(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015990
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】外科用器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A61B17/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023117743
(22)【出願日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】10 2022 207 575.7
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-ペーター ファームバッハ
(72)【発明者】
【氏名】リリー ストフェルズ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL27
4C160LL28
4C160LL29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】別個の取り付けツールなしに、そのパーツの部品まで少なくとも部分的に分解ができる外科用器具を提供すること。
【解決手段】全膝関節形成術に使用するための外科用器具1であって、第1の締結装置100と、それに解放可能に結合され、第2の締結装置200に解放可能に結合されるように構成されるガイド装置300とを備え、ガイド装置300は、ガイドトラックCに沿って長手方向に延在する少なくとも1つのガイドスロット302を有するスライドガイド301と、ガイドトラックCに沿ってスライド可能であるようにガイドスロット302に受容される少なくとも1つのスライド部材と、を備え、第1の締結装置100は少なくとも1つのプッシュフィット受容部を有し、これらを介して少なくとも1つのスライド部材が少なくとも1つのガイドスロット302に導入され、解放可能なプッシュフィット接続400を形成する外科用器具1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全膝関節形成術に使用するための外科用器具(1、1’)であって、
大腿骨基準パーツに解放可能に締結するように構成された第1の締結装置(100、100’)と、
前記第1の締結装置(100、100’)に最初に解放可能に結合され、第2に、脛骨パーツに解放可能に締結するように構成された第2の締結装置(200)に結合可能であり、前記第1の締結装置(100、100’)と前記第2の締結装置(300、300’)との間の矢状ガイド平面(E)内で案内される相対移動を可能にするガイド装置(300、300’)と、
を備えており、
前記ガイド装置(300、300’)は、ガイドトラック(C)に沿って長手方向に延びる少なくとも1つのガイドスロット(302、302’)を有するスライドガイド(301,301)と、前記ガイドトラック(C)に沿ってスライド可能であるように前記ガイドスロット(302、302’)に受容される少なくとも1つのスライド部材(303’、303a、303b、303b’)とを備えており、
前記第1の締結装置(100、100’)は前記ガイドトラック(C)に対して直角に延在する少なくとも1つのプッシュフィット受容部(101、101’)を有し、前記プッシュフィット受容部(101、101’)を介して、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が少なくとも1つの前記ガイドスロット(302、302’)内に導入され、前記第1の締結装置(100、100’)と解放可能なプッシュフィット接続(400、400’)を形成する、外科用器具(1、1’)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)は、スライド部(304)およびプッシュフィット部(305)を有し、
前記ガイドトラック(C)に沿ったスライド可能な案内のために、前記スライド部(304)は前記ガイドスロット(302、302’)に係合し、
前記プッシュフィット部(305)は、前記プッシュフィット受容部(101、101’)の関連した受容開口部(401、401’)に開放可能に受容される、請求項1に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項3】
2つのスライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が存在し、特に前記ガイドトラック(C)に沿って互いに離間していることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)上にキャリア要素(500、500’)が存在し、前記少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が固定されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項5】
前記キャリア要素(500、500’)は、
ベース本体(501、501’)と、
前記ベース本体(501、501’)から特に前記ガイドトラック(C)に対して直角に突出するハンドル部(502、502’)と、
を有することを特徴とする、請求項4に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項6】
前記スライドガイド(301)、特に前記ガイドスロット(302)は、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)をラッチするために、前記ガイドトラック(C)に対して軸方向に横断方向に延在するいくつかの孔(307)を有する孔列(308)を備え、
前記孔(C)は前記ガイドトラック(C)に沿って互いに離間し、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)のためのいくつかのラッチ位置を確立することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
【請求項7】
前記ガイドスロット(302)および/または少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)は戻り力に対してばね弾性変形可能であり、
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)は、前記戻り力によって、その瞬間的なラッチ位置に保持されることを特徴とする、請求項6に記載の外科用器具(1)。
【請求項8】
前記第1の締結装置(100’)と前記ガイド装置(300’)との間の相対移動性を固定するための固定状態と、固定が解除される解放状態と、の間で切り換え可能な固定装置(600)が設けられることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の外科用器具(1’)。
【請求項9】
前記固定装置(300)は、前記ガイドトラック(C)に対して平行に延びる歯列(601)と、前記解放状態において、前記ガイドトラック(C)に対して平行で前記歯列(601)に対して調整可能に移動可能である係合装置(602)と、を備え、
前記歯列(601)は、前記ガイド装置(300’)に締結され、
前記係合装置(602)は、前記第1の締結装置(100’)に、前記ガイドトラック(C)に対して横断方向に少なくとも1つの方向に特に不動に、または、その逆で取り付けられることを特徴とする、請求項8に記載の外科用器具(1’)。
【請求項10】
前記係合装置(602)は、前記固定状態と前記解放状態とを切り替えるために、係合位置と解放位置との間で前記ガイドトラック(C)に対して横断方向に調整可能に移動可能な形状嵌合要素(603)を備え、
その係合位置にある前記形状嵌合要素(603)は、前記歯列(601)に係合し、
その解放位置にあるとき、そのような係合は解除される、ことを特徴とする、請求項9に記載の外科用器具(1’)。
【請求項11】
前記係合装置(602)は、前記形状嵌合要素(603)を前記係合位置に付勢する付勢部材(604)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の外科用器具(1’)。
【請求項12】
前記係合装置(602)は、歯車(605)を備え、
前記歯車(605)は、ブロック可能かつ回転移動可能に取り付けられ、
前記歯列(601)に噛み合い、前記固定状態でブロックし、前記解放状態で回転移動可能であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の外科用器具(1’)。
【請求項13】
前記係合装置(602)は、作動要素(606)を備え、
前記係合装置(602)は、前記作動要素(606)によって、前記解放状態と前記固定状態とを切り替えるために、特に手動で、前記係合装置(602)を作動させることができることを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の外科用器具(1’)。
【請求項14】
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が、特に円筒形のピン(306、306’)であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項15】
前記ガイドトラック(C)が、前記矢状ガイド平面(E)内で弓形に延在することを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全膝関節形成術(TKA)に使用するための外科用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
全膝関節形成術(TKA)では、病気または事故によって摩耗した、またはさもなければ損傷した大腿骨および/または脛骨の関節表面が人工膝関節の人工関節表面によって置き換えられる。そのような人工膝関節は、通常、大腿骨パーツおよび脛骨パーツを備える。大腿骨パーツは、大腿骨の遠位端に埋め込まれる。脛骨パーツは、脛骨の近位端に埋め込まれる。
【0003】
人工パーツの埋め込み前に、遠位大腿骨および近位脛骨が切除される。このために、外科医は様々な切除カットを行い、骨物質および/または軟骨物質をそれぞれの骨から切り離す。切除は、それぞれの骨の形状を、受容される予定の人工パーツに適合させる。
【0004】
切除は、様々な概念に基づいて実施されてもよい。1つの概念は、関節運動中に膝の靭帯の緊張のバランスを保つことを目的としている。こうすることで、人工膝関節の機能の向上が目指される。この概念は、一般に「ギャップ・バランシング(gap balancing)」として知られている。他の概念では、外科医が切除によって一定量の骨物質および/または軟骨物質を除去する。そのような概念は一般に、「測定切除(measured resection)」として説明される。患者の解剖学的構造に対して切除カットをアライメントすることで、埋め込まれたパーツの将来的なアライメントを決定し、したがって、人工関節軸の向きも決定する。したがって、切除カットのアライメントは特に重要となる。
【0005】
切除カットのアライメントのために、機械的、解剖学的、および運動学的という3つのアプローチがある。機械的アライメントでは、脛骨近位部は脛骨軸の長手方向軸に対して垂直に切除される。大腿骨遠位部の切除は、それに応じて適合される。必要であれば、靭帯リリースを行う。解剖学的アライメントでは、3°の内反角で脛骨を切除することが目的である。大腿骨切除および靭帯リリースは、脚の、股関節-膝関節-足首の軸が直線になるように実施される。運動学的アライメント(以下KAと略す)の目的は、人工パーツの人工関節面を、関節炎を起こす前の、欠損のない天然の関節面のレベルで埋め込むことである。
【0006】
KAでは、切除カットは大腿骨遠位部から開始してアライメントされることが多い。脛骨近位部の切除は、それに適合される。大腿骨および脛骨の連続切除の目的のために、脛骨切断アライメントガイドとも呼ばれる特別な外科用器具が知られている。そのような器具は、大腿骨切除カットのアライメントを脛骨に移行させることを可能にする。移行は、通常、遠位顆が分離される大腿骨の少なくとも遠位切除後に行われる。移行は、伸展または屈曲で行うことができる。KAの変形例では、まず、遠位大腿骨を完全に準備する(全大腿骨ファースト)。遠位大腿骨に形成される予定の切除カットは、患者の解剖学的構造にアライメントされ、遠位大腿骨上に形成される。次に、大腿骨トライアル顆インプラントが遠位大腿骨上に配置される。次いで、すでに患者の解剖学的構造にアライメントされた大腿骨トライアル顆インプラントは基準パーツとして使用され、そのアライメントがその上で形成される予定の切除カットをアライメントし、生成するために外科用器具またはアライメントガイドなどの手段によって脛骨近位部に移行される。代替的に、逆の順序、すなわち、脛骨近位部から開始する手順が考えられることは明らかである。
【0007】
KAのための外科用器具は、通常、大腿骨または脛骨基準パーツに解放可能に固定するように構成された第1締結装置を有する。典型的には、脛骨切断ブロックまたは大腿骨切断ブロックをそれに締結することができるガイド装置が提供される。これはつまり、このような外科用器具は原則として、大腿骨基準パーツおよび脛骨切断ブロックと一緒に、または代替的に脛骨基準パーツおよび大腿骨切断ブロックと一緒に使用できることを意味する。ガイド装置は、基準パーツと切断ブロックとの間の案内された相対移動を可能にする。
【0008】
再使用の前に、外科用器具は、通常、洗浄され、特に滅菌されなければならない。特に、ガイド装置の領域には、外科用器具の他のパーツからガイド装置を分離することなく清掃するために、到達することができない、または到達することが困難な場所が存在することが多い。これに関連して、外科用器具を少なくとも部分的にそのパーツの部品まで分解できることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は従来の外科用器具に勝る利点を提供し、特に、別個の取り付けツールなしに、そのパーツの部品まで少なくとも部分的に分解ができる外科用器具を提供することである。
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有する外科用器具を提供することによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
本発明による外科用器具は、全膝関節形成術において使用するために役立ち、大腿骨基準パーツに解放可能に締結するように構成された第1の締結装置と、ガイド装置であって、第1の締結装置に最初に解放可能に結合され、第2に、脛骨パーツに解放可能に締結するように構成された第2の締結装置に結合可能であり、第1の締結装置と第2の締結装置との間の矢状ガイド平面内で案内される相対移動を可能にする、ガイド装置と、を備えており、ガイド装置は、ガイドトラックに沿って長手方向に延びる少なくとも1つのガイドスロットを有するスライドガイドと、ガイドトラックに沿ってスライド可能であるようにガイドスロットに受容される少なくとも1つのスライド部材とを備えており、第1の締結装置はガイドトラックに対して直角に延在する少なくとも1つのプッシュフィット受容部を有し、プッシュフィット受容部を介して、少なくとも1つのスライド部材が少なくとも1つのガイドスロット内に導入され、第1の締結装置と解除可能なプッシュフィット接続を形成する。代替的または追加的に、第1締結装置は、脛骨基準パーツに解放可能に固定するように構成されてもよい。代替的または追加的に、第2締結装置は、大腿骨パーツに解放可能に固定するように構成されてもよい。したがって、外科用器具は、脛骨から始まるKAにおいて、および/または大腿骨から始まるKAにおいて使用されてもよい。大腿骨基準パーツも脛骨パーツも第2締結装置も、外科用器具の一部ではない。ガイドトラックは好ましくはガイド平面内に、またはガイド平面と平行に配置される。少なくとも1つのスライド部材は、第1締結装置をガイド装置に結合するのに役立つ。有利には、少なくとも1つのスライド部材が2つの機能を同時に果たす。第1に、それは、ガイド装置への第1締結装置のスライド移動可能な接続を可能にする。第2に、それはまた、プッシュフィット接続の解放によってガイドスロットから取り外されるという点で、外科用器具をそのパーツ部品へ特に簡単に分解することを可能にする。好適には、プッシュフィット接続が特に工具を用いずに、手動で解放及び/又は作成することができる。したがって、外科用器具は、特に容易かつ完全に洗浄することができる。また、必要に応じて、外科用器具は全膝関節形成術中に、容易に手動で分解または再組み立てすることができる。したがって、プッシュフィット接続の手段によってガイド装置が第1締結装置に取り付けられる前に、第1締結装置がそれぞれの骨にすでに取り付けられている基準パーツに別々に締結されてもよい。これは、外科用器具の取り扱いにおいて利点を与える。
【0012】
本明細書で使用される位置および方向についての呼称は患者の身体、特に大腿骨を指し、この程度まで、それらの通常の解剖学的意味で理解されるべきである。つまり、「前方」は前方向又は前方にあること、「後方」は後方向又は後方にあること、「内側」は内側方向又は内側にあること、「外側」は外側方向又は外側にあること、「近位」は身体中心に向かう方向を指し、「遠位」は身体中心から離れていく方向を指す。さらに、「近位遠位方向」は近位遠位軸に沿って、好ましくはそれに平行であることを意味し、「前後方向」は好ましくは前後軸に沿って、好ましくはそれに平行であること、そして「内側外側方向」は内側外側軸に沿って、好ましくはそれに平行であることを意味する。前記複数の軸は互いに直角に配向され、明らかに、患者の解剖学的構造に接続されていないX軸、Y軸、およびZ軸に対して設定されてもよい。例えば、近位遠位軸は代替的に、X軸と称してもよい。内側外側軸は、Y軸と称してもよい。前後軸は、Z軸と称してもよい。より明瞭にするために、および呼称を簡単にするために、前記解剖学的位置および方向的な呼称は、主に下記で使用される。
【0013】
一実施形態では、少なくとも1つのスライド部材はスライド部およびプッシュフィット部を有し、ガイドトラックに沿ったスライド可能な案内のために、スライド部はガイドスロットに係合し、プッシュフィット部は、プッシュフィット受容部の関連した受容開口部に開放可能に受容される。好ましくは、少なくとも1つのスライド部材がそのスライド部とそのプッシュフィット部との間で、ガイドトラックに対して横断方向に延在する。好ましくは、プッシュフィット部は形状嵌合および/または力嵌合によって、関連する受容開口部内にしっかりと受容される。好ましくは、スライド部がガイドスロット内に、特に緊密なクリアランス嵌めの様式で受容される。したがって、第1固定装置とガイド装置との間に、特に正確で、許容誤差が小さいが、それにもかかわらず解放可能な比較的可動な接続を達成することができる。したがって、切除カットのアライメントは、外科用器具によって特に正確に移行することができる。
【0014】
さらなる実施形態では、2つのスライド部材が存在し、特にガイドトラックに沿って互いに離間している。これは、特に信頼性の高いガイドを可能にする。特に、ガイドスロット内のスライド部材の傾きは打ち消される。また、結果として得られるプッシュフィット接続は、比較的大きく負荷をかけることができる。
【0015】
さらなる実施形態では、少なくとも1つのスライド部材上にキャリア要素が存在し、少なくとも一つのスライド部材が固定される。好ましくは、スライド部材が、物質結合および/または摩擦嵌めおよび/または形状嵌合によってキャリア要素に固定される。キャリア要素によって、特に簡単な方法で、少なくとも1つのスライド部材をプッシュフィット受容部およびガイドスロットに導入してプッシュフィット接続を形成し、逆に、特に、プッシュフィット受容部およびガイドスロットから取り出すことができる。言い換えれば、キャリア要素は、取り付けまたは取り外しの際のスライド部材の取扱いを改善する。
【0016】
さらなる実施形態では、キャリア要素がベース本体と、ベース本体から特にガイドトラックに対して直角に突出するハンドル部とを有する。ハンドル部は、好ましくは半リングとして形成される。ハンドル部によって、キャリア要素およびそれに取り付けられた少なくとも1つのスライド部材は、特に容易に手動で取り付けまたは取り外すことができる。これには別体の器具は必要ない。スライド部材および/またはキャリア要素が流体の存在などによって滑りやすい場合であっても、ハンドル部は、滑ることなくしっかりと把持できる。さらに、スライド部材は、汚染(contamination)によって移動させるのが困難であっても容易に取り外すことができる。
【0017】
さらなる実施形態では、スライドガイド、特にガイドスロットは少なくとも1つのスライド部材をラッチするために、ガイドトラックに対して軸方向に横断方向に延在するいくつかの孔を有する孔列を備え、孔はガイドトラックに沿って互いに離間し、少なくとも1つのスライド部材のためのいくつかのラッチ位置を確立する。ここでの孔の間に存在する距離は、好ましくは孔の延在する軸(extent axes)に関連する。孔は、ボアとして構成されてもよい。
ボアの中心長手方向軸は、それらの延在する軸に対応していてもよい。孔またはボアは、互いに径方向に接触または交差してもよい。特に、孔又はボアの仮想又は実際の円周ジオメトリは、径方向に接触又は交差してもよい。したがって、有利には、さらなる機能が少なくとも1つのスライド部材に統合されてもよい。この実施形態では、案内及び解除可能な締結に加えて、ガイド装置の可動性を瞬間的なラッチ位置に固定するのにも役立つ。
【0018】
さらなる実施形態では、ガイドスロットおよび/または少なくとも1つのスライド部材は、戻り力に対してばね弾性変形可能であり、少なくとも1つのスライド部材は、戻り力によって、その瞬間的なラッチ位置に保持される。ガイドスロットを画定する素材、および/または少なくとも1つのスライド部材の素材はこのために、ばね弾性的に変形可能であるように設計されてもよい。したがって、荷重の戻り力が蓄積されると、その素材は、十分な程度まで可逆的に押し戻されてもよい。荷重が除去された後、戻り力が減少するにつれて、元のジオメトリが再開される。一実施形態では、ばね弾性変形可能なガイドスロットはばね弾性的に広げることができる。一実施形態では、ばね弾性変形可能なスライド部材はばね弾性的に圧縮可能である。したがって、少なくとも1つのスライド部材は、その瞬間的なラッチ位置に自動的にラッチする。したがって、外科用器具は、特に直感的に使用してもよい。
【0019】
さらなる実施形態では、第1の締結装置とガイド装置との間の相対移動性を固定するための固定状態と、固定が解除される、特に解放される解放状態との間で切り換え可能な固定装置が設けられる。好ましくは固定状態において、ガイド装置の可動性は固定装置によって固定される。有利には、このようにして、外科用器具によってアライメントされた切除カットの正確な実施を確実にすることができる。特に、固定装置は、第1締結装置に対するガイド装置の偶発的な移動によって、前に正確であったアライメントがずれてしまうことを防止することができる。
【0020】
さらなる実施形態では、固定装置は、ガイドトラックに対して平行に延びる歯列と、解放状態において、ガイドトラックに対して平行に歯列に対して調整可能に移動可能である係合装置とを備え、歯列はガイド装置に締結され、係合装置は第1の締結装置に、ガイドトラックに対して横断方向に少なくとも1つの方向に特に不動に、またはその逆に取り付けられる。このような固定装置は、特に堅牢であることが証明されている。
【0021】
さらなる実施形態では、係合装置は固定状態と解放状態とを切り替えるために、係合位置と解放位置との間でガイドトラックに対して横断方向に調整可能に移動可能な形状嵌合要素を備え、その係合位置にある形状嵌合要素は歯列に係合し、その解放位置にあるとき、そのような係合は解除される、特に解放される。このような固定装置により、ガイド装置の可動性を特に確実に固定することができる。特に、ガイド装置の偶発的な調整に対して十分に大きな抵抗がある。
【0022】
本発明のさらなる実施形態では、形状嵌合要素が歯列の少なくとも一部の領域に相補的に構成されている。これは、有利にはガイド装置の可動性の特に低公差の固定を可能にする。
【0023】
さらなる実施形態では、係合装置が形状嵌合要素を係合位置に付勢する付勢部材を備える。
したがって、係合要素は、手動でその解放位置に意図的に保持されない場合、その係合位置を自動的にとってもよい。したがって、基準パーツに対する以前のアライメントの後の外科用器具の偶発的な調整は相殺される。
【0024】
さらなる実施形態では、係合装置は歯車を備え、歯車は、ブロック可能かつ回転移動可能に取り付けられ、歯列に噛み合い、固定状態でブロックし、解放状態で回転移動可能である。したがって、有利には、ガイド装置の可動性を少なくともほぼ無段階に確立することができる。歯車は、摩擦嵌めおよび/または形状嵌合によってブロック可能であってもよい。摩擦嵌めブロッキングのために、例えば、歯車の軸方向取り付けは、歯車がその軸方向取り付けに摩擦嵌めによってクランプされるまで、締め付けられてもよい。形状嵌めブロックのために、例えば、径方向に調節可能であり、かつ歯車に対して回転的に堅固に取り付けられ、かつ歯車の歯と係合することができるブロック要素が提供されてもよい。
【0025】
さらなる実施形態では、係合装置は作動要素を備え、係合装置は、作動要素によって、解放状態と固定状態とを切り替えるために特に手動で係合装置を作動させることができる。したがって、外科用器具は、患者の解剖学的構造に特に直感的に適合させることができる。作動要素は、係合要素をその係合位置に保持する機構を備えてもよい。そのような機構は機能的に、かつその構造に関して、ボールペンチップの伸長および後退のための知られている機構に基づいていてもよい。したがって、外科医は、外科用器具を調整するときに作動要素を恒久的に押さえておく必要がない。したがって、外科医は、行われる切除カットのアライメントを行うために両手を利用可能である。
【0026】
さらなる実施形態では、少なくとも1つのスライド部材は特に円筒形のピンである。そのようなピンは製造するのが安価であり、および/または規格品として入手可能である。
【0027】
さらなる実施形態では、ガイドトラックが矢状ガイド平面内で弓型に延在する。有利には、第1締結装置およびガイド装置が互いに対して旋回可能に移動可能である。したがって、この実施形態における外科用器具の使用において、第1締結装置は、大腿骨または脛骨に取り付けられた基準パーツに解放可能に取り付けられる。脛骨または大腿骨基準パーツとして機能する脛骨または大腿骨切断ブロックは、第2締結装置に解放可能に締結される。基準パーツは、好ましくは大腿骨トライアル顆インプラントである。この場合、外科用器具は、KAの全ての大腿骨の第1の変形例における使用に特に適している。大腿骨切断ブロックまたは脛骨切断ブロックは、遠位大腿骨または近位脛骨などの切断ガイドのために使用されてもよい。ガイド装置は、第1締結装置に対する第2締結装置の案内された旋回運動を可能にする。したがって、外科用器具の使用時に、ガイド装置は、それぞれの基準パーツに対するそれぞれの切断ブロックに対応して案内された相対運動を可能にする。これにより、ガイド平面における切断ブロックの勾配を設定することができる。ガイド平面は、矢状にアライメントされ、したがって、前後方向および近位遠位方向に延在する。好ましくは、そのまわりに2つの締結装置がガイド装置によって互いに対して旋回可能に案内される旋回軸が矢状ガイド平面において機械的脛骨軸と交差する。前記勾配は、後方又は前方の勾配としても記載される。切断ブロックの勾配を設定する能力は、まず、術前に確立されたパラメータへの適合を可能にする。第2に、脚の屈曲または伸展は、ガイド装置の可動性によって考慮され、補償されてもよい。したがって、勾配の設定が同時に、切断ブロックの近位遠位方向における位置の望ましくない変化、したがって、いわゆる切断高さをもたらさないことが保証され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明のさらなる利点および特徴は特許請求の範囲から、および図面に示される本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の説明から、続く。
【0029】
上記の特徴および以下に説明される特徴は、明示的に記載された組み合わせだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせまたは単独で使用されてもよいことが理解される。
【0030】
【
図1】本発明による外科用器具の実施形態の概略斜視図。
【0031】
【0032】
【0033】
【
図4】
図1から
図3までの外科用器具を、一部が分解された状態で詳細を示す概略斜視図。
【0034】
【
図5】
図1から
図4までの外科用器具の第1締結装置の概略斜視図。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【
図9】
図1から
図4までの外科用器具のキャリア要素の概略斜視図。
【0039】
【
図10】
図9の図に対して回転された、
図9からのハンドル要素の概略斜視図。
【0040】
【
図11】本発明による外科用器具のさらなる実施形態の概略斜視図。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【
図15】
図11から14の外科用器具の断面線B-Bに沿った概略断面図。
【0045】
【0046】
【
図17】
図11から16の外科用器具の係合装置の概略斜視図。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1から
図4による外科用器具1は、全膝関節形成術に使用するために提供される。外科用器具1はまた、近位脛骨(図示せず)上の脛骨切断ブロック(図示せず)の参照された位置決めに役立つ脛骨移送ツールとして記載されてもよい。遠位大腿骨上にすでに配置された基準パーツ(同じく図示せず)は、脛骨切断ブロックの位置のための基準として働く。外科用器具1は、いわゆる全大腿骨第1アプローチに従う全膝関節形成術に特に適している。このアプローチでは、まず、全ての必要な大腿骨切除カットを行う。遠位大腿骨の切除後、大腿骨トライアル顆インプラントが、遠位に切除された大腿骨に取り付けられ、トライアル顆インプラントは、外科用器具1のための大腿骨基準パーツとして機能する。外科用器具1によって、すでに患者の解剖学的構造に適合されたトライアル顆インプラントのアライメントを、そこで正確なアライメントで少なくとも1つの切除カットを行うために近位脛骨に移行することができる。大腿骨トライアル顆インプラントの代替として、外科医が全大腿骨ファースト以外のアプローチに従う場合、いわゆる大腿骨切断ブロックを基準パーツとして使用してもよい。以上は、
図11から
図16に係る外科用器具1’についても同様である。
【0052】
大腿骨基準パーツは、外科用器具1、1’の一部ではない。
【0053】
外科用器具1、1’は、第1締結装置100、100’を備える。第1締結装置100、100’は、大腿骨基準パーツに解放可能に締結するように構成される。原則として、第1締結装置100、100’は代替的にまたは追加的に、脛骨基準パーツに解放可能に締結するように構成されてもよい。外科用器具1、1’は、ガイド装置300、300’を備える。ガイド装置300、300’は、最初に第1締結装置100、100’に解放可能に結合される。第2に、ガイド装置300、300’は単に
図1に例として示される第2締結装置200に結合されてもよい。ガイド装置300、300’は矢状ガイド平面E内で第1締結装置100、100’と第2締結装置200との間でガイドされた相対移動を可能にする。第2締結装置200は脛骨パーツに解放可能に締結するように構成される。第2締結装置200は代替的に又は追加的に、原則として、大腿骨パーツに解放可能に締結するように構成されてもよいことが理解される。換言すれば、脛骨基準パーツは大腿骨パーツと共に使用され、大腿骨基準パーツは脛骨パーツと共に使用される。
【0054】
第2締結装置200も脛骨パーツも、外科用器具1、1’の一部ではない。
【0055】
ガイド装置300、300’は、スライドガイド301、301’を備える。スライドガイド301、301’は少なくともガイドトラックCに沿って長手方向に延在する少なくとも1つのガイドスロット302、302’を有する。ガイドトラックCはガイド平面E内にまたはそれに平行に伸びる。スライドガイド301、301’は、ガイドスロット302、302’に受容される少なくとも1つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’をさらに備え、ガイドトラックCに沿ってスライド移動可能である。第1締結装置100、100’はガイドトラックCに対して直角に延在する少なくとも1つのプッシュフィット受容部101、101’を有する。この少なくとも1つのプッシュフィット受容部101、101’を介して、少なくとも1つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’を少なくとも1つのガイドスロット302、302’に導入することができ、第1締結装置100、100’と解除可能なプッシュフィット接続400、400’を形成する。プッシュフィット接続400、400’は、第1締結装置100、100’をガイド装置300、300’に結合するのに役立つ。したがって、スライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’は二重機能を有し、第1に、解放可能なプッシュフィット接続400、400’を形成し、第2に、ガイドスロット302、302’内で案内する。この場合、外科用器具1、1’は、2つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’を有する。2つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’は例えば、ガイドトラックCに沿って互いに離間している。プッシュフィット受容部101、101’は、各スライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’に割り当てられてもよい。
【0056】
本例ではガイドトラックCは矢状ガイド平面E内で弓形に延びている。したがって、第1締結装置100、100’およびガイド装置300、300’はガイド平面E内で互いに対して旋回可能に移動可能である。第2締結装置200がガイド装置300、300’に取り付けられている場合、第1締結装置100、100’および第2締結装置200はガイド装置300、300’によってガイド平面E内で互いに対して旋回可能に案内される。
【0057】
図10は、スライド部材303、303a、303bがそれぞれ、スライド部304およびプッシュフィット部305を有することを示す。この場合、スライド部材303、303a、303bは、したがって、スライド部304とプッシュフィット部305との間でガイドトラックCを横断して延在する。スライド部材303’、303a’、303b’についても同様である。ガイドトラックCに沿ってスライド移動可能に案内するために、スライド部304は、ガイドスロット302、302’に係合する。プッシュフィット部305は、プッシュフィット受容部400、400’の関連する受容開口部401、401’内に解放可能に受容される。プッシュフィット部305は、関連する受容開口部401、401’に緊密に嵌合して解放可能に受容されてもよい。プッシュフィット部305は、締まり嵌めで、関連する受容開口部401、401’内に受容されてもよい。
【0058】
外科用器具1、1’は、
図9および10に別々に示されるキャリア要素500、500’を備える。少なくとも1つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’は、キャリア要素500、500’に取り付けられる。この場合、スライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’の両方が、キャリア要素500、500’に取り付けられる。少なくとも1つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’の締結は、物質結合および/または摩擦嵌合および/または形状嵌合によって達成されてもよい。例えば、少なくとも1つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’は、キャリア要素500、500’の関連するボアに押し込まれてもよい。あるいはキャリア要素500、500’および少なくとも1つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’は互いに一体に形成されてもよい。この場合、キャリア要素500、500’は、スライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’の両方をガイドスロット302、302’および関連するプッシュフィット受容部101、101’から同時に取り外すことを可能にする。したがって、プッシュフィット接続400、400’は、ただ1つの動作で解放されてもよい。逆に、キャリア要素500、500’はプッシュフィット接続400、400’を形成するように、両方のスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’を同時に取り付けることを可能にしてもよいことが理解される。キャリア要素500、500’は、ベース本体501、501’を備える。キャリア要素500、500’はまた、ベース本体501、501’から突出するハンドル部502、502’を備える。本例ではハンドル部502、502’はベース本体501、501’からガイドトラックCに対して直角に突出する。この場合、ハンドル部502、502’は半リングとして形成される。ハンドル部502、502’を滑らないように把持するために、少なくとも1本の人間の指を半リングのハンドル部502、502’に受け入れることができる。この場合、キャリア要素500、500’は、取り付けられたスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’と共に内側に取り外すことができる。プッシュフィット接続400、400’を形成するための取り付けは、逆方向、すなわち外側方に行われることが理解される。
【0059】
図1から
図4による外科用器具1の実施形態では、スライドガイド301が孔列308を備える。本ケースでの孔列308は、ガイドスロット302上に存在する。孔列308は、ガイドトラックCを横切って延在するいくつかの孔307を備える。孔307が少なくとも1つのスライド部材303、303a、303がラッチ(係止)するのに役立つ。この場合、両方のスライド部材303、303a、303bが、孔307内にラッチしてもよい。この場合、孔307は、内側外側方向にその長手方向が延在する。孔307はガイドトラックCに沿って互いに離間している。この場合、孔307は互いに等距離である。孔307は、スライド部材303、303a、303bのいくつかのラッチ位置を確立する。孔307間の距離は、それらの広がり軸に関連する。したがって、この場合のように、孔307は、半径方向に交差する孔として形成されてもよい。代替的に、孔307は、径方向又は接線方向に互いに接触する孔として、又は互いに接触しない孔として構成されてもよいことが理解される。ガイドスロット302、および代替的にまたは追加的に、少なくとも1つのスライド部材303、303a、303bは、この場合、戻り力に抗してばね弾性変形可能である。ここで、少なくとも1つのスライド部材303、303a、303bは、戻り力の手段によって、その瞬間的なラッチ位置に保持される。したがって、スライド部材303、303a、303bをその瞬間的なラッチ位置からガイドトラックCに沿って次のラッチ位置に調整するために、戻り力は一時的に克服されなければならない。
【0060】
図11から
図16による実施形態では、外科用器具1’は固定装置600を有する。固定装置600は、固定状態と解放状態との間で切り替えることができる。固定状態は、第1締結装置100’をガイド装置300’に対して固定するのに役立つ。解放状態では、この固定はなくなるか、解放される。これは、形状嵌めおよび/または力嵌め固定であってもよい。固定状態では、ガイド装置300’の可動性が固定装置600を介して固定される。固定装置600は、歯列601と、係合装置602とを備える。歯列601は、ガイドトラックCと平行に延びている。歯列601の歯及び歯間がガイドトラックと平行な線に交互に配置されている。解放状態では、係合装置602がガイドトラックCに平行な歯列601に対して移動可能である。歯列601はガイド装置300’に取り付けられている。係合装置602は、第1締結装置100’に取り付けられている。係合装置602は少なくとも一方向に、本ケースでは、内側外側方向および近位遠位方向の両方において不動状態でガイドトラックCに対して横断する方向に取り付けられている。本ケースでの係合装置602は、前後方向に直線的に移動可能に取り付けられている。逆に、代替的に、係合装置602は第1締結装置100’上のガイド装置303および歯列601上に取り付けられてもよいことが理解されるが、これは図には示されていない。係合装置602は、形状嵌合要素603を備える。形状嵌合要素603は固定状態と解放状態とを切り替えるために、係合位置と解放位置との間でガイドトラックCに対して横断する方向に調整可能である。係合位置において、形状嵌合要素603は、歯列601に係合する。逆に、解放位置では、このような係合が解除される、すなわち解放される。形状嵌合要素603は、歯列601の少なくとも一部の領域と相補的に形成されてもよい。この場合、形状嵌合要素602は、歯601の一部の領域に相補的な歯を有する。
図11から
図21によれば、2つの歯列601が互いに平行に配置され、それぞれが形状嵌合要素603を有する関連する係合装置602とともに互いに平行に配置される。
【0061】
係合装置602は形状嵌合要素603をその係合位置に付勢するための、すなわち、ばね力を生成するための付勢部材604を備える(
図15参照)。したがって、形状嵌合要素603を解放位置に移動させるために、ばね力を克服しなくてはいけない。この場合のように、係合装置602は、ブロック可能かつ回転移動可能であるように取り付けられた歯車605を備えてもよい。歯車605は、歯列601と噛み合う。固定状態では、歯車605はブロックされている。逆に、解放状態では、歯車605が歯列601に対して回転移動可能である。ブロック可能な歯車605の代替として、またはそれに加えて、ガイド装置300’と第1締結装置100’との相対的な案内を支持する働きをするブロック不可能歯車(図示せず)が設けられてもよい。この場合、係合装置602は、作動要素606をさらに備える。作動要素606を介して、係合装置602は解放状態と固定状態との間で切り換えるために、例えば手動で作動させることができる。この場合、作動要素606は、押しボタンのように形成される。作動要素606に「ボールペン機構」を装備することが考えられる。そのような機構は、形状嵌合要素603がその係合位置に自動的に戻ることを防止する。それは、1回目は解放位置への調整のために、2回目は係合位置への復帰のために、およびその逆に作動されなければならない。
【0062】
この場合、少なくとも1つのスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’は、ピン306、306’によって形成される。本ケースでは、両方のスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’が、それぞれピン306、306’によって形成される。例えば、ピン306、306’は円筒形である。ピン306、306’は、その軸方向端部のうちの少なくとも1つに穴が開いていても、および/または、穴が開いていなくてもよい。本実施例のように、ピン形状のスライド部材303、303’、303a、303a’、303b、303b’が2つ設けられる場合、ピン306、306’のうちの1つは穴が開いており、1つは穴が開いていなくてもよい。ピン306、306’に穴が開いている場合、穴付きピン306、306’の外径は、ピン306、306’の残りの領域に対して、穴付き軸方向端部において拡大されていてもよい。したがって、ガイド装置300、300’の可動性を妨げることなく、ガイド装置300、300’上のその取り付け位置に穴付きピン306、306’を保持する締まり嵌めが提供されてもよい。
【0063】
外科用器具1および第2締結装置200は、外科用器具システム10の一部である。外科用器具システム10は、加えて、大腿骨基準パーツおよび/または脛骨パーツを備えてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全膝関節形成術に使用するための外科用器具(1、1’)であって、
大腿骨基準パーツに解放可能に締結するように構成された第1の締結装置(100、100’)と、
前記第1の締結装置(100、100’)に最初に解放可能に結合され、第2に、脛骨パーツに解放可能に締結するように構成された第2の締結装置(200)に結合可能であり、前記第1の締結装置(100、100’)と前記第2の締結装置(200)との間の矢状ガイド平面(E)内で案内される相対移動を可能にするガイド装置(300、300’)と、
を備えており、
前記ガイド装置(300、300’)は、ガイドトラック(C)に沿って長手方向に延びる少なくとも1つのガイドスロット(302、302’)を有するスライドガイド(301,301)と、前記ガイドトラック(C)に沿ってスライド可能であるように前記ガイドスロット(302、302’)に受容される少なくとも1つのスライド部材(303’、303a、303b、303b’)とを備えており、
前記第1の締結装置(100、100’)は前記ガイドトラック(C)に対して直角に延在する少なくとも1つのプッシュフィット受容部(101、101’)を有し、前記プッシュフィット受容部(101、101’)を介して、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が少なくとも1つの前記ガイドスロット(302、302’)内に導入され、前記第1の締結装置(100、100’)と解放可能なプッシュフィット接続(400、400’)を形成する、外科用器具(1、1’)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)は、スライド部(304)およびプッシュフィット部(305)を有し、
前記ガイドトラック(C)に沿ったスライド可能な案内のために、前記スライド部(304)は前記ガイドスロット(302、302’)に係合し、
前記プッシュフィット部(305)は、前記プッシュフィット受容部(101、101’)の関連した受容開口部(401、401’)に開放可能に受容される、請求項1に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項3】
2つのスライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が存在し、特に前記ガイドトラック(C)に沿って互いに離間していることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項4】
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)上にキャリア要素(500、500’)が存在し、前記少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が固定されることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項5】
前記キャリア要素(500、500’)は、
ベース本体(501、501’)と、
前記ベース本体(501、501’)から特に前記ガイドトラック(C)に対して直角に突出するハンドル部(502、502’)と、
を有することを特徴とする、請求項4に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項6】
前記スライドガイド(301)、特に前記ガイドスロット(302)は、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)をラッチするために、前記ガイドトラック(C)に対して軸方向に横断方向に延在するいくつかの孔(307)を有する孔列(308)を備え、
前記孔(307)は前記ガイドトラック(C)に沿って互いに離間し、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)のためのいくつかのラッチ位置を確立することを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項7】
前記ガイドスロット(302)および/または少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)は戻り力に対してばね弾性変形可能であり、
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)は、前記戻り力によって、その瞬間的なラッチ位置に保持されることを特徴とする、請求項6に記載の外科用器具(1)。
【請求項8】
前記第1の締結装置(100’)と前記ガイド装置(300’)との間の相対移動性を固定するための固定状態と、固定が解除される解放状態と、の間で切り換え可能な固定装置(600)が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1’)。
【請求項9】
前記固定装置(600)は、前記ガイドトラック(C)に対して平行に延びる歯列(601)と、前記解放状態において、前記ガイドトラック(C)に対して平行で前記歯列(601)に対して調整可能に移動可能である係合装置(602)と、を備え、
前記歯列(601)は、前記ガイド装置(300’)に締結され、
前記係合装置(602)は、前記第1の締結装置(100’)に、前記ガイドトラック(C)に対して横断方向に少なくとも1つの方向に特に不動に、または、その逆で取り付けられることを特徴とする、請求項8に記載の外科用器具(1’)。
【請求項10】
前記係合装置(602)は、前記固定状態と前記解放状態とを切り替えるために、係合位置と解放位置との間で前記ガイドトラック(C)に対して横断方向に調整可能に移動可能な形状嵌合要素(603)を備え、
その係合位置にある前記形状嵌合要素(603)は、前記歯列(601)に係合し、
その解放位置にあるとき、そのような係合は解除される、ことを特徴とする、請求項9に記載の外科用器具(1’)。
【請求項11】
前記係合装置(602)は、前記形状嵌合要素(603)を前記係合位置に付勢する付勢部材(604)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の外科用器具(1’)。
【請求項12】
前記係合装置(602)は、歯車(605)を備え、
前記歯車(605)は、ブロック可能かつ回転移動可能に取り付けられ、
前記歯列(601)に噛み合い、前記固定状態でブロックし、前記解放状態で回転移動可能であることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の外科用器具(1’)。
【請求項13】
前記係合装置(602)は、作動要素(606)を備え、
前記係合装置(602)は、前記作動要素(606)によって、前記解放状態と前記固定状態とを切り替えるために、特に手動で、前記係合装置(602)を作動させることができることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の外科用器具(1’)。
【請求項14】
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が、特に円筒形のピン(306、306’)であることを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1、1’)。
【請求項15】
前記ガイドトラック(C)が、前記矢状ガイド平面(E)内で弓形に延在することを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具(1、1’)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
外科用器具1および第2締結装置200は、外科用器具システム10の一部である。外科用器具システム10は、加えて、大腿骨基準パーツおよび/または脛骨パーツを備えてもよい。
以下、本明細書で開示する技術の特徴を列挙する。
(項目1)
全膝関節形成術に使用するための外科用器具(1、1’)であって、
大腿骨基準パーツに解放可能に締結するように構成された第1の締結装置(100、100’)と、
前記第1の締結装置(100、100’)に最初に解放可能に結合され、第2に、脛骨パーツに解放可能に締結するように構成された第2の締結装置(200)に結合可能であり、前記第1の締結装置(100、100’)と前記第2の締結装置(300、300’)との間の矢状ガイド平面(E)内で案内される相対移動を可能にするガイド装置(300、300’)と、
を備えており、
前記ガイド装置(300、300’)は、ガイドトラック(C)に沿って長手方向に延びる少なくとも1つのガイドスロット(302、302’)を有するスライドガイド(301,301)と、前記ガイドトラック(C)に沿ってスライド可能であるように前記ガイドスロット(302、302’)に受容される少なくとも1つのスライド部材(303’、303a、303b、303b’)とを備えており、
前記第1の締結装置(100、100’)は前記ガイドトラック(C)に対して直角に延在する少なくとも1つのプッシュフィット受容部(101、101’)を有し、前記プッシュフィット受容部(101、101’)を介して、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が少なくとも1つの前記ガイドスロット(302、302’)内に導入され、前記第1の締結装置(100、100’)と解放可能なプッシュフィット接続(400、400’)を形成する、外科用器具(1、1’)。
(項目2)
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)は、スライド部(304)およびプッシュフィット部(305)を有し、
前記ガイドトラック(C)に沿ったスライド可能な案内のために、前記スライド部(304)は前記ガイドスロット(302、302’)に係合し、
前記プッシュフィット部(305)は、前記プッシュフィット受容部(101、101’)の関連した受容開口部(401、401’)に開放可能に受容される、項目1に記載の外科用器具(1、1’)。
(項目3)
2つのスライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が存在し、特に前記ガイドトラック(C)に沿って互いに離間していることを特徴とする、項目1または2に記載の外科用器具(1、1’)。
(項目4)
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)上にキャリア要素(500、500’)が存在し、前記少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が固定されることを特徴とする、項目1から3のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1’)。
(項目5)
前記キャリア要素(500、500’)は、
ベース本体(501、501’)と、
前記ベース本体(501、501’)から特に前記ガイドトラック(C)に対して直角に突出するハンドル部(502、502’)と、
を有することを特徴とする、項目4に記載の外科用器具(1、1’)。
(項目6)
前記スライドガイド(301)、特に前記ガイドスロット(302)は、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)をラッチするために、前記ガイドトラック(C)に対して軸方向に横断方向に延在するいくつかの孔(307)を有する孔列(308)を備え、
前記孔(C)は前記ガイドトラック(C)に沿って互いに離間し、少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)のためのいくつかのラッチ位置を確立することを特徴とする、項目1から5のいずれか一項に記載の外科用器具(1)。
(項目7)
前記ガイドスロット(302)および/または少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)は戻り力に対してばね弾性変形可能であり、
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303a、303b)は、前記戻り力によって、その瞬間的なラッチ位置に保持されることを特徴とする、項目6に記載の外科用器具(1)。
(項目8)
前記第1の締結装置(100’)と前記ガイド装置(300’)との間の相対移動性を固定するための固定状態と、固定が解除される解放状態と、の間で切り換え可能な固定装置(600)が設けられることを特徴とする、項目1から7のいずれか一項に記載の外科用器具(1’)。
(項目9)
前記固定装置(300)は、前記ガイドトラック(C)に対して平行に延びる歯列(601)と、前記解放状態において、前記ガイドトラック(C)に対して平行で前記歯列(601)に対して調整可能に移動可能である係合装置(602)と、を備え、
前記歯列(601)は、前記ガイド装置(300’)に締結され、
前記係合装置(602)は、前記第1の締結装置(100’)に、前記ガイドトラック(C)に対して横断方向に少なくとも1つの方向に特に不動に、または、その逆で取り付けられることを特徴とする、項目8に記載の外科用器具(1’)。
(項目10)
前記係合装置(602)は、前記固定状態と前記解放状態とを切り替えるために、係合位置と解放位置との間で前記ガイドトラック(C)に対して横断方向に調整可能に移動可能な形状嵌合要素(603)を備え、
その係合位置にある前記形状嵌合要素(603)は、前記歯列(601)に係合し、
その解放位置にあるとき、そのような係合は解除される、ことを特徴とする、項目9に記載の外科用器具(1’)。
(項目11)
前記係合装置(602)は、前記形状嵌合要素(603)を前記係合位置に付勢する付勢部材(604)を備えることを特徴とする、項目10に記載の外科用器具(1’)。
(項目12)
前記係合装置(602)は、歯車(605)を備え、
前記歯車(605)は、ブロック可能かつ回転移動可能に取り付けられ、
前記歯列(601)に噛み合い、前記固定状態でブロックし、前記解放状態で回転移動可能であることを特徴とする、項目9から11のいずれか一項に記載の外科用器具(1’)。
(項目13)
前記係合装置(602)は、作動要素(606)を備え、
前記係合装置(602)は、前記作動要素(606)によって、前記解放状態と前記固定状態とを切り替えるために、特に手動で、前記係合装置(602)を作動させることができることを特徴とする、項目9から12のいずれか一項に記載の外科用器具(1’)。
(項目14)
少なくとも1つの前記スライド部材(303、303’、303a、303a、303b、303b’)が、特に円筒形のピン(306、306’)であることを特徴とする、項目1から13のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1’)。
(項目15)
前記ガイドトラック(C)が、前記矢状ガイド平面(E)内で弓形に延在することを特徴とする、項目1から14のいずれか一項に記載の外科用器具(1、1’)。
【外国語明細書】