる。続いて得られる溶出液に水溶性有機溶媒を添加すると通常2相に分離するので、重合体(I)等を含む下相を回収して中和することにより、重合体(I)等を回収できる。上記水溶性有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテル等の極性溶媒が挙げられる。
【0475】
上記重合体(I)等をイオン交換樹脂粒子から回収する別の方法としては、アンモニウム塩と水溶性有機溶媒を使用する方法、アルコールと所望により酸とを使用する方法が挙げられる。後者の方法では重合体(I)等のエステル誘導体が生成するので、蒸留することによりアルコールと容易に分離できる。
【0476】
上記排水にPTFE粒子や他の固形分が含まれる場合、排水と吸着粒子とを接触させる前にこれらを除去しておくことが好ましい。PTFE粒子や他の固形分を除去する方法としては、アルミニウム塩等を添加することによりこれらを沈殿させた後、排水と沈殿物とを分離させる方法、電気凝固法等が挙げられる。また、機械的な方法により除去してもよく、例えば、交差流ろ過法、深層ろ過法、プレコートろ過法が挙げられる。
上記排水中の未凝集のPTFE濃度は、生産性の観点から低いことが好ましく、0.4質量%未満がより好ましく、0.3質量%未満が特に好ましい。
【0477】
上記オフガスから重合体(I)等を回収する方法としては、スクラバーを使用して、脱イオン水、アルカリ水溶液、グリコールエーテル溶媒等の有機溶媒等と接触させて、重合体(I)等を含むスクラバー溶液を得る方法が挙げられる。アルカリ水溶液として高濃度アルカリ水溶液を使用すると、重合体(I)等が相分離した状態でスクラバー溶液が回収できるので、重合体(I)等の回収と再利用が容易である。アルカリ化合物としてはアルカリ金属水酸化物、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0478】
上記重合体(I)等を含むスクラバー溶液を逆浸透膜等を使用して濃縮してもよい。濃縮したスクラバー溶液は通常フッ素イオンを含むが、濃縮後更にアルミナを添加して該フッ素イオンを除去することにより、上記重合体(I)等の再利用を容易にすることもできる。また、スクラバー溶液に吸着粒子を接触させて重合体(I)等を吸着させて、上述した方法により重合体(I)等を回収してもよい。
【0479】
上記のいずれかの方法により回収した重合体(I)等は、再利用することができる。
【0480】
(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する組成物)
本開示によれば、一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)、および、PTFEを含有し、重合体(I)の含有量が、PTFEに対して、0.23質量%以下であり、PTFEの平均二次粒子径が、200~1000μmである組成物が提供される。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【0481】
本開示の組成物は、重合体(I)の含有量が低減されたものであることから、組成物を用いて得られる成形体には、重合体(I)が含まれることによる特性への影響がない。したがって、組成物からは、特性に優れた成形体を得ることができる。
【0482】
組成物に含有されるPTFEとしては、好ましくは非溶融加工性PTFEである。PTFEについては、すでに上述したとおりである。
【0483】
組成物に含有されるPTFEの標準比重は、好ましくは2.210以下であり、より好ましくは2.200以下であり、さらに好ましくは2.190以下である。
【0484】
組成物中の重合体(I)の含有量は、PTFEに対して、0.23質量%以下であり、好ましくは0.20質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以下である。また、組成物中の重合体(I)の含有量は、PTFEに対して、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上である。
【0485】
組成物中の重合体(I)の含有量は、重合分散液中の重合体(I)の含有量と同じ方法により求めることができる。
【0486】
さらに、本開示の組成物は、平均二次粒子径が200~1000μmであるPTFEを含有する点にも特徴がある。PTFEの平均二次粒子径が上記の範囲内にあることにより、組成物の取り扱い性が向上する。
【0487】
PTFEの平均二次粒子径は、好ましくは250μm以上であり、好ましくは900μm、更に好ましくは800μm以下、更により好ましくは700μm以下である。平均二次粒子径が大きいほど、ペースト押出成形法を用いて、PTFEを押出機から押し出す際の押出圧力の変動率を低くすることができる傾向がある。PTFEの平均二次粒子径は、350μm以上、400μm以上、400μm超、430μm以上または450μm以上であってよい。比較的大きな平均二次粒子径は、非溶融加工性PTFE(高分子量PTFE)の平均二次粒子径として特に好適である。
【0488】
平均二次粒子径は、水性分散液中に分散した一次粒子の平均粒子径(平均一次粒子径)とは異なり、一次粒子が凝集して形成される二次粒子の平均粒子径である。本開示の組成物は、一次粒子が凝集して形成される二次粒子の集合体(粉末)であってよい。
【0489】
PTFEの平均二次粒子径は、質量基準の平均粒子径(50%積算粒子径)d50であり、JIS K6891に準拠した測定により求めることができる。
【0490】
PTFEの平均二次粒子径は、たとえば、PTFEを凝析させるために用いる有機溶剤の添加量を調整する方法、PTFEを凝析させるために用いる凝析剤の添加量を調整する方法、PTFEを凝析させる際に、重合分散液に有機溶剤と凝析剤のそれぞれの添加タイミングを調整する方法、凝析物を洗浄する際の洗浄温度を調整する方法により、調節することができる。たとえば、本開示の組成物は、本開示の製造方法により製造できる。
【0491】
本開示の組成物の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤を含有する。含フッ素界面活性剤を含有する組成物は、含フッ素界面活性剤を用いて、高い生産性で安定的に製造することができる利点がある。
【0492】
本開示の組成物の一実施形態においては、含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない。
【0493】
本開示において、「含フッ素界面活性剤を実質的に含有しない」とは、組成物中の含フッ素界面活性剤の含有量が、10質量ppm以下であることを意味し、好ましくは1質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppb以下であり、更に好ましくは10質量ppb以下であり、更により好ましくは1質量ppb以下であり、特に好ましくは、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC/MS)による測定による、含フッ素界面活性剤が検出限界未満である。
【0494】
含フッ素界面活性剤の含有量は、公知な方法で定量できる。例えば、LC/MS分析にて定量することができる。
まず、組成物にメタノールを加え、抽出を行ない、得られた抽出液をLC/MS分析する。さらに抽出効率を高めるために、ソックスレー抽出、超音波処理等による処理を行ってもよい。
得られたLC/MSスペクトルから、分子量情報を抜出し、候補となる含フッ素界面活性剤の構造式との一致を確認する。
その後、確認された含フッ素界面活性剤の5水準以上の含有量の水溶液を作製し、それぞれの含有量の水溶液のLC/MS分析を行ない、含有量と、その含有量に対するエリア面積と関係をプロットし、検量線を描く。
そして、検量線を用いて、抽出液中の含フッ素界面活性剤のLC/MSクロマトグラムのエリア面積を、含フッ素界面活性剤の含有量に換算することができる。
【0495】
本開示の組成物の形態は、特に限定されないが、たとえば、水性分散液、凝析物、乾燥物、ガム、クラム、粉末、ペレットなどであってよい。本開示の組成物の形態は、好適には粉末である。水性分散液とは、水性媒体を分散媒とし、PTFEを分散質とする分散系である。上記水性媒体は、水を含む液体であれば特に限定されず、水に加え、たとえば、アルコール、エーテル、ケトン、パラフィンワックスなどの有機溶媒を含むものであってもよい。
【0496】
上記水性分散液は、PTFEからなる粉末を、水性媒体に分散させたものであってもよい。本開示の組成物は、好適には粉末である。
【0497】
本開示の組成物は、公知の顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、成膜助剤等の配合剤、他の高分子化合物を含有してもよい。
【0498】
本開示の組成物は、本開示の製造方法により好適に製造することができる。
【0499】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0500】
<1> 本開示の第1の観点によれば、
ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法であって、
一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する重合分散液を得て、
前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンと、有機溶剤と、凝析剤とを接触させることにより、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンを凝析させて、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を得る
製造方法が提供される。(本開示において、第1の製造方法ということがある。)
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
<2> 本開示の第2の観点によれば、
前記有機溶剤が、炭素数1~7のアルコールである第1の観点による製造方法が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
前記有機溶剤が、炭素数2~7のアルコールである第1または第2の観点による製造方法が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
凝析に用いる前記有機溶剤の量が、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンに対して、1.0質量%以上、150質量%以下である第1~第3のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<5> 本開示の第5の観点によれば、
前記凝析剤が、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニアおよび尿素からなる群より選択される少なくとも1種である第1~第4のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
凝析に用いる前記凝析剤の量が、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンに対して、0.01質量%以上、5.0質量%以下である第1~第5のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<7> 本開示の第7の観点によれば、
前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンと前記有機溶剤と凝析剤とを接触させる際の温度が、5~80℃である第1~第6のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<8> 本開示の第8の観点によれば、
前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンを凝析させて、凝析物を得た後、前記凝析物の洗浄を行うことにより、前記組成物を得る第1~第7のいずれかの観点による製造方法が提供される。
<9> 本開示の第9の観点によれば、
一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)、および、ポリテトラフルオロエチレンを含有し、重合体(I)の含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンに対して、0.23質量%以下であり、前記ポリテトラフルオロエチレンの平均二次粒子径が、200~1000μmである組成物が提供される。
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
<10> 本開示の第10の観点によれば、
実質的に含フッ素界面活性剤を含有しない第9の観点による組成物が提供される。
<11> 本開示の第11の観点によれば、
ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物の製造方法であって、
一般式(I)で表される単量体(I)に基づく重合単位(I)を含有する重合体(I)の存在下に、水性媒体中でテトラフルオロエチレンを重合することにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する重合分散液を得て、
前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンと、有機溶剤とを接触させることにより、前記重合分散液中の前記ポリテトラフルオロエチレンを凝析させて、凝析物を得た後、20℃以上で前記凝析物の洗浄を行うことにより、ポリテトラフルオロエチレンを含有する組成物を得る
製造方法が提供される。(本開示において、第2の製造方法ということがある。)
CX=CXR(-CZ-A (I)
(式中、XおよびXは、それぞれ独立して、F、Cl、HまたはCFであり;Xは、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;Aは、アニオン性基であり;Rは連結基であり;ZおよびZは、それぞれ独立して、H、F、アルキル基または含フッ素アルキル基であり;mは1以上の整数である。)
【実施例0501】
つぎに本開示の実施形態について実験例をあげて説明するが、本開示はかかる実験例のみに限定されるものではない。
【0502】
実験例の各数値は以下の方法により測定した。
【0503】
<PTFE重合分散液の固形分濃度>
重合分散液1gを、送風乾燥機中で150℃、60分の条件で乾燥し、重合分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0504】
<PTFE粉末中の重合体Dの含有量>
PTFE粉末中に含まれる重合体Dの含有量は、固体19F-MAS NMR測定とフーリエ変換赤外分光分析との相関関係を求め、フーリエ変換赤外分光分析装置より求めた。
【0505】
<凝析排水中の固形分濃度>
重合分散液中のPTFEを凝析させた後、濾過することにより重合分散液から凝析物(湿潤粉末)を回収し、濾別された凝析排水10gを、送風乾燥機中で120℃、60分の条件で乾燥し、凝析排水の質量(10g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を、凝析排水中の固形分濃度(質量%)として採用した。固形分濃度(質量%)が低いほど、重合分散液中のPTFEが高い割合で回収されたことを意味する。
【0506】
<PTFEの平均二次粒子径>
JIS K6891に準拠して測定し、質量基準の平均粒子径(50%積算粒子径)を平均二次粒子径とした。
【0507】
実験例で用いた重合体(I)は次のとおりである。
【0508】
重合体D:式:CH=CF(CFOCFCFCOOH)で表される単量体Dの単独重合体(数平均分子量8.6×10、重量平均分子量18.0×10
数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、東ソー社製のGPC HLC-8020を用い、Shodex社製のカラム(GPC KF-801を1本、GPC KF-802を1本、GPC KF-806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテトラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して測定し、単分散ポリスチレンを標準として分子量を算出した。
【0509】
調製例1
国際公開第2021/045227号の合成例2に記載の方法でPTFE重合分散液を得た。
得られたPTFE重合分散液の各種物性を以下に示す。
PTFE重合分散液の固形分濃度:29.1質量%
PTFE重合分散液のpH:4.1
PTFE重合分散液中の重合体Dの含有量:0.37質量%
【0510】
比較例1
脱イオン水で固形分濃度13%に希釈した調製例1で得られたPTFE重合分散液(pH6.2)の温度を21℃に調整し、重合分散液中のPTFE対して40質量%の量に相当する量の2-ブタノールを、希釈した重合分散液に添加した後、撹拌条件下で凝析させた。濾別し、得られた湿潤粉末をPTFEに対して400質量%の量に相当する水を加え、15℃に調整し、3回洗浄した後、120℃で12時間乾燥し、PTFE粉末を得た。
【0511】
実験例1
40質量%の量に相当する量の2-ブタノールに加えて、重合分散液中のPTFE対して0.66質量%の量に相当する量の炭酸アンモニウムを添加した以外は、比較例1と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0512】
実験例2
2-ブタノールに代えて、2-プロパノールを添加した以外は、実験例1と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0513】
実験例3
2-ブタノールに代えて、2-ペンタノールを添加した以外は、実験例1と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0514】
実験例4
2-ブタノールの添加量を、重合分散液中のPTFE対して16質量%の量に相当する量に変更した以外は、実験例1と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0515】
実験例5
炭酸アンモニウムに代えて、硝酸を添加し、2-ブタノールの添加量を重合分散体中のPTFEに対して133質量%の量に相当するように変更した以外は、実験例1と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0516】
以上の結果を表1に示す。
【表1】
【0517】
次に、重合分散液中のPTFEと有機溶剤とを接触させることにより、PTFEを凝析させ、得られた凝析物を比較的高い温度で洗浄することにより、PTFEを含有する組成物を得る製造方法の例を示す。
【0518】
実験例6
脱イオン水で固形分濃度13%に希釈した調製例1で得られたPTFE重合分散液の温度を40℃に調整し、重合分散液中のPTFEに対して130質量%の量に相当する量の2-ブタノールを添加した後、撹拌条件下で凝析させた。濾別し、湿潤粉末を得た。得られた湿潤粉末をPTFEに対して700質量%の量に相当する水を加え、40℃に調整し、3回洗浄した後、濾別して、湿潤洗浄粉末を得た。得られた湿潤洗浄粉末を120℃で12時間乾燥し、PTFE粉末を得た。
【0519】
実験例7
洗浄時の温度40℃を30℃に変更する以外は、実験例6と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0520】
実験例8
洗浄時の温度40℃を25℃に変更する以外は、実験例6と同様にしてPTFE粉末を得た。
【0521】
また、得られた湿潤洗浄粉末を240℃、18時間乾燥し、PTFE粉末を得た。得られたPTFE粉末のSSGは2.168、TIIは32、押出圧力は19.2MPa、押出圧力の変動率は5.3%であった。SSG、TII、押出圧力、変動率は以下の方法により測定した。
【0522】
標準比重(SSG)
ASTM D4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
【0523】
熱不安定指数(TII)
ASTM D 4895-89に準拠して測定した。
【0524】
押出圧力
PTFE粉末100gに、室温で2時間以上放置した後、押出助剤として潤滑剤(アイソパーH、エクソンモービル社製)21.7gを添加し、3分間混合してPTFE粉末の混合物を得る。
得られたPTFE粉末の混合物を、25℃恒温槽に2時間放置した後に、25℃にて、リダクションレシオ100(RR100、シリンダー径25mm、オリフィスの直径2.5mm、オリフィスのランド長1.1mm、導入角30°)、押出速度51cm/分の条件で、ペースト押出成形を行い、潤滑剤を含むPTFE押出ビードを得る。
押出圧力は、ペースト押出において押出負荷が平衡状態になった時の負荷を測定し、ペースト押出に用いたシリンダーの断面積で除した値とする。
【0525】
押出圧力の変動率
上記押出圧力の測定において、押出負荷が平衡状態になった時の最大の負荷と最小負荷との差を求め、下記式のより変動率を求めた。
(変動率(%))=[(最大負荷値)-(最小負荷値)]/(シリンダーの断面積)/(押出圧力)×100
【0526】
実験例9
洗浄時の温度40℃を20℃に変更する以外は、実験例6と同様にしてPTFE粉末を得た。凝析排水中の固形分濃度は0.1質量%未満であった。
【0527】
以上の結果を表2に示す。
【表2】