(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159811
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241031BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/52 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137448
(22)【出願日】2024-08-16
(62)【分割の表示】P 2023177913の分割
【原出願日】2019-07-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 智之
(57)【要約】
【課題】エージング作業を短縮しつつ、精度良く温度を安定化させることができる実装装置を提供する。
【解決手段】ボンディングヘッド2とボンディングステージ3は、テープ300に電子部品100を実装する実装の本動作に先立つエージング動作として、テープ300から外れたテープ外ポジション92に移動する。そして、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3は、テープ外ポジション92で相対的に接触又は近接しながら、温度が安定するまでヘッド側ヒータ21とステージ側ヒータ31等により加熱される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状回路基板に並設された実装領域に電子部品を実装する実装装置であって、
前記テープ状回路基板を架け渡す搬送路を有し、前記実装が行われる本動作において前記搬送路に沿った搬送経路で前記テープ状回路基板を走行させるテープ走行手段と、
前記テープ状回路基板の前記搬送経路に配置可能とされ、前記テープ状回路基板を下面から支持するボンディングステージと、
前記ボンディングステージに支持された前記テープ状回路基板の前記実装領域に前記電子部品を押し付けて加熱するボンディングヘッドと、
前記ボンディングヘッド、又はこれに加えて前記ボンディングステージを加熱するヒータと、
を備え、
前記ボンディングヘッドと前記ボンディングステージは、
前記本動作に先立つエージング動作として、前記テープ状回路基板の前記搬送経路上から外れたテープ外ポジションに移動し、
当該テープ外ポジションで、前記ボンディングヘッドが前記電子部品を保持する保持面が、前記ボンディングステージが前記電子部品を支持する支持面に直接接触し、前記ヒータにより加熱されること、
を特徴とする実装装置。
【請求項2】
前記エージング動作において、
前記ボンディングヘッドの前記保持面と前記ボンディングステージの前記支持面は、
前記テープ外ポジションで直接接触と離間とを繰り返すこと、
を特徴とする請求項1記載の実装装置。
【請求項3】
前記テープ状回路基板の前記搬送経路上から外れたクリーニングポジションで前記ボンディングヘッドと前記ボンディングステージを清掃するクリーナを備え、
前記テープ外ポジションは、前記クリーニングポジションに設定されること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の実装装置。
【請求項4】
前記ボンディングヘッドの移動を制御するボンディングヘッド制御部と、
前記ボンディングステージの移動を制御するボンディングステージ制御部と、
前記ヒータを制御する加熱制御部と、を有する制御部を備え、
前記制御部は、
前記ボンディングヘッド制御部及び前記ボンディングステージ制御部を制御して、前記ボンディングヘッド及び前記ボンディングステージを、前記本動作が行われる実装ポジションから前記テープ外ポジションに移動させ、前記テープ外ポジションにおいて前記ボンディングヘッドの前記保持面と前記ボンディングステージの前記支持面とを直接接触するように移動させ、
前記加熱制御部を制御して前記ヒータを駆動させて前記エージング動作を制御すること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の実装装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記搬送路に前記テープ状回路基板の架け渡しが完了した後に前記エージング動作を実行すること、
を特徴とする請求項4記載の実装装置。
【請求項6】
実装予定の前記電子部品を待機させる部品供給部と、
前記部品供給部から次に実装する前記電子部品を受け取って、前記ボンディングヘッドに渡すピックアップヘッドと、
を備え、
前記ピックアップヘッドは、前記本動作時に、前記テープ外ポジションで前記ボンディングヘッドに前記電子部品を受け渡すこと、
を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の実装装置。
【請求項7】
前記ヒータは、前記ボンディングヘッドおよび前記ボンディングステージのいずれか一方又は両方に備えられること、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の実装装置。
【請求項8】
前記ヒータは、前記エージング動作の間、前記ボンディングステージ上に載置されること、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の実装装置。
【請求項9】
前記ボンディングヘッドと前記ボンディングステージは、前記本動作において、第1の時間の間、前記実装領域に前記電子部品を押し付ける近接状態と、第2の時間の間、前記近接状態よりも離間した離間状態となるように近接と離間とを繰り返し、
前記ボンディングヘッドは、前記エージング動作において、前記第1の時間と同じ時間の間、前記ボンディングステージに対して直接接触し、前記第2の時間と同じ時間の間、前記ボンディングステージに対して離間することを繰り返すこと、
を特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の実装領域が並設されたテープ状回路基板に電子部品を実装する実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実装装置は、ダイボンダ又フリップチップボンダとも呼ばれ、COFテープやTABテープ等のテープ状回路基板(以下、「テープ」と称する。)の実装領域に電子部品を載置し、実装領域と電子部品とを挟持しながら加圧及び加熱する。これにより、実装装置は、テープの実装領域に電子部品を電気的及び機械的に接続する。
【0003】
この実装装置は、テープの下面に面接触するボンディングステージと、電子部品を保持してテープに載置するボンディングヘッドを有する。ボンディングヘッドとボンディングステージは加熱されており、ボンディングヘッドが保持した電子部品をテープに押し付けることで、電子部品とテープに伝熱し、電子部品の電極とテープの実装領域の配線回路パターンとが接合される。
【0004】
テープは加熱により伸張する。そのため、電子部品の実装領域(実装領域の回路)は、テープの加熱による伸張を見越して統一的に小さく形成されている。即ち、ボンディングヘッドとボンディングステージは各実装領域に対して同一熱量を伝熱することが要求され、ボンディングヘッドとボンディングステージの温度は安定的であることが要求されている。
【0005】
しかし、実装装置の運転開始からある程度の時間が経過するまでは、ボンディングヘッドとボンディングステージの温度は不安定である。即ち、運転開始初期の段階では、ボンディングヘッドからボンディングステージに熱が移動し、ボンディングヘッドの温度が低下してしまう。ある程度の時間が経過すると、ボンディングステージとボンディングヘッドとの間の熱勾配は緩やかになり、ボンディングヘッドからボンディングステージへの熱移動も少なくなり、温度は安定に向かう。
【0006】
このように、多数の電子部品を順番に実装していく際、初期の実装におけるボンディングヘッドとボンディングステージの温度と、ある程度の時間が経過した後の実装におけるボンディングヘッドとボンディングステージの温度とは異なることとなる。従って、運転開始から初期の実装時には、テープが所望の伸び方をせず、実装精度が低下してしまう。
【0007】
ここで、実装装置の運転開始前に、ボンディングヘッドを平衡温度まで加熱しておくエージング動作が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1において、エージング動作は実装の偽装動作である。エージング動作では、半導体チップが無い状態で、実装の動作と同じように、ヒータレール上のリードフレームなどの基材にボンディングヘッドを接近及び離反させる。これにより、ボンディングヘッドへの熱移動がエージング動作中に発生し、ボンディングヘッドの温度が本動作前に安定する。従って、初期の実装からボンディングヘッドの温度は安定し、初期に実装された電子部品の実装精度の低下が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、電子部品をリードフレーム等の基材に配置することを前提としている。仮に、このような特許文献1の技術を上述したCOFテープ等のテープに電子部品を実装する実装装置に適用したとすると、エージング動作時によってテープの同じ箇所が長時間に亘って熱に晒され続け、また同じ箇所が幾度となくボンディングヘッドとの接触を繰り返し、薄く柔軟なテープ或いはテープ上に形成された配線回路パターンがダメージを受ける虞がある。
【0010】
そこで、テープを配置せず、エージング動作を実行することが考えられる。しかし、エージング動作が終わった後、速やかに実装の本動作に移ることはできず、テープを配置する作業を介在させなければならない。そうすると、実装の本動作に移る頃には、ボンディングヘッドとボンディングステージの温度が安定的な温度から変化してしまい、エージング動作が実効的でなくなる虞がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、テープの損傷を防止しつつ、温度を安定させたまま実装の本動作を実行できる実装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明に係る実装装置は、テープ状回路基板に並設された実装領域に電子部品を実装する実装装置であって、前記テープ状回路基板を架け渡す搬送路を有し、前記実装が行われる本動作において前記搬送路に沿った搬送経路で前記テープ状回路基板を走行させるテープ走行手段と、前記テープ状回路基板の前記搬送経路に配置可能とされ、前記テープ状回路基板を下面から支持するボンディングステージと、前記ボンディングステージに支持された前記テープ状回路基板の前記実装領域に前記電子部品を押し付けて加熱するボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッド、又はこれに加えて前記ボンディングステージを加熱するヒータと、を備え、前記ボンディングヘッドと前記ボンディングステージは、前記本動作に先立つエージング動作として、前記テープ状回路基板の前記搬送経路上から外れたテープ外ポジションに移動し、当該テープ外ポジションで、前記ボンディングヘッドが前記電子部品を保持する保持面が前記ボンディングステージが前記電子部品を支持する支持面に直接接触し、前記ヒータにより加熱されること、を特徴とする。
【0013】
前記テープ状回路基板の搬送経路上から外れたクリーニングポジションで前記ボンディングヘッドと前記ボンディングステージを清掃するクリーナを備え、前記テープ外ポジションは、クリーニングポジションに設定されるようにしてもよい。
【0014】
前記エージング動作を制御する制御部を備えるようにしてもよい。
【0015】
前記制御部は、前記搬送路に前記テープ状回路基板の架け渡しが完了したことを受けて前記エージング動作を実行するようにしてもよい。
【0016】
実装予定の前記電子部品を待機させる部品供給部と、前記部品供給部から次に実装する前記電子部品を受け取って、前記ボンディングヘッドに渡すピックアップヘッドと、を備え、前記ボンディングヘッドと前記ピックアップヘッドは、前記本動作時に、前記テープ外ポジションで前記電子部品を受け渡すようにしてもよい。
【0017】
前記ヒータは、前記ボンディングヘッド、前記ボンディングステージ又は両方に備えられるようにしてもよい。
【0018】
前記ヒータは、前記エージング動作の間、前記ボンディングステージ上に載置されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、テープ状回路基板の損傷を防止しつつ、温度を安定させたまま実装の本動作を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態に係る実装装置の構成を示す平面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る実装装置の構成を示す側面図である。
【
図3】ヒータの位置及び制御部の構成を示す模式図である。
【
図4】第1の実施形態に係る実装装置の本動作の第1の過程を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態に係る実装装置の本動作の第2の過程を示す模式図である。
【
図6】第1の実施形態に係る実装装置の本動作の第3の過程を示す模式図である。
【
図7】第1の実施形態に係り、ボンディングヘッドの昇降タイミングを示すタイムチャートである。
【
図8】第1の実施形態に係る実装装置のエージング動作の第1の過程を示す模式図である。
【
図9】第1の実施形態に係る実装装置のエージング動作の第2の過程を示す模式図である。
【
図10】第1の実施形態に係り、本動作とエージング動作でボンディングヘッドとボンディングステージとの接触及び離間のタイミングを比較するグラフである。
【
図11】第1の実施形態に係り、(a)は、エージング動作におけるボンディングヘッドとボンディングステージの接触及び離間のタイミングを示すタイムチャートであり、(b)は、ボンディングヘッドの温度変化を示すグラフであり、(c)はボンディングステージの温度変化を示すグラフである。
【
図12】第1の実施形態に係る実装装置のクリーニング動作を示す模式図である。
【
図13】第2の実施形態に係る実装装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
(全体構成)
本発明に係る実装装置の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は実装装置1の構成を示す上面図である。
図2は実装装置1の構成を示す側面図であり、説明の都合上、後述のローダ42及びアンローダ43を省いている。
図3は、実装装置1が備える制御部8の構成を示すブロック図である。実装装置1は、ダイボンダ又フリップボンダとも呼ばれ、テープ状回路基板300(以下、「テープ300」と称する。)の実装領域301に電子部品100を押し付け、また実装領域301と電子部品100を加熱する。これにより、実装装置1は、テープ300の実装領域301に電子部品100を電気的及び機械的に接続する。
【0022】
実装方式は例えばCOF(Chip On Film)方式である。テープ300は、ポリイミド等により成るフィルムであり、実装領域301が帯の長さ方向に沿って一定間隔で並設されている。実装領域301には、配線回路パターンが形成されている。実装領域301の配線回路パターンは、実装時の加熱によってテープ300が伸びることを見越して、伸長後に所望の大きさになるよう、一律に小さく形成されている。
【0023】
電子部品100はバンプ電極で実装領域301の配線回路パターンに直接接続される。この電子部品100は、電子回路に使用される部品であり、MEMS、半導体素子、抵抗及びコンデンサ等のチップが含まれ、半導体素子にはトランジスタ、ダイオード、LED及びサイリスタ等のディスクリート半導体、並びにICやLSI等の集積回路が含まれる。
【0024】
このような実装装置1は、テープ走行手段としての搬送路41、ローダ42及びアンローダ43を備える。搬送路41、ローダ42及びアンローダ43は、テープ300が実装ポジション91を通るようにテープ300を架設し案内する。また、搬送路41、ローダ42及びアンローダ43は、実装ポジション91に各実装領域301を停止させるように、テープ300を間欠的に走行させる。実装ポジション91は、実装処理が予定される箇所であり、電子部品100とテープ300とを電気的及び機械的に接続する予定の定位置である。
【0025】
また、実装装置1は、部品供給手段としての部品供給部5とピックアップヘッド6を備える。部品供給部5は、電子部品100を並べて待機させている。ピックアップヘッド6は、部品供給部5から電子部品100を受け取り、テープ外ポジション92に移送する。テープ外ポジション92は、搬送路41から外れた位置であり、テープ300の搬送経路から外れた位置である。
【0026】
更に、実装装置1は、実装手段としてのボンディングヘッド2とボンディングステージ3を備える。ボンディングステージ3は実装ポジション91に配置可能に構成され、実装ポジション3に実装領域301が停止されたテープ300の下面を支持する。ボンディングヘッド2は、テープ外ポジション92にて電子部品100をピックアップヘッド6から引き取り、実装ポジション91に移送する。そして、ボンディングヘッド2は、実装ポジション91にて、ボンディングステージ3に支持されたテープ300の実装領域301に電子部品100を押し付け、加熱する。
【0027】
テープ外ポジション92の主たる用途は、ボンディングヘッド2とピックアップヘッド6による電子部品100の受け渡しである。このテープ外ポジション92は、後述するように、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の温度を安定させる前処理動作における温度安定化ポジションを兼ねている。
【0028】
更に、実装装置1は、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3をテープ外ポジション92にて清掃するクリーナ7を備えている。即ち、テープ外ポジション92は、クリーナ7によってボンディングヘッド2とボンディングステージ3を清掃するクリーニングポジションも兼ねている。また、
図3に示すように、実装装置1は、これら各ハードウェア要素を制御する制御部8を備えている。
【0029】
(テープ走行手段)
搬送路41は、テープ300をガイドする一対のレール411を有する。テープ300は、この両ルール411に案内されながら間欠的に走行する。テープ300の1ピッチ当たりの走行距離は、隣り合う実装領域301の中心間距離と一致する。テープ300を繰り出すローダ42とテープ300を巻き取るアンローダ43は、搬送路41の両端側に設置されており、テープ300は搬送路41を通り、ローダ42とアンローダ43に架け渡される。
【0030】
(実装手段)
ボンディングヘッド2は実装ポジション91とテープ外ポジション92に移動可能に設けられる。ボンディングヘッド2は、テープ外ポジション92で電子部品100を保持し、実装ポジション91に移動して下降し、電子部品100を直下のテープ300に押し付けながら加熱する。ボンディングステージ3は、実装ポジション91において、上昇して搬送路41の隙間412に入り込み、ボンディングヘッド2によって上から加圧されるテープ300の下面と面接触して、電子部品100とテープ300とを下から支持しながら加熱する。また、ボンディングステージ3もテープ外ポジション92に移動可能に設けられる。
【0031】
このボンディングヘッド2は平坦な下面を有する。平坦な下面は電子部品100の保持面であり、保持面には電子部品100を吸引するための吸引孔が形成されている。ボンディングステージ3は平坦な上面を有する。平坦な上面はテープ300の下面と面接触する支持面である。
【0032】
また、
図3に示すように、ボンディングヘッド2にはヘッド側ヒータ21が埋設され、ボンディングステージ3にはステージ側ヒータ31が埋設されている。ヘッド側ヒータ21及びステージ側ヒータ31は例えばパルスヒータ等である。ヘッド側ヒータ21は、ボンディングヘッド2を加熱し、ステージ側ヒータ31は、ボンディングヘッド2を加熱する。ポリイミド等により成るテープ300と面接触するボンディングステージ3は、温度制限がボンディングヘッド2よりも厳しく、ボンディングヘッド2はボンディングステージ3よりも高温である。
【0033】
尚、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3は、低熱膨張係数の材料が使用されることが好ましい。低熱膨張係数の材料としては、SUS304、SUS430及びセラミック等が挙げられる。ボンディングヘッド2とボンディングステージ3が低熱膨張係数の材料により形成されることで、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の熱膨張に起因する、電子部品100と実装領域301とのズレを抑制する。
【0034】
このようなボンディングヘッド2は、実装ポジション91で下降するための昇降機構22及び実装ポジション91とテープ外ポジション92に移動するための平行移動機構23に取り付けられている。また、ボンディングステージ3は、実装ポジション91で上昇するための昇降機構32及び実装ポジション91とテープ外ポジション92に移動するための平行移動機構33に取り付けられている。
【0035】
昇降機構22、平行移動機構23、昇降機構32及び平行移動機構33は、例えばモータによって駆動されるボールネジ機構である。昇降機構22及び昇降機構32の移動方向は上下方向(Z方向)、平行移動機構23及び平行移動機構33の移動方向は、高さ一定で実装ポジション91とテープ外ポジション92を通るY方向である。つまり、実装ポジション91とテープ外ポジション92は、Y方向に沿う直線上に設定されている。
【0036】
更に、実装装置1は、上下二視野カメラ11、ボンディングヘッド2が取り付けられる位置補正機構24を備えている。上下二視野カメラ11は、搬送路4上であって実装ポジション91の直上に差し入れ可能に移動し、実装ポジション91に位置付けられた電子部品100と実装領域301の位置を撮像する。位置補正機構24は、例えばモータによって駆動されるボールネジ機構であり、ボンディングヘッド2を搬送路4に沿う方向(X方向)に移動させ、搬送路4の延び方向に沿った位置ズレを補正する。搬送路4と直交する方向(Y方向)に沿った位置ズレは、平行移動機構23によって補正される。
【0037】
(部品供給手段)
部品供給部5は、電子部品100が二次元方向に並べられたウエーハシート200を保持する。電子部品100は、バンプ電極が形成された電極形成面が上を向いたフェイスアップ状態で貼着されている。そして、部品供給部5は、電子部品100をピックアップポジション93に一つずつ位置させる。ピックアップポジション93は、部品供給部5からピックアップヘッド6が電子部品100をピックアップする箇所である。
【0038】
部品供給部5は、ピックアップ予定の電子部品100とピックアップポジション93との位置関係を識別し、ピックアップポジション93に電子部品100を精度良く位置させるためのカメラ51を備える。ピックアップヘッド6は、先端に電子部品100を保持する平坦な保持面を有し、保持面には負圧が発生する吸着孔が形成されている。また、ピックアップヘッド6は、昇降機構61、平行移動機構62及び反転機構63に取り付けられている。
【0039】
昇降機構61は、ピックアップポジション93にてピックアップヘッド6を部品供給部5に向けて接近又は離反させる。平行移動機構62は、ピックアップヘッド6をピックアップポジション93とテープ外ポジション92との間で移送する。これら昇降機構61及び平行移動機構62は、例えば昇降機構22、平行移動機構23、昇降機構32及び平行移動機構33と同じくボールネジ機構である。反転機構63は、電子部品100を保持したピックアップヘッド6を上下逆さまに反転させる。この反転機構63は、例えば、ピックアップヘッド6を高さ一定に延びる回転軸で軸支する回転モータであり、回転軸を180°回転させる。
【0040】
これにより、ピックアップヘッド6は、ピックアップポジション93にて電子部品100を部品供給部5からピックアップし、テープ外ポジション92に移動し、待ち構えるボンディングヘッド2に電子部品100を受け渡す。このとき、ボンディングヘッド2の保持面は下方を向いているので、ピックアップヘッド6は、電子部品100をピックアップポジション3でピックアップしてから、ボンディングヘッド2へ電子部品100を受け渡すまでの間に、上下反転する。
【0041】
(クリーナ)
クリーナ7は、例えば、上下両面に砥石を有し、平行移動機構71に取り付けられている。平行移動機構71は、クリーナ7を搬送路41に沿う方向(X方向)に移動させることで、待避ポジションからテープ外ポジション92へ移動させる。例えば、平行移動機構71は、モータによって駆動されるボールネジ機構である。テープ外ポジション92では、クリーナ7は、ボンディングヘッド2及びボンディングステージ3の間に位置する。ボンディングヘッド2の下降、及びボンディングステージ3の上昇により、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3をクリーナ7の上限面に存在する砥石に接触させる。そして、相対的に一方を揺動させると、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3を清掃することができる。
【0042】
(制御部)
制御部8は、CPU又はMPUとも呼ばれる演算制御装置、RAMとも呼ばれる主記憶装置、HDD又はSSD等の外部記憶装置、及び実装装置1の各ハードウェア構成に制御信号を送受信するインターフェースを備える所謂コンピュータである。この制御部8は、外部記憶装置に記憶されたプログラム及びデータを主記憶装置に展開し、演算制御装置でプログラムを実行し、実行結果に応じた駆動信号をインターフェースを通じて出力することで、実装装置1を制御する。
【0043】
この制御部8は、プログラムの処理により、主に演算制御部とインターフェースにより構成されるボンディングヘッド制御部82、ボンディングステージ制御部83、テープ走行制御部84、ピックアップ制御部85、クリーナ制御部87、加熱制御部88及び計時部89を備える。ボンディングヘッド制御部82とボンディングステージ制御部83を更に詳細に説明すると、ボンディングヘッド制御部82は、昇降制御部822と平行移動制御部823を備え、ボンディングステージ制御部83は、昇降制御部832と平行移動制御部833を備える。
【0044】
計時部89は、タイミング信号を出力する。ボンディングヘッド制御部82は、本動作、前処理動作又はクリーニング動作に応じて、タイミング信号に基づいてタイミングを計りながら、ボンディングヘッド2を所定昇降距離及び所定平行移動距離させる駆動信号を出力する。ボンディングステージ制御部83は、前処理動作又はクリーニング動作に応じて、タイミング信号に基づいてタイミングを計りながら、ボンディングステージ3を所定昇降距離及び所定平行移動距離させる駆動信号を出力する。加熱制御部88は、本動作及び前処理動作時、ヘッド側ヒータ21とステージ側ヒータ31のオンオフの駆動信号を出力する。
【0045】
テープ走行制御部84は、本動作時、タイミング信号に基づいてタイミングを計りながら、ローダ42及びアンローダ43の繰り出し及び巻き取りの駆動信号を出力する。ピックアップ制御部85は、本動作時、タイミング信号に基づいてタイミングを計りながら、ピックアップヘッド6の所定昇降距離、所定平行移動距離及び反転角度、並びに部品供給部5の2次元方向移動距離の駆動信号を出力する。クリーナ制御部87は、クリーニング動作時、タイミング信号に基づいてクリーナ7の所定平行移動距離の駆動信号を出力する。
【0046】
(動作)
(本動作)
この制御部8による制御下での実装装置1の本動作を
図4乃至
図7を参照しつつ説明する。本動作は、電子部品100をテープ300の実装領域301に実装する動作である。本動作は、テープ300が搬送路4を通るように架け渡され、また後述のエージング動作によりボンディングヘッド2とボンディングステージ3の温度が安定化した後に実行される。
【0047】
まず、
図4に示すように、部品供給部5は、ピックアップ予定の電子部品100をピックアップポジション93に位置合わせする。ピックアップヘッド6は、ピックアップポジション93で下降し、電子部品100を吸着保持し、部品供給部5から離れるように再上昇する。そして、ピックアップヘッド6は、テープ外ポジション92に向かう。テープ外ポジション92への移動中又は移動後、ピックアップヘッド6は、180°反転する。
【0048】
ボンディングヘッド2は、テープ外ポジション92に向けて平行移動し、テープ外ポジション92で下降する。そして、ボンディングヘッド2は、ピックアップヘッド6から電子部品100を吸着保持して受け取る。このとき、ピックアップヘッド3は、真空破壊又は大気開放により電子部品100を離す。
【0049】
図5に示すように、電子部品100を受け取ったボンディングヘッド2は、実装ポジション91に向かい、実装ポジション91で下降する。ボンディングステージ3は、実装ポジション91で搬送路4上のテープ300を下から支えている。ローダ42及びアンローダ43は、テープ300の走行を停止させて、実装ポジション91に実装領域301を位置させている。
【0050】
ボンディングヘッド2は、電子部品100をテープ300上の実装領域301に押し付けて加熱する。この押し付け及び加圧により、電子部品100が実装領域301に電気的及び機械的に接続される。
【0051】
図6に示すように、一個の電子部品100の実装が終了すると、ボンディングヘッド2は、電子部品100を離して上昇し、次の電子部品100を受け取るためにテープ外ポジション92に向かう。ピックアップヘッド6は、電子部品100を受け渡した後、次の電子部品100をピックアップするためにピックアップポジション93に向かう。部品供給部5は、次の電子部品100をピックアップポジション93に位置させるように二次元方向に移動する。ローダ42とアンローダ43は、テープ300の繰り出し及び巻き取りにより、テープ300を走行させ、電子部品100が実装された実装領域301の隣に位置する空の実装領域301を実装ポジション91に停止させる。
【0052】
図7は、ボンディングヘッド2の動作タイミングを示すタイムチャートである。
図7に示すように、ボンディングヘッド2は、ボンディングステージ3に対する近接状態と離間状態とを繰り返す。近接状態では、実装ポジション91にて電子部品100をテープ300に押し付けて加熱するために、ボンディングヘッド2は、ボンディングステージ3に近接する。離間状態は、電子部品100の実装完了後、ボンディングステージ3から離れ、次の電子部品100をテープ外ポジション92で受け取って、電子部品100を実装領域301に接触させることで、再び近接状態になるまでの状態をいう。
【0053】
各近接状態では同一の時間S1が費やされる。各離間状態では同一の時間S2が費やされる。即ち、ボンディングヘッド2は、本動作中、同一の接近・離間パターンを繰り返す。この接近・離間パターンは、ボンディングステージ3に近接するタイミング、近接している時間S1、ボンディングステージ3から離間するタイミング、及び離間している時間S2を要素とし、近接している場所、離間中の移動内容は当該接近・離間パターンの要素には含まれない。
【0054】
(クリーニング動作)
上述した本動作による電子部品100の実装を繰り返すと、ボンディングヘッド2やボンディングステージ3に汚れ等が付着するため、予め設定された時間毎、或いは、予め設定された実装回数毎にクリーニング動作を実行する。クリーニング動作時には、
図12に示すように、ボンディングヘッド2、ボンディングステージ3及びクリーナ7は、テープ外ポジション92に移動する。ボンディングヘッド2は下降してクリーナ7の上面の砥石に接触して揺動する。ボンディングステージ3は上昇してクリーナ7の下面の砥石に接触して揺動する。クリーニングが完了したら、クリーナ7はテープ外ポジション92から外れた待避ポジションに退避する。
【0055】
(前処理動作)
制御部8による制御下での実装装置1の前処理動作を
図8乃至
図11を参照しつつ説明する。前処理動作は、本動作に先立って行われ、テープ架設動作及びエージング動作を含む。テープ架設動作では、ローダ42にテープ300を繰り出させ、テープ300を搬送路4内にセットし、テープ300をアンローダ43に巻き付ける。テープ架設動作は、エージング動作前、又はエージング動作と並行してエージング動作の完了までには終了させておく。
【0056】
本動作に先立つエージング動作において、ヘッド側ヒータ21とステージ側ヒータ31はオンにされて本動作と動作条件(例えば、本動作と同じ単位時間当たりの熱量つまり、本動作と同じ設定温度)で、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3を加熱する。ヘッド側ヒータ21とステージ側ヒータ31は、前処理動作が終わり、本動作に移るまで継続的にオンにされて本動作と同じ単位時間当たりの熱量を発し、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3を加熱し続ける。
【0057】
エージング動作では、加熱中、
図8に示すように、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3を共にテープ外ポジション92に位置させ、お互いを離間させる。そして、まず、ボンディングステージ3をテープ300を支持する高さと同じ高さまで上昇させ、その後、
図9に示すように、ボンディングヘッド2を下降させる。これにより、ボンディングヘッド2の保持面をボンディングステージ3の支持面に接触又は近接させる。近接は、電子部品100とテープ300の厚みに相当する距離、又は電子部品100とテープ300がある場合の熱伝導量と同一になる距離が好ましい。
【0058】
図8に示す離間状態と
図9に示す接触又は近接状態(以下、接触又は近接状態と単に接触状態という)を例えば20~30回以上の所定回数繰り返す。20~30回以上の繰り返す回数は例示であり、安定した温度を達成するのに必要な繰り返しの回数は、経験によって、実験によって、計算によって、又はシミュレーションによって導くことができる。離間状態は、
図7に示す本動作における離間状態と同じ時間S2だけ持続させる。接触状態は、
図7に示す本動作における近接状態と同じ時間S1だけ持続させる。即ち、
図10の(b)に示すように、エージング動作では、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3は、テープ外ポジション92にて、テープ300及び電子部品100が無い状態で、本動作と同じ接近・離間パターンで動作する。尚、
図10の(a)は本動作での接近・離間パターンを示す。
【0059】
図11の(a)は、エージング動作におけるボンディングヘッド2の離間状態及び接触状態のタイミングを示すタイムチャートであり、(b)は、エージング動作におけるボンディングヘッド2の温度変化を模式的に示すグラフであり、(c)はエージング動作におけるボンディングステージ3の温度変化を模式的に示すグラフである。
【0060】
図11に示すように、エージング動作の初期では、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の温度差が大きい。ボンディングヘッド2はボンディングステージ3よりも温度が高い。そのため、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3が接触又は近接している時間S1の間、ボンディングヘッド2は大幅に温度低下し、ボンディングステージ3は大幅に温度上昇する。
【0061】
一方、ボンディングヘッド2と室温の差は大きく、ボンディングステージ3と室温との差は小さい。そのため、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3が離間している時間S2の間、ボンディングヘッド2の温度上昇は小幅であり、ボンディングステージ3の温度低下は小幅である。従って、
図11中、4回目に離間状態と接触状態とを繰り返すまでは、ボンディングヘッド2の温度低下が続き、ボンディングステージ3の温度上昇が続く。
【0062】
しかし、ボンディングヘッド2の温度低下が続き、ボンディングステージ3の温度上昇が続いたため、エージング動作の後期では、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の温度差が初期と比べて小さくなる。そのため、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3が接触又は近接している時間S1の間、ボンディングヘッド2の温度低下は初期と比べて小幅になり、ボンディングステージ3の温度上昇は初期と比べて小幅になる。
【0063】
一方、ボンディングヘッド2の温度低下が続いたため、ボンディングヘッド2と室温との差は小さくなる。また、ボンディングステージ3の温度上昇が続いたため、ボンディングヘッド3と室温との差は大きくなる。そのため、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3が離間している時間S2の間、ヘッド側ヒータ21によるボンディングヘッド2の温度上昇は初期と比べて大きくなり、ボンディングステージ3の温度低下は初期と比べて大きくなる。
【0064】
やがて、時間S1の際のボンディングヘッド2の温度低下と時間S2の際のボンディングヘッド2の温度上昇が均衡する。尚、
図11は、5回目以降で、ボンディングヘッド2の温度上限T1、温度下限T2、温度低下率及び温度上昇率がそれぞれほぼ一定の値を維持することとなり、平均値が一定に安定する状態を模式的に示したものである。また、時間S1の際のボンディングステージ3の温度上昇と時間S2の際のボンディングステージ3の温度低下が均衡し、
図11は、5回目以降で、ボンディングステージ3の温度上限T3、温度下限T4、温度低下率及び温度上昇率がそれぞれほぼ一定の値を維持することとなり、平均値が一定に安定する状態を模式的に示したものである。即ち、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の温度は、5回目以降、各回とも同じ温度変化パターン及び温度変化量となり安定する。
【0065】
以上の前処理動作が終了したときには、既にテープ300は架け渡されており、テープ300において最初に電子部品100が実装される実装領域301が実装ポジション91に位置付けられているので、速やかに本動作に移行可能となっている。従って、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の温度が安定したまま、最初の実装から最後の実装までテープ300には、同じ温度上限T1及びT3(尚、T1≠T3)、同じ温度下限T2及びT4(尚、T2≠T4)、同じ温度低下率及び同じ温度上昇率で一定の平均値の熱がかけられる。そうすると、最初の実装から最後の実装まで、実装領域301の熱による伸び方は均一化され、全ての実装領域301に対して全ての電子部品100を同じ精度で実装することができる。
【0066】
また、この前処理動作の間、ユーザがボンディングヘッド2とボンディングステージ3の各安定した温度を設定する試行錯誤は行われていない。前処理動作では、テープ外ポジション92にて本動作と同じタイミングでボンディングヘッド2とボンディングステージ3の接触又は近接と離反を繰り返しているだけでよい。
【0067】
(作用効果)
以上のように、実装領域301に電子部品100を実装する実装装置1は、搬送路4とボンディングヘッド2とボンディングステージ3を備えるようにした。搬送路4は、実装領域301が帯方向に並設されたテープ300が走行する。ボンディングステージ3は、搬送路4によるテープ300の搬送経路に配置可能とされ、テープ300を下面から支持する。ボンディングヘッド2は、電子部品100を保持してボンディングステージ3に支持されたテープ300の実装領域301に押し付けて加熱する。ボンディングヘッド2とボンディングステージ3には、ヘッド側ヒータ21とステージ側ヒータ31を備える。
【0068】
そして、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3は、テープ300に電子部品100を実装する実装の本動作に先立つエージング動作として、テープ300から外れたテープ外ポジション92に移動し、テープ外ポジション92で接触又は近接と離間を繰り返しながら加熱される。
【0069】
これにより、テープ300を搬送路4に架け渡した状態で、または、架け渡しつつ、エージング動作を実施できる。より具体的には、エージング動作の開始時、または、エージング動作が完了するまでに、テープ300において最初に電子部品100が実装される実装領域301を実装ポジション91に位置させておくことができる。そうすると、エージング動作後にテープ300を架け渡す作業が介在することによって、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の温度が安定した温度から変化してしまうことを抑制でき、実装精度が更に向上する。
【0070】
しかも、エージング動作は、実装ポジション92のテープ300の搬送路4から外れたポジションであるテープ外ポジション92に移動して実施されるので、エージング動作中のボンディングヘッド3の熱(輻射熱)によって、搬送路4に架け渡されたテープ300が加熱されることが防止できる。これにより、テープ300に不用意な熱膨張が発生したり、加熱による損傷を受けたりすることが防止可能となる。したがって、実装精度の更なる向上が期待できるうえ、実装品質も向上させることができる。
【0071】
尚、テープ300を搬送路4に架け渡した状態でエージング動作を実行する場合、テープ300の最初の実装領域301の実装ポジション301への位置付けが完了したことを受けて、エージング動作を自動的に開始させるようにしてもよい。例えば、制御部8は、テープ走行制御部84からの信号により、テープ300の最初の実装領域301が実装ポジション91で停止したことを示す信号をテープ走行制御部84から受け取る。そして、この信号受信を契機に、ボンディングヘッド制御部82及びボンディングステージ制御部83は、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の動きがエージング動作となるように駆動信号を出力する。これにより、テープ架設動作を行なうだけで、エージング動作を自動的に実行し完了させることが可能となる。
【0072】
また、エージング動作を行うテープ外ポジション92は、クリーナ7でボンディングヘッド2とボンディングステージ3を清掃する位置とした。これにより、テープ外ポジション92へ位置させる移動機構をエージング動作のために使用することができる。但し、エージング動作もクリーニング動作も電子部品100の受渡し動作も、テープ300から外れた位置であれば、共通の場所であっても異なる場所であっても、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の温度の安定化に差し支えはない。
【0073】
この実装装置1では、ヘッド側ヒータ21とステージ側ヒータ31の両方を備えるようにしたが、所望の温度に安定化することができれば、何れか一方を備えるようにしてもよい。但し、ボンディングヘッド2にヘッド側ヒータ21を設置すれば、テープ300に接していないボンディングヘッド2の温度をより高く設定することができ、電子部品100とテープ300の実装領域301との接合時間を短縮できる。但し、所望温度に近い範囲で安定化させ、また素早く安定化させるためには、ステージ側ヒータ31も設置することが望ましい。
【0074】
また、本動作を完全に模擬するために、ボンディングステージ3上にダミーの電子部品100とダミーのテープ300の欠片を重ねて載置しておき、これらダミーを挟み込みながらエージング動作を行うようにしてもよい。電子部品100とテープ300を介した伝熱態様も再現でき、本動作で安定した温度とエージングで安定した温度とを精度良く一致できる。即ち、本動作の初期における実装においての温度変化が更に抑制される。
【0075】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ボンディングヘッド2は、エージング動作として、実装の本動作を模擬した動作タイミングで、ボンディングステージ3に接触又は近接と、ボンディングステージ3からの離間とを交互に所定回数繰り返すようにした。但し、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3の加熱方法としては、これに限らない。
【0076】
例えば、
図13に示すように、実装装置1は、エージング動作時のみ設置され、実装の本動作では除かれるヒータ12を備えている。ヒータ12は、エージング動作時に作業者によってボンディングステージ3上に載置される。ボンディングヘッド2は、テープ外ポジション92でボンディングステージ3に向けて移動する。そして、ボンディングステージ3上のヒータ12と近接又は接触を所定時間維持する。換言すれば、ボンディングヘッド2は、ヒータ12が載ったボンディングステージ3に近接又は接触する。近接又は接触する所定時間は、安定した温度に達する時間であり、経験によって、実験によって、計算によって、又はシミュレーションによって導いておく。
【0077】
所定時間が経過すると、ヒータ12は、作業者によって取り除かれても良いし、ボンディングヘッド2によって吸着保持されて、実装ポジション91やテープ外ポジション92とは別の場所に移動させられるようにしてもよい。ボンディングヘッド2によってヒータ12が取り除かれる方式の場合には、自動的に実装の本動作に移行することができる。
【0078】
ヒータ12に加えて、ヒータ側ステージ21とステージ側ステージ31もオンにして、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3により多くの熱を与え、エージング動作に要する時間を短縮してもよい。ヒータ12はボンディングステージ3に配置せず、ヒータ側ステージ21とステージ側ステージ31をオンにして、ヒータ側ステージ21とステージ側ステージ31のみによって所定時間接触又は離間させ続けるエージング動作を行うようにしてもよい。
【0079】
尚、所定時間を経験又は実験的に導く方法としては次のような手法が挙げられる。即ち、熱電対等の温度計を、ボンディングステージ3に載置し、又はボンディングヘッド2に取り付け、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3とを接触又は近接させる。温度計が示す温度変化を観察し、温度が安定するまでに要した時間を計り、測定結果を所定時間とすればよい。同様に、エージング動作として実装の本動作を模擬するように、ボンディングヘッド2とボンディングステージ3とが近接状態と離間状態とを繰り返す場合についても、この繰り返し回数を経験又は実験的に導く方法として、温度計によって温度の安定が検出されるまでの繰り返し回数をカウントすればよい。
【0080】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 実装装置
11 上下二視野カメラ
12 ヒータ
2 ボンディングヘッド
21 ヘッド側ヒータ
22 昇降機構
23 平行移動機構
24 位置補正機構
3 ボンディングステージ
31 ステージ側ヒータ
32 昇降機構
33 平行移動機構
41 搬送路
411 レール
412 隙間
42 ローダ
43 アンローダ
5 部品供給部
51 カメラ
6 ピックアップヘッド
61 昇降機構
62 平行移動機構
63 反転機構
7 クリーナ
71 平行移動機構
8 制御部
82 ボンディングヘッド制御部
822 昇降制御部
823 平行移動制御部
83 ボンディングステージ制御部
832 昇降制御部
833 平行移動制御部
84 テープ走行制御部
85 ピックアップ制御部
87 クリーナ制御部
88 加熱制御部
89 計時部
91 実装ポジション
92 テープ外ポジション
93 ピックアップポジション
100 電子部品
200 ウエーハシート
300 テープ状回路基板,テープ
301 実装領域