(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159853
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】水田作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01B69/00 303M
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024138983
(22)【出願日】2024-08-20
(62)【分割の表示】P 2023015265の分割
【原出願日】2014-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】直本 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和正
(72)【発明者】
【氏名】宮西 吉秀
(57)【要約】
【課題】動走行に関する情報が適切に表示される構成を有する。
【解決手段】測位衛星からの電波信号を受信し、位置情報を取得する測位システム45と、位置情報に基づいて自動操舵による自動走行が可能な走行機体Aと、走行機体Aに設けられたステアリングホイール11と、自動走行に関する情報が表示される表示装置Dと、表示装置Dを支持する逆U字状の支持フレーム37と、を備え、支持フレーム37の上端がステアリングホイール11よりも前方に位置し、表示装置Dには、自動走行に関する情報として、自動操舵状態であることを示す表示と、走行機体Dの走行方向のズレを示す表示とが表示される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星からの電波信号を受信し、位置情報を取得する測位システムと、
前記位置情報に基づいて自動操舵による自動走行が可能な走行機体と、
前記走行機体に設けられたステアリングホイールと、
メータパネルと、
前記自動走行に関する情報が表示される表示装置と、
前記表示装置を支持する逆U字状の支持フレームと、
左右の縦フレームと、を備え、
前記表示装置が、前記走行機体の幅方向において、前記左右の縦フレームの間に位置し、前記表示装置の上端部が前記メータパネルの上端部よりも上方に位置し、
前記測位システムの受信ユニットが、正面視で、前記表示装置よりも上方に、且つ、前記表示装置との間に上下方向に間隔を隔てて、前記左右の縦フレームの間に支持され、
前記支持フレームの上端が前記ステアリングホイールよりも前方に位置し、
前記表示装置には、前記自動走行に関する情報として、自動操舵状態であることを示す表示と、走行機体の走行方向のズレを示す表示とが表示される水田作業機。
【請求項2】
前記支持フレームの下端部が、前記走行機体の幅方向において、前記左右の縦フレームの間に位置する請求項1に記載の水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位衛星からの電波信号を受信することにより走行車体の位置情報を取得するように構成された水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成された水田作業機として特許文献1には、GPS装置により計測される位置情報に基づいて自律走行する技術が示されている。
【0003】
特許文献1では、走行車体に備えたGPSアンテナでGPS衛星(測位衛星)からの電波信号を受信する状態でティーチングを行うことにより基準線を設定し、この基準線に平行となる目標経路を設定する。この設定の後には、GPS衛星(測位衛星)からの電波信号を受信する状態で目標経路上に自律走行させる形態で田植作業を行えるように構成されている。
【0004】
特許文献2には、走行車体の位置を認識するためのGPS受信機を備えており、走行車体の運転キャビンの正面の右側にタッチパネル式の液晶ディスプレイで成るモニタを備えた技術が示されている。
【0005】
この特許文献2では、GPS衛星からの電波をGPS受信機で受信することで走行車体の位置を認識し、モニタに対してナビゲーション情報やボタン類を表示するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008‐92818号公報
【特許文献2】特開2002‐186309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
測位衛星からの電波を受信することにより走行車体の位置情報を取得する水田作業機では作業時に走行車体の位置をモニタで確認することや、作業に必要な情報をモニタで確認する必要がある。
【0008】
走行車体として、運転部の前部にボンネットを配置し、当該ボンネットの両側方に乗降通路となる乗降ステップを形成した構成において、特許文献2に示されるように走行車体のセンターから外れた位置にモニタが配置されたものでは、作業者が乗降ステップで移動する場合にモニタ等が移動の支障になることも考えられ改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、自動走行に関する情報が適切に表示される構成を有する水田作業機を得る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の作業車は、測位衛星からの電波信号を受信し、位置情報を取得する測位システムと、前記位置情報に基づいて自動操舵による自動走行が可能な走行機体と、前記走行機体に設けられたステアリングホイールと、メータパネルと、前記自動走行に関する情報が表示される表示装置と、前記表示装置を支持する逆U字状の支持フレームと、
左右の縦フレームと、を備え、
前記表示装置が、前記走行機体の幅方向において、前記左右の縦フレームの間に位置し、前記表示装置の上端部が前記メータパネルの上端部よりも上方に位置し、前記測位システムの受信ユニットが、正面視で、前記表示装置よりも上方に、且つ、前記表示装置との間に上下方向に間隔を隔てて、前記左右の縦フレームの間に支持され、前記支持フレームの上端が前記ステアリングホイールよりも前方に位置し、前記表示装置には、前記自動走行に関する情報として、自動操舵状態であることを示す表示と、走行機体の走行方向のズレを示す表示とが表示される。
また、本発明の水田作業機は、測位衛星からの電波信号を受信し、位置情報を取得する測位システムと、前記位置情報に基づいて自動操舵による自動走行が可能な走行機体と、前記走行機体に設けられたステアリングホイールと、前記自動走行に関する情報が表示される表示装置と、前記表示装置を支持する逆U字状の支持フレームと、を備え、前記支持フレームの上端が前記ステアリングホイールよりも前方に位置し、前記表示装置には、前記自動走行に関する情報として、自動操舵状態であることを示す表示と、走行機体の走行方向のズレを示す表示とが表示される。
本発明の水田作業機は、測位衛星からの電波信号を受信し、位置情報を取得する測位システムと、前記位置情報に基づいて自動操舵による自動走行が可能な走行機体と、前記走行機体に設けられた運転座席と、前記運転座席の前方に設けられ、前記自動走行に関する情報が表示される表示装置とを備え、前記表示装置には、前記自動走行に関する情報として、自動操舵状態であることを示す表示と、走行機体の走行方向のズレを示す表示とが表示される。
上記構成において、前記運転座席の前方に設けられたステアリングポストの下方にメータパネルが設けられ、前記メータパネルとは別に前記表示装置が設けられていると好適である。
また、上記構成において、前記自動走行に関する情報は、前記表示装置と前記メータパネルのうちの前記表示装置のみに表示されると好適である。
また、前記測位システムを支持する測位システム支持フレームを備え、前記測位システム支持フレームが左右の縦フレーム部と左右の縦フレーム部の上端同士を連結する連結フレーム部とを有し、走行機体の前後方向視で、前記表示装置を支持する支持フレーム及び前記表示装置が、左右の縦フレーム部及び連結フレーム部で囲われる空間の内側に位置すると好適である。
また、本発明の水田作業機は、走行車体が、運転部の前部にボンネットを配置し、当該ボンネットの両側方に乗降通路となる乗降ステップが形成され、前記ボンネットの後部で運転座席より前方にステアリングホイールが配置されると共に、測位衛星からの電波信号を受信し、走行車体の位置情報を取得してコンソールのモニタ部に表示する測位システムを備え、前後方向視において前記ボンネットの幅内において、前記モニタ部が前記ステアリングホイールより高い位置に配置されるように前記コンソールが備えられた点にある。
【0011】
この構成によると、運転座席に作業者が着座した状態で作業者の視線が向かう方向にコンソールが配置されるため、コンソールのモニタ部の表示内容を視認する場合に視線を大きく移動させなくて済む。また、走行車体と畦との間で乗降する場合のように、乗降ステップを作業者が移動する場合でも作業者の衣服等がコンソールに触れることがなく、乗降を容易に行える。
従って、測位衛星からの信号を受信して走行車体の位置情報が表示される構成を有し、この構成が乗降ステップでの移動に支障を来すことのない水田作業機が得られた。
【0012】
本発明は、前記コンソールで前記運転座席に対向する面に前記モニタ部が形成され、当該モニタ部の上端より上側で、前記運転座席の方向に延出する庇部を備えても良い。
【0013】
これによると、庇部により太陽光を遮ることが可能であるため、太陽光が直接射し込む環境で作業を行う場合でも、コンソールのモニタ部に表示される情報を正確に把握することが可能となる。
【0014】
本発明は、前記コンソールで前記モニタ部が形成された面に操作パネル部を形成し、当該操作パネル部に対して操作スイッチ又は報知ランプが形成されても良い。
【0015】
これによると、コンソールの操作パネル部の操作スイッチの操作により、タッチパネルと比較して確実な情報を入力することが可能となり、また、報知ランプの点灯により作業に必要な情報の取得も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図6】測位・自動操舵走行システムのブロック回路図である。
【
図7】コンソールのモニタ部と操作パネル部とを示す図である。
【
図8】別実施形態(a)のコンソールを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔田植機の全体構成〕
図1~
図3に示すように、左右一対の前車輪1と左右一対の後車輪2とを有する走行車体Aの中央部に運転座席3を備え、走行車体Aの後端に油圧シリンダ4の伸縮作動により昇降作動するリンク機構Lを介して昇降自在に苗植付装置B(水田作業装置の一例)を備えて水田作業機としての乗用型の田植機が構成されている。
【0018】
この田植機は、走行車体Aの前部位置のボンネット5にエンジン6が収容され、走行車体Aの中央位置にはエンジン6からの駆動力をミッションケース7で変速して左右の前車輪1と左右の後車輪2とに伝える走行伝動系を備えている。また、走行車体Aには、ミッションケース7からの駆動力を伝動軸8により苗植付装置Bに伝える作業伝動系を備えている。ミッションケース7には伝動軸8に伝えられる駆動力を断続する植付クラッチCを内装している。
【0019】
運転座席3の右側部には苗植付装置Bの昇降と植付クラッチCの断続とを行う昇降レバー10が配置され、ボンネット5の後部で運転座席3の前方には前車輪1を操向操作するステアリングホイール11が配置されている。このステアリングホイール11の左側部には、走行速度を設定する主変速レバー12が備えられ、このステアリングホイール11の右側部には苗植付装置Bの強制的な昇降と、昇降に連係して植付クラッチCの断続操作とを行う強制昇降レバー13が備えられている。
【0020】
苗植付装置Bは、水田作業装置の一例であり、リンク機構Lの後端に連結され伝動軸8の駆動力が伝えられる伝動ケースと21と、複数の整地フロート22と、マット状苗を載置する苗載台23と、伝動ケース21からの駆動力で作動するロータリ式の植付アーム24とを備えて8条用に構成されている。
【0021】
ボンネット5の先端位置に支柱状となるセンターマスコット14が備えられている。また、苗植付装置Bの左右両側部には、作用姿勢と格納姿勢とに切換自在にマーカ装置が備えられている。マーカ装置は、苗植付装置Bに対して前後向き姿勢の揺動軸を中心に揺動自在に支持されたマーカアーム26と、このマーカアーム26の揺動端に回転自在に支持され、外周に複数の突起が形成されたマーカリング27とで構成されている。
【0022】
マーカアーム26が
図1に示す作用姿勢に設定されることによりマーカリング27の外周が圃場面に接触し、走行車体Aの走行に伴い回転することにより圃場面に対して次の走行の中心となる凹状のマークが連続的に形成される。これにより、マーカリング27によって圃場面に凹状のマークを形成しておくことにより、走行車体Aを旋回させて苗植付作業を継続する場合には、センターマスコット14を、圃場面のマークに対して視覚的に照準する形態でステアリング操作を行うことにより、既植苗の列を基準にして最適となる位置に対する苗の植付が可能となる。
【0023】
作業姿勢にあるマーカアーム26は、苗植付装置Bの上昇に連動して格納姿勢に切換られ、この格納姿勢にロックされる。そして、昇降レバー10を下降位置に操作した状態で左右方向へ操作することにより、対応する側のマーカアーム26のロックが解除され、作用姿勢に切換られる。
【0024】
この田植機では、苗植付け作業を行う場合には、昇降レバー10の操作で整地フロート22が接地するレベルまで苗植付装置Bを下降させ、植付クラッチCを入り操作して走行車体Aを走行させることになる。これにより、整地フロート22が苗植付け箇所の泥面を整地する状態で、走行車体Aから伝えられる駆動力で苗載台23を左右方向に往復作動させ、この往復作動時に苗載台23に載置されたマット状苗の下端から複数の植付アーム24の植付爪が苗を所定量ずつ切り出して圃場に植え付ける作動が行われる。そして、必要な場合にはマーカ装置により圃場面に凹状マークを形成することになる。
【0025】
特に、本発明の田植機では、苗植付け作業時における走行経路をGNSS(Global Navigation Satellite Systems )として構成される測位システムにより取得し、記憶しておき、記憶した経路に平行する目標走行経路として設定することが可能である。このように目標走行経路を設定した後には、目標走行経路に沿って走行車体Aを自動操舵走行させることも可能に構成されている。
【0026】
尚、この田植機では、目標走行経路が設定された状況においても自動操舵走行させずに作業者がステアリングホイール11を操作する人為操舵走行で苗植付け作業を行えるようにも構成されている。このような理由から、マーカ装置を備えている。
【0027】
〔車体構成〕
この田植機では、走行車体Aの中央に運転座席3を有する運転部が形成され、この運転部の足元部位に運転部ステップ15が形成され、この左右の外側位置に補助ステップ15Aが形成されている。走行車体Aの前部のボンネット5の左右両側には運転部ステップ15に段差なく連なる乗降通路としての乗降ステップ16が形成されている。尚、乗降ステップ16は、走行車体Aの前端を畦に接近させ、畦と走行車体Aとの間での作業者の移動を容易にする。
【0028】
左右の後車輪2の上方を覆う位置に作業ステップ17が形成されている。この作業ステップ17は、後部フェンダーとしても機能するものであり、この作業ステップ17の中央の前部に運転座席3が配置され、この運転座席3の後方位置となる作業ステップ17の左右方向に延びる領域において、作業者が搭乗した状態で作業を可能にしている。
【0029】
作業ステップ17は、苗植付装置Bの苗載台23に対するマット状苗の補給を容易にするものであり、この作業ステップ17に搭乗する作業者を支えるように左右の支持フレーム体18Aの後端位置に手摺状となる横フレーム体18Bを連結した補助フレーム18が作業ステップ17に沿って形成されている。この補助フレーム18は、作業者が握るだけではなく、作業者の体の一部を接触させることで作業者の姿勢を安定させることが可能に構成されている。
【0030】
走行車体Aの前部位置には、左右の乗降ステップ16の外側において縦向き姿勢となる縦フレーム31と、この縦フレーム31の上端に連結する連結フレーム32と、その上端が縦フレーム31の中間部に連結し、左右の縦フレーム31に平行する姿勢となる補助縦フレーム33により門型となる支持フレーム部が備えられている。
【0031】
縦フレーム31にはパイプ材が用いられ、この縦フレーム31を屈曲することにより縦フレーム31の上端から車体内方に向けて延出する形態で連結フレーム32が一体形成されている。そして、夫々の連結フレーム32の延出端同士をブラケット42で連結することにより、左右の連結フレーム32が一体化している。尚、長尺のパイプ材を屈曲することにより左右の縦フレーム31と、これらを結ぶ連結フレーム32とを単一の部材で構成しても良い。
【0032】
この支持フレーム部は、正面視において門型に形成されるものであり、左右の縦フレーム31の下端を支持する前部支持フレーム31Aと、補助縦フレーム33の下端を支持する後部フレーム33Aとによって車体フレームに支持されている。
【0033】
この田植機では、縦フレーム31と、これに連結する補助縦フレーム33とに対して複数の予備苗載台34が支持されている。
【0034】
この構成により、左右に配置される複数の予備苗載台34と、左右の縦フレーム31と、補助縦フレーム33とは、乗降ステップ16の外方に配置されることになり、乗降ステップ16での作業者の移動に支障がない。
【0035】
〔メータパネル類〕
図4に示すように、ボンネット5の後端位置で、ステアリングホイール11の前方にはメータパネル36が配置されている。このメータパネル36には、バックライトを有する液晶表示部と複数の表示ランプとを備えることにより作業情報を表示できるように構成されている。液晶表示部には、アワーメータ、自動植付クラッチの状態、燃料残量、冷却水の水温等が表示される。また、複数の表示ランプとして、オイル切れランプ、チャージランプ、苗切れランプ、植付表示ランプ、あぜぎわクラッチランプ、マーカランプ等が備えられている。
【0036】
このメータパネル36として、液晶表示装置のみを備え、この液晶表示装置に対して作業情報の全てを表示するように構成しても良い。また、ランプだけではなく指針が作動するインジケータを備えても良い。
【0037】
ボンネット5の後部の左右両側部に下端が貫通して走行車体Aに連結する逆U字状のコンソール支持フレーム37が備えられ、これにコンソールDが支持されている。コンソール支持フレーム37は左右の側部フレーム体37Aと、これらの上端に連結する状態で形成される上部フレーム体37Bとで構成され、上端側ほど前方に変位する傾斜姿勢で備えられている。
【0038】
このコンソール支持フレーム37の左右の側部フレーム体37Aに連結する連結プレート40が備えられ、この連結プレート40の上端部を運転座席3の方向に突出するように屈曲して庇部41が一体形成されている。コンソールDは箱状に形成されるものであり、連結プレート40に支持されている。このような支持形態からコンソールDの上方から運転座席3の方向に向けて庇部41が突出する。ちなみに、コンソールDの左右の両側部には日除けとして機能するものは備えられていないが、コンソールDの左右の両側部に庇部41を備えても良い。これにより、モニタ部38に側方から射し込む太陽光を遮ることも可能となる。
【0039】
コンソールDは、前後方向視においてボンネット5の幅内で、ステアリングホイール11の幅内に配置され、モニタ部38の下端が、ステアリングホイール11の上端より上方となるように配置される。また、コンソール支持フレーム37が前述した傾斜姿勢で形成されているため、作業時には視線を前方から少し下げることによりコンソールDのモニタ部38を容易に視認して情報の把握が確実となり、コンソールDがセンターマスコット14の視認を妨げることもない。
【0040】
図7に示すように、コンソールDにおいて運転座席3と対向する面には液晶型で表示面にタッチパネル38Aを形成したモニタ部38と、操作パネル部39とが形成されている。操作パネル部39には電源ボタンのON・OFFや各種の操作を可能にするため複数の操作スイッチ39Aが設けられている。尚、操作パネル部39には操作スイッチ39Aの他に報知ランプを備えても良く、音声により情報を出力するスピーカを備えても良い。
【0041】
コンソールDのモニタ部38は、同図に示す如く、測位衛星からの電波を受信し自動操舵走行であることを示すモード表示部102と、目標走行経路に対応する目標走行経路ライン103と、ステアリングホイール11の操作が反映されるアイコン104と、速度表示部108とが形成されている。操作パネル部39の複数の操作スイッチ39Aは自動操舵走行に必要な情報等の入力を可能に構成されている。尚、モニタ部38の表示形態は後述する。
【0042】
〔コンソールの配置の変形例〕
この実施形態では、コンソールDをコンソール支持フレーム37に対して固定する構成であったが、これに代えて、コンソールDを横向き姿勢の軸芯を中心に揺動自在に支持し、揺動姿勢を保持するクランプ機構等を備えることで、このコンソールDを角度調節自在に支持しても良い。このように角度調節自在に支持することにより、運転座席3に着座する作業者の体格等に対応してコンソールDの角度を設定し、コンソールDに形成されるモニタ部38の表示の視認性を向上させることが可能となる。
【0043】
また、変形例として、コンソールDの上端位置を、苗植付装置Bの苗載台23の上端より低い位置に配置する。このように配置することにより、予備苗載台34に載置されているマット状苗を苗載台23に補給する場合に、マット状苗がコンソールDに触れる不都合を低減して、苗補給を円滑に行わせる。
【0044】
〔測位・自動操舵走行システム〕
図3、
図4に示すように、支持フレーム部の連結フレーム32(受信ユニット支持部の一例)の左右方向での中央位置には、前述したブラケット42の上面に対して樹脂やアルミニウム等の非磁性材料で構成される支持プレート43が連結固定されている。この支持プレート43の上面に対して非磁性材料として可撓性を有する合成ゴム製の支持部材44を備え、これに乗せ付ける状態で受信ユニット45が支持されている。
【0045】
図6に示すように、受信ユニット45は、複数の測位衛星からの電波信号を受信するアンテナ45Aと、地磁気から方位を検知する磁気コンパス45B(方位センサの一例)と、走行車体Aの姿勢変化を慣性により捉えるジャイロセンサ45Cとが内蔵されている。
この構成では、受信ユニット45が走行車体Aの前部位置に配置されるため、走行車体Aが走行方向を変更した場合には、走行車体Aの後端側と比較して横方向への変位量が大きく、位置情報の変化を高感度で検知できる。
【0046】
田植機を構成する鋼材は、製造時や加工時に一部が磁化することもあり、例えば、連結フレーム32が磁化した場合には、連結フレーム32から磁気コンパス45Bに磁気が作用し、地磁気の検知精度を低下させることもあった。このような理由から支持部材44として所定の厚みを有する非磁性材料が用いることにより連結フレーム32等と磁気コンパス45Bとの距離を拡大して磁気の影響を抑制している。また、この支持部材としては、合成ゴムの他に発泡ウレタンのように防振性を有するものの使用も可能である。
【0047】
コンソールDには、測位衛星からの電波信号を受信することにより位置情報を取得する受信回路46と、制御ユニット47とを備えている。受信回路は、GNSS(Global Navigation Satellite Systems )により、3つ以上の測位衛星からの電波信号に基づき地球上における緯度、経度、高度とを取得する。この受信ユニット45とコンソールDとを備えて測位システムが構成されている。
【0048】
制御ユニット47は、ソフトウエアで構成されるティーチング処理部47Aと、走行経路判定部47Bと、走行制御部47Cとを備えている。この制御ユニット47はモニタ部38に情報を出力すると共に、タッチパネル38Aからの情報を取得する。また、この制御ユニット47はステアリング制御ユニット48に制御情報を出力する。
【0049】
この実施形態では、コンソールDの内部に受信回路46を備えているが、この受信回路46を受信ユニット45の内部に備えても良い。また、ティーチング処理部47Aと、走行経路判定部47Bと、走行制御部47Cとの少なくとも何れか1つをロジックICのハードウエアで構成することや、ハードウエアとソフトウエアとの組み合わせによって構成しても良い。
【0050】
図5に示すように、ステアリングホイール11に連結するステアリング軸51からの操作力を左右の前車輪に伝えるパワーステアリングユニット52がミッションケース7の上面に支持されている。ミッションケース7の下面には、パワーステアリングユニット52の駆動力により作動するピットマンアーム53が形成されている。
【0051】
ステアリング軸51の下端部近傍には、作動ギヤ54が固設され、これに咬合するピニオンギヤ55を駆動するステアリング制御モータ56を備えている。更に、ステアリング軸51の下端部には回転量を計測するロータリエンコーダ57が備えられている。
【0052】
尚、このステアリング操作系では、ステアリング軸51の前部や側部にステアリング制御モータ56を備えることにより、ボンネット5の内部を有効利用し、運転座席3の下方に張り出す空間を形成しないで済むように構成している。
【0053】
この田植機では、圃場の一方の畦から他方の畦との間において作業者の人為操舵で田植機を走行させ、この走行時の走行経路を制御ユニット47のティーチング処理部47Aが取得し、この走行経路から目標走行経路を生成して記憶できるように構成されている。
【0054】
走行経路は、制御ユニット47において直線として認識され、目標走行経路は、走行経路と平行する姿勢となるように8条の苗植付幅に対応した間隔で複数設定される。このように複数の目標走行経路が設定された後には、自動操舵走行を選択することにより、測位システムからの情報に基づき、走行経路判定部47Bが目標走行経路との誤差を判定し、走行制御部47Cがステアリング制御モータ56を制御する形態で目標走行経路に沿って走行車体Aを自動操舵走行させる制御を実現している。
【0055】
尚、目標走行経路に沿って走行車体Aを自動操舵走行させる場合において、作業者がステアリングホイール11を操作することにより走行経路の修正も可能に構成されている。
また、走行経路判定部47Bは、最初に、走行経路(人為操舵走行により最初に走行した経路)に隣接する目標走行経路に沿って走行車体Aを走行させ、次に、これに隣接する目標走行経路に沿って走行車体Aを走行させるように制御形態が設定されている。
【0056】
〔測位・自動操舵走行システム:コンソールの表示形態〕
自動操舵走行時には、
図7に示すように、コンソールDのモニタ部38に自動操舵走行画面が表示されると共に、この画面に対して複数の設定ボタン101と、モード表示部102とが表示される。設定ボタン101は、画面に指等を接触させることによりタッチパネルを介して操作が検知されるものであり、各種の設定を実現する。モード表示部102には、自動操舵状態にあることを示す文字情報が表示される。
【0057】
この自動操舵走行画面では、画面の左右方向での中央位置に目標走行経路ライン103が表示されると共に、画面の中央位置に走行車体Aを示すアイコン104が表示され、このアイコン104を基準にして走行車体の走行方向のズレ角(偏角)を示す偏角ライン105と、ズレ量を角度で示すインジケータ部106とが表示される。
【0058】
モニタ部38の上部には、目標走行経路に対する走行車体Aのズレ量(偏差)を表示する偏差表示部107と、速度表示部108とが形成されている。偏差表示部107にはズレ量を示す数値と、ズレ量を視覚的にバーグラフ部とが形成される。速度表示部108には走行車体Aの走行速度が数値で表示される。また、ステアリング操作を行った場合には目標走行経路ライン103とアイコン104との相対的な角度が変化するように表示形態が設定されている。
【0059】
これにより、自動操舵走行を行う場合には、コンソールDの操作スイッチ39Aの操作によりシステムを起動し、操作スイッチ39Aあるいは設定ボタン101の操作によりティーチング可能な状態に移行し、人為操舵走行を行うことによりティーチング処理部47Aで走行経路が取得され、目標走行経路が設定される。この後に、自動操舵走行のモードに移行することにより、モニタ部38に対して前述した
図7の画面が表示され、目標走行経路に沿って走行する自動操舵走行が可能となる。
【0060】
尚、コンソールDのモニタ部38に表示される設定ボタン101の操作、あるいは、操作パネル部39の操作スイッチ39Aの操作により、メンテナンスモードに移行することも可能である。このメンテナンスモードでは磁気コンパス45B、ジャイロセンサ45C等のチェックや校正が可能となる。
【0061】
〔実施形態の作用・効果〕
このように、田植機では、目標走行経路が設定された状態で自動操舵走行を選択することにより、測位衛星からの電波信号が受信され、目標走行経路と、現在の走行車体Aの位置との誤差を判定し、この誤差を小さくする方向に制御を行う自動操舵走行が行われる結果、作業者によるステアリングホイール11の操作が不要となる。これにより、運転者は、走行車体Aを停車させることなく苗の補給を行えることになり、走行車体Aを停車させて苗補給を行う作業形態と比較して作業能率が向上する。
【0062】
特に、苗植付作業時には作業者がステアリングホイール11を操作して走行車体Aを走行させ、予備苗載台34のマット状苗を、苗植付装置Bの苗載台23に補給する場合にのみ、自動操舵走行を選択することも可能である。このような場合にも、走行車体Aを停車させる必要がなく、作業能率が向上する。
【0063】
前後方向視においてコンソールDが、ボンネット5の幅内に収まり、ステアリングホイール11の幅にも収まっているため、作業者が乗降ステップ16を移動する場合にも、作業者の衣服等がコンソールDやステアリングホイール11に触れることがなく、乗降を容易に行える。
【0064】
また、運転座席3に着座した作業者の視線が向かう方向にコンソールDが配置されるため、コンソールDのモニタ部38の表示内容を視認する場合に視線を大きく移動させなくて済む。特に、太陽光が直接射し込む環境で作業を行う場合でも、庇部41が太陽光を遮るため、コンソールDのモニタ部38に表示される情報を正確に把握できる。
【0065】
このコンソールDでは、操作パネル部39に操作スイッチ39Aを形成しているため、タッチパネルと比較して確実な情報を入力することが可能となり、また、操作パネル部39には報知ランプを備えることも可能であり、例えば、報知ランプとして高輝度LEDを用いた場合には、モニタ部38より高輝度で点灯させることにより、警報のように注意を要する情報の取得が確実になる。
【0066】
また、予備苗載台34を支持する縦フレーム31の上端同士を連結する連結フレーム32を受信ユニット支持部として支持部材44を介して受信ユニット45を支持しているので専用のフレームを走行車体Aに備えなくとも、高い位置に受信ユニット45を配置して測位衛星からの電波信号を良好に受信できる。更に、支持部材44を用いることにより、磁気コンパス45Bと連結フレーム32との距離を拡大し、この連結フレーム32等から作用する磁気の影響を抑制して地磁気に基づいて走行車体の方向を方位センサとしての磁気コンパス45Bによって方位を高精度で検知できる。
【0067】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い。
【0068】
(a)
図8に示すように、コンソールDに対してモニタ部38と、操作パネル部39とを備えると共に、メータパネル36を備える。モニタ部38は液晶型で表示面にタッチパネル38Aが形成され、操作パネル部39は複数の操作スイッチ39Aが設けられている。
メータパネル36は、実施形態においてボンネット5の後端に形成されたものと同様のものであり、実施形態の説明と同様に、液晶表示部と表示ランプとが形成されている。そして、液晶表示部には、アワーメータ、自動植付クラッチの状態、燃料残量、冷却水の水温等が表示される。また、複数の表示ランプとして、オイル切れランプ、チャージランプ、苗切れランプ、植付表示ランプ、少数条クラッチランプ、マーカランプ等が備えられている。
【0069】
この別実施形態(a)のように構成することにより、自動操舵走行時における走行情報と、作業に必要な作業情報の全てをコンソールDに集約して表示できるため、視線を大きく移動させるだけで必要な情報の取得が可能になる。また、ボンネット5の後端にメータパネルを備えずに済む。
【0070】
また、この別実施形態(a)の変形例として、ボンネット5の後端と、コンソールDとに対して液晶表示部やランプ類を備えることにより、メータパネル36の機能を分散して配置するように構成する。この変形例では、作業情報のうち比較的重要な情報をコンソールDに出力するように構成することにより、作業者に対して情報を確実に伝えることも可能となる。
【0071】
(b)コンソールDを、支持フレーム部の連結フレーム32から下方に延出したフレームの下端に支持する。このように支持することにより、ボンネット5の幅内にコンソールDを配置し、ボンネット5より高い位置にコンソールDを配置することが可能となる。また、コンソールDと予備苗載台34との間に作業者が通過可能な空間を確保することも可能となる。
【0072】
(c)水田作業機として、実施形態の苗植付装置Bに代えて走行車体Aの後端に播種装置を備えた播種機に本発明の構成を適用しても良い。また、水田作業機として田植機と播種機との何れを構成した場合でも施肥装置を備えても良い。
【0073】
(d)実施形態ではエンジン6をボンネット5に内蔵していたが、これに代えて、エンジン6が運転座席3の下側に配置されるように構成した水田作業機に適用しても良い。
【0074】
(e)前述した実施形態では、ティーチングに基づいて目標走行経路を生成していたが、ティーチングに代えて、例えば、圃場面の俯瞰画像をモニタ部38等に表示し、このように表示された圃場面において、作業者が人為的な操作で目標走行経路を設定するように制御形態を設定しても良い。
また、ティーチングに代えて、例えば、トラクタで圃場の代掻き作業を行う際に測位衛星からの電波を受信することで、車体が走行した経路データを半導体記憶媒体等に記憶しておき、この半導体記憶媒体等に記憶された経路データを田植機の自動操舵走行システムにロードすることにより、この自動操舵走行システムにおいて目標走行経路を生成するように制御形態を設定しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、走行車体の前部のボンネットの両側方に乗降通路が形成され、ボンネットの後部にステアリングホイールを備え、この後方に運転座席を配置し、測位衛星からの電波信号を受信して位置情報の出力が可能に構成されている水田作業機に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
5 ボンネット
11 ステアリングホイール
16 乗降ステップ
38 モニタ部
39 操作パネル部
39A 操作スイッチ
41 庇部
A 走行車体
D コンソール