IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マリンクロット ホスピタル プロダクツ アイピー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特開-器官の生存率を改善する方法 図1
  • 特開-器官の生存率を改善する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159817
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】器官の生存率を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 1/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A01N1/02
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024137625
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2022123251の分割
【原出願日】2018-08-24
(31)【優先権主張番号】62/550,463
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517385184
【氏名又は名称】マリンクロット ホスピタル プロダクツ アイピー アンリミテッド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジム ポテンジアーノ
(57)【要約】
【課題】器官の生存率を改善する方法の提供。
【解決手段】本開示は、NOガスを含む組成物を器官(複数可)に直接連続して投与することにより、単数または複数の器官の生存率を改善する方法を提供する。移植を目的とする器官の生存率を改善する方法であって、器官灌流システムまたは換気を介して、器官にNOガスを含む組成物を直接連続して投与することを含む方法である。組成物が少なくとも1時間、ただし12時間を超えずに投与される。器官がドナーから採取された後に組成物が投与される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム、デバイス、方法等。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年8月25日に出願された米国仮出願第62/550,463号の優先権を主張するものであり、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、NOガスを含む組成物を器官(複数可)に直接連続して投与することにより、単数または複数の器官の生存率を改善する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
適切な血流を奪われた細胞、組織、器官、及び生物は、酸化ストレスによる虚血性障害を受け、最終的に死亡する。虚血性障害を軽減する従来の方法は、罹患した組織を酸素で灌流することを含むが、この処置は重大な組織の損傷を引き起こすことがあり、脳卒中または心停止中の脳損傷などの重篤な及び/または永続的な傷害を引き起こす可能性がある。
【0004】
組織及び器官を代謝低下状態に誘導することにより、虚血及び再灌流障害を低減する試みがなされてきた。例えば、移植(transplantまたはgraft)のために生体組織が保存される状況では、代謝活動を減らすための1つの一般的な方法は、生理食塩水などの生理的な流体に組織または器官を浸し、寒冷な環境に置くことによるものである。しかし、そのような方法には長期間は頼れず、器官の移植と四肢の再付着の成功は、依然として、器官または四肢が無傷の生物と接触していない時間に対して反比例する関連である。
【0005】
したがって、当技術分野では、虚血及び/または再灌流障害の前に器官の生存率を改善させる必要性が依然存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、移植を目的とする器官の生存率を改善する方法であって、器官灌流システムまたは換気を介して、器官にNOガスを含む組成物を直接連続して投与することを含む方法を包含する。
【0007】
別の態様では、本開示は、虚血再灌流により損傷した器官の生存率を改善する方法であって、器官灌流システムまたは換気を介して器官に約20ppm以下のNOガスを含む組成物を直接連続して投与することを含む方法を包含する。様々な実施形態において、治療を必要とする器官は、外傷、外科手術、呼吸停止、または心停止により損傷を受けた器官である。特定の実施形態では、治療を必要とする器官は、移植を目的とした器官である。例示的な実施形態では、治療を必要とする器官は、ドナーから摘出された、移植を目的とする器官である。
【0008】
別の態様において、本開示は、虚血再灌流により損傷した器官の生存率を改善する方法であって、(a)約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物を最長約1時間(「負荷期間」)器官に投与すること、次いで(b)器官灌流システムまたは換気を介して、約20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含む方法を包含する。様々な実施形態において、治療を必要とする器官は、外傷、外科手術、呼吸停止、または心停止により損傷を受けた器官である。特定の実施形態では、治療を必要とする器官は、移植を目的とした器官である。例示的な実施形態では、治療を必要とする器官は、ドナーから摘出された、移植を目的とした器官である。
【0009】
別の態様において、本開示は、移植を目的とする器官の生存率を改善する方法であって、器官灌流システムまたは換気を介して、器官に20ppm以下のNOガスを含む組成物を直接連続して投与することを含む方法を包含する。いくつかの実施形態では、器官は脳死のドナーに存在する。他の実施形態において、器官は、NOガスを含む組成物の投与前にドナーから摘出されている。例示的な実施形態では、器官は肺、腎臓、または心臓である。
【0010】
別の態様において、本開示は、移植を目的とする器官の生存率を改善する方法であって、(a)約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物を最長約1時間(「負荷期間」)器官に投与すること、次いで(b)器官灌流システムまたは換気を介して、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含む方法を包含する。いくつかの実施形態では、器官は脳死のドナーに存在する。他の実施形態において、器官は、NOガスを含む組成物の投与前にドナーから摘出されている。例示的な実施形態では、器官は肺、腎臓、または心臓である。
【0011】
別の態様において、本開示は、それを必要とする器官の虚血再灌流障害を治療する方法であって、器官灌流システムまたは換気を介して器官に直接20ppm以下のNOガスを含む組成物を連続して投与することを含む方法を包含する。様々な実施形態において、治療を必要とする器官は、外傷、外科手術、呼吸停止、または心停止により損傷を受けた器官である。特定の実施形態では、治療を必要とする器官は、移植を目的とした器官である。例示的な実施形態では、治療を必要とする器官は、ドナーから摘出された、移植を目的とした器官である。
【0012】
別の態様では、本開示は、それを必要とする器官の虚血再灌流障害を治療する方法であって、(a)約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物を最長約1時間(「負荷期間」)器官に投与すること、次いで(b)器官灌流システムまたは換気を介して、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含む方法を包含する。様々な実施形態において、治療を必要とする器官は、外傷、外科手術、呼吸停止、または心停止により損傷を受けた器官である。特定の実施形態では、治療を必要とする器官は、移植を目的とした器官である。例示的な実施形態では、治療を必要とする器官は、ドナーから摘出された、移植を目的とした器官である。
【0013】
別の態様において、本開示は、移植のための方法であって、(a)20ppm以下のNOガスを含む組成物を、移植を目的とした器官に直接最長12時間連続して投与すること、及び(b)器官をレシピエントに移植することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、器官は脳死のドナーに存在する。他の実施形態において、器官は、NOガスを含む組成物の投与前にドナーから摘出されている。例示的な実施形態では、器官は肺、腎臓、または心臓である。
【0014】
別の態様において、本開示は、移植のための方法であって、(a)約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物を最長約1時間(「負荷期間」)器官に投与すること、次いで(b)20ppm以下のNOガスを含む組成物を、移植を目的とした器官に直接最長12時間連続して投与すること、次に(c)器官をレシピエントに移植することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、器官は脳死のドナーに存在する。他の実施形態において、器官は、NOガスを含む組成物の投与前にドナーから摘出されている。例示的な実施形態では、器官は肺、腎臓、または心臓である。
【0015】
本開示の他の態様及び反復は、より徹底的に以下に説明されている。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
移植を目的とする器官の生存率を改善する方法であって、器官灌流システムまたは換気を介して、前記器官に20ppm以下のNOガスを含む組成物を直接連続して投与することを含む、前記方法。
(項目2)
前記組成物が少なくとも1時間、ただし12時間を超えずに投与される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記器官がドナーから採取された後に前記組成物が投与される、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
前記器官が脳死ドナーの体内にある間に前記組成物が投与される、項目1または項目2に記載の方法。
(項目5)
前記器官が、肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、腸、胸腺、及び角膜からなる群から選択される、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
NOの量が約10ppm~約15ppmである、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
NOの量が約5ppm~約10ppmである、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
NOの量が約1ppm~約5ppmである、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記組成物が器官灌流液であり、任意で1つ以上の追加の化合物(複数可)をさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記灌流液が無細胞灌流液である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記方法が、約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物を20ppm以下のNOガスを含む前記組成物を連続して投与する直前の最長約1時間(「負荷期間」)前記器官に投与することをさらに含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記負荷用量組成物が灌流液である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記灌流液が無細胞灌流液である、項目12に記載の方法。
(項目14)
NOガスの総投与時間が12時間を超えない、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
ミトコンドリア機能が顕著に維持される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
ミトコンドリア活性酸素種(mtROS)が、非処置対照と比較して前記器官内で減少する、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
虚血再灌流により損傷した器官の生存率を改善する方法であって、器官灌流システムを介して前記器官に20ppm以下のNOガスを含む組成物を直接連続して投与することを含む、前記方法。
(項目18)
前記組成物が少なくとも1時間、ただし12時間を超えずに投与される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記器官は移植が目的とされ、前記器官がドナーから採取された後に前記組成物が投与される、項目17または項目18に記載の方法。
(項目20)
前記器官は移植が目的とされ、前記器官が脳死ドナーの体内にある間に前記組成物が投与される、項目17または項目18に記載の方法。
(項目21)
前記器官が、肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、腸、胸腺、及び角膜からなる群から選択される、項目17~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
NOの量が約10ppm~約15ppmである、項目17~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
NOの量が約5ppm~約10ppmである、項目17~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
NOの量が約1ppm~約5ppmである、項目17~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記組成物が器官灌流液であり、任意で1つ以上の追加の化合物(複数可)をさらに含む、項目17~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記灌流液が無細胞灌流液である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記方法が、約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物を20ppm以下のNOガスを含む前記組成物を連続して投与する直前の最長約1時間(「負荷期間」)前記器官に投与することをさらに含む、項目17~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記負荷用量組成物が灌流液である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記灌流液が無細胞灌流液である、項目28に記載の方法。
(項目30)
NOガスの総投与時間が12時間を超えない、項目17~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
ミトコンドリア機能が顕著に維持される、項目17~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
ミトコンドリア活性酸素種(mtROS)が、非処置対照と比較して前記器官内で減少する、項目17~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
移植方法であって、
(a)器官灌流システムを介して、20ppm以下のNOガスを含む組成物を、移植を目的とした器官に連続して直接投与すること、及び
(b)前記器官をレシピエントに移植すること
を含む、前記方法。
(項目34)
前記組成物が少なくとも1時間、ただし12時間を超えずに投与される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記器官がドナーから採取された後に前記組成物が投与される、項目33または項目34に記載の方法。
(項目36)
前記器官が脳死ドナーの体内にある間に前記組成物が投与される、項目33または項目34に記載の方法。
(項目37)
前記器官が、肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、腸、胸腺、及び角膜からなる群から選択される、項目33~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
NOの量が約10ppm~約15ppmである、項目33~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
NOの量が約5ppm~約10ppmである、項目33~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
NOの量が約1ppm~約5ppmである、項目33~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記組成物が器官灌流液であり、任意で1つ以上の追加の化合物(複数可)をさらに含む、項目33~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記灌流液が無細胞灌流液である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記方法が、ステップ(a)の直前の最長約1時間(「負荷期間」)、約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物を前記器官に投与することをさらに含む、項目33~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記負荷用量組成物が灌流液である、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記灌流液が無細胞灌流液である、項目44に記載の方法。
(項目46)
NOガスの総投与時間が12時間を超えない、項目33~45のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
ミトコンドリア機能が顕著に維持される、項目33~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
ミトコンドリア活性酸素種(mtROS)が、非処置対照と比較して前記器官内で減少する、項目33~47のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
アプリケーションファイルは、カラーで実行された少なくとも1つの写真を含む。カラー写真を含むこの特許出願公開の複製は、要求及び必要な料金の支払いに応じて、省庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】EVLP回路の実施形態の図解である。
図2】EVLP回路の実施形態の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、NOガスを含む組成物を器官(複数可)に直接連続して投与することにより、単数または複数の器官の生存率を改善する方法を提供する。本開示は、移植を目的とする器官、ならびに他の原因による虚血再灌流障害のある器官の生存率を改善する方法を包含する。また、本開示により、移植器官の能力を改善する方法及び移植のための方法が提供される。本明細書で使用される場合、「NOガス」という用語は、気体窒素酸化物を示す。好ましい実施形態では、NOガスはガス状の一酸化窒素(gNO)である。組成物のさらなる成分の非限定的な例には、不活性希釈ガス(例えば、ヘリウム、ネオンなど)、ヒトアルブミン、カプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及び酸素ガス(O)が含まれ得る。NOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与するとは、投与期間中、中断することなく器官がNOガスと直接接触することを意味する。本開示は、器官の種類によって制限されない。適切な器官の非限定的な例には、肝臓、腎臓、膵臓、心臓、肺、腸、胸腺、角膜、血管新生複合同種移植片(例えば、顔、手など)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。器官の生存率は、NOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与しない方法により得られた器官と比較して改善されよう。本明細書で使用される場合、「生存率」という用語は、意図された目的に対する器官の適合性を示す。器官の生存率の測定値は、器官の種類によって異なり得、当技術分野で知られているものである。
【0019】
本開示全体に適用されるいくつかの定義をこれより提示する。本明細書で使用される場合、「約」は、明示的に示されているかどうかにかかわらず、整数、分数、百分率などを含む数値を示す。「約」という用語は、全般に、列挙された値の±0.5~1%、±1~5%または±5~10%などの数値の範囲を指し、引用された値と同等、例えば、同じ機能または結果を有するとみなされる。
【0020】
「含む」という用語は、「含むが、必ずしも限定されない」ことを意味する。これは、特に、前述の組み合わせ、群、シリーズなどにおけるオープンエンドの包含またはメンバーシップを示す。本明細書で使用される場合、「comprising(含む)」及び「including(含む)」という用語は、包括的及び/またはオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素または方法プロセスを除外しない。「から本質的になる」という用語は、「comprising(含む)」よりも限定的であるが、「からなる」ほど制限を加えるものではない。具体的には、「から本質的になる」という用語は、特定の材料またはステップ、及び特許請求された発明の本質的な特性に実質的に影響しないものにメンバーシップを制限する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「虚血再灌流障害」という用語は、虚血、再灌流、またはその両方により生じる損傷を示す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語は、治療的処置と、予防または予防措置との両方を指し、目的は、望ましくない生理学的変化または疾患/障害を予防または減速(軽減)することである。有益または望ましい臨床結果としては、限定されないが、症状の緩和、疾患の範囲の縮減、疾患の安定した(すなわち、悪化していない)状態、疾患の進行の遅延または減速、疾患の状態の寛解または緩和、及び寛解(部分的寛解または完全寛解)が、検出可能であっても検出不可能であっても、挙げられる。また、「治療」は、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することを意味する場合がある。治療を必要とする者としては、すでに疾患もしくは障害に罹患している者、ならびに疾患もしくは障害を有する傾向にある者、または疾患もしくは障害を予防すべき状態にある者が挙げられる。
【0023】
(a)NOガスを含む組成物
本開示によれば、NOガスを含む組成物は、器官に連続して直接投与される。本開示の組成物は、気体または液体であり得る。本開示の組成物が液体である場合、NOガスは液体に可溶化される。別の言い方をすると、「組成物が液体であるNOガスを含む組成物」は、可溶化NOガスを含む液体である。同様に、「組成物が液体である20ppmのNOガスを含む組成物」は、20ppmの一酸化窒素を含む液体であり、20ppmの一酸化窒素は液体に可溶化されるNOガスの量である。さらに、組成物が液体である実施形態では、器官に直接投与されるNOガスの量は、液体に可溶化されたNOガスの量である。NOガスは、当技術分野で知られている任意の方法によって生成及び提供することができる。
【0024】
一部の実施形態では、組成物は気体である。NOガスに加えて、組成物は、不活性希釈ガス(複数可、例えば、ヘリウム、ネオンなど)、窒素、酸素、及び水を含むがこれらに限定されない、1つ以上の追加の成分をさらに含んでもよい。例示的な実施形態では、NOガスはgNOである。組成物が気体である場合、組成物は、人工呼吸器または当技術分野で知られている他のいずれかの方法を介して器官に直接投与することができる。
【0025】
他の実施形態では、組成物は灌流液である。「灌流液」という用語は、組織または器官の保存、灌流、または再灌流に使用されるいずれかの流体を示す。灌流液は、無菌であり、等張性であることが頻繁にある。可溶化NOガスに加えて、灌流液は、カプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含むがこれらに限定されない1つまたは複数の追加の成分をさらに含んでもよい。灌流液の組成物はまた、器官の間で異なる場合がある。好ましい実施形態では、灌流液は無細胞灌流液である。そのような溶液には、セルシオ溶液、クレブス・ヘンセライト溶液、通常の生理食塩水、ウィスコンシン大学溶液、セントトーマスII溶液、コリンズ溶液、スタンフォード溶液、パーフィデックス(登録商標)[Celsior solution, Krebs-Henseleit solution, normal saline solution, University of Wisconsin solution, St. Thomas II solution, Collins solution, Stanford solution, Perfidex]、Steen Solution(商標)またはそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。例示的な実施形態では、組成物は無細胞灌流液であり、NOガスはgNOである。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。灌流液を器官に直接投与するのに適した方法は当技術分野で知られており、器官灌流システムを含むがこれに限定されない。本開示は、いずれの特定の器官灌流システムにも限定されない。一般的に言えば、器官灌流システムは、灌流液の移動と制御のためのポンプ、システムの温度を制御する手段、カニューレ、及び生理学的パラメータを測定する手段を備えてもよい。器官灌流システムの非限定的な例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,629,358号に開示されている。また、器官灌流システムの非限定的な例は、図1及び図2に開示されている。
【0026】
器官の生存率を改善するために、治療有効量のNOガスが器官に直接投与される。投与される組成物の1つまたは複数のタイプに応じて、器官へのNOガスの直接投与は、器官灌流システム、人工呼吸器、またはそれらの任意の組み合わせを介して生じ得る。器官灌流システムと人工呼吸器を組み合わせて使用する実施形態では、器官灌流システムと人工呼吸器を同時に使用して、NOガスを含む組成物を器官に直接投与してもよい。あるいは、または加えて、器官灌流システムと人工呼吸器を連続して使用して、NOガスを含む組成物を器官に直接、例えば2つの投与方法の間で様々に量を重複させて(例えば、重複無し、重複が数秒、数分、または数時間)投与することができる。例えば、最初に人工呼吸器で、次に灌流システムで、またはその逆で投与を行うことができる。
【0027】
「NOガスの治療有効量」とは、器官に直接投与された場合に、本明細書で定義される器官の生存率を改善するのに十分なNOガスの量を示す。「治療有効量」を構成するNOの量は、様々な要因に応じて異なるが、当業者によって決定され得る。以下でさらに詳述するように、虚血再灌流障害のある器官の治療のための治療有効量のNOガスは20ppm以下である。この治療有効量のNOガスは、単独で、または負荷用量のNOガスの投与後に使用することができる。NOガスの負荷用量は、虚血性器官の血管拡張を増加させるために使用でき、ドナーから除去された後に最初に本開示の組成物が器官と接触するとき、特に適切であり得る。しかし、負荷用量で提供されるNOガスの量は、通常、長時間(例えば1時間を超える期間)虚血再灌流障害を安全に治療するために使用できるNOガスの量を超える。
【0028】
1つ以上の実施形態において、NOガスは初期の濃度で投与され、所望の効果(例えば、器官の生存率の増加)を得るために必要に応じて任意に増加される。例えば、初期の一酸化窒素濃度は、約0.05ppm~約50ppmまたは約1ppm~約50ppmであり、所望の効果が得られるか一酸化窒素の閾値が満たされるまで、任意に漸増し得る。例示的な一酸化窒素の投与は、約1ppmの初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで約0.1ppm~約5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が50ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。あるいは、例示的な一酸化窒素の投与は、5ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が50ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、10ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が50ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。さらに別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、15ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が50ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。さらに別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、20ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が50ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。上記の実施形態のそれぞれにおいて、投与は、5分、10分、15分、30分または60分間であり得る。あるいは、投与は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間であってもよい。
【0029】
1つ以上の実施形態において、NOガスは初期の濃度で投与され、所望の効果(例えば、器官の生存率の増加)を得るために必要に応じて任意に増加される。例えば、初期の一酸化窒素濃度は、約0.05ppm~約35ppmまたは約1ppm~約35ppmであり、所望の効果が得られるか一酸化窒素の閾値が満たされるまで、任意に漸増し得る。例示的な一酸化窒素の投与は、約1ppmの初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで約0.1ppm~約5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が35ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。あるいは、例示的な一酸化窒素の投与は、5ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が35ppmを超えないこと、及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、10ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が35ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。さらに別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、15ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が35ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。さらに別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、20ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が35ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。上記の実施形態のそれぞれにおいて、投与は、5分、10分、15分、30分または60分間であり得る。あるいは、投与は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間であってもよい。
【0030】
1つ以上の実施形態において、NOガスは初期の濃度で投与され、所望の効果(例えば、器官の生存率の増加)を得るために必要に応じて任意に増加される。例えば、初期の一酸化窒素濃度は、約0.05ppm~約20ppmまたは約1ppm~約20ppmであり、所望の効果が得られるか一酸化窒素の閾値が満たされるまで、任意に漸増し得る。例示的な一酸化窒素の投与は、約1ppmの初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで約0.1ppm~約5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が20ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。あるいは、例示的な一酸化窒素の投与は、5ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が20ppmを超えないこと、及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、10ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が35ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。さらに別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、15ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が20ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。さらに別の例示的な実施形態では、一酸化窒素の投与は、20ppmという初期の濃度で開始し、その後、所望のNO効果が得られるまで0.1ppm~5ppmの増分で増加させることができるが、NO濃度が20ppmを超えないこと及び/またはメトヘモグロビンのレベルが約5%に満たない、またはそれを超えないことを確実にする。上記の実施形態のそれぞれにおいて、投与は、5分、10分、15分、30分または60分間であり得る。あるいは、投与は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間であってもよい。
【0031】
1つ以上の実施形態において、NOガスは初期の濃度で初期の時間投与され、次いで所望の効果(例えば、器官の生存率の増加)を得るために第2の時間にわたり、さらに低い第2の濃度で投与される。例えば、NOガスは、約20ppm~約40ppmという初期の濃度で最長約1時間投与され、その後、器官の生存率を改善するために20ppm以下に減少させてもよい。例示的な一酸化窒素の投与は、約20ppm~約40ppmの初期の濃度で開始し、その後、20ppm以下の一酸化窒素濃度になるまで初期の時間にわたり増分を減少させることができる。減少率は一定でも、一定でなくてもよい。一酸化窒素濃度は、例えば一酸化窒素マーカーの監視に基づいて、必要に応じてさらに調整することができる。あるいは、例示的な一酸化窒素の投与は、約20ppm~約40ppmの初期の濃度で開始し、初期の時間にわたり一定性を保持し、その後、20ppm以下の一酸化窒素濃度まで減少させることができる。一酸化窒素濃度は、例えば一酸化窒素マーカーの監視に基づいて、必要に応じてさらに調整することができる。上記の実施形態のそれぞれにおいて、一酸化窒素投与の合計時間(初期の濃度の時間と濃度低下時間の合計)は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間であってもよい。
【0032】
上記の実施形態のそれぞれにおいて、初期の一酸化窒素濃度、一酸化窒素の増分の増加または減少、一酸化窒素または一酸化窒素マーカーの最大一酸化窒素濃度及び/または閾値は、用途により、及び/または治療されている特定の器官に基づいて、異なり得る。増分は、一酸化窒素の供給の調整全体で異なる場合がある。監視により、一酸化窒素または一酸化窒素マーカーが一酸化窒素の閾値を満たすか超えていることが示された場合、一酸化窒素はまた徐々に減少させることができる。
【0033】
上記の実施形態のそれぞれにおいて、NO濃度は、最後のNO濃度に対して特定の割合だけ増分的に調整することもできる。このような増分パーセンテージは、NO濃度における5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、125%、150%、175%及び200%の変化を含み得る。
【0034】
NO濃度の調整の代わりに、またはそれに加えて、NOガスの流量を調整するなど、器官に直接供給されるNOガスの量を調整するための任意の手段によって、NOガスの投与を調整することができる。
【0035】
さらなる実施形態では、一酸化窒素の投与は、一酸化窒素または一酸化窒素マーカーの監視に基づいて調整される。本明細書で使用される場合、「一酸化窒素マーカー」とは、流体の一酸化窒素濃度の直接的または間接的な指標を示す。例えば、一酸化窒素マーカーには、とりわけ、メトヘモグロビン及びNO(すなわち、NO、亜硝酸イオン(NO )、硝酸イオン(NO )など)が含まれる。そのような調整は、手作業またはNO供給デバイスによって自動的に実施されてもよい。また、NO供給デバイスは、監視に基づいてアラームを発することもできる。監視デバイスがNO供給デバイスとは別の構成要素である場合、監視デバイスは、任意の適切な有線接続または無線接続を介して、監視情報をNO供給デバイスに送信できる。例えば、流体の一酸化窒素または一酸化窒素マーカーが特定の閾値を下回る場合、流体の一酸化窒素または一酸化窒素マーカーが閾値を満たすまでNOの供給が増加し得る。同様に、流体の一酸化窒素または一酸化窒素マーカーが特定の閾値を超える場合、投与されるNOの量を減少させ得る。一酸化窒素または一酸化窒素マーカーは、連続的または断続的に、例えば定期的な間隔で、監視することができる。
【0036】
1つ以上の実施形態において、そのような監視は、メトヘモグロビン及び/またはNOを監視することを含むことができる。これらの一酸化窒素マーカーは、パルスオキシメトリーや光学的な測定などの手法や、NOまたはNOマーカーを直接的または間接的に測定または相関させる他のいずれかの手段によって、直接測定できる。例えば、別の測定手法では、プローブを灌流液に入れて流体のNOレベルを測定し、灌流液のリアルタイム分析を提供することができる。
【0037】
1つ以上の実施形態において、一酸化窒素または一酸化窒素マーカーの測定値を一酸化窒素の閾値と比較することにより、一酸化窒素または一酸化窒素マーカーを監視する。一酸化窒素の閾値は、メトヘモグロビン血症が発生しないことを保証する安全上の制限であってよい。例えば、一酸化窒素の閾値は、赤血球に対するメトヘモグロビンの割合などのメトヘモグロビンレベルであり得る。例示的な実施形態では、一酸化窒素の閾値は、約1%~約15%のメトヘモグロビン、または約3%~約10%のメトヘモグロビンの範囲にある。したがって、メトヘモグロビンレベルが≦3%、≦4%、≦5%、≦6%、≦7%、≦8%、≦9%、≦10%、≦11%、または≦12%などの許容できる範囲を満たすか超える場合、一酸化窒素の投与を調整することができる。
【0038】
灌流液のNOのレベルも監視され得る。流体の再循環により、流体にNOが蓄積する場合がある。NO濃度が上昇し特定の閾値を超えた場合、NO供給デバイスはNOの投与を調整し、及び/またはアラームを発することができる。また、NOは、還元剤、スクラバー、塩基、またはその他の適切な手段を使用して除去することもできる。
【0039】
(b)虚血再灌流障害
「虚血再灌流障害」という用語は、虚血、再灌流、またはその両方のために生じる損傷を示す。虚血は、器官への不十分な血液供給を指し、組織または器官の領域への血液供給が遮断されると、虚血障害が発生する。器官または組織への血流を回復する行為は再灌流と呼ばれ、虚血後に組織または器官への血流を回復する結果として再灌流障害が発生する。虚血は、生物が受けた傷害または疾患の結果である可能性がある。虚血または低酸素症を誘発する可能性のある特定の疾患の例には、外傷または外科手術、呼吸器または心停止、腫瘍、心疾患、及び神経疾患が含まれるが、これらに限定されない。虚血性または低酸素状態を引き起こす可能性のある特定の傷害の例には、火傷、切傷、切断、銃創、または外科的外傷などの外傷が含まれるが、これらに限定されない。さらに、傷害は、脳卒中や心臓発作などの体内の損傷も含むことができ、それは循環が急激に低下する。その他の傷害には、寒さや放射線への暴露などの非侵襲的なストレスによる循環の低下、または心臓の手術中、または輸送用のドナー器官の摘出前の器官ドナーの処置、及びレシピエントへの移植などの循環の計画的な低下が含まれる。
【0040】
本開示の一態様は、それを必要とする器官の虚血再灌流障害を治療する方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は1ppm~20ppmの一酸化窒素を含む。他の実施形態において、組成物は、約1ppm~約10ppmの一酸化窒素、約5ppm~約15ppmの一酸化窒素、または約10ppm~20ppmを含む。他の実施形態では、組成物は、約1ppm、約2ppm、約3ppm、約4ppm、約5ppm、約6ppm、約7ppm、約8ppm、約9ppm、約10ppm、約11ppm、約12ppm、約13ppm、約14ppm、約15ppm、約16ppm、約17ppm、約18ppm、約19ppm、または約20ppmの一酸化窒素を含む。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液であり、さらにより好ましくは無細胞灌流液である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。様々な実施形態において、治療を必要とする器官は、外的傷害、外科手術、呼吸停止、または心停止により損傷を受けた器官である。特定の実施形態では、治療を必要とする器官は、移植を目的とした器官である。例示的な実施形態では、治療を必要とする器官は、ドナーから摘出された、移植を目的とした器官である。
【0041】
投与は、5分、10分、15分、30分または60分間であり得る。あるいは、投与は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間またはそれより長くてもよい。器官が移植の目的とされている実施形態では、NOガスの投与は、合計で12時間を超えないことが好ましい。特定の実施形態では、投与は虚血と同時に始まる。他の実施形態において、投与は、虚血が始まった後しばらくしてから始まるが、優先的には虚血の開始に可能な限り近い時間に開始する。例えば、投与は、虚血の開始の約5分、10分、15分、20分、25分、または30分後に始まってよい。また、投与は再灌流中に開始することも、別法として再灌流が始まった後に継続することもできる。場合によっては、再灌流が始まってから1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間または12時間より長く、投与を続けることができる。
【0042】
虚血再灌流障害の効果的な治療は、細胞の機能の測定(例えば、代謝能力、ATP含有量など)、細胞の損傷の測定(例えば、組織学的評価、タンパク質の酸化、形態変化など)、炎症の測定、及び/または器官の機能の測定を含むがそれらに限定されない、当技術分野で公知のいずれかの方法により評価できる。
【0043】
さらなる実施形態では、それを必要とする器官の虚血再灌流障害を治療する方法は、約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物が、20ppm以下のNOガスを含む組成物を投与する直前の最長約1時間(「負荷期間」)投与される、追加のステップを含むことができる。例えば、負荷用量は、約10分、約15分、約20分、約30分、または約10分~約30分の間投与されてもよい。別の例において、負荷用量は、約30分、約35分、約40分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、または30分~60分の間投与されてもよい。一酸化窒素濃度を除いて、2つの組成は同じであってもよい。あるいは、2つの組成は異なっていてもよい。負荷用量における一酸化窒素の濃度は、一酸化窒素濃度が20ppm以下になるまで、負荷期間にわたって徐々に減少させることができる。減少率は一定でも、一定でなくてもよい。あるいは、負荷用量における一酸化窒素の濃度は、負荷期間にわたって一定に保持され、その後、20ppm以下の一酸化窒素濃度まで減少してもよい。好ましい実施形態では、2つの組成物は同じであり、組成物は灌流液、好ましくは無細胞灌流液である。例示的な実施形態では、器官は心臓、肺、または腎臓であり、器官は移植を目的としたものである。
【0044】
本開示の別の態様は、虚血再灌流により障害を受けた器官の生存率を改善する方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含む。いくつかの実施形態では、組成物は1ppm~20ppmの一酸化窒素を含む。他の実施形態において、組成物は、約1ppm~約10ppmの一酸化窒素、約5ppm~約15ppmの一酸化窒素、または約10ppm~20ppmを含む。他の実施形態では、組成物は、約1ppm、約2ppm、約3ppm、約4ppm、約5ppm、約6ppm、約7ppm、約8ppm、約9ppm、約10ppm、約11ppm、約12ppm、約13ppm、約14ppm、約15ppm、約16ppm、約17ppm、約18ppm、約19ppm、または約20ppmの一酸化窒素を含む。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液であり、さらにより好ましくは無細胞灌流液である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。虚血及び/または再灌流により損傷を受けた器官の生存率を改善することは、ミトコンドリア機能の維持または酸化的損傷の減少を含み得る。また、器官の生存率を評価するための当技術分野で公知の他の手段を使用してもよく、それは細胞の機能の測定(例えば、代謝能力、ATP含有量など)、細胞の損傷の測定(例えば、組織学的評価、形態変化など)、炎症の測定、及び/または器官の機能の測定を含むがそれらに限定されない。
【0045】
一実施形態では、本開示は、虚血再灌流障害を有する器官のミトコンドリア機能を維持する方法を包含する。本明細書で使用される場合、ミトコンドリア機能は、ミトコンドリアの結合状態の指標である呼吸制御比(RCR)によって測定され得る。一般的に言えば、RCRは、ADPが定常状態濃度(状態4)にリン酸化された後の酸化速度に対する、過剰な基質とアデノシン二リン酸の存在下での酸化速度(状態3)の比率を表す。いくつかの実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接投与することにより、虚血再灌流障害のある器官においてミトコンドリア機能が顕著に維持される。本明細書で使用する場合、「顕著に維持された」とは、本明細書に記載のNOガスで治療された器官と、虚血再灌流を経ていない対照器官との間のミトコンドリア機能の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%未満の差を示す。別の言い方をすれば、顕著に維持されているとは、同様の虚血再灌流障害を経たが直接連続的にNOガスを投与されていない同様の器官と比較して、ミトコンドリア機能が改善したことを示し得る。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0046】
他の実施形態では、本開示は、虚血再灌流障害を有する器官への酸化的損傷を減少させる方法を包含する。一般的に言えば、この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含む。本明細書で使用される場合、「酸化的損傷の減少」または「酸化的損傷の低減」は、同様の条件下で治療される器官と比較して測定され得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されない。例えば、酸化的損傷は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%減少し得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。特定の実施形態では、ミトコンドリアの活性酸素種(mtROS)は、非治療対照と比較して、直接連続NOが投与された虚血再灌流障害の器官の内部で減少する。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示は、虚血再灌流障害を有する器官のスーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2またはマンガン依存性スーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD))の活性を増加させる方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含み、MnSODの活性は、本開示の組成物と接触していない対照器官と比較して、器官で増加する。例えば、MnSODの活性は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%増加し得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。MnSODの活性を測定する方法は、当技術分野で公知である。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0048】
他の実施形態では、本開示は、虚血再灌流障害を有する器官におけるニトロチロシンの形成を阻害する方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含み、本発明の組成物と接触していない対照器官と比較して、器官におけるニトロチロシン付加物の形成が阻害される。例えば、ニトロチロシンの形成は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%阻害され得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。ニトロチロシン付加物の形成を測定する方法は、当技術分野で公知である。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0049】
特定の実施形態では、本開示は、虚血再灌流障害を有する器官におけるミトコンドリア複合体I活性、複合体II活性、複合体III活性、複合体IV活性、またはそれらの組み合わせの不活性化を防止する方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含み、20ppm以下のNOガスを投与することは、対照器官と比較して、ミトコンドリア複合体I、複合体II、複合体III、複合体IV、またはそれらの組み合わせの活性の不活化を防止する。一実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体I活性の不活化が防止される。別の実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体II活性の不活化が防止される。さらに別の実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体III活性の不活化が防止される。別の実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体IV活性の不活性化が防止される。好ましい実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体I及びミトコンドリア複合体II活性の不活性化が防止される。別の好ましい実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体II及びミトコンドリア複合体III活性の不活性化が防止される。例えば、上記の実施形態のそれぞれにおける活性の不活性化は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%阻害され得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。ミトコンドリア複合体I活性、複合体II活性、複合体III活性、または複合体IV活性を測定する方法は、当技術分野で公知である。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0050】
上記の実施形態のそれぞれにおいて、20ppm以下のNOガスを含む組成物の投与は、器官の生存率を改善するのに必要な時間であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、5分、10分、15分、30分または60分間であり得る。他の実施形態では、投与は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間またはそれより長くてもよい。器官が移植の目的とされている実施形態では、NOガスの投与は、合計で12時間を超えないことが好ましい。特定の実施形態では、投与は虚血と同時に始まる。他の実施形態において、投与は、虚血が始まった後しばらくしてから始まるが、優先的には虚血の開始に可能な限り近い時間に開始する。いくつかの実施形態において、投与は、虚血の開始の約5分、10分、15分、20分、25分、または30分後に始まる。また、投与は再灌流中に開始することも、別法として再灌流が始まった後に継続することもできる。場合によっては、再灌流が始まってから1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間または12時間より長く、投与を続けることができる。
【0051】
さらなる実施形態では、上記の方法は、約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物が、20ppm以下のNOガスを含む組成物を投与する直前の最長約1時間投与される、追加のステップを含むことができる。例えば、負荷用量は、約10分、約15分、約20分、約30分、または約10分~約30分の間投与されてもよい。別の例において、負荷用量は、約30分、約35分、約40分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、または30分~60分の間投与されてもよい。一酸化窒素濃度を除いて、2つの組成は同じであってもよい。あるいは、2つの組成は異なっていてもよい。負荷用量における一酸化窒素の濃度は、一酸化窒素濃度が20ppm以下になるまで、約1時間までの期間にわたって徐々に減少させることができる。減少率は一定でも、一定でなくてもよい。あるいは、負荷用量における一酸化窒素の濃度は、約1時間までの期間にわたって一定に保持され、その後、20ppm以下の一酸化窒素濃度まで減少してもよい。好ましい実施形態では、2つの組成物は同じであり、組成物は灌流液、好ましくは無細胞灌流液である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。例示的な実施形態では、器官は心臓、肺、または腎臓である。
【0052】
(c)移植を目的とした器官の生存率を改善する方法
虚血再灌流障害を有する器官は、移植を目的とした器官を包含する。したがって、本開示は、移植を目的とした器官の生存率を改善する方法を包含する。そのような方法は、NOガスを含む組成物を、器官灌流システムまたは換気を介して器官に直接最長12時間にわたって連続して投与することを含む。別の言い方をすれば、器官の調達時からレシピエントへ移植するときまで、器官がNOガスと直接接触し、中断することはない。本明細書で使用する場合、調達とは、器官のドナーの特定と器官の摘出の両方を指し、いずれかの用語と互換的に使用することができる。いくつかの実施形態において、組成物は、器官がドナーから採取された後に投与される。他の実施形態では、組成物は、器官がドナーの体内にある間に投与される。これらの実施形態では、ドナーは、脳死のドナーまたは心停止ドナーであり得る。いくつかの例では、投与は、5分、10分、15分、30分または60分間であり得る。他の例では、投与は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間またはそれより長くてもよい。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液であり、さらにより好ましくは無細胞灌流液である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。理論に拘束されることを望まないが、本開示の方法は、先行して移植の基準を満たさなかった器官の生存率を改善することにより、移植に利用可能な器官の数を増加させることができ、そのためより多くのドナー(例えば、脳死近縁のドナー、心停止ドナーなど)から得るより多くの器官を使用できると考えられる。移植を目的とした器官の生存率の改善には、一部には、ミトコンドリア機能の維持または器官の酸化的損傷の減少が含まれ得る。また、器官の生存率を評価するための当技術分野で公知の他の手段を使用してもよく、それは細胞の機能の測定(例えば、代謝能力、ATP含有量など)、細胞の損傷の測定(例えば、組織学的評価、形態変化など)、炎症の測定、及び/または器官の機能の測定を含むがそれらに限定されない。例示的な実施形態では、器官は心臓、肺、または腎臓である。
【0053】
一実施形態では、本開示は、移植を目的とする器官のミトコンドリア機能を維持する方法を包含する。本明細書で使用される場合、ミトコンドリア機能は、ミトコンドリアの結合状態の指標である呼吸制御比(RCR)によって測定され得る。一般的に言えば、RCRは、ADPが定常状態濃度(状態4)にリン酸化された後の酸化速度に対する、過剰な基質とアデノシン二リン酸の存在下での酸化速度(状態3)の比率を表す。いくつかの実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接投与することにより、移植を目的とした器官においてミトコンドリア機能が顕著に維持される。本明細書で使用する場合、「顕著に維持された」とは、本明細書に記載のNOガスで治療された器官と、NOガスで治療されていない対照器官との間のミトコンドリア機能の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%未満の差を示す。別の言い方をすれば、顕著に維持されているとは、同様の虚血再灌流障害を経たが直接連続的にNOガスを投与されていない、移植を目的とした同様の器官と比較して、ミトコンドリア機能が改善したことを示し得る。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0054】
特定の実施形態では、本開示は、移植を目的としたした器官への酸化的損傷を減少させる方法を包含する。例えば、ミトコンドリア活性酸素種(mtROS)は、移植を目的とした器官内で減少し得る。そのような方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含む。直接連続して投与することは、器官がドナーから摘出される前、輸送/保管中、レシピエントへ移植している間、レシピエントへの移植後、またはそれらの任意の組み合わせで起こり得る。好ましい実施形態では、器官の摘出時からレシピエントへ移植するときまで、器官がNOガスと直接接触し、中断することはない。本明細書で使用される場合、「酸化的損傷の減少」または「酸化的損傷の低減」は、同様の条件下で治療される器官と比較して測定され得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されない。例えば、酸化的損傷は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%減少し得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。特定の実施形態では、ミトコンドリアの活性酸素種(mtROS)は、非治療対照と比較して、直接連続してNOが投与された虚血再灌流障害の器官の内部で減少する。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示は、移植を目的とした器官のスーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2またはマンガン依存性スーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD))の活性を増加させる方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含み、MnSODの活性は、本開示の組成物と接触していない対照器官と比較して、器官で増加する。例えば、MnSODの活性は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%増加し得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。直接連続して投与することは、器官がドナーから摘出される前、輸送/保管中、レシピエントへ移植している間、レシピエントへの移植後、またはそれらの任意の組み合わせで起こり得る。好ましい実施形態では、器官の摘出時からレシピエントへ移植するときまで、器官がNOガスと直接接触し、中断することはない。MnSODの活性を測定する方法は、当技術分野で公知である。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0056】
他の実施形態では、本開示は、移植を目的とする器官におけるニトロチロシンの形成を阻害する方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含み、本開示の組成物と接触していない対照器官と比較して、器官におけるニトロチロシン付加物の形成が阻害される。例えば、ニトロチロシンの形成は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%阻害され得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。直接連続して投与することは、器官がドナーから摘出される前、輸送/保管中、レシピエントへ移植している間、レシピエントへの移植後、またはそれらの任意の組み合わせで起こり得る。好ましい実施形態では、器官の摘出時からレシピエントへ移植するときまで、器官がNOガスと直接接触し、中断することはない。ニトロチロシン付加物の形成を測定する方法は、当技術分野で公知である。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0057】
特定の実施形態では、本開示は、移植を目的とした器官におけるミトコンドリア複合体I活性、複合体II活性、複合体III活性、複合体IV活性、またはそれらの組み合わせの不活性化を防止する方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含み、20ppm以下のNOガスを投与することは、対照器官と比較して、ミトコンドリア複合体I、複合体II、複合体III、複合体IV、またはそれらの組み合わせの活性の不活化を防止する。一実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体I活性の不活化が防止される。別の実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体II活性の不活性化が防止される。さらに別の実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体III活性の不活化が防止される。別の実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体IV活性の不活性化が防止される。好ましい実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体I及びミトコンドリア複合体II活性の不活性化が防止される。別の好ましい実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することにより、ミトコンドリア複合体II及びミトコンドリア複合体III活性の不活性化が防止される。例えば、上記の実施形態のそれぞれにおける活性の不活性化は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%阻害され得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。直接連続して投与することは、器官がドナーから摘出される前、輸送/保管中、レシピエントへ移植している間、レシピエントへの移植後、またはそれらの任意の組み合わせで起こり得る。好ましい実施形態では、器官の摘出時からレシピエントへ移植するときまで、器官がNOガスと直接接触し、中断することはない。ミトコンドリア複合体I活性、複合体II活性、複合体III活性、または複合体IV活性を測定する方法は、当技術分野で公知である。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0058】
上記の各方法において、器官灌流システムを介した器官へのNOガスを含む組成物の直接投与は、器官灌流システム、人工呼吸器、またはそれらの任意の組み合わせを介して、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間にわたり生じ得る。器官灌流システムと人工呼吸器を組み合わせて使用する実施形態では、器官灌流システムと人工呼吸器を同時に使用して、NOガスを含む組成物を器官に直接投与してもよい。あるいは、または加えて、器官灌流システムと人工呼吸器を連続して使用して、NOガスを含む組成物を器官に直接、例えば2つの投与方法の間で様々に量を重複させて(例えば、重複無し、重複が数秒、数分、または数時間)投与することができる。例えば、最初に人工呼吸器で、次に灌流システムで、またはその逆で投与を行うことができる。
【0059】
さらなる実施形態では、上記の方法は、約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物が、20ppm以下のNOガスを含む組成物を投与する直前の最長約1時間投与され、NOガスの投与は、合計で12時間を超えない、追加のステップを含むことができる。例えば、負荷用量は、約10分、約15分、約20分、約30分、または約10分~約30分の間投与することができ、その場合20ppm以下のNOガスを含む組成物は、約11.8時間以下投与される。別の例では、負荷用量は、約30分、約35分、約40分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、または30分~60分の間投与されてもよく、その場合20ppm以下のNOガスを含む組成物は、11.5時間以下投与される。一酸化窒素濃度を除いて、2つの組成は同じであってもよい。あるいは、2つの組成は異なっていてもよい。負荷用量における一酸化窒素の濃度は、一酸化窒素濃度が20ppm以下になるまで、約1時間までの期間にわたって徐々に減少させることができる。減少率は一定でも、一定でなくてもよい。あるいは、負荷用量における一酸化窒素の濃度は、約1時間までの期間にわたって一定に保持され、その後、20ppm以下の一酸化窒素濃度まで減少してもよい。好ましい実施形態では、2つの組成物は同じであり、組成物は灌流液、好ましくは無細胞灌流液である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。例示的な実施形態では、器官は心臓、肺、または腎臓である。
【0060】
(d)移植を目的とした器官の移植後の能力を改善する方法
本開示の別の態様は、移植を目的とする器官の移植後の能力を改善する方法を包含する。この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を、器官灌流システムを介して器官に直接最長12時間連続して投与することを含む。いくつかの例では、投与は、5分、10分、15分、30分または60分間であり得る。他の例では、投与は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間であってもよい。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液であり、さらにより好ましくは無細胞灌流液である。移植を目的とした器官の移植後の能力の改善は、ミトコンドリア機能の維持または酸化的損傷の減少を含み得る。また、器官の生存率を評価するための当技術分野で公知の他の手段を使用してもよく、それは細胞の機能の測定(例えば、代謝能力、ATP含有量など)、細胞の損傷の測定(例えば、組織学的評価、形態変化など)、炎症の測定、及び/または器官の機能の測定を含むがそれらに限定されない。例示的な実施形態では、器官は心臓、肺、または腎臓である。
【0061】
一実施形態では、本開示は、移植後の器官においてミトコンドリア機能を維持する方法を包含する。本明細書で使用される場合、ミトコンドリア機能は、ミトコンドリアの結合状態の指標である呼吸制御比(RCR)によって測定され得る。一般的に言えば、RCRは、ADPが定常状態濃度(状態4)にリン酸化された後の酸化速度に対する、過剰な基質とアデノシン二リン酸の存在下での酸化速度(状態3)の比率を表す。いくつかの実施形態では、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接投与することにより、移植後の器官においてミトコンドリア機能が顕著に維持される。本明細書で使用する場合、「顕著に維持された」とは、本明細書に記載のNOガスで治療された器官と、NOガスで直接連続的に治療されていない対照器官との間のミトコンドリア機能の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%未満の差を示す。別の言い方をすれば、顕著に維持されているとは、同様の虚血再灌流障害を経たが直接連続的にNOガスを投与されていない同様の器官と比較して、ミトコンドリア機能が改善したことを示し得る。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0062】
他の実施形態では、本開示は、移植後の器官の酸化的損傷を減少させる方法を包含する。一般的に言えば、この方法は、20ppm以下のNOガスを含む組成物を器官に直接連続して投与することを含む。本明細書で使用される場合、「酸化的損傷の減少」または「酸化的損傷の低減」は、同様の条件下で治療される器官と比較して測定され得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されない。例えば、酸化的損傷は、同様の条件下で治療された器官と比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%減少し得るが、それは直接及び連続的にNOガスを投与されるわけではない。特定の実施形態では、ミトコンドリアの活性酸素種(mtROS)は、非治療対照と比較して、直接連続NOが投与された移植後の器官内で減少する。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液、さらにより好ましくは無細胞灌流液であり、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0063】
さらなる実施形態では、上記の方法は、約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物が、20ppm以下のNOガスを含む組成物を投与する直前の最長約1時間投与され、NOガスの投与は、合計で12時間を超えない、追加のステップを含むことができる。例えば、負荷用量は、約10分、約15分、約20分、約30分、または約10分~約30分の間投与することができ、その場合20ppm以下のNOガスを含む組成物は、約11.8時間以下投与される。別の例では、負荷用量は、約30分、約35分、約40分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、または30分~60分の間投与されてもよく、その場合20ppm以下のNOガスを含む組成物は、11.5時間以下投与される。一酸化窒素濃度を除いて、2つの組成は同じであってもよい。あるいは、2つの組成は異なっていてもよい。負荷用量における一酸化窒素の濃度は、一酸化窒素濃度が20ppm以下になるまで、約1時間までの期間にわたって徐々に減少させることができる。減少率は一定でも、一定でなくてもよい。あるいは、負荷用量における一酸化窒素の濃度は、約1時間までの期間にわたって一定に保持され、その後、20ppm以下の一酸化窒素濃度まで減少してもよい。好ましい実施形態では、2つの組成物は同じであり、組成物は灌流液、好ましくは無細胞灌流液である。例示的な実施形態では、器官は心臓、肺、または腎臓である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。
【0064】
(e)移植方法
別の態様において、本開示は、移植方法を提供する。この方法は、(a)20ppm以下のNOガスを含む組成物を、移植を目的とした器官に直接最長12時間連続して投与すること、及び(b)器官をレシピエントに移植することを含む。投与は、5分、10分、15分、30分または60分間であり得る。あるいは、投与は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、または12時間であってもよい。いくつかの実施形態では、組成物は1ppm~20ppmの一酸化窒素を含む。他の実施形態において、組成物は、約1~約10ppmの一酸化窒素、約5ppm~約15ppmの一酸化窒素、または約10ppm~20ppmを含む。他の実施形態では、組成物は、約1ppm、約2ppm、約3ppm、約4ppm、約5ppm、約6ppm、約7ppm、約8ppm、約9ppm、約10ppm、約11ppm、約12ppm、約13ppm、約14ppm、約15ppm、約16ppm、約17ppm、約18ppm、約19ppm、または約20ppmの一酸化窒素を含む。NOガスを含む適切な組成物はセクション(a)に記載されている。好ましい実施形態では、組成物は灌流液であり、さらにより好ましくは無細胞灌流液である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。例示的な実施形態では、器官は心臓、肺、または腎臓である。
【0065】
特定の実施形態において、移植を目的とする器官は、上記のステップ(a)の前にドナーから摘出されている。これらの実施形態において、投与は、虚血が始まった後しばらくしてから始まるが、優先的には虚血の開始に可能な限り近い時間に開始する。例えば、投与は、虚血の開始の約5分、10分、15分、20分、25分、または30分後に始まってよい。投与のタイミングは、再灌流の開始に対応していても、していなくてもよい。
【0066】
さらなる実施形態では、この方法は、約20ppm~約40ppmのNOガス(「負荷用量」)を含む組成物が、20ppm以下のNOガスを含む組成物を投与する直前の最長約1時間(「負荷期間」)投与される、追加のステップを含むことができる。例えば、負荷用量は、約10分、約15分、約20分、約30分、または約10分~約30分の間投与されてもよい。別の例において、負荷用量は、約30分、約35分、約40分、約40分、約45分、約50分、約55分、約60分、または30分~60分の間投与されてもよい。一酸化窒素濃度を除いて、2つの組成は同じであってもよい。あるいは、2つの組成は異なっていてもよい。負荷用量における一酸化窒素の濃度は、一酸化窒素濃度が20ppm以下になるまで、負荷期間にわたって徐々に減少させることができる。減少率は一定でも、一定でなくてもよい。あるいは、負荷用量における一酸化窒素の濃度は、負荷期間にわたって一定に保持され、その後、20ppm以下の一酸化窒素濃度まで減少してもよい。好ましい実施形態では、2つの組成物は同じであり、組成物は灌流液、好ましくは無細胞灌流液である。さらなる実施形態では、無細胞灌流液は、Steen Solution(商標)であり、任意選択でカプリル酸ナトリウム、N-アセチル-DL-トリプトファン、及びヒトアルブミンを含む。例示的な実施形態では、器官は心臓、肺、または腎臓である。
【0067】
実施例
以下の例は、本発明の様々な反復を示す。
【0068】
実施例1:肺移植プロトコル
本試験は、修正版標準肺ドナー選択基準に従って、合計20の肺(gNO及び灌流液の8つの肺、灌流液のみの8つの肺、及びgNO換気及び灌流液の4つの肺)を含む。3群試験には、灌流液に加えられたgNO、灌流液のみ、及びgNO換気と灌流液が含まれる(パイロット研究)。無細胞灌流液(Steen solution)を伴うXVivo灌流デバイスシステムを使用する。肺の最長低温虚血時間は8~10時間である。Ex-Vivoの肺灌流の期間は最長12時間である。肺の健康状態は、評価システム、バイオマーカーの評価、及び組織病理学的評価によって評価される。
【0069】
評価システム
評価システムは、3変数の複合尺度を使用した0~10の格付け(総合スコア)を含む。3変数は、1)4つのカテゴリを使用して0~4として重み付けされたデルタPaO:0=<350mmHg;1=≧350~<400Hg;2=≧400~<450mmHg;3=≧450~<500mmHg;4=≧500mmHg、2)0~4(ベースラインからの変化)として重み付けされた肺の静的コンプライアンス:0=コンプライアンスの改善または悪化なし;1=1~3%の改善;2=4~7%の改善;3=8~11%の改善、及び4=12~15%のコンプライアンスの改善、及び3)0~2として重み付けされた肺血管抵抗(PVR):0=PVRの変化またはPVRの増加なし、1=PVRの1~7%の減少;2=PVRの8~15%の減少である。
【0070】
バイオマーカーの評価
損傷評価分子タンパク質(DAMP)、高移動度グループボックス-1(HMGB1)、S100A8(MRP8、カルグラニュリンA)、S100A9(MRP14、カルグラニュリンB)、及び血清アミロイドA(SAA)が、評価されるバイオマーカーである。対象のサイトカインは、TNFα-1、IL1-β、IL-6、NLRP3、IL-10、及びドナー細胞フリーDNAである。
【0071】
組織病理学的評価
評価される組織病理学的パラメータは、間質性及び肺胞内浮腫、硝子膜の形成、及び血管の完全性/損傷の証拠(CD31染色)である。
【0072】
ドナー肺の調達
ドナーから器官を回収した後の現在の臨床上での実践は、レシピエントに移植されるまで低温で静的に保存するためのものである。回収中、肺は、局所の冷却及び肺の換気と組み合わせて、低カリウムデキストラン保存溶液を使用した、低温の肺の洗い流しを経る。その後、肺は静的に膨張した状態にて4℃で輸送される。低体温は、虚血に直面して、細胞の生存率を維持した状態で代謝活性が低下し、細胞死のプロセスを本質的に減速する(37℃で代謝率の5%)。そのため、低温保存は、先行技術の肺の保存の主力である。しかし、器官の代謝機能の大幅な低下が存在し、そのため、意義ある肺の評価と回復ができずにいる。
【0073】
この試験のドナー肺の調達技術は、以下の通りである。気管支鏡検査と胸骨正中切開を行う。心膜と複数の腔部を開く。両方の肺を補充し、100%FiOチャレンジでPOを評価する。全身にヘパリン処置をする。主要肺大動脈(PA)に巾着縫合を施す。巾着を通してPAにカニューレを挿入する。カニューレを脱気し、脱気したPerfadexチューブに接続する(Perfadexバッグは重力(非加圧)によって排出されるのみであるべきで、バッグは肺より1メートル以上高くならないようにすべきである)。500mcgのAlprostidilを主要PAに直接投与する。上大静脈(SVC)、開孔した左心房及び右心房、及びクロスクランプの大動脈を結紮する。
【0074】
4リットルの順行性のPerfadexを供給する。右心房と左心房の両方で、排水を迅速かつ急速に確実に排出する。両方の肺に局所的に氷を置く(ただし、1サイクルに使用する肺は1つのみ)。4~6ml/kg/分という1回換気量と1分あたり10回という呼吸数で、室内の空気FiOでの換気を維持する。注入が完了したら、心臓を切除する。心臓を移植している場合は、PA分岐部でPAを切開する。PAの分岐は分割しない。心臓を移植していない場合は、肺動脈弁のすぐ近傍のRVOTでPAを切開する。左心房用カフが依然無傷であることを確認する。低温Perfadex(合計2リットル)を、逆行の肺静脈に注入する。横隔膜のレベルで心膜を両側から切開し、横切るようにして心膜を横隔膜から完全に分離する。両側の下肺靭帯を切開する。後縦膜頭側から気管分岐部まで、後側心膜を解剖する。輪状軟骨のレベルまで気管頭側を解剖する。気管内チューブを喉頭のレベルまで引き込む。50%FiOにおいて、肺を総肺容量の50%に膨張させる。輪状軟骨の上方で気管を2つのステープル負荷で分割する。横隔膜に向かって、後縦隔(食道)尾部から後部気管を解剖する。大動脈弓から左側PAを解剖し、動脈管索を分割する。肺を摘出し、氷冷したPerfadex溶液にて保存する。心臓が移植用に調達されている場合は、ドナーの下行大動脈を10cm切除し、肺と同じ低温Perfadex溶液バッグに入れる。これは後に肺動脈の再建に使用される。
【0075】
Ex-Vivo肺灌流(EVLP)
EVLPの主な原理は、ドナー器官の温度、水分及び無菌性を維持する密閉容器内で体外の肺を灌流及び換気することからなる。EVLP回路は、肺動脈(PA)に入る前に膜ガス交換器と白血球除去フィルターを通過しながら灌流液を循環させる遠心ポンプからなる。このシステムは、心臓手術の体外回路(ECC)に使用されるものと極めて類似している。Acellular Steenの溶液は、EVLPのプロセスの灌流液として使用される。
【0076】
簡潔に言えば、EVLPのプロセスは以下の通りである。肺は、換気中に肺を安定した位置に固定し、暖かく湿った環境を提供するために、特別な被覆されたプラスチック製チャンバーに配置される。灌流液(遠心ポンプで推進させる)は、肺動脈(PA)に配置されたカニューレから肺に入る。肺から戻る流れは、重力により、肺静脈(PV)を介し受動的であり、灌流液は、ポンプと膜型人工肺を介して再循環させる前にリザーバーに収集される。ガス人工肺は、酸素(6%)、二酸化炭素(8%)、及び窒素(86%)の特別なガス混合物を備えたタンクに接続されている。人工呼吸器により肺への気道が得られ、また気管胸部チューブに接続される。
【0077】
肺移植片(器官採取中に冷却され、静的な低温保存を経る)は、45分間にわたって徐々に再加温される。肺灌流は、低流量(0.10~0.15l/分)で開始され、その後、再加温と並行して、(70ml/kg/分での)推定心拍出量の40~50%の肺動脈での供給に対して徐々に増加する。虚血再灌流障害(IRI)が完全性を損なわせ、肺胞毛細血管膜の透過性を高め、肺水腫の形成につながる可能性があるため、器官調達後のIRIによって毛細血管肺胞バリアが弱体化したらPAの圧力を低く保つ必要がある(<15~20mmHg)。
【0078】
再加温段階中、移植片へのO供給は膜型人工肺により供給され、次いでPAにおける通常の測定に近いpCO及びpHを供給する。EVLPのプロセスを通じてPA及び左心房(LA)の圧力を継続的に測定するカテーテルをin situに配置する。灌流液の温度が摂氏32度(通常、灌流開始後約30分)に達すると、肺の機械的換気が開始される。
【0079】
以下は、EVLPのプロセスの19ステップの進行である。これは、包括的なプロトコルではなく、クイック参照ガイドである。
【0080】
ステップ1.肺のXPSへの輸送。UNOSの標準に準拠させる。
【0081】
ステップ2.肺のカニューレ挿入。LAカニューレ(緑)を適切な心房の開口部に合わせてトリミングし、連続ポリプロピレン縫合で縫合する。PAカニューレ(黄)は、PAの腔部を開いて、XVIVOカニューレを挿入する。肺動脈の再建が必要な場合は、ドナーの下行大動脈のセグメントを肺動脈に縫合し、その後上記のようにカニューレを挿入する。臍テープまたはシルクタイを使用して、カニューレをグローブの所定の位置に固定し、圧力ラインの下のカニューレにタイを返す。挿管では、収縮を防ぐために気管をクランプする。ETチューブを気管に挿入し、臍テープまたはシルクタイで固定する。
【0082】
ステップ3.バックテーブルの洗い流し。1リットルの低温Perfadexを逆流洗浄し、カニューレ挿入周辺の漏れを確認する。ETチューブは、クランプしたままにする。
【0083】
ステップ4.システムの設定。PGMでXPSの灌流回路を設定する。プラスチックを取り外すことでドームを開き、次いで第1の青レイヤーラッピングをバックテーブルにて開く。青テーブルの上のXPSの上部バーに透明なU型ドレープを置き、青テーブルを覆うXPSのwクリップを固定する。U型ドレープの「U」の開口部を右側にし、チューブが通れるようにする。Xvivo機の青テーブル上でドームの第2の青レイヤーを無菌状態で開く。赤い3/8インチの排水ラインをドームの背面に取り付け、4分の1のラインをポールの外側周囲に、また赤いローラーポンプの中に通す。排水バッグから手を離して、オレンジと赤のラインをバッグに取り付ける。リザーバーの上部から二方コックまで戻りラインを追加する。赤いラインにあるリザーバーに対する二方コックを閉じて、排水バッグに対して開く。トランスデューサーをセットし、滅菌生理食塩水で洗い流し、ヒーター/クーラーに対する青いチューブを追加し、次いでQuadroxの背面に静脈ガスラインを追加する。十分な量のOとトリガスが確実にあるように確認する。
【0084】
ステップ5.システムのパージ。リザーバーに1500mlのSTEENを追加し、薬物(ヘパリン10,000ユニット、メチルプレドニゾロン500mg、セフタジジン1gm)を追加し、最初にCardiohelpとヒーター・クーラー(23に設定)をオンにし、次にUPS、タッチスクリーン、及び人工呼吸器が続く。Quadroxの背面にある黄色のキャップ、リザーバーのいずれかの透明なキャップ、及び白血球フィルターの青いキャップを取り外して、灌流回路をパージする。Cardiohelpを1000RPMに増加して回路の漏れを確認し、1分後Cardiohelpを3000RPMに増加する。数分後、Cardiohelpを5000RPMに増加して1分間作動させて、すべての空気がラインから確実に出ていることを確認し、RPMを250未満に減らす。
【0085】
ステップ6.データ設定のロギング。タッチスクリーンのセットアップページで必要な情報を入力し、アラーム(6.8)までの許容レベルにPHを変更する。サービスページで、緑色のPGM較正ボタンを押し、PGMのパッケージにある較正番号に基づいてPHとPO2を入力する。メイン画面でタイマーを設定する(1と2はカウントアップし、#3はカウントダウンする(#3は10分に設定))。人工呼吸器について設定を押し、モード(S)CMV+で確認を押す。スプレッドシートのパラメータを入力し、確認を押す。また、フローシートのパラメータごとにアラームを設定する。XPSの背面のI/Oパネルで、肺の回路の右側に吸気ポート及び左側に呼気ポート(青色の先端)を配置する。白は透明、青は青で、フローセンサチューブを接続する。静脈ガス混合ラインを接続する。高圧Oラインを接続する。加湿フィルターは、フローセンサとET-Tの間の回路の肺側の端部に配置される。術前点検を行い、システムを押し、テスト・較正を押す。各較正テストを1回に1つ選択する。気密度・以下のステップを押し、フローセンサ・以下のステップを押し、Oセルはテストの必要がない。
【0086】
ステップ7.逆行性の洗い流し。滅菌チューブクランプを使用すると、灌流回路内の流れの方向が変わり、流れがLAで進み、PAを出る。750RPMから始めて、PAカニューレを充填するのに十分な流量になるまでRPMをゆっくりと増加させ、STEEN solutionから血液を除いて約250ccになるまで、肺を洗い出しする。リサイクルポンプを使用して、このSTEEN solutionをダンプバッグに向ける。血液が除かれたら、LA側にカニューレと回路を取り付けて、肺がSTEEN solutionで充填されていることを確認する。LAカニューレを通り、PAカニューレを充填するのに十分なSTEENがあるべきであり、その後、リザーバーに入るためにリサイクルポンプの方向をリセットする。PAカニューレの上部に滅菌クランプを再配置し、回路に取り付ける。ブリッジをクランプする(唯一のクランプであるべきである)。
【0087】
ステップ8.較正。灌流フローセンサと圧力センサを較正する。(フローセンサは、肺が逆行のために回路に配置される前に行うことができる)。圧力センサは、逆行して肺が回路上になった直後に行うべきである(流体の高さの上部-カニューレが肺と圧力二方コックに会う場所で、圧力センサラインからシリンジを引いてすべて同じ高さにするべきであり、STEENを充填して、確実に二方コックを動かして生理食塩水から遮断する)。
【0088】
ステップ9.順行。タイマー1(灌流タイマー)を開始し、最初の1時間の設定についてはEVLPワークアップシートに従う。
【0089】
ステップ10.最初の1時間の設定。10分ごとに、Cardiohelpとヒーター・クーラーが、それぞれ最大値に達するまで変更される。温度が32℃に達するまで、換気を開始できない。32℃では気管支が処理される場合がある。トリガス掃引は、人工呼吸器の起動と同時に開始する必要がある。
【0090】
ステップ11.肺の補充。Oチャレンジと混同しないようにするために、肺の補充は人工呼吸器の呼気キーを15秒間手で保持する。呼気を保持するには、吸気の後にこのキーを押すべきである。
【0091】
ステップ12.Oチャレンジ。Oチャレンジでは、人工呼吸器の設定のみを変更し、EVLPワークアップシートの補充設定に従う。(VtにIBW×10の乗算をし、FiO2を100%に増やす、BPMは最大10)
【0092】
ステップ13.ガス抜き。Oチャレンジの最後の瞬間に、動脈及び静脈灌流液のサンプルをトランスデューサーから採取するべきである。メイン画面の灰色のPHボタンを押して、ガスの値をロックする。(ラボから結果が返ってきたら、LAとPA両方でPHに対してピンポイントの較正を行う。)適切な情報を記録し、次いで人工呼吸器で通常の設定にリセットする(この時点でアラームと設定を高くしておく)。
【0093】
ステップ14.X線。Oチャレンジが完了した後、未来のX線のためにベースライン比較を行うために、X線を実行する必要がある。
【0094】
ステップ15.STEENの希釈。補充、チャレンジ、ガス吸引、及びX線が完了した後(またはX線の間)、STEENの希釈が必要になる。+/-ポンプ制御ウィンドウをタッチスクリーンで開く。[除去]ボタンをタッチして、除去ボタンがロックされるまで指を下にスライドさせる(クランプ方式が使用されている場合は、代わりにクランプを除去する)。リザーバーのレベル低下を注視する。十分なSTEENを除去したら、「除去」ボタンをタッチしてシャットオフする(クランプ方式を使用している場合は、クランプと換える)。新鮮なSTEENを3本または4本追加する。また、別の用量の薬物を追加することができる。
【0095】
ステップ16.次の3~5時間の間、肺を維持及び評価する。各々の時間の50分のマークで、ステップ12及び13(ピンポイントの較正を引く)を繰り返す。
【0096】
ステップ17.移植のために肺を摘出する約1時間前にステップ14を繰り返す。最初のX線と2番目のX線を比較することは、肺が移植可能かどうかを判断する一助となる。
【0097】
ステップ18.6時間の灌流後にステップ15を繰り返す。
【0098】
ステップ19.急速冷却。肺の移植が受け入れられたら、ヒーター/クーラーを15℃に設定し、32℃で肺が50%膨張したときにETチューブをクランプし、肺を灌流回路から外し、2リットルの低温Perfadexで洗い流し、Perfadexとともに滅菌バッグに入れる。(標準的なドナー調達プロトコルと同様)。
【0099】
ステップ20.XPSを清浄化し、保管する。XPSの表面を消毒剤で拭き取り、トグルスイッチを上にして保管し、充電のためにコンセントに差し込む。ガスの吸引は、10分ごとのチャレンジの最後に行うべきである。
【0100】
参考として、図1及び図2を参照されたい。潜在可能性のあるシステムの概略図を示している。
【0101】
実施例2 吸入された一酸化窒素は、心停止試験の盲検無作為化コントロール仔ブタ仮死モデルにおいて脳ミトコンドリア機能を改善する。
【0102】
緒言
小児の心停止(CA)後の神経学的損傷は、依然一般的である。吸入された一酸化窒素(iNO)は、脳ミトコンドリア機能障害を緩和する可能性がある。これは、CAによって誘発される二次的な脳損傷の重要な収束点である。仮死及び心停止後、CPR及び4時間の自発循環復帰後(ROSC)の間に20ppmのiNOで治療をされた動物は、プラセボと比較した呼吸制御比(RCR)の上昇とミトコンドリア活性酸素種(mtROS)の低下とによって定義されるように、脳血流(CBF)を改善し、ミトコンドリア機能を改善すると仮定した。
【0103】
方法
4週齢のブタを7分間窒息させ、その後心室細動にした。ガイドラインCPRが、胸部の直径の1/3以上の圧迫深度(CD)で実施され、標準的なエピネフリンが、ROSC後のプロトコル化されたケアで、10分間またはROSCまで継続された。盲検方式で、対象を無作為化した(20ppmのiNOで開始して1分でCPR期間に入る、n=10、またはプラセボ、n=10)。シャム(n=4)はCAまたはCPRを受けずにいた。侵襲的な臨床的機器及び非侵襲的な光学機器を使用して、ベースライン及び連続CBF測定を行った。皮質及び海馬組織は、ミトコンドリア機能を評価するために高解像度呼吸測定法により分析した。該当する場合、T検定とANOVAが使用された。対象内相関を統制するために一般化推定方程式を使用して、縦断的な血行動態変数を比較した。
【0104】
結果
プラセボ群の7/10及びiNO群のiNO 10/10(p=0.21)が生存した。CPR中及びROSC後の間は、治療群間で侵襲的または非侵襲的CBFに有意差はなかった。皮質及び海馬のRCRは有意に高く(p=0.04、0.007)、mtROS産生はiNO治療動物で有意に低かった(p<0.001、p=0.03)。iNO群とプラセボ群の間で全身または肺の血行動態に差はなかったが、CPR間のiNO動物の平均肺動脈圧は低くなる傾向があった(28.1±9.8v。42.6±6.0、p=0.14)。iNOは、脳のミトコンドリア機能(RCRの増加)を保持し、小児CAのブタモデルでmtROSの生産を制限する。虚血再灌流障害及び心停止におけるiNOのこの潜在可能性のある神経保護効果を評価するには、さらなる研究が必要である。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血再灌流障害を有する器官におけるスーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2またはマンガン依存性スーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD))の活性を増加させるためのシステムであって、前記システムは、20ppm以下のNOガスを含む組成物を前記器官に直接的に連続して投与するように構成されており、MnSODの活性は、前記組成物と接触していない対照器官と比較して、前記器官において増加させられる、システム。
【請求項2】
MnSODの活性は、同様の条件下で治療されるが直接的におよび連続的にNOガスを投与されるわけではない器官と比較して、5%~95%増加させられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記組成物は、無細胞灌流液を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記無細胞灌流液は、カプリル酸ナトリウムと、N-アセチル-DL-トリプトファンと、ヒトアルブミンとを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記器官は、心臓または肺または腎臓である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記組成物の投与は、前記器官の生存率を改善するために必要な時間の間、行われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記組成物の投与は、5分~60分の間、または、1時間~12時間の間、行われる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
投与は、前記虚血の開始と同時に始まる、または、投与は、前記虚血の開始後5分~30分以内に始まる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
投与は、再灌流の間に始まる、または、投与は、再灌流が始まった後に1時間~12時間の間、継続する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
虚血再灌流障害を有する器官におけるニトロチロシンの形成を阻害するためのシステムであって、前記システムは、20ppm以下のNOガスを含む組成物を前記器官に直接的に連続して投与するように構成されており、ニトロチロシン付加物の形成は、前記組成物と接触していない対照器官と比較して、前記器官において阻害される、システム。
【請求項11】
ニトロチロシンの形成は、同様の条件下で治療されるが直接的におよび連続的にNOガスを投与されるわけではない器官と比較して、5%~95%阻害される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記組成物は、無細胞灌流液を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記無細胞灌流液は、カプリル酸ナトリウムと、N-アセチル-DL-トリプトファンと、ヒトアルブミンとを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記器官は、心臓または肺または腎臓である、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記組成物の投与は、前記器官の生存率を改善するために必要な時間の間、行われる、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記組成物の投与は、5分~60分の間、または、1時間~12時間の間、行われる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
投与は、前記虚血の開始と同時に始まる、または、投与は、前記虚血の開始後5分~30分以内に始まる、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
投与は、再灌流の間に始まる、または、投与は、再灌流が始まった後に1時間~12時間の間、継続する、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
虚血再灌流障害を有する器官におけるミトコンドリア複合体I活性、複合体II活性、複合体III活性、複合体IV活性、または、これらの組み合わせの不活性化を防止するためのシステムであって、前記システムは、20ppm以下のNOガスを含む組成物を前記器官に直接的に連続して投与するように構成されており、20ppm以下のNOガスを投与することは、対照器官と比較して、ミトコンドリア複合体I、複合体II、複合体III、複合体IV、または、これらの組み合わせの活性の不活化を防止する、システム。
【請求項20】
ミトコンドリア複合体I活性、複合体II活性、複合体III活性、複合体IV活性、または、これらの組み合わせの不活性化は、同様の条件下で治療されるが直接的におよび連続的にNOガスを投与されるわけではない器官と比較して、5%~95%阻害される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記組成物は、無細胞灌流液を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記無細胞灌流液は、カプリル酸ナトリウムと、N-アセチル-DL-トリプトファンと、ヒトアルブミンとを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記器官は、心臓または肺または腎臓である、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記組成物の投与は、前記器官の生存率を改善するために必要な時間の間、行われる、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記組成物の投与は、5分~60分の間、または、1時間~12時間の間、行われる、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
投与は、前記虚血の開始と同時に始まる、または、投与は、前記虚血の開始後5分~30分以内に始まる、請求項19に記載のシステム。
【請求項27】
投与は、再灌流の間に始まる、または、投与は、再灌流が始まった後に1時間~12時間の間、継続する、請求項19に記載のシステム。
【外国語明細書】