(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001598
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231227BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 643A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100353
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 崇広
(72)【発明者】
【氏名】山崎 修
【テーマコード(参考)】
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA12
5F131BA14
5F131BA37
5F131CA12
5F131CA15
5F131CA18
5F131EA06
5F131EA24
5F131EB32
5F131EB34
5F131EB35
5F131EB37
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5F131EB57
5F131KB12
5F131KB45
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157DB02
5F157DB51
(57)【要約】
【課題】基板面における処理液の再付着を抑止し、基板品質を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る基板処理装置は、基板を回転させる回転テーブルと、基板の外周に当接して基板を把持することで基板を回転テーブルに固定する複数の固定部材と、を備え、固定部材は、回転テーブルの回転軸方向から見た場合に、基板と当接する側に曲面を有し、回転テーブルの回転軸方向から見た場合に、曲面の端部と繋げて形成され、かつ、基板と当接する側から離れる第1の方向に直交する方向の幅が、曲面との境界から第1の方向に向かって連続的に縮小する縮小部を有し、回転テーブルの回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合に、頂部に第1の方向に向かって下降傾斜する第1の傾斜面を有し、曲面上に形成され、基板が把持された状態で頂部の頂面と基板の上面とが同一平面上にあるように基板を支持する支持部を有する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させる回転テーブルと、
前記基板の外周に当接して前記基板を把持することで前記基板を前記回転テーブルに固定する複数の固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、
前記回転テーブルの回転軸方向から見た場合に、前記基板と当接する側に曲面を有し、
前記回転テーブルの回転軸方向から見た場合に、前記曲面の端部と繋げて形成され、かつ、前記基板と当接する側から離れる第1の方向に直交する方向の幅が、前記曲面との境界から前記第1の方向に向かって連続的に縮小する縮小部を有し、
前記回転テーブルの回転軸方向に直交し、かつ、前記第1の方向に直交する方向から見た場合に、頂部に前記第1の方向に向かって下降傾斜する第1の傾斜面を有し、
前記曲面上に形成され、前記基板が把持された状態で前記頂部の頂面と当該基板の上面とが同一平面上にあるように前記基板を支持する支持部を有する、基板処理装置。
【請求項2】
基板を回転させる回転テーブルと、
前記基板の外周に当接して前記基板を把持することで前記基板を前記回転テーブルに固定する複数の固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、頂部と、前記頂部を保持する基部と、前記基板を支持する支持部とを有し、
前記頂部は、
前記回転テーブルの回転軸方向から見た場合に、前記基板と当接する側に曲面を有し、
前記回転テーブルの回転軸方向から見た場合に、前記曲面の端部と繋げて形成され、かつ、前記基板と当接する側から離れる第1の方向に直交する方向の幅が、前記曲面との境界から前記第1の方向に向かって連続的に縮小する縮小部を有し、
前記回転テーブルの回転軸方向に直交し、かつ、前記第1の方向に直交する方向から見た場合に、前記第1の方向に向かって下降傾斜する第1の傾斜面を有し、
前記支持部は、前記基板が把持された状態で前記頂部の頂面と当該基板の上面とが同一平面上にあるように前記基板を支持する、基板処理装置。
【請求項3】
前記回転テーブルの回転軸方向に直交し、かつ、前記第1の方向に直交する方向から見た場合に、
前記頂部は、前記基板を支持する側に水平面を有し、
前記第1の傾斜面は、前記水平面の端部から前記第1の方向に向かって下降傾斜する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1の方向における前記第1の傾斜面の長さが、前記第1の方向における前記頂部の長さの半分以上である、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記固定部材は、前記第1の方向に向かって前記幅が連続的に縮小する縮小部の向きと、前記基板に供給される処理液の飛散方向とが平行となるように設けられる、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記固定部材は、前記回転テーブルの回転軸方向に直交し、かつ、前記第1の方向に直交する方向から見た場合に、前記第1の傾斜面の端部から前記第1の方向に向かって下降傾斜する第2の傾斜面をさらに有する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハなどの基板に対して薬液処理もしくは洗浄処理を実行する基板処理装置は、処理の均一性や再現性の観点から、基板を1枚ずつ処理する枚葉方式が広く採用されている。枚葉方式の基板処理装置は、基板を回転テーブルに固定し、基板中心に直交する軸を回転軸として基板を回転させ、基板の中心部に処理液(例えば、薬液や純水など)を流し、遠心力により処理液を基板のエッジに向けて広がらせることで、処理液を基板面に供給し、基板面を処理する。
【0003】
このような基板処理装置は、基板を回転テーブルに固定するため、基板を把持してチャックするチャック機構を備えている。チャック機構は、基板のエッジを把持するためのチャックピン(固定部材)が、基板の周方向に沿って配置されるように複数設けられている。チャックピンは、基板の周方向に沿った複数の位置において、基板のエッジをそれぞれ把持することで、基板を回転テーブルに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した基板処理装置では、遠心力により広がった処理液は、基板のエッジから剥離して、回転テーブルの周囲を覆うカップの内周面によって受けられる。しかしながら、基板のエッジを把持するチャックピンに当たった処理液は、チャックピンから剥離した後、回転テーブルと共に回転するチャックピンによって生じた気流の攪乱によりミスト化して舞い上がり、基板面に再付着する場合がある。このような再付着したミストは、基板面においてウォータマーク(水シミ)になってしまい、製品の不良の原因となる。したがって、ミスト化した処理液の基板面への再付着を抑止することは、製品の品質の向上において非常に重要なものである。
【0006】
上記したように、ミスト化した処理液の基板面への再付着は、チャックピンにより生じた気流の攪乱によって発生するが、気流の攪乱のそもそもの要因は、基板の上面を流れる処理液の流れにあるものと考えられる。具体的には、回転テーブルと共に回転しているチャックピンに向かって基板の上面から流れる処理液の流れが気体の流れ(気流)を発生させ、この気流がチャックピンから剥離した際に、チャックピンの後端付近に後流(気流が渦を巻いた状態)が形成され、それによって気流の攪乱が生じる。
【0007】
図9は、チャックピンによって生じる気流の攪乱を説明するための図である。ここで、
図9は、基板を把持し、回転テーブルと共に回転した状態のチャックピンの平面視を模式的に示す。回転テーブルを回転させ、処理液を基板面に供給して基板面を処理した場合、例えば、
図9に示すように、基板Wの上面において基板W側からチャックピンに向かって流れる処理液の流れが形成される。ここで、基板Wの上面においてチャックピンに向かって流れる処理液は、周囲の気体を巻き込んで流れることとなる。すなわち、回転テーブルの回転中、
図9に示すような基板W側からチャックピンに向かう気流が形成されることとなる。なお、以下では、上記した処理液及び気体の流れについて、流れのもとを上流、流れる先を下流と記す。
【0008】
そして、処理液と共に流れる気体(気流)がチャックピンに当たると、チャックピンが受けた処理液及び気流は、
図9の実線矢印に示すように、チャックピンの側面に沿いながら流れ、剥離位置においてチャックピンから剥離する。ここで、剥離位置間の面の幅dが所定の幅を有すると、チャックピンの後端の下流側に気流が流れない領域R2が形成される。この領域R2は、気流が流れる領域と比べて負圧の状態(圧力が低下している状態)となり、周囲から気流が流れ込むことで渦の流れ(後流)が形成され、気流の攪乱が発生する。
【0009】
このように、回転テーブルの回転中、処理液の流れが気流を生み、この気流がチャックピンに当たることで、気流の攪乱が発生する。この気流の攪乱が、チャックピンに付着した処理液が剥離してミスト化した処理液ミストを基板の上面側に飛散させ、基板面に再付着させる。
【0010】
この現象は、基板の上面に供給された処理液(洗浄液も含む)を振り切って、基板の上面を乾燥させる乾燥工程において顕著に現れる。乾燥工程では、基板の上面の処理液を振り切るため、1500rpm(revolutions per minute)~2000rpmの高速回転で回転する。この時、チャックピンの後端側で舞い上がった処理液のミストが、乾燥処理が終了した基板の上面に付着すると、基板の上面でウォータマークが形成されることになる。
【0011】
なお、このような問題に対しては、チャックピン自体を縮小することで、チャックピンに当たる処理液の量を減らすと同時に気流攪乱を最小限にする対策が行われているが、チャックピン自体を縮小した場合、基板を固定する機構自体が弱くなるため、一定の限界がある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、基板面における処理液の再付着を抑止し、基板品質を向上させることができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一態様に係る基板処理装置は、基板を回転させる回転テーブルと、前記基板の外周に当接して前記基板を把持することで前記基板を前記回転テーブルに固定する複数の固定部材と、を備え、前記固定部材は、前記回転テーブルの回転軸方向から見た場合に、前記基板と当接する側に曲面を有し、前記回転テーブルの回転軸方向から見た場合に、前記曲面の端部と繋げて形成され、かつ、前記基板と当接する側から離れる第1の方向に直交する方向の幅が、前記曲面との境界から前記第1の方向に向かって連続的に縮小する縮小部を有し、前記回転テーブルの回転軸方向に直交し、かつ、前記第1の方向に直交する方向から見た場合に、頂部に前記第1の方向に向かって下降傾斜する第1の傾斜面を有し、前記曲面上に形成され、前記基板が把持された状態で前記頂部の頂面と当該基板の上面とが同一平面上にあるように前記基板を支持する支持部を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、基板面における処理液の再付着を抑止し、基板品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、第1の実施形態に係るチャックピンの概略構成を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、第1の実施形態に係るチャックピンの概略構成を示す上面図である。
【
図3A】
図3Aは、第1の実施形態に係る回転テーブルの概略構成を示す上面図である。
【
図3B】
図3Bは、第1の実施形態に係るチャックピンの概略構成を示す断面図である。
【
図3C】
図3Cは、第1の実施形態に係るチャックピンの概略構成を示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、第1の実施形態に係る第1の傾斜面の寸法を説明するための図である。
【
図4B】
図4Bは、第1の実施形態に係る第1の傾斜面の寸法を説明するための図である。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施形態に係るチャックピンの設置方向を説明するための図である。
【
図5B】
図5Bは、第1の実施形態に係るチャックピンの設置方向を説明するための図である。
【
図6A】
図6Aは、変形例1に係るチャックピンの概略構成を示す上面図である。
【
図6B】
図6Bは、変形例1に係るチャックピンの概略構成を示す断面図である。
【
図7A】
図7Aは、変形例2に係るチャックピンの概略構成を示す斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、変形例2に係る第2の傾斜面の寸法を説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは、第2の実施形態に係るチャックピンの概略構成を示す斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、第2の実施形態に係るチャックピンの概略構成を示す上面図である。
【
図9】
図9は、チャックピンによって生じる気流の攪乱を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、本願の開示する基板処理装置は、以下の実施形態により限定されるものではない。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、中央に貫通孔2aを有するベース体2と、ベース体2の上方に回転可能に設けられた回転テーブル3と、回転テーブル3の駆動源となるモータ4と、回転テーブル3を囲む環状の液受け部5と、モータ4を制御する制御装置6とを備えている。
【0018】
回転テーブル3は、モータ4からの動力を伝える円筒状の伝動体3aと、各部を覆うカバー3bと、伝動体3aの上端側に固定されたリング状の回転プレート3cとを備えている。さらに、回転テーブル3は、基板Wを把持する複数(例えば、6個)のクランプ部3dと、各クランプ部3dの下部に個別に設けられた複数(例えば、6個)の子歯車3eと、それらに噛み合う親歯車3fとを備えている。また、ベース体2には、基板把持を解除するための把持解除機構3gが固定配置される。
【0019】
モータ4は、筒状の固定子4aと、固定子4a内に回転可能に挿入された筒状の回転子4bにより構成されている。固定子4aはベース体2の下面に取り付けられており、回転子4bの上端側はベース体2の貫通孔2a内に位置している。モータ4は、回転テーブル3を回転させるための駆動源の一例である。モータ4は、電気的に制御装置6に接続されており、制御装置6の制御に応じて駆動される。
【0020】
液受け部(カップ)5は、基板Wから飛散した処理液や流れ落ちた処理液を受け取る環状の可動液受け部5aと環状の固定液受け部5bとにより構成されている。液受け部5は、回転テーブル3を囲むように形成されている。可動液受け部5aは、例えば、シリンダなどの昇降機構(図示せず)により上下方向に移動することが可能に構成されている。固定液受け部5bは、ベース体2の上面に固定されており、固定液受け部5bの底面には処理液(例えば、薬液や純水など)を回収する配管5cが接続されている。
【0021】
伝動体3aは、中心軸がモータ4の回転軸に一致するようにモータ4の回転子4bの上端に固定されている。このため、伝動体3aは、モータ4の駆動によって回転することになる。伝動体3a及びモータ4の回転中心軸が基板回転軸A1となる。
【0022】
伝動体3a及び回転子4bは中空軸であり、これら伝動体3a及び回転子4bの内部空間には、非回転の保持筒11が設けられている。保持筒11の上部には、ノズルヘッド12が設けられており、ノズルヘッド12には、各クランプ部3dにより把持された基板Wの裏面(
図1中の下面)に向けて処理液(例えば、薬液や純水など)を吐出するノズル12aが形成されている。基板Wの裏面で反射した処理液の一部は、排出配管13を通って外部に排出される。また、回転テーブル3の上方には、基板Wの表面(
図1中の上面)に処理液を供給するノズル12bが設けられている。
【0023】
カバー3bは、下面開口のケース状に形成されており、回転プレート3cと共に回転するように回転プレート3cに取り付けられている。カバー3bは、伝動体3aの回転と共に回転する部品を覆って乱流の発生を防止する。カバー3bには、ノズルヘッド12のノズル12aから吐出された処理液を上部に通過させるための開口部14と、クランプ部3dごとに貫通孔15が形成されている。
【0024】
回転プレート3cは、各クランプ部3dを個別に保持する複数の支持筒部16を有している。回転プレート3cは、伝動体3aの外周面に固定されて一体となっており、伝動体3aと共に回転する。このため、回転プレート3cが保持する各クランプ部3dも伝動体3aの回転中心軸、すなわち基板回転軸A1を中心として回転プレート3cと共に回転する。なお、各支持筒部16は、円板状の回転プレート3cの外周側で基板回転軸A1を中心とする円上に等間隔で設けられている。
【0025】
クランプ部3dは、基板Wに接触するチャックピン(固定部材)21と、チャックピン21を保持して回転する回転板22と、回転板22を保持して回転するピン回転体23とを備えている。チャックピン21は、ピン回転体23の回転中心軸(基板回転軸A1に平行な回転中心軸)、すなわちピン回転軸A2から一定距離偏心させて回転板22上に固定されている。チャックピン21は、ピン回転体23の回転に応じて、ピン回転軸A2に対し偏心して回転する。ここで、本実施形態に係るチャックピン21は、基板Wへの処理液の再付着を抑止するように形成されているが、この点については、後に詳述する。
【0026】
ピン回転体23は、回転プレート3cの支持筒部16によって回転することが可能に保持されている。ピン回転体23の下端には子歯車3eが固定されており、基板回転軸A1を回転軸とする親歯車3fに噛み合っている。親歯車3fは、伝動体3aに固定された軸受(例えば、ベアリング)24に設けられ、伝動体3a周りに回転することが可能になっている。
【0027】
これにより、クランプ部3dに対して相対的に親歯車3fが基板回転軸A1周りに回転すると、親歯車3fに噛み合う各子歯車3eが回転し、クランプ部3dごとのピン回転体23が全て同期してピン回転軸A2周りに回転する。親歯車3fが基板Wを把持するための回転方向に回転した場合には、各クランプ部3dの個々のチャックピン21が全て同期して偏心回転し、基板Wの周端面(外周面)に当接して、基板Wの中心を基板回転軸A1上にセンタリングしつつ基板Wを把持する。一方、親歯車3fが把持するための回転方向の逆方向に回転した場合には、各クランプ部3dの個々のチャックピン21が前述と逆方向に全て同期して回転し、基板Wの外周面から離れ、把持状態の基板Wを開放する。このように各クランプ部3dを動作させることで、基板Wの中心を基板回転軸A1上に位置付けるセンタリングを行って基板Wを把持するチャック機構が実現されている。
【0028】
親歯車3fの下方には、複数(例えば、2本)のクランプバネ25が回転プレート3cとの間で接続されている。親歯車3fは、各クランプバネ25により、基板Wを把持するための回転方向に付勢されている。これにより、親歯車3fと噛み合っている各子歯車3e及び各チャックピン21は、基板Wを把持するための回転方向に均一に付勢されている。なお、クランプバネ25の一端は、親歯車3fに固定されたバネポスト(図示せず)に掛けられており、その他端は回転プレート3cに固定されたバネポスト(図示せず)に掛けられている。このようなクランプバネ25は、基板回転軸A1を中心として対向する位置に設けられている。各クランプバネ25のバネ力が親歯車3fから各子歯車3eに伝えられ、各チャックピン21がピン回転軸A2に対して偏心回転し、基板Wの周端面を押さえつけることで基板Wを把持する。
【0029】
このように、親歯車3fは、回転プレート3cに対し基板回転軸A1を中心として個別に回転する。また、各チャックピン21で基板Wを把持している状態では、クランプバネ25によって回転プレート3cと親歯車3fとは係止され(両者がバネにより一体になっており)、親歯車3fは回転プレート3cと共に回転する。つまり、親歯車3fは、基板回転軸A1を中心として回転プレート3cと共に、及び個別に回転可能に設けられている。
【0030】
把持解除機構3gは、
図1に示すように、シリンダ31と、停止ピン32とを有している。シリンダ31は、上下に移動するシリンダ軸31aを有している。停止ピン32は、シリンダ軸31aの先端に設けられている。シリンダ31のシリンダ軸31aが上昇すると、シリンダ軸31aの先端の停止ピン32も上昇し、停止ピン32で親歯車3fが係止される。親歯車3fが動かない状態で回転プレート3cが、基板Wを開放する方向に回転すると、回転プレート3cと共に回転する各クランプ部3dは、回転プレート3cの回転方向と同じ方向に親歯車3fの周りを移動する。このとき、各チャックピン21は、基板Wを把持するときの方向と逆方向にピン回転軸A2に対して偏心回転し、基板Wの周端面から離れる。なお、シリンダ31は、制御装置6に電気的に接続されており、制御装置6による制御に応じて駆動する。
【0031】
以下、第1の実施形態に係るチャックピン21の詳細について説明する。
図2Aは、第1の実施形態に係るチャックピン21の概略構成を示す斜視図である。
図2Bは、第1の実施形態に係るチャックピン21の概略構成を示す上面図である。ここで、
図2Aに示す上側及び下側とは、チャックピン21が回転板22に支持された状態での上下方向を意味する。また、
図2A及び
図2Bに示す前側及び後側とは、チャックピン21が基板Wを把持した状態で基板Wと当接する側を前側とした場合の前後方向を意味する。第1の実施形態に係るチャックピン21は、基板Wの外周に当接して基板Wを把持することで基板Wを回転テーブル3に固定する固定部材であり、例えば、
図2A及び
図2Bに示すように、平視面で涙滴形状を成す柱形状で形成され、頂部211と基部212とを有する。
【0032】
頂部211は、
図2Aに示すように、チャックピン21が回転板22に支持された状態でのチャックピン21の上側に部分である。具体的には、頂部211は、チャックピン21が基板Wを支持した際に供されるチャックピン21の上端の部分である。基部212は、
図2Aに示すように、チャックピン21が回転板22に支持された状態で頂部211よりも下側の部分であり、下端が回転板22に接続される部分である。
【0033】
図2A及び
図2Bに示すように、チャックピン21は、回転テーブル3の回転軸方向から見た場合に(平視面で見た場合に)、基板Wと当接する側(図中の前側)に曲面21aを有し、回転テーブル3の回転軸方向から見た場合に、曲面21aの端部と繋げて形成され、かつ、基板Wと当接する側から離れる第1の方向に直交する方向の幅が、曲面21aとの境界から第1の方向に向かって連続的に縮小する縮小部21bを有する。また、チャックピン21は、回転テーブル3の回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合に(側面から見た場合に)、頂部211に第1の方向に向かって下降傾斜する第1の傾斜面21cを有し、曲面21a上に形成され、基板Wが把持された状態で頂部211の頂面21eと当該基板Wの上面とが同一平面上にあるように基板Wを支持する支持部21dを有する。
【0034】
チャックピン21は、
図2A及び
図2Bに示す前側で基板Wと当接するように、回転板22に保持される。すなわち、チャックピン21は、図中の前側で基板Wを支持するように、基部212が回転板22に接続される。
図3Aは、第1の実施形態に係る回転テーブル3の概略構成を示す上面図である。例えば、回転テーブル3は、
図3Aに示すように、6個のチャックピン21を保持する。各チャックピン21は、それぞれが保持された位置で、
図2A及び
図2Bに示す前側に形成された支持部21dにより基板Wを支持する。すなわち、各チャックピン21は、親歯車3fが基板Wを把持するための回転方向に回転した場合に、支持部21dが基板Wに当接することで、基板Wを把持する。
【0035】
図3Bは、第1の実施形態に係るチャックピン21の概略構成を示す断面図である。ここで、
図3Bは、
図3AにおけるA-A断面の断面図を示す。
図3Bに示すように、チャックピン21は、頂部211に頂面21eと第1の傾斜面21cとを有する。頂面21eは、水平面であり、基板Wを支持する側(前側)に形成されている。具体的には、頂面21eは、第1の傾斜面と比較して、前側に形成されている。第1の傾斜面21cは、基板Wを支持する側から離れる方向D1(第1の方向)に向かって下降傾斜する傾斜面である。具体的には、第1の傾斜面21cは、頂面21eの端部(
図2に示す後側の端部)から方向D1に向かって下降傾斜する傾斜面である。より具体的には、第1の傾斜面21cは、頂面21eの方向D1側に形成される傾斜面であり、方向D1に向かって、チャックピン21の後側端部まで連続的に下降する傾斜面である。すなわち、第1の傾斜面21cは、方向D1側に向かうにつれて、
図2Aに示す下側に向かって連続的に傾斜する傾斜面である。なお、第1の実施形態に係る頂部211は、
図3Bに示すように、頂面21eから第1の傾斜面21cの後側の端部までの鉛直方向の部分を意味する。
【0036】
ここで、第1の傾斜面21cは、
図3Bに示すチャックピン21の方向D1における中央付近から傾斜が始まるように形成されてもよく、或いは、方向D1における中央よりも後側(D1方向側)から傾斜が始まるように形成されてもよい。例えば、第1の傾斜面21cは、チャックピン21(頂部211)の方向D1における中央付近から方向D1に向かって、チャックピン21の後側端部まで連続的に下降する傾斜面として形成される。或いは、第1の傾斜面21cは、チャックピン21(頂部211)の方向D1における中央よりも後側の位置から方向D1に向かって、チャックピン21の後側端部まで連続的に下降する傾斜面として形成される。なお、上記した例はあくまでも一例であり、第1の傾斜面21cは、チャックピン21(頂部211)の方向D1における中央よりも前側の位置から方向D1に向かって、チャックピン21の後側端部まで連続的に下降する傾斜面として形成されてもよい。
【0037】
支持部21dは、頂部211に設けられている。具体的には、支持部21dは、頂面21eと繋がる面(
図3Bにおいて頂面21eと繋がる垂直面)と曲面21aに繋がる面(
図3Bにおいて曲面21aと繋がる水平面)とから構成され、曲面21aの上方に形成されている。すなわち、支持部21dは、基板Wの側面側の外周と当接する垂直面と、基板Wの裏面側の外周が載置される水平面とから形成される。ここで、支持部21dにおける水平面は、頂面21eから基板Wの厚み分下側に形成されている。換言すると、支持部21dにおける水平面は、
図2Aに示す上下方向において、頂面21eの高さより基板Wの厚み分低い位置に形成されている。支持部21dの水平面が上記したように形成されることで、支持部21dは、
図3Bに示すように、頂面21eと基板Wの上面とが同一平面上にあるように基板Wを支持することができる。なお、ここでいう同一平面は、基板Wの上面を流れる処理液の流れを阻害しない、及び/又は、基板上を流れる処理液がチャックピンに当たった場合でもその処理液をミスト化させない程度の段差がある状態も含む。
【0038】
図3Cは、第1の実施形態に係るチャックピン21の概略構成を示す断面図である。ここで、
図3Cは、
図3BにおけるB-B断面の断面図を示す。すなわち、
図3Cの断面図は、支持部21dを含まないチャックピン21の水平方向の断面を示す平面図である。
図3Cに示すように、チャックピン21における曲面21aは、水平方向の断面に曲線として示される。すなわち、曲面21aは、水平方向の曲線を鉛直方向に連続させることで形成される曲面である。この曲面21aは、
図3Bに示すように、チャックピン21における前側(基板Wを支持する側)の支持部21dの下部に形成されている。すなわち、曲面21aは、チャックピン21の前側の側面における支持部21dの下部に形成されている。
【0039】
また、
図3Cに示すように、チャックピン21は、方向D1に直交する方向において、幅が、方向D1に向かって連続的に縮小する縮小部21bを有する。ここで、縮小部21bは、方向D1に直交する方向の幅の縮小が開始される位置(曲面21aの終点)からチャックピン21の後側端部までの領域R1の部分を意味する。例えば、チャックピン21は、
図3Cに示すように、曲面21aの端部(曲面21aの終点)から離れるにしたがって側面が相互に近づいていき、側面が接したチャックピン21の後側端部213までの領域である縮小部21bを有する。
【0040】
このように、第1の実施形態に係るチャックピン21は、曲面21aと縮小部21bとを含む水平方向の断面が、例えば、涙滴形状となるように、形成される。
【0041】
第1の実施形態に係る基板処理装置1は、上記のように構成されたチャックピン21を有することで、処理液の基板Wへの再付着を抑止し、基板品質を向上させることができる。具体的には、チャックピン21は、縮小部21b及び第1の傾斜面21cが形成されることで、処理液の飛散方向に縮小する形状となり、チャックピン21の後側において気流の攪乱が発生することを低減することができる。具体的には、チャックピン21は、処理液の飛散方向に縮小する形状とすることで、チャックピン21の後側端部213の幅(面)が小さくなるため、チャックピン21の後側端部213の下流側で発生する負圧になる領域を小さくすることができる。すなわち、チャックピン21では、周りから気流を取り込んで渦の気流が形成される領域が少なくなり、結果として気流の攪乱(渦)の発生を抑えることができる。その結果、チャックピン21は、チャックピン21から剥離した処理液のミストが飛散する(舞い上がる)ことを抑制することができる。すなわち、チャックピン21は、基板W側に飛散する処理液のミストを低減することができ、基板Wへの処理液の再付着を抑止し、基板品質を向上させることができる。このような基板処理装置1によって処理された基板Wは、エッジぎりぎりまで利用可能な品質の高い基板となる。
【0042】
また、上記構成のチャックピン21は、液受け部(カップ)5方向への処理液の排出をスムーズにして、処理液のミスト化を抑え、処理液の基板Wへの再付着を抑止する。例えば、チャックピン21は、第1の傾斜面21cが形成されることで、チャックピン21から剥離した処理液を下方向に排出することができる。すなわち、チャックピン21は、剥離した処理液が液受け部(カップ)5の内面に向かうように、処理液を排出することができる。
【0043】
また、例えば、チャックピン21は、前側に曲面21aが形成され、後側に縮小部21bが形成されることで、基板Wの上面或いは下面からチャックピン21に到達した処理液を、液受け部(カップ)5へ速やかに排出することができる。すなわち、チャックピン21の曲面21a及び縮小部21bは、チャックピン21に付着した処理液が基板Wの上面に飛散することなく、速やかに液受け部(カップ)5へ排出する。
【0044】
また、例えば、チャックピン21は、基板Wが支持された状態で、頂面21eが基板Wの上面と同一平面上にあるように形成されることで、基板Wの上面を流れてきた処理液がチャックピン21の頂部211に衝突して飛散することを抑止することができる。すなわち、チャックピン21は、基板Wの上面を流れる処理液の流れを阻害することなく、処理液の排出をスムーズにすることができる。
【0045】
次に、第1の傾斜面21cの寸法について、
図4A及び
図4Bを用いて説明する。
図4A及び
図4Bは、第1の実施形態に係る第1の傾斜面21cの寸法を説明するための図である。ここで、
図4A及び
図4Bは、
図3AにおけるA-A断面の断面図を示す。例えば、第1の傾斜面21cは、
図4Aに示す第1の傾斜面21cの方向D1の長さ「a」が「1mm」となるように形成される。また、例えば、第1の傾斜面21cは、
図4Aに示す第1の傾斜面21cの傾斜角度「θ」(基板Wの上面を「0°」とした場合の角度)が「5°~80°」の範囲内となるように形成されてもよい。
【0046】
ここで、チャックピン21は、方向D1における第1の傾斜面21cの長さ「a」を、方向D1におけるチャックピン21全体(頂部211)の長さの半分以上とすることで、気流の攪乱をより抑えることができる。具体的には、
図4Bに示すように、第1の傾斜面21cの方向D1の長さ「a」を、
図4Bに示すチャックピン21全体(頂部211)の方向D1の長さ「b」の半分以上とする。換言すると、第1の傾斜面21cの後側の端部の高さを変えることなく、長さ「a」をより長くすることで、第1の傾斜面21cの傾斜角度を緩やかにする。例えば、第1の傾斜面21cは、長さ「a」が「1mm~50mm」の範囲内となるように形成されてもよい。
【0047】
例えば、第1の傾斜面21cの傾斜角度が大きすぎる場合、傾斜面上で処理液とともに流れる気流の流れが少なくなり、負圧になりやすくなる。すなわち、第1の傾斜面21c上が、傾斜面の周囲と比べて圧力が低い状態となる。この状態となると、第1の傾斜面21c上では、周囲から気流が取り込まれ、第1の傾斜面21c上で気流の攪乱(渦)が形成される。その結果、第1の傾斜面21cから剥離した処理液のミストが、気流の攪乱によって、基板Wの上面側に飛散することとなる。
【0048】
そこで、上記したように第1の傾斜面21cの傾斜角度を緩やかにすることで、第1の傾斜面21c上で処理液と共に流れる気流の流れを作り、第1の傾斜面21c上において負圧の領域が形成されることを低減して、気流の攪乱の発生を抑制する。その結果、第1の傾斜面21cから剥離した処理液のミストが、基板Wの上面に飛散することを抑制することができる。
【0049】
なお、方向D1における第1の傾斜面21cの長さ「a」及び第1の傾斜面21cの傾斜角度「θ」は、実験やシミュレーション等から最適な数値が決定される。
【0050】
次に、チャックピン21の設置方向について説明する。チャックピン21は、方向D1(方向D1に向かって幅が連続的に縮小する縮小部21bの向き)と、基板Wに供給される処理液の飛散方向とが平行となるように設けられてもよい。
図5A及び
図5Bは、第1の実施形態に係るチャックピン21の設置方向を説明するための図である。ここで、
図5A及び
図5Bは、基板Wを支持した状態のチャックピン21の上面図を示す。すなわち、
図5A及び
図5Bは、親歯車3fが基板Wを把持するための回転方向に回転して、支持部21dが基板Wに当接した状態を示す。
【0051】
図5Aに示すように、例えば、基板Wは、チャックピン21に把持された状態で方向D3(CounterClockWise:CCW方向)に回転されて処理液が供給される。ここで、例えば、基板Wが「500rpm(revolutions per minute)」で回転されると、基板Wの上面を流れる処理液の飛散方向は、
図5Aに示す方向D2となる。このような回転数で基板Wを処理する基板処理装置1では、チャックピン21は、支持部21dが基板Wに当接した状態で方向D1が
図5Aで示す方向となるように、回転板22に保持される。
【0052】
また、例えば、基板Wが「1000rpm」で回転されると、基板Wの上面を流れる処理液の飛散方向は、
図5Bに示す方向D2となる。このような回転数で基板Wを処理する基板処理装置1では、チャックピン21は、支持部21dが基板Wに当接した状態で方向D1が
図5Bで示す方向となるように、回転板22に保持される。
【0053】
なお、
図5A及び
図5Bにおける例は、あくまでも一例であり、方向D1が必ずしも方向D2と平行とならなくてもよい。上述したように、気流の攪乱によって舞い上がった処理液のミストが基板面に再付着する現象は、回転テーブル3を1500rpm~2000rpmの高速回転で回転させる乾燥工程で顕著に現れる。したがって、チャックピン21の設置方向は、乾燥工程時の回転数を考慮して決定されてもよい。すなわち、チャックピン21は、乾燥工程時の回転数において、方向D1(方向D1に向かって幅が連続的に縮小する縮小部21bの向き)と、処理液の飛散方向とが平行となるように設けられ、その他の工程においては、方向D1と処理液の飛散方向とが平行となっていない場合でもよい。
【0054】
なお、基板処理装置1が、基板Wを保持した状態でチャックピン21の向きを変更可能な機構を有する場合には、各工程の回転数に応じてチャックピン21の向きを変更するようにしてもよい。
【0055】
上記したように、チャックピン21は、方向D1(方向D1に向かって幅が連続的に縮小する縮小部21bの向き)と基板Wに供給された処理液が飛散する方向D2とが平行となるように保持されることで、基板W上から剥離する処理液がチャックピン21の側面をスムーズに伝って、排出されるようにすることが可能となる。すなわち、処理液の流れを阻害しないようにすることで、処理液が跳ねることを抑止して、処理液のミストの発生を抑えることができる。
【0056】
(変形例1)
チャックピン21の支持部21dは、上記した形状に限らず、種々の形状で形成することができる。
図6Aは、変形例1に係るチャックピン21の概略構成を示す上面図である。例えば、支持部21dは、頂面21eと繋がる縦方向の面(垂直面)が、
図6Aに示すように、曲面21fで形成されてもよい。すなわち、基板Wの外周面と当接する面が曲面21fで形成されてもよい。なお、支持部21dは、曲面21aと繋がる横方向の面が曲面で形成されてもよい。
【0057】
図6Bは、変形例1に係るチャックピン21の概略構成を示す断面図である。ここで、
図6Bは、上記したA-A断面の断面図である。例えば、支持部21dは、
図6Bに示すように、頂面21eと繋がる縦方向の面と曲面21aと繋がる横方向の面(水平面)とのなす角が鋭角となるように、縦方向の面が傾斜面21gで形成されてもよい。すなわち、基板Wの外周面と当接する面が傾斜面21gで形成されてもよい。なお、支持部21dは、横方向の面が傾斜面で形成されてもよい。
【0058】
(変形例2)
チャックピン21の後側の形状は、第1の実施形態で説明した形状に限らず、種々の形状で形成することができる。
図7Aは、変形例2に係るチャックピン21の概略構成を示す斜視図である。例えば、
図7Aに示すように、チャックピン21は、回転テーブル3の回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合に、第1の傾斜面21cの端部から第1の方向に向かって下降傾斜する第2の傾斜面21hをさらに有することができる。チャックピン21は、後側にさらに第2の傾斜面21hを有することで、第1の傾斜面21cから第2の傾斜面21hへ処理液と共に流れる気流の流れの変化を緩やかにして、気流の攪乱をより抑止することができる。
【0059】
第1の傾斜面21cの後端部で剥離した気流は、第1の傾斜面21cの延長線上に流れることから、例えば、第2の傾斜面21hが頂面21eに対して垂直となるように設けられた場合、第2の傾斜面21hの上部(第1の傾斜面21cとの接続付近)から第2の傾斜面21hに沿って下降する流れが少ない状態となる。すなわち、第2の傾斜面21hの上部は、その周囲の圧力より低い状態となり、負圧の領域が形成される。このように負圧の領域が形成された場合、第2の傾斜面21hの上部で、周囲の気流が取り込まれ、気流の攪乱が形成されてしまい、チャックピン21から剥離する処理液(チャックピンの傾斜面に沿って流れる処理液)のミストが気流の攪乱によって基板W側へ飛散することとなる。
【0060】
そこで、第2の傾斜面21hの傾斜角度を大きくすることで、第1の傾斜面21cを処理液と共に流れる気流が、第2の傾斜面21hにもより流れるようにして、第2の傾斜面21hの上部に負圧の領域が形成するのを抑止する。これにより、気流の攪乱の発生を抑制して、チャックピン21から剥離する処理液のミストが基板W側に飛散するのを抑制する。
【0061】
図7Bは、変形例2に係る第2の傾斜面21hの寸法を説明するための図である。ここで、
図7Bは、上記したA-A断面の断面図を示す。例えば、第2の傾斜面21hは、
図7Bに示す傾斜角度「φ」(鉛直方向を「0°」とした場合の角度)が「1°~80°」の範囲内となるように形成されてもよい。ただし、第2の傾斜面21hの傾斜角度「φ」は、実験やシミュレーション等から最適な数値が決定される。なお、第2の傾斜面21hは、曲面21aの端部(曲面21aの終点)から離れるにしたがって相互に近づいていく縮小部21bの側面が接することで形成される稜線(側面の境界線)である場合も含む。
【0062】
上記したように、第1の実施形態によれば、基板処理装置1は、基板Wを回転させる回転テーブル3と、基板Wの外周に当接して基板Wを把持することで基板Wを回転テーブル3に固定する複数のチャックピン21とを有する。チャックピン21は、回転テーブル3の回転軸方向から見た場合に、基板Wと当接する側に曲面21aを有し、回転テーブル3の回転軸方向から見た場合に、曲面21aの端部と繋げて形成され、かつ、基板Wと当接する側から離れる第1の方向(方向D1)に直交する方向の幅が、曲面21aとの境界から第1の方向に向かって連続的に縮小する縮小部21bを有する。また、チャックピン21は、回転テーブル3の回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合に、頂部211に第1の方向に向かって下降傾斜する第1の傾斜面を21c有し、曲面21a上に形成され、基板Wが把持された状態で頂部211の頂面21eと当該基板Wの上面とが同一平面上にあるように基板Wを支持する支持部21dを有する。したがって、第1の実施形態に係る基板処理装置1は、チャックピン21の後側(下流側)において気流の攪乱が発生することを低減することができ、チャックピン21から剥離した処理液のミストが、気流の攪乱によって舞い上がり、基板Wに向かって飛散することを抑制することができる。その結果、基板処理装置1は、処理液の基板Wへの再付着を抑止し、基板品質を向上させることを可能にする。
【0063】
また、第1の実施形態によれば、支持部21dが、頂部211に設けられている。したがって、第1の実施形態に係る基板処理装置1は、頂部211の頂面21eと基板Wの上面とが同一平面上にあるように形成される支持部21dを容易に形成することを可能にする。
【0064】
また、第1の実施形態によれば、回転テーブル3の回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合に、頂部211は、基板Wを支持する側(前側)に水平面(頂面21e)を有し、第1の傾斜面21cは、水平面の端部から第1の方向(方向D1)に向かって下降傾斜する。また、第1の実施形態によれば、第1の方向(方向D1)における第1の傾斜面21cの長さが、第1の方向におけるチャックピン21全体(頂部211)の長さの半分以上である。したがって、第1の実施形態に係る基板処理装置1は、第1の傾斜面21cの傾斜角度を緩やかにすることで、処理液と共に流れる気流を第1の傾斜面21cにより流すことができ、第1の傾斜面21c上に負圧の領域を形成し難くすることができる。その結果、基板処理装置1は、気流の攪乱の発生を抑制して、処理液のミストが基板W側に舞い上がることを抑止することができる。
【0065】
また、第1の実施形態によれば、チャックピン21は、第1の方向(方向D1)に向かって幅が連続的に縮小する縮小部21bの向きと、基板に供給される処理液の飛散方向(方向D2)とが平行となるように設けられる。したがって、第1の実施形態に係る基板処理装置1は、処理液の流れを阻害しないようにすることができ、処理液が跳ねることを抑止して、処理液のミストの発生を抑えることを可能にする。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、チャックピン21は、回転テーブル3の回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合に、第1の傾斜面21cの端部から第1の方向(方向D1)に向かって下降傾斜する第2の傾斜面21hをさらに有する。したがって、第1の実施形態に係る基板処理装置1は、第1の傾斜面21cから第2の傾斜面21hへ処理液と共に流れる気流の流れの変化を緩やかにして、気流の乱れをより抑止することを可能にする。すなわち、基板処理装置1は、第2の傾斜面21hを設けることで、第1の傾斜面21cを処理液と共に流れる気流が、第2の傾斜面21hにもより流れるようにして、第2の傾斜面21hの上部に負圧の領域が形成するのを抑止する。その結果、基板処理装置1は、気流の攪乱の発生を抑制して、チャックピン21から剥離する処理液のミストが基板W側に飛散するのを抑制することができる。また、基板処理装置1においては、チャックピン21の後側(下流側)で発生する気流の乱れが抑制されているため、チャックピン21から剥離した処理液のミストは、基板W側へ飛散せずに、液受け部(カップ)5の内面に排出されることとなる。
【0067】
(第2の実施形態)
上記した第1の実施形態では、チャックピン全体で、曲面21a、縮小部21b、第1の傾斜面21c、支持部21dが形成される場合について説明した。第2の実施形態では、チャックピンの一部に曲面21a、縮小部21b、第1の傾斜面21c、支持部21dが形成される場合について説明する。なお、第2の実施形態に係る基板処理装置1は、第1の実施形態と比較して、チャックピンのみが異なる。すなわち、第2の実施形態に係る基板処理装置1は、
図1に示す構成において、チャックピン21が以下で説明するチャックピン100に置き換わった構成を有する。
【0068】
図8Aは、第2の実施形態に係るチャックピン100の概略構成を示す斜視図である。また、
図8Bは、第2の実施形態に係るチャックピン100の概略構成を示す上面図である。
図8Aに示すように、第2の実施形態に係るチャックピン100は、基部111と、頂部112と、基板Wを支持する突起部113とを有する。
【0069】
基部111は、頂部112と、突起部113とを保持し、回転板22によって保持される。頂部112は、
図8Aに示すように、曲面21aと、縮小部21bと、第1の傾斜面21cと、頂面21eと、第2の傾斜面21hとが形成される。具体的には、頂部112は、
図8Bに示すように、回転テーブル3の回転軸方向から見た場合(平視面で見た場合)に、基板Wと当接する側に曲面21aを有し、回転テーブル3の回転軸方向から見た場合(平視面から見た場合)に、曲面21aの端部と繋げて形成され、かつ、基板Wと当接する側から離れる第1の方向に直交する方向の幅が、曲面21aとの境界から第1の方向に向かって連続的に縮小する縮小部21bを有し、回転テーブル3の回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合(側面から見た場合)に、第1の方向に向かって下降傾斜する第1の傾斜面21cを有する。また、頂部112は、回転テーブル3の回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合(側面から見た場合)に、第1の傾斜面21cの端部から第1の方向に向かって下降傾斜する第2の傾斜面21hを有する。
【0070】
ここで、第2の実施形態に係る曲面21a、縮小部21b、第1の傾斜面21c、及び、頂面21eは、第1の実施形態における各構成と同様に形成される。なお、第2の実施形態に係る第1の傾斜面21cの第1の方向における長さは、頂部112の第1の方向における長さとの比較により決定される。例えば、第2の実施形態に係る第1の傾斜面21cの第1の方向における長さは、頂部112の第1の方向における長さの半分以上となるように形成される。
【0071】
第2の実施形態に係る支持部21dは、突起部113のテーパ面と、曲面21aとから構成される。すなわち、チャックピン100は、突起部113のテーパ面によって基板Wを支持し、親歯車3fが基板Wを把持するための回転方向に回転した場合に、曲面21aが基板Wに当接することで、基板Wを把持する。ここで、突起部113のテーパ面における頂面21eと繋がる縦方向の面(垂直面)と接する部分は、頂部112の頂面21eから基板Wの厚み分下側に形成されている。換言すると、突起部113のテーパ面における頂面21eと繋がる縦方向の面(垂直面)と接する部分は、頂面21eの高さより基板Wの厚み分低い位置に形成されている。これにより、支持部21dは、頂面21eと基板Wの上面とが同一平面上にあるように基板Wを支持することができる。また、突起部113のテーパ面は、頂面21eと繋がる縦方向の面(垂直面)と接する部分から基板W側に向かって下降傾斜している。すなわち、突起部113のテーパ面は、頂部112側から突起部113の先端に向かって下降傾斜している。
【0072】
なお、
図8Aに示す基部111及び突起部113の形状は、あくまでも一例であり、その他種々の形状で形成されてもよい。例えば、基部111が、円柱形状で形成されてもよい。
【0073】
上述したように、第2の実施形態によれば、基板処理装置1は、基板Wを回転させる回転テーブル3と、基板Wの外周に当接して基板Wを把持することで基板Wを回転テーブル3に固定する複数のチャックピン100とを有する。チャックピン100は、頂部112と、頂部112を保持する基部111と、基板Wを支持する突起部113とを有する。頂部112は、回転テーブル3の回転軸方向から見た場合に、基板Wと当接する側に曲面21aを有し、回転テーブル3の回転軸方向から見た場合に、曲面21aの端部と繋げて形成され、かつ、基板Wと当接する側から離れる第1の方向に直交する方向の幅が、曲面21aとの境界から第1の方向に向かって連続的に縮小する縮小部21bを有する。また、頂部112は、回転テーブル3の回転軸方向に直交し、かつ、第1の方向に直交する方向から見た場合に、第1の方向に向かって下降傾斜する第1の傾斜面を21c有する。突起部113は、基板Wが把持された状態で頂部112の頂面21eと当該基板Wの上面とが同一平面上にあるように基板Wを支持する。したがって、第2の実施形態に係る基板処理装置1は、第1の実施形態と同様に、チャックピン100の後側(下流側)において気流の攪乱が発生することを低減することができ、チャックピン21から剥離した処理液のミストが、気流の攪乱によって舞い上がり、基板Wに向かって飛散することを抑制することができる。その結果、基板処理装置1は、処理液の基板Wへの再付着を抑止し、基板品質を向上させることを可能にする。
【0074】
また、第2の実施形態によれば、チャックピンの頂部に、曲面21aと、縮小部21bと、第1の傾斜面21cとを形成することで、チャックピン100を形成することができる。すなわち、既存のチャックピンの一部を変更することでチャックピン100を形成することができ、本願に係るチャックピンを容易に実現することを可能にする。
【0075】
(その他の実施形態)
上記した第1の実施形態及び第2の実施形態では、チャックピンを回転させることによって基板Wの把持と開放を制御するチャック機構を用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、基板処理装置1に採用されるチャック機構として、その他の手法が用いられる場合でもよい。例えば、バネなどの弾性部材によりチャックピンの傾きを変化させることで基板Wの把持と開放を制御するチャック機構が用いられる場合でもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 基板処理装置
21、100 チャックピン
21a 曲面
21b 縮小部
21c 第1の傾斜面
21d 支持部
21e 頂面
21h 第2の傾斜面
112、211 頂部