(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159936
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/172 20060101AFI20241031BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20241031BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61M5/172
A61M5/145 508
A61M5/168 506
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147595
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2023103859の分割
【原出願日】2019-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2018124918
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518234173
【氏名又は名称】株式会社サーキュラス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
(72)【発明者】
【氏名】吹越 由美子
(57)【要約】
【課題】薬液注入回路において、常に薬液の供給経路の上流側の圧力を下流側の圧力より高くする必要がある。
【解決手段】薬液注入管路において、共通管路部内にまで至る被検者の体液の逆流を防止することが求められる。薬液注入器から取替管路部へと薬液を流す共通管路部と、薬液注入器を制御する制御装置と、取替管路内または取替管路と共通管路部との境界部の管路に配置され、制御装置より指令を受けることにより、薬液の流れを許容する開状態と、薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能な流れ遮断ユニットとを備える薬液注入装置により解決する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を被検者に注入するための薬液注入装置であって、
開口を有する前記薬液の薬液源と、前記開口から前記薬液の吐出を行なう薬液供給手段とを備える薬液注入器と、
前記薬液供給手段の駆動を制御する制御装置と、
前記制御装置より指令を受けることにより、前記薬液の流れを許容する開状態と、前記薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能な流れ遮断ユニットとを備え、
前記制御装置は、前記薬液注入器から薬液の供給を開始した後に所定時間が経過した際に、前記流れ遮断ユニットを前記薬液の流れを許容する前記開状態とする前記指令を前記流れ遮断ユニットに送る薬液注入装置。
【請求項2】
薬液を被検者に注入するための薬液注入装置であって、
開口を有する前記薬液の薬液源と、前記開口から前記薬液の吐出を行なう薬液供給手段とを備える薬液注入器と、
前記薬液供給手段の駆動を制御する制御装置と、
前記制御装置より指令を受けることにより、前記薬液の流れを許容する開状態と、前記薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能な流れ遮断ユニットと、
前記流れ遮断ユニットが取り付けられているチューブと、を備え、
前記薬液注入器は、前記薬液を加圧し、前記チューブにおける前記流れ遮断ユニットの上流側の圧力が高くなるように、前記流れ遮断ユニットに対して上流側に設けられており、
前記制御装置は、前記薬液注入器から薬液の供給の完了した後に所定時間が経過した際に、前記薬液の流れを遮断する閉状態とする前記指令を前記流れ遮断ユニットに送る薬液注入装置。
【請求項3】
請求項1に記載の薬液注入装置であって、
前記所定時間は、前記流れ遮断ユニットを前記薬液の流れを遮断する閉状態とした状態で前記流れ遮断ユニットの上流側の圧力が高くなるように所定の圧力を付加する時間である薬液注入装置。
【請求項4】
請求項2に記載の薬液注入装置であって、
前記所定時間は、前記薬液注入器から薬液の供給の完了と同時または前記流れ遮断ユニットを前記薬液の流れを遮断する閉状態とした状態で前記流れ遮断ユニットの上流側の圧力が高い状態が確保された一定の時間である薬液注入装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の薬液注入装置であって、
前記被検者の血管へと前記薬液を供給する取替管路部と、
前記薬液源の前記開口と接続され前記薬液を前記薬液注入器から前記取替管路部へと流す共通管路部と、を備え、
前記流れ遮断ユニットは、前記取替管路部内または前記取替管路部と前記共通管路部との境界部の管路に配置される薬液注入装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の薬液注入装置であって、
前記被検者の血管へと前記薬液を供給する取替管路部と、
前記薬液源の前記開口と接続され前記薬液を前記薬液注入器から前記取替管路部へと流す共通管路部と、を備え、
前記流れ遮断ユニットは、前記取替管路部を構成する管または前記共通管路部を構成する管を挟む部材により前記薬液の流れを遮断する閉状態を有する薬液注入装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の薬液注入装置であって、
前記流れ遮断ユニットは遮断バルブである薬液注入装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記薬液注入器の前記薬液源は、外筒と、前記外筒の中に挿入されて前記外筒に対して移動して前記薬液を前記開口から押し出すように前記薬液を押圧可能なピストンとを備えるシリンジであって、
前記薬液注入器の前記薬液供給手段は、前記薬液の前記吐出のための押圧力を前記ピストンに付与する駆動モータである薬液注入装置。
【請求項9】
請求項1に記載の薬液注入装置であって、
前記所定時間は、前記流れ遮断ユニットが取り付けられているチューブ内の圧力が所定の圧力まで高くなるように予め設定されている薬液注入装置。
【請求項10】
請求項2に記載の薬液注入装置であって、
前記所定時間は、前記チューブ内の圧力が所定の圧力以上に確保される時間範囲内で予め設定されている薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者に薬液を注入するための流路を閉鎖する薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の画像診断検査方法として、コンピュータ断層診断装置(CT装置)による方法と、核磁気共鳴装置(MRI装置)による方法、血管造影撮像装置(アンギオグラフィ)による方法などがある。一般に、このような装置を使用する際には、患者等の被検者に、造影剤と生理食塩水との二液(以下、「薬液」とよぶ)を所定のプロセスで注入する。本発明の薬液注入装置は、これらの画像診断装置において、被検者に薬液を注入する装置である。
【0003】
造影剤は、たとえば、特許文献1に開示されている装置のように、薬液注入装置に装着されたシリンジから被検者に注入される。特許文献1では、造影剤と生理食塩水との2系統のシリンジから薬液を被検者に所定のタイミングで切り替えながら注入する点が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、可撓性チューブを押し潰して薬液を供給する流路の所定の箇所を閉塞するクランピング機構が開示されている。このクランピング機構は、所定の薬液を所定の手順で注入可能とするようにクランプ部材で可撓性チューブを押し潰す。
【0005】
このような薬液注入装置内における薬液注入管路は、衛生上の要求から被検者ごとに交換される取替管路部と、コスト上の問題から複数の被検者に共通的に使用される共通管路部とを有している。取替管路部と、共通管路部とは、所定の箇所のジョイントで着脱可能に接続可能である。前者はニードルまたはカテーテルなど被検者の血管内に導入される穿刺部材とその穿刺部材に接続される被検者側に配置されるチューブからなる管路であり、衛生上の要求から被検者ごとに短サイクルで交換が必要となる管路である。一方、後者はシリンジや薬液源等を含む薬液注入器等の高精度機器の側に配置されるチューブからなる管路であり、コスト上の観点から長サイクルでの交換が適している管路である。
【0006】
薬液注入管路内においては、薬液の供給経路の下流にあたる被検者の血液等の体液が薬液管路の上流へと逆流する可能性がある。もしも、任意の被検者の体液取替管路部を超えて共通管路部まで逆流すれば、次の被検者の薬液の注入にあたって、取替管路部のみの交換で済むところが、共通管路部まで交換が必要となる。そうすると、共通管路部は、長サイクルでの交換を目的としているにも拘わらず、結果的に短サイクルでの交換が必要となり、共通管路部を配置する目的を失ってしまう。そのため、あくまでも逆流を取替管路部内に留めて、共通管路部にまで至る被検者の体液の逆流を防止することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-065736号公報
【特許文献2】国際公開第2014/104338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、液体のように非圧縮性流体の流れは、圧力の高い側から低い側に流れるため、管路の上流側の圧力を下流側よりも高く保つことで逆流を防止することができる。したがって、薬液注入回路においても、常に薬液の供給経路の上流側の圧力を下流側の圧力より高くすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
薬液を被検者に注入するための薬液注入装置であって、開口を有する前記薬液の薬液源と、前記開口から前記薬液の吐出を行なう薬液供給手段とを備える薬液注入器と、前記被検者の血管へと前記薬液を供給する取替管路部と、前記薬液源の前記開口と接続され前記薬液を前記薬液注入器から前記取替管路部へと前記薬液を流す共通管路部と、前記薬液供給手段と有線または無線により電気的に接続されて前記薬液供給手段の駆動を制御する制御装置と、前記取替管路部内または前記取替管路部と前記共通管路部との境界部の管路に配置され、前記制御装置と有線または無線により電気的に接続される前記薬液供給手段が前記制御装置より指令を受けることにより、前記薬液の流れを許容する開状態と、前記薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能な流れ遮断ユニットとを備え、前記制御装置は、前記薬液注入器から薬液の供給を開始した後に第1所定時間が経過した際に、前記流れ遮断ユニットを前記薬液の流れを許容する前記開状態とし、前記薬液注入器から薬液の供給の完了した後に第2所定時間が経過した際に、前記薬液の流れを遮断する閉状態とする前記指令を前記流れ遮断ユニットに送る薬液注入装置により解決する。
【0010】
薬液を被検者に注入するための薬液注入装置であって、開口を有する前記薬液の薬液源と、前記開口から前記薬液の吐出を行なう薬液供給手段とを備える薬液注入器と、前記被検者の血管へと前記薬液を供給する取替管路部と、前記薬液源の前記開口と接続され前記薬液を前記薬液注入器から前記取替管路部へと前記薬液を流す共通管路部と、前記薬液供給手段と有線または無線により電気的に接続されて前記薬液供給手段の駆動を制御する制御装置と、前記取替管路部内または前記取替管路部と前記共通管路部との境界部の管路に配置され、前記制御装置と有線または無線により電気的に接続される前記薬液供給手段が前記制御装置より指令を受けることにより、前記薬液の流れを許容する開状態と、前記薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能な流れ遮断ユニットとを備え、前記制御装置は、前記共通管路部内の圧力が前記被検者の血管内圧力よりも高い所定の圧力に到達した際に前記薬液の流れを許容する前記開状態とし、前記所定の圧力よりも低くなった際には前記薬液の流れを遮断する閉状態とする前記指令を前記流れ遮断ユニットに送る薬液注入装置により解決する。
【発明の効果】
【0011】
これにより、薬液注入管路において、取替管路部を超えて共通管路部内にまで至る被検者の体液の逆流を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一の実施の形態の第1実施例の薬液注入装置の概略図である。
【
図2A】本発明の流れ遮断ユニットの一例を示した図である。
【
図2B】本発明の流れ遮断ユニットの他の例を示した図である。
【
図3A】本発明の薬液注入管路内の圧力の変遷の履歴を示した概略図である。
【
図3B】本発明の薬液注入装置の薬液注入プロセスのフローチャートを示した図である。
【
図4】本発明の薬液注入管路内の圧力を測定する方法の一例を示した図である。
【
図5】本発明の一の実施の形態の第2実施例の薬液注入装置の概略図である。
【
図6】本発明の一の実施の形態の第3実施例の薬液注入装置の概略図である。
【
図7A】本発明の第3実施例の薬液注入装置の加圧体の一例の概略図である。
【
図7B】本発明の第3実施例の薬液注入装置の加圧体の別の一例の概略図である。
【
図8】本発明の一の実施の形態の第4実施例の薬液注入装置の概略図である。
【
図9】本発明の第4実施例の薬液注入装置のローラポンプの機能概略図である。
【
図10】本発明の薬液注入装置の他の実施の形態の薬液再充填シーケンスのフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態において説明する。寸法、材料、形状および構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成または様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明は薬液を被検者に注入するための薬液注入装置である。薬液注入装置は、薬液注入器と、取替管路部と、共通管路部と、制御装置と、流れ遮断ユニットとを備える。薬液注入器は、開口を有する薬液源であって内部に薬液を保持し、薬液供給手段により、開口から薬液の吐出を行なう。取替管路部は、ニードルまたはカテーテルなどの被検者の血管に導入される穿刺部材に接続された、たとえばチューブ状の管路であって、チューブの内部を薬液が流れる。この部分は、患者ごとに取り替えるように短サイクルでの交換を前提に使用される。薬液注入器と取替管路部との間には、共通管路部が接続される。共通管路部は患者ごとに取り替えられることなく、長サイクルでの交換を前提としている。共通管路部は、薬液源の開口と接続されるとともに、薬液を薬液注入器から取替管路部へと流す、たとえばチューブ状の管路である。制御装置は、薬液供給手段と有線または無線により電気的に接続されて、薬液供給手段の駆動を制御するように、薬液供給手段に指令を送る。
【0015】
流れ遮断ユニットは、取替管路部内または取替管路部と共通管路部との境界部の管路に配置される。流れ遮断ユニットは、制御装置と、有線または無線により電気的に接続される。流れ遮断ユニットは、薬液供給手段が制御装置からの指令を受けることにより、薬液の流れを許容する開状態と、薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能である。そして、制御装置は、前記共通管路部内の圧力が前記被検者の血管内圧力よりも高い所定の圧力に到達した際に前記薬液の流れを許容するように、流れ遮断ユニットを開状態とするように流れ遮断ユニットに指令を送る。一方、制御装置は、共通管路部内の圧力が被検者の血管内圧力よりも高い所定の圧力よりも低くなった際には、薬液の流れを遮断する閉状態とするように流れ遮断ユニットに指令を送る。
【0016】
薬液注入器としては、上流側から薬液を加圧するタイプと、下流側を減圧して薬液を圧送するタイプが適用可能である。上流側から薬液を加圧するタイプとしては、シリンジのタイプ、薬液を保持した容器の内部を加圧して薬液の吐出を行なう加圧装置を薬液供給手段として使用したタイプと、薬液を保持した容器の外部を押圧することにより容器の内部を加圧して薬液の吐出を行なう加圧装置を薬液供給手段として使用したタイプに適用できる。シリンジのタイプでは、薬液を保持する外筒と、外筒の中に挿入されるピストンで薬液を押圧するような押圧力を付与する駆動モータを薬液供給手段として使用したタイプとして適用できる。下流側を減圧して薬液を圧送するタイプでは、押圧部により共通管路部の管路の少なくとも2箇所を押圧し、その管路の狭窄部の間に薬液が入った区画を作って、その区画内の薬液を薬液供給手段により、上流側である薬液源の側から下流側である被検者の側へと押しながら移動させるタイプに使用が可能である。
【0017】
流れ遮断ユニットとしては、取替管路部内または取替管路部と共通管路部との境界部の管路を挟む部材により薬液の流れを遮断するタイプと、その管路内に配置される遮断バルブを使用するタイプに使用が可能である。
【0018】
遮断バルブを遮断するための所定の圧力を判定する方法としては、薬液注入器内の圧力ないしは、取替管路部と共通管路部との少なくとも一方における管路内の圧力を圧力センサで直接測定することが考えられる。また、薬液の注入時にわざわざ圧力センサを配置して直接測定することは薬液注入装置の使用上不便な側面があるので、間接的に管路内の圧力を推定する手法もとることができる。たとえば、シリンジを使用するタイプでは、駆動モータを駆動させる際に駆動モータに入力される電気信号の値に応じて所定の圧力を判定することも可能であるし、駆動モータとピストンとの間に押圧力検出器を備え、押圧力検出器の出力する電気信号に応じて、所定の圧力を判定することも可能である。
続いて、この実施の形態について、以下、それぞれの具体的な実施例として説明する。
【0019】
(第1実施例)
以下、まず本願発明の第1実施例について
図1から
図4を参照して説明する。第1実施例は、実施の形態のうち、シリンジを採用したタイプである。
図1は、第1実施例の薬液注入装置1aの全体構成図を示している。薬液注入装置1aは、取替管路部10と、薬液注入器20と、共通管路部30と、制御装置40と、を備えている。取替管路部10と、共通管路部30とが薬液注入管路を形成し、取替管路部10は被検者ごとに交換され、一方共通管路部30は複数の被検者に共通的に使用されるものである。取替管路部10は被検者の体液が逆流する可能性がある管路の領域であり、共通管路部30は被検者の体液が逆流しない領域として区別して定義する。薬液注入装置1aでは、薬液注入器20から供給された薬液が、薬液注入管路である共通管路部30にまず流れ込み、共通管路部30から取替管路部10へと流れるように構成される。
【0020】
取替管路部10は、薬液注入管路のうち、共通管路部30の下流であって、被検者側のラインである。取替管路部10は、下流の端部に、ニードルやカテーテルなど被検者の血管内に穿刺ないし導入されて薬液を被検者に注入する内部が管状で薬液が流れる穿刺部材11に接続可能な注入チューブ12を有している。一方、上流の端部には、第1供給チューブ16と第2供給チューブ17との二股に分岐している。第1供給チューブ16と第2供給チューブ17とは、ミキシングデバイス15の入力側にそれぞれ接続されていて、ミキシングデバイス15の出力側には混合供給チューブ18が接続されている。ミキシングデバイス15が接続される側と反対側の第1供給チューブ16と第2供給チューブ17とには、それぞれ第1接続ジョイント16aと第2接続ジョイント17aとが接続されている。第1供給チューブ16からの薬液と第2供給チューブ17からの薬液とがミキシングデバイス15で混合されて、混合供給チューブ18に流れこむ。第1供給チューブ16も第2供給チューブ17も混合供給チューブ18も可撓性チューブでできている。注入チューブ12は、コネクター12aで混合供給チューブ18と接続可能である。ミキシングデバイス15の代わりに、T字コネクターを介して接続することもできる。
【0021】
取替管路部10は、混合供給チューブ18にT字コネクター13を有していて、T字コネクター13により、混合供給チューブ18から被検者の血圧や脈を検出するためにモニターライン19としての分枝している。モニターライン19の先端には圧力検出器14が接続可能なポートが配置され、被検者の血圧や脈を検出する。
【0022】
薬液注入器20は、開口を有する薬液の薬液源と、その薬液を加圧して開口から薬液を吐出する薬液供給手段とを備える。薬液注入器20は、代表的には、たとえば、薬液を充填したシリンジである。薬液注入器20をシリンジとした場合には、薬液注入器20は、薬液源として、薬液が充填可能な外筒と、その外筒の中に挿入されて外筒に対して移動して薬液を開口から押し出すように薬液を押圧可能なピストンとを有するシリンジとすることができる。この場合、薬液供給手段は、ピストンを押圧する駆動力を付与する駆動モータとすることができる。2つの薬液を被検者に注入する場合のシリンジの代表例として、以下、説明する。薬液注入器20は、第1薬液としての造影剤を供給するための第1シリンジ21と、第2薬液としての生理食塩水を供給するための第2シリンジ22とを備えている。第1シリンジ21は外筒21aを有し、その外筒21aの先端には第1薬液を吸引または吐出する開口21bを有し、開口21bの反対側の開口にはピストン21cが挿入されている。第2シリンジ22は外筒22aを有し、その外筒22aの先端には第2薬液を吸引または吐出する開口22bを有し、開口22bの反対側の開口にはピストン22cが挿入されている。
【0023】
薬液注入器20は、薬液供給手段として、シリンジのピストンの移動を喚起する駆動力を付与する駆動モータを具備する。駆動モータとして、本実施例では、第1モータ23と第2モータ24とを有している。第1シリンジ21と第2シリンジ22とは、交換可能とするために、第1モータ23とピストン21cと、第2モータ24とピストン22cとが直接連結することなく、第1モータ23は第1シリンジ21のピストン21cに押圧部材25を介して取り付けられていて、第2モータ24は第2シリンジ22のピストン22cに押圧部材26を介して取り付けられている。第1モータ23と第2モータ24により、第1シリンジ21のピストン21cと第2シリンジ22のピストン22cとが、押圧部材25と押圧部材26とを介して押されて、それぞれ前進または後退をする。第1シリンジ21のピストン21cが後退をする際には外筒21a内に第1薬液を吸引し、第1シリンジ21のピストン21cが前進する際には外筒21a内から第1薬液を吐出する。第2シリンジ22のピストン22cが後退をする際には外筒22a内に第2薬液を吸引し、第2シリンジ22のピストン22cが前進する際には外筒22a内から第2薬液を吐出する。
【0024】
第1モータ23と第2モータ24は、たとえば、代表的には直流モータ(DCモータ)である。薬液注入器20は、制御回路27を有していて、駆動モータたる第1モータ23と第2モータ24をパルス幅変調制御(PWM制御)により制御する。定電圧パルスのパルス幅とそのパルスのオン/オフのデューティを制御することにより、パルス幅と電圧オン/オフのデューティから決定される電力量が駆動モータに付加されることにより、駆動モータの回転角度と回転速度を制御できる。付加された電力量にしたがって第1モータ23と第2モータ24のそれぞれが所定の回転をおこなって、その回転角度および回転速度から押圧部材25と押圧部材26のそれぞれの前進速度、前進量、後退速度、後退量が決まる。これにより、第1シリンジ21のピストン21cおよび第2シリンジ22のピストン22cが外筒21aおよび外筒22aに対して、移動する。
【0025】
共通管路部30は、薬液注入管路のうち、取替管路部10の上流にあたる。共通管路部30は、第1薬液としての造影剤が流れる第1薬液ライン31と第2薬液としての生理食塩水が流れる第2薬液ライン32とを備えている。第1薬液ライン31は下流側端部が取替管路部10の第1接続ジョイント16aと着脱可能に接続されて、第1供給チューブ16と流体的に接続可能である。一方、第2薬液ライン32は下流側端部が取替管路部10の第2接続ジョイント17aと着脱可能に接続されて、第2供給チューブ17と流体的に接続可能である。第1接続ジョイント16aと第2接続ジョイント17aとが、取替管路部10と共通管路部30とを接合し、また分離する手段である。
【0026】
第1薬液ライン31の管路は途中でT字コネクター33によって分枝しており、分枝された管路の一方は第1シリンジ21の開口21bに接続され、他方は第1薬液が貯蔵されている第1薬液バッグ34に、第1薬液バルブ34aを介して接続されている。第1薬液バルブ34aを閉じれば第1薬液バッグ34と第1薬液ライン31とは隔絶され、第1薬液バルブ34aを開ければ第1薬液バッグ34と第1薬液ライン31とが連通する。同様に、第2薬液ライン32は途中でT字コネクター35によって分枝しており、一方は第2シリンジ22の開口22bに接続され、他方は第2薬液が貯蔵されている第2薬液バッグ36に第2薬液バルブ36aを介して接続されている。第2薬液バルブ36aを閉じれば第2薬液バッグ36と第2薬液ライン32とは隔絶され、第2薬液バルブ36aを開ければ第2薬液バッグ36と第2薬液ライン32とが連通する。第1薬液バルブ34aと第2薬液バルブ36aは開閉バルブでなく、それぞれ、第1薬液ライン31から第1薬液バッグ34への流れを防止した状態で第1薬液バッグ34から第1薬液ライン31への流れのみを、第2薬液ライン32から第2薬液バッグ36への流れを防止した状態で第2薬液バッグ36から第2薬液ライン32への流れのみを許容する一方向バルブとすることもできる。この場合、第1薬液バッグ34は、第1薬液バッグ34から第1薬液ライン31への流れのみが許容される状態で第1薬液ライン31と常に連通し、第2薬液バッグ36は第2薬液バッグ36から第2薬液ライン32への流れのみが許容される状態で第2薬液ライン32と常に連通する。第1薬液バッグ34への分枝部のT字コネクター33が位置する第1薬液ライン31の下流側と、第2薬液バッグ36への分岐部のT字コネクター35が位置する第2薬液ライン32の下流側、すなわち第1供給チューブ16および第2供給チューブ17または混合供給チューブ18を閉止することで、第1薬液バッグ34から第1シリンジ21へと第1薬液が流れる管路が、第2薬液バッグ36から第2シリンジ22へと第2薬液が流れる管路が形成される。
【0027】
制御装置40は、中央処理装置(CPU)41と、入力装置42と、表示装置43と、記憶装置44とを備えている。入力装置42により必要な情報を入力可能とし、ユーザは表示装置43に示されたとおりに、必要情報の入力が可能となる。入力された情報は記憶装置44に格納される。制御装置40は、有線または無線により電気的に薬液注入器20に接続されている。中央処理装置(CPU)41は、記憶装置44に格納されているプログラムと記憶装置に格納された情報に従って、薬液注入器20の制御回路27に指令をおこなう。この実施例では、薬液注入器20が制御回路27を有している例を示しているが、薬液注入器20が制御回路27を有していなくてもよい。この場合、制御装置40は、中央処理装置(CPU)41が制御回路27の機能を有し、中央処理装置(CPU)41が第1モータ23と第2モータ24に付加する電力量を制御してもよい。
【0028】
混合供給チューブ18には、流れ遮断ユニット5が取り付けられている。本実施例では流れ遮断ユニット5は取替管路部10内の混合供給チューブ18に取り付けられている例を示しているが、流れ遮断ユニット5は、取替管路部10内または取替管路部10と共通管路部30との境界部、すなわち共通管路部30に至るまでの取替管路部10内に配置されればよい。たとえば、取替管路部10と共通管路部30との境界部となる第1接続ジョイント16aと第2接続ジョイント17aに流れ遮断ユニット5を配置してもよい。流れ遮断ユニット5より下流が取替管路部10として被検者の体液が逆流する可能性がある管路の領域となり、共通管路部30は被検者の体液が逆流しない領域として流れ遮断ユニット5より上流に位置する。すなわち、
図1では、例として、流れ遮断ユニット5はミキシングデバイス15の下流に位置するものとして説明しているが、流れ遮断ユニット5とミキシングデバイス15との位置関係は問わない。流れ遮断ユニット5は、駆動手段6の駆動力により、混合供給チューブ18の前後での混合供給チューブ18内の薬液の流れを許容する開状態と、混合供給チューブ18の前後での混合供給チューブ18内の薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能である。流れ遮断ユニット5は、混合供給チューブ18の前後での混合供給チューブ18内の薬液の流れを許容する開状態と、混合供給チューブ18の前後での混合供給チューブ18内の薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能である限り、その形態は問わない。流れ遮断ユニット5が閉状態にあるときには、流れ遮断ユニット5により流れ遮断ユニット5の上流の管路と下流の管路の流れは隔絶され、流れ遮断ユニット5の上流に流れ遮断ユニット5より下流の流れが逆流することはない。駆動手段6は制御装置40と有線または無線により電気的に接続され、制御装置40は、中央処理装置(CPU)41からの指令で、流れ遮断ユニット5を開状態と閉状態とにすることが可能である。流れ遮断ユニット5は、たとえば、以下のような形態とすることが可能である。
【0029】
流れ遮断ユニット5は、たとえば、対向して配置される2つのブロック部材51a,51bの間に混合供給チューブ18が載せられている態様の流れ遮断器51とすることができる。
図2Aに遮断器51の例の断面図を示す。流れ遮断器51は、ブロック部材51a,51bが混合供給チューブ18の直径よりも離れて位置して混合供給チューブ18内の流れを許容する開状態(実線)と、ブロック部材51a,51bが混合供給チューブ18の直径より近づいて混合供給チューブ18を挟んで混合供給チューブ18内の流れを停止させる閉状態(一点鎖線)との間で切り替えることができる。ブロック部材51a,51bは、駆動手段6により開状態(実線)となる距離と、閉状態(一点鎖線)となる距離との間を移動可能となっている。ブロック部材51a,51bに駆動力を供給する駆動手段6としては、短時間で薬液の遮断が可能となるようにブロック部材51a,51bを移動させることが出来る限り、さまざまな態様の駆動手段6を使用することができる。たとえば、電磁的な力で駆動力を付与するもの、液体圧力またはモータなどの機械的な力で駆動力を付与するものが使用可能となる。流れ遮断ユニット5を駆動手段6と一体の装置とすることもできるし、別の装置とすることも可能である。これにより、混合供給チューブ18の前後の混合供給チューブ18内の薬液の流れを停止させることが可能となる。流れ遮断器51は、混合供給チューブ18上に混合供給チューブ18上の延在する方向に沿って複数個配置してもよい。この場合、薬液を被検者に注入する開状態にする際には、上流に当たる薬液源側から下流にあたる被検者側にむかって、順番に流れ遮断ユニット5を開放するシーケンスをとってもよい。また、被検者に薬液を注入した後に閉状態にする際には、下流に当たる被検者側から上流にあたる薬液源側にむかって、順番に流れ遮断ユニット5を閉鎖するシーケンスをとってもよい。
【0030】
また、流れ遮断ユニット5は、たとえば、混合供給チューブ18の流れの間に配置される遮断バルブ52とすることができる。
図2Bに閉状態の遮断バルブ52の例の断面図を示す。遮断バルブ52は、たとえば、第1ピストン52aと第2ピストン52bとを備えている。第1ピストン52aと第2ピストン52bとは、混合供給チューブ18の流れの方向と垂直方向に移動可能なように、バルブハウジングに受容支持されている。第1ピストン52aには混合供給チューブ18の流れ方向に沿って延在する流路52cが穿設されていて、第2ピストン52bには混合供給チューブ18の流れ方向に沿って延在する流路52dが穿設されている。第1ピストン52aの側が薬液注入管路の下流側すなわち被検者の側であり、第2ピストン52bの側が薬液注入管路の上流側すなわち薬液側となるように、混合供給チューブ18の流れの間に配置される。流路52cの断面積は流路52dの断面積よりも小さい。第1ピストン52aと第2ピストン52bとが、流路52c、流路52d、混合供給チューブ18の流路が一直線になるような所定の位置になった際に、混合供給チューブ18内の流れを許容する開状態(不図示)となる。また、第1ピストン52aと第2ピストン52bとが混合供給チューブ18の流路と垂直方向に移動して、流路52c、流路52d、混合供給チューブ18の流路が一直線にならない状態が閉状態(
図2Bの状態)となる。第1ピストン52aと第2ピストン52bとは、駆動手段6により、開状態と閉状態との間を移動可能となっている。第1ピストン52aと第2ピストン52bに駆動力を供給する駆動手段6としては、短時間で薬液の遮断が可能となるように第1ピストン52aと第2ピストン52bとを移動させることが出来る限り、さまざまな態様の駆動手段を使用することができる。たとえば、電磁的に駆動力を付与するもの、液体圧力または機構などの機械的に駆動力を付与するものが使用可能となる。流れ遮断ユニット5を駆動手段6と一体の装置とすることもできるし、別の装置とすることも可能である。このように、駆動手段6により駆動される遮断バルブ52を使用しても、混合供給チューブ18の前後の混合供給チューブ18内の薬液の流れを停止させることが可能となる。ここでは、遮断バルブ52として、2つの第1ピストン52aと第2ピストン52bとが配置されている例として説明したが、1個以上のピストンを配置した遮断バルブでも適用できる。また、2つ以上のピストンを配置した場合には、混合供給チューブ18上に混合供給チューブ18上の延在する方向に沿って複数個のピストンを配置する。この場合、薬液を被検者に注入する開状態にする際には、上流に当たる薬液源側から下流にあたる被検者側にむかって、ピストンを順番に開放するシーケンスをとってもよい。また、被検者に薬液を注入した後に閉状態にする際には、下流に当たる被検者側から上流にあたる薬液源側にむかって、ピストンを順番に閉鎖するシーケンスをとってもよい。
【0031】
続いて、
図3Aおよび
図3Bを参照して、制御装置40によって、いかに流れ遮断ユニット5が駆動手段6によって駆動して、取替管路部10内での被検者の体液の逆流を防止するかについて説明する。ここでは、単純化するために、被検者に穿刺部材11を刺して、第1シリンジ21または第2シリンジ22の内部に薬液の充填を終えて、被検者に薬液の注入を開始する時点から第1シリンジ21または第2シリンジ22の内部に充填した薬液がなくなった際に薬液の注入が完了する薬液注入シーケンスと仮定して説明する。
図3Aは、
図1の取替管路部10の任意の位置(
図1のD1)の箇所の管路内の圧力の履歴を示している。
図3Bは本発明の薬液注入装置の薬液注入プロセスのフローチャートを示した図である。
図3Aにおいて、管路内の流路抵抗を考慮すると、
図1の共通管路部30の任意の位置(
図1のD2)の箇所の管路内の圧力は圧力値としては異なるが、圧力変化の傾向は
図3Aとほぼ同じとなる。また、共通管路部30の任意の位置(
図1のD2)に近い第1シリンジ21または第2シリンジ22の内部の圧力も
図3Aの圧力履歴の傾向とほぼ同じになる。
図3Aの横軸は時間経過を示し、縦軸は被検者の血管内圧力をゼロ基準としたゲージ圧力を示している。まず、準備段階では、流れ遮断ユニット5は閉状態にあり、この段階で第1シリンジ21または第2シリンジ22の内部に薬液の充填を終えて準備を完了する。ここで、被検者に穿刺部材11を穿刺する(S1)。流れ遮断ユニット5が閉状態にある場合のみ、被検者に穿刺部材11を刺すことができる。
【0032】
流れ遮断ユニット5は閉状態にあるところから、制御装置40の中央処理装置(CPU)41から第1モータ23と第2モータ24に対して回転するように指令が出される。指令を受けた第1モータ23と第2モータ24は、所定のシーケンスで第1シリンジ21のピストン21cまたは第2シリンジ22のピストン22cを前進させる。これにより、第1シリンジ21または第2シリンジ22を含む薬液注入管路内の圧力は徐々に上昇する(S2)。第1シリンジ21または第2シリンジ22内の圧力が被検者の血管内圧力をゼロ基準としたときに、被検者の血管内圧力よりも高い所定の圧力(Psafe)まで増加したか否かを判定する。達していなければ、ピストン21cとピストン22cとを前進させて、第1シリンジ21または第2シリンジ22を含む薬液注入管路内の圧力は徐々に上昇させる(S3)。たとえば、この所定の圧力は、数十キロパスカル[kPa](数ポンド平方インチ[psi])程度である。また、特には、約0.14メガパスカル[MPa](約20ポンド平方インチ[psi])となると逆流を防止できる確実性が高まるが、所定の圧力として、この数値に拘泥されるものではない。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)まで増加した段階(時間T1経過段階)で、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、閉状態にある流れ遮断ユニット5を開状態にする(S4)。この状態からは、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。
【0033】
流れ遮断ユニット5が開状態に変化したことで、薬液が導入されていなかった流れ遮断ユニット5の下流側の容積に薬液が急速に流れ込むため、薬液注入管路内の圧力は極めて短い時間で一旦減少するが、その後すぐに圧力は上昇に転じる。そして、圧力が目標注入圧力(Ptarget)に達した段階(時間T2経過時点)で第1モータ23と第2モータ24の回転速度を落として、薬液の定速注入に移る。第1シリンジ21または第2シリンジ22内の薬液が十分に残っている間では、薬液注入管路内の圧力は、残薬液量によってほぼ一定で変化する圧力履歴を示す(時間T3に至る時点までの任意の時間)。当初予定した所定量の薬液が注入された段階で、第1モータ23と第2モータ24の回転を停止して薬液の注入が完了する(S5)。第1モータ23と第2モータ24の回転を停止により薬液の注入は被検者への自然な流れに委ねられ、薬液注入管路内の圧力は徐々に減少する。ここで、流れ遮断ユニット5が薬液の流れを遮断する閉状態となるように駆動手段6に指令を送る(S7)。所定量の薬液が注入されたか否かの判断プロセス(S5)は特に設けなくても良く、所定量の薬液が注入されたことをもって薬液の注入の完了を判断する。所定量の薬液が注入されたことをもって薬液の注入が完了したら、流れ遮断ユニット5が薬液の流れを遮断する閉状態となるように制御装置40は駆動手段6に指令を送る(S7)。薬液の注入のプロセスの多くの場合はこの場合である。この状態では、流れ遮断ユニット5の上流、すなわち少なくとも共通管路部30の最も下流まで被検者の体液が逆流することはない。
【0034】
一方、所定量の薬液が未だ注入されていない段階では、薬液の注入を継続する(S5)。充填していた薬液量の不足または薬液の漏れなど、多くの場合は異常な状態であるが、第1シリンジ21または第2シリンジ22内の薬液が少なくなると、所定量の薬液が未だ注入されていない段階で、第1シリンジ21または第2シリンジ22を含む薬液注入管路内の圧力は減少する圧力履歴を示す(時間T3経過時点から時間T4まで)。薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)になったところ(時間T4経過時点)で(S6)、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、開状態にある流れ遮断ユニット5を閉状態にする。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなっている。この状態では、流れ遮断ユニット5の上流、すなわち少なくとも共通管路部30の最も下流まで被検者の体液が逆流することはない。共通管路部30の取替管路部10からの取り外しは、この状態で行なわれる。すなわち、制御装置40は、シリンジ内の圧力が被検者の血管内圧力よりも高い所定の圧力(Psafe)に到達した際に流れ遮断ユニット5が薬液の流れを許容する開状態となるように、また所定の圧力(Psafe)よりも低くなった際に流れ遮断ユニット5が薬液の流れを遮断する閉状態となるように駆動手段6に指令を送る(S7)。
【0035】
制御装置40が流れ遮断ユニット5を薬液の流れを許容する開状態とする工程(S3)、および流れ遮断ユニット5を薬液の流れを遮断する閉状態とする工程(S7)の指令を送るタイミングは、所定の圧力(Psafe)に至ったことが判定されたタイミングである。そこで、所定の圧力(Psafe)に至ったことを判定する方法としては、いろいろな方法を取ることができる。たとえば、人間の血管内圧力は高々約130水銀柱ミリメートル(897キロパスカル[kPa])(約2.51ポンド平方インチ[psi])であり、被検者ごとの固体のばらつきは高々30水銀柱ミリメートル(4キロパスカル[kPa])(約0.57ポンド平方インチ[psi])であるから、数十キロパスカル[kPa](数ポンド平方インチ[psi])程度高い所定の圧力(Psafe)に比べれば小さい。そこで、人間の血管内圧力を所定値として一意に仮定して、圧力を全く測定せずに、仮定した血管内圧力より、数十キロパスカル[kPa](数ポンド平方インチ[psi])程度高い所定の圧力(Psafe)になったと推定される際に、制御装置40が流れ遮断ユニット5を薬液の流れを許容する開状態とするか、遮断する閉状態とするかの指令を送るようにする。たとえば、被検者への薬液の注入の場合には、薬液の注入を開始してから第1所定時間が経過後に流れ遮断ユニット5を開状態とする。また、被検者への薬液の注入の完了の場合には、薬液の注入を完了してから所定の第2所定時間が経過後に流れ遮断ユニット5を閉状態とする指令を送るようにしてもよい。第1所定時間は、流れ遮断ユニット5を薬液の流れを遮断する閉状態とした状態で共通管路部内の圧力が高くなるように所定の圧力を付加する時間である。また、具体的には、第1所定時間は、薬液を管路内に全く流さない状態から、被検者への実際の薬液を注入する前に行なう与圧フェーズとして、流れ遮断ユニット5を閉状態とした状態で、予め定められた所定の注入速度で低量の薬液を流れ遮断ユニット5に至るまで流して、流れ遮断ユニット5までの薬液注入管路内の圧力を所定圧力まで上昇させる時間である。予め定められた所定の注入速度は、たとえば被検者への薬液の注入速度よりも遅い注入速度である。
第2所定時間は、前記薬液注入器から薬液の供給の完了と同時または前記流れ遮断ユニットを前記薬液の流れを遮断する閉状態とした状態で前記共通管路部内の圧力が高い状態が確保された一定の時間である。具体的には、第2所定時間としての薬液の注入の完了からの一定の時間は、圧力の減少速度が予測できることから、予めその速度を把握しておき、薬液の注入を完了した後から仮定した血管内圧力より数十キロパスカル[kPa](数ポンド平方インチ[psi])程度高い所定の圧力(Psafe)となることが確保できる時間として予め実施する予備計測に基づいて定められる。また、薬液の注入の完了と同時の場合には、薬液が完了した直後では、血管内圧力より数十キロパスカル[kPa](数ポンド平方インチ[psi])程度高い所定の圧力(Psafe)となっていることが確保されている。薬液の注入後はここから圧力が減少するから薬液が完了した直後が最も高い圧力が確保されていることになる。したがって、このように制御装置40により流れ遮断ユニット5を動作させることで、流れ遮断ユニット5の上流、すなわち少なくとも共通管路部30の最も下流まで被検者の体液が逆流することはない。
【0036】
たとえば、流れ遮断ユニット5が混合供給チューブ18の流れの間に配置される遮断バルブ52である場合を例に薬液を注入する際および薬液の注入後のシーケンスについて説明する。まず、流れ遮断ユニット5を
図2Bのように第1ピストン52aの流路52cと第2ピストン52bの流路52dとが連通せず前記薬液の流れを遮断する閉状態としておく。この状態は、薬液が流れ遮断ユニット5に至っていない薬液注入開始前である。次に、流れ遮断ユニット5を閉じた状態で維持し、そして予め定められた所定の注入速度で低量の薬液を流れ遮断ユニット5に至るまで流す与圧フェーズを実行する。予め定められた所定の注入速度は、たとえば被検者への薬液の注入速度よりも遅い注入速度である。たとえば、この与圧フェーズでは、一例としては毎秒2ミリリットルの速度で0.3ミリリットルの量の薬液を150ミリ秒間流して流れ遮断ユニット5まで薬液が至るようにするものである。この与圧フェーズが開始されてから10ミリ秒後に流れ遮断ユニット5を開状態に移行させる。この10ミリ秒後が第1所定時間に対応する。すなわち、薬液注入器20から薬液の供給を開始した後に第1所定時間である10ミリ秒後が経過した際に、流れ遮断ユニット5を薬液の流れを許容する開状態とする。ここでは、たとえば、まず、上流側にあたる第2ピストン52bの流路52dを開き、続いて下流側の第1ピストン52aの流路52cを開く。すなわち、遮断バルブ52として二以上のピストンを使用した場合におけるこのシーケンスでは、上流側からピストンを開いていくので、最も下流側のピストンを開いた状態で流れ遮断ユニット5が完全な開状態となる。一方、逆に、薬液の注入後は、注入が完了した後に、まず第1モータ23と第2モータ24を停止する。これが注入完了のタイミングとなり、ここから第2所定時間経過して流れ遮断ユニット5を閉状態とする。すなわち、まず第1モータ23と第2モータ24を停止と同時または一定の時間が経過後である。一般にはたとえば、第1モータ23と第2モータ24を停止した後に一定の時間として数ミリ秒から数秒程度経過した後に下流側の第1ピストン52aの流路52cを閉じる。続いて上流側の第2ピストン52bの流路52dを閉じて、流れ遮断ユニット5を閉状態とする。遮断バルブ52が二以上のピストンを使用した場合におけるこのシーケンスでは、下流側からピストンを閉じていくので、最も上流側のピストンを開いた状態で流れ遮断ユニット5が完全な閉状態となる。上記では、遮断バルブ52として二以上のピストンを使用した場合において、ピストンを閉じるタイミングをずらすことにより、例で説明したが、すべてのピストンを同時に開状態にし、または同時に閉状態にするタイミングを使用してもよい。たとえば、遮断バルブ52を構成する二以上のピストンを有する場合として第1ピストン52aと第2ピストン52bとを備える遮断バルブ52を例に説明すると、薬液の注入時は、上流側の第2ピストン52bの流路52dの断面積を第1ピストン52aの流路52cの断面積よりも大きく設定しているので、第1ピストン52aと第2ピストン52bを同時に駆動した際に、まず先に上流側の第2ピストン52bの流路52dが連通し、続いてその後に下流側の第1ピストン52aの流路52cが連通するようにする。一方、逆に、薬液の注入後は、注入が完了し第1モータ23と第2モータ24を停止した後に一定の時間が経過した後に第1ピストン52aと第2ピストン52bを同時に駆動させ、まず下流側の第1ピストン52aの流路52cが閉じるようにして、その後に上流側の第2ピストン52bの流路52dを閉じて流れ遮断ユニット5を閉状態とすることができる。すなわち、このように、第1ピストン52aと第2ピストン52bの動作のタイミング、および第1ピストン52aの流路52cの断面積と第2ピストン52bの流路52dの断面積を調整することで、遮断バルブ52を開状態にするときには、遮断バルブ52を構成するピストンのうちの上流側から下流側へと順番に流路が連通するように機能させ、遮断バルブ52を閉状態にするときには、遮断バルブ52を構成するピストンのうちの下流側から上流側へと順番に流路が閉鎖されるように機能させることもできる。
【0037】
制御装置40が流れ遮断ユニット5を薬液の流れを許容する開状態とする工程(S3)、および流れ遮断ユニット5を薬液の流れを遮断する閉状態とする工程(S7)の指令を送るタイミングにつき、さらには、上記のように、圧力を全く測定せずに、人間の血管内圧力を所定値として一意に仮定する方法ではなく、圧力センサ等で人間の血管内圧力を直接測定して判定することができる。たとえば、最も簡便な方法としては、被検者の血圧や脈を検出するモニターライン19のポートに圧力検出器14を配置して被検者の血管内圧力を測定してもよい。すなわち、取替管路部10または共通管路部30のいずれか一方の管路の任意の位置に圧力検出器14を配置する。圧力検出器14としては、いかなるタイプの圧力センサも使用でき、代表例として半導体圧力センサまたは圧電素子等の圧力センサが使用できる。また、このとき、圧力検出器14を配置する位置は、被検者に近い側であれば、より被検者の血管内圧力を正確に測定することができるが、必ずしも被検者の血管内圧力を正確に測定する必要はない。被検者の血管内圧力よりも薬液注入管路内の圧力が高いことがわかればよい。したがって、圧力検出器14を、第1シリンジ21または第2シリンジ22内近傍に配置して圧力を直接測定してもよい。圧力検出器14の出力する電気信号により所定の圧力(Psafe)を判定し、圧力検出器14が所定の圧力(Psafe)対応する電気信号を検知したことに基づいて、制御装置40が流れ遮断ユニット5を薬液の流れを許容する開状態とするか、遮断する閉状態とするかの指令を送るようにすることもできる。
【0038】
また、さらには、制御装置40が流れ遮断ユニット5を薬液の流れを許容する開状態とする工程(S3)、および流れ遮断ユニット5を薬液の流れを遮断する閉状態とする工程(S7)の指令を送るタイミングにつき、薬液注入管路内の圧力を直接測定しなくてもよい。すなわち、駆動モータである第1モータ23と第2モータ24を駆動させるために駆動モータに入力される電力量に対応する値に応じて、所定の圧力(Psafe)を判定すればよい。また、薬液注入管路内の圧力を判定するにあたり、駆動モータに入力される電力量に対応する値は、定電圧のパルスを使用するPWM制御の場合には、駆動モータに入力される電力量は駆動モータに入力される電流に比例するので、駆動モータに入力される電流の値とすることができる。したがって、駆動モータに入力される電力量に対応する値には、駆動モータに入力される電流の値を含むものとする。ここで、たとえば、第1モータ23と第2モータ24のそれぞれに入力される電力量に対応する値と薬液注入管路内の圧力との関係を予めデータとして取得しておく。第1モータ23と第2モータ24のそれぞれの回転速度および回転角度は、制御装置40の中央処理装置41から出力される電力量に対応する値(電流に対応する値を含む)を有する電気信号に対応するものであるから、その電気信号と薬液注入管路内の圧力との関係を示した対応データを作成しておき、そのデータを記憶装置44に格納しておく。そして、流れ遮断ユニット5は閉状態にあるところから、制御装置40から指令を受けた第1モータ23と第2モータ24は、所定のシーケンスで第1シリンジ21のピストン21cまたは第2シリンジ22のピストン22cを前進させる。ここで、制御装置40の中央処理装置41は、第1モータ23と第2モータ24を駆動させる際に第1モータ23と第2モータ24とに入力される電気信号(駆動モータに入力される電力量または電流に対応する電気信号)から薬液注入管路内の圧力を
図3Aのように判定する。第1モータ23と第2モータ24へ入力された電気信号が薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)に対応した値に達した段階(時間T1経過段階)で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。そこで、制御装置40は、駆動手段6に指令を送って、閉状態にある流れ遮断ユニット5を開状態にする。この状態では、流れ遮断ユニット5の上流、すなわち少なくとも共通管路部30の最も下流まで被検者の体液が逆流することはない。
【0039】
逆も同様である。すなわち、第1シリンジ21または第2シリンジ22内の薬液がなくなってくると、第1シリンジ21または第2シリンジ22を含む薬液注入管路内の圧力は下降を始める(時間T3経過時点)。第1モータ23と第2モータ24へ伝送する電気信号から薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)になったと判定されたところ(時間T4経過時点)で、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、開状態にある流れ遮断ユニット5を閉状態にする。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。この状態では、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。共通管路部30の取替管路部10からの取り外しは、この状態で行なうことができる。
【0040】
また、薬液注入管路内の圧力を直接測定しない方法としては、駆動モータである第1モータ23と第2モータ24へ伝送する電気信号を使用しない方法もある。
図4は、
図1の薬液注入器20の部分を示している。
図4に示すように、電気信号を使用しない方法では、シリンジのピストンを直接押圧する押圧部材に押圧力検出器を配置する。押圧力検出器としては、たとえば簡易な装置としてはロードセルであるが、ロードセルの原理と同様に、ひずみゲージを押圧部材に貼り付け、押圧部材のひずみ量に基づいて出力した電気信号に基づいて押圧力を間接的に測定するひずみゲージも含む。このような押圧検出器により、モータが押圧部材を押すことで押圧力検出器が出力した電気信号からモータがピストンを押圧する押圧力を得ることができる。まず、モータがピストンを押圧する際の押圧力検出器の出力する電気信号とシリンジを含む薬液注入管路内の圧力との対応関係を予め測定しておく。この対応関係は、モータがピストンを押圧する押圧力とシリンジを含む薬液注入管路内の圧力との対応関係に対応する。そして、その対応関係から、押圧力検出器の出力する電気信号に基づいてシリンジを含む薬液注入管路内の圧力を判定する。すなわち、押圧力検出器をロードセルとするには、次のとおりとなる。第1モータ23が第1シリンジ21のピストン21cを移動させるようにピストン21cを押圧する押圧部材25と、第2モータ24が第2シリンジ22のピストン22cを移動させる押圧部材26とのそれぞれに、ロードセル28とロードセル29とを取り付ける。ロードセル28の出力する電気信号と薬液注入管路内の圧力との関係を予め取得しておき、その対応データを記憶装置44に格納しておく。この電気信号に基づいて薬液注入管路内の圧力を判定する。具体的には、まず、流れ遮断ユニット5は閉状態にあるところから、制御装置40から指令を受けた第1モータ23と第2モータ24は、押圧部材25と押圧部材26を介して、所定のシーケンスで第1シリンジ21のピストン21cと第2シリンジ22のピストン22cをそれぞれ押圧しながら外筒21aと外筒22aの中を移動する。この際に、ロードセル28とロードセル29とが、第1モータ23が第1シリンジ21のピストン21cを押圧する押圧力と第2モータ24が第2シリンジ22のピストン22cを押圧する押圧力とに感応して電気信号を出力する。この電気信号から薬液注入管路内の圧力を
図3Aのように判定する。ロードセル28とロードセル29の出力する電気信号から判定して、その電気信号が薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)に対応した値に達した段階(時間T1経過段階)で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。そこで、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、閉状態にある流れ遮断ユニット5を開状態にする。この状態では、流れ遮断ユニット5の上流、すなわち少なくとも共通管路部30の最も下流まで被検者の体液が逆流することはない。
【0041】
逆も同様である。すなわち、第1シリンジ21または第2シリンジ22内の薬液がなくなってくると、第1シリンジ21または第2シリンジ22を含む薬液注入管路内の圧力は下降を始める(時間T3経過時点)。第1モータ23と第2モータ24がピストン21cとピストン22cとを押圧するひずみ量をロードセル28とロードセル29が出力する電気信号から判定して、その電気信号から薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)になったと判定されたところ(時間T4経過時点)で、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、開状態にある流れ遮断ユニット5を閉状態にする。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。この状態では、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。共通管路部30の取替管路部10からの取り外しは、この状態で行なうことができる。
【0042】
(第2実施例)
薬液注入器20は、シリンジ以外の態様も採用できる。以下、薬液注入器20として、シリンジ以外の態様の第2実施例について
図5を参照して説明する。第2実施例は、実施の形態のうち、薬液を保持した容器の内部を加圧して薬液の吐出を行なう加圧装置を薬液供給手段として使用したタイプである。
図5は、第2実施例の薬液注入装置1bの全体構成図を示している。薬液注入装置1bは、取替管路部10と、薬液注入器20と、共通管路部30と、制御装置40と、を備えている点で第1実施例と同じであり、薬液注入器20から供給された薬液が、薬液注入管路である共通管路部30にまず流れ込み、共通管路部30から取替管路部10へと流れるように構成される点も同じである。第2実施例でも、取替管路部10と、共通管路部30とが薬液注入管路を形成し、取替管路部10は被検者ごとに交換され、一方共通管路部30は複数の被検者に共通的に使用されるものである。以下、第2実施例について、第1実施例と異なる点について説明する。それ以外は、第1実施例の構成がそのまま適用可能である。
【0043】
第1実施例の薬液注入装置1aでは、薬液注入器20はシリンジの態様であったが、第2実施例では、薬液注入器20の薬液源は第1薬液としての造影剤を供給するための第1容器61と、第2薬液としての生理食塩水を供給するための第2容器62とである。第1容器61と第2容器62とのそれぞれは、硬質の樹脂容器でもよいし、可撓性のあるバッグ状の樹脂容器でもよい。その材質は問わない。薬液注入器20の薬液供給手段は、第1容器61と第2容器62とをそれぞれ加圧する第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64である。制御回路27は第1実施例と同様であり、第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64は、制御回路27により制御される。第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64は、第1容器61の加圧口61aと第2容器62の加圧口62aとを通じて、第1容器61内の第1薬液と第2容器62内の第2薬液を加圧する。
【0044】
取替管路部10と制御装置40の構成は第1実施例と同じである。共通管路部30の構成は第1実施例とほぼ同じであるが、第1薬液ライン31の管路に第1薬液バッグ34は接続されておらず、第2薬液ライン32の管路に第2薬液バッグ36が接続されていない点が第1実施例と異なる。その他は、第1薬液としての造影剤が流れる第1薬液ライン31と第2薬液としての生理食塩水が流れる第2薬液ライン32とを有する点を含め第1実施例と同じである。
【0045】
第1容器61内の開口61bは第1薬液ライン31に流体的に接続され、第2容器62内の開口62bは第2薬液ライン32に流体的に接続される。制御装置40による第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64との動作のための制御は第1実施例と同様である。すなわち、制御装置40から指令を受けた第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64は、所定のシーケンスで第1容器61と第2容器62を加圧する。ここで、制御装置40の中央処理装置41は、第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64を駆動させる際に第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64とに入力される電気信号(それぞれの加圧ポンプに入力される電力量または電流に対応する電気信号)から薬液注入管路内の圧力を第1実施例と同様に、
図3Aのように判定する。第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64へ入力された電気信号が薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)に対応した値に達した段階(時間T1経過段階)で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。そこで、制御装置40は、駆動手段6に指令を送って、閉状態にある流れ遮断ユニット5を開状態にする。この状態では、流れ遮断ユニット5の上流、すなわち少なくとも共通管路部30の最も下流まで被検者の体液が逆流することはない。
【0046】
逆も同様である。すなわち、第1容器61または第2容器62内のそれぞれの薬液がなくなってくると、第1容器61または第2容器62を含む薬液注入管路内の圧力は下降を始める(時間T3経過時点)。第1加圧ポンプ63と第2加圧ポンプ64へ伝送する電気信号から薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)になったと判定されたところ(時間T4経過時点)で、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、開状態にある流れ遮断ユニット5を閉状態にする。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。この状態では、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。共通管路部30の取替管路部10からの取り外しは、この状態で行なうことができる。これにより、第2実施例でも第1実施例と同様に共通管路部30の圧力を取替管路部10側よりも高くなるタイミングを作ることができる。
【0047】
(第3実施例)
薬液注入器20の第1容器61と第2容器62とを可撓性のあるバッグ状の樹脂容器とした場合には以下の態様も採用できる。以下、第3実施例について
図6と
図7Aおよび
図7Bとを参照して説明する。第3実施例は、実施の形態のうち、薬液を保持した容器の外部を押圧することにより容器内を加圧して薬液の前記吐出を行なう加圧装置を薬液供給手段として使用したタイプである。第3実施例は第2実施例を変更させたものである。
図6は、第3実施例の薬液注入装置1cの全体構成図を示している。薬液注入装置1cは、取替管路部10と、薬液注入器20と、共通管路部30と、制御装置40と、を備えている点で第1実施例と同じであり、薬液注入器20から供給された薬液が、薬液注入管路である共通管路部30にまず流れ込み、共通管路部30から取替管路部10へと流れるように構成される点も同じである。第3実施例でも、取替管路部10と、共通管路部30とが薬液注入管路を形成し、取替管路部10は被検者ごとに交換され、一方共通管路部30は複数の被検者に共通的に使用されるものである。以下、第3実施例について、第2実施例と異なる点について説明する。それ以外は、第2実施例の構成がそのまま適用可能である。
【0048】
第3実施例の薬液注入装置1cでは、薬液供給手段は加圧ポンプではなく、容器を押圧して加圧する加圧手段である。第2実施例では、薬液源の容器の内部を加圧して薬液を薬液注入管路である共通管路部30にまず流し込み、共通管路部30から取替管路部10へと流すように構成された。これに対し、第3実施例では、薬液源の容器を外部から加圧して薬液を薬液注入管路である共通管路部30にまず流し込み、共通管路部30から取替管路部10へと流すように構成するものである。すなわち、第3実施例では、薬液注入器20の薬液源は第1薬液としての造影剤を供給するための第1容器71と、第2薬液としての生理食塩水を供給するための第2容器72とである。第1容器71と第2容器72とのそれぞれは、代表的には可撓性のあるバッグ状の容器であり、代表的には樹脂のバッグであるが、その材質は問わない。薬液注入器20の薬液供給手段は、
図7Aに示すように、第1容器71と第2容器72とをそれぞれ加圧する加圧手段である第1加圧体73と第2加圧体74である。第1加圧体73と第2加圧体74とは、たとえばモータ等の動力により駆動されるローラ状の部材であって、可撓性のある第1容器71と第2容器72とを押圧しながら第1容器71と第2容器72とを潰して開口71aおよび開口72aの方向に進んでいく。制御回路27は第1実施例と同様であり、第1加圧体73と第2加圧体74は、制御回路27により制御される。第1加圧体73と第2加圧体74が第1容器71と第2容器72とを潰すことにより、第1容器71内と第2容器72内の薬液の圧力が高まり、第1容器71内の第1薬液と第2容器72内の第2薬液とを流す。また、第1加圧体73と第2加圧体74は、体積変化が可能な柔軟なバッグ状の容器に封入された空気などの圧縮性流体の内圧を高めることにより体積変化で第1容器71と第2容器72とを押圧して圧縮し、内部の薬液の圧力を高めるものであってもよい。
【0049】
取替管路部10と制御装置40の構成は第1実施例と同じである。共通管路部30の構成は第1実施例とほぼ同じであるが、第1薬液ライン31の管路に第1薬液バッグ34は接続されておらず、第2薬液ライン32の管路に第2薬液バッグ36が接続されていない点が第1実施例と異なる。その他は、第1薬液としての造影剤が流れる第1薬液ライン31と第2薬液としての生理食塩水が流れる第2薬液ライン32とを有する点を含め第1実施例と同じである。
【0050】
第1容器71内の開口71aは第1薬液ライン31に流体的に接続され、第2容器72内の開口72aは第2薬液ライン32に流体的に接続される。制御装置40による第1加圧体73と第2加圧体74との動作のための制御は第1実施例と同様である。すなわち、制御装置40から指令を受けた第1加圧体73と第2加圧体74は、所定のシーケンスで第1容器71と第2容器72を加圧する。ここで、制御装置40の中央処理装置41は、第1加圧体73と第2加圧体74を駆動させる際に第1加圧体73と第2加圧体74とに入力される電気信号(それぞれの加圧ポンプに入力される電力量または電流に対応する電気信号)から薬液注入管路内の圧力を第1実施例と同様に、
図3Aのように判定する。第1加圧体73と第2加圧体74へ入力された電気信号が薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)に対応した値に達した段階(時間T1経過段階)で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。そこで、制御装置40は、駆動手段6に指令を送って、閉状態にある流れ遮断ユニット5を開状態にする。この状態では、流れ遮断ユニット5の上流、すなわち少なくとも共通管路部30の最も下流まで被検者の体液が逆流することはない。
【0051】
逆も同様である。すなわち、第1容器71または第2容器72内のそれぞれの薬液がなくなってくると、第1容器71または第2容器72を含む薬液注入管路内の圧力は下降を始める(時間T3経過時点)。第1加圧体73と第2加圧体74へ伝送する電気信号から薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)になったと判定されたところ(時間T4経過時点)で、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、開状態にある流れ遮断ユニット5を閉状態にする。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。この状態では、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。共通管路部30の取替管路部10からの取り外しは、この状態で行なうことができる。これにより、第3実施例でも第1実施例と同様に共通管路部30の圧力を取替管路部10側よりも高くなるタイミングを作ることができる。
【0052】
第3実施例の変形として、第1加圧体73と第2加圧体74とを、それぞれ、
図7Bに示すような加圧巻取り体75としてもよい。すなわち、第3実施例の変形では、第1容器71と第2容器72とのそれぞれは、代表的には可撓性のあるバッグ状の容器であり、代表的には樹脂のバッグであるが、その材質は問わない。薬液注入器20の薬液供給手段は、
図7Aに示すように、第1容器71と第2容器72とをそれぞれ加圧する加圧巻取り体75である。加圧巻取り体75は可撓性のある第1容器71と第2容器72とを巻き取りながら開口71aおよび開口72aの方向に第1容器71と第2容器72とを潰しながら進んでいく。制御回路27は第1実施例と同様であり、加圧巻取り体75は、制御回路27により制御される。加圧巻取り体75により、第1容器71内と第2容器72内の薬液の圧力を第1容器71内と第2容器72内の外部から高めて、第1容器71内の第1薬液と第2容器72内の第2薬液とを流す。そして、制御装置40から加圧巻取り体75へ入力された電気信号が薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)に対応した値に達した段階(時間T1経過段階)で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。そこで、制御装置40は、駆動手段6に指令を送って、閉状態にある流れ遮断ユニット5を開状態にする。この状態では、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。また、加圧巻取り体75へ入力された電気信号から薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)になったと判定されたところ(時間T4経過時点)で、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、開状態にある流れ遮断ユニット5を閉状態にする。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。この状態では、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。共通管路部30の取替管路部10からの取り外しは、この状態で行なうことができる。これにより、第3実施例でも第1実施例と同様に共通管路部30の圧力を取替管路部10側よりも高くなるタイミングを作ることができる。
【0053】
(第4実施例)
続いて、第4実施例について
図8と
図9とを参照して説明する。第4実施例は、実施の形態のうち、下流側の管路を減圧して薬液を圧送するタイプである。
図8は、第4実施例の薬液注入装置1dの全体構成図を示している。薬液注入装置1dは、取替管路部10と、薬液注入器20と、共通管路部30と、制御装置40と、を備えている点で第1実施例と同じであり、薬液注入器20から供給された薬液が、薬液注入管路である共通管路部30にまず流れ込み、共通管路部30から取替管路部10へと流れるように構成される点も同じである。第4実施例でも、取替管路部10と、共通管路部30とが薬液注入管路を形成し、取替管路部10は被検者ごとに交換され、一方共通管路部30は複数の被検者に共通的に使用されるものである。以下、第4実施例について、第3実施例と異なる点について説明する。第4実施例の薬液注入装置1dでは、薬液供給手段としてローラポンプ83とローラポンプ84とを使用したものである。それ以外は、第3実施例の構成がそのまま適用可能である。
【0054】
薬液注入器20は、薬液供給源とポンプとを備えている。薬液注入器20の薬液源は第1薬液としての造影剤を供給するための第1容器81と、第2薬液としての生理食塩水を供給するための第2容器82である。ポンプとしては、下流側の管路を押圧しながら減圧して、上流側の管路内の薬液を下流側の管路に圧送するタイプの構造のポンプであれば、どのようなタイプのポンプも適用が可能である。このタイプのポンプの代表例としては、ローラポンプやフィンガーポンプである。ここでは、一例として、ローラポンプ83とローラポンプ84として説明する。第1容器81と第2容器82とのそれぞれは、硬質の樹脂容器でもよいし、可撓性のあるバッグ状の樹脂容器でもよい。その材質は問わない。ローラポンプ83とローラポンプ84とは、それぞれ、共通管路部30の第1容器81の開口81aに接合する第1薬液ライン31の管路と、および第2容器82の開口82aに接合する第2薬液ライン32の管路に配置される。ローラポンプ83とローラポンプ84とは、流れ遮断ユニット5の上流である限り、共通管路部30の薬液の管路のどこに取り付けてもよい。混合供給チューブ18に取り付けても良い。ローラポンプ83とローラポンプ84とが配置される第1薬液ライン31の管路と第2薬液ライン32の管路とは、軟質のチューブでできていて、第1薬液ライン31の管路と第2薬液ライン32の管路とは回転体85に巻き付くように固定されて配置される。
【0055】
図9を参照してローラポンプ83とローラポンプ84とについて説明する。
図9はローラポンプ83を拡大した機能構成図である。ローラポンプ84も同じ構成であるのでローラポンプ83の説明でローラポンプ84の説明に代える。ローラポンプ83は回転体85を有している。回転体85には、回転体の回転中心周りに、回転可能である。回転体85の回転中心を中心とする円周上に、円弧距離が等間隔となるように、少なくとも2つの突起たる押圧部85aと押圧部85bとを有している。すなわち、2つの押圧部85aと押圧部85bとは、回転体85の回転中心を中心とする円周上に中心角180度で配置される。たとえば、3つの押圧部を配置する場合には中心角120度で配置し、4つの押圧部を配置する場合は中心角90度で配置される。
【0056】
2つの突起の押圧部85aと押圧部85bとが第1薬液ライン31の管路をそれぞれ押しつぶす。押圧部85aと押圧部85bとが第1薬液ライン31の管路を押しつぶした箇所で、第1薬液ライン31の管路が狭窄され、押圧部85aと押圧部85bとの間に薬液が入りうる区画31bを作る。区画31bの両側には、上流側の区画31aと下流側の区画31cとが出来上がる。この状態で、たとえば、
図9の時計回り(
図9の矢印方向)に回転体85を回転させると、区画31bの上を押圧部85aが第1薬液ライン31の管路を押しつけながら移動する。押圧部85aと押圧部85bとが回転体85の回転中心の中心角180だけ移動すると押圧部85aと押圧部85bの位置が反転する。この移動の間に、この押圧部85aが狭窄した箇所の圧力は、その両端側の区画31aと区画31cとに比べて、内部が減圧された状態にあるので、区画31bの圧力は上流側の区画31aより低く、押圧部85bは押圧部85aが位置していた箇所に到達すると、上流側の区画31aにある薬液が区画31bの中に流れ込み、押圧部85aと押圧部85bとの間の区画31bに薬液が入り込む。その状態でさらに、回転体85を回転させると、区画31bの上を押圧部85bが第1薬液ライン31の管路の薬液を圧送すべく押圧部85bが第1薬液ライン31の管路を押しながら移動し、薬液が下流側の区画31cに移動する。このように、回転体85を連続して回転させることにより、第1容器81と第2容器82との薬液が第1薬液ライン31の管路と第2薬液ライン32に供給されて、共通管路部30から取替管路部10へと供給される。その他は、第1薬液としての造影剤が流れる第1薬液ライン31と第2薬液としての生理食塩水が流れる第2薬液ライン32とを有する点を含め第1実施例と同じである。
【0057】
制御装置40によるローラポンプ83とローラポンプ84との動作のための制御は第1実施例と同様である。すなわち、制御装置40から指令を受けたローラポンプ83とローラポンプ84は、所定のシーケンスで第1薬液ライン31の管路と第2薬液ライン32との押圧部85aと押圧部85bとの間の区画31bに対応する部分の管路を減圧する。ここで、制御装置40の中央処理装置41は、ローラポンプ83とローラポンプ84を駆動させる際にローラポンプ83とローラポンプ84とに入力される電気信号(ローラポンプ83とローラポンプ84に入力される電力量または電流に対応する電気信号)から薬液注入管路内の圧力を第1実施例と同様に、
図3Aのように判定する。ローラポンプ83とローラポンプ84へ入力された電気信号が薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)に対応した値に達した段階(時間T1経過段階)で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。そこで、制御装置40は、駆動手段6に指令を送って、閉状態にある流れ遮断ユニット5を開状態にする。この状態では、流れ遮断ユニット5の上流、すなわち少なくとも共通管路部30の最も下流まで被検者の体液が逆流することはない。
【0058】
逆も同様である。すなわち、第1容器81または第2容器82内のそれぞれの薬液がなくなってくると、第1容器81または第2容器82を含む薬液注入管路内の圧力は下降を始める(時間T3経過時点)。ローラポンプ83とローラポンプ84へ伝送する電気信号から薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)になったと判定されたところ(時間T4経過時点)で、制御装置40は駆動手段6に指令を送って、開状態にある流れ遮断ユニット5を閉状態にする。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなる。この状態では、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。共通管路部30の取替管路部10からの取り外しは、この状態で行なうことができる。これにより、第3実施例でも第1実施例と同様に共通管路部30の圧力を取替管路部10側よりも高くなるタイミングを作ることができる。
【0059】
(その他の実施の形態)
次に、本発明の別の実施形態について説明する。ここで説明する実施の形態では、前述の本発明の実施の形態の第1実施例の薬液注入装置1aと同じ構成である。この実施の形態では、
図3Bのフローチャートにおいて、所定量の薬液が未だ注入されていない段階であるが、薬液の注入が完了する前に薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)になり(時間T4経過時点)で流れ遮断ユニット5が閉状態にされた後のシーケンスである。すなわち、所定量の薬液が未だ注入されていないので、第1シリンジ21に第1薬液を、第2シリンジ22に第2薬液を再充填するシーケンスである。
図10を参照して、この実施の形態について説明する。ここでは、前述の本発明の実施の形態の第1実施例の装置の構成をそのまま参照して説明する。
図10は、第1シリンジ21または第2シリンジ22に、薬液を再充填するシーケンスのフローチャートを示している。
【0060】
薬液注入管路内の圧力が所定の圧力(Psafe)まで減少したことから、制御装置40は流れ遮断ユニット5を閉状態にするように指令がなされ、流れ遮断ユニット5は閉状態になっている(
図3BのS7)。この実施の形態は、このステップの後から進行する。まず流れ遮断ユニット5が閉状態になっていることの確認と、流れ遮断ユニット5が閉状態に維持される(S11)。続いて、第1薬液バルブ34aを開けて第1薬液バッグ34を第1薬液ライン31と連通させ、第2薬液バルブ36aを開けて第2薬液バッグ36を第2薬液ライン32と連通させる(S12)。第1薬液バルブ34aと第2薬液バルブ36aは開閉バルブでなく一方向バルブとした場合には、第1薬液バルブ34aと第2薬液バルブ36aとを開くプロセス(S12)は不要となる。遮断ユニット5が閉じているので、第1薬液ライン31と第2薬液ライン32とのそれぞれには、第1薬液バッグ34は第1薬液ライン31を介して第1シリンジ21に向かって流れ、第2薬液バッグ36は第2薬液ライン32を介して第2シリンジ22に向かって流れることが可能な圧力勾配ができあがる。この状態で、制御装置40の中央処理装置(CPU)41から第1モータ23と第2モータ24に対して逆回転するように指令が出される。指令を受けた第1モータ23と第2モータ24は、所定のシーケンスで第1シリンジ21のピストン21cまたは第2シリンジ22のピストン22cを後退させる。
【0061】
これにより、第1シリンジ21または第2シリンジ22を含む薬液注入管路内の圧力は徐々に減少し、第1薬液を第1薬液ライン31から第1シリンジ21へと、第2薬液を第2薬液ライン32の第2シリンジ22へと、それぞれ吸引する(S13)。所定量の第1薬液が第1シリンジ21に所定の量の第2薬液が第2シリンジ22に充填されたか否かを判定し、未だ充填されていなければさらに充填を継続し、第1薬液が第1シリンジ21に第2薬液が第2シリンジ22に所定量だけ充填されていれば充填を完了する(S14)。第1薬液が第1シリンジ21に第2薬液が第2シリンジ22に所定量だけ充填されていれば充填が完了した段階で、第1薬液バルブ34aを閉じて第1薬液バッグ34を第1薬液ライン31から隔絶し、第2薬液バルブ36aを閉じて第2薬液バッグ36を第2薬液ライン32と隔絶する(S15)。第1薬液バルブ34aと第2薬液バルブ36aは開閉バルブでなく一方向バルブとした場合には、第1薬液バルブ34aと第2薬液バルブ36aとを閉じるプロセス(S15)は不要となる。このとき、第1シリンジ21または第2シリンジ22が吸引をおこなっているため、共通管路部30の管路内で、局所的(たとえば、
図1のD2の箇所)には、管路の圧力が被検者の血管内圧力よりも低くなり共通管路部30まで被検者の体液が逆流する可能性が生じる場合もありえる。そのため、第1薬液が第1シリンジ21に第2薬液が第2シリンジ22に所定量だけ充填され、充填が完了した段階で、共通管路部30の管路内を被検者の血管内圧力よりも高い所定の圧力(Psafe)まで加圧させる必要がある。そこで、制御装置40の中央処理装置(CPU)41から第1モータ23と第2モータ24に対して正回転するように指令が出される。指令を受けた第1モータ23と第2モータ24は、所定のシーケンスで第1シリンジ21のピストン21cまたは第2シリンジ22のピストン22cを前進させ、被検者の血管内圧力よりも高い所定の圧力(Psafe)まで加圧する(S16)。被検者の血管内圧力よりも高い所定の圧力(Psafe)まで加圧する際には、第1実施例における制御装置40が流れ遮断ユニット5を薬液の流れを許容する開状態とする工程(S3)、および流れ遮断ユニット5を薬液の流れを遮断する閉状態とする工程(S7)の指令を送るタイミングの場合と同様に、薬液注入管路内の圧力を実測してもよいし、薬液注入管路内の圧力を直接測定しない手法をそのまま採用することもできる。この段階で、共通管路部30の圧力は取替管路部10側よりも高くなり、共通管路部30まで被検者の体液が逆流することはない。ここから、
図3BのS1からのシーケンスを再開することが可能となる。
【0062】
この出願は2018年6月29日に出願された日本国特許出願第2018-124918号からの優先権を主張し、その全内容を引用してこの出願の一部とする。
【符号の説明】
【0063】
1a,1b,1c,1d 薬液注入装置
5 流れ遮断ユニット
6 駆動手段
10 取替管路部
11 穿刺部材
12 注入チューブ
15 ミキシングデバイス
18 混合供給チューブ
20 薬液注入器
23,24 駆動モータ
25,26 押圧部材
27 制御回路
28,29 ロードセル
30 共通管路部
40 制御装置
41 中央処理装置
61,71 第1容器
62,72 第2容器
73 第1加圧体
74 第2加圧体
83,84 ローラポンプ
85 回転体
【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を被検者に注入するための薬液注入装置であって、
前記薬液の流れを許容する開状態と、前記薬液の流れを遮断する閉状態との間を切り替え可能な流れ遮断ユニットと、
前記流れ遮断ユニットへ指令を送り、前記流れ遮断ユニットを前記開状態と前記閉状態とにする制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記薬液の供給の完了と同時に、前記流れ遮断ユニットによる前記薬液の流れの遮断を開始して、前記薬液の供給の完了から所定時間が経過した際に、前記薬液の流れが遮断される前記閉状態とする薬液注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液注入装置であって、
前記薬液の吐出を行なう薬液供給手段を備える薬液注入器と、
前記流れ遮断ユニットが取り付けられているチューブとを備え、
前記薬液注入器は、前記薬液を加圧し、前記チューブにおける前記流れ遮断ユニットの上流側の圧力が高くなるように、前記流れ遮断ユニットに対して上流側に設けられている薬液注入装置。
【請求項3】
請求項2に記載の薬液注入装置であって、
前記所定時間は、前記チューブ内の圧力が所定の圧力以上に確保される時間である薬液注入装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記流れ遮断ユニットは、それぞれ流路を有する第1ピストン及び第2ピストンを備えており、
前記制御装置は、前記薬液の供給の完了と同時に、前記第1ピストンによる前記薬液の流れの遮断を開始して、前記薬液の供給の完了から前記所定時間が経過した際に、前記第2ピストンにより前記流路が閉じられる前記閉状態とする薬液注入装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の薬液注入装置であって、
前記流れ遮断ユニットは、1個以上のピストンを備えており、
前記制御装置は、前記薬液の供給の完了と同時に前記ピストンの移動を開始する薬液注入装置。
【請求項6】
請求項5に記載の薬液注入装置であって、
前記制御装置は、前記薬液の供給の完了から前記所定時間が経過した際に前記ピストンの移動を完了させる薬液注入装置。