(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015981
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】外科用器具及び外科用器具システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A61B17/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023110843
(22)【出願日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】10 2022 207 576.5
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-ペーター ファームバッハ
(72)【発明者】
【氏名】リリー ストフェルズ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】人工膝関節置換術に使用するための、大腿骨側に固定された参照コンポーネントから始めて脛骨側で行うことが意図されている切除カットの特に正確なアライメントを可能にする外科用器具及び外科用器具システムを提供する。
【解決手段】外科用器具(1)は、第1の締結デバイス(100)と、第2の締結デバイス(200)と、一端が前記第1の締結デバイス(100)に接続され、他端が前記第2の締結デバイス(200)に接続されており、これによって前記第2の締結デバイス(200)が矢状方向案内平面(E)内で前記第1の締結デバイス(100)に対して案内されるように枢動可能に移動可能である案内デバイス(300)と、脛骨(T)の前縁に対して位置合わせするように構成されており、前記第2の締結デバイス(200)に解放可能に剛性的に接続されているアライメントロッド(800)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膝関節置換術に使用するための外科用器具(1)であって、
大腿骨遠位部(F)に装着される参照コンポーネント(600)に解放可能に締結するように構成された第1の締結デバイス(100)と、
前記第1の締結デバイス(100)から遠位方向に離間されており、脛骨近位部(T)の切断を案内するための脛骨切断ブロック(700)に解放可能に締結するように構成された第2の締結デバイス(200)と、
一端が前記第1の締結デバイス(100)に接続され、他端が前記第2の締結デバイス(200)に接続されており、これによって前記第2の締結デバイス(200)が矢状方向案内平面(E)内で前記第1の締結デバイス(100)に対して案内されるように枢動可能に移動可能である案内デバイス(300)と、
脛骨(T)の前縁(V)に対して位置合わせするように構成されており、前記第2の締結デバイス(200)に解放可能に剛性的に接続されているアライメントロッド(800)と、を備える外科用器具(1)。
【請求項2】
前記第2の締結デバイスは、前記アライメントロッド(800)の締結部分(801)が受容方向(A)に受容される受容部分を有することを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項3】
前記アライメントロッド(800)の前記締結部分(801)は、少なくとも一つのパーツ部分(802)において、非円形断面、特に角のある断面を有し、前記第2の締結デバイス(200)の前記受容部分(201)は、前記締結部分(801)、特に前記アライメントロッド(800)の前記少なくとも一つのパーツ部分(802)を補完するように、前記アライメントロッド(800)と前記第2の締結デバイス(200)との解放可能な剛性接続のために構成された形状を有することを特徴とする、請求項2に記載の外科用器具(1)。
【請求項4】
前記アライメントロッド(800)が、前記第2の締結デバイス(200)に対して少なくとも2つの角度位置で、前記第2の締結デバイス(200)と解放可能に剛性接続するように前記受容部分(201)において受容されることが可能であるように、前記非円形断面は、回転対称に、特に点対称に構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の外科用器具(1)。
【請求項5】
前記アライメントロッド(800)は、S字状に曲がっていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項6】
前記第2の締結デバイス(200)は、その形状がユーザの手の解剖学的構造に適合したハンドリング部分(203)を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項7】
前記第2の締結デバイス(200)は、特に板状のベース部材(202)を備えており、前記ベース部材(202)には、前記ハンドリング部分(203)を形成するために、前記ユーザの手の少なくとも1本の指を受容するように構成された凹部(204)が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の外科用器具(1)。
【請求項8】
前記案内平面(E)における前記第1の締結デバイス(100)に対する前記第2の締結デバイス(200)の角度位置を表示するように構成された表示デバイス(900)が設けられていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項9】
前記表示デバイス(900)は、少なくとも一つの目盛り及び少なくとも一つの読み取りマーク(901)を備え、前記目盛りは前記第1の締結デバイス(100)に接続され、前記読み取りマーク(901)は前記案内デバイス(300)に接続されるか、又はその逆であり、前記目盛りに対する前記読み取りマーク(901)の位置は、前記案内平面(E)における、前記第1の締結デバイス(100)に対する前記第2の締結デバイス(200)の現在の角度位置を表すことを特徴とする、請求項8に記載の外科用器具(1)。
【請求項10】
前記案内デバイス(300)は、少なくとも一つの湾曲した案内ロッド(301)と、前記案内ロッド(301)が摺動して移動可能に案内された状態で受容されるガイド受容部材(302)とを有し、前記ガイド受容部材(302)は前記第1の締結デバイス(100)に接続され、前記案内ロッド(301)は前記第2の締結デバイス(200)に接続されるか、又はその逆であり、前記第2の締結デバイス(200)は、前記第1の締結デバイスに対して円弧状に長い案内経路(C)に沿って、前記案内デバイス(300)によって直線的に移動可能に案内されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項11】
第1のリニアガイドが設けられており、
前記第1のリニアガイド(400)によって、前記案内デバイス(300)は、
前記第1の締結デバイス(100)に接続されており、
前後方向に長い第1の案内経路に沿って前記案内平面(E)内で前記第1の締結デバイス(100)に対して案内されるように直線的に移動可能であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項12】
第2のリニアガイド(500)が設けられており、
前記第2のリニアガイド(500)によって、前記第2の締結デバイス(200)は、
前記案内デバイス(300)に接続されており、
前後方向に長い第2の案内経路(L2)に沿って前記案内平面(E)内で前記案内デバイス(300)に対して案内されるように直線的に移動可能であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項13】
固定デバイス(303)が設けられており、
前記固定デバイス(303)は、前記案内デバイス(300)の可動性を固定するように構成されていることを特徴とする、請求項1から12いずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の外科用器具(1)と、
前記外科用器具(1)の前記第1の締結デバイス(100)に解放可能に締結される参照コンポーネント(600)と、
前記外科用器具(1)の前記第2の締結デバイス(200)に解放可能に締結される脛骨切断ブロック(700)と、
を備える、外科用器具システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節置換術において使用するための外科用器具に関する。本発明はさらに、そのような外科用器具を有する外科用器具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節置換術(人工膝関節全置換術(TKA))では、摩耗又は別様に疾患若しくは事故によって損傷した大腿骨及び/又は脛骨の関節面を、膝関節プロテーゼの人工関節面で置換する。このような膝関節プロテーゼは一般に、大腿骨コンポーネント及び脛骨コンポーネントを備えている。大腿骨コンポーネントは大腿骨の遠位端に植え込まれる。脛骨コンポーネントは脛骨の近位端に植え込まれる。
【0003】
プロテーゼコンポーネントを植え込む前に、大腿骨遠位部及び脛骨近位部は切除される。この目的を達成するために、外科医は種々の切除カットを行い、それぞれの骨から骨及び/又は軟骨材料を分離する。切除した結果、それぞれの骨は、受け入れられることが意図されたプロテーゼコンポーネントに対してその形状を適合させられる。
【0004】
切除は種々の概念に基づいて行うことができる。一つの概念は、関節が動く間、膝の靭帯の張力のバランスを保つことを目的とするものである。それによって、膝関節プロテーゼのより優れた機能を確実にすることが意図されている。この概念は一般に「ギャップ・バランシング」と呼ばれている。他の概念では、外科医は切除によって特定の量の骨及び/又は軟骨材料を除去する。このような概念は一般に「測定切除(measured resection)」と呼ばれる。患者の解剖学的構造に対する切除カットの配向は、植え込まれるコンポーネントのその後の配向を決定し、その結果、プロテーゼ関節軸の配向も決定する。従って、切除カットのアライメントは特に重要である。
【0005】
切除カットのアライメントには、主に機械的アプローチ、解剖学的アプローチ、及び運動学的アプローチの3つのアプローチがある。機械的アライメントでは、脛骨近位部は脛骨幹の長手軸に対して垂直に切除される。従って、大腿骨遠位部の切除は、それに適合するように行われる。必要であれば、靭帯の解離が行われる。解剖学的アライメントでは、脛骨を3°の内反角度で切除することが試みられる。大腿骨の切除及び靭帯の解離は、脚の股/膝/足首の軸をまっすぐにする目的で行われる。運動学的アライメント(以下KAと略す)の目的は、プロテーゼコンポーネントの人工関節面を、関節炎前の異常のない自然関節面のレベルで植え込むことである。
【0006】
KAでは、切除カットのアライメントは大腿骨遠位部から行うことが多い。従って、脛骨近位部の切除は、それに適合するように行われる。この文脈では、アライメント及び/又はカットの移行についても言及する。この目的を達成するために、脛骨カットアライメントガイドとも呼ばれる特定の外科用器具が知られている。このような器具は、大腿骨切除カットのアライメントを脛骨に移行することを可能にする。この移行は一般に、大腿骨の少なくとも遠位部切除の後に行われ、このとき、遠位顆部が分離される。移行は伸展位又は屈曲位で行うことができる。KAの変形例では、最初に大腿骨遠位部を完全に準備する(全大腿骨ファースト(all femur first))。この例では、大腿骨遠位部に行うことが意図された切除カットは、患者の解剖学的構造に合わせて位置合わせされ、大腿骨遠位部に施される。その後、大腿骨トライアル顆部インプラントを大腿骨遠位部に適用する。次に、患者の解剖学的構造に従って配向済みの大腿骨トライアル顆部インプラントを参照コンポーネントとして使用し、脛骨近位部で行うことが意図された切除カットを位置合わせして適用するために、そのアライメントを外科用器具又は移行ツールによって脛骨近位部に移行させる。
【0007】
このような外科用器具は、一般に、患者の所定の解剖学的な特異的特徴への適合を可能にするために、調整の点から移動可能であるように、対応する外科用器具の様々なコンポーネントを互いに接続する複数のガイド及び/又はベアリングを有している。このようなガイド又はベアリングは、膝関節置換術の間、外科用器具を使用するときに調整が複雑である。さらに、存在するガイド又はベアリング公差は、公差が連鎖するように積み重なり、これは脛骨近位部への正確なアライメント移行に不利益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来の外科用器具及び外科用器具システムに対して利点をもたらし、特に、大腿骨側に固定された参照コンポーネントから始めて脛骨側で行うことが意図されている切除カットの特に正確なアライメントを可能にする外科用器具及び外科用器具システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する外科用器具及び請求項14の特徴を有する外科用器具システムの提供により達成される。特許請求の範囲における従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0010】
本発明による外科用器具は、膝関節置換術に使用することが意図されており、大腿骨遠位部に装着される参照コンポーネントに解放可能に締結するように構成された第1の締結デバイスと、第1の締結デバイスから遠位方向に離間されており、脛骨近位部の切断を案内するための脛骨切断ブロックに解放可能に締結するように構成された第2の締結デバイスと、一端が第1の締結デバイスに接続され、他端が第2の締結デバイスに接続されており、これによって第2の締結デバイスが矢状方向案内平面内で第1の締結デバイスに対して案内されるように枢動可能に移動可能である案内デバイスと、脛骨の前縁に対して位置合わせするように構成されており、剛性的に、特に回転可能及び/又は枢動可能に剛性的に第2の締結デバイスに解放可能に接続されているアライメントロッドとを備える。本発明による外科用器具は、外科用器具のコンポーネントを調整可能に移動可能であるように互いに接続するガイド又はベアリングの数が特に少ない。本発明による外科用器具では、第2の締結デバイスにおけるアライメントロッドの枢動可能に移動可能な支持が不要である。その結果、外科用器具は、特に頑丈で、ねじれ耐性がある。これにより、脛骨切断ブロックへの参照コンポーネントの配向又はアライメントの特に正確な移動が可能になる。外科用器具の使用中、第1の締結デバイスは、大腿骨側に装着される参照コンポーネントに解放可能に締結され、脛骨切断ブロックは、第2の締結デバイスに解放可能に締結されている。参照コンポーネントは、好ましくは大腿骨トライアル顆部インプラントである。この例では、外科用器具は、KAの「全大腿骨ファースト」変形例での使用に特に適している。あるいは、参照コンポーネントは、大腿骨の遠位部切断ガイド用の大腿骨遠位部切断ブロックなどであってもよい。参照コンポーネントも脛骨切断ブロックも、本発明による外科用器具の構成要素ではない。案内デバイスは、第1の締結デバイスに対する第2の締結デバイスの案内された枢動を可能にする。その結果、外科用器具の使用において、案内デバイスは、大腿骨側参照コンポーネントに対する脛骨切断ブロックの適宜案内された相対移動を可能にする。それにより、案内平面における脛骨切断ブロックの傾きを調整することができる。案内平面は矢状方向に配向され、その結果、前後方向及び近位遠位方向に延びる。好ましくは、2つの締結デバイスを案内デバイスによって互いに対して枢動可能に移動可能に案内する旋回軸は、矢状方向案内平面において機械的脛骨軸と交差する。前述した傾きは、後方傾斜又は前方傾斜とも呼ばれる。一方では、以下、略して傾斜と呼ぶ、脛骨切断ブロックの傾きが調整可能であることにより、術前に決定されたパラメータへの適合を可能にする。他方では、案内デバイスが移動可能である結果、実際に一般的な脚の屈曲位又は伸展位を考慮し、補うことができる。傾斜の調整によって同時に脛骨切断ブロックの近位遠位方向の位置、結果としていわゆる脛骨切断高さの望ましくない変化にはつながらないことを保証できる。
【0011】
本明細書で使用される位置及び方向の呼称は、患者の身体、特に患者の大腿骨に関係するものであり、従って、従来の解剖学的意味に従って理解されることが意図されている。従って、「前方」は前面、又は前面に位置することを意味し、「後方」は背面又は背面に位置することを意味し、「内側(medial)」は内側又は内側に位置することを意味し、「外側(lateral)」は外側又は外側に位置することを意味し、「近位」は身体の中心に向かう方向を意味し、「遠位」は身体の中心から離れることを意味する。さらに、「近位遠位方向」とは、近位/遠位軸に沿って、好ましくは平行であることを意味し、「前後方向」とは、前方/後方軸に沿って、好ましくは平行であることを意味し、「内外側方向」とは、内側/外側軸に沿って、好ましくは平行であることを意味する。前記軸は、互いに対して直交するように配向され、当然ながら、患者の解剖学的構造とは関連しないX軸、Y軸及びZ軸を基準として配置することができる。例えば、近位/遠位軸は代替的にX軸と呼んでもよい。内側/外側軸は、Y軸と呼んでもよい。前方/後方軸はZ軸と呼ぶこともできる。説明の改善のために、また簡潔さを期して、以下では主に上記の解剖学的位置及び方向の呼称を使用する。
【0012】
本発明の一実施形態において、第2の締結デバイスは、アライメントロッドの締結部分が受容方向に受容される受容部分を有する。これにより、特に簡単な実施方法では、アライメントロッドと第2の締結デバイスとの解放可能な剛性接続が可能になる。アライメントロッドの容易な組立て及び分解を保証するために、受容部分及び締結部分は、狭い隙間嵌め又は中間嵌めの方法で寸法を互いに適合させることができる。
【0013】
本発明の別の実施形態では、アライメントロッドの締結部分は、少なくとも一つのパーツ部分(part-portion)において、非円形、好ましくは角のある、特に好ましくは矩形の断面を有し、第2の締結デバイスの受容部分は、締結部分、特にアライメントロッドの少なくとも一つのパーツ部分を補完するように、アライメントロッドと第2の締結デバイスとの解放可能な剛性接続のために構成された形状を有する。その結果、受容部分と締結部分との間には、第2の締結デバイスに対する締結部分の長手方向軸を中心とした、取り付けられるアライメントロッドの回転を防止するポジティブロック接続(形状嵌め)が存在する。
【0014】
本発明の別の実施形態において、アライメントロッドが、第2の締結デバイスの受容部分において、第2の締結デバイスに対して少なくとも2つの角度位置で、第2の締結デバイスと解放可能に剛性接続するように受容されることが可能であるように、非円形断面は、回転対称に、特に点対称に構成されている。従って、アライメントロッドは、第2の締結デバイスに対して複数の異なる角度位置に取り付けることができる。好ましくは、アライメントロッドは、第2の締結デバイスに対して、互いに対して180°回転した2つの角度位置に取り付けることができる。その結果、特に回転非対称形状を有する場合、一つの同じアライメントロッドを、右脚及び左脚の両方の膝関節置換術に使用することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態では、アライメントロッドはS字状に湾曲している。このようなアライメントロッドは、有利には、脛骨の前縁に特に正確に位置合わせできるように脛骨の前縁の解剖学的構造に沿う。
【0016】
本発明の別の実施形態では、第2の締結デバイスは、その形状が人間の手の解剖学的構造に適合したハンドリング部分を有する。これにより、外科用器具のハンドリングが改良される。特に、ハンドリング部分は、外科医にとって疲労のない、外科用器具の特に確実なグリップを可能にする。
【0017】
本発明の別の実施形態では、第2の締結デバイスは、特に板状のベース部材を備えており、このベース部材には、ハンドリング部分を形成するために、少なくとも1本の指を受容するように構成された凹部が設けられている。凹部によって形成されるこのようなハンドリング部分は、特に簡単な方法で製造することができる。加えて、人間工学的な利点も得られる。
【0018】
本発明の別の実施形態では、案内平面における第1の締結デバイスに対する第2の締結デバイスの角度位置を表示するように構成された表示デバイスが設けられる。この角度位置は、アライメントロッドの組立て状態における第1の締結デバイスに対する角度位置に対応する。その結果、表示デバイスによって、脛骨に対する大腿骨の現在の屈曲角度を読み取ることができる。この屈曲角度に基づいて、脛骨近位部を切除する前に、傾斜は特に直感的にさらに調整することができる。脛骨を切除する前に、アライメントロッドは、よりアクセスしやすくするために、好ましくは分解することができる。
【0019】
本発明の別の実施形態では、表示デバイスは、少なくとも一つの目盛り及び少なくとも一つの読み取りマークを備えており、目盛りは第1の締結デバイスに接続されており、読み取りマークは案内デバイスに接続されるか、又はその逆であり、目盛りに対する読み取りマークの位置は、案内平面における、第1の締結デバイスに対する第2の締結デバイスの現在の角度位置を表す。この実施形態は構造的に簡単であり、さらに、角度位置を簡単かつ迅速な視覚的検出を可能にする。
【0020】
本発明の別の実施形態では、案内デバイスは、少なくとも一つの湾曲した案内ロッドと、案内ロッドが摺動して移動可能に案内された状態で受容されるガイド受容部材とを有し、ガイド受容部材は第1の締結デバイスに接続され、案内ロッドは第2の締結デバイスに接続されるか、又はその逆であり、第2の締結デバイスは、第1の締結デバイスに対して円弧状に長い案内経路に沿って、案内デバイスによって直線的に移動可能に案内される。そのような案内デバイスは、円形ガイドと記述することもできる。これにより、案内デバイスから離間して配置された理論上の(仮想)旋回軸を中心に、2つの締結デバイスを枢動可能に移動可能に接続することができる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、第1のリニアガイドが設けられ、この第1のリニアガイドによって、案内デバイスが第1の締結デバイスに接続され、前後方向に長い第1の案内経路に沿って案内平面において第1の締結デバイスに対して案内されるように直線的に移動可能である。第1のリニアガイドは、有利には、2つの締結デバイスの旋回軸を調整することを可能にする。その結果、特に旋回軸の位置を患者の解剖学的構造に適合させることができる。
【0022】
本発明の別の実施形態では、第2のリニアガイドが提供され、この第2のリニアガイドによって、第2の締結デバイスが案内デバイスに接続され、前後方向に長い第2の案内経路に沿って案内平面内で案内デバイスに対して案内されるように直線的に移動可能である。その結果、第2の締結デバイスの前後方向位置を、患者の解剖学的構造、特に脛骨のサイズに適合させることができる。この例では、案内デバイスの前後方向位置の望ましくない変化が回避される。同様のことが、脛骨切断ブロックが第2の締結デバイスに固定されるときの脛骨切断ブロックの位置決めにも当てはまる。
【0023】
本発明の別の実施形態では、締結デバイスが提供され、案内デバイスの可動性を固定するように構成されている。その結果、参照コンポーネントに対するアライメントが完了した後の脛骨切断ブロックをその位置に固定することができる。これにより、脛骨を切除カットするときに、外科用切削工具を特に確実に案内することができる。
【0024】
本発明はさらに、本発明による外科用器具を有する外科用器具システムに関する。この外科用器具システムは、外科用器具の第1の締結デバイスに解放可能に締結される参照コンポーネントと、外科用器具の第2の締結デバイスに解放可能に締結される脛骨切断ブロックとをさらに備えている。本発明による外科用器具の上記で説明した利点は、本発明による外科用器具システムにも準用することができる。
【0025】
本発明の他の利点及び特徴は、特許請求の範囲、及び図面を参照して説明される本発明の好ましい実施形態の以下の説明から理解されるであろう。
【0026】
当然ながら、上記の特徴及び以下に説明する特徴は、本発明の特許請求の範囲を逸脱することなく、記述された組み合わせだけでなく、他の組み合わせ又は単独でも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】術中状況の、本発明による外科用器具の一実施形態の概略斜視図を示し、この外科用器具は、一端が参照コンポーネントとして機能する大腿骨トライアル顆部インプラントに締結され、他端が近位脛骨切断ブロックに締結されている。
【0028】
【
図2】別の視野角からの
図1に示す術中状況の概略斜視図を示す。
【0029】
【
図3】
図1及び
図2による外科用器具の分解された第2の締結デバイスの概略透視図を示す。
【0030】
【
図4】
図3による外科用器具の第2の締結デバイスの概略側面図を示す。
【0031】
【
図5】
図3及び
図4による第2の締結デバイスの概略平面図を示す。
【0032】
【
図6】
図1及び
図2による外科用器具の分解されたアライメントロッドの概略平面図を示す。
【0033】
【
図7】
図6によるアライメントロッドの概略斜視図の詳細を示す。
【0034】
【
図8】別に視野角からの
図6及び
図7によるアライメントロッドの概略斜視図の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1及び
図2によれば、膝関節置換術において使用するための外科用器具1が提供される。この外科用器具1は、移行ツール又は脛骨移行ツールと呼ぶこともできる。これは、脛骨近位部Tでの脛骨切断ブロック700の参照位置決めに使用される。脛骨切断ブロック700の位置基準として、大腿骨遠位部Fにおいて既に位置決めされた参照コンポーネント600が使用される。
図1及び
図2に示す術中状況では、大腿骨遠位部Fは既に完全に準備済みであり、参照コンポーネント600として機能するトライアル顆部インプラント601が設けられている。大腿骨トライアル顆部インプラント601が大腿骨遠位部Fに配置される前に、必要な切除カットはすべて大腿骨Fに施した。従って、図示されている術中状況は、いわゆる全大腿骨ファースト手術法に関するものであり、これは、脛骨近位部Tに対して何らかの処置が実施される前に、大腿骨遠位部Fが完全に準備済みであることを特徴とする。大腿骨トライアル顆部インプラント601の代わりに、外科医が全大腿骨ファーストアプローチ以外のアプローチをとる場合には、大腿骨切断ブロックを参照コンポーネント600として使用することもできる。
【0036】
参照コンポーネント600及び大腿骨トライアル顆部インプラント601は、外科用器具1のコンポーネントではない。脛骨近位部Tでの切断を案内するように構成された脛骨切断ブロック700は、外科用器具1のコンポーネントではない。
【0037】
外科用器具1は、参照コンポーネント600及び脛骨切断ブロック700と一緒に、外科用器具システム10を形成する。
【0038】
外科用器具1は、第1の締結デバイス100と、第2の締結デバイス200と、案内デバイス300と、アライメントロッド800とを備えている。
【0039】
第1の締結デバイス100は、参照コンポーネント600に解放可能に締結するように構成されている。第2の締結デバイス200は、第1の締結デバイス100から遠位方向に離間されている。第2の締結デバイス200は、脛骨切断ブロック700に解放可能に締結するように構成されている。
図1及び
図2に示す術中状況では、第1の締結デバイス100は参照コンポーネント600に解放可能に締結され、第2の締結デバイス200は脛骨切断ブロック700に解放可能に締結されている。
【0040】
案内デバイス300は、一端が第1の締結デバイス100に接続されており、他端が第2の締結デバイス200に接続されている。案内デバイス300の、第1の締結デバイス100との接続、代替的又は追加で第2の締結デバイス200との接続は、解放可能であるように構成することができる。この例では、第2の締結デバイス200は、案内デバイス300によって、第1の締結デバイス100に対して矢状方向案内平面E内で枢動可能に移動可能であるように案内される。その結果、案内デバイス300により、第2の締結デバイス200は、第1の締結デバイス100に対して矢状方向案内平面E内で角度をなして案内されるように位置決めすることを可能にする。
【0041】
アライメントロッド800は、脛骨Tの前縁Vに対して位置合わせするように構成されている。この例では、アライメントロッド800は、第2の締結デバイス200に解放可能に剛性的に接続されている。
図1及び
図2では、アライメントロッド800は組み立てられた状態に位置しており、第2の締結デバイスに解放可能に剛性的に接続されている。この例では、アライメントロッド800の第2の締結デバイス200への解放可能な接続は、回転可能かつ枢動可能に剛性的に構成される。より明確にするために
図3から
図5に別個に示されている第2の締結デバイス200は、受容部分201を有する。
図6から
図8に別個に示されているアライメントロッド800は、締結部分801を有している。アライメントロッド800の組立て状態において、締結部分801は、受容部分201に受容方向Aで受容される。アライメントロッド800は、受容部分201に挿入することができる。この例では、受容方向Aは近位遠位方向に延びている。
【0042】
図6から
図8によれば、アライメントロッド800の締結部分801は、少なくとも一つのパーツ部分802を備えている。パーツ部分802は、非円形断面を有している。この例では、パーツ部分802は、角のある、より具体的には矩形の断面を有している。パーツ部分802の断面は、受容方向Aに対して垂直に配向されている。第2の締結デバイス200の受容部分201は、アライメントロッド800の締結部分801を補完するように構成された形状を有している。締結デバイス200の非円形断面と、それに適合した形状とによって、アライメントロッド800の第2の締結デバイス200への解放可能な剛性接続が、ポジティブロック接続(嵌合(form-fit))によってもたらされる。非円形断面は回転対称に構成される。この例では、非円形断面は点対称に構成されている。断面が回転対称の構成である結果、アライメントロッド800は、受容部分201において、第2の締結デバイス200に対して少なくとも2つの角度位置で受容されることが可能である。非円形断面が回転対称構成である結果、アライメントロッド800は、この例では、互いに対して180°回転可能な2つの角度位置に取り付けられることが可能である。
【0043】
アライメントロッド800は、この例ではS字状に湾曲している。S字状に湾曲しているアライメントロッド800は、第1の湾曲部分803及び第2の湾曲部分804を有する。2つの湾曲部分803、804の結果として、アライメントロッド800は、この例では、S字状に湾曲して構成されている。アライメントロッド800は、第2の締結デバイス200に取り付けられる角度位置に応じて、右脚及び左脚の両方の膝関節置換術に使用することができる。どの角度位置が左脚の膝関節置換術を対象としており、どの角度位置が右脚の膝関節置換術を対象としているかは、操作者が
図7及び
図8に示すマーキング(Lは左用、Rは右用)を参照して識別することができる。外科用器具1をそれぞれの脚の手術用に構成するために、アライメントロッド800は、この例では、それぞれの脚に関連するマーキングが上方を向くように、第2の締結デバイス200に解放可能に接続されている。アライメントロッド800は、近位端と遠位端との間で細長く延びている。アライメントロッド800の締結部分801は、近位端に配置されている。
【0044】
図1から
図5によれば、第2の締結デバイス200はハンドリング部分203を有している。ハンドリング部分203の形状は、人間の手の解剖学的構造に適合している。これにより、例えば、アライメントロッド800の組立又は分解の間、外科医の安全で疲労のないグリップを保証する。第2の締結デバイス200は、ベース部材202を備えている。この例では、ベース部材202は板状に構成されている。凹部204はベース部材202に配置されている。ハンドリング部分203は凹部204によって形成されている。凹部204では、ユーザの手の少なくとも1本の指を受容することができる。この例では、凹部204は、ベース部材202の後方の遠位端部に配置されている。その結果、凹部204はアンダーカットを形成し、このアンダーカットは、外科用器具1又は締結デバイス200のハンドリング中に、確実なグリップを保証するために、ユーザの手の前後方向への重力の結果として位置決めされる。ベース部材202は、この例では平行六面体形状を有している。
【0045】
この例では、外科用器具1は、表示デバイス900をさらに備えている。表示デバイス900は、第1の締結デバイス100に対する案内平面Eにおける第2の締結デバイス200の角度位置を表示するように構成されている。アライメントロッド800の第2の締結デバイス200への解放可能な剛性接続の結果として、案内平面Eにおいて測定される第1の締結デバイス100に対するアライメントロッド800の角度位置は、表示デバイス900によって示される角度位置に対応する。表示デバイス900は、少なくとも一つの読み取りマーク901を備えている。表示デバイス900はさらに、図面では見えないが少なくとも一つの目盛りを有している。読み取りマーク901及び目盛りは、一般的な相互作用において当業者によく知られた方法で角度位置を示す。読み取りマークは、この例では、第1の締結デバイス100に固定して接続され、目盛りは、案内デバイス300に固定して接続される。しかしながら、代わりに、表示デバイス900を較正できるように構成するために、目盛り又は読み取りマーク901が、それを担持するコンポーネントに対して調節可能に動くことができるように、それぞれのコンポーネントに接続されることも考えられる。目盛りに対する読み取りマーク901の位置は、案内平面Eにおいて測定された、第1の締結デバイス100に対する第2の締結デバイス200の現在の角度位置を表す。アライメントロッド800の組立て状態では、結果として、第1の締結デバイス100に対するアライメントロッド800の現在の角度位置を読み取ることもできる。目盛りは、角度増分を用いた分割を有する。目盛りは、1°刻みの増分になるように分割することができる。
【0046】
この例では、案内デバイス300は円弧ガイドの形態である。案内デバイス300は少なくとも一つの湾曲案内ロッド301を備えている。この例では、2つのこのような湾曲案内ロッド301が設けられている。案内ロッド301は互いに平行に配置されている。案内ロッド301は、その端部で互いに接続されている。案内デバイス300は、ガイド受容部材302をさらに備えている。ガイド受容部材302では、案内ロッド301が摺動可能に移動可能に受容されている。この例では、ガイド受容部材302は、第1の締結デバイス100に接続されている。案内ロッド301は、第2の締結デバイス200に接続されている。当然ながら、逆に、少なくとも一つの案内ロッド301は第1の締結デバイス100にさらに接続されていてもよく、ガイド受容部材302が第2の締結デバイス200にさらに接続されていてもよいが、これは図示されていない。案内デバイス300によって、第2の締結デバイス200は、第1の締結デバイス100に対して円弧状に長い案内経路Cに沿って直線的に移動可能に案内される。円弧状経路Cに沿って直線的に移動可能である案内の結果、矢状方向案内平面E内の第2の締結デバイス200に対する第1の締結デバイス100の枢動可動性が達成される。
【0047】
第1のリニアガイド400がさらに設けられている。第1のリニアガイド400によって、案内デバイス300は第1の締結デバイス100に接続されている。案内デバイス300は、第1のリニアガイド400によって、案内平面E内で第1の締結デバイス100に対して、前後方向に長い第1の案内経路L1に沿って直線的に移動可能である。外科用器具1は、第2のリニアガイド500をさらに備えている。第2の締結デバイス200は、第2のリニアガイド500によって案内デバイス300に接続されている。第2の締結デバイス200及び案内デバイス300は、前後方向に長い第2の案内経路L2に沿って、案内平面E内で互いに対して案内されるように直線的に移動可能である。2つの案内経路L1及びL2は同じ案内平面E内に位置し、その中で2つの締結デバイス100、200は案内デバイス300によって互いに対して枢動可能に移動可能であるように案内される。
図1及び
図2に示す術中状況では、2つの案内経路L1、L2は互いに平行に延びている。両案内経路L1、L2は、この例では、前後方向に延びている。2つの締結デバイス100、200が互いに対して枢動する場合、案内経路L1及びL2は互いに対して角度的に位置決めされ得る。第1のリニアガイド400は、図示されている実施形態では円筒形ガイドの形態である。第2のリニアガイド500は、スロット付きガイド部材の形態である。
【0048】
2つの締結デバイス100、200は、旋回軸を中心として互いに対して枢動することができる。旋回軸は、幾何学軸及び/又は仮想軸である。この旋回軸は、2つのリニアガイド400、500によって変位させることができる。この例では、旋回軸は、常に矢状方向案内平面Eに垂直に配向されたままである。当然ながら、旋回軸の対応する変位は、単一のリニアガイド400、500によっても既に達成することができる。第1のリニアガイド400はこの例では案内デバイス300の一端に配置され、第2のリニアガイド500は案内デバイス300の他端に配置される。
【0049】
円弧ガイドの形態である案内デバイス300は、第2の締結デバイス200と第1の締結デバイス100との間の案内された相対移動を可能にする。第2の締結デバイス200は、円弧状に長い案内経路Cに沿って、第1の締結デバイス100に対して案内されて直線的に移動可能である。この例では、第2の締結デバイス200は、円形案内経路Cを中心とする回動及び/又は枢動を行う。円弧状に長い案内経路Cの中心では、旋回軸は矢状方向案内平面Eを通過する。
【0050】
外科用器具1は、参照コンポーネント600に対する脛骨切断ブロック700の位置決めを可能にする。この例では、いわゆる脛骨切断高さに望ましくない影響を与えることなく、脛骨切断ブロック700の矢状方向の傾きを調整することができる。矢状方向の傾きは傾斜とも呼ばれる。望ましい様式において、脛骨切断ブロック700の位置決めは、この場合、伸展位、即ち脚及び/又は膝関節を伸ばした状態で行われる。伸展位では、大腿骨F及び脛骨Tは180°の角度を成す。外科用器具1により、傾斜の調整における正確な伸展位置からのずれを考慮することができる。その結果、正確な伸展位置が存在しない場合にも、外科用器具1を用いて傾斜を正確に調整することができる。
【0051】
固定デバイス303がさらに設けられている。固定デバイス303は、案内デバイス300の可動性を固定するように構成されている。その結果、固定デバイス303によって、第1の締結デバイス100と第2の締結デバイス200との間の角度位置を固定することができる。固定デバイス300は、少なくとも一つの案内ロッド301とガイド受容部材302との間に解放可能なポジティブロック(嵌合)及び/又は非ポジティブロック(圧力嵌め)接続をもたらす。例えば、固定デバイス303は、案内ロッド301、この例では両方の案内ロッド301の張力をもたらしてもよい。この目的を達成するために、固定デバイス303は、ねじ止め、締め付け、係止などの機構を有していてもよい。この例では、固定デバイス302は係止機構を有して構成されている。案内ロッド301とガイド受容部材302との間の相対運動中、読み取りマーク901は目盛りに沿って、特に目盛りの分割に沿って移動する。
【0052】
正確な伸展の場合、表示デバイス900は、脛骨切断ブロック700の矢状方向の傾き、即ち傾斜の表示として機能する。
【0053】
脛骨切断ブロック700を位置決めするための外科用器具1の使用について以下に例として説明する。
【0054】
この位置決めは、参照コンポーネント600、この例で従う全大腿骨ファーストアプローチでは大腿骨トライアル顆部インプラント601が当業者に公知の方法で大腿骨遠位部Fに固定された構成から行う。大腿骨トライアル顆部インプラント601の配向又はアライメントは、外科用器具1によって脛骨切断ブロック700に移すことができる。
【0055】
この目的を達成するために、まず、脛骨切断ブロック700を第2の締結デバイス200に解放可能に締結する。次に、外科用器具を、これに締結された脛骨切断ブロック700と一緒に大腿骨側で参照する。この目的を達成するために、第1の締結デバイス100は、トライアル顆部インプラント601に解放可能に締結される。大腿骨トライアル顆部インプラント601への第1の締結デバイスの解放可能な締結は、プラグタイプの接続によって行うことができる。このようにして、
図1及び
図2に見られる構成を達成することができる。旋回軸が矢状方向案内平面Eを通過する点が、患者の解剖学的構造を基準とした所望の位置に位置していない場合、この位置は、第1のリニアガイド400によって再調整することができる。この点が所望の位置に位置すると、アライメントロッド800を脛骨Tの前縁Vに位置合わせする。表示デバイス900は、アライメントロッド800、ひいてはそこに固定される脛骨切断ブロック700と一緒に第2の締結デバイス200も大腿骨トライアル顆部インプラント601に対して、ひいては第1の締結デバイス100に対して位置する角度位置を示す。この角度位置は、大腿骨Fと脛骨Tとの間の一般的な屈曲角度、又はこの角度の、正確な伸展からのずれを表す。傾斜を調整するために、第2の締結デバイス200は、サンプル顆部インプラント601に対して、及びこれに締結された第1の締結デバイス100に対して、傾斜に対応する正確な角度値を介して、第2の締結デバイス200に締結された脛骨切断ブロック700とともに枢動する。傾斜の角度値は、表示デバイス900から読み取ることもできる。脛骨切断高さは、前述のように、旋回軸の位置決めが予め実施されているため、この例では変更されない。当然ながら、表示デバイス900と組み合わせたアライメントロッド800を使用して、大腿骨F及び脛骨Tを正確に伸展位まで動かすこともできる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膝関節置換術に使用するための外科用器具(1)であって、
大腿骨遠位部(F)に装着される参照コンポーネント(600)に解放可能に締結するように構成された第1の締結デバイス(100)と、
前記第1の締結デバイス(100)から遠位方向に離間されており、脛骨近位部(T)の切断を案内するための脛骨切断ブロック(700)に解放可能に締結するように構成された第2の締結デバイス(200)と、
一端が前記第1の締結デバイス(100)に接続され、他端が前記第2の締結デバイス(200)に接続されており、これによって前記第2の締結デバイス(200)が矢状方向案内平面(E)内で前記第1の締結デバイス(100)に対して案内されるように枢動可能に移動可能である案内デバイス(300)と、
脛骨(T)の前縁(V)に対して位置合わせするように構成されており、前記第2の締結デバイス(200)に解放可能に剛性的に接続されているアライメントロッド(800)と、を備える外科用器具(1)。
【請求項2】
前記第2の締結デバイスは、前記アライメントロッド(800)の締結部分(801)が受容方向(A)に受容される受容部分を有することを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項3】
前記アライメントロッド(800)の前記締結部分(801)は、少なくとも一つのパーツ部分(802)において、非円形断面、特に角のある断面を有し、前記第2の締結デバイス(200)の前記受容部分(201)は、前記締結部分(801)、特に前記アライメントロッド(800)の前記少なくとも一つのパーツ部分(802)を補完するように、前記アライメントロッド(800)と前記第2の締結デバイス(200)との解放可能な剛性接続のために構成された形状を有することを特徴とする、請求項2に記載の外科用器具(1)。
【請求項4】
前記アライメントロッド(800)が、前記第2の締結デバイス(200)に対して少なくとも2つの角度位置で、前記第2の締結デバイス(200)と解放可能に剛性接続するように前記受容部分(201)において受容されることが可能であるように、前記非円形断面は、回転対称に、特に点対称に構成されていることを特徴とする、請求項3に記載の外科用器具(1)。
【請求項5】
前記アライメントロッド(800)は、S字状に曲がっていることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項6】
前記第2の締結デバイス(200)は、その形状がユーザの手の解剖学的構造に適合したハンドリング部分(203)を有することを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項7】
前記第2の締結デバイス(200)は、特に板状のベース部材(202)を備えており、前記ベース部材(202)には、前記ハンドリング部分(203)を形成するために、前記ユーザの手の少なくとも1本の指を受容するように構成された凹部(204)が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の外科用器具(1)。
【請求項8】
前記案内平面(E)における前記第1の締結デバイス(100)に対する前記第2の締結デバイス(200)の角度位置を表示するように構成された表示デバイス(900)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項9】
前記表示デバイス(900)は、少なくとも一つの目盛り及び少なくとも一つの読み取りマーク(901)を備え、前記目盛りは前記第1の締結デバイス(100)に接続され、前記読み取りマーク(901)は前記案内デバイス(300)に接続されるか、又はその逆であり、前記目盛りに対する前記読み取りマーク(901)の位置は、前記案内平面(E)における、前記第1の締結デバイス(100)に対する前記第2の締結デバイス(200)の現在の角度位置を表すことを特徴とする、請求項8に記載の外科用器具(1)。
【請求項10】
前記案内デバイス(300)は、少なくとも一つの湾曲した案内ロッド(301)と、前記案内ロッド(301)が摺動して移動可能に案内された状態で受容されるガイド受容部材(302)とを有し、前記ガイド受容部材(302)は前記第1の締結デバイス(100)に接続され、前記案内ロッド(301)は前記第2の締結デバイス(200)に接続されるか、又はその逆であり、前記第2の締結デバイス(200)は、前記第1の締結デバイスに対して円弧状に長い案内経路(C)に沿って、前記案内デバイス(300)によって直線的に移動可能に案内されることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項11】
第1のリニアガイドが設けられており、
前記第1のリニアガイド(400)によって、前記案内デバイス(300)は、
前記第1の締結デバイス(100)に接続されており、
前後方向に長い第1の案内経路に沿って前記案内平面(E)内で前記第1の締結デバイス(100)に対して案内されるように直線的に移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項12】
第2のリニアガイド(500)が設けられており、
前記第2のリニアガイド(500)によって、前記第2の締結デバイス(200)は、
前記案内デバイス(300)に接続されており、
前後方向に長い第2の案内経路(L2)に沿って前記案内平面(E)内で前記案内デバイス(300)に対して案内されるように直線的に移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項13】
固定デバイス(303)が設けられており、
前記固定デバイス(303)は、前記案内デバイス(300)の可動性を固定するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の外科用器具(1)と、
前記外科用器具(1)の前記第1の締結デバイス(100)に解放可能に締結される参照コンポーネント(600)と、
前記外科用器具(1)の前記第2の締結デバイス(200)に解放可能に締結される脛骨切断ブロック(700)と、
を備える、外科用器具システム(10)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
この目的を達成するために、まず、脛骨切断ブロック700を第2の締結デバイス200に解放可能に締結する。次に、外科用器具を、これに締結された脛骨切断ブロック700と一緒に大腿骨側で参照する。この目的を達成するために、第1の締結デバイス100は、トライアル顆部インプラント601に解放可能に締結される。大腿骨トライアル顆部インプラント601への第1の締結デバイスの解放可能な締結は、プラグタイプの接続によって行うことができる。このようにして、
図1及び
図2に見られる構成を達成することができる。旋回軸が矢状方向案内平面Eを通過する点が、患者の解剖学的構造を基準とした所望の位置に位置していない場合、この位置は、第1のリニアガイド400によって再調整することができる。この点が所望の位置に位置すると、アライメントロッド800を脛骨Tの前縁Vに位置合わせする。表示デバイス900は、アライメントロッド800、ひいてはそこに固定される脛骨切断ブロック700と一緒に第2の締結デバイス200も大腿骨トライアル顆部インプラント601に対して、ひいては第1の締結デバイス100に対して位置する角度位置を示す。この角度位置は、大腿骨Fと脛骨Tとの間の一般的な屈曲角度、又はこの角度の、正確な伸展からのずれを表す。傾斜を調整するために、第2の締結デバイス200は、サンプル顆部インプラント601に対して、及びこれに締結された第1の締結デバイス100に対して、傾斜に対応する正確な角度値を介して、第2の締結デバイス200に締結された脛骨切断ブロック700とともに枢動する。傾斜の角度値は、表示デバイス900から読み取ることもできる。脛骨切断高さは、前述のように、旋回軸の位置決めが予め実施されているため、この例では変更されない。当然ながら、表示デバイス900と組み合わせたアライメントロッド800を使用して、大腿骨F及び脛骨Tを正確に伸展位まで動かすこともできる。
以下の項目は、出願当初の特許請求の範囲に記載の範囲である。
(項目1)
人工膝関節置換術に使用するための外科用器具(1)であって、
大腿骨遠位部(F)に装着される参照コンポーネント(600)に解放可能に締結するように構成された第1の締結デバイス(100)と、
前記第1の締結デバイス(100)から遠位方向に離間されており、脛骨近位部(T)の切断を案内するための脛骨切断ブロック(700)に解放可能に締結するように構成された第2の締結デバイス(200)と、
一端が前記第1の締結デバイス(100)に接続され、他端が前記第2の締結デバイス(200)に接続されており、これによって前記第2の締結デバイス(200)が矢状方向案内平面(E)内で前記第1の締結デバイス(100)に対して案内されるように枢動可能に移動可能である案内デバイス(300)と、
脛骨(T)の前縁(V)に対して位置合わせするように構成されており、前記第2の締結デバイス(200)に解放可能に剛性的に接続されているアライメントロッド(800)と、を備える外科用器具(1)。
(項目2)
前記第2の締結デバイスは、前記アライメントロッド(800)の締結部分(801)が受容方向(A)に受容される受容部分を有することを特徴とする、項目1に記載の外科用器具(1)。
(項目3)
前記アライメントロッド(800)の前記締結部分(801)は、少なくとも一つのパーツ部分(802)において、非円形断面、特に角のある断面を有し、前記第2の締結デバイス(200)の前記受容部分(201)は、前記締結部分(801)、特に前記アライメントロッド(800)の前記少なくとも一つのパーツ部分(802)を補完するように、前記アライメントロッド(800)と前記第2の締結デバイス(200)との解放可能な剛性接続のために構成された形状を有することを特徴とする、項目2に記載の外科用器具(1)。
(項目4)
前記アライメントロッド(800)が、前記第2の締結デバイス(200)に対して少なくとも2つの角度位置で、前記第2の締結デバイス(200)と解放可能に剛性接続するように前記受容部分(201)において受容されることが可能であるように、前記非円形断面は、回転対称に、特に点対称に構成されていることを特徴とする、項目3に記載の外科用器具(1)。
(項目5)
前記アライメントロッド(800)は、S字状に曲がっていることを特徴とする、項目1から4のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
(項目6)
前記第2の締結デバイス(200)は、その形状がユーザの手の解剖学的構造に適合したハンドリング部分(203)を有することを特徴とする、項目1から5のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
(項目7)
前記第2の締結デバイス(200)は、特に板状のベース部材(202)を備えており、前記ベース部材(202)には、前記ハンドリング部分(203)を形成するために、前記ユーザの手の少なくとも1本の指を受容するように構成された凹部(204)が設けられていることを特徴とする、項目6に記載の外科用器具(1)。
(項目8)
前記案内平面(E)における前記第1の締結デバイス(100)に対する前記第2の締結デバイス(200)の角度位置を表示するように構成された表示デバイス(900)が設けられていることを特徴とする、項目1から7のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
(項目9)
前記表示デバイス(900)は、少なくとも一つの目盛り及び少なくとも一つの読み取りマーク(901)を備え、前記目盛りは前記第1の締結デバイス(100)に接続され、前記読み取りマーク(901)は前記案内デバイス(300)に接続されるか、又はその逆であり、前記目盛りに対する前記読み取りマーク(901)の位置は、前記案内平面(E)における、前記第1の締結デバイス(100)に対する前記第2の締結デバイス(200)の現在の角度位置を表すことを特徴とする、項目8に記載の外科用器具(1)。
(項目10)
前記案内デバイス(300)は、少なくとも一つの湾曲した案内ロッド(301)と、前記案内ロッド(301)が摺動して移動可能に案内された状態で受容されるガイド受容部材(302)とを有し、前記ガイド受容部材(302)は前記第1の締結デバイス(100)に接続され、前記案内ロッド(301)は前記第2の締結デバイス(200)に接続されるか、又はその逆であり、前記第2の締結デバイス(200)は、前記第1の締結デバイスに対して円弧状に長い案内経路(C)に沿って、前記案内デバイス(300)によって直線的に移動可能に案内されることを特徴とする、項目1から9のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
(項目11)
第1のリニアガイドが設けられており、
前記第1のリニアガイド(400)によって、前記案内デバイス(300)は、
前記第1の締結デバイス(100)に接続されており、
前後方向に長い第1の案内経路に沿って前記案内平面(E)内で前記第1の締結デバイス(100)に対して案内されるように直線的に移動可能であることを特徴とする、項目1から10のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
(項目12)
第2のリニアガイド(500)が設けられており、
前記第2のリニアガイド(500)によって、前記第2の締結デバイス(200)は、
前記案内デバイス(300)に接続されており、
前後方向に長い第2の案内経路(L2)に沿って前記案内平面(E)内で前記案内デバイス(300)に対して案内されるように直線的に移動可能であることを特徴とする、項目1から11のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
(項目13)
固定デバイス(303)が設けられており、
前記固定デバイス(303)は、前記案内デバイス(300)の可動性を固定するように構成されていることを特徴とする、項目1から12いずれか一項に記載の外科用器具(1)。
(項目14)
項目1から13のいずれか一項に記載の外科用器具(1)と、
前記外科用器具(1)の前記第1の締結デバイス(100)に解放可能に締結される参照コンポーネント(600)と、
前記外科用器具(1)の前記第2の締結デバイス(200)に解放可能に締結される脛骨切断ブロック(700)と、
を備える、外科用器具システム(10)
【外国語明細書】