(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159819
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラント及び包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、並びにシリコン材料の梱包体
(51)【国際特許分類】
B65D 85/30 20060101AFI20241031BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241031BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65D85/30 500
B65D65/40 D
B32B27/32 E
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024137651
(22)【出願日】2024-08-19
(62)【分割の表示】P 2020143765の分割
【原出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 宏佳
(72)【発明者】
【氏名】甕 克行
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一志
(57)【要約】
【課題】シリコン材料の輸送用包装体に用いられ、滑り性、透明性、及びクリーン性が良好なシーラント、並びにそのシーラントが用いられた包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、及びシリコン材料の梱包体を提供する。
【解決手段】シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、シーラントは、輸送用包装体においてシリコン材料側に位置する第1面及び当該第1面に対向する第2面を有し、シーラントは、第1面を含む第1部分と、第1部分よりも第2面側に位置する第2部分とを有し、第1部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、第2部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、第1面のフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつ第1面のパーシステントホモロジの値N
10が1.0以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、
前記シーラントは、前記輸送用包装体において前記シリコン材料側に位置する第1面及び当該第1面に対向する第2面を有し、
前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分と、前記第1部分よりも前記第2面側に位置する第2部分とを有し、
前記第1部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、
前記第2部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、
前記シーラントからの揮発成分をGC/MSにて分析したマススペクトルにおいて、アルカン以外のピークであって、トルエン換算で10ppm以上のピークが検出されず、
前記第1面のフラクタル次元Dが1.70~1.80の範囲であり、かつ前記第1面のパーシステントホモロジの値N10が3.0以上であり、
前記フラクタル次元Dは、前記第1面グレースケール画像を取得し、当該グレースケール画像から取得した輪郭画像についてボックスカウンティング法によりフラクタル解析を行うことで算出される値であり、
前記パーシステントホモロジの値N10は、前記グレースケール画像のサイズを縮小し、前記サイズが縮小されたグレースケール画像にThreshold処理を施すことで前記第1面に存在する凸部が白色となり、凹部が黒色となるように変換された二値化画像に対し、パーシステントホモロジを用いて前記凹部のスケールを算出することで求められる値であるシーラント。
【請求項2】
前記第1部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、またはポリプロピレン(PP)をさらに含む請求項1に記載のシーラント。
【請求項3】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であり、
前記第1部分は、前記第1層である請求項1または請求項2に記載のシーラント。
【請求項4】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であり、
前記第1部分は、前記第1層であり、前記第2部分は、前記第2層である請求項1~3のいずれかに記載のシーラント。
【請求項5】
前記シーラント基材は、前記第2面を含む第3部分をさらに有し、
前記第3部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含む請求項1または請求項2に記載のシーラント。
【請求項6】
前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、第2層、及び第3層をこの順番で有する積層体であり、
前記第1部分は、前記第1層であり、前記第2部分は、前記第2層であり、前記第3部分は、前記第3層である請求項5に記載のシーラント。
【請求項7】
前記第2部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)をさらに含む請求項1~6のいずれかに記載のシーラント。
【請求項8】
基材と、前記基材の一方の面側に設けられた請求項1~7のいずれかに記載のシーラントとを備える包装材料。
【請求項9】
前記基材の前記シーラントとは反対の面側に設けられたガスバリア層をさらに有する請求項8に記載の包装材料。
【請求項10】
前記ガスバリア層が、アルミニウム酸化物またはケイ素酸化物を含む請求項9に記載の包装材料。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の包装材料により構成されたシリコン材料の輸送用包装体。
【請求項12】
請求項11に記載のシリコン材料の輸送用包装体と、
前記シリコン材料の輸送用包装体内に収容されたシリコン材料とを備えるシリコン材料の梱包体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラント及び包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、並びにシリコン材料の梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品等の製造に用いられるシリコンウェハや、シリコンウェハの原材料として用いられるポリシリコン等のシリコン材料に対しては、高いクリーン度(清浄度)が要求される。例えば、シリコンウェハの輸送に際しては、シリコンウェハはクリーンに洗浄された樹脂ケースに格納され、シリコンウェハが格納された樹脂ケースは、シリコンウェハに関する情報が記載されたラベルが貼り付けられた後で、樹脂ケースごとにクリーンな包装体に包装され、密封される。このような包装体として、例えば、特許文献1には、最外層フィルムを含む基材層と最内層のシーラント層との少なくとも2層以上の積層体からなる電子部品等包装用の無塵包装袋であって、前記最外層フィルムの表面が、該表面どうしの静摩擦係数(μs)0.40以下、動摩擦係数(μk)0.35以下、かつ表面粗さ(Ra)0.10~0.40μmの粗面に形成されるとともに、前記基材層の内部又は最内面に、少なくとも1層以上の静電防止剤を含む接着剤層又は接着プライマー層が設けられてなる自動包装適性に優れた無塵包装袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコン材料の輸送用包装体を構成する包装材料のシーラントは、良好な滑り性を有することが求められる。例えば、シーラントどうしの滑り性が悪いと、包装体を開口することが困難となる問題や、シーラントと樹脂ケースとの滑り性が悪いと、樹脂ケースの包装体への出し入れが困難となる問題が発生する。
【0005】
また、シリコン材料の輸送用包装体を構成する包装材料のシーラントは、良好な透明性を有することも求められる。透明性が悪いシーラントに対しては、例えば、樹脂ケースに貼り付けられたラベルの情報あるいはシリコンウェハや樹脂ケースの状態を包装体が未開封の状態では確認することが困難となる問題や、シーラントに存在する異物の確認が困難となる問題が発生する。
【0006】
しかし、滑り性と透明性とは、トレードオフの関係となる場合があり、これらに加え、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントは、基本的な要求特性として高いクリーン度が求められる。シリコン材料の輸送用包装体に用いることができる程度に高いクリーン度を有しつつ、良好な滑り性と良好な透明性とを有するシーラントを得ることは容易ではない。
【0007】
本開示は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられ、滑り性、透明性、及びクリーン性が良好なシーラント、並びにそのシーラントが用いられた包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、及びシリコン材料の梱包体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、前記シーラントは、前記輸送用包装体において前記シリコン材料側に位置する第1面及び当該第1面に対向する第2面を有し、前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分と、前記第1部分よりも前記第2面側に位置する第2部分とを有し、前記第1部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、前記第2部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、前記シーラントからの揮発成分をGC/MSにて分析したマススペクトルにおいて、アルカン以外のピークであって、トルエン換算で10ppm以上のピークが検出されず、前記第1面のフラクタル次元Dが1.70~1.80の範囲であり、かつ前記第1面のパーシステントホモロジの値N10が3.0以上であり、前記フラクタル次元Dは、前記第1面グレースケール画像を取得し、当該グレースケール画像から取得した輪郭画像についてボックスカウンティング法によりフラクタル解析を行うことで算出される値であり、前記パーシステントホモロジの値N10は、前記グレースケール画像のサイズを縮小し、前記サイズが縮小されたグレースケール画像にThreshold処理を施すことで前記第1面に存在する凸部が白色となり、凹部が黒色となるように変換された二値化画像に対し、パーシステントホモロジを用いて前記凹部のスケールを算出することで求められる値であるシーラントを提供する。
【0009】
本開示の一実施形態は、基材と、前記基材の一方の面側に設けられた前述のシーラントとを備える包装材料を提供する。
【0010】
前記基材の前記シーラントとは反対の面側に設けられたガスバリア層をさらに有していてもよく、前記ガスバリア層が、アルミニウム酸化物またはケイ素酸化物を含んでいてもよい。
【0011】
本開示の一実施形態は、前述の包装材料により構成されたシリコン材料の輸送用包装体を提供する。本開示の一実施形態は、前述のシリコン材料の輸送用包装体と、前記シリコン材料の輸送用包装体内に収容されたシリコン材料とを備えるシリコン材料の梱包体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、シリコン材料の輸送用包装体に用いられ、滑り性、透明性、及びクリーン性が良好なシーラント、並びにそのシーラントが用いられた包装材料、シリコン材料の輸送用包装体、及びシリコン材料の梱包体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るシーラントの概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係るシーラントの他の態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係るシーラントの他の態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態における包装材料の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態における包装材料の他の態様の概略構成を示す部分拡大端面図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態における包装材料を製造可能な製造装置の一例の構成を概略的に示す模式図である。
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態におけるシリコン材料の輸送用包装体の概略構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の一実施形態におけるシリコン材料の梱包体の概略構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態におけるシリコン材料の梱包体の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
当該図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
【0015】
〔シーラント〕
シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、前記シーラントは、前記輸送用包装体において前記シリコン材料側に位置する第1面及び当該第1面に対向する第2面を有し、前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分と、前記第1部分よりも前記第2面側に位置する第2部分とを有し、前記第1部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、前記第2部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、前記第1面のフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつ前記第1面のパーシステントホモロジの値N10が1.0以上である。本実施形態に係るシーラントは、滑り性、透明性、及びクリーン性が良好である。
【0016】
前記第1部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、またはポリプロピレン(PP)をさらに含んでいてもよい。例えば、第1面のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジN10の調整が容易になる。前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であり、前記第1部分は、前記第1層であってもよい。第1面のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジN10の調整が容易になる。前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、及び第2層を有する積層体であり、前記第1部分は、前記第1層であり、前記第2部分は、第2層であってもよい。第1面のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジN10の調整が容易になる。前記シーラント基材は、前記第2面を含む第3部分をさらに有し、前記第3部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでいてもよい。第1面のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジN10の調整が容易になる。前記シーラントは、前記第1面を含む第1層、第2層、及び第3層をこの順番で有する積層体であり、前記第1部分は、前記第1層であり、前記第2部分は、前記第2層であり、前記第3部分は、前記第3層であってもよい。第1面のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジN10の調整が容易になる。前記第2部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)をさらに含んでいてもよい。第1面のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジN10の調整が容易になる。
【0017】
また、本実施形態に係るシーラントは、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントであって、前記シーラントは、前記輸送用包装体において前記シリコン材料側に位置する第1面と、前記第1面に対向する第2面とを有する、1つの層のみからなる単層体であり、前記シーラントは、前記第1面を含む第1部分を有し、前記第1部分は、低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、前記シーラントは、前記第1部分よりも前記第2面側に位置する第2部分をさらに有し、前記第2部分は、リニア低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、前記シーラントにおける低密度ポリエチレン(LDPE)とリニア低密度ポリエチレン(LLDPE)との含有比が、質量基準において1:1~7:3の範囲であり、前記第1面のフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつ前記第1面のパーシステントホモロジの値N10が1.0以上である。本実施形態に係るシーラントは、滑り性、透明性、及びクリーン性が良好である。
【0018】
前記低密度ポリエチレン(LDPE)には、スリップ剤が実質的に添加されていなくてもよい。第1面のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジN10の調整が容易になる。
【0019】
本実施形態に係るシーラント10は、シリコン材料の輸送用の包装体に用いられるものであって、輸送用包装体においてシリコン材料側に位置する第1面11A及びそれに対向する第2面11Bを有し、ヒートシール可能なシーラント基材11を備え、第1面11Aを含む第1部分と、第1部分よりも第2面11B側に位置する第2部分と、第2面11Bを含む第3部分とを有する。本実施形態に係るシーラント10は、積層体(
図1及び
図2参照)であってもよく、単層体(
図3参照)であってもよい。例えば、第1面11A側に位置する第1層111と、第2面11B側に位置する第3層113と、第1層111及び第3層113の間に挟まれている第2層112とを有する積層体であり、第1部分が第1層111であり、第2部分が第2層112であり、第3部分が第3層113であってもよく(
図1参照)、第1層111と、第2層112とを有する積層体であり、第1部分は第1層111であり、第2部分は第2層112であってもよい(
図2参照)。また、第1面11A及び第2面11Bを有する単層体であってもよい(
図3参照)。本実施形態に係るシーラント10は、積層体(
図1及び
図2参照)であっても、単層体(
図3参照)であってもよいが、シーラントの表面形状の調整の観点で単層体よりも選択肢が多い、2以上の層の積層体のほうが、単層体よりも好ましい。
【0020】
本実施形態に係るシーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N
10が1.0以上である。第1面11Aのフラクタル次元Dが所定の範囲であることで、シーラント10の第1面11Aどうしの滑り性や、第1面11Aとシリコンウェハを格納する樹脂ケースとの間の良好な滑り性を得ることができる。また、第1面11Aのフラクタル次元Dが所定の範囲であることで、シーラント10の良好なクリーン性を確保することができる。さらに、第1面11Aのパーシステントホモロジの値N
10が所定の範囲であることで、シーラント10の良好な透明性を確保することができる。これにより、シーラント10を含む包装材料20(
図4及び
図5参照)から作製されるシリコン材料の輸送用包装体40(
図7参照)にシリコン材料が包装されたときに、シリコン材料の輸送用包装体40内部の視認性がシーラント10によって悪化するのを防止することができる。また、シリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを容易に確認することができる。
【0021】
一般に、シリコンウェハを格納する樹脂ケースは、自動梱包機を用いてシリコン材料の輸送用包装体に自動的に包装される。この自動梱包機においては、包装体を自動で開口して樹脂ケースが収納されるが、開口前の包装体はシーラントの表面どうしを当接させるようにして積み上げられている。自動梱包機を用いた包装がスムーズに行われるために、包装体を自動で容易に開口可能であることが求められる。そのためには、包装体を構成する包装材料のシーラントどうしの滑り性が良好であることが求められる。また、包装体の開口から樹脂ケースを入れたり開封した包装体から樹脂ケースを取り出したりすることを容易にするために、樹脂ケースとシーラントとの滑り性が良好であることが求められる。
【0022】
一方で、シリコン材料の輸送用包装体を構成する包装材料や、その最内層に位置するシーラントは、良好な透明性を有しているのが望ましい。例えば、シリコンウェハを格納した樹脂ケースには、シリコンウェハに関する情報が記載されたラベルが貼付されていることがある。包装材料やシーラントが良好な透明性を有していれば、梱包体を未開封の状態でラベルの情報を目視や読取装置で確認することができる。また、輸送中におけるシリコンウェハや樹脂ケースの破損や変色等を梱包体が未開封の状態で確認することもできる。特に、シリコン材料の梱包体は、シリコンウェハのクリーン度(清浄度)を維持するためにクリーンルーム内において開封される。クリーンルーム内の照明の関係上、包装材料やシーラントの透明性が高くないと、未開封の梱包体の内部が見えにくいという問題がある。そのため、シリコン材料の輸送用包装体を構成する包装材料は、クリーンルーム内でラベルの情報やシリコンウェハや樹脂ケースの状態が包装材料越しに目視や読取装置で認識可能な程度の透明性を有することが好ましい。また、例えば、シリコン材料の輸送用包装体におけるシーラント表面は、シリコンウェハを格納する樹脂ケースに直接に接触するため、シーラント表面に異物が付着していると、包装体に包装されたシリコンウェハに異物が付着してしまうおそれがある。異物が付着している包装体やシーラントは、シリコンウェハの輸送用としては不適格であるとして使用前に排除することが望まれる。包装材料やシーラントが異物を視認可能な程度に透明性を有していることで、包装体に樹脂ケースを包装する前に、異物の存在を確認することができ、シリコンウェハの汚染を未然に防止することができる。異物は、包装体、包装材料若しくはその中間材料、又はシーラントを目視することや検査装置を使用することで確認できる。シーラントの両面の確認が同時にできるので、シーラントは、シーラントに存在する異物がシーラント越しに目視又は検査装置で認識可能な程度の透明性を有することが好ましい。
【0023】
しかし、本発明者らは、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントとして、シリコン材料の輸送用包装体に対して要求される滑り性及び透明性のいずれも良好なシーラントを得ることは容易ではないことに気付いた。その理由は、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントは、その前提として高いクリーン度を確保することが要求されるため、原材料、製造の機械、条件若しくはプロセス、又はフィルム構成等における制約が多いためである。例えば、滑り性の調整に一般的に用いられるスリップ剤は、それ自体が異物になるおそれがあるので、使用が制限される。例えば、フィルムの表面形状の調整に一般的に用いられる印刷ロールの使用は、異物が転写するおそれがあるので、好ましくない。あるいは、滑り性や透明性に影響を与え得る因子として、例えば、原材料として用いる樹脂の種類や量、シーラントの積層構造や厚さなどが考えられるが、これらの因子は、まず、クリーンなシーラントを得る観点で選択され、次に、選択された条件下で許容される範囲内で滑り性や透明性を高めることが要求される。しかも、後述のように、滑り性と透明性はトレードオフの関係になる場合がある。そこで、本発明者らは、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントではシーラントの表面状態が重要であることに気付き、シリコン材料の輸送用包装体に対して要求される滑り性、透明性、及びクリーン性の観点では表面状態を表す指標としてフラクタル次元D及びパーシステントホモロジの値N10に着目すべきことに気付き、そして、フラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつパーシステントホモロジの値N10が1.0以上である場合に、シリコン材料の輸送用包装体に対して要求される滑り性、透明性、及びクリーン性のいずれも良好なシーラントが得られることに気付くことによって、本発明を完成させた。
【0024】
フラクタル次元Dは、物体(対象)の表面状態(表面構造)の複雑性・フラクタル性を表す指標である。一般的に、シーラントは、その表面を平坦とするように成膜されるが、シーラントの成膜時等にナノメートルオーダーの僅かな凹凸(うねり)がシーラントの表面に存在してしまう。シーラント表面のフラクタル次元Dが相対的に小さい値(例えば1.50未満)であるということは、表面が平坦となるように成膜されたシーラントにおいて、シーラントの成膜時に生じ得る僅かな凹凸(うねり)よりも大きいサイズの凹凸が存在しているということができる。このような凹凸は、シーラントに含まれる添加剤等に起因して生じるものであるため、シーラント表面のフラクタル次元Dが相対的に小さい値であるほど、クリーン性が低いということができる。一方で、シーラント表面のフラクタル次元Dが相対的に大きい値であるということは、シーラントの成膜時等に生じる僅かな凹凸(うねり)のみがシーラント表面に存在しているということができる。すなわち、シーラントに添加剤等が実質的に含まれていないことで、シーラントの成膜時等に生じる僅かな凹凸(うねり)のみをシーラント表面に存在させ得ると考えられるため、シーラント表面のフラクタル次元Dが相対的に大きい値であるほど、クリーン性が高いということができる。
【0025】
パーシステントホモロジの値N10は、物体(対象)の表面の凹凸の大きさを相対的に表す指標である。上述したように、一般的に、シーラントは、その表面を平坦とするように成膜されるが、シーラントの成膜時等にナノメートルオーダーの僅かな凹凸(うねり)がシーラントの表面に存在してしまう。このように、表面が平坦となるように成膜されたシーラントにおいて、シーラント表面のパーシステントホモロジの値N10が相対的に大きい値であるということは、シーラント表面に存在する複数の凹凸の凹部(または凸部)どうしが相対的に近い位置に存在している状態(例えば、互いに近接して略環状を形成するように位置する複数の凹部(または凸部)と、その環状内に位置する一または複数の凸部(または凹部)とからなる凹凸群がシーラント表面に相対的に多数存在している状態)であり、可視光の波長を考慮したときに、シーラント表面の凹凸で光が反射し難いということができる。すなわち、シーラント表面のパーシステントホモロジの値N10が相対的に大きい値であるほど、シーラントの透明性が高い状態であるということができる。一方、シーラント表面のパーシステントホモロジの値N10が相対的に小さい値であるということは、シーラント表面に存在する複数の凹凸の凹部(または凸部)どうしが相対的に遠い位置に存在している状態(例えば、上記凹凸群がシーラント表面に相対的に少数存在しているまたは存在していない状態)であり、可視光の波長を考慮したときに、シーラント表面の光が反射し易いということができる。すなわち、シーラント表面のパーシステントホモロジの値N10が相対的に小さい値であるほど、シーラントの透明性が低い状態であるということができる。
【0026】
本実施形態においては、シーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつシーラント10の第1面11AのパーシステントホモロジN10の値が1.0以下であることで、シーラント10の良好な透明性を確保することができるとともに、シーラント10の第1面11Aどうしの滑り性や、第1面11Aとシリコンウェハを格納する樹脂ケースとの間の滑り性も得ることができ、シリコン材料の輸送用包装体に対して要求されるクリーン性を得ることができる。シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントでは、スリップ剤や印刷ロールの使用に制約があるため、スリップ剤や印刷ロールの低減された使用や実質的な不使用であっても良好な滑り性を得ることができる本実施形態のシーラントは、シリコン材料の輸送用包装体に用いられるシーラントとして特に適しているものである。
【0027】
本実施形態において、シーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dは、例えば、下記のようにして求められ得る。
シーラント10の第1面11Aを、例えば、白色干渉式光学顕微鏡(Zygo社製、製品名:NewView6300型)を用いて、下記条件にて撮像し、第1面11Aの高さ情報を含むグレースケール画像(496ピクセル×496ピクセル)を取得する。
[測定条件]
・測定装置:白色干渉式光学顕微鏡(Zygo社製、製品名:NewView6300型)
・対物レンズ:50倍
・Zoomレンズ:1倍
・測定画素数:496ピクセル×496ピクセル
・視野範囲:216μm×216μm
[解析条件]
・解析ソフト:MetroPro ver8.3.2
・Removed:Cylinder
・FiliterType:None
【0028】
グレースケール画像に対して、例えば、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH)が開発した画像解析フリーウェア)を用いてThreshold処理(Image-Adjust-Treshold:Otsuを選択)を施して、シーラント10の第1面11Aに存在する凸部が白色、凹部が黒色となるように、グレースケール画像を二値化画像に変換する。なお、シーラント10の第1面11Aに存在する凸部が黒色、凹部が白色となるようにグレースケール画像を二値化画像に変換してもよい。
【0029】
二値化画像に対して、例えば、画像解析ソフトImageJを用いて、輪郭抽出処理(Proscess-Find Edges)を施すことにより、輪郭画像(背景白色、輪郭幅2ピクセル)に変換する。
【0030】
輪郭画像に対して、例えば、画像解析ソフトImageJを用いて、ボックスカウンティング法によりフラクタル解析を行い、フラクタル次元Dを算出する。具体的には、ピクセルの大きさ(一辺の長さa)を変化させ、そのピクセルに含まれる信号値を有する部分(本実施形態では背景色を白色としているため、黒色部分のピクセル)の数(N(a))をカウントし、それぞれの両対数(log(a)v.s.log(N(a)))グラフの傾きを求めることにより、フラクタル次元Dを算出することができる。
【0031】
シーラント10の第1面11Aのパーシステントホモロジの値N10は、例えば下記のようにして求められ得る。
上述のフラクタル次元Dの算出において取得したグレースケール画像(496ピクセル×496ピクセル)を、120ピクセル×120ピクセルのサイズに縮小した後に、例えば、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH)が開発した画像解析フリーウェア)を用いて、サイズを縮小したグレースケール画像に対してThreshold処理(Image-Adjust-Treshold:Otsuを選択)を施し、シーラント10の第1面11Aに存在する凸部が白色、凹部が黒色となるように、当該グレースケール画像を二値化画像に変換する。なお、白色干渉式光学顕微鏡を用いて120ピクセル×120ピクセルのサイズのグレースケール画像を取得することができる場合には、当該グレースケール画像を縮小しなくてもよい。また、シーラント10の第1面11Aに存在する凸部が黒色、凹部が白色となるようにグレースケール画像を二値化画像に変換してもよい。
【0032】
二値化画像に対して、パーシステントホモロジを用いて凹部のスケールを算出する。パーシステントホモロジ(Persistent Homology)とは、対象(本実施形態では、二値化画像の白色点の集合)におけるm次元(本実施形態では、m=1)の穴の遷移を特徴付けるための画像解析手法である。パーシステントホモロジによって点の配置に関する特徴を調べることができる。本実施形態においては、凸部間に位置する凹部のスケールを算出する。具体的には、対象における各白色点を円状に徐々に大きくしていくと、その過程において各白色点が繋がり、略中心に空洞を有する環状複合体が形成される。そのまま各白色点を大きくすると、当該空洞が消滅する。そして、上記環状複合体が発生した時点における各白色点の直径(以下、「発生径」という。)Xと空洞が消滅した時点の円における各白色点の直径(以下、「消滅径」という。)Yとを求める。発生径X及び消滅径Yに関し、統計解析ソフト(例えば、RのTDA(Topological Data Analysis)ライブラリ等)を用いて、二値化画像内に形成される環状複合体について発生径X及び消滅径Yをμmスケールに換算して算出する。その後、下記式を満たす環状複合体の数を算出する。
Y≧X+10
パーシステントホモロジの値N10は、シーラント10の第1面11Aにおける任意に選択された複数個所(例えば3箇所)の上記グレースケール画像を取得し、各画像から算出された上記環状複合体の数の平均値として求められればよい。
【0033】
第1面11Aのフラクタル次元Dは、1.50~1.90の範囲であればよく、1.70~1.85の範囲であるのが好ましく、1.70~1.80の範囲であるのがより好ましい。また、パーシステントホモロジの値N10は、1.0以上であればよく、2.0~10.0の範囲であるのが好ましく、3.0~9.0の範囲であるのがより好ましい。
【0034】
図1~
図3に示すシーラント10の厚みT10は、シーラント10を含む包装材料により構成されるシリコン材料の輸送用包装体の所望の厚さや所望のヒートシール強度等に応じて適宜設定され得るものであるが、例えば、30~60μm程度であればよい。
【0035】
図1及び
図2に示すシーラント10の第1面側11A側に位置する第1部分に相当する第1層111は、例えば、スリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」という。)を主成分として含む層である。第1層111がLDPEを主成分として含むことによって、シーラントの低分子成分の揮発を抑制することができる。第1層111をスリップ剤が実質的に添加されていない層とすることで、スリップ剤に起因する表面の凹凸が生じるのを抑制することができるので、シーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dを1.50~1.90の範囲、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N
10を1.0以上とすることが容易となる。
【0036】
スリップ剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク等の粒子や、シリコーン樹脂、四級アンモニウム塩化合物等の界面活性剤が挙げられるが、スリップ剤の使用を低減したり実質的に使用しなかったりすることによって、スリップ剤の形状や大きさに起因する凹凸やLDPE等の第1層111の他の成分との親和性に起因する凹凸がシーラントの表面に生じるおそれを抑制することができる。なお、本実施形態において、スリップ剤が実質的に添加されていないとは、第1面11Aのフラクタル次元Dを1.50~1.90の範囲であり、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N10を1.0以上である範囲とすることができる程度にスリップ剤が添加されていることを許容する趣旨である。また、本実施形態において、スリップ剤が実質的に添加されていない態様で説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、扁平な粒子や大きさが小さい粒子を用いたり、あるいは界面活性剤の種類や量を調整して所望の凹凸を生じさせることによって、シーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dを1.50~1.90の範囲、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N10を1.0以上としてもよい。
【0037】
図1及び
図2に示すシーラント10の第1層111のLDPEの含有量は、樹脂成分の総量に対して50質量%~100質量%である。第1層111は、密度や分子量分布等が異なる複数の種類のLDPEを含んでいてもよい。第1層111は、LDPEに加えて、例えば、リニア低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」といいます。)、高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」といいます。)、ポリプロピレン(以下、「PP」といいます。)等のヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して0質量%~50質量%の含有量で含んでいてもよい。親和性が異なる複数種類の樹脂を組み合わせることで、第1層111に生じる凹凸を調整し、シーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dを1.50~1.90の範囲、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N
10を1.0以上に調整することが可能になる。なお、
図1及び
図2に示すシーラント10では、第1層111がLDPEを主成分として含むものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、第1層111は、LLDPE、HDPE、PP等のヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して、50質量%~100質量%含んでいてもよく、LDPEを含んでいなくてもよい。
【0038】
図1に示すシーラント10の第2面11B側に位置する第3部分に相当する第3層113も、第1層111と同様に、例えば、スリップ剤が実質的に添加されていないLDPEを主成分として含む層である。ただし、本実施形態において、第1層111と同様に、第3層113は、スリップ剤が実質的に添加されていないLDPEを主成分として含む層に限定されず、例えば、LLDPE、HDPE、PP等のヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して、50質量%~100質量%含んでいてもよく、LDPEを含んでいなくてもよい。
【0039】
図1及び
図2に示すシーラント10の第2部分に相当する第2層112は、例えば、LLDPEを含む層である。シリコン材料の輸送用包装体の最内層に位置するシーラント10に由来する揮発成分(シーラント10由来のアウトガス成分)が内容物であるシリコンウェハやポリシリコン等のシリコン材料に付着してしまうと、シリコンウェハを用いて製造される半導体装置において欠陥を生じさせてしまうおそれがある。そのため、シーラント10に由来する揮発成分は、可能な限り少ないほうが望ましい。シーラント10に由来する揮発成分を低減させるためには、シーラント10の厚みT10を薄くするのが望ましい。この点、LLDPEは、LDPEに比べ、伸縮性が高く、折り曲げに対する耐性が高いため、シーラント10としてLLDPEを用いることで、シーラント10の厚みT10を相対的に薄くすることができる。
【0040】
また、シリコン材料の輸送用包装体40に樹脂ケース51を収容した後、シリコン材料の輸送用包装体40から脱気して梱包されるため、シリコン材料の輸送用包装体40を構成する包装材料に含まれるシーラント10には、良好な追従性が求められる。この点においても、LLDPEが用いられることで、シーラント10の追従性が良好になる。しかしながら、LLDPEの重合時の圧力は、LDPEの重合時の圧力よりも低いため、LDPEに比べて低分子成分が発生し、揮発しやすい。そこで、
図1に示すように、LLDPEを含む第2層112がLDPEを主成分とする第1層111と第3層113との間に位置させることで、シーラント10の厚みT10を相対的に薄くすることができるとともに、LLDPEから低分子成分を揮発するのを防止することができる。
【0041】
図1及び
図2に示すシーラント10の第2層112のLLDPEの含有量は、樹脂成分の総量に対して20質量%~100質量%であり、好ましくは30質量%~80質量%、より好ましくは40質量%~60質量%である。第2層112は、LLDPEに加えて、例えば、LDPE、HDPE、PP等のヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して0質量%~80質量%の含有量で含んでいてもよい。第2層112のLLDPEと、第1層111または第3層113の主成分であるLDPEとの親和性が比較的高いので、第2層112は、LLDPEに加えて、LDPEを含んでいることが好ましい。また、LLDPEとは親和性が比較的低いHDPEやPPを添加することにより、意図的に表面の凹凸を形成させてもよい。なお、
図1及び
図2に示す態様では、第2層112がLLDPEを樹脂成分の総量に対して20質量%~100質量%含むものを示したが、これに限定されるものではなく、例えば、第2層112は、LLDPEの含有量が樹脂成分の総量に対して20質量%未満であってもよく、LDPE、HDPE、PP等のヒートシール性がある樹脂を樹脂成分の総量に対して50質量%を上回る量を含んでいてもよく、LDPEを含んでいなくてもよい。
【0042】
第2層112の原材料や加工を調整することによって、シーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N10が1.0以上である範囲とすることができる。シーラント10の第1面11Aの表面形状は、第2層112と第1層111との界面の凹凸や、第2層112の原材料と第1層111の原材料との親和性によって変化する。例えば、第2層112に粒子や界面活性剤等のスリップ剤を添加したり、第2層112のスリップ剤の使用量を低減ないしスリップ剤を添加しないものにしたり、第2層112を印刷版で押圧して所望の表面形状を得た後に第1層111を形成したり、あるいは第1層111の原材料に対して親和性の低い材料や親和性の高い材料を第2層112に選択したりすることによって、シーラント10の第1面11Aの表面形状を調節し、フラクタル次元Dを1.50~1.90の範囲、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N10を1.0以上とすることができる。
【0043】
図3に示すシーラント10において、単層構造体のシーラント基材11は、LDPEとLLDPEとを含む。このシーラント基材11において、LDPEとLLDPEとの配合比が、1:1~7:3程度であればよい。このように、LDPEの配合量がLLDPEの配合量よりも多いことで、シーラント基材11の第1面11A側においてLDPEの存在量を多くすることができるとともに、LLDPEによりシーラント10の厚みT10を薄くすることができ、低分子成分が揮発するのを防ぐことができる。
図3に示すシーラント10の第1面11Aのフラクタル次元D及びパーシステントホモロジの値N
10は、前述した
図1に示すシーラント10の第1層111と同様に調節を行うことができる。
【0044】
本実施形態におけるシーラント10は、従来公知のフィルム成膜法を用いて製造され得る。例えば、
図1に示すシーラント10は、ダイコート法等の塗工法、押出インフレーション法等を用いて、第3層113、第2層112、及び第1層111を積層形成することで製造され得る。
図2及び
図3に示すシーラント10も同様に塗工法、押出インフレーション法等を用いて製造され得る。
【0045】
〔包装材料〕
図4は、本開示の一実施形態に係る包装材料の概略構成を示す部分拡大切断端面図であり、
図5は、本開示の一実施形態に係る包装材料の他の態様の概略構成を示す部分拡大端面図である。
【0046】
図4に示すように、包装材料20は、基材21の一方の面側に第2面11Bを当接させるようにしてシーラント10が積層された積層構造を有する。基材21は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、ポリイミド、シクロオレフィンコポリマー等から選択される1種樹脂材料または2種以上の樹脂材料の積層体により構成される。なお、
図5に示す包装材料20においては、基材21が2種の樹脂材料の積層体(第1樹脂層211及び第2樹脂層212)により構成されており、第1樹脂層211がシーラント10の第2面11Bに対する接着層として機能している。この場合において、例えば、第1樹脂層211はポリエチレン(PE)により構成され、第2樹脂層212はポリエチレンテレフタレート(PET)により構成されている。
【0047】
包装材料20におけるシーラント10は、第1面11Aのフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N
10が1.0以上であることで、良好な滑り性、良好な透明性、及び良好なクリーン性を有する。その結果、包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40(
図7参照)にシリコンウェハやポリシリコンが包装されたときに、シリコン材料の輸送用包装体40の内部の視認性がシーラント10によって悪化するのを防止することができる。また、シリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを容易に確認することができる。
【0048】
図5に示すように、包装材料20は、基材21とシーラント10との間にガスバリア層22を有していてもよい。ガスバリア層22を有することで、包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40の外部から、シリコン材料表面を汚染したりシリコン材料と反応したりするガス等が侵入するのを防止することができる。ガスバリア層22は、例えば、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物等の無機酸化物や窒化ケイ素等の無機窒化物等を樹脂層(例えばPET層等)に蒸着させた蒸着膜等であってもよい。特に、アルミニウム酸化物やケイ素酸化物のガスバリア層は良好な透明性を有するため、好ましい。また、ガスバリア層22は、アルミニウム等の金属を蒸着させた金属蒸着膜や、アルミニウム等の金属箔であってもよい。なお、包装材料20がこれらの金属蒸着膜や金属箔を基材21とシーラント10との間に有する場合、包装材料20の透明性は確保されないが、包装材料20から製造されるシリコン材料の輸送用包装体40にガスバリア性の他、光遮蔽性をも付与することができる。また、この態様において、シーラント10が良好な透明性を有することで、包装材料20から作製されるシリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かをより容易に確認することができる。
【0049】
図6は、本開示の一実施形態に係る包装材料を製造可能な製造装置の一例の構成を概略的に示す模式図である。前述した包装材料20は、従来公知のフィルム等の作製方法により作製すればよい。例えば、
図6に示すように、第1ロール61、第2ロール62、第3ロール63及びTダイ64を有する製造装置60を用いて作製され得る。かかる製造装置において、シーラント10の第2面11Bと、第2樹脂層212との間に、第1樹脂層211を構成する樹脂材料がフィルム状にTダイ64から押し出され、第1ロール61、第2ロール62及び第3ロール63により面状圧接されて冷却されることで、包装材料20が作製され得る。
【0050】
〔シリコン材料の輸送用包装体〕
図7は、本開示の一実施形態に係るシリコン材料の輸送用包装体の概略構成を示す斜視図であり、
図8及び
図9は、本開示の一実施形態に係るシリコン材料の梱包体の概略構成を示す斜視図である。
【0051】
図7に示すように、本実施形態におけるシリコン材料の輸送用包装体40は、広げることで略方体状(略直方体状)となる包装袋であって、第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44によって構成されている。第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44は、いずれも包装材料20により構成されている。シリコン材料の輸送用包装体40は、第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44のいずれもがシーラント10の第1面11Aが最内層に位置し、基材21の他方面側が最外面に位置するように構成されている。
【0052】
シリコン材料の輸送用包装体40において、第1側面フィルム41の2つの対向する側縁部の一方と折り込まれた第1ガゼットフィルム43の2つの対向する側縁部の一方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させた溶着させた第1ヒートシール部HS1が形成され、第1側面フィルム41のその側縁部の他方と折り込まれた第2ガゼットフィルム44の2つの対向する側縁部の一方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させた第2ヒートシール部HS2が形成されている。また、第2側面フィルム42の2つの対向する側縁部の一方と折り込まれた第1ガゼットフィルム43のその側縁部の他方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着された第3ヒートシール部HS3が形成され、第2側面フィルム42のその側面部の他方と折り込まれた第2ガゼットフィルム44のその側縁部の他方とを重ね合わせてヒートシールにより溶着させた第4ヒートシール部HS4が形成されている。第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部を重ね合わせてヒートシールにより溶着させた底面ヒートシール部HSBに対向して位置する第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部は、ヒートシールされずにシリコン材料の輸送用包装体40の開口部45を形成している。
【0053】
第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44を折り込んだシリコン材料の輸送用包装体40が多数積み重ねられている状態で、第1側面フィルム41または第2側面フィルム42を吸着保持して上方に持ち上げることで、開口部45を開くことができる。開いた開口部45から、シリコン材料の輸送用包装体40内にシリコンウェハ52を格納する樹脂ケース51(
図8参照)又はポリシリコン53(
図9参照)を収容し、開口部45における第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42のそれぞれの側縁部を重ね合わせてヒートシールすることで、上面ヒートシール部HSTを形成してシリコン材料の梱包体50(
図8及び
図9参照)を作製することができる。
【0054】
図7に示すシリコン材料の輸送用包装体40においては、第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44のシーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N
10が1.0以上である。第1面11Aはシリコン材料の輸送用包装体40の最内面に位置し、第1側面フィルム41または第2側面フィルム42を吸着保持して上方に持ち上げたときに、容易に開口部45を開くことができるとともに、開いた開口部45からシリコン材料の輸送用包装体40内に樹脂ケース51を容易に収容することができる。また、シーラント10が良好な透明性を有するため、シリコン材料の輸送用包装体40に包装されたシリコンウェハ52や樹脂ケース51、又はポリシリコン53の視認性を良好にすることができる。なお、包装材料20の基材21のシーラント10とは反対面側に金属蒸着膜や金属箔が設けられている場合、シリコン材料の輸送用包装体40の透明性は確保されないが、シリコン材料の輸送用包装体40にガスバリア性や光遮蔽性を付与することができる。また、基材21の金属蒸着膜や金属箔とは反対面側に設けられているシーラント10において良好な透明性が確保されていることで、シリコン材料の輸送用包装体40におけるシーラント10の第1面11Aに異物が付着しているか否かを容易に確認することができる。
【0055】
以上説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示を限定するために記載されたものではない。したがって、前述の実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計事項や均等物をも含む趣旨である。
【0056】
本実施形態におけるシリコン材料の梱包体50は、前述したシリコン材料の輸送用包装体40を内袋とし、それと同様の構成を有する外袋をさらに有するものであってもよく、この場合において、内袋としてシリコン材料の輸送用包装体40にシリコンウェハ52やポリシリコン53を収容し、さらに外袋に収容すればよい。この外袋の第1側面フィルム41、第2側面フィルム42、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44のそれぞれを構成する包装材料は、
図4及び
図5に示す包装材料20であってもよいし、帯電防止機能を有する樹脂フィルム(例えば、PTME-RTやエンブレムERT(製品名、ユニチカ社製)等、ガスバリア層22、第1樹脂層211及びシーラント10をこの順で積層してなる積層体であってもよい。
【0057】
本実施形態におけるシリコン材料の輸送用包装体40は、第1ガゼットフィルム43及び第2ガゼットフィルム44を有しないものであってもよい。この場合において、第1側面フィルム41及び第2側面フィルム42を互いのシーラント10の第1面11Aを対向させるようにして3つの側縁部をヒートシールすればよい。
【実施例0058】
以下、実施例等を挙げて本開示をさらに詳細に説明するが、本開示は下記の実施例等により何ら限定されるものではない。
【0059】
〔実施例1〕
第1層111の構成材料としてスリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製、製品名:UBEポリエチレンB128)を用い、第2層112の構成材料としてスリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製、製品名:UBEポリエチレンB128)及びスリップ剤が実質的に添加されていないリニア低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LLDPE、プライムポリマー社製、製品名:ウルトゼックス3500ZA)の溶融混合物(配合比=1:1(質量基準))を用い、第3層113の構成材料としてスリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製、製品名:UBEポリエチレンB128)を用い、多層共押出インフレーション法により、
図1に示す構成を有するシーラント10(第1層111(膜厚:8μm)、第2層112(膜厚:24μm)、第3層113(膜厚:8μm))を作製した。
【0060】
前述のようにして作製されたシーラント10の第1層111の第1面11A上のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジの値N10を算出するために、白色干渉式光学顕微鏡(Zygo社製、製品名:NewView6300型)を用いて、下記条件にて撮像し、グレースケール画像(496ピクセル×496ピクセル)を取得した。
【0061】
[測定条件]
・測定装置:白色干渉式光学顕微鏡(Zygo社製、製品名:NewView6300型)
・対物レンズ:50倍
・Zoomレンズ:1倍
・測定画素数:496ピクセル×496ピクセル
・視野範囲:216μm×216μm
[解析条件]
・解析ソフト:MetroPro ver8.3.2
・Removed:Cylinder
・FiliterType:None
【0062】
グレースケール画像に対して、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH)が開発した画像解析フリーウェア)を用いて、Threshold処理(Image-Adjust-Treshold:Otsuを選択)を施し、第1面11Aの凸部が白色、凹部が黒色となるように、グレースケール画像を二値化画像に変換した。
【0063】
二値化画像を、画像解析ソフトImageJを用いて、輪郭抽出処理(Proscess-Find Edges)を施すことにより、輪郭画像(背景白色、輪郭幅2ピクセル)に変換した。
【0064】
輪郭画像を、画像解析ソフトImageJを用いて、ボックスカウンティング法によりフラクタル解析を行い、フラクタル次元Dを算出する。具体的には、ピクセルの大きさ(一辺の長さa)を変化させ、そのピクセルに含まれる信号値を有する部分(本実施例では背景色を白色としているため、黒色部分のピクセル)の数(N(a))をカウントし、それぞれの両対数(log(a)v.s.log(N(a)))グラフの傾きを求めることにより、フラクタル次元Dを算出した。結果を表1に示す。
【0065】
また、パーシステントホモロジの値を算出するために、第1面11A上における任意に選択された3箇所のグレースケール画像(496ピクセル×496ピクセル)を120ピクセル×120ピクセルのサイズに縮小した後に、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH)が開発した画像解析フリーウェア)を用いて、グレースケール画像に対してThreshold処理(Image-Adjust-Treshold:Otsuを選択)を施すことにより、第1面11Aの凸部が白色、凹部が黒色となるように、各グレースケール画像を二値化画像に変換した。
【0066】
各二値化画像に対して、パーシステントホモロジを用いて凹部のスケールを算出した。具体的には、発生径X及び消滅径Yに関し、統計解析ソフト(RのTDAライブラリ)を用いて、二値化画像内のすべての環状複合体に関し発生径X及び消滅径Yをμmスケールに換算して算出した。その後、下記式を満たす環状複合体の数を、3枚の二値化画像に対してそれぞれ算出し、その平均値N10を算出した。結果を表1に示す。
Y≧X+10
【0067】
シーラント10の第1層111の動摩擦係数を、摩擦測定機(東洋精機製作所製、製品名:摩擦測定機TR-2)を用いて測定し、シーラント10の第1面11Aの滑り性を下記の基準に従い評価した。結果を表1に示す。
<滑り性評価基準>
〇:動摩擦係数が0.45未満である。
×:動摩擦係数が0.45以上である。
【0068】
シーラント10の写像性を、写像測定機(スガ試験機社製、製品名:ICM-1T)を用いて測定し、シーラント10の透明性を下記の基準に従い、評価した。結果を表1に示す。
<透明性評価基準>
〇:光学くし幅2mmにおいて、写像性が60%以上である。
×:光学くし幅2mmにおいて、写像性が60%未満である。
【0069】
さらに、シーラント10からの揮発成分を下記の条件のGC/MSにて分析してマススペクトルを取得し、シーラント10のクリーン性を下記の基準に従い、評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<GC/MS条件>
・ガスクロマトグラフ:GCMS-QP2010(島津製作所社製)
・カラム:670-15003-03(長さ:30mm、内径:0.25mm、島津製作所社製)
・カラムオーブン温度:50℃
・注入量:1μL
・キャリアガス:He(57.1mL/分)
・気化室温度設定:300℃
・測定モード:スプリット
【0071】
<クリーン性評価>
〇:アルカン以外のピークであって、トルエン換算で10ppm以上のピークが検出されない。
×:アルカン以外のピークであって、トルエン換算で10ppm以上のピークが検出される。
【0072】
〔実施例2〕
スリップ剤が実質的に添加されていない低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LDPE、宇部丸善ポリエチレン社製、製品名:UBEポリエチレンB128)のペレット及びスリップ剤が実質的に添加されていないリニア低密度ポリエチレン(いわゆる無添加LLDPE、プライムポリマー社製、製品名:ウルトゼックス3500ZA)のペレットを配合比7:3(質量基準)で溶融混合し、インフレーション成膜法により、
図3に示すシーラント10を作製した。
【0073】
前述のようにして作製されたシーラント10の第1面11A上のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジの値N10を実施例1と同様にして算出した。また、シーラント10の第1面11Aの滑り性、シーラント10の透明性、およびシーラント10のクリーン性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0074】
〔比較例1〕
リニア低密度ポリエチレン(LLDPE、三井化学東セロ社製、製品名:T.U.X. MC-S)からなるシーラントの第1面上のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジの値N10を実施例1と同様にして算出した。また、シーラントの第1面の滑り性、シーラントの透明性、およびシーラントのクリーン性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0075】
〔比較例2〕
高密度ポリエチレン(HDPE、プライムポリマー社製、製品名:HZ3600F)のペレットを用い、インフレーション成膜法によりシーラントを作製した。作製されたシーラントの第1面上のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジの値N10を実施例1と同様にして算出した。また、シーラントの第1面の滑り性、シーラントの透明性、およびシーラントのクリーン性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0076】
〔比較例3〕
リニア低密度ポリエチレン(LLDPE、アイセロ社製、製品名:N601)からなるシーラントの第1面上のフラクタル次元D及びパーシステントホモロジの値N10を実施例1と同様にして算出した。また、シーラントの第1面の滑り性、シーラントの透明性、およびシーラントのクリーン性を実施例1と同様にして評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0077】
【0078】
表1に示す結果より、シーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dが所定の範囲であり、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N10が所定の範囲であることで、良好な滑り性、良好な透明性、及び良好なクリーン性を有することが確認された。一方で、フラクタル次元Dが1.50未満である比較例1においては、クリーン性に劣る結果となった。また、パーシステントホモロジの値N10が1.0未満である比較例2及び比較例3においては、透明性に劣る結果となった。このことから、シーラント10の第1面11Aのフラクタル次元Dが1.50~1.90の範囲であり、かつ第1面11Aのパーシステントホモロジの値N10が1.0以上であることで、良好な滑り性、良好な透明性、及び良好なクリーン性を奏することができると考えられる。