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特開2024-159744文書修正プログラム、文書修正装置および文書修正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159744
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】文書修正プログラム、文書修正装置および文書修正方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20241031BHJP
【FI】
G06Q50/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024088617
(22)【出願日】2024-05-31
(62)【分割の表示】P 2023073791の分割
【原出願日】2023-04-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】519313471
【氏名又は名称】株式会社リセ
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美樹
(72)【発明者】
【氏名】寄合 龍太
(72)【発明者】
【氏名】坂田 健樹
【テーマコード(参考)】
5L050
【Fターム(参考)】
5L050CC32
(57)【要約】
【課題】
個々の文書に合わせた柔軟な修正を支援すること。
【解決手段】
文章生成モデルを利用して、文書に関する評価に基づいて前記文書の修正を提案するための文書修正プログラムであって、コンピュータを、取得部と、命令生成部と、提案部と、として機能させ、前記取得部は、前記文書のドラフトに関するドラフト情報及び、前記ドラフトの評価を示す評価情報を取得し、前記命令生成部は、前記ドラフト情報及び評価情報に基づいて、前記ドラフトに関する修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信し、前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記ドラフトの修正を行うための修正提案情報を送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
文章生成モデルを利用して、文書に関する評価に基づいて前記文書の修正を提案するための文書修正プログラムであって、
コンピュータを、取得部と、命令生成部と、提案部と、として機能させ、
前記取得部は、前記文書のドラフトに関するドラフト情報及び、前記ドラフトの評価を示す評価情報を取得し、
前記命令生成部は、前記ドラフト情報及び評価情報に基づいて、前記ドラフトに関する修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信し、
前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記ドラフトの修正を行うための修正提案情報を送信する、文書修正プログラム。
【請求項2】
前記文書は、複数の条項を含む法律文書であり、
前記評価情報は、各条項及び/又は複数の条項の関係について前記ドラフトを評価した結果を含む、請求項1に記載の文書修正プログラム。
【請求項3】
前記評価情報は、不要な条項、不足する情報及び条項の内容のうち何れかに関する評価を含む、請求項2に記載の文書修正プログラム。
【請求項4】
前記命令生成部は、前記修正命令として、修正に関する指示を前記条項ごと又はひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループごとに記載した文章を生成して前記文章生成モデルに送信する、請求項2又は請求項3に記載の文書修正プログラム。
【請求項5】
前記評価情報は、前記ドラフトに対する指摘事項ごとのリスクレベルを含み、
前記命令生成部は、前記修正命令として、所定のリスクレベル以上の指摘事項について前記ドラフトを修正する命令を生成して前記文章生成モデルに送信する、請求項1に記載の文書修正プログラム。
【請求項6】
前記評価情報は、前記ドラフトに関する評価を自然言語により記述した評価文を含み、
前記命令生成部は、前記ドラフトと、前記評価文と、予め用意した指示文と、に基づく文章を前記修正命令として生成して前記文章生成モデルに送信する、請求項1に記載の文書修正プログラム。
【請求項7】
コンピュータを、再評価部として更に機能させ、
前記再評価部は、
前記文章生成モデルの出力として前記ドラフトの修正案を取得し、
前記修正案の評価を示す再評価情報を取得して、前記評価が事前に設定された基準を満たすか否かを判断し、
基準を満たす場合には、前記提案部に、前記修正提案情報を送信させ、
基準を満たさない場合には、前記修正案に関する修正情報及び再評価情報に基づいて、前記修正案に関する修正命令の生成及び前記文章生成モデルへの送信を、前記命令生成部に実行させる、請求項1に記載の文書修正プログラム。
【請求項8】
前記再評価部は、前記修正案の評価が事前に設定された基準を満たすまで、前記提案部及び命令生成部に、再評価情報の取得及び修正命令の送信を繰り返させる、請求項7に記載の文書修正プログラム。
【請求項9】
前記再評価情報は、前記修正案に対する指摘事項ごとのリスクレベルを含み、
前記基準は、前記修正案に対する全ての指摘事項のリスクレベルが所定のリスクレベル以下であることを含む、請求項8に記載の文書修正プログラム。
【請求項10】
前記再評価部は、事前に設定された終了条件が満たされた場合には、前記修正案の評価が基準を満たさない場合でも、再評価の繰り返しを終了して前記提案部に前記修正提案情報を送信させる、請求項8又は請求項9に記載の文書修正プログラム。
【請求項11】
前記命令生成部は、ユーザから修正に関する要望の入力を受け付けて、前記要望に基づき前記修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信する、請求項1に記載の文書修正プログラム。
【請求項12】
前記文書は、特定の相手との取決めに関する法律文書であり、
前記命令生成部は、相手との関係、前記取決めの種類、及び前記取決めに関する当事者の要望のうち少なくとも1つを示す背景情報を取得し、前記背景情報に基づき前記修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信する、請求項1に記載の文書修正プログラム。
【請求項13】
前記ドラフト情報は、モデルが生成したドラフトに関する情報である、請求項1に記載の文書修正プログラム。
【請求項14】
前記文書は、特定の相手との取決めに関する法律文書であり、
前記ドラフト情報は、相手との関係、前記取決めの種類、及び前記取決めに関する当事者の要望のうち少なくとも1つを示す事前情報に基づき、前記モデルが生成したドラフトに関する情報である、請求項13に記載の文書修正プログラム。
【請求項15】
文章生成モデルを利用して、文書に関する評価に基づいて前記文書の修正を提案するための文書修正装置であって、
取得部と、命令生成部と、提案部と、を備え、
前記取得部は、前記文書のドラフトに関するドラフト情報及び、前記ドラフトの評価を示す評価情報を取得し、
前記命令生成部は、前記ドラフト情報及び評価情報に基づいて、前記ドラフトに関する修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信し、
前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記ドラフトの修正を行うための修正提案情報を送信する、文書修正装置。
【請求項16】
文章生成モデルを利用して、文書に関する評価に基づいて前記文書の修正を提案するための文書修正方法であって、
コンピュータが、
前記文書のドラフトに関するドラフト情報及び、前記ドラフトの評価を示す評価情報を取得し、
前記ドラフト情報及び評価情報に基づいて、前記ドラフトに関する修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信し、
前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記ドラフトの修正を行うための修正提案情報を送信する、文書修正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書修正プログラム、文書修正装置および文書修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
文書、特に契約書や規約等の法律文書の評価や作成においては、高い専門性が必要とされる。このような背景から、従来、法律文書のチェックを行う技術や、それをもとに法律文書の修正を支援する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、法律文書に関するレビュー結果について情報の入力を受け付け、修正を行う技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、事前に登録されたレコメンド文章を用いて、対応部分をレコメンド文章に置き換えることで法律文書の修正を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-080132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、事前に登録されたレコメンド文章への部分的な置き換えにより修正を行うため、事前に想定される内容にしか対応できず、個々の文書に合わせた修正を柔軟に行うことが難しいという課題があった。そこで本発明は、以上の問題を、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、文章生成モデルを利用して、文書に関する評価に基づいて前記文書の修正を提案するための文書修正プログラムであって、コンピュータを、取得部と、命令生成部と、提案部と、として機能させ、前記取得部は、前記文書のドラフトに関するドラフト情報及び、前記ドラフトの評価を示す評価情報を取得し、前記命令生成部は、前記ドラフト情報及び評価情報に基づいて、前記ドラフトに関する修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信し、前記提案部は、前記文章生成モデルの出力に基づいて、前記ドラフトの修正を行うための修正提案情報を送信する。
【0007】
このような構成とすることで、文書のドラフトに対する評価をもとに、文章生成モデルを利用してドラフトの修正を支援することができる。これにより、文書の内容に応じた修正を柔軟に提案することが可能となり、より容易に文書の修正を行うことができるようになる。特に、法律文書等の専門性が要求される文書の修正においても、文章生成モデルを利用してユーザが自ら修正を行うことが容易になるため、例えば契約書の作成や確認等の作業をより効率化することができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記文書は、複数の条項を含む法律文書であり、前記評価情報は、各条項及び/又は複数の条項の関係について前記ドラフトを評価した結果を含む。
【0009】
このような構成とすることで、条項ごとに記載された文書について、条項ごとの内容又は複数の条項の関係についての評価をもとに修正を提案することが可能となり、より適切な修正を支援することができる。例えばひとまとまりの規定を複数の条項で規定しているような場合に、それらの条項をグループとしてとらえてその条項間の関係を確認することにより、複数の条項にまたがる規定を適切に評価することができる。更にその評価を評価情報として文章生成モデルにドラフトの修正命令を送信することで、このような複数の条項のグループについても適切に修正を提案することができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記評価情報は、不要な条項、不足する情報及び条項の内容のうち何れかに関する評価を含む。
【0011】
このような構成とすることで、削除すべきと考えられる条項、追加すべきと考えられる条項、及び条項の内容の修正のうち何れかについての評価をもとに、適切な修正を提案することが可能となる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記命令生成部は、前記修正命令として、修正に関する指示を前記条項ごと又はひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループごとに記載した文章を生成して前記文章生成モデルに送信する。
【0013】
このような構成とすることで、条項に区分された法律文書の修正命令を条項ごと又はひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループごとに適切に送信することが可能となる。これにより、複数の条項を含む法律文書に適した修正を実行することが容易になる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記評価情報は、前記ドラフトに対する指摘事項ごとのリスクレベルを含み、前記命令生成部は、前記修正命令として、所定のリスクレベル以上の指摘事項について前記ドラフトを修正する命令を生成して前記文章生成モデルに送信する。
【0015】
このような構成とすることで、リスクの高い部分について修正の提案を行うことが可能となる。これにより、リスクレベルに応じて、例えばリスクの低い部分やユーザが修正の要否を検討すべき部分を分けて修正を提案することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記評価情報は、前記ドラフトに関する評価を自然言語により記述した評価文を含み、前記命令生成部は、前記ドラフトと、前記評価文と、予め用意した指示文と、に基づく文章を前記修正命令として生成して前記文章生成モデルに送信する。
【0017】
このような構成とすることで、自然言語の文章を修正命令として生成することができるため、例えば文章の入力に対し文章を出力する会話型の文章生成モデルを利用して修正提案を行うことができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、コンピュータを、再評価部として更に機能させ、前記再評価部は、前記文章生成モデルの出力として前記ドラフトの修正案を取得し、前記修正案の評価を示す再評価情報を取得して、前記評価が事前に設定された基準を満たすか否かを判断し、基準を満たす場合には、前記提案部に、前記修正提案情報を送信させ、基準を満たさない場合には、前記修正案に基づく修正情報及び再評価情報に基づいて、前記修正案に関する修正命令の生成及び前記文章生成モデルへの送信を、前記命令生成部に実行させる。
【0019】
このような構成とすることで、問題が残った修正提案がそのまま送信されることを避け、問題がある場合には修正案の再評価をもとに再度修正を行うことができる。これにより、修正提案の質の向上が見込まれる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記再評価部は、前記修正案の評価が事前に設定された基準を満たすまで、前記提案部及び命令生成部に、再評価情報の取得及び修正命令の送信を繰り返させる。
【0021】
このような構成とすることで、基準を満たすまで評価と修正を繰り返し実行させることができる。これにより、修正後に不完全な部分が残る問題の発生を更に減らし、より質の高い修正提案を行うことができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記再評価情報は、前記修正案に対する指摘事項ごとのリスクレベルを含み、前記基準は、前記修正案に対する全ての指摘事項のリスクレベルが所定のリスクレベル以下であることを含む。
【0023】
このような構成とすることで、所定のリスクレベル以上の指摘事項が存在しなくなるまで修正を繰り返すことができ、より修正提案の質を向上させることができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記再評価部は、事前に設定された終了条件が満たされた場合には、前記修正案の評価が基準を満たさない場合でも、再評価の繰り返しを終了して前記提案部に前記修正提案情報を送信させる。
【0025】
このような構成とすることで、無限ループや極端な繰り返し処理を避けることができ、処理負荷の軽減が期待できる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記命令生成部は、ユーザから修正に関する要望の入力を受け付けて、前記要望に基づき前記修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信する。
【0027】
このような構成とすることで、ユーザの要望を反映した修正提案が可能となる。例えば、特定の相手との契約を行う場合に、相手に対して強気に(自身にとって有利な内容に)修正するか、対等な関係にするか等、複数の修正パターンが想定される場合がある。ユーザの要望を受け付けて修正命令を生成することで、このような場合にも、よりユーザの意向に沿う修正提案を行うことができる。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記文書は、特定の相手との取決めに関する法律文書であり、前記命令生成部は、相手との関係、前記取決めの種類、及び前記取決めに関する当事者の要望のうち少なくとも1つを示す背景情報を取得し、前記背景情報に基づき前記修正命令を生成して前記文章生成モデルに送信する。
【0029】
このような構成とすることで、相手との関係、取決めの種類、当事者の要望等からより妥当な修正提案を行うことが可能となる。例えば取決めの種類として例えば契約類型を指定することで、契約類型を考慮したより適切な修正を提案することができる。また例えば秘密保持契約を結ぶ場合に、相手との関係として、自身が情報の開示者又は受領者の何れであるかを選択することで、ユーザに対して有利な修正を提案することが可能となる。また当事者の要望として、例えば相手に対して強気に出る(自身にとって有利な内容にする)のか対等な内容にするのかを選択することで、要望を反映した修正提案を行うことができる。
【0030】
本発明の好ましい形態では、前記ドラフト情報は、モデルが生成したドラフトに関する情報である。
【0031】
このような構成とすることで、ドラフトの作成から修正まで、ユーザ自身が行うことなく文書の作成作業を完遂することができる。これにより、例えば契約書等の専門性が必要とされる法律文書についても、ユーザが容易に作成することができる。
【0032】
本発明の好ましい形態では、前記文書は、特定の相手との取決めに関する法律文書であり、前記ドラフト情報は、相手との関係、前記取決めの種類、及び前記取決めに関する当事者の要望のうち少なくとも1つを示す事前情報に基づき、前記モデルが生成したドラフトに関する情報である。
【0033】
このような構成とすることで、相手との関係、取決めの種類、当事者の要望等を踏まえてドラフトを作成することができる。これにより、最終的に作成される文書の品質向上効果が期待できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、個々の文書に合わせた柔軟な修正を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態における文書修正システムの構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態における文書修正システムにおけるハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態における文書修正システムの機能構成を示す図である。
図4】本発明の実施形態における文書修正システムの処理手順の一例を示すシーケンス図である。
図5】本発明の実施形態における文書修正システムの評価画面の表示例である。
図6】本発明の実施形態における文書修正システムの再評価処理に関する処理手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態における文書修正システムの修正提案画面の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を用いて、本発明の文書修正システムについて説明する。図面には好ましい実施形態が示されている。しかし、本発明は多くの異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。
【0037】
例えば、本実施形態では文書修正システムの構成、動作等について説明するが、文書修正装置、文書修正システム又は文書修正装置が実行する方法、文書修正プログラム等によっても、同様の作用効果を奏することができる。本実施形態では、文書修正システムは、クライアント端末(ユーザ端末装置)でその機能を実現する為に、クライアント端末とネットワークを介して接続されるサーバ(文書修正装置)において当該文書修正プログラムを実行する、いわゆるクラウドコンピューティングの態様をとる。
【0038】
文書修正プログラムは、任意のコンピュータ装置を文書修正装置として機能させるために、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記憶媒体としてコンピュータ装置へ提供されても良いし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されても良い。また、文書修正プログラムは、例えば、Microsoft Word(登録商標)等の文書編集ソフトウェアにおいて、アドオン(プラグイン)されるプログラムであっても良い。
【0039】
本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらハードウェア資源によって具体的に実現され得るソフトウェアの情報処理とを合わせたものを含み得る。本実施形態において「情報」とは、例えば、電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。広義の回路とは、回路(Circuit)、プロセッサ(Processor)及びメモリ(Memory)等を適宜組み合わせることによって実現される回路類(Circuitry)である。例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のいずれかを含む回路類である。
【0040】
<定義>
まず用語の定義について説明する。本発明は、文章生成モデルを利用して、文書の修正を支援するための技術である。文章生成モデルとは、文章を出力可能な任意のモデルを指す。文章生成モデルとしては、機械学習により生成されたモデルを代表的に利用することができる。本実施形態では、文章を入力することにより、入力された文章に対する回答として文章を生成する、会話型の文章生成モデルを利用する場合について説明する。
【0041】
より具体的には、文章生成モデルとは、自然言語処理向けの機械学習モデルであり、入力された情報に基づき文章を生成する機能を有するモデルである。例えば、文章生成モデルはself-attentionメカニズムを有するTransformerモデルに基づく機械学習モデルである。Transformerモデルは、例えばGPT(Generative Pre-trained Transformer)モデルである。文章生成モデルは大規模なデータセットにより学習を実行することにより、一般的な自然言語生成タスクだけでなく、専門性の高い文章生成タスクが可能となる。例えば、文章生成モデルは、OpenAIが開発したGPT-3またはGPT-4アルゴリズムを用いて大規模なデータセットにより学習したモデル(例えば、大規模なデータセットによる学習と報酬予測モデルを用いた強化学習を組み合わせて生成されたChatGPTモデル)が適用されうる。また、本実施形態ではモデルへの入力がテキスト情報の例を説明するが、画像情報や音声情報の入力であってもよい。
【0042】
本実施形態では文書として、特に契約書や規則、規約等の法律文書を想定する。法律文書には、条、項、号等に区分された単位を含むものがあり、本実施形態においては、このような単位の各々を「条項」と呼ぶ。本実施形態では、法律文書が契約書である形態を示す。契約書としては、秘密保持契約書、売買契約書、不動産賃貸借に関する契約書等の契約効果を発揮する文書が挙げられる。さらに本実施形態は契約書に限定されず、例えば、法律文書が規則、規約、通知書等であっても良い。規則としては、就業規則等の法規範の文書等が考えられる。また、通知書としては、プライバシー等のポリシー宣言の文書等が考えられる。この他にも、法律文書は、催告書、委任状等の法律に何らかの関連性がある文書を含む。
【0043】
以下においてドラフトとは、文書の下書きを指す。本発明ではドラフトに関する情報をドラフト情報と呼び、ドラフト情報は、ドラフトの少なくとも一部を構成する文の内容を示す情報を含む。例えば修正の対象とする条項や修正部分に関連する条項の情報のみがドラフト情報に含まれていてもよいし、ドラフトの全文についての情報がドラフト情報に含まれていてもよい。
【0044】
また本実施形態では、文章生成モデルに修正命令を送信することでドラフトの修正案を出力させ、これを用いてドラフトの修正に関する提案を行う。修正案についても、ドラフトの全文に対する修正案を出力させてもよいし、例えば修正の対象とした一部の文章についての修正案を出力させてもよい。
【0045】
修正命令とは、文章生成モデルに対してドラフトの修正に関する情報を出力させるための命令を示す情報である。本実施形態では、文章を入力とする会話型の文章生成モデルを利用するため、修正命令として自然言語による文又は文章を生成して送信する。そして、文章生成モデルが回答として出力する文又は文章を受け取り、修正の提案を行う。
【0046】
<システム構成>
次に、本実施形態の文書修正システムの構成について説明する。図1は、本実施形態における文書修正システムの構成を示す図である。図1に示すように、文書修正システム0は、文書修正装置1及びユーザ端末装置2を備え、文書修正装置1は、通信ネットワークNWを介して文章生成装置3と通信可能に構成される。また文書修正装置1及びユーザ端末装置2は、通信ネットワークNWを介して通信可能に構成されている。文書修正装置1はサーバとして動作し、ユーザ端末装置2はクライアント端末として動作する。文章生成装置3は、文章生成モデルを提供する外部のサーバ装置である。なお文書修正装置1が文章生成モデルを記憶し、外部の装置を利用せずに文書の修正が可能な構成であってもよいし、本実施形態において文書修正装置1が実行する処理の一部又は全部をユーザ端末装置2において実行する構成としてもよい。
【0047】
通信ネットワークNWは、本実施形態では、IP(Internet Protocol)ネットワークであるが、通信プロトコルの種類に制限はなく、更に、ネットワークの種類、規模にも制限はない。
【0048】
なお、文書修正装置1として、汎用のサーバ向けのコンピュータやパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。また、複数のコンピュータを用いて文書修正装置1を構成することも可能である。
【0049】
ユーザ端末装置2として、スマートフォンやタブレット端末、パーソナルコンピュータ、ウェアラブルデバイス等を利用することができる。ユーザ端末装置2は、文書修正装置1に対してリクエストを行い、レスポンスを受け取る為のアプリケーション(ウェブブラウザアプリケーション又は専用アプリケーション)を有し、このアプリケーションを介して、文書修正装置1において実行される文書修正プログラムを利用する。
【0050】
文書修正装置1は、ユーザ端末装置2のアプリケーションから送信されたリクエストに基づいて、各種の表示情報として所定の形式のデータをユーザ端末装置2のアプリケーションに送信する。所定の形式のデータは、例えばJSON(JavaScript Object Notation)形式やXML形式のデータである。ユーザ端末装置2のアプリケーションは、受信したデータをもとに表示データをレンダリングし、評価情報や修正提案等の情報をユーザ端末装置2のディスプレイに表示する。
【0051】
例えば、ユーザ端末装置2のウェブブラウザアプリケーション上で修正提案情報その他の情報の表示処理を実行する場合は、まずウェブブラウザアプリケーションはHTTP(Hypertext Transfer Protocol)リクエストをWebサーバに送信し、HTTPリクエストで要求されたファイルを含むHTTPレスポンスを受信する。受信するファイルは、修正提案情報を含む表示情報であり、表示するWebページの内容又は指示を示し、例えば、HTML(Hypertext Markup Language)などのマークアップ言語を用いて記述される。受信するファイルに、ウェブブラウザアプリケーション上で実行されるプログラムであるスクリプトが付加されていてもよい。ウェブブラウザアプリケーションは、受信したファイルに基づいて、表示領域にWebページを描画(レンダリング)する。ファイルにスクリプトが付加されている場合、ブラウザは、スクリプトを実行し、実行結果に応じてWebページを表示する。
【0052】
<ハードウェア構成>
図2(a)は、文書修正装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。文書修正装置1は、ハードウェア構成として、制御部101と、記憶部102と、通信部103と、を備える。
【0053】
制御部101は、CPU等の1又は2以上のプロセッサを含み、本発明に係る文書修正プログラム、ОSやブラウザソフト、その他のアプリケーションを実行することで、文書修正装置1の動作処理全体を制御する。
【0054】
記憶部102は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等であって、本発明に係る文書修正プログラム及び、制御部101がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。制御部101が記憶部102に記憶されている文書修正プログラムに基づき、処理を実行することによって、後述する機能構成が実現される。
【0055】
通信部103は、通信ネットワークNWとの通信制御を実行して、文書修正装置1を動作させるために必要な入力や、動作結果に係る出力を行う。
【0056】
図2(b)は、端末装置90(ユーザ端末装置2)のハードウェア構成の一例を示す図である。端末装置90も同様に、ハードウェア構成として、制御部901と、記憶部902と、通信部903と、入力部904と、出力部905と、を備える。
【0057】
端末装置90の制御部901は、CPU等の1以上のプロセッサを含み、端末装置90の動作処理全体を制御する。端末装置90の記憶部902は、HDD、ROM、RAM等であって、上述のアプリケーション及び、制御部901がプログラムに基づき処理を実行する際に利用するデータ等を記憶する。端末装置90の通信部903は、ネットワークとの通信を制御する。端末装置90の入力部904は、マウス及びキーボード等であって、利用者/提供者による操作要求を制御部901に入力する。端末装置90の出力部905は、ディスプレイ等であって、制御部901の処理の結果等を表示する。
【0058】
<機能構成>
次に、図3を参照して本実施形態に係る機能構成について説明する。文書修正装置1は、機能構成として、取得部11と、命令生成部12と、評価部13と、提案部14と、を備える。なお本実施形態では、評価部13が、本発明の評価部及び再評価部として機能する。これは、記憶部102に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア(制御部101等)によって具体的に実現されたものである。例えば、制御部101が記憶部102に記憶されている文書修正プログラムを読み出して記憶部102等の一時記憶領域(RAM等)に展開して実行し、通信部103等を制御することにより、文書修正装置1の機能が実現される。
【0059】
取得部11は、文書のドラフトに関するドラフト情報及び、ドラフトの評価を示す評価情報を取得する。ドラフト情報は、ユーザ端末装置2から送信されるドラフトの情報に基づき取得される。具体的には、例えばユーザが文書のドラフトを記載したファイルをアップロードし、ドラフトの内容の少なくとも一部を指定する操作を受け付けてドラフト情報を取得することができる。なおドラフト全体を修正の対象とする場合には、対象の部分を指定する操作は省略されてよい。また例えば、文書のドラフトのうち修正の対象とする一部をユーザがアップロードし、その部分についてドラフト情報を取得する構成であってもよい。
【0060】
ここでユーザは、モデルを用いて作成されたドラフトを利用することもできる。本実施形態では、ドラフト生成用のモデルとしてドラフト修正に用いる文章生成モデルと同じ文章生成モデルを利用する場合を説明する。例えば文書修正装置1がユーザ端末装置2から事前情報を受信して、それに基づくドラフト生成命令をモデルに送信することで、モデルが生成したドラフトを取得する。また、ドラフト生成用のモデルとして、ドラフト修正に用いる文章生成モデルとは異なる文章生成モデルを用いてもよい。
【0061】
事前情報としては、例えば、文書が特定の相手との取決めに関する法律文書である場合に、相手との関係、取決めの目的、取決めの種類、取決めに関する当事者の要望、取決めたい内容、法律文書のひな形等の情報が想定される。ここで取決めとは、契約や、規則、規約等のことを指す。相手との関係とは、例えば秘密保持契約における情報の開示者又は受領者等、取決めにおける立場等のことを指す。取決めの種類としては、当該法律文書が規定する契約類型や非典型契約、規約又は規則の種類等が挙げられ、また当事者の要望としては、相手に対して有利な契約とするか、対等な契約とするか、等の希望や、その他任意の要望を指す。これらの事前情報は、事前に設定された選択肢の中からユーザが選択する形式で入力されてもよいし、自然言語により自由記述されるテキストの情報であってもよい。
【0062】
また、事前情報は、契約交渉に用いられるタームシートの内容を示すタームシート情報であってもよい。タームシートは契約の主要な項目について相手と合意した内容、または提案内容を表形式で整理したものであり、タームシート情報はタームシートに記載されている内容を含む情報である。また、事前情報は、法律文書(例えば契約書)に記載したい内容について質問を行う質問ソフトウェアが生成した質問内容と質問結果に基づく質問情報であってもよい。
【0063】
また評価情報は、ドラフトの評価を示す情報である。本実施形態では、文書修正装置1の評価部13がドラフトの評価を実行し、その結果を評価情報として取得部11が取得する。ただし本発明はこれに限られず、外部の装置やユーザ端末装置2から評価情報を取得する構成であってもよい。ドラフトに関する評価の処理及び評価情報の詳細については後述する。
【0064】
また本実施形態の取得部11は、更に、対象の法律文書について、その法律文書が規定する契約等の背景に関する背景情報を取得する。契約等の背景とは相手との関係、取決めの目的、取決めの種類、取決めに関する当事者の要望、取決めたい内容、法律文書のひな形等の情報である。背景情報としては、上述の事前情報と同様の情報を取得することができる。本実施形態では、このような背景情報をもとに、評価及び修正命令の生成が行われる。
【0065】
即ち背景情報としては、例えば、文書が特定の相手との取決めに関する法律文書である場合に、相手との関係、取決めの目的、取決めの種類、取決めに関する当事者の要望、取決めたい内容、法律文書のひな形等の情報が想定される。ここで取決めとは、契約や、規則、規約等のことを指す。相手との関係とは、例えば秘密保持契約における情報の開示者又は受領者等、取決めにおける立場等のことを指す。取決めの種類としては、当該法律文書が規定する契約類型や非典型契約、規約又は規則の種類等が挙げられ、また当事者の要望としては、相手に対して有利な契約とするか、対等な契約とするか、等の希望や、取決めの相手から受け取ったコメント、その他任意の要望を指す。
【0066】
これらの背景情報は、事前に設定された選択肢の中からユーザが選択する形式で入力されてもよいし、自然言語により自由記述されるテキストの情報であってもよい。また、背景情報は、法律文書と、法律文書から背景情報を抽出する抽出命令を入力された文章生成モデルが生成してもよい。例えば抽出命令は、予め定められた複数の契約類型のうち、入力された法律文書が該当する契約類型を推定させる命令である。
【0067】
命令生成部12は、取得部11が取得したドラフト情報及び評価情報に基づいて、ドラフトに関する修正命令を生成し、文章生成モデルに送信する。本実施形態では、文章生成モデルを提供する文章生成装置3に修正命令を送信することで文章生成モデルに対する入力を行う。本実施形態の命令生成部12は、ドラフト情報及び評価情報を用いて、自然言語による文章として修正命令を生成する。修正命令の生成処理の詳細については後述する。
【0068】
評価部13は、本発明の再評価部として機能し、修正命令に対する文章生成モデルの出力として、ドラフトの修正案を文章生成装置3から受信する。そして、修正案の評価を示す再評価情報を取得して、その評価が事前に設定された基準を満たすか否かを判断する。
なお本実施形態では、評価部13(再評価部)が修正案の評価を実行し、その結果として再評価情報を生成するが、外部の評価装置に修正案を送信して、その評価結果として当該評価装置から再評価情報を取得してもよい。
【0069】
評価部13(再評価部)は、評価が基準を満たす場合には、提案部14に、修正提案情報を送信させる。一方評価が基準を満たさない場合には、命令生成部12に、修正案に関する修正情報及び再評価情報に基づいて、修正案に関する修正命令を生成するよう指示する。そして命令生成部12が修正命令を文章生成モデルに送信することで、更に修正案に対する修正案が文章生成モデルにより生成される。
【0070】
本実施形態の評価部13(再評価部)は、修正案の評価が所定の基準を満たすか、又は終了条件を満たすまで、修正案の取得と評価を繰り返すよう構成される。所定の基準としては、例えば、再評価情報に含まれる後述の指摘事項ごとのリスクレベルが所定のリスクレベル以下となることを設定することができる。また終了条件としては、例えば繰り返し回数の上限や、修正により変更された文字数の下限を設定すること等が想定される。再評価の処理の詳細については後述する。
【0071】
提案部14は、修正命令に対する文章生成モデルの出力に基づいて、修正提案情報を送信する。本実施形態では、評価部13(再評価部)による判断結果に応じて、修正提案情報を含む表示情報をユーザ端末装置2に送信することにより、ユーザ端末装置2が修正の提案を表示する。
【0072】
本実施形態の提案部14は、評価部13(再評価部)が取得した文章生成モデルの出力に基づいて、ドラフトの修正を支援するために、自然言語による文章を含む修正提案情報を生成する。修正提案情報やユーザ端末装置2における表示内容の詳細については後述する。
【0073】
<処理手順>
次に、図4を参照して、本実施形態の文書修正システムにおける、契約書のドラフトの作成から修正の提案までの処理詳細について説明する。図4は、本実施形態の文書修正システムにおける文書修正装置1、ユーザ端末装置2、及び文章生成装置による処理手順の一例を示すシーケンス図である。なおここに示す処理は一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で省略や変更を行ってもよい。また文書としては契約書以外にも、規約等その他の法律文書や他の文書を対象としてもよい。以下の例では、ドラフトの作成及び後述の修正案の作成の両方を同一の文章生成モデルにより行うが、これらは別のモデルを利用して作成されてもよい。
【0074】
(1)ドラフト作成
ステップS401~ステップS406は、ドラフトの作成に係る処理である。なおこの処理は必須ではなく、ユーザが自身で作成したドラフトや、外部の機械学習モデル等を用いて生成されたドラフト、契約を結ぼうとする相手から受け取った契約書案等を用いてステップS407以降の処理が行われてもよい。
【0075】
まずステップS401において、ユーザ端末装置2がユーザから事前情報の入力を受け付け、文書修正装置1に送信する。事前情報としては、契約書の締結相手との関係、契約の目的、契約の種類、契約に関する当事者の要望等が想定される。具体的には、取引先に情報を提示する際に秘密保持契約を結ぶ場合に、相手との関係は「情報の開示者」、契約の種類は契約類型である「秘密保持契約」、当事者の要望は「強気な(自身の立場において有利な)契約にしたい」等の任意の要望、がそれぞれ例として挙げられる。また契約当事者の氏名又は名称や契約書における呼称(甲、乙)等も事前情報として入力されることが好ましい。また事前情報として、契約交渉に用いられるタームシートの内容を示すタームシート情報や、法律文書に記載したい内容についての質問内容及びその回答に基づく質問情報を更に取得してもよい。
【0076】
これらの事前情報の入力においては、選択肢の中からユーザが選択することにより入力する形態が代表的に想定される。なおこの他、自然言語で表現される文章によりユーザが自由記述してテキスト入力される形態であってもよい。
【0077】
次にステップS402において、命令生成部12が、事前情報に基づいて、文章生成モデルにドラフトを作成させるための作成命令を生成する。本実施形態の文章生成モデルは、自然言語による文章を入力として、回答となる文章を生成する会話型のモデルであるため、作成命令は自然言語による文章として生成される。
【0078】
より具体的には、予め用意した指示文及び、事前情報に基づいて特定される文言を組み合わせた文章を生成することにより、命令生成部12が作成命令を生成することができる。また例えば、事前情報の選択肢ごとに指示文を予め用意して文書修正装置1の記憶部に格納しておき、事前情報のうち契約類型に応じて指示文を選択し、当該指示文及び、事前情報に基づいて特定される文言を組み合わせた文章を、命令生成部12が生成命令として生成する構成であってもよい。
【0079】
より具体的には、事前情報が選択により入力される場合、まず選択された事前情報に対応する言葉を特定する。例えば、事前情報の選択肢ごとに、それぞれ対応する言葉を予め設定しておくことにより、選択された事前情報に対応する言葉を特定することができる。
そして、それらの言葉と、別途事前に文書修正装置1の記憶部に登録された指示文と、に基づいて、命令生成部12が作成命令を生成する。一方事前情報が自由記述のテキストで入力される場合には、入力された事前情報及び事前に用意された指示文を用いて作成命令を生成すればよい。
【0080】
ここで、事前情報に対応する言葉として、事前情報に応じた文書作成のルールを記載した文字列を格納しておくことが好ましい。例えば法律文書においては、規定の一文の中に例外を記載する場合と、一文の後に但し書きの文を別途記載する場合とで、法的な意味が異なることがある。事前情報に応じてこのような記載方法のルールを指定する言葉を組み合わせることにより、適切な法律文書を作成させることができる。なお、事前情報ごとに対応する複数の文書作成ルールのうち、文書修正装置1が事前情報に基づいて作成命令に含める文書作成ルールを判定してもよいし、複数の文書作成ルールを作成命令に含めるとともに複数の文書作成ルールから事前情報に基づいて適切な文書作成ルールを使用する旨を作成命令に含めることで文章生成モデルが使用する文書作成ルールを判定する構成としてもよい。
【0081】
指示文としては、例えば「以下の条件に基づいて文書を作成してください。」、又は「契約書の取決めを示す事前情報を入力します。以下のルールに基づいて、適切な契約書の文章を作成してください。」等の文を予め文書修正装置1の記憶部に格納しておくことができる。あるいは事前情報の選択肢として契約類型ごとに指示文を用意し、例えば「以下の条件に基づいて秘密保持契約書を作成してください。」等のように、指示文の中に事前情報に応じた情報を含めることもできる。そして指示文の後に続けて、事前情報に基づく言葉を続けるよう文章を生成することで、文章生成モデルに対してドラフトの作成を指示するための作成命令を生成することができる。
【0082】
作成命令が生成されると、ステップS403に進み、生成された作成命令を命令生成部12が文章生成装置3に送信する。ステップS403における文章生成装置3への作成命令の送信が、作成命令の文章生成モデルへの送信に該当する。文章生成装置3は、作成命令を受け取ると、当該作成命令を文章生成モデルに入力する。これにより文章生成モデルが契約書のドラフトを出力する(ステップS404)。
【0083】
文章生成装置3は、文章生成モデルが出力したドラフトをステップS405で文書修正装置1に送信する。そしてステップS406で文書修正装置1がユーザ端末装置2にドラフトを送信する。以上の処理により、ユーザは、事前情報の入力のみで希望する契約書のドラフトを取得することができる。なおステップS406及び、次に説明するステップS407~ステップS410を省略して、ユーザの指示を待たずにドラフトの修正まで一貫して実行してもよい。
【0084】
(2)ドラフト評価
次に、ドラフトの評価処理について説明する。ステップS407~ステップS409は、ドラフトの評価に係る処理である。なおこの処理はドラフトの評価を示す評価情報を取得するための処理である。本実施形態では以下に説明するように、評価部13がドラフトの評価を行うが、外部の装置にドラフトの評価を行わせることで評価情報を取得してもよいし、ユーザ端末装置2からドラフト情報とともに評価情報を受信することで評価情報を取得してもよい。
【0085】
ステップS407では、ユーザ端末装置2が文書修正装置1に対し評価要求を送信する。評価要求は、ドラフトに関するドラフト情報及び背景情報を含む。ここで送信されるドラフト情報は、評価対象のドラフトの内容を少なくとも含む情報であり、本実施形態では契約書のドラフトを記載した文書のファイルがアップロードされる。背景情報とは、文書の背景に関する情報である。例えば、対象の法律文書が示す取決めにおける、相手との関係、取決めの種類、取決めに関する当事者の要望等が、背景情報に含まれる。背景情報としては、先に説明したドラフト作成における事前情報と同様の内容及び形式の情報を用いることができる。
【0086】
文書修正装置1においては取得部11が評価要求を受信し、評価部13がドラフト情報及び背景情報に基づいてドラフトの評価を実行する。ドラフトの評価は、機械学習モデルによる評価やルールベースによる評価等、任意の方法で行われてよい。一例として、本実施形態では背景情報に応じて、ルールベースで条項を評価する方法を用いる。
【0087】
特に本実施形態では、背景情報のうち契約類型及び契約上の立場と、ドラフトにおける各条項のタイトルと、を用いて、各条項の内容及び複数の条項の関係について評価を行う。ここで複数の条項とは、ひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループを指す。例えばグループ内で、A条項の内容に応じてB条項の有無又は内容を判断し、更にその結果に基づいてC条項を確認する、等、内容に応じて評価処理が分岐するように規定しておくことで複数の条項の関係についてルールベースで評価することができる。
【0088】
ドラフトの評価においては、不要な条項(又は背景情報における相手との関係から、自身が不利になる条項)が含まれていないか、追加すべき条項がないか、条項の内容が適切か、等の観点から評価が行われる。
【0089】
本実施形態では、上記のルールと紐づけて指摘事項を事前に文書修正装置1の記憶部に登録しておくことで、ドラフトに対する指摘事項を特定する。具体的には、指摘事項ごとに、上述の評価のルールと、指摘の種別(条項の削除、追加、内容修正のうち何れか)と、指摘内容と、リスクレベルと、が予め記憶部に記憶される。
【0090】
指摘内容とは、例えば「協議条項を規定する必要はありませんか。」や「秘密保持義務を負う期間が必要以上に長く設定されていませんか。」等、ドラフトの内容について修正の提案や問題点の指摘を行う文である。この他更に、その指摘に関する条項についての解説文や当該条項のひな型の情報が指摘内容に含まれていてよい。またリスクレベルとは、各指摘事項において想定されるリスクの度合いを示す情報である。リスクレベルは、システム側で固定(変更不可)としてもよいし、ユーザの入力により変更できるようにしてもよい。
【0091】
リスクレベルの設定の例は以下の通りである。契約後に問題になりやすく、会社の重要な権利や義務に関わる争点が関連する指摘事項についてはリスクレベル「A」に設定することができる。例えば、「知的財産の帰属」、「損害賠償の範囲」、「秘密情報の定義」等が含まれる。また、抜けていても問題となる可能性が低い争点が関連する指摘事項についてはリスクレベル「C」に設定することができる。例えば、「秘密情報の例外」、「途中の報告義務」等が含まれる。そして、複数のグループのうち、AとCに該当しない指摘事項をリスクレベル「B」に設定することができる。なお、リスクレベルは争点ごとに設定されてもよいし、条項の文言に基づいて判定されたリスクであってもよい。例えば、リスクレベルは条項の文言に基づいて自社が有利か不利かを判定し、判定に基づいて設定されたリスクレベルであってもよい。
【0092】
以上のように評価部13が評価処理を実行し、ドラフトの評価を示す評価情報を作成する。評価情報は、上記の処理で特定された1又は複数の指摘事項の各々について、当該指摘事項に対応するドラフト中の条項と、指摘内容と、リスクレベルと、を含む。また外部の装置やユーザ端末装置2から評価情報を取得する場合にも、指摘事項ごとに、当該指摘事項に対応するドラフト中の条項と、指摘内容と、リスクレベルと、を含む評価情報が取得される。上記の通り指摘内容は自然言語により記述された情報を含み、この記述が本発明における評価文に相当する。
【0093】
なお、文章生成モデルを用いて契約書の評価を行ってもよい。文章生成モデルは、ドラフト作成に用いる文章生成モデルや修正に用いる文章生成モデルと同様でもよいし、異なっていてもよい。例えば、文書修正装置1は、ドラフト情報と背景情報を取得し、背景情報に基づいて予め記憶された契約書評価に用いる評価ルールを読み出し、ドラフト情報と、背景情報に応じた評価ルールと、に基づく評価命令を生成して文章生成装置3に送信し、文章生成装置3が生成した契約書の評価結果(評価情報)を取得する。評価命令は、自然言語による文章として生成される。これにより、文章の表記揺れや表現の違い等による評価への影響が軽減する効果が期待できる。また、複数の評価ルールのうち、背景情報(例えば契約類型)に基づいて読み出された評価ルール(例えば契約類型ごとに設定された評価ルール)を用いることで適切な評価を行うことが期待できる。
【0094】
さらに、文章生成モデルによる評価と、ルールベースの評価を同時に行ってもよい。このとき、文章生成モデルによる評価とルールベースによる評価が異なった場合は、ルールベースの評価を優先する処理を行うことが好ましい。これにより、機械学習による評価の不確かさが生じたとしてもルールベースで最低限の評価を保証することができる。なお、背景情報ごとに対応する複数の評価ルールのうち、文書修正装置1が背景情報に基づいて修正命令に含める評価ルールを判定してもよいし、複数の評価ルールを評価命令に含めるとともに複数のルールから背景情報に基づいて適切なルールを使用する旨を評価命令に含めることで文章生成モデルが使用する評価ルールを判定する構成としてもよい。
【0095】
評価部13がドラフトの評価を終えると、ステップS409において評価部13はユーザ端末装置2に評価情報を送信する。ユーザ端末装置2が評価情報を受信すると、評価情報が表示処理され処理結果がディスプレイに表示される。
【0096】
図5に、評価情報の表示処理結果としてユーザ端末装置2において表示される評価画面の表示例を示す。評価画面W5は、画面上部に文書のドラフトの概要及び、評価結果の概要を表示する。画面左側にドラフト情報により特定されるドラフトの内容を表示する。また「読み取り内容編集」のボタンが配置され、ドラフト情報から特定された内容に誤りがある場合にはこのボタンを選択することにより内容を編集することができる。
【0097】
画面右側には、評価情報に基づく評価結果が表示される。指摘事項ごとに、その指摘が条項の削除、追加、内容修正のうち何れであるかを示す種別と、解説と、対象の条項のひな型と、が指摘内容として表示される。
【0098】
また各指摘事項について、指摘の種別ごとに異なる形状の指摘マークW51が付され、種別ごとの通し番号が表示される。同様の指摘マークW51は画面左側のドラフトにおける当該指摘事項の対応部分にも通し番号とともに表示され、ドラフト中の指摘事項に対応する位置をユーザが認識できるように表示されるとともに、ドラフト中の対象の部分がハイライト等で強調して表示される。図5の例では、丸印が条項の内容修正、三角印が不足する条項に関する指摘事項を示す。
【0099】
また指摘マークW51は、リスクレベルによって異なる色で表示される。そしてリスクフィルタ操作部W52を操作することで、リスクレベルに応じて表示する指摘事項をフィルタリングすることができる。図5においては、リスクレベルが「B」以上、つまりA又はBの指摘事項について表示するよう設定された状態が表示されている。
【0100】
また一括修正ボタンW53及び個別修正ボタンW54が評価結果とともに表示される。
これらのボタンをユーザが選択することにより、図4におけるステップS410の修正要求が送信される。選択されるボタンにより、修正を指示する範囲が異なる。
【0101】
一括修正ボタンW53は、「全項目修正案一括作成」、「A項目修正案作成」、「AB項目修正案作成」の3種がある。「全項目修正案一括作成」が選択されると、全ての指摘事項に関する修正要求が送信される。「A項目修正案作成」が選択されると、リスクレベルがAの指摘事項についての修正要求が送信される。「AB項目修正案作成」が選択されると、リスクレベルがAの指摘事項及びリスクレベルがBの指摘事項に関する修正要求が送信される。また指摘事項ごとに表示された個別修正ボタンW54が選択されると、当該指摘事項についての修正要求が送信される。
【0102】
また本実施形態では、一括修正ボタンW53又は個別修正ボタンW54が選択された場合に、更に修正に関する当事者からの要望を受け付ける。例えば複数の修正方針が想定される指摘事項について、その何れかを具体的にユーザが選択することにより修正に関する要望を受け付けることができる。あるいは、一括修正ボタンW53により複数の指摘事項について修正要求をする場合には、例えば全体的に「強気(自社に大きく有利)」「中立」「弱気(修正前より自社有利だが他社の方が有利)」等の大まかな方針を選択させる構成としてもよい。このとき、ユーザが選択した方針の修正案のみを生成する修正命令を生成してもよいし、全ての方針の修正案を生成する修正命令を生成してもよい。また、このような要望は自由記述のテキストにより入力されてもよい。
【0103】
(3)修正処理
次に、ドラフトの修正処理について説明する。上述のように修正要求を受け付けると、において取得部11が、ドラフト情報及び評価情報を取得する。また本実施形態の取得部11は、更に上述の背景情報及び、ステップS410において修正要求とともに送信される、修正に関する要望の情報を取得する。本実施形態では、ステップS405で受信したドラフトと、ステップS407で受信した背景情報と、ステップS408で評価部13が生成した評価情報とを、記憶部に格納しておき、取得部11がそれらに基づいてドラフト情報、評価情報及び背景情報を取得する。なおドラフトの作成及び評価を外部の装置により実施する場合は、取得部11が、ユーザ端末装置2や当該外部の装置から、ドラフト情報及び評価情報を取得すればよい。
【0104】
なお修正要求においてドラフトの全範囲ではなく一部の修正が指示された場合には、ドラフト情報はドラフト全体の内容を含んでいなくてもよく、修正の対象に関係する部分のみがドラフト情報に含まれるようにしてもよい。ただし、例えば、ひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループが存在し、そのグループに含まれる条項についての指摘事項の修正を行う場合には、ドラフト情報は、指摘事項に対応する単一の条項のみではなく、当該グループの複数の条項全体の内容を含むことが好ましい。
【0105】
次にステップS411において、取得部11により取得されたドラフト情報、評価情報、背景情報及び修正に関する当事者の要望の情報に基づいて、命令生成部12が、文章生成モデルにドラフトの修正案を生成させるための修正命令を生成する。本実施形態の文章生成モデルは、自然言語による文章を入力として、回答となる文章を生成する会話型のモデルであるため、修正命令は自然言語による文章として生成される。
【0106】
本実施形態の命令生成部12は、修正命令として、修正に関する指示を指摘事項に対応する条項ごとに記載した文章を生成する。特に、例えば一つの条項又はひとまとまりの規定を定める複数の条項のグループの中に複数の指摘事項がある場合、指摘事項単位で修正命令を生成すると、矛盾する複数の修正案が生成されてしまう可能性がある。したがって本実施形態の命令生成部12は、複数の指摘事項が存在する条項又は条項のグループに関する修正命令として、当該複数の指摘事項に対応する条項又は条項のグループごとに、修正命令の文章を生成する。
【0107】
以下修正命令の生成について具体的に説明する。まず背景情報について、背景情報が選択により入力される場合、まず選択された背景情報に対応する言葉を特定する。例えば、背景情報の選択肢ごとに、それぞれ対応する言葉を予め設定しておくことにより、選択された背景情報に対応する言葉を特定することができる。
【0108】
また要望の情報についても同様に、選択により入力される場合には、まず選択された要望に対応する言葉を特定する。例えば、対象の指摘事項及び要望の選択肢の組み合わせごとに、それぞれ対応する言葉を予め設定しておくことにより、選択された要望に対応する言葉を、指摘事項ごとに特定することができる。
【0109】
そして、それらの言葉と、ドラフト情報と、別途事前に文書修正装置1の記憶部に登録された指示文と、に基づいて、命令生成部12が修正命令を生成する。一方、背景情報及び要望が自由記述のテキストで入力される場合には、入力された背景情報及び事前に用意された指示文を用いて修正命令を生成すればよい。
【0110】
ここでもドラフト作成における作成命令の生成と同様に、背景情報に対応する言葉として、背景情報に応じた文書作成のルールを記載した文字列を格納しておくことが好ましい。例えば法律文書においては、規定の一文の中に例外を記載する場合と、一文の後に但し書きの文を別途記載する場合とで、法的な意味が異なることがある。背景情報に応じてこのような記載方法のルールを指定する言葉を組み合わせることにより、適切な法律文書を作成させることができる。なお、背景情報ごとに対応する複数のルールのうち、文書修正装置1が背景情報に基づいて修正命令に含めるルールを判定してもよいし、複数のルールを修正命令に含めるとともに複数のルールから背景情報に基づいて適切なルールを使用する旨を修正命令に含めることで文章生成モデルが使用するルールを判定する構成としてもよい。
【0111】
指示文としては、例えば「上記のドラフトに対して、レビューの結果以下の指摘がなされました。指摘を踏まえ、以下の条件に基づいて、修正案を作成してください。」、又は「上記のドラフトに対して、レビューの結果以下の指摘がなされました。指摘を踏まえ、以下のルールに基づいて、適切な契約書の文章を作成してください。」等の文を予め文書修正装置1の記憶部に格納しておくことができる。そして、ドラフトの内容と、指示文と、背景情報及び要望に基づく言葉と、を組み合わせた文章を、文章生成モデルに対してドラフトの作成を指示するための作成命令として生成すればよい。
【0112】
修正命令が生成されると、ステップS412に進み、生成された修正命令を命令生成部12が文章生成装置3に送信する。ステップS412における文章生成装置3への修正命令の送信が、修正命令の文章生成モデルへの送信に該当する。なお上記のように生成された条項ごと又は条項のグループごとの修正命令は、それぞれ複数回に分けて送信されてもよい。例えば、まず修正命令のうち指示文の部分を送信し、続けて指摘事項や要望に応じた言葉を送信するように構成することもできる。また、修正命令の文字数に応じて、一度に送信するか複数回に分けて送信するかを決定する構成としてもよい。
【0113】
文章生成装置3は、修正命令を受け取ると、当該修正命令を文章生成モデルに入力する。これにより文章生成モデルがドラフトの修正案を出力する(ステップS413)。本実施形態では、評価部13(再評価部)は指摘事項ごとに修正案を取得する。なお命令生成部12が、ステップS411においてひとつの指摘事項に対して複数の修正案を提案するよう命令する修正命令を生成し、ステップS413においては評価部13(再評価部)が一部又は全部の指摘事項に対して複数の修正案を取得してもよい。
【0114】
さらに、文章生成モデルに評価情報に基づいて修正理由も生成するように修正命令を送信し、修正案に加えて修正理由を取得してもよい。さらに、修正理由は自社向けの修正理由(または自身のクライアント向けの修正理由)と、相手向けの修正理由と、を生成させ、取得するようにしてもよい。契約交渉では自社と相手でお互いに修正を繰り返すが、このとき社内に説明するための修正理由と、社外に説明するための修正理由の少なくともどちらかを記載することが多い。修正理由の記載には高い専門性が必要であるが、上記構成により、専門的な知識がないユーザであっても修正理由を記載することができるよう支援することができる。
【0115】
(4)再評価処理
ステップS414では文章生成装置3が、文章生成モデルの出力である修正案を文書修正装置1に送信する。文書修正装置1では、ステップS415において評価部13(再評価部)による再評価が実行される。評価部13(再評価部)は修正案を取得し、修正案に対して上述の評価処理と同様の手順で再評価を行う。そして修正案の評価を示す再評価情報が、上述の評価情報と同様にして生成される。即ち再評価情報とは、修正案に対する評価を示す情報であり、再評価情報に含まれる情報は上述の評価情報と同様の項目である。
【0116】
ここで再評価においては、ドラフト全体ではなく、先の指摘事項に関する部分のみを対象としてもよい。具体的には、修正案が示す条項又は条項のグループを再評価の対象として評価を行い、その他の部分については再評価を省略することができる。これにより、処理速度の向上効果が期待される。
【0117】
そして評価部13(再評価部)は、再評価情報に基づきその評価が事前に設定された基準を満たすか否かを判断する。具体的には、再評価情報における指摘事項のリスクレベルを確認し、全ての指摘事項のリスクレベルが所定のリスクレベル以下である場合に基準を満たすと判断する。
【0118】
修正案の再評価が基準を満たさない場合、即ち所定のリスクレベルを上回るリスクレベルの指摘事項が存在する場合には、ステップS411に戻り再度修正命令の生成からステップS415の再評価までの処理を行う。この際、2回目以降の修正命令の生成処理では、ドラフト情報の代わりに修正案の情報を、評価情報の代わりに再評価情報を用いて、先に説明した修正命令の生成と同様の手順で修正案に関する修正命令を生成すればよい。
【0119】
原則として事前に設定された基準を満たすまでループ処理を行うが、極端に繰り返し回数が多くなったり、ループを抜けられなくなったりすると処理負荷の増大が懸念される。
したがって本実施形態では、終了条件としてループ処理の上限回数を定め、再評価が基準を満たさない場合でも、終了条件を満たした場合には再評価の繰り返しを終了しループ処理を抜けてステップS417に進む。また終了条件としては、この他にも、例えば修正前後のドラフトを比較して変更された文字数が一定以下になること等を設定してもよい。これにより、わずかな修正のみが発生する状況を繰り返すことを防ぐことができる。
【0120】
一方、修正案の評価が事前に設定された基準を満たす場合、図4のシーケンス図においてループの中断処理(breakの処理)に入る。ステップS416においては、提案部14が修正提案情報を生成して、ループ処理(Loopの処理)を終了する。
【0121】
中断処理において、提案部14は、修正提案情報を生成する。修正提案情報は、再評価における指摘事項ごとに、当該指摘事項に対応するドラフト中の条項と、指摘内容と、リスクレベルと、直近のステップS413において作成された修正案と、を含む。
【0122】
そしてステップS417では、ステップS416において生成された修正提案情報を、提案部14がユーザ端末装置2に送信する。ユーザ端末装置2は修正提案情報の表示処理結果を、ディスプレイに表示する。これにより、ユーザはドラフトを修正するための提案を受けることができる。
【0123】
以上の再評価処理の手順について、特に繰り返しの条件に関し図6のフローチャートを参照して更に説明する。図4のステップS414において、文章生成モデルの出力である修正案を文書修正装置1が受信すると、評価部13(再評価部)は、ステップS501でこの修正案を取得する。
【0124】
そしてステップS502において再評価を実行(図4のステップS415に相当)し、ステップS503で修正案の評価が事前に設定された基準を満たすか否かを判断する。上述の通り本実施形態では再評価情報における指摘事項のリスクレベルを確認し、全ての指摘事項のリスクレベルが所定のリスクレベル以下である場合に基準を満たすと判断する。
【0125】
基準を満たさない場合にはステップS505に進み、ループの回数(修正回数)が上限に達したか否かを確認する。上限に達していない場合(ステップS505で「Y」)は、ステップS506に進み、評価部13(再評価部)が命令生成部12に再度修正命令を生成及び送信させ、ループ回数のカウンタを加算してステップS501に戻る。
【0126】
ステップS503で基準を満たす場合、又はステップS505で修正回数が上限に達した場合は、ステップS504に進み、評価部13(再評価部)が提案部14に修正提案情報を生成させる(図4のステップS416に相当)。そして提案部14がユーザ端末装置2に修正提案情報を送信(図4のステップS417に相当)して処理を終了する。なお上記の処理手順は一例であり、例えばステップS503とステップS505の判断順序を入れ替える等、任意に変更してよい。
【0127】
(5)修正提案画面
次に図7を用いて、修正提案情報の表示処理結果としてユーザ端末装置2において表示される、修正提案画面について説明する。図7は、本実施形態における修正提案画面の表示例である。本実施形態の修正提案画面W7は、先に示した評価画面W5と似た構成で表示され、指摘マークW71及びリスクフィルタ操作部W72については評価画面W5における指摘マークW51及びリスクフィルタ操作部W52と同様であるため説明を省略する。
【0128】
評価画面W5と異なるのは主に画面右側の表示内容であり、特に「修正提案」に係る部分である。修正提案画面W7においては、修正提案情報に含まれる修正案に基づく表示として、指摘事項ごとに修正提案W73が含まれる。修正提案W73は、上述の修正案を表示するとともに、そのテキストをコピーできるよう表示する。またドラフトからの変更点についてハイライト等で強調表示することによりユーザが認識しやすいようにすることが好ましい。これにより、ユーザは指摘事項ごとにその内容と修正案を得ることができ、法律知識に詳しくないユーザであっても自力で法律文書の修正を行うことができる。
【0129】
なお指摘事項に対して複数の修正案を取得した場合、これらの修正提案情報において当該指摘事項について複数の修正案が含まれるため、修正提案画面W7においても、当該指摘事項に対して修正提案W73を複数表示してユーザが選択できるようにすることが好ましい。
【0130】
なお修正提案情報の出力方法としては上記の修正提案画面W7の表示に限られず、例えば少なくとも一部の指摘事項に対して修正案を適用したドラフト全体について文書形式のファイルを、提案部14がユーザ端末装置2に送信してもよい。また修正提案画面W7において表示された修正提案について反映するか否か、又は何れの修正提案を反映するかをユーザに選択させ、その結果に基づいてドラフト全体を修正した文書形式のファイルを提案部14が更にユーザ端末装置2に送信してもよい。
【0131】
以上のように、本実施形態の文書修正システムによれば、契約書等の法律文書のドラフトについて、専門的な知識がないユーザであっても修正を行うことができるよう支援することができる。更に修正案の再評価及びその結果に応じた再度の修正案作成の命令により、ドラフト修正の質を向上させることができる。
【0132】
また自然言語の文章による命令を生成することにより、文章を入力として回答となる文章を生成する会話型の文章生成モデルを利用した修正案の作成が可能となる。これにより、契約の背景や要望等の種々の条件を考慮した修正案をモデルに生成させることができ、よりユーザの状況や希望に沿ったドラフトの修正案を提供することができる。
【0133】
さらに、文章生成モデルに評価情報に基づいて修正理由も生成するように修正命令を送信し、修正理由を修正提案情報に含めるようにしてもよい。さらに、修正理由は自社向けの修正理由(または自身のクライアント向けの修正理由)と、相手向けの修正理由と、を生成するようにしてもよい。契約交渉では自社と相手でお互いに修正を繰り返すが、このとき社内に説明するための修正理由と、社外に説明するための修正理由の少なくともどちらかを記載することが多い。修正理由の記載には高い専門性が必要であるが、上記構成により、専門的な知識がないユーザであっても修正理由を記載することができるよう支援することができる。
【符号の説明】
【0134】
0 :文書修正システム
1 :文書修正装置
2 :ユーザ端末装置
3 :文章生成装置
11 :取得部
12 :命令生成部
13 :評価部
14 :提案部
90 :端末装置
101 :制御部
102 :記憶部
103 :通信部
901 :制御部
902 :記憶部
903 :通信部
904 :入力部
905 :出力部
NW :通信ネットワーク
W5 :評価画面
W51 :指摘マーク
W52 :リスクフィルタ操作部
W53 :一括修正ボタン
W54 :個別修正ボタン
W7 :修正提案画面
W71 :指摘マーク
W72 :リスクフィルタ操作部
W73 :修正提案

図1
図2
図3
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図5
図6
図7