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特開2024-159952パームリジェクションの方法及びセンサコントローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024159952
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】パームリジェクションの方法及びセンサコントローラ
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20241031BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20241031BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G06F3/041 534
G06F3/03 400
G06F3/044
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024148615
(22)【出願日】2024-08-30
(62)【分割の表示】P 2020149621の分割
【原出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(72)【発明者】
【氏名】宮本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】原 英之
(57)【要約】
【課題】タッチ検出などアクティブペンの検出と異なるプロセスによる検出の結果に依存せず、アクティブペンの指示位置からパームの接触位置を除外できるようにする。
【解決手段】複数のセンサ電極に接続され、アクティブペンから送信されたダウンリンク信号を検出するセンサコントローラにより実行されるパームリジェクションの方法であって、ダウンリンク信号に含まれるプリアンブルに基づいて検出されたダウンリンク信号の位相がセンサコントローラとアクティブペンとの間で事前に共有された位相と合致しているか否かを判定するステップS10と、により合致していると判定された場合に、ダウンリンク信号の複数のセンサ電極におけるレベルの分布に基づいて導出されるアクティブペンの位置を出力するステップS12と、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサ電極に接続され、アクティブペンから送信されたダウンリンク信号を検出するセンサコントローラにより実行されるパームリジェクションの方法であって、
前記ダウンリンク信号は、前記センサコントローラと前記アクティブペンとの間で事前に共有された所定波形の部分を含み、
前記ダウンリンク信号に含まれるプリアンブルに基づいて検出された前記ダウンリンク信号に含まれる前記所定波形の部分の位相が反転しているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより反転していないと判定された場合に、前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極におけるレベルの分布に基づいて導出される前記アクティブペンの位置を出力する出力ステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記出力ステップは、前記判定ステップにより反転していると判定された場合に、前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極におけるレベルの分布に基づいて導出される前記アクティブペンの位置を出力しない、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定波形の部分は、前記センサコントローラと前記アクティブペンとの間で事前に共有された所定データを変調してなる部分である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定データは、プリアンブル、スタートビット、ストップビットのいずれかである、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記判定ステップは、前記ダウンリンク信号を復調することによって得られるシンボル列に前記所定データが含まれていた場合に、検出された前記ダウンリンク信号に含まれる前記所定波形の部分の位相は反転していないと判定し、該シンボル列に、前記ダウンリンク信号に含まれる前記所定波形の部分の位相が反転していた場合に前記ダウンリンク信号を復調することによって得られるシンボル列のうちの前記所定データに対応する部分である反転データが含まれていた場合に、検出された前記ダウンリンク信号に含まれる前記所定波形の部分の位相が反転していると判定する、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記センサコントローラと前記アクティブペンとは、互いに同期した状態で双方向に通信可能に構成され、
前記判定ステップは、前記ダウンリンク信号に前記所定データが含まれるタイミングで、前記ダウンリンク信号を復調することによって得られるシンボル列に前記所定データ又は前記反転データが含まれているか否かを判定する処理を行う、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記センサコントローラは複数の受信部を含み、
前記複数の受信部はそれぞれ前記ダウンリンク信号を受信するよう構成され、
前記判定ステップは、前記複数の受信部のそれぞれにおいて検出された前記ダウンリンク信号に含まれる前記所定波形の部分の位相が反転しているか否かを判定し、
前記出力ステップは、前記判定ステップにより、前記所定波形の部分の位相が反転していないと判定された前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極におけるレベルの分布に基づいて導出される前記アクティブペンの位置を出力する一方、前記判定ステップにより、前記所定波形の部分の位相が反転していると判定された前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極におけるレベルの分布に基づいて導出される前記アクティブペンの位置を出力しない、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記センサコントローラは、
前記複数のセンサ電極それぞれにおける前記ダウンリンク信号の受信レベル値に基づいて複数の位置を導出し、
導出した複数の位置のそれぞれに互いに異なる前記受信部を割り当て、
割り当てた前記受信部のそれぞれに対し、対応する位置に最も近い1本の前記センサ電極を接続し、
前記判定ステップは、いずれかの前記センサ電極に接続された前記受信部において検出された前記ダウンリンク信号に含まれる前記所定波形の部分の位相が反転しているか否かを判定する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数のセンサ電極に接続され、アクティブペンから送信された所定周波数又は所定波形のダウンリンク信号を検出するセンサコントローラであって、
前記ダウンリンク信号は、前記センサコントローラと前記アクティブペンとの間で事前に共有された所定波形の部分を含み、
前記ダウンリンク信号に含まれるプリアンブルに基づいて検出した前記ダウンリンク信号に含まれる前記所定波形の部分の位相が反転しているか否かを判定し、
反転していないと判定した場合に、前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極におけるレベルの分布に基づいて導出される前記アクティブペンの位置を出力する、
センサコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パームリジェクションの方法及びセンサコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブペンによるペン入力を実現する位置検出器が知られている。アクティブペンは、ペン先に設けられたペン先電極からダウンリンク信号を送信するように構成された電子ペンである。位置検出器は、タッチ面内に配置された複数のセンサ電極のそれぞれにおいてダウンリンク信号の検出を試み、その結果に基づいてアクティブペンの指示位置を検出するよう構成される。
【0003】
ところで、ダウンリンク信号は、アクティブペンの筐体を通じ、アクティブペンを保持しているユーザの人体にも伝わる。そうすると、ペン先電極だけでなくユーザの掌(パーム)からもダウンリンク信号が送信されてしまうので、ユーザがタッチ面に手をついていると、パームから送信されたダウンリンク信号もセンサ電極によって検出されてしまう。この検出の結果に基づいて検出される位置はアクティブペンの指示位置を正しく反映したものとは言えないので、アクティブペンの指示位置から除外する必要がある。以下では、アクティブペンの指示位置からパームの接触位置を除外することを「パームリジェクション」と称する。
【0004】
特許文献1には、パームリジェクションを実現するための技術の一例が開示されている。この技術では、指によるタッチの検出結果をダウンリンク信号の受信結果に組み合わせることで、ダウンリンク信号の検出された位置がパームの接触位置なのかアクティブペンの指示位置なのかが判定され、その結果に基づいて、アクティブペンの指示位置からパームの接触位置が除外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/225204号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のパームリジェクションでは、タッチ検出の結果が必要となる。したがって、タッチ検出を止め、アクティブペンの検出のみを行うモード(ペンオンリーモード)では、実行することができない。
【0007】
また、特許文献1に記載のパームリジェクションにおいてパームの接触位置を正しく判定するためには、タッチ検出においてパームの接触により検出される領域の面積が、通常の指の接触により検出される領域と区別できる程度に広い必要がある。したがって、パームによるタッチが軽いものに留まり、通常の指による接触と区別できない程度の領域でしか検出されない場合には、正しく判定を行うことができない。
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、タッチ検出などアクティブペンの検出と異なるプロセスによる検出の結果に依存せず、アクティブペンの指示位置からパームの接触位置を除外できるパームリジェクションの方法及びセンサコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるパームリジェクションの方法は、複数のセンサ電極に接続され、アクティブペンから送信されたダウンリンク信号を検出するセンサコントローラにより実行されるパームリジェクションの方法であって、検出された前記ダウンリンク信号の位相が前記センサコントローラと前記アクティブペンとの間で事前に共有された位相と合致しているか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにより合致していると判定された場合に、前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極におけるレベルの分布に基づいて導出される前記アクティブペンの位置を出力する出力ステップと、を含む方法である。
【0010】
本発明によるセンサコントローラは、複数のセンサ電極に接続され、アクティブペンから送信された所定周波数又は所定波形のダウンリンク信号を検出するセンサコントローラであって、検出した前記ダウンリンク信号の位相が前記センサコントローラと前記アクティブペンとの間で事前に共有された位相と合致しているか否かを判定し、合致していると判定した場合に、前記ダウンリンク信号の前記複数のセンサ電極におけるレベルの分布に基づいて導出される前記アクティブペンの位置を出力する、センサコントローラである。
【発明の効果】
【0011】
人体が十分に接地されていないと仮定すると、人体を経由して検出されるダウンリンク信号は、ペン先電極を経由して検出されるダウンリンク信号と比べて位相が反転した信号となる。本発明によれば、ダウンリンク信号の位相を判定しているので、人体を経由して検出されたダウンリンク信号に基づいて導出された位置を特定することができる。したがって、タッチ検出などアクティブペンの検出と異なるプロセスによる検出の結果に依存せず、アクティブペンの指示位置からパームの接触位置を除外することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態による電子機器1の構成を示す図である。
図2】センサ電極群兼ディスプレイ4の詳細を示す図である。
図3】アクティブペンPEが送信するダウンリンク信号DSのフォーマットを示す図である。
図4】データ信号の変調処理を説明する図である。
図5】アクティブペンPE、パームPA、及びセンサ電極群兼ディスプレイ4の等価回路を示す図である。
図6】(a)は、図5の等価回路を用いてシミュレートしたペン先電極21の電位V及びパームPAの電位Vの時間変化を示す図であり、(b)は、図5の等価回路を用いてシミュレートした線状導体4y-1の電位V4y-1及び線状導体4y-2の電位V4y-2の時間変化を示す図である。
図7】(a)は、図5の等価回路を用いてシミュレートしたペン先電極21の電位V及びパームPAの電位Vの時間変化を示す図であり、(b)は、図5の等価回路を用いてシミュレートした線状導体4y-1の電位V4y-1及び線状導体4y-2の電位V4y-2の時間変化を示す図である。
図8】本発明の実施の形態によるセンサコントローラ2の構成を示す図である。
図9】センサコントローラ2が実行するペン検出処理を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態による電子機器1の構成を示す図である。電子機器1は、例えばタブレットコンピュータなどのペン入力及び指タッチ入力に対応する装置であり、図1に示すように、センサコントローラ2と、ホストプロセッサ3と、センサ電極群兼ディスプレイ4とを含んで構成される。
【0015】
図1には、電子機器1に対してペン入力を行うアクティブペンPEも図示している。アクティブペンPEは、アクティブ静電方式に対応するスタイラスであり、センサコントローラ2との間で双方向に通信可能に、又は、センサコントローラ2に対して一方向に信号を送信可能に構成される。以下、センサコントローラ2からアクティブペンPEに送信される信号をアップリンク信号USと称し、アクティブペンPEからセンサコントローラ2に送信される信号をダウンリンク信号DSと称する。ユーザは、電子機器1に設けられるパネル面1a(タッチ面)上でアクティブペンPEを操作することによりペン入力を行い、パネル面1aを指でなぞることにより指タッチ入力を行う。
【0016】
ホストプロセッサ3は電子機器1の全体を制御するプロセッサであり、後述する電子機器1内の各部の動作はホストプロセッサ3の制御の下で実行される。センサコントローラ2は、センサ電極群兼ディスプレイ4内のセンサ電極群(後述)を用いて、アクティブペンPEやユーザの指などの指示体のパネル面1a内における位置の導出と、アクティブペンPEが送信したデータの受信とを行う集積回路である。センサコントローラ2は、導出した位置及びアクティブペンPEから受信したデータを、逐次、ホストプロセッサ3に対して出力するよう構成される。ホストプロセッサ3は、こうして入力された位置及びデータに基づいて、デジタルインクの生成及び描画を行う。
【0017】
センサ電極群兼ディスプレイ4は、ペン入力及び指タッチ入力を実現するためのセンサ電極群と、ディスプレイを構成する電極群とが統合された装置である。センサ電極群兼ディスプレイ4の具体的な形式としては、ディスプレイを構成する電極群の一部又は全部をセンサ電極群の一部又は全部としても使用するインセル型、ディスプレイを構成する電極群とセンサ電極群とが電気的に分離しているオンセル型などがあるが、本実施の形態では、センサ電極群兼ディスプレイ4はインセル型であるとして説明を続ける。ただし、本発明は、センサ電極群兼ディスプレイ4がオンセル型である場合や、センサ電極群とディスプレイとが別装置となっている場合にも適用可能である。センサ電極群兼ディスプレイ4を構成するディスプレイとしては液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなど各種のディスプレイを利用できるが、本実施の形態では、TFT(Thin Film Transistor)型の液晶ディスプレイであるとして説明を続ける。
【0018】
図2は、センサ電極群兼ディスプレイ4の詳細を示す図である。同図に示すように、センサ電極群兼ディスプレイ4は、パネル面1aに近い側から順に、xy平面内にマトリクス状に配置された複数の島状導体4mと、それぞれx方向に延在し、y方向に並置された複数の線状導体4yと、それぞれy方向に延在し、x方向に並置された複数の線状導体4xとを含んで構成される。なお、実際のセンサ電極群兼ディスプレイ4は、これらの他にも液晶層など各種の部材を含んでいるが、図2では記載を省略している。
【0019】
複数の島状導体4m、複数の線状導体4y、複数の線状導体4xはそれぞれ、ホストプロセッサ3及びセンサコントローラ2のいずれかと切り替え可能に接続される。この切り替えは、ホストプロセッサ3により時分割で実行される。センサ電極群兼ディスプレイ4は、各導体がホストプロセッサ3に接続されている場合にはディスプレイとして使用され、センサコントローラ2に接続されている場合にはセンサ電極群として使用される。
【0020】
センサ電極群兼ディスプレイ4がディスプレイとして使用される場合、ホストプロセッサ3は、複数の島状導体4mのそれぞれに共通の電位Vcomを供給するとともに、複数の線状導体4xを画素トランジスタ(図示せず)のオンオフを制御するためのゲート線として使用し、複数の線状導体4yを画素にデータを供給するためのデータ/ソース線として使用する。
【0021】
一方、センサ電極群兼ディスプレイ4がセンサ電極群として使用される場合、センサコントローラ2は、複数の島状導体4mのそれぞれをセンサ電極として用いて、自己容量方式による指タッチの検出を行うとともに、複数の線状導体4x,4yのそれぞれをセンサ電極として用いて、アクティブ静電方式によるアクティブペンPEの検出を行う。
【0022】
図2には、アクティブペンPEの内部構成も示している。同図に示すように、アクティブペンPEは、芯体20と、ペン先電極21と、圧力センサ22と、スイッチ23と、制御回路24と、バッテリ25とを含んで構成される。
【0023】
芯体20は、アクティブペンPEのペン先を構成する部材である。芯体20の後端は、圧力センサ22に接続される。ペン先電極21は、芯体20の先端近傍に設けられる電極であり、制御回路24と電気的に接続される。圧力センサ22は、芯体20の先端に加わる圧力を検出するセンサである。スイッチ23は、アクティブペンPEの筐体の表面に設けられたスイッチ素子であり、ユーザによりオンオフ操作可能に構成される。
【0024】
制御回路24は、バッテリ25から供給される電力により動作し、各種の処理を行う回路である。制御回路24が行う処理には、アクティブペンPEの各部の制御の他、ペン先電極21の電位を制御することによってダウンリンク信号DSを送信する処理と、ペン先電極21の電位の変動を検出して復調することによりアップリンク信号USを受信する処理とが含まれる。
【0025】
図3は、制御回路24が送信するダウンリンク信号DSのフォーマットを示す図である。図3(a)は、センサコントローラ2とアクティブペンPEとが双方向に通信する場合に、未だセンサコントローラ2を検出していない制御回路24が送信するダウンリンク信号DSを示している。この場合のダウンリンク信号DSは、所定周波数の無変調の搬送波信号であるバースト信号により構成される。
【0026】
図3(b)は、センサコントローラ2とアクティブペンPEとが双方向に通信する場合に、受信済みのアップリンク信号USに従って制御回路24が送信するダウンリンク信号DSを示している。アクティブペンPEがセンサコントローラ2に対して一方向に信号を送信する場合にも、同様のダウンリンク信号DSが用いられる。このダウンリンク信号DSは、所定周波数の無変調の搬送波信号であるバースト信号と、所定周波数の搬送波信号を送信データにより変調してなるデータ信号とを含んで構成される。
【0027】
データ信号により送信される送信データは、図3(b)に示すように、データ信号の開始を示すプリアンブルと、アップリンク信号USにより要求されたデータとを含んで構成される。なお、データ信号の末尾に、巡回冗長検査(CRC)符号などの誤り検出用のデータを配置することとしてもよい。
【0028】
プリアンブルは、センサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された所定データであり、センサコントローラ2が受信信号からデータ信号を検出するために使用される。アップリンク信号USにより要求されたデータには、圧力センサ22によって検出された圧力を示す筆圧値、スイッチ23のオンオフを示すスイッチ情報、制御回路24内のメモリに格納されるペンIDなどが含まれる。制御回路24は、受信したアップリンク信号US内に含まれるコマンドに従って圧力センサ22などからデータを取得し、データ信号内に配置する。
【0029】
図4は、データ信号の変調処理を説明する図である。同図に示すように、制御回路24はまず初めに、送信データを構成するシンボル列を取得する。シンボルは、変調に用いる情報の単位であり、ビット列に変換される値とビット列に変換されない値とを含む。図示した「P」は、ビット列に変換されないシンボルの値の一例である。ビット列に変換される値は、所定ビット数のビット列に対応する値であり、図4には、4ビットのビット列に対応する例を示している。
【0030】
制御回路24は、シンボルの値と拡散符号(チップ列)とを対応付けるテーブルを予め記憶しており、このテーブルに従い、送信データを構成するシンボルを1つずつチップ列に変換する。続いて制御回路24は、0又は1が連続しないよう、得られたチップ列をマンチェスター符号化したうえで、マンチェスター符号化後のチップ列により搬送波信号を変調する。図4には、この変調をBPSK(Binary Phase Shift Keying)により行う例を示しているが、他の変調方式を用いてもよい。こうして変調された搬送波信号の波形により、ペン先電極21から送信されるダウンリンク信号DSの波形(送信波形)が構成される。
【0031】
図2に戻り、センサコントローラ2とアクティブペンPEとが双方向に通信する場合を例に取ってアクティブペンPEの検出の概略を説明する。未だアクティブペンPEを検出していないセンサコントローラ2は、複数の線状導体4x及び複数の線状導体4yの一方又は両方を用いて、周期的にアップリンク信号USの送信を行う。このアップリンク信号USを受信したアクティブペンPEは、まず初めに、図3(a)に示したタイプのダウンリンク信号DSを送信する。センサコントローラ2は、複数の線状導体4x及び複数の線状導体4yのすべてを順に走査することにより、このダウンリンク信号DSの各線状導体4x,4yにおける信号レベルを取得する。そして、その分布に基づいてアクティブペンPEの位置を導出し、メモリに格納する(グローバルスキャン)。
【0032】
その後、再びアップリンク信号USを受信したアクティブペンPEは、図3(b)に示したタイプのダウンリンク信号DSを送信する。このダウンリンク信号DSを受信するセンサコントローラ2は、まず初めに、メモリに格納されているアクティブペンPEの位置の近傍に位置する所定本数の線状導体4x,4yのみを用いてバースト信号を受信し、その信号レベルの分布に基づいてアクティブペンPEの位置を新たに導出する。そして、導出した位置により、メモリ内に記憶しているアクティブペンPEの位置を更新する(ローカルスキャン)。次にセンサコントローラ2は、アクティブペンPEの位置に最も近い1本の線状導体4x又は線状導体4yを用いてデータ信号を受信することにより、アクティブペンPEが送信したデータを取得する。こうしてメモリ内に記憶された位置及び取得されたデータは、上述したように、センサコントローラ2からホストプロセッサ3に対し、逐次出力される。
【0033】
アクティブペンPEからセンサコントローラ2に対して一方向にダウンリンク信号DSを送信する場合についても簡単に説明すると、アクティブペンPEは、周期的に図3(b)に示したタイプのダウンリンク信号DSを送信するよう構成される。センサコントローラ2は、未だアクティブペンPEを検出していない段階では、このダウンリンク信号DSに基づいて上述したグローバルスキャンを行う。グローバルスキャンにより一旦アクティブペンPEの位置をメモリに格納した後には、センサコントローラ2は、引き続きアクティブペンPEから送信されるダウンリンク信号DSに基づいて、上述したローカルスキャン及びデータ信号の受信を行う。これによりセンサコントローラ2は、センサコントローラ2とアクティブペンPEとが双方向に通信する場合と同様に、アクティブペンPEの位置を更新するとともに、アクティブペンPEが送信したデータを取得することができる。メモリ内に記憶された位置及び取得されたデータがセンサコントローラ2からホストプロセッサ3に逐次出力される点も、センサコントローラ2とアクティブペンPEとが双方向に通信する場合と同様である。
【0034】
図1に戻る。アクティブペンPEがダウンリンク信号DSを送信するとき、アクティブペンPEの筐体を通じ、アクティブペンPEを保持しているユーザの人体にもダウンリンク信号DSが伝わる。その結果、ユーザがパネル面1aに手をついていると、図1に示すように、ユーザのパームPAからもダウンリンク信号DSが送信されてしまう。そうすると、グローバルスキャンにおいて検出される信号レベルのピークが2箇所になってしまうので、センサコントローラ2によるアクティブペンPEの位置の検出が正しく行われなくなる可能性が出てくる。そこで、本実施の形態においては、ダウンリンク信号DSがセンサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された所定波形の部分(すなわち、プリアンブルに対応する送信波形)を含むことを利用し、この所定波形の部分の位相に基づいて、受信したダウンリンク信号DSの位相がセンサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された位相と合致しているか否かを判定するようにセンサコントローラ2を構成することにより、アクティブペンPEの指示位置からパームPAの接触位置を除外できるようにしている。
【0035】
また、この除外を実現するためには、アクティブペンPEの指示位置を決定する前にダウンリンク信号DSの位相を判定する必要があり、そのためには、グローバルスキャンで複数の位置を検出し、該複数の位置のそれぞれでローカルスキャン及びデータ信号の受信を行う必要がある。そこで本実施の形態においては、このような処理を実現できるようにセンサコントローラ2内の受信部を構成している。
【0036】
以下では、まず初めに図5図7を参照しながらダウンリンク信号DSと位相の関係について説明し、次いで図8を参照しながらセンサコントローラ2内に設けられる受信部の構成を説明した後、図9を参照しながら、センサコントローラ2が行う処理について詳しく説明する。
【0037】
図5は、アクティブペンPE、パームPA、及びセンサ電極群兼ディスプレイ4の等価回路を示す図である。この等価回路においては、人体は完全な導体であり、かつ、フロート状態であるとみなしている。図5に示すように、この等価回路は4つの静電容量C1~C4を含んで構成される。静電容量C1は、ペン先電極21に最も近い線状導体4y(以下、「線状導体4y-1」と称する)と、ペン先電極21との間の結合容量である。静電容量C2は、パームPAに最も近い線状導体4y(以下、「線状導体4y-2」と称する)と、パームPAとの間の結合容量である。静電容量C3,C4はそれぞれ、線状導体4y-1,4y-2と電子機器1の接地端との間の結合容量である。
【0038】
電子機器1の接地端に対するペン先電極21の電位をVとし、電子機器1の接地端に対するパームPAの電位をVとし、ダウンリンク信号DSの電位をVとすると、これらは次の式(1)に示す関係を有している。
-V=V ・・・(1)
【0039】
また、電子機器1の接地端とペン先電極21の間のインピーダンスをZTG、電子機器1の接地端とパームPAの間のインピーダンスをZBGとすると、キルヒホッフの第1の法則より、次の式(2)が成立する。
/ZTG+V/ZBG=0 ・・・(2)
【0040】
式(1)及び式(2)より、次の式(3)及び式(4)が得られる。
=-VBG/(ZTG+ZBG) ・・・(3)
=VBG/(ZTG+ZBG) ・・・(4)
【0041】
式(3)及び式(4)から、ペン先電極21の電位VとパームPAの電位Vとは互いに逆相の関係になることが理解される。本実施の形態によるセンサコントローラ2は、この関係を利用して、アクティブペンPEの指示位置からパームPAの接触位置を除外する処理を行う。
【0042】
図6(a)及び図7(a)は、図5の等価回路を用いてシミュレートした電位V,Vの時間変化を示す図である。また、図6(b)及び図7(b)は、図5の等価回路を用いてシミュレートした線状導体4y-1の電位V4y-1及び線状導体4y-2の電位V4y-2の時間変化を示す図である。ただし、図6(a)(b)は、結合容量C1が1pFである場合を示し、図7(a)(b)は、結合容量C1が0.1pFである場合を示している。いずれの図においても、結合容量C2,C3,C4はそれぞれ3pF,100pF,100pFであるとしている。
【0043】
図6(a)及び図7(a)に示されるように、ペン先電極21の電位VとパームPAの電位Vとは、互いに逆相の関係になっている。これは、上述した式(3)及び式(4)にも示されるとおりの結果である。一方で、図6(a)及び図7(a)の結果から、電位Vの振幅は電位Vの振幅に比べて小さくなることが理解される。
【0044】
これに対し、図6(b)及び図7(b)に示されるように、線状導体4y-1の電位V4y-1と線状導体4y-2の電位V4y-2とでは、互いに逆相の関係になるという点では電位V及び電位Vと同様であるが、電位V,Vとは異なり振幅が同じ値になっている。センサコントローラ2が実際に検出するのは電位V,Vではなく電位V4y-1,V4y-2であることから、図6(b)及び図7(b)の結果から、検出される電位の振幅だけを見てもアクティブペンPEの指示位置とパームPAの接触位置とを区別することはできないことが理解される。そこで本実施の形態によるセンサコントローラ2では、電位V4y-1,V4y-2の位相を参照することにより、アクティブペンPEの指示位置からパームPAの接触位置を除外する処理を行う。
【0045】
図8は、本実施の形態によるセンサコントローラ2の構成を示す図である。ただし同図には、センサコントローラ2内に設けられる各種構成のうち、ダウンリンク信号DSの受信にかかる部分のみを図示している。同図に示すように、本実施の形態によるセンサコントローラ2は、MCU(Micro Control Unit)10と、メモリ11と、n個の受信部12-1~12-nと、選択部13とを有して構成される。
【0046】
MCU10は、メモリ11内に記憶されるプログラムを読み出して実行するプロセッサである。MCU10により実行される処理には、センサコントローラ2内の各部の制御が含まれる。メモリ11は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリ及びその両方によって構成される記憶装置であり、MCU10によって実行されるプログラムを記憶するとともに、MCU10のワークメモリとして機能する。このワークメモリとしての機能には、MCU10がグローバルスキャン及びローカルスキャンの結果として導出した1以上の位置を一時的に記憶する機能が含まれる。また、メモリ11は、アクティブペンPEの制御回路24に記憶される拡散符号(チップ列)のテーブルと同じものを記憶する役割を果たす。
【0047】
受信部12-1~12-nはそれぞれ、バッファ30と、バンドパスフィルタ31と、アナログデジタル(AD)変換部32と、復調部33と、相関演算部34とを有して構成される。バッファ30は、選択部13を介して各複数の線状導体4x,4yのいずれか1つに接続され、接続されている線状導体に誘導される電流を増幅し、バンドパスフィルタ31に供給する役割を果たす。
【0048】
バンドパスフィルタ31は、バッファ30の出力電流から、ダウンリンク信号DSの周波数の属する所定周波数帯の信号のみを取り出すフィルタ回路である。バンドパスフィルタ31は、バッファ30の出力電流から低周波ノイズ及び高調波ノイズを除去する役割を果たす。
【0049】
AD変換部32は、バンドパスフィルタ31の出力信号に対して標本化及び量子化を行うことにより、ダウンリンク信号DSの受信レベル値を取得する回路である。なお、AD変換部32のサンプリング周波数は、ダウンリンク信号DSの周波数よりも十分に高い周波数に設定される。AD変換部32は、取得した受信レベル値を逐次MCU10及び復調部33に供給するよう構成される。
【0050】
復調部33は、AD変換部32から出力される一連の受信レベル値に基づいてダウンリンク信号DSを復調することにより、アクティブペンPEが送信した一連のチップ列を取得する回路である。復調部33が取得した一連のチップ列は、相関演算部34に供給される。
【0051】
相関演算部34は、復調部33から供給される一連のチップ列と、予めメモリ11内に記憶される複数のチップ列のそれぞれとの相関を演算することにより、ダウンリンク信号DSを構成するシンボルの列を復元する回路である。相関演算部34によって復元されたシンボルの列は、MCU10に供給される。
【0052】
選択部13は、各複数の線状導体4x,4yのそれぞれと受信部12-1~12-nとの間に設けられるマルチプレクサである。選択部13の接続状態は、MCU10によって制御される。具体的に説明すると、MCU10は、まずグローバルスキャンを行う際には、各複数の線状導体4x,4yのそれぞれが受信部12-1に順次接続されることとなるよう選択部13を制御する。そしてMCU10は、受信部12-1のAD変換部32から順次出力される受信レベル値を参照することにより、ダウンリンク信号DSの受信レベルの分布を取得し、この分布のピークの位置を導出する。分布に複数のピークが存在する場合には、導出される位置も複数となる。MCU10は、導出した1以上の位置を、グローバルスキャンの検出結果としてメモリ11に格納する。
【0053】
ローカルスキャンを行う際には、MCU10は、メモリ11に格納した1以上の位置のそれぞれに互いに異なる受信部12-k(kは1~nのいずれか)を割り当て、割り当てた受信部12-kのそれぞれに対し、対応する位置の近傍に位置する各所定数本の線状導体4x,4yのそれぞれが順次接続されることとなるよう選択部13を制御し、その結果として受信部12-kのAD変換部32から順次出力される受信レベル値を参照することにより、受信部12-kごとに、ダウンリンク信号DSの受信レベルの分布を取得する。そしてMCU10は、受信部12-kごとにこの分布のピークの位置を導出し、導出した位置によって、メモリ11内に記憶している対応する位置を上書きする。
【0054】
データ信号を受信する際には、MCU10は、メモリ11に格納した1以上の位置のそれぞれに互いに異なる受信部12-kを割り当て、割り当てた受信部12-kのそれぞれに対し、対応する位置に最も近い線状導体4x(又は線状導体4y)が接続されることとなるよう選択部13を制御する。そして、その結果として各受信部12-kの相関演算部34から順次出力されるシンボル列を参照し、まずプリアンブルの検出を試みる。このときMCU10は、予め記憶しているプリアンブルに加え、受信部12-kに入力されたダウンリンク信号DSの位相が反転していた場合に出力されるシンボル列のうちプリアンブルに対応する部分(以下、「反転プリアンブル」と称する)の検出も試みる。そして、プリアンブルを検出した場合には、ダウンリンク信号DSの位相はセンサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された位相と合致していると判定する一方、反転プリアンブルを検出した場合には、ダウンリンク信号DSの位相はセンサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された位相と合致していない(反転している)と判定する。
【0055】
MCU10は、判定の結果、センサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された位相と合致する位相を有すると判定したダウンリンク信号DSを受信した受信部12-kから出力されるシンボル列に基づいてアクティブペンPEの送信データを取得し、該受信部12-kに関してメモリ11内に格納した位置とともに、ホストプロセッサ3に出力する。その他の位置はホストプロセッサ3に出力されないので、これにより、アクティブペンPEの指示位置からパームPAの接触位置を除外することが実現される。
【0056】
図9は、センサコントローラ2が実行するペン検出処理を示すフロー図である。同図に示すように、センサコントローラ2はまず、アクティブペンPEを検出するためのディスカバリモードにエントリし(ステップS1)、各複数の線状導体4x,4yのすべてを順に走査するグローバルスキャンを実行する(ステップS2)。センサコントローラ2は、このグローバルスキャンを実行した結果としてダウンリンク信号DSを検出したか否かを判定し(ステップS3)、検出していなければステップS2に戻ってグローバルスキャンを繰り返す。
【0057】
一方、ステップS3で検出したと判定した場合、センサコントローラ2はグローバルスキャンの結果に基づいて1以上の位置を導出し、図8に示したメモリ11に記憶する(ステップS4)。この導出の詳細については、上述したとおりである。ステップS4を終了したセンサコントローラ2は、検出済みのアクティブペンPEによるペン入力を受け付けるオペレーションモードにエントリする(ステップS5)。
【0058】
オペレーションモードにエントリしたセンサコントローラ2は、メモリ11に記憶した1以上の位置のそれぞれにおいて、図8に示した受信部12-1~12-nを用いて並列に、上述したローカルスキャンを行う(ステップS6)。そしてセンサコントローラ2は、このローカルスキャンを実行した結果としてダウンリンク信号DSを検出したか否かを判定し(ステップS7)、検出していなければディスカバリモードに戻って処理を継続する。一方、検出したと判定した場合には、ローカルスキャンの結果に基づいて位置を導出し、メモリ11内に格納されている位置を上書きする(ステップS8)。この導出の詳細についても、上述したとおりである。ここで、位置によっては、ダウンリンク信号DSの受信レベルの分布にピークが検出されない可能性がある。このような場合、センサコントローラ2は、対応する位置をメモリ11から消去する処理を行う。
【0059】
次にセンサコントローラ2は、メモリ11に記憶した各位置でデータ信号の受信を行う(ステップS9)。具体的には、図8に示した各受信部12-kから出力されるシンボル列を取得する。そして、受信したデータ信号(シンボル列)のそれぞれについて、位相の判定を行う(ステップS10。判定ステップ)。この判定は、上述したように、各受信部12-kから出力されるシンボル列においてプリアンブル及び反転プリアンブルの検出を試み、プリアンブルを検出した場合には、ダウンリンク信号DSの位相はセンサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された位相と合致していると判定する一方、反転プリアンブルを検出した場合には、ダウンリンク信号DSの位相はセンサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された位相と合致していない(反転している)と判定することにより行われる。
【0060】
続いてセンサコントローラ2は、ステップS10でダウンリンク信号DSの位相が合致していると判定したデータ信号に基づいてアクティブペンPEの送信データを取得し(ステップS11)、該データ信号に対応してメモリ11内に格納した位置とともに、ホストプロセッサ3に出力する(ステップS12。出力ステップ)。メモリ11内に格納されているその他の位置は出力しない。これにより、センサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された位相と合致する位相を有するダウンリンク信号DSに基づいて導出された位置と、該ダウンリンク信号DSに基づいて取得されたデータとのみがホストプロセッサ3に出力されることになる。センサコントローラ2はその後、ステップS6に戻って処理を続ける。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態によるセンサコントローラ2により実行されるパームリジェクションの方法によれば、ステップS10においてダウンリンク信号DSの位相を判定しているので、人体を経由して検出されたダウンリンク信号DSに基づいて導出された位置を特定することができる。したがって、タッチ検出などアクティブペンPEの検出と異なるプロセスによる検出の結果に依存せず、アクティブペンPEの指示位置からパームPAの接触位置を除外することが可能になる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0063】
例えば、上記実施の形態では、MCU10は、各受信部12-kから出力されるシンボル列においてプリアンブル及び反転プリアンブルの検出を試みる処理を行う例を説明したが、センサコントローラ2とアクティブペンPEとが双方向に通信する場合には、この処理を省略してもよい。すなわち、センサコントローラ2とアクティブペンPEとが双方向に通信する場合、オペレーションモードにエントリしているセンサコントローラ2は、アクティブペンPEと同期した状態にある。したがって、ダウンリンク信号DSにプリアンブルが含まれるタイミングを予め知ることができるので、そのタイミングで各受信部12-kからプリアンブル及び反転プリアンブルのいずれが出力されたかを判定することにより、ダウンリンク信号DSの位相を判定すればよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、プリアンブルの位相に基づいてダウンリンク信号DSの位相を判定する例を説明したが、センサコントローラ2とアクティブペンPEとの間で事前に共有された所定データであれば、プリアンブル以外のデータであっても、ダウンリンク信号DSの位相を判定するために同様に用いることができる。例えば、データ信号にスタートビットやストップビットが含まれる場合、これらのビットのいずれか一方又は両方の位相に基づいてダウンリンク信号DSの位相を判定してもよい。
【0065】
また、データ信号に誤り検出用のデータが含まれる場合には、連続して誤りが検出されるような場合に、ダウンリンク信号DSの位相が反転していると判定することとしてもよい。或いは、誤りが検出された場合に、復調部33から出力されたチップ列を反転したうえで相関演算部34に再入力することによって改めてシンボル列を取得し、取得したシンボル列にプリアンブルが含まれていた場合に、ダウンリンク信号DSの位相が反転していると判定することとしてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、センサコントローラ2内に複数の受信部12-1~12-nを設ける例を説明したが、1つの受信部のみを設けることとしてもよい。この場合、複数の位置で並行してダウンリンク信号DSの位相を判定することはできなくなるが、少なくとも、受信されたダウンリンク信号DSがペン先電極21及びパームPAのいずれから送信されたものかを判定することは可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 電子機器
1a パネル面
2 センサコントローラ
3 ホストプロセッサ
4 センサ電極群兼ディスプレイ
4m 島状導体
4x,4y 線状導体
10 MCU
11 メモリ
12 受信部
13 選択部
20 芯体
21 ペン先電極
22 圧力センサ
23 スイッチ
24 制御回路
25 バッテリ
30 バッファ
31 バンドパスフィルタ
32 アナログデジタル(AD)変換部
33 復調部
34 相関演算部
DS ダウンリンク信号
PA パーム
PE アクティブペン
US アップリンク信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9