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特開2024-159866粘着フィルム、フォルダブルデバイス、および、ローラブルデバイス
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  • 特開-粘着フィルム、フォルダブルデバイス、および、ローラブルデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159866
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】粘着フィルム、フォルダブルデバイス、および、ローラブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241031BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241031BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241031BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20241031BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241031BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20241031BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20241031BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20241031BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20241031BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J7/29
C09D175/04
C09D201/00
C09D167/00
H10K59/10
H10K77/10
H10K50/844
H10K85/10
B32B7/022
B32B27/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139398
(22)【出願日】2024-08-21
(62)【分割の表示】P 2019206027の分割
【原出願日】2019-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2018221906
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019110014
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】設樂 浩司
(72)【発明者】
【氏名】仲野 武史
(57)【要約】
【課題】屈曲性および透明性に優れた粘着フィルムを提供する。また、屈曲性に優れたフォルダブルデバイスおよびローラブルデバイスを提供する。
【解決手段】本発明の粘着フィルムは、基材層と粘着剤層を有する粘着フィルムであって、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が0.1以下である。本発明の粘着フィルムは、基材層と粘着剤層を有する粘着フィルムであって、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が0.05以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と粘着剤層を有する粘着フィルムであって、
粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が0.1以下である、
粘着フィルム。
【請求項2】
基材層と粘着剤層を有する粘着フィルムであって、
粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が0.05以下である、
粘着フィルム。
【請求項3】
6Φで屈曲させて90℃にて48時間保持させた後に、該屈曲を解放し、23℃、50%RHにて24時間放置させた後の屈曲角度が60度~180度である、請求項1または2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記基材層の前記粘着剤層を有する面と反対側の面にトップコート層を有する、請求項1から3までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記トップコート層が、ポリエステル樹脂およびウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むバインダを含有する、請求項4に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記バインダがウレタン系樹脂を含む、請求項5に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記トップコート層が帯電防止成分を含有する、請求項4から6までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記基材層の23℃におけるヤング率が6.0×107Pa以上である、請求項1から7までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記基材層の材料がポリイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の粘着フィルム。
【請求項10】
前記基材層の前記粘着剤層を有する面と反対側の面にトップコート層を有し、該トップコート層がウレタン系樹脂を含むバインダおよび帯電防止成分を含有し、前記基材層の材料がポリイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から3までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項11】
全光線透過率が20%以上である、請求項1から10までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項12】
ヘイズが15%以下である、請求項1から11までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項13】
前記粘着剤層の、23℃における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、SUS板に対する粘着力が1N/25mm以上である、請求項1から12までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項14】
前記粘着剤層がアクリル系粘着剤を含む、請求項1から13までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項15】
フォルダブル部材に貼り付けられる、請求項1から14までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項16】
前記フォルダブル部材がOLEDである、請求項15に記載の粘着フィルム。
【請求項17】
ローラブル部材に貼り付けられる、請求項1から16までのいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項18】
前記ローラブル部材がOLEDである、請求項17に記載の粘着フィルム。
【請求項19】
請求項1から14までのいずれかに記載の粘着フィルムを備えるフォルダブルデバイス。
【請求項20】
請求項1から14までのいずれかに記載の粘着フィルムを備えるローラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関する。本発明は、また、そのような粘着フィルムを備えたフォルダブルデバイス、および、そのような粘着フィルムを備えたローラブルデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着フィルムは、様々な形状の部材の補強や表面保護等に用いられている。
【0003】
例えば、半導体素子の基板(例えば、TFT基板など)に集積回路(IC)やフレキシブルプリント回路基板(FPC)を接合する場合、通常、異方性導電フィルム(ACF)によって熱圧着を行う。このような熱圧着を行う際に、予め、半導体素子の基板の裏側に粘着フィルムを貼り合せて補強しておく場合がある(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、近年開発が進みつつあるフレキシブルデバイスやローラブルデバイスの製造方法としては、一般的には、ガラス等の支持基板上に、剥離層とフレキシブルあるいはローラブルなフィルム基板を形成し、そのフィルム基板上にTFT基板、さらにその上に、有機EL層を形成する。そして、支持基板を剥離し、フレキシブルデバイスやローラブルデバイスを製造するのであるが、フレキシブル表示層やローラブル表示層が非常に薄いため、取扱い等によってデバイスに不具合が生じる。このため、裏側に粘着フィルムを貼り合せて補強しておく場合がある(例えば、特許文献2)。
【0005】
半導体素子の基板やフレキシブルデバイスやローラブルデバイスは、繰り返し屈曲される場合があり、基板の裏側に貼り合せた粘着フィルムの屈曲特性が悪いと、屈曲後の回復性が悪化したり、最悪は繰り返し屈曲により破断してしまったりする場合がある。具体的には、屈曲部(例えば、折り畳み部材の可動屈曲部など)に粘着フィルムを貼り合わせようとすると、例えば、下記のような問題が生じる。
【0006】
粘着フィルムが角度を持って曲げられた場合、曲げられた内径側には圧縮させる力が働くために、その力を緩和させようとして粘着フィルム自体の変形が起こる。具体的には、例えば、しわが入りやすくなる。
【0007】
粘着フィルムが角度を持って曲げられた場合、曲げられた外径側には引っ張られる応力が働く。このため、その応力が緩和される際に、被着体からの浮きが発生する。
【0008】
粘着フィルムが角度を持って曲げられた場合、粘着フィルムの曲げられる箇所や引っ張られる箇所の厚みが大きく変化してしまい、このような状態においても、しわが入りやすくなったり、浮きが発生したりする。例えば、粘着フィルムが引っ張られた場合に、粘着フィルムの厚みが大幅に薄くなってしまい、被着体からの浮きが発生しやすくなる。
【0009】
このように、従来の粘着フィルムにおいては、角部や屈曲部への凹凸追従が十分に達成できていない。
【0010】
特に、可動屈曲部に粘着フィルムを貼り合わせた場合、屈曲が繰り返されるため、可動屈曲部上において、粘着フィルムに折れ跡(いわゆる「クセ」)が付いた状態になってしまう。
【0011】
また、集積回路(IC)やフレキシブルプリント回路基板(FPC)を半導体素子の基板(例えば、TFT基板など)に熱圧着を行って接合する際に、基板の裏側から接合する位置を確認して圧着を行う。このため、基板の裏側に貼り合わせる粘着フィルムには、透明性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5600039号公報
【特許文献2】特許第6376271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、屈曲性および透明性に優れた粘着フィルムを提供することにある。本発明の課題は、また、屈曲性に優れたフォルダブルデバイスおよびローラブルデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の粘着フィルムは、
基材層と粘着剤層を有する粘着フィルムであって、
粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が0.1以下である。
【0015】
本発明の粘着フィルムは、
基材層と粘着剤層を有する粘着フィルムであって、
粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が0.05以下である。
【0016】
一つの実施形態においては、本発明の粘着フィルムは、6Φで屈曲させて90℃にて48時間保持させた後に、該屈曲を解放し、23℃、50%RHにて24時間放置させた後の屈曲角度が60度~180度である。
【0017】
一つの実施形態においては、本発明の粘着フィルムは、上記基材層の上記粘着剤層を有する面と反対側の面にトップコート層を有する。
【0018】
一つの実施形態においては、上記トップコート層が、ポリエステル樹脂およびウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むバインダを含有する。
【0019】
一つの実施形態においては、上記バインダがウレタン系樹脂を含む。
【0020】
一つの実施形態においては、上記トップコート層が帯電防止成分を含有する。
【0021】
一つの実施形態においては、上記基材層の23℃におけるヤング率が6.0×107Pa以上である。
【0022】
一つの実施形態においては、上記基材層の材料がポリイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種である。
【0023】
一つの実施形態においては、本発明の粘着フィルムは、上記基材層の上記粘着剤層を有する面と反対側の面にトップコート層を有し、該トップコート層がウレタン系樹脂を含むバインダおよび帯電防止成分を含有し、上記基材層の材料がポリイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種である。
【0024】
一つの実施形態においては、本発明の粘着フィルムは、全光線透過率が20%以上である。
【0025】
一つの実施形態においては、本発明の粘着フィルムは、ヘイズが15%以下である。
【0026】
一つの実施形態においては、上記粘着剤層の、23℃における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、SUS板に対する粘着力が1N/25mm以上である。
【0027】
一つの実施形態においては、上記粘着剤層がアクリル系粘着剤を含む。
【0028】
一つの実施形態においては、本発明の粘着フィルムは、フォルダブル部材に貼り付けられる。
【0029】
一つの実施形態においては、上記フォルダブル部材がOLEDである。
【0030】
一つの実施形態においては、本発明の粘着フィルムは、ローラブル部材に貼り付けられる。
【0031】
一つの実施形態においては、上記ローラブル部材がOLEDである。
【0032】
本発明のフォルダブルデバイスは、上記粘着フィルムを備える。
【0033】
本発明のローラブルデバイスは、上記粘着フィルムを備える。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、屈曲性および透明性に優れた粘着フィルムを提供することができる。本発明によれば、また、屈曲性に優れたフォルダブルデバイスおよびローラブルデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明のフォルダブルデバイスの一つの実施形態を示す概略断面図であり、本発明の粘着フィルムの一つの使用形態を示す。
図2図2は、屈曲回復性の評価方法を説明する概略断面図である。
図3図3は、剥がれ評価の評価方法を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
≪≪粘着フィルム≫≫
本発明の粘着フィルムは、基材層と粘着剤層を有する。すなわち、本発明の粘着フィルムは、基材層と粘着剤層を有すれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の層を有していてもよい。
【0037】
基材層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。基材層は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは1層である。
【0038】
粘着剤層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。粘着剤層は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは1層である。
【0039】
本発明の粘着フィルムは、粘着剤層の基材層の反対側の表面に、使用するまでの保護等のために、任意の適切な剥離ライナーが備えられていてもよい。
【0040】
剥離ライナーとしては、例えば、紙やプラスチックフィルム等の基材(ライナー基材)の表面がシリコーン処理された剥離ライナー、紙やプラスチックフィルム等の基材(ライナー基材)の表面がポリオレフィン系樹脂によりラミネートされた剥離ライナーなどが挙げられる。ライナー基材としてのプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0041】
剥離ライナーの厚みは、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは3μm~450μmであり、さらに好ましくは5μm~400μmであり、特に好ましくは10μm~300μmである。
【0042】
本発明の粘着フィルムは、総厚みdが、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは5μm~200μmであり、さらに好ましくは10μm~150μmであり、特に好ましくは20μm~100μmであり、最も好ましくは30μm~80μmである。本発明の粘着フィルムの総厚みdが上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0043】
本発明の粘着フィルムは、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が、0.1以下であり、好ましくは0.09以下であり、より好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.07以下であり、特に好ましくは0.06以下である。本発明の粘着フィルムの、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)が、上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0044】
粘着フィルムの、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)は、粘着フィルムを大きく屈曲させた際の損失正接を示す指標である。本発明を完成させるに至っては、この値が上記範囲内にあれば本発明の効果がより発現し得ることを、種々の実験データに基づいて見出した。粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)の測定方法については、後に詳述する。
【0045】
本発明の粘着フィルムは、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.08以下であり、さらに好ましくは0.06以下であり、特に好ましくは0.05以下である。本発明の粘着フィルムの、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)が、上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0046】
粘着フィルムの、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)は、粘着フィルムを小さく屈曲させた際の損失正接を示す指標である。本発明を完成させるに至っては、この値が上記範囲内にあれば本発明の効果がより発現し得ることを、種々の実験データに基づいて見出した。粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)の測定方法については、後に詳述する。
【0047】
本発明の粘着フィルムは、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.04以下であり、さらに好ましくは0.03以下である。本発明の粘着フィルムの、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))が、上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0048】
粘着フィルムの、粘弾性測定装置の引張モードにおいて測定した歪み0.7%におけるtanδ(0.7%)と歪み0.1%におけるtanδ(0.1%)との差(tanδ(0.7%)-tanδ(0.1%))は、粘着フィルムを大きく屈曲させた際の損失正接と粘着フィルムを小さく屈曲させた際の損失正接の差を示す指標である。本発明を完成させるに至っては、この値が上記範囲内にあれば本発明の効果がより発現し得ることを、種々の実験データに基づいて見出した。
【0049】
本発明の粘着フィルムは、6Φで屈曲させて90℃にて48時間保持させた後に、該屈曲を解放し、23℃、50%RHにて24時間放置させた後の屈曲角度が、好ましくは60度~180度であり、より好ましくは80度~180度であり、さらに好ましくは100度~180度であり、特に好ましくは120度~180度であり、最も好ましくは150度~180度である。本発明の粘着フィルムの、6Φで屈曲させて90℃にて48時間保持させた後に、該屈曲を解放し、23℃、50%RHにて24時間放置させた後の屈曲角度が、上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0050】
粘着フィルムの、6Φで屈曲させて90℃にて48時間保持させた後に、該屈曲を解放し、23℃、50%RHにて24時間放置させた後の屈曲角度は、屈曲後の回復性を示す指標である。6Φで屈曲させて90℃にて48時間保持させた後に、該屈曲を解放し、23℃、50%RHにて24時間放置させた後の屈曲角度の測定方法については、後に詳述する。
【0051】
本発明の粘着フィルムは、全光線透過率が、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上であり、特に好ましくは50%以上であり、最も好ましくは60%以上である。本発明の粘着フィルムの全光線透過率が上記範囲内にあれば、優れた透明性がより発現し得る。
【0052】
本発明の粘着フィルムは、ヘイズが、好ましくは15%以下であり、より好ましくは13%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは8%以下であり、最も好ましくは6%以下である。本発明の粘着フィルムのヘイズが上記範囲内にあれば、優れた透明性がより発現し得る。
【0053】
本発明の粘着フィルムは、屈曲性および透明性に優れるので、好ましくは、フォルダブル部材に貼り付けられる。フォルダブル部材としては、繰り返しの屈曲が可能な部材であれば、任意の適切な部材を採用し得る。このようなフォルダブル部材としては、例えば、フォルダブルな光学部材、フォルダブルな電子部材などが挙げられ、代表的には、フォルダブルなOLEDが挙げられる。
【0054】
本発明の粘着フィルムは、屈曲性および透明性に優れるので、好ましくは、ローラブル部材に貼り付けられる。ローラブル部材としては、繰り返しの巻き取りと巻き戻しが可能な部材であれば、任意の適切な部材を採用し得る。このようなローラブル部材としては、例えば、ローラブルな光学部材、ローラブルな電子部材などが挙げられ、代表的には、ローラブルなOLEDが挙げられる。
【0055】
≪基材層≫
基材層の厚みは、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは5μm~300μmであり、さらに好ましくは10μm~100μmであり、特に好ましくは15μm~80μmであり、最も好ましくは20μm~60μmである。基材層の厚みが上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0056】
基材層は、23℃におけるヤング率が、好ましくは6.0×107Pa以上であり、より好ましくは1.0×108Pa以上であり、さらに好ましくは5.0×108Pa以上であり、特に好ましくは8.0×108Pa以上であり、最も好ましくは1.0×109Pa以上である。基材層の23℃におけるヤング率の上限は、代表的には、好ましくは1.0×1011Pa以下である。基材層の23℃におけるヤング率が上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。基材層の23℃におけるヤング率が低すぎると、粘着フィルムが角度を持って曲げられると、内径側の圧縮に対して外径側の引張が十分に保持できないおそれがあり、厚みが変化しやすくなり、被着体からの浮きが発生しやすくなるおそれがある。基材層の23℃におけるヤング率が高すぎると、粘着フィルムを容易に変形することができないおそれがある。ヤング率の測定方法については、後に詳述する。
【0057】
基材層の材料としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な材料を採用し得る。このような基材層の材料としては、代表的には樹脂材料が挙げられる。
【0058】
基材層の材料としての樹脂材料としては、例えば、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素系樹脂、環状オレフィン系ポリマーなどが挙げられる。
【0059】
基材層の材料としての樹脂材料としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、環状オレフィン系ポリマーから選ばれる少なくとも1種が挙げられ、より好ましくは、ポリイミド(PI)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0060】
≪粘着剤層≫
粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは5μm~300μmであり、さらに好ましくは10μm~100μmであり、特に好ましくは15μm~80μmであり、最も好ましくは20μm~60μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲内にあれば、本発明の効果がより発現し得る。
【0061】
粘着剤層の、23℃における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラス板に対する粘着力は、好ましくは1N/25mm以上であり、より好ましくは5N/25mm以上であり、さらに好ましくは10N/25mm以上であり、特に好ましくは12N/25mm以上であり、最も好ましくは15N/25mm以上である。粘着剤層の、23℃における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラス板に対する粘着力の上限は、代表的には、好ましくは1000N/25mm以下であり、より好ましくは5000N/25mm以下であり、さらに好ましくは300N/25mm以下であり、特に好ましくは200N/25mm以下であり、最も好ましくは100N/25mm以下である。粘着剤層の、23℃における、引張速度300mm/分、180度ピールでの、ガラス板に対する粘着力が上記範囲内にあれば、本発明の効果をより発現させ得る。
【0062】
粘着剤層は、ベースポリマーを含む。ベースポリマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。粘着剤層中のベースポリマーの含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは20重量%~100重量%であり、より好ましくは30重量%~95重量%であり、さらに好ましくは40重量%~90重量%であり、特に好ましくは45重量%~85重量%であり、最も好ましくは50重量%~80重量%である。
【0063】
ベースポリマーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なポリマーを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、ベースポリマーとしては、好ましくは、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ウレタン系ポリマーから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。すなわち、粘着剤層は、好ましくは、アクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤、ゴム系ポリマーを含むゴム系粘着剤、シリコーン系ポリマーを含むシリコーン系粘着剤、ウレタン系ポリマーを含むウレタン系粘着剤から選ばれる少なくとも1種を含む。本発明の効果をより一層発現させ得る点で、粘着剤層は、好ましくは、アクリル系粘着剤を含む。以下、粘着剤層に含まれ得る粘着剤の代表例として、アクリル系粘着剤について詳述する。
【0064】
<アクリル系粘着剤>
アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含む。アクリル系粘着剤は、粘着付与樹脂を含んでいてもよい。アクリル系粘着剤は、架橋剤を含んでいてもよい。
【0065】
アクリル系粘着剤が、アクリル系ポリマーと粘着付与樹脂と架橋剤とを含む場合、アクリル系粘着剤の全量に対する、アクリル系ポリマーと粘着付与樹脂と架橋剤の合計量の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは95重量%以上であり、より好ましくは97重量%以上であり、さらに好ましくは99重量%以上である。
【0066】
(アクリル系ポリマー)
アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー成分の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、モノマー成分全体の50重量%超を占める成分をいう。
【0067】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
【0068】
ここで、上記式(1)中のR1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある)である。粘着剤層の貯蔵弾性率等の観点から、R2は、好ましくはC1-14の鎖状アルキル基であり、より好ましくはC2-10の鎖状アルキル基であり、さらに好ましくはC4-8の鎖状アルキル基である。ここで鎖状とは、直鎖状および分岐状を包含する意味である。
【0069】
2がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0070】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、n-ブチルアクリレート(BA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
【0071】
アクリル系ポリマーの合成に用いられる全モノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。アルキル(メタ)アクリレートの含有割合の上限は、好ましくは99.5重量%以下であり、より好ましくは99重量%以下である。しかしながら、アクリル系ポリマーは、実質的にアルキル(メタ)アクリレートのみを重合して得られたものであってもよい。
【0072】
2がC4-8の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを使用する場合、モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちR2がC4-8の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上であり、最も好ましくは99重量%~100重量%である。
【0073】
アクリル系ポリマーの一つの実施形態として、全モノマー成分の50重量%以上がn-ブチルアクリレート(BA)であるアクリル系ポリマーが挙げられる。この場合、全モノマー成分中のn-ブチルアクリレート(BA)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50重量%を超え100重量%以下であり、より好ましくは55重量%~95重量%であり、さらに好ましくは60重量%~90重量%であり、特に好ましくは63重量%~85重量%であり、最も好ましくは65重量%~80重量%である。全モノマー成分は、n-ブチルアクリレート(BA)より少ない割合で2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)をさらに含んでいてもよい。
【0074】
アクリル系ポリマーの一つの実施形態として、全モノマー成分の50重量%未満が2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)であるアクリル系ポリマーが挙げられる。この場合、全モノマー成分中の2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0重量%を超え48重量%以下であり、より好ましくは5重量%~45重量%であり、さらに好ましくは10重量%~43重量%であり、特に好ましくは15重量%~40重量%であり、最も好ましくは20重量%~35重量%である。全モノマー成分は、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)より多い割合でさらにn-ブチルアクリレート(BA)を含んでいてもよい。
【0075】
アクリル系ポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲で、その他モノマーが共重合されていてもよい。その他モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整、粘着性能の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物などが挙げられ、ビニルエステル類が好ましい。ビニルエステル類の具体例としては、例えば、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられ、酢酸ビニル(VAc)が好ましい。
【0076】
「その他モノマー」は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。全モノマー成分中のその他モノマーの含有割合は、好ましくは0.001重量%~40重量%であり、より好ましくは0.01重量%~40重量%であり、さらに好ましくは0.1重量%~10重量%であり、特に好ましくは0.5重量%~5重量%であり、最も好ましくは1重量%~3重量%である。
【0077】
アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは接着力の向上に寄与し得るその他モノマーとして、例えば、水酸基(OH基)含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類などが挙げられる。
【0078】
アクリル系ポリマーの一つの実施形態として、その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより発現させ得る点で、カルボキシ基含有モノマーとして、好ましくは、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)が挙げられ、より好ましくは、アクリル酸(AA)である。
【0079】
その他モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを採用する場合、全モノマー成分中のその他モノマーの含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.1重量%~10重量%であり、より好ましくは0.2重量%~8重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%~5重量%であり、特に好ましくは0.7重量%~4重量%であり、最も好ましくは1重量%~3重量%である。
【0080】
アクリル系ポリマーの一つの実施形態として、その他モノマーとして水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド;などが挙げられる。これらの中でも、水酸基含有モノマーとして、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、アルキル基が炭素原子数2~4の直鎖状であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)が挙げられ、より好ましくは、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)である。
【0081】
その他モノマーとして水酸基含有モノマーを採用する場合、全モノマー成分中のその他モノマーの含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは0.001重量%~10重量%であり、より好ましくは0.01重量%~5重量%であり、さらに好ましくは0.02重量%~2重量%であり、特に好ましくは0.03重量%~1重量%であり、最も好ましくは0.05重量%~0.5重量%である。
【0082】
ベースポリマーのTgは、本発明の効果をより発現させ得る点で、例えば、-80℃以上であり得る。ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)は、せん断方向に対する粘着剤層の変形性を高める観点から、Tgが、好ましくは-15℃以下となるように設計されている。いくつかの実施形態においては、ベースポリマーのTgは、例えば、好ましくは-25℃以下であり、より好ましくは-40℃以下であり、さらに好ましくは-50℃以下である。ベースポリマーのTgは、凝集性や形状復元性を高める観点から、例えば、Tgが、好ましくは-70℃以上(より好ましくは-65℃以上、さらに好ましくは-60℃以上)となるように設計されている。
【0083】
ベースポリマーのTgとは、ベースポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいて、フォックス(Fox)の式から求められる値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
【0084】
上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
【0085】
ホモポリマーのTgとして、例えば、具体的には以下の値を用い得る。
2-エチルヘキシルアクリレート -70℃
n-ブチルアクリレート -55℃
アクリル酸 106℃
2-ヒドロキシエチルアクリレート -15℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート -40℃
【0086】
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いることができる。上記「Polymer Handbook」に複数の数値が記載されている場合は、conventionalの値を採用する。上記「Polymer Handbook」に記載のないモノマーについては、モノマー製造企業のカタログ値を採用する。上記「Polymer Handbook」に記載がなく、モノマー製造企業のカタログ値も提供されていないモノマーのホモポリマーのTgとしては、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
【0087】
アクリル系ポリマーを得る方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。これらの重合方法の中でも、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、モノマー成分の全量を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、好ましくは20℃以上であり、より好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上であり、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは160℃以下であり、さらに好ましくは140℃以下である。アクリル系ポリマーを得る方法としては、UV等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる)や、β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合等の活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。
【0088】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)としては、任意の適切な有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には、芳香族炭化水素類)、酢酸エチル等の酢酸エステル類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類などが挙げられる。
【0089】
重合に用いる開始剤(重合開始剤)は、重合方法の種類に応じて、任意の適切な重合開始剤から適宜選択することができる。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;などが挙げられる。重合開始剤の他の例としては、過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系開始剤が挙げられる。
【0090】
重合開始剤の使用量は、全モノマー成分100重量部に対して、好ましくは0.005重量部~1重量部であり、より好ましくは0.01重量部~1重量部である。
【0091】
アクリル系ポリマーのMwは、好ましくは10×104~500×104であり、より好ましくは10×104~150×104であり、さらに好ましくは20×104~75×104であり、特に好ましくは35×104~65×104である。ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC-8320GPC」(カラム:TSKgel GMH-H(S)、東ソー社製)を用いることができる。
【0092】
(粘着付与樹脂)
アクリル系粘着剤は、本発明の効果をより発現させ得る点で、粘着付与樹脂を含み得る。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂などが挙げられる。粘着付与樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0093】
粘着付与樹脂の使用量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部~70重量部であり、より好ましくは10重量部~60重量部であり、さらに好ましくは15重量部~50重量部であり、さらに好ましくは20重量部~45重量部であり、特に好ましくは25重量部~40重量部であり、最も好ましくは25重量部~35重量部である。
【0094】
粘着付与樹脂は、本発明の効果をより発現させ得る点で、軟化点が105℃未満の粘着付与樹脂TLを含むことが好ましい。粘着付与樹脂TLは、粘着剤層の面方向(せん断方向)への変形性の向上に効果的に寄与し得る。より高い変形性向上効果を得る観点から、粘着付与樹脂TLとして用いられる粘着付与樹脂の軟化点は、好ましくは50℃~103℃であり、より好ましくは60℃~100℃であり、さらに好ましくは65℃~95℃であり、特に好ましくは70℃~90℃であり、最も好ましくは75℃~85℃である。
【0095】
粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902およびJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
【0096】
粘着付与樹脂TLの使用量としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部~50重量部であり、より好ましくは10重量部~45重量部であり、さらに好ましくは15重量部~40重量部であり、特に好ましくは20重量部~35重量部であり、最も好ましくは25重量部~32重量部である。
【0097】
粘着付与樹脂TLとしては、上記で例示した粘着付与樹脂のうち、軟化点が105℃未満のものから適宜選択される1種または2種以上を採用し得る。粘着付与樹脂TLは、好ましくはロジン系樹脂を含む。
【0098】
粘着付与樹脂TLとして好ましく採用し得るロジン系樹脂としては、例えば、未変性ロジンエステルや変性ロジンエステル等のロジンエステル類などが挙げられる。変性ロジンエステルとしては、例えば、水素添加ロジンエステルが挙げられる。
【0099】
粘着付与樹脂TLは、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、水素添加ロジンエステルを含む。水素添加ロジンエステルとしては、軟化点が、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは105℃未満であり、より好ましくは50℃~100℃であり、さらに好ましくは60℃~90℃であり、特に好ましくは70℃~85℃であり、最も好ましくは75℃~85℃である。
【0100】
粘着付与樹脂TLは、非水素添加ロジンエステルを含んでいてもよい。ここで非水素添加ロジンエステルとは、上述したロジンエステル類のうち水素添加ロジンエステル以外のものを包括的に指す概念である。非水素添加ロジンエステルとしては、未変性ロジンエステル、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステルなどが挙げられる。
【0101】
非水素添加ロジンエステルとしては、軟化点が、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは105℃未満であり、より好ましくは50℃~100℃であり、さらに好ましくは60℃~90℃であり、特に好ましくは70℃~85℃であり、最も好ましくは75℃~85℃である。
【0102】
粘着付与樹脂TLは、ロジン系樹脂に加えて他の粘着付与樹脂を含んでいてもよい。他の粘着付与樹脂としては、上記で例示した粘着付与樹脂のうち、軟化点が105℃未満のものから適宜選択される1種または2種以上を採用し得る。粘着付与樹脂TLは、例えば、ロジン系樹脂とテルペン樹脂を含んでいてもよい。
【0103】
粘着付与樹脂TL全体に占めるロジン系樹脂の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは50重量%を超え、より好ましくは55重量%~100重量%であり、さらに好ましくは60重量%~99重量%であり、特に好ましくは65重量%~97重量%であり、最も好ましくは75重量%~97重量%である。
【0104】
粘着付与樹脂は、本発明の効果をより発現させ得る点で、粘着付与樹脂TLと、軟化点が105℃以上(好ましくは105℃~170℃)の粘着付与樹脂THを組み合わせて含んでいてもよい。
【0105】
粘着付与樹脂THとしては、上記で例示した粘着付与樹脂のうち軟化点が105℃以上のものから適宜選択される1種または2種以上を採用し得る。粘着付与樹脂THは、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、ロジンエステル類)およびテルペン系粘着付与樹脂(例えば、テルペンフェノール樹脂)から選ばれる少なくとも1種を含み得る。
【0106】
(架橋剤)
アクリル系粘着剤には架橋剤を含有させることができる。架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であてもよい。架橋剤の使用により、アクリル系粘着剤に適度な凝集力を付与することができる。架橋剤は、保持力試験におけるズレ距離および戻り距離の調節にも役立ち得る。架橋剤を含有するアクリル系粘着剤は、例えば、該架橋剤を含む粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成することにより得ることができる。架橋剤は、架橋反応後の形態、架橋反応前の形態、部分的に架橋反応した形態、これらの中間的または複合的な形態等でアクリル系粘着剤に含まれ得る。架橋剤は、典型的には、もっぱら架橋反応後の形態でアクリル系粘着剤に含まれている。
【0107】
架橋剤の使用量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.005重量部~10重量部であり、より好ましくは0.01重量部~7重量部であり、さらに好ましくは0.05重量部~5重量部であり、特に好ましくは0.1重量部~4重量部であり、最も好ましくは1重量部~3重量部である。
【0108】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、過酸化物等の架橋剤などが挙げられ、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤であり、より好ましくは、イソシアネート系架橋剤である。
【0109】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化等により一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物を用いることができる。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;などが挙げられる。
【0110】
イソシアネート系架橋剤としては、より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー社製、商品名:コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、東ソー社製、商品名:コロネートHX)等のイソシアネート付加物;キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学社製、商品名:タケネートD110N)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学社製、商品名:タケネートD120N)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学社製、商品名:タケネートD140N)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学社製、商品名:タケネートD160N);ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物;イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合等で多官能化したポリイソシアネート;などが挙げられる。これらの中でも、変形性と凝集力とをバランスよく両立し得る点で、芳香族イソシアネート、脂環式イソシアネートが好ましい。
【0111】
イソシアネート系架橋剤の使用量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.005重量部~10重量部であり、より好ましくは0.01重量部~7重量部であり、さらに好ましくは0.05重量部~5重量部であり、特に好ましくは0.1重量部~4重量部であり、最も好ましくは1重量部~3重量部である。
【0112】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分が水酸基含有モノマーを含む場合、本発明の効果をより発現させ得る点で、イソシアネート系架橋剤/水酸基含有モノマーの重量比が、好ましくは20を超えて50未満であり、より好ましくは22~45であり、さらに好ましくは25~40であり、特に好ましくは27~40であり、最も好ましくは30~35である。
【0113】
アクリル系粘着剤が軟化点105℃以下の粘着付与樹脂TLを含む場合、本発明の効果をより発現させ得る点で、粘着付与樹脂TL/イソシアネート系架橋剤の重量比は、好ましくは2を超えて15未満であり、より好ましくは5~13であり、さらに好ましくは7~12であり、特に好ましくは7~11である。
【0114】
エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物を用いることができる。エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製の商品名「テトラッドC」、「テトラッドX」などが挙げられる。
【0115】
エポキシ系架橋剤の使用量は、本発明の効果をより発現させ得る点で、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.005重量部~10重量部であり、より好ましくは0.01重量部~5重量部であり、さらに好ましくは0.015重量部~1重量部であり、特に好ましくは0.15重量部~0.5重量部であり、最も好ましくは0.015重量部~0.3重量部である。
【0116】
(その他成分)
アクリル系粘着剤は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を含有してもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができる。
【0117】
≪帯電防止層≫
本発明の粘着フィルムは、基材層の粘着剤層を有する面と反対側の面に帯電防止層を有していてもよい。本発明の粘着フィルムが、基材層の粘着剤層を有する面と反対側の面に帯電防止層を有することにより、粘着フィルム自体の帯電を抑えることができ、塵埃が吸着しにくくなり、好ましい態様となる。
【0118】
帯電防止層としては、例えば、帯電防止剤と樹脂成分からなる帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や、導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法が挙げられる。
【0119】
帯電防止性樹脂に含有される帯電防止剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基などのカチオン性官能基を有すカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩、硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤;上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;などがあげられる。これらの帯電防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0120】
カチオン型の帯電防止剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートなどの4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート共重合体;ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するスチレン共重合体;ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するジアリルアミン共重合体;などが挙げられる。これらの帯電防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0121】
アニオン型の帯電防止剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホン酸基含有スチレン共重合体などが挙げられる。これらの帯電防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0122】
両性イオン型の帯電防止剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン、カルボベタイングラフト共重合などが挙げられる。これらの帯電防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0123】
ノニオン型の帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸アルキロールアミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテルとポリエステルとポリアミドからなる共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの帯電防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0124】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどが挙げられる。これらの導電性ポリマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0125】
導電性物質としては、例えば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、およびそれらの合金または混合物などが挙げられる。これらの導電性物質は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0126】
帯電防止性樹脂および導電性樹脂に用いられる樹脂成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの汎用樹脂が用いられる。なお、高分子型帯電防止剤の場合には、樹脂成分を含有させなくてもよい。また、帯電防止性樹脂の成分として、架橋剤として、メチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系化合物、尿素系化合物、グリオキザール系化合物、アクリルアミド系化合物;エポキシ化合物;イソシアネート化合物;などを含有させることも可能である。
【0127】
帯電防止層の形成方法としては、例えば、上述の帯電防止性樹脂、導電性ポリマー、導電性樹脂などを、有機溶剤もしくは水などの溶媒で希釈し、この塗液を基材などに塗布、乾燥することで形成される。
【0128】
帯電防止層の形成に用いる希釈溶液としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、水などが挙げられる。これらの溶剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0129】
帯電防止層の形成における塗布方法については、任意の適切な塗布方法が適宜用いられる。このような塗布方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、含浸、カーテンコートなどが挙げられる。
【0130】
導電性物質の蒸着あるいはメッキの方法としては、任意の適切な方法が適宜用いられる。このような方法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、スプレー熱分解、化学メッキ、電気メッキ法などが挙げられる。
【0131】
帯電防止層の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な厚みを採用し得る。本発明の効果をより発現させ得る点で、帯電防止層の厚みは、好ましくは0.001μm~5μmであり、より好ましくは0.005μm~1μmである。
【0132】
≪トップコート層≫
本発明の粘着フィルムは、基材層の粘着剤層を有する面と反対側の面にトップコート層を有していてもよい。トップコート層は、好ましくは、バインダを含有し、より好ましくは、バインダと滑り剤を含有する。本発明の粘着フィルムがトップコート層を有することにより、粘着フィルムの耐スクラッチ性が向上し、好ましい態様となる。
【0133】
<バインダ>
バインダは、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な樹脂を採用し得る。このような樹脂としては、本発明の効果をより発現させ得る点で、好ましくは、ポリエステル樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0134】
(ポリエステル樹脂)
バインダ中にポリエステル樹脂が含まれる場合、該ポリエステル樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0135】
ポリエステル樹脂は、好ましくは、ポリエステルを主成分として含む樹脂である。ポリエステル樹脂中のポリエステルの含有割合は、好ましくは50重量%超であり、より好ましくは75重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0136】
ポリエステルは、好ましくは、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸類(好ましくは、ジカルボン酸類)およびその誘導体(多価カルボン酸の無水物、エステル化物、ハロゲン化物等)から選択される少なくとも1種の化合物(多価カルボン酸成分)と、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール類(好ましくは、ジオール類)から選択される少なくとも1種の化合物(多価アルコール成分)とが縮合した構造を有する。
【0137】
多価カルボン酸成分として採用し得る化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、ジフルオロマロン酸、アルキルマロン酸、コハク酸、テトラフルオロコハク酸、アルキルコハク酸、(±)-リンゴ酸、meso-酒石酸、イタコン酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、アセチレンジカルボン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、メチルグルタル酸、グルタコン酸、アジピン酸、ジチオアジピン酸、メチルアジピン酸、ジメチルアジピン酸、テトラメチルアジピン酸、メチレンアジピン酸、ムコン酸、ガラクタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、パーフルオロスベリン酸、3,3,6,6-テトラメチルスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、パーフルオロセバシン酸、ブラシル酸、ドデシルジカルボン酸、トリデシルジカルボン酸、テトラデシルジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;シクロアルキルジカルボン酸(例えば、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸)、1,4-(2-ノルボルネン)ジカルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸(ハイミック酸)、アダマンタンジカルボン酸、スピロヘプタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、ジチオイソフタル酸、メチルイソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、クロロイソフタル酸、ジクロロイソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、クロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキソフルオレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニレンジカルボン酸、ジメチルビフェニレンジカルボン酸、4,4”-p-テレフェニレンジカルボン酸、4,4”-p-クワレルフェニルジカルボン酸、ビベンジルジカルボン酸、アゾベンゼンジカルボン酸、ホモフタル酸、フェニレン二酢酸、フェニレンジプロピオン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジプロピオン酸、ビフェニル二酢酸、ビフェニルジプロピオン酸、3,3'-[4,4’-(メチレンジ-p-ビフェニレン)ジプロピオン酸、4,4’-ビベンジル二酢酸、3,3’(4,4’-ビベンジル)ジプロピオン酸、オキシジ-p-フェニレン二酢酸などの芳香族ジカルボン酸類;上述したいずれかの多価カルボン酸の酸無水物;上述したいずれかの多価カルボン酸のエステル(例えば、アルキルエステル、モノエステル、ジエステル等);上述したいずれかの多価カルボン酸に対応する酸ハロゲン化物(例えば、ジカルボン酸クロリド等);などが挙げられる。
【0138】
多価カルボン酸成分として採用し得る化合物の好適例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類およびその酸無水物;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ハイミック酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類およびその酸無水物;上記ジカルボン酸類の低級アルキルエステル(例えば、炭素原子数1~3のモノアルコールとのエステル);などが挙げられる。
【0139】
多価アルコール成分として採用し得る化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、キシリレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA等のジオール類が挙げられる。他の例としては、これらの化合物のアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。
【0140】
ポリエステル樹脂は、好ましくは、水分散性ポリエステルを含み、より好ましくは、水分散性ポリエステルを主成分として含む。このような水分散性ポリエステルは、例えば、ポリマー中に親水性官能基(例えば、スルホン酸金属塩基、カルボキシル基、エーテル基、リン酸基などの親水性官能基から選ばれる少なくとも1種)を導入することにより水分散性を高めたポリエステルであり得る。このように、ポリマー中に親水性官能基を導入する手法としては、例えば、親水性官能基を有する化合物を共重合させる方法、ポリエステルまたはその前駆体(例えば、多価カルボン酸成分、多価アルコール成分、それらのオリゴマーなど)を変性して親水性官能基を生じさせる方法、などの、任意の適切な手法を適宜採用することができる。好ましい水分散性ポリエステルとしては、親水性官能基を有する化合物が共重合されたポリエステル(共重合ポリエステル)が挙げられる。
【0141】
バインダとして用いられるポリエステル樹脂は、飽和ポリエステルを主成分とするものであってもよく、不飽和ポリエステルを主成分とするものであってもよい。ポリエステル樹脂は、好ましくは、その主成分が飽和ポリエステルであり、より好ましくは、水分散性が付与された飽和ポリエステル(例えば、飽和共重合ポリエステル)である。このようなポリエステル樹脂(水分散液の形態に調製されたものであり得るポリエステル樹脂)は、任意の適切な方法によって合成することができ、あるいは、市販品を容易に入手することができる。
【0142】
ポリエステル樹脂の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として、好ましくは0.5×104~15×104であり、より好ましくは1×104~6×104である。
【0143】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃~100℃であり、より好ましくは10℃~80℃である。
【0144】
(ウレタン系樹脂)
バインダ中にウレタン系樹脂が含まれる場合、該ウレタン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0145】
ウレタン系樹脂としては、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるウレタン系樹脂である。
【0146】
ポリオール(A)としては、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0147】
ポリオール(A)としては、OH基を2個以上有するポリオールであれば、任意の適切なポリオールを採用し得る。このようなポリオール(A)としては、例えば、OH基を2個有するポリオール(ジオール)、OH基を3個有するポリオール(トリオール)、OH基を4個有するポリオール(テトラオール)、OH基を5個有するポリオール(ペンタオール)、OH基を6個有するポリオール(ヘキサオール)などが挙げられる。
【0148】
ポリオール(A)として、好ましくは、OH基を2個以上有するエチレングリコールやプロピレングリコールなどのグリコールを必須成分として採用する。このようにグリコールを必須成分として採用すると、例えば、硬化後の塗膜の強度に優れ、基材との密着性や添加物質の保持性に優れた、ウレタン系硬化樹脂を提供することができる。ポリオール(A)中の、グリコールの含有割合は、好ましくは30重量%~100重量%であり、より好ましくは50重量%~100重量%であり、さらに好ましくは70重量%~100重量%であり、さらに好ましくは90重量%~100重量%であり、特に好ましくは95重量%~100重量%であり、最も好ましくは実質的に100重量%である。
【0149】
ポリオール(A)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。
【0150】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。
などが挙げられる。
【0151】
酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。
【0152】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、低分子ポリオール(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなど)などを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0153】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、σ-バレーロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0154】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロビル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;などが挙げられる。
【0155】
ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と上記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0156】
多官能イソシアネート化合物(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0157】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、ウレタン化反応に用い得る任意の適切な多官能イソシアネート化合物を採用し得る。このような多官能イソシアネート化合物(B)としては、例えば、多官能脂肪族系イソシアネート化合物、多官能脂環族系イソシアネート、多官能芳香族系イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0158】
多官能脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0159】
多官能脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロへキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0160】
多官能芳香族系ジイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’一ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0161】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、上記のような各種多官能イソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体なども挙げられる。また、これらを併用しても良い。
【0162】
多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合は、ポリオール(A)に対して、多官能イソシアネート化合物(B)が、好ましくは5重量%~60重量%であり、より好ましくは8重量%~60重量%であり、さらに好ましくは10重量%~60重量%である。多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、本発明の効果をより一層発現し得る。
【0163】
ウレタン系樹脂は、代表的には、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られる。このような組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオール(A)および多官能イソシアネート化合物(B)以外の任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、触媒、ポリウレタン系樹脂以外の他の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、導電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤などが挙げられる。
【0164】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させてウレタン系樹脂を得る方法としては、塊状重合や溶液重合などを用いたウレタン化反応方法など、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。
【0165】
(その他の樹脂)
トップコート層は、粘着フィルムの性能を大きく損なわない限度で、バインダとして、ポリエステル樹脂およびウレタン系樹脂以外のその他の樹脂(例えば、アクリル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、アクリル-シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ポリシラザン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂から選択される少なくとも1種の樹脂)をさらに含有し得る。トップコート層の好ましい実施態様としては、トップコート層のバインダが実質的にポリエステル樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のみからなり、バインダに占めるポリエステル樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の割合が、好ましくは98重量%~100重量%であり、より好ましくは99重量%~100重量%であり、さらに好ましくは99.5重量%~100重量%である。トップコート層全体に占めるバインダの割合は、好ましくは15重量%~95重量%であり、より好ましくは25重量%~80重量%である。
【0166】
<滑り剤>
滑り剤としては、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル(以下「ワックスエステル」と称することがある。)を含むことが好ましい。
【0167】
「高級脂肪酸」とは、好ましくは、炭素原子数が8以上のカルボン酸であり、その炭素原子数は、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは10~40である。カルボン酸は、好ましくは、1価のカルボン酸である。
【0168】
「高級アルコール」とは、好ましくは、炭素原子数が6以上のアルコールであり、その炭素原子数は、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは10~40である。アルコールは、好ましくは、1価または2価のアルコールであり、より好ましくは、1価のアルコールである。
【0169】
このようなワックスエステルと前述のバインダとを組み合わせて含む組成のトップコート層は、高温多湿条件に保持されても白化しにくい。したがって、このようなトップコート層を有する基材を備えた粘着フィルムは、より外観品位の高いものとなり得る。
【0170】
上記組成のトップコート層によって優れた耐白化性(例えば、高温多湿条件に保持されても白化しにくい性質)が実現される理由としては、例えば、以下の理由が考えられる。すなわち、従来使用されているシリコーン系滑剤は、トップコート層の表面にブリードすることにより該表面に滑り性を付与する機能を発揮するものと推察される。しかし、これらシリコーン系滑剤は、保存条件(温度、湿度、経時等)の違いによってブリードの程度が変動しやすい。このため、例えば、通常の保存条件(例えば、25℃、50%RH)に保持された場合に、粘着フィルムの製造直後から比較的長期間(例えば、約3ヶ月)に亘って適度な滑り性が得られるようにシリコーン系滑剤の使用量を設定すると、この粘着フィルムが高温多湿条件(例えば、60℃、95%RH)で2週間保存された場合には、滑剤のブリードが過剰に進行してしまう。このように過剰にブリードしたシリコーン系滑剤は、トップコート層(ひいては粘着フィルム)を白化させてしまうおそれがある。
【0171】
トップコート層の好ましい実施形態としては、滑り剤としてのワックスエステルとバインダとしてのポリエステル樹脂という特定の組合せを採用する。このような滑り剤とバインダとの組合せによると、ワックスエステルのトップコート層からのブリードの程度が保存条件の影響を受けにくい。このことによって、粘着フィルムの耐白化性が向上し得る。
【0172】
ワックスエステルとしては、一般式(W)で表わされる化合物の1種以上を好ましく採用し得る。
X-COO-Y (W)
【0173】
式(W)中のXおよびYは、それぞれ独立に、好ましくは、炭素原子数10~40の炭化水素基であり、その炭素原子数は、より好ましくは10~35であり、さらに好ましくは14~35であり、特に好ましくは20~32である。上記の炭素原子数が小さすぎると、トップコート層に滑り性を付与する効果が不足するおそれがある。上記の炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもおいし、不飽和炭化水素基であってもよい。上記の炭化水素基は、好ましくは、飽和炭化水素基である。また、上記の炭化水素基は、芳香族の環を含む構造であってもよく、芳香環を含まない構造(脂肪族性炭化水素基)であってもよく、脂肪族性の環を含む構造の炭化水素基(脂環式炭化水素基)であってもよく、鎖状(直鎖状および分岐鎖状を包含する)の炭化水素基であってもよい。
【0174】
ワックスエステルとしては、式(W)におけるXおよびYが、それぞれ独立に、好ましくは、炭素原子数10~40の鎖状アルキル基である化合物であり、より好ましくは、炭素原子数10~40の直鎖状アルキル基である化合物である。このような化合物の具体例としては、例えば、セロチン酸ミリシル(CH3(CH224COO(CH229CH3)、パルミチン酸ミリシル(CH3(CH214COO(CH229CH3)、パルミチン酸セチル(CH3(CH214COO(CH215CH3)、ステアリル酸ステアリル(CH3(CH216COO(CH217CH3)などが挙げられる。
【0175】
ワックスエステルは、融点が、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上であり、特に好ましくは75℃以上である。このようなワックスエステルによれば、より高い耐白化性が実現され得る。ワックスエステルは、融点が100℃以下であることが好ましい。このようなワックスエステルは、滑り性を付与する効果が高いので、より耐スクラッチ性の高いトップコート層を形成し得る。ワックスエステルの融点が100℃以下であることは、ワックスエステルの水分散液を調製しやすいという点からも好ましい。このようなワックスエステルとしては、例えば、セロチン酸ミリシルを好ましく採用し得る。
【0176】
トップコート層の原料として、このようなワックスエステルを含有する天然ワックスを利用することができる。このような天然ワックスとしては、不揮発分(NV)基準で、上記ワックスエステルの含有割合(2種以上のワックスエステルを含む場合にはそれらの含有割合の合計)が、好ましくは50重量%よりも多く、より好ましくは65重量%以上であり、さらに好ましくは75重量%以上である。このような天然ワックスとしては、例えば、カルナバワックス(一般に、セロチン酸ミリシルを、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上の割合で含む。)、パームワックス等の植物性ワックス;蜜ロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;などが挙げられる。このような天然ワックスの融点は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上であり、特に好ましくは75℃以上である。トップコート層の原料としては、化学的に合成されたワックスエステルを用いてもよいし、天然ワックスを精製してワックスエステルの純度を高めたものを用いてもよい。これらの原料は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0177】
トップコート層全体に占める滑り剤の割合は、好ましくは5重量%~50重量%であり、より好ましくは10重量%~40重量%である。滑り剤の含有割合が少なすぎると、耐スクラッチ性が低下しやすくなるおそれがある。滑り剤の含有割合が多すぎると、耐白化性の向上効果が不足しやすくなるおそれがある。
【0178】
トップコート層は、ワックスエステルに加えて、他の滑り剤を含んでいてもよい。他の滑り剤としては、例えば、石油系ワックス(パラフィンワックス等)、鉱物系ワックス(モンタンワックス等)、高級脂肪酸(セロチン酸等)、中性脂肪(パルミチン酸トリグリセリド等)のような、ワックスエステル以外の各種ワックスが挙げられる。また、ワックスエステルに加えて、シリコーン系滑剤、フッ素系滑剤などを含有させてもよい。トップコート層の好ましい実施形態としては、シリコーン系滑剤、フッ素系滑剤を実質的に含有しない形態であり、例えば、シリコーン系滑剤とフッ素系滑剤の合計含有量がトップコート層全体の、好ましくは0.01重量%以下であり、より好ましくは検出限界以下である。
【0179】
トップコート層は、必要に応じて、帯電防止成分、架橋剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料等)、流動性調整剤(チクソトロピー剤、増粘剤等)、造膜助剤、界面活性剤(消泡剤、分散剤等)、防腐剤等の添加剤を含有し得る。
【0180】
<トップコート層の帯電防止成分>
トップコート層の好ましい実施形態は、帯電防止成分を含有する。帯電防止成分としては、粘着フィルムの帯電を防止または抑制する作用を発揮し得る成分である。トップコート層に帯電防止成分を含有させる場合、その帯電防止成分としては、例えば、有機または無機の導電性物質、各種の帯電防止剤等を用いることができる。また、前述の帯電防止層で使用され得る帯電防止剤を使用することも可能である。
【0181】
有機導電性物質としては、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体等の両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体等のノニオン型帯電防止剤;上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基(例えば、4級アンモニウム塩基)を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体等の導電性ポリマー;などが挙げられる。このような帯電防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0182】
無機導電性物質としては、例えば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)などが挙げられる。このような無機導電性物質は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0183】
帯電防止剤の例としては、カチオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、両性イオン型帯電防止剤、ノニオン型帯電防止剤、上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体、などが挙げられる。
【0184】
トップコート層が帯電防止成分を含有する場合、好ましくは、帯電防止成分が有機導電性物質を含む。有機導電性物質としては、各種の導電性ポリマーを好ましく用いることができる。このような構成によると、良好な帯電防止性と高い耐スクラッチ性とを両立させ得る。
【0185】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体などが挙げられる。このような導電性ポリマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、他の帯電防止成分(無機導電性物質、帯電防止剤等)と組み合わせて用いてもよい。
【0186】
導電性ポリマーの使用量は、トップコート層に含まれるバインダ100重量部に対して、好ましくは1重量部~100重量部であり、より好ましくは2重量部~70重量部であり、さらに好ましくは3重量部~50重量部である。導電性ポリマーの使用量が少なすぎると、帯電防止効果が小さくなるおそれある。導電性ポリマーの使用量が多すぎると、トップコート層における導電性ポリマーの相溶性が不足気味となって、トップコート層の外観品位が低下したり、耐溶剤性が低下したりするおそれがある。
【0187】
導電性ポリマーとしては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリンが挙げられる。ポリチオフェンとしては、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、好ましくは40×104以下であり、より好ましくは30×104以下である。ポリアニリンとしては、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、好ましくは50×104以下であり、より好ましくは30×104以下である。導電性ポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは、好ましくは0.1×104以上であり、より好ましくは0.5×104以上である。なお、本明細書中においてポリチオフェンとは、無置換または置換チオフェンの重合体をいう。置換チオフェン重合体としては、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが挙げられる。
【0188】
トップコート層を形成する方法としては、トップコート層形成用のコーティング材を基材に塗付して乾燥または硬化させる方法を採用する場合、該コーティング材の調製に用いる導電性ポリマーとしては、該導電性ポリマーが水に溶解または分散した形態のもの(導電性ポリマー水溶液)を好ましく使用し得る。このような導電性ポリマー水溶液は、例えば、親水性官能基を有する導電性ポリマー(分子内に親水性官能基を有するモノマーを共重合させる等の手法により合成され得る導電性ポリマー)を水に溶解または分散させることにより調製することができる。上記親水性官能基としては、スルホ基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、四級アンモニウム基、硫酸エステル基(-O-SO3H)、リン酸エステル基(例えば-O-PO(OH)2)などが挙げられる。このような親水性官能基は、塩を形成していてもよい。ポリチオフェン水溶液の市販品としては、例えば、ナガセケムテック社製の商品名「デナトロン」シリーズなどが挙げられる。ポリアニリンスルホン酸水溶液の市販品としては、例えば、三菱レイヨン社製の商品名「aqua-PASS」などが挙げられる。
【0189】
コーティング材の調製においては、好ましくは、ポリチオフェン水溶液を使用する。ポリチオフェン水溶液としては、ポリスチレンスルホネート(PSS)を含むポリチオフェン水溶液(例えば、ポリチオフェンにPSSがドーパントとして添加された形態)が好ましい。このようなポリチオフェン水溶液は、ポリチオフェン:PSSを、好ましくは1:1~1:10の質量比で含有するものであり得る。このようなポリチオフェン水溶液におけるポリチオフェンとPSSとの合計含有量は、好ましくは1質量%~5重量%である。このようなポリチオフェン水溶液の市販品としては、例えば、H.C.Stark社の商品名「ベイトロン(Baytron)」などが挙げられる。なお、上記のようにPSSを含むポリチオフェン水溶液を用いる場合には、ポリチオフェンとPSSとの合計量が、バインダ100重量部に対して、好ましくは5重量部~200重量部であり、より好ましくは10重量部~100重量部であり、さらに好ましくは25重量部~70重量部である。
【0190】
トップコート層は、必要に応じて、導電性ポリマーと、他の1種以上の帯電防止成分(導電性ポリマー以外の有機導電性物質、無機導電性物質、帯電防止剤など)とを共に含んでいてもよい。好ましくは、トップコート層が、導電性ポリマー以外の帯電防止成分を実質的に含有しない。すなわち、トップコート層に含まれる帯電防止成分が実質的に導電性ポリマーのみからなることが好ましい。
【0191】
<架橋剤>
トップコート層は、好ましくは、架橋剤を含有する。架橋剤としては、一般的な樹脂の架橋に用いられるメラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等の架橋剤を適宜選択して用いることができる。このような架橋剤を用いることにより、耐スクラッチ性の向上、耐溶剤性の向上、印字密着性の向上、摩擦係数の低下(すなわち、滑り性の向上)、のうち少なくとも1つの効果が実現され得る。好ましくは、架橋剤がメラミン系架橋剤を含む。架橋剤が実質的にメラミン系架橋剤(メラミン系樹脂)のみからなる(すなわち、メラミン系架橋剤以外の架橋剤を実質的に含有しない)トップコート層であってもよい。
【0192】
<トップコート層の一つの好ましい態様>
トップコート層の一つの好ましい態様は、基材層の材料がポリイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種である場合、該トップコート層がウレタン系樹脂を含むバインダおよび帯電防止成分を含有する態様である。このように、トップコート層の帯電防止成分のバインダとしてウレタン系樹脂を含むバインダを採用することにより、ポリイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種を材料とする基材層の表面へのトップコート層の塗布形成性が優れるようになり、外観が良好なものとなり得るとともに、優れた帯電防止性を発現し得る。
【0193】
トップコート層の帯電防止成分のバインダとしては、ポリエステル樹脂を含むバインダが好ましい場合が多いが、基材層の材料がポリイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種という特定の基材層に対しては、ポリエステル樹脂を含むバインダの親和性が低いことがあり、トップコート層の塗布形成後の外観が悪くなるおそれや、優れた帯電防止性を発現できないおそれがある。上記のように、基材層の材料がポリイミドおよびポリエーテルエーテルケトンから選ばれる少なくとも1種である場合、該トップコート層がウレタン系樹脂を含むバインダおよび帯電防止成分を含有する態様とすれば、基材層の表面へのトップコート層の塗布形成性が優れるようになり、外観が良好なものとなり得るとともに、優れた帯電防止性を発現し得る。
【0194】
<トップコート層の形成>
トップコート層は、上記樹脂成分および必要に応じて使用される添加剤が適当な溶媒に分散または溶解した液状組成物(トップコート層形成用コーティング材)を基材に付与することを含む手法によって好適に形成され得る。例えば、上記コーティング材を基材の第一面に塗付して乾燥させ、必要に応じて硬化処理(熱処理、紫外線処理など)を行う手法を好ましく採用し得る。上記コーティング材のNV(不揮発分)は、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは0.05重量%~5重量%であり、さらに好ましくは0.05重量%~1重量%であり、特に好ましくは0.10重量%~1重量%である。厚みの小さいトップコート層を形成する場合には、上記コーティング材のNVを、好ましくは0.05重量%~0.50重量%とし、より好ましくは0.10重量%~0.30重量%とする。このように低NVのコーティング材を用いることにより、より均一なトップコート層が形成され得る。
【0195】
トップコート層形成用コーティング材を構成する溶媒としては、トップコート層形成成分を安定して溶解または分散し得るものが好ましい。このような溶媒は、有機溶剤、水、またはこれらの混合溶媒であり得る。有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族または脂環族アルコール類;アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;などから選択される少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、トップコート層形成用コーティング材を構成する溶媒が、水または水を主成分とする混合溶媒(例えば、水とエタノールとの混合溶媒)である。
【0196】
<トップコート層の性状>
トップコート層の厚さは、好ましくは3nm~500nmであり、より好ましくは3nm~100nmであり、さらに好ましくは3nm~60nmである。トップコート層の厚みが大きすぎると、粘着フィルムの透明性(光線透過性)が低下しやすくなるおそれがある。トップコート層の厚みが小さすぎると、トップコート層を均一に形成することが困難となるおそれがあり、例えば、トップコート層の厚みにおいて、場所による厚みのバラツキが大きくなるおそれがあり、このため、粘着フィルムの外観にムラが生じやすくなるおそれがある。
【0197】
トップコート層の厚みは、トップコート層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することにより把握することができる。例えば、目的の試料(トップコート層が形成された基材や、基材を備える粘着フィルムなど)について、トップコート層を明瞭にする目的で重金属染色処理を行った後、樹脂包埋を行い、超薄切片法により試料断面のTEM観察を行って得られる結果を、トップコート層の厚さとして好ましく採用することができる。TEMとしては、例えば、日立社製のTEM(型式「H-7650」)などを用いることができる。後述する実施例では、加速電圧:100kV、倍率:60,000倍の条件で得られた断面画像について、二値化処理を行った後、視野内のサンプル長さでトップコートの断面積を除算することでトップコート層の厚み(視野内の平均厚み)を実測している。なお、重金属染色を行わなくてもトップコート層を十分明瞭に観察し得る場合には、重金属染色処理を省略してもよい。あるいは、TEMにより把握される厚みと、各種の厚み検出装置(例えば、表面粗さ計、干渉厚み計、赤外分光測定機、各種X線回折装置等)による検出結果との相関につき、検量線を作成して計算を行うことにより、トップコート層の厚みを求めてもよい。
【0198】
トップコート層の表面において測定される表面抵抗率は、好ましくは1012Ω以下であり、より好ましくは104Ω~1012Ωであり、さらに好ましくは104Ω~1011Ωであり、特に好ましくは5×104Ω~1010Ωであり、最も好ましくは104Ω~109Ωである。このような表面抵抗率を示す粘着フィルムは、例えば、液晶セルや半導体装置等のように静電気を嫌う物品の加工または搬送過程等において使用される粘着フィルムとして好適に利用され得る。表面抵抗率の値は、市販の絶縁抵抗測定装置を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下で測定される表面抵抗の値から算出することができる。
【0199】
トップコート層の摩擦係数は、好ましくは0.4以下である。このように摩擦係数の低いトップコート層とすると、トップコート層に荷重(スクラッチ傷を生じさせるような荷重)が加わった場合に、その荷重をトップコート層の表面に沿って受け流し、荷重による摩擦力を軽減することができる。このことによって、トップコート層の凝集破壊(トップコート層がその内部で破壊する損傷態様)や界面破壊(トップコート層が基材背面から剥がれる損傷態様)が起こりにくくなる。したがって、粘着フィルムにスクラッチ傷を生じる事象をより防止することができる。摩擦係数の下限としては、他の特性(例えば、外観品位や印字性など)とのバランスを考慮して、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.15以上である。摩擦係数としては、例えば、23℃、50%RHの測定環境下において、トップコート層の表面を垂直荷重40mNで擦過して求められる値を採用することができる。滑り剤の使用量は、好ましい摩擦係数が実現されるように設定するとよい。摩擦係数の調整には、例えば、架橋剤の添加や成膜条件の調整によりトップコート層の架橋密度を高めることも有効である。
【0200】
粘着フィルムは、その背面(トップコート層の表面)が、油性インキにより(例えば、油性マーキングペンを用いて)容易に印字できる性質を有することが好ましい。このような粘着フィルムは、該粘着フィルムを貼り付けた状態で行われる被着体(例えば、光学部品)の加工や搬送等の過程において、保護対象たる被着体の識別番号等を上記粘着フィルムに記載して表示することに適している。したがって、外観品位に加えて印字性にも優れた表面保護フィルムが好ましい。例えば、溶剤がアルコール系であって顔料を含むタイプの油性インキに対して高い印字性を有することが好ましい。また、印字されたインキが擦れや転着により取れにくい(すなわち、印字密着性に優れる)ことが好ましい。粘着フィルムは、印字を修正または消去する際に該印字をアルコール(例えば、エチルアルコール)で拭き取っても外観に目立った変化を生じない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。
【0201】
トップコート層は、好ましくは、滑り剤としてのワックスエステルを含有するため、トップコート層の表面にさらなる剥離処理(例えば、シリコーン系剥離剤や長鎖アルキル系剥離剤などの任意の適切な剥離処理剤を塗付して乾燥させる処理)を施さない態様においても、十分な滑り性(例えば、上述した好ましい摩擦係数)を実現し得る。このようにトップコート層の表面にさらなる剥離処理が施されていない態様は、剥離処理剤に起因する白化(例えば、加熱加湿条件下に保存されることによる白化)を未然に防止し得るなどの点で好ましい。また、耐溶剤性の点からも有利である。
【0202】
粘着フィルムは、基材、粘着剤層、及び、トップコート層に加えて、さらに他の層を含む態様でも実施され得る。かかる「他の層」の配置としては、基材の第一面(背面)とトップコート層との間、基材の第二面(前面)と粘着剤層との間等が例示される。基材背面とトップコート層との間に配置される層は、例えば、帯電防止成分を含む層(帯電防止層)であり得る。基材前面と粘着剤層との間に配置される層は、例えば、上記第二面に対する粘着剤層の投錨性を高める下塗り層(アンカー層)、帯電防止層等であり得る。基材前面に帯電防止層が配置され、該帯電防止層の上にアンカー層が配置され、その上に粘着剤層が配置された構成の粘着フィルムであってもよい。
【0203】
≪≪フォルダブルデバイスおよびローラブルデバイス≫≫
本発明の粘着フィルムは、屈曲性および透明性に優れるので、例えば、可動屈曲部を有するベンダブルデバイス(曲げることが可能なデバイス)やフォルダブルデバイス(折りたたむことが可能なデバイス)やローラブルデバイス(丸めることが可能なデバイス)に好適に備えられ得る。本発明の粘着フィルムは、特に、屈曲性および透明性に優れるので、これまで適用がより難しかったフォルダブルデバイス(折りたたむことが可能なデバイス)やローラブルデバイス(丸めることが可能なデバイス)に好適に備えられ得る。
【0204】
本発明のフォルダブルデバイスは、本発明の粘着フィルムを備える。本発明のフォルダブルデバイスは、本発明の粘着フィルムを備えていれば、任意の適切な他の部材を含んでいてもよい。
【0205】
本発明のローラブルデバイスは、本発明の粘着フィルムを備える。本発明のローラブルデバイスは、本発明の粘着フィルムを備えていれば、任意の適切な他の部材を含んでいてもよい。
【0206】
図1は、本発明の粘着フィルムの一つの使用形態の代表例として、本発明のフォルダブルデバイスの一つの実施形態を示す概略断面図である。図1において、本発明のフォルダブルデバイス1000は、カバーフィルム10、粘着剤層20、偏光板30、粘着剤層40、タッチセンサー50、粘着剤層60、OLED70、本発明の粘着フィルム100を備える。本発明の粘着フィルム100は、図1においては、粘着剤層80と基材層90から構成されている。粘着剤層20、粘着剤層40、粘着剤層60は。本発明の粘着フィルム100を構成する粘着剤層80と同じ組成の粘着剤を含む粘着剤層であってもよいし異なる組成の粘着剤を含む粘着剤層であってもよい。
【0207】
本発明の粘着フィルムは、屈曲性および透明性に優れるので、例えば、可動屈曲部を有するベンダブルデバイス(曲げることが可能なデバイス)やフォルダブルデバイス(折りたたむことが可能なデバイス)やローラブルデバイス(丸めることが可能なデバイス)の背面(ディスプレイ面の反対の面)に好適に備えられ得る。図1は、フォルダブルデバイス(折りたたむことが可能なデバイス)の背面(ディスプレイ面の反対の面)に備えられている図である。
【実施例0208】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、それらに何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
【0209】
<tanδ>
粘弾性測定装置「RSA-G2」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)にて、引張りモードで、サンプルサイズ幅5mm×距離15mm、Axial force 100gにて測定を行った。歪み掃引(Oscilation amplitude)モードにて、周波数は1Hz、測定温度は90℃、浸漬時間60秒、歪みの測定域を0.01%から1.0%までに設定し、その間の歪みでの測定を行った。各歪みでのtanδの値をグラフ化し、0.1%の歪みと0.7%の歪みのtanδをグラフから求めた。厚みについては、粘着フィルムに対して貯蔵弾性率・損失弾性率とも基材の剛性が大きく、粘着剤に関しては影響が無視できるものとして、粘着剤の厚みを除いた基材の厚みのみを入力して測定を行った。
tanδは下記の式にて求めた。
tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率
【0210】
<屈曲試験>
フラットな状態の粘着フィルムを、図2に示すように、粘着剤層面を外側にして粘着フィルムが6Φで屈曲した状態で、シリコーン処理セパレータのシリコーン処理面で挟む態様で固定して、90℃にて48時間保持した。その後、屈曲を解放し、23℃、50%RHにて24時間放置させた後に、折曲がったフィルムの角度を測定した。完全に元通りの状態に戻った場合を180度、最初の固定における折曲がった状態がそのまま維持した場合を0度とした。
【0211】
<剥がれ評価>
厚みが50μmのPETフィルム(東レ製、S10)に、粘着フィルムを貼り合せ、図3に示すように粘着フィルムが内側になるように折り曲げて、90℃で48時間保持した後、固定された状態を解放させ、該PETフィルムからの粘着フィルムの剥がれを目視で観察した。評価は下記の基準にしたがって行った。
○:PETフィルムからの剥がれが見られないもの。
×:PETフィルムからの剥がれが見られるもの。
【0212】
<ヘイズ、全光線透過率の測定>
ヘイズメーターHM-150((株)村上色彩技術研究所製)を使用し、JIS-K-7136に準拠し、ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100(Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)により算出した。なお、全光線透過率は、JIS-K-7316に準拠して測定した。
【0213】
<ヤング率>
サンプル片を幅10mmに短冊状に切り出し、25℃の温度環境下で万能引張圧縮試験機(テンシロン)にて、上記短冊状のサンプル片をチャック間距離100mmにて長手方向に引っ張って測定し、得られたS-S(Strain-Strength)カーブよりヤング率を求めた。測定条件としては、引張速度が200mm/min、チャック間が50mmであった。S-Sカーブからヤング率を求める方法は、S-Sカーブのグラフを作成し、変位1mm~2mmの範囲においてグラフに接線(一次式)を引き、接線の傾斜から求めた。
【0214】
<粘着力>
粘着フィルムを幅25mm、長さ150mmに切断し、評価用サンプルとした。温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で、評価用サンプルの粘着剤層表面をガラス板(松浪硝子工業株式会社製、商品名:マイクロスライドガラスS)に、2.0kgローラー1往復により貼り付けた。温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で30分間養生した後、万能引張試験機(ミネベア株式会社製、製品名:TCM-1kNB)を用い、剥離角度180度、引っ張り速度300mm/分で剥離し、粘着力を測定した。
【0215】
<塗布性>
塗布したトップコート層(帯電防止層含有)に円形状にムラが発生した個数をカウントする。A4サイズで2枚作成し平均個数を算出した。
2以下は良好、3個以上は不良と判断した。円形状のムラ部分は、トップコート層の厚みが薄くなっており、見た目の外観として欠点となっている部分であり、帯電防止剤をはじいてしまい、全く塗布できなかったものは、「ハジキ」とした。
【0216】
<表面抵抗値(実施例8用)>
実施例8において、帯電防止処理層を形成した層を、体積抵抗計 Model 152-1 152P-2P プローブ(トレック・ジャパン株式会社製)にて、電圧10Vにて測定を行った。
【0217】
<表面抵抗率(実施例9~17、比較例6~9用>
実施例9~17、比較例6~9において、抵抗率計(三菱ケミカルアナリティック製、「ハイレスタUP MCP-HT450型」)を用い、粘着フィルムの粘着剤層非付設面にURSプローブを接触させ、印加電圧100V、電圧印加時間10秒の条件で表面抵抗率を測定した。
【0218】
[製造例1]:粘着剤組成物Aの調製
モノマー成分としてのアクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA):63重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP):15重量部、メタクリル酸メチル(MMA):9重量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA):13重量部、重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル:0.2重量部、および、重合溶媒としての酢酸エチル:133重量部を、セパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、65℃に昇温し、10時間反応させ、その後、酢酸エチルを加えて固形分濃度30重量%のアクリル系ポリマー(a)の溶液を得た。
次に、アクリル系ポリマー(a1)の溶液に、イソシアネート系架橋剤(商品名「タケネートD110N」、三井化学株式会社製)をアクリル系ポリマー(a)(固形分)100重量部に対して固形分換算で1重量部となるように添加し、粘着剤組成物Aを調製した。
【0219】
[製造例2]:粘着剤組成物Bの調製
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)96.2重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)3.8重量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、酢酸エチル150重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(b)の溶液(40重量%)を調製した。アクリル系ポリマー(b)の重量平均分子量は54万であった。
次に、アクリル系ポリマー(b)の溶液(40重量%)を酢酸エチルで25重量%に希釈し、この溶液400重量部(固形分100重量部)に、架橋剤として、3官能イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌル体(東ソー社製、コロネートHX)4重量部(固形分4重量部)、架橋触媒としてジラウリン酸ジオクチルスズ(東京ファインケミカル社製、エンビライザーOL-1、1重量%酢酸エチル溶液)2重量部(固形分0.02重量部)、アセチルアセトン3重量部を加えて、混合攪拌を行い、粘着剤組成物Bを調製した。
【0220】
[実施例1]
市販の剥離ライナー(ダイアホイルMRF-38」、三菱樹脂株式会社)を用意した。剥離ライナーの一方の面(剥離面)に粘着剤組成物Aを、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃で3分間乾燥させた。このようにして、粘着剤組成物Aに対応するアクリル系粘着剤Aにより構成された厚み25μmの粘着剤層を、剥離ライナーの剥離面上に形成した。
基材層として、厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「カプトン」、東レ・デュポン株式会社製)を用意した。この基材層の一方の面に、上記剥離ライナー上に形成された粘着剤層を貼り合わせた。上記剥離ライナーは、そのまま粘着剤層上に残し、該粘着剤層の表面(粘着剤層面)の保護に使用した。得られた構造体を80℃のラミネータ(0.3MPa、速度0.5m/分)に1回通過させた後、50℃のオーブン中で1日間エージングした。このようにして、粘着フィルム(1)を得た。
結果を表1に示した。
【0221】
[実施例2]
基材層として、厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「ユーピレックス-50S」、宇部興産株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(2)を得た。
結果を表1に示した。
【0222】
[実施例3]
基材層として、厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「ピクシオBP」、株式会社カネカ製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(3)を得た。
結果を表1に示した。
【0223】
[実施例4]
基材層として、厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「ユーピレックス-50RN」、宇部興産株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(4)を得た。
結果を表1に示した。
【0224】
[実施例5]
基材層として、厚み50μmのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系基材(商品名「Shin-Etsu Sepla Film」、無延伸製膜高結晶、信越ポリマー株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(5)を得た。
結果を表1に示した。
【0225】
[実施例6]
基材層として、厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「ネオプリムS100」、三菱ガス化学株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(6)を得た。
結果を表1に示した。
【0226】
[実施例7]
基材層として、厚み25μmのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系基材(商品名「エクスピーク」、クラボウ製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(7)を得た。
結果を表1に示した。
【0227】
[比較例1]
基材層として、厚み25μmのポリエステル系基材(商品名「ルミラーS10」、東レ製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(C1)を得た。
結果を表1に示した。
【0228】
[比較例2]
基材層として、厚み50μmのポリエステル系基材(商品名「ルミラーS10」、東レ製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(C2)を得た。
結果を表1に示した。
【0229】
[比較例3]
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Bを用い、基材層として、厚み50μmのポリエステル系基材(商品名「ルミラーS10」、東レ製)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、粘着フィルム(C3)を得た。
結果を表1に示した。
【0230】
[比較例4]
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Bを用いた以外は、実施例6と同様に行い、粘着フィルム(C4)を得た。
結果を表1に示した。
【0231】
[比較例5]
粘着剤組成物Aに代えて粘着剤組成物Bを用いた以外は、実施例7と同様に行い、粘着フィルム(C5)を得た。
結果を表1に示した。
【0232】
【表1】
【0233】
[製造例3]:帯電防止処理ポリイミドフィルムAの作製
帯電防止剤(ソルベックス社製、マイクロソルバーRMd-142、酸化スズとポリエステル樹脂を主成分とする)10重量部を、水30重量部とメタノール70重量部からなる混合溶媒で希釈することにより帯電防止剤溶液を調製した。得られた帯電防止剤溶液を、基材である厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「カプトン」、東レ・デュポン株式会社製)の上にマイヤーバーを用いて塗布し、130℃で1分間乾燥することにより溶剤を除去して、帯電防止層(厚さ:0.2μm)を形成し、帯電防止処理ポリイミドフィルムAを作製した。
【0234】
[実施例8]
基材として帯電防止処理ポリイミドフィルムAを使用した以外は実施例1と同様に行い、粘着フィルム(8)を得た。表面抵抗値は、5×106Ωであった。
【0235】
[製造例4]:トップコート層形成ポリイミドフィルムBの作成
<コーティング材Bの調製>
バインダとしてのポリエステル樹脂(バインダ)を25重量%含む分散液(東洋紡株式会社製品、商品名「バイナロールMD-1480」(飽和共重合ポリエステル樹脂の水分散液);以下「バインダ分散液」ともいう。)を用意した。
また、滑り剤として、カルナウバワックス(日本ワックス社製、商品名「精製カルナウバワックッス2号粉末」)の水分散液(以下「滑り剤分散液」ともいう。)を用意した。
さらに、導電性ポリマーとして、ポリ(3,4-ジオキシチオフェン)(PEDOT)0.5重量%、及び、ポリスチレンスルホネート(数平均分子量15万)(PSS)0.8重量%を含む水溶液(H.C.Stark社製品、商品名「Baytron P」;以下「導電性ポリマー水溶液」ともいう。)を用意した。
水とエタノールとの混合溶媒(重量比が50:50)に、上記バインダ分散液を固形分量で100重量部と、上記滑り剤分散液を固形分量で30重量部と、上記導電性ポリマー水溶液を固形分量で50重量部と、メラミン系架橋剤7重量部とを加え、約20分間攪拌して、十分に混合した。このようにして、NVが約0.15重量%のコーティング材Bを調製した。
<トップコート層形成ポリイミドフィルムBの作成>
基材である厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「カプトン」、東レ・デュポン株式会社製)の上に、上記コーティング材Bをバーコーターで塗付し、130℃に2分間加熱して乾燥させた。このようにして、ポリイミド系基材の片面に厚さ10nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート層形成ポリイミドフィルムB)を作製した。
【0236】
[製造例5]:トップコート層形成ポリイミドフィルムCの作成
<コーティング材Cの調製>
バインダとしてエチレングリコール25mol%とネオペチングリコール25mol%とテレフタル酸30mol%とアジピン酸10mol%とトリレンジイソシアネート10mol%からなるポリエステルウレタン樹脂を25重量%含む水溶液;以下「バインダ分散液」ともいう。)を用意した。
また、滑り剤として、カルナウバワックス(日本ワックス社製、商品名「精製カルナウバワックッス2号粉末」)の水分散液(以下「滑り剤分散液」ともいう。)を用意した。
さらに、導電性ポリマーとして、ポリ(3,4-ジオキシチオフェン)(PEDOT)0.5重量%、及び、ポリスチレンスルホネート(数平均分子量15万)(PSS)0.8重量%を含む水溶液(H.C.Stark社製品、商品名「Baytron P」;以下「導電性ポリマー水溶液」ともいう。)を用意した。
さらに分散剤としてポリエチレングリコール(PEG)アルキルエーテル 10重量%、ポリビニルアルコール10重量%を含む水溶液を用意した。
水とエタノールとの混合溶媒(重量比が50:50)に、上記バインダ分散液を固形分比で40重量部と、上記滑り剤分散液を固形分量で5重量部と、上記導電性ポリマー水溶液を固形分量で8重量部と、上記分散剤40重量部と、メラミン系架橋剤7重量部とを加え、約20分間攪拌して、十分に混合した。このようにして、NVが約0.30重量%のコーティング材Cを調製した。
<トップコート層形成ポリイミドフィルムCの作成>
基材である厚み50μmのポリイミド系基材(商品名「カプトン」、東レ・デュポン株式会社製)の上に、上記コーティング材Cをバーコーターで塗付し、130℃に2分間加熱して乾燥させた。このようにして、ポリイミド系基材の片面に厚さ50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート層形成ポリイミドフィルムC)を作製した。
【0237】
[実施例9]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムBを使用した以外は実施例1と同様に行い、粘着フィルム(9)を得た。
結果を表2に示した。
【0238】
[実施例10]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムBを使用した以外は実施例2と同様に行い、粘着フィルム(10)を得た。
結果を表2に示した。
【0239】
[実施例11]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムBを使用した以外は実施例4と同様に行い、粘着フィルム(11)を得た。
結果を表2に示した。
【0240】
[実施例12]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムBを使用した以外は実施例7と同様に行い、粘着フィルム(12)を得た。
結果を表2に示した。
【0241】
[実施例13]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムCを使用した以外は実施例1と同様に行い、粘着フィルム(13)を得た。
結果を表2に示した。
【0242】
[実施例14]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムCを使用した以外は実施例2と同様に行い、粘着フィルム(14)を得た。
結果を表2に示した。
【0243】
[実施例15]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムCを使用した以外は実施例3と同様に行い、粘着フィルム(15)を得た。
結果を表2に示した。
【0244】
[実施例16]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムCを使用した以外は実施例4と同様に行い、粘着フィルム(16)を得た。
結果を表2に示した。
【0245】
[実施例17]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムCを使用した以外は実施例7と同様に行い、粘着フィルム(17)を得た。
結果を表2に示した。
【0246】
[比較例6]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムBを使用した以外は比較例1と同様に行い、粘着フィルム(C6)を得た。
結果を表2に示した。
【0247】
[比較例7]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムBを使用した以外は比較例2と同様に行い、粘着フィルム(C7)を得た。
結果を表2に示した。
【0248】
[比較例8]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムCを使用した以外は比較例1と同様に行い、粘着フィルム(C8)を得た。
結果を表2に示した。
【0249】
[比較例9]
基材としてトップコート層形成ポリイミドフィルムCを使用した以外は比較例2と同様に行い、粘着フィルム(C9)を得た。
結果を表2に示した。
【0250】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0251】
本発明の粘着フィルムは、屈曲性および透明性に優れるので、例えば、可動屈曲部を有するベンダブルデバイス(曲げることが可能なデバイス)やフォルダブルデバイス(折りたたむことが可能なデバイス)やローラブルデバイス(丸めることが可能なデバイス)に好適に備えられ得る。
【符号の説明】
【0252】
1000 フォルダブルデバイス
100 粘着フィルム
10 カバーフィルム
20 粘着剤層
30 偏光板
40 粘着剤層
50 タッチセンサー
60 粘着剤層
70 OLED
80 粘着剤層
90 基材層
1 6Φガラス棒
2 シリコーン処理セパレータ
3 接着剤層
4 固定ガラス
5 PETフィルム
図1
図2
図3