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特開2024-15978外科用器具、大腿骨トライアルインプラント、及び、外科用器具システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015978
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】外科用器具、大腿骨トライアルインプラント、及び、外科用器具システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20240130BHJP
   A61F 2/36 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023109500
(22)【出願日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】10 2022 207 577.3
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-ペーター ファームバッハ
(72)【発明者】
【氏名】リリー ストフェルズ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA05
4C097BB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膝関節置換術に使用するための外科用器を提供する。
【解決手段】遠位大腿骨に取り付けられた大腿骨トライアルインプラントに解放可能に締結するように構成され締結装置で、2つの位置決めピンを有し、位置決めピンは内側外側方向において互いに離間して配置されており、かつ、締結装置を位置決めするために、トライアルインプラントの位置決めピンと相補的な2つの受容ボアに後方向に差し込むことができるように設計されており、締結装置を前方向に形状嵌合式にトライアルインプラントに固定するための少なくとも1つの固定要素を有する、外科用器具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節置換術に使用するための外科用器具(1、1a)であって、
遠位大腿骨(F)に取り付けられた大腿骨トライアルインプラント(200)に解放可能に締結するように構成された締結装置(100、100a)を備え、
前記締結装置(100、100a)は、2つの位置決めピン(101、101a)を有し、前記位置決めピン(101、101a)は内側外側方向において互いに離間して配置されており、かつ、前記締結装置(100、100a)を位置決めするために、前記トライアルインプラント(200、200a)の前記位置決めピン(101、101a)と相補的な2つの受容ボア(201、201a)に後方向(P)に差し込むことができるように設計されており、
前記締結装置(100、100a)は、前記締結装置(100、100a)を前方向(A)に形状嵌合式に前記トライアルインプラント(200)に固定するための少なくとも1つの固定要素(102、102a)を備える、
外科用器具(1、1a)。
【請求項2】
前記固定要素(102、102a)は、前記締結装置(100、100a)と前記トライアルインプラント(200)との間に形状嵌合(S)を生成するための少なくとも1つの形状嵌合部(103、103a)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項3】
前記固定要素(102、102a)は、少なくとも1つのスナップ式フック(105、105a)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項4】
前記固定要素(102、102a)は、前記位置決めピン(101、101a)に対して、固定位置と解放位置との間で調整可能に移動可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項5】
前記締結装置(100、100a)は、前記固定要素(102、102a)を前記固定位置の方向に付勢するばね力を生成するための少なくとも1つのばね要素(106、106a)、特にねじりばね要素又は梁ばね要素(104、104a)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項6】
前記位置決めピン(101、101a)のそれぞれは、第1の端部(107、107a)と第2の端部(108a、108a)との間で前後方向に細長く、
前記第1の端部(107、107a)に存在する第1の端部分(109、109a)が、プラグ接続(V)を形成するように、前記トライアルインプラント(200)の前記受容ボア(201)の関連する1つの前記受容ボア(201)において前記後方向(P)に受容可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項7】
前記形状嵌合部(103、103a)は、前記前方向(A)に対して、アンダーカット(110、110a)を形成することを特徴とする、請求項2に従属する請求項6に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項8】
前記トライアルインプラント(200)が、前後方向において、前記第1の端部(107、107a)における一方と前記アンダーカット(110、110a)における他方との間で位置決め、特にクランプ可能であるように、前記第1の端部(107、107a)が後方に露出され、かつ、前記アンダーカット(110、110a)が前方に露出されていることを特徴とする、請求項7に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項9】
膝関節置換手術で使用するための大腿骨トライアルインプラント(200)であって、
遠位大腿骨(F)に接触するように構成された骨接触面(202)と、
2つの受容ボア(201)であって、それぞれが、外科用器具(1、1a)、特に請求項1から8のいずれか一項に記載の前記外科用器具(1、1a)の位置決めピン(101、101a)を受容するように構成された前記2つの受容ボア(201)と、
前記外科用器具(1、1a)の固定要素(102、102a)に形状適合接続するように構成された固定部(203)と、を有する、大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項10】
前記骨接触面(202)は、前記トライアルインプラント(200)の本体(205)の近位後面(204)上に配置され、前記本体(205)の遠位前面(206)の反対側にあり、
前記本体(205)は、2つの顆部(207)を有し、前記顆部(207)は、内側外側方向において互いに離間され、かつ、それぞれが前後方向に延在し、かつ、それらの前端部(202)において前記本体(205)の接続部(209)に移行し、
前記固定部(203)は、内側外側方向において、2つの前記顆部(207)の間で前記接続部(209)の後端(210)に配置される、請求項9に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項11】
前記固定部(203)は、内側外側方向において、前記2つの受容ボア(201)の間に、及び/又は、近位遠位方向において前記2つの受容ボア(201)から距離をおいて配置されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項12】
前記固定部(203)は、後方向(P)に対して、アンダーカット(211)を形成することを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項13】
前記2つの受容ボア(201)のうちの少なくとも1つ、好ましくはそれぞれが、止まり穴(212)として設計されることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項14】
膝関節置換術に使用するための外科用器具システム(10、10a)であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)と、
請求項9から13のいずれか一項に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)であって、前記大腿骨トライアルインプラント(200)に前記外科用器具(1、1a)が開放可能に締結されている、前記大腿骨トライアルインプラント(200)と、を備え、
前記位置決めピン(101、101a)と前記受容ボア(201)とは互いに相補的に設計され、前記位置決めピン(101、101a)は前記後方向(P)に沿って前記受容ボア(201)に少なくとも部分的に差し込まれており、
前記固定要素(102、102a)及び前記固定部(203)は、形状嵌合(S)を生成するように互いに調整されており、前記外科用器具(1、1a)は、特に前記前方向(A)に、前記形状嵌合(S)を介して前記大腿骨トライアルインプラント(200)に固定されている、外科用器具システム(10、10a)。
【請求項15】
異なるサイズの複数の大腿骨トライアルインプラント(200)が存在し、前記大腿骨トライアルインプラント(200)の全てにおいて、前記受容ボア(201)の両方は、特にその中心長手方向軸に対して、それぞれの前記大腿骨トライアルインプラント(200)の近位最外点(DP)から同一の近位遠位方向における距離(11)をおいて配置され、前記大腿骨トライアルインプラント(200)の各々の前記受容ボア(201)は互いから、特に、前記中心長手方向軸に対して、同一の近位遠位方向における距離(12)をおいて配置されることを特徴とする、請求項14に記載の外科用器具システム(10、10a)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節置換手術に使用するための外科用器具に関する。また、本発明は膝関節置換手術に使用するための大腿骨トライアルインプラントに関する。さらに、本発明は膝関節置換手術に使用するための外科用器具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
膝関節置換手術又は全膝関節形成術(TKA)では、疾患又は損傷によって摩耗したか、さもなければ侵された大腿骨、及び/又は、脛骨の関節表面が膝関節プロテーゼの人工関節表面によって置換される。そのような膝関節プロテーゼは、通常、大腿骨パーツ及び脛骨パーツを含む。大腿骨パーツは、大腿骨の遠位端に埋め込まれる。脛骨パーツは、脛骨の近位端に埋め込まれる。
【0003】
プロテーゼパーツを埋め込む前に、遠位大腿骨及び近位脛骨が切除される。この目的のために、外科医は様々な切除カットを行い、骨物質、及び/又は、軟骨物質をそれぞれの骨から切り離す。切除は、それぞれの骨がその形状において、受容される予定のプロテーゼパーツに適合されることを可能にする。
【0004】
切除は、様々なコンセプトに基づいて実施することができる。1つのコンセプトは、関節の動作中に膝靭帯の張力のバランスを維持することを目的とする。これは、膝関節プロテーゼのより良好な機能を保証することを意図している。この概念は、一般に「ギャップバランシング(gap balancing)」と呼ばれる。他のコンセプトでは、外科医が一定量の骨物質、及び/又は、軟骨物質を除去するために切除を使用する。そのようなコンセプトは、一般に、「測定切除(measured resection)」と呼ばれる。患者の解剖学的構造に対する切除カットのアライメントは、埋め込まれたパーツのその後のアライメントを決定し、その結果、プロテーゼ関節軸の向きも決定する。従って、切除カットのアライメントは特に重要である。
【0005】
切除カットのアライメントには、主に、機械的、解剖学的及び運動学的の3つのアプローチがある。機械的アライメントは、脛骨軸の長手方向軸に垂直な近位脛骨の切除を含む。遠位大腿骨の切除は、それに対応して適合された方法で行われる。必要に応じて、靭帯リリースが行われる。解剖学的アライメントでは、3°の内反角で脛骨を切除することが試みられる。大腿骨切除及び靭帯リリースは、脚の股関節-膝関節-足首の軸が直線になるように実施される。運動学的アライメントの目標は、プロテーゼパーツの人工関節面を、関節炎の発症前に存在する自然な欠損のない関節面のレベルで埋め込むことである。
【0006】
運動学的アライメントでは、切除カットのアライメントは大腿骨遠位部上から開始されることが多い。脛骨近位部の切除は、それに適合される。大腿骨及び脛骨の連続切除するために、脛骨切断アライメントガイドとも呼ばれる特別な外科用器具が知られている。そのような器具は、大腿骨切除カットのアライメントを脛骨に移行させることを可能にする。通常、移行は、遠位顆が分離される大腿骨の少なくとも遠位切除の後に行われる。その移行は、伸展又は屈曲で行うことができる。運動学的アライメントの変形例では、まず、遠位大腿骨を完全に準備する(全大腿骨ファースト)。遠位大腿骨に形成される切除カットは、患者の解剖学的構造に対してアライメントされ、遠位大腿骨に適用される。次いで、大腿骨トライアルインプラントが遠位大腿骨に適用される。次いで、患者の解剖学的構造に既にアライメントされた大腿骨トライアルインプラントが基準パーツとして使用され、そのアライメントがその上で形成される予定の切除カットをアライメントし、適用するために外科用器具を介して脛骨近位部に移行される。代替として、逆の順序、即ち、近位脛骨から開始する手順が考えられることが理解されるであろう。
【0007】
前記移行ツールは、通常、大腿骨トライアルインプラントに解放可能に締結するように構成された締結装置を有する。典型的には、締結装置が形状嵌合様式でトライアルインプラントに解放可能に締結可能である。このようなトライアルインプラントは、薄壁を有するように設計されることが多い。従って、比較的小さい材料厚さのみが、形状適合を生成するために利用可能である。その結果、形状適合を形成し、確実に維持することは、特に困難であることが分かっている。トライアルインプラントの素材厚さが薄いことが多いため、弾性変形、及び/又は、塑性変形が生じる可能性がある。これらは、形状嵌合の緩み、及び/又は、損失を引き起こす可能性がある。さらに、トライアルインプラントに対して締結装置が傾いてしまう事態が発生する可能性がある。これらは、移行ツールのアライメントを歪める可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来の外科用器具、大腿骨トライアルインプラント、及び、外科用器具システムを超える利点を提供する外科用器具、大腿骨トライアルインプラント、及び、外科用器具システムを利用可能にすることである。特定の目的は、外科用器具が、傾斜を抑制する、特に確実な方法で、トライアルインプラントに固定されることを可能にすることである。
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する外科用器具、請求項9の特徴を有する大腿骨トライアルインプラント、及び、請求項14の特徴を有する外科用器具システムを利用可能にすることによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0010】
本発明による外科用器具は膝関節置換手術での使用に役立ち、遠位大腿骨に取り付けられた大腿骨トライアルインプラントに解放可能に締結するように構成された締結装置を有し、締結装置は2つの位置決めピンを有し、位置決めピンは互いに内側外側方向において離間して配置されると共に、締結装置を位置決めする目的のため、トライアルインプラントの位置決めピンと相補的な2つの受容ボアに後方向に差し込むことができるように設計されており、締結装置は締結装置を前方向に形状嵌合式にトライアルインプラントに固定するための少なくとも1つの固定要素を有する。トライアルインプラントは、外科用器具の構成要素ではない。位置決めピンと受容ボアとの相互作用によって、外科用器具は、トライアルインプラントに対して正しいアライメントで、内側外側方向、前後方向、及び、近位遠位方向に位置決め可能である。固定要素によって、外科用器具の位置決めは、形状嵌合方式で固定することができる。固定要素は、プラグ接続の望ましくない解放に対抗する。それは、特に、受容ボアから抜け出る位置決めピンの前方スライド運動に対抗する。固定要素は、有利には、位置決めピンが受容ボア内の十分な深さに留まることを確実にする。従って、位置決めピンと受容ボアとの間に生じる表面圧力を最小限に抑えることができる。位置決めピン及び/又は受容ボアの変形は、締結装置とトライアルインプラントとの間に傾斜トルクが作用するときにも、それに応じて最小限に抑えることができる。その結果、トライアルインプラントに対する外科用器具の望ましくない傾斜は、特に効果的に打ち消される。従って、外科用器具はその使用において、特に信頼性があり、堅牢であることが証明される。さらに、それは、トライアルインプラントのアライメントの近位脛骨への特に正確な移行を可能にする。
【0011】
本明細書で使用される位置及び方向の指定は患者の身体、特に患者の大腿骨に関するものであり、それらの通常の解剖学的意味に従って理解されるべきである。従って、「前方」は前方又は前方にあることを示し、「後方」は後方又は後方にあることを示し、「内側」は内側へ、又は内側にあることを示し、「外側」は外側へ、又は外側にあることを示し、「近位」は本体の中心に向かうことを示し、「遠位」は、本体の中心から離れることを示す。さらに、「近位」は、近位-遠位軸に沿って、好ましくは平行であることを示し、「前後」は、前後軸に沿って、好ましくは平行であることを示し、「内側」は、内側外側軸に沿って、好ましくは平行であることを示す。前述の複数の軸は互いに直交しており、もちろん、患者の解剖学的構造に関連付けられていないX軸、Y軸、及び、Z軸に関連して理解することができる。例えば、近位遠位軸は、X軸と代替的に呼ぶことができる。内側外側軸は、Y軸と代替的に呼ぶことができる。前後軸をZ軸と呼ぶことができる。呼称のより良い説明及び簡略化のために、前述の解剖学的位置及び方向の呼称は、主に以下で使用される。
【0012】
本発明の一実施形態では、固定要素が締結装置とトライアルインプラントとの間に形状嵌合を生成するための少なくとも1つの形状嵌合部を有する。形状嵌合部は、つまみ、フック、ピン、ネジなどを備えることができる。これにより、外科用器具を大腿骨トライアルインプラントに特に確実に固定することができる。
【0013】
本発明のさらなる実施形態では、固定要素が少なくとも1つのスナップ式フックを備える。このようなスナップ式フックは、位置決めピンが相補的な受容ボア内に挿入されると、トライアルインプラント上に自動的にラッチ(係止)することができる。従って、外科用器具を大腿骨トライアルインプラントに取り付けるときに、形状嵌合を生成するための別個のロック手段を省くことが有利な点である。従って、外科用器具は、特に取り扱いが容易であることが分かる。また、操作の継続時間を短く保つのにも役立つ。
【0014】
本発明のさらなる実施形態では、位置決めピンに対して、固定要素が固定位置と解放位置との間で調整可能に移動可能である。固定位置では、形状嵌合を生成することができる。解放位置では、形状嵌合を解除することができる。好ましくは、固定要素をその解放位置とその固定位置との間において、手動で移動させることができる。従って、形状嵌合は、適切な場合において、外科用器具をトライアルインプラントから分離するために、固定要素をその解放位置に移動させることによって、解除することができる。好ましくは、形状嵌合は、純粋に、手動で、及び/又は、別個のツールを使用せずに、解除される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、締結装置が、固定要素をその固定位置の方向に付勢するばね力を生成するための少なくとも1つのばね要素、特にねじり又は梁ばね要素を備える。このために、固定要素の解放位置への移動は、ばね力に対抗し、かつ、ばね力に打ち勝つことによって行うことができる。従って、形状嵌合の偶発的な解放を、特に効果的に回避することができる。さらに、固定要素は、ばね力によってその固定位置に自動的に移動され、そこで保持されることができる。このように、形状嵌合は、位置決めピンが受容ボアに挿入されるときに自動的に生成可能である。操作者による固定要素の別個の作動は、この場合、不要となる。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、各々の位置決めピンは、第1の端部と第2の端部との間で前後方向に細長く、各第1の端部に存在する第1の端部分がプラグ接続を形成するように、トライアルインプラントの受容ボアのうちの関連する1つにおいて後方向に受容可能である。この種の位置決めピンは特に費用効果的に、特に十分な精度で製造することができる。
【0017】
本発明のさらなる実施形態では、形状嵌合部が前方向に対してアンダーカットを形成する。アンダーカットは、トライアルインプラントからの締結装置の前方向への偶発的な分離を防止する。これは、締結装置の特に確実な固定を可能にする。
【0018】
本発明のさらなる実施形態では、トライアルインプラントが、前後方向で、一方では第1の端部と他方ではアンダーカットとの間で位置決め、特にクランプ可能であるように、第1の端部が後方に露出され、アンダーカットが前方に露出されている。言い換えれば、第1の端部及びアンダーカットは、前後方向において互いに反対方向に配向される。従って、締結装置の位置は、有利には前方及び後方の両方で固定することができる。
【0019】
本発明はさらに、膝関節置換手術に使用するための大腿骨トライアルインプラントに関する。それは、遠位大腿骨に接触するように構成された骨接触面と、各々が外科用器具の位置決めピンを受容するように構成された2つの受容ボアと、外科用器具の固定要素に形状適合接続するように構成された固定部、を有する。本発明による外科用器具の上述の利点は、必要な変更を加えて、本発明による大腿骨トライアルインプラントにも適用される。
【0020】
本発明の一実施形態では、骨接触面がトライアルインプラントの本体の近位後面上に配置され、本体の遠位前面の反対側にあり、本体が2つの顆部を有し、顆部は互いに内側外側方向に離間され、かつ、それぞれが前後方向に延在し、かつ、それらの前端部において本体の接続部に移行し、固定部は、内側外側方向において2つの顆部の間で接続部の後端に配置される。これは、固定部の中央配置をもたらす。固定部は、大腿骨の切除前に顆間切痕が存在していた領域に配置することができる。このように配置された固定部により、保持力を固定要素からトライアルインプラント内の中央に導入することができる。これは、傾斜を防ぐ確実な方法で、締結装置とトライアルインプラントとの特に安定した解放可能な接続を確実にする。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、固定部が、内側外側方向において2つの受容ボアの間に、代替的に又は追加的に、2つの受容ボアから近位遠位方向に距離をおいて配置される。内側外側方向における配置は、形状嵌合要素及び位置決めピンを介して、トライアルインプラントへの固定力の特に均一な導入を確実にする。固定要素と受容ボアとの間の近位遠位方向における距離は、有利には締結装置とトライアルインプラントとの間のトルクを支持するためのレバーアームとして機能することができる。
【0022】
本発明のさらなる実施形態では受容ボアの少なくとも1つ、好ましくは受容ボアのそれぞれは止まり穴として設計される。止まり穴形状の受容ボアの底部は、有利には位置決めピンのための特に後方ストッパを形成する。従って、トライアルインプラントに対する外科用器具の後方位置は、特に簡単な方法で、かつ、永久的に固定することができる。
【0023】
本発明はさらに、膝関節置換手術で使用するための外科用器具システムに関し、該システムは、本発明によって上記記載に従う外科用器具と、本発明によって上記記載に従う大腿骨トライアルインプラントであって、大腿骨トライアルインプラントに外科用器具が開放可能に締結されている、大腿骨トライアルインプラントとを有し、位置決めピンと受容ボアとは互いに補完的に設計され、位置決めピンは後方向に沿って受容ボアに少なくとも部分的に差し込まれており、固定要素及び固定部は形状嵌合を生成するように互いに調整されており、外科用器具は、特に前方向に形状嵌合を介して大腿骨トライアルインプラントに固定されている。本発明による外科用器具及び本発明による大腿骨トライアルインプラントの上述の利点は、必要な変更を加えて、本発明による外科用器具システムにも適用される。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、外科用器具システムが異なるサイズの複数の大腿骨トライアルインプラントを備え、大腿骨トライアルインプラントの全てにおいて、受容ボアの両方は、特にその中心長手方向軸に対して、それぞれの大腿骨トライアルインプラントの近位最外点から同一の近位遠位方向における距離をおいて配置され、大腿骨トライアルインプラントの各々の受容ボアは互いから、特に、中心長手方向軸に対して、同一の近位遠位方向における距離をおいて配置される。これは、明白に、近位遠位距離及び内側外側距離が1つの同じトライアルインプラントにおいて、程度が同一でなければならないことを意味しない。代わりに、異なるサイズの複数のトライアルインプラントにおいて、近位遠位距離及び内側外側距離の両方は、前記サイズにかかわらず同じである。言い換えれば、外科用器具システムのトライアルインプラントの全ては、均一な近位距離及び均一な内側外側距離を有する。従って、有利には、1つの同じ外科用器具を、異なるサイズのトライアルインプラントと共に使用することができる。トライアルインプラントのサイズは、異なるサイズの大腿骨に合わせることができる。従って、複数のトライアルインプラントから、患者の所与の解剖学的構造に最も適合する特定のサイズのトライアルインプラントを選択することが可能である。トライアルインプラントのサイズとは無関係に、患者の解剖学的構造上のトライアルインプラントのアライメントは、外科用器具によって脛骨に移行することができる。特に、正しい脛骨切断高さは、トライアルインプラントの選択されたサイズとは無関係に得られる。近位最外点は、滞留点とも称することができる。
【0025】
本発明のさらなる利点及び特徴は、特許請求の範囲及び図面に示される本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるのであろう。
【0026】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述した特徴及び以下に説明する特徴を、それぞれ示した組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は単独で使用することができることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による外科用器具システムの実施形態の概略斜視図。
【0028】
図2図1による外科用器具システムの詳細Bを示す図。
【0029】
図3図1及び図2による外科用器具システムを別の観察角度からの概略斜視図。
【0030】
図4図1から図3による外科用器具システムの概略前面図。
【0031】
図5図4による切断線D-Dに沿った概略断面図。
【0032】
図6図5による詳細Hを示す図。
【0033】
図7図4による切断線G-Gに沿った概略断面図。
【0034】
図8】本発明によって設計されたさらなる外科用器具を有する本発明による外科用器具システムのさらなる実施形態の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1及び図2によれば、膝関節置換手術で使用するための外科用器具1が提供される。外科用器具1は、脛骨移行ツールと称することもでき、近位脛骨上での脛骨切断ブロックの参照された位置決めに役立つ。脛骨切断ブロック及び脛骨は、図には示されていない。遠位大腿骨F上に既に配置された大腿骨トライアルインプラント200は、脛骨切断ブロックの位置のための基準として働く。大腿骨トライアルインプラント200及び脛骨切断ブロックは、外科用器具1の構成部品ではない。トライアルインプラント200及び外科用器具1は、外科用器具システム10の構成部品である。外科用器具1及び外科用器具システム10は、特に、全大腿骨ファーストアプローチに従う膝関節置換手術に適している。このアプローチでは必要とされる大腿骨切除カットの全てが、最初に行われる。遠位大腿骨Fの切除後、大腿骨トライアルインプラント200が固定され、その後、大腿骨トライアルインプラントは、外科用器具1のための大腿骨基準パーツとして機能することができる。図1及び図2において、大腿骨トライアルインプラント200は切除された遠位大腿骨Fに固定される。外科用器具1によって、患者の解剖学的構造上に既に作製されたトライアルインプラント200のアライメントはそこに、正確なアライメントで少なくとも1つの切除カットを行うために、近位脛骨に移行できる。
【0036】
外科用器具1は、締結装置100を有する。締結装置100は、大腿骨トライアルインプラント200に解放可能に締結するように構成される。締結装置100は、2つの位置決めピン101を備える。2つの位置決めピン101は、互いに内側外方向に間隔を空けて配置される。位置決めピン101は、締結装置100を位置決めする目的で、トライアルインプラント200の2つの受容ボア201に差し込むことができるように設計されている。受容ボア201は、位置決めピン101を補完するように設計される。位置決めピン101は、後方向Pに受容ボア201に差し込むことができるように設計されている。換言すれば、位置決めピン101は、後方向Pに沿って、相補的な受容ボア201内に挿入又は押し込むことができる。
【0037】
締結装置100は、少なくとも1つの固定要素102をさらに備える。固定要素102は、締結装置100をトライアルインプラント200上に形状適合式で保持及び/又は固定する働きをする。固定要素102は、締結装置100をトライアルインプラント200上で前方向Aに形状嵌合式に保持及び/又は固定するように構成される。固定要素102は、少なくとも1つの形状嵌合部103を有する。形状嵌合部103は、締結装置100とトライアルインプラント200との間に形状嵌合Sを生成する役割を果たす。形状嵌合部103は、突起、フック、ピン、ネジなどの形態で設計することができる。本ケースでは、固定要素102は、スナップ式フック105を備える。スナップ式フック105は、2つの位置決めピン101が受容ボア201に差し込まれると、トライアルインプラント200に自動的にラッチする。
【0038】
固定要素102は、位置決めピン101に対して、固定位置と解放位置との間で調整可能に移動可能である。形状嵌合Sは、固定位置で生成することができる。形状嵌合は、解放位置で解除又は解放することができる。図1及び図2に示される術中状況では、固定要素102が固定位置に配置されている。ここで、外科用器具1は、固定要素102によってトライアルインプラント200上に固定されている。固定要素102が解放位置に移動することによって、外科用器具1は、トライアルインプラント200から前方向Aに分離可能である。
【0039】
締結装置100は、さらに、少なくとも1つのばね要素106を有する。本ケースのばね要素106は、ねじりばね要素104である。ばね要素106は、固定要素102を固定位置の方向に付勢するばね力を発生させる働きをする。固定要素102は、このようなばね力によってその固定位置に保持される。固定要素102の解放位置への移動は、ばね力に打ち勝つことによって得られる。ばね力のために、固定要素102は位置決めピン101が差し込まれたときに、トライアルインプラント200上に形状嵌合式で自動的にラッチすることができる。言い換えれば、本ケースのばね力は、位置決めピン101が差し込まれると、固定要素102がトライアルインプラント200上に自動的にラッチするという効果を有する。
【0040】
位置決めピン101は、それぞれ、第1の端部107と第2の端部108との間で前後方向に細長い。第1の端部分109は、第1の端部107に存在する。第1の端部分109は、プラグ接続Vを形成するように、トライアルインプラント200の受容ボア201の関連するボア内に後方向Pに受容されることができる。位置決めピン101及びその関連する受容ボア201のうちの少なくとも1つは、狭いクリアランス嵌合又は移行嵌合の様式で互いに合わせることができる。位置決めピン101のうちの1つとそれに関連する受容ボア201とが、正確な嵌合で互いに合わせられる場合、それぞれの他の位置決めピン101と、それに関連する受容ボア201とは内側外側(方向における)遊びを有することができる。この目的のために、関係する受容ボア201は、内側外側遊びを生成するために、長円形の孔として設計することができる。この場合、位置決めピン101は、少なくとも第1の端部分109の領域において円形の断面を有する。代替として、他の断面形状、例えば、楕円形、長方形、又は、別の多角形の形態も考えられることが理解されよう。
【0041】
本ケースにおいて、形状嵌合部103は、前方向Aに対してアンダーカット110を形成する。第1の端部107が後方に露出している。アンダーカット110は、前方に露出されている。第1の端部107及びアンダーカット110は、前後方向において互いに反対方向に配向される。結果として、トライアルインプラント200は、前後方向において、一方では第1の端部107と、他方ではアンダーカット110との間に配置することができる。アンダーカット110は、位置決めピン101のための当接部を形成することができる。
【0042】
図1から図8は、本発明による大腿骨トライアルインプラント200の実施形態を示す。大腿骨トライアルインプラント200は、膝関節置換手術で使用するために提供される。それは、骨接触面202を有する。骨接触面202は、遠位大腿骨Fに接触するように構成される。大腿骨トライアルインプラント200は、さらに、2つの受容ボア201を備える。これらは、それぞれ、外科用器具1の位置決めピン101のうちの1つを受容するように構成される。大腿骨トライアルインプラント200は、さらに、固定部203を備える。固定部203は、外科用器具1の固定要素102に形状嵌め接続するように構成される。本ケースにおいて、大腿骨トライアルインプラント200は、特に爪形状の本体205を有する。骨接触面202は、本体205の近位後面204上に配置される。近位後面204は、本体205の遠位前面206の反対側にある。本体205は、互いに内側に離間された2つの顆部207を備える。2つの顆部207は、それぞれ、前後方向に延びている。それらの前端202において、顆部207は、本体205の接続部209に移行する。従って、顆部207は、接続部209によって互いに接続される。固定部203は、接続部209の後端210に配置される。固定部203は、内側外側方向において、2つの顆部207の間に位置する。本ケースにおいて、固定部203は、内側外側方向において2つの受容ボア201の間に配置される。それぞれのケースにおける受容ボア201のうちの1つは、顆部207のうちの1つの領域に存在することができる。代替的に又は追加的に、固定部203は、2つの受容ボアから近位遠位方向の距離を置いて配置される。本ケースにおいて、固定部203は、内側外側方向において、2つの受容ボア201の間に配置されると共に、近位遠位方向において、2つの受容ボア201から距離を置いて配置される。固定部203は、後方向Pに対してアンダーカット211を形成する。従って、固定要素102のアンダーカット110は固定部203のアンダーカット211を補完するように設計される。
【0043】
本ケースにおいて、受容ボア201の少なくとも1つは、止まり穴212として設計される。本ケースにおいて、受容ボア201の両方は、それぞれ、止まり穴212として形成される。止まり穴212の底部213は、位置決めピン101のための後方ストッパとして機能する。従って、底部213は、位置決めピン101の第1の端部107と共に、トライアルインプラント200に対する外科用器具1の前後方向における位置を確立する。
【0044】
図8による外科用器具1aのさらなる実施形態は、固定要素102aの設計において、図1から図7による実施形態とは異なる。後者は、ねじりばね104の代わりに梁ばね104aを備える。梁ばね104aは、舌状の設計を有する。さらに、図8によれば、いくつかの、具体的には3つの形状嵌合部103aが存在する。形状嵌合部103aは、スナップ式フック105aとして設計されている。形状嵌合部103aのそれぞれは、前方向Aにおいてアンダーカット110aを形成する。形状嵌合部103aによって、外科用器具1aの3つのラッチ位置を確立することができ、締結装置100aは、前後方向においてトライアルインプラント200上にラッチすることができる。その他について、図8による実施形態に関して、図1から図7による実施形態の前述の説明が参照され、図8における対応する参照符号は、文字aによって接尾される。
【0045】
既に説明したように、外科用器具システム10、10aは、外科用器具1、1aと、大腿骨トライアルインプラント200と、を備える。外科用器具1、1aは、トライアルインプラント200に解放可能に固定される。位置決めピン101、101a及び受容ボア201は、互いに補完するように設計される。位置決めピン101、101aは、後方向Pにおいて受容ボア201内に少なくとも部分的に差し込まれる。固定要素102、102a及び固定部203は、形状嵌合Sを生成するように互いに調整される。外科用器具1が形状嵌合Sによってトライアルインプラント200上に保持される。形状嵌合Sが外科用器具1、1aをトライアルインプラント200上の前方向Aに保持する。止まり穴212の底部213と位置決めピン101の第1の端部107との間に、外科用器具1、1aをトライアルインプラント200上の後方向Pに保持する形状嵌合を生成することができる。さらに、位置決めピン101と関連する受容ボア201との間に、外科用器具1、1aをトライアルインプラント200上で近位遠位方向及び内側外側方向に保持する形状嵌合を生成することができる。
【0046】
外科用器具システム10、10aは、複数のトライアルインプラント200を備える。トライアルインプラント200は、そのサイズが異なる。異なるサイズのトライアルインプラント200は、様々なサイズの大腿骨に適合される。従って、治療される患者の解剖学的構造に応じて、適切なトライアルインプラント200を選択することができる。全てのトライアルインプラント200において、2つの受容ボア201は、それぞれのトライアルインプラント200の近位最外点DPから近位遠位方向距離11をおいて配置される。この点DPは、いわゆる滞留点とすることができる。本ケースにおいて、距離11は、受容ボア201の中心長手方向軸線に関連する。近位遠位距離11は、全てのトライアルインプラント200において同じ、すなわち同一である。さらに、各トライアルインプラント200の受容ボア201は、互いに内側外側方向距離12をおいて配置される。内側外側方向距離12は、例えば、受容ボア201の中心長手方向軸線に関連する。内側外側方向距離12は、全てのトライアルインプラント200において同じ、すなわち同一である。言い換えれば、それらのサイズにかかわらず、外科用器具システム10、10aのトライアルインプラント200のすべては、均一な近位遠位距離11及び均一な内側外側距離12を有する受容ボア201を有する。
【0047】
外科用器具システム10、10aは、さらに、ガイド装置300を備えることができる。ガイド装置300は、締結装置100に取り外し可能に接続することができる。さらに、別の締結装置をガイド装置300に取り外し可能に接続することができ、その上に、脛骨近位側の脛骨上の切除カットを案内するために、脛骨切断ブロックを固定することができる。ガイド装置300によって、さらなる締結装置は、第1の締結装置100、100aに対してアライメント可能である。第1の締結装置100、100aのガイド装置300への解放可能な接続は、プラグ接続400によって実現することができる。
【0048】
ガイド装置300は円弧の形状を有することができ、その結果、締結装置100、100aは、さらなる締結装置に対して案内された態様で旋回可能に移動可能である。このようにして、ガイド平面における脛骨切断ブロックの傾斜を調整することができる。ガイド平面は矢状方向を有し、従って、前後方向及び近位遠位方向の広がりを有する。2つの締結装置がそのまわりに案内装置によって互いに対して旋回可能に移動可能である旋回軸は、矢状ガイド平面内で機械的脛骨軸と交差することが好ましい。前記傾斜は、後方勾配又は前方勾配とも呼ばれる。脛骨切断ブロックの傾斜(以下、略して勾配)の調整可能性は、一方では手術前に確立されたパラメータへの適応を可能にする。他方では、脚の実際の屈曲又は伸展位置をガイド装置の可動性によって考慮し、補償することができる。それによって、勾配の調整が同時に、脛骨切断ブロックの近位遠位方向における位置、いわゆる脛骨切断高さの望ましくない変化をもたらさないことを確実にすることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節置換術に使用するための外科用器具(1、1a)であって、
遠位大腿骨(F)に取り付けられた大腿骨トライアルインプラント(200)に解放可能に締結するように構成された締結装置(100、100a)を備え、
前記締結装置(100、100a)は、2つの位置決めピン(101、101a)を有し、前記位置決めピン(101、101a)は内側外側方向において互いに離間して配置されており、かつ、前記締結装置(100、100a)を位置決めするために、前記大腿骨トライアルインプラント(200、200a)の前記位置決めピン(101、101a)と相補的な2つの受容ボア(201、201a)に後方向(P)に差し込むことができるように設計されており、
前記締結装置(100、100a)は、前記締結装置(100、100a)を前方向(A)に形状嵌合式に前記大腿骨トライアルインプラント(200)に固定するための少なくとも1つの固定要素(102、102a)を備える、
外科用器具(1、1a)。
【請求項2】
前記固定要素(102、102a)は、前記締結装置(100、100a)と前記大腿骨トライアルインプラント(200)との間に形状嵌合(S)を生成するための少なくとも1つの形状嵌合部(103、103a)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項3】
前記固定要素(102、102a)は、少なくとも1つのスナップ式フック(105、105a)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項4】
前記固定要素(102、102a)は、前記位置決めピン(101、101a)に対して、固定位置と解放位置との間で調整可能に移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項5】
前記締結装置(100、100a)は、前記固定要素(102、102a)を前記固定位置の方向に付勢するばね力を生成するための少なくとも1つのばね要素(106、106a)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項6】
前記位置決めピン(101、101a)のそれぞれは、第1の端部(107、107a)と第2の端部(108a、108a)との間で前後方向に細長く、
前記第1の端部(107、107a)に存在する第1の端部分(109、109a)が、プラグ接続(V)を形成するように、前記大腿骨トライアルインプラント(200)の前記受容ボア(201)の関連する1つの前記受容ボア(201)において前記後方向(P)に受容可能であることを特徴とする、請求項2に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項7】
前記形状嵌合部(103、103a)は、前記前方向(A)に対して、アンダーカット(110、110a)を形成することを特徴とする、請求項6に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項8】
前記大腿骨トライアルインプラント(200)が、前後方向において、前記第1の端部(107、107a)における一方と前記アンダーカット(110、110a)における他方との間で位置決め可能であるように、前記第1の端部(107、107a)が後方に露出され、かつ、前記アンダーカット(110、110a)が前方に露出されていることを特徴とする、請求項7に記載の外科用器具(1、1a)。
【請求項9】
膝関節置換手術で使用するための大腿骨トライアルインプラント(200)であって、
遠位大腿骨(F)に接触するように構成された骨接触面(202)と、
2つの受容ボア(201)であって、それぞれが、請求項1から8のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)の位置決めピン(101、101a)を受容するように構成された前記2つの受容ボア(201)と、
前記外科用器具(1、1a)の固定要素(102、102a)に形状適合接続するように構成された固定部(203)と、を有する、大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項10】
前記骨接触面(202)は、前記大腿骨トライアルインプラント(200)の本体(205)の近位後面(204)上に配置され、前記本体(205)の遠位前面(206)の反対側にあり、
前記本体(205)は、2つの顆部(207)を有し、前記顆部(207)は、内側外側方向において互いに離間され、かつ、それぞれが前後方向に延在し、かつ、それらの前端部(202)において前記本体(205)の接続部(209)に移行し、
前記固定部(203)は、内側外側方向において、2つの前記顆部(207)の間で前記接続部(209)の後端(210)に配置される、請求項9に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項11】
前記固定部(203)は、内側外側方向において、前記2つの受容ボア(201)の間に、及び/又は、近位遠位方向において前記2つの受容ボア(201)から距離をおいて配置されることを特徴とする、請求項9に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項12】
前記固定部(203)は、後方向(P)に対して、アンダーカット(211)を形成することを特徴とする、請求項9に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項13】
前記2つの受容ボア(201)のうちの少なくとも1つが、止まり穴(212)として設計されることを特徴とする、請求項9に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
【請求項14】
膝関節置換術に使用するための外科用器具システム(10、10a)であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)と、
請求項9から13のいずれか一項に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)であって、前記大腿骨トライアルインプラント(200)に前記外科用器具(1、1a)が開放可能に締結されている、前記大腿骨トライアルインプラント(200)と、を備え、
前記外科用器具(1、1a)の位置決めピン(101、101a)と前記大腿骨トライアルインプラント(200)の前記受容ボア(201)とは互いに相補的に設計され、前記位置決めピン(101、101a)は前記後方向(P)に沿って前記受容ボア(201)に少なくとも部分的に差し込まれており、
前記外科用器具(1、1a)の固定要素(102、102a)及び前記大腿骨トライアルインプラント(200)の前記固定部(203)は、形状嵌合(S)を生成するように互いに調整されており、前記外科用器具(1、1a)は、前記前方向(A)に、前記形状嵌合(S)を介して前記大腿骨トライアルインプラント(200)に固定されている、外科用器具システム(10、10a)。
【請求項15】
異なるサイズの複数の大腿骨トライアルインプラント(200)が存在し、前記大腿骨トライアルインプラント(200)の全てにおいて、前記受容ボア(201)の両方は、その中心長手方向軸に対して、それぞれの前記大腿骨トライアルインプラント(200)の近位最外点(DP)から同一の近位遠位方向における距離(11)をおいて配置され、前記大腿骨トライアルインプラント(200)の各々の前記受容ボア(201)は互いから、前記中心長手方向軸に対して、同一の近位遠位方向における距離(12)をおいて配置されることを特徴とする、請求項14に記載の外科用器具システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
ガイド装置300は円弧の形状を有することができ、その結果、締結装置100、100aは、さらなる締結装置に対して案内された態様で旋回可能に移動可能である。このようにして、ガイド平面における脛骨切断ブロックの傾斜を調整することができる。ガイド平面は矢状方向を有し、従って、前後方向及び近位遠位方向の広がりを有する。2つの締結装置がそのまわりに案内装置によって互いに対して旋回可能に移動可能である旋回軸は、矢状ガイド平面内で機械的脛骨軸と交差することが好ましい。前記傾斜は、後方勾配又は前方勾配とも呼ばれる。脛骨切断ブロックの傾斜(以下、略して勾配)の調整可能性は、一方では手術前に確立されたパラメータへの適応を可能にする。他方では、脚の実際の屈曲又は伸展位置をガイド装置の可動性によって考慮し、補償することができる。それによって、勾配の調整が同時に、脛骨切断ブロックの近位遠位方向における位置、いわゆる脛骨切断高さの望ましくない変化をもたらさないことを確実にすることが可能である。
以下の項目は、出願当初の特許請求の範囲に記載の範囲である。
(項目1)
膝関節置換術に使用するための外科用器具(1、1a)であって、
遠位大腿骨(F)に取り付けられた大腿骨トライアルインプラント(200)に解放可能に締結するように構成された締結装置(100、100a)を備え、
前記締結装置(100、100a)は、2つの位置決めピン(101、101a)を有し、前記位置決めピン(101、101a)は内側外側方向において互いに離間して配置されており、かつ、前記締結装置(100、100a)を位置決めするために、前記トライアルインプラント(200、200a)の前記位置決めピン(101、101a)と相補的な2つの受容ボア(201、201a)に後方向(P)に差し込むことができるように設計されており、
前記締結装置(100、100a)は、前記締結装置(100、100a)を前方向(A)に形状嵌合式に前記トライアルインプラント(200)に固定するための少なくとも1つの固定要素(102、102a)を備える、
外科用器具(1、1a)。
(項目2)
前記固定要素(102、102a)は、前記締結装置(100、100a)と前記トライアルインプラント(200)との間に形状嵌合(S)を生成するための少なくとも1つの形状嵌合部(103、103a)を備えることを特徴とする、項目1に記載の外科用器具(1)。
(項目3)
前記固定要素(102、102a)は、少なくとも1つのスナップ式フック(105、105a)を備えることを特徴とする、項目1又は2に記載の外科用器具(1、1a)。
(項目4)
前記固定要素(102、102a)は、前記位置決めピン(101、101a)に対して、固定位置と解放位置との間で調整可能に移動可能であることを特徴とする、項目1から3のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)。
(項目5)
前記締結装置(100、100a)は、前記固定要素(102、102a)を前記固定位置の方向に付勢するばね力を生成するための少なくとも1つのばね要素(106、106a)、特にねじりばね要素又は梁ばね要素(104、104a)を備えることを特徴とする、項目4に記載の外科用器具(1、1a)。
(項目6)
前記位置決めピン(101、101a)のそれぞれは、第1の端部(107、107a)と第2の端部(108a、108a)との間で前後方向に細長く、
前記第1の端部(107、107a)に存在する第1の端部分(109、109a)が、プラグ接続(V)を形成するように、前記トライアルインプラント(200)の前記受容ボア(201)の関連する1つの前記受容ボア(201)において前記後方向(P)に受容可能であることを特徴とする、項目1から5のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)。
(項目7)
前記形状嵌合部(103、103a)は、前記前方向(A)に対して、アンダーカット(110、110a)を形成することを特徴とする、項目2に従属する項目6に記載の外科用器具(1、1a)。
(項目8)
前記トライアルインプラント(200)が、前後方向において、前記第1の端部(107、107a)における一方と前記アンダーカット(110、110a)における他方との間で位置決め、特にクランプ可能であるように、前記第1の端部(107、107a)が後方に露出され、かつ、前記アンダーカット(110、110a)が前方に露出されていることを特徴とする、項目7に記載の外科用器具(1、1a)。
(項目9)
膝関節置換手術で使用するための大腿骨トライアルインプラント(200)であって、
遠位大腿骨(F)に接触するように構成された骨接触面(202)と、
2つの受容ボア(201)であって、それぞれが、外科用器具(1、1a)、特に項目1から8のいずれか一項に記載の前記外科用器具(1、1a)の位置決めピン(101、101a)を受容するように構成された前記2つの受容ボア(201)と、
前記外科用器具(1、1a)の固定要素(102、102a)に形状適合接続するように構成された固定部(203)と、を有する、大腿骨トライアルインプラント(200)。
(項目10)
前記骨接触面(202)は、前記トライアルインプラント(200)の本体(205)の近位後面(204)上に配置され、前記本体(205)の遠位前面(206)の反対側にあり、
前記本体(205)は、2つの顆部(207)を有し、前記顆部(207)は、内側外側方向において互いに離間され、かつ、それぞれが前後方向に延在し、かつ、それらの前端部(202)において前記本体(205)の接続部(209)に移行し、
前記固定部(203)は、内側外側方向において、2つの前記顆部(207)の間で前記接続部(209)の後端(210)に配置される、項目9に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
(項目11)
前記固定部(203)は、内側外側方向において、前記2つの受容ボア(201)の間に、及び/又は、近位遠位方向において前記2つの受容ボア(201)から距離をおいて配置されることを特徴とする、項目9又は10に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
(項目12)
前記固定部(203)は、後方向(P)に対して、アンダーカット(211)を形成することを特徴とする、項目9から11のいずれか一項に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
(項目13)
前記2つの受容ボア(201)のうちの少なくとも1つ、好ましくはそれぞれが、止まり穴(212)として設計されることを特徴とする、項目9から12のいずれか一項に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)。
(項目14)
膝関節置換術に使用するための外科用器具システム(10、10a)であって、
項目1から8のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1a)と、
項目9から13のいずれか一項に記載の大腿骨トライアルインプラント(200)であって、前記大腿骨トライアルインプラント(200)に前記外科用器具(1、1a)が開放可能に締結されている、前記大腿骨トライアルインプラント(200)と、を備え、
前記位置決めピン(101、101a)と前記受容ボア(201)とは互いに相補的に設計され、前記位置決めピン(101、101a)は前記後方向(P)に沿って前記受容ボア(201)に少なくとも部分的に差し込まれており、
前記固定要素(102、102a)及び前記固定部(203)は、形状嵌合(S)を生成するように互いに調整されており、前記外科用器具(1、1a)は、特に前記前方向(A)に、前記形状嵌合(S)を介して前記大腿骨トライアルインプラント(200)に固定されている、外科用器具システム(10、10a)。
(項目15)
異なるサイズの複数の大腿骨トライアルインプラント(200)が存在し、前記大腿骨トライアルインプラント(200)の全てにおいて、前記受容ボア(201)の両方は、特にその中心長手方向軸に対して、それぞれの前記大腿骨トライアルインプラント(200)の近位最外点(DP)から同一の近位遠位方向における距離(11)をおいて配置され、前記大腿骨トライアルインプラント(200)の各々の前記受容ボア(201)は互いから、特に、前記中心長手方向軸に対して、同一の近位遠位方向における距離(12)をおいて配置されることを特徴とする、項目14に記載の外科用器具システム。
【外国語明細書】