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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159939
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ガラス体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20241031BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20241031BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20241031BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20241031BHJP
   C03C 17/38 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G02B5/08 F
G02B1/10
G02B5/08 A
G02B5/08 D
G02B1/18
G02B5/00 A
C03C17/38
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147894
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2021552363の分割
【原出願日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2019190615
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】釣 慶子
(72)【発明者】
【氏名】大家 和晃
(72)【発明者】
【氏名】藪田 武司
(57)【要約】
【課題】ハーフミラーとして機能しつつ、曇りを抑制することができる、ガラス体を提供する。
【解決手段】本発明に係るガラス体は、第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する、ガラス板と、前記ガラス板の前記第1の面に配置された半透過反射膜と、前記半透過反射膜上、または前記ガラス板の前記第2の面上のいずれかに配置された防曇手段と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する、ガラス板と、
前記ガラス板の前記第1面に配置された半透過反射膜と、
前記半透過反射膜上、または前記ガラス板の前記第2面上の少なくとも一方に配置された防曇手段と、
を備え、
前記ガラス板が、フロートガラスであり、
前記第1面における酸化スズの濃度が、前記第2面における酸化スズの濃度よりも低く、
前記半透過反射膜は複数の層を積層することで形成され、前記複数の層の少なくとも1つは、無機金属酸化物で形成されている、ハーフミラー。
【請求項2】
前記防曇手段は、防曇膜を備え、
前記防曇膜が前記ガラス板の第2面に設けられる、請求項1に記載のハーフミラー。
【請求項3】
前記半透過反射膜の表面粗さRaが、15nm以下である、請求項2に記載のハーフミラー。
【請求項4】
前記防曇手段は、防曇膜を備え、
前記防曇膜が前記半透過反射膜上に設けられる、請求項1に記載のハーフミラー。
【請求項5】
前記防曇膜と、前記防曇膜と隣接する前記半透過反射膜の最外層との屈折率の差が、0.1以下である、請求項4に記載のハーフミラー。
【請求項6】
前記防曇膜の屈折率は、1.6以下である、請求項5に記載のハーフミラー。
【請求項7】
前記防曇膜の光学膜厚の差は、150nm以上であり、
前記防曇膜の膜厚は、10μm以上である、請求項4から6のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項8】
前記防曇手段は、
前記防曇膜と、
前記防曇膜を支持する10μm以上の厚みを持つフィルム基材と、
前記フィルム基材において、前記防曇膜とは反対側の面に配置され、前記フィルム基材を、前記半透過反射膜に固定するための粘着層と、
を備えている、請求項4から7のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項9】
ヘイズ率が、2%以下である、請求項1から8のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項10】
前記防曇手段は、吸水性樹脂を含有する防曇膜を備えている、請求項1から9のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項11】
前記防曇膜の厚みは、5μm以上である、請求項10に記載のハーフミラー。
【請求項12】
可視光透過率は、20%以上70%以下である、請求項1から11のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項13】
前記半透過反射膜側からの反射色調が、L*a*b*表色系において、a*の値は、-15~15であり、
前記半透過反射膜側からの反射色調が、L*a*b*表色系において、b*の値は、-15~15である、請求項1から12のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項14】
前記半透過反射膜の熱伝導率が、前記ガラス板よりも大きい、請求項1から13のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項15】
前記複数の層の少なくとも1つは、金属または半金属で形成された金属反射層である、請求項1から14のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項16】
前記金属反射層は、Si,Ag,Al,Cr,Ti,及びMoの少なくとも1つを主成分とする、請求項15に記載のハーフミラー。
【請求項17】
前記半透過反射膜の最外層は、可視光領域での屈折率が1.5以下である、請求項15または16に記載のハーフミラー。
【請求項18】
前記最外層の主成分は、SiO2である、請求項17に記載のハーフミラー。
【請求項19】
前記防曇手段は、防曇膜を備え、
前記防曇膜が前記半透過反射膜上に設けられる、請求項18に記載のハーフミラー。
【請求項20】
前記防曇手段は、防曇膜を備え、
前記防曇膜の表面は、撥水化処理が施されている、請求項1から19のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項21】
前記防曇膜の表面の水接触角は、70°以上である、請求項20に記載のハーフミラー。
【請求項22】
前記防曇手段は、前記半透過反射膜上、及び前記ガラス板の前記第2面上に配置される、請求項1から21のいずれかに記載のハーフミラー。
【請求項23】
前記防曇手段上及び前記半透過反射膜上の少なくとも一方に形成された遮光膜をさらに備えている、請求項1から22のいずれかに記載のハーフミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、いわゆるハーフミラーと称するガラス体が開示されている。このガラス体は、ガラス板に無機酸化物を含有する被覆層を積層したものであり、可視光透過率と可視光反射率が調整されている。すなわち、ガラス体の一方側からガラス体を見ると、鏡のように像が映る一方、ガラス体の他方側にある像からの光が透過し、一方側からこれを見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-502803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなハーフミラーは、種々の用途に利用されており、その用途も広がっているが、例えば、屋外と屋内とを仕切るガラス体として用いられることが考えられる。この場合、屋外と屋内との温度差によってガラス体の表面に曇りが発生するおそれがあり、その抑制や除去が問題となる。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ハーフミラーとして機能しつつ、曇りを抑制することができる、ガラス体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有する、ガラス板と、
前記ガラス板の前記第1の面に配置された半透過反射膜と、
前記半透過反射膜上、または前記ガラス板の前記第2面上の少なくとも一方に配置された防曇手段と、
を備えている、ガラス体。
【0006】
項2.前記防曇手段は、防曇膜を備え、
前記防曇膜が前記ガラス板の第2面に設けられる、項1に記載のガラス体。
【0007】
項3.前記半透過反射膜の表面粗さRaが、15nm以下である、項2に記載のガラス体。
【0008】
項4.前記ガラス板が、フロートガラスであり、
前記第1面における酸化スズの濃度が、前記第2面における酸化スズの濃度よりも低い、項3に記載のガラス体。
【0009】
項5.前記防曇手段は、防曇膜を備え、
前記防曇膜が前記半透過反射膜上に設けられる、項1に記載のガラス体。
【0010】
項6.前記半透過反射膜は複数の層を積層することで形成され、前記防曇膜と、前記防曇膜と隣接する前記半透過反射膜の最外層との屈折率の差が、0.1以下である、項5に記載のガラス体。
【0011】
項7.前記防曇膜の屈折率は、1.6以下である、項6に記載のガラス体。
【0012】
項8.前記防曇膜の光学膜厚の差は、150nm以上であり、
前記防曇膜の膜厚は、10μm以上である、項5から7のいずれかに記載のガラス体。
【0013】
項9.前記防曇手段は、
前記防曇膜と、
前記防曇膜を支持する10μm以上の厚みを持つフィルム基材と、
前記フィルム基材において、前記防曇膜とは反対側の面に配置され、前記フィルム基材を、前記半透過反射膜に固定するための粘着層と、
を備えている、項5または6に記載のガラス体。
【0014】
項10.ヘイズ率が、2%以下である、項1から9のいずれかに記載のガラス体。
【0015】
項11.前記防曇手段は、吸水性樹脂を含有する防曇膜を備えている、項1から10のいずれかに記載のガラス体。
【0016】
項12.前記防曇膜の厚みは、5μm以上である、項11に記載のガラス体。
【0017】
項13.可視光透過率は、20%以上70%以下である、項1から12のいずれかに記載のガラス体。
【0018】
項14.前記半透過反射膜側からの反射色調が、L*a*b*表色系において、a*の値は、-15~15であり、
前記半透過反射膜側からの反射色調が、L*a*b*表色系において、b*の値は、-15~15である、項1から13のいずれかに記載のガラス体。
【0019】
項15.前記半透過反射膜の熱伝導率が、前記ガラス板よりも大きい、項1から14のいずれかに記載のガラス体。
【0020】
項16.前記半透過反射膜は複数の層を積層することで形成され、
前記複数の層の少なくとも1つは、金属または半金属で形成された金属反射層である、項1から15のいずれかに記載のガラス体。
【0021】
項17.前記金属反射層は、Si,Ag,Al,Cr,Ti,及びMoの少なくとも1つを主成分とする、項16に記載のガラス体。
【0022】
項18.前記半透過反射膜の最外層は、可視光領域での屈折率が1.5以下である、項16または17に記載のガラス体。
【0023】
項19.前記最外層の主成分は、SiO2である、項18に記載のガラス体。
【0024】
項20.前記防曇手段は、防曇膜を備え、
前記防曇膜が前記半透過反射膜上に設けられる、項19に記載のガラス体。
【0025】
項21.前記防曇手段は、防曇膜を備え、
前記防曇膜の表面は、撥水化処理が施されている、項1から20のいずれかに記載のガラス体。
【0026】
項22.前記防曇膜の表面の水接触角は、70°以上である、項21に記載のガラス体。
【0027】
項23.前記防曇手段は、前記半透過反射膜上、及び前記ガラス板の前記第2面上に配置される、項1から9のいずれかに記載のガラス体。
【0028】
項24.前記防曇手段上及び前記半透過反射膜上の少なくとも一方に形成された遮光膜をさらに備えている、項1から23のいずれかに記載のガラス体。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ハーフミラーとして機能しつつ、曇りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係るガラス体の一実施形態を示す平面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1のガラス体が利用される環境の例を示す平面図である。
図4】本発明に係るガラス体の他の例を示す断面図である。
図5】本発明に係るガラス体の他の例を示す平面図である。
図6図5のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るガラス体の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1はガラス体の平面図、図2図1のA-A線断面図、図3はこのガラス体が利用される環境の一例を示す平面図である。
【0032】
<1.ガラス体の概要>
図1及び図2に示すように、このガラス体10は、2つの主面である第1面11及び第2面12を有するガラス板1と、第1面11に積層された半透過反射膜2と、第2面12に積層された防曇膜3と、を備えている。半透過反射膜2によって、ガラス体10の可視光透過率及び可視光反射率が調整されており、ガラス体10は、いわゆるハーフミラーを構成している。例えば、図3に示すように、ガラス体10を挟んで第1区域61及び第2区域62が形成されているとすると、第1区域61に配置された第1の像51からの光は、ガラス体10の表面で反射するため、ガラス体10には第1の像51が映る。その一方で、第2区域62に配置された第2の像52からの光は、ガラス体10を透過するため、第1区域61から第2区域62にある第2の像52を視認することができる。以下、これらについて詳細に説明する。
【0033】
<1-1.ガラス板>
ガラス板1は、特には限定されず、公知のガラス板を用いることができる。例えば、フロートガラス、熱線吸収ガラス、クリアガラス、グリーンガラス、UVグリーンガラス、ソーダライムガラスなど種々のガラス板を用いることができる。ガラス板1の厚みは、特には限定されないが、例えば、0.5~10mmとすることが好ましく、0.7~8mmとすることがさらに好ましい。ガラス板1の厚みは、上述した可視光透過率及び可視光反射率に影響を与えるため、要求される反射率及び透過率に応じて適宜変更することができる。
【0034】
ここで、ガラス板1がフロートガラスである場合について説明する。フロートガラスは、フロート法で製造したものである。フロートガラスはその製造方法に由来して、その2つの主面における酸化スズの濃度が異なるガラス板であることがよく知られている。つまり、フロート法では、溶融したガラスを溶融したスズの表面に流すことで平板状のガラス板を製造する。このとき、ガラス板のうち、溶融したスズと接した面には酸化スズの含有層が存在する。そして、ガラス板において、この酸化スズの含有層が存在する面を一般的にはボトム面と称し、これとは反対側のスズに接していなかった面をトップ面と称する。そして、後述するように、ボトム面における酸化スズの含有率は、トップ面における酸化スズの含有率よりも大きい。ここで、酸化スズの含有率とは、ガラスの表面から深さ10μmの範囲で、二酸化スズに換算した酸化スズの濃度の最大値である。具体的には、例えば、電子プローブマイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer: EPMA)に装着した波長分散型X線検出器(Wavelength Dispersive X-ray Detector: WDX)により測定した値に基づいて特定することができる。そして、ボトム面における酸化スズの含有率は1~10質量%であることが好ましく、トップ面における酸化スズの含有率は1%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
このようなフロートガラスをガラス板1として用いる場合には、トップ面に半透過反射膜2が積層され、ボトム面に防曇膜3を積層することができる。
【0036】
また、ガラス板1の表面粗さRaは、10nm以下であることが好ましい。これは、表面粗さが大きいと、ヘイズ率が高くなり、白濁する可能性があることによる。
【0037】
<1-2.半透過反射膜>
図2に示すように、半透過反射膜2は、一例として、ガラス板1上に積層される第1層21と、第1層21上に積層される第2層22とを有している。但し、必要に応じて、第3層、第4層等、追加の層を設けることもできる。半透過反射膜2を構成する層として、金属または半金属からなる金属反射層を用いる場合には、金属反射層の直上に低屈折率層または高屈折率層を積層した2層からなるユニットを1ユニット以上、または、金属反射層の上に低屈折率層及び高屈折率層をこの順で積層したユニットを1ユニット以上、積層することができる。金属反射層を用いない場合は、高屈折率層の上に、低屈折率層及び高屈折率層をこの順で積層したユニットを1ユニット以上積層することができる。高屈折率層の屈折率は、例えば、1.6以上であることが好ましく、1.8以上であることがさらに好ましい。低屈折率層の屈折率は、これよりも低く、例えば、1.6以下であることが好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。なお、高屈折率層及び低屈折率層は、屈折率の条件を満たせば、1つ以上の材料を積層することで形成することもできる。
【0038】
次に、半透過反射膜2の各層の材料について説明する。半透過反射膜2を構成する各層は、金属または半金属からなる層と、無機金属酸化物からなる層によって形成することができ、例えば、シリコン(Si)、SUSまたは別の好適な金属または半金属、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)、二酸化チタン(TiO2)、または別の好適な無機金属酸化物から、上述した屈折率の範囲を満たすように、適宜選択される。例えば、シリコン、二酸化ケイ素、酸化スズ、二酸化チタン、SUS、Ag、Al、Cr、Mo、Tiの屈折率は、それぞれ、約4.4,約1.4、約1.8、約2.2、約2.4、約0.14、約1.4、約2.4、約3.6、約2.7である。半透過反射膜2の層構成は、特には限定されないが、例えば、以下のようにすることができる。また、各層の電気抵抗を調整するため、添加物を適宜、ドープすることもできる。なお、例2,3の第1層のSiの代わりに、Ag,Al,Cr,Ti,またはMoを採用することもできる。
【表1】
【0039】
なお、例1及び例3では、第1層21とガラス板1との間に下地層としてSiO2を設けることができる。また、SUSを用いると、可視光吸収率が向上することができる。可視光吸収率が向上すると、可視光反射率と可視光透過率の合計値が低減するため、可視光反射率と可視光透過率の調整が容易になる。
【0040】
以上のような金属または半金属を含有する無機金属酸化物で半透過反射膜2を形成すると、広角度から半透過反射膜2を見た場合に、色調が大きく変化しないので、光学用カバーガラスとして適する。
【0041】
半透過反射膜2の膜厚(物理膜厚)は、3~300nmであることが好ましく、5~250nmであることがさらに好ましい。半透過反射膜2の膜厚が10nm未満となると、膜厚の制御が困難になり生産性が悪くなるという問題が生じる。一方、300nmを超えると、コストが高くなったり、表面の凹凸が顕著になりやヘイズ率が上昇し見栄えがよくない可能性がある。また、半透過反射膜2を構成する各層の膜厚は、半透過反射膜2の膜厚が上述した範囲となるように適宜調整することができ、特には限定されない。例えば、上記例2においては、第1層を18nm、第2層を85nm、第3層を65nmとした半透過反射膜を形成することができる。上記例4においては、シリコンの膜厚を約18nm、二酸化ケイ素の膜厚を約30nmとすることができる。その他、例1及び例3の二酸化チタンの膜厚は、約6nm、例5のSUSの膜厚は、約8nmとすることができる。
【0042】
また、例2において、第1層での反射を増反射するために、第2層に低屈折材料、第3層に高屈折材料を積層することができる。例えば、上記のように、第1層を18nm、第2層を85nm、第3層を65nmとし、半透過反射膜の光学膜厚を135nm±20nmに設定すれば、入射する光の波長λ(中心波長:550nm)に対し、光学膜厚をλ/4になるため、第1層と第2層との界面での反射を強めることができる。このようなに、各層の膜厚と屈折率を調整できるのであれば、例2に示した材料以外でもよい。
【0043】
半透過反射膜2を設けることによるガラス体10の可視光透過率は、20%以上70%以下であることが好ましく、35%以上60%以下であることがさらに好ましく、35%以上50%以下であることが特に好ましい。可視光透過率と可視光反射率は、概ねトレードオフの関係にあるため、例えば、ガラス体10の可視光反射率及び可視光透過率が同等の値であることが好ましい。但し、可視光透過率及び可視光反射率のいずれか一方が大きくなるようにすることもでき、要求されるガラス体の性能によって適宜調整することができる。例えば、可視光反射率が可視光透過率より高くなるように調整することができる。一方、ハーフミラーとしては、半透過反射膜2の可視光反射率は、30%以上80%以下であることが好ましく、40%以上70%以下であることがさらに好ましい。
【0044】
このようなガラス体10の可視光透過率及び可視光反射率は、半透過反射膜2を構成する材料や膜厚、ガラス板1の材料や厚みを変更することで調整することができる。
【0045】
また、ガラス体10の色目が変化すると好ましくない場合がある。したがって、L*,a*,b*表色系において、半透過反射膜2側からの反射色調は、a*及びb*がともに、±15以内であることが好ましく、±12以下であることがさらに好ましく、±7以下であることが特に好ましい。これらa*及びb*は、可視光透過率及び可視光反射率と同様に、半透過反射膜2を構成する材料や膜厚、ガラス板1の材料や厚みを変更することで調整することができる。a*及びb*が±15以下であれば、反射した像の光を正しく表示することができる。また、一般的に、a*及びb*が3.2~6.5であれは、「印象レベルで同じいろと扱える範囲」と言われている。さらに、一般的には、a*及びb*が3.2以下であれば、色の離間比較では、ほとんど気づかれない色調レベルと言われている。
【0046】
以下に、上記例4の半透過反射膜の光学特性を示す。第1層のシリコンの膜厚を18nm、二酸化ケイ素の膜厚を30nmとし、分光光度計(日立製作所製U4100)によって、可視光透過率及び可視光反射率を測定した。L*,a*,b*は、JIS Z8781に基づいて算出した。また、光源はD65とした。結果は、以下の通りである。
【表2】
【0047】
以上の光学特性によれば、反射における色調a*,b*は6.5以下となっている。また、透過における色調b*が大きくなっている。したがって、反射の色調が、透過の色調よりもニュートラルになっている。
【0048】
また、半透過反射膜2の熱伝導率は、ガラス板1よりも大きいことが好ましい。これにより、ガラス板1に比べ、面内の温度差を小さくすることができるため、部分的な結露を防止することができる。なお、ガラス板1の熱伝導率は、0.55~1.00[W/m・K]であるため、半透過反射膜2の熱伝導率は、これよりも大きく、1.2~200[W/m・K]であることが好ましい。
【0049】
また、半透過反射膜2の表面粗さRaは、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。これは、表面粗さが大きいと、ヘイズ率が高くなり、白濁する可能性があることによる。なお、半透過反射膜2の表面粗さRaとは、半透過反射膜2上に他の層が積層されておらず、半透過反射膜2の表面粗さRaを直接計測できる場合の表面粗さRaである。
【0050】
<1-3.半透過反射膜の成膜方法>
次に、半透過反射膜2の成膜方法について説明する。半透過反射膜2の成膜方法は特には限定されないが、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法などのいわゆる物理蒸着法、スプレー法、あるいは、化学気相法(CVD法)を採用することができる。特に、CVD法を採用する場合、オンラインCVD法を採用することが好ましい。オンラインCVD法とは、フロート法ガラス製造工程において、溶融錫浴上にある温度が615℃以上のガラスリボンのトップ面上に、コーターから半透過反射膜用の材料を供給し、熱分解酸化反応により半透過反射膜2を形成する化学蒸着法の一つである。
【0051】
半透過反射膜2の各層を成膜するには、1つのコーターから1つの材料を供給することができるが、層の膜厚が大きい場合には、2以上のコーターによって1つの層を成膜することもできる。例えば、上記例4において、シリコンの膜厚が18nm、二酸化ケイ素の膜厚が30nmである場合、第1~第3コーターを準備し、第1コーターによりシリコンを供給し、第2及び第3コーターにより二酸化ケイ素を供給することで、半透過反射膜2の成膜を行うことができる。
【0052】
なお、上述したSUSは、CVDではなく、スパッタリングにより成膜される。また、膜厚が薄い材料を成膜するには、スパッタリングを用いることが好ましい。
【0053】
<1-4.防曇膜>
防曇膜3は、ガラス板1の防曇効果を奏するものであれば、特には限定されず、公知のものを用いることができる。一般的に、防曇膜3は、水蒸気から生じる水を水膜として表面に形成する親水タイプ、水蒸気を吸収する吸水タイプ、表面に水滴が凝結しにくい撥水吸水タイプ、及び水蒸気から生じる水滴を撥水する撥水タイプがあるが、いずれのタイプの防曇膜も適用可能である。以下では、その一例として、撥水吸水タイプの防曇膜の例を説明する。
[有機無機複合防曇膜]
有機無機複合防曇膜は、ガラス板1の表面に形成された単層膜もしくは積層された複層膜である。有機無機複合防曇膜は、少なくとも吸水性樹脂と撥水基と金属酸化物成分とを含んでいる。防曇膜3は、必要に応じ、その他の機能成分をさらに含んでいてもよい。吸水性樹脂は、水を吸収して保持できる樹脂であればその種類を問わない。撥水基は、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)から防曇膜3に供給することができる。金属酸化物成分は、撥水基含有金属化合物その他の金属化合物、金属酸化物微粒子等から防曇膜3に供給することができる。以下、各成分について説明する。
【0054】
(吸水性樹脂)
吸水性樹脂としては特に制限はなく、ポリエチレングリコール、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステルポリオール、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール樹脂、ポリ酢酸ビニル、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、より好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ系樹脂及びポリウレタン樹脂であり、特に好ましいのは、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0055】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールにアルデヒドを縮合反応させてアセタール化することにより得ることができる。ポリビニルアルコールのアセタール化は、酸触媒の存在下で水媒体を用いる沈澱法、アルコール等の溶媒を用いる溶解法等公知の方法を用いて実施すればよい。アセタール化は、ポリ酢酸ビニルのケン化と並行して実施することもできる。アセタール化度は、2~40モル%、さらには3~30モル%、特に5~20モル%、場合によっては5~15モル%が好ましい。アセタール化度は、例えば13C核磁気共鳴スペクトル法に基づいて測定することができる。アセタール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂は、吸水性及び耐水性が良好である有機無機複合防曇膜の形成に適している。
【0056】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200~4500であり、より好ましくは500~4500である。高い平均重合度は、吸水性及び耐水性が良好である有機無機複合防曇膜の形成に有利であるが、平均重合度が高すぎると溶液の粘度が高くなり過ぎて膜の形成に支障をきたすことがある。ポリビニルアルコールのケン化度は、75~99.8モル%が好ましい。
【0057】
ポリビニルアルコールに縮合反応させるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルカルバルデヒド、オクチルカルバルデヒド、デシルカルバルデヒド等の脂肪族アルデヒドを挙げることができる。また、ベンズアルデヒド;2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、その他のアルキル基置換ベンズアルデヒド;クロロベンズアルデヒド、その他のハロゲン原子置換ベンズアルデヒド;ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等のアルキル基を除く官能基により水素原子が置換された置換ベンズアルデヒド;ナフトアルデヒド、アントラアルデヒド等の縮合芳香環アルデヒド等の芳香族アルデヒドを挙げることができる。疎水性が強い芳香族アルデヒドは、低アセタール化度で耐水性に優れた有機無機複合防曇膜を形成する上で有利である。芳香族アルデヒドの使用は、水酸基を多く残存させながら吸水性が高い膜を形成する上でも有利である。ポリビニルアセタール樹脂は、芳香族アルデヒド、特にベンズアルデヒドに由来するアセタール構造を含むことが好ましい。
【0058】
エポキシ系樹脂としては、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、環式脂肪族エポキシ樹脂である。
【0059】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネートとポリオールとで構成されるポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリオールとしては、アクリルポリオール及びポリオキシアルキレン系ポリオールが好ましい。
【0060】
有機無機複合防曇膜は、吸水性樹脂を主成分とする。本発明において、「主成分」とは、質量基準で含有率が最も高い成分を意味する。有機無機複合防曇膜の重量に基づく吸水性樹脂の含有率は、膜硬度、吸水性及び防曇性の観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは65重量%以上であり、95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
【0061】
(撥水基)
撥水基による上述の効果を十分に得るためには、撥水性が高い撥水基を用いることが好ましい。好ましい撥水基は、(1)炭素数3~30の鎖状又は環状のアルキル基、及び(2)水素原子の少なくとも一部をフッ素原子により置換した炭素数1~30の鎖状又は環状のアルキル基(以下、「フッ素置換アルキル基」ということがある)から選ばれる少なくとも1種である。
【0062】
(1)及び(2)に関し、鎖状又は環状のアルキル基は、鎖状アルキル基であることが好ましい。鎖状アルキル基は、分岐を有するアルキル基であってもよいが、直鎖アルキル基が好ましい。炭素数が30を超えるアルキル基は、防曇膜3を白濁させることがある。膜の防曇性、強度及び外観のバランスの観点から、アルキル基の炭素数は、20以下が好ましく、6~14がより好ましい。特に好ましいアルキル基は、炭素数6~14、特に炭素数6~12の直鎖アルキル基、例えばn-ヘキシル基(炭素数6)、n-デシル基(炭素数10)、n-ドデシル基(炭素数12)である。(2)に関し、フッ素置換アルキル基は、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子の一部のみをフッ素原子により置換した基であってもよく、鎖状又は環状のアルキル基の水素原子のすべてをフッ素原子により置換した基、例えば直鎖状のパーフルオロアルキル基、であってもよい。フッ素置換アルキル基は撥水性が高いため、少ない量の添加によって十分な効果を得ることができる。ただし、フッ素置換アルキル基は、その含有量が多くなり過ぎると、膜を形成するための塗工液中でその他の成分から分離することがある。
【0063】
(撥水基を有する加水分解性金属化合物)
撥水基を防曇膜3に配合するためには、撥水基を有する金属化合物(撥水基含有金属化合物)、特に撥水基と加水分解可能な官能基又はハロゲン原子とを有する金属化合物(撥水基含有加水分解性金属化合物)又はその加水分解物を、膜を形成するための塗工液に添加するとよい。言い換えると、撥水基は、撥水基含有加水分解性金属化合物に由来するものであってもよい。撥水基含有加水分解性金属化合物としては、以下の式(I)に示す撥水基含有加水分解性シリコン化合物が好適である。
mSiY4-m(I)
ここで、Rは、撥水基、すなわち水素原子の少なくとも一部がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~30の鎖状又は環状のアルキル基であり、Yは加水分解可能な官能基又はハロゲン原子であり、mは1~3の整数である。加水分解可能な官能基は、例えば、アルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくはアルコキシ基、特に炭素数1~4のアルコキシ基である。アルケニルオキシ基は、例えばイソプロペノキシ基である。ハロゲン原子は、好ましくは塩素である。なお、ここに例示した官能基は、以降に述べる「加水分解可能な官能基」としても使用することができる。mは好ましくは1~2である。
【0064】
式(I)により示される化合物は、加水分解及び重縮合が完全に進行すると、以下の式(II)により表示される成分を供給する。
mSiO(4-m)/2(II)
ここで、R及びmは、上述したとおりである。加水分解及び重縮合の後、式(II)により示される化合物は、実際には、防曇膜3中において、シリコン原子が酸素原子を介して互いに結合したネットワーク構造を形成する。
【0065】
このように、式(I)により示される化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらには少なくとも一部が重縮合して、シリコン原子と酸素原子とが交互に接続し、かつ三次元的に広がるシロキサン結合(Si-O-Si)のネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に含まれるシリコン原子には撥水基Rが接続している。言い換えると、撥水基Rは、結合R-Siを介してシロキサン結合のネットワーク構造に固定される。この構造は、撥水基Rを膜に均一に分散させる上で有利である。ネットワーク構造は、式(I)により示される撥水基含有加水分解性シリコン化合物以外のシリコン化合物(例えば、テトラアルコキシシラン、シランカップリング剤)から供給されるシリカ成分を含んでいてもよい。撥水基を有さず加水分解可能な官能基又はハロゲン原子を有するシリコン化合物(撥水基非含有加水分解性シリコン化合物)を撥水基含有加水分解性シリコン化合物と共に防曇膜3を形成するための塗工液に配合すると、撥水基と結合したシリコン原子と撥水基と結合していないシリコン原子とを含むシロキサン結合のネットワーク構造を形成できる。このような構造とすれば、防曇膜中における撥水基の含有率と金属酸化物成分の含有率とを互いに独立して調整することが容易になる。
【0066】
撥水基は、吸水性樹脂を含む防曇膜3の表面における水蒸気の透過性を向上させることにより防曇性能を向上させる効果がある。吸水と撥水という2つの機能は互いに相反するため、吸水性材料と撥水性材料とは、従来、別の層に振り分けて付与されてきたが、撥水基は、防曇膜の表面近傍における水の偏在を解消して結露までの時間を引き延ばし、単層構造を有する防曇膜の防曇性を向上させる。以下ではその効果を説明する。
【0067】
吸水性樹脂を含む防曇膜3へと侵入した水蒸気は、吸水性樹脂等の水酸基と水素結合し、結合水の形態で保持される。量が増加するにつれ、水蒸気は、結合水の形態から半結合水の形態を経て、ついには防曇膜中の空隙に保持される自由水の形態で保持されるようになる。防曇膜3において、撥水基は、水素結合の形成を妨げ、かつ形成した水素結合の解離を容易にする。吸水性樹脂の含有率が同じであれば、膜中における水素結合可能な水酸基の数には差がないが、撥水基は水素結合の形成速度を低下させる。したがって、撥水基を含有する防曇膜3において、水分は、最終的には上記のいずれかの形態で膜に保持されることになるが、保持されるまでには膜の底部まで水蒸気のまま拡散することができる。また、一旦保持された水も、比較的容易に解離し、水蒸気の状態で膜の底部まで移動しやすい。結果的に、膜の厚さ方向についての水分の保持量の分布は、表面近傍から膜の底部まで比較的均一になる。つまり、防曇膜の厚さ方向の全てを有効に活用し、膜表面に供給された水を吸収することができるため、表面に水滴が凝結しにくく、防曇性が高くなる。さらに、表面に水滴が凝結しにくいことにより、水分を吸収した防曇膜3は、低温でも凍結しにくいという特徴を有する。
【0068】
一方、撥水基を含まない防曇膜3においては、膜中に侵入した水蒸気は極めて容易に結合水、半結合水又は自由水の形態で保持される。したがって、侵入した水蒸気は、膜の表面近傍で保持される傾向にある。結果的に、膜中の水分は、表面近傍が極端に多く、膜の底部へ進むにつれて急速に減少する。つまり、膜の底部では未だ水を吸収できるにも拘わらず、膜の表面近傍では水分により飽和して水滴として凝結するため、防曇性が限られたものとなる。
【0069】
撥水基含有加水分解性シリコン化合物(式(I)参照)を用いて撥水基を防曇膜に導入すると、強固なシロキサン結合(Si-O-Si)のネットワーク構造が形成される。このネットワーク構造の形成は、耐摩耗性のみならず、硬度、耐水性等を向上させる観点からも有利である。
【0070】
撥水基は、防曇膜3の表面における水の接触角が70度以上、好ましくは80度以上、より好ましくは90度以上になる程度に添加するとよい。水の接触角は、4mgの水滴を膜の表面に滴下して測定した値を採用することとする。特に撥水性がやや弱いメチル基又はエチル基を撥水基として用いる場合は、水の接触角が上記の範囲となる量の撥水基を防曇膜3に配合することが好ましい。この水滴の接触角は、その上限が特に制限されるわけではないが、例えば150度以下、また例えば120度以下、さらには100度以下である。撥水基は、防曇膜3の表面のすべての領域において上記水滴の接触角が上記の範囲となるように、防曇膜3に均一に含有させることが好ましい。
【0071】
なお、防曇膜3の表面を撥水化することもできる。これにより、防曇膜3へのアルカリ成分の侵入を抑制でき、ガラス板1の表面をアルカリ成分から保護することができる。
【0072】
防曇膜3は、吸水性樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上の範囲内となるように、また、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、の範囲内となるように、撥水基を含むことが好ましい。
【0073】
(無機酸化物)
無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、少なくとも、Siの酸化物(シリカ)を含む。有機無機複合防曇膜は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上、さらに好ましくは0.2重量部以上、特に好ましくは1重量部以上、最も好ましくは5重量部以上、場合によっては10重量部以上、必要であれば20重量部以上、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは45重量部以下、さらに好ましくは40重量部以下、特に好ましくは35重量部以下、最も好ましくは33重量部以下、場合によっては30重量部以下となるように、無機酸化物を含むことが好ましい。無機酸化物は、有機無機複合防曇膜の強度、特に耐摩耗性を確保するために必要な成分であるが、その含有量が多くなると、有機無機複合防曇膜の防曇性が低下する。
【0074】
(無機酸化物微粒子)
有機無機複合防曇膜は、無機酸化物の少なくとも一部として、無機酸化物微粒子をさらに含んでいてもよい。無機酸化物微粒子を構成する無機酸化物は、例えば、Si、Ti、Zr、Ta、Nb、Nd、La、Ce及びSnから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、好ましくはシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、例えば、コロイダルシリカを添加することにより有機無機複合防曇膜に導入できる。無機酸化物微粒子は、有機無機複合防曇膜に加えられた応力を、有機無機複合防曇膜を支持する物品に伝達する作用に優れ、硬度も高い。したがって、無機酸化物微粒子の添加は、有機無機複合防曇膜の耐摩耗性を向上させる観点から有利である。また、有機無機複合防曇膜に無機酸化物微粒子を添加すると、微粒子が接触又は近接している部位に微細な空隙が形成され、この空隙から膜中に水蒸気が取り込まれやすくなる。このため、無機酸化物微粒子の添加は、防曇性の向上に有利に作用することもある。無機酸化物微粒子は、有機無機複合防曇膜を形成するための塗工液に、予め形成した無機酸化物微粒子を添加することにより、有機無機複合防曇膜に供給することができる。
【0075】
無機酸化物微粒子の平均粒径が大きすぎると、有機無機複合防曇膜が白濁することがあり、小さすぎると凝集して均一に分散させることが困難となる。この観点から、無機酸化物微粒子の平均粒径は、好ましくは1~20nmであり、より好ましくは5~20nmである。なお、ここでは、無機酸化物微粒子の平均粒径を、一次粒子の状態で記述している。また、無機酸化物微粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡を用いた観察により任意に選択した50個の微粒子の粒径を測定し、その平均値を採用して定めることとする。無機酸化物微粒子は、その含有量が多くなると、有機無機複合防曇膜全体の吸水量が低下し、有機無機複合防曇膜が白濁するおそれがある。無機酸化物微粒子は、吸水性樹脂100重量部に対し、好ましくは0~50重量部であり、より好ましくは2~30重量部、さらに好ましくは5~25重量部、特に好ましくは10~20重量部となるように添加するとよい。
【0076】
(撥水基を有しない加水分解性金属化合物)
防曇膜は、撥水基を有しない加水分解性金属化合物(撥水基非含有加水分解性化合物)に由来する金属酸化物成分を含んでいてもよい。好ましい撥水基非含有加水分解性金属化合物は、撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物である。撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、例えば、シリコンアルコキシド、クロロシラン、アセトキシシラン、アルケニルオキシシラン及びアミノシランから選ばれる少なくとも1種のシリコン化合物(ただし、撥水基を有しない)であり、撥水基を有しないシリコンアルコキシドが好ましい。なお、アルケニルオキシシランとしては、イソプロペノキシシランを例示できる。
【0077】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物は、以下の式(III)に示す化合物であってもよい。
SiY4(III)
上述したとおり、Yは、加水分解可能な官能基であって、好ましくはアルコキシル基、アセトキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1つである。
【0078】
撥水基非含有加水分解性金属化合物は、加水分解又は部分加水分解し、さらに、少なくともその一部が重縮合して、金属原子と酸素原子とが結合した金属酸化物成分を供給する。この成分は、金属酸化物微粒子と吸水性樹脂とを強固に接合し、防曇膜の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。撥水基を有しない加水分解性金属化合物に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0~40質量部、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~20質量部、特に好ましくは3~10質量部、場合によっては4~12質量部の範囲とするとよい。
【0079】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい一例は、テトラアルコキシシラン、より具体的には炭素数が1~4のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン及びテトラ-tert-ブトキシシランから選ばれる少なくとも1種である。
【0080】
テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇膜の防曇性が低下することがある。防曇膜の柔軟性が低下し、水分の吸収及び放出に伴う膜の膨潤及び収縮が制限されることが一因である。テトラアルコキシシランに由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0~30質量部、好ましくは1~20質量部、より好ましくは3~10質量部の範囲で添加するとよい。
【0081】
撥水基を有しない加水分解性シリコン化合物の好ましい別の一例は、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、互いに異なる反応性官能基を有するシリコン化合物である。反応性官能基は、その一部が加水分解可能な官能基であることが好ましい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシ基及び/又はアミノ基と加水分解可能な官能基とを有するシリコン化合物である。好ましいシランカップリング剤としては、グリシジルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びアミノアルキルトリアルコキシシランを例示できる。これらのシランカップリング剤において、シリコン原子に直接結合しているアルキレン基の炭素数は1~3であることが好ましい。グリシジルオキシアルキル基及びアミノアルキル基は、親水性を示す官能基(エポキシ基、アミノ基)を含むため、アルキレン基を含むものの、全体として撥水性ではない。
【0082】
シランカップリング剤は、有機成分である吸水性樹脂と無機成分である金属酸化物微粒子等とを強固に結合し、防曇膜3の耐摩耗性、硬度、耐水性等の向上に寄与しうる。しかし、シランカップリング剤に由来する金属酸化物(シリカ)成分の含有量が過大となると、防曇膜3の防曇性が低下し、場合によっては防曇膜3が白濁する。シランカップリング剤に由来する金属酸化物成分は、吸水性樹脂100質量部に対し、0~10質量部、好ましくは0.05~5質量部、より好ましくは0.1~2質量部の範囲で添加するとよい。
【0083】
(架橋構造)
防曇膜3は、架橋剤、好ましくは有機ホウ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤、に由来する架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造の導入は、防曇膜3の耐摩耗性、耐擦傷性、耐水性を向上させる。別の観点から述べると、架橋構造の導入は、防曇膜3の防曇性能を低下させることなくその耐久性を改善することを容易にする。
【0084】
金属酸化物成分がシリカ成分である防曇膜3に架橋剤に由来する架橋構造を導入した場合、その防曇膜は、金属原子としてシリコンと共にシリコン以外の金属原子、好ましくはホウ素、チタン又はジルコニウム、を含有することがある。
【0085】
架橋剤は、用いる吸水性樹脂を架橋できるものであれば、その種類は特に限定されない。ここでは、有機チタン化合物についてのみ例を挙げる。有機チタン化合物は、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート系化合物及びチタンアシレートから選ばれる少なくとも1つである。チタンアルコキシドは、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-ブトキシド、チタンテトラオクトキシドである。チタンキレ-ト系化合物は、例えば、チタンアセチルアセトナート、チタンアセト酢酸エチル、チタンオクチレングリコール、チタントリエタノールアミン、チタンラクテートである。チタンラクテートは、アンモニウム塩(チタンラクテートアンモニウム)であってもよい。チタンアシレートは、例えばチタンステアレートである。好ましい有機チタン化合物は、チタンキレート系化合物、特にチタンラクテートである。
【0086】
吸水性樹脂がポリビニルアセタールである場合の好ましい架橋剤は、有機チタン化合物、特にチタンラクテートである。
【0087】
(その他の任意成分)
防曇膜3にはその他の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、防曇性を改善する機能を有するグリセリン、エチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。添加剤は、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、着色剤、消泡剤、防腐剤等であってもよい。
【0088】
(下地層)
防曇膜3は、ガラス板1に直接積層することもできるが、ガラス板1上に下地層を形成し、その上に、防曇膜3を積層することもできる。このように下地層を介して、防曇膜3をガラス板1上に積層することで、防曇膜3を剥がれにくくすることができる。下地層は、例えば、シランカップリング剤等を採用することができる。
【0089】
[膜厚]
有機無機複合防曇膜の膜厚は、要求される防曇特性その他に応じて適宜調整すればよい。有機無機複合防曇膜の厚みは、好ましくは2~15μmであり、より好ましくは2~12μm、さらに好ましくは3~10μmである。防曇膜3の厚みが2μm以上であれば、十分な防曇効果を得ることができる。一方、防曇膜3が厚すぎると、膜厚のムラにより反射像が歪むおそれがある。また、防曇膜3は、上記のように樹脂材料から形成されており、複屈折率を有するため、厚すぎると像がぼやけるおそれがある。
【0090】
また、上記とは異なる観点で防曇膜3の厚みを決定することもできる。防曇膜3は、ガラス板1に密着しているため、例えば、防曇膜3の厚みが5μm以上であれば、ガラス板1が割れたときに破片が飛散するのを防止することができるため、好ましい。この観点からは、防曇膜3の厚みが10μm以上であることがさらに好ましい。また、防曇膜3の光学膜厚の差が、150nm以上であることが好ましい。なお、光学膜厚の差とは、防曇膜3を観察したときの最小膜厚と最大膜厚の差に防曇膜の屈折率を掛けたものである。
【0091】
<1-5.防曇膜と干渉縞の関係>
防曇膜3を形成したときに、ガラス体10において生じ得る干渉縞について、本発明者により、以下の知見が得られている。
(1)干渉縞が生じた場合、例えば、可視光反射率が30%以上の半透過反射膜2は、反射率が高いため、干渉縞が鮮明になる。
【0092】
(2)半透過反射膜2上に防曇膜3を形成すると、防曇膜3の光学膜厚の差が150nm以上のときは光学膜厚の差による位相のずれが大きいので、干渉縞が見えやすくなる。
【0093】
(3)防曇膜3の膜厚を10μm以上にすることで防曇膜3に入射した可視光は、入射した面と反対側の防曇膜3の界面に到達した時点で波面の規則性が不鮮明または消滅することで、防曇膜3の膜厚ばらつきによる干渉縞を不鮮明または消滅することができる。これは、以下の理由による。
【0094】
まず、ガラス体10に入射する光は、自然光、ランプ光などのインコヒーレンス光であるのが一般的ではあるが、インコヒーレンス光は、入射する光の波面は揃っていない。そして、インコヒーレンス光は、光路長が短いと、入射面での光の波面は、規則性が見られ、干渉縞が生じる。一方、光路長が長いと、入射面で見られた波面の規則性が分かり難くなり、可干渉距離より長くなると入射面で見られた波面の規則性は無くなる。したがって、光路長が長いと、反射した光は波面の規則性が分かり難くなり、入射面で反射した光との干渉縞が不鮮明になる。さらに、光路長が可干渉距離より長いと、干渉縞が消滅する。
【0095】
<1-6.防曇膜の成膜方法>
次に、防曇膜3の成膜方法について説明する。防曇膜3の成膜方法は、特には限定されないが、例えば、上述した有機無機複合防曇膜3は、有機無機複合防曇膜を形成するための塗工液を透明基板等のガラス板1上に塗布し、塗布した塗工液を乾燥させることにより、成膜することができる。塗工液の調製に用いる溶媒、塗工液の塗布方法は、公知の材料及び方法を用いればよい。このとき、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、有機無機複合防曇膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、有機無機複合防曇膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。
【0096】
塗工液の乾燥工程は、風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むことが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に塗工液を曝すことにより、実施するとよい。風乾工程は、非加熱工程として、言い換えると室温で実施できる。塗工液に加水分解性シリコン化合物が含まれている場合、加熱乾燥工程では、シリコン化合物の加水分解物等に含まれるシラノール基及び物品上に存在する水酸基が関与する脱水反応が進行し、シリコン原子と酸素原子とからなるマトリックス構造(Si-O結合のネットワーク)が発達する。風乾工程は、例えば、約10分間行うことができる。
【0097】
吸水性樹脂等の有機物の分解を避けるべく、加熱乾燥工程において適用する温度は過度に高くしないほうがよい。この場合の適切な加熱温度は、300℃以下、例えば100~200℃である。具体的には、3つの工程を行うことができる。例えば、温度約120℃で約5分間焼成し、温度約80度、湿度90%で約2時間乾燥した後、温度約120℃で約30分間焼成する。こうして、防曇膜3の成膜が完了する。
【0098】
<1-7.ガラス体のヘイズ率>
ガラス体10は、ハーフミラーではあるが、物品のカバーとして用いることができる。そのため、ガラス体10を透過して物品を視認できるように、ガラス体のヘイズ率が低いことが好ましい。例えば、ガラス体10のヘイズ率は、2.0%以下が好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。
【0099】
ヘイズ率の測定は、例えば、積分球式光線透過率測定装置(スガ試験機(株)製、「HGM-2DP」、C光源使用、膜面側から光入射)を用いることができる。測定においては、半透過反射膜2または防曇膜3のいずれの側からでも測定することができる。
【0100】
<2.特徴>
本実施形態に係るガラス体10は、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態に係るガラス体10は、可視光反射率及び可視光透過率が調整された半透過反射膜2を有しているため、ハーフミラーとして利用することができる。また、防曇膜3を有しているため、ガラス板1の曇りを抑制することができる。
【0101】
(2)本実施形態では、ガラス板1の第1面11に半透過反射膜を積層し、第2面12に防曇膜3を積層しているため、次の利点がある。
【0102】
(2-1) 例えば、半透過反射膜2上に防曇膜3を積層すると、光源によっては、干渉縞が生じることがあるが、ガラス板1の各面11,12に半透過反射膜2及び防曇膜3を積層すると、干渉縞が生じるのを抑制することができる。
【0103】
(2-2) ガラス板1がフロートガラスの場合、酸化スズの含有率の高いボトム面では、ガラス板1に含有されるアルカリ成分の析出が抑えられる。したがって、ガラス板1のボトム面に防曇膜3を積層すると、アルカリ成分により防曇膜3が白化するなどの劣化を抑制することができる。特に、防曇膜3が有機無機複合防曇膜であると、アルカリ成分により劣化しやすい。そのため、ガラス板1のボトム面に防曇膜3を積層すると有利である。一方、ガラス板1のトップ面は、酸化スズの含有率が低いため、ボトム面に比べてアルカリ成分が析出しやすいが、半透過反射膜2は無機金属酸化物によって形成されているため、アルカリ成分の影響を受けにくく、劣化が抑制される。
【0104】
(2-3) ガラス板1に防曇膜3を積層すると、半透過反射膜2に防曇膜3を積層するよりも密着性を高くすることができる。これは、ガラス板1と防曇膜3とは、シラノール結合により密着するからである。
【0105】
(3)上記のように、半透過反射膜2またはガラス板1の表面粗さRaが小さいと、ヘイズ率は小さくできるが、表面粗さRaが小さいと、結露時に水滴が付着しやすく、曇りが生じやすくなるおそれがある。そこで、本実施形態では、ガラス板1の第2面12に防曇膜3を積層し、水滴が付着しやすいガラス板1の第2面12の曇りを抑制している。なお、表面粗さRaが大きいと、結露時に、水膜が成形されやすくなり、これによって水分の表面積が大きくなるため、蒸発しやすく、曇りにくくなる。
【0106】
なお、ガラス体10の向きは、特には限定されないが、曇りが生じやすい側、例えば、温度が高い側に、防曇膜3を向けることが好ましい。
【0107】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
【0108】
<3-1>
上記実施形態では、ガラス板1の第2面12に防曇膜3を積層したが、例えば、図4に示すように、半透過反射膜2上に防曇膜3を積層することもできる。これにより、次の効果を得ることができる。
(1) 半透過反射膜2の熱伝導率が、ガラス板1の熱伝導率よりも大きい場合には、例えば、ガラス体10において、ガラス板1側が冷やされていると、半透過反射膜2側の熱が、半透過反射膜2に伝わりやすくなり、曇りが生じやすくなる。したがって、半透過反射膜2上に防曇膜3を積層すれば、このような曇りを抑制することができる。
【0109】
(2) 例えば、半透過反射膜2の最外層がSiO2であると、SiO2は耐アルカリ性能が低いため、アルカリ系の洗剤で半透過反射膜を洗浄した場合、SiO2がアルカリ成分によって劣化するおそれがある。したがって、SiO2を防曇膜3で覆うと、SiO2をアルカリ成分から保護することができる。特に、防曇膜3の表面を撥水化すると、防曇膜3へのアルカリ成分の浸入を抑制でき、SiO2をさらに保護することができる。
【0110】
(3) 防曇膜3がガラス板1に直接接しないため、ガラス板1から析出するアルカリ成分が防曇膜3に接触し、防曇膜3が、白化等の劣化するのを防止することができる。
【0111】
なお、防曇膜3を半透過反射膜2上に積層すると、上記のように干渉縞が生じやすくなるおそれがある。この場合には、防曇膜3と半透過反射膜2との屈折率の差を小さくすることが好ましい。具体的には、屈折率の差が0.1以下であることが好ましい。屈折率の差を小さくすると、防曇膜3と半透過反射膜2との界面での反射が抑制され、干渉を抑制することができる。また、屈折率の差が小さいと光の振幅が小さくなり、干渉縞が見えにくくなる。さらに、防曇膜3の屈折率は、1.6以下とすると、干渉縞をより抑制することができる。
【0112】
<3-2>
防曇膜3を、半透過反射膜2上及びガラス板1の第2面12上の両方に積層することもできる。
【0113】
<3-3>
上記実施形態では、ガラス板1の第2面12に防曇膜3を直接積層したが、防曇シートを貼り付けることもできる。防曇シートは、シート状の透明のフィルム基材と、フィルム基材の一方の面上に積層された上記防曇層と、フィルム基材の他方の面上に積層された透明の粘着層と、を備えている。そして、粘着層を、ガラス板1の第2面12に固定すれば、防曇シートをガラス板1に固定することができる。
【0114】
フィルム基材は、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの透明の樹脂シートにより形成することができる。フィルム基材の厚みは、例えば、10~100μmにすることができ、75~100μmであることがさらに好ましい。フィルム基材の厚みが10μm以上であると、半透過反射膜2と防曇膜3との干渉縞の発生を抑制することができる。粘着層は、例えば、アクリル系、シリコーン系の接着剤により形成することができる。なお、このような防曇シートは、半透過反射膜2上に貼り付けることもできる。この場合、フィルム基材が十分な厚さを有することから、干渉縞を抑制することができる。
【0115】
<3-3>
防曇膜3上に、遮光膜を形成することもできる。例えば、図5及び図6に示すように、ガラス体10の周縁に沿って遮光膜4を形成することができるが、遮光膜4の形状は特には限定されず、遮光を行うべき領域に適宜形成すればよい。遮光膜4を構成する材料は、遮光性があれば、特には限定されないが、例えば、黒色、茶色、灰色、濃紺等の濃色のインキを印刷によって防曇膜3上に積層することができる。具体的な材料として、遮光膜4は、例えば、色素顔料を混入したウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等の樹脂等を用いることができる。遮光膜3の厚みは、特には限定されないが、例えば、30~100μmとすることができる。また、濃色のフィルムを遮光膜として防曇膜3に貼り付けることができる。なお、遮光性とは、例えば、可視光透過率が20%以下であることを意味する。
【0116】
但し、遮光膜4の内縁、つまり遮光膜4と遮光膜4が積層されていない領域との境界が目立つのを抑制するため、遮光膜4を濃色ではなく、顔料を調整することで、暖色等にすることもできる。例えば、遮光膜4の色を、L*,a*,b*表色系(CIE規格)において、色度a*が-10~50,色度b*が-10~50,色度L*が10~100とすることができる。色度a*は、0~30が好ましく、5~20がさらに好ましい。色度b*は、0~30が好ましく、5~20がさらに好ましい。また、色度L*は、10~50が好ましく、10~30がさらに好ましい。これにより、第2区域62側から見たときに遮光膜4の境界が目立つのを抑制することができる。
【0117】
なお、以上の説明では、遮光膜4を防曇膜3に形成した例を示したが、同様にして、半透過反射膜2に形成することもできる。あるいは、遮光膜4を防曇膜3上及び半透過反射膜2上の両方に形成することもできる。
【0118】
<3-4>
ガラス板1の形状は特には限定されず、種々の形状が可能である。また、半透過反射膜2及び防曇膜3は、ガラス板1の全面に亘って形成する必要はなく、ガラス板1において必要な面積に形成すればよい。
【符号の説明】
【0119】
1 ガラス板
2 半透過反射膜
3 防曇膜
4 遮光膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6