(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159896
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】成形材料及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241031BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20241031BHJP
C08K 5/3432 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/49
C08K5/3432
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024139915
(22)【出願日】2024-08-21
(62)【分割の表示】P 2020046668の分割
【原出願日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019139023
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】506117840
【氏名又は名称】スイコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂木 博之
(57)【要約】
【課題】帯電防止性及び耐候性に優れた成形品が得られる成形材料を提供する。
【解決手段】
成形材料は、熱可塑性樹脂と、帯電防止剤と、紫外線吸収剤と、耐光安定剤と、酸化防止剤と、を含有する。耐光安定剤は、分子量が500以上の耐光安定剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、帯電防止剤と、紫外線吸収剤と、耐光安定剤と、酸化防止剤と、を含有し、
前記耐光安定剤は、分子量が500以上の耐光安定剤を含む、
成形材料。
【請求項2】
前記酸化防止剤が、リン系酸化防止剤を含む、
請求項1に記載の成形材料。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤が、融点100℃以上の紫外線吸収剤を含む、
請求項1又は2に記載の成形材料。
【請求項4】
前記帯電防止剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下の範囲内である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の成形材料。
【請求項5】
前記耐光安定剤が、ヒンダードアミン系耐光安定剤を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の成形材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の成形材料の成形物を含む、
成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に成形材料及び成形品に関する。より詳細には本開示は、熱可塑性樹脂を含有する成形材料、及び前記成形材料を用いた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合成樹脂製の滑り台が開示されている。この滑り台は、滑走体と、階段体と、側板と、当板と、ナットと、を備える。そして、滑走体、階段体、側板、当板、及びナットが合成樹脂で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような合成樹脂製の滑り台は、人体との摩擦等によって発生した静電気が漏洩しにくいという問題がある。そこで、滑り台を形成する合成樹脂に帯電防止剤を添加することが検討されている。
【0005】
一方で、合成樹脂製の滑り台は、屋内だけでなく、屋外にも設置される場合がある。この場合、次のような問題があることを本発明者は見出した。すなわち、帯電防止剤が添加された合成樹脂製の滑り台が屋外に設置されると、太陽光に含まれる紫外線により、滑り台の物理的性能(特に帯電防止性及び耐候性)が低下しやすいという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、帯電防止性及び耐候性に優れた成形品が得られる成形材料、並びに帯電防止性及び耐候性に優れた成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る成形材料は、熱可塑性樹脂と、帯電防止剤と、紫外線吸収剤と、耐光安定剤と、酸化防止剤と、を含有する。前記耐光安定剤は、分子量が500以上の耐光安定剤を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る成形品は、前記成形材料の成形物を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、帯電防止性及び耐候性に優れた成形品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.概要
本実施形態に係る成形材料(以下「成形材料(X)」ともいう)は、熱可塑性樹脂(A)と、帯電防止剤(B)と、紫外線吸収剤(C)と、耐光安定剤(D)と、酸化防止剤(E)と、を含有する。耐光安定剤(D)は、分子量が500以上の耐光安定剤(D1)を含む。これにより、成形材料(X)を加熱溶融して所望の形状に賦形する際に、耐光安定剤(D1)が気化しにくくなる。そのため、耐光安定剤(D1)は、成形品に残存しやすくなる。このように、耐光安定剤(D1)が成形品に残存することで、帯電防止剤(B)の光劣化も抑制される。
【0011】
したがって、本実施形態によれば、帯電防止性及び耐候性に優れた成形品が得られる。
【0012】
2.詳細
以下、本実施形態に係る成形材料(X)及び成形品について、更に詳細に説明する。
【0013】
(1)成形材料(X)
本実施形態に係る成形材料(X)は、熱可塑性樹脂(A)と、帯電防止剤(B)と、紫外線吸収剤(C)と、耐光安定剤(D)と、酸化防止剤(E)と、を含有する。成形材料(X)は、その他の成分(F)を更に含有してもよい。以下、成形材料(X)に含有される成分について説明する。
【0014】
<熱可塑性樹脂(A)>
熱可塑性樹脂(A)は、成形材料(X)の大半を占める原料である。熱可塑性樹脂(A)は、汎用プラスチック(耐熱温度約100℃以下)と、汎用エンジニアリングプラスチック(耐熱温度約100~150℃)と、スーパーエンジニアリングプラスチック(耐熱温度約150℃以上)と、に大別される。熱可塑性樹脂(A)は、これらのいずれでもよい。
【0015】
汎用プラスチックには、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)が含まれる。さらにポリエチレン(PE)は、低密度ポリエチレン(PE-LD)と、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)と、高密度ポリエチレン(PE-HD)と、に分類される。
【0016】
汎用エンジニアリングプラスチックには、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)が含まれる。
【0017】
スーパーエンジニアリングプラスチックには、例えば、ポリアリレート(PAR)、及びポリフェニレンスルフィド(PPS)が含まれる。
【0018】
熱可塑性樹脂(A)は、固化状態で分類すると、非晶性プラスチックと、結晶性プラスチックと、に分類される。熱可塑性樹脂(A)は、これらのいずれでもよい。非晶性プラスチックには、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、及びポリアリレート(PAR)が含まれる。結晶性プラスチックには、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール(POM)、及びポリフェニレンスルフィド(PPS)が含まれる。
【0019】
具体的には、熱可塑性樹脂(A)としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、及びポリ酢酸ビニル(PVAc)が挙げられる。熱可塑性樹脂(A)は、上記に列挙した樹脂からなる群より選ばれた1種以上の樹脂を含み得る。
【0020】
好ましくは、熱可塑性樹脂(A)は、ポリエチレン(PE)を含む。その理由の1つとして、ポリエチレン樹脂は、軽量であり、焼却しても有毒ガスが発生しにくく、リサイクルが容易であり、耐油性及び耐薬品性に優れ、衝撃強度に優れていることが挙げられる。ポリエチレン(PE)は、低密度ポリエチレン(PE-LD)、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)、及び高密度ポリエチレン(PE-HD)からなる群より選ばれた1種以上のポリエチレン(PE)を含み得る。
【0021】
<帯電防止剤(B)>
帯電防止剤(B)は、成形品の表面電荷の漏洩を促進させる添加剤である。帯電防止剤(B)は、使用方法によって、塗布型と、練込型と、に分類される。帯電防止剤(B)は、これらのいずれでもよいが、好ましくは、帯電防止剤(B)は、練込型帯電防止剤を含む。練込型帯電防止剤は、成形品の内部に練り込まれるが、塗布型帯電防止剤は、成形品の表面に物理吸着するだけである。したがって、練込型帯電防止剤は、塗布型帯電防止剤と比べて、高い耐久性を得ることができる。例えば、成形品が屋外に設置されて降雨に晒されても、雨水によって帯電防止剤(B)が成形品から流出することを抑制することができる。
【0022】
帯電防止剤(B)は、構造から分類すると、低分子型と、高分子型と、に大別される。帯電防止剤(B)は、これらのいずれでもよいが、好ましくは、高分子型帯電防止剤を含む。高分子型帯電防止剤は、低分子型帯電防止剤と比べて、成形品の表面へ滲出しにくいからである。したがって、帯電防止剤(B)が高分子型帯電防止剤を含むことで、成形品の外観の悪化を招きにくくなる。さらに上述の練込型帯電防止剤の場合と同様に、成形品が屋外に設置されて降雨に晒されても、雨水によって帯電防止剤(B)が成形品から流出することも抑制することができる。
【0023】
帯電防止剤(B)は、構造上の特徴から、非イオン系と、カチオン系と、アニオン系と、両性イオン系と、に分類される。帯電防止剤(B)は、これらのいずれでもよいが、好ましくは、帯電防止剤(B)は、非イオン系帯電防止剤を含む。非イオン系帯電防止剤は、イオン系(カチオン系、アニオン系、及び両性イオン系)帯電防止剤と比べて、熱可塑性樹脂(A)との相溶性が良好であるからである。
【0024】
非イオン系帯電防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテルエステルアミド系、エチレンオキサイド-エピクロヒドリン系、ポリエーテルエステル系、グリセリンモノ脂肪酸エステル系、及び脂肪酸ジエタノールアミド系等の帯電防止剤が挙げられる。
【0025】
非イオン系帯電防止剤として市販品を使用することができる。非イオン系帯電防止剤の市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社製の商品名「ペレスタット300」(ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体)、商品名「ペレクトロンPVL」、ARKEMA株式会社製の商品名「ペバックスMV」、商品名「ペバックスMH」、株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブAS301E」、株式会社花王製の商品名「エレストマスターHE110」、及び「HE510」等が挙げられる。
【0026】
帯電防止剤(B)は、親水基と、疎水基と、を分子中に併せ持つ。親水基は、電荷の漏洩に寄与する構造である。疎水基は、熱可塑性樹脂(A)との親和性を有する構造である。このように、親水基及び疎水基を併有することで、熱可塑性樹脂(A)との相溶性、成形品表面における分子配向性、及び吸着特性を付与することができ、帯電防止効果とその持続性とを改善することができる。成形品では、帯電防止剤(B)の親水基が電荷の漏洩経路を形成することにより、帯電防止効果が発揮されると考えられる。
【0027】
帯電防止剤(B)の含有量(下限値)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。これにより、成形品の帯電防止効果を更に向上させることができる。
【0028】
帯電防止剤(B)の含有量(上限値)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。成形品の外観の悪化の原因の1つとして、帯電防止剤(B)の分散不良が挙げられる。上記のように、帯電防止剤(B)の含有量が20質量部以下であることで、帯電防止剤(B)の分散不良が抑制され、成形品の外観の悪化を招きにくくなる。さらにコスト削減にも有効である。
【0029】
<紫外線吸収剤(C)>
紫外線吸収剤(C)は、光誘起反応による成形品の物理的性能低下(光劣化)を抑制する添加剤である。特に紫外線吸収剤(C)は、エネルギーレベルの高い紫外線を吸収することで熱可塑性樹脂(A)の光劣化に繋がる光誘起反応を抑制する。
【0030】
好ましくは、紫外線吸収剤(C)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びベンゾエート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれた1種以上を含む。
【0031】
紫外線吸収剤(C)として市販品を使用することができる。紫外線吸収剤(C)の市販品としては、例えば、BASFジャパン株式会社製の商品名「チヌビンP」(分子量225)、商品名「チヌビン234」(下記式(1)、分子量448)、商品名「チヌビン326」(分子量316)、商品名「チヌビン329」(分子量323)、商品名「チヌビン360」、商品名「チヌビン1577」、商品名「チヌビン1600」、商品名「チマソーブ81」、商品名「チヌビン120」、株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブLA24」、商品名「アデカスタブLA29」、商品名「アデカスタブLA31」、商品名「アデカスタブLA32」、商品名「アデカスタブLA36」、商品名「アデカスタブLA46」、商品名「アデカスタブLAF70」、商品名「アデカスタブ1413」等が挙げられる。
【0032】
【0033】
紫外線吸収剤(C)は、好ましくは分子量が320以上1200以下の紫外線吸収剤(C2)を含む。分子量が320以上の紫外線吸収剤(C2)は、低揮発性であるため、高温での成形加工に適している。特に回転成形法に有効である。分子量が320以上の紫外線吸収剤(C2)の一例として、上記の商品名「チヌビン234」(上記式(1)、分子量448)が挙げられる。
【0034】
紫外線吸収剤(C)の含有量(下限値)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上である。これにより、光誘起反応を更に抑制することができる。
【0035】
紫外線吸収剤(C)の含有量(上限値)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。
【0036】
紫外線吸収剤(C)は、好ましくは融点100℃以上の紫外線吸収剤(C1)を含み、より好ましくは融点100℃以上のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む。これにより、成形工程において、融点100℃以上の紫外線吸収剤(C1)が気化しにくくなる。そのため、紫外線吸収剤(C)の気化による気泡(ピンホール)が、成形品の表面に残存しにくくなる。したがって、成形品の外観の悪化を招きにくくなる。
【0037】
紫外線吸収剤(C)全量に対して、融点100℃以上の紫外線吸収材(C1)の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
【0038】
<耐光安定剤(D)>
耐光安定剤(D)は、紫外線吸収剤(C)と同様に、光誘起反応による成形品の物理的性能低下(光劣化)を抑制する添加剤である。紫外線吸収剤(C)との違いは、耐光安定剤(D)は、光劣化で生じた熱可塑性樹脂(A)由来のラジカルを捕捉して無害化する点である。このように、紫外線吸収剤(C)と耐光安定剤(D)とは、異なる機構で光劣化を抑制するため、両者の併用によって相乗的な効果を発揮させることができる。
【0039】
特に熱可塑性樹脂(A)由来のラジカルが帯電防止剤(B)の劣化の原因の1つと推定される。そのため、耐光安定剤(D)によって熱可塑性樹脂(A)由来のラジカルを捕捉すれば、帯電防止剤(B)の劣化も抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、耐光安定剤(D)は、分子量が500以上の耐光安定剤(D1)を含む。耐光安定剤(D1)の分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上である。これにより、成形材料(X)を加熱溶融して所望の形状に賦形する際に、耐光安定剤(D1)が気化しにくくなる。そのため、耐光安定剤(D1)は、成形品に残存しやすくなる。このように、耐光安定剤(D1)が成形品に残存することで、熱可塑性樹脂(A)由来のラジカルが捕捉され、帯電防止剤(B)の光劣化も抑制される。したがって、帯電防止性及び耐候性に優れた成形品が得られる。なお、耐光安定剤(D1)の分子量の上限値は、特に限定されないが、例えば、5000以下である。耐光安定剤(D)は、分子量500未満の耐光安定剤(D2)を更に含んでもよい。
【0041】
好ましくは、耐光安定剤(D)は、ヒンダードアミン系耐光安定剤を含む。ヒンダードアミン系耐光安定剤は、通称HALS(Hindered Amine Light Stabilizer)と呼ばれ、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン構造を基本骨格として有する化合物である。
【0042】
耐光安定剤(D)として市販品を使用することができる。耐光安定剤(D)の市販品としては、例えば、BASFジャパン株式会社製の商品名「チマソーブ2020」、商品名「チマソーブ944FDL」(下記式(2)、分子量2000~3100)、商品名「チヌビン622SF」(下記式(3)、分子量3100~4000)、商品名「チヌビン144」、商品名「チヌビン765」、商品名「チヌビン770」、商品名「チヌビンXT55」、商品名「チヌビン111」、商品名「チヌビン783FDL」(「チマソーブ944FDL」:「チヌビン622SF」(質量比)=1:1のブレンド)、商品名「チヌビン791」、株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブLA52」、商品名「アデカスタブLA57」、商品名「アデカスタブLA63P」、商品名「アデカスタブLA68」、商品名「アデカスタブLA72」、商品名「アデカスタブLA77」、商品名「アデカスタブLA81」、商品名「アデカスタブLA82」、商品名「アデカスタブLA87」、商品名「アデカスタブLA402AF」、商品名「アデカスタブLA502XP」等が挙げられる。
【0043】
【0044】
【0045】
耐光安定剤(D)の含有量(下限値)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.35質量部以上である。これにより、熱可塑性樹脂(A)由来のラジカルを更に捕捉しやすくなる。
【0046】
耐光安定剤(D)の含有量(上限値)は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下である。
【0047】
<酸化防止剤(E)>
酸化防止剤(E)は、特に熱が引き金となって起きる自動酸化を抑制する添加剤であり、熱酸化防止剤とも呼ばれる。
【0048】
酸化防止剤(E)は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びヒドロキシルアミン系酸化防止剤からなる群より選ばれた1種以上を含み得る。フェノール系酸化防止剤は、主としてラジカル捕捉剤(一次酸化防止剤)として機能する。リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤は、主として過酸化物分解剤(二次酸化防止剤)として機能する。ヒドロキシルアミン系酸化防止剤は、一次酸化防止剤及び二次酸化防止剤の両方の機能を併せ持つ。
【0049】
フェノール系酸化防止剤は、熱酸化の過程で生成するペルオキシラジカルを捕捉する。フェノール系酸化防止剤には、例えば、ヒンダードフェノール系、及びセミヒンダードフェノール系が含まれる。
【0050】
リン系酸化防止剤は、熱酸化の過程で生成するヒドロペルオキシドを分解する。リン系酸化防止剤は、硫黄系酸化防止剤と比べて、ヒドロペルオキシドとの反応性が高く、加工時の安定化に有効である。リン系酸化防止剤には、例えば、ホスファイト系、及びホスホナイト系が含まれる。
【0051】
好ましくは、酸化防止剤(E)が、リン系酸化防止剤を含む。熱可塑性樹脂(A)は、コンパウンド工程及び成形工程において高温に曝され、熱酸化劣化を受けやすい。熱可塑性樹脂(A)のヒドロペルオキシドは、これらの工程で最も多く生成し得ると考えられる。リン系酸化防止剤は、ヒドロペルオキシドとの反応速度が速いので、ヒドロペルオキシドは、速やかに安定なアルコール化合物に変換され得る。特に回転成形法では、加熱温度が高温となりやすいので、酸化防止剤(E)にリン系酸化防止剤を含ませることが有効である。
【0052】
リン系酸化防止剤として市販品を使用することができる。リン系酸化防止剤の市販品としては、例えば、BASFジャパン株式会社製の商品名「イルガスタブFS042」(下記式(4)、分子量537)、商品名「イルガフォス168」(下記式(5)、分子量647)、及び商品名「イルガスタブFS301FF」(「イルガスタブFS042」:「イルガフォス168」(質量比)=1:1のブレンド)、株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブ2112」、商品名「アデカスタブ1178」、商品名「アデカスタブ3010」、商品名「アデカスタブTPP」、商品名「アデカスタブPEP-36」、及び商品名「アデカスタブHP-10」等が挙げられる。
【0053】
【0054】
【0055】
好ましくは、酸化防止剤(E)は、リン系酸化防止剤と、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤と、を含む。リン系酸化防止剤及びヒドロキシルアミン系酸化防止剤を併用することで、優れた加工安定性及び色相安定性が得られる。リン系酸化防止剤及びヒドロキシルアミン系酸化防止剤を含む酸化防止剤(E)の一例として、上記の商品名「イルガスタブFS301FF」が挙げられる。
【0056】
酸化防止剤(E)全量に対して、リン系酸化防止剤の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは66質量%以上である。
【0057】
硫黄系酸化防止剤は、熱酸化の過程で生成するヒドロペルオキシドを分解する。硫黄系酸化防止剤は、リン系酸化防止剤と比べて、多数のヒドロキシペルオキシドを分解できることから、使用環境下での材料寿命延長に有効である。硫黄系酸化防止剤には、例えば、チオエーテル系が含まれる。
【0058】
酸化防止剤(E)として、以下のような市販品を使用することもできる。上述した市販品以外の市販品としては、例えば、BASFジャパン株式会社製の商品名「イルガノックス1010」、商品名「イルガノックス1035」、商品名「イルガノックス1076」、商品名「イルガノックス1098」、商品名「イルガノックス1135」、商品名「イルガノックス1330」、商品名「イルガノックス1520」、商品名「イルガノックス245」、商品名「イルガノックス259」、商品名「イルガノックス3114」、商品名「イルガノックス565」、株式会社ADEKA製の商品名「アデカスタブAO-20」、商品名「アデカスタブAO-40」、商品名「アデカスタブAO-50」、商品名「アデカスタブAO-60」、商品名「アデカスタブAO-330」、商品名「アデカスタブPEP8」、商品名「アデカスタブ2112」、商品名「アデカスタブ1500」、商品名「アデカスタブC」、商品名「アデカスタブ135A」等が挙げられる。
【0059】
帯電防止剤(B)と酸化防止剤(E)との質量比は、好ましくは20:1~170:1の範囲内であり、より好ましくは30:1~180:1の範囲内である。これにより、帯電防止剤(B)の熱劣化を酸化防止剤(E)で抑制しやすくなり、帯電防止効果をより持続しやすくなる。
【0060】
<その他の成分(F)>
その他の成分(F)としては、特に限定されないが、例えば、顔料、分散剤、及び離型剤が挙げられる。
【0061】
≪顔料≫
顔料は、特に限定されない。成形材料(X)が顔料を含有することにより、成形品を所定の色に着色することができる。
【0062】
≪分散剤≫
分散剤としては、特に限定されないが、例えば、金属石鹸が挙げられる。金属石鹸には、例えば、12-ヒドロキシステアリン酸石鹸が含まれる。成形材料(X)が分散剤を含有することにより、各成分の分散性を向上させることができる。
【0063】
≪離型剤≫
離型剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。成形材料(X)が離型剤を含有することにより、成形品を金型から剥がしやすくなる。
【0064】
<成形材料の製造>
成形材料(X)の形態には、ペレット(X1)と、パウダー(X2)と、が含まれる。特にパウダー(X2)は、回転成形に好適に用いられる。
【0065】
ペレット(X1)は、上述の成分を用いて、コンパウンド工程を経て製造することができる。
【0066】
すなわち、コンパウンド工程では、まず熱可塑性樹脂(A)、帯電防止剤(B)、紫外線吸収剤(C)、耐光安定剤(D)、酸化防止剤(E)、及び必要に応じてその他の成分(F)を所定の比率で予備混合する。これにより、混合材料が得られる。
【0067】
次に混合材料を押出機のホッパーに投入する。押出機としては、2軸押出機及び1軸押出機が挙げられる。これらのいずれでもよいが、好ましくは2軸押出機を用いる。2軸押出機は、1軸押出機と比べて、成形材料(X)中の各成分をより均一に分散させることができるからである。
【0068】
そして、混合材料を押出機で溶融混練してダイからストランドを押し出して冷却し、ペレタイザーで切断してペレット(X1)を得ることができる。
【0069】
一方、パウダー(X2)は、ペレット(X1)を微粉砕機で微細化することにより製造することができる。
【0070】
(2)成形品
本実施形態に係る成形品は、上述した成形材料(X)の成形物を含む。
【0071】
成形品は、成形工程を経て製造される。すなわち、成形品は、成形材料(X)を加熱して溶融した後、所望の形状に賦形して冷却固化することにより製造される。成形品を製造するための成形法としては、特に限定されないが、例えば、回転成形法、プレス成形法、及び射出成形法等が挙げられる。
【0072】
回転成形法では、まず金型にパウダー(X2)を投入し、金型を外部から加熱しつつ多軸に回転させる。そして、パウダー(X2)を溶融させて金型の内面に溶着させた後、金型を冷却して金型から成形品を取り出す。
【0073】
回転成形法での加熱温度は、好ましくは150℃以上250℃以下の範囲内、より好ましくは180℃以上220℃以下の範囲内である。回転成形法での加熱時間は、好ましくは5分間以上60分間以下の範囲内、より好ましくは15分間以上35分間以下である。
【0074】
回転成形法は、大型の成形品を成形するのに適している。回転成形法による成形品としては、特に限定されないが、例えば、タンク(飲料水タンク、自動車ガソリンタンク、及び養魚槽タンク等)、遊具(滑り台及びクライミングウォール等)、構造物(ベンチ及びテーブル等)が挙げられる。
【0075】
プレス成形法は、加熱した上下2つの金型でペレット(X1)を挟み込んでシート(樹脂板)を成形する方法である。
【0076】
射出成形法は、成形材料(X)を可塑化した後、金型内に射出し、冷却固化する方法である。射出成形法では、日用品から工業部品までの幅広い成形品を製造可能である。
【0077】
本実施形態に係る成形品は、成形材料(X)の成形物を含むので、帯電防止性及び耐候性に優れている。そのため、成形品は、屋内だけでなく、屋外にも設置することができる。
【実施例0078】
(実施例1~8及び比較例1)
成形材料(X)の成分の詳細は、以下のとおりである。
【0079】
<熱可塑性樹脂(A)>
熱可塑性樹脂:ポリエチレン、商品名「SP4030S」(株式会社プライムポリマー)。
【0080】
<帯電防止剤(B)>
帯電防止剤:非イオン系帯電防止剤、商品名「ペレスタット300」(ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体)(三洋化成株式会社製)。
【0081】
<紫外線吸収剤(C)>
紫外線吸収剤1:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(融点137~141℃)、商品名「チヌビン234」(BASFジャパン株式会社製)
紫外線吸収剤2:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(融点137~141℃)、商品名「チヌビン326」(BASFジャパン株式会社製)。
【0082】
<耐光安定剤(D)>
耐光安定剤1:商品名「チヌビン783FDL」(BASFジャパン株式会社製)、商品名「チマソーブ944FDL」(分子量2000~3100):商品名「チヌビン622SF」(分子量3100~4000)(質量比)=1:1のブレンド
耐光安定剤2:商品名「チヌビン770DF」(BASFジャパン株式会社製)、分子量481。
【0083】
<酸化防止剤(E)>
酸化防止剤1:ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、商品名「イルガスタブFS301FF」(BASFジャパン株式会社製)、商品名「イルガスタブFS042」(分子量約538):商品名「イルガフォス168」(分子量647、融点183~186℃)(質量比)=1:1のブレンド
酸化防止剤2:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、商品名「イルガノックス1010」(BASFジャパン株式会社製)。
【0084】
<その他の成分(F)>
顔料:黄色顔料
分散剤:12-ヒドロキシステアリン酸石鹸、商品名「MS-6」(日東化成工業株式会社製)
離型剤:ステアリン酸亜鉛。
【0085】
表1に示す含有量(質量部)となるように、各成分を用いて、コンパウンド工程を経て、ペレット(X1)を製造した。押出機として、2軸押出機及び1軸押出機を用いた。さらにペレット(X1)を微粉砕機で微細化することによりパウダー(X2)を製造した。
【0086】
次に、ペレット(X1)をプレス成形法によって成形することで、成形品を製造した。またパウダー(X2)を回転成形法によって成形することで、成形品を製造した。プレス成形法での加熱温度は200℃、圧力は0.1MPa、加圧時間は3分間とし、回転成形法での加熱温度は300℃、加熱時間は12.5分間とした。
【0087】
(評価)
(1)耐候性
成形品をJIS K 7127に準拠したダンベル型に打ち抜き、成形品から5つの試験片を作製した。各試験片について、サンシャインウェザーメータを用いて、初期値、1000時間、及び2000時間の促進耐候試験を行った。
【0088】
促進耐候試験後の各試験片について、温度23℃±2度、湿度50±5%RHの環境下で、引張試験機を用いて、引張速度50mm/min、チャック間距離50mm、ダンベル厚さ2.0mmの条件で測定し、得られた引張応力-ひずみ曲線の引張破断ひずみから、以下の式により、各試験片の引張破断伸び(%)を算出した。
【0089】
引張破断伸び率=Δρ/Δε
Δρ:引張試験した際の引張破断ひずみ
Δε:引張試験前の平行部の長さ
そして、各成形品の耐候性を以下の基準で評価した。
【0090】
A:5つの試験片の引張破断伸びの平均値が、基準片の引張破断伸びの50%以上を保持
B:5つの試験片の引張破断伸びの平均値が、基準片の引張破断伸びの50%以上を保持しているが、5つの試験片の中で50%以上を保持できていないものが1つ以上あるもの
C:5つの試験片の引張破断伸びの平均値が、基準片の引張破断伸びの50%未満
なお、上記の基準片は、熱可塑性樹脂(A)のみを用いて試験片と同様に作製した。
【0091】
(2)帯電防止性
温度20℃、湿度50%±5%RHの環境下で、成形品の表面固有抵抗値を測定し、以下の基準で評価した。
【0092】
A:成形品の表面固有抵抗値が1×1013未満
B:成形品の表面固有抵抗値が1×1013以上1×1015以下
C:成形品の表面固有抵抗値が1×1015超。
【0093】
【0094】
表1から明らかなように、各実施例は、帯電防止性及び耐候性を両立できることが分かる。すなわち、帯電防止性について、各実施例の評価はA又はBである。また耐候性(初期値及び2000h)について、各実施例の評価はA又はBである。特に実施例4~7及び11~14の耐候性の評価は極めて良い。初期から3000時間までの評価がA又はBであるからである。なお、耐候性については、2000hの評価がA又はBであれば、合格水準にあると言える。
【0095】
これに対して、各比較例は、帯電防止性又は耐候性の評価にCを含んでおり、帯電防止性及び耐候性を両立できないことが分かる。